1 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/09/29(月) 06:17:19.39 ID:dJDL++E90.net[1/18]
およそ遠しとされしもの
下等で奇怪
見慣れた動植物とはまるで違うと思しきもの達
それら異形の一群を、人は古くから畏れを含み

いつしか総じて「蟲」と呼んだ。


ギンコ(頼まれて街まで来たはいいが……ちと早くき過ぎたかね)

ギンコ(昼飯もまだだし食堂でも入るか)ガラッ

ギンコ「すいやせん、アジフライ定食を一つ」

おばちゃん「はいよ、少し待ってておくんな」

2 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/09/29(月) 06:18:38.02 ID:dJDL++E90.net[2/18]
ギンコ「ごっそさん。お勘定」

おばちゃん「お粗末様でした」

ギンコ「ああ、それと田中たかしという男の家はどこにあるか聞きたいんだが」

おばちゃん「田中さん家かい? 家を出て左に歩いていけばあるよ、ここらで一番大きな家だからすぐわかると思うよ」

ギンコ「そうですか、有難うございます」

おばちゃん「アンタたかし君の知り合いかい? 行っても無駄だと思うよ~」

ギンコ「確か引きこもり、だとか」

おばちゃん「そうそう、ここ数年ずっと引きこもりっぱなしでね。昔は元気な子だったのに、どうしちゃったんだろうねぇ。皆心配してるよ」

ギンコ「…………」

3 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/09/29(月) 06:19:42.12 ID:dJDL++E90.net[3/18]
ギンコ「ここか……。すいやせん、蟲師のギンコという者ですが」コンコン

J( 'д`)し「はい……お待ちしていました」ガチャ

ギンコ「田中たかし君のお母さんですね。とりあえずたかし君の様子を見せてください」

J( 'д`)し「それが絶対に人を入れようとしなくて、母親である私ですら入れてもらえないんですよ」

ギンコ「典型的な引きこもりですな。会話は?」

J( 'д`)し「いえ、こちらから話しかけてはいるんですが、たかしの方は怒鳴ったり食事の時間に床を叩くくらいで……」

ギンコ「……家族じゃない人間だからこそ話をしてくれるかもしれない。部屋まで案内してください」

J( 'д`)し「お願いします……」

7 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/09/29(月) 06:22:00.27 ID:dJDL++E90.net[4/18]
('A`)「クソワロタ……っと」カタカタ

ギンコ「蟲師のギンコという者だ、ドアを開けてはくれないか?」

('A`)「……あ?」カタカタ

ギンコ「おーい!!! お前の母親に頼まれて来たんだ、開けてくれ!」

J( 'д`)し「たかしお願い! 開けて頂戴!」

(`Д)(チッ……)

(#`Д)「おいババァ! 勝手な事頼んでじゃねェよ!!」

J( 'д`)し「たかし……」

ギンコ「仕方ない……少し荒っぽいが無理やり開けよう」

ギンコ「確か持ってきたハズだ……よし」ガチャガチャ

10 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/09/29(月) 06:23:50.59 ID:dJDL++E90.net[5/18]
J( 'д`)し「それは?」

ギンコ「これは開かないドアを開ける為に蟲師が使うバールというものでね、こうやってこじ開ければッ」バキッ

ギンコ「開くって寸法だ。やぁ、たかし」

J( 'д`)し「たかし……久しぶりに見たわ」

('A`)「ヒィッ」

ギンコ「こいつは酷い。アニメのポスターだらけの部屋にイカの匂いが立ち込めてやがる」

('A`)「……でてけよ」

ギンコ「そうもいかなくてね、邪魔させてもらう」

(#`Д)「出てけよッッ!!! オラァッ」

ギンコ「ッと」バキィ

('A`)「……ッ」ピクピク

11 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/09/29(月) 06:24:54.45 ID:dJDL++E90.net[6/18]
J( 'д`)し「ギンコさん何を!?」

ギンコ「このバールで少し眠らせたのさ。ほっといたら暴走しかねないからな」

J( 'д`)し「そのバールというのは便利ね」

ギンコ「それより、こいつはちと厄介ですぜ」

J( 'д`)し「……」

ギンコ「おそらくこれは嗤蟲(しこ)という蟲の仕業だ」

J( 'д`)し「しこ?」

ギンコ「誰かが自分の事を嘲笑しているような鳴き声を出す蟲だ。通常嗤蟲はおしゃれな街やスターバックスにしか現れないんだが、時々こうやって心の弱い人間の周りに集まる事があるんだ」

13 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/09/29(月) 06:26:32.65 ID:dJDL++E90.net[7/18]
J( 'д`)し「はぁ……それでどうにかなるんですか?」

ギンコ「蟲自体は部屋にいるだけだから簡単に追い出せるんだが、こいつに植え付けられた恐怖感は時間をかけて治すしかない」

ギンコ「特にたかしは年単位引きこもっているからかなり根深いものとなっているだろう。こういう場合は蟲が居なくなっても声が聞こえてくる感覚に陥る事がある」

J( 'д`)し「そうですか、具体的に何をすれば」

ギンコ「無理をしない程度に外に出て、出来るだけ多くの人と接することですな。幸運な事にここらの人たちはたかしを心配している、治すにはいい環境だ」

J( 'д`)し「有難うございました」

ギンコ「くれぐれも無理はしない事だ。逆に悪化する事もあるからな」

15 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/09/29(月) 06:27:57.44 ID:dJDL++E90.net[8/18]
――二か月後

ギンコ「どうも。その後どうなりました?」

J( 'д`)し「ギンコさん、おかげで少しずつよくなってます。最近じゃ近所の公園で子供たちと触れ合ったりしています。大人とはまだ会話出来ないんですけど、子供なら大丈夫みたいで」

ギンコ「……ほう、そいつは治り始めている兆候だ。今はどこに?」

J( 'д`)し「公園にいますよ」

ギンコ「そうですかい、ちょっと様子を見てきます」ガチャ

ギンコ(おかしい……あの引きこもりが二か月程度で外で遊ぶほどに回復しているはずがない)

ギンコ(ッ! そういえばあの部屋のポスタ―はすべて幼女キャラばかり!)

ギンコ「クソッ! 最悪だっ!!!」ダッ

16 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/09/29(月) 06:29:51.57 ID:dJDL++E90.net[9/18]
ギンコ「……この公園か」ハァハァ

('A`)「お嬢ちゃん、今日もお兄ちゃんとお医者さんごっこしようねぇ~」

幼女「うん!」

ギンコ「やめろたか――」

(^ω^)「じゃあお洋服脱ぎ脱ぎしましょうねぇ」

警官「お、おいそこの! 何をしている!?」

('A`)「え?」

ギンコ「遅かったか!」

18 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/09/29(月) 06:31:27.87 ID:dJDL++E90.net[10/18]
ギンコ(見た目も症状も嗤蟲によく似ている『事案蝶』……。寄生した人間の活力を食い、なくなりかけたところで活力の強い若い人間に寄生するため性行為をさせる)

ギンコ(まさか嗤蟲に交じっていたとは……)







J( 'д`)し「たかしが警察に……どうすればいいんですかギンコさん! なにか方法は!」

ギンコ「ないねぇ……残念ながら」

おわり