1 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/07/16(水) 22:24:56.49 ID:hGfwl+9l0.net
「やぁ、キョン。偶然じゃないか」
ある日の帰り道のことである。ハルヒと2人で帰宅していたら懐かしい顔に出会った。
顔を合わせるのは中学を卒業して以来なので、かれこれ1年振りくらいか。
だというのに、佐々木は相も変わらず涼しい微笑みを浮かべている。俺と佐々木はいつもこんな感じだ。
年月なんか関係なく、会えば昨日も顔を合わせたかのような距離感。近すぎず、かといってよそよそしいわけではない。
俺と佐々木の絶妙な距離感がそこにあった。
2 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/07/16(水) 22:27:51.89 ID:hGfwl+9l0.net
「元気そうでなによりだ」
「それはお互い様だよ、キョン。それより、そちらの見目麗しい女性は紹介してもらえないのかな?」
そう言われて隣のハルヒに目をやる。いつもは喧しいのに、何故か妙な表情で黙りこくっている。
普段からこれくらい大人しいとありがたいんだがね。それはさておき。
「ああ、クラスメイトの涼宮だ」
「そうかい。涼宮さん、キョンのことよろしくね」
柔らかい表情の佐々木。そういえば同性相手にはそんな顔するんだったな。
別に俺といる時に仏頂面であるとかそういうわけではないのだが、どちらかと言うと悪戯っぽい表情をすることのほうが多い。
だからといってどうというわけでもないが。
3 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/07/16(水) 22:30:47.17 ID:hGfwl+9l0.net
「まぁ、積もる話もあるけど、時間がある時にゆっくり話そう」
「そうだな。夜買ったら今度家に遊びに来いよ。妹も喜ぶだろうしな」
「是非ともそうさせてもらうよ」
じゃあ、またと佐々木と別れた。別れ際に例のごとく悪戯っぽい笑みを浮かべ、
「楽しそうで何よりだよ」
くつくつと喉を鳴らしていた。一体全体なんのことやらさっぱりである。
「ねぇ、どういう関係なのよ」
5 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/07/16(水) 22:35:28.92 ID:hGfwl+9l0.net
佐々木の姿が見えなくなってからようやくハルヒが口を開いた。
俺と佐々木の関係ねぇ……。やはり、1番しっくりくる言葉としては『親友』でなかろうか。
「ふーん……」
質問に答えたというのに、ハルヒの表情は一向に晴れない。晴れないどころか、ますます釈然としないものになっていく。
ハルヒのことなので、その心情は推し量ることは出来ないが、どうも納得しているようではなかった。
「今からキョンの家に行くから!」
「はぁ?」
ハルヒからの思わぬ宣言に驚いて立ち止まる。
何がどうなってそうなった。
6 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/07/16(水) 22:37:46.38 ID:hGfwl+9l0.net
「さっき観たい番組があるからさっさと帰るとか言ってなかったか?」
「うるさいわね!行くったら行くの!録画してあるから問題ないわ」
むきーっと言い放つハルヒ。ハルヒがいいなら別に構わないのだが。俺の家に来たところで面白いものなど何もないと思うのだがね。
「ほら、さっさと歩く!」
時間は有限なんだからと、ハルヒはずんずん歩いていく。軽く嘆息してその背中を追いかけた。
さてさて、家までやってきたハルヒなのだが、あれだけ張り切っていたにも関わらず、俺の部屋でごろごろしている。
やはり、ハルヒの考えていることはさっぱりである。
7 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/07/16(水) 22:40:18.50 ID:hGfwl+9l0.net
「佐々木さんもキョンの部屋に来たことあるの?」
「ん?ああ、何度かな」
中学受験の際に、俺に勉強を教えるために何度か訪れたはずだ。
まぁ、俺が勉強をしている横で妹と遊んでいたり、哲学地味た会話を繰り広げただけなのだが。
「……ずるい」
何がだ?
「知らない」
ハルヒは答えずに、枕に顔を埋めて足をばたばたしている。
健康的な御身足が見え隠れしていささか扇情的である。
「スカート捲れるぞ」
俺の忠告を無視して尚も足をばたつかせる。まったくなんだってんだ。
8 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/07/16(水) 22:44:05.53 ID:hGfwl+9l0.net
「こっち来なさいよ」
足を止めたハルヒが、枕から少し顔を上げてこちらをじとーっ睨みつける。
そんな風に睨まれたところで躊躇してしまう。普段、寝起きしている我がベットとはいえ、
流石に「はいそうですか」というわけにはいかないのである。
「いいから!」
更なる催促。これ以上機嫌をそこねると、どこぞのニヤケ面した超能力者が過労死する可能性が上昇してしまう。
「へいへい」
腹を括る。いや、別にそんな大層なものではないとは思うのだがね。せめてもの抵抗とベットの端にちょこんと腰掛けた。
「えい!」
ハルヒに引き倒される。いやいや、ちょっと待て。
12 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/07/16(水) 22:47:33.20 ID:hGfwl+9l0.net
「うるさい。黙ってて」
非難の声をあげようとするも黙殺される。哀れな俺はハルヒの抱き枕と化すのであった。
力一杯抱きしめられる。そんなに強くしなくても逃げ出しはしない……たぶん。
「なんかもやもやするのよ」
ハルヒにもふもふと匂いを嗅がれる。気恥ずかしい気持ちでいっぱいだが、俺の鼻腔もハルヒの匂いで満たされていく。
「しばらくはこのまんまよ」
「さいですか」
そんなわけで、ハルヒの心行くまで俺は抱き枕に徹するのであった。
13 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/07/16(水) 22:50:06.77 ID:hGfwl+9l0.net
終わり
21 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/07/16(水) 22:55:55.36 ID:hGfwl+9l0.net
「キョン、あたしって可愛い?」
それは突然のことであった。今日も今日とて団活に勤しむために、SOS団の部室を訪れた俺に対しての第一声がこれである。
全く脳みその処理が間に合わず、とりあえず扉をそっと閉める。
「ちょっと! 何フェードアウトしてんのよ!」
ギャーギャーと騒ぎ出したハルヒに頭痛を覚えつつ、俺は再び扉を開けた。
「やかましい。いきなり変な質問をされる身にもなってみろ」
22 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/07/16(水) 22:58:08.13 ID:hGfwl+9l0.net
嘆息しながらいつもの席へ。ここ最近何事もなく平穏な日々が続いていたのは、やはり嵐の前の静けさだったというわけか。
とりあえず、不幸中の幸いなのは、今の馬鹿げた問いを他の連中に聞かれなかったということである。
長門は関心をあまり示さないだろうが、古泉はおそらくにやにやと生暖かい視線を送ってくるだろう。
ここ最近気づいたというか、気づかされたというか、それは朝比奈さんも同じである。
というか、朝比奈さんには強く出れないので、古泉よりもたちが悪いように思える。
この前、不思議探索で二人っきりになった時のことである。急に神妙な顔をし、こんなことを尋ねてきた。
「ねぇねぇ、キョンくん。涼宮さんとはどうですか?」
「どう、とは?」
「涼宮さんとは付き合っているんじゃないんですか?」
思わず俺はその場に立ち止まり、朝比奈さんの御尊顔をしげしげと眺めることとなった。
きっと間抜けな顔だったろうな恥ずかしくなる。
23 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/07/16(水) 23:00:59.15 ID:hGfwl+9l0.net
「いやいや、そんな事実はいっさいありません」
「本当ですか? 最近、涼宮さんとキョンくんが二人っきりでいることが多いから勘違いしちゃいました」
「勘違いもなにも、俺とハルヒはそんなんじゃないですよ」
恋愛は精神病とまで豪語しているハルヒが、そんな愉快な感情を俺に対して抱いているとは思えませんがね。
どういった考察でそのような結果に行き着くのか、甚だ疑問である。
「乙女の感です」
そういってウインクされ、はぐらかされたような気がしないでもないが、朝比奈さんが可愛らしいので問題など無い。
こんな可愛いらしいウインクをされて、文句があるやつがいたら説教をされても、それこそ文句などないだろう。
谷口辺りなら泣き出して拝むくらいの可愛さだぞ。
24 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/07/16(水) 23:02:42.17 ID:hGfwl+9l0.net
「それで、実際のところはどうなんですか?」
普段あまり見ない、いたずらっ子のような表情を朝比奈さんは浮かべ、根ほり葉ほり俺に尋問を開始したのだった。
さてさて、現在。俺とハルヒの間には妙な空気が流れている。重苦しいとは言えないが、何とも気まずい。
「で、どうなのよ?」
何がだ?
「はぐらかすな、馬鹿。あたしは可愛いかどうかって話よ」
誤魔化そうとしたのが気に入らなかっのか、ハルヒはむっとした表情で口を尖らしている。
25 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/07/16(水) 23:05:20.59 ID:hGfwl+9l0.net
「一体全体、どういう意図でその質問をしているのかわからないんだが……」
「みくるちゃんって可愛いわよね」
ふむ、と肯定。小一時間ぐらいその可愛さについて語るぐらいのことはできる。
「みくるちゃんに変なことしたらねじ切るわよ」
「何を!?」
身の危険を感じるので自重する。いや、別に今まで朝比奈さんに何かしたことがあるというわけではない。
「有希も可愛いわよね?」
長門は何というか、朝比奈さんとは違った可愛さがある。
朝比奈さんは、その柔らかな微笑みと、甲斐甲斐しく身の回りの世話をしてくれる健気さを兼ね備えた、
天使ような可愛さである。一方、長門はというと、儚げで、誰かがそばに居てやらないといけないような、
父性を感じさせる可愛さだ。
27 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/07/16(水) 23:07:47.76 ID:hGfwl+9l0.net
「……エロキョン」
ボソッと呟き、ハルヒがジトっとした視線を送ってくる。
質問に答えただけだというのに、そんなことを言われるのに遺憾の意を示したい。
「で、あたしはどうなのよ」
これは何て拷問だ? 何故俺は本人を目の前にして、そんなこっぱずかしいことを言わなきゃならんのだ。
誰かしらの陰謀やら悪意やらを疑ってしまいそうだ。
「あー……まぁ、その、可愛いんじゃないか?」
「具体的には?」
一体これは何の罰ゲームだ。今のだけでも充分に恥ずかしい思いはしたというのに、ハルヒは追い討ちなんてものをかけてきた。
出来ることならこのままにげだしたいのだが、そんなことでもしてみろ。特大の閉鎖空間が発生するのは受け合いである。
そもそも、ハルヒから逃げ切れる自信がない。
28 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/07/16(水) 23:10:30.99 ID:hGfwl+9l0.net
「その、だな。なんというか……」
あー、暑い。もう本格的な冬だというのに真夏のような暑さを感じる。主に顔面が、だ。
「……その笑顔とか、傍若無人なところとか?」
あとは、ポニーテールがよく似合う。
「ふーん。あんたって本当にポニーテールが好きね。ポニーテールにしてあげよっか?」
ハルヒがニヤリと不敵に笑う。一年の四月にバッサリと切ってから一年と半年ちょっと。
ハルヒ髪は随分と伸び、いつぞやのポニーテールとは言えないようなちょんまげもどきの時とは違い、
ポニーテールらしいポニーテールが作れそうである。
「おいおい、俺は何も言ってないだろうが」
「あんたのその間抜けな顔に好きですって書いてあるわよ」
思わず頬に手をあてる。ハルヒがほらねとニヤニヤした笑みを浮かべた。
心を見透かされたようで少し癪なのと、図星だっということもあり気恥ずかしく感じる。
29 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/07/16(水) 23:11:43.32 ID:hGfwl+9l0.net
「……はい、出来あがり!」
そうこうしているうちにポニーテールの完成。これがまた見事に似合っている。
「どう、可愛い?」
肯定。
「じゃあ、好きになった?」
質問の意味も意図もわからず混乱する頭で、ハルヒの言葉を反芻する。誰が誰を好きになっただって?
「キョンが、あたしのこと」
カラスがカーカーと鳴く声だけが虚しく響く。
「もしキョンがあたしのことを好きになるんだったら、毎日ポニーテールにしてあげるわよ」
大変魅力的な条件である。さてさて、どうしたもんかね……。
30 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/07/16(水) 23:13:23.09 ID:hGfwl+9l0.net
帰り道のことである。ひょこひょことポニーテールを揺らしながら、ハルヒは俺の前を歩いている。
俺の手を握り締め、どんどん前に進んでいく。我ながらひねくれた考えだとは思うが、こうやってハルヒに引っ張られることは嫌いじゃない。
「キョンのこと捕まえた!」
急にハルヒは俺のほうに振り返り、そう宣言した。
俺は苦笑いを浮かべ、少しだけ強くハルヒのその手を握り返すのであった。
31 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/07/16(水) 23:14:33.62 ID:hGfwl+9l0.net
終わり
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