1 :名無し:14/06/14(土) 20:53:30 ID:2jRx3W0n3主
のび太「……ううん……ここは……」
ドラえもん「あ、のび太くん、気が付いた?」
のび太「……ドラえもん?」
ドラえもん「バカだなあ、急いで階段降りて足を踏み外して転げ落ちるなんて。頭を強く打ってたみたいだけど、大丈夫?」
のび太「……ああ、そうだったな。ようやく思い出した。やけに頭がすっきりするよ」
ドラえもん「あ、もう少し寝てなきゃダメだよ」
のび太「……いや、俺なら大丈夫だ」
5: 名無し:14/06/14(土) 20:56:26 ID:2jRx3W0n3
ドラえもん「???俺????」
のび太「……いや、なんでもない。ちょっと出かけてくるよ」
ドラえもん「――あ、のび太くん!出かけるなら宿題しなきゃダメだよ!」
のび太「宿題?……ああ、算数があったな」
ドラえもん「!!??」
ドラえもん(のび太くんが……席に座った!?しかも、宿題をしてる!!??)
6: 名無し:14/06/14(土) 21:04:14 ID:2jRx3W0n3
のび太(なんだ、簡単じゃないか……俺は今まで、こんなものに手間取ってたのか……)
スラスラスラスラ…
ドラえもん「の、のび太くん?やけにスラスラ書いてるけど、ちゃんと解いてる?」
のび太「大丈夫だドラえもん……これで……」
スラスラスラスラ…カリッ!!
のび太「――フィニッシュだ」
ドラえもん「ええ!?もう終わったの!?」
のび太「今日の宿題はこれで終わりだ。……出かけてくる」
ドラえもん「あ、ああ、いってらっしゃい……」
のび太「ああ……」
タタタタタ…
ドラえもん「……もう……どうせ適当に解いたんでしょ?まったく、のび太くんったら……」
パラパラパラ…
ドラえもん「――ッ!!??こ、これは……!!??」
9: 名無し:14/06/14(土) 21:14:10 ID:2jRx3W0n3
のび太「……この街並み……ずいぶん懐かしく思えるな……」
しずか「……あら?のび太さん?」
のび太「……キミは……」
しずか「のび太さん、どこかお出かけ?」
のび太「まあな……ちょっと、散歩だ。しずかはここで何をしてるんだ?」
しずか「――え?え?今、しずかって……」
のび太「……ああ、すまない。いきなり過ぎたな、しずか“ちゃん”」
しずか「のび太さん……何か変よ?」
のび太「そうか?俺は普通なつもりなんだがな……」
しずか(お、俺!?)
のび太「まあいい。もう少し話したかったけど、この辺りで失礼させてもらうよ、しずか」
しずか「え、ええ……」
のび太「じゃあな―――あ、そうだ、しずか!!」
しずか「――え?」
のび太「今日も……綺麗だな」
しずか「え?え??////」
のび太「じゃあな……」
しずか「……のび太……さん……?」
10: 名無し:14/06/14(土) 21:24:53 ID:2jRx3W0n3
のび太「………」
ジャイアン「――おーい!のび太ー!!」
スネ夫「のび太ー!!」
のび太「ん?ジャイアン?スネ夫?」
ジャイアン「ちょうどいいところにいたな。ちょっと来いよ」
のび太「なんか用か?」
スネ夫「野球だよ野球!」
ジャイアン「俺のチームが一人足りなくてな。特別に入れてやるよ」
スネ夫「光栄に思えよ?」
のび太「そうか、野球か……」
ジャイアン「ん?どうしたんだ?」
のび太「……いや、君は、本当にいい奴だな」
13: 名無し:14/06/14(土) 21:36:01 ID:2jRx3W0n3
ジャイアン「え?え?」
のび太「だって、今までの俺は、何をやってもダメだった。それにも関わらず、君はいつも僕を野球に誘ってくれてたよな。いつも、俺を気遣ってくれた。……ありがとう」
ジャイアン「……よ、よせやい!照れるじゃねえか!」
スネ夫「のび太……どうしたんだ、お前……」
のび太「スネ夫、君だってそうだ。いつも自慢をしてくるけど、何だかんだ言って別荘に俺達を連れてってくれる。ゲームもさせてくれる。君もまた、良い奴だ」
スネ夫「……い、いやぁ……」
のび太「……野球……」
ジャイアン「……え?」
のび太「するんだろ?行こうぜ」
ジャイアン「あ、ああ……」
14: 名無し:14/06/14(土) 21:47:44 ID:2jRx3W0n3
ワーワー…!!
ジャイアン「のび太ー!!満塁だからなー!!絶対打てよ!!」
のび太(なるほど……満塁で2アウト……ここで9番の俺に打席が回る……いつも通りの展開だな……)
投手「へん!のび太が打席かよ!余裕だな!」
のび太(まあ、俺が打者なら余裕だろうな……今までの、俺なら、な……)
投手「――ほらよ!!」
ビュッ
のび太(――甘すぎるぜ!!)
ブォン
のび太「―――ッ!?」
バシッ
審判「ストライク!」
投手「へん!どうだ!」
ジャイアン「ああもう!何やってんだよ!!」
のび太「………」
のび太(……想像以上に、球が遅かったな……しょせんは、小学生か……)
17: 名無し:14/06/14(土) 21:58:00 ID:2jRx3W0n3
ジャイアン「ちゃんと打てよ!!打たないと承知しないからな!」
のび太「……分かってるよ」
投手「打てるもんなら……打ってみろよ!」
ビュッ
のび太「………」
バシッ
審判「ストライク!!」
ジャイアン「振らないと当たらないだろ!!三振なんてしたら、後でギッタギタにしてやるからな!」
のび太「………」
のび太(速度は、この程度か……それなら……)
投手「これで……終わりだ!!」
のび太(なら、このタイミングくらいか?)
ビュッ
ブオン
ガッ
審判「ファール!!」
投手「な!?当てた!?」
ジャイアン「あああああ!惜しいいいい!」
のび太(タイミングは、これでいいな……だったら……)
ザッ…ザッ…
のび太「――そろそろ、終わりにするか……」ゴゴゴゴゴゴゴ…
投手「――!?」
投手(な、なんだこの雰囲気は!?これは……本当にのび太なのか!?)
23: 名無し:14/06/14(土) 22:07:46 ID:2jRx3W0n3
のび太「ほら……さっさと投げろよ……」
投手「―――ッ!!」
のび太「なんだ……ビビってんのか?」
投手「――な、舐めんなよ!!」
ビュッ
のび太「フン……小学生レベルがぁ!!」
ガキィーン!!!
投手「なっ―――!!??」
ジャイアン・スネ夫「!!??」
…ポチャン
審判「……ホ、ホームラーン!!!」
投手「………」
のび太「……おいお前」
投手「!?」
のび太「球は悪くなかったぞ。……お前の敗因は、たった一つだ……」
投手「………」
のび太「俺が……相手だったことだ……」
投手「………!!」ガクッ
28: 名無し:14/06/14(土) 22:18:22 ID:2jRx3W0n3
カキーン
ジャイアン「ッ!?のび太―!行ったぞー!!」
のび太(最終回満塁で3点差……ここでホームランが出れば逆転負け……ここでライトの俺に打球が飛ぶなんてな……出来過ぎだぜ!!)
打者「右中間近くに伸びた!!これは取れるはずがない!!」
のび太「ふん……舐めるな!!」
ダダダダダダッ
ターンッ
バシッ
打者「な!?ダイビングキャッチ!?」
のび太「――一塁!!ランナー出てるぞ!!」
一塁手「――!!」
走者「――ッ!?」
のび太「フン!!」
ビュッ
バシイッ
審判「アウトアウト!!3アウト!!ゲームセット!!」
のび太「……しょせんは、小学生か……」
30: 名無し:14/06/14(土) 22:24:32 ID:2jRx3W0n3
のび太「ドラえもん、ただいま……」
ドラえもん「あ、ああのび太くん、おかえり……野球行ったんでしょ?どうだった?」
のび太「別に……普通だったよ」
ドラえもん「そ、そう……」
のび太「ああ……」
ドラえもん「……あ、のび太くん……!!」
のび太「……どうした?」
ドラえもん「宿題、全部合ってたよ!凄いじゃないか!」
のび太「……なんだ、そんなことか……別に普通だよ……」
ドラえもん「え?」
のび太「今日はもう寝るよドラえもん。お休み……」
ドラえもん「う、うん……お休み……」
のび太「………」
ドラえもん「………」
ドラえもん(……のび太くん、どうしちゃったの?)
32: 名無し:14/06/14(土) 22:39:24 ID:2jRx3W0n3
のび太(退屈な授業だ……これは、眠たくもなるな……)
先生「野比ー!!聞いているのか!?」
のび太「……聞いてますよ、先生」
先生「よそ見をしてたじゃないか!!そんなことだから、前回のテストも0点なんだぞ!!」
クスクスクス…
のび太「………」
先生「聞いているのか!!野比!!」
のび太「聞いてますよ先生。……先生、わざわざ俺の点数を言う必要があったんですか?」
先生「な、なに……!?」
のび太「こんなところで、大声で俺の点数を喋る必要はあったのか、と聞いているんです。なかったでしょ。そうやって、俺を笑い者にしたいんですか?それは、本当に教育なんですか?」
先生「……!!」
のび太「あなたは教育者でしょ?それが、教育者がすることですか?」
先生「の、野比……!!君は、何て口を……!!」
のび太「あなたの授業は退屈なんですよ。もっと興味をそそる内容にしてはどうですか?」
先生「野比……!!君は……!!」
のび太「……もっとも、俺はもう0点を取るつもりはない。俺を笑い者にするのは出来ない……残念だったな」
先生「……!!」
のび太「なんなら、ここでもう一度テストしますか?積分?因数分解?……ああ、そういえば、ここは小学校でしたね、先生」ゴゴゴゴゴゴゴ…
先生「……!!……も、もういい!!」
のび太「……フン」
しずか(の、のび太さん……)
34: 名無し:14/06/14(土) 22:46:51 ID:2jRx3W0n3
のび太(くだらない……実にくだらない世界だ……これが俺の生きている世界なのか?こんなにもつまらないのか?)
しずか「のび太さーん!」
のび太「……しずか?」
しずか「のび太さん……いったいどうしたの?」
のび太「どうもこうも……別に普通だけど?」
しずか「普通じゃない!のび太さん、普通じゃないわ!」
のび太「………」
しずか「どうしてそうなったの!?前の……前ののび太さんに戻ってよ!のび太さん!」
のび太「……しずか……俺は、気付いたんだ」
しずか「え?」
のび太「この世界はこんなにも広いのに、人の世は、こんなにも狭い。こんな世界だと、窮屈で仕方ないんだ」
しずか「え?どういうこと?」
のび太「今は何も聞かないでくれ。ただ、俺は……」
しずか「………」
のび太「……いや、何でもない。忘れてくれ。さよなら、しずか……」
ザッザッザッ…
しずか「のび太…さん……」
37: 名無し:14/06/14(土) 22:50:07 ID:2jRx3W0n3
ママ「――のび太!!ちょっと来なさい!!」
のび太「ん?」
ママ「あなた、先生に変なこと言ったらしいじゃない!!もう、何考えてるの!?だいたいのび太は――!!」
のび太「――宿題!!」
ママ「――ッ!?」
のび太「……宿題があるんだ。もういいか?」ゴゴゴゴゴゴゴ…
ママ「え、ええ……」
のび太「………」
ザッザッザッザッ…
ママ「のび…太……?」
42: 名無し:14/06/14(土) 22:56:35 ID:2jRx3W0n3
ドラえもん「……あ、のび太くん……」
のび太「ただいま」
ドラえもん「お、おかえり……」
のび太「………」
ドラえもん「………」
のび太「………」
ドラえもん「……のび太くん」
のび太「どうした?」
ドラえもん「うん……あのね……」
のび太「………」
ドラえもん「………」
のび太「………」
ドラえもん「……僕、未来に帰ろうと思うんだ……」
のび太「………え?」
49: 名無し:14/06/14(土) 23:08:01 ID:2jRx3W0n3
のび太「どういうことだ?」
ドラえもん「……のび太くん、君は、あの日に変わってしまったんだね。頭を打った君は、変わってしまったんだね?勉強も出来て運動も出来る。そんな君に、僕は必要ないんだ。必要……ないんだよ……」
のび太「………」
ドラえもん「……だから、僕は未来に帰るよ。もう僕が、君の横にいる必要はないんだ……」
のび太「ドラえもん……」
ドラえもん「………うぅ……うぅ……」
のび太「………」
ドラえもん「………」
のび太「……ドラえもん……少し、外に出てくれないか?」
ドラえもん「……え?」
のび太「少しでいい。廊下に出てくれないか?」
ドラえもん「……うん」
ガラッ
のび太「………」
のび太(……ドラえもん……すまない……)
51: 名無し:14/06/14(土) 23:19:59 ID:2jRx3W0n3
のび太「――ドラえもん、もういいよ」
ドラえもん「う、うん……」
ガラッ
ドラえもん「……これ……」
のび太「……ドラえもん、ほら、どら焼きだ」
ドラえもん「……どういうこと?」
のび太「ドラえもん……君は、勘違いをしてる」
ドラえもん「え?」
のび太「俺が勉強が出来るようになったから必要ない。運動が出来るようになったから必要ない。……それは、大きな間違いだ」
ドラえもん「………」
のび太「なぜなら、君は俺の友達だ。かけがえのない、家族なんだ」
ドラえもん「―――」
のび太「そんな君が必要ないはずがないだろ?いなくなっていいわけがないだろ?」
ドラえもん「の、のび太くん……」
のび太「このどら焼きは、俺達の友情の印だ。俺とこれからも一緒にいてくれるなら、食べてくれ」
ドラえもん「………」
のび太「俺は……君と過ごしていきたい。だから、食べてくれ」
ドラえもん「………」
のび太「………」
ドラえもん「……うん……うん!」
のび太「……ありがとう、ドラえもん……」
ドラえもん「――いただきます!!」
バクバクバク…
54: 名無し:14/06/14(土) 23:23:38 ID:2jRx3W0n3
のび太「………ニヤリ」
ドラえもん「……うん?なんか変な味が……」
ドクンッ
ドラえもん「――!?な、なんなの!?」
ドクン…ドクン……
ドラえもん「こ、これって……!!」
のび太「……ようやく、効いてきたか……」
ドラえもん「のび太くん……これは……!?」
のび太「ああそうだ。……桃太郎印の、きび団子……どら焼きの中に入れておいた。ちょっと、成分を調整したが、な……」
ドラえもん「のび太…くん……?」
のび太「悪いなドラえもん。俺は、この世界を変えるんだよ。そのためには、君が必要なんだ……絶対な」
ドラえもん「………」
のび太「さあ、目覚めるんだドラえもん……いや、ドラ」
ドラ「……のび太様、何なりとお申し付け下さい……」
のび太「……ククク……ハハハハ……!!!世界は、この時を持って変わる!!俺が、変えてみせる!!ハハハハハハ……!!!」
58: 名無し:14/06/14(土) 23:31:28 ID:2jRx3W0n3
ドラ「のび太様、まずはいかがいたしましょうか」
のび太「そうだな……まずは、ショックガンを出せ。これから世界を変えるなら、狙われる可能性が高い。武装の一つくらい、していた方がいいだろう」
ドラ「分かりました。――ショックガン」
テレテテッテレー!!
のび太「……ドラ、その効果音は止めろ。耳障りだ」
ドラ「はっ!申し訳ありません!」
のび太「……まあいい。さて、次はどこでもドアを出せ」
ドラ「分かりました!――どこでもドア」
ダダッダッダダ!!(ターミネーター風BGM)
のび太「効果音はこれでいい。……さて、行くぞ」
ドラ「はッ!」
63: 名無し:14/06/14(土) 23:44:36 ID:2jRx3W0n3
ガチャ
総理大臣「――!?だ、誰だ!?」
のび太「お初にお目にかかる、総理……」
総理大臣「何だ君は!?いったいどこから!?」
のび太「そんなことはどうでもいい。お前に、話がある」
総理大臣「君は誰だと言っている!!――おい!おい!!」
ガチャ
ダダダダ…
SP「総理!!いかがされました―――な、なんだお前は!?」
のび太「フン……雑魚どもが……」チャッ
SP「銃!?コイツ、銃を持ってるぞ!!全員構えろ!!」
チャキチャキチャキ
のび太「遅い!!」
バキューンバキューンバキューン!!!
SP「ぐわああああああああああ!!!」
バタバタバタ
総理「な!?SPが一瞬で!?」
のび太「俺の射撃は世界一だ。この程度の数、どうということはない。俺を止めたきゃ軍隊でも連れてくるんだな。……もっとも、それすらも無駄に終わるだろうが、な……」ゴゴゴゴゴゴゴ…
総理「き、君は……」ブルブルブルブル…
のび太「まあ、一応名乗っておくか……俺の名は……そうだな……“N”…とでも言っておこうか……」
71: ◆xb8eIST5.k:14/06/14(土) 23:51:20 ID:2jRx3W0n3
総理「え、N!?」
のび太「ほらよ総理。これを食べろ」
ポイッ
総理「こ、これは……きび団子?」
のび太「俺は、食べろと言ってるんだ。早く食わないと……」
チャッ
総理「わ、分かった!!食べるから撃たないでくれ!!」
モグモク
総理「――うっ!」
のび太「総理……気分はどうだ?」
総理「……目が覚めたようです。N様……」
のび太「そうか……では、さっそくお前に動いてもらおう」
総理「はっ!」
のび太「まずは、日本を大統領制に変える。選挙権は、全国民、全年齢対象だ。……出来るな?」
総理「お任せ下さいのび太様!この命に代えても、必ず成し遂げます!」
のび太「けっこう。一週間以内にしろ。じゃあな」
総理「はは!」
ガチャリ
73: ◆xb8eIST5.k:14/06/14(土) 23:55:18 ID:2jRx3W0n3
ドラ「……のび太様」
のび太「どうした?」
ドラ「いえ、世界を征服するのであれば、もしもボックスの方が早いかと思いますが……」
のび太「言われなくても分かっている。……だがな、ドラ、それでは面白くないだろ」
ドラ「と、言いますと?」
のび太「何も労せずに世界を手に入れる。……なるほど、実に簡単だ。だがな、それは、美しくない。俺は、俺のやり方で頂点に立つつもりだ」
ドラ「かしこまりました。余計な口を挟んだこと、お許しください」
のび太「いや、気にするな……さて、これから、忙しくなるぞ……ククク……」
75: ◆xb8eIST5.k:14/06/15(日) 00:03:05 ID:wHHvhU9xc
~一か月後~
日本は、のび太の目論見どおり、大統領制となった。
無論、総理のゴリ押しであったのは、言うまでもない。
反対する議員には、のび太は片っ端から桃太郎印のきび団子を食べさせ、手駒としていった。
……そして大統領選が始まり、のび太は立候補したのだった……
のび太「ドラ、指示通り、メディアは俺側に付けているだろうな」
ドラ「抜かりはありません。テレビ、新聞、ラジオ……その他もろもろ、全てこちら側につけています」
のび太「けっこう。よくやったな」
ドラ「ははっ!……のび太様、メディアをいかがされるおつもりですか?」
のび太「決まってる。メディアとは、情報。情報とは、この世界においての絶対的力。情報を操作すれば、全ての国民を味方に付けるなど容易いものよ。メディアに踊らされた国民は、こぞって俺に投票するだろう。そうすれば、俺は堂々と日本の頂点に立てる」
ドラ「なるほど……さすがは、のび太様です」
のび太「……さて、そろそろ中継演説の時間だな。行くぞドラ」
ドラ「はっ!」
88: ◆xb8eIST5.k:14/06/15(日) 00:18:01 ID:wHHvhU9xc
キャスター「それでは、今回の立候補者最年少である、N氏による演説です!!――N氏、どうぞ!!」
のび太「国民の皆さん、こんにちは。私が、Nです。
私の姿を見て、さぞや驚かれたことでしょう。確かに、私はただの小学生です。……見た目は、ね。
しかし、私は、この日本を変えたいと、誰よりも強く思っています。過去の呪縛、不透明な未来、そして、歪な現在……その全てに、皆がさぞや不安に思うだろう……
だが、私なら全てを変えることが出来る!古い思考やしきたりに惑わされることなく、新しい日本を創造することが出来る!
負けない日本、強い日本……それを、私なら作り上げることが出来る!!
国民の皆……私について来い!私と共に行こう!日本は、間もなく変わる!本当の日本が、間もなく訪れるのだ!!!」
ワアアアアアアアアアアアア!!!
のび太(ククク……メディアに操られた哀れな国民よ……もうすぐだ……ククク……)
90: ◆xb8eIST5.k:14/06/15(日) 00:27:33 ID:wHHvhU9xc
~半年後~
のび太は、圧倒的支持を得て、日本国初代大統領へと就任した。
そしてのび太は、軍事を拡大させ国防軍を設立。また、外国に対してもカリスマ的な存在感を見せつけ、たちまち世界を代表する指導者へと昇り詰めていった……
ドラ「……のび太様……」
のび太「……ドラ、見えるかこの景色が……」
ドラ「はっ……」
のび太「日本は変わった。俺の手で。あれだけ退屈だった世界は、こんなにも変わったんだ」
ドラ「左様で……しかしながら、税の倍率を上げたことで、国民の反対派が活発になっておりますが……」
のび太「言わせておけ。しょせんは、愚民の戯言だ……」
ドラ「はっ……」
のび太(しかしながら、少々上手く行き過ぎたな……また、退屈になってしまった……)
バタン
兵士「た、大変ですN様!!」
のび太「どうした。騒々しいぞ」
兵士「み、民衆の反対派が……暴動をおこしました!!武器を手に……この城に攻め込んできます!!」
のび太「……何?」
兵士「指揮を取ってるのは、N様と同い年くらいの少年!!その人物は―――!!」
出木杉「進めー!!大統領のこれ以上の暴走を許すな!!」
94: ◆xb8eIST5.k:14/06/15(日) 00:32:16 ID:wHHvhU9xc
のび太「出木杉か……!!」
兵士「はっ!!いかがいたしますか!?」
のび太(出木杉……ふん、退屈しのぎになりそうだな……!!)
のび太「慌てるな。兵は城の前に陣を張れ。賊を一歩たりとも入れるな」
兵士「は、はっ!では、賊はどうされますか!?」
のび太「――俺が、直接叩く!!行くぞ!ドラ!!」
ドラ「……承知しました……」
ダダダダ…!!
97: ◆xb8eIST5.k:14/06/15(日) 00:43:39 ID:wHHvhU9xc
出木杉「城は間もなくだ!!突き進め!!」
ワアアアアアアアアアアアア!!
のび太「――そこまでだ!!」
反乱軍「―――ッ!?で、出たぞ!!Nだ!!」
出木杉「のび太くん……!!」
のび太「……出木杉……まさか、ここまでやるとはな……」
出木杉「のび太くん!!今すぐ暴走を止めるんだ!!君は、ただの小学生なんだよ!?こんな大人の世界に、足を入れるには早すぎるんだよ!!」
のび太「出木杉……お前は子供だな。俺は小学生だが、それ以上に大統領でもある。俺は、この国のトップだ。暴走ではない。これは、政策なのだよ」
出木杉「何が政策だ!!人々を苦しめ、自らの自己満足を満たすだけの、ただの愚策じゃないか!!――そんなこと、僕達が止める!!」
ガチャガチャ!!
のび太「ふん……その程度の武装で、俺に勝てると思ってるのか?」
チャキ
チャキ
出木杉「――!?そ、それは――!!」
のび太「俺が考案した、ネオ・ショックガンZX……この二丁銃がある限り、俺に敗北はない!!」
ズキューンズキューン!!
狙撃兵「ぐああああああ!!」
出木杉「なッ!?あの距離から狙撃部隊を!?」
のび太「……狙撃部隊は、あと5人か……少なすぎるんだよ!!」
ズキューンズキューンズキューンズキューンズキューン!!!
狙撃兵「があああああああああああああ!!!」
出木杉「チッ―――!!」
のび太「……出木杉、狙いは良かったな。俺の気を引き付ける間に、狙撃兵で俺を狙い撃つ……普通なら、決まっていたな……」
出木杉「………!!」
のび太「……だがな、お前の目の前に立つ男には、少々物足りないな……」
100: ◆xb8eIST5.k:14/06/15(日) 00:53:44 ID:wHHvhU9xc
出木杉「ま、まだだ!!これだけの反乱軍、君には止められない!!」
のび太「ふん……いくら数を集めようが、雑魚は雑魚……ウサギは何頭束になろうとも、ドラゴンには勝てないのだよ!!――ドラ!!」
ドラ「はっ!」
のび太「行くぞ!!バトルモードだ!!」
ドラ「承知……ドラ、バトルモード!!!」
ウィーンカシャウィーンカシャ
ガキンガキンガキンガキン
――ブオン
ドラ『バトルモード――ドラディエイター!!』
出木杉「な、何!?八頭身に変形した!?それにあの体……戦闘用か!?」
のび太「行くぞ出木杉いいい!!!」
ドラ『敵を補足……殲滅する……』
ダダダダダダッ!!!
出木杉「く、来るぞ!!」
102: ◆xb8eIST5.k:14/06/15(日) 00:59:39 ID:wHHvhU9xc
のび太「止まって見えるぞ!!」
ズキューンズキューンズキューンズキューン……!!!
反乱軍「ぐあああああああ!!!」
ドラ『殲滅……殲滅……』
バキバキバキ…!!
ドカドカドカ…!!
兵士「がああああああああ!!」
のび太「どうしたどうした!!その程度か!!」
出木杉「クソッ!!」
ズキューン!!
のび太「そんな銃など……!!」
ヒラリッ
出木杉「――っ!?弾が逸れた!?」
のび太「俺の服は特別製でな。ヒラリマントで作ってある。俺にどんな攻撃をしようとも、全て躱す!!」
出木杉「なん……だと……!!??」
107: ◆xb8eIST5.k:14/06/15(日) 01:04:22 ID:wHHvhU9xc
出木杉「そ、そんな……あれだけいた反乱軍が、瞬く間に……!?」
のび太「言ったはずだ。数を集めようとも、しょせんは虎には勝てぬのよ」
出木杉「……くそおおおお!!」
のび太「終わりだ……出木杉……!!」
出木杉「……!!」
???「そこまでよ!!」
のび太「―――ッ!」
ドラ『―――ッ!』
???「あなたの悪行……ここで止めるわ!!」
ドラ『お前は……!!』
???「……おじいちゃん……もう、終わりにしよう……」
のび太「お前……!!」
ドラミ「お兄ちゃん……のび太さん!!あなた達の相手は……私達よ!!」
セワシ「もう一度未来を変えるために、僕達が止める……!!」
109: ◆xb8eIST5.k:14/06/15(日) 01:15:23 ID:wHHvhU9xc
ドラ『ドラミ……?』
ドラミ「お兄ちゃん……いい加減目を覚ましなさい。あなたは、のび太くんの友達でしょ?だったら、お兄ちゃんがのび太さんを止めないとダメでしょ!?」
ドラ『のび太様の理想は、我が叶える!!』
ドラミ「お兄ちゃん……」
セワシ「おじいちゃん……」
のび太「セワシ……お前、何しに来た?」
セワシ「おじいちゃん、あんたは、やり過ぎたんだよ。未来は、今無茶苦茶になってる」
のび太「………だから、どうした?」
ドラミ「なん……ですって……!?」
のび太「俺は世界の覇者になる男……未来がどうなろうと知ったことではない。世界は、全てが俺の意のままに出来る……そこには、素晴らしい未来が待っている。俺には、それが出来る」
セワシ「それは、傲慢なんだよ!あんた一人で、世界が動くとでも思ってるのか!?」
のび太「思ってはいない。動かすんだよ、セワシ……」
セワシ「……そうか……もう、無駄なんだね」
のび太「そうだ。止めたければ、止めて見せろ!!」
110: ◆xb8eIST5.k:14/06/15(日) 01:15:34 ID:wHHvhU9xc
セワシ「……分かったよおじいちゃん!!――いや、N!!――ドラミ!!」
ドラミ「うん!――ドラミ、バトルモード!!」
ウィーンカシャウィーンカシャ
ガキンガキンガキンガキン
――ブオン
ドラミ『バトルモード――ドラキュア・カスタム!!』
セワシ「N!!アンタの孫である僕も、射撃にはちょっと自信があるんだよ!!」
チャチャ
のび太「二丁銃か……おもしろい……!!」
ドラミ『行くわよお兄ちゃん!!』
セワシ「行くぞN!!」
のび太・ドラ「来い――!!」
117: ◆xb8eIST5.k:14/06/15(日) 01:26:13 ID:wHHvhU9xc
ドラミ『はあああああああ!!』
ドラ『おおおおおおおお!!』
ドドドドドドドドドドドド…!!!
ドラ『我の連撃に対応するか!!ドラミ!!』
ドラミ『お兄ちゃんこそ!!私がこの程度だとは思わないことね!!』
ドドドドドドドドドドドド……!!!
ズキューンズキューンズキューンズキューン…!!
のび太「セワシ!!なかなかやるな!!」
セワシ「Nこそ!!さすがだよ!!」
ズキューンズキューンズキューンズキューンズキューンズキューン…!!!
出木杉「……レベルが違いすぎる……!!奴らは化物か!?」
121: ◆xb8eIST5.k:14/06/15(日) 01:32:58 ID:wHHvhU9xc
ドラ『とおおりゃあああああ!!!』
バキキッ!!
ドラミ『がはっ―――!!』
ズザザザザ
ドラ『……ドラミよ……確かにお前は強いが、攻撃の後に隙が出来てるな……まだまだ未熟よ……』
ドラミ『はあ……はあ……』
ズキューン!!
セワシ「ぐあああああああ!!!」
バタッ
ドラミ『――ッ!?セワシさん!?』
セワシ「うぅ……」
のび太「セワシ……確かに銃の腕は大したものだ……だが、攻撃が単調過ぎるな……それでは俺には勝てん……」
122: ◆xb8eIST5.k:14/06/15(日) 01:40:21 ID:wHHvhU9xc
のび太「さて……退屈しのぎにも少々飽きてきた……そろそろ、眠ってもらうぞ。――ドラ」
ドラ『了解―――ハイメガドラキャノン、スタンバイ……』
ガチャガチャウィーン
――キ―――ン
のび太「お別れだ二人とも……残念だよ……」
ドラミ『そんな……』
セワシ「うぅ……」
のび太「……さよなら……」
ドラ「チャージ完了……」
のび太「ドラ、発―――」
???「――待って!!」
バババッ
のび太「―――!!??」
???「撃つなら、俺達ごと撃ってみろ!!」
???「そ、そうだそうだ!!」
のび太「……何をしてるんだ?しずか、ジャイアン、スネ夫……どうしてセワシ達を庇う?」
しずか「決まってるでしょ!?――あなたを…止めるためよ!!」
127: ◆xb8eIST5.k:14/06/15(日) 01:48:15 ID:wHHvhU9xc
のび太「止める?何を止めるんだ?」
ジャイアン「決まってるだろ!?お前の、バカな行動をだよ!!」
スネ夫「お前なんかのび太じゃない!!のび太は、もっと弱いんだ!!臆病なんだ!!でも―――!!」
しずか「――でも、とっても暖かくて優しい人なのよ!!あなたは、のび太さんなんかじゃない!!」
のび太「……何を言ってるんだ。俺は、俺だ。何も違ってなんかいない。これが、俺なんだよ。世界の歪みを正そうとしているだけだ。俺が世界の頂点に立てば、もっと住みよい世界になる。絶対的な王が上に立つことで、世界は平和になるんだ。どうしてそれを分からないんだ?」
しずか「分かりたくない!あなたはもっと優しい人なのよ!?どんなにバカにされても、どんなに落ち込んでも、それでも他人のことを真剣に思えるような、そんな素晴らしい人なのよ!?
のび太「―――」
しずか「だから!!のび太さんは!!のび太さんは―――!!私の大好きなのび太さんは、こんな人なんかじゃない―――!!」
のび太「―――!!!」
ドラ『――ハイメガドラキャノン……発射……』
しずか・ジャイアン・スネ夫「――――ッ!!」
129: ◆xb8eIST5.k:14/06/15(日) 01:50:50 ID:wHHvhU9xc
ズドオオオオオオオオオオオンンン!!!
しずか「………あれ?」
ジャイアン「当たって……ない?」
スネ夫「――ッ!!みんな!あれ!!」
のび太「………」
しずか「の、のび太さん……私達を……庇って……!!!」
のび太「がっ……はっ……」
バタッ
しずか「――の……のび太さああああああああんん!!!」
132: ◆xb8eIST5.k:14/06/15(日) 01:58:48 ID:wHHvhU9xc
しずか「のび太さん!!しっかりして!!」
のび太「へへっ……まずったな……ヒラリマントにも…対応できるような……ハイメガドラキャノンを作ったのが……仇に、なるとは、な……がはっ!」
ジャイアン「もういい!もう喋るな!!すぐ医者を……!!」
のび太「ジャイアン……もういいんだ……もう、いいんだ……」
スネ夫「どうして……どうして……!!!」
のび太「さあ……どうしてだろうな……俺にも、分かんないよ……ただ、俺は、止まりたかったのかもしれないな……」
ドラ『のび太…様……』
のび太「ドラ……色々世話をかけたな……もう、いいんだ……関係は…解除する……」
ドラ「の、のび太…くん……」
しずか「のび太さん!!しっかりして!!」
のび太「し…しずか……もう一度、その手を掴んでもいいか?」
しずか「ええ!ええ!!私の手はここよ!!のび太さん!!」
ガシッ
のび太「……ああ、あったかいな……しずか……とても、あったかいよ……」
ガクッ
しずか「……の、のび太さん?」
のび太「――――」
ジャイアン「のび太……のび太……!!」
スネ夫「ぐすっ……ぐすっ……」
のび太「―――」
しずか「いやあああああああああああ!!!」
133: ◆xb8eIST5.k:14/06/15(日) 02:04:40 ID:wHHvhU9xc
のび太「―――はっ!!」
ドラえもん「――あ、気が付いたのび太くん?」
のび太「……ドラ…えもん?」
ドラえもん「んん?もう、まだ寝ぼけてるののび太くん」
のび太「ここは……」
ドラえもん「君の部屋だよ。階段から転げ落ちて、気絶してたんだよ。まったく、ドジだなぁ」
のび太「……そっか……夢だったのか……」
ドラえもん「ん?なんのこと?」
のび太「……ううん。ちょっと変な夢を見ただけだよ。それより、僕お腹空いちゃった」
ドラえもん「うん。ちょっとおやつ取って来るね!!」
のび太「あ、ありがとう」
ドラえもん「いいんだよ」
タタタタ…
のび太「夢……か……まあ、あんな終わり方だしなぁ……」
のび太「……」
のび太「………」
のび太「…………」
のび太「……………次は、もっとうまくやるか……ククク………」
終わり
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