1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 18:30:39.08 ID:YPcXrziB0
―夜の事務所―

P「どうした?貴音?」

貴音「その……お、御手洗いに行くので……」

P「あ、ああ、行って来い」

貴音「あの……」

P「?どうした?」

貴音「……ついてきていただけないでしょうか?」


3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 18:32:09.42 ID:YPcXrziB0
P「……は?」

貴音「その……御手洗いまで一緒に行っていただけたらと」

P「……えーっと」

貴音「ひ、響が悪いのです!」

P「……何かされたのか?」

貴音「それはもう!誰かから聞いたという怪談話を嬉々として語るのです!」

貴音「わたくし、もう怖くて怖くて……」


5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 18:33:58.21 ID:YPcXrziB0
P「……止めてくれって言えば良かったじゃない」

貴音「……あのように嬉しそうな響の話を

  遮ることなどわたくしにはできません」

P「あっそう」

貴音「あの……いかがでしょう……?」

P「分かった分かった。ついて行ってやるよ」

貴音「あ、ありがとうございます!」

P「すっごいいい笑顔」


7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 18:34:37.43 ID:YPcXrziB0
P「じゃ、行こうか」

貴音「あ、あの、あなた様」

P「ん?」

貴音「その……手を、繋いで頂けると、大変ありがたいのですが」

P「……」



10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 18:35:49.96 ID:YPcXrziB0
貴音「あなた様?」

P「トイレってすぐそこだぞ?」

貴音「ええ」

P「別に、そんなことしなくても」

貴音「……あなた様は、わたくしを見捨てるおつもりですか……?」

P「ああ、泣くな、泣かないでくれ。ほら、手」

貴音「ありがとうございます、あなた様」ぎゅ



12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 18:36:36.71 ID:YPcXrziB0
P(そんなに強く握らなくていいと思うが)

貴音「あ、あなた様。もう少し強く握り返して下さいませ」

P「お、おう」

P「しかし響も、貴音が苦手なことを知ってるんだから、もう少しこう手心というか」

貴音「わたくしが怖がるので面白いのでしょう」

貴音「一度、亜美や真美にも話したようですが、期待外れの反応だったようです」

P「どんな話なんだ……」



14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 18:38:18.48 ID:YPcXrziB0
P「さ、着いたぞ。行って来い」

貴音「はい……」

P「……じゃあ俺は戻るから」

貴音「!!」

P「なぜ驚く?」

貴音「あの……わたくしてっきり、扉の前で待っていて頂けるものだとばかり……」

15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 18:38:56.09 ID:YPcXrziB0
P「いや、でも、お前、恥ずかしいだろ?」

貴音「それはもう」

P「だから戻るよ」

貴音「……」ぎゅ

P「……涙目で見つめないでくれ……」


20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 18:40:46.22 ID:YPcXrziB0
―トイレ―

P「あー、それでな、俺の学生時代は……」

P(なんでこんな話を)


貴音「あ、あなた様!言葉を途切れさせないでくださいませ」


P「おう、すまんすまん」

P「それでな、生徒会長の……」



22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 18:41:46.91 ID:YPcXrziB0
貴音「……あ、あの……」


P「どうした?」


貴音「恥ずかしくて……その……」

貴音「……出ません……」



26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 18:43:07.58 ID:YPcXrziB0
P「じゃあやっぱり俺戻るよ」


貴音「あ、あなた様、見捨てないで!!」


P「大げさだなあ」

P「ふーむ、どうしたものか」


28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 18:44:06.35 ID:YPcXrziB0
P「よし、じゃあ面白い話でお前をリラックスさせるか」

P「あるとき、アメリカの学校で先生が生徒に質問しました。
  
  『ワシントンが桜の木を切ったことを正直に話したとき、
   彼の父親はすぐに許しました。何故だか分かりますか?』

   そしたら、生徒はこう答えました。
  
  『はーい。ワシントンはまだ斧を持っていたからだと思います』」

P「Hahahaha」

29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 18:44:45.64 ID:YPcXrziB0
貴音「わしんとん?」


P「……俺が悪かったよ」

P「ふーむ、ではどうしたものか」


貴音「あの、急いでお願いします」



31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 18:45:53.32 ID:YPcXrziB0
P「よーし、それじゃあこれしかあるまい」

P「俺が小学生の頃、花子さん、というのが流行ってな」


貴音「花子さん?何やらかわいらしい響きですね」


P「ああ」

P「基本的に、花子さんはトイレに住んでるんだ」


貴音「なんと!それは苦労していますね……」


33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 18:47:41.28 ID:YPcXrziB0
P「そうだな。苦労していると言えば苦労しているんだろう」

P「ただまあ、花子さんがトイレにいると、皆落ち着いて用が足せないだろ?」

P「だから、普段は花子さんは出てこないんだ」


貴音「なるほど、思慮深い人物なのですね」

34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 18:48:58.83 ID:YPcXrziB0
P「ああ。でな、花子さんを呼び出すには、ちょっと手順が必要でな」

P「トイレのドアを3回たたいて、花子さん、遊びましょ♪」

P「って言う風に歌わなくちゃいけないんだ」


貴音「まあ、他人を呼び出すならば、その程度の礼儀は必要というもの」

35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 18:49:46.45 ID:YPcXrziB0
P「……」


貴音「それで、花子さんとやらを呼び出すと、どのような遊びを?」


P「頭から食われる」


貴音「は?」


P「頭からバリバリと食われる」

P「あれ?腹からだったかな?」



40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 18:51:00.49 ID:YPcXrziB0
貴音「あ、あなた様……!」


P「で、食われた人間は、いなかったことになる」


貴音「……え?」


P「存在自体消えてしまうんだそうだ」

P「不思議なもんだな。それで、誰かいなくなっても騒ぎにならないんだ」

P「これが『恐怖の花子さん』の話だ」



44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 18:51:55.19 ID:YPcXrziB0
貴音「ひ、ひいい……」


P「さて」


貴音「あ、あなた様……?」


P「……」トン


貴音「あなた様!!」


46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 18:52:51.14 ID:YPcXrziB0
P「……」トン


貴音「や、止めてくださいまし!!」


P「……」トン

P「花子さん♪」


貴音「ひ、ひいい……」チョロロロロロ


50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 18:55:03.08 ID:YPcXrziB0
P「お、出た出た」


貴音「うう……思えば短い人生でした……」

貴音「さようなら……」


P「っていう、パソコンのゲームがあってな?」


53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 18:56:32.90 ID:YPcXrziB0
貴音「……?」


P「あー、えっと、今の話は作り話ってことだ」


貴音「あ……」チョロロロロロロ


P「安心した?」


55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 18:59:12.20 ID:YPcXrziB0
―Pの席に戻ってきました―


貴音「あなた様!!酷すぎます!!」

P「悪かったって。でも、

 ああでもしないと、お前いつまでたってもできなかったろ?」

貴音「それにしても!わたくしがどんなに……どんなに……!」

P「だからごめんって」


60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 19:01:09.93 ID:YPcXrziB0
貴音「生きた心地がしませんでした!」

P「悪かったよ。この埋め合わせはいつかしよう」

貴音「きっと……ですよ?」

P「ああ、分かった分かった」


62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 19:02:36.45 ID:YPcXrziB0
―そのちょっと後―


P「さてと、じゃあ、そろそろ帰るか。貴音、送っていくよ」

貴音「ええ」

P「あ、でも、ちょっとトイレに……」

貴音「……」ティン!

貴音「あなた様、わたくしもついて行きます!」

P「え?」

貴音「そして、先ほどの仕返しをするのです!」



66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 19:04:26.37 ID:YPcXrziB0
P「……」


貴音「そういたしますと、そこに人魂が……ひええ……」


P(自分で話してて怖いのか)


貴音「あ、あなた様?怖かったら悲鳴をあげてもいいのですよ……?」


68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 19:05:40.94 ID:YPcXrziB0
P「あ、俺、そういうの結構平気なんだよ」


貴音「な、なんという精神力!やはりわたくしはあなた様に見出されて正解でした」


P「……ははは、そりゃどうも」

P「しかし、お前、一人でトイレの外にいてよく平気だな?」


貴音「……あ……」

69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/04(日) 19:06:57.00 ID:YPcXrziB0
P(気づいていなかったか)


貴音「あ、あなた様!何か、何か話をしてくださいまし!!」ガタガタ


P「んー……」

P「よし、それじゃあ、『赤マント』の話をするか」


貴音「あ、赤マント?何やら雄々しい響きです」


P「ああ、昔あるところにな……」