1 :名無し:14/05/09(金) 23:18:32 ID:Atwz8Uu68主
女「おっしゃってる意味がよくわかりません」
男「だからそのまんまの意味だよ」
女「つぶやくことがお仕事って、ちょっと理解できないです」
男「ていうかキミ、大学生だよね? 僕のこと知らないの?」
女「そうですね。はい、知らないです」
男「極めて特殊なタイプだね、キミ」
女「はい?」
男「いまどきの若い子で僕のこと知らないって、かなりめずらしいよ」
2: 名無し:14/05/09(金) 23:21:56 ID:Atwz8Uu68
男「ツイッターはやってないの?」
女「登録はしましたよ。友達にすすめられて。でもすぐやめちゃいました」
男「僕は有名なツイッタラーでね」
男「商品レビューや時事ネタ、様々なことをつぶやいてお金をもらってるんだよ」
女「ついったらあ?」
男「ツイッターをやってる人のこと。ホントに知らないんだね」
女「ええ。ていうか、ツイッターで収入っていうのが意味わかりません」
男「そこらへんはググれば、すぐわかるよ」
女「はぁ」
4: 名無し:14/05/09(金) 23:25:43 ID:Atwz8Uu68
女「その有名な『ついったらあ』さんが、休日の大学になにしに来たんですか?」
男「写真といっしょに学食のことをつぶやいたらウケがよかったんだ」
男「学食は安いし、誰でも食べられるしね」
女「じゃあ今日は学食の紹介に?」
男「そういうこと」
女「では、どうして私に話しかけたんですか?」
男「ごはん撮るときに、僕もいっしょに写してほしいんだ」
女「私に写真を撮れってことですか?」
男「もちろん、つきあってもらうんだ。奢らせてもらうよ?」
5: 名無し:14/05/09(金) 23:31:50 ID:Atwz8Uu68
女「べつにいいですけど」
男「なんか反応が微妙だね」
女「まあ、お笑いにあんまり興味ないんで」
男「……キミ、ぼくをつぶやきシローかなにかと勘違いしてない?」
女「ちがうんですか?」
男「……これが僕のアカウント画面。フォロワー数見てよ」
女「250万人。これ、多いんですか?」
男「日本では有吉さんに次いで、二位だ」
男「さらに言うと、孫正義をおさえて二位だ。すごいでしょ?」
女「たしかにそう聞くと、すごいって思います」
6: 名無し:14/05/09(金) 23:36:39 ID:Atwz8Uu68
男「さあ、僕のすごさがわかったところで学食に行こっか」
女「ひとつ聞いてもいいですか?」
男「なに? できるかぎり質問には答えるよ」
女「なにをつぶやくんですか? 『学食なう』とか?」
男「調子こいた大学生じゃあるまいし、『なう』とか使わないし」
男「僕は超有名なツイッタラーだよ?」
女「そうは言っても、ただつぶやくだけでしょ?」
男「本気で言ってるのかい?」
女「わりと真剣に。だいたいツイッターって、たんなるSNSですよね?」
男「近いちうちにツイッターは教材として、導入されるはずだよ」
女「え? どういうことですか?」
7: 名無し:14/05/09(金) 23:46:21 ID:Atwz8Uu68
男「ツイッターのつぶやきって140文字で限定されてるよね」
女「あ、そうなんですか」
男「そーなの!
」
男「まとまった文章を書く練習に、ツイッターは適してるんだよ」
女「それ、べつにツイッターじゃなくてもいいんじゃあ……」
男「それだけじゃない。ツイッターには目をみはるようなツイートがあったりするしね」
女「ついーと?」
男「つぶやきのこと。まあ、とにかくそういうことだから」
男「文章のお勉強に使えるって、改めて注目されてるんだよ」
女「はぁ」
8: 名無し:14/05/09(金) 23:52:58 ID:Atwz8Uu68
男「しかし休日でも、大学の食堂には人がけっこういるんだね」
女「自炊するのが面倒な人は、わざわざ学食で食べるそうですよ」
男「へえ。まあたしかに破格の値段だもんね」
「え? ちょっとツイッタラーの『パツキン』じゃねあれ!?」
「ウソウソっ! え? マジじゃんすげー」
「あたしフォローしてるよ!」
「パツキンのお兄さんも、かなり有名なツイッタラーなんでしょ?」
男「ね? けっこう有名でしょ、ぼく」
女「わかりましたから、早く注文しましょうよ『パツキン』さん」
9: 名無し:14/05/09(金) 23:57:24 ID:Atwz8Uu68
男「この学校の竜田揚げ定食が、320円で大好評らしいね」
女「そうらしいですね。わたしは知りませんけど」
男「学食利用してないの?」
女「お弁当、もたせてもらってるんで」
男「ふーん……っと、席はここでいっか」
女「そういえば。お兄さんもツイッターしてるんですか?」
男「そだよ。アニキは『SHIKKIN』って名前でやってる」
女「しっきん?」
男「うん。僕ほどじゃないけど、まあまあ人気のあるツイッタラーなんだ」
11: 名無し:14/05/10(土) 00:08:50 ID:syI8j5SZY
男「ツイッタラーって単語は最近だと、
ツイッターで生計を立ててる人のことを指す場合がおおいんだよ」
女「そんな人があなた以外にもいるんですか?」
男「本当にごくわずかな人数だけどね」
男「さっきも言ったとおり、僕のアニキもそうだし」
男「ほかにも……そうだな。
この人なんかは、最近人気出てきてるツイッタラーだな」
女「わわっ。なんですかこのいやらしい画像は」
男「言っとくけど、これは僕のツイートじゃないからね」
男「これはある女性ツイッタラーのつぶやきなんだ」
女「つぶやきって、画像じゃないですか」
12: 名無し:14/05/10(土) 00:11:42 ID:syI8j5SZY
男「いろんなツイートをするって、さっき説明したでしょ」
男「最近注目が集まってるホンビノス貝について、つぶやいんだよ」
女「ほんび……なんですかそれ?」
男「安くておいしい貝。あとは説明が面倒だから自分で調べて。」
女「はぁ。それで、その貝がどのようにその な画像と結びつくんでしょうか?」
男「その画像を僕にツイートしてきた人は」
男「ツイッター界の『檀蜜』って呼ばれてる人なんだよ」
13: 名無し:14/05/10(土) 00:13:44 ID:syI8j5SZY
mitsudan 私はホッキ貝が好きです
約9間前 1919人がリツイート
返信・詳細
mitsudan ホッキ貝って響きってオトコの人の の と似てますよね
約9間前 4545人がリツイート
返信・詳細
mitsudan え?アワビがどうかしましたか?
約8間前 801人がリツイート
返信・詳細
mitsudan pic.twitter.com/eroShizuKa
約8間前 4545人がリツイート
返信・詳細
mitsudan pic.twitter.com/eroGiAnt
約8間前 4545人がリツイート
返信・詳細
15: 名無し:14/05/10(土) 00:19:26 ID:syI8j5SZY
女「後半からは な画像貼ってるだけで、つぶやいてすらいないですね」
男「この僕をやりこめるなんてたいしたもんだよ」
男「見事に彼女のペースにもってかれた。完敗だった」
女「私にはちょっと理解できないです」
女「それにしても」
女「パツキンさんってけっこう反感買いそうなこと、つぶやいてますね」
男「どれのこと?」
女「この生活保護のこととか。税金問題のこととか」
女「『ニートに物申す』みたいなのとか」
女「お前が言うなって言われませんでした?」
男「……それはどういう意味かな?」
16: 名無し:14/05/10(土) 00:33:49 ID:syI8j5SZY
男「こういうイチブの人間の反感を買うようなツイートはね」
男「わざとつぶやいてるんだよ」
女「なんでですか?」
男「頼まれてんだよ、おエライ人たちに」
女「頼まれてる? おエライ人?」
男「まあ細かいことはいいんだよ」
男「どうしてこの手のつぶやきをするかっていうと」
男「こうやって叩かれるツイートをすることで」
男「当然僕を叩く人がいっぱい出てくるでしょ?」
18: 名無し:14/05/10(土) 00:42:10 ID:syI8j5SZY
男「日々の生活でフラストレーションをためた人間のために」
男「僕が捌け口になってあげてるってわけ」
女「ああ、あなたを叩くことでストレス解消になるってことですね」
男「それに僕のツイートに対して、リプライを送れば注目されるしね」
男「自分の意見をみんなに伝えることができる」
女「なんだかコワイですね、ツイッターって」
男「そう? 批判だけで満足して終わってくれるって、よくない?」
女「と、言いますと?」
男「本当にコワイ存在っていうのは、批判から次のステップに移れる人間だよ」
男「批判することで、それに満足して終わる人間なんかは全然コワくないね」
19: 名無し:14/05/10(土) 00:46:38 ID:syI8j5SZY
女「まあツイッターでつぶやくだけなら」
女「なにもしないのと変わらないってことですね」
男「そうだよ。批判しただけじゃ、なにも変わらない」
男「それがわからない連中のストレス解消の道具になってあげる」
男「それも一流ツイッタラーの仕事だよ」
女「ドヤ顔してますけど、あなたもつぶやいてるだけですよね」
男「失礼なことを言うな」
男「僕のつぶやきは、経済にさえ影響を与えるんだぞ」
女「はいはい、そうですか」
20: 名無し:14/05/10(土) 00:52:50 ID:syI8j5SZY
女「でもいつか、背後から誰かに刺されたりするかもしれませんよ?」
男「僕は一流のツイッタラーだよ?」
男「すでに辞世の句は、考えつつあるよ」
女「まだ完成はしてないんですか」
男「うん。140文字に収まらないんだよね、むずかしい」
女「それ辞世の句じゃないですよ、絶対」
男「……僕には将来、ひとつ夢があってね」
女「夢?」
21: 名無し:14/05/10(土) 00:59:25 ID:syI8j5SZY
男「そう。辞世の句をツイートして、それから死ぬっていう夢だよ」
女(くっだらねえ)
男「とりあえず定食といっしょに写真撮ってくれる?」
女「わかりました。……これでいいですか?」
男「どれどれ。んー、ちょっと撮りなおそうか」
女「なんでですか?」
男「だって僕の顔がなんか変だもん」
女「もとからでしょ」
男「え?」
女「いえ、なんにもです。じゃあもう一度撮ります」
22: 名無し:14/05/10(土) 01:17:10 ID:syI8j5SZY
女「で、結局一枚撮るのに二十分かかったんですけど」
男「いやあ。キミが写真撮るの下手だからさあ」
女「ていうか、学食の紹介ならあなたが写る必要なくないですか?」
男「それじゃあダメだろ」
男「僕と写ることによって、この定食に新たな価値が生まれるの」
女「わかりましたから、早く食べてくださいよ」
男「いや、これからツイートの文章を練らなきゃならない」
女「いちいち面倒なんですね」
男「当然。このつぶやきに日々の生活がかかってるからね」
23: 名無し:14/05/10(土) 01:23:53 ID:syI8j5SZY
男「キミ、このあと暇?」
女「仮に暇だったとしたら?」
男「ちょっとつきあってくれない?」
女「なににですか?」
男「決まってるでしょ。僕の仕事に、だよ」
女「仕事? なんで私が?」
男「キミはどうも僕のことを誤解してるみたいだからね」
男「おおかた、僕をつぶやくことしか能がないクズだと思ってるだろ?」
女「まあそれに近いことは、思ってますね」
24: 名無し:14/05/10(土) 01:35:14 ID:syI8j5SZY
男「ツイッタラーという仕事が、いかにやりがいがあるか」
男「それをキミに教えてあげよう」
女「今、青天のイナズマのように用事が現れました」
男「よく意味がわからないけど、もう決定だから」
女「えー」
男「とりあえず僕が定食食べて、つぶやいたら行こうか」
女「どこへ?」
男「病院」
25: 名無し:14/05/10(土) 01:45:40 ID:syI8j5SZY
女「わざわざタクシーで送ってくださるのは、ありがたいんですが」
女「本当に病院に向かってるんですか?」
男「そうだよ」
女「『手術なう』みたいなつぶやきをしに?」
男「ちがうわ。お見舞いだよ、お見舞い」
男「僕のファンの小学生がね、明日手術なんだって」
女「はぁ」
男「だから、その子を勇気づけに行くんだよ」
1
29: 名無し:14/05/10(土) 13:04:10 ID:BwEZqaMy7
女「よくわかりませんけど、ついていけばいいんですね?」
男「そういうこと」
女「ところで、実はもうひとつ気になることがあります」
男「なに?」
女「ご両親には、あなたはツイッタラーだって言ってあるんですか?」
男「そりゃあね。これだけ有名だと隠せないしね」
女「反対されなかったんですか?」
男「最初はそりゃあ、めちゃくちゃ言われたよ」
30: 名無し:14/05/10(土) 13:13:35 ID:BwEZqaMy7
女「そうですよねえ。なんか安心しました」
男「なんで?」
女「だって私もあなたのご両親の立場だったら、反対しますもん」
男「なんでさ?」
女「わざわざ説明しなくてもわかるでしょう」
男「いつの時代も理解されないよね。新しいことへの挑戦って」
女「そういう問題じゃないと思うんですけど」
女「だいたいどうして、ツイッタラーなんて仕事を選んだんです?」
男「人の下で働きたくなかったから」
31: 名無し:14/05/10(土) 13:23:07 ID:BwEZqaMy7
女「それだけ?」
男「十分だろ。僕の先輩も同じ理由で起業したぞ」
男「おっと、ついたね。ここが例の患者さんがいる部屋だ」
女「お見舞いって、本当にお見舞いなんですよね?」
男「当たり前だよ。ほかになにするの?」
女「……そうですよね。私の考えすぎですよね」
女「そのお見舞いには、私もたちあっていいんですか?」
男「いいけど。ちょっとまって」
女「……なんでここにきて、スマホをいじりだすんですか?」
33: 名無し:14/05/10(土) 14:05:28 ID:BwEZqaMy7
女「あの、もう十分たったんですけど」
男「……」
女「すみませーん。聞いてますかー」
男「うん、大丈夫。それじゃあ病室に入ろっか」
女「失礼しまーす」
小学生「……ぐすっ……うぅ……」
女「あ、あれ? 女の子、泣いてますよ」
34: 名無し:14/05/10(土) 14:31:39 ID:BwEZqaMy7
小学生「パツキンさん」
男「うん」
小学生「パツキンさんのおかげで、手術受けること、決めました」
男「そうか。それはよかったよ」
小学生「本当にありがとうございます」
女「え? え?」
小学生「パツキンさんの私へのツイートに、勇気もらいました」
男「僕のつぶやきがキミに届いたんだね」
女「あの、なにが起きてるのか教えてもらっていいですか?」
35: 名無し:14/05/10(土) 17:31:35 ID:BwEZqaMy7
男「この病室に入る前に、ツイッターで必死にこの子を説得してたんだよ」
男「手術は成功する。だから受けるんだって」
女「ツイッターで?」
男「うん」
女「部屋に入る前の十分の間のことですか?」
男「そうだよ」
女「なんで直接説得しないんですか?」
男「だって僕、ツイッタラーだもん」
男「つぶやかなきゃダメでしょ」
女「……」
小学生「あの、よかったツーショットおねがいします!」
男「それぐらいお安いごようだよ。さっ、撮って」
女「私が撮るんですか?」
男「ほかに誰がいるんだよ」
女「……わかりましたよ。はい、じゃあ撮りますよ」
女(そして写真を撮って、私たちは病室をあとにした)
男「どうだい? ツイッタラーの仕事もバカにできないでしょ?」
女「あの、さっきの子はなんの手術なんですか?」
男「痔」
女「痔って…… の?」
39: 名無し:14/05/10(土) 17:41:46 ID:BwEZqaMy7
女「痔の手術って、予想外にあっさり終わりますよ」
男「そうなの?」
女「ええ」
男「いや、でもそういう問題じゃないじゃん」
男「彼女、小学生なんだよ? 簡単な手術でもコワイに決まってるでしょ」
女「まあそうかもしれませんけど」
男「ていうか痔の手術、受けたことあるの?」
女「……女の子のお尻はデリケートなんです」
男「めっちゃ聞きたいその話。ていうかツイートしたい!」
女「ふざけんな」
41: 名無し:14/05/10(土) 17:49:12 ID:BwEZqaMy7
女「これで今日のお仕事は終わりですか?」
男「いや、これから東急ハンズとか、スーパーとかに行く予定だよ」
女「そんなとこで、なにするんですか?」
男「ツイッターにつぶやくネタを探しに行くんだよ」
男「商品レビューとかもそうだし、旬のネタとかも知らないとね」
女「いろいろとしてるんですね」
男「僕の支持者は八割が十代なんだけどね
男「主婦の人で僕を応援してくれてる人とかもいる」
男「そういう人には鮮魚ネタは重宝されるんだよ」
女「ああ、さっき言ってたホンビノス貝とかの話ですね」
42: 名無し:14/05/10(土) 17:57:01 ID:BwEZqaMy7
男「ツイッタラーは、ネタを見つけるのが一番大変だからね」
男「ネタを見つけたら見つけたで、140文字という縛りが待ってるし」
中年男性「あっ。パツキンさんじゃないですか」
男「マモルさん! なんであなたが病院に?」
中年「花粉症で鼻を噛みまくってたたら、中耳炎になっちゃって」
男「ああ、じゃあこれから耳鼻科ですか」
中年「いやあ、お恥ずかしい。あ、そういえば新作できましたよ」
中年「今回のポエムはなかなかいいデキですよ」
男「ちょっと! こんなところでやめてくださいよ」
女「?」
44: 名無し:14/05/10(土) 18:08:14 ID:BwEZqaMy7
男「とりあえずポエムについては、ラインで送ってください」
中年「わかりました。ちなみにそちらの方は?」
女「あ、どうも」
男「彼女は僕について知りたいって、ついてきた女子大生です」
中年「さすが人気者。女子大生を磁石のように引き寄せるなんてね」
女(この人、さらっと嘘つくなあ)
男「じゃあ僕らはこれで失礼します」
中年「はい。さようなら」
45: 名無し:14/05/10(土) 18:08:39 ID:BwEZqaMy7
女「さっきのサングラスでロン毛のおじさんは誰ですか?」
男「その前に」
女「なんです?」
男「さっきの僕とマモルさんの会話聞いてた?」
女「ああ、ポエムがどうとかってヤツですか」
男「やっぱり聞いてたか」
男「彼はライターをやってるんだ」
男「ちょっと前の話なんだけど、つぶやくネタに困ってた時期が僕にもあってね」
男「そんな僕に、自分のポエムを使ってくれって言ってきたのが彼だ」
女「それってつまり……」
47: 名無し:14/05/10(土) 18:17:40 ID:BwEZqaMy7
男「まあ僕のゴーストライターにあたるのかな、あはは」
女「つぶやくのにゴーストライター使ってるんですか?」
男「うん」
女「おかしいでしょ」
男「なにがおかしいんだよ! 僕はツイッタラーだぞ!」
男「つぶやきは、僕のふところに入るお金に変わるんだよっ!」
女「……マモルさんにはお金、あげてるんですか?」
男「もちろん。マモルさんだってがんばってポエム作ってるからね」
男「中耳炎の痛みとたたかいながら」
女「くるってるよ、絶対」
48: 名無し:14/05/10(土) 18:28:29 ID:BwEZqaMy7
男「ふーむ。どうもキミは、なかなかの変人らしいな」
女「いえ、あなたには絶対負けると思います」
男「まあ僕もツイッター界のカリスマとは呼ばれてるけど。
リアル世界じゃ、まだまだ未熟者ってことか」
男「……わかった。今日はここで解散しよう」
女「もういいんですか」
男「ああ。今日はつきあわせて悪かったね」
女「ある意味いい経験ができました」
男「ただ、ひとつおねがいがあるんだ」
女「おねがい?」
49: 名無し:14/05/10(土) 18:38:43 ID:BwEZqaMy7
女(頼まれごとの内容を聞いた私は、彼とわかれて帰宅した)
女(で、現在就寝前。パソコンでツイッターをいじっていた)
女(なんか知らないけど、パツキンさんにツイッター登録しろって言われて)
女(現在やってる。めんどくさ)
女「っと、これでいいのかな。IDは『matsumoto inaba』でいっか」
女(で、パツキンさんにアカウントのことをツイッターで伝える、と)
女「うわっ、もう返事がかえってきた」
50: 名無し:14/05/10(土) 18:46:40 ID:BwEZqaMy7
Matumoto inaba ツイッター登録しましたけど
返信・詳細
PATUKIN もうめっちゃ待ってたよ!
返信・詳細
Matumoto inaba それでいったいなんの用なんでしょうか?
返信・詳細
PATUKIN どうしてもキミに伝えたいことがあったんだよ!!
返信・詳細
女「これツイッターってことは、みんなに見られてるんじゃあ……」
女「まあ私は個人情報出てないからいいけど」
女「……ん?」
51: 名無し:14/05/10(土) 18:51:33 ID:BwEZqaMy7
PATUKIN 今度の休日僕とデートしようぜ(わあおっ!Twitterで言っちゃったー!!)
返信・詳細
52: 名無し:14/05/10(土) 18:51:57 ID:BwEZqaMy7
Matumoto inaba 遠慮しておきます
返信・詳細
PATUKIN またまたぁ!遠慮しなくていいよ!)
返信・詳細
Matumoto inaba いえ、気持ちだけ受け取っておきます。私、明日も一限からなんで寝ます。おやすみなさい。
返信・詳細
PATUKIN いやいやwwwwwwwそういうのいいからwwwwwwww
返信・詳細
女(私はパソコンを閉じて寝た)
53: 名無し:14/05/10(土) 18:58:29 ID:Jo5R1sVbV
女(そして次の日。学校に行くさいちゅうの電車で)
女(Yahoo!ニュースのトップにこんな記事が出ていた)
女(『人気ツイッタラー、ツイッターでデートに誘うもフラれる』)
女「なんかすごいなあ」
女(そして一限を終えて、ひとりで食堂でごはんを食べていると)
男「ちょっと!」
女「うわあぁっ!?」
54: 名無し:14/05/10(土) 19:01:31 ID:Jo5R1sVbV
女「なんであなたがここに?」
男「こまかいことはいいんだよ」
女「けっこう重要なことだと思いますけど」
男「それよりも! なんで僕の誘いを断ったんだよ!?」
女「……」
男「な、なんだその目は……」
女「べつに。いろいろ言いたいことがあります。言いませんけど」
女「どうしてツイッターで誘ったんですか?」
男「だって僕、人気のツイッタラーだもん」
女「……」
55: 名無し:14/05/10(土) 19:16:28 ID:Jo5R1sVbV
男「ツイッターでこそ、僕の魅力ははっきされるんだよ」
女「……」
男「あっ。もしかして昨日の、マモルさんがツイートしたと思ってる?」
男「あのつぶやきは僕の言葉だよ!」
女「知ってますし、あんな内容にゴーストいらないでしょ」
男「じゃあどうして!」
女「いろいろ言いたいことありますけど」
女「とりあえず初デートのお誘いに、ツイッター使うってどうなんですか?」
56: 名無し:14/05/10(土) 19:25:53 ID:Jo5R1sVbV
男「今どき普通だよ。SNS経由のお誘いって」
女「あっ、そうなんですか」
男「そうだよ。常識だよ、常識」
女「……って、そういう問題じゃありません」
女「やっぱりそういう大切なことは。
直接その人にあって、言うべきですよ」
男「キミ、考え方が古風なんだね」
女「そんなことありません」
女「言いたいことなら、つぶやいてないで声を大にして言えばいいじゃないですか」
57: 名無し:14/05/10(土) 19:35:58 ID:Jo5R1sVbV
男「お、おう」
女「万単位でつぶやく言葉があるなら、誰かに言えばいいのに」
男「ツイッターで誘ったのをそんなに怒ってるの?」
女「いえ、まちがいなく怒ってはいないです」
女「ただ呆れてるだけです」
男「で、でも僕、けっこう金持ちだし玉の輿に乗るチャンスだよ?」
女「あなたとおつきあいするのは、まちがいなく無理です」
男「なぜ!」
女「ツイッター仕事にしてる人とつきあうなんて、両親が許してくれません」
59: 名無し:14/05/10(土) 19:48:04 ID:Jo5R1sVbV
女「じゃあ、そういうことなんで」
男「待ってくれ!」
男「もうデートしてくれとは言わない! だけど教えてほしい」
男「こんな僕がキミとデートをするとしたら、いったいどうすればいい?」
女「うーん。そうですね」
女「全部自分がやったんだよと叫べるお仕事をしてくれる、ってことですかね」
男「全部自分がやったんだよとさけべるお仕事、か」
女(ノリで曲の歌詞を言っちゃった……)
女「えっと、ゴーストライターを使うなんて論外ですからね」
60: 名無し:14/05/10(土) 19:53:27 ID:Jo5R1sVbV
男「それを言われるとかなわないな」
女「……」
女「ああー、ひとつだけ。あなたにお礼したいがあります」
男「僕にお礼?」
女「あなたのおかげで仕事について、考えてみようと思いました」
男「ほほう」
女「じゃあ、さようなら」
女(これいこう、私と彼が会うことはありませんでした)
女(しかし、二年後。私は彼をテレビで見つけることになります)
61: 名無し:14/05/10(土) 19:57:06 ID:Jo5R1sVbV
母「あら。この人って有名な人なんだっけ?」
女「んー?」
男『今回の選挙に立候補しましたパツキンこと山田次郎です!』
女「……え?」
男『ある女子大生の言葉で僕は目覚めました!』
男『ツイッターをやってるだけじゃダメなんだって!」
男『ツイッタラー代表として、今ツイッターから飛び出します!』
女「……」
62: 名無し:14/05/10(土) 20:01:23 ID:Jo5R1sVbV
母「ツイッターでつぶやくのが仕事の人が立候補なんて、すごいねえ」
女「……そうだね」
母「どうしたの? 顔がひきつってるけど」
女「いやあ、世の中ってよくわかんないなあって思ってね……」
母「はい?」
女「ううん、こっちの話」
あらためて私はお仕事というものについて、考えさせられましたとさ。
おしまい
転載元:男「僕の仕事はツイッター」
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