1: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/10/13(月) 18:08:10.27 ID:kBh1Fl6n0
本の匂い。

私が物心ついた時から嗅いでるこの匂い。

その匂いを嗅ぐと、私はどんな時でも落ち着くことができた。

大好きな匂い。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1413191280

2: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/10/13(月) 18:10:10.20 ID:kBh1Fl6n0
テストの前も。

体育大会の前も。

その匂いを嗅ぐだけで安心できた。


でも、今は違う。

その匂いを嗅ぐと、私の胸はまるで私の物では無いように早鐘を打つ。


あの人今日もいるのかな。
そう考えてしまうから。

3: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/10/13(月) 18:11:40.90 ID:kBh1Fl6n0
最初はただ一言お礼が言いたくて。


『本取ってくれてありがとうございます』ってそれだけを言いたくて。

でもあなたが好きな本が私の好きな本で。
あなたのその本を読む仕草がたまらなく魅力的で。

だからかな。


私の恋愛小説にプロローグが書きこまれたのは。

4: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/10/13(月) 18:12:38.82 ID:kBh1Fl6n0

予約してた本は返ってきてるかな。

新しい本はどんなのが入ってきてるかな。

そんなことしか考えてなかったのに。

遠目でその背中を見つける。
早鐘はいっそう早く打ちつける。

あっ、その本。私が前借りてたやつだ。

話しかけてみようかな、なんて。
出来もしない妄想話を頭の中で膨らます。

5: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/10/13(月) 18:14:08.38 ID:kBh1Fl6n0
『ゆっくり、ゆっくりと私は彼に近づいていく。一歩踏み出すごとに…』

出来の悪いモノローグが頭に書かれる。

話しかける勇気なんて、これっぽっちも無いのに。

6: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/10/13(月) 18:14:57.44 ID:kBh1Fl6n0
あぁ。

願わくばあなたがその貸し出しカードの『七尾百合子』の名前に気づいてくれますように。

私の恋愛小説がプロローグから一つでも章が移りますように。

今はただそれが私の精一杯だから。

引用元: 【ミリマスSS】百合子「恋愛小説のプロローグ」