2: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/11/13(火) 00:07:00.53 ID:vcsrKCh/0
~~~

極東魔術昼寝結社の夏

~~~


ガラッ


森夏「……なぁんだ。今日は誰もいないんだ」


ガラッ、パタン


森夏「せっかくチア部が休みになったから来てやったってのに……こういう時に限って――」


ガラッ!


凸守「ふっふっふ……かかったデスね! 偽モリサマー!!」


森夏「なっ! 中坊!?」


凸守「出入り口はこのミョルニルハンマーの使い手、凸守が抑えまぁした! 今日という今日は、我が敬愛するモリサマーを騙る貴様を、この手で打ち滅ぼさせてもらうぅ…デス!」


森夏「はんっ! なるほどね……放課後になっても誰もいないのはアンタの差し金ってこと」


凸守「差し金? 何を言ってるDeathか。これは運命に導かれし結果Death。そう……あなたを倒せという、世界の導きなのデス!」

凸守「モリサマーは言っていました。『世界を信じ、正しきことを行うものに、この世の意思は応えてくれる』と」


森夏「ひいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃーーーーーーー!!! だから! そういうこと言うなって言ってんでしょ!」バッ!


凸守「ふっ……止まって見えるデス」サッ


森夏「くっ……!」


凸守「さあ! 後ろは取りました! コレで――」


グシャッ!!!


凸守「――え?」

3: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/11/13(火) 00:08:28.22 ID:vcsrKCh/0
森夏「ああーーーーーー!!! あたしのカバンが!!」バッ!


凸守「おっと、これは失礼しました」スッ

凸守「しかし、戦場に大事なものを放置しておく方が悪いのDeathよ?」


森夏「ちょっ……! マジでペタンコじゃないの! アンタどんだけ重いのよっ!!」


凸守「し、失礼な! 偽モリサマーよりは圧倒的に軽いのDeath!! バカにするなDeath!!!!」


森夏「ちょっともう……結構強く踏んだでしょ? ほらぁ~……外ポケットに入れてた鏡が割れちゃってるじゃないの、もうっ!」


凸守「ふっ、そんな安っぽい鏡を大事にするなんて、なんて貧乏性な女なのDeathか?」


森夏「……あぁ?」


凸守「全く……あなたが本当にモリサマー本人だというのなら、そんな何の変哲もない鏡ではなく、ちゃんと魔力を見通せるものを持っていないと説得力がないデスよ?」


森夏「…………」


凸守「せめて魔力を集められるものを持っていないと、わたしを騙すことなんて出来るはずも――」


森夏「……帰る」


凸守「――っと、逃げるのデスか、偽モリサマー。そうやすやすと逃がすと思って――」サッ


森夏「どいて」


凸守「――……えっ……」

4: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/11/13(火) 00:11:36.25 ID:vcsrKCh/0
森夏「どいてって言ってるの」


凸守「は、はんっ! そうやって脅したところで、凸守には通じないのデス!」





森夏「どうだっていいからどけって言ってるのよっ!!」





凸守「ひっ……」サッ!


森夏「…………」スタスタスタ


凸守「えっ……あの……」


森夏「あのね……中坊。アンタにとってはどうでも良いものなのかもしれないけど……あたしにとっては大事な物、ってのはあるのよ」


凸守「あ……」


森夏「それも知らないで、謝りもしないなんてね……そんなヤツだとまでは、正直思って無かったわ」


凸守「は、はんっ……! そ、そんなに大事な物だって言うんなら、ざまあ見ろデス! これでもう偽者を騙ることも無くなるんじゃないデスか!? この、凸守の恐ろしさによって!!」


森夏「…………」


凸守「思い知ったかデス! 偽モリサマー!! これがミョルニルハンマー凸守の恐ろしさDeath!! これに懲りたら二度とモリサマーの偽者だと名乗らないことDeathねっ!!」


森夏「……そう……それがアンタの答えなのね」


凸守「当然Deathっ!!」





森夏「じゃあもう二度と、あたしに近づかないで」

5: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/11/13(火) 00:13:15.61 ID:vcsrKCh/0
凸守「…………えっ?」


森夏「また、物壊されたらイヤだし、壊してもちゃんと謝らないアンタみたいなガキと一緒にいたくもないし」

森夏「だから、あたしからは近づかないから、もう二度と近づかないで。そしたら、アンタのイヤがることはしてないことになるんでしょ?」


凸守「と、当然デェス」


森夏「なら、これで満足でしょ。偽者かどうかなんてどうでも良くなっちゃった」

森夏「だから、もう良いや。アンタとはもうこれからは顔も知らない他人。これで良いんでしょ? それじゃあ、さようなら」


凸守「あ……」


ガラッ、パタン


凸守「……………………」

凸守「……は、はんっ! 偽者はこれにて成敗デェス!」

凸守「モリサマー……私は、やりきりました。あの偽者を、打倒してみせました!!」

凸守「はーっはっはっはっはっ……!」


ガラッ


凸守「っ!」ビク


勇太「ちーっす」


凸守「な、なんだ……ダークフレイムマスターDeathか」


勇太「その名で呼ぶなっ!」

勇太「って、そうじゃなくて凸守、さっき丹生谷とすれ違ったんだけど……アイツどうしたんだ?」


凸守「ど、どうとは……?」


勇太「いや、なんか早足だったからさ……声をかけても気付いてなかったみたいだし……お前、何か知らないか?」


凸守「ふっ、それなら簡単Death」

凸守「わたしがアイツを倒した、それだけのことDeath」


勇太「…………」

勇太「……いや、全くもって分からんのだが」

6: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/11/13(火) 00:15:08.84 ID:vcsrKCh/0
~~~~~~

翌日

~~~~~~

ガラッ


六花「よくきたな、凸守」


凸守「おぉ! 我がマスターっ!」

凸守「…………」キョロキョロ


六花「どうした?」


凸守「いえ……あの偽者はどうしたのかと思っただけデス」


勇太「丹生谷なら来ないぞ」


凸守「えっ……?」


勇太「なんでも、チア部で忙しくなるんだとか。昨日はその忙しくなる前最後の休みだったとかなんとか」


凸守「そ、そうDeathか……」


くみん「デコちゃん、どうしたの?」


凸守「な、なんでもないのDeath! 全く、ちょっと凸守が本気を出して倒してやったら逃げ出して、情け無いのDeath。アレでモリサマーを騙っていたとはまさに笑止千万Deathね」

凸守「ま、あんなやつのことはどうでも良いのデス。それよりもマスター、今日は何をするのDeathか?」


六花「ふむ、そうだな。今日は――」


勇太「…………」

7: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/11/13(火) 00:16:33.28 ID:vcsrKCh/0
~~~~~~

さらに翌日

~~~~~~

ガラッ

凸守「っ!」バッ!


勇太「オッス」


凸守「あ……」


勇太「ん? どうした、凸守」


凸守「いえ……なんでもないのデス……」パスッ


勇太「珍しいな。お前がくみん先輩の枕を借りて寝てるなんて」


凸守「ちょっと、今日は気分が優れないのDeath」


勇太「おいおい、大丈夫か?」


凸守「ダークフレイムマスターに心配されるほどじゃないでぇす……」


勇太(声に覇気がない……本当に大丈夫か……?)


凸守「それよりも……今日も偽者は来ないのでぇすか?」


勇太「あ、ああ……まだチア部が忙しいままなんだってさ」


凸守「そうですか……」ガタッ


勇太「ん? 帰るのか?」


凸守「はい……やはり、少し大丈夫ではないので、今日は帰りますです。マスターへの伝言、お願いしますです」


勇太「あ、ああ。まかせろ」


ガラッ、パタン


勇太(……重症だな、アレは……)

8: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/11/13(火) 00:17:33.18 ID:vcsrKCh/0
~~~~~~

さらにさらに翌日

~~~~~~

ガラッ

くみん「あっ、デコちゃんいらっしゃ~い」


凸守「…………」キョロキョロ


くみん「どうしたの?」


凸守「いえ……今日も、来ていないのですね……」


くみん「ああ、モリサマちゃん?」


凸守「はい……」


くみん「……どうしたの? 何かあった?」


凸守「いえ……お手を煩わせるほどのことじゃないので、大丈夫です」


くみん「とても大丈夫そうには見えないよっ。デコちゃん、わたしで良かったら、相談乗るよ?」


凸守「ありがとうございます……ですが、もう解決策は見つかっているので、大丈夫です」


くみん「えっ? そうなの?」


凸守「はい」


くみん「それじゃあもうちょっとしたら、また元気なデコちゃんに会えるんだね?」


凸守「はい。大丈夫です。任せてください」

9: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/11/13(火) 00:18:55.65 ID:vcsrKCh/0
~~~~~~

さらにさらにさらに翌日

~~~~~~

廊下


凸守(今日は週末……今日会って謝れなかったら、もう二度と、許してもらえない……)

凸守(勘違いなのは分かってる。でも、なんとなくそんな気がしてしまう)

凸守(でも、直接教室に入る勇気が、今の私には持てない……)

凸守(酷いことをして、その酷いことを謝りもしなくて怒ったあの人に……謝ったぐらいで、許してもらえるかな……?)

凸守(……許してもらえなかったらどうしよう……)

凸守(そう考えると、どうしても一歩が、踏み出せない)

凸守(せめて、教室から出てきてくれたら……)

凸守(そしたら……)


森夏「――でさ~~」


凸守「っ!」バッ!

10: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/11/13(火) 00:21:52.24 ID:vcsrKCh/0
――じゃあもう二度と、あたしに近づかないで――

凸守「っ……!」

凸守「…………」

凸守「……………………」スッ


~~~~~~


凸守「…………」

凸守(……結局……隠れてしまった……)

凸守(せっかく……出てきたのに……出てきてくれたのに……)


――壊してもちゃんと謝らないアンタみたいなガキと一緒にいたくもないし――


凸守「っ!」ジワッ


――アンタとはもうこれからは顔も知らない他人。これで良いんでしょ? それじゃあ、さようなら――


凸守「ダメだ……わたし……」グスッ

凸守(悪いことをして謝れないなんて……本当、ダメダメだ……)


勇太「……凸守?」


凸守「っ!」

凸守「…………」ゴシゴシ


勇太「どうしたんだ? こんなところで」


凸守「どうもしないのですよ、ダークフレイムマスター」


勇太「その名で――……ん? お前……」


凸守「っ! そ、それじゃあ凸守は忙しいので、この辺で失礼しますねっ!!」

凸守(泣いてるの……バレたかもしれない……)

凸守(ああでも……バレて、あの人に伝えてもらえたら良いとか、そんな虫のいいこと考えてる……)

凸守(最低だ……わたし)

11: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/11/13(火) 00:24:16.16 ID:vcsrKCh/0
~~~~~~

放課後

極東魔術昼寝結社の夏

~~~~~~

凸守「はあ……」

凸守(思えば……あの人にちょっかいをかけてる時が、最近はマスターと一緒にいるときよりも楽しかったな……)

凸守(マスター以外で、わたしのことをちゃんと相手してくれていた人……)

凸守(なんだかんだで、構ってくれた人……)

凸守(でも……もう二度と、相手をしてくれない人……)

凸守(……他人に……なってしまった、ひと……)

凸守(……やだなぁ……)グスッ


凸守「……こうなったら、過去に戻るための手段を、本気で探そうかな」


凸守(不可視境界線……異世界への入り口……本当にあるそこは、この次元と同じ軸への過去へと、わたしを飛ばしてくれるのかな……?)

凸守(そしたら、あの時のわたしをぶん殴って、謝らせるのに……)

凸守(チア部を言い訳にして、ここにこないなんてこと、あの人にさせないのに……)





ガラッ




森夏「はぁ~……全く。結構忙しいってのに、なんで顔出さないといけないのよ」





凸守「……………………えっ?」バッ

12: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/11/13(火) 00:25:23.45 ID:vcsrKCh/0
凸守(あ……)


森夏「ん? なによ、中坊。またちょっかいかけてくる気?」


凸守(来て……くれた……)


森夏「……って、アンタ、なんか様子がおかしく――」


凸守(もう……謝る機会なんて、やって来ないと思ったのに……!)ポロポロ


森夏「――っ!? ちょっ、何泣いてるのよっ! 一体どうしたの!?」





凸守「……めんなさぃ」





森夏「え?」






凸守「ごめんなさいっ!」

13: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/11/13(火) 00:26:26.55 ID:vcsrKCh/0
凸守「鏡を割ってごめんなさい!」

凸守「すぐに謝らなくてごめんなさい!」

凸守「意地を張ってごめんなさい!」

凸守「今まで勇気を振り絞れなくて……ごめんなさい!」




凸守「ごめんなさいっ……! ごめんなさいっ……! ごめんなさいっ……!!!」グスグス




凸守「許してください……また一緒に、遊んでください……!」

凸守「あなたが構ってくれないと……寂しいんです……!」

凸守「お願いします……! 許して……許してください……!」

凸守「もう二度と、悪いことをしても、意地を張りませんからぁ……!」





凸守「またわたしと、一緒にいてください……!」





凸守「また、ここに、来てください……!」






森夏「…………」

14: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/11/13(火) 00:27:48.27 ID:vcsrKCh/0
森夏「…………」





森夏「…………」





森夏「…………」





森夏「……………………」





森夏「………………………………」





森夏(…………んんんんんんんんんんんんんんん~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!?!?!?!?!?)

15: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/11/13(火) 00:29:17.13 ID:vcsrKCh/0
森夏(えっ? これってどういうこと? なんでこの子こんなに謝ってるの?)


森夏(なんでこんなに泣いてるの? あれ? あたしなんか酷いことしたっけ?)


森夏(えっと待って待って。整理しよう整理)





森夏(富樫くんに言われて部室にやってきたら、後輩に思いっきり泣きながら謝られた)





森夏(……よしっ! ワカランッ!)


森夏(いや、いやいやいや、ちょっと待ってちょっと待って。それで済ませたダメよ、うん)


森夏(そもそも、この子最初になんて言った?)


森夏(確か……鏡って言ったわよね?)


森夏(鏡……鏡? 鏡ってなに……?)


森夏(鏡……かがみ……かがみ……カガミ……)


森夏(……って、ああああああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!)

16: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/11/13(火) 00:30:43.97 ID:vcsrKCh/0
~~~~~~

回想

~~~~~~


凸守「ふっ、そんな安っぽい鏡を大事にするなんて、なんて貧乏性な女なのDeathか?」


森夏「……あぁ?」


森夏(安っぽい? あぁ? 言うに事欠いて何言ってんのコイツ)

森夏(確かに安もんだけど、そんなの関係無しにまず真っ先に謝るべきでしょ? それを……それをコイツはぁ……!)


凸守「全く……あなたが本当にモリサマー本人だというのなら、そんな何の変哲もない鏡ではなく、ちゃんと魔力を見通せるものを持っていないと説得力がないデスよ?」


森夏「…………」


森夏(はっは~ん。なるほど。そういうこと。そういうこと言っちゃう? 分かった。分かったわよ)

森夏(そっちがそういうこと言うってんなら……コッチにだって考えがあるわ)

森夏(バカなお子ちゃまにはどキツいおしおきと教育が必要だものね)

森夏(OKOK。分かった分かった)

森夏(教えてやるわ……あたしが本気で怒ったら、どうなるのかってことをね……!)

17: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/11/13(火) 00:31:59.81 ID:vcsrKCh/0
~~~~~~

回想内・翌日

教室

~~~~~~


勇太「え? 当分部活には来れない?」


森夏「そうなの。ちょっと、チア部の方が忙しくなりそうでね」


勇太「なるほど。分かった」


森夏「あ、それとね。一つ注意しておいて欲しいんだけど」


勇太「注意?」


森夏「そう。今ね、あの後輩に一つのドッキリを仕掛けてるから」


勇太「ドッキリ?」


森夏「うん。だから、あの子がヤバそうになったら、教えてね。思いっきりからかいにいくから」ニコッ


勇太(どんなドッキリだよ……教室でちょっと素が出るなんて相当だな……)


勇太「まぁ、それは良いけど……」


森夏「よろしくね」


勇太「……ちなみに、どんなドッキリを仕掛けたんだ?」


森夏「それはぁ……ひ・み・つ☆」


勇太「っ!」ゾクッ

18: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/11/13(火) 00:32:53.91 ID:vcsrKCh/0
~~~~~~

回想終了

~~~~~~


森夏(そうだ……今の今まで忘れてた……!)

森夏(アイツに部室に行ってやってくれって言われても全く思い出せないぐらいに忘れてた……!)

森夏(怒ってるフリをして、チア部のせいで行けない間に思いっきり罪悪感を抱かせて思いっきりからかうつもりだったのに――)



凸守「ごめんなさい……ごめんなさい……」グスグス



森夏(――さすがにこんなに泣かれてる状況で今更「ドッキリでしたぁ。何泣いてんのざまぁ」なんて言えるかぁっ!)

19: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/11/13(火) 00:35:11.30 ID:vcsrKCh/0
森夏(さすがにコレは仕掛けた本人もドン引くわ……やりすぎにも程がある……)


森夏「え~っと……」


森夏(どうしよう……どうしよう……考えろ……考えるのよ、丹生谷森夏……)


森夏「…………」


凸守「……グスッ……やっぱり、今更謝っても、許してはもらえませんよね……」


森夏(いや、別にそういうわけじゃ……っていうかコイツもコイツでいつもとキャラが違いすぎるのよ! いつも通りならまだノリがあるっていうのに!)

森夏(このままじゃいつまで経ってもきっかけが無いじゃないっ!)


凸守「でも……せめて、これだけでも受け取ってください……」スッ


森夏「……これは?」


凸守「手鏡です。わたしの趣味なので、合わないかもしれませんが……代わりにして下さい。もちろん、気に入らなかったら、割ってくれて構いませんから」


森夏(よ、よ~し……どうせいつもみたいに中二臭いやつだろうから、「こんなん使えるかっ! どうせ前のなんて安もんでただのドッキリだから気にすんな!」みたいな感じで打ち明けて――)


ガサガサ


森夏(――って、普通に可愛いやつ!?)

20: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/11/13(火) 00:36:04.96 ID:vcsrKCh/0
森夏(てっきり厨二的なものがくるかと思ったのに! 普通にピンク色で可愛いしっ!)


凸守「正直言うと、許して欲しいのが一番ですけど……無理ならせめて、一言だけでも、謝りたかった……」


森夏(うぅ……なんでドッキリ仕掛けたあたしがこんなに罪悪感に苛まれないといけないのよ……)


凸守「本当に、ごめんなさいでした」ペコ


森夏(~~~~~~~~~~~っ! ……あぁっ! もうっ!)


森夏「もういい! もう良いから!」


凸守「えっ……? では、許してくれるのですか?」


森夏「っていうか、許す許さないじゃないの!」


凸守「……え?」


森夏「そもそもあの手鏡は本当に安物で、特に思い入れも思い出もないありふれた雑貨売り場の商品で、もうぶっちゃけあの時のアレは――」








森夏「――ドッキリだったのよーーーーーーーーーーっ!!!」

21: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/11/13(火) 00:37:11.10 ID:vcsrKCh/0
凸守「…………」


森夏「…………」ハァ…ハァ…


凸守「……………………え? ドッキリ……ですか……?」


森夏「そう。そうなのよ。ちょっとアンタにお灸を据えるつもりなだけだったの」

森夏「それをアンタがすごい責任感とか罪悪感とかを感じてて、すぐに明かせなかったの」


凸守「…………」


森夏「その辺は謝るわ。ごめん」


凸守「…………」ポロポロ


森夏「ちょっ……! だからもう泣かなくても――」


凸守「……かった……」


森夏「――え?」


凸守「良かった……」ペタン

凸守「それじゃあ凸守は……嫌われた訳じゃ……無かったんですね……?」


森夏「あ~……まあ、そうよ……うん」


凸守「良かった……良かった……良かった……」グスグス


森夏「ああ、もう。だからもう泣かないでって」


凸守「だって……っ! だって! すごく……安心したんですから……!」

凸守「あなたに嫌われた訳じゃないってわかって……! また、前みたいに、出来るんだって……! そう……! 思ったらっ……!」


森夏「中坊……」

22: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/11/13(火) 00:37:47.47 ID:vcsrKCh/0
森夏(……よくよく考えれば、コイツってクラスに友達いなさそうよね……)

森夏(あたしだって中学時代……いや、思い出すのはよそう)

森夏(ともかく、そのせいで不安になるのは、当然だったといえば当然か……)


森夏「…………」


森夏(……それだけ、あたしのことは認めてくれてたってことか……)

森夏(なんか……こうやって純粋に慕われてるのは、結構嬉しいかも)


森夏「ほら、もういい加減泣き止みなさい」


凸守「……はい……」


森夏(はぁ~……って言っても、あくまでもこうして普通に慕われたら、なんだけどね)

23: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/11/13(火) 00:39:32.07 ID:vcsrKCh/0
~~~~~~

森夏「どう? 落ち着いた?」


凸守「……まさかなのDeath」


森夏「……なにが?」


凸守「このミョルニルハンマーの使い手である凸守ともあろうものが、お前の呪いによってこんなにも精神的にやられるとは思いもしなかったのデェス」


森夏「呪いって……」


凸守「ですが、どうやら呪いを御し切れなかったようDeathね」

凸守「いえ、それとも偽モリサマーの力では、このわたしの解呪能力を上回ることが出来なかったと言うべきでしょうか……」


森夏「……さっきまでピーピー泣き喚いていたやつがよくそんな大口を瞬時に叩けるわね」


凸守「アレは呪いを解いたことによって出た、体内に残っていたお前の魔力の残りカスのようなもの。決して涙ではないのデス」


森夏「そんなに目を赤くしてるのに?」


凸守「こ、これは……その…………はっ! つ、ついに凸守の目にも目覚めたということDeathか。この紅眼による魔力が……!」


森夏「はいはい。そういうことにしておいてやるわ」


凸守「な、なんデスかそれはっ!」


森夏「ほらもう。今日はそういうの良いから。明日からまた構ってあげるから」


凸守「……むぅ」


森夏「今日は大人しくしておきなさい」


凸守「……そうデスね。腹ただしいことDeathが、いまだ呪いが抜けきれていないこの身体では、偽物のモリサマーにすら勝てないデス」

凸守「ですが、こうして情けをかけたこと、明日から後悔させてやるのDeath」


森夏「はいはい。……全く……口の減らない後輩だこと」

24: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/11/13(火) 00:40:16.03 ID:vcsrKCh/0
~~~~~~

極東魔術昼寝結社の夏

の入り口前廊下

~~~~~~


勇太「……どうやら、仲直り出来たみたいですね」


つゆり「そうだねぇ」


六花「どういうこと、勇太? 凸守と丹生谷は喧嘩でもしていたのか?」


勇太「喧嘩……というか、なんというか……勘違い? っていうか、俺も良くわかって無いんだよな」


つゆり「まあ、デコちゃんが元気になったんなら、それで良いよ」


六花「? まあ、終わったのならそれで良い。私達も中に入ろう」


勇太「入れるならな」


六花「???」


勇太「中、覗いてみろよ」

25: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/11/13(火) 00:41:58.66 ID:vcsrKCh/0
六花「……なるほど……確かにコレは入れない。強い結界が張られている。これを破るには私の魔力の大半を――」


勇太「ああ、はいはい。そうですねそうですね」


六花「――むぅ……最後まで言わせて欲しい、勇太」


勇太「聞くだけ無駄だから却下だ」


六花「……今日のゆうたはつめたい……」


つゆり「それにしても二人とも……ああして手を繋いで……まるで、本当の姉妹みたいだね」



~~~~~~

極東魔術昼寝結社の夏

~~~~~~


森夏「アンタにもらったこの手鏡、大切にするわね」

凸守「当然Death。わたしが送ったものデスからね。いえ、むしろ一生手元から離れない呪いをその鏡にはかけておいてやるのデェス」


森夏「良いけど、今度は踏んだりして割らないでよ?」


凸守「割るわけがありません。なにせその鏡には凸守の魔力が込められているのですから」





凸守「……もう間違えても、踏みつけるなんてことはないのDeath」










終わり

38: 1 ◆smf.0Bn91U 2012/11/14(水) 00:20:37.57 ID:7K8WACxh0
 



というわけで二つ目いきます



タイトル

森夏「で、わたしは何位だったの?」

39: 1 ◆smf.0Bn91U 2012/11/14(水) 00:22:22.81 ID:7K8WACxh0
六花「人差し指と中指を合わせて伸ばし、頭上から勢いよく自らの足元めがけ、上体を折り曲げながら振り下ろす!」シュッ

六花「そしてその勢いを殺すことなく上体を持ち上げ、真横へと切るっ!」シュッ


凸守「そ、それはまさか……正十字の紋章!? そ、そんな……! 邪王心眼のマスターが、まさか聖なる魔法を使うだなんて……!」


六花「それは違うぞ、凸守。私のように強く闇に染まると、ただの闇では満足できなくなるのだ」

六花「光を喰らい・それを闇と成し、聖を魔へと変換してこそ、真に満足することが出来るようになる」


凸守「おぉ……! さすがマスターなのDeath!! すごいのデスッ!!!」


勇太「……なにやってんだ、アイツら」


森夏「無視すんなっ!」ドスッ


勇太「ぐっふ!!」

40: 1 ◆smf.0Bn91U 2012/11/14(水) 00:23:12.60 ID:7K8WACxh0
森夏「……で、何位だったの?」


勇太「な……なにが……?」


森夏「あたしの順位よ」


勇太「順位?」


森夏「そ。一色くんの手帳、アレに書いてあったのって男子からアンケートを取って集計した結果なんでしょ?」

森夏「あたし、結局中見てないから気になるんだけど」


勇太「いや、だからアレはアイツが勝手に――」


森夏「いやアンタたち、普通にあたしの前でアンケート取ったこと言ってたからね?」


勇太「――ですよね~……」


森夏「……で、あたしは何位だったの?」


勇太「…………」

41: 1 ◆smf.0Bn91U 2012/11/14(水) 00:25:10.84 ID:7K8WACxh0
勇太「ちなみにだけど、丹生谷は誰が一位だと思う?」


森夏「一位? そうねぇ……まあ、あたしでないのは確かでしょ?」


勇太(なん……だと……?)


森夏「まあ妥当なところだと…………って、そういうクイズ形式は良いから」

森夏「それにあたしが聞きたいのは一位じゃなくて、自分の順位なの」


勇太「どうしてまた」


森夏「あたしの中二からの立ち直りが上手くいってるかどうかが分かるじゃない。もしこれで上位なら、男子を騙せてるってわけなんだし」


勇太「……なるほどね」

勇太(今でも十二分に騙せてるけど。っていうか、俺も騙されてたクチだし)


森夏「で、誰?」


勇太「…………どうしても言わないとダメ?」


森夏「もったいぶらずに言いなさいよっ」


勇太「……………………まぇ」


森夏「は?」


勇太「だから、お前。丹生谷が一位だよ。少なくとも俺は一色からそう聞いた」


森夏「……………………え?」

42: 1 ◆smf.0Bn91U 2012/11/14(水) 00:26:05.43 ID:7K8WACxh0
森夏「え? うそ? えっ?? ま、マジで……?」


勇太「マジもマジ。大マジだよ」


森夏「うっそ……あ、ヤバい。すごいニヤける。顔がニヤニヤする」


勇太(そりゃまあ嬉しいだろうよ。自分の努力が認められてるようなもんだからな)


森夏「ふ、ふ~ん……そっか~……えっ? あ、ちなみにアンタは誰に入れたの?」


勇太「俺も丹生谷に入れたよ」


森夏「えっ!? ちょっ……えぇっ!?」


勇太「だってその時は丹生谷がこんなのだとは思わなかったし」


森夏「やっだもぅ~! こんなのとか言わないでよっ!」バシバシ


勇太「いたいいたい! 背中をすっごい笑顔で叩くな!」


森夏「にへへ~……」

43: 1 ◆smf.0Bn91U 2012/11/14(水) 00:26:55.56 ID:7K8WACxh0
森夏「あ~……でもまさかアンタもあたしに入れてるとはな~……さすがのあたしも気付かなかったわ~」


勇太「あの頃は同類だと思わなかったからな」


森夏「でも気付いてても入れたでしょ?」


勇太「さあ? どうだろうな」


森夏「もぅ~……照れちゃって照れちゃって」バシバシ


勇太「だから笑顔で背中を叩くなって! 嬉しいのは分かったから落ち着いてくれ」


森夏「嬉しい? いや~……別にそういう訳でもないのよ? いやでもな~……いや本当は嬉しいんだけど。でもなぁ~……」


勇太(うっわ、ちょっとウザい)


森夏「まさかこんなにモテるとはなぁ~……」


勇太「……っていうか、中学時代の丹生谷もモテただろ?」


森夏「は?」


勇太(うわ一気にトーンが下がったっ!!!)

44: 1 ◆smf.0Bn91U 2012/11/14(水) 00:28:46.49 ID:7K8WACxh0
森夏「そう……そうね…………この結果を聞いて、一つ学んだことがあたしにはあるわ」


勇太「と、いうと……?」


森夏「外見が良くても、言動や所作がアレだとモテないということがね……」


勇太(……モテなかったのか……っていうか、外見が良いって自分で言うんだな)


森夏「やっぱり、周りに気を遣えたり優しかったり、優等生だったりしてる方がモテるのね……」


勇太(発言に重みがあるな……)


凸守「さっきからなんの話をしてるのデスか?」


六花「勇太、わたしの話も聞いて欲しい」


勇太「いや、お前の話は聞かないけど……丹生谷の話をしてたんだよ」


凸守「偽モリサマーの?」


森夏「モリサマー言うなっ!」


勇太「コイツ、俺のクラスで男子が勝手にやってた人気投票で一位だったんだよ」


凸守「なん……だと……? まさか……この世界は狂っているとでも……!?」


森夏「失礼ねっ!」


凸守「マスター! 我々は気付かぬ間に、不可視境界線を越えて別世界へと来てしまっていたようなのDeath!!」

凸守「いえ! もしかしたら異世界人によって、この世界が書き換えられてしまったのかもデスっ!」


森夏「んな訳あるかっ!!」

45: 1 ◆smf.0Bn91U 2012/11/14(水) 00:30:00.41 ID:7K8WACxh0
六花「なるほど……例の一件か……」


勇太「ああ」


六花「……ちなみに、我の順位はいくつだったのだ?」


勇太「え? 気になるのか?」


六花「まさか。ただこの平凡な世界の中に身を置き、自らの力と身分を隠している成果を知りたいだけだ」

六花「上手く隠れていると分かれば、それだけ私の身分がバレていないということになり……ひいては、そのものを救うことにも繋がる」

六花「わたしのことを知っていればそれだけで狙ってくる組織が――」


勇太「ああ、はいはい。分かった分かった。ま、そんなに気になるなら明日にでも一色に聞いといてやるよ」


六花「よろしく頼む。それで、勇太は誰に入れた?」


勇太「……言わないとダメか?」


森夏「なんで言うの躊躇ってるの? さっきあたしに入れたって言ったじゃん」


勇太「っておい!? 俺のプライバシーはゼロなのかっ!?」


六花「なん……だと……?」

六花「やはり凸守の言うとおり……私達はいつの間にか異世界に……!」


勇太「いやいやいや、んなショックを受けるほどのことか?」


六花「まさか……まさかとは思うが……ゆ、勇太は……丹生谷のことが、その……好きなのか……?」


勇太「ぶっ!」


凸守「うわきたなっ!」

46: 1 ◆smf.0Bn91U 2012/11/14(水) 00:30:57.88 ID:7K8WACxh0
勇太「な、なんでそうなるんだよっ!!」


六花「だ、だって……」


勇太「ほら、なんていうか……そのアンケートをした時ってのが、入学して割りとすぐだったしな」

勇太「まだ部活も出来てなくて、お前とも親しくなかったし……その……仕方なかったんだよ!」


六花「じゃ、じゃあ……! い、今したら……?」


勇太「はぁっ!?」


六花「今、アンケートしたら……誰に、いれる……?」


勇太「だ、誰って……そりゃ……お前……」


六花「…………」


勇太「っ…………」





森夏「……なにこのラブコメ空間」


凸守「というか、そんなに重要な順位なのDeathか? たかが人気投票なのデスよね?」


森夏「ま、アンタは誰からも入れられなさそうだし、関係無いのは確かよね」


凸守「んなっ!?」

47: 1 ◆smf.0Bn91U 2012/11/14(水) 00:32:10.13 ID:7K8WACxh0
凸守「失礼なっ! そんなこと無いのDeath!!」

森夏「そんなことあるわよ。アンタガキっぽいし、何より中二病だしね」


凸守「ぐぬぬ……」

凸守「……ん……? ……いやですが、そもそもわたしは別に、この世界の男にモテる必要なんてないのでは……?」


森夏「はんっ。負け惜しみ?」


凸守「確かに偽モリサマー如きに負けるというのは癪デスが、そもそも勝負の内容的に負けても構わないものではないDeathか」

凸守「この世の男なんてみんな、所詮は力も持たない烏合の衆。そんなものに愛を囁かれたところで意味なんてないのDeath」

凸守「むしろ告白されたところで邪魔で面倒なだけではないデスか。異世界に行った時に戦う術を持たない男なんて、足手まといでしかないのDeath」


森夏「あんた……それマジで言ってんの……?」


凸守「当たり前デス。むしろ偽モリサマーのように不特定多数の男に好かれたいなんてビ  思考は持ち合わせたくなんてないのDeath」


森夏「ビ  !? 言うに事欠いてそれ!? っていうか意味知ってんのアンタ!?」


凸守「も、もちろんデェス。ほら、あの……男にメチャクチャ好かれたい女の人のことDeath」


森夏「……そうね……アンタは、そのまま純粋でいなさい」


凸守「な、なんですかその憐れむような目は! 失礼なのですっ!」

48: 1 ◆smf.0Bn91U 2012/11/14(水) 00:33:31.28 ID:7K8WACxh0
くみん「それでモリサマちゃんは――」


森夏「うわびっくりしたっ! いたのっ!?」


くみん「い、いたよ~……そりゃずっと寝てたけど……でも、モリサマちゃんが人気投票で一位だったって話は聞いてたよ?」


森夏「ほとんど全部じゃないっ!」


くみん「えへへ~……まあまあ良いじゃない。それでモリサマちゃんは、誰かと付き合うの?」


森夏「はあ? なんで?」


くみん「え? だってほとんどの男子に好きだって言われたんだよね……?」


凸守「……もしかして、半分寝ながら聞いていたのDeathか?」


くみん「そうだね~……今日は日差しがあったかいからぁ……」


森夏「っていうか、人気投票がどういうものかもイマイチ分かってないんじゃないの?」


くみん「えぇ~? そんなことないよ~。要は、好きな子を投票して・集計して・順位をつけることでしょ?」

くみん「それで一位になったんだから、ほとんど誰とでも付き合うことが出来るようなもの? だと思うの」

くみん「で、中二病から遠ざかりたいって言ってるモリサマちゃんなら、誰かと付き合うのが一番手っ取り早いって考えるかと思ったんだけど……」


森夏「…………」


くみん「あれあれ? 違ったかな??」


森夏「いや……まさかアンタがそこまで考えられる頭を持ってるとは思わなくて……」


くみん「ひ、ひどいよぉ~……」

49: 1 ◆smf.0Bn91U 2012/11/14(水) 00:35:28.40 ID:7K8WACxh0
森夏「でもそうか……確かに誰かと付き合ったら、それだけで中二病じゃなくなるわね」

森夏「いやむしろこれは対極に位置する『リア充』になれるということに……!」


森夏(……いやでもその前に……!)チラッ


凸守「? なんですか、偽モリサマー。もしかして、わたしとやろうというのですか……? それなら受けて立つDeathよ?」

凸守「この新しい構えを試すときが、ついにきたのデスね……!」


森夏(コイツから例のアレを全て没収しなければ……! でなければ……出来た彼氏にいずれ知られて、ドン引かれる……っ!!)


森夏「……そうね……そうよね……あたしはまだ、誰とも付き合えないわ」


くみん「? どうして?」


森夏「出来る彼氏に知られてはいけない秘密が出来てしまうからよ」


凸守「ふっ……そういえば偽モリサマー、クラス内では猫を被っているのでしたね」


森夏「それじゃないわよっ! ……いやそれもだけどっ! でもそういうのを受け入れてくれる人を選ぶわよっ!」


くみん「いるの? そんな人」


森夏「失礼ねっ! いるに決まって――……」




くみん「……いないんだ」


凸守「……いないのDeathね」




森夏「……――くっ! ほんっとうロクなのがいないっ! ウチのクラスの男子って!」

50: 1 ◆smf.0Bn91U 2012/11/14(水) 00:37:06.19 ID:7K8WACxh0
くみん「あれ? でも富樫くんも同じクラスだよね?」


森夏「はあ? アイツはパスよパス。あたしの趣味じゃないし」


くみん「それじゃあ、モリサマちゃんの趣味ってどんな人なの?」


森夏「どんなって……」

森夏(……あれ……? そういえばあたし、どんな男の人が好きなんだろ……?)


くみん「……もしかして、考えたことも無かった?」


森夏「…………そうね……そういえば、中学時代も今も、結局自分のことでいっぱいいっぱいで、他人のこととか考える余裕もなかったわ……」


凸守「それなら誰でも良いってことじゃないDeathか。やはりビ  Deathね」


くみん「で、デコちゃん!?」


凸守「? なんですか?」


くみん「そんな……ビ  だなんて……はしたないよ……」///


凸守「はあ? 男好きの女みたいな意味なんデスよね? 何もはしたなくはないのDeath」


くみん「…………そっか……」


凸守「なっ……! だからなんなのですかっ! その憐れみに染まる視線はっ!!」


くみん「デコちゃんは、そのまま純粋でいてね」


凸守「だから……! なんなのデスか~~~~~~~~~~~っっっ!!!」

51: 1 ◆smf.0Bn91U 2012/11/14(水) 00:40:02.85 ID:7K8WACxh0
凸守「もういいです! マスターに聞いてきますっ!」


――マスター! ――

――ビクビクッ! ――


森夏「あの空気に割り込めるなんて、相当図太いわね」


くみん「六花ちゃんも富樫くんもビックリしてるね」

くみん「……それで考えた結果、どんな男の子が良いのか分かった?」


森夏「……ひっぱるわね」


くみん「うん。だって気になるもん」


森夏「いつもみたいに寝てりゃいいのに……」


くみん「女の子は恋バナが何よりも好きなのです。きっとデコちゃんだってそうだし、モリサマちゃんもそうでしょ?」


森夏(……まあ、中二病だった頃もそういう話には興味あったけど……でもあの頃はなあ……)


森夏「……それじゃ、アンタはどういう人が良いの?」


くみん「おっ。今すごいガールズトークっぽい。楽しいねぇ」


森夏「そうやって誤魔化すならこの辺で」


くみん「ああ、うそうそ!」

くみん「わたしはね、一緒にお昼寝してくれる人だよ」


森夏「ふ~ん……ちなみに、髪型とかそういう見た目での好みとかってある?」


くみん「う~ん……それこそ考えたこと無いかな?」


森夏「そう」


くみん「どうして?」


森夏「別に。深い意味は無いわよ」

52: 1 ◆smf.0Bn91U 2012/11/14(水) 00:40:59.18 ID:7K8WACxh0
森夏(つまり、趣味を理解してくれる人ってことよね……)

森夏(……っていうか、あたしの場合もそういう人なら大丈夫なのよね

森夏(あの中坊から取り返さなくても、元中二病ってことを理解して受け入れてくれる人なら)

森夏(あとはまあ、素を曝け出せる人かな……? でないと、ずっと教室にいるみたいに優等生として振舞ってないといけないし。せめて彼氏の前でぐらいのんびりとしたい)

森夏(でもそんな男子は――)





――マスター! ビ  ってどういう意味なのDeathかっ!? ――

――んなっ!? ――

――び  ? それは新しい魔法の一種か? ――

――ほほぅ……どうやら、ダークフレイムマスターは知っている模様……――

――なに……? 勇太、教えて――

――いや、それは……――

――さあさあ、早く白状するのデス! ――

――む、ムリだって! 男にその言葉の意味を説明させるなっ! ――

――なに? 男が言うと石化してしまう呪いの言葉なのか? ――

――いやそうではないけども……でもちょっとそれは……! ――





森夏(――…………)


くみん「……へぇ~……」


森夏「っ!」ビクッ

53: 1 ◆smf.0Bn91U 2012/11/14(水) 00:42:13.84 ID:7K8WACxh0
くみん「ずっと富樫くん見て……もしかして――」


森夏「ち、ちがうちがう! ありえないありえないありえないぃ~!」


くにん「そう?」


森夏「そうなのっ!」


勇太「おい丹生谷、この二人を何とか……って、お前なんか、顔赤くないか?」


森夏「なっ……!」


勇太「どうかし――」


森夏「どうもしないっ!」


勇太「――た……ああ、そう。なら良いんだけど」


森夏「ちょっと用事思い出したから帰るっ!!」


勇太「お、おう。気をつけてな」


森夏「分かってるわよ!」


ガラ! バタンッ!


勇太「……何怒ってるんだ? アイツ」


くみん「んふふ……さぁ? 富樫くんが卑 なことを言わせようとしたからじゃない?」


勇太「ちょっ! くみん先輩!」


六花「さあ勇太。意味を教えて」


凸守「教えるのDeath」


勇太「ちょっ、お前らもしつこい! 先輩、助けてくれま――」


くみん「くぅ~……」スヤスヤ


勇太「――って寝てるぅっ!?」

54: 1 ◆smf.0Bn91U 2012/11/14(水) 00:43:14.11 ID:7K8WACxh0
森夏「ああもう……! ああもうああもうああもうっ!」


森夏(調子が狂うなぁ……もう! いつものんびりしてるクセに、なんでこういう時だけ鋭いのよあの人はっ!)


森夏(……それにしても……富樫くん、か……)


森夏「…………」


森夏(……いや、冷静になってみると全然ないな。うん)


森夏(どうしてあんなに焦ってたんだろ、あたし。……上手く乗せられてたのかな……? ホント)


森夏「……まあでも……」


森夏(もうちょっと……もうちょっとだけ、優しくしてやっても良い……のかな……?)





森夏(数少ない、同類なんだし)





終わり
 

69: 1 ◆smf.0Bn91U 2012/11/16(金) 09:29:20.42 ID:dxHjpcX/0
 


タイトル

森夏「けいおん?」

70: 1 ◆smf.0Bn91U 2012/11/16(金) 09:30:25.07 ID:dxHjpcX/0
森夏「なによ、このマンガ」


勇太「友達に借りたんだよ。マンガ全四巻と第一期? のブルーレイをな」


森夏「えっ? 一色くんってこんな趣味があったの?」


勇太「一色のじゃないよ」


森夏「……アンタ、こんなに女の子が書かれて恥ずかしいからって、いもしない友達でっち上げるのはどうかと思うわよ?」


勇太「いやいるよ!? なんで俺の友達が一色だけみたいな認識になってるの!?」


森夏「えっ……? あんたに、他の友達が……?」


勇太「傷つく! さすがの俺でもソレは傷つくよっ!」

71: 1 ◆smf.0Bn91U 2012/11/16(金) 09:31:18.59 ID:dxHjpcX/0
森夏「まあでも正直、マンガだけって言っても部室で広げるべきもんじゃないでしょ、コレ」


勇太「まあそうかもだけど、あまりにも勧めてくるから気になってな」

勇太「どうせ凸守もくみん先輩もいないし、アイツも職員室に呼び出されたから、ちょっと読んでみようと思ってな」


森夏「いやあたしがいるし」


勇太「今日はチア部の方に行くと思ったんだよ。そしたらやってきたから逆に驚いたぐらいだ」


森夏「ふ~ん……で、面白いの? 早速マンガの一巻をお読みになってる富樫くん?」


勇太「いや、まだ冒頭だし……なんか軽音部? を三人で作って、一人の女の子を勧誘してるところだし」


森夏「あ、そ。まあどうでも良いけどね」スッ


勇太(と言いつつ二巻を手に取る丹生谷様であった)

72: 1 ◆smf.0Bn91U 2012/11/16(金) 09:32:07.01 ID:dxHjpcX/0
森夏「…………」


勇太「…………」ペラ


森夏「……ねえ」


勇太「なんだ?」


森夏「ちょっとソッチを貸しなさい」


勇太「はあ? 俺今読んでんだけど」


森夏「か・し・な・さ・い」ゴゴゴゴ…!


勇太「……はい」スッ


森夏「ありがと。お礼に呪い殺さないでおいてあげるわ」スッ


勇太(マンガ一冊の貸し借りで呪われるかどうかの瀬戸際だったのか!?)


森夏「…………」ペラ…ペラ…


勇太(はあ……仕方ない。どうせ四コママンガだし、先に二巻から――)


森夏「…………」ペラ…ペラ…パラパラパラパラパラ…


勇太(――って読んでないっ!?)


森夏「……なあんだ、やっぱりか。ありがとう。返すわ」


勇太「な、なんだ? どうしたんだ?」


森夏「いやちょっとね」

73: 1 ◆smf.0Bn91U 2012/11/16(金) 09:33:52.73 ID:dxHjpcX/0
勇太「……なんだよ。気になるじゃないか」


森夏「ちょっと気になる子がいたから、もしかして一巻から出てるのかなぁって思って」

森夏「まあ冒頭のカラーページの段階でいないだろうなとは薄々思ってたんだけど、確認したくてね」


勇太「ああ……それってもしかして、中野梓ってキャラクターか?」


森夏「なんで分かるのよ。やっぱりアンタの……」


勇太「いやいやいや! コレを貸してくれたヤツがその子が一番のお気に入りだっていう話をしてたんだよ。二巻から出てくるって話もされたし、だからかなって思って」


森夏「ふ~ん……」ペラ…


勇太(あ、これもう集中してる状態だ……話かけないでおこう)

74: 1 ◆smf.0Bn91U 2012/11/16(金) 09:34:51.70 ID:dxHjpcX/0
~~~~~~

凸守「だーんだーんだーんだーんでんでん」

ガラッ

凸守「マスター!」


勇太「おっす。六花ならまだ来てないぞ」


凸守「おう、そうデスか。ダークフレイムマスター」


勇太「その名で呼ぶな」


凸守「それで、何を読んでいるのDeathか?」

凸守「ま……まさか……! ダークフレイムマスターが使役する、魔界に住みし獣を呼び出すための魔導書……!」


勇太「んなわけあるか。ただのマンガだよ」


凸守「ほうほう。凸守これでもマンガは結構詳しい方なのDeath」


勇太「けいおんっていうやつだけど、知ってるか?」


凸守「けいおん……? いえ、知らないDeathね」


勇太(だろうな。お前が知ってるマンガって確実に中二要素が入ってるやつだろうし)


凸守「それで、この偽モリサマーもそれを読んでいると」


勇太「ああ。さっきから夢中でな」


凸守「ほほう……なら、今は何をしても反撃されないと、そういうことデェスか」


勇太「……止めといた方が良いと思うぞ」

75: 1 ◆smf.0Bn91U 2012/11/16(金) 09:36:03.14 ID:dxHjpcX/0
凸守「止めるなデス! ダークフレイムマスターッ!」


パタン


森夏「ふぅ……」


凸守「ちぃっ……! ダークフレイムマスターが邪魔をするから、絶好の機会が失われてしまったのデス!」


森夏「…………」ジ~…


凸守「ん? なんですか、偽モリサマー」


森夏「……ねえ中坊。ちょっとお願いがあるんだけど」


凸守「はあ? 誰がお前のお願いなんて聞くもんDeathか。頭のネジでも外れたのではないのDeathか?」


森夏「ちょっとあたしのことを先輩って呼んでみてくれない?」


凸守「人の話を聞けデス! っていうかそんなの絶対にイヤデスッ! 誰がお前なんかを敬うDeathかっ!!」


森夏「え~? 良いじゃない。減るもんじゃない」


凸守「わたしの体内に現存する魔力が枯渇してしまうのです……今こうしてお前と話している間も、私は少しずつ魔力が――」


森夏「お願い! 一回! 一回で良いからっ!」


凸守「――ってだから人の話を聞けDeath!!」

76: 1 ◆smf.0Bn91U 2012/11/16(金) 09:37:31.34 ID:dxHjpcX/0
勇太「お前……そんなに気に入ったのか」


森夏「うん。だって梓ちゃん、とっても可愛いのよ~」


凸守「あずさ? だれDeathかそれは」


森夏「知らないの? あずにゃんよあずにゃん」


凸守「……ダークフレイムマスター。今日のコイツはおかしいのDeath」


勇太「知ってる。俺もそう思ってるところだ」

勇太「っていうか、なんで凸守なんだよ」


森夏「なんでもなにも、似てるじゃない」


勇太「そうなのか? 聞いた話だとコイツとはかけ離れてるキャラだと思うが……」


森夏「一年後輩で、ツインテール。ほら似てるじゃない」


勇太(え!? そこだけっ!?)


森夏「後は素直になってさえくれれば完璧なんだけどねぇ~……ま、さすがにそこまでは求めないわ」

森夏「だからお願い! 一度だけ! 一度だけ聞かせてっ!」


凸守「絶っ対に! イヤ、デスっ!」


森夏「なんでよっ! 一回ぐらい良いじゃない! 減らないんだしっ!」


凸守「減るとか減らないとかそういう問題じゃないのDeath! これは凸守のプライドの問題なのデスッ!」

77: 1 ◆smf.0Bn91U 2012/11/16(金) 09:38:42.63 ID:dxHjpcX/0
森夏「はんっ、あっそ。じゃあもう良いわよ。さってと、それじゃあ三巻三巻~♪」


勇太「おい、まだ読む気か?」


森夏「当然でしょ。どうせなんにもすることが無いんだし、このぶか――」


凸守「とぉりゃあぁっ!」


バシンッ!


森夏「――つぁいたいっ!!」


凸守「ふんっ、凸守ことをバカにしておいて、無傷で終えられると思っているのDeathか? その甘々な考え……死を招くのDeath!!」


森夏「こんの中坊! またその髪ぶつけてきやがって! そろそろバッサリ切断して唯ちゃんみたいにしてやろうか、あぁん!?」


勇太「丹生谷、さすがにその言葉遣いは女として超えてはいけない一線を越えてると思うぞ!」


凸守「やれるもんならやってみろDeath! 貴様なんて赤子の手を捻るように倒してやるのDeath!!」


森夏「言ったわねコイツ! 牛乳飲ませんぞこらっ!」


勇太「おいこれもうちょっと静かにしないと……」



ワーワーギャーギャー…!



勇太「……まあ、くみん先輩もいないし、別に困らないから良いか」

78: 1 ◆smf.0Bn91U 2012/11/16(金) 09:39:39.35 ID:dxHjpcX/0
~~~~~~

パタン

勇太「ふぅ……やっと一巻が終わったか。四コマって意外に時間がかかるもんだな……」

勇太「……んで――」



森夏「はぁ……はぁ……はぁ」


凸守「くっ……はあぁ……なんという……ちから……なの……デス……!」



勇太「――こっちもちょうど終わったか」


森夏「ちっ……! 全く、ここだとゆっくりマンガを読むことも出来ないの!?」


勇太「あきらめろ。凸守が来た時点でな」


森夏「やってらんないわね……ちょっと、残りのマンガと……あと借りたって言ってたブルーレイも貸しなさい」


勇太「はあ!? なんで!? 俺が借りたものなのにっ!?」


森夏「だってここじゃゆっくりと読めないでしょ。家で読むわ」


勇太「ならブルーレイはいらないだろ!?」


森夏「せっかくだからよ。良いじゃない。明日には絶対に返すから」


勇太「……又貸しってしたくないんだけどな……」


森夏「だったらあんたがこの中坊を大人してくれる?」


勇太「六花が来たら大人しく――」


森夏「なると思ってるの?」


勇太「――……んんんんんんんんんん~~~~~~~~~~~~~~~~~~……!!」

79: 1 ◆smf.0Bn91U 2012/11/16(金) 09:40:37.91 ID:dxHjpcX/0
勇太「……………………はあ……分かったよ」

勇太「ただし! 絶対に明日俺に返すこと。それと、汚さないこと。あと、明日お前自身がコイツ自身に借りたことを言うこと! これが最低条件な」


森夏「よっし! ありがと、富樫くん♪」


勇太「事後承諾とか本当に嫌いなんだけどな……」

勇太「ああ……俺はなんて悪いことをしてるんだ……」


森夏「気にしすぎなのよ、アンタは」


勇太「むしろお前はいい加減すぎると思う……」


森夏「そう?」


勇太「はあ……あ~……コレが俺の私物だったらこんなに罪悪感を抱くこともなかったのにな~……」ゴソゴソ

勇太「あぁ~……本当に良いのかなぁ……」スッ


森夏「はい。どうも~」スッ


凸守「…………」コソコソ


勇太「おい凸守!」


凸守「っ!」ビクッ


勇太「コソコソちょっかい出そうとするな! 万一傷がいったりしたら俺のせいになるんだぞ!?」


凸守「ちっ……! 仕方ないのDeathね。ダークフレイムマスターに免じて、ここは大人しくしておいてやるのDeath」

80: 1 ◆smf.0Bn91U 2012/11/16(金) 09:42:51.04 ID:dxHjpcX/0
森夏「さってと。借りるもん借りたし、今日はもう帰るわね」


凸守「ほぅ……逃げるのDeathか?」


森夏「そんなやっすい挑発には乗らないわよ。っていうか乗ってる場合じゃないの」

森夏「なんせさっさと家に帰って梓ちゃんを見ないといけないもんね~♪」


凸守「きもっ!」


森夏「なんとでも言うが良いわ。それじゃあ二人とも、おっさき~」


ガラ


六花「邪王心眼の使い手、ただいま……参上っ!」バーン!


森夏「おっと」


六花「決まった……! ……ん? 丹生谷はもう帰るのか?」


森夏「うん。ちょっと用事が出来たの。だから先に帰るわ」ナデナデ


六花「? ? ? ……………………っ!?」


森夏「それじゃあバイバイ。また明日ね~」タッタッタッタッ…


六花「あ、ああ……また明日……」


パタン


六花「…………丹生谷はどうしたんだ? 他の魂でも憑依させていたのか? 一瞬頭を撫でられていることに気付かなかった」


勇太「ちょっと……いやかなり上機嫌だっただけだよ」

81: 1 ◆smf.0Bn91U 2012/11/16(金) 09:43:42.75 ID:dxHjpcX/0
六花「む……勇太、何を読んでいる。まさかまた異世界へと向かうための記述を見つけたのか?」


勇太「ちげぇよ。ただのマンガだ」


六花「マンガ……けいおん?」


勇太「ああ。知ってるか?」


六花「知らない」


勇太「本当は四巻まで持ってたんだけどなぁ……三巻から先は丹生谷に持って行かれちまった」


凸守「本当に面白いのDeathか? これは」


六花「これは勇太のものなのか?」


勇太「いや、借り物だけど?」


六花「ならば一色の趣味か。正直意外だ」


勇太「…………」


六花「? どうした?」


勇太「いや……ただ、一色じゃなくて、他の友達のだよ。それは」


六花「え……? 何を言ってるの? 勇太。他に友達は――」


勇太「だからいるよっ!? どうして丹生谷もお前もそう俺の友達=一色のみの認識なの!?」


六花「――……なるほど……異世界の友人、か……」


勇太「クラスの友人だよっ!」


凸守「…………」


勇太「……っていうか、お前もさり気なく面白そうに読むのな」

82: 1 ◆smf.0Bn91U 2012/11/16(金) 09:45:05.92 ID:dxHjpcX/0
~~~~~~

翌日

極東魔術昼寝結社の夏

~~~~~~

森夏「はい。これ」スッ


勇太「おお、ちゃんと約束通りだな」スッ


森夏「当たり前よ。帰ってから速攻で見たわ。で、このアニメって続編とかないの? マンガの途中までしか無かったんだけど」


勇太「ああ……なんでも、第二期があるとか」

勇太「コレを貸してくれたやつは『二クールによる引き伸ばしのせいで見る気が失せた』とか『そもそも原作から入ってるとあのスローペースはいただけない』とか言って買ってないみたいだけどな」


森夏「え~……!? なによそれ~」


勇太「いや俺に言われてもな……っていうかそれぐらい自分で調べろよ」


森夏「仕方ないでしょ。何回も見直してたら時間なくなってたんだし。寝たのなんてもうほとんど朝よ」


勇太「お前どんだけハマってんだよっ! 寝る時間まで削るな!」


森夏「仕方ないでしょ。だって面白かったんだもん」

森夏「でもそうか……二期はあるのに望めないのか……」


勇太「……そもそもお前、昨日の俺との約束は守ったのか?」


森夏「約束って?」


勇太「本人に自分から事後承諾を取るって話だよっ!」


森夏「ああ~……」

83: 1 ◆smf.0Bn91U 2012/11/16(金) 09:45:56.09 ID:dxHjpcX/0
森夏「って言ってもあたし、よくよく思い出したら誰に借りたのかアンタから聞いてないんだけど」


勇太「あ~~~~~! しまったっ!」


森夏「だから改めて誰か教えてよ。ちゃんとお礼言いに行くから」


勇太「はぁ……そうだな……。……くっそ~……なんて初歩的ミスだ」


森夏「ま、今日は金曜日だから、月曜日になるけどね」


勇太「だな……」


森夏「んじゃそういうことで。今日はもう帰るわね」


勇太「え? もう? くみん先輩も凸守もまだ来てないんだぞ?」


森夏「なんのためにあの子を置いてまでさっさと部室に来たと思ってるのよ」

森夏「他のやつ等来て面倒なことにならないうちに、ソレを渡したかったからよ」


勇太「はあ……で、なんでそんなに慌てて帰るんだ?」


森夏「レンタルショップに寄るからよ」


勇太「なんでま――って、まさか……」


森夏「そ。けいおんの第二期を借りて帰るのよ」


勇太(コイツマジでどれだけハマってるんだ!?)

84: 1 ◆smf.0Bn91U 2012/11/16(金) 09:46:54.56 ID:dxHjpcX/0
~~~~~~

森夏の家

~~~~~~~

森夏「さて、と……」

森夏(ありがたいことに全巻あったし、返しても後悔しないぐらい何回も見ようかな)

森夏(て言っても、さすがに今からすぐにとはいかないから、真夜中にぶっ通してになるかな……家の手伝いもあるし)

森夏(ふふふ……待ってなさい。あたしの梓ちゃん♪)

85: 1 ◆smf.0Bn91U 2012/11/16(金) 09:47:51.22 ID:dxHjpcX/0
~~~~~~

森夏(あ~……確かにちょっと引き伸ばしが酷いかもなぁ……まあブルーレイで見てたら気にならないけど)

~~~~~~

森夏(いや、っていうかコレは割りと必要じゃない? みんなそれぞれの繋がりが強調されるって言うか……)

~~~~~~

森夏(うわヤバイ……このまま文化祭の話しいくと絶対に泣く……なんでこんな感情移入させるのが巧いのよ……!)

~~~~~~

森夏「うっ、うぅ……」

森夏(あ~……マジで感動する。最後部室で泣かせるなんて、コッチだって泣くに決まってるじゃない……)

森夏(梓ちゃんだって一人になる不安の中頑張って……ライブ成功させて……)

~~~~~~

森夏(もうそろそろ卒業か……結構早かったな……ってもうそろそろ朝!? いつの間にっ!?)

森夏(……いやでも……もうちょっとで最終回だし……このまま……)

~~~~~~

森夏「うぅぅ……うううぅぅぅ……!」グスグス

森夏(なによコレ卑怯じゃない……! マンガでアレだけ感動したんだから当然じゃない……こんな演出止めてよね本当にもう……!)

~~~~~~

森夏「あ~……落ち着いた……」

森夏(やっぱ一気に見ると感動が違うわ……名作ねコレは)

森夏「……少し寝たら、もう一回通しで見よう」

86: 1 ◆smf.0Bn91U 2012/11/16(金) 09:48:41.10 ID:dxHjpcX/0
~~~~~~

そんなこんなで、週明け

教室

~~~~~~

森夏「あ~……」


勇太「おはよう、丹生谷」


六花「おはよう」


森夏「ん~……おはよう」


勇太「どうした? 顔色悪いぞ」


森夏「ちょっとけいおんを見すぎてね……ほとんど寝てないのよ……」


勇太「……よくそれで学校に来れたな」


森夏「アニメ見すぎて休みたいなんてどこのバカなのよ。あたしは頑張るわよ」


六花「私はよくやりそうになる」


勇太「十花さんも大変だな……」

勇太「ま、ムリはするなよ。倒れそうになったらすぐ保健室に行くんだぞ」


森夏「アンタに言われるまでもないわよ……」


勇太「いやお前の場合絶対無茶するだろ」


森夏「そんなことないわよ……」


勇太「本当かなぁ……」

87: 1 ◆smf.0Bn91U 2012/11/16(金) 09:49:42.07 ID:dxHjpcX/0
~~~~~~

放課後

~~~~~~

森夏「ダメ……もう限界……」フラ…フラ…


勇太「お前……マジですごいな」


森夏「あぁん? なにがよ」


勇太「そんなフラフラなのに、よく授業中寝なかったな」


森夏「ぁったりまえでしょ。んなことしたらなんのために学校来てイヤイヤ授業受けてるのかわかんなくなるじゃない」


六花「……少し、呂律が回っていない」


勇太「今日はもうそのまま帰るだろ?」


森夏「ううん……部活行く」


勇太「チア部にか!?」


森夏「それはさすがにムリ……だから、アンタたちの方」


六花「丹生谷、ムリはよくない」


勇太「そうだぞ。それに、そこまで無理をしてなにがあるっていうんだ」


森夏「……今日は、なんとなくいけそうな気がするのよ」


勇太「なにが?」


森夏「あの中坊に先輩って呼んでもらうのがよ」


勇太「まだ諦めてなかったのか!? っていうかそれこそ明日で良いだろ!?」


森夏「ダメよ……あたしの中にあるあずにゃん熱が、今日呼んでもらいたいと叫んでるのよ……!」

88: 1 ◆smf.0Bn91U 2012/11/16(金) 09:51:11.85 ID:dxHjpcX/0
勇太「……ダメだこりゃ」


六花「勇太……さすがに、丹生谷が心配」


勇太「ん~……とはいえ、無理して帰らせるのも難しそうだしな……仕方ない。部室で少し寝てもらうか」


六花「そうか! くみんの枕を借りるのか」


勇太「そういうこと。で、凸守にはこちらから頼む」

勇太「それで呼んでもらって、さっさと帰らせて、ちゃんと眠ってもらおう」


六花「分かった。それじゃあ凸守のところに行ってくる」


勇太「ああ、頼む。俺は途中で倒れないよう、丹生谷に付き添うよ」


六花「……いやちょっと待て、勇太」


勇太「あん? どうした?」


六花「ここは役割を逆転させよう」


勇太「どうして?」


六花「どうしてもだ」


勇太「…………」


六花「…………」


勇太「……まあ、良いけど」


六花「よしっ。では凸守を頼む。わたしは丹生谷に付き添おう」


勇太「はいよ」

勇太(俺が丹生谷と噂されるかもしれないってのを気にしたのか……? ……いやまさかな)

89: 1 ◆smf.0Bn91U 2012/11/16(金) 09:52:10.24 ID:dxHjpcX/0
~~~~~~

凸守「てーってっててーてっててーててててー」


勇太「お、いた」


凸守「おぉ! ダークフレイムマスター! わざわざお迎えDeathか?」


勇太「その名を廊下で呼ぶなっ! ……んまぁ、部室に来てくれてる途中で人気も無いからまだマシだけど……」


凸守「それで、どうしたのDeathか?」


勇太「実は、お前に頼みがあってな」


凸守「なんDeathか?」


勇太「部室に行ったら、丹生谷のことを先輩――」


凸守「イヤなのデスッ!」


勇太「――って、即答!?」


凸守「その話は偽モリサマー本人としている現場にあなたもいたはずDeath。そして言ったはずDeathよ? これはわたしのプライドの問題だと」


勇太「いやそうなんだが……そこをなんとか! お願いっ!」


凸守「いくら頼まれたってイヤデス! どうしてもと言うのなら……わたしを倒してみろDeath!!」


勇太(くそっ……! これは面倒なことになったぞ……)

90: 1 ◆smf.0Bn91U 2012/11/16(金) 09:53:13.95 ID:dxHjpcX/0
勇太(さすがに学校であんなこと(妄想バトル)するわけにもいかないし……っていうか丹生谷のために自己犠牲とか勘弁だし……)

勇太(どうすれば……どうすれば良い……?)


凸守「さあ……どうするのDeathか?」


勇太(……というか、丹生谷の調子が悪いからってここまでする必要ってない気もするな……)

勇太(ちょっと寝かしてそのまま本人が凸守と話せば良いんじゃ……?)


勇太「……そうだよな……」


勇太(なんか辛そうな丹生谷を見て叶えてやろうとか考えたけど……冷静になったらアレは自業自得な寝不足だもんな……)

勇太(俺が頑張ることもないか)


凸守「なにが、そうなのDeathか?」


勇太「いや、イヤがってるのを無理にさせることはないと思ってな」


凸守「ほぅ……ダークフレイムマスターともあろう者が、凸守から逃げる、と……?」


勇太「だからその名で呼ぶな。っていうかお前はバトりたいのか……」

勇太「……まあいいか。ほら、部室に行くぞ」

91: 1 ◆smf.0Bn91U 2012/11/16(金) 09:54:36.05 ID:dxHjpcX/0
~~~~~~

極東魔術昼寝結社の夏

~~~~~~

ガラッ

くみん「あ、デコちゃん」


六花「よく来たな、凸守」


凸守「ふっふっふ……凸守早苗……すいぃぃぃぃぃぃぃっ……さんっ!」ザッ!

凸守「ふっ……決まったのデェス……!」


勇太「入り口で格好付けるなっ。後がつかえるだろ?」


くみん「富樫くんも。いらっしゃい」


勇太「どうも」


森夏「…………」スゥ~…スゥ~…


凸守「おや? 偽モリサマーはおねむDeathか?」


勇太「ああ。ちょっと寝不足らしくてな」


六花「……ゆうた」


勇太「ん?」

92: 1 ◆smf.0Bn91U 2012/11/16(金) 09:55:13.64 ID:dxHjpcX/0
六花「凸守には頼めたのか?」


勇太「いや、断られた」


六花「そうか……」


勇太「っていうか、冷静になったら俺達が頑張ることもないかもなぁ、って思ってさ。アレはただの自業自得だろ?」


六花「……しかしそれなら、丹生谷は早くウチに帰した方が良いかもしれない」


勇太「なんで?」


六花「付き添っていて気付いたが、現在あの身体は火炎の魔獣に支配されている」

六花「早々に離体の儀を行わなければ、魔獣をウチに秘めた身体が負荷に耐え切れなくなる」


凸守「おや? 偽モリサマー、もしかして……」


勇太「……どういうことだ?」


六花「端的にいうと、風邪をひいている」


勇太「はぁっ!?」

93: 1 ◆smf.0Bn91U 2012/11/16(金) 09:56:56.10 ID:dxHjpcX/0
くみん「それも結構酷いよ? たぶん、寝不足な身体で無茶し過ぎたからじゃないかな?」


勇太「それじゃあ早く帰さないと……! いや、もう先生に頼んで親御さんを呼んでもらうか……?」


くみん「あ、まだそこまでは酷くないの。ただこのまま部室で寝かせてると酷くなるってだけで……」


勇太「それじゃあ早く帰した方が良いですね……とりあえず、保健室で冷やすものもらって来ます」

勇太「それで今日はもう、みんなで丹生谷に付き添って、家に帰しましょう」


くみん「それがいいね」


六花「分かった」


凸守「…………」


勇太「そういうことだ、凸守――って、お前この状況で何かイタズラを――!?」


凸守「…………」


勇太「――……いや、ごめん。……その、そんなに心配することもないからな……?」


凸守「は、はぁっ!? 心配なんてしてないのDeath!! この隙にどんなことをしてやろうか考えていただけなのデスッ!!!」

凸守「落書きなんて安直なもの以外に何かないかを考えていただけDeath!!」


勇太「……ははっ。そうかい」


凸守「ちょっ、なんでそんな微笑ましそうな顔をするのDeathかっ!?」


勇太「いやいや、そんなそんな」

勇太「それじゃあ俺、保健室行って来ますね」


凸守「ちょっと! 答えてから行くのDeath!! ダークフレイムマスター!!」


ガラ

パタン

94: 1 ◆smf.0Bn91U 2012/11/16(金) 09:57:47.11 ID:dxHjpcX/0
凸守「全く……」

凸守「…………」

凸守「……お前もですよ、偽モリサマー」スッ

凸守「倒れてまでこんなところに来て……バカDeathね」

凸守「呆れ果ててしまうのDeath」

凸守「さすが、モリサマーの偽者Deathね。情けない」

凸守「周りに心配なんて、かけさせるなDeath」

凸守「…………」

凸守「早く、元気になってください。……その……」





凸守「丹生谷……せんぱい」ボソッ










森夏「…………ありがとう」

95: 1 ◆smf.0Bn91U 2012/11/16(金) 09:58:56.09 ID:dxHjpcX/0
凸守「なっ……! なっ、なっ……! なななななっ……!」カ~!///


森夏「呼んでくれて……嬉しい……」


凸守「なっ、なんなんですかコレは~~~~~~~~~~~!!!!!!」


くみん「ああ~、デコちゃん落ち着いてっ」


六花「ただの寝言だ。丹生谷はまだ寝ている」


凸守「いいえ謀ったのデス! たばかったのデスッ!! きっとコイツはしんどそうなフリをして、わたしに先輩と呼ばせたのDeath!!!」


ドンッ!


森夏「いたいっ!」


凸守「せ、精神攻撃にもほどがあるのDeath!! すごく顔が熱いのDeath!!! この辺一体の気温を上げてくるなんともいやらしいわざなのDeath!!!!!」


森夏「あ、足が~~~~!!! 足が痛い!! 足首にすごい鈍痛がっ!!」ゴロゴロゴロ…!


凸守「ふんっ! 凸守を騙すからこういうことになるのDeath!!」


森夏「なんの話よっ! グーで足首を叩き付けたヤツがなんて言い訳してんのよっ!!」


くみん「あぁ、モリサマちゃんもそんなに熱くなっちゃダメだよ。まだそんなに酷くないけど熱が――」


森夏「んなものないっ!!」


六花「いや、本当に叫び過ぎない方が良い。封印術で落ち着かせていた体内の魔獣が再び暴れ――」


森夏「わけわかんないこと言うなっ!」


六花「ひぅっ……! にぶたに……こわい……」

96: 1 ◆smf.0Bn91U 2012/11/16(金) 10:00:35.21 ID:dxHjpcX/0
森夏「だいたい! このバカ中坊が悪いのよ! 足首痛めたらどうすんのよっ! えぇっ!?」


凸守「なにを怒ってるのDeathかっ!! 怒りたいのはコッチなのDeath!!」

凸守「なんて精神攻撃をしてくるのDeathかっ!! サイアクデスっ!! まだ顔が熱いのデスッ!!」


森夏「なぁにが精神攻撃よっ! 意味わかんないこと言わないでよこの偽あずにゃん!!」


凸守「だ、誰が誰の偽者ですかっ! どう考えてもそのあずにゃんの方がわたしの偽者なのDeath!!」


ガラッ


勇太「……えぇ~っと……」


ワーワーギャーギャー…!


勇太「……どういう状況だ、これ……?」


六花「ゆうたぁ……にぶたにがこわい……」


勇太「いったいなにがあったんだ?」


六花「……ちわ喧嘩が勃発した……」


勇太「……そうか……」



ワーワーギャーギャー!!



勇太「……まあ、落ち着いたら帰しますか」


くみん「そうだねぇ~。二人とも仲良しさんだし、モリサマちゃんもデコちゃんと一緒の方が元気だし、それが良いんじゃない?」


勇太「ですね……」





凸守「絶対先輩なんて呼んでやらないのデスッ! この偽モリサマー!!」

森夏「そんなのこっちから願い下げよっ!! このバカ中坊!!」





終わり

103: 1 ◆smf.0Bn91U 2012/11/17(土) 00:40:32.56 ID:Q5LBMbB00
 
勇太「早苗」 凸守「っ!?」

104: 1 ◆smf.0Bn91U 2012/11/17(土) 00:41:17.58 ID:Q5LBMbB00
凸守「い、いきなりどうしたDeathか……?」

勇太「いや、凸守の下の名前って早苗って言うんだな」

凸守「な、なるほど……そういうことDeathか」

勇太「……ふむ……可愛いな」

凸守「んなっ!?」

105: 1 ◆smf.0Bn91U 2012/11/17(土) 00:42:04.60 ID:Q5LBMbB00
凸守「ど、どうしたDeathか!? ダークフレイムマスター!」


勇太「いや、どうもしないが……可愛いだろ――」


凸守「な、ななな……っ!」///


勇太「――名前が」


凸守「ってソッチですかっ!?」

106: 1 ◆smf.0Bn91U 2012/11/17(土) 00:42:50.44 ID:Q5LBMbB00
勇太「なんだよ。あ、もしかして勘違いしたのか?」


凸守「ふ、ふん! そんなことないのDeath! 最初から分かってましたよ?」

凸守「まあデスが、わたし自身を可愛いと言っても間違いではないのDeathがね?」


勇太「確かにそうだな。改めて見るまでもなく凸守自身も可愛い」


凸守「んなっ!?」

107: 1 ◆smf.0Bn91U 2012/11/17(土) 00:43:27.44 ID:Q5LBMbB00
凸守「ほ、本当にどうしたDeathか? 今日はやけに褒めてくるのDeathね……?」


勇太「ん……まあいつも思ってても言えない事ぐらい、今日は言っても良いかなって思ってさ」


凸守「日頃から……!?」

凸守「さ、さてはお前! ダークフレイムマスターの偽者Deathね!?」


勇太「いや、本物だぞ」

勇太「凸守が好きで仕方がない、俺そのものだ」


凸守「す、好きっ!?」///

108: 1 ◆smf.0Bn91U 2012/11/17(土) 00:44:01.11 ID:Q5LBMbB00
勇太「ん? なんかおかしなこと言ったか……?」


凸守「な、なんて天然ジゴロのようなことを言ってくるのDeathか……き、気持ちが悪いのですっ!」


勇太「え~? でも凸守は可愛いだろ? なあ丹生谷」


森夏「そうね」


凸守「んなっ!?」

109: 1 ◆smf.0Bn91U 2012/11/17(土) 00:44:59.72 ID:Q5LBMbB00
凸守「に、偽モリサマーまで何を言ってるのDeathか!? 正気デスかっ!?


森夏「正気に決まってるでしょ、デコちゃん」


凸守「デ、デコ……!? お前、そんな呼び方したことないじゃないDeathかっ!!」


森夏「そう? じゃあこれからそう呼ぶわ」


凸守「や、止めろDeath!! 気持ちが悪いのDeath!!」


森夏「そう……じゃあ止めるわ」シュン


凸守「あ……」




















森夏「嫌われたくないし……これからは、早苗って呼ぶねっ♪」


凸守「お前いつからそんなキャラになったDeathかっ!?」

110: 1 ◆smf.0Bn91U 2012/11/17(土) 00:47:13.58 ID:Q5LBMbB00
六花「仕方がない、凸守」


凸守「ま、マスター……!」

凸守「た、助けてくださいデスッ! こいつらかなりおかしいのDeath!!」


六花「だって凸守……超可愛いから」bグッ


凸守「マスターまでどうしたDeathか!?」


六花「どうもしない。感情が抑えられなくなっただけ」

六花「それに凸守は褒められなれていないだけ……」

六花「凸守……いや早苗は、天使のように可愛いという事実を皆が言っているだけだというのに、焦り過ぎ」


凸守「んなっ!?」

111: 1 ◆smf.0Bn91U 2012/11/17(土) 00:48:10.44 ID:Q5LBMbB00
凸守「て、天使って……! わ、わたしはマスターのサーヴァントDeath! 天使なんて真逆の存在に追いやらないで欲しいのデスッ!!」


六花「ならば悪魔で可愛いのを探さなければいけないな……」


凸守「凸守は凸守なのDeath!! そうした安直なものに例えられたくないのDeath!!」


六花「ふむ……スキュラとかどうだろうか?」


凸守「マスター!? 話を聞いて欲しいのデスッ!」


勇太「ちなみにスキュラってこんなのな」携帯電話つ no title



凸守「見せられても考えは変わらな――…………――いや、これは中々……ありかもDeathね」


六花「気にいってもらえて何よりだ」

112: 1 ◆smf.0Bn91U 2012/11/17(土) 00:49:15.11 ID:Q5LBMbB00
くみん「でもデコちゃんを何か別のものに例えるのは私も反対だな~」


凸守「おぉ! さすが、話が分かる人は分かるのDeath!!」

凸守「最早この場唯一の良心なのデスッ!!」


くみん「デコちゃんはこの世のものの最上級……例えることの出来ない存在」

くみん「早苗ちゃんは、もはや凸守早苗という一最上級固体なんだよっ!」ドヤッ


凸守「ドヤ顔でなんてことを言ってるのDeathかっ!? っていうかあなたもキャラが違いすぎデスっ!!」


くみん「だって……さなちゃんが私を狂わせるんだもん……」///


凸守「んなっ!?」

113: 1 ◆smf.0Bn91U 2012/11/17(土) 00:49:56.32 ID:Q5LBMbB00
凸守「みんな……みんなおかしいのDeath!! これはきっと異世界からの侵略……! 何者かによる精神攻撃……!! マスターすらも篭絡させる存在を……凸守は、倒せるのか……!?」


勇太「そういうところも可愛いなぁ、早苗は」


凸守「んなっ!?」


森夏「中二発言で照れを誤魔化してるところが最高よね」


凸守「んななっ!?」


六花「大丈夫だ、早苗。わたし達は何もおかしくはない。凸守が可愛い過ぎるのがいけないんだ」


凸守「んなななっ!?」


くみん「強いて挙げればぁ……おかしくさせてるのは、さなちゃんのその可愛さだよ♪」


凸守「ひいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃーーーーーーーーーーーー……!!」

114: 1 ◆smf.0Bn91U 2012/11/17(土) 00:50:34.08 ID:Q5LBMbB00
凸守「こ、怖いのDeath!! なんなんですかお前達はっ!?」


勇太「なに、って言われても……なあ?」


森夏「ねえ?」


凸守「……はっ! まさかコレは……夢? 夢オチDeathかっ!?」


六花「夢らしいけれど……」


くみん「さなちゃんの可愛さは、夢にまで出てきそうだし、間違いじゃないよ~」


凸守「そうじゃないのDeath!! いえ、むしろ夢でなければみんながこの凸守の強さに恐れをなして、集団で驚かせようとしているのデスッ!! ドッキリなのDeath!!」


勇太「ドッキリか……」


森夏「そうじゃないわよね?」

115: 1 ◆smf.0Bn91U 2012/11/17(土) 00:51:22.14 ID:Q5LBMbB00
六花「少し、冷静になって考えて欲しい、Myサーヴァント・凸守=スキュラ=早苗」


凸守「……妙なミドルネームが気になるDeathが……一応はマスターの言葉です。怪しいですが一応聞いてやるデス」


六花「ありがとう。なら訊ねるが、そもそもドッキリだというのなら、アレだけ敵対していた丹生谷が協力してくれると思うのか?」


凸守「む……それは、その……わたしを陥れるためなら、その偽者はなんだってするのDeath!!」


六花「なるほど……確かにそれは一理ある。なら、勇太やわたしや丹生谷はそれで良い。しかし、くみんはどうなる?」


凸守「っ……」


六花「彼女は嘘でそういうことは言わない。わたし達がドッキリとして嘘を吐いていようとも、くみんだけは本音を話しているということになる」

六花「そう……早苗が天使だという事実をっ!!」


凸守「くっ……! なら、これは夢なのDeath!! わたしを混乱させるものなのデスッ!!」

116: 1 ◆smf.0Bn91U 2012/11/17(土) 00:52:50.01 ID:Q5LBMbB00
くみん「本当にそうだと思う?」


凸守「……どういうことデスか?」


くみん「これだけのことがあって、全部夢オチだなんて……今時ありえるのかな……?」

くみん「むしろそうなると、どこからが夢でどこからが現実なのかな……?」


くみん「いつもさなちゃんが見ているもの全ても夢だったかもしれない」

くみん「いつもさなちゃんが見せていたあらゆるものも夢だったかもしれない」


くみん「わたしたちとの出会いも」


くみん「何もかもが夢だったかもしれない」


くみん「夢オチを考えるということは……あらゆる全てに夢の可能性があるということを考えないといけない」


くみん「妄想の中で生きてきたあなたに……その覚悟があるの……?」


凸守「っ……」



凸守「…………」






凸守「……………………」






凸守「…………………………………………ん?」


凸守「って、お前がそんな難しいことを言うはずがないのデスッ!!」

117: 1 ◆smf.0Bn91U 2012/11/17(土) 00:55:10.52 ID:Q5LBMbB00
凸守「ふっふっふ……ボロを出したのDeathね。今の言葉で間違いなく、ここは夢の世界だと認識しました」

凸守「そういう小難しいことは、そこの偽ダークフレイムマスターに言わせておけば良いのデス」

凸守「いや……むしろ夢を形成しているわたしの本能が、この違和感だけは気付けと、本能に訴えかけてきたのかもしれないのDeathね……」


くみん「だったら、頭を打ち付けたら、目が覚めるよね?」


凸守「当然っ! ……なのDeathかね? ただ痛くないだけで、目は覚めないかもしれないのデス」


勇太「なら試すか」


森夏「はいこれ」スッ


凸守「……どうして都合よくパールのようなものがあるのDeathか?」


六花「だってここは夢の中」


くみん「望んだものは、出て来るんだよ?」


凸守「なるほど……もう夢だと開き直ったのDeathね」


勇太「果たしてそうかな……? これは、お前がそういう結論に至った場合に用意しておいた物かもしれないぞ?」


森夏「そしてあえてそれを告げることで、さらに夢だと確信させるようとしているのかもしれない」


六花「あらゆることが疑いに支配されている」


くみん「この言葉も、追い詰める全ても、あなたを殴打させるためのものかもしれない」










「それでもあなたは、その棒で自分を叩ける?」

118: 1 ◆smf.0Bn91U 2012/11/17(土) 00:56:44.62 ID:Q5LBMbB00
凸守「…………」ゴクッ


凸守「……ふん……当然なのDeath!!」


凸守「なんせわたしは……ミョルニルハンマーの使い手、凸守早苗」


凸守「殴打属性の武器を使わせて……右に出る者はいないっ! 百戦錬磨の……サーヴァントなのデスッ!!」ブンッ!





凸守(これは夢じゃないかもしれない……)

凸守(もし夢でなければ……わたしは自分で自分を殴ることになる……)

凸守(それは……とっても怖い……)


凸守(でも……夢だったら)


凸守(わたしは……皆さんのことが大好きだという、証明になるのDeath)

凸守(好きで好きで、好き過ぎて……楽し過ぎて……夢であったらどうしようという不安が、こんなものを見せていた……)

凸守(それだけ……楽しんでいるということ……今を……!)


凸守(だから……わたしは……! 今までの生活が夢でないという、証明のために――)

凸守(――自分で自分に……夢じゃないと、教え込むために――)





凸守「――己を……叩くのデスッ!!」





ガンッ…!

119: 1 ◆smf.0Bn91U 2012/11/17(土) 00:58:41.00 ID:Q5LBMbB00
勇太「起きろ……起きろ凸守」


凸守「……ん……」


勇太「やっと起きたか。もう下校時刻だぞ」


森夏「珍しいわね。アンタがはしゃがず部室で寝続けてるなんて


六花「凸守……疲れていたのか? 大丈夫か?」


くみん「寝心地は良かった? わたしが貸した枕」


凸守「…………」

凸守「……ふむ……」


勇太「ん? どうし――」


凸守「…………――」スゥ~…










凸守「――やっぱり! 夢オチかよっ! なの、デェェェェェェェェェェェェェェェェェッス!!!」





四人「っ!?」





終わり

引用元: 凸守「偽モリサマーを怒らせてしまったデス…」