15 :名無しで叶える物語(黒酢)@\(^o^)/:2014/11/15(土) 00:33:14.01 ID:VSO6uaUY.net[1/31]
絵里「でもね凛、日本じゃ同性婚は認められてないのよ」

凛「そうなのかにゃ?凛、かよちんと結婚したいなあ」

花陽「り、凛ちゃん//」

希「お、惚気やなあ。エリチ、邪魔せんようにいつものとこ、いこか」

絵里「ええ、またパフェ食べるの?…もう、しょうがないわね」

希「あそこの抹茶パフェおいしいんよ。ほな二人とも、またね!」

18 :名無しで叶える物語(黒酢)@\(^o^)/:2014/11/15(土) 00:52:15.64 ID:VSO6uaUY.net[2/31]
いつものとこ。というのはウチがみつけた路地裏に小さく佇んでいる喫茶店である

店名もまたおもしろいことに「隠れ家」なのである。

隠れ家。と聞くと隠れた名店を連想してしまうだろう。

実際に隠れ家というだけあってメニューの質は上等だ。

店内の壁には味にうるさい芸能人のサイン色紙が飾られているくらいだ

希「いつも付き合ってくれてありがとなー」

絵里「いいのよ。私だってあそこのロシアンコーヒー、好きなんだから」

それにしてもよく見つけたわね。と絵里。
カードが教えてくれたんよ。冗談で返す。ホンマは冗談じゃないのかもだけど。

21 :名無しで叶える物語(黒酢)@\(^o^)/:2014/11/15(土) 01:11:19.58 ID:VSO6uaUY.net[3/31]
希「うーん!やっぱここのはおいしいわあ」

抹茶独特の深みと濃厚に、まろやかに醸し出している。
口の中に入れた瞬間、ふわりとやさしい味わいが舌で咲いている
一度口にしたら誰もが虜になると断言できるほどだ。

絵里「いつもおいしそうに食べるわね。」

エリチはいつものロシアンコーヒーを飲む。

希「ウチの得意分野やで!はい、エリチにも。あーん」

スプーンの上に抹茶がちょこんとついた白玉を乗せ、差し出してみる

絵里「え、いいわよ私は。それに、ほら…」

希「いいからいいから。あーん」

半ば強制的に口元に持っていくと、観念したのか
口を開いてくれた

絵里「ングング…おいしい」

ハラショー。と言わなかった。残念

23 :名無しで叶える物語(黒酢)@\(^o^)/:2014/11/15(土) 01:33:03.72 ID:VSO6uaUY.net[4/31]
希「そうやろ?ここの白玉、エリチのほっぺみたいにぷにぷにやん」

絵里「もう、希ったら…お返しにこれ、飲んでみる…?」

希「お、それじゃいただきます」

飲んだ感想。
甘い。甘い。甘い。甘い。
舌が、食道が、胃が、脳が。
甘いと叫んでいる。阿鼻叫喚。

そういえばロシアンコーヒーってチョコにココアにミルク。さらに砂糖。
とどめと言わんばかりにホイップクリームが上に乗っているんだっけ。
そしてエリチの手元にはガムシロップ。

希「……」

絵里「どう?希」

希「お、おいしいわあ。甘くてお花畑がみえてきたわあ」

食レポ芸人ならうまいこというんだろうけど、残念ながらウチはその道は外れたほうがよさそうだ
無論食レポ芸人なんてなる気はないのだが…

絵里「甘くておいしいわよね!また今度行くとき、飲みましょ!」

希「そ、そうやな」

しばらくこのお店には隠れてほしいと願うウチであった

26 :名無しで叶える物語(黒酢)@\(^o^)/:2014/11/15(土) 01:54:50.64 ID:VSO6uaUY.net[6/31]
口の中に陣を構える甘い兵隊を抹茶の渋みと深みで抗戦させ、ようやく撃退した為、

ウチの中で行われた関ヶ原ならぬ東條中(とうじょうなか)の戦いは幕を閉じた

会計を済ませ、しばしの別れとなるお店を出る。

時刻は午後18時。通りから路地裏に差し込まれる光は橙色だった

商店街へ出る。子供を連れて買い物をする母親。会社帰りのサラリーマン。
魚屋の辺りをうろつく野良猫。いつもと変わらぬ光景だ

絵里「さ、帰りましょうか」

希「うん…今日はありがとなー。ほなまた…明日。」

絵里「ええ、また明日」

手を振り、だんだん沈む夕陽に吸い込まれていくエリチを見送る。
それが少しさみしくて、ウチの気持ちも沈んでいった

3月。もう時間は僅かしか残されていなかった

27 :名無しで叶える物語(黒酢)@\(^o^)/:2014/11/15(土) 02:01:42.14 ID:VSO6uaUY.net[7/31]
家の前に着き、鍵を開け、扉をあけるとまず最初にすることってなんやと思う?

電気をつけることや

一人暮らしでなければ。或いは親が夜遅くまで働いているならば。
こんなことはしなくていいんだけど。

この電気をつける行為。どれだけ悲しいものか学生で理解できる人はほとんどいないだろう

独り…か。

28 :名無しで叶える物語(黒酢)@\(^o^)/:2014/11/15(土) 02:18:43.47 ID:VSO6uaUY.net[8/31]
さて時刻は午後18時10分

絵里「さ、帰りましょうか」

希「うん…今日はありがとなー。ほなまた…明日。」

絵里「ええ、また明日」

希が手を振って見送っているのが背後からでもわかる。しかし振り向けない理由があった

私の顔…赤くなってないわよね・・・?

もし赤くなってたら振り向けないじゃない!

まったく希ったら…よく考えたらあれ、間接キスじゃない!

他のお客さんはいなかったけど…マスターはいるわけだし、人前であんな…

絵里「いつから意識しはじめたんだろう。希のこと――」

36 :名無しで叶える物語(黒酢)@\(^o^)/:2014/11/15(土) 11:54:55.93 ID:VSO6uaUY.net[10/31]
私は独りだった

別に独りが嫌ではなかったし他の子のように群れる行為があまり好きではなかった

上辺だけの関係。友達の陰口。

私はそういうめんどうな事はまっぴらごめんだ。誰も信じられない。

それなら独りの方が気が楽であり、自分自身を保つことができる

だから私は他人に対しては冷たくしていた。自分の世界に入り込む隙など与えないように

凍てついた世界。私の心はそんな感じだった

その世界を真正面から壊してくれた人がいた。

東條希。私の初めての親友。そして――



絵里「初恋の人」

40 :名無しで叶える物語(黒酢)@\(^o^)/:2014/11/15(土) 12:50:02.22 ID:VSO6uaUY.net[11/31]
3年生の3学期の一大イベント。といえば卒業式。もそうなのだがもう一つある。
学校に行かなくてもいい日。というか1週間に6日も休みなのだ。
最後の青春を謳歌する生徒たちで町は溢れかえっていた

希「おっはよーエリチ」

ウチらも例外ではなかった。にこっちはお察しの通り、地獄の補習をしていた

絵里「おはよう希。早速行きましょうか」

希「うん!」

41 :名無しで叶える物語(黒酢)@\(^o^)/:2014/11/15(土) 13:16:37.10 ID:VSO6uaUY.net[12/31]
――

「卒業旅行よ!」

現在3年3人しかいない部室で突然そう言ったのは
μ'sのオチ担当、もとい部長でありカワイイ担当のにこっちだった

絵里「どうしたのよ突然」

にこ「ほら、にこ達ってμ'sばっかでその…あんまり皆で遊びに行くことってなかったじゃない」

卒業したら会う機会も減るんだし。と付け加える。

希「確かになあ。それで、卒業旅行に?」

にこ「うん。ダメかな‥‥?」

珍しい。にこっちはこういうことは自分から言い出さないのに。

絵里「いいわね。卒業旅行というよりお別れ会みたいな感じだけどね。」

希「勿論ウチも賛成やで。」

にこ「そこで、どこに行くかなんだけど…」

44 :名無しで叶える物語(黒酢)@\(^o^)/:2014/11/15(土) 13:41:06.34 ID:VSO6uaUY.net[13/31]
そのあと、μ'sにお別れ会のことを告げると全員喜んで、今度の土曜日を空けてくれた

そして今日、下見に行くことになったウチ達。

絵里「まったくにこったら3人で行き先決めて皆をあっと驚かせるような所に行こうって言い出したのに…」

希「補習…やね。にこっちも勉強すればできる子なのに…」

鬼教師の補習に捕囚されている。がんばれ、にこっち

絵里「とりあえず私たちで行きましょう」

希「そうやね。じゃ、電車に乗ろっか」

46 :名無しで叶える物語(黒酢)@\(^o^)/:2014/11/15(土) 14:00:35.72 ID:VSO6uaUY.net[14/31]
電車はブレーキの余韻を残して停車し、
大きなため息をついたかと思うと扉が開いた

朝の早い時間のため、座る席は勿論なかった

エリチが吊り革をつかむ。ウチの分は…ないなあ

こけないようにふんばるしかないなあ
と思った矢先、目の前に手が差し出された

絵里「ほら希、私の手に掴まって。」

希「う、うん。ありがとな」

掴まったその手は冷たかったが何故か体は熱くなっていく

ガタンゴトン
いつもはうるさく感じていたその音さえも気にならないくらい
自分の心が激しく脈打っていた

51 :名無しで叶える物語(黒酢)@\(^o^)/:2014/11/15(土) 15:25:45.87 ID:VSO6uaUY.net[15/31]
目的地に近い、少し寂れた駅で降りた。

絵里「あー疲れたわね。」

伸びをして疲れをほぐすエリチ。その姿はバレエのフィニッシュポーズのようだった

希「きれい…」

思わず声にでてしまった

絵里「何か言った?」

希「う、ううん!なんでもないんよ」

そう。というエリチは心なしか顔が薄紅に染まっていた。

52 :名無しで叶える物語(黒酢)@\(^o^)/:2014/11/15(土) 15:38:18.74 ID:VSO6uaUY.net[16/31]
駅から15分程歩き、目的地がみえてくる

目に映り込む景色は桃色の世界だった

エリチから感嘆の声が漏れる。

桜、といえば入学式や4月のものと思うだろう。

しかし今年は暖かい日が続き、桜も早めのお目覚めとなったわけだ。

満開。とまではいかない7分咲きといったところだろうか。

それでも、人を感動させるには十分な景色だった

現にエリチは進めていた足が石になったようにその場から動けないでいた

53 :名無しで叶える物語(黒酢)@\(^o^)/:2014/11/15(土) 15:52:49.53 ID:VSO6uaUY.net[17/31]
希「――チ―エリチ!」

ハッと我に返る。
完璧と言えるその景色に魅了されてしまっていたようだ

絵里「ごめんね希。すっかり魅了されてしまっていたわ」

希「希「んもぅエリチったら。まだついてないんやから、驚くのははやいで」

希が促したところで再び目的地へ進む。

希の後姿は今の景色に溶け込んでいた。



さらに進んで10分。ようやく桜が頭上で舞っている頃には再び石化されていた私だった

57 :名無しで叶える物語(黒酢)@\(^o^)/:2014/11/15(土) 16:43:16.93 ID:VSO6uaUY.net[18/31]
ここでええかなーとシートを広げる希。

どうやら昼食のようだ

四角いちょっと大きなバスケット。

それを開けると中には色とりどりのサンドウィッチが並べられていた。

希が朝早くから作ってくれたらしい

希「どうぞ、召し上がれ」

絵里「ありがとう希。いただきます」

カツサンドを口に運ぶ。

しっとりしたパンの優しい舌触りの後にくる食欲を掻き立てる甘辛いソースが舌を包む

衣はできたてのようにサクッとしていてお肉とソースが絡んで絶妙な味を演出する

その味の演奏にハラショーとつい声にだしてしまった

希「もう、エリチったら。おもろいなあ」

希が顔を赤くして微笑む。その晴れやかな微笑みはまるで女神のようだった

絵里「だっておいしいんだもの。希はいいお嫁さんになりそうね」

途端に表情が曇った。気がする。

希「そう…かな。えへへ」


59 :名無しで叶える物語(黒酢)@\(^o^)/:2014/11/15(土) 16:51:05.22 ID:VSO6uaUY.net[20/31]
希「ウ、ウチがエリチのお嫁さんになってもええんよ?」

希がいつものように茶化してくる。

絵里「もう、希ったら。からかわないでよ」

希「えへへ…」

…?ちょっと違和感を覚えるのは気のせいだろうか

ウチは本気やでーとかまた笑いながら言うと思ったのだが。

とりあえず食を進めることにした

絵里「これもいただくわ!」

希「う、うん。たんと食べてな。今日はエリチのために作ったんやから」

60 :名無しで叶える物語(黒酢)@\(^o^)/:2014/11/15(土) 17:07:03.41 ID:VSO6uaUY.net[21/31]
絵里「ごちそうさまでした」

希「お粗末様でした」

サンドウィッチが入っていたバスケットはすっかり空になってしまった

絵里「おいしかったわ。ありがとう」

希「ええんよ。」

それより、と希が立ち上がる。

希「ちょっと散歩しよか」

63 :名無しで叶える物語(黒酢)@\(^o^)/:2014/11/15(土) 17:28:54.32 ID:VSO6uaUY.net[22/31]
歩く、という行為は気を紛らわすことができる。

さらには前を歩くことによって顔を見られずに済むという利点がある。

ウチは今泣きそうな顔、してないやろか。あのまま座っていたらきっと…

64 :名無しで叶える物語(黒酢)@\(^o^)/:2014/11/15(土) 17:35:40.68 ID:VSO6uaUY.net[23/31]
――

絵里「ねえ、希」

希「んん?なあに?」

背後から尋ねる絵里に振り向かないまま希が答える

絵里「私ね、希が手を差し伸べてくるまでずっと独りだった。」

希「……」

絵里「誰も近づかなかった、近づけさせなかったのにあなたは私の中に来てくれた」

ありがとう

65 :名無しで叶える物語(黒酢)@\(^o^)/:2014/11/15(土) 17:39:32.78 ID:VSO6uaUY.net[24/31]
ありがとう

希「ウチも独りやった。だからね、エリチ。お礼を言うのはウチのほうや」

絵里「希…」

66 :名無しで叶える物語(黒酢)@\(^o^)/:2014/11/15(土) 17:46:02.47 ID:VSO6uaUY.net[25/31]
お互い様…か。

ウチとエリチは似てるのかもなあ。

今、振り向いたらきっと泣いちゃうなあ。

せっかく歩いて気を紛らわそうとしたのに…もう。

ちょっと上を向いて歩こうかなあ。と思った矢先だった

絵里「ねえ希、あれ、なにかしら」

振り返るとエリチは前方を指さしていた。

あれは――

76 :名無しで叶える物語(黒酢)@\(^o^)/:2014/11/15(土) 22:40:53.16 ID:VSO6uaUY.net[27/31]
思わずそこへ駆け出す

その周りは幾千の桜の木に囲まれたように、守られているかのように。

その景色は天国にいると錯覚するほどだった


――一面に咲く花畑

色とりどりの花がそこには咲いていた

77 :名無しで叶える物語(黒酢)@\(^o^)/:2014/11/15(土) 22:54:35.09 ID:VSO6uaUY.net[28/31]
希「きれいやなあ…」

思わず声に出す。一方絵里は…

絵里「ハラショー…」

はい、いただきました。ハラショー。

花畑へ足を踏み入れる。

沈丁花、スミレ、タンポポ、水仙。他にも3月を代表するような花々だった

エリチもウチに続く。

絵里「それにしても不思議な場所ね。こんなに色んな花が咲いているなんて」

たしかに不思議、というより神聖と言ったほうが意味としては近いかもしれない

希「そうやね…」

ウチはその場に座り、お花を摘むことにした

78 :名無しで叶える物語(黒酢)@\(^o^)/:2014/11/15(土) 23:12:53.89 ID:VSO6uaUY.net[29/31]
希が花を摘みだしたので私は少し離れて花々を観賞した

ひとつひとつの花が宝石のように輝いているようだ。

そのなかでも一際輝いていたものをみつけた

スミレ

紫色をしたそれは希を連想させた。

希――私を変えてくれた女神様。


突然


女神の声と共に頭にふわりと覆われた


希「あーげる♪花冠」

スミレ色の花冠だった

79 :名無しで叶える物語(黒酢)@\(^o^)/:2014/11/15(土) 23:33:29.37 ID:VSO6uaUY.net[30/31]
スミレ――花言葉は『愛』

エリチ、ウチを受け取って。

絵里がこちらに振り向き、花冠を手に取る

絵里「素敵…ありがとう希」

立ち上がり、再び頭にそれをのせ、無邪気な笑顔をみせるエリチは極楽で戯れる女神様のようだった




――ねえ、エリチ


ずっと一緒やで?


ええ、ずっと一緒よ


えへへ、大好き!


私も大好きよ。希――

85 :名無しで叶える物語(黒酢)@\(^o^)/:2014/11/16(日) 14:49:57.86 ID:E7uFOgOd.net[1/10]
時が経つのは早いものだ

時刻は既に17時を回っていた

絵里「そろそろ帰りましょうか」

希「そうやね…」

エリチが立ち上がり、先ほど来た道へ足を向け、進む

ねえ、エリチ

絵里「どうしたの?希」

希「ウチたち…ずっと一緒やで」

絵里「それは…そういう意味で受け取っていいのかしら?」

こくり、と頷く

返事はない

代わりに――


唇に花びらのような優しい感触を受けた

86 :名無しで叶える物語(黒酢)@\(^o^)/:2014/11/16(日) 15:08:07.12 ID:E7uFOgOd.net[2/10]
後日談。

ウチ達はあの場所で結ばれた

次の日、その旨をエリチがμ'sに話すと部室が弾けんばかりの騒ぎだった

にこ「まったく、このにこ様があの場所をリクエストしたんだから感謝しなさいよね」

なんて、恩を売ってくる。無論それは買わないといけないのだが。

穂乃果「で、どこで告白したの!?」

絵里「それは…」

希「おべんとさん食べてる時。ウチが告白したらエリチお茶吹いてな~」

絵里「え!?ちょ、のぞ――」

にこ「まったくー希ったらムードを考えなさいよー」

にこっちのツッコミで部室が笑いに包まれた

87 :名無しで叶える物語(黒酢)@\(^o^)/:2014/11/16(日) 15:22:37.56 ID:E7uFOgOd.net[3/10]
キーンコーンカーンコーン

聴き慣れた予鈴が鳴る。下校の時間だ。これを聴けるのはあと何回だろう

穂乃果「海未ちゃんことりちゃん、かえろー!」

海未「ええ、それではみなさん。さようなら」

ことり「じゃあね、ばいばい」

2年生組が先に帰る。

流れに乗るように

凛「凛たちも帰るにゃ!かよちん、いこ!」

花陽「うん。真姫ちゃんも――」

すかさず花陽の口をふさぎ耳元でささやく

真姫ちゃんにはにこっちがいるから。

そうだね。と二人で微笑んだ。にこっち、借りは返したで。

89 :名無しで叶える物語(黒酢)@\(^o^)/:2014/11/16(日) 15:46:36.79 ID:E7uFOgOd.net[4/10]
にこ「え、えっと…真姫ちゃん?い、一緒に帰らなくてもなくないわよ?」

緊張しているのか、日本語がおかしい

真姫「に、にこちゃんがそこまでいうなら仕方ないわね…一緒に帰ってあげる」

にこ「はぁ!?一緒に帰ってあげるのは――」

こうなったら止まらない。いつものことだ。兎と豹ならぬ犬と猿の口喧嘩だ

犬猿の仲であり彼女らは水魚なのだ。

凛「かよちんいこー。」

花陽「うん!じゃ、またねっ」

二人も部室から出て行った後、ヒョウとウサギさんも帰りの支度をしていた

にこ「絵里、希。帰るわね。明日、遅れるんじゃないわよ」

そう、明日は土曜日だ。今日は早めに寝て早めに起きて、サンドウィッチを作らなくてはならない

絵里「ええ、にこと真姫もね。」

そういうとにこっちと真姫ちゃんは帰っていった

91 :名無しで叶える物語(黒酢)@\(^o^)/:2014/11/16(日) 16:01:39.43 ID:E7uFOgOd.net[6/10]
現在部室には絵里とウチだけ

窓を一瞥すると校門に生徒が吸い込まれていく様が見得た

絵里「もう、さっきのアレ。一体なんのつもりよ」

――おべんとさん食べてる時。ウチが告白したらエリチお茶吹いてな~

希「秘密にしたかったんよ」

絵里「秘密に?」

希「うん。二人だけの秘密。秘密の花園やね。どうかな?」

絵里「そうね…それもいいかもしれないわ。ふふ」

イタズラっぽく微笑み合う

もちろん場所も秘密だ。ウチらだけの特別な花園なんやから。

93 :名無しで叶える物語(黒酢)@\(^o^)/:2014/11/16(日) 16:20:13.52 ID:E7uFOgOd.net[7/10]
春。
木々の梢がそれぞれの新芽の色で朧に彩られる

あらゆる植物が春の訪れを祝福しているようだ

ウチは今、神社で働いた後の帰りである。

在学中住んでいた家を引越し、前よりちょっとだけ広いアパートで暮らしている

帰り道。時刻は午後19時。

夕陽は沈み、少しだけ冷たさが残る春の風がウチの疲弊した身体をなでる。

アパートに到着。鍵を開ける、という行為はせず、ピンポーンと心地よい呼び鈴を鳴らす

扉の奥からトタトタとちょっぴり駆ける足音が聞こえる

扉が開かれる。女神様によって。

「おかえりなさい!のぞみ!」



それは些細な春の日の一ページだった

94 :名無しで叶える物語(黒酢)@\(^o^)/:2014/11/16(日) 16:23:40.46 ID:E7uFOgOd.net[8/10]
終わりです

中々アイデアが浮かばず更新速度が遅くなりました
>>1の希望には沿えなかったかなとちょっと反省してます
現在自分のSSも作成中なのでその時は見ていただけたら幸いです

ご愛読ありがとうございました