1 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/05/05(月) 21:02:13 zIXUlBnc
春香(それは、冬のある日…)

ビュオォォォォ

春香(私達は、何故か海岸で水着撮影をさせられていました)

春香「さ…寒いね、千早ちゃん…」ガタガタ

千早「え、ええ…何故このような時期に…」ブルブル

春香「千早ちゃん…く、くっついてもいい…?」

千早「えっ、それは…」

春香「ねぇ…いいでしょ…?」スリスリ

千早「だ、駄目よ春香…こんなところで…」

春香「ちょっとだけ、ちょっとだけだから…」サワサワ

千早「んあああー!!」

カッ

春香「!?」


"
"

2 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/05/05(月) 21:02:58 zIXUlBnc
ゴゴゴゴ…

春香「千早ちゃんの体が…」

ゴゴゴゴゴゴ…

春香「変化していく…」

マグロ「」ドスッ

春香「ぐえっ」

マグロ「」ビチビチ

春香「お、重い…」

マグロ「」ビチビチ

春香「これは一体…千早ちゃんが魚に…?」


3 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/05/05(月) 21:04:32 zIXUlBnc
P「春香!」

春香「プ、プロデューサーさん…」

P「大丈夫か、今どかしてやる!」グイッ

マグロ「」ゴロン

春香「ふぅ…ありがとうございます」

P「話は後だ、千早を海に!」

春香「へ…? なんでです?」

P「早くしろ! 間に合わなくなる!」

マグロ「」ビチビチ

春香「は…はいっ!」ガシッ

ポーイ

マグロ「」バッシャァァ

スイーッ




5 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/05/05(月) 21:06:16 zIXUlBnc
P「ふぅ…これで一安心だな。ロケ地が冬の海岸でよかった」

春香「なんで、千早ちゃんを海に…?」

P「千早の姿を見ただろ? あれはマグロだ」

春香「マグロ…」

P「マグロは回遊魚…泳ぎ続けなければ死んでしまうんだ」

春香「泳ぎ続けなければ、死んでしまう…」

春香「それって…」

P「そう、まさに千早の在り方だ。千早はマグロそのものじゃないか」

春香「千早ちゃんがマグロだった…」


"
"
6 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/05/05(月) 21:08:08 zIXUlBnc
春香(千早ちゃんがマグロになり、海に帰ってから数日が経ちました)

ガヤガヤ…

春香(事務所はいつも通り明るい雰囲気です。でも、そこには…)

春香「………」

P「どうした春香、険しい顔をして」

春香「プロデューサーは、何も思わないんですか。千早ちゃんがいないこの風景…」

P「仕方ないよ。マグロの養殖には直系50m程度の生簀が必要だ。この事務所にそんなスペースはない」

春香「そんなの、関係ないですよ! 千早ちゃんは、千早ちゃんは…」

P「春香、千早は母なる海に帰ったんだ。俺達が余計なことをすべきじゃない」

春香「そうかもしれません…」



8 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/05/05(月) 21:10:07 zIXUlBnc
春香「でも、私、やっぱり…千早ちゃんを放っとけない」

P「どうするつもりだ?」

春香「千早ちゃんを…釣り上げに行きます」

P「バカな。素人がマグロを釣り上げるなんて無理だ」

春香「だったら、素人じゃなくなるまで! 何年かかっても、絶対にやってみせます!」

P「春香…」

春香「止めないでください、プロデューサーさん。私、もう決めたんです」

P「いや、止めはしない。その代わり…」

春香「?」

P「俺も着いていく」

春香「プロデューサーさん…!」

P「そうだな、千早は俺達の…」

P「仲間だもんげ!」


9 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/05/05(月) 21:11:29 zIXUlBnc
春香「そうと決まれば、早速…」

??「あの、春香、プロデューサー」

P「ん?」

千早「私もご一緒していいでしょうか」

P「なんだ、千早も来るのか?」

千早「はい。興味もありますので」

春香「それじゃ、千早ちゃんも一緒に行こう!」

千早「しかし、マグロ漁など素人の私達にできるのでしょうか…」

P「安心しろ、俺はプロデューサーになる前にマグロ漁船で働くのに憧れWikipediaで調べていたことがある」

春香「流石プロデューサーさん!」


10 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/05/05(月) 21:12:26 zIXUlBnc
ブロロロロ…

春香(こうして、私達は千早ちゃんを釣り上げるため、地元の漁師さんに船を借りました)

コォォォォ…

春香「わぁっ、風が冷たい…」

ザアアァァァ

春香「海の水が凄い勢いで割れてく…」

千早「春香、あまり身を乗り出さない方がいいわ。落ちたら大変よ」

春香「あ、そうだね。ありがと、千早ちゃん」

春香(待っててね、千早ちゃん! 今、釣り上げに行くから…)

数十分後…

春香「うえ…はきそ…」

P「春香、大丈夫か? 待ってろ、今酔い止めの薬を…」

千早「背中、さすりましょうか?」

春香「は、はい…すびばせん…」


11 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/05/05(月) 21:13:59 zIXUlBnc
そして…

P「春香、もう大丈夫か?」

春香「はい、だいぶ…」

ユラユラ

春香「それにしても、随分陸から離れちゃいましたね…」

P「よし、この辺でいいだろう。針にマグロの餌になるイカをくっつけて…」

ポーン

春香(プロデューサーさんが、餌を投げ込みました)

P「あとは、千早ちゃんが食いつくのを待つだけだ」

春香(海は深くて、底が見えません。千早ちゃんが餌に近付いてるかどうかすら、私達にはわかりません)

春香(だから、私達にできるのはひたすら待つ事だけでした…)

千早「プロデューサー。マグロ漁というのはどれくらいかかるものなのですか?」

P「えーと…一般的に、1年は海の上って聞くな」

春香「い、1年!?」

P「まぁ、一般的なマグロ漁船がそうってだけで、俺達は別に何匹も釣るわけじゃないから。1匹…千早が釣れれば帰れるよ」


12 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/05/05(月) 21:15:41 zIXUlBnc
千早「では、1匹釣り上げるにはどれくらいかかるのですか?」

P「さぁ…マグロ次第としか言いようがないな。それこそ1時間後にかかることもあれば、1ヶ月何も釣れないかもしれない」

春香「気が遠くなりそうですね…」

P「どうしても釣れないようなら、陸に戻ればいいさ」

千早「しかし…」

ユラユラ…

千早「何もせず待っているのは、少々退屈ですね…」

P「それなら、船室で休んでればいい。俺が見てるから」

千早「そんな、悪いです」

P「いいからいいから。何人も集まっても釣れるようになるわけでもないしな」

千早「そう、ですか。では…」

春香「それじゃ、千早ちゃん。船の中で楽しもうか…うふふ…」

千早「ちょ、ちょっと春香…」

P「ほどほどにしとけよ」


13 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/05/05(月) 21:17:21 zIXUlBnc
春香(そして、私達は船室の中で色々と、色々とやりながら過ごしました)

春香(時々見張りを交替しながら、代わりばんこで休んで夜を明かします)

春香(そして、変化が起きたのは次の日の朝でした…)


14 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/05/05(月) 21:18:09 zIXUlBnc
ガコン!!

春香「うひゃあ!?」

千早「な、何?」

春香「外に出てみよう!」

リリリリリリリ…

春香「あっ、リールが動いてる…」

P「春香! 千早! ちょうどいいところに来た!」

春香「プロデューサーさん、これは…」

P「ああ、かかったぞ!」

グラグラ

千早「きゃ…!」

春香 「ひゃ、揺れる揺れる!」

P「マグロはでかいのだと3m以上あるからな! 凄い力だ…」


15 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/05/05(月) 21:18:52 zIXUlBnc
ギギギギギギ

千早「プロデューサー、竿が凄く軋んでますが…大丈夫なのでしょうか」

P「大丈夫、弾力があった方が折れにくいんだ!」

リリリリリリリ…

春香(電動リールが竿の動きを感知し、自動で糸を巻く…)

P「よし…この調子だ…」

春香(竿の位置を調整しながら、千早ちゃんが上がってくるのを待っている)

春香(プロデューサーさん…頑張って…!)

P「くっ、千早め…釣れない奴だ!」

スチャッ

P「だが、こんなこともあろうかとショッカーを用意しておいた!」

春香「ショッカー? 秘密結社ですか?」

千早「ぷっ…」

P「電気ショックを与える装置だ! これで千早の体力を奪い、確実に捕まえる!」


16 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/05/05(月) 21:20:02 zIXUlBnc
春香(プロデューサーさんは、糸に鉄製の輪っかをつけ、海の中に落としました)

P「春香! 俺は手が離せない、スイッチを押してくれ!」

春香「は、はい!」

春香(言われるがままに、私は装置のスイッチを押します)

ビーッ!!

春香「わ!?」

P「放せ!」

春香「はい!」

春香(数秒でブザーが鳴ったので、すぐ放しました。マグロを弱らせるにはもっと短くても充分なんだそうです)

春香(そして…)

マグロ「」ユラユラ

春香(ついに、千早ちゃんがその姿を現しました!)


17 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/05/05(月) 21:20:53 zIXUlBnc
春香「プロデューサーさん、もう海面まで来てますよ!」

P「わかってる!」ゴソゴソ

キラ…

千早「それは…?」

春香(プロデューサーさんはバールのようなものを取り出しました)

P「どいてろ、春香!」

春香「は、はい!」サッ

P「行くぞ…」グッ

春香(プロデューサーさんは、私がどくとバールのようなものを…)

P「オラァ!!」ブスッ

マグロ「」ビクッ

春香(千早ちゃんの目にブッ刺した!!)

P「フンッ!!」

ゴロン

春香(そして、船の上まで引っ張り上げました!)


18 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/05/05(月) 21:22:59 zIXUlBnc
マグロ「」ビチビチ

春香「やった! 釣り上げましたね!」

千早「釣り上げた…と言うか、引き上げたという感じですね…」

春香「これで千早ちゃんも…」

P「セイ!!」

グバァ!!

春香「え…?」

グッ グッ

P「よし、血抜きだ…」

春香「あ、あの…プロデューサーさん…」

P「マグロは引き上げたらすぐに息の根を止め、血抜きしなくては質が落ちてしまう…」

春香「で、でも…」

P「春香…これは、仕方のないことなんだ…」

千早「容赦ないですね」


19 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/05/05(月) 21:24:18 zIXUlBnc
春香(プロデューサーさんの作業を、私は複雑な気持ちで見ていました)

春香(いくらマグロになってしまったからと言って、千早ちゃんを…)

P「春香、クーラーボックスと氷を用意してくれ」

春香「へ?」

千早「そんなもの、積んでいませんが…」

P「なんだって? 参ったな…」

春香「少しくらいなら、放っといても大丈夫なんじゃないですか?」

P「そうもいかない。マグロは低温にしておかないと、すぐに身が黒くなってしまうんだ」

P「近年の冷蔵冷凍技術の発達により、マグロも高級食材として扱われるようになったが…」

P「昔は身焼けもして、陸に上がるまでにはもう身が真っ黒になってしまうマグロは、食べ物にならなかったそうだ」

P「漬けにして安い寿司ネタになるか、ツナフレークみたいにするしかなかったらしい」

P「一説によるとマグロという名前の語源は『真っ黒』から来ていると言われているとか」

千早「へぇ…」


20 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/05/05(月) 21:25:37 zIXUlBnc
P「仕方ないな…あれをやるか」

千早「どうするんですか? プロデューサー」

春香(プロデューサーは、千早ちゃんの口に針をくくりつけ…)

P「こうするんだ!」ポイッ

ザパーン

春香「ええっ!?」

春香(プロデューサーさんは、せっかく釣り上げた千早ちゃんを、海に投げ捨てちゃいました!)

マグロ「」ユラユラ

P「こうして、海水で冷やしながら陸に運ぶ」

P「水温が高い夏場には身焼けの原因にもなるんだが…幸い、今は冬だ。海水は冷たいくらいに冷えている」

P「岸に冷蔵トラックを呼んで、事務所まで運んでみんなで千早を食べよう」

春香「はい…その方が、千早ちゃんも喜んでくれますよね…」

千早「しかし、そのままでは事務所に運んでも食べる事はできないのでは? 解体しなくては」

P「安心しろ。俺は十年くらい前にテレビでマグロの解体作業を見た事がある」

春香「さっすがプロデューサーさん!」


21 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/05/05(月) 21:30:19 zIXUlBnc
そして…

春香「ただいまー!」

律子「おかえり」ゴゴゴ

P「げ、律子…」

律子「この数日間、三人揃って、どこで何をしていたの? ん?」

千早「そ、それは…」

P「は、春香! あれを出してくれ!」

春香「わかりました! はい、これ!」ドスン!!

律子「そ、それは…?」

春香「マグロですよ、マグロ!」

美希「あっ、千早さんだ!」

やよい「千早さん、本当にマグロになっちゃったんですね…」

千早「ええ…そうみたいね」


22 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/05/05(月) 21:36:00 zIXUlBnc
P「よっと…できた。なんとかなるもんだな」

春香(それから、台所でプロデューサーさんが千早ちゃんを解体して…)

あずさ「みんな、おまたせ~」

小鳥「ふぅ、こんなに気合い入れたの久しぶり…」

春香(あずささん達と一緒に、料理を)

雪歩「あの、運ぶの手伝います!」

響「わぁ! すっごいいい匂い!」

真「刺身に、グリルに…すごいなぁ…」

伊織「庶民的だけど、こういうのもいい感じね」

真美「ねーねー、これなに?」

あずさ「マグロカルパッチョ、美味しいわよ~。た~んと召し上がれ」

春香「それじゃ、みんな手を合わせて…」

いただきます…


23 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/05/05(月) 21:37:21 zIXUlBnc
貴音「あぁ、口の中に広がるこの風味…美味!」ビシッ

やよい「………」プルプルプル

真「や、やよい…?」

響「大変だ、やよいが固まってるぞ!」

真美「あっ、ゆきぴょんさっきからトロばっか取ってる!」

亜美「ずるーい!」

雪歩「あ、あぅ…その…ごめんなさい…」

伊織「そんなのいちいち気にしなくていいでしょ。たくさんあるんだからケチケチするんじゃないわ」

あずさ「う~ん、おいしいわぁ…やっぱり天然物は違うのね~」

小鳥「あずささん、刺身と言えば…やっぱこいつでしょ」カラン

律子「小鳥さん、昼間からビールなんて勧めないでください!」

美希「あふぅ…幸せなの…」

P「みんな、いっぱいあるからもっと食べたかったら言ってくれよ!」


24 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/05/05(月) 21:37:56 zIXUlBnc
春香(みんな、笑顔になってくれている…)

春香(母なる海に帰った千早ちゃん…こうして、無理矢理連れ帰って…そして、料理にされちゃったけど…)

春香(でも、千早ちゃんはみんなの血肉となって…みんなと一緒に生き続ける…)

春香(私たちはずっと…でしょう?)

春香「だよね、千早ちゃん…?」

千早「そうね」モグモグ

終わり