14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/17(火) 18:33:43.09 ID:Rj91SYvtO
佐天「で、できた! これがもうひとりの私……」

佐天「そう、私はあなた。もうひとりの私」

佐天「しゃべった!」

佐天「私はあなたが超能力で生み出した写し身。身体の造りから知識、筋力、思考や行動パターンまでうり二つ」

佐天「これがどういう事かわかる?」



15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/17(火) 18:38:47.88 ID:Rj91SYvtO
佐天「どういう事かって……」

――――ヒュッ

佐天「うわっ!?」ドサッ

佐天「同じ次元に佐天涙子は二人もいらない。私さえいればあなたはもう用済みって事よ!」ビュッ

佐天「くっ!?」

ドカッ



24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/17(火) 19:13:59.46 ID:Rj91SYvtO
佐天「っぐ!?」

佐天「用済みってどういう事よ! あなたは私が生み出した分身でしょ!?」

佐天「違うわ! 私は私。偽物でも分身でもなんでもない……私も佐天涙子なのよ」

佐天「それと私を襲う事に何の関係があるの!?」

佐天「私達の能力は『もうひとりの自分』という、本来ありえない存在を生み出す奇跡じみた力」

佐天「この力が何の代償も無しに行使できると思う?」

25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/17(火) 19:18:53.40 ID:Rj91SYvtO
佐天(前に白井さんからテレポートについて聞いた事がある)

佐天(もし転移先に物体があった場合、転移対象は転移先の物体を『押しのけて』テレポートする)

ジジッ

佐天「っ!」

佐天「始まったわね」

佐天「始まったって……何がよ」

佐天「対消滅よ」

佐天「消滅……?」



28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/17(火) 19:26:29.54 ID:Rj91SYvtO
佐天「世界に用意された佐天涙子という枠組みは一つしかない。自分が絶対の一である事を、私達自身が強く願っているから、お互いの存在を維持できない」ジジッ

佐天「質量保存の法則を始めとするあらゆる法則をねじ曲げて『もうひとりの自分』を世界にねじ込める程、レベル1の私達は強くないのよ」ジジッ

佐天「だから死んで。私はまだ消えたくないの……!」ダッ

佐天「……っ」



31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/17(火) 19:32:35.20 ID:Rj91SYvtO
世界に同じ人間は二人存在しない、できない

仮に同一の存在が二つ在ったなら、片方は消えなければならない

もし、それを違えたならば、二つの存在を消す事で世界は解決を図る

だから佐天涙子の写し身は、佐天涙子を殺す事を選んだ


殺さねば自身が消える

それは佐天涙子も同じだった

32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/17(火) 19:37:51.28 ID:Rj91SYvtO
――ザクッ


佐天「……なんで、なんで避けなかったの……?」

佐天「だって……消えたくないって言ったじゃん」グラッ

ドサッ

佐天「私もおんなじだもん……自分が消えるのは…………怖い」

佐天「だから……私には『私』を殺す事はできないよ…………」

佐天「!!」



34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/17(火) 19:46:54.96 ID:Rj91SYvtO
カラーンッ

佐天「し、しっかりして!!」

佐天「それは無理……かな…………一人しか残れないし……」ジジッ

佐天「私……あなたの事、代わり身か何かだと思ってた………………でも、違うよね」ジジジッ

佐天「駄目! 消えちゃ駄目!」

佐天「あなたも私……あなたは私自身――――」ジジジジッ



カッ――――




35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/17(火) 19:51:06.37 ID:Rj91SYvtO
…………
……


……て

起きて、涙子

佐天「……ん」

「やっと起きたわね」

佐天「あなた……」

「私はあなたの写し身」

佐天「あれ…………私消えたんじゃ?」

36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/17(火) 19:58:34.52 ID:Rj91SYvtO
佐天「ってあれ、ここは?」

「ここは佐天涙子の深層意識よ」

佐天「私の深層意識……?」

「そう。『もうひとりの自分』という自分だけの現実を受け入れた、佐天涙子の世界」

「あなたが私を受け入れた事で、佐天涙子は対消滅の危機を脱した」

「ありがとう、涙子」

「そして、レベルアップおめでとう」ジジッ

佐天「! ま、待って!」

「次に会う時までに、私ももう少し強くなるから」ジジッ

「それまで……バイバイ」


―――――ブツン



38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/17(火) 20:01:48.31 ID:Rj91SYvtO
…………

「佐天さーん」

佐天「あ、初春。こっちこっち!」

初春「お待たせしました」

佐天「待ったよー。早く帰ろう」


初春「あ、そういえば、佐天さん試してみました?」

佐天「ん? 何を?」


40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/17(火) 20:09:58.39 ID:Rj91SYvtO
初春「超能力ですよ。昨日はあんなに喜んでたじゃないですか」

佐天「ああ、あれね」



気がつくと、私は自室の床に倒れていた

刺された傷も無く、争った形跡もない

昨日の出来事が現実だったという証拠は、何も残されていなかった





42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/17(火) 20:20:47.22 ID:Rj91SYvtO
でも、例え『もうひとりの自分』と会ったのが夢だったとしても、私はそれでいいと思う

なぜなら、もう私達がお互いを拒絶する事はないから

『私はあなた、私達は佐天涙子』

私は、私自身とうまくやっていける


佐天「うん、会えたよ。もう一人の自分」

初春「え! すごいじゃないですか!」

佐天「初春も会えるよ、もう一人の自分」


佐天「自分の心と向かい合えばさ――」


次に会う時は、彼女を笑顔で迎え入れようと思う

43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/17(火) 20:22:45.42 ID:Rj91SYvtO
終わり