7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 16:32:55.63 ID:G664KNCI0
まどか「(昨日の夜から一言も口利いてないんだよね……)」

まどか「……家に帰りたくないなあ……」

トトト...

まどか「……はあ」

まどか「(とりあえずこの公園で時間潰して……)」

さやか「……あれ?まどか?」

まどか「!」

まどか「さやかちゃん……!」

さやか「どしたの?こんなとこで」

まどか「さやかちゃんこそ。まだ学校にいたんじゃなかったの?」

さやか「あぁ、まあちょっとね」

8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 16:35:32.88 ID:G664KNCI0
まどか「……?」

さやか「それよりまどかだよ。何かあったの?あんたの家からこの公園、結構遠いじゃん」

まどか「あ、はは……たまに寄り道したくなるっていうか」

さやか「あー、わかるわかる。んじゃああたしも寄り道してこうかな」

まどか「えっ、いいの?」

さやか「いいって」

まどか「でも、今日居残りだったよね?」

さやか「そ、それは言うんじゃなーい!」

まどか「用事とかがあったんじゃ……?」

さやか「まどかー、先読みすぎだぞー?」

まどか「えぇ……」

さやか「あんたには関係ないからいいの!」

まどか「そ、そう……?」

さやか「そ!」

トスッ...


10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 16:38:20.14 ID:G664KNCI0
さやか「そういや中学入ってからこの公園、来てなかったなあ」

まどか「このベンチ座るのも久しぶりだよね」

さやか「そうだっけ?あぁ、でもよく小さい頃はここに来てたよね」

まどか「うん……仁美ちゃんとさやかちゃん、三人で遊んでたっけ」

さやか「そうそ。まああたしの場合はあれで暫く来なかったんだけど」

まどか「あれって?……あ、ごめん」

まどか「(そういえば、さやかちゃんのお母さんとお父さん、離婚したんだっけ)」

まどか「(……離婚、か)」

さやか「いいって、だいぶ昔のことでよく覚えてないくらいなんだし」

まどか「う、うん……」

11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 16:42:04.08 ID:G664KNCI0
さやか「……はーあ、なんかさあ、今思い切り暴れたくなってきちゃった」

まどか「えぇ!?」

さやか「ちょ、何よその反応!?」

まどか「あ、いや……さやかちゃんのことだから」

さやか「バッド持って暴れまわるとかそっち系!?」

まどか「あ、はは……」

さやか「こいつぅ~」

グリグリ、

まどか「い、痛いよさやかちゃーん」

さやか「このこの~」

まどか「は、ははっ、やめてよーう」

グリグリグ...

まどか「……さやかちゃん?」

さやか「よし、笑ったな」

まどか「えっ」

12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 16:43:06.60 ID:G664KNCI0
さやか「いやさ、あんた今日全然笑ってなかったし?気になってて」

まどか「あ……ごめん」

さやか「だからあんたが謝ることないってば」

まどか「でも……ごめん」

さやか「ったくー、まどかは謝ることしかできないのかー?」

まどか「そ、そういうわけじゃないけど!」

さやか「なら、何があったか話してみてよ」

まどか「あ……」

さやか「ね?」ニッ

まどか「……」コクッ

16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 16:48:34.49 ID:G664KNCI0
まどか「……なんていうか、パパとママが喧嘩しただけなんだけど」

さやか「えーっ、嘘!あんたんとこのパパとママ仲良さそうなのに!?」

まどか「へへっ、そうでしょ?でも結構喧嘩とかも多いんだよ?」

さやか「そうなんだー、じゃあまどか、なんで」

まどか「なんていうのかなあ、最近ずっとぎくしゃくしてた後の喧嘩だからいつもよりも
    重いっていうか……だから不安になっちゃって」

さやか「なるほどねえ……」

まどか「しかも、昨日聞こえちゃったんだ、まどかは僕が引き取る、とかタツヤは私が……とか」

さやか「えっ」

まどか「だ、だからもしかして、なんて思っちゃって……」

さやか「なるほどね……そりゃあ家に帰りづらいよなあ」

まどか「うん……ごめんね?変な話しちゃって」

さやか「あー、また謝った!」

まどか「あっ」



19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 16:51:48.76 ID:G664KNCI0
さやか「罰として、今日は家に泊まりに来なさいっ」

まどか「……」

まどか「えぇっ!?」

さやか「えぇっ、じゃなーい!」

まどか「で、でも突然だしそんな急に……」

さやか「家は大丈夫だって!ほら、立ってまどか!」

グイッ

まどか「わっ」

さやか「行くよ!」

まどか「さ、さやかちゃん待ってよ~!」



21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 16:55:55.68 ID:G664KNCI0
ガチャッ

さやか「ただいまー」

まどか「お、お邪魔します……」

さやか「何度も来てんのにそんな緊張しなくてもいいって」

まどか「だ、だって……こんな時間に来るのは初めてだし」

さやか「今日は親、いないからさ」

まどか「えっ?」

さやか「仕事だと。最近多いんだよねえ、だからほら、ゆっくりしてってよ」

まどか「あ、う、うん……」

さやか「まどかん家、電話いれたほうがいい?それともいれない?」

まどか「えつ……電話したらすぐ帰って来いって言われそうだし……」

さやか「じゃあやめとこ」

まどか「え……う、うん」

さやか「晩御飯はどうする?家、作り置きしてあるのあるんだけど」

22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 16:58:37.67 ID:G664KNCI0
まどか「私、なんでもいいよ」

さやか「じゃ、面倒臭いしコンビニで何か買ったのと作ってある奴で済ましちゃおっか」

まどか「あ、うん」

まどか「(さやかちゃん、何だか大人だなあ……しっかりしてる)」

まどか「……ふふっ」

さやか「なっ、いきなり何よー?」

まどか「ううん、さやかちゃんの小さいときのこと思い出しておかしくなっちゃって」

さやか「なに~!?」

23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 16:59:26.05 ID:G664KNCI0
まどか「だってさやかちゃん、牛乳すらまともにコップいれられなかったのに……」

さやか「ぐぬぬっ……変なこと思いだすんじゃなーいぃ!」

まどか「あははっ、ごめんごめん……!」

さやか「……まったくもう」

さやか「……何も出来ないくらいのほうが幸せなんだよ」

まどか「……え?」

さやか「さっ、コンビニ行くか!」

まどか「う、うん……?」

コンビニ

まどか「わあ……」

さやか「な、なによまどか?やけに楽しそう」

まどか「あ、うん……夜にコンビニ来るの初めてで」

24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 17:02:22.88 ID:G664KNCI0
さやか「まじで!?」

まどか「そんな大声出さないでよう……」

さやか「あー悪い悪い」

まどか「パパもママも外に出させてくれなくって……」

さやか「ど、どんだけ過保護なのよあんたのご両親……」

まどか「あ、はは……だよね」

さやか「でも、大切にされてるんだね、あんた」

まどか「……うん、私も今、そう思った」

さやか「さ、さっさと食べるもん買って家帰るか!まだ制服のままで怪しまれちゃったら困るし」

まどか「あ、本当だ」

さやか「下着とかも一応買ってく?あたしの貸してあげるけど」

まどか「えっ」

さやか「おぉ、赤くなった。初だねえ」

まどか「か、からかわないでよう!」

25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 17:06:34.36 ID:G664KNCI0
―――――
 ―――――

さやか「……」

ガチャッ、バタン...

さやか「なんか色々買いすぎた……」

まどか「……ね」

さやか「うぅ、お菓子安売りとかしてるから悪いんだあ!」

まどか「こんなに買っちゃって大丈夫?怒られちゃうんじゃ……」

さやか「……今日中に食べれば問題ない」

まどか「む、無理だよ!?」

さやか「大丈夫、まどかならできる!」

まどか「む、無理無理!」

さやか「じゃあ晩御飯抜き」

まどか「そ、それも困るよう!?」

さやか「あはは、冗談だって」

まどか「良かったあ……」

26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 17:07:59.60 ID:G664KNCI0
さやか「ま、でもまじでなんとか減らさなきゃまずいんだけどね」

まどか「後で食べちゃおっか?」

さやか「お?」

まどか「ちょっとだけだよ?」

さやか「さっすがまどか!今の何か  かったぞー!」

まどか「な、なんでそうなるの!?」

さやか「へへーん、とりあえずそんじゃあ晩御飯食べちゃおうか」

まどか「あ、うん!じゃあ私、今買って来たのお皿に盛るね」

さやか「おぉ、手際いいっ」

まどか「へへっ、そりゃあ毎日手伝ってる、から……」

さやか「……」

さやか「じゃーあたしも負けないように頑張らないとねっ!」

27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 17:12:17.44 ID:G664KNCI0
カチャカチャ

まどか「……ふう」

さやか「よっと、ご馳走様」

まどか「さやかちゃん家の肉じゃが、美味しかったよ、ご馳走様」

さやか「そう?普通だと思うけどなあ」

まどか「うちもパパがよく作るけど、こんなに甘くないもん」

さやか「甘いだけがいいってわけじゃないけどね!」

まどか「えぇ、私甘いほうが好きだもーん」

さやか「これだからお子ちゃまは……」

まどか「ひ、ひどいよさやかちゃん!」

さやか「じゃああたしと一緒に風呂入るか!?」

まどか「ひえっ!?なんでそうなるの!?」

28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 17:15:00.97 ID:G664KNCI0
さやか「こんなんで照れちゃまだまだお子様ってことじゃん?」

まどか「は、入るよ!入る!」

さやか「うおっ、まじで乗ってくんの!?」

まどか「だ、だってさやかちゃんが……」

さやか「冗談のつもりだったんだけど……」

まどか「えぇっ!?」カアァッ

さやか「……ふむ」

さやか「ま、まどかがその気なら一緒に入るか!」ニヤッ

まどか「えぇぇっ!?」

さやか「そ、そんなに驚かなくても……」

――――― ――

29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 17:17:27.66 ID:G664KNCI0
まどか「……さ、さやかちゃん、こっち向かないでよ」ヌギヌギ

さやか「お、恥ずかしいのかー?」

まどか「も、もう!だからこっち向かないでってばあ!」

さやか「おーすまんすまん」

まどか「変 親父みたいだよう……」

さやか「へへーんだ。あたしはもうすっぽんぽんだからなー」

まどか「い、言わなくていいよっ」

さやか「そんなに恥ずかしいなら脱がせるの手伝ってやってもいいけど?」

まどか「遠慮しますっ」

さやか「ちぇーっ」

まどか「……もうさやかちゃんは」ヌギヌギ、

パサッ...

30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 17:20:24.72 ID:G664KNCI0
さやか「……脱げた?」

まどか「……うん」

さやか「……ほう、まどかの胸は成長過程と見た」

まどか「!?」

さやか「……ん?」ニヤニヤ

まどか「さやかちゃんのばかあーっ」

さやか「うおっと!」

―――――

チャポーン

さやか「……ふう」

まどか「……気持ちいい」

さやか「……まだまどかに殴られたとこ痛いよ」

まどか「ご、ごめん……でもさやかちゃんだって悪いんだよ?」

31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 17:23:38.33 ID:G664KNCI0
さやか「あー悪かったって」

まどか「反省してないね……」

さやか「女同士ですから」

まどか「……だね」

さやか「……あんたと一緒に風呂入るのもかなり久々だよね」

まどか「……うん」

さやか「ていうか誰かと一緒に入るのさえ久しぶり」

まどか「……うん」

さやか「ま、そりゃ当たり前か。この歳になって」

まどか「……私はタツヤと一緒に入ってるけどね」

さやか「なにっ!?」



33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 17:26:20.35 ID:G664KNCI0
まどか「タツヤ、大丈夫かなあ……」

さやか「……一日くらい、あんたは誰のことも気にせず過ごしたって大丈夫」

まどか「へへっ、でももう一日の半分は過ぎちゃってるよ」

さやか「んー、まあそれはそれ、これはこれだ」

まどか「何それー」

バサッ

さやか「さーてと、そろそろ頭洗いますか!まどか、このさやかちゃんが洗ってあげよう!」

まどか「えぇ、いいよう」

さやか「洗いっこは一緒にお風呂の定番ですから!」

まどか「意味わかんないよ~」

34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 17:29:56.00 ID:G664KNCI0
―――――
 ―――――

さやか「あー、すっきりした」

まどか「さやかちゃん、遊びすぎ……髪の毛ぐしゃぐしゃだよー」

さやか「乾かして櫛で梳かせば大丈夫。それにまどかはそれでも似合ってる!」

まどか「どういう意味~!?」

さやか「それよりそれ、あたしのパジャマ大きくない?大丈夫?」

まどか「あ、うん……大丈夫かな。ありがと」

さやか「いーえ。さて、そろそろ寝るかなあ」

まどか「え、早くない?」

さやか「おや?まどかはもっと早くにお寝んねしてると思ってたんだけど」

まどか「そこまで子ども扱いされてないもん!」

さやか「ははっ、まあまあ。とりあえず布団敷いてっと……」

バサバサッ、


36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 17:31:49.22 ID:G664KNCI0
まどか「本当に寝ちゃうの?」

さやか「まあいいからまどかも手伝って」

まどか「あ、うん、ごめん」

ポスポス、

さやか「ほい完成」

まどか「ほわー」

ゴロンッ

さやか「ってこらー、何もう寝転んでる!」

まどか「あまりに気持ち良さそうで……あぁ、さやかちゃん家の匂いがするー」クンクンッ、

さやか「何嗅いでんのよ恥ずかしい!」

まどか「へへっ」

37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 17:34:26.88 ID:G664KNCI0
さやか「まあいいけどね!」

バサッ

まどか「きゃー、さやかちゃん私の上に乗らないでようー」

さやか「これまたお泊りの定番だあー!」

まどか「くすぐったいってばあー」

ゴロゴロ
キャッキャッ

さやか「あー、はしゃぎすぎた……」

まどか「だねえ……お腹すいちゃった」

さやか「作戦通り」ムクッ

まどか「えっ」

さやか「ここであのお菓子の山の登場だあ!」

38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 17:36:26.30 ID:G664KNCI0
まどか「さ、さやかちゃんなんていう策士……!」

さやか「策士言うなあ」

まどか「でも寝る前に食べたら牛さんになっちゃうよ?」

さやか「羊じゃなかったっけ?」

まどか「あ、羊なら可愛いかも」

さやか「でしょ?」

まどか「って、そうじゃなくって!」

さやか「まあまあ。これもお泊りの定番ってことでさ」

まどか「……うぅ」

トゥルルルルッ...

まどか「!」ビクッ

さやか「……あ。まどかん家からかな」



40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 17:38:35.12 ID:G664KNCI0
まどか「……うん、たぶんそうだと思う」

さやか「どうする?とる?……って、とったほうがいいか。よいしょっと」

スッ
パシッ...

まどか「……とらないで」

さやか「……まどか?……でもさ、お母さんとか心配してるでしょ」

まどか「いいよ、今日くらい。さっきさやかちゃんも言ってくれたよね、今日くらいって」

さやか「……ありがと」

まどか「え?どうしてさやかちゃんが……」

さやか「んーん。じゃ、電話は無視してお菓子パーティーといきますか!」

まどか「……うん!」

41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 17:42:10.07 ID:G664KNCI0

まどか「……あー、食べ過ぎちゃった」

さやか「まどかがもっともっとっていうからあ」

まどか「さ、さやかちゃんでしょ!?」

さやか「そだっけ?」

まどか「……はあ」

バタンッ

さやか「食べた後すぐ寝転がったら牛になる法則」

まどか「もう牛でも羊でもなんでもいいよ……」

さやか「眠くなってきたね」

まどか「……うん」ウト、

さやか「……寝よっか」

まどか「……ん」

さやか「……ねえ、まどか」

42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 17:46:08.94 ID:G664KNCI0
まどか「(なあに、さやかちゃん……)」

さやか「……本当はさ、全然、まどかのためとかじゃなかったんだ」

さやか「あたしのため。あたしが、寂しくって。それでまどかを家に呼んだの」

さやか「……あんたもそれ、わかってたんじゃないかなって。さっきのありがとうは、だから
    それも全部含めて、こんなあたしと一緒にいてくれてありがとうっていう意味のありがと」

まどか「(……私こそ、いつも……)」

さやか「まどかの気持ちとか、今日利用しちゃったのかな、なんて思っちゃった」

さやか「……ごめん、まどか」

まどか「(……さやかちゃんが謝ること、何もないよ。私だって、さやかちゃんと一緒にいたから)」

さやか「明日ちゃんとご両親にも謝りにいかなきゃね」

さやか「だってさ……あんたのパパもママも、きっともう仲直りしてるだろうしさ」

まどか「(……うん、そうだね。そうだといいな……)」

さやか「――お休み、まどか」

まどか「(お休み、さやかちゃん――ありがと)」

43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 17:47:59.66 ID:G664KNCI0
翌日

ユラユラ

「――か!――どか!」

まどか「(……ん)」

「まどか!」

まどか「ふわっ!?」ムクッ

ゴチン!

さやか「ったあ……」

まどか「さやかちゃん!?あ、ご、ごめ……」

さやか「そ、それはいいって、それより時間!」

まどか「え?」

さやか「今日学校!遅刻するって遅刻!」

まどか「……」

チクタクチクタク、

まどか「うわあっ!」

44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 17:50:45.19 ID:G664KNCI0
バタバタ!

さやか「まどか、そっち!そっち洗面所!」

まどか「あ、あう……」

さやか「制服はそこ!かけてあるから!」

まどか「ふぁ、ふぁかった……」

さやか「いっそげーっ!」

ガチャッ...

まどか「ふぉ、ふぉめんふぁやかちゃん!」

バタン、
ダダダッ...

45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 17:54:44.56 ID:G664KNCI0
学校

さやか「はあ、はあ……」

まどか「ふう……、ま、間に合いそう」

さやか「……朝からこんなに走ったのは……」

ピタッ

まどか「……さやかちゃん?」

さやか「……まどか、ほら」

まどか「……えっ?」

トンッ...

まどか「え、ちょ、ちょっとさやかちゃん……?」

「まどかっ!」

まどか「……あ」

46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 17:55:33.00 ID:G664KNCI0
さやか「……ね?行って来なよ、まどか。あんたを迎えてくれる人のとこに」

まどか「……ありがと、さやかちゃん」

さやか「……ん」

ギュッ

さやか「って、まどか!?」

まどか「でも、さやかちゃんだって私を迎えてくれる人の一人だからね」

さやか「……ん」

まどか「私も、さやかちゃんが帰ってこれるような人に、なるから。いつでも、待ってるから」

さやか「……」

さやか「……おう、行って来ーい!」

終わり

51 :まどか「またあした」:2011/05/15(日) 17:59:52.31 ID:G664KNCI0
※BD/DVD特典ドラマCD+キャラクターソング未視聴の方は注意

「まどか」

名前を呼ぶ。
今日何度目だろう、こうしてあなたの名前を堪えきれずに呼んでしまうのは。

「ほむらちゃん?」

いつものように私の名前を呼んで振り向いてくれる、まどかが見たくて。
まどかの、声が聞きたくて。

「……ごめんなさい、何でもないわ」

「えぇ?変なほむらちゃん」

そう言って笑うまどか。
私も小さく笑い返す。
ワルプルギスの夜が、近付いていた。

52 :まどか「またあした」:2011/05/15(日) 18:01:42.47 ID:G664KNCI0
「明日学校が臨時休業なんてラッキーだよね」

強い風がまどかの髪を揺らす。
私の髪が、鬱陶しいほどにばさばさと煽られる。
何も知らないまどかは嬉しそうにそう言いながら前を向いた。
まどかの後ろ姿。
私が初めてこの子と会った日から、何度もみた、小さな背中。

守りたい。
守らなくちゃいけない、今度こそ。

自分に言い聞かせる。
必ず、絶対に……。

不意に、まどかの肩が震えた。立ち止まる。



54 :まどか「またあした」:2011/05/15(日) 18:03:48.12 ID:G664KNCI0
「……まどか?」

「どうしてかなあ……こういう特別に早退とかした日って、遠回りしたくならない?」

まどかが振り向き、まるでいたずらっ子のように笑った。
「でも、危ないわ」私がそう言うと、「大丈夫だよ、ちょっとだけ!」
手を、つかまれた。

「……でも」

「ほむらちゃんと手、繋いでたら大丈夫、危なくなんかないよ」

ギュッ。
まどかの小さな手が、私の手を優しく包む。
また昔の泣き虫な自分が出てきそうで、私は唇を噛締め顔を逸らした。
返事の代わりに、まどかの手を握り返す。

55 :まどか「またあした」:2011/05/15(日) 18:05:49.54 ID:G664KNCI0
「へへっ、それじゃあ行こっか、私ちょうどいいお散歩コース知ってるの!」

まどかが歩き始める。
私も、少し遅れて歩き出す。まどかと手を繋いだまま。

何だか、ずっと昔に戻ったようだった。
魔法少女のまどかと、何も出来ない私――
違うのに。
今は、私がまどかを守らなきゃいけないのに。

「ほむらちゃん?どうしたの?」

「……いいえ」

いつのまにか、強く手を握ってしまっていたらしい。
手を離そうと力を緩める。


57 :まどか「またあした」:2011/05/15(日) 18:07:41.45 ID:G664KNCI0
「だめ」
けど、まどかは私の手をもう一度掴んだ。

「……ほむらちゃんと手繋いでたら、安心するから」

照れ隠しのように笑い、まどかは言った。
さっきよりも強く私の手を握ったまま。
うん、と頷く。
凄く嬉しくて、少し寂しくなって。


「あ、そうだ。ここだよほむらちゃん」

「え?……路地裏?」

暫く歩いた後、突然立ち止まったまどかの前にはぽっかり空いた真っ暗な空間。
訊ねると、まどかはこくりと頷いた。

58 :まどか「またあした」:2011/05/15(日) 18:10:12.35 ID:G664KNCI0
「この裏通ったら海が近いの。たぶん、ほむらちゃん家にも私の家にも帰れるはずの
 道に出られるはずだよ」

「……大丈夫なの?」

「平気だよ、私たまに通ってるから」

まどかはそう言いながらズンズン先に進んでいく。
私も少し躊躇いつつ身体を前に進める。
中に入ってしまえば、思ったより暗くも狭くもなく、お散歩コースとは言い難いものの
歩くのには困らないし不思議と心が落ち着いた。

「本当はね、お散歩コースっていうのは嘘なんだけど」

「……でしょうね」

「でもよく来るのは本当」


60 :まどか「またあした」:2011/05/15(日) 18:11:53.58 ID:G664KNCI0
前を向きながらまどかは言った。
私はただ頷く。

「……ほむらちゃんに、知っておいて欲しいことがあって」

その言葉に、ドクンと、小さく心臓が脈打った。

「あ、別に大したことじゃないんだよ?ないんだけどね……ほむらちゃんになら、
 話しても大丈夫かなって」

そう思ったから。
まどかがそう呟くように言ったとき、少し開けた場所に出た。
自然と足が止まる。まどかも、私も。

61 :まどか「またあした」:2011/05/15(日) 18:15:46.96 ID:G664KNCI0
「……エイミー」

小さな声で、まどかが呼んだ。
ドクンッ。
さっきよりも大きく、心臓が鼓動を刻んだ。

エイミー。

「……にゃあ」

弱弱しい声がして、とととっと地面を走る音。
暗い物陰から、黒猫の大きな瞳が覗いた。

「……猫?」

「うん、たまにここで出会って……餌あげたら懐くようになっちゃって」

よーしよしよし、まどかはそう言いながらくすぐったそうに身を捩る黒猫の頭を撫でる。
私も、しゃがみ込むとエイミーに触れた。いつか感じた感触と、まったく同じ。
泣きたくなってしまうほどに。

62 :まどか「またあした」:2011/05/15(日) 18:16:43.92 ID:G664KNCI0
>>61ミス
「……エイミー」

小さな声で、まどかが呼んだ。
ドクンッ。
さっきよりも大きく、心臓が鼓動を刻んだ。

エイミー。

「……にゃあ」

弱弱しい声がして、とととっと地面を走る音。
暗い物陰から、黒猫の大きな瞳が覗いた。

「……猫?」

「うん、たまたまここで出会って……餌あげたら懐くようになっちゃって」

よーしよしよし、まどかはそう言いながらくすぐったそうに身を捩る黒猫の頭を撫でる。
私も、しゃがみ込むとエイミーに触れた。いつか感じた感触と、まったく同じ。
泣きたくなってしまうほどに。


64 :まどか「またあした」:2011/05/15(日) 18:22:20.13 ID:G664KNCI0
ぺロッ

ざらざらとした感触を手に感じた。
エイミーの舌が、昨日の魔女との戦いで負った傷を舐めていた。

「わあ、やっぱり」

「やっぱり?」

「うん、エイミーってね、結構人見知りなんだけど……ほむらちゃんには懐くんじゃないかなって、思ってて」

まどかが嬉しそうに言って笑った。
「まださやかちゃんたちにも言って無いんだよね、この子のこと」

「……そう」

「ほむらちゃんが初めて」
まどかの優しい声。まどかの、優しい言葉。エイミーの、直に感じる温もりが。

このままじゃ、私はまたワルプルギスの夜に負けてしまう――
だから、いつもどおりにまどかと別れようと思ったのに。
いつもどおり別れて「またあした」

そうしなきゃ、私は途端に弱い私に戻ってしまう。


66 :まどか「またあした」:2011/05/15(日) 18:26:42.42 ID:G664KNCI0
「……そろそろ、帰らない?」

ぽつぽつ。
雨が、降り始める。
私は何でもない顔をして、ゆっくりと立ち上がった。

「……そうだね」

不意に、思う。エイミーが「にゃあ」と鳴いてどこかへ駆けて行く。
あの時――
まどかが、私にエイミーを預けて行ってしまおうとしたあの時……まどかも、同じ気持ちだったのだろうか。
こんなゆらゆらと中途半端な、宙ぶらりんな。

「ざーざー降りになる前に早く帰らなきゃね!」

まどかがばっと走り出す。
私もその後を追いかける。このままどこまでも走っていければいいのに、なんて。


68 :まどか「またあした」:2011/05/15(日) 18:31:59.75 ID:G664KNCI0
路地裏を抜ける。
荒れ狂う海が、すぐそこにあった。

「……はあ、はあ」

息を切らして立ち止まる。
雨はもう、本降りになろうとしていた。

「……雨に濡れちゃうや」

「……えぇ。だから、早く帰らなきゃ」

「……うん、そうだね」

そう。早く帰って、私は明日のワルプルギスの夜に備える。
まどかは――何も知らずに、嵐が過ぎるのを待てばいい。それで私は。

「じゃあ、またね」

まどかが手を上げる。
私も、小さく手を振り返す。一回、二回――

69 :まどか「またあした」:2011/05/15(日) 18:32:51.06 ID:G664KNCI0
大丈夫、もう行ける。
私はまどかに背中を向ける。まどかの「じゃあ、またね」を消し去るために、早足で。

「まどか……」

さよなら――
そう、心の中で呟いたときだった。

「……ほむらちゃん!」

手を、つかまれた。
強くきつく、つかまれた。

まどかが泣きそうな顔をして、私の手をつかんでいた。

70 :まどか「またあした」:2011/05/15(日) 18:38:02.66 ID:G664KNCI0
「……どうしたの?」

訊ねる。
私の不安が、まどかに乗り移ったような表情でまどかは私を見上げていた。

「……ほむらちゃんの、聞けてないなって」

「……え?」

「またあした、って」

私は、ゆっくりと前に向き直った。
まどかに、今の私の顔を見られたくなかった。

「またあした」なんて、いえるわけ、ないじゃない――

「明日、学校ないのに変かもしれないけど、でも……」

あの日、まどかはどういうつもりで「またあした」と言ったのだろう。
あの時、まどかだって私と同じ状況で――

「……ほむらちゃん?」

……あぁ、そうか。
今更ながら、私は気付く。あれは私を不安にさせないための――まどかの、最期の優しさ。

雨が、きつくきつく。
それでも私たちは、手を握りあったまま。

71 :まどか「またあした」:2011/05/15(日) 18:40:35.51 ID:G664KNCI0
切ないほどに、優しすぎるまどかの――
だったら私も、あの時のまどかのように……言わなきゃいけない。

あの時、気付かなくってごめんね。
あの時、あなたを引き止められなくて。
あの時、「またあした」なんて言っちゃって。

ごめんね

それから、今のあなたに――

「……またあした、まどか」

ありがとう。

「……」

まどかが、ゆっくりと笑った。
嬉しそうに、寂しそうに、辛そうに、笑った。
手が、離れる。離れてしまう。

「また、あした」

終わり


81 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/15(日) 19:05:06.93 ID:G664KNCI0
テスト目の前のときに無償に書きたくなる法則
もう一本だけ投下



82 :マミ「もう少し側にいて」:2011/05/15(日) 19:07:03.68 ID:G664KNCI0





――――だめ。




そう呟いたときには、もう遅かった。
いつのまにか巴マミの不敵な笑みが息のかかるほど近くにあり……。

「……」

艶かしい指の動きで、項を撫でられる。
思わず声を漏らせば、「ほら、あなただって喜んでるじゃない」と。

83 :マミ「もう少し側にいて」:2011/05/15(日) 19:08:54.73 ID:G664KNCI0
「……ふざけないで」

「ふざけなかったらあなたの大事なもの、奪っちゃってもいいっていうの?」

「……ふざけないで」

もう一度言う。
声が酷く苛立っていたのかもしれない。巴マミは小さく溜息を吐くと、「やれやれ」
そう言わんばかりに起き上がった。

手を差し出される。
無視。

「……冷たいわね」

「あなたに対しては」

「……ふーん」



85 :マミ「もう少し側にいて」:2011/05/15(日) 19:11:30.54 ID:G664KNCI0
バカにしたような声が耳に障る。
私は少し乱れてしまった制服をきちんと調えると、巴マミに向き直った。
少し距離を置いたまま。

「いやあね、何もしないわよ」

「信用できるわけないでしょ」

「そ」

「帰るわ」

踵を返す。
けれど、それっきり足が動かない。「どうしたの」という意地悪な声が後ろから聞こえた。


87 :マミ「もう少し側にいて」:2011/05/15(日) 19:33:55.62 ID:G664KNCI0
「……」

どれだけ苛立ったって、どれだけ悔しくったって惨めだったって。
今の私には、この人の元を離れるわけにはいかなかった。

私は賭けに負けてしまったのだから。

賭けといっても簡単なもので、鹿目まどかと美樹さやか、どちらが50メートル走を
早く走るかというものだったのだけど。負けたほうが言うことをきく、という罰ゲームを
私が大見得切って出してしまったのだった。

「……っ」

たぶん、今の私の顔は耳まで真っ赤なのだろう。
巴マミがふふっと笑う。

「……何、すればいいの」

「さっきの続き」

88 :マミ「もう少し側にいて」:2011/05/15(日) 19:38:05.01 ID:G664KNCI0
「……なっ」

巴マミは今にも噴出しそうなのを堪えるように私に近付いてくると、私の髪にまるで
壊れ物でも扱うようにして触れた。

「……巴マミ」

「ま、あなたがいいんだったらだけど」

少し、ほっとする。
本気であんなことをされたら私は――

どうなっていたのだろう。
嫌だった、そのはずだ。だけど……心のどこかで、残念に思っているような自分もいて、戸惑った。
どうして私が。こんな女に。

「――だめよ」

必死に言葉を搾り出す。
「でしょうね」と巴マミは私から手を離した。

89 :マミ「もう少し側にいて」:2011/05/15(日) 19:40:14.03 ID:G664KNCI0
「だいたい私を――」

「……ん?」

「私を、抱いて……どうするつもりなのよ」

恥ずかしい。
ひたすらに恥ずかしい。“抱いて”なんて言葉を使わせないで欲しい。

「……どうするって」

巴マミの困ったような声。
それもそうだろう、きっと彼女も冗談のつもりだったはずで――

ふと顔を上げる。
真っ赤な顔をした巴マミと目が合った。

90 :マミ「もう少し側にいて」:2011/05/15(日) 19:42:02.58 ID:G664KNCI0
「……ど、どうしてあなたが赤くなってるのよ」

「……し、知らないわ、あなたこそ、変なこと言うから、だから……」

「変なことしようとしたのはどっち」

「うぅ……」

珍しく、縮まりこむ巴マミ。
その様子が、思わず可愛いと思ってしまった。

91 :マミ「もう少し側にいて」:2011/05/15(日) 19:44:47.29 ID:G664KNCI0
「……何も罰ゲーム決まってないの?」

こくり。
巴マミが頷く。

呆れた。
私はとっくの昔に勝ったときの罰ゲームを考えていたというのに。
「まどかに近付くな」なんて下衆な罰ゲーム。

「……さっさと決めとけばよかったのに」

「……いいのよ、あなたと話せるだけで良かったから」

92 :マミ「もう少し側にいて」:2011/05/15(日) 19:47:46.83 ID:G664KNCI0
突然、何を言い出すのだろう。
聞いているこっちまで恥ずかしくなってしまうような――

「……い、いいい今のは無し!無しよ!」

「……えぇ」

慌てたように言うと、巴マミは急に動き出した。
照れ隠しのつもりなのだろうか、結局何もしてないくせにどたどたと。

「……私たち、仲間なんかじゃないんだし」


95 :マミ「もう少し側にいて」:2011/05/15(日) 19:51:07.15 ID:G664KNCI0
そう、私たちは仲間なんかじゃない。
巴マミの言う通りだった。

だからこそおかしな賭けをして、今私はここにいて――

「……お茶、淹れるわね」

ようやくおかしな動きの止まった巴マミは、まだぎくしゃくした動きでそう言った。
「座っておいて」、と。
もうさっきこの部屋に入ったときの彼女に戻って。

だけど、私を刺すような、あの冷たい視線――だけは消えていて。

96 :マミ「もう少し側にいて」:2011/05/15(日) 19:54:30.29 ID:G664KNCI0
>>95ミス

そう、私たちは仲間なんかじゃない。
巴マミの言う通りだった。

だからこそおかしな賭けをして、今私はここにいて――

「……お茶、淹れるわね」

ようやくおかしな動きの止まった巴マミは、まだぎくしゃくした動きでそう言った。
「座っておいて」、と。
もうさっきこの部屋に入ったときの彼女に戻って。

だけど、私を刺すような、あの冷たい視線――それだけは消えていて。

97 :マミ「もう少し側にいて」:2011/05/15(日) 19:58:28.52 ID:G664KNCI0
「……」

私は返事をせずに、テーブルから少し離れた場所に腰を下ろした。
何もないのなら帰るわ、なんてことは言えなかった。
言いたくはなかった。

『……いいのよ、あなたと話せるだけで良かったから』

きっと、あのおかしな言葉のせいで。

「これでいいかしら、お茶」

「何でもいいわ」

「毒なんていれてないから味わって飲んでね」

毒を盛るような性質じゃないくせに。
私は何も言わずにカップを受取ると、口をつけた。

98 :マミ「もう少し側にいて」:2011/05/15(日) 20:00:24.83 ID:G664KNCI0
「……美味しい、なんて言葉は聞けないでしょうね」

「……」

美味しい。
確かに美味しかった。
それ以上に、懐かしかった。どうしてだか。

だから私は何も言わずに全部飲み干す。

「……味わって飲んでって言ったのに」

「お替り、あるんでしょ」

「えぇ」

ちゃぽちゃぽ。
文句を並べながらも、巴マミの表情はどこか嬉しそうだった。

99 :マミ「もう少し側にいて」:2011/05/15(日) 20:03:18.63 ID:G664KNCI0
「誰も飲み干してくれるなんてこと、なかったのに」

「……そう」

「それ以上に、誰も家に来なかったんだけどね」

自嘲気味に、彼女は笑う。
そうだ。巴マミに、家族はいない――

何度も何度も、彼女と共に戦ってきた。
その度にこの人から感じるのは――寂しい。
さっきのあの言葉だって、そこから出たものなのかも知れない。

「……はい」

淹れなおされたお茶の入ったカップをもう一度受取る。
巴マミは居心地悪そうに座りなおした。

100 :マミ「もう少し側にいて」:2011/05/15(日) 20:06:17.96 ID:G664KNCI0
「……」

それだけで何かを言おうとしているのがわかった。
何となく、その言葉も。

だけど、私はそんな彼女に手を差し出すほど優しくはなくって。

「……やっぱり、帰ろうかしら」

「えっ」

突然立ち上がると、巴マミは驚いたように私を見上げた。
私も、負けじと彼女を見下ろす。

「……でも」

「罰ゲーム、決めた?」

「……」

言い難そうに巴マミは俯いた。
きっとまどかなら、こんなことせずに言えるのだろう、「側にいます」と。
けれど私は優しくない後輩だから。


101 :マミ「もう少し側にいて」:2011/05/15(日) 20:08:01.24 ID:G664KNCI0




「……もう少し、側にいて」




それだけでいいわ。
小さく震えた声で、ぽつりと。





「……仕方ないわね」




笑ってやる。笑って笑って。
だけど、少しだけ、あなたの側にいてあげる。