おさかな目録? その1 

おさかな目録? その2

303: 結晶 2011/10/10(月) 21:53:36.80 ID:sqFkZxMh0

                                      ☆

「なあインデックス、女の子はキラキラした宝石が好きな子多いだろ。なんでなんだろうな?」

「とうま? 言いたい事が良くわかんないけど、硬くて立派なものに惹かれるのは人間なら誰しも同じじゃないかな?」

「……………………コホン。ん、つまりアレか。宝石の魅力は見た目の美しさとその永続性っつーこと?」

「もちろん例外はあるけどね。その神秘的な存在感が太古の昔から人間を魅了し続けているんだよ」


「神秘的、か。確かにダイヤモンドは傷つかないからソレを持つ者の命を守る力があるとか言うしな」

「宝石、例えば紫水晶を粉末にして飲んでた時代もあったんだよ。鰯の頭を信じない人は地獄に落ちる、みたいなものかも」

「『しんじんから』はそういう意味じゃねーけど。ちなみに水晶って二酸化珪素の結晶だっけ?」

「とうまの教科書によるとそうみたい。宝石って割とありふれた元素が素になった物の結晶であることが多いんだね」 パラパラ


「珪酸塩鉱物ってことで言えば水晶はもちろんとしてオパールやトルマリン、翡翠にベリルにガーネット、……キリがねーな」

「ダイヤモンドは炭素の結晶だしね。あと、コランダムってアルミナ(酸化アルミニウム)の結晶……、あれ?」

「そうそう。コランダムの中で宝石としての価値があるものがサファイアで、更にその中で赤い色をしてるのがルビーだな」

「つまりルビーって赤いサファイアなんだね。……はっ、とうま! アルミ箔からルビーを作って大儲けするんだよ!!」


「んなこと簡単に出来たら誰も苦労しねーよ。それならガスコンロでアルミ箔をあぶってダイヤモンド作ったほうが速いぞ?」

「それだって顕微鏡で見ないとわかんないようなチビダイヤでしょ? 宝石とは呼べないかも」

「だな。まあアレだ。宝石が貴重なのは、長い時間と途轍もないエネルギーと偶然が重なって初めて出来るからってことだろ」

「そだね。……あ、でもねとうま。宝石扱いされる物の中にはそうとも言えない例外があるんだけどわかる?」


「ん? ん~…………、ああ、琥珀か?」

「琥珀は樹液の化石だね。弦楽器奏者が使う松ヤニそっくりだけど、決して短期間で出来るものじゃないかも」

「むむ……、じゃあジェット?」

「黒玉とも呼ばれるイギリス的宝石だけど、これも(樹木の)化石だよ。もっと短い時間で出来るもので考えて欲しいかも」


「……ふむ。要するにインデックスは真珠の事を言ってるんだな? おさかな話だし」

「うんうん、よく気が付いたねとうま! 誰でも知ってることだけど真珠ってただの石じゃないよね。水産物だもん」

「っても細かいことまでは知らないけど」

「真珠島とかバロックとか金・銀・パール・プレゼント♪ なんかで割と耳や目にする機会が多いのにね」


304: 結晶 2011/10/10(月) 21:54:50.42 ID:sqFkZxMh0

「今日はそんな真珠の話ってワケか。とりあえず常識として、貝の中で出来るんだよな」

「そうだよ。代表的なのはアコヤガイやアワビ、淡水真珠貝のイケチョウガイ、黒真珠で有名なクロチョウガイなど、かな」

「ちょっと待った! アワビ? 他の貝は良くわかんないから置いておくとして、アワビから真珠って採れるのかよ?」

「順を追って説明するから慌てないで欲しいかも。まず第一に、そもそも真珠の成分は貝殻と同じなんだよ」


「えーと、貝殻と同じってことは鍾乳石と同じ炭酸カルシウムが主成分なんだな。それで?」

「貝は外套膜っていう部分からの分泌物で殻を作るんだけどね、この部分が何かの拍子で小さく千切れることがあるんだよ」

「外套膜っつーのは、貝の中身が殻に接している部分の名前か。で、千切れる場合って例えば?」

「砂粒や寄生虫の進入とかかな? で、その外套膜の破片が軟体組織内……、要は体の中に入っちゃうと勝手に復元するの」


「ん??? 破片が復元ったって、外側の部分なのに体の内部に移動しちゃもうダメなんじゃねーの?」

「ダメって言うか、元の場所に戻ることは出来ないから結局その場所で袋状の組織になるんだよ。これを真珠袋っていうの」

「……ああ、そういうことか。外套膜は貝殻を作る。同様に袋状の外套膜、真珠袋の中でも貝殻が、つまり真珠が出来ると」

「養殖真珠の場合は中心となる核と外套膜の切片をセットにして、手術で生殖巣に入れるの。真珠袋が核を包むようにね」


「ふむ。天然の美しい真珠は偶然の産物だけど、養殖なら入れる核によって希望の大きさや形くらいは揃えられるわけだ」

「それもある程度だけどね。商品価値のある真珠が採れる確率は5~30%くらいみたいだし」

「ふ~ん。にしても貝にとっては災難だよなあ。たまたまキレイな貝殻を持ってたってだけで手術だの養殖だの……、あ」

「気付いた? アワビも貝殻の内側がとってもきれいな虹色でしょ? ああいうのを真珠層って呼ぶんだって」


「なるほどね。殻の内側がキレイな真珠色をしている貝が真珠を作るって考えればいいんだな」

「うんうん。たとえ千切れた外套膜が袋を作って体内で貝殻が出来たとしても、キレイじゃなきゃ真珠じゃないんだよ」

「アサリやハマグリの殻の内側は真っ白だったりするから、仮に真珠?が出来てもやっぱり白いのかな」

「だと思うよ。そういうのは区別して真珠様物質って呼ぶんだよ。だからお味噌汁飲んでて何か入ってても大喜びしないでね」




「いや? 上条さんとしてはソレはソレで大当たりだと思うぜ? 記念になるし、珍しいし、立派にお宝だろ??」

「最初のとうまじゃないけど、私は男の子のそういうところがわからないかも……」









305: 結晶 2011/10/10(月) 21:56:22.38 ID:sqFkZxMh0

                                         ☆

白井「唐突ですけど、サンゴって最近あまり名前を聞きませんわね」

佐天「え? そりゃいくら名作って言っても連載が終わって随分経ってるから仕方ないですよ」

御坂「最後は結局どうなったんだっけ? 実家のお寿司屋さんを継ぐとか大学でオリンピックを目指すとか……」

初春「あれ? 白井さんは宝石のサンゴのことを言っているんじゃないですか?」


白井「ええ……、3月の誕生石コーラルこと珊瑚ですの。まさか初春しか分ってくれないとは思ませんでしたけれども」

御坂「え、そっち?? …………でも確かにそうね。サンゴと聞いて宝石を思い浮かべないんだもん」

初春「世界的に見れば乱獲が問題になっていたり大国の買占めがあったり、全然大人気ですけどね」

佐天「でもさ、サンゴって結局真珠と同じ炭酸カルシウムでしょ? 鶏卵のカラをありがたがるみたいで、なんだかなあ」


白井「卵殻でもイースターエッグでしたら時には美術品以上の価値がありますわよ? 組成など些細なことですの」

御坂「だね。それに昔は宝石サンゴの赤い色は血の色に見立てられて、数多くの伝説の証とされてきたのよ」

初春「蛇女メデューサや十字教で言う神の子の血が固まったものって話ですね。まあ赤い色の宝石にはありがちですけど」

佐天「真珠は人魚の涙ってのに比べたらちょっとバイオレンスだね……。あ、そういえばサンゴって動物なんですよね?」


初春「サンゴ虫ですね。動物にしては変な生 をいろいろ持ってますけど。まずそもそも動かないですし」

御坂「種類によるけどね。分類としてはイソギンチャクやクラゲなどの親戚って考えればいいかな。刺胞動物ってグループね」

白井「その中で一箇所に留まって骨格を作り出す性質を持つものをサンゴと考えればいいんですの」

佐天「つまりサンゴって骨を作るイソギンチャクですか……。じゃあ同じように口や触手があるんですか?」


御坂「かなり単純な形になってるけどちゃんと獲物を捕まえて食べるみたいよ」

白井「ですが珊瑚礁を作るものと宝石を作るものは別種でして、特に栄養摂取の面では大きな違いがありますの」

初春「珊瑚礁を作るサンゴはかなり浅く透明度の高い海に棲んでいますね。きれいな海って、響きはいいですけど」

佐天「多くの生き物にとっては食べるものが無い死の海でもあるんだよね。なんでそんなとこにわざわざ?」


御坂「珊瑚礁を作るサンゴを造礁サンゴって言うんだけど、必ず体内に褐虫藻って単細胞生物を飼ってるのよ」

白井「要は植物ですわ。造礁サンゴは体内でそいつらに光合成をさせて栄養を補給出来るんですの。もちろん捕食もしつつ」

初春「だから海底まで光が届く透明度の高い浅い海に棲むんです。一方で宝石サンゴはかなり深い海に居ますね」

御坂「造礁サンゴは褐虫藻を飼っていない宝石サンゴに比べて骨格を作る速度が段違いなのよ。光合成のお陰なのかな?」


佐天「そりゃまあ、島まで作っちゃうくらいですもんね。宝石サンゴはそんなわけには行かないだろうし」

御坂「1cm成長するのに50年掛かる種類もあるみたいね。でも珊瑚礁だって出来上がるには長い時間が掛かるのよ?」

白井「珊瑚礁にはサンゴに隠れて生活する小魚やソレを捕食する大魚が集まって、死の海はやがて極彩色の楽園になりますの」

初春「深海のサンゴも珊瑚礁のサンゴも気の長い芸術家ってトコは同じですね。美しいのは生き方そのものですけど」






初春「え? ……オチなんてありませんよ? …………、空気を読めない子は後々苦労しますよー」








306: 結晶 2011/10/10(月) 21:58:06.17 ID:sqFkZxMh0


                                     ☆

打ち止め「ねえねえ、最大の魚類はジンベイザメだよね。じゃあ最大の水生生物って何?ってミサカはミサカは質問してみる」

一方通行「…………よく覚えてねェが前に同じよォな流れが無かったか? ソレはともかく、最大の水生生物か……」

打ち止め「およ、もしかして久々の難問だったりする?ってミサカはミサカは謎の手ごたえを感じてみたり!」

一方通行「オマエの価値観なンざ知ったこっちゃねェが、確かにその問にはある難題が関わってる。群体をどォ扱うか、だ」


打ち止め「グンタイ? 超能力者と互角に渡り合う人的暴力装置のこと?ってミサカはミサカは不穏当にボケてみたり」

一方通行「……話を聞きたくねェのか? フザけてンならオレは止めても構わねェけど」

打ち止め「聞きたい聴きたい嬉々期待!! ってミサカはミサカは今後は気をつけるからお話の続きを切望してみる!」

一方通行「次はホントに打ち切るからな。……で、アレだ。通常、現生最大生物はクジラの仲間ってことになってる」


打ち止め「ほほぉ、ということは有名なシロナガスクジラが一番大きいんだねってミサカはミサカは確認してみたり」

一方通行「だな。体長30m以上、体重150トン以上、一日の食事量は4トン。最長・最大・まさに規格外の海棲哺乳類だ」

打ち止め「数字だけ聞いてもホント圧倒的だよね。それに特殊能力を使わず遠距離の仲間と意思疎通したり出来るんでしょ?」

一方通行「よく知ってンな。巨体を使った単なる鳴き声も規格外。180ホン超の低周波で通信圏は100km以上なンだとよ」


打ち止め「……何もかもがデタラメなサイズでイメージしにくいんだけど、コレ以上の生き物がホントにいるの?」

一方通行「ンー……、とりあえずソコは後回しにしとけ。ところでカツオノエボシって分るか?」

打ち止め「ミサカネットワークをナメたらいかんぜよ!ってミサカはミサカは唐突な質問に『毒クラゲ』と即答してみたり」

一方通行「便利だなソレ……。そォ、空気の詰まった青いポリ袋のよォな外見の、危険だが珍しくもねェクラゲだ」


打ち止め「大きさは餃子以上メロンパン未満ってとこかな。で、このカツオノエボシがどうしたの?」

一方通行「その大きさってのは水面に浮かぶ袋の部分だけだろ? その下には最長で50m以上にもなる触手があンだよ」

打ち止め「50m!? あな……、あなおそろしや、誰かの全力疾走で20秒くらい掛かるほどの長さの触手って……。あれ?」

一方通行「そンなモヤシは知らねェが、言いたい事は分る。最長のはずのシロナガスクジラより長いよな?」


打ち止め「つまりカツオノエボシには最長生物とされない理由があって、それがさっき言ってたグンタイに関係があるのね?」

一方通行「正解。で、群体ってのは簡単に言えば無数の個体が群れを成し一個体のよォに振舞ってる状 を指す」

打ち止め「小魚が群れを作ってまるで一匹の大きな魚みたいに見えることがあるけどそういうこと?ってミサカはミサカは…」

一方通行「そのレベルじゃねェ。一匹のクラゲに見えるカツオノエボシは実は群体なンだよ。ンじゃ、詳しく行くぞ」




307: 結晶 2011/10/10(月) 21:59:41.78 ID:sqFkZxMh0

一方通行「っと、群体の解説に入る前に紛らわしい用語、『クラゲ』について最初に説明しておく必要があンな……。
     普通、クラゲと聞けば生物の名前だと思うだろォが今回は別の意味でも使うからな。

     イソギンチャクやクラゲ、サンゴなどが含まれる刺胞動物というグループは大別して二種類の型がある。
     一つはポリプ型。これはイソギンチャクをイメージすりゃ良いが円筒状の体型の一端が口になっていて
     逆側は岩などにへばり付くための部分って構造をしたタイプだ。
     そしてもう一つがクラゲ型、クラゲと聞いてイメージするだろォ傘を持つ浮遊生活に向いたタイプだ。
     この二つの型をそれぞれ単にポリプ、クラゲ、と呼ぶ事があるから注意しろ。

     例えば海水浴の嫌われ者として馴染みのあるミズクラゲってのが居るだろ? 刺されても然程痛くねェヤツ。
     アレは浮遊する幼生が岩などに固着してポリプとなり、イソギンチャク同様の生活をしつつ成長した挙句に
     分離して再びクラゲとして海中を漂い、その成体は有性生殖の後に幼生を放出して一生を終える。
     判ったか? 名前か型か、そのクラゲがどっちを意味してンのか注意してねェと混乱すっから気ィ付けろよ」


打ち止め「えーっとつまり、クラゲがクラゲじゃないときでもクラゲはクラゲなのねってミサカは……、ややこしいよ!!!」

一方通行「それ以外にもクシクラゲはクラゲでは無いと言っても間違いじゃねェとか、クラゲ話は紛らわしいンだよ」

打ち止め「クシクラゲは刺胞動物じゃなくて有櫛動物だからだよね。でもクラゲと言っても間違いじゃない……」

一方通行「その辺は自分で調べた方が良いだろォな。とにかくクラゲの話題には気をつけろってこった。続けンぞ」


一方通行「カツオノエボシはヒドロ虫綱クダクラゲ目ってのに分類されンだが、これまたミズクラゲやエチゼンクラゲ、
     アンドンクラゲなどの鉢虫、箱虫綱じゃねェって理由でクラゲでは無いとされることもある。
     じゃ何だ?っつーとヒドロ虫の群体、ってコトになるンだが……、今回は面倒なンでヒドロ虫の説明は省略して
     さっきの『群体とは無数の個体が群れを成し一個体のよォに振舞ってる状 』の話に移る。

     クダクラゲ目の体は一本の管から気泡体や栄養体、感触体や生殖体が生えてるよォな構造をしてンだが
     その一つ一つのパーツが実はそれぞれ別個のヒドロ虫なンだ。つまり、浮き袋になってるだけの個体や
     獲物を捕らえるだけの個体。食べるだけの個体に有性生殖を担当するだけの個体。他に遊泳担当の個体を
     備えた種類も居るがそォした多数の個体が一箇所に集まりそれぞれ別個の活動をすることで全体としての
     まとまった生命活動になっている状 、こォ言うのを群体と呼ぶ。たとえるなら、ネジを回すだけのヤツと
     色を塗るだけのヤツ、溶接するだけのヤツなンかが集まってる製品工場のイメージかね? 一人一人の仕事は
     ソレだけでは意味が無いが全体として見るとクルマやらテレビが次々作られてくだろ?

     で、その個々のパーツなンだが別にその辺をふら付いてたクラゲが集まってるワケじゃねェ。カツオノエボシでは
     まず最初に小さなポリプともクラゲとも呼ばれない状 、幼生として海を漂い、成長に伴い変 をしていく。
     そのうちに一端は浮き袋、もう一端は口と触手を備えた一本の管(クダ)状に変化し更にその後、この管の部分が
     木の幹と同様にいくつかの成長点で伸びそこから各器官の役割を担う個体が次々に発生する。
     植物の芽のよォに増殖するそれぞれの個体は生えてきた位置によって役割が決まり形も機能も様々ではあるンだが
     最初は一個体の幼生だろ? つまり群体を構成する無数のヒドロ虫は全て無性生殖によって生まれたクローンだ」
     

打ち止め「んんん??? 同じ遺伝子を持つ異なる役割の器官を備えた集合って、ふつうの生き物と何が違うの???」

一方通行「オマエって時々ヤケに鋭いな……。確かに群体は単細胞生物から多細胞生物への進化段階と見做される場合もある」

打ち止め「まあ、何を言ってるかミサカ自身は分ってないんだけどねってミサカはミサカはカンニングを暴露してみたり」

一方通行「…………覚えとけ、正直は美徳とは限らねェぞ。ラスト行くが聞きたきゃ勝手に聞け」


一方通行「最大の生き物は何か? って問題にカツオノエボシが挙がらない場合がある理由は以上のよォに単独の個体とは
     言えないからだが、もし群体も考慮すンなら他にも巨大生物は存在することになる。
     クダクラゲ目の別種、マヨイアイオイクラゲは幹の長さが40mの細長い群体生物である、とかな。
     ただソイツらを認めちまうと、更に厄介な存在が浮上してくる。多くが刺胞動物門花虫綱六方亜綱に属する動物、
     骨格を作る小さなポリプが群体を成し果ては珊瑚礁すら作っちまう、造礁サンゴって呼ばれるグループだ。

     体内に褐虫藻を飼うことで光合成によるエネルギー補給が可能なコイツらは、より多くの太陽光を浴びるために
     せっせと骨格を造り群体全体を水面近くまで盛り上げていく。生命活動をしてンのは表面だけであとは石灰質の
     ただの土台だが結果として島レベルのデカさに成長すンだろ? クラゲの長さはもちろん、クジラの重量すら比較に
     ならないンじゃねェか? もちろん、群体を考慮するとしてもその大きさは生きてる部分のみで考えろって批判も
     あンだろォが、なら樹木はどォなンだよ? アレだって太い幹の大部分は単なる柱で、生命活動はしてねェ。
     だから樹木の大きさを表す場合は葉や根毛や樹皮直近部分のみで考えろ、なンて誰も言わねェだろォが。

     とは言え、生命活動の結果出来上がってンだから珊瑚礁全体を生物と見做すべきだ、なンて誰も主張しねェがな。
     群体はその形 によって、或いはドコまでを一塊と扱うかで大きさに際限が無くなっちまうコトがある。
     オマエの言う普通の生き物との違いはその辺りかもな」






308: 結晶 2011/10/10(月) 22:02:25.74 ID:sqFkZxMh0

打ち止め「ふむむ……、ホント紛らわしくてややこしい話だったねってミサカはミサカは見も蓋も無く総括してみたり」


番外個体「そんで、無数の個体が演算装置部品として機能する知的生命群体の誕生はまだかね?」

芳川桔梗「残念ながら刺胞動物には脳が無いし、パーツもただ反射的に活動してるだけだからソレは難しいわね」

一方通行「……そンなモンが産まれるためには、まず種の維持にエネルギーを使う必要の低い環境が必須だろォな」

打ち止め「死なないために必死で個々が役割分担してたら他のこと出来ないもんねってミサカはミサカは頷いてみる」


番外個体「ふーん、所詮SFの話か。……あ、それとさ。ミサカネットワークって繋がり合うクローンが作る集合じゃん?」

打ち止め「その発想は無かったよ……。物理的には全然繋がって無いけど、意識は電気的に集合し一つの脳のような…」

一方通行「端から意識を持つ個体同士なンだから知的に関係しあって当然だろ。それにテメエらは群体とは言えねェよ」

芳川桔梗「そうね。打ち止めからポコポコ妹達が生えてくるならまだしも。……ん~、あなたたちの状 は群体と言うより」




   <ガチャっと  「超お邪魔します、と言っても超セクシー系美少女の私がお邪魔である理由など考え付きませんが!」


絹旗最愛「その場合は群体ではなく、超個体と超言うべきですね。分業が無いのでコレも超正確な表現ではありませんが」





打ち止め「突然誰?? ってミサカはミサカはコンパクトな侵入者に警戒してみたり」

番外個体「へ? なにこのチビコロ? オチドロボー?」

芳川桔梗「だけど『オチ盗人に罪は無し』よね。知らないおちびさん、何だかわからないけどオチ担当ご苦労様」

一方通行「いや、オチてねェだろォ!? それとそこのクソチビ、終盤に未解説の用語を出すンじゃねェ!!」

打ち止め「もう行っちゃったよ? ってミサカはミサカは言われっぱなしの謎の童女にちょっと同情してみたり」







絹旗最愛「超個体とは、完全に分離独立した多数の個体が形成する一体の生物のように振舞う集団です。群体と異なり
     個々のパーツは超短時間であれば集団を離れる事が可能です。イメージが沸きませんか? バカですか?
     昆虫のハチを思い浮かべてください。オスと女王バチが生殖を、働きバチが栄養摂取や防衛を担当しますよね?
     それぞれのハチは完全に一個体なので移動も可能ですが、巣から離れての単独生活は超無理です。
     この場合の蜂の巣を中心とした群れ全体を超個体と超呼びます。個々のハチはただのハチなので超要注意です。

     ただコレは多分に概念的な表現ですので、例えば人間集団の行動が超個体的と言っても間違いじゃなかったり
     もっと行き着いてしまえば生物全体が超個体であって互いに干渉しあい究極の進化を目指す、なんて意味不明な
     話も作れちゃいます。究極の美に最も近い私と、浜面こと超浜面が同じ生物の異なる部分を担当するかのごとく
     扱われていいはずないですよね? 大罪にも程があります。浜面調子乗んなです。あと私ちっちゃくないです!

     そんなちょっと理解が超難しい言葉なので、生物学を本気で学ぼうとしない限り忘れちゃっても構いません」


浜面仕上「……、何の話だ??? オレ突然呼び出されて何でバカにされてんの??? オレは何の役割なの???」

絹旗最愛「栄光の大オチですよ? そんなこともわからないから浜面はいつまでたっても超キモ面のウマ面のバカ面の…」 





  ~おしまい~





316: 獲物 2011/11/20(日) 01:44:44.25 ID:P55bsVWX0



                                ☆

「なあインデックス、今更だけど川や池や海なんかで魚を捕まえる方法ってあんまり話題にしてこなかったよな?」

「とうま。それは魚の捕獲は規模の大小の差こそあれ、紛れも無い直接的な環境破壊だからなんだよ」

「へ? いやまあ確かに自然への強引な介入って意味ではそう見えなくも無いけど、ちょっと言葉が厳しすぎないか??」

「甘いんだよ!! 実際過去にテレビや雑誌やウェブは数多くの水場に回復不可能なダメージを与えてきたんだよ」


「ソレはアレか? 例えば珍しい魚の生息地とか、手軽で効率の良い捕獲法を安易に紹介するなってコト?」

「当然かも。不特定多数に制限無しで充分な考慮もせず情報を垂れ流しておいて反省もしない人たちのマネはしないんだよ!」

「まあなあ……。一時期アウトドア系のコンテンツは暴走してたよな。移入種問題の大部分も実は情報媒体依存なんだし」

「同じ舌で美しいふるさとを守ろうとかよく言えたものなんだよ。こーがんむちなんだよ!!」


「……どちらも恥ずかしくて痛々しいコトでしょう。ってやかましいわ!!」

「なにが???  ……まあ、とにかく言いたいのはおさかなを捕まえるのは良い事じゃないってコトなんだよ」

「遊びで捕まえるなら尚更だな。でもそれじゃ話が終わっちゃいますけど……」

「ワガママで悪い事をさせて貰ってるって思ったらムチャは控えるでしょ? まずはそういう意識を持つことが大事なのかも」


「ふむ。偉そうに個人の権利を主張すんのはお門違い。自然の中では謙虚にせいやッ! って感じかね?」

「うんうん。とは言っても、これだって個人的な意見だから何の強制力もないんだけどね」

「自然の捉え方は人それぞれだからなあ。規制されていない遊び方なら何をしても良いってのは正直イヤな気もするけど」

「アリを踏んでも気付かないのが人間なんだよ。そしてアリの範囲は人によって違う……、そういうことなのかも」


「……えーっと、話がそっち方面に行くと収拾が付かないんでそろそろ方向転換しないか? もうちょっとライトに」

「そう? じゃあ簡単な魚の捕獲方法をその害も付け加えて紹介してみる?」

「…………ますますダークな方面に落ちちまいそうな予感がビンビンするぜぇ。でも敢えて今日はそれで行こう!」

「心配しなくても誰でも出来る、またはやったことがある方法しか触れないんだよ。ある意味原始的狩猟かも」






317: 獲物 2011/11/20(日) 01:46:21.88 ID:P55bsVWX0


「原始的っつーと……、手づかみとかタモ網とかか?」

「そだね。そういうのは池や川の岸辺、小川みたいな比較的浅い水辺ですると思うけど、どんな魚が捕れるかな?」

「ん~、フナとかオイカワやカワムツ、ヨシノボリやシマドジョウみたいな底魚、メダカやよくわかんない稚魚……」

「多くの稚魚、小魚が浅瀬に居るのは流れが弱く大型の捕食魚が近寄らない浅瀬でしか生きられないからだよね?」


「ソレを狙って網を入れるということは小魚を浅瀬から遠ざける……つまり纏めて殺すことにもなるかもしれないワケか」

「うん。更に手づかみや網の場合、水に入ってすることも多いと思うけど……、水底には何も居ないのかな?」

「いや、前述のヨシノボリやドジョウ類、水生昆虫やスナヤツメやカマツカ、時期によっては色んな卵もあるだろうな」

「水の中を歩くたびにそういった命を踏み潰す可能性があるかもしれないって心に留めて置いて欲しいよね」


「うむむ、他には手網を使って水底をガシャっと引掻いて砂石ごと魚を捕る……、魚が傷つかないワケねーな」

「かなり効率が良い方法ではあるけどね。他にも草が水に張り出してるトコの下部を網でガサっとすると色々捕れるけれども」

「ヌマエビや隠れていたナマズなんかだな。でも沢山一度に捕れるって事はそれだけ重要な隠れ家だったってことで」

「ソコを引っ掻き回されるのは生き物にとっては大迷惑なのかも。網で地形が変っちゃえば使えなくなる事もあるしね」


「そもそも魚の稚魚は緩やかな環境の変化には強いけどショックには弱いんだよな。だから網で捕まえただけで死ぬことも」

「そうなんだよね。石をハンマーで叩いて衝撃波で下に隠れている魚を気絶させて捕まえる方法も、稚魚には致死ダメージだし」

「見えないところにも被害があるかも知れないって気遣うだけで殺さずに済む魚が結構増えるんじゃないかな……」

「魚捕りは楽しいからついついやり過ぎちゃうけど、それだけムダに命を散らしているんだってまずは知る事からなんだよ」


「予想通りというか、今日はあんまり楽しい話題じゃなかったな。でも勉強になったよ」

「どう致しましてなんだよ。……あ、とうま。冷蔵庫が空っぽだけど今日の晩御飯はどうするの?」

「へ? 昨日一週間分の食料を買い込んだはずなんだけど……?」

「そんなの言ってくれないと判らないんだよ。もう食べちゃったかも!」




「インデックスさん?? 食欲も加減を守らないと家計に回復不可能なダメージを与えかねませんけどお??」







318: 獲物 2011/11/20(日) 01:48:51.41 ID:P55bsVWX0

                                           ☆

佐天「そーいえば、マグロやカツオの一本釣りって豪快でカッケェ! ですけど何であんなことするんでしょうか」

初春「佐天さんの疑問は網でごっそり捕まえたほうが効率が良いのに手間を掛けて一匹ずつ釣り上げる理由は? ですかね」

白井「網での漁は、捕まえた大量の魚体同士がお互いに擦れあい皮や筋肉が傷付くリスクがあるんですの」

御坂「あと特にマグロは有名だけど止まったら死ぬじゃない? 長時間拘束する漁法は鮮度の面でも問題なワケ」


佐天「ふむふむ、要するに網漁での品質劣化を回避するために一匹ずつ釣り上げて素早くシメるんですね」

初春「じゃあいっそのこと網なんか禁止して全ての漁を釣りにすれば良いのでは、と考えちゃうところですけれど」

白井「そこは佐天さんが仰るようにコストが掛かる方法ですから、安値の魚まで適応するのはムリがありますわね」

御坂「ちっちゃな魚だと更に面倒だろうし……。一本釣りは比較的高値の魚をより良い状 で捕獲する方法って事ね」


初春「ところで佐天さん、カツオの一本釣りの針には返しが付いていないのは知ってますよね?」

佐天「返し……刺さった針が抜けるのを防ぐための突起のこと? ソレが無い針じゃカツオが逃げちゃうでしょ??」

御坂「逆にすぐ抜けちゃうから良いのよ。……えーっと、カツオ漁の流れを説明したほうがいいのかな」

白井「でしたらこの黒子にお任せを。20秒で解れ簡単一本釣り講座ですの!!」




白井「かつてのカツオ漁はカツオ鳥という、正式にはなんと言うのか解りませんがある種の鳥の群れを洋上に見つける事が
   最初の仕事でしたの。その鳥はイワシが大好物なので群れが居るということはそこにはイワシの群れが居て、さらに
   イワシを追うカツオが居るはず、ということですの。現在では魚群を探す機械の発達もあって探索をカツオ鳥のみに
   頼ることは無いようですが……。まあなんやかやの後、カツオが居るポイントに漁船を移動させましたらエサ用の
   イワシを海に撒いてカツオを船の近くに集めますの。
   仕上げに船上からの放水。これは海面に水しぶきを上げることでカツオに『イワシのとんでもない大群が居る!』と
   勘違いをさせ  状 にする効果があるそうで、そうなれば何にでも、たとえエサも付いていない釣り針にさえも
   喰い付いてしまうんですの。針に掛かったカツオは屈強な漁師に一気にその頭上まで引き上げられ、その勢いと重力と
   慣性といろいろで刺さっていた針が抜けるという仕組みですの。返しの付いた釣り針を抜くのは結構な手間ですので
   針を入れればどんどん釣れる状況でそんなことに時間を取られないためにも返しは必要ないんですのよ」
   
   

御坂「遊びの釣りでも、針の返しを切っちゃう人は居るんだけどソレは魚体へのダメージを軽減するのが目的なのかな」

初春「カツオの一本釣りの場合はとにかく時間短縮の為ですね。数秒に1匹のペースで釣るんだそうですよ」

佐天「よっ、はっ! よっ、はっ! って感じ?? そんな速さで獲ってたらカツオいなくなっちゃわない???」

白井「豪快とは言っても釣りは釣りですので、漁獲量は網とは比較にならない少量ですの。貴重品たる所以ですわね」


初春「カツオ鳥の話が出てましたけど、他にもクジラや流木を目印にしてカツオを探すこともあるみたいですね」

御坂「そうね。それ全部、本命のカツオじゃなくてそのエサになるイワシを見つけるためのサインだけど」

佐天「喩えるなら白井さんに会いたい時は御坂さんを探せって感じ?」

初春「御坂さん=イワシ、で白井さん=カツオですか。でも白井さんじゃ一本釣りしても全然高級感が無いですけど?」



白井「一言余計ですわよ……。まあ私を捕まえたければ大量のお姉様を用意すれば良いって事ですの。ありえないですけど」








319: 獲物 2011/11/20(日) 01:50:26.61 ID:P55bsVWX0

                                         ☆

一方通行「………………」

打ち止め「ねえねえ……、どしたの?ってミサカはミサカは水槽を見て固まってる姿に疑問を覚えてみたり」

一方通行「……どうしたって、見てわかンねェのか? 多すぎる水槽の管理だ。ったく、ここはアクアトトかっつーンだよ!」

打ち止め「意味不明な単語を叫ばれても困るんだけど……。それにあの二人が『おさかなボケ』の度に何か持ってくるからね」

一方通行「誰もそンなボケ期待してねェだろ……。エサやらコケ掃除、水草のトリミング……ヤツら手間を考えちゃいねェ」

打ち止め「まあいつもはヨミカワがやってるんだけどねってミサカはミサカはあなたのイメージ崩れを防いでみたり」


一方通行「チッ……、それにしてもだ。スクミリンゴガイ、アメリカザリガニ、マドジョウ、金魚…………」

打ち止め「一般的な観賞魚は金魚しか居ないんだよねってミサカはミサカはチームの構成バランスを評価してみる」

一方通行「金魚も金魚すくい出身の和金だからセンター飾るほどの華はねェけどな。まあ他のヤツは完全に別ベクトルだが」

打ち止め「アメリカザリガニだって大人になったら真っ赤なヨロイみたいで絵になるよってミサカはミサカは反論してみる」

一方通行「イヤ、見てくれがどォって話だけじゃなく……、単純な価値観だが嫌われ者属性が強くねェか?」

打ち止め「あ、それはそうかも。特にスクミリンゴガイは稲の食害貝だもんね」


一方通行「ザリガニとドジョウも水域の環境悪化力が強ェしな。決して飼育種として人気が無いワケじゃねェが」

打ち止め「ヌマビルを飼ってる人が居るくらいだからこれくらい充分許容範囲かもってミサカはミサカは断じてみたり」

一方通行「まァゲテモノにはゲテモノで魅力があンだな……。気色悪けりゃ悪ィ程価値があるってンなら面白ェ」

打ち止め「生理的嫌悪感を快感に置き換えて理解するみたいな?ってミサカはミサカはフロイトかぶれを気取ってみたり」

一方通行「さァな。第一、ガキはヘビでもゴキブリでも平気で口に入れたりするし……、嫌悪感で纏めて語ンのは無理だろ」

打ち止め「そんなお子様見たこと無いよ…………。未就学児の居ない学園都市だからかもしれないけど」


一方通行「オレも詳しくは無ェが、一般のガキってのはママゴトのご飯をダンゴムシを集めて作るよォな蛮族らしいぞ?」

打ち止め「マルムシを食べるの??? 外の世界ってどうなってるの???ってミサカはミサカは驚愕を露わにしてみたり!」

一方通行「ママゴトだっつってンだろ。ありゃ外骨格ばかりで喰えたモンじゃねェぞ? ……とはいえ甲殻類ではあるンだが」

打ち止め「ダンゴムシがエビカニの親戚筋に当たるってこと……?ってミサカはミサカは嫌な予感を口にしてみたり」

一方通行「銀河系単位で遠い親戚だから気にスンナ。しかし面白ェ。同じ甲殻類でこォも嫌われ好かれが違うってのは」

打ち止め「嫌われる生き物の特徴って何なんだろうね?ってミサカはミサカは疑問を投げかけてみたり」





320: 獲物 2011/11/20(日) 01:52:59.75 ID:P55bsVWX0

一方通行「そォだな、あくまでもオレの意見として聞け。ヒトが特定の生き物に嫌悪感を覚える原因は主に3つ。

     ①危険生物、またはそれに類する特性、②外見、③食性を含む生 

     ①については解説の必要もねェだろォが有毒であったり凶暴であったり病原菌を媒介したり、人間に直接的な害を
     与える可能性のある生物をヒトは嫌悪する。猛獣や毒蛇なンかが思い浮かぶだろォが、皮膚病でボロボロの野良猫
     を見てカワイソウだと感じても抱き上げて頭を撫でてやろうとは思えねェだろ? ある意味極めて本能的な感覚に
     拠る嗜好だ。
     ②は所謂見た目。コレは推測だが、どれだけソイツの日常とかけ離れた姿をしてるか? が嫌いになるポイントだと
     思う。見慣れた環境の中に違和感を放り込むってヤツだ。室内犬などで見られンだが、芋虫や大型の鳥類に対する
     過剰な反応……咆え続け怯え続けるよォな、自分の知らない物を恐怖するって意味ではコレも本能的な感覚だな。
     体毛の極めて少ない種のネコが居ンだろ? 混乱すっから種名は言わねェがアレだって一見では嫌悪感を催しても
     致し方ねェ。同じ種類でも自分の知る姿と違っていれば起こり得るンで本能的ではあっても忌避の必要性の点では
     薄いと言っていい。
     ③だが、熊やサメのよォな凶暴な肉食種の事では勿論無く、屍食や糞食を主とする生物やそォいう死体や糞の傍で
     生活をする生物の事だ。コレには洞窟や沼地などのヒトが嫌がる場所に居るってだけで嫌われる生物も含まれる。
     コウモリは昆虫食の哺乳類だろ? 野生動物だから病原菌を持ってンだが実は危険性は他の動物と大差ねェンだ。
     暗くなると飛び回る、アイツらはたったそれだけの生 で必要以上に嫌われちまってる。他にもネコを飼った事の
     無いヤツが初めてその生 を見るとダメになる場合があるよォだな。用を足した後を舐めて掃除して、同じ口で
     飼い主の顔を舐めるとかな……。まァ、③については多分に後天的な、人間だからこそ感じる嫌悪なのかもな」


打ち止め「ん~……、考察してもらって悪いんだけど、それでエビとダンゴムシの好感度の違いを説明できるの?」

一方通行「……どォだろ? まず①についてはどちらも該当しねェよな」

打ち止め「②は微妙だよ? 沢山の脚がお腹の下でワッシャワッシャしてるのは同じなんだもん」

一方通行「そこはエビは食材として見慣れてる、って事で納得しろ。だが③も微妙だな……」

打ち止め「どっちも主に有機物を分解する掃除屋さんだもんね。ただ居場所が海中と落ち葉や石の下って違いがあるだけで」

一方通行「海中のエビの生 は意識されねェからかもな。それと見た目の大きな違いを忘れてンじゃねェか?」


一方通行「以上のよォに実際エビとダンゴムシは食用か否かくらいしか差がねェワケだが……、ココで悪い知らせがある。
     大抵のダンゴムシは火さえ通せば食っても大丈夫なンだよ。加熱すると殻の中の水分が膨張して身が弾けるから
     食べ時も解りやすい。まァ美味くは無いらしいが、エサを腐葉ではなく魚肉などにすればこの点も改良出来るかも
     知れねェ。どちらも食える、となると両者は益々違いが無くなっちまうが仮にダンゴムシが常食として流通しても
     生物として人気には成り得ねェだろォ。根本的にダメなンだよなァ……。

     エビにあってダンゴムシに無いもの、それは眼だ。別にダンゴムシには眼が無いってワケじゃねェが小さ過ぎる上
     上から見下ろしても判らねェだろ? ヒトにとって生物の眼はソイツが何を考えてンのか推し量る鏡だからな。
     たとえ複眼のよォなモノであってもハッキリ判別出来る眼のある生物には気持ちを入れやすいンじゃねェか?
     その意味で、大抵のエビの眼は飛び出してンだろ。どっから見ても判る大きな眼が両者の扱いの根拠だって話だ」


打ち止め「ん~……でもでもさ、眼が原因だとしたら大きな眼のダンゴムシが居るなら人気者になれるって言うの?」

一方通行「じゃねェの? まァソレこそ個人差がデカいだろォがな。……、眼のデカいダンゴムシの例を挙げておくか」


一方通行「そもそもダンゴムシっつーのは等脚目、その多くは海に棲む種なンだが……、防波堤で見かけンだろ? 超高速で
     超集団で穴から穴へ移動するヤツらを。そォ、フナムシなどに近い仲間って考えればイイ。他にはタイの口の中で
     生活するタイノエや、クワガタムシそっくりな外見を持つウミクワガタなどが含まれンだが、等脚目の多くの種は
     ダンゴムシがそォであるよォに見た目や生 で嫌われる場合が多い。まァ先に出たタイノエに限っては割と刺激の
     強い生 だから仕方ねェ気もするが……。
     そンな等脚目はその殆どが全長1cm以下なンだが最大種はその限りでは無ェ。奇妙な深海生物の中でも異彩を放つ
     メキシコ湾海底に棲む世界最大のダンゴムシとも言われるダイオウグソクムシの事だ。最大体長50cm、体重1kgと
     桁外れの体を持つコイツは深海生物だけあって詳しい生 は未解明なンだが日本近海の近縁種、オオグソクムシの
     生 から察するにやはり死んだ魚などを食う海底の掃除屋なンだろォ。だが等脚目の中では圧倒的に人気者だ。
     その秘密がオレはダイオウグソクムシの特徴の一つであるデカい複眼なンじゃねェかと思うンだが、コレは写真を
     見ねェと判ンねェかもな。SFの異星人か新型のモビルスーツか? って顔付きだから一度確認してみろ」




321: 獲物 2011/11/20(日) 01:59:09.04 ID:P55bsVWX0

打ち止め「ミサカはダイオウグソクムシを知ってたから別に確認しなくてもいいよね?ってミサカはミサカはあうあうあうあ」

一方通行「イヤならムリすンな。ありゃ見ようによっては恐怖心すら覚えかねない容姿だし」

打ち止め「ふ~……、ん?? でもあなたの理論で行くとその恐怖心は危険性でも生 由来でも無いよね?」

一方通行「見慣れたダンゴムシが50cmもの巨体になってたら怖くて当然だろ。②の外見、日常との違和感が原因なンだろ」

打ち止め「でも割と人気があるんだよねってミサカはミサカは再確認してみたり」

一方通行「あァ。個人差としか言い様がねェが……、捉え方にも拠るンじゃねェの」


打ち止め「光の届かない暗部で死体処理をする、うすらデカくてキモイ生物って考えたらあの眼は怖いね……」

一方通行「世界最大の等脚目であり甲殻類最大級の複眼を持つ深海生物として見ンなら……、ソレでも嫌いなヤツは嫌いかね」

打ち止め「まあ、ダンゴムシを食べる日が来なければミサカはなんでもいいけどねってミサカはミサカはぶっちゃけてみたり」

一方通行「フン。ちなみにだが、フナムシやダイオウグソクムシはマズいらしいがオオグソクムシは美味いらしいぞ?」

打ち止め「グソクムシ恐るべし……。鎧兜を意味する具足を名に冠するだけはあるね」

一方通行「そりゃどォいう感想だ? ……にしても、今日は随分とグダグダな話になっちまった気がすンだが」




番外個体「嫌われ者の第一位だからしょうがないんじゃなーい?」

一方通行「ア゛? ……テメエ、いきなり出てきて何が言いてェ」

芳川桔梗「この子は貴方の挙げた嫌われ生物の3つの原因の事を言ってるのよ。ちょっと考えてみてくれる?」

打ち止め「性格は凶暴、異常な白さと細さで異彩を放つ見た目、食性は…………、嫌われ属性コンプリート???」

一方通行「………………そォかよ、そりゃ結構。ヒトに好かれるために生きちゃ居ねェし、問題ねェよ」

打ち止め「だ、ダメだよ! ええと、食べたら美味しい……、は使えないから、えーと……、眼!! 眼を強調しよう!」


芳川桔梗「眼、つまり明確な意思をドンドン見せていこうってことかしら? それはいいアイデアかもしれないわね」

番外個体「えー、何をしたいのか解らないあやふやさも人間の本質の一つだと思うけどなー。この男も含めてさ」

打ち止め「もっと素直になって気持ちを正直に訴えれば皆もっと好きになってくれるよってミサカはミサカはアドバイスする!」


一方通行「ンな事ァどォでもいい、つってンだろ。……ソレよりテメエら。今日のオチはどォするつもりだ?」







炊飯器 「ポン ポン ポン   ポン   ポン   ポポポポン」




一方通行「?? オイ……、この破裂音はまさか……?」

打ち止め「今日の話でそんな音を立てる物って……まさか??????」

番外個体「うふ☆ たーっぷり召し上がれ、このミサカの愛情料理だよん」




一方通行「テメエらの言う明確な意思を以って、断る!!!」





  ~おしまい~



327: まぎらわしい 2011/11/27(日) 11:23:46.78 ID:EA0k90rA0


 


「ふう……………………、ようやく水槽に新しい仲間を投入完了っと! こんなに大仕事になるとは思わなかったぜ」

「大体とうまが急ぎすぎるからなんだよ! 水あわせはしっかりやっておかないと大変なことになるのかも!」

「水槽と投入する魚が居る水の、水質や水温の違いに魚を慣れさせる『水あわせ』。今回は水槽の水を魚が居る袋に入れたけど」

「強い魚だったら温度あわせだけでも良いかも。その場合は魚をビニール袋に入れてそのまま水槽に30分くらい漬けておけばいいんだよ」


「で、その水あわせでお前が水をこぼしちまうから……」

「それはだって、ポンプで吸い上げる勢いが強すぎたからなんだよ! でも、確かに私の不注意だったかも……」

「え、いや、そこまで落ち込まなくても。……、オレだって舞い上がりすぎてエアレーションのスイッチ付け忘れてたし」

「あ、そうだった! 袋から出したお魚はもう水槽中に散らばってるんだから早くブクブクしてあげないと!」


「了解! ぽちっとな」カチッ ブクブクブクブク…

「これで本当に完了だね。で、今回新しく水槽の仲間になったのは……、とうまが愛して止まないナマズの仲間なんだよ」

「本当はマナマズが良かったんだけど、主役のメダカの天敵だからな。で、妥協してオレが選んだのが」

「日本産淡水魚、ナマズ目の小型種『アカザ』だね。見た目は確かにナマズなんだけどなんだか気持ち悪かったんだよ」


「嫌なコト言うなよ。……ま、魚とは思えないようなウネウネとした泳ぎっぷりといい赤黒い体色といい、まるでヒルだけど」

「今回は5cmくらいのサイズの子を3匹手に入れたんだよね。ところで実はアカザは軽い絶滅危惧種だったりするんだけど」

「……大切にしないといけないな。エサもメダカ用とは違うものを用意しないといけないし」

「うんうん。メダカを食べるほどのサイズじゃないとは言っても立派な捕食魚だから、生餌が用意できれば十全かも」


「生餌……、水生昆虫やミズミミズを自然界で入手すんのは結構な手間だよなあ。とりあえず乾燥赤虫で様子を見るけど」

「そういう人工餌でも慣れれば食べるみたいだよ。でもミズミミズは天然水で飼育環境を作ってる以上、既に発生してるはず」

「そうなの? じゃあエサいらず……、って楽をしようとしたらイカンですよ。地味な水槽を彩る赤い三連星はオレの夢なんだ!」

「……でも、とうまの夢のアカザは既に見当たらないんだけど。いつもの水槽と何にも変らないよ??」




328: まぎらわしい 2011/11/27(日) 11:25:26.60 ID:EA0k90rA0

「へ?? あれ?? ちょ、どこ行っちゃったんだよ! …………え~~~、全然見つけられねえぞ??」

「ん~、とうま。アカザってナマズなワケで、夜行性なワケで、マナマズ以上に臆病なワケで、平ぺったくてウネウネでしょ?」

「はっ! ということは……、例えば水槽の中の……この石をそーっと持ち上げると……、いた!」

「どうやら明るい時はそういうところにずっと隠れて過ごす生 なんだよ。活動するのは誰も見てない真っ暗闇だけなのかも」


「…………えーと、ということはアカザ導入で水槽の華やかさアップ作戦は……、失敗?」

「答えを出すのはまだ早いんだよ。あ、ほら! メダカがエサの食べ残しを探して石の下をつんつんしてるでしょ?」

「ふむ? …………あ、アカザが飛び出てきた!」

「あんなふうに隠れ家の周りで騒がれると起き出して来て、ウネウネしばらく泳いだ挙句また隠れるんだよ」


「主役のメダカの都合で引っ張り出されて、大した用事も無いからすぐ退場するアカザ……。不憫だな」

「……なんだか私は却って、この気持ち悪い子に親しみを感じてきたんだよ。ちなみにアカザの名前の由来は覚えてる?」

「え~っと、アカザのアカは体色の赤で、ザは刺すの意だろ? かなり鋭いトゲを持ってるらしいな」

「背ビレと胸ビレにね。弱いけど毒もあるから刺されたらかなり痛むかも。まあ素手で触る機会はあまり無いけど」


「へえ~。男の子にとっては、実は有毒生物って人気があるんだぜ? まあアカザをそう認識してるヤツは流石に居ないか」

「キングコブラとかアンスラックスとかタランチュラとか、ちょっとワルなボーイが好きそうなイメージかも」

「ふむ。例えばTシャツの柄にアカザ……、赤いナマズ柄って一周回って新しいかもな」

「全く理解出来ないセンスかも……あ、ところでアカザは底棲魚に準じるから一つ注意しなくちゃいけないことがあったんだよ!」


「ん? 現状の水槽環境では何かアカザにとって不都合があるかもしれないのか?」

「というか、水質と底環境にかなり神経を使う必要があるのかも。アカザは汚れに弱いんだよ」

「ふうん? まあ、今回導入した濾過装置で日常はカバーして、割とこまめな水替えで行けるんじゃないかな」

「こまめ、って一口に言うけど、大変でも一週間に一度は水槽の水を三割くらい入れ替えるつもりで居たほうが良いかも」


「ふむふむ。でも水の替え過ぎは水質の急激な変化によるショックの原因になるから加減が大事なんだよな」

「だね。目安としては濁りや黄ばみが視認出来ない程度を維持すればいいと思うよ」

「……にしても、手間の増え方の割に得る物の少ない新キャラ導入だったワケで……。もう一種類くらい何か入れようかな」

「あまり種類を増やしすぎると、水槽のまとまりが無くなっちゃうからほどほどにね。長くなるから今回はオチ無しなんだよ!」








329: まぎらわしい 2011/11/27(日) 11:28:11.03 ID:EA0k90rA0

                                       ☆

御坂「いい加減にしなさいよ黒子! 毎回毎回アンタの悪趣味には付き合ってられないわよ!」

白井「今回ばかりは私も主張を曲げるわけには行きませんの! 絶対間違いないんですの!!」


佐天「へ? 初春、あの二人どうしちゃったの? 聞いてる限りではまた白井さんが変 行動でもやらかしたみたいだけど……」

初春「あ、遅かったですね佐天さん。……えーと、今日はそういうんじゃないんですよ」

御坂「佐天さん、ちょっと聞いてよ! 黒子のゲテモノ趣味は判ってたけどさ、ちょっと今回のは聞くにも耐えないんだから!!」

白井「こちらこそ望むところですの。佐天さんに判定してもらいましょう。……佐天さん、ハサミムシは美味しいと思いますわよね?」


佐天「へ? …………ハサミムシ? ってアレですか。石の下や枯葉の下、じめっとした場所にいる小さな虫?」

御坂「大きさなんて問題じゃないわよ……。あの姿は何なの!? 羽根の無いコオロギの胴体、尻尾の代わりに大きなハサミって!!」

初春「確かにまあ、異形生物レベル5って感じですね。生ゴミ置き場に湧いてるし……、正直あんまりイメージ良くない虫です」

白井「私も所構わず捕まえたハサミムシを食べる気にはなりませんわよ。……そうですわね、枯れる川の話でもしましょうか」


御坂「唐突に話を変えて何のつもりか判んないけど、枯れる川って、大河川の支流みたいな季節によって水が無くなるトコのこと?」

白井「ですの。本流からの水の供給が充分長期間であればその川の生物の濃度、つまり生物の数は本流並みになりますわよね?」

佐天「ん~? ……要するに水と一緒におさかなも流れてきて、支流に留まってるってことですか?」

初春「比較的流れもゆるい支流で本格的な魚獲りが楽しめるのはそういう場合なんです。……でも枯れちゃうとなると」


白井「では段階的に川の枯れる様子を紹介いたしますの。まずは本流の水量が減少して支流への水の流れが無くなりますの。
   支流が本流の水量調整装置として機能、つまり洪水などを防ぐため水位が上がり過ぎないよう逃げ道になっている場合
   その必要が無ければ当然水が行かないということでして、具体的にはそれぞれの川底の高さを調整しているわけですの。
   第一段階で流れを失った支流ですけど、まだ充分な水量がありながらさっそく犠牲になるおさかなが。
   アユなどの本来急流に棲む魚種は必要酸素量が多く、水流によるエアレーション無しでは酸欠になってしまうんですの」

佐天「ふむふむ。つまりそういう川ではアユが獲り放題なんですね?」

初春「佐天さん……、川で死んでる魚は食べないほうが良いです」

御坂「私もオススメしないかな。で、黒子。そこからどうハサミムシの味に繋げるつもりなのよ?」


白井「お姉様、そう答えを急がずに。……続いて第二段階、支流は水の供給を失いましたが川なので当然下流へと水は流れていきますの。
   ですから水位の低下がゆっくりと続くのですがこの段階での犠牲者は大型魚。たとえば50cmを越えるような体高のある大型のコイ。
   そんな大魚が浅瀬に追いやられ乾燥して死んでいきますの」

初春「何十年も生き続けたコイがたまたま支流に取り残されたってだけで……。諸行は無常なんですね」

御坂「水位が低下するとサギやカワセミみたいな魚を捕るのが上手い鳥が大喜びでやって来るし。自然のサイクルではあるんだろうけど……」

佐天「でもまだ始まったばかり。ここからが本当の地獄、ですよね?」



330: まぎらわしい 2011/11/27(日) 11:30:18.79 ID:EA0k90rA0

白井「佐天さんの仰るとおり。第三段階に入りますと更に水量が減り川底が露出してきます。水は池のように浅く点在するばかり。
   30cm程度のコイや大型の底棲魚、底棲と言っても縄張りを作るタイプのドンコやカジカなどが耐え切れず死んでしまいますの」

御坂「その状 の川を一度見たことがあるけど酷いもんだったわよ。網漁で大量の魚を一度に捕まえる様子ってテレビで見た事ない?
   ちょうどあんな感じで川魚がバチャバチャと残り少ない水場に集まってさ……。カワイソウだけどどうすることも出来ないのよね」

初春「この段階でサギやカワセミに代わって、カラスが大群でやってきます。特別な技が無くても好きなだけ魚が捕まえられますからね」

佐天「そりゃそんなに密集してるんならそうだろうね……、見たくない光景だけどさ」


白井「そして第四段階……。いよいよ川だった場所は白い石の平原となりかわり、水場は探せば何とか、それも水溜り程度ですけれど。
   そこに至るまでに殆どの魚は死んでいて水溜りにもぎっしりと魚が浮いているのですが、まだ全滅ではないんですの。
   例えばマナマズやアカザなどのナマズ類、カマツカやドジョウやヨシノボリ、タイミング悪く孵化してしまった色々な魚の稚魚
   そしてスジエビやテナガエビやヌマエビなどの甲殻類がしぶとく命を繋いでいますの」

御坂「もっと大量の魚が死んでるはずなんだけど、思ったほど目には入らないのよね。カラスや、もしかしたら野犬が食べるからかな?」

初春「でも鮮魚店の香りはぷんぷんしますけどね。命の儚さを知る教育に最適な現場だと思います」

佐天「初春、前半のセリフは聞かなかったことにするよ。……そしてとうとう完全に枯れるんですね」


白井「まあそうなんですけどその前に、非常に少ない水量で割と魚が生き残っていられるのは何故だかお判りになります?」

御坂「今の黒子の質問は、酸素の絶対量が足りないはずの水溜りで、ありえない数の魚が生きていられる理由は何か? って事ね」

初春「ん~、伏流水みたいなものですか? 地下を流れる目に見えない川が水質や酸素を最低限保証してるからっていう……」

佐天「あ、そっか。川底って別にコンクリ床とかじゃないから見えない部分にも水の流れはあるんだ」


白井「と言っても多くの魚は地下深くまで潜ることは出来ませんの。最終段階、水溜りすらも消失してしまえば全てが終わり。全滅ですの。
   綺麗に石だらけと化した川底を歩いてみましても、土の香りがするばかり。死んだ魚なんて少しも見つけられない事でしょう。
   さて、最後まで水溜りとして命を繋いでいた場所もすっかり乾いてしまっているのですけれど、そこの石をひとつ持ち上げてみると
   『ああ、ここは川原だったんだな』と思えるはずですの。ちょっぴり湿ったその石の下には水溜りで一番最後までしぶとく生き残った
   エビ類を目当てに大量のハサミムシが……、というワケですの。

   つまりハサミムシはハサミムシでも川原の石の下に居るハサミムシはエビをエサにしているので美味しいはず。異論は無いですわね?」



初春「通常の腐葉や生ゴミに群がる、ダンゴムシみたいな食事をしてる個体ではなくて川原の……。いや、それでもムリです!」

御坂「当たり前よ! 長々と講釈垂れて何なのよその結論は!! エビを食べたからってあのキモ虫がエビ味になる訳ないでしょうが!」

白井「な……、わ、判って下さいませんのお姉様? …………いえ、今回判定するのはあくまで佐天さんですの!」

御坂「コイツに言ってやってよ佐天さん。遠慮は要らないから本心でガツンとキモイならキモイって!」



佐天「なるほど、そういうことだったんですか。…………私、長年の謎がやっと解けた気がします」

御坂「……はい?」 ナニガ?




佐天「ツインテールがエビ味なのは川原のハサミムシだったからなんですね!!」

白井御坂初春『それ何の話???』







331: まぎらわしい 2011/11/27(日) 11:33:46.93 ID:EA0k90rA0

                                         ☆

打ち止め「ねえねえ、水槽の金魚の様子がおかしいの、ってミサカはミサカは急いで見て欲しいと要望する!」

一方通行「ンだァ? オカシイだけじゃ判ンねェだろ。具体的にどんな異常があンだよ?」

打ち止め「え? ええと、その……、簡単に説明できないから見て欲しいって言ってるのにって……、ミサカはミサカは涙目になってみたり」

一方通行「…………、ったく面倒臭ェ。―――――――――――――――――――――― で、オカシイってのはどの金魚だよ?」


打ち止め「この水槽の、ちょっと大きめの金魚なんだけど……」

一方通行「……ン? 泳ぎが不安定っつーか、確かに多少バテてンな。体表に若干スレがあンのも気に掛かるが……いや、コレは……」

打ち止め「どうかな? 原因は突き止められそう?」

一方通行「オマエ、この調子悪そうなヤツが他の金魚に追い回されてンの、見たことねェか?」


打ち止め「うんうん、どうして知ってるの? 確かに元気の無さそうなこの子をもう一匹がしつこく追い回してて、すごくカワイソウで…」

一方通行「ンじゃ心配いらねェよ。こいつはおそらく繁殖期だ。追ってたのはオスで、逃げてたコイツはメスってだけの話だ」

打ち止め「そうなの? ならメスのこの子が疲れちゃってるのは産卵に体力を使った為なのかな」

一方通行「金魚の繁殖行動は、オスがメスに産卵を促すべく執拗に追い掛け回す事の繰り返しだ。メスが逃げ切り続けたら繁殖出来ねェぞ?」


打ち止め「ふ~ん。深く考えちゃうとイケナイ話題な気がしたからココで納得しておくね、ってミサカはミサカは……、でもタマゴないよ?」

一方通行「水草の陰にでも産み付けてンじゃねェの? それか既に腹ン中か……」

打ち止め「え……、金魚もメダカと同じく自分のタマゴを食べるの!? それじゃ頑張った意味が無いじゃん!!」

一方通行「同じ水槽に居る限り口に入れば稚魚すら喰うぞ? まァ増やそうと思わない限り水槽で金魚は増えねェ、つーことだな」


打ち止め「むむ……、新たな課題は出来たけど当面の心配はとりあえず去ったから……、差し引きゼロかな」

一方通行「謎の損得勘定すンじゃねェよ。まァしかし、いつもと様子が違うのを発見出来なきゃ何も手が打てねェワケで」

打ち止め「だよね。ミサカが毎日観察してたから金魚の繁殖期に気付けた。継続は力なりィ! ……まあ最初は病気かと思ったんだけど」

一方通行「もし異常の原因が病気だったとしても、早期発見が出来れば治療が可能な場合もある。同じく観察が重要だろォよ」


打ち止め「……そういえばさ、魚の病気の話ってあんまりしてないよね?ってミサカはミサカは確認してみる」

一方通行「コイヘルペスウィルスの話では名前だけだったか? ……そォかもしれねェな」

打ち止め「今日はおさかなのいろんな病気の話を今後の為に聞いておきたいな、ってミサカはミサカは頼み込んでみたり!」

一方通行「ンじゃ、金魚が罹りやすく症状が重めのヤツをいくつか紹介しとくか。解説に移ンぞ」





332: まぎらわしい 2011/11/27(日) 11:38:00.78 ID:EA0k90rA0

一方通行「病名や症状を紹介する前に、一つ最も基本的な事実を覚えとけ。自然界でも水槽内にも生体自体にも、病気の原因は常に存在する。
     細菌やウィルスや原生生物や寄生虫の全く存在しない環境なンぞ遺伝子操作でもするよォな施設以外では実現不可能ってワケだ。
     つまり、魚は常に罹患するリスクを持つ。が、全ての魚が病気になりゃしねェよな。また自然界で病気による魚の大量死なンて
     あまり聞かねェだろ? 有毒物の流出や水量低下による酸欠ならよくある話だが、養殖物以外では病気はメジャーな死因じゃねェ。
     水槽飼育では逆に、魚を病死させたことの無い飼い主が神扱いされるくらいで圧倒的に病死が多いンだが……、その理由は単純だ。
     飼育水の汚れや水温、水質の急激な変化といった悪環境。音や光や衝撃で魚を驚かせる、などの直接的干渉。相性無考慮の混泳等
     水槽ってのは魚にとってストレスの多くなりがちな場所なンだよ。で、それが引き金となって病気が蔓延する、と。
     中でも特に飼育水だな。エサのやり過ぎや食べ残しの掃除し忘れで病気のリスクは簡単に跳ね上がる。定期的な水替えは勿論だが
     日頃から水質や温度を一定に保ち、有機物が貯まりやすい底の掃除には気を抜かねェ事が肝要だ」


打ち止め「食べ残しのエサは細菌の培地にもなるし、魚にとって有毒な汚れの素にもなるしね。でも水温を一定っていうのは……」

一方通行「ウチの水槽にも夏場の冷却用にファンと、冬場用にヒーターが付いてンだろ。あとは直射日光と外気を避ければ問題ねェよ」

打ち止め「ふむふむ。あとびっくりさせちゃいけない、みたいなこと言ってたけど、どうしてなの?」

一方通行「驚いて急発進して壁面にでもぶつかれば体表に傷が付くだろ? ウロコが剥がれれば寄生虫が喰い付くし、傷が深ければ
     そのまま細菌の培地だ。またショックを与え続ければエサを喰う量も減って体力が落ち、結果病気に罹りやすくなンだよ」

打ち止め「ふうん。思ったよりデリケートな子たちなのねって、ミサカはミサカは和金を見直してみたり」


一方通行「魚は繊細で当然だろォ……。ンじゃそろそろ、具体的にどンな病気に罹ンのか説明すンぞ。まずは最もメジャーなヤツから。

     『白点病』

     原因は白点虫とかイクチオフティリウスとか言う繊毛虫類……、平たく言えば原始的な虫の粘膜層への寄生だ。
     症状としては文字通り、不規則な白い点がヒレやエラ付近に見つかり出す。この一つ一つの点が白点虫の成虫なンだが
     悪化するとやがて点は体中に無数に増えていく。感染した金魚は患部が痒いのか底砂に体をこすり付けるよォなしぐさをしたり
     活性を下げじっと動かない時間が増えるよォになっていく。この病気で直接死に至ることはまず無ェが、エサも喰わなくなるから
     衰弱して抵抗力が落ち別の病気で、って所謂万病の元だな。まァ、白いホクロ状の症状を見つけたら早めの対処を心掛けろよ」


打ち止め「白い黒子に気を付けるのねって……、あれ? ねえ、こっちの子の顔に付いてるのって……、もしかしてそれなの??」

一方通行「ン? コイツか? コレは病気じゃねェ。この白点は繁殖期のオス金魚の特徴『追い星』つー……、発情の証だな」

打ち止め「……つまり、さっきあなたが繁殖期だって断定したのはその追い星?があったからなのね。でも紛らわしい点々……」

一方通行「金魚の場合、追い星が出ンのは胸ビレとエラだけで割と規則的に並ンでるから見分けンのはワケねェよ。それに、衰弱してるか?」

打ち止め「あ、元気にメスを追い掛け回してたっけ、ってミサカはミサカは思い出してみたり」

一方通行「治療行為が魚体に与えるダメージは小さく無ェ。誤診で魚を傷付けてちゃ意味ねェから注意しろよ? さて、話題を変えンぞ」



一方通行「次の病気だが、原因菌の感染箇所によって呼び名が異なるンでとりあえずの呼称として捉えろ。

     『尾腐れ病』『ヒレ腐れ病』『エラ病→エラ腐れ病』『口腐れ病』

     原因となるのは主にフレキシバクター・カラムナリス菌の感染、故に総称としてカラムナリス症と呼ばれる事もある。
     症状は字面を見りゃ解るとおり。尾腐れ病なら尻尾が先端から白っぽく変色し、次第に腐ったよォに脱落する。病状が進行すると
     骨組みだけ残して、或いは骨ごと尾が無くなっちまう。まァ箇所が尾やヒレ、或いは口ならば即、命に係わることは無ェかもだが
     エラは呼吸器だろ? 腐って脱落したら確実に死ぬ。加えて悪い事にエラはエラ蓋で覆われてるから発見が遅れやすいンだ。
     金魚じゃねェが重度のエラ腐れ病のナマズを見た事があンだが、エラ蓋からはみ出た白っぽく変色したエラが順次溶けるからなのか
     飼育水自体から生臭い匂いが立ち、その中を時折狂ったよォに回転しながら高速で壁面にぶつかり続けてたな……。
     そのナマズもそォだったらしいが、発見した時には既に手遅れであることの多い注意すべき病気だな」


打ち止め「こ、怖い病気って事は解ったけどさ、注意って何を気をつければいいの?ってミサカはミサカは尋ねてみたり」

一方通行「この菌は傷口から生体内に進入して蛋白質を分解するンで、まァ……魚にケガをさせンな、ってとこか?」

打ち止め「ふむふm……でもでもでも、エラ腐れの場合ってエラ蓋で保護されてるエラはそもそもケガしにくいんじゃないの?」

一方通行「エラに食いつく寄生虫ってのが居ンだよ。その傷口から細菌感染しちまうってワケだ」

打ち止め「なるほどね……。せめて早期発見する手は無いのかな、ってミサカはミサカは絶望するのはまだ早いって思いたかったり!」

一方通行「初期の呼吸困難の魚は溶残酸素の多い場所に留まりがちになったり、エサを吐いたりする。それらしい兆候を見つけたらそいつの
     エラ蓋を開けてエラが変色していたり怪しい付着物が無いか確認すれば見つけられなくもない。まァ、運が良ければ、だがな」




333: まぎらわしい 2011/11/27(日) 11:45:59.62 ID:EA0k90rA0

打ち止め「しっかり予防するのが現実的な対策かな……、ってミサカはミサカは考えを改めてみたり」

一方通行「フレキシバクター・カラムナリス菌は水質悪化で増殖する。また死体や酸化したエサも菌を増やす一因になる。言わずもがな
     尾腐れで脱落した組織片は超危険物だ。とにかく日頃の水質管理と掃除である程度は予防可能だろォし、感染魚が出たとしても
     ソイツを隔離して治療しつつ、飼育水を大幅に入れ替えることで感染拡大は割と防げンじゃねェか?」

打ち止め「ほうほう。それで、白点病や尾腐れ病の治療ってお薬とか使うのかな?」

一方通行「ここでは具体的な治療方法は言及しねェ。状 によって対処の仕方が異なるし、さっきも言ったが治療行為は魚へのダメージだ。
     あくまで自分で調べるなり詳しいヤツに頼るなり、責任と覚悟を持って行うべきだと思うからな。
     ただ、薬剤を使うにしても塩水浴するにしても出来る限り魚体へのストレスを低減させるべく、水槽と温度を合わせておくとか
     物理的なショックを与えないよう慎重に注水するとか、あとエラ腐れの魚は特に酸欠だろ? 治療用隔離水槽のエアレーションを
     しっかり準備するとか、必要な手間も多い。病気で抵抗力の落ちた金魚はちょっとした刺激が命取りなンだ。

     だからコレだけは言っておく。病気を疑われるよォな魚を見つけても絶対に焦るな! 落ち着いて病名を特定して適切な対処法を
     丁寧に確認するのが一番効果的なンだよ。急いで大雑把に治せるモンなぞありゃしねェと思っとけ」








芳川桔梗「解説お疲れ様。まだ二種類の病気しか紹介していないようだけど、キリがいいんじゃないかしら?」

一方通行「体が膨れ上がりウロコが毛羽立つ『松かさ病』や、眼が飛び出し時には脱落する『ポップアイ』にも触れたかったが……」

打ち止め「ミサカの優秀な頭脳もパンク寸前なので今日はこの辺で勘弁してあげるよ! ってミサカはミサカは嘯いてみる」

一方通行「……傲慢に謙遜してンじゃねェよ。ところで、番外個体は居ねェのか?」


芳川桔梗「あの子なら都市伝説の検証に出かけたわよ。なんでもエビ味のツインテールが居るとか居ないとか?」

一方通行「相変わらず意味が判ンねェにも程があンだろ……。何をどォすりゃ検証出来ンだ?? 情報に踊らされてンじゃねェか」

打ち止め「噂ってそれこそ伝染病みたいなものだから、純粋培養のあの子は弱いんだよってミサカはミサカは出来の悪い妹を心配してみたり」

芳川桔梗「太陽の光を浴びて世間の風を受けて、日頃から抵抗力を付けるように心掛けてあげなきゃダメね。手間の掛かる子だわ」フフフ







黄泉川愛穂「……水槽の汚れも自虐ボケも、ちゃんと回収しないと気持ちが悪いって例なんじゃん?」




  ~おしまい~

342: Leftovers 2011/12/09(金) 23:01:32.98 ID:s8cMJNCn0

                                        ☆

【第三の】


「…………、なあインデックス」

「どうしたのとうま?」

「コレ、今まで言っていいかどうか迷ってたんだけどさ……。やっぱりこんなの不自然だろ?」

「ほ? 何の事を言っているのかさっぱり判らな……、あ」








姫神「……。」









「なあ姫神? いつも、せっかくインデックスを訪ねて来てくれてるんだから、お前も参加してくれていいんだぞ?」

「あいさは、おさかな話をするときは毎回必ず遊びに来てくれてるけれど、全然話に入って来ないかも」



姫神「……。気にしないで。私。楽しんでるから。」



「そ、そうか? ん~、無理強いする訳じゃないし、姫神がそれでいいなら上条さんも構わないのですけれども……」

「とうまのツッコミ所満載のおばか発言に我慢できなかったら何時でも口を挟むんだよ! じゃ、始めるんだよ」




    アーデモナイ コーデモナイカモ! フコーダー  









姫神「下手な演者よりも最前列の観客を選ぶ。それが私の正義。……開き直ってるわけじゃない。」




343: Leftovers 2011/12/09(金) 23:03:18.17 ID:s8cMJNCn0

                                         ☆

【オーナー】

「とうま。そう言えば、いつもお世話になってるあの大きなお店の名前って何て言うのか知らないんだよ」

「あの水槽屋な。ん~、レシートに店名がプリントされてたような……」 ゴソゴソ


「あったあった。……んと」



    ~エディ・アレックスのアクアホリックショップ~












麦野「そりゃどこのヴァンヘイレンだっつーの!!!」



絹旗「え……、突然どうしたんですか麦野?? 超意味不明な…………ヴァン、何ですって?」

浜面「確かそいつは大昔のロックバンドの名前…………だったような。定かじゃねえけどよ」

滝壺「ごめん、麦野。フォロー出来ない」



麦野「…………違うもん。年寄り臭くないもん。ハードロックカッコいいもん」 ズーン





滝壺「(ヴァンヘイレンより私はランディローズ。コレは譲れない)」



344: Leftovers 2011/12/09(金) 23:04:37.25 ID:s8cMJNCn0

                                            ☆

【お嬢様の水槽】

初春「お二人もおさかなを飼ってるって設定ですけど、確かあの寮はペット禁止のはずですよね?」

白井「設定って何のことですの? ソレはともかく初春の言うとおり、あの部屋には水槽は置いておりませんの」

御坂「他の学校の寮でも原則ペット禁止が多いんだろうけど、みんな普通に黙って飼ってるわよね。でもウチの場合は……」

佐天「あの寮監さんが居ますからね……。でもじゃあどうやっておさかなを?」


白井「学内の施設を使わせていただいておりますの」

御坂「水着モデルのときの湾内さんと泡浮さんって覚えてない? あの子たちに頼んでるのよ」

初春「読めない名前の代表格ですよねー。覚えてますよ。水泳部の方ですよね?」

佐天「え、ってことはもしかしてプールでおさかなを飼ってるんですか??? スケールが違いすぎます!」


345: Leftovers 2011/12/09(金) 23:05:44.72 ID:s8cMJNCn0


白井「そんなわけ無いですの。プールは水抜きして掃除して消毒しますから」

御坂「ただ、使ったあとの水を排水する時に常盤台では工場廃水処理施設並みの処置をするのよ」

佐天「DNA情報漏洩対策ですか? 話には聞いていたけど随分神経質なんですねえ」

初春「それはともかく、結構大掛かりな設備なんでしょうね」


御坂「そうね。良く知らないけど、中和と物理ろ過、生物ろ過用にそれぞれタンクがあって順番に排水が浄化されていくみたい」

白井「そして最終チェックとして……、処理水を通し続ける水槽内で魚を飼い、異常が無いか確認するんですの」

佐天「炭鉱のカナリアですか!? あ、でもそもそも大した毒性は無いんですよね?」 プールデスシ

初春「むしろどんな天然水よりも安定した上質な水が出来上がりそうです」


御坂「うんうん。それに更にその処理水は一時的に屋外の溜め池に行くんだけど、そこにも大きな錦鯉がたくさん泳いでるの」

佐天「念には念を入れて、ですか……。それで結局、お二人の水槽はどこに?」

白井「溜め池に水を送る施設内ですの。年中20℃の水が使い放題なので、水槽内に水を送りっぱなしにしても平気なんですのよ」

初春「ふむ、ふむふむふむ。……ふむ!」


佐天「水替えも温度管理も必要ないし、良い環境ですねー、……って初春? どした?」



初春「マネーの香りがしませんか佐天さん!? 『お嬢様のダシ汁でまるまると育った鯉料理のお店』 絶対流行りますよ!!!」

御坂「…………それ、変 を見つけて排除する処理施設?」


346: Leftovers 2011/12/09(金) 23:07:11.48 ID:s8cMJNCn0

                                           ☆

【禁断の考察ネタ】

佐天「あのさ、初春。こないだの考察の続きなんだけど……」

初春「このあいだのって、御坂さんの電撃の槍の問題ですか? あれなら解析不能って結論が出たじゃないですか」 カチャ

佐天「いや、ね。そうなんだけどさ。やっぱ中途半端じゃ納得が行かないじゃん?」

初春「気持ちは判りますけれど……。何か新たな切り口を見つけないと、結局同じ事の繰り返しになりますよ?」カチャカチャ


佐天「そう。電撃の槍が光の速さで飛ぶ理屈を、真正面から考えようとしたから行き詰ったんだよね。だから今回は趣向を変えるよ!」

初春「……へえー。何だろー、楽しみですー」 カチャカチャ

佐天「全然乗り気じゃないよね?? とりあえず鯉料理の店プラン練るのは今度にして、一緒に考えてよ。お礼もするからさ」

初春「お礼? じゃあ今度『佐天さんの手作りいちごおでん』、作って下さいね。それで手を打ちましょう」


佐天「オッケーオッケー任せときな! でさ、まず始めに初春に調べて欲しいことがあんのよ」

初春「ほいほい、おでんにバナナ追加で承ります~。で、何を?」

佐天「御坂さんと同系統の能力者でありつつ、まるで別の現象を起こす人ってのを探して欲しいの」

初春「……なるほど、それなら新しい切り口になるのかも。書庫は流石に使えないから、軽くネットで情報を集めてみまーす」カタタタ



佐天「(ふふふ、名付けて『急がば回れ蟻の一穴、王道に近道無し大作戦!』 ちょっと長いかな?)」

佐天「……それで、どう? いつもみたく一瞬で検索完了! じゃないみたいだけど?」



初春「ん~……、予想通りというか、電撃使いって比較的ポピュラーな能力なので候補がちょっと絞りきれないですね」

佐天「高レベル能力者で探すんだよ? そういう人は破壊活動やら暴力行為で目立ってるに決まってるからさ」

初春「なんという偏見………………。まあでも、キーワードに破壊と凶暴を追加して……。ん??? これ何でしょう??」

佐天「どれどれ? 『俺の上司は破壊光線を撒き散らす超ゴリ系女』…………? よくわかんないけど凄そうじゃん!」


初春「あ、でもこの能力はちょっと問題がありますね。やはり私たちでは考察不可能です」

佐天「へ? なんでよ?? 電子系っぽいこと書いてあるよ? 電子を粒々と波々の中間状 でドーンするビームだって」

初春「そこですよ。今日は難しいこと一切抜きで行きたいので……、うん。いちごおでんを思い浮かべてください」

佐天「能力の秘密と初春の肥料に何の関係があんの?? まあ、想像したけどさ」

初春「肥料じゃないですけど佐天さんの言うように、私が今頑張ってるのはいちごおでんを貰えるという期待があるからです」

佐天「約束はちゃんと守るよ。レシピ知らないけどダシから作っちゃうから楽しみにしといて!」


初春「うふふ。さて、きっと私は現物のいちごおでんを手にすることでしょう。つまり電子って私にとってのいちごおでんなんですよ」

佐天「…………へ???」

初春「ですから、期待と現物。それぞれ電子の波形と粒子に相当すると思ってください。では、その中間ってなんですか?」

佐天「中間って、えっと……、期待と現物の?  ちょっと待ってよ、まるで別物じゃん。真ん中なんて無いよ!?」

初春「ええ、そんなもの無いんですよ。でもそもそもいちごおでんが存在しなければ私にこんな考察させることは出来ません」

佐天「つまり、『自分だけの現実』の壁だね。その能力者本人や同系統の高位能力者にしかわからない、期待と現物の間のおでん……」




347: Leftovers 2011/12/09(金) 23:09:10.82 ID:s8cMJNCn0


初春「だからこそ却って、その破壊光線の威力も射程距離も速度も全く他人には推測不可能でしょうね。だって存在しないんですから」

佐天「能力者の認識がどれだけ現実を歪めるかに依存する、か。にしても、簡単な話にするって言ったのにややこし過ぎだよ!」

初春「まあ、電子の性質っていうかふるまいっていうか、それに理屈を付けようとすれば見えない世界の話だけに混乱しますよね」

佐天「なんだっけ、量子の話? そういうの、小学生時代から苦手だったからなあ。超ひもを纏めてMをどーしたこーしたとか」


初春「正直、そのあたりになると空間移動能力者の独壇場ですよねー」

佐天「うんうん。小さな世界の物理を考えるには空間と時間の四次元では足りなくて、宇宙は十一次元で出来ているはず、とかさ」

初春「ちなみに佐天さん、ドコまで意味が判って言ってます?」

佐天「実のところ全く理解してないよ!」エヘン


初春「じゃあついでに空間移動を簡単に考察してみましょうか。もちろん超適当に、ですけどね」

佐天「え……、そこに手をつけても大丈夫なの?? 何か嫌な予感しかしないんだけど」

初春「難しかったら止めればいいじゃないですか。無責任に乱暴になら、ヤッちゃって構わないと思いますよー?」

佐天「初春って、時々怖いよね……。でも、面白そうだから乗っとくー!」


初春「空間移動ってレアだし単純に不思議ですからね……。演算で座標をアレしてコレしてどうしてテレポートになるんだか」

佐天「十一次元上の絶対位置座標、理論値を特殊な計算式で……だっけ? 意味のある言葉なのかなあ、コレ」

初春「ひとまずは理解可能な言葉から考えませんか? 例えば次元ってどういう使い方をする言葉でしたっけ」

佐天「空間上の点の位置が幾つかの異なる数値で表される時、その数値の分の次元であるとか……。だから苦手なんだってば!」


初春「例えば、私から見て佐天さんは5メートル離れてます。一次元的にはそれだけで位置が決まるんですけど」

佐天「ん? ああ、北東方向に5メートルって言えば二次元的だし、更に仰俯角度も付け加えれば三次元的に、ってことね。それなら解るよ」

初春「ついでに言うと佐天さんはいつでもそこに居るわけではないですよね?」

佐天「現在時刻の指定でしょ。これで空間と時間の、四次元時空的に初春からみてあたしの位置が決定したワケだ」


初春「で、私たちに確認可能なのはそこまでの次元なんですけど、素粒子のことを考えるにはそれでは足りないんです」

佐天「さー、意味不明な世界になってきました。これをどう単純に教えてくれるんでしょうか初春ハカセ!?」

初春「え? グラビトンがちゃんと観測されちゃう世界ですから面倒なことはスルーです。次の話題に行きましょう」

佐天「ハカセ……」


348: Leftovers 2011/12/09(金) 23:11:05.48 ID:s8cMJNCn0


初春「さて、次元とはある点の位置、つまり座標を定める数値の数だと考えてもらいましたが」

佐天「十一次元ってことは座標を定めるのに十一個の数値が要るんだね。詳細はわかんないけど」

初春「だから私たちでも見えるとこから、えーと、そうですね……。何か二つのものを思い浮かべてください。それぞれを点で表します」

佐天「何でも良いの? あたしと初春とか」

初春「大丈夫ですよ。学園都市とハワイでもいいですし、地球と火星でもいいですし、太陽系とマクー空間でも何でもオッケーです」

佐天「不思議なペアがある気がするけどまあいいや。でも、点ってそんなに何にでも当てはまるの?」


初春「おかしな意味付けしない限りは、点は何も決めないただの概念。いわばゼロ次元ですから」

佐天「ふむふーむ。単なる座標の最小単位、だから役立たずのゼロね。よーし、サッパリ理解不能だぜ!」

初春「すごく適当な説明なので理解も適当でいいんですよー。さて、次はその二つが乗ってる線を思い浮かべてください」

佐天「線は点が連続した集まりだっけ。初春とあたしを結ぶような線を……、ほいほい。で、それがどうしたの?」

初春「世界がその線だけだとしたら私から見た佐天さんの位置は一つの情報だけで確定します。一次元です」

佐天「それはさっきもやったでしょ。実際はその距離の円周ってか球状? のどこか、としか言えないはずでしょ」


初春「今回は線上以外の場所は無い、って言いましたよ? 周りがあるなら二次元以上ってことです」

佐天「…………ん?? でも線分って二次元にも三次元にもあるじゃない。線だけの世界からそれ以外って見えないの?」

初春「さあ? でも、実際は二次元、三次元なのに見えないのだとしたら……、線から外れることが大きな意味を持ちませんか」

佐天「線から外れたら、世界から消えちゃうってことかな……。平面世界から垂直方向へ脱出するみたいな?」

初春「脱出というか、平面しか認識できないけど実は立体世界だったら、高さの座標も考えることで移動出来そうじゃないですか」

佐天「えーと、えーと、つまり纏めると……、確認できない次元まで計算に入れて移動すると世界から消えてなくなる?」


初春「そのままならそうかも知れませんけど、認識できる次元への移動に認識できない次元を通るとすると?」

佐天「姿を消して再び現れる? ……あ、それがテレポート??? …………そうか、あたしたちは四次元以上を認識出来ない」

初春「自分の位置座標を十一次元で計算出来たとすれば、それは漫画のキャラがコマの外の世界を意識したのと同じ事なんですよ」

佐天「でも、ホントに意識可能では無いよね。あくまで特殊な計算で求められる理論値で世界を飛び出してるって話なわけで」

初春「おそらくそうですね。また三次元での移動って、二次元キャラには見えないだけでなく理解不能ですよね。それと同じで」

佐天「十一次元での白井さんがどうやって移動しているのかは、白井さん自身にも判らないかもしれないと。……ふむふーむふむ」




初春「つまり、何故計算だけで空間移動が出来るかといえば、見えない次元に足を踏み入れるからってことです。おーしーまいっ!」

佐天「ふむ。……何か割とシンプルにまとめたけどさ、今更ながらこんな強引でデタラメな考察って許されるのかなあ?」

初春「逆にデタラメだからまだ許されるんですよ。無責任な妄想を聞いて、白井さんもきっと草葉の陰で笑ってくれてます」 ウンウン

佐天「勝手に殺すなああ! ……ま、結論が確認不可とか認識不可とか、今回も無駄な時間を過ごしたってことだあね」


初春「佐天さんと一緒に頭使うの楽しかったし、ムダじゃないですよー。あ、でもいちごバナナおでんはちゃんと作って下さいね?」




349: Leftovers 2011/12/09(金) 23:15:51.95 ID:s8cMJNCn0

                                           ☆

【結構難しいよ?】

芳川桔梗「突然だけど、イメージって大事だと思わないかしら?」

番外個体「今回は最初から登場すんだね。それはともかく、イメージって何の話してんの?」

芳川桔梗「例えば、暴走が似合うあなたと何を考えてるのか判らない私。そんなイメージの二人だからオチを担当してる、とか」

番外個体「まー、おさかな話の強引なボケを第一位がやるイメージは無いね。一生懸命ザリガニ捕まえる白モヤシって、ありえねー!」


芳川桔梗「実のところ生物の解説を嬉々として語るあの子、っていうのも違和感が無いとまでは言えないのだけれどね」

番外個体「いやいや、ありゃお子様のワガママに嫌々付き合ってんじゃねーの?」

芳川桔梗「最初はそうだったかもしれないわね。でも徐々に、むしろ語っても大丈夫な雰囲気というか、新しいイメージを構築したのよ」

番外個体「ん? 要するに、やっと皮が剥けたってことかい」

芳川桔梗「それを言うなら一皮剥けた、ね。クールな雰囲気を保ちつつ解説役もこなすのだから、たいしたものよ」


番外個体「……そう言われると、何か気に喰わねーんだけど。一人だけ勝手に成長したつもりで居るんでしょ?」

芳川桔梗「ふふっ、どうかしらね。そこで今日の本題なのだけれども……、私たちも解説属性を身に付けていけない理由があるかしら?」

番外個体「…………、無い。むしろ学習装置やミサカネットワークで知識はバッチリなんだぜ! 芳川も何気に学者崩れだしね」

芳川桔梗「崩れじゃなくて崩しているの……、そこはどうでもいいわね。じゃあ、早速おさかな話を始めましょうか」














   それから20分後)


番外個体「…………おいおいおい。ネタはどうすんのさ?」

芳川桔梗「……盲点だったわね。話のきっかけ、導入役が居ないと自然に始まらないわ」

番外個体「このミサカが『ねーねー、○○ってなあに?』とか、絶対やっちゃダメだろうし。つか、やりたくねえし」

芳川桔梗「私はやってもかまわないけど、立場上あなたに知識を求めるのはヘンよね……。最終信号は重要な役割を担っていたんだわ」

番外個体「オチだって大抵あのチビがきっかけを出すしね。司令塔気取りで『何々をしろ!』って指示して来る時もあんだよ」

芳川桔梗「それにしてはほのぼのとしたオチが少ないのは不思議だけれどもね。……さて、どうしたものかしら」






   さらに10分後)


番外個体「……、このミサカがこんなことを言うのもなんだけど『自分のカヌーは自分で漕げ』だよ。きっかけ待つだけじゃダメじゃね?」

芳川桔梗「積極的にお題を考えたり、精力的に話を進行させるのは私の信条に反するのよ。カヌーのオールはあなたが持ちなさい」

番外個体「知ってたけどメンドクサイ人だなあ。それにカヌーの櫂はオールじゃなくてパドル……、いや、オール……、"oarfish"?」

芳川桔梗「思いついたのね? 今日は折角だからその話をしましょう。まあ、何を語るか未だ判っていないのだけど」 フフフ


350: Leftovers 2011/12/09(金) 23:19:34.51 ID:s8cMJNCn0


番外個体「んじゃ"oarfish"……オールフィッシュの話をやっちゃうよん?」

芳川桔梗「オール、日本語で言うと『櫂』。ボートを漕ぐときのアレね。時代劇で見る舟のアレは『櫓』だから間違えないように」

番外個体「ぶっ飛んだカッコの魚だね。銀色の細長い体、真紅に統一したヒレが背側を炎のように走り、頭部のそれはながーいモヒカン風」

芳川桔梗「アメリカ先住民モヒカン族の戦士が、頭髪を真ん中だけ残したスタイルね。あれ、正しくはマヒカンだそうよ」

番外個体「んで、オールフィッシュって呼ばれる理由が腹ビレ。細くてすっげえ長い赤いヒレの先端に木の葉みたいなのが付いてんの」

芳川桔梗「ボートのオールって水を押して推進力を得るために先端が広くなっているでしょう? ちょうどそういう感じなのね」


   『ん~…………………………………………』


番外個体「……で、体長も長いんだなコレが。正確に測定された硬骨魚最長記録はコイツが持ってるんじゃなかったっけ」

芳川桔梗「あら? 最長の硬骨魚はキャビアの親であるベルーガ、オオチョウザメじゃなかったかしら? まあどうでもいいわね」

番外個体「捕獲された最大個体は頭から尾まで11メートル、重さ270キロ以上だったってよ。発見される平均は3メートルくらいだけどさ」

芳川桔梗「ふうん。平均サイズはともかく、オオチョウザメの記録は確か8メートル程度だからそちらの勝ちね。おめでとう」

番外個体「んで、深海生物だから詳しい生 は不明なんだけど、その割りにやたら知名度が高いね。いろんな謂れの多い魚だし」

芳川桔梗「深海魚の定義は曖昧で、主な生息域が水深200メートル以下であれば仮にそれが水面を泳いでいても深海魚と呼んで良いのよ」


   『む~…………………………………………???』




番外個体「……あのさあ、全然話が進行してる気がしないんだけど。コレ、このミサカが悪いんじゃないよね?」

芳川桔梗「あら、それは私に原因があるって言いたいのかしら? フォローに徹していただけで邪魔した覚えは無いのだけれど」

番外個体「見当違いのフォローはフォローじゃ無いでしょ! 合いの手が主題に沿ってないとテンポが狂っちゃうよ……」

芳川桔梗「でも今日の主題を私はまだ知らないのだけれど。何の話かハッキリさせないで強引に進めたのもどうなのかしらね?」



   ダトォ? アラ フフフ  コッロース  オコトワリネ





打ち止め「……ねえねえ、あの二人は何をしてるんだろ?ってミサカはミサカは絡まった状況の的確な表現を要求してみたり」

一方通行「そォだな、体育教師の『今のは悪ィ見本だァああああ!』ってヤツか?」

打ち止め「解説って、知識の自慢でも意見をゴリ押しすることでもないもんね。誰でも出来るけどそこを間違えちゃダメな気がするよ」

一方通行「ま、次回はオールフィッシュ……、リュウグウノツカイの解説にすっか。――――――――オマエら二匹、ネタ振りご苦労ォ!」






   ~おしまい~




355: 間違い 2011/12/18(日) 11:57:38.28 ID:7CrIUF3R0

                            ☆

「とうまがまたどこかへ行っちゃっていて、今日はインデックス一人なんだよ」

「こんなときに限って何故かあいさも遊びに来ないんだよ。…………、ヒトリゴトってあんまり面白くないかも」

「とうまと一緒に食べようと思ってこっそり買っておいたカツオ節、三本とも食べきっちゃったんだよ……」

「でもヒマだからって、私は手持ちブタちゃんにはならないんだよ! ってそれを言うなら手持ち無沙汰ちゃんなんだよ!!」 ノソノソ


「――――――というわけで、ひさしぶりにこの『のーとぱそこん』の出番なんだけど…」 スイッチ オーン

「疑問質問掲示板ってどうすれば見れるんだっけ……? あ、これかな」 ポチ ポチ 

「見つけた見つけた。さー、インデックスが未解決の難問奇問、柿右衛門をズバッと解決してあげるんだよ。覚悟するがいいかも!」ビシッ

「…………、テンション上げてないと決定的な何かが切れちゃいそうなんだよ。そこは勘弁して欲しいかも」 ポチ ポチ


「科学や兵器の質問は問題外、政治情勢や経済や法律関係の話題はつまんないし。おさかな関連の珍問は無いのかな?」

「お! 噂をすれば影が差すんだよ! この文面からは相当歯ごたえのありそうな雰囲気がそこはかとなく漂ってるかも」

「ええと……。『私の泣き顔は最低でもアレの五倍は超可愛いですし』…………、余計な情報が多すぎなのはタマにキズなんだよ」

「質問を纏めるとこんな感じかな?」



●同僚に『おさかな初心者』の烙印を押されてしまったので勉強中

●どうせ勉強するのなら好きなおさかなから始めたい

●そこで世界一硬い魚類を教えて欲しい



「好きなものについての情報を探すのはどれだけ大変でも不思議と苦痛じゃないから、物事を学ぶ導入にはバッチリかも」

「やがて好きなものの知識が軸になり、そこから枝を伸ばすようにそれ以外の知識への取っ掛かりになるんだよ」

「そうなったら完全無欠の博覧強記も夢じゃない。けど、好きなものだけをとことん極めた人だって相当カッコいいかも」

「だからこの人の選択は正しいと思うんだよ。それだけに私もしっかり回答してあげなきゃね」


「……まずは魚の物理防御を実現する鎧、特にウロコの硬さについて、かな」

「結論から言うと魚のウロコって基本的に生体由来物質。そして魚類はヒトを含む全ての脊椎動物のモトだから…」

「質問者さんにはひょっとしたら残念な事実かもだけど、どんなウロコであってもその材質はヒトの体のパーツとほぼ同じなんだよ」

「つまりその硬さも想像の範囲内ってこと。そしてウロコは幾つかの種類に大別出来るから……、簡単にまとめておこうかな」



356: 間違い 2011/12/18(日) 11:59:31.33 ID:7CrIUF3R0

「いわゆるモーホロジーで言うホモロジーって観点を加えてウロコを分類するとこんな感じ?」



1)楯燐 サメなど軟骨魚に見られるウロコ。成長とともに数が増える。歯とほぼ同じ組成なので皮歯とも

2)硬鱗 古いタイプの硬骨魚に見られるウロコ。成長とともにウロコが大きくなる(数は一定)。組成は楯燐に近いが構造は異なる

3)骨鱗 現生の硬骨魚鱗の主流。成長とともにウロコが大きくなる(数は一定)。文字通り骨質で作られる



「このうち(1)の楯燐はみんなの身近に実物があるんだよ。拵えのちゃんとした日本刀を持ってきてグリップの部分を見て欲しいんだけど」

「柄巻き紐の下地に白い粒々が見えるでしょ? これがそう。歯と同じくらい硬くてすごく細かいトゲ状のウロコなんだよ」

「体の成長とともにウロコの数が増えていくのはこのタイプだけ、ってことは覚えておいたほうがいいかも」


「次に(2)の硬鱗。淡水魚だとエンドリケリ=エンドリケリとかガーとかチョウザメ、海ならシーラカンスが有名かな」

「古代魚って、一見して違和感があると思うんだけどそれは奇抜な体型だけじゃなくてウロコにも原因があるんだよ」

「基本形はひし形。それが水平方向に対して斜めを向いてまるで屋根の瓦みたいに規則的に並んでるから大きなウロコが際立っちゃうのかも」


「そして(3)の骨鱗は最も一般的なウロコだね」

「葉状鱗とも言うんだけど、要するに誰でも知ってるウロコかも。一応触れておくと更に二つのタイプに分かれるんだよ」

「一つは円鱗。コイやメダカやサケがこのタイプだね。文字通り丸っぽくて表面は滑らか」

「もう一つは櫛鱗。スズキやマダイやサバはこっちかも。円鱗との違いは端っこに小さなトゲが並んでることだけなんだよ」



「さてさて、単に頑丈さを求めるなら体をすっぽり一枚板で覆う装甲が最良なんだけど、それじゃ極端に動きが制限されちゃうよね」

「小さなウロコで体を覆うことは防御と機動力を両立して、その上損傷を負った場合にはその部分だけ取り替えれば済むでしょ?」

「えっと、つまり……虫歯治療で、歯が全部繋がっていたら大変だよねってこと。そんな利点だらけのウロコなんだけど…」

「この中で材質的に最も硬く厚いのは楯鱗で、それから硬鱗そして骨鱗って進化の流れの中でウロコはより薄くより軽くなっていくんだよ」


「カワヤツメやアンコウみたいに完全にウロコが退化し、代わりに粘液を多めに分泌することで体表を守る魚種も少なくないよね?」

「そんな防御で大丈夫か?って聞きたくなるかもだけど、これは硬いウロコの魚は古いタイプって所がミソなんだよ」

「太古、イカや貝などの祖先が海洋の王であった時代。魚類は装甲をより頑丈にすることで彼らの牙から逃れたんだけど」

「魚類の黄金時代になると硬さも頭打ち。むしろ防御は最低限にしてその分機動力を確保したほうが生存競争上より有利になるんだよ」

「だってどれだけ頑張っても歯よりも硬いウロコは作れないでしょ? まあ進化の順序的にはウロコが歯になったんだけどね」

「どんなに頑丈でも噛まれれば終わり。されど噛まれなければどうということは無い、ってコトなんだよ」


「ウロコについてはこんな感じでいいかな……。実際は例外がたくさんあるんだけど、それは自分で見つけていけばいいんじゃないかな」

「そんなことより本題に入るんだよ。ウロコの硬さは歯や骨のそれに当たるって説明をしたんだけど、結局は引掻き硬度に過ぎないからね」

「生命を守る鎧としての硬さは少なくとも押し込み硬度で考えるべき問題だもん」

「あ、用語の意味は深く考えなくていいかも。要するにここからが頑丈な魚の話なんだよ」

「ちなみに世界一硬い食品はカツオの本枯節かな。噛めば噛むほど味が出るけど、削ってダシを取っても美味しいよね」




357: 間違い 2011/12/18(日) 12:01:37.46 ID:7CrIUF3R0

「と、脱線はこのくらいにして、質問の『世界一硬い魚』のお話に行ってみよー!」

「…………でも、これってどうやって順位付けするんだろ?」

「例えばマンボウは分厚い皮で体を守っていて、拳銃弾くらいじゃ致命傷にならないとまで評される防御力がありつつも」

「ウロコが殆ど退化してるから皮膚はグズグズで弱いんだよ。これは硬いと言えるのかな……?」

「さっきも言ったけど材質的には上限が決まってるし、完璧にどれが一番硬いって言い切ることは困難かも……、う~ん」

「悩んでいても仕方が無いから、すっごく硬いとされる魚をいくつか紹介しようかな。それで勘弁してもらおっと」



「まずはアーマードプレコ! ナマズの仲間なのに硬いウロコがあるプレコの仲間の中でも最硬を誇る『皮の鎧を着た魚』だよ」

「プレコの仲間の生息地は南アメリカが中心で、アマゾン川やその支流域では普通に食用にされるんだけど」

「ウロコが硬すぎて処理できないから直接火に掛けて丸焼きにするの。なんていうか白身なのに味が濃くてとっても美味しいんだよ!!」

「最大でも40cmくらいの中型魚でとにかくウロコが角ばっててカッコイイ、だけどおとなしくて水槽飼育にも適した魚種だね」


「続いてはカワビシャ。これは比較的暖かい海でたまーに捕れる、カワハギをブサイクにしたような魚なんだよ」

「英名はアーマーヘッド……、英語圏の人って硬いとすぐにアーマーを連想しちゃうのはちょっと安易かも」

「平べったい上にとてつもなく硬く細かい櫛鱗があるからお肉は少ないけど、甘くてコリコリでお刺身に最適なんだよ!!」

「大きさは30cmくらい。深めの岩礁域に生息してるからダイビングの達人ならこのブサイクちゃんの生きてる姿を観察できるかも」


「まだまだ行くよー、イットウダイ! 漢字で書くと一刀鯛とか一等鯛とか。これはおなじみキンメダイの仲間なんだよ」

「近縁には『包丁が全く通らない魚』として誰もが知ってるマツカサウオがいるね。これも暖かい海の岩礁などに棲んでるみたい」

「赤い体色に複数の白の横縞が均等に入るキレイな魚。だけどすっごく硬い、ところがやっぱりお鍋にばっちりなんだよ!!」

「せいぜい30cmの比較的小型の魚で、その縞模様から英語圏ではリスっぽい魚って呼ばれてるんだよ。そこまでカワイイかな?」



「あとはアリゲーターガーやシーラカンスなどの硬鱗を持つ古代魚は確かに頑丈なんだけども」

「やりかた次第で普通に刃物が通るから除外したんだよ。決してシーラカンスが煮ても焼いても美味しくないからじゃないんだよ!!」




 ポチポチ ターン ポチ ポチ ポチ 


「……さてと、こんな感じでいいかな? 質問者さんも納得してくれればいいんだけど……。ちょっと真面目すぎたかも」 スイッチ オーフ

「今日の話題がつまらなかったらそれはとうまのせいなんだよ!!」

「………………………」

「とうまがいるとすぐに話が脱線するし、おバカで   な冗談言うし、話がまとまらないまま終わっちゃうこともよくあるけど……」



「やっぱり私ひとりだけじゃ、面白いおさかな話は出来ないかも………………」







「………とうま、早く帰ってこないかな」






358: 間違い 2011/12/18(日) 12:04:54.42 ID:7CrIUF3R0

                                             ☆

佐天「あれ? 今日は御坂さんも白井さんも居ないの?」

初春「あっ、佐天さん……、そうなんですよ。なんでも御坂さんは熱帯魚を捕まえに行ったとか。白井さんはいつものパトロール中です」

佐天「……………………………………何で熱帯魚? ……よくわかんないけど、遠出ならお土産貰えるかな~?」

初春「さあ? そんで白井さんが『あなた達二人だけじゃ間が持たないですのですの』ってお友達を呼んでくれたそうなんですけど……」


  バサッ

婚后「それはわたくし、婚后光子のことですわ!」 バーン



佐天「…………お、お久しぶりです? えーと、その節は大変お世話になりまして厚く御礼申し上げ奉り候。というか張三李四?」

初春「あーあーあー、かわいいニシキヘビちゃんの飼い主さんですよね? って、他に適任者が居なかったんでしょうか?」

婚后「ちょ、ちょっとあなた方? あまりにも扱いがぞんざいじゃなくって? それとヘビちゃんではなくてエカテリーナちゃんですわよ!」

佐天「やあ~、そう言われてもねえ……。水着モデルとポルターガイスト事件と誰かが見てる、では確かにお世話になりましたけど」

初春「ヘビ使いの方におさかな話が出来るとは思えませんもん。白井さーん、チェンジですー」 パン パン


婚后「お待ちなさいな!! こちらが大人しくしてたら言いたい放題、絶対チェンジなど認めなくてよ!」 ガー!

婚后「それに初春さん、おさかなって魚類に留まらず、水棲生物のことじゃありませんの? 今までだってカニやウニを取り扱ったでしょう」

婚后「でしたら冷静に考えて、このヘビ使いにも『水棲爬虫類』を語る権利があるんじゃなくて?」

佐天「冷静に考えてヘビ使い呼ばわりは否定しないといけなかったんじゃ……、でもまあ一理ありますね」


初春「あらあら婚后さんったら。そこまで仰るのでしたら水棲爬虫類の話、聞いてあげてもよくってよ? ウフフ」

佐天「誰が喋ってるかわかんなくなるから紛らわしいマネしない! ……えっと、ところで水棲爬虫類というとカメとかワニとか?」

婚后「初心者相手に各論を説いたところでせいぜいが一時の豆知識に過ぎませんわ。このわたくしを呼んだからにはそれ相応の難m」

佐天「……あ、じゃあせっかくなのですっごく基本的な質問ですけど、魚と水棲爬虫類って何が違うんですかね?」

初春「佐天さん?? それは流石に常識中の常識じゃないですか……」


婚后「いえいえいえいえ。人のセリフに割り込む無作法はさておき、その質問はなかなかに奥が深いかと」

佐天「でしょ? だってさあ、ほら? どっちもウロコがあるし水の中にいるし、ウミヘビなんて魚だか何だかわかんないじゃん??」

初春「ちなみにウミヘビと呼ばれる生物には、コブラの近縁の爬虫類タイプとウナギの親戚の魚類タイプ、両方いるんですよ」

婚后「っつ、そのとおりですが………………、わたくしの見せ場を奪うとはさすがはあの白井黒子さんの同僚……、やり手ですこと」


佐天「ふむ。なんか初春も婚后さんも詳しそうだし、二人で交互に話を……、相違点とその解説って進めれば面白そうじゃん?」

婚后「なるほど。つまり、一人が魚と爬虫類の違うところを端的に紹介し、もう一人はそれを詳細に解説出来たらポイントゲット! と?」

初春「最終的により多くのポイントを獲得した勝者は輝ける『第一回ウミヘビキング杯王座』って事ですね! 燃えてきましたー!!」

佐天「そんなことは言ってないけど…………、これ収拾つくの??」





359: 間違い 2011/12/18(日) 12:09:05.09 ID:7CrIUF3R0

婚后「では口火はわたくしが切りますわね」

婚后「魚類の呼吸器は主にエラで爬虫類は肺。水棲爬虫類は肺によるガス交換を行う生物にしては異常な潜水時間を誇りますわ」


初春「いきなりちょっとヒネってきましたねー……、まあ問題ないですけど

   まずここでのガス交換とは、濃度の高いほうから低いほうへと物質が移動する『拡散』によって血中へ酸素が、外へ二酸化炭素が
   それぞれ移動することを指します。エラ呼吸であれば新鮮な水をエラに触れさせると酸素濃度の高い水のほうから毛細血管の膜を
   通して酸素が血中に向かい、逆に二酸化炭素濃度の高い血液から水中へ二酸化炭素が溶け出ます。互いに渡しあうからガス交換。
   すごく乱暴に言えば、濃い塩水を真水に入れたら全体がしょっぱくなるのと同じ原理ですね。
   肺についても、エラ呼吸に於ける水が大気に置き換わるだけでやってることは大差ないんですけど、だからと言って液体で肺呼吸は
   極めて特殊な条件下で無ければ出来ませんから注意してくださいね。

   ではどうしてカメやワニなどは非常に長い時間潜水していられるのでしょうか。例を挙げれば、温帯性のカメは時に水底で
   冬眠してしまいます。ウミガメなどでは数ヶ月間潜水可能なんて噂される種も存在します。不思議ですよね?

   これは爬虫類を全体的に見れば他類と比較してエネルギー消費効率が優れているから、としか言いようが無いですね。個別に見れば
   消化管を含む皮膚呼吸で水から溶存酸素を取り込むことに長けた種がいたりヘモグロビンが高性能だったり、様々です」


佐天「……」


初春「じゃあ次は私からお題を出しますよー!」

初春「魚類のウロコは真皮由来であるが、爬虫類のウロコは表皮を起源とする」


婚后「オーッホッホッホ…………、失礼。そんな簡単な事をご存知無い方が居るとも思えませんけれど、お題はお題。仕方がありませんね。

   ではまず庶民の目線で、真皮や表皮といった用語からご説明いたしましょうか。
   原腸陥入後の細胞塊、おなじみ原腸胚において細胞はそれぞれの基本的な役割が位置的に決定しますわよね。つまり外胚葉と内胚葉、
   また内胚葉の作用によって外胚葉の一部が中胚葉へと変化いたします。大雑把に申しますと外胚葉は体の表面側の素になり
   内胚葉は文字通り消化管や一部の内臓組織など体の中身になって行きます。中胚葉は外と内の間、体腔を埋めるように器官や組織を
   作り上げる原材料と認識されている方が多いかと存じますが、一応例を挙げるなら筋肉や骨格や膜や血液や血管やリンパ管に性腺、
   膵臓や腎臓などが中胚葉性ですわよね。脊椎動物のような高等動物の場合、複雑な体組織形成をこの三胚葉性で可能にしております。
   ちょっとご自身の腕をご覧になって下さいな。表面を外胚葉性の表皮が覆い、その下には中胚葉性の真皮や肉や骨が詰まって……、
   あら、思わず先走ってしまったかしら? まあ結論が早くなるのは構いませんけど。
   つまり、表皮とは皮膚における最も外側の構成要素であり真皮とはその直下のそれにあたるのです。外界と生体を分けるのが表皮で
   いわゆる皮革、三味線の胴や野球のグローブなどの革製品と呼ばれるものの原料は真皮と覚えてくださいな。

   さて、ウロコの話に行ってもよろしくて? よろしくなくても行きますけれども。
   魚類のウロコが真皮由来とはつまり、皮膚の内側の真皮の部分が変形して外部に露出しその表面を表皮が覆って出来た小片が魚類の
   ウロコである、というほどの意味。繊維層の上に骨質層が、更に古代魚類では象牙質層やエナメル質層が重なり形成されるウロコは
   それゆえ真皮に埋没しておりいわばウロコ全体が生きた組織なので本体の成長とともにウロコも成長いたします。
   それに対して爬虫類のウロコは基本的に表皮起源。ヒトで言えば垢すりで落とすような角質が硬化したものであって、それ自体は
   成長しません。ですので新しいウロコが次々に作られ、古いものは剥がれ落ちてしまうのですがそれがつまりは脱皮とお考え下さいな。
   また、ワニなど強靭な装甲を誇る爬虫類に関しては真皮由来の皮骨や骨格とウロコが癒合しておりますけれどもこれは例外ではなく
   ウロコ自体はあくまでも表皮起源であって二次的に硬度を高めるべく結合しているのだとご理解くださいませ」


佐天「…………」

初春「思ったよりやりますね。ホモロジーは私の得意分野だったんですけど」

婚后「そちらこそ。ですが、形 学(モルホロジー)でいう相同(ホモロジー)と仰ったほうが余計な誤解を産む心配が無いのではなくて?」

初春「それこそ余計なお世話ですよー。何にしてもコレほど楽しめる相手は久しぶりでした。またヤリましょう!」

婚后「ええ、是非に!」

佐天「……………」




佐天「……………………………………………」zzz






360: 間違い 2011/12/18(日) 12:12:00.93 ID:7CrIUF3R0

                                             ☆

上条「…………」

御坂「(何なのよ……、コレって一体どういう状況なワケ? さっぱり理解不能なんだけど!?)」ボソボソ

上条「(俺も……、上条さんも『この公開講座は不足分の単位代わりになってるです』って聞かされてただけで……)」ゴニョゴニョ

御坂「(アンタが『熱帯魚に興味ないか?』って言わなきゃこんなトコ来なかったわよ! よりにもよって講師がアレって何の冗談?)」


一方通行「つーワケで、科学が発達した現在に於いても深海ってのはそこに棲む生物も含めて未だに多くの謎を秘めてやがる。
     ヒトってのは内容物が判ンねェハコを開けずに居られねェモンだ。『好奇心ネコを殺す』って言葉があンだろ?
     ハコの中身が爆弾だったらヒトだって死ぬ。同様に現在まで深海に魅せられて命を落としたヤツは少なくねェ。
     それでもヒトがヒトである限り知的好奇心は止められない。理性を強く持つ生物にとって知ることは生きることと同義だからな。
     神が知を悪と見做すならヒトの命そのものが悪になる。ならば深海はヒトの知性を断罪する深淵、って考えると面白ェじゃねェか」


御坂「(んあーーーーーーっ、どの口で神とか言ってんのよ。クソの紙みたいな顔色してる分際で……)」 ブツブツ

上条「(気持ちは解る、解るけど落ち着いてくれー! 上条さんはこのチャンスを逃したら留年800%確定なのでございますことよー)」

御坂「(ったく……、ハイハイ。講座妨害でアンタもろとも途中退出にならない程度には我慢するわよ。でもコレ、貸しだからね?)」



一方通行「以上を踏まえて、今日の本題。……今時、しかも学園都市で黒板にチョークで字を書くってどォなンだよ?」カッ カカッ カッ 




                               ~リュウグウノツカイは異形か、凶兆か、それとも「  」か~





一方通行「まずは基本情報から。リュウグウノツカイはアカマンボウ目リュウグウノツカイ科に属する外洋性の大型深海魚であり
     詳しい生 は不明だが過去のデータから推測するにプランクトンを常食とする群れを作らないタイプの魚のよォだ。
     最大の特徴は巨大であること。発見される固体の平均サイズは全長3m程度だが確認されたもっとも長いヤツは11m、
     さらに船上から目視での推測だが15m級の個体も存在するらしい。そのサイズ的におそらく極めて長寿の魚種だろォな。

     体表にウロコは無く代わりにグアニン層って……あー、タチウオ知ってンだろ? 銀色のペラペラの、焼くとウメェ魚。
     アレと同じ銀色の光沢を持つ物質で体を保護してる。更に生きてる間は側線の上下にそれぞれ色違いの縦線が入ったり
     黒暗色の斑点があンだが死ぬとそれらは急速に薄れ、全体の光沢もくすむ。

     ヒレも独特で、背側全体を赤色の背ビレが覆い、特に頭頂部付近のそれは極端に長い。腹ビレは左右一対の細長い糸状で
     先端が木の葉のよォな形状をしてる。この部分はちょうどナマズやドジョウのヒゲと同じくニオイや味を感知する器官だと
     考えられてンな。おそらく遊泳能力が低く歯を持たないコイツにとって、エサに関する情報収拾は重要なンだろォよ。

     細長く、薄く、銀光沢を持つこの魚の姿を、全く知識のねェヤツに言葉で伝えンなら
     『キッチンにあるアルミ箔を部屋の隅から隅まで伸ばしたモノが海を漂っているのを想像しろ』とでも言っとけ。
     実際、漁師がコイツをただのゴミと見間違えたって話はよく聞くしな」


上条「(リュウグウノツカイがテーマのおさかな話かよ。コレならなんとか居眠りせずに済みそうかな?)」

御坂「(テキトーな解説ね……。アカマンボウ目がマンボウとは全く関係ないって言わなきゃ誤解する人もいるでしょうに)」ヒソヒソ

上条「(え? そうなのかよ。じゃあヤリマンボウとも無関係??)」コソコソ

御坂「(勿論。アカマンボウはマンボウに形は似てるけど、全然別種の美味しい深海魚よ。アカマンボウ目にはレアな種が多いわね)」


361: 間違い 2011/12/18(日) 12:20:34.75 ID:7CrIUF3R0

一方通行「話を続けンぞ。リュウグウノツカイの名前の由来は読ンで字の如く『竜宮の使い』だよな。おとぎ話にもあったろ。
     大昔に海亀を助けた浦島太郎ってヤツがその亀に恩を仇で返されて途方に暮れる、だったか? 竜宮はそこで出てくる
     人跡未踏の海底深くにあるとされる伝説上の海神だか龍神だかの棲む宮殿のことだ。
     リュウグウノツカイが竜宮の使いに見做された理由としては発見記録から推察するに海中でのコイツらの休憩姿勢が原因だろォ。
     頭を上にして直立し水中で静止する10mの魚、平均的な透明度の海では頭の側から尾が確認出来ねェかもな。それこそ海底から
     伸びてるかのよォに昔の漁師が誤解しても不思議じゃねェ。余談だが浮き袋が退化してンのにそォした姿勢を保ち続けられるのは
     浅い海に居る魚に比べて高密度の体組織、主に骨や筋肉のことだが、を減らす代わりに多量の水分を蓄えてるからなンだと。
     深海魚では低比重の水や脂肪やワックスを蓄えて浮力を得るのが一般的だがコイツもその例に漏れず、っつーことだな。

     また、日本に於ける人魚伝説の正体はリュウグウノツカイって説もある。例えば日本書紀には、とあるところの漁師の
     『ある日オラが仕掛けたワナに名前がわからねえモノが入っていただよ。魚でもねえし、人でもねえずら!』的な報告がある。
     そしてその話を聞いた聖徳太子が
     『ひとさかなが見つかるのは悪い事が起こる前兆。国に災いが降りかかる前触れである』と言ったと聖徳太子伝暦にある。
     時代が下って鎌倉期には人魚とはヒトに似た顔を持つ魚、と認識されていたよォで各地の民話にズバリ人魚という名で登場する。
     非常に長い体を持つ人魚、白く光る顔と赤い髪の人魚、サルのよォな突き出た口の人魚……
     どれもが少なくとも今日で言う人魚の正体、ジュゴンやマナティなど海棲哺乳類の特徴には当てはまらねェだろ?
     むしろいくつかの伝承を組み合わせると、飽くまで個人的にだがリュウグウノツカイ以外には候補がありえねェとまで思える。
     ……っても、鎌倉以降になると中国の人魚伝説の影響を受けて鋭いキバを持つ人魚や赤ン坊のよォに泣く人魚が出現するし
     江戸期に入ると更に西洋文明が染み込み、半人半魚の女体っつー現在のイメージに繋がる人魚が一般に語られちまう。
     まさに情報化社会の弊害ってヤツだ。

     さて、西洋に於いてリュウグウノツカイは豊漁の兆しとされている。英名は腹ビレの形状がボートのオールに似てることから
     オールフィッシュ(Oarfish)だが、コイツが漁の最中に現れるとニシンが大漁になるってことでニシンの王(King of Herrings)
     なンて別名を持つほどにな。まあリヴァイアサンのモデルやシーサーペントの正体とも言われ化け物扱いが無いワケじゃねェが
     一般的には変わった形の珍しい魚、デカいンで遊びの釣りの対象になる魚、って程度の認識だ。
     ところが日本じゃ、聖徳太子の話で触れたが随分な扱われ方だと思わねェか? 国難の兆しだとか地震の前触れだとかキモイとか。
     コイツの死体がどこかの浜辺に漂着するとニュースになり、『悪い事が起きる知らせで無いことを祈ります』なンて。
     タコやクジラやコイ同様、洋の東西で同じ生物が全く違った印象を与えるケースのひとつと言っていいだろォ」


上条「(……長い。ちょっと理解が追いつかなくなって来ちまった。……なあ、御坂?)」ゴチョゴチョ

御坂「(は? 今のパートは脱線みたいなモンだからわかんなくても平気よ。なんならノート取ってるから後で見れば?)」

上条「(ほ~、意外だな。…………お前、結構真面目に講義受けてるんだな)」

御坂「(一体誰の為だと思って……!! ふんっ、…………とにかく次の話がキモだと思うからそのつもりで居なさいよね)」



362: 間違い 2011/12/18(日) 12:22:04.21 ID:7CrIUF3R0

一方通行「では何故リュウグウノツカイの発見が日本において凶兆とされるのか、を考えるにあたりココで断りを入れておく。

     この後から数行に渡る内容は主にネットで収集した情報を基に構成されている為、一部に特定の地名や団体名が入るが
     決して悪意、誹謗中傷の目的は無い。だが今回は多くのソースの主張とは異なる結論を出す予定であり、そのことに
     不快感を持たれても全く仕方が無いと思う。よって当然の事実を確認しておく。この講義は一切が俺の独断だ。
     誰の主張の肩代わりでもなくむしろ一方通行な言いっぱなしに過ぎないので、出来れば深刻に捉えないで貰いたい」

一方通行「さて、江戸時代の文献にこンな記述がある。

     『宝永年間のこと、ある村の漁師が人の顔と魚の体を持つ生き物を見つけ殴って殺した。その後、村は暴風と地割れで消えた』

     宝永年間と言えば富士山の最後の噴火を引き起こした宝永地震の起きた時代だがそれとの関連は残念だがわからねェ。
     それはそォとその記述、諸国里人談によるとこの生き物は首の下に鶏冠(トサカ)のような赤いヒラヒラを付けてたらしい。
     これがリュウグウノツカイを思わせる外見の生物の発見が大惨事の引き金になった証拠としてよく使われるンだがどォ思う?
     理性的に考えてもし村の悲劇の原因がその魚だったとしても、コレはソイツを殺すと罰が当たるって教訓話なンじゃねェか?

     まあ、昔話では確認不可能な事も多いンで最近の話題に移る。2009年末から2010年中旬に掛けて日本海側の各所、ニイガタから
     ヤマグチあたりで比較的多くのリュウグウノツカイ発見報告があり、新聞やニュースで報じられた。報道量は過去最大だった。
     元々の生息地が太平洋側と考えられているコイツが日本海側で多数発見された事を受け、当然ながら地震を連想したヤツも居た。
     だが、目立った大地震はあったか? 翌年のインパクトのせいで思い出せないなら覚えとけ。2010年、日本付近で震度5強以上の
     地震はゼロだったンだよ。最大で沖縄本島近海を震源とする震度5弱だから、魚の発見箇所には何の繋がりもねェよなァ?
     ンで、リュグウノツカイが地震の前触れだと主張するヤツらは今、こォ言うンだがどォ思う?

     『リュウグウノツカイが発見された年、または次の年に大地震が起こる』

     たまに居ねェか? デジタル時計を見るといつも数字がゾロ目だ、とか言ってるヤツ。ソレならまだ偶然数字が揃っている場合に
     限り記憶に残る為って理屈が立つが、いつも数字がゾロ目または一つ違いだ、だったら話になンねェだろ?
     勿論この手のバカ話と違って大量発見にはなンらかの原因があるはずで、ソレを辿れば生息域に変化が起きた、地磁気に乱れが
     発生した、ってトコにたどり着く可能性が無いとは言えねェ。だが検証もせずに安易に断じる事が正しいとは到底思えねェよ。

     では根拠の薄いデータしか存在しない状 で凶兆説が根強いのは何故かと問われりゃ、日本人の精神性に関わってンのかもな。
     珍しい出来事、普段と違うやり方、場違いな作法……。街中で霊柩車を見かけたら、とか毎日の日課をサボると気持ちが悪いとか
     着物の左前とか。これらの共通点は異常な状況とそれを前兆として現れるとされる様々な不幸だ。要するに日本人は伝統的に
     日常に異物が入り込むことを極端に恐れ、それによって悪い事が起こるかもしれないと注意を促す為に諺や伝承で伝えて来たンだ。
     だが例えば、夜に爪を切ると云々って話は現在では殆ど意味を成してねェだろ? 生活が変化すりゃ当然に日常も変わる。
     そして実際何も起こらない事を理屈じゃない部分で理解……、曖昧な言い方だが、とにかくソレが出来れば解消するってこった。

     リュウグウノツカイについては確かに外洋性深海魚だから稀な浜辺への漂着でしか一般人には見る機会が無いために、日常を壊す
     異物として認識されそれ故に凶兆と見做されるって事になるワケだ。さて、この評価が覆されるとしたらどンな場合だろォな。
     多くの漁師にとって深海魚の殆どは食味が悪く値段が付かないので網に入ってもそのまま捨ててる、って事実を知ったとしても、
     群れを作らない単独生活の為に希少と嘗ては信じられていたが実際はかなり頭数が多いって知っても、外国でのこの魚の評価を
     聞いてもこの迷信を捨てンのは難しいだろォよ。理性の論理は必ずしも理屈じゃねェからなァ……。
     いつの日かこの魚の生 が綿密に調査されて伝説の真実が明かされるのを待つのが唯一の方法、どォかと思うがソレしか無ェな」







御坂「(む? 凶兆説は迷信、って事はデタラメだって考えてんの? でも調査を待つとか……、ハッキリしない話だなー。ん?)」キョロ

上条「(ゆ、許せねえ! 罪も無い魚を悪者に仕立て上げて、その理由が珍しいから、だけだなんてアリなワケねえだろ!!)」プルプル

御坂「(……うーん、ゴメン。いくら美琴さんでもその目標不明な意思には賛同できないわ)」


363: 間違い 2011/12/18(日) 12:25:16.31 ID:7CrIUF3R0

一方通行「さて最後オマケだ。時に凶兆、時に怪物、時に異形、などかなり特殊な生物って扱いのリュウグウノツカイだが実際はどォか。

     結論を言う。深海魚の代表的な特徴を上げるとリュウグウノツカイが出来ンだよ。骨格、筋肉、浮き袋の退化とそれに代わる
     水分、脂肪量の増加。わずかな光で視界を得るべく巨大化した眼球。大きく広げることが可能な口、上方からの太陽光を反射し
     捕食者から姿を隠す為のCDのよォな体色。これらは中深層ってカテゴリに棲む魚の共通点だがリュウグウノツカイそのものだろ?
     
     更に結論を展開する。地球に於いて陸地面積は3割弱で残り7割は海だ。そして深海と呼ばれる水深200m以下の海ってのは
     海水全体の体積比で実に93%に達する。つまり、地球は大部分が海であり、海はほぼ深海で出来ているってことだ。

     なら、地球の代表的な場所は深海であり、地球の代表的な生物はそこに棲む生物の特徴を全て持つ、リュウグウノツカイだよな?

     当然本気で言ってるワケじゃねェぞ? 要は、物の見方をホンの少し変えるだけで常識なンて案外アッサリ崩れちまうって話だ。
     いつも思い込みだけで動いて失敗してるヤツや自分の決意に振り回されてるヤツ、変化を嫌い日常を守ンのに必死なヤツ。
     そンな連中はいつか選択を間違えて袋小路に迷い込むだろォ。ゲームオーバー、手遅れになっちまう直前に、もし気が向いたら
     今日の俺の話を思い出して……イヤ、俺はどォでもいいからリュウグウノツカイの事を思い出してみろ。

     その正しさはタダの思い込みじゃねェのか? 本当にそれしか道がねェのか? その行動に意義はあンのか?

     リュウグウノツカイが地球代表でもあり異界の怪物でもあるって話を自分の置かれた立場に当て嵌めりゃ、多分別の解答が
     思いつくンだろォぜ。判断に迷うことがあったら……、イヤ、自分の判断にむしろ絶対の自信がある時にこそ試してみろよ。

     ただまァ……………、新たに思いついたそっちが正答とは限らねェがよ。

     ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 以上だ」





上条「ありゃ、アイツとっとと行っちまったよ。質疑応答とか無いのな」

御坂「アンタ何か聞きたい事あったの? っていうかこの状況で手を挙げて質問する気だったの? バカなの? バカよね! バーカ!!」

上条「え、ええと……。そんなつもりで言ったんじゃないけど、気を悪くしたなら謝る。ゴメン」

御坂「…………。講義のノートは今日の貸しを返したら見せてあげる。どうせレポート提出するんでしょ?」

上条「そうだった! …………では、ワタクシは一体何をすれば宜しいのでせう??」

御坂「そーだなー今度何かオゴって貰おうかなー? それともー……」



 <ポーン

上条「ん? 館内放送か?」


『本日の公開講座、受講お疲れさまでした。尚、講師より記念品といたしましてリュウグウノツカイ一匹が贈呈されております。
 全長4.1m体重20kgのお手ごろサイズ。都合により先着一名様限りですが、希望される方は入り口受付カウンターまで~』


御坂「んー? そういえば私の後輩が『一度で良いからリュウグウノツカイを食べてみたいですのですの』って言ってたっけ……」

上条「それは俺にアレを貰って来いと? どうやって持って帰るんだよ!? 持って帰ったとして保管はどうするんだよ!?」

御坂「なんとかなるんじゃない? 黒子と、いつかの白シスターも一緒にこれからアンタん家でお鍋とかさ。それで貸しはチャラでどう?」

上条「先生、これが袋小路なんですね……。あー、もう。わかった、わかりましたよ! 不幸だかどうかもわかんねえええ!」


364: 間違い 2011/12/18(日) 12:31:35.67 ID:7CrIUF3R0

芳川桔梗「おつかれさま。終始堂々として結構板についてたんじゃない? 実は君には教師の素質があるのかもね」

打ち止め「うんうん、カッコよかったよー!ってミサカはミサカはあなたの晴れ姿に思わず惚れ直したのを白状してみたり!」

一方通行「っざけンな!! アイツらが来るって知ってたら死ンでも断ってたっつーの!」

黄泉川愛穂「仕方ないじゃん。コレはそもそも月詠先生が留年の可能性が高い学生たちの救済策の一環として企画した講座なワケで」

番外個体「いつだったかその合法ロリ教師がオマエさんとチビコロの会話を聞いて、それ以来目を付けられてたってこったーね」


一方通行「ンな事情知るか! とにかく二度と、天地が逆転したってこンな真似しねェからな!!」

芳川桔梗「あらもったいない。せっかく持ってるスキルは生かさないと宝の持ち腐れよ?」


一方通行「チッ………………、もォ用は無ェンだろ? 帰る」







打ち止め「うーん、機嫌悪くしちゃったかなってミサカはミサカは本作戦にかけた期待が高すぎだったかも?って思ってみたり」

番外個体「バカだねー。ホントに嫌なら受講生におねーたまが居んの見つけた瞬間に帰ってんでしょ。ありゃそういうヤツだよん?」

芳川桔梗「人間の心なんて結構単純に出来ているのに、その外見は複雑なものなのよ。大抵の場合、本人すら本心は推し量れないんだから」

黄泉川愛穂「ちょうど生物の生 みたいなもんじゃん。何の理屈で特定の行動が行われてるか、偏見抜きでじっくり見守ってやんないとね」

番外個体「そんで結果的に、ありゃ最低の外道だぜって証明されたら大笑い」 ケケケ


芳川桔梗「ところで、参加賞とやらで処分したのね……、アレ」

打ち止め「ああ、アレ……って、ミサカはミサカは巨大物体の面影が脳裏から離れずブルブルブルブル」

番外個体「ミサカとしても、まさか断線した海底ケーブルに電気流したらあんなもんが浮いてくるとは。いやはやビックリビックリ」

黄泉川愛穂「毒流し漁、爆破漁、そして電気漁はほぼ世界中で犯罪じゃん! そしてアレを持ち帰った不幸な受講生に幸あれじゃん……」



『リュウグウノツカイは筋肉や骨を減らし、代わりに比重の軽い水分を大量に蓄えることで……、つまりそれはドロドロの物体に過ぎない!』



禁書「とうま! このふやけたスポンジみたいなブヨブヨの何か、とっても美味しいんだよ!!」 ハフハフ

白井「いえ、正直味は……、ですけど原形を留めないほど崩れた身は非常に魅力的ですの!」 フー フー

禁書「すごいよとうま! ホットプレートが水浸しになるくらい切り身からお水が出てくるんだよ!!」ジュー ジュー

白井「皮にうっすら残る怪しい模様もかなりの高ポイントですの。残念ですけど、お鍋では完全に身が溶けてしまいましたわね」 グツグツ


御坂「黒子もだけど、あの白い子もスゴいわね。…………、リュウグウノツカイの水分含有量ナメてたわ。ゴメン」

上条「この頼りになる二人に出来るだけ処理してもらおう……。で、残りはご近所にでも配るかな……」

御坂「それなら私も心当たりが二人ほど居るわ。でも、貰って困るものは贈っても喜ばれないだろうなー」








   ~おしまい~




373: 茫漠 2012/01/10(火) 01:04:15.01 ID:2wTBt1S30


                               ☆

「なあインデックス、信じられるか? この上条さんが新年を無事迎えてるんだぜ?」

「とうま…………、なにはともあれオメデトウなんだよ」

「去年はとにかく色々あったからなあ。覚えてないから定かじゃないけど、アレで平年並みってことは無いよな」

「毎年あんな災難にあってるならとうまはとっくに神の御許かも。って言うかむしろお迎えから嫌われてるレベルなんだよ」

「でもな、生きることに希望が少しも見えなくても生きてること自体が希望ならそれでオッケー、って思わないか?」

「そんな悟ったこと言っちゃ悲しすぎるんだよ!! それと年明けなんだからもっとハレな会話をしなきゃダメかも!」


「わーってるって。でな、こっそり予習してきたんだけど、新春一発目だし干支にまつわるおさかな話なんてどうだ?」

「えっと……、つまりそれって辰のこと?」

「おう! 辰ってのは想像上の存在ではあるけど十二支の中で唯一の水生生物だからな」

「子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥……、確かに辰以外は実在の陸上動物なんだけど…」

「なんだよ? このテーマに何かご不満でも?」

「ううん、そういうんじゃないんだよ。ただちょっと……、とうまには荷が重いんじゃないかなって」


「……言葉がキビシくないか? そりゃあさ、とどのつまり幻想獣の話なワケで、いわゆるお前の専門なんだけどさ」

「って言うかね、辰こと竜は語るべきことが多すぎるんだよ。基本情報の羅列だけで単行本が50冊は書けるかも」

「オイオイいくらなんでも50冊って、大げさな表現にも程度ってモンがあるぞ?」

「むぅ、やっぱり全然わかってないんだよ。素人が触れちゃダメな事が世の中にはあるってそろそろ学習して欲しいかも」

「はあ? んじゃ竜について話すだけで大罪だ、ってのかよ??」

「ちがうかも。私が言ってるのは、『竜とはどんなものであるか』は危険物、取り扱い注意ってことだよ」


「いやいやいやいやいや、お前の考えがさっぱりわかんねーよ。竜なんて所詮ドラゴンだぞ?」

「とにかく少しの間で良いから黙ってて欲しいかも!! 今からその腐った思考を叩き治して差し上げるんだよ!」

「なっ…………、」

「大雑把な説明だからすぐ終わるんだよ。準備はいいかな?」




374: 茫漠 2012/01/10(火) 01:06:04.03 ID:2wTBt1S30


誰でも知っているしさっきから何度も言ってるけど、十二支の辰とは竜のことだよね?
その存在を説明するとなるとどうしても避けられない問題が起こっちゃうんだよ。

えっと、簡単にまとめると


1)十二支の発祥は中国だけど、竜は世界中に類似の伝承があり起源が定かじゃない

2)その姿は、大きなウロコを具えた長い胴体に鹿のような角と長いヒゲを蓄えた獣の顔、なんて描写されるけど
  実際は幻獣だから当然なんだけど真の姿というものを持ってない

3)またその基本的な姿さえ複数の幻獣や実在の動物のイメージが混合しちゃった結果だからイメージの基になったモノ、
  つまりモデルが何なのかさえハッキリ言えない

4)そして地域によって宗教によって人によって竜の位置づけも様々。怪物だったり神様だったり悪魔だったり……

5)ココに西洋のドラゴンを竜の一種として持ってきたら話は更に無茶苦茶になっちゃう
  ドラゴンは一般の人にとっては災いの象徴であるのと同時に知恵を授けてくれるモノっていう不思議な存在だからね
  付け加えると、近代魔術師にとってはまた別の意味になっちゃったりするし


と、こんなふうに竜って曖昧で不可解で、吉でも凶でも無く、またそのどちらでもあるの。

そんな竜を安易に『こういうモノです』って断定しちゃうのは最悪、他人の神様を侮辱するってことになるんだよ。
逆の場合もあるだろうけどどっちにしても深刻なトラブルになりかねないデリケートな話題なのかも。



「どう? それでも竜の説明をしたいのならそれ相応の覚悟が必要かも」

「……え? イヤ、全然納得出来てねえんだけど?? 別に俺としては竜を貶めるようなことをいうつもりは無いし」

「貶めるとか誉めそやすとかの問題じゃあないもん。まったく、とうまは物分りが悪すぎるんだよ!」

「じゃ、じゃあどう考えればいいんだよ? 何がどうしてダメなのか解るように説明してくれよ」



「ん~~、そだね。たとえばハーレムラノベのヒロインとかバトル物の最強キャラとかを断定的に語ったらどうなるかな?」

「?? そんなの好きなようにやればいいんじゃねえの? 作り話の解釈なんて人それぞれなんだから…」



「ふ~ん。じゃあ、えーっと、一休さんのメインヒロインって桔梗屋の弥生さんだよね?」

「はあああああ? お前全然解ってねえな!? 一休さんには相思相愛のさよちゃんがいるだろ!」

「それこそありえないんだよ。一休さんは小坊主だけど実は帝の子供なんだよ? 庶民じゃ釣り合わないもん」

「んなもん関係ねえよ! それに弥生は高飛車でトラブルばっか起こしやがるし、バカな兄弟子の秀念がお似合いだろ!」

「秀念さんが弥生さんにホレちゃってるのは、作中で弥生さんが人気キャラって事を証明してるとも言えるかも」

「弥生を贔屓したいからって深読みし過ぎだ! 大体、身分を言うなら露姫が一番相応しいってことになっちまうぞ!」

「……やんちゃ姫は無いよね。あんなワガママで意地汚くてウルサくて生意気な子がヒロインって、無い無い」

「実は素直でいい子って描写もあるにはあるけどな。とにかくヤヤコシイ事情抜きに考えたらさよちゃん一択なんだよ」

「南北朝のヤヤコシイ時代の、出自のヤヤコシイ主人公の周りのヤヤコシイ人達からヤヤコシサを抜くって意味不明かも?」

「そうじゃなくてだな、弥生は一休さんに対して特別に好意を寄せてる感じが無いだろ? その時点で資格が無いの!」

「だったらまだ幼いさよちゃんだって同じかも …………と、こういうことなんだよ」


375: 茫漠 2012/01/10(火) 01:08:13.23 ID:2wTBt1S30

「なにがだよ!?」

「だから、竜についても今の話みたいにアチラを立てたらコチラが立たない感じになっちゃうんだよ」

「……、つまり竜とはどんなものかを説明する場合には遍く全方位に気を使った描写が必要になるってことか」

「誰も傷付けたくなければ、だけどね。逆に言えば他人を害しても良いって覚悟があるなら好きにすればいいんだよ」

「……、そりゃ下手したら『俺は無神経です』って真顔で自己紹介するようなモンだ。ワザとそんなマネできないよな」

「無自覚だったらなおさらタチが悪いかも? 竜は存在していないかもだけど、竜を語る人は実在するからね」



「オチもないしおさかな関係ないし曖昧な話だったな……、ま、一発目だしこんなもんか?」

「テーマが過大だったからね、仕方ないかも。まあそんなことより定番の挨拶で締めておくんだよ!」

「定番? ああ」
                  

                  『今年もよろしくなんだよ』







376: 茫漠 2012/01/10(火) 01:09:50.82 ID:2wTBt1S30

                                      ☆

佐天「という訳で、辰年にちなんだ都市伝説といえばアレしかないですよね!!」

白井「また都市伝説ですの? 佐天さんの辞書には懲りるって文字が無いとしか思えませんの」

御坂「なんだかイヤな予感しかしないわね……」

初春「アレって言われても全然心当たりが無いのに、それ以上言っちゃダメって悪寒がビンビンします!」


佐天「あるえー? 皆さん、ノリが悪いですよー! もっと盛り上がっていきましょうよ。ほら、アレを予想するとか」

白井「と言われましても…………。竜に関係する都市伝説……」フムー

御坂「竜……、ドラゴン……、マカラ……、ナーガラジャ……、八岐大蛇……、ワイバーン……、九頭竜……」

初春「うーん。都市伝説ですから、もっと俗な話じゃないですかね? 路地裏がどうとか下水道がどうとか」


佐天「ああ、ニューヨークの下水道の都市伝説もあるよね。なんだっけ? 薄暗い地下道に蠢く白いワニ……、だったかな」

白井「それ、くだらないB級パニック映画のモトネタですわよね? ええと…」

御坂「あががっが!! ち、違くて、えーっと、あ! 解ったわよ解った!!! 空に掛かる虹は竜の宝物の根元の妖精!」

初春「どうしたんですか御坂さん? 言ってる事が支離滅裂ですけど??」


佐天「多分それは『虹の根元に辿り着くと幸せになる』じゃないですか? 宝物とか竜とか関係ないと思うけど」

白井「いえ、虹という字には虫が入ってますでしょう? これは大昔、虹は巨大な神秘生物と思われていた名残ですの」

初春「虫じゃないのに虫偏なのは蛇とか蜥蜴とか蜃とかと同じですね。ま、言っちゃえば竜みたいなモノですかね?」

御坂「そうそうそう、そういうことなのよ。ホラ、西洋のドラゴンってお姫様と宝物を奪ってくるイメージじゃない」


佐天「ははあ~、それで奪ってきたものが虹の根元にあるから辿り着けたら幸せになるって…」

白井「はて? わたくしの知ってる話では虹の根元に宝を埋めているのは妖精さんだったような……」

初春「虹の根元に行くと良いことがあるって伝承は世界中色んなトコにありますからね。それぞれ微妙に違いますけど」

御坂「まあ、現代まで伝わってる話は色んなトコの色んな伝説が融合してるってことでしょ」


白井「晴れた日にホースで水を撒けば解りますけれど、そもそも虹に根元なんてありえません。ただのまん丸ですの」

御坂「そこっ、夢の無いコトは言わない! むしろ普通は辿り着けない場所だからこそいいのよ」

初春「奇跡がそんな簡単に狙って起こせたら奇跡じゃないですからねー。ところで佐天さん?」

佐天「ミラクルかあ、ふむふむ……、ほ? なんだい初春?」

初春「結局、佐天さんの仕入れた辰年ならではの都市伝説って何だったんですか?」

御坂「そういえば聞いてなかったわね。ついでだし、良かったら教えてくれる?」


佐天「あ、えーとですね……。正直スケールの小さな話なんで無かったことにしてください! ゴメンなさい!!」

白井「期待していたわけではないですけど、無かったことにと言われると気になりますの……、ではまた次の機会に」






377: 茫漠 2012/01/10(火) 01:13:13.16 ID:2wTBt1S30

                                       ☆

打ち止め「ねえねえ、ロマンティックの日本語訳ってなにかな?ってミサカはミサカはたずねてみたり」

一方通行「辞書引け、と言いたい所だが……。またどォして今日はそンな質問なンだよ?」

打ち止め「クイズで死神博士が浪漫的って答えて不正解にされてておやおや?って…」

一方通行「何の話だよ? まァその浪漫的ってのは英語の音の当て字だから訳語としては不正解なンだろォが」


打ち止め「ふうん。でもさ、それなら正解は何なんだろってミサカはミサカは再び質問してみる」

一方通行「だから辞書引きやがれこのクソガキ! 大体、ロマンって言葉くらい知ってンだろ?」

打ち止め「ロマン? ロマンスなら見当がつくんだけどってミサカはミサカは耳年増なお年頃アピールしてみる」

一方通行「チッ……、何を勘違いしてンだか見えねェが覚えとけ。ロマンやロマンスってのは物語のことなンだよ」


打ち止め「物語って、つまりお話とか小説とかそういうの?」

一方通行「あァ。中でも特に伝奇、つまり普通じゃねェ世界を描いた超現実的な話をそォ呼ぶ」

打ち止め「あれ? でもロマンはともかくロマンスって、何かもっとこう、ねえ? ってミサカはミサカは曖昧モコモコ」

一方通行「ちったァ自分で考えるクセ付けろ! 語源知ってりゃ難しいコトじゃねェンだしよ」


打ち止め「言葉の意味が判らないのに語源なんて知ってると思うの?ってミサカはミサカは当然の返答をする」

一方通行「……そりゃそォか。ンじゃ軽くロマン、ロマンス、ロマンティックを説明してやる」

打ち止め「いいけどこのままだとおさかな話にならないよ?ってミサカはミサカは釘を刺してみたり」

一方通行「無駄な心配すンじゃねェ。俺を誰だと思ってる?」


打ち止め「……、じゃあお任せするね!」

一方通行「フン……。大昔のヨーロッパに於いて公用語はラテン語って決まってたンだが」

打ち止め「ラテン語、ふむふむ」

一方通行「公的な言葉ってのは、堅苦い雰囲気を与えンだろ? 次第に日常で使い難くなる」


打ち止め「日本語だと文語って感じかな?ってミサカはミサカはたとえてみたり」

一方通行「だな。で、必要に迫られて次第にラテン語を基にした会話用の気軽な言語が派生する」

打ち止め「今でも文書の言葉とおしゃべりの言葉はちょっと違うもんね。それで?」

一方通行「その会話用の気軽な口語がロマンス語、転じて口語で記される気軽な読み物をロマンスって呼ンだっつー事」




378: 茫漠 2012/01/10(火) 01:15:33.21 ID:2wTBt1S30

打ち止め「ほほぉ~、くだけた表現の楽しいお話ってトコロなんだね。ちなみにその名前はドコから来たのかな?」

一方通行「ラテン語の中心はローマだったンだよ。ローマには現在でもラテン語を公用語にしてるバチカンがあンだろ」

打ち止め「つまりローマの人が使い始めた言葉だからロマンス語とよばれたワケかあ」

一方通行「繰り返しになるが、物語としてのロマンスには血湧き肉踊る異能冒険長編が多かったンで…」

打ち止め「あれれれ? それはどっちかって言うとロマンのほうじゃないのかな?ってミサカはミサカは疑問を呈してみる」

一方通行「ロマンスがオマエの思ってる意味になってンのは、その手の話にありがちなヒロインの所為だろォ」


打ち止め「ヒロイン? お姫様とか幼馴染とか実は異性だったライバルとか毛布を纏った美女とか?」


一方通行「最後のは知らねェがそンなトコだ。

     ヒーローに絶望の淵から救われる囚われのヒロイン。
     実際にはありえない状況だからこその文字通り劇的な感情のぶつかり合い。
     そして誰もが羨むハッピーエンド。

     そンなロマンスに描かれるよォな恋愛、恋愛と言えねェ気もするが、それに憧れて
     『私も物語のヒーロー(ヒロイン)みたいな恋がしたい』とか考えちまう脳味噌に問題のあるヤツラ。

     ヤツラの考えが一般に定着しちまって、今ではロマンス=劇的な純愛って意味で使えるっつーコトだ」


打ち止め「それで、日本語だと混同を避けるためにもともとのロマンス(物語)の意味をロマンに当てたのかな?」

一方通行「生きてる言語だからな。まァ、ンなトコじゃねェの?」

打ち止め「ふーむふむ……、それでロマンティックの日本語訳は結局なんなの?ってミサカはミサカは三度目の正直」

一方通行「~テイックってのを中国語の音訳で的って字を当てンのと同様、○○的と訳すべきだが」


打ち止め「となると今までの話から……」

一方通行「物語ってのを軸にすンなら『空想的』『幻想的』『非現実的』が適当か?」

打ち止め「ドラマみたいなラブラブムードって感じだと『感傷的』『叙情的』『劇的』かなあ?」

一方通行「ついでに付け加えると芸術用語としては『ロマン主義的』なンて意味もあるが」

打ち止め「……、なんだか言葉の意味の幅が広すぎ!ってミサカはミサカは頭を抱えてみたり」


一方通行「だよなァ……。例えばこンな一節があったとする

『彼は感傷的な台本を劇的に改定し空想的な発想で幻想的に展開した非現実的な計画を叙情的に批判したロマン主義者だ』
『要するに彼はロマンティストだ』

     上半分だけでは意味不明、後半は簡潔に述べられているが漠然に過ぎるよな」


打ち止め「だね。単にロマンティックって言われたら注意したほうがいいかもってミサカはミサカは心してみる」


379: 茫漠 2012/01/10(火) 01:19:29.41 ID:2wTBt1S30


芳川桔梗「彼も言った様に、その手の問題が起こるのは言葉が成長し進化する生き物のような性質を持つ為ね」

番外個体「でもさ? それだと他人の話は単語の数だけ解釈が枝分かれすんじゃん。それでいいのん?」

打ち止め「ヒトは雰囲気や前後の文脈や環境からそれとなく意味を推測してるんだろうけど、考えたら危ういよね……」

一方通行「現実世界は滞りなく営業中だろォ? ンな心配するヒマあンなら辞書引いて語彙でも増やしとけ!」


芳川桔梗「曖昧なままでも日常では問題ないのよ。但しそれは確固たる基準があればこそ、なのだけれども」

打ち止め「言葉の基準って、つまり絶対に変化しない言語ってこと?ってミサカはミサカは、そんなのあるの?」

一方通行「生き物が成長進化すンのは生きてるからだ。なら言語も死ンでりゃ変化しねェだろ?」

番外個体「死語ってヤツ? ナウなヤングにバカウケのイケてる超トレンディちゃん、的な」


芳川桔梗「それは今でも普通に通じるでしょう?」

一方通行「……、死語で正解だがソッチじゃねェ。日本人が全滅した場合の日本語、って感じの使用者が居ねェ言語だ」

打ち止め「言語が生きてるように変化するのは日々いろんなヒトに使われてるから。だから死語は変化しない、ってことね」

番外個体「法律用語とかが古めかしく難解過ぎんのはひょっとして、生きた言葉が起こす意味の曖昧さを回避する為かいな」

一方通行「で、ラテン語っつー死語の話をしたろ? 大昔に廃れた堅苦しい公的言語って」

芳川桔梗「口語がどんどん発達する一方でラテン語はその権威だけが上がって誰も使わなくなってしまったの」

一方通行「ラテン語が学術上統一的な真名、つまり学名で使われてンのはそンな事情で格式高く変化が無いからだ」

芳川桔梗「勿論、現在は西洋文明が支配的であるからって前提があるのだけれどもね」


打ち止め「学名って、鳥のトキを”Nipponia nippon”とか 表すアレかな」

芳川桔梗「そう。全ての分類された生物には学名が付くのよ。当然、おさかなにもね」

番外個体「ほお~。ん? でもさ、死語ってことは新しいモンを表現するには語彙が足りなくね?」

一方通行「ホントにムダなトコだけ鋭いよなオマエら……。実際の学名は生きてる言語をラテン語化させて作ンだよ」


芳川桔梗「ん~……、そっちに話が行くと収拾が付かないからその辺にしておきなさい。大して面白くもないんだし」

一方通行「あァ? 面白くないとかバカ言ってンじゃねェよ。命名規則にはロマンが溢れてンだよ!」

番外個体「良く知らないけど、誰かがロマンティックなんだね」

打ち止め「うんうん、ミサカもあなたの止まらないロマンティックに胸が苦しくなるよ」




一方通行「……………、ってオイ待て! コレでオチって、シュール過ぎンだろォがああ!?」

打ち止め「だってロマンティックだからしょうがないよってミサカはミサカは曖昧な言葉で締めてみたり!」



   ~おしまい~



384: 禁句……かな? 2012/01/18(水) 21:55:44.40 ID:SThyf77I0

                        ☆

「なあインデックス…………………、あれ? インデックスはドコ行った??? ってお前は!!」

「やあやあ、久しぶりだね上条当麻」

「ステイル! どういうことだよ、インデックスに何があった!?」

「……、説明するのもバカらしいことなんだけどね。暫定保護者である君には伝えておくべきなんだろうなあ」


  ――――――――――――――――――――――


「……つまり要約すると、お前んトコの偉いヒトが貴重品を金庫に入れてそのカギを魔術で保管していたんだけど」

「そ。あろうことかあのバカ……、いやその方は自分の掛けた魔術の解法を失念してしまったらしくてね」

「そこであらゆる魔術に精通するインデックスが必要になったワケか。でもそれならそれで一声掛けておけって…」

「わからないかな、だから僕はココに居るんだけど? 君が今の僕以上に不機嫌になる資格など無いってことさ」


「お前も相変わらずいい性格してんなあ……。じゃあ用事も済んだんだろ? お帰りはあちらだぜ」 ヒラヒラ

「これはご丁寧に。当然言われなくとも失礼すr……………なあ、おい?」

「なんだよ、何か文句でも付け忘れてたのか?」

「……コレは君の、上条当麻の水槽かい?」 トントン


「俺の部屋にあるんだから当然だろ? ……、でも最初に飼おうって言い出したのはインデックスだったかな?」

「…………………………………………」

「しょっちゅうおさかなの話をしてたらなんかその気になっちゃって、そしたらある日突然この衣装ケースを買って来て…」

「…………………………………………」 フム








「(『好きなヒトの好きなモノは好きになるものなんだよ!』 か……。まったく、余計なことを思い出させてくれる)」







「……で、メダカとシジミだけじゃ寂しいからアカザを入れたんだけど全然目立たなくってさ。目下追加投入を…」

「もういいよ。君は趣味の話になると止まらないタイプなのかい? 残念だけど僕は君の影響を受けるつもりはないんだよ」

「っと、悪い悪い。水槽をじっと見てるし、お前もおさかな好きなのかなって思っちゃって」

「嫌いとは言っていないけども。まあ、僕の場合は飼育よりむしろ食べるほうが好みかな」




385: 禁句……かな? 2012/01/18(水) 21:58:05.82 ID:SThyf77I0

「オイ? ウチの飼育水は薬品を入れてねえからメダカもマシジミも食べようと思えば食べれるけど、やらねえぞ?」

「そういう意味じゃない。君もあの子と同じような事を言うんだね……………………いや、なんでもない」

「何だよ? まあ、しつこく注意したから今ではスフィンクスだってメダカを狙わないんだ。だから頼むぜ?」

「ほう。僕などネコ畜生にも劣ると?」 パララパララ

「待て待て待て!! 悪かった!! だからこの部屋でルーンをバラ撒くのはご勘弁戴きたく願いけるのことよ!」

「フン……、そのラテン語混じりの気取った宗教家言葉を日本語に直訳したような語り口も鼻に付くが、まぁ良い」 シュッ


「え~~、まあ、なんだ? アレだよな。見てて全然飽きないしキレイだしカワイイし、飼育っていい趣味だと思う」

「…………、一応確認しておく。それ、おさかなの話だよね?」

「ん? いや別に犬でもネコでもチャボでもサラマンダーでも、なんでもいいんじゃねえの?」

「そ、そうか。そうだな……」

「んでお前はどうなんだよ? 何か飼ってたりしないのか?」

「僕の話なんてどうでもいいだろう? ……、神裂は未だに熱帯魚を飼ってるらしいけど」


「へえ、あの神裂が熱帯魚……」

「ああ。なんでも若いころからずっと続いてる趣味らしい」

「……、その言い方だと今は若くないって聞こえないか?」

「だからそう言ってる」


「……………………、それはともかく意外なトコに水槽仲間が居たんだなー。どんな熱帯魚が居るのか興味あるな」

「おい、変な気を起こすな? おそらく今はイギリス清教の女子寮に設置されてるだろうから」

「ってことはロンドンか……、今度あっちに行く用事があったら見せてくれよ」

「本当に君はヒトの話を断片的にしか理解しないな。絶対に行くなよ。騒ぎの火種になるのがオチだから」


「ダイジョーブだって。おさかな好きってのは知識があるから他人の水槽を表面上褒めちぎるのは得意なんだぜ?」

「知ってるよ。そのくせ内心では自分の水槽が一番だって確信してるんだろ? それに問題はそこじゃあない」

「そうですね。私としても上条当麻に魚を見せる分には構いませんが、女子寮に連れて行くのは憚られます」

「ほらみろ、神裂もそう思うだろ? …………………………って、なんだ居たのか。もう『用事』は終わったのかい?」


「滞りなく。あの子もこの通り、お返しします」

「とうま、ただいまーなんだよ!」

「インデックス、今日は突然ご苦労様だったな。よーし、晩飯は上条さんが腕によりを掛けてゴチソウ作ってやんよ!」

「ゴ、ゴチソウって、期待しちゃうんだよ!? どうせモヤシが主役だってわかっていてもワクワクが止まらないかも!!」




                              ワイワイ ギャーギャー



「……フン、邪魔者は消えるとするか」

「ですね。貴方には少々言い聞かせておかねばならない事がありますが、それは道すがらにでも」






386: 禁句……かな? 2012/01/18(水) 22:01:38.55 ID:SThyf77I0

                                    ☆

初春「そーいえば、マズイ魚の話ってしたことありましたっけ?」

佐天「ん~、どうだったっけ? 条件によってクサイとか苦いとか、そういうんじゃなくて?」

白井「毒があるとか小さすぎて食用に向かないとかでもなく、単に食味が悪いって話ですの?」

御坂「それも『あんまり美味しくない』じゃなくて極端に味の悪い魚か。コレはゲテモノ好きの黒子も範囲外じゃない?」


白井「お、お姉様!? 今更ながらその紹介はあんまりですわよ!」

佐天「そもそも食用種って美味しいから食べるんですもんね。マズイ食べ物って言葉として成立してないのかも」

初春「ですよねえ。だからこそそんな魚って居るのかな?って気になりまして」

御坂「うーん、身近な魚種でなければ候補は沢山居そうよね。でもそれじゃ面白くない」


白井「あの、わたくしほったらかしですの?」

御坂「例えばミドリガメことミシシッピアカミミガメってどう? アレには顕著な毒も無いはずよ」

佐天「結構大きくなりますしね。食用亀として認識されてないってことは美味しくない可能性が高くないですか?」

初春「ん~、残念ですけどネットの情報を見る限りミドリガメは調理次第でなんとかなるみたいですよ」


白井「当然ですの。カメなんて流水で一定期間泥抜きしたら首をぐっと引っ張って…」

御坂「あ、じゃあじゃあアブラハヤなんてどうかな? 川釣り好きにはド外道扱いされてるしさ」

佐天「聞いた話だと体中ヌルヌルのヌメヌメなんですよね。見た目は雑魚一般って感じなのに」

初春「これも佐天さんの言う雑魚一般、つまりオイカワやウグイと同じで生息域次第って感じかもです」


白井「そりゃ雑魚だけあってドブ川に近いような水域でも見つかりますからイメージは最低ですの。ですけどヌメリが…」

御坂「ふむ、ドブ川ね……、そっか! ニゴイはマズイって聞いたことあるわ!」

初春「あーあー、確かにそれはよく聞くかもですね。ほぼ雑食底棲魚だからとにかく臭くてエグイって」

佐天「え? ウチの実家ではニゴイは普通に食べますよ?? おろして皮剥いてフライで食べるとホックホクなんですよ」


白井「なにせ捕獲が容易な50cmを越える大魚ですの。先人がどうにかして食べようと色々と工夫した結果ですわね」

御坂「これも地域差があるのかあ。ん~、こうやって考えてくと絶対的にマズイ魚ってホントに居るのかしら?」

初春「突き詰めてしまえば、料理って食べられないものを美味しくする技術ですからね」

佐天「むむ……、このままじゃオチが無いからイチかバチか! 白井さん、何か心当たり無いですか??」


白井「最初っからわたくしに聞けばいいですのに。当然、身近かつ絶対的にマズイおさかな、存じておりますの」

初春「おおっ、流石と言うかなんと言うか。で、それは一体なんですか?」

白井「金魚のタマゴですの。どこまでも生臭く重い粘液質がいつまでも口に残って軽いトラウマになりますわよ?」




御坂「…………だからコイツからは聞きたくなかったのよ」






387: 禁句……かな? 2012/01/18(水) 22:05:12.59 ID:SThyf77I0

                                      ☆

番外個体「違うもん、ミサカじゃないもん……」 ブツブツブツブツ





一方通行「なァオイ、またアイツのアレは、例のアレか?」

打ち止め「そうみたい、ってミサカはミサカは敢えて詳細を伏せてみたり」

一方通行「フン……。ところで、俺の知ったことじゃねェがそもそもどォしてオマエらは小説なンざ書いてンだ?」

打ち止め「……、それは聞かないほうがいいかも?ってミサカはミサカはミサカ達の加虐精神の発露を隠蔽する」


一方通行「……………………」

打ち止め「そ、そんなことより世界一小さなカエル! 世界最小の脊椎動物の話が聞きたいなってミサカは…」

一方通行「……………………悪りィが、今日は気分が乗らねェ」 ガタッ

打ち止め「あ……、」


打ち止め「(どうしよう、あの人の虚弱メンタルを無闇に刺激しちゃったよ、ってミサカはミサカは現状確認する)」

打ち止め「(末っ子も極限ダウナー状 だし、このままじゃお話にならない……、何とかしないと)」

打ち止め「(ん? 何? 19090号、この難局を打開する秘策があるの!?)」

打ち止め「(ふむふむ、ほうほう、え? いや、それはちょっと……、あ、うんうん、なるほど…………)」


打ち止め「(ミサカネットワークのトップシークレットのひとつがミサカの女優魂に掛かってるね)」 ギュッ!





 < コンコン

打ち止め「あの、お話聞いてもらっていいかなってミサカはミサカは一応断りを入れてみたり」


「―――――――――――――――――――――― 」 シーン


打ち止め「じゃ、じゃあ勝手に独り言するから気にしないでねってミサカはミサカは扉に向かって宣言してみる」







388: 禁句……かな? 2012/01/18(水) 22:07:26.92 ID:SThyf77I0


打ち止め「じゃあいくよー、ヌマエビの交尾のお話! ってミサカはミサカはお題を発表してみたり」





あなたにとっては常識かもしれないけど、再確認させてね。



 淡水エビを大きく分けると肉食傾向の強いテナガエビ類と草食傾向の強いヌマエビ類に分けられるよね、って
ミサカはミサカはザリガニを完全に蚊帳の外に置いてみたり。

それでヌマエビ類なんだけど、分類が細かすぎて全部を挙げられるほどミサカは知識が無いから誤魔化しつつ
説明するので許してね、ってミサカはミサカは予防線を忘れずに張っておく。

基本的に比較的小型で、しかもザリガニやテナガエビのような長いハサミを持っていなくて、攻撃力に欠けてるから
獲物を捕らえることはほぼ不可能。だからいつもは動かないものを小さな脚でツマんで小さなアゴでカジって食べるの。
草食傾向が高いのはその為だけど、動かないものなら当然肉も食べるの、ってミサカはミサカは核心を匂わせておく。


 そんなヌマエビ類で、現在日本の自然で一番普通に見つかる種類がミナミヌマエビじゃないかと思うんだけど、って
ミサカはミサカは勝手な推測をしてみる。

ミナミヌマエビは小川や池、沼とかの流れの弱かったり無かったりする浅い水場の水草の周りに集団を作って生活する
小型種が多いヌマエビ界の一員に相応しい、せいぜい全長3cmくらいのエビだよ、ってミサカはミサカは解説してみたり。

攻撃性が低く沈殿物やコケなどを一日中処理し続ける生 が水槽の掃除屋さんとして重宝されてるヌマエビの仲間の中で
飼育種ではヤマトヌマエビって種類が人気があるかな。大きくて食欲旺盛で透明なボディが美しいエビだからね。
それに比べてミナミヌマエビは小さくて、食欲は旺盛だけども食べるのが遅くて、どちらかというと地味な子だから……。

付け加えると、ヤマトヌマエビは淡水エビだけどその幼生、つまり子供時代には塩分が無いと生きられないの。
タマゴから孵化した後、川の流れに乗って海まで行ってエビになってから戻って来るって性質があるんだよね。
だから淡水の水槽内では繁殖が期待出来ない、別の言い方をすると勝手に増えることが無いの。
ミナミヌマエビが全生活史を淡水で完結させてるから水槽内で異常繁殖しがちなのとは対照的だよね、って
ミサカはミサカはそんなところも飼育人気の差なのかな?とか邪推してみたり。


 で、飼い主が好む好まざるに関わらずミナミヌマエビは水槽内で特に工夫も無く繁殖が期待できるって話だったんだけど
ココからが根幹だからよく聞いておいてね、ってミサカはミサカは相変わらず返事が無いドアに向かって語りかけてみる。


平均的な寿命が1年程度のミナミヌマエビ、自然界では寒い冬の間に大人の体に成長して暖かい春から夏が恋の季節なの。
交尾は大体こんな流れじゃないかとミサカはは思うんだけど、ってミサカはミサカは想像してみる。


1)まず、タマゴの素をがっつり溜め込んだメスがオスを惹き付けるニオイを出す

2)それに釣られて  した多数のオスがメスに向かってくるけど、この時点ではメスは逃げ回るだけ

3)メスが脱皮する。オスを惹き付けるニオイは最大最強になる

4)脱皮後に最初にメスを捕まえたオスと交接する

5)遅れてきたオスたちから逃げ延びたメスは産卵後、タマゴを孵化するまでお腹の下で大事に抱え続ける


言うまでも無いことだけどこれは成功例、うまくいった場合の話だよって
ミサカはミサカはセイコウレイってスレスレの日本語だよなあとか考えないよう釘を刺しておく。

メスがニオイ、フェロモンだっけ? でオスを  させたくせに自分が脱皮するまで逃げ回るのは、とある情報筋によると
脱皮前に受精・産卵しちゃうとその後に脱皮した時に抱えたタマゴごと脱げてしまってムダになるからなんだって。
だからこそ『防御が手薄になりますよー』って予告することになってもオスに事前に脱皮を知らせないとダメなの。
だって、脱皮してから宣伝してオスが  するのを待ってたらその分無防備な時間が増えてますます危険になるからねって
ミサカはミサカは断じてみたり。





389: 禁句……かな? 2012/01/18(水) 22:12:38.22 ID:SThyf77I0

 この一連の繁殖行動の流れって一見、全てが上手く行くように設計されてる感じだけど落とし穴があるんだよね、って
ミサカはミサカはちょっと悲しい話をする。

メスは脱皮後速やかに交尾を済ますことが出来るよう事前に複数のオスを  させているけど、実際カップルになれるのは
一匹のオスだけ。じゃあ余ったオスはどうするんだろ?

それと一般にエビのメスは交尾の際に完全に動きが止まってしまうんだよね? 一切の回避動作、攻撃動作をせずオスに
身を任せるってトコかなってミサカはミサカはイメージを膨らませてみる。

これらのこと、そしてヌマエビの生 そのものが重なり合うと何が起こるか、もうお分かりですね? って
ミサカはミサカはタメを作って盛り上げてみたり!


 メスが脱皮後に最初に出会ったオスと交尾をする際、行為そのものはごく短時間、数秒で終わるはずなんだけど
その間にも別のオスがニオイに釣られてドンドン集まってくるの。でも既に指定席は予約済みだから徒労だよね?
交尾のチャンスを逃した他のオスたちはそのメスを諦めざるを得ない。ニオイに釣られたことも忘れてしまうの。
で、ふと目の前を見ると、何があったかな? 

そこには決して動くことの無い、しかも柔らかくて大きな肉の塊があるんじゃなかったっけ?

ヌマエビは一日中何かをツマンで食べる生き物、獲物を捕らえるのは苦手だけれども動かなければ肉も食べるんだよね?


本能に従って行動を止めているメスのエビは、出遅れたオスたちのスイッチが入れ替わっても抵抗すらせずに
ツマツマツマツマと傷付けられていくの。ミナミヌマエビはメスの方が体が大きいし、力だって強い。
いつもなら軽くあしらえるオスたちに好き放題にされてしまうの。
そしてその間、パートナーのオスは行為に専念して他のオスを追い払うこともしないから、もうどうしようもないよね。

最悪、行為途中で相手の体が不十分なことに気付いたパートナーはそれがエサに見えちゃうことがあるくらい……。


 じゃあどうしてこんなことが起こるんだろ? どうすれば防げるんだろ? ってミサカはミサカは問題提起してみる。


もちろんだけど、この悲しい出来事は過密状 での飼育で見られがちだから、あまり多数のエビを一箇所に纏めないのは
有効な対策だよ? でもね、決して根本的な解決策じゃないと思うのってミサカはミサカは嘯いてみる。
だって自然界でのこのエビの習性的に、過密状 ってのは普通なんだもん。手網で数百匹一度に捕まえられるエビだから。
だからむしろ少数飼いの方が不自然じゃないかなってミサカはミサカは考えてるの。
川や池でも恒常的に交尾時の共食いは行われているって考えたほうが理に適ってるんじゃないかなあ。

だから視点を変えて、エビの行動に間違いが無いかを考えてみるってミサカはミサカは話題を華麗にチェンジングー。

出演者はオスを  させ呼び寄せるメス一匹、パートナーのオス一匹、それ以外の出遅れた複数のオス。
悲劇の本質はメスが食べられて死ぬこと。食べてしまうのは主に出遅れたオスたち。
本能によりメスは反撃できない状 で、且つパートナーのオスはメスに夢中で一切関知しない。

概要はこんな感じだよね。ひとつひとつの出来事の問題点を考えて行くよ、ってミサカはミサカはラストスパート!


           メスまたはパートナーが抵抗しないからいけない?
      メスがオスを呼びすぎたのがいけない?
              出遅れたオスたちがおとなしくその場を離れればいい?
         そもそも交尾などしなければ良かった?
                    防御力が極端に弱い脱皮直後に交尾をしなければいい?
            ミナミヌマエビって存在が間違ってる?


そう、ミサカにはこの難問に答えが見つけられないの、ってミサカはミサカは告白してみる。
どの問題点もエビたち自身には防ぐ手段が無い、避けがたい、どうしようもないことだもん。

だけど悲劇は実際に起こって、パートナーと余ったオスは生きて、メスは死んだんだよ。それだけは確かなの。
誰も悪くなかったなんて言えないけど、間違っていたのは確かなんだけど、償われるべき者が既に居ないんだけど。

だから、だからね? あの……、その……、



せ、せめて生き残ったエビにはカッコ悪い捻じ曲がった姿で居て欲しくないの!! ってミサカはミサカは……






  <ガチャっと

390: 禁句……かな? 2012/01/18(水) 22:19:55.27 ID:SThyf77I0




一方通行「……、あのよォ」

打ち止め「……………………、うん」 





一方通行「ヌマエビだってエビだぜ? 腰が曲がってて当たり前だっつーの」

打ち止め「」

一方通行「それになンなンだよオマエの長ったらしい上に中身の薄い愚にも付かねェワンマントーク聞かせやがって」

打ち止め「……、ゴメンナサイ」


一方通行「情報が未整理、知識が足りてねェ、生物を擬人化する、あとなンだ? ……、とにかく酷ェ内容だった」

打ち止め「……うん、わかってるってミサカはミサカは大いに反省してみたり」

一方通行「だから……、つまりアレだ。こォいうマネは二度とすンな」

打ち止め「えっ? でもそれじゃあ……」


一方通行「物分りが悪りィガキだなオマエは!? 他のヤツには任せられねェ、解説役は俺だっつってンだろォが!」

打ち止め「!?」

一方通行「今日みてェなブザマなマネは二度と、あァ、俺も含めて二度と許さねェから、肝に銘じとけ!!」

打ち止め「……うん、また今度カエルの話、お願いねってミサカはミサカは予約も忘れずお返事してみたり!」







一方通行「(しかし、引っかかる……。アレがアレの例え話だったとすると)」

一方通行「(『メスのエビは本来ならオスより強いが仕方なく殺される』 ってのが気に入らねェ)」

一方通行「(あのクソガキのことだから大した意図は無ェのかも知れねェが……、っと)」

一方通行「(そォいう瑣末なコトに拘った結果が今回のダセェ事 じゃねェのか!? 学習しろ、俺!!)」




番外個体「ん? オチビの説教は終わったのかね第一位?」 ニヤニヤ

一方通行「……、オマエこそフザけた冗談言える程度には回復しましたってか? いらねェ報告ご苦労」

番外個体「ハテ? 何のことやら? このミサカは次回作の構想に忙しかったりすんだけど」

一方通行「どォせまた代わり映えの無ェ、俺が酷ェ目に遭う話だろ? 飽きねェよな………………、ン?」

番外個体「は? 何だべさ?」

一方通行「ひょっとしてオマエらの小説の中の俺を痛めつけてる方法ってのは、何かモトネタがあったりすンのか?」





番外個体「あぁ、それは―――――――――――――――――――――― ソレハ禁則事項デス」





  ~おしまい~



395: 罵詈 2012/01/24(火) 19:48:13.23 ID:oqlGOeXO0

                                         ☆

「なあインデックス、ちょっと折り入って詳しく教えてもらいたいコトがあるんだけど……」

「とうま? その他人行儀な腰の低さがなんだか嫌な予感なんだよ。でも、とりあえず言うだけならタダかも?」

「それもそうだな。…………あのさ、あらためて魔術について質問を…」

「あのねとうま?? コレまで何度も言ってきたけど、とうまたちは魔術に詳しくなったら絶対ダメなんだよ?」


「ああ、分ってる。別に俺は便利っぽいとか強そうとか、そんなバカな理由で覚えたいってコトじゃなくてだな…」

「むぅ? その言い方だと私にはやっぱりとうまは見当違いをしているように感じるんだよ」

「……、どういうことだよ?」

「そもそも魔術は利便性や序列的強さを求める技術ではないんだよ。乱暴に表現するならむしろ不便で弱いのかも」


「えーっ? それはいくらなんでもオカシイな展開だろ……うん、んなワケないありえない」

「ほら、ほらっ!! やっぱり判ってなかったんだよ! 今まで私の話を右から左に受け流し続けてたんだよ!!」 ガタッ

「ちょと待て、インデックス落ち着けって!!   すんなよ、な? くーるだうーーん」 シンコキュー!

「ふぅ~~ひぃ~~~。ともかく、とうまがいつもいつもいっつも人の話をちゃんと聞いてないのがイケナイのかも」


「ん~? 俺ってそんな頻繁に話を聞き逃して失敗してるイメージある? ちょっと大げさに言いすぎじゃないか…」

「例えばアレだよ! ひょうかが天使になっちゃって、人がバタバタ倒れた日!!」

「……、また随分と懐かしいコトを」

「私はあの術式の正体を、神聖なるモノへの害意に対する戒め、つまり天罰を魔術的に引き起こしてるって予想したよね?」

「確かそうだったな。敵意とか悪意とか嫌悪感とか? 術者に対するそういった感情をトリガーにして昏倒させるって」

「距離や場所を問わず、にね。だから私はあの時、とうまにこう言ったんだよ」


        ~私にその魔術師の素性を話さないで!


「歩く教会の防御力が有効で無い以上、私に天罰が下りない保証は無いからね。とうまは、そうか、って返事した」

「んーっ? なら俺はちゃんとお前の言ったことを理解していたんじゃん」

「でもそのすぐ後、私と別行動する際に、さらっとその魔術師の名前も所属も目的も全部喋っちゃったんだよ!!」

「うそおおおおっ!?」

「あの時の私の気持ちがわかる? 緊急事 だからとうまを責めなかったけど、実はハラワタ煮えくり返ってたかも!!」

「……、あーっと、いや、しかしだな、それがあったからその程度の情報では天罰が下らないって証明されたワケで…」

「ふざけるんじゃないんだよ!! もし私が倒れていたらあの子もひょうかも、学園都市だってどうなっていたことか……」







「―――――――――――――――――悪かった、悪かったよ。確かに俺の不注意だった。ゴメン」

「肝に銘じるんだよ! 結果オーライならとりあえずオッケーって考えは今後許されないと覚悟しておくんだよ!!」






396: 罵詈 2012/01/24(火) 19:52:38.93 ID:oqlGOeXO0

「それで……、話を元に戻すんだけど」

「魔術についてだよね? 気が進まないけど、心優しいインデックスさんは耳を傾けてあげるんだよ。感謝するといいかも」

「ああ、んじゃ…………………………………………、ふぅひぃ~……、頼むよ」

「ん? んっ? ん~っ? とうまが何て言ったのか、清い心のインデックスさんには聞こえなかったかも?」

「…………、だから…………」 

「ねえねえどうしたの? 頼みがあるなら、泣いて跪いてブザマにお願いするのが筋なんだよ、と~うーま?」



 ニヤッ

「ぷぷぷー、インデックスさん? そんな見え見えの手に引っかかる上条さんではありませんのことよ!」

「ふぇ? い、いきなり何なのかな??」

「俺がまた話をちゃんと聞いてないと思ったろ? お前の不自然に厳しすぎる 度、違和感だらけなんだよ」

「……、そのココロは?」

「俺たちはやはり魔術を学ぶべきじゃない、だから空気を悪くして話を終わらせようとした。……、そんなトコだろ?」

「(やっぱりとうまはヘンに鋭くて、破滅的に鈍いんだよ……)……、だったらどうだって言うのかな?」


「お前が話したくないなら無理強いしない。だから……、俺が魔術を解説する!」 \ドッパーン/

「……、は?」 ワケワカラン ?

「俺が魔術をどう認識してるか?って話を俺自身がするんなら、決して危険な知識に触れることが無いだろ?」

「待って、よくわかんないんだけど……、それをして何かの役に立つの?」


「役に立つか?と言われると、そーだな。俺の考え方がどのくらい間違ってるかハッキリするとか…」

「それと、聞き役は私なのかな? それって結局、あとから私が間違いを訂正するワケで二度手間じゃないかな?」

「ふむ。……じゃ、上条さんが誰か俺以上に知識の無いヤツ相手に魔術を解説するから、お前はただ笑って見てろよ」

「??? それじゃあますます何の為にとうまがヤル気になってるのか……、無意味にも程があるのかも」


「細かいことは気にするなよ。気持ちに正直になる事に理由なんて必要ないんだから。そうだろ?」

「……ハァ、とうまが奇妙な精神論を語りだしちゃったら止められないかも。もう好きにすればいいんだよ」

「さすがインデックス、よく解ってるじゃないか。そうと決まれば誰か相手を呼ぼうぜ!」

「今日はグダグダ過ぎてどうでもいい気分なんだよ……。でもとうま、呼ぶのはいいけど一体誰を呼ぶの?」


「誰って、そりゃあ……」

「私の知る限り、とうまって能力者の人とあんまり関わり合いが無い気がするけど」

「バカ言ってもらっちゃ困りますよ? 上条さんには刎頚の交わりレベルの知り合いがたっくさん…」

「その中で、いきなり呼び出された挙句に素人が語る魔術の話なんて聞いてくれそうな奇特な人は居るのってことだよ」

「……、例えば魔術に知らず知らず関わってるとかで、俺の話に興味を持つ可能性がありそうなヤツだな」

「金髪の変な子の説明を聞いてたいつかの白い人、キンピラチンピラ、黒服童女は除外するとして、あと誰か居る?」

「う~ん……、意外と思いつかないぞ」







姫神「上条くん。大事なこと忘れてる」 ←ワタシ マホウツカイ

「大事なこと……?」 『あっ!』

397: 罵詈 2012/01/24(火) 19:55:07.85 ID:oqlGOeXO0

「……そうか、姫神が居たんだったな。悪い、蚊帳の外に置くような扱いしちまって…」

「ごめんねあいさ。全然そんな気は無かったんだよ?」

姫神「私は平気。それよりも早速本題に入るべき」

「ああそうだよな、じゃ急いで今日のテーマを決めるぞ!」


姫神「テーマ……?」

「何がいいかな~、おいインデックスも考えてくれよ?」

「わかってるよ! お正月はもうオワコンだよね……、ええと……」

姫神「……この話し合いの内容。魔術の解説に必要とは思えない」


「そーだ、節分の豆撒きと言えばアレがあるじゃねえか!」

「……、良い所に気が付いたかも! 今日は時間も無いしそれで行くんだよ!」

姫神「ちょちょちょ。ちょっと待って欲しい。上条くんとペアで魔術講座はどうなった?」

「いや~、せっかく姫神がおさかな話を聞きに来てるのに関係ない話題を続けちまって、ホント悪かったな」

「そっちはまた今度、聞き役もとうまがちゃんと選んでおくんだよ。では大急ぎで本編突入するよー」



「インデックス、2月の節分つったら豆撒きと最近じゃ恵方巻きが主流の行事だけど忘れちゃいけないのが…」

「だね、とうま。節分といえばイワシなんだよ!」

「恵方巻きが元々ごく限られた地方での半ば人工的な風習に過ぎないのに対し、イワシはほぼ全国的な伝統だからな」

「でもね、今ではこんな話をしても『何を言ってんだかワカンネーYO!』って若者が増えてるみたい」


「以前に『鰯の頭も信心から』でダジャレをやったろ? アレとか理解してもらえてなかったのかな……」

「かもね。悲しいけどコレって時代なんだよ……」

「いやいやいやいや、そう容易く歴史を忘却の彼方へ追放しちゃダメだろ! だから今日は節分イワシを復習しようぜ!」

「望むところなんだよ! まあでも、簡単に説明すると節分の日にイワシを焼いて食べるだけなんだけどね」


「大事なのはその前と後だろ? イワシは油が多いから火に掛けると煙が凄い。その煙でまず邪気を追い払うんだ」

「うんうん。そして食べ終わったらその日の夕方にイワシの頭をヒイラギの枝に突き刺して玄関に飾るんだよ」

「それもやっぱり鬼避けなんだろうな。昔は節分、つまり季節の変わり目には悪い事が起きがちって思われてたらしいし」

「節分イワシは、そういう邪気(邪鬼)による災いを防ぐ宮中行事が元になった由緒正しい日本のスタンダードなんだよ」


「でも、廃れ気味なワケで」

「まあ……、煙モクモクで魚を焼くのも玄関に焼いたイワシの頭を結構長い間飾っておくのも実際問題、今は難しいよね」

「せめて焼きイワシを食べるだけでもいいから残しておきたい風習なんだけどな」

「体に良い成分いっぱいのイワシを食べて寒い冬を乗り越えよう! とか宣伝すれば流行るかも?」 ガッテン!


「なるほどな。さて、間に合わせではあるものの一応おさかな話の体裁は保てたんじゃないか?」

「急場しのぎにしてはバッチリかも。あいさも楽しんでくれた?」


姫神「節分イワシの気持ち。私にはわかる。立派な主役で無いならむしろ忘れられてたほうが良い。って言うか鶏口牛後?」





398: 罵詈 2012/01/24(火) 20:02:47.62 ID:oqlGOeXO0

                                   ☆

御坂「マンガとかでさ、神様とか高次元の生命体とかが人に宿る展開ってなーんか萎えちゃうのよね」

佐天「えーっ? ベタだけど燃えるじゃないですか!? 古の精霊宿りしこの拳、全ての過ちを破壊せんっ! みたいな」

白井「おガキんちょみたいな話題で盛り上がらないでくださいな。わたくし、さすがに参加しづらいですの」

初春「わ、わたしもちょっと厳しいですねー。形而上の存在を安易に目に見える何かとして考察するのは陳腐の極みですよ」


御坂「思ったより反応悪いわね……。ふたりとも佐天さんを見習ってよ。どんな話題でも喰い付いてくる姿勢をさあ」

佐天「……、なんかその言い方だとあたしって見境無く何にでも首を突っ込んでるって感じですけど?」

白井「極めて正確な自己分析ですの」

初春「つまり佐天さんはダボハゼってことですね」


佐天「う、初春?? いくらなんでも親友に向かって『このダボォ!』呼ばわりは酷いよぉ……」

白井「時代錯誤なテンプレ三下のセリフですわね。元来はダボもダボハゼも同じく、ある種の魚のことですけれど」

御坂「うーん? どっちが先なのか微妙なんだけど、ダボってアホを強調した言い方ともされるわよ?」

初春「でも魚の名前をダボハゼと呼ぶ地域はアホ→ダボ文化圏よりずっと広範囲ですからまあ、ハッキリしませんね」


佐天「じゃ、じゃあそのダボハゼってのは一体どんな魚なんですか? ハゼって付いてるから大体想像出来ますけど……」

御坂「う~ん……、」

白井「どんな、と言われましてもダボハゼは特定の魚種を表す名詞では無いんですの。ですから…」

初春「要するにですね、釣りしてる時に狙ってないのに掛かってくる小型のハゼ類をまとめてそう呼ぶんです」


御坂「例を挙げると淡水ハゼのヨシノボリ類とかヌマチチブ、海なら潮溜まりに居るアゴハゼとかね」

白井「ハゼの仲間は口が大きいですから、時折自分のキャパシティをはるかに超えるような獲物にさえ襲い掛かるんですの」

初春「つまり、立派な大物を狙ってる仕掛けであっても時折ちっちゃなハゼが釣れちゃう、と」

佐天「そりゃ釣り人も『このダボォ!』とか言いたくなるね……。じゃあ人に向かってダボハゼ呼ばわりするってのは」


御坂「ん~……、お前なんか御呼びじゃないよ、とか?」

白井「そうですわね……、分別無くフラフラと物事に首を突っ込みがちの小物で外道、といったところですかね?」

初春「というか単純に、このアホー、でいいんじゃないですか?」

佐天「よーし分った。初春、あとであんたを今世紀最高の  イ目に遭わせてあげる!!」





399: 罵詈 2012/01/24(火) 20:11:44.21 ID:oqlGOeXO0

                                     ☆

打ち止め「ねえねえ。厳しい冬の間、海や川のおさかなは大丈夫なの?ってミサカはミサカは尋ねてみたり」

一方通行「大丈夫かって、遊びで人があまり行かねェだけむしろ安全じゃねェの? ……、何が聞きたいンだよ?」

打ち止め「だってほら、魚って水温が下がると食欲が無くなって動かなくなるんでしょ? 襲われ放題じゃないかなって」

一方通行「襲うヤツだって魚だろォが……。その辺り、オマエが心配する必要ねェ程度に自然は良く出来てンだよ」


番外個体「だからこそ自然の摂理に反したクソ寒い間の魚獲りって、普段はお目に掛かれないレアモノゲット出来んだよね」

芳川桔梗「寒くて動きたくない魚が水底に固まってるのを捕まえるだけだから簡単だしね。ちょっと可哀相だけれども」

一方通行「俺には理解不能な趣味だがな。駆け引きの無い勝負に価値なンざねェよ」

打ち止め「珍しいのが手に入るなら充分価値あるかも、ってミサカも魚獲りしてみたい!とミサカはミサカは思ってみたり」


芳川桔梗「それは暖かくなったらにしなさい。あなたが思ってる以上に冬の水場は厳しい環境なのよ?」

番外個体「つっても、暖かくなったらなったで決してお子様向けの遊び場じゃないけどねえ」

一方通行「……、実際オマエらは泥に塗れてザリガニだのドジョウだの獲ってっからその辺の事情に通じてンだな」

番外個体「カッコ良くフィールドワークって言ってくれないかなあ? ただ闇雲に水遊びしてんじゃないんだしー」


芳川桔梗「言い方はともかく、知識偏重な君よりは私たちのほうが経験値が高いはずよね」

番外個体「そうそう。本読んだりネット見たりするだけじゃ知りえない危険って、いっぱいあるんだよ?」

一方通行「ムダな知識と経験増やしただけでナニいい気になってンだそこのバカふたり? あンま調子乗ンなよ」

打ち止め「まあまあまあ、落ち着いてよってミサカはミサカは水場の具体的な危なさについて知りたくなってたり」



番外個体「ほぉ、知りたいと申すか小童め。ならば道理を示すが人の道なるぞ?」 クイクイ

打ち止め「ははぁ! ってミサカはミサカはテレビのマネして秘蔵の極濃ミルクプリンを差し出してみる」

一方通行「……、ンだァありゃ?」

芳川桔梗「時代劇の袖の下、賄賂のシーンかしらね? まあ、あの子たちなりの演出ってことじゃないの」



番外個体「うむ、年端も行かぬ内から商いの裏道に敏いとは流石ミサカ屋の子倅。このミサカ、感服したぞ」

打ち止め「お褒めに預かり恐悦至極。なれどミサカ様には到底敵いませぬ、とミサカはミサカは畏れながらに返答する」



一方通行「チト設定に凝り過ぎてクドイがな……」




400: 罵詈 2012/01/24(火) 20:15:54.17 ID:oqlGOeXO0

番外個体「話も決まったトコで、テンポ良く適当に何が危ないのか挙げてこうかね」

芳川桔梗「そうね。まず第一になんと言っても水場の危険といえば、水そのものなのよ」

打ち止め「……、えっ?」 ソコカラ?

一方通行「オイオイ。タメにタメ作っといて、ンな当たり前のコト恥ずかしげも無く口にしてンじゃねェぞ!?」


芳川桔梗「どうしようもなく甘いわね。とりあえず聞きなさい」

番外個体「溺れる、服や所持品が濡れる、濡れた石ころなんかで滑ってゴッチン。

     そういうのって、気を付けてれば防げるとか思ってんだろうけどさあ……、甘いよね。
     自然はイレギュラーの宝庫なんだよ。足場が崩れるなんて珍しくも無いし天候だって予測できないじゃん?
     川だったら上流の具合によっては前兆無しで鉄砲水っつって、大量の水が一気に押し寄せてくることもあんの。
     海なら潮の干満をウッカリ忘れて岩場に取り残されちゃったりね。

     あと、背が届く深さだから大丈夫とか泳ぎが得意だからってのは考えちゃダメだね。
     プールと異なり水温が場所によって大幅に違って当たり前。それは容易にヒトの体に異常を起こすんだよ。
     考えてもみい? 60cm程度の深さの水場で両足が攣っただけで人生ゲームはバッドエンド直行だよん。
     海なら水深によって流れがあるから、んなモンに巻き込まれたら地上と永遠にサヨナラだってあるぜー」


芳川桔梗「両側がコンクリート護岸のごく浅い小川でザリガニ獲ってたらにわか雨が降り出したから帰ろうとして、
     下りてくる時は問題なかったコンクリートが雨で一気に濡れてツルッツルになっていてね……。
     堤防に上がれない。困ったわ……、って思ってるうちに地響きにも似た低音が足元からするのよ。
     まさかウワサに聞く鉄砲水……。これはまずいわねって、あの時は私も覚悟したわ」

番外個体「このミサカが居なかったらポンコツ研究者はどーなってたか、詳しく解説しよう!」

一方通行「それは要らねェよ。まさかホントに体験してるとは思わなかったがな……」

打ち止め「た、確かに子供だけで、と言うか大人でも一人で遊びに行ってたら対処の仕様が無いね…」



番外個体「理解が良くて大変結構。では次の危険を説明するぜーっ!」

芳川桔梗「次も自然そのものの恐ろしさだけれどもね。つまり、野生動物よ」

一方通行「つーかよォ? 魚を捕まえに行ってンだから動物ったら魚だろ。ヒレだのトゲだので怪我するとかか?」

打ち止め「キバのあるおさかなに噛まれたりってそんなに頻繁にあるの?ってミサカはミサカは疑問を持ってみたり」


芳川桔梗「ダメね。全然ダメ。あなたたちは木を見て森を見ていないわ」

番外個体「うむ。ぶっちゃけその方が話しやすいんだけど。

     コレは特に川へ行く時の危険かも知んない。キャンプしたことあるヤツならピンと来るだろかね?
     虫、ヘビ、そして犬とか。水場へ行くのに林や茂みを突っ切ると遭遇しやすいかも。

     ヤブカやアブに刺されていつもより余計に腫れ上がる、くらいなら笑い話になるんだけどねー。

     多分、一番被害者を出してんのがハチかな。低木の茂みの中に巣を作ることのあるアシナガバチは
     それと知らずに人が枝を揺らして刺激しちゃうと攻撃されたと判断して時に集団で襲ってくる。
     前になんかの話題でチラッと触れた超個体ってヤツよ。自分自身が傷付けられても気にしないくせに
     巣に対する攻撃には過敏に反応すんの。そういう意味でよりタチが悪いのがスズメバチだけどー…」


芳川桔梗「スズメバチの巣は自然界では木の根元だったり洞だったり、そう簡単に見つけられない場所に作られるの。
     だからアシナガバチの場合と違って誤って巣に刺激を与えてしまう可能性は少ないわ」

番外個体「それなのに、だ。見張り役のハチが巣の周りを飛んでるんだけどコイツがクセモノなんだよ。
     こっちの意思とは無関係に、巣に近づいた者を警戒音で威嚇してそれでも退かないなら毒液を噴射してくる。
     掛かっちゃったら一大事、それを目印に大量の兵隊バチが攻撃してくるんだもん。
     もちろん毒液だから目に入れば大変だし、集団で襲われちゃったら範囲電撃くらい出来なきゃアウトだぜ?」

芳川桔梗「出来れば横に居る人間に被害が無いレベルで手加減が可能な能力でお願いしたかったのだけど……」


一方通行「つまンねェトコでオマエら死線越えすぎだろォが……。犬ってのもワリと嫌な感じするけどよ」

打ち止め「飢えた野犬の群れに林の中で出会っちゃったらとか考えたくもないよ、ってミサカはミサカは震えてみたり」




401: 罵詈 2012/01/24(火) 20:21:07.41 ID:oqlGOeXO0

番外個体「でしょでしょ? 恙無く、で御馴染みのツツガムシだって超危険生物のクセに実は珍しくもないんだよ?」

芳川桔梗「自然、野生を軽視しちゃいけないということね。と言いつつ次に紹介する危険原因は人間、ヒトなのだけど」

一方通行「……、事ココに至って頭のネジが緩ンじまったか? 河童じゃあるまいに海や川ン中にヒトが居るかよ」

打ち止め「危ないヒトだったら身近に居るけど、ってミサカはミサカは誰だか知らないのに皆知っていたり」


番外個体「どっちかつったらチビコロ上位個体の回答が惜しいね。

     川でも海でも山でもさ、気兼ねなく魚捕まえられる場所って大抵人目につかないトコなんだよ。
     で、民家や道路から離れてっから俗世間から解放されたって気になっちゃうのか知らないけど
     奇矯な行動に走るヤツが結構居るんだあね。

     大昔には橋の下ってのはアレでしょ? 健全な青少年がある種の書物をリサイクルする場所だったとか。
     それがある種の映像記録媒体に代わったとかその程度なら何の問題も無いんだけどさ。

     特に夏場に多いのが全裸の男。全裸ってのはもちろん一糸纏わぬスッポンポンのことだよ? 
     培養装置の中のミサカたちと違ってお粗末なモンをブラブラぶら下げ…」

芳川桔梗「ん、んっ……。体全身を隈なく日焼けしたいとか、開放感を全身で感じたいとか色々理由はあるでしょうけど
     私有地で無い限り決して褒められた行動では無いわね。ただまあ、私たちが出会った数人の例では……、ね」

番外個体「そうそう。指差して見られてんのに気付いたら、何事も無いフリで横向いたまま徐にパンツ穿きやがんの」

芳川桔梗「ばつの悪い思いをさせてしまった、で私たちは済んだけど体のサイズの小さなあなたでも同じとは限らないわ」

番外個体「もっとヤバいのが男女ペアでさあ。盛り上がっちゃったんだろけど、せっせと大自然の中で…」


一方通行「それ以上の説明は無用だろ! まァ、その手の状況じゃ男はヘンに虚勢を張りたがるモンだからな……」

番外個体「良く分るね。いきなり『なに見てんだよ!』っつーからこっちも『見てもらえるほどのもんかよ!』って…」

芳川桔梗「とにかく!! 外見がお子様の最終信号には危ないことが多いってわかって貰えたかしら?」


打ち止め「……、そうだね。でもミサカはみんなで行きたいって思うから、ってミサカはミサカは問題ないよと笑ってみる」

一方通行「オマエなァ……。クソ面倒にもツマラねェ解説したバカどもを労ってやれよ……」

芳川桔梗「こちらの苦労なんてどうでもいいのよ。それよりも皆で、とは嬉しいこと言うじゃないの」

番外個体「しかーし、いくら人数が増えようとも大人が混ざっていようとも危険因子は存在するんだなあーっ!」


一方通行「……、オマエはまだ語り足りねェのかよ? メンドクセェ、さっさと喋ってラクになれ」

打ち止め「でも、もう残りあと少しだから駆け足でねってミサカはミサカは細かく注文してみたり」


番外個体「おーけーおーけー。んじゃ、つらつらっと行くよー!

     水場に続く林の入り口にある大きな岩の陰には何故かビニール袋に詰められた大量の錠剤があったりするよね。
     それとお、漁港の水底がたまーにすごくキレイな時ってあんじゃん? 底に沈んでる拳銃とか見えるよね。
     裸の男で思い出したけど、実際現場に住んじゃってる人の場合フツーに川の中で体洗うんだよ。 
     そういう人は他人の目が気にならないみたいだからワリと安全かもね。二度とその場所へは行かないけどさ。
     あと台風とか大雨のあと、橋脚に引っかかってたり淵に浮かんでたりするのを見つけたら、即行ばっくr」

芳川桔梗「異常を感じたいずれの場合も速やかに治安維持組織に連絡することをオススメするわ」




打ち止め「水遊びって……、ひょっとして裏社会の窓口なの???ってミサカはミサカは絶句してみたり」

一方通行「……、オマエらどンだけ事件に引き寄せられてンだよ!? どこぞの不幸ヤロォかっつーの!」




   ~おしまい~


410: 撞着 2012/01/31(火) 21:43:04.06 ID:b/yNqukd0

                                  ☆

「なあインデックス。こないだ話してた『上条さんの魔術講座』の受講希望者募集だけど、お前の言うとおりだったな…」

「とうま……、当たり前なんだよ。魔術知識が一切無いのに素人の魔術解説に興味がある人、なんて居るわけないかも」

「う~ん、魔術にそれと知らず触れちまった知り合いの心当たりは少なくなかった。だけど誰も本気で信じてないんだよ」

「この都市の人は現状、魔術のことを学園都市以外で研究されてる超能力の一種だって誤解してるんだったよね?」


「誤解って言うけどな、人の認識ってのは一度確定してしまうと覆すのは容易じゃない。例えばご飯のニオイの話とかさ」

「えーと……、日本人は炊き立てご飯の香りって大好きだけど、とある国ではアレはただの悪臭ってこととか?」

「他にも、そーだな……。マツタケの学名ってたしか日本語訳が『ゲロ以下のニオイがプンプンするキノコ』だろ」

「どっちも多くの日本人には許容出来ないイメージかも。でもそう思ってる人は世の中に少なからず居るんだよね」


「ひとつの物事に相反する認識があって、互いに歩み寄るワケにいかないとなると……。必然、無視か対立が起こる」

「……? んー? ……突然よくわかんない展開かも」

「つまりだな、それが吹寄や白井や海原光貴、それに災誤先生に俺の誘いがまともに伝わらなかった理由じゃないかと」

「……。とうま、ムリして難しい理屈を捻り出すまでもなく、もしかしてただ単に人を見る目が無いんじゃないかな……」

姫神「(……今日は口を挟まない。多分。悲しくなるだけ)」


「聞こえてるぞー。まあ、そんなワケだから一端保留して気分転換に明るいおさかな話でもしようぜ!」

「うんうん。考えすぎた挙句に出た答えって大抵つまんないからね。行き詰ったら引き返すのが賢者の道なんだよ」

「一事が万事そうじゃないけどな。さて、じゃあ今日のテーマは何にするかな……」

「こないだ節分イワシだったから次は当然決まってるんだよ! 主にカレンダー的な理由かも」


「ん? 2月の、節分の次の行事……、ああ立春か」

「そうそう、春来たと目にはさやかに見えずともやっぱり寒いよまだ真冬かも……って違うよ意味わかんないよ!!」

「じゃあ建国記念の日?」

「なぜ2月11日なのか、なぜ建国記念『の』日か……、とうまバカなの!? 薄々そうじゃないかとは思ってたけど!」


「冗談だって、そう怒るなよ。頭にバの付く、カカオの香りでヤロウどもが一日中落ち着きを失う例のアレのことだろ?」

「分ってるならどうしてイジワルを…、 …………あ、とうまひょっとしてひとつも貰えないかもって拗ねてる?」

「そうだよ期待してねーよ悪いかよ。どうせ上条さんはモテないしあんまり学校にも行ってなかったし……」

「そこは安心するんだよ!! ……今年は身近に居る素敵な誰かさんから1個は確実にもらえるかも?」

姫神「2個かも。……///」


「……お前たちに予知能力でもあるなら嬉しい予言だな。でも気遣いは有難いけど根拠が無いんじゃなあー」



『…………』






411: 撞着 2012/01/31(火) 21:44:15.65 ID:b/yNqukd0

「ま、それはいいからさっさと本題に入ろうぜ。結構ムチャなお題だけどインデックスには何か心当たりがあるんだろ?」

「……あ、うんもちろん! ちょっとベタかもだけど、名前にチョコが入ったお魚がいるでしょ?」

「チョコ…………? あー、観賞魚には疎いから良く知らないけど、人気のある熱帯魚にそれっぽいのが居たような…」

「たぶんとうまの想像通りかも。正式な名前じゃなくて俗称なんだけど、チョコレートシクリッドって子だね」


「ふむ、確かそんな名前だったような。チョコのような赤っぽい体色の……、外来魚のカワスズメみたいなヤツだろ」

「シクリッドってカワスズメのことだから当然かも。ただ体色はコロコロ変化しちゃうんだけどね」

「ふーん。ヨシノボリみたいに  すると色が変わるってことかな。にしてもクリスマスに続いてまたカワスズメって…」

「十字教に縁の深い魚なのかもね。……、そんなに心配そうな顔しなくてもペテロの魚の話はしないかも」


「そうしてくれ。あんなディープな話題は扱えないからさ……。でも、不思議だな」

「ん? 何が?」

「いや、14日は十字教的には大切な日なんじゃねーの? シスターのお前が日本のお祭りムードに浮かれて良いのかなって」

「……んとね、かの聖人の実在は旧教的には認められていないの。つまり必ずしも宗教性が高い日だとは言えないんだよ」


「へっ?」

「あ、勘違いしちゃダメなんだよ。もちろん信仰の対象として、また魔術的に重要な位置付けであることは間違いないの」

「なんだよそれ? じゃあ、兵士たちを秘密裏に結婚させたことを理由に処刑されたっつー話はデタラメなのか?」

「彼の名を聖人暦に戴く私の口からそこまでは……。ただねとうま? その日に贈り物をする風習は世界に広がったんだよ」


「うん、まあ……。それで?」

「そして国ごと、土地ごとでそれぞれ独自に発展していったの。日本のやり方だってその一例なんだよ」

「いや言いたいことがサッパリ判らないぞ? つまりどういうこと?」

「だーかーら、正式なやり方が無い以上、私の考えをこの国で主張したってそれはご飯は臭いって言うのと同じなんだよ!」


「えっと……、つまりアレか。郷に入っては郷に従うってコト?」

「ついでに、とうまたちは敢えて海外のやり方にあわせる必要なんて無いってこと。クリスマスだってそうかもね」

「違いを知っておくのは大切だけど、だからって自分たちが間違ってるとかネガティブに考えるな、と……」 フム

「チョコレートシクリッドは普通エメラルドシクリッドと呼ばれるの。でもどっちが、じゃなくてどっちも正解なんだよ」



「ふーん、最後に再びおさかなを持ってくるとはウマイこと纏めたな」

「うまくて当然かも。だってチョコレートが美味しいのは万国共通の真理だもん。……、おあとがよろしいかも!」






412: 撞着 2012/01/31(火) 21:45:33.68 ID:b/yNqukd0

                                    ☆

佐天「つまりですよ? 有限の生命に無限の存在が取り込まれる意義はですねえ…」

御坂「いや、でも無限なのよね? だったら宿主が死んだって、って言うかそっちのが自由になれてお得じゃないかなあ?」

白井「まだそのトンデモSF話、続きますの? こっちは正直飽き飽きしてるんですの」

初春「ふたりとも集中すると周りが見えなくなっちゃいますからね……。もっと中学生らしく浮いた話とかしたいですけど」

 ガッッッ!!

佐天「今っ!! 今、何て言った初春!? あんたまさかあたしに内緒で特別な好意を向けるべき対象(男性)が???」

御坂「ホントに!? 何よステキじゃない!! ねえねえ聞かせて聞かせて!どんな人ドコが好きドコまで行った???」

初春「……、違いますよー。そういう話が出来たらいいなって言ったんです。皆さんも相当興味があるみたいですけど……」

白井「食いつきが異常ですの。先程までの話題が遠く銀河の彼方へ光の速さの数倍で吹っ飛んでいきましたわね」


御坂「何よー? そりゃ、私だって女の子だもん。誰が誰を好きとか、そういうの聞いたら黙ってられないわよ」

佐天「まぁ…………、ですよね」

初春「ええ…………、同意です」 ウン

白井「……、真に遺憾ですけど正直腹に据えかねますけどお姉様。それ、フリですの?」


御坂「ふぇっ? あっ……、なっ、何をアンタたちが考えてるか見当も付かないけど私はあんなヤツのこと全然……!!」

佐天「……、(ダメだこの人も)」 カワイイケド

初春「……。(成長してませんね)」 マッカデスネ

白井「……まあ、精神的にも既成事実的な進展も一切無いということで納得しておきますの」 ケッ



御坂「……だってさ、……、いや私とアイツは考えが、……だからって、でも……、」 ブツブツブツブツ



佐天「あらら。御坂さんしばらく使い物にならないですよ、これ」

白井「全く。人外の演算能力を持つが故に答えが無い問題にさえ真正面から挑んでしまう。高レベル能力者の悪い癖ですの」

初春「円周率の最後の桁、数字は何? みたいな感じですかね。ほぼ3で演算終了したって全然構わないのに」

白井「常人と異なり、苦悩の末に最後の数を見つけてしまうのが超能力者ですの。……、今は見つけちゃダメですけども!」


佐天「ふ~ん。それって信念とか強いココロってヤツですよね? 自分だけの現実を作るのに必要って言われる…」

初春「佐天さんがちゃんと覚えてた……、明日は記録的大雪ですかね?っていきなりヘンなトコ触らないでくださいっ!!」

佐天「あんたねえ、私だって真面目な時はマジメなんだから茶化さないでよ! 次は容赦しないからねええええ」 ワキワキ

白井「乳児体型の初春のドコ触ったって何の違いもありませんけどまあ、佐天さんの仰ることはひとまずそれで宜しいかと」



413: 撞着 2012/01/31(火) 21:47:30.07 ID:b/yNqukd0

佐天「なるほどね。円周率は無限小数だって決め付けてしまわないで、限界を超えて計算してみるような姿勢かあ……」

初春「みんなヒドイです……。でもそれってつまり、常識を疑えってコトになりますかね?」

白井「観念的に全てを説明できるわけではありませんけど、まあ近い感覚かもしれませんわね」

佐天「疑って終わり。じゃなくて、自分なりの答えを出していってそれを以って世界を再構築していくってことかな?」


初春「何だかファンタジーな表現ですけど、そうして世界を遍く掌握した者がレベル5ってことなんですかね……」

白井「さあ? わたくしもそこまで至った訳ではありませんし。ですけど、それには更に先があることは予想できますの」

佐天「ん? 先って……。ややこしくなってきたなあ……」

初春「ん~……、全てを疑って全てに答えを出してきたわけだから……。あっ! 疑い、答えを出す主体ですかね!?」


白井「たぶんそういう事になるんではないかと。全てを知るはずの自分全てを疑う……、絶対に答えの出ない難問ですの」

佐天「って、ちょっと待ってくださいよ!? そもそも自分を強く信じることが能力の根幹なんでしょ?」

初春「自分で築き上げた世界を、その確固たる絶対の指針である自分も含めて全て疑う……、あれ?」

佐天「おかしいよね。だって自分は間違ってるかもしれないって考えるのも自分。じゃあ疑う自分も疑わなきゃいけない…」


白井「有名な『私の話は全部嘘です』という文句みたいなものですわね。それが嘘なら彼はホントのことを語っているはず」

初春「となると、やっぱりこの人の話は嘘だということになる……。永遠に堂々巡りですね」

佐天「それじゃ能力開発の行き着く果ては、矛盾だらけでウジウジと悩み続けざるを得ない行き止まりなんですか?」

白井「いえ、そんな段階まで到達した方には心当たりがありませんからコレはあくまでも私たち程度の者の想像の範疇」

初春「そうですね。つまるところ円周率も割り切れない私たちでは見ることすら叶わない領域かもしれません」

佐天「あー、やっぱそれ系の結論になっちゃうワケか。まあ、その行き止まりを越えちゃったら神様以上ってことだもんね」


白井「……、確かにある意味で造物主たる自分を疑い、正しい答えを出せたなら神を超えたと言って差し支えないですが…」

初春「この場合、神を超えたものってやっぱり神じゃないですか? 少なくとも私たち凡人からはそう見えます」

白井「超えたところで何も変わらないであろう事が始めから予測出来てる壁など、果たして越える必要があるでしょうか?」

佐天「え~っ、と……。まさか更に先の展開まであるとは思わずテキトーに喋っただけなんですけどー……」 マイッタナ



「……あのさ、アンタたちいつまでその話題続けるわけ? 入るタイミングが全然わかんないんですけど?」



佐天「みみみみみみ、御坂さんっ!復活待ってましたよおおおお!!! 早くこの場の空気を何とかしてください!!」

御坂「ほら、佐天さんずっと困ってたじゃない……。頭の中の話なんて所詮メルヘンなんだからあまり考え過ぎちゃダメよ」

白井「お姉様だけには言われたくないですの……」 ブスー

初春「ああ、これが自分だけは正しいって思考なんですかね……」 シラー



414: 撞着 2012/01/31(火) 21:50:35.77 ID:b/yNqukd0

御坂「な、何よ……。い、良いから話を変えるわよ! えーっと、おさかなと矛盾とメルヘンで、はい佐天さん!」

佐天「なんですかそのムチャ振りはっ!? ええと……、ん~……、メルヘン……、おとぎ話? 恩返し……」

白井「ふむ……、恩返しと言えばわたくし、前々から納得出来かねている表現がありますわね」

初春「白井さんの振るネタはつまらないのが多いですけど、この際だから我慢します。一体どういうことですか?」


白井「初春、後で屋上ですの。それはさておき、たとえば鶴の恩返しと言う昔話をご存知かと思いますけど」

御坂「おとぎ話ではトップクラスの人気作じゃない。アレに何の文句があるのよ?」

佐天「罠に掛かった鶴を助けた男に、その鶴が恩を返す。良い事をすると良い事があるよって教訓ですよね」

初春「……のぞきダメ、絶対! と言う白井さんこそ読むべきお話……、あの、調子に乗りましたごめんなさいすいません」

白井「ったく。……ま、それとともに命の大切さを伝える話でもありますわね。鶴を救ったことが良いことならですけど」

佐天「ん? 良いことに決まってるじゃないですか。人だろうと鳥だろうと命は掛け替えの無い宝物ですもん」

御坂「……、なるほどね。黒子の言いたいことが分ったわ。どんな命も大事と訴えながら鶴を助けた矛盾……か」

初春「へ? 助けちゃいけないんですか?」


白井「まず第一に、鶴は罠に掛かっていた。罠を仕掛けた狩人は獲物を失ったわけで、この責任は償われておりませんの」

佐天「ああ、確かに生活が掛かってるはずの狩猟を邪魔してますね……。これは良くないかも」

御坂「それだけじゃない。鶴、おそらくここではタンチョウだと思うけど、雑食性の長生きで大きな鳥よね?」

初春「……鶴を助けたことで将来的にたくさんの別の命が鶴の食料として消費されてしまうことになる、って事ですか」

白井「浦島のカメなども多くの魚を食べて長生きするのでしょうし、単純にめでたしめでたしなのかは疑問ですわね」

佐天「ひとつの命を守ることが多くの命を見捨てることに繋がるのに、あたしたちはそれが良いことだと誤解してた……?」

御坂「いや、深刻に考える必要はないわよ。命を救うことはその命にとって良いこと。それ以上でもそれ以下でもないの」

初春「優しさは他人を殺める、って感じですね……。あれ? ところで今の話、おさかな出てきました?」


白井「ここからですの。鶴にとって小魚は単なるエサ、ですが彼らもただ食べられるのを待つばかりではありませんのよ」

御坂「ん? ああ、ちょっと前に問題になってたアレね。ドジョウが大好きな絶滅種の鳥、トキのことでしょ」

初春「ドジョウやフナなどコイ目の魚が持つビタミンB1を破壊する酵素が原因で、なんか酷くバテちゃったんですよね」

佐天「栄養バランスの良いエサがちゃんと用意されてるのに、敢えてドジョウばかり食べて体調崩すなんてどんだけ…」

白井「一般的にコイ目は川や池で最も数が多い種。ですから彼らは他の生物にとって身近で手軽な栄養源なのですけど」

御坂「いくらでも居るからってそればっかり食べてるとやがて食欲が落ち背骨が変形し、挙句に心不全とかでポックリと」

初春「ふむふむ。確かに『自分たちしか食べないような生き物の存在を許さない』って強い意志がある気がします」

佐天「でも強烈な毒を持つとかして『絶対に喰われてやらない!』って進化じゃないのが何て言うか……、健気ですね」


御坂「もちろん魚自身が考えた結果じゃあないけどね。……、でもこれってさっきの矛盾に対する答えになるんじゃない?」

佐天「あるがままを拒み、あるがままを受け入れよ……、とか? 自分で言っておいて全くサッパリ意味不明ですけど」

初春「生きながら死んでるネコなら知ってますけどね」






415: 撞着 2012/01/31(火) 21:53:29.21 ID:b/yNqukd0

                                      ☆

打ち止め「ねえねえ、海のパイナップルで御馴染みのホヤってさ……、ぶっちゃけ全然パイナップルじゃないよね?」

一方通行「……、確かに。大抵その手の異名ってのは実像以上にイメージを膨らませがちなモンだが、アレは段違いだ」

打ち止め「海産物即売所で子供が『ママ、ぱいなぷつるだって。ボク欲しいよー』とか言うからなんとなくお土産にして」

一方通行「その日の夕食で悲劇ってか? 知らねェヤツにとっちゃホヤの破壊力は並じゃねェからな……」


打ち止め「いわば魔女っ子の皮を被った極め技師だよねってミサカはミサカは叙情的にたとえてみたり」

一方通行「……、フリフリ衣装のカールゴッチ……とか、か? その喩えがドコを目指してンだか欠片も見えねェが」

打ち止め「……あなたならこの強引な進行の意図に気付くと思ったのに、ってミサカはミサカは軽く失望してみる」

一方通行「勝手に買い被ンなよ。オマエの行動予測なンて無益な演算するほどの余裕は今も昔もこれからも無ェ」


打ち止め「おぉっ、それって『俺たちの未来は神様のサイコロ通りにゃさせねえぜっ!』っていう一種のプロポーズ?」

一方通行「何を愉快にノボせてンだこのクソガキ。つまンねェ冗談ほざく前にさっさと用件を済ませろ」

打ち止め「もうっ! 良いよ、じゃあ聞くけどそんな風に実物とかけ離れた異名を持つおさかなって他に何がいる?」

一方通行「ンだよコロコロ機嫌上げ下げしやがって忙しいヤツだなオイ……。それはともかく、偽りの看板な魚か……」


打ち止め「既成概念を打ち壊すようなパンチの効いたお話を期待ってミサカはミサカはハードルを上げてみたり」

一方通行「注文が多いぞフザけンな! そォでなくともチト無茶なテーマなンだから黙って待ってろよ」 ンー

打ち止め「……、難しいなら違うお題でも良いよ?ってミサカはミサカは微妙な優しさもアピールしてみる」

一方通行「何度も言わせンな黙れつってンだろ」 エート


打ち止め「でもミサカが一言も喋らなかったら話が成立しないよ?ってミサカはミサカは冷静に問題点を提示してみる」

一方通行「ウゼェにも程があンだろォが!? チッ……、どォにも絡むの止めねェ気なのは分ったから好きにしろォ……」

打ち止め「うんうん、人間関係ってウザいのが普通なのってミサカはミサカは一面の真理を突いてみたり」

一方通行「……コレが普通とは光の当たる世界ってなァ想像以上にアクが強ェンだな……、分った。出来る限り善処する」 








416: 撞着 2012/01/31(火) 21:56:24.71 ID:b/yNqukd0

一方通行「そンじゃまァ、思いつくままテキトーに挙げてく。まずはメジャー過ぎかも知れねェが『ハダカカメガイ』だ」

打ち止め「またの名を『流氷の天使☆クリオネ』だねってミサカはミサカは追随してみる」


一方通行「クリオネっつーのも確かギリシア神話の歴史を綴る女神の名が元ネタ……、妖精だったか? まァその辺だ。

     指先ほどの大きさに過ぎない一種のプランクトンだが、中心に赤を据えた透き通るテルテル坊主のよォな体。
     その胴体のちょうど肩に当る場所から両に伸びる翼状の足を揺らして優雅に泳ぐ姿。
     頭部の先にチョコンとツノのようにくっついてる2本の触覚。
     まさに自然の造形意匠ここに極まるってトコか? シンプルでありながら異世界を感じさせるキュートなヤツだ。

     和名ハダカカメガイはそンな神々しく幻想的なイメージを随分と乱暴に傷付けてるワケだが
     却ってコイツが貝、巻貝の一種であることを簡潔に示してンな。
     漢字で裸亀貝ってのはおそらく、亀の甲羅を引っ剥がしたらこンな感じっつートンデモ発想が由来だろ。
     一応言っとくとカメの甲羅は肋骨や脊椎と皮とで出来てるンで、脱がせたら極彩色の中身が丸見えだがな。

     ついでに、巻貝である証拠にコイツは孵化から数週間はちゃンと殻を持ってる。成長の途中で捨てンだな。
     貝が外殻を失うのをナメクジ化っつーだろ? だからクリオネとはどンな生物かと問われたら
     『甲羅を剥がしたカメのよォなナメクジ化した巻貝の一種』って答えてやれ。誰にも伝わらねェだろォが」


打ち止め「うん、その説明じゃあ『なにそれ?』だよ。あと有名だけど、過激なお食事風景はホントに怖いよね」

一方通行「頭部の触手がまるで花が咲くよォに一気に開いて獲物を優しく抱き、そいつの養分を吸収する」 コレナラドォダ?

打ち止め「いやそんな表現してもやっぱり怖い、とミサカはミサカはバッカルコーンの響きが耳から離れなかったり」

一方通行「まァな。厳しい冷海に居るだけにエサだってまともなモンがねェから、殆ど共食いに近い食性らしいしな」

打ち止め「あんなにカワイイのに知れば知るほど凄い子なのね、とミサカはミサカは無難な感想を述べてみる」



一方通行「ンで次は……、そォだな。『キノボリウオ』の話でもするか」

打ち止め「キノボリって、木登りするの? おさかなのくせに随分ワイルド アーンド ダイナミックな子なんだね」


一方通行「イヤ、登るワケねェだろ。看板に偽りがある魚の話なンだからちっとは気付けよマヌケ。

     キノボリウオはアジアの熱い地方の淡水に棲む現地ではそォ珍しくもない20cm程度の魚だ。
     日本ではコイツの近縁なベタとかトウギョって呼ばれる観賞魚が良く知られてると思う。
     他にも何とかグラミーと呼ばれるヤツらとかタイワンキンギョとか、コイツの仲間は派手なナリのが多い。
     季節的にはチョコレートグラミーなンてのも居るな。かなり飼育難易度が高い魚なンで安易な入手は禁物だが。

     で、キノボリウオも鑑賞用に食用にと人間との関わり合いが深い魚なンだが、
     さっきも言ったよォにエッサホイサと木に登る習性があるワケじゃねェ。
     
     ベタの近縁だって話をしたが、どンな魚か知ってンだろ? そォ、コップの中で飼える熱帯魚だよなァ。
     観賞魚は溶存酸素量が低い環境では生きらンねェのが普通だが、その意味で最悪なコップなンて馬鹿げた容器で
     ベタが飼育可能な理由は、エラ蓋の中にラビリンス器官っつー特殊な呼吸器官を持つことで空気呼吸が可能な為。
     水中だけでなく空気中からも呼吸を確保することで劣悪な環境に耐えてるってワケだ。

     そのベタと同じ器官を持つキノボリウオ、言及がしつこくなるが木登りが可能な体の構造してるワケもなく、
     陸地に上がるったって、せいぜい岸辺の石ころの上で一休みって程度のモンだ。じゃ、名前の由来はなンだ?
     明らかになってるワケじゃねェが、一説に拠るとこォだ。鳥が咥えてきたコイツをうっかり落として見失った。
     そいつが枝の上で生きてるトコを見つけた誰かが、木登りする魚だと誤解した。……まァ、無い話じゃねェな」


打ち止め「空気呼吸が出来るから枝の上でも息が続いてて、それが水場から離れてたら誤解したってしょうがないかもね」

一方通行「今ではキノボリウオ亜科には100を超える種が登録されてる。当然一種たりとも木には登らねェがな」

打ち止め「それはまたなんとも困った展開だね……、ってミサカはミサカは嘆息してみる」

一方通行「付け加えると、ドジョウもそォだがコイツも空気呼吸に依存する割合が高い。つまり…」

打ち止め「空気が吸えないと溺れちゃうってこと? ってミサカはミサカはそれ既に魚じゃないかもと極論してみたり」






417: 撞着 2012/01/31(火) 22:00:20.72 ID:b/yNqukd0

番外個体「じゃあ今日からソイツをキノボラズウオモドキと呼んでやろう」

芳川桔梗「冗長ね。名付けは出来る限りスマートであるべきなのよ。だからニセキノボリウオが良いんじゃないかしら」

打ち止め「そういう話じゃあないと思うけど……」

一方通行「別にイチャモン付ける気はねェからな。……アレだ、ホタルイカとホタルイカモドキの関係だ」


芳川桔梗「ええと、発光することで知られるホタルイカ。ホタルイカ漁で混じって獲れるホタルイカモドキ」

一方通行「両者は似てンだがモドキはあンまり旨くねェらしい。それはともかく、ホタルイカはホタルイカモドキ科だ」

芳川桔梗「日本での発見順序と海外でズレがあったからよね。世界的にはモドキが基準になっているのよ」

一方通行「ホタルイカモドキ科にはニセホタルイカなンてのもいる。更に紛らわしいが、結局それが面白いンだよ」


打ち止め「あれ、なんでだろ? って思って調べ始めると深みに嵌ってく感じだね、とミサカはミサカは推測してみる」

芳川桔梗「名前なんて所詮人が付けたものに過ぎない。だけれども、いえ、だからこそドラマがあるのよ」

番外個体「芳川のクセにナマイキな。単純にビミョーな命名センスのヤツを探して笑ってやろうってんじゃねーの?」

一方通行「何でも良いンだよ。楽しければソレで……、つーかハッピーにルンルン出来ればココロウッキウキだろ」


打ち止め「……、何その似合わないセリフ? ってミサカはミサカは思わず寒気を感じて訝しい目を向けてみたり」

番外個体「さてはキサマっ、敢えて貧弱白モヤシに化けてこの家に乗り込んだ一方通行モドキだな!!」

芳川桔梗「そんな展開も面白いわね。ニセ第一位vs本家、夢の対決……。幸い、棒人間でリアルにシミュレート可能だわ」







一方通行「なるほど…………、やっぱり普通ってウゼェモンなンだな」 シミジミ





  ~おしまい~







426: 逆転の発想 2012/02/07(火) 20:24:52.67 ID:EdJ+Y5420

                                       ☆

「なあインデックス、トラウィスカルパンテクウトリの槍って覚えてるか?」

「とうま? 私には完全記憶能力と103000冊の魔道書の知識があるから当たり前なんだけど、とうまこそ良く覚えてたね」

「上条さんには無意味な文字列を目的も無く暗記するクセがあんの。ま、それはどうでもいいんだけど」

「そういうヒトたまにいるよね。ふっかつのじゅもん?を幾つも言えたりするオジさんみたいな」


「へ? ……槍の話に戻るぞ。あれさ、金星の光を黒曜石のナイフに反射させてその光線が当たった物を分解する魔術だろ?」

「それはとうまが戦った魔術師がそんな感じだっただけ。まあでも、それが偽者の限界かもね」

「つまりあれは劣化版か。じゃあ本物はどんななんだよ?」

「ちゃんとあの時に説明したのに……。アステカの破壊神が放つ、金星の光を浴びたもの全てを殺す炎の槍だよ」


「記憶にあるようなないような……。けど今回はそっちじゃなくて、お前の言う偽者について疑問があるわけで」

「ん~……言い難いんだけど、とうまみたいな素人の独自解釈って誰も得しないかも。だからやるなら簡潔にして欲しいんだよ」

「鋭いご指摘……。よし、一瞬で終わらせる! アレが車に当たるとバラバラになる、でも生物でもバラバラって変だろ」

「要するに、部品の集まりである機械と違って生き物には継ぎ目なんて無いのになんで解体されるのかってこと?」


「さすがインデックス、今の説明だけでよく理解出来たな」

「ふふーん、このくらい朝飯前なんだよ! で、答えは術式の本質は機能消失であり構造の分解ではないから、だよ」

「ん~と……。殺す=働きを毀すと解釈して、それを対象をバラバラにするという現象で実現するって寸法か」

「うんうん、言ってみれば目に見える現象は何かの手段に過ぎないんだよ。これは魔術というものの限界でもあるんだけど」


「ふむ。分解魔術って感じで記憶してたせいで混乱したかな。なるほど、完成前のパーツに戻すことが目的じゃ無いのか」

「例えば縫い目の無い服。組み合わせを解く術式では攻略出来ないけどその術式の場合は細切れにされちゃうね」

「待てよ……、逆に元から機能を失っているもの。例えば廃車なんかはひょっとして壊せないんじゃないか?」

「印象が随分変わるよね。そういうの、別に魔術に限ったことじゃないんだよ。とうまトビウオって知ってるでしょ?」


「トビウオってのは特定の魚の名前じゃなくて、ダツ目の……トビウオ的なヤツらを纏めて言う言葉なんだっけ?」

「そうだね。日本近海だけでも数十種を越えるトビウオが居るの」

「ふむ。んじゃ誤解を与えないようにトビウオ類って呼んだほうがいいのかな?」

「そこらへんのことはTPOに合わせればいいと思うよ。TPOって意味わかんないけど響きがカワイイかも」


「判らない言葉を使うなよ……。んで、トビウオの話はどこ行った?」

「あ、そうだった。ではではとうまに質問なんだけど、トビウオって魚偏に飛って書くけどどうしてか分るかな?」

「……、ちょっと上条さんをバカにしすぎじゃありませんか? そんなもん、文字通り飛ぶ魚だからだろ」

「強気だね。じゃあ、どんな手段でなにを目的に飛ぶかわかる? どんな原理でどんな感じで飛ぶか、ねえ分るの?」






427: 逆転の発想 2012/02/07(火) 20:26:46.02 ID:EdJ+Y5420

「途中で難易度クラスチェンジすんのは反則だろ…………。えーと、まず飛び方はグライダーと同じだよな?」

「そう、滑空だよ。体型やヒレの形がたまたま滑空機の機能を持っていた。それが適者生存の篩を攻略する鍵になった」

「自然選択説か。でもひとまず難しいことは後回しにして、実際どのくらいの飛行能力があるんだろ?」

「ものの本によると時速70kmで水面から飛び出し、高さは最高10m、飛距離は最大400mだってさ。未確認なら更に上も…」


「おいおい、それだってサーマルとかウェーブを期待出来ない状況なんだから揚抗比がべらぼうになるんじゃないか?」

「……。大きく発達した胸ビレを水平に開いて飛ぶんだよ。種によっては尻ビレも翼として使えるみたい」 キイテナーイ

「もしもーし。ちょっと科学な話になったからって無視すんなよー」

「それ以外にも飛行に適した特性があるんだよ。食べたものは速やかに消化され体脂肪率は1%以下とかね」 キコエナーイ


「……ホント魔術側の人間は都合のいいときだけ科学を利用するよな。実は俺も何言ってんだか判ってなかったんだけど」

「前も言ったけどぼんやり知っていれば事足りるもん。それはともかく、さっきの質問はまだ終わってないかも」

「ったく、へいへい。残ってる項目はなんだっけ…………、飛ぶ目的か」

「さあさあ、どうしてトビウオは魚のクセに海ではなく空を行くの? ホラホラ、答えられるものなら答えてみるんだよ!」


「待て待て、なんでそんな強引で偉そうなんだよ!? お前には在りし日のビリビリでも憑いてんのか!?」

「ちょっ、とうまっ! そういうのは冗談にしても慎むべきだよ……、自分の命がほんの少しでも大切なら尚更かも」

「…………そ、そうだな悪ノリが過ぎたな。人を呪わば穴三つって言うし…」

「関係ない人巻き込むのが前提なの?? 穴は墓穴、数は二つ、相手と自分用ので十二分なんだよ……」


「そっか、そうだよな~……。と、脱線はこのくらいにしてトビウオが飛ぶ理由、見事に答えてやるよ」

「えっと、もしかしてその脱線ってダツと掛けてたりする? 『脱線で思い出したけど、ダツ目って~』とか」

「だっ……、誰がそんなしょうもないダジャレで話を繋ぐかよ! 確かにトビウオがダツ目だって話をするつもりだけど」

「ならいいんだよ。……ダツ目はダツやトビウオの他にサンマやサヨリなどが含まれているんだよね」


「俺が好きなメダカもそうなんだけど、ちょっと毛色が違うんだよな」

「体の一部にダツ目特有の構造があるだけだからね。まあメダカは今回は横に置いておいたほうがいいかも」

「そうだな。それで本題だけど、ダツ目の魚は色んな状況でジャンプをすることが知られている」

「サンマやサヨリが群れでピョンピョン移動してたり、ダツは光に反応して跳んでくる性質があったり、だね」


「中でもダツはホントに高く跳ぶんだとさ。しかも英名が『Needle fish』っていうくらい、細長くて先が尖ってんだよな」

「ダツが突き刺さって大怪我する事故は珍しくないんだよ。ライトを使う夜釣りの際は気を付たほうがいいかも」

「しかも回転しながら跳んで来るらしいぜ? ……んまあそんな風にダツ目ってのはジャンプするのが得意なやつらなんだ」

「うんうん、続けて続けて」





428: 逆転の発想 2012/02/07(火) 20:28:39.98 ID:EdJ+Y5420

「さてそこでトビウオ、の前にサンマの話をさせてくれ」

「サンマ苦いかしょっぱいか? 食べればわかるんだよ」

「何だそれ? ……まあいっか。さっきサンマもジャンプするとは言ったけど、実は時々トビウオみたいに飛ぶんだよ」

「サヨリもそうだね。滑空、生き物だから滑翔かな。もちろんトビウオほどの能力は無いんだけど」


「ああ。ジャンプに長けたダツ目は進化の過程で飛ぶ技術を得た。その中で滑翔適正がダントツなのがトビウオなんだ」

「軽く細長い体、幅広く大きなヒレ、極限に発達した筋肉のお陰だね」

「そういうこと。そんな特別な素質を持っているからトビウオは飛ぶことを選んだってワケ」

「うんう……、ん? それで終わり??」


「へ? だって残ってたのは飛ぶ目的だけだろ? 飛ぶのが得意だから飛ぶ、これで何か文句あるのかよ?」

「それ本気で言ってるなら首絞めたくなるほど哀れなんだよ……。じゃあ聞き方を変えて、どんな時に飛ぶの?」

「どんな時って、マグロやカツオみたいな大型の捕食魚に追われた時とか?」

「でしょ? つまり、トビウオが飛ぶ目的は逃げるため。これが正解なんだよ!」


「そりゃあ、追っかけてた魚にとっちゃ突然消えて数十秒後に全然違うトコ着水されたらテレポートも同然だよな」

「それよりも! 大事なのはあくまでも主として逃走の為に飛ぶってこと。コレを忘れるとヘンなことになるんだよ」

「……、というと?」

「例えば、トビウオをハトの代わりに山から飛ばそうとしてみたり沢山のトビウオを使って船を飛ばそうとしてみたり」


「なっ、いくらなんでもそんなバカな??」

「飛べる魚、って理解が先に来ちゃうとバカなことがバカじゃなくなるんだよ。エグゾセじゃないけど軍事利用を考えたり」

「超低空海面追随飛行が可能な中距離対艦ミサイル? いや、生体爆弾か……。んな計画上手く行くはずないだろうに」

「目的は逃げること、手段は滑翔。ここで混乱すると間違えちゃうのかも。最初の魔術と同じでしょ?」


「目的は対象の全機能破壊、手段はバラバラにする現象……。殺すため壊す、逃げるため飛ぶ。……なるほどな」

「ついでに、とうまが魔術を便利で強い技術だと誤解してるのは、凡そ手段と目的を取り違えてるのが原因なんだと思うよ」

「……、そこはヤッパリ納得行かないけどなあ。第一、間違ってるって言うワリに細かく教えてくれるワケでもないし」

「知りたい? 簡単に喩えるなら卓球はフライパンとバスケの球でも出来るけど翌日腕がパンパン、ってことなんだけど。判る?」




「その話は何かを説明してるつもりなのか……、コレ上条さんがバカだからわかんねーんじゃ無いよな?」







429: 逆転の発想 2012/02/07(火) 20:30:47.80 ID:EdJ+Y5420

                                 ☆

御坂「佐天さんが金属バットで黒子を後ろから狙った。黒子はフルスイングが頭に触れた瞬間にそれを察知して避けた」

佐天「来る方向が判ってるから電撃は避けられるって理屈にはそれの100倍シビアな能力が必要ですよね……、アリエナイ」

初春「そんな白井さんなら死角とか無いですね。だってどんな攻撃も当たった瞬間に来る方向が判る攻撃になるんだから」

白井「なんでわたくしが……。まあそんな人間が普段はボコボコ殴られてるのなら、情報のどこかにウソがあるのでしょう」


御坂「うそか……、ウソねえ…………、うそうそうそうそ、カワウソ~♪」







佐天「……えっ、あ、カワウソってイタチみたいなやつでしたっけ? しし、知ってはいるけどイメージしにくい生き物ですよね」

初春「カモノハシと似ていたような……、あれ? それはレッサーパンダだっけ……。確かに良くわからないかもです」

白井「ビーバーやアナグマなどと混同した姿で記憶されてる方も少なくないかと。まあ、水辺の哺乳類ですわね」

御坂「やあ、ぼくウソつきのカワウソホンマだよっ! …………、あれー? 面白いでしょ? 何で誰も笑わないの??」


白井「常盤台入学時にお姉様の暴走に対しては様々な意味で手出し無用と教わっておりますの。それよりカワウソの話を」

佐天「そ、そうですよー。御坂さんは川の生き物には断トツで詳しいでしょ? カワウソだってバッチリでしょ?」

初春「誰だってギャグかどうかの見当もつかないモノの道連れはゴメンです。さあ、カワウソの解説お願いします」 ニコニコ

御坂「うーん。前々から思ってたけど、みんなの感性ってズレてるわよ? ま、いっか。ニホンカワウソの話で良い?」


白井「んっ、まーっ!! いいですわねニホンカワウソ、それで行きましょうそうしましょうそれが最高ですの!!」

御坂「そ、そんなに好きなのニホンカワウソ? ……黒子が乗ってくれるなら大丈夫かな、みんなも良いわね?」

佐天「(さすが白井さん……、勢いつけて話に乗っかることで御坂さんの暴言を無かったことにした……!)」

初春「(ええ、唯一無二のパートナーを自称するだけのことはありますね)……あ、話はこちらもそれでオッケーですよー」



御坂「了解っと。なるべくわかり易く話すわね」




430: 逆転の発想 2012/02/07(火) 20:32:38.34 ID:EdJ+Y5420

御坂「さて、まずは軽く分類をおさらいしとこっか。ニホンカワウソは食肉目イタチ科に属するんだけど…」

佐天「あ、やっぱりイタチに近いのかあ」

初春「レッサーパンダはちょこっと遠い親戚ってとこですね」

白井「近縁には他にラッコやオコジョ、フェレットやテンといった、ネコ系の可愛らしい仲間が多いですわね」


御坂「食肉目はネコ目とも言うもんね。これでもイメージ出来ないならラッキーくんっぽいヤツだと思えばいいわ」

初春「最後にそのたとえを持ってくると却って分りにくくなるような……。マギーさんがどうこうじゃないですけど」

佐天「それにしても、カワイイ動物なんだろうにどうしてこんなに絵が浮かばないんでしょ?」

白井「考えるまでもありませんの。ニホンカワウソは既に絶滅していると見做されているから、そうですわねお姉様?」


御坂「そう。かつては日本中の水辺でごくありふれた生き物だったんだけど。明治以降の近代化の流れの中で……、」

白井「最後の目撃例が西暦1979年ですが、この調査の段階で既に誰の記憶からも消えかけた存在だったかも知れませんわね」

初春「絶滅の原因はやはり高度経済成長化における環境破壊なんでしょうか? 生息地が護岸工事で奪われたとか」

佐天「……でも初春? そんなの頭数が減少してるの判った時点で保護すれば済むでしょ。 絶滅って多分もっと凄い事だよ?」


御坂「佐天さん鋭いわね。そう、ニホンカワウソは絶滅が確定的になるまでほとんど保護出来なかったのよ」

初春「なぜですか? 可愛くて身近で、それに特に人に危害を与えるような動物でも無いなら……」

白井「……、イタチ科にはミンクという動物も居ますわね。毛皮で御馴染みですけど……、そういうことですの」

佐天「つまり、保護が間に合わないほど急激な乱獲があったと…………。でもカワウソの皮ってそんなに良いものなんですか?」


御坂「エビやカエルを捕食するような水中生活に適したその皮は、高い防水保温効果があったそうね」

白井「そうした毛皮目的での乱獲によって数を減らしたところに、初春の言う生息地の環境悪化が重なったと」

御坂「それと漁師にとってはある意味害獣だったのよ。畑のモグラと同様にね」

佐天「漁場を荒らすから駆除してたんですね……。それは責められないけど……、ん? あのー……、あれっ?」


御坂「そうよね、当然疑問が沸くと思う。環境悪化以外の絶滅原因は近代化以前から存在してたってことでしょ?」

初春「はあ。言われてみたら毛皮は昔だって需要があっただろうし川漁師さんは今より多かったはず……」

白井「となると、大昔はニホンカワウソ捕獲に対して何らかの歯止めがあった、という事ですの?」

佐天「そして時代とともに失われた……。それは一体どんな抑止力だったんですか?」


御坂「…………そのチカラ。一言で表すなら、オカルトよ」






431: 逆転の発想 2012/02/07(火) 20:35:33.77 ID:EdJ+Y5420

御坂「ニホンカワウソは日中は岩陰や草むらで過ごして、エサを探すため活動的になるのは夜中なの。
    そういう夜行性の野生動物はべつに珍しくない。けどね、ちょっと想像力を働かせてみて。

    電気もガスもない、つまり日没とともに暗闇に支配される時代。夜は人にとってどんな時間だったか。

    見えない恐怖だけじゃなく、むしろ見える恐怖。昼間ハッキリしていた木々や山の輪郭が闇に溶け
    全ての境界線が曖昧になる。だって手元の灯りで作られた自分の影さえ周囲に馴染んでいくのよ。
    それはこの世とあの世の区切りさえ頼りなくボヤけた時間。世界が冷たい漆黒と熱を帯びた…」

初春「要するに明かりが無いと人間なんて無力だから、時には変な妄想に駆られたりするものだということですね?」

佐天「ふむふむ、夜の山道でガケから落ちたり野犬に襲われたり。そんな本能的恐怖が暗闇の禁忌を作ったと」

白井「暗闇を恐怖の対象とすれば、暗闇に蠢くものたちを同じく恐れるのは自然の成り行き。そこでカワウソですわね」


御坂「……あ、うん。……さっきも言ったけどニホンカワウソは夜行性、つまり暗闇の中を動き回る生き物なの。

    恐怖の対象であり単純に危険も多いと言っても、昔の人だって真夜中に外出することが無かったわけじゃない。
    頼りは提灯や松明、それに月明かりだけかなあ? とても心細い道すがらだったんでしょうね。
    当然だけど他人の姿なんて無いし物音も少ないから、普段は意識の外側にある世界が際立つことになる。

   幽霊の正体見たり枯れ尾花じゃないけど、昼間に見慣れてるものでさえ異界の住人に成り代わるのよ。
    なら、予備知識の無いモノが予測不能の動きをしたらどれほど恐ろしくどれほど畏るべきことだったかと…」

佐天「ははあ、つまり深夜に月明かりが映る水面を見たらカワウソが泳いでて、そうと知らない昔の人はビックリしたと」

初春「川の中でにゅっと突き出た鎌首と光る獣の目が暗闇の中でうっすら見えるんですね。怖かっただろうなー」

白井「それを物の怪、妖の類と扱ったのも詮無きことですわね。つまりカワウソはかつて一般人とってバケモノだったと」


御坂「そう、そうなんだけど……。あれー? なんだろこのスッキリしない感じ。むぅ~……。

    と言うわけで、タヌキやキツネが人を化かすなんてのと同様、ニホンカワウソも人知及ばぬ怪異の一部だったのよ。
    地方によっては成長したカワウソが人を捕って喰らうカッパになるなんて言い伝えが残ってたりね。
    成長したらって、んじゃカッパは年老いてハg……、頭頂部付近の体毛密度が著しく低下したカワウソなの?
    バッカらしい話だけどさ、こんな根拠の無い迷信のお陰でカワウソは長い間守られていたとも言えるのよ。

    カワウソに最も近い仲間がラッコ……、っていうよりラッコってずっと海に居るカワウソのことなんだけど
    アレも毛皮の為の乱獲で絶滅寸前まで追いやられたのよ。伝えられてるそのラッコ猟の様子がなんて言うかね……。

    貝やらカニやらを拾ってきて水面にプカプカ浮かび石ころでカンカン叩いて食べる、そんなノンビリした印象でしょ?
    実際、ラッコは攻撃性が低くてしょっちゅうボーっとしてるような生き物なんだけど、その性格が災いしたワケね。
    捕獲の為に人が船で近づいても逃げない。それどころか好奇心丸出しで向かって来ちゃったりするの。古い記録には
    もともと海岸で生活するラッコも居たけど簡単に捕まえられすぎて即絶滅。現存タイプだけが残った、ってあるくらい。

    カワウソも同じだったのよ。捕まえようと思えば簡単だった。だけど昔はオカルトが抑止になっていた。
    『おとなしそうに見えても、その実は牙を剥き人の生き血を啜る怪物だから手出しは禁物である』なんてね。

    長きに渡り動物と人を区別せず、いえ、区別したとしてもむしろ上の存在と見做したからこそ守られたものがある。
    意図的で有る無しに関わらず、バカバカしいオカルトにだってそれなりの役割があったって言えないかな?」


佐天「カワウソは怖ろしい。そんな幻想を文明開化が軒並み壊してしまった。ただの下等な小動物だと……」

初春「そして今、私たちはニホンカワウソの姿を思い浮かべることさえ出来ない。ホントの幻想になってしまいました」

白井「そう考えますと……。幻想を壊す、つまりウソを暴くことが一概に良いことかどうか。悩ましい問題ですわね」

御坂「まあね。守るべき幻想なんて判らない。だけど壊さないほうがいいウソも中にはある、ってせめて知っておくべきなのよ」



御坂「って、みんな暗いわよ……、景気付けに歌っとく?  うそうそうそ、かわうそ~、カワウソホンマ~♪」 フンフン♪

白井「(そのフレーズがツボに入ったんですのね。さて、そのつまらない幻想は壊すべきか否か……、悩ましいですの)」







432: 逆転の発想 2012/02/07(火) 20:40:33.90 ID:EdJ+Y5420

                                   ☆

打ち止め「ねえねえ、ブルーギルっておさかな居るでしょ? アレって日本のおさかなに比べてそんなに強いの?」

一方通行「……典型的な勘違いだな。そォした意味合いで言えば生き物に強弱はねェよ。あるのは相性ってヤツだ」

打ち止め「じゃあブルーギルが猛威を振るってるのは相性が良かったから……? よくわかんないんだけど」

一方通行「メンドくせェ……。例えばアレだ、ポーカー知ってンだろ? カードゲームの定番の」


打ち止め「通常5枚の手札を用いて特定の役を作りその強弱を競う、だったかな? とミサカはミサカは思い出してみたり」

一方通行「フン…………、オマエは今死ンだぞ? ンな上っ面の理解だけでカードを語ンじゃねェよバカが」

打ち止め「問われて答えたのになんと理不尽コレが現実!? ってミサカはミサカは騙し合う嘘つきだねと締めくくってみる」

一方通行「アレはプレイヤー同士がテメエを偽りながら真実を読み合うゲームだ。決められたルールの中でな」


打ち止め「内心ビクビクしながら表面は余裕の顔、だけど相手を萎縮させ過ぎちゃダメとかそんな感じかな?」

一方通行「……まァそォだ。ポーカーフェイスっつーのは無表情って意味じゃねェンだよ」

打ち止め「それで、そのゲームとブルーギルと相性がどう関係するの?ってミサカはミサカは軌道修正してみたり」

一方通行「ポーカーの基本ルールは知ってンな? なら相手の手札が全部見えたら勝負にならないってコトはわかるだろ?」


打ち止め「自分の手札が相手より強ければ受けて、弱ければドロップしちゃえば良いから……。そりゃそうだけど」

一方通行「勿論、相手の手札を覗くのは反則だ。……但し、対戦者同士がそう決めた同じルールで戦ってンならだが」

打ち止め「つまりブルーギルが日本のおさかなに対して相性が良いというのは、手札が丸見えのポーカー状 だってこと?」

一方通行「そンな感じであくまで偶然にだが、向こうのルールがコッチに対して圧倒的に有利だったって事だ」


打ち止め「でも自然には人の決めたルールなんてないよ? とミサカはミサカは至極真っ当な疑問を投げかけてみる」

一方通行「ルールってのはモノの喩えだ。この場合、それぞれの生物が進化の過程で得た個別の特性のコトだと思え」

打ち止め「……原産地の自然環境に適応する生物を別の場所に移動させたら、より過剰に適応し繁栄した……。う~ん?」

一方通行「繁栄ねェ? 好敵手の居ない勝負師は存在価値ゼロだ。ゲームに限らず勝ち過ぎは破滅と同義なンだよ」


打ち止め「じゃあ、たくさん増えて在来種に取って代わろうとしてる今の状況はブルーギル自身にも良くないの?」

一方通行「そォだが……、悪りィ。後はその辺の問題に詳しいヤツに聞け。紹介してやる」 ポチポチ

打ち止め「えっ……別にそんなこと望んでるわけじゃ、とミサカはミサカはあなたの少々捻じ曲がった親切に困惑してみたり」

一方通行「ン、何か言ったか? ―――――――――場所はいつもの水槽屋だ。連絡してやったからとっとと行って来い」







433: 逆転の発想 2012/02/07(火) 20:44:57.27 ID:EdJ+Y5420

 【学園都市最大のアクアリウムショップ ~エディ・アレックスのアクアホリックショップ~】


打ち止め「なんでこんなことにーーっ! ってミサカはミサカは広い店内に響き渡るほどの大声でグチってみたり」

芳川桔梗「でも、あの子が素直に他人を頼ったことは評価に値するわ……。同居人の気持ちには無頓着なままだけど」

打ち止め「ホントだよ! 第一どうして話を聞いて来いって言うだけ言って一緒に着いて来てくれないの?」

芳川桔梗「そう言えば何だか変なこと言っていたわね。『アレと俺とじゃ会話が成り立たねェンだよ』とかなんとか……」




削板軍覇「どうも。そのアレです」 \ドッパーン/

打ち止め「」

芳川桔梗「」



打ち止め「……えっ、えっと」 ナニコレ?

芳川桔梗「……、終わったら携帯に連絡を入れなさい。近くで待機してるから安心して。……頑張りなさいね」

打ち止め「なっ………!!」 ニゲタ !?


    「…………」  「…………」



     ――――――――――――――――――――――

     ―――――――――――――

     ――――――


打ち止め「それじゃあ、あなたはあの人が誰かも知らないの? ってミサカはミサカは打ち解けた雰囲気で問いただしてみる」

削板軍覇「俺は店の設備を借りてるだけ。店員じゃねえから客の個人情報は把握できんしあの人がどの人か見当もつかん」 

打ち止め「でもあの人は連絡しとくって言ってたんだけど……、とミサカはミサカは一体どういうことなのかまるで解らなかったり」

削板軍覇「おう、確かに丁度38分前に非通知で『チビがブルーギルの話聞きに行く。準備しろ』と知らないヤツが掛けて来たな」


打ち止め「……えーと、」

削板軍覇「待てよ? あの声はいつもの……、根性不足のエノキ野郎だったような気がするな。あの人ってのはそいつか?」

打ち止め「最近は乾燥シメジと称しても過言じゃない!とミサカはミサカは擁護し……あれ? じゃあやっぱりお知り合い?」

削板軍覇「時々訪ねて来て問題のある魚を置いていく困ったヤツだな。次遭ったら根性入った説教してやるつもりだ」 バチコーン


打ち止め「あの人が一緒に来なかった理由が判ったよ、とミサカはミサカは……、それはそうと問題のあるおさかなって?」

削板軍覇「俺の専門でもある特定外来生物だ。『同居人が拾ってきた魚ン中に混じってた』などとくだらん言い訳しながらな!」

打ち止め「それ多分ウソじゃないし、さっきミサカの横に居たのが真犯人の一味なんだけど…」

削板軍覇「さて、そんなどうでもいい話などとっとと切り上げて本題に入るぞ! テーマは『ブルーギルと根性』だ」


打ち止め「……ツッコミ気質が無いミサカにはこの人の相手は厳しいよ、とミサカはミサカは今更先行きに不安を覚えてみる」

削板軍覇「では行くぞ! まずはミサカワミサカ? がどの程度の予備知識を持っているか…」

打ち止め「ちょちょっ、ちょっと待って今のはそんなミサカもさすがに見過ごせない! ミサカワミサカってミサカのこと?
       ってミサカはミサカはミサカのことはミサカか打ち止めって呼んでほしいと淡い希望を述べてみたり」


削板軍覇「了解だ! 俺はミサカワが予備知識をどの程度持っているか知らんので基本的な話から始める。それでいいな?」

打ち止め「う……、色々含めてもう……いい、とミサカはミサカは早くも諦めムードの心中を吐露してみる」 グッタリ


434: 逆転の発想 2012/02/07(火) 20:48:17.24 ID:EdJ+Y5420

削板軍覇「何はともあれ実物を見るのが一番だな! ちょっとこの水槽のほうへ来てくれ」 コイコイ

打ち止め「えっ? 本物が居るのってミサカはミサカはおずおずと近づいていき……。ほほぉ~、ふむふむ~、なるほど~」

削板軍覇「コイツらは全長10cm以下のブルーギル(若魚)だ。感想があるなら聞いておくぞ?」

打ち止め「んーと、薄い縦じまがあって、横から見た形はフナみたいな楕円形なんだけど……なんだか随分薄っぺらいね」


削板軍覇「確かに、明るいところで観察すると背骨が透き通って見えるほど薄いな。他に気になるところは無いのか?」

打ち止め「背ビレとかが尖っていて危なそう……。あとエラ蓋のトコに何かくっついてるね」

削板軍覇「その通り! コイツのヒレは危険、素手での扱いには注意が要るぞ。そしてエラ蓋のアレが名前の由来だ」

打ち止め「ほほ~。エラ蓋の上に黒っぽいというか紺色っぽい小片があるからブルー(青い)ギル(エラ)ってこと?」


削板軍覇「英語が喋れるとはミサカワは賢いな! 要するに、ギルと省略してしまうとそれはエラと言う意味なのだ!」

打ち止め「ギルがいっぱいいる池、と言われてエラが溢れてる様子を誰も想像しないと思うけど、とミサカはミサカは…」

削板軍覇「で、今度はこちらの水槽だ。充分に成長した個体はこの大きさになる」

打ち止め「うわっ! すごく地味な体色だけどフナと言うよりマダイのような? 大きさも50cm近くあるんじゃないコレ?」


削板軍覇「うむ。若魚のように薄っぺらくない実に逞しい体だろ? まさに根性の為せる業だ!」

打ち止め「後半さっぱりわかんないけど、とミサカはミサカはちなみにブルーギルが何の仲間か尋ねてみたり」

削板軍覇「分類か! サンフィッシュ科だから、一般的にブラックバスと呼ばれるヤツらが近縁だな」

打ち止め「ん? でもブラックバスって全然カタチが違うよ? アレはもうちょっと細長くて丸くて口が大きくて…」


削板軍覇「分類は表面の見た目で決まらない場合も多く素人には理解し難い。だから気にする必要なぞ無い!」

打ち止め「ソウデスカ……。あと、サンフィッシュって確かマンボウも英語でそんな名前だったような?とミサカはミサカは…」

削板軍覇「ミサカワは本当に博識だな! そう、マンボウは英語でサンフィッシュ。だがサンフィッシュ科とは無関係なのだ!」

打ち止め「偶然同じ名前になっちゃってるだけなのねとミサカはミサカは納得してみる」


削板軍覇「さて、まだまだ言及しておくべきことは山ほどあるが、こっからは当初のミサカワの疑問に答えつつ紹介してくぞ」

打ち止め「ブルーギルが有利なトコロ、増えすぎの反動や害だよねとミサカはミサカは忘れないうちに思い出しておく」

削板軍覇「っと、以下はネガティブなイメージの話題でもある。ガラじゃねえんだが一応ヒトコトだけ言い訳させてくれ」

打ち止め「はあ……、お任せしますとミサカはミサカはゴーアヘッドのサインを送ってみたり」







削板軍覇「個人的な意見を押し付けるなという意見は個人的な意見の押し付けである。これをジレンマと言う!」

打ち止め「…………それ言い訳とは違うような、でもツッコんだら負けのような、とミサカはミサカは躊躇逡巡してみる」 ウーン






435: 逆転の発想 2012/02/07(火) 20:53:20.77 ID:EdJ+Y5420

削板軍覇「ブルーギルは北アメリカ原産の淡水魚で、主に流れの弱い河川または池や沼などの止水を好む魚だ」

打ち止め「分布は淡水全体だけど、余り流れが急じゃないところが好きなのねってミサカはミサカは情報を補完してみたり」

削板軍覇「肉食傾向の強い雑食性のクセに縄張りを作るよりも集団で行動する、つまり一匹見つけたら云々な習性を持つ」

打ち止め「コックローチさん……。それにしても群れを作ってエサを獲ってたらすぐ周りに食べ物が無くなっちゃうんじゃ?」


削板軍覇「目の付け所が素晴らしいな! どうやら周囲に食べ物が豊富な場合、一匹ずつに好き嫌いが出来るようなのだ」

打ち止め「俺とオマエじゃ喰いモンが違ンだよ! 肉喰ってりゃ幸せなンだよ! 肉無くなったからエビ食わせろ! って感じ?」

削板軍覇「中には水草だけとか底の堆積物専門で喰う変わり者もいるらしい。結果的に、環境全てを利用可能なワケだな」

打ち止め「いつかのアメリカザリガニみたいな子なのねってミサカはミサカはボンヤリと思い出してみたり」


削板軍覇「繁殖はサンフィッシュ科に共通するのだが、オスが砂地に巣を掘りメスを誘って産卵させるというものだ」

打ち止め「……、話がコロコロ変わり過ぎだよ! とミサカはミサカは愚痴りつつもオス魚の苦労を偲んでみる」

削板軍覇「巣を作るだけじゃないぞ? 産卵後もオスは巣に残りタマゴや稚魚を狙う捕食者を追い払い続けるのだからな」

打ち止め「その時メス魚ってドコへ……、とミサカはミサカは夫婦仲って水物だなあなどとテキトーな事を言ってみたり」


削板軍覇「さて、捕食魚としてのブルーギルは止水に於いて非常に優れているのだが……。それはどんな所かわかるか?」

打ち止め「えっ? いきなりそんなことわかるわけが……けど、もしかしてこの水槽を見ればヒントがあるのかな?」

削板軍覇「おいおい、ミサカワはホントはチビッ子の皮を被った学者とかじゃねえだろうな? 鋭いにも程があるぞ……」

打ち止め「……それはともかく、ブルーギルって普段はこんなにじっとしてるおさかななの?」


削板軍覇「違うな。動きがただ少ないんじゃなく、停止時の動きが極端に少ねえんだ。ホレ、ヒレもシッポも止まってんだろ?」

打ち止め「……、ホントだ。フナやヌマムツみたいな魚だって一箇所に留まるためには結構細かく運動してるのに」

削板軍覇「水の中で動けば波が起こり、周囲に自分の存在を知らせちまう。では動くこともなく一点に留まれたら、どうだ?」

打ち止め「それはつまり気配を消して相手が近づくのを待ち、警戒させないまま攻撃出来ると……。まるで暗殺者だね」


削板軍覇「だろ? その上、追撃特性も優れている。停止→トップスピード→停止をほとんど加速減速なしで実行したり」

打ち止め「お~~! お値段が惑星ひとつ分の宇宙船みたいだねってミサカはミサカは感嘆の声を上げてみたり」 ヒュー

削板軍覇「360度全ての向きで停止が可能だったりな。背ビレと胸ビレを器用に使って前を向いたまま高速バックだって出来る」

打ち止め「ふむふむ。まさに止水のファンタジスタって感じだねってミサカはミサカは総括してみるんです」


削板軍覇「他にも冷温や酸欠、汚水に耐えるスゲエ根性がある。そんなブルーギルが日本の水環境に入ればどうなるか」

打ち止め「多少の悪状況を問題にもせず、食べられるものを全て食べつくし、一方で自分の子供たちはがっちりガード」

削板軍覇「狙った獲物は逃さない運動性能を持ち、コレといった天敵も見当たらない……。一人勝ちってヤツだな!」

打ち止め「そうだね……。じゃ次は、勝ち過ぎがどうして破滅に繋がるのか教えて欲しいとミサカはミサカは頼んでみたり」






436: 逆転の発想 2012/02/07(火) 20:57:40.94 ID:EdJ+Y5420

削板軍覇「ある種の魚が極端に水域を占有すりゃ当然弊害がある。人間側から見れば漁業の損害が代表的だな」

打ち止め「お金になる魚が食べられたり、環境そのものを悪くされたり、網に掛かってもヒレが危険で外す手間ばかり掛かったり」

削板軍覇「そうなりつつある場所もその懸念がある場所もありってトコだ。特定外来生物に指定されるだけの根性があるな」

打ち止め「だから根性って何なの……。そういえばそんな暴れん坊をどうして移殖したの?とミサカはミサカは質問する」


削板軍覇「ルーツは20世紀後半、生物学者でもあらせられるいとやんごとなき方がアメリカご訪問の際に寄贈された15匹だ」

打ち止め「アメリカザリガニの話でも思ったけど……、最初はホントにホンのちょっとだったのね」

削板軍覇「それを食用や釣り目的の研究の為日本に持ち帰り、水産庁に寄贈……と、ここまでは何も問題無かった」

打ち止め「ああ、見えるよ……。その後、養殖池が洪水で溢れて逃げ出したとか、流行を作ろうとして密放流したとか……」


削板軍覇「バス釣りを流行らそうとした輩が、バスのエサになるってデマを信じて放ちまくったなんて話もある。だが実は逆だ!」

打ち止め「ブラックバスは狩りが下手だからね……。ブルーギルは何でも食べるからバスのタマゴだって食べちゃうわけだし」

削板軍覇「今では各地で駆除の対象だ。基本的に許可なく飼育、移動、放流、譲渡などすれば罰せられるから気を付けろよ!」

打ち止め「ん? あの……、ひょっとしてあの人がここに生きたまま特定外来生物を持ってきちゃったのってダメなことなの?」


削板軍覇「俺は許可を持ってるが正直グレーだぞ。だから以前『最大1億円の罰金刑だ!』とヤツには警告したんだが……」

打ち止め「あー……、あの人はそれ系の罰には麻痺してるとこがあるのってミサカはミサカは代理で弁解してみたり」

削板軍覇「桁の多い数がピンと来ないクチか、俺と同じだな!」

打ち止め「あ、いやそうじゃなく……。それはそうとちょっと疑問なんだけど、移動が禁止って持ち帰ることもダメなの?」


削板軍覇「原則で言えば、殺してから持ち帰ればOKということだ。それまで禁止したら捕まえた時点で罪になりかねん」

打ち止め「ふむふむ。あのね? それならブルーギルを釣って食べちゃってもかまわないよね」

削板軍覇「もちろんだ。そもそも原産地では立派な食用魚だしな……。但し、法律とは関係ない問題点がいくつかある」

打ち止め「それは何?ってミサカはミサカは頭の中で料理法を模索しながら尋ねてみたり」


削板軍覇「一般的な淡水魚と同様コイツも生息域によって味が変わり、時に喰えたものじゃないレベルまで落ちる場合もある」

打ち止め「まあ……、それはしょうがないかも、とミサカはミサカは話の続きを促してみたり」

削板軍覇「その上、個別で嗜好が違うって話をしただろ? 食べ物の違いはそのまま食味の違いに繋がるからな」

打ち止め「泥みたいなものばかり食べてた魚が泥臭いのは当たり前か……。しかも見た目じゃ違いがわからないよね、それ」


削板軍覇「更に件の食用魚としての研究の結果、日本では不適合であると結論が出ている。理由は主に2つ、わかるか?」

打ち止め「サイズの違うブルーギルの水槽を交互に指差しながら質問した、ということは大きさの問題?」

削板軍覇「その通りだ! 原産地ではこのビッグサイズまで成長するが日本では20cm以下が大半だ。しかも成長が遅いときた」

打ち止め「でっかくならないと薄っぺらだから食べるところが殆ど無いもんねとミサカはミサカは得心してみたり」






437: 逆転の発想 2012/02/07(火) 21:01:07.61 ID:EdJ+Y5420

削板軍覇「ではあまり話が長くなってもいかんので、そろそろ核心に入るぞ。根性入れて聞く準備は出来てるか?」

打ち止め「……お、おうっ! とミサカはミサカは半ばヤケクソ気味に最後のスタミナを振り絞ってみたり」

削板軍覇「優占種。ある場所で主に見られる生き物をそう呼ぶが、それが行き過ぎた結果最終的にどうなるか、だったな」

打ち止め「もう最初の質問なんて覚えて無いからどうでもいいよとミサカはミサカは開き直ってみる!」


削板軍覇「その意気や良しだ! ではこういったお題では定番だがヴィクトリア湖の悲劇の話を……、ひょっとして知ってるか?」

打ち止め「…………知らない、とミサカはミサカは空気を読みつつもアフリカ最大の湖、ヴィクトリア湖の話を期待してみる」

削板軍覇「そう、まずデカい。琵琶湖の100倍とも言われる広大な淡水湖だ。俺の根性を以ってしても飲み干すことは難しい」

打ち止め「えーっと、ついでに10万年以上水を溜め続けている古代湖だよねとミサカはミサカは一部無視してフォローしてみる」


削板軍覇「うむ。巨大な隔離水系が長期に渡り存在すればそこには非常に独自で多様な生 系が発達する」

打ち止め「日本の琵琶湖固有種でさえ、国内の淡水魚種のかなりの割合を占めてるもん……だから簡単には想像もできないよ」

削板軍覇「一説によると20世紀初頭までヴィクトリア湖には400を超える固有魚種が居たらしい。既に確認する術も無いが」

打ち止め「その悲劇のせいで、だねとミサカはミサカは詳しく解説してくれることを遠まわしに求めてみたり」


削板軍覇「中央アフリカ東部に位置し3国に跨るヴィクトリア湖は20世紀中頃までイギリスの支配下にあった。
       いわゆる植民地のように本国以外に生活圏を広げる場合まず何より先に確保する必要があるのが水と食料だが
       この湖は周辺国へのイギリス入植初期段階ではその期待に充分に応えた。なにしろ根性入ったデカさだからな。
       しかし人口の増加傾向に徐々に漁獲量が追いつかなくなり、やがて水産資源が底を突くおそれさえ出てきた。
       イギリスとしては何か手を打つ必要があったのだ。そして目を付けたのが同じくアフリカ原産の、とある魚だ。

       その名をナイルパーチ。ナイルと付くが直接ナイル川に縁が深いことは無い。最大で2m、200kgに達する大型魚だ。
       日本の魚で言えば白っぽい体に赤い目が特徴のスズキの仲間、アカメに良く似ている。というかほとんどアカメだな」


打ち止め「白っぽくて赤い目の第1位スズキ目……そりゃ問題児ですわ、とミサカはミサカは海よりも深く納得してみたり」


削板軍覇「いや、必ずしもコイツが悪いわけではないぞ? 何を納得したのか良くわからんが……、まあ続けるぞ。

       イギリスは食糧確保の為に大型で肉質が良く現地の環境に適応可能なナイルパーチをアフリカ中の淡水に移殖した。
       ヴィクトリア湖もそのひとつだった訳だが、この試みはひとまず成功する。
       食料として、また外貨獲得の輸出材として、更にはゲームフィッシングなどに、とナイルパーチは幅広く利用された。
       その裏で刻々と破滅が広がっていくのを誰も気付かないままにな。

       考えてみろ。2mを越す大魚は何をどれ位食べてその大きさになるんだ? そんな魚に天敵は居るか?
       ましてそれが、殆どの在来魚類が草食傾向の強いものだったヴィクトリア湖に放たれたらどうなるのかと。

       導入から数十年後、湖の様相は一変していた。ナイルパーチの食欲によって固有魚種は200種以上絶滅した。
       また、水草を食べる種の減少によって植物プランクトンが異常発生し酸欠状 が湖各所で常 化。
       つまり負のスパイラルとも言うべき事 で更に生 系の破壊が連続し、湖全体が死で埋め尽くされてしまった。

       だが植民地時代の終わった現在においてもナイルパーチ養殖は外貨獲得の手段として続けられている。
       湖の名からヴィクトリアパーチなんて呼ばれたりもするこの魚は今尚、名も無い白身魚として先進国で食されてる。

       ヒトの歴史よりも遥かに長い時を刻んだ生 系の完全な崩壊は、既に確定してしまってるのかもしれん。残念だ!」






438: 逆転の発想 2012/02/07(火) 21:06:41.41 ID:EdJ+Y5420

打ち止め「…………うーん。話の規模が大きくてなかなかイメージ出来なかったけど、とにかく大変なことになってるんだね」

削板軍覇「それだけ判れば十分だ! そして、これを日本の淡水とブルーギルに当て嵌めて考えられれば更に素晴らしいぞ!」

打ち止め「ふむふむ……、ブルーギルの場合はそこまで大きくならないのがまだマシなのかな……」

削板軍覇「それでも! 天敵の居ない繁殖力の強い外来生物が国内全体に蔓延している状 は決して健康ではないだろ」


打ち止め「うん。さっきのナイルパーチだって他の生き物が居ない汚れた水で育ったら商品価値も減って、結局ダメになるよね」

削板軍覇「だな。コレばかりは根性で解決できる問題ではない。つまり勝ち過ぎはやがて己の身を滅ぼすということなんだ」

打ち止め「なるほどね、とミサカはミサカはようやく回収できた疑問点に安堵の表情を浮かべてみたり」

削板軍覇「とにかく、まともな天敵が居ないというのが逆にコイツらの弱点なんだ。だからだな、ゲームフィッシングで

      『命は大切だから、キャッチアンドリリース』

       なんて言うが、コイツらがホントに好きならば是非とも心を鬼にして天敵の代わりになってやってくれ。
       直接手を掛けることに抵抗あんなら、近くに穴でも掘って埋めてやればいい。あくまでもブルーギルのためにな。
       もちろん一個人の力でどうこうなるような問題じゃねえかもしれねえが、少なくとも何もしないより効果はあるはずだ。
       淡水巻貝のカワニナの一種がコイツらの巣で親に追い払われることなくタマゴを捕食していたって報告もあるが
       その程度でいい。大切に思うなら……カワニナ程度の助力はしてやりたいじゃねえか。そう思わねえか、ミサカワ?」

打ち止め「良い事言ったのに最後で台無しだよ……、とミサカはミサカは一応頷いて賛意を表しつつ不満を述べてみたり」


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芳川桔梗「お疲れ様……、って本当にお疲れの様ね。脱力具合が半端じゃないわ」

打ち止め「よお裏切り者テメエ今まで何してた、とミサカはミサカはヤサグレ気味にお迎えを感謝してみる」 グター

芳川桔梗「さっきの子は序列第七位の超能力者。元、とは言え研究者の私が許可なく直接面識を得てしまうのは問題なのよ」

打ち止め「もっともらしい言い訳だよね……とミサカはミサカは、さっきのあの人やっぱりレベル5か! と納得してみたり」


芳川桔梗「あら、超能力者に随分と偏見を持っているようね。まあでも、それは偏見では無いのかもしれないのだけれども」

打ち止め「……、と言うと?」


芳川桔梗「こんな与太話があるわ。

       学園都市の超能力開発は元々、自然に産まれてくる能力者を研究することで実現した技術だと。
       環境、教育、思想、その他様々な要因が複雑に重なり合い一般人とは違う脳構造を得たそうした人を
       大昔は奇跡の体現者と呼び、今ではジェムストーンに準えて原石と呼ぶのだそうよ。
       そしてさっきの子、彼はどうやら世界最大の原石と称されているらしいわ。言い換えれば理想モデルね。

       つまりこういうことよ。学園都市の能力開発とは要するに、人工的に彼のような人間を作り上げる技術。
       そして超能力者とはその技術によって目標である原石、つまり彼に最も近づけられた人間。

       これが正しい推論だとしたら……そんな者たち、レベル5がまともであるはずが果たしてあるかしら?」



打ち止め「あ、ありがちな考察だけどなんという説得力……、とミサカはミサカは色々な人を思い浮かべて意味もなく涙してみる」






  ~おしまい~