1: 名無しで叶える物語(茸) 2023/03/22(水) 12:57:51.70 ID:artYsosZ
しずく「機器故障で電車が運転見合わせになっちゃって…再開見込みも不明らしくて」

しずく「ホテルを探しても良いですけど私未成年なので親の同意書がないとダメらしいんです」

しずく「かといって、お母さん達にホテル泊まるって言うと無理にでも迎えに行くからって言いだして」

しずく「…そこで、昔よく遊んでくれた従兄がこっちでひとり暮らししてるって聞いて…」

しずく「え? あー、お母さんから電話あったんですね…なら、お願いできますか?」

しずく「いえ、友達の家は…さすがに、この時間からだと迷惑かなと」

しずく「その点、お兄さんは一応身内ですし」

しずく「…」

しずく「えへへっ、ありがとうございます。お邪魔しますねっ」

14: 名無しで叶える物語(茸) 2023/03/22(水) 13:17:37.14 ID:artYsosZ
しずく「お夕飯…頂いて良いんですか?」

しずく「やったっ」

しずく「あーでもっ。もしかして昔のように料理(インスタントラーメン)ですよねっ?」

しずく「それなら私が――え、違うんですか?」

しずく「料理、するんですか?」

しずく「そんな、私のためにわざわざみせかけなくても…」

しずく「違う?」

しずく「またまた~、お兄さんさんざん言ってたじゃないですか。料理なんて面倒だから適当でいいって」

しずく「お母さん達からスパイ頼まれたわけじゃないので告げ口しないから正直で良いんですよ?」

しずく「違う?」

しずく「…確かに、手慣れてる」

23: 名無しで叶える物語(茸) 2023/03/22(水) 13:51:38.05 ID:artYsosZ
しずく「なんで料理できるんですか?」

しずく「1人暮らしだからって…お兄さんの場合むしろ面倒くさがると思いますけど」

しずく「…食べさせたい人いるんですか?」

しずく「むーっ、その反応怪しいんですけどっ」

しずく「誰ですか? 写真みせてくださいっ」

しずく「いる人に限って言うんですよ。そんな人いないからって」

しずく「…それで、付き合ってる人ですか?」

しずく「へー…付き合ってないんですね」

しずく「…」

しずく「という設定。と」

しずく「えへへ、確かに普通は逆ですよね。いる設定ってしますけど、お兄さんですし?」

しずく「私、お兄さんのことそれ有に知ってるんですよ? 嘘つく時の癖とか」

しずく「どういうって…それは…うーん…」

しずく「 ひ・み・つ 」

しずく「だって、教えたら誤魔化そうとするじゃないですか」

29: 名無しで叶える物語(茸) 2023/03/22(水) 14:44:33.54 ID:artYsosZ
しずく「別に、お兄さんに彼女さんがいようと私には関係ありませんけど」

しずく「…そういえば、明日は雨だからお洗濯とか難しいですよね」

しずく「いえ、別に?」

しずく「ただ、お布団とかから別の女の匂いがしても良いのかなと」

しずく「女って、結構鼻が利くんですよ?」

しずく「あーあ…」

しずく「またそうやって彼女いないアピールするから怪しいんですよ」

しずく「お兄さんが巧妙に隠してるって、私疑ってますからね…お料理、頑張ってるから」

しずく「あっ、違っ」

しずく「インスタントが良いとは言ってませんっ」

しずく「美味しく頂きたいですっ」

31: 名無しで叶える物語(茸) 2023/03/22(水) 15:22:18.52 ID:artYsosZ
しずく「ごちそうさまでした。本当に美味しかったですよ」

しずく「お片付けくらいは私がやりますよ」

しずく「そんなっ、私は別にお客様扱いしなくていいですよ」

しずく「従兄妹同士なんですから、出来ることは手伝います」

しずく「…」

しずく「あっ…まさかとは思いますけど」

しずく「…」

しずく「あとでまとめてお返ししろって要求するとか――あいたっ」

しずく「女の子にデコピンするなんてっ」

しずく「従兄妹同士だからって…もうっ、優しく扱ってくださいっ」

しずく「…私だって、女の子なんですから」

しずく「そうですね。お兄さんは知ってますよね」

しずく「でも、知ってるのと分かってるのとでは話が違うんですよ。知らないんですか?」

35: 名無しで叶える物語(茸) 2023/03/22(水) 16:54:33.67 ID:artYsosZ
しずく「私が先にお風呂ですか…?」

しずく「…浴室って鍵ついてます?」

しずく「分からないじゃないですか。ほら、私女の子ですし?」

しずく「はいはいって…もうっ、私だって女の子ですよ? 花の女子高生ですよ?」

しずく「昔みたいな…小学生低学年の私じゃないんですよ?」

しずく「も、もしかして…洗濯するとか言って――」

しずく「あぁっごめんなさい入ります。お風呂入りますっ!」

しずく「女の子に入浴禁止なんて拷問ですよ拷問っ」

しずく「酷いじゃないですか…むーっ、頭を撫でて誤魔化せるほど、子供じゃないんですよ」

しずく「…」

しずく「…もしあれなら、泊めてくれたお礼に昔みたいに背中流してあげても良いですよ?」

しずく「やることがあるって何ですかやることって…」

しずく「もうっ、久しぶりに会った従妹より大事なことなんですか?」

しずく「ゲ、ゲームのイベント期間!?」

しずく「怒ってないもんっ!」

42: 名無しで叶える物語(茸) 2023/03/22(水) 18:39:17.93 ID:artYsosZ
しずく「次、どうぞっ」

しずく「え? 手では叩いてないです。袖が当たっただけですよ」

しずく「別に? 怒ってないですよ?」

しずく「久しぶりに会った従妹より、いつでもできるアプリゲームが大事そうだとか」

しずく「情緒もなにもないぶかぶかのジャージをパジャマ替わりで渡されたとか」

しずく「別にどうとも思ってませんし」

しずく「…そういえば」

しずく「お兄さんも、昔よりずっと大きくなったんですね」

しずく「お兄さんのTシャツだけで私の身体、ほとんど隠せてますよ」

しずく「…」

しずく「あっ、ちょっと考えちゃいました?」

しずく「ち、ちんちくりんっ…!?」

しずく「あむっ! むっ…」

しずく「…お兄さん、意外と筋肉ついてるんですね」

しずく「思いっきり歯形付けようと思ったのに…」

しずく「それはそうと、さっさとお風呂入ってきた方が良いんじゃないですか?」

48: 名無しで叶える物語(茸) 2023/03/22(水) 20:21:19.41 ID:artYsosZ
しずく「お兄さん…お風呂長くないですか?」

しずく「…」

しずく「ちょーっと…脱衣所見に行っても?」

しずく「だって」

しずく「もしかしたら私の下着がなくなってるかもしれないじゃないですか」

しずく「そんなこと言って、本当は興味あるんじゃないですか?」

しずく「えー?」

しずく「…」

しずく「きゃっ!?」

しずく「な、なんですか急に大声出して…」

しずく「あー」

しずく「当たり前じゃないですか…履いてたのをまた履いたらお風呂の意味なくなっちゃうじゃないですか」

しずく「…お兄さんの、貸してくれてもいいんですよ?」

しずく「嫌ならコンビニで買ってきてください。お風呂、上がった後であれですけど」

しずく「狙ったなんてそんな、さすがにそんなことしないですよ」

49: 名無しで叶える物語(茸) 2023/03/22(水) 20:43:43.29 ID:artYsosZ
しずく「トランクスってこういう感じなんですね…」

しずく「なんかちょっと、履いてないような感じで心配になっちゃうかも…」

しずく「スカートと一緒なわけないじゃないですかっ」

しずく「スカートは外、下着は中なんですから」

しずく「いっつもぴったりしてるのに、こう、空間が出来てるんですよ」

しずく「変な感じ…」

しずく「文句言うなら履かなくていいって…」

しずく「…」

しずく「じゃぁ、脱がします?」

しずく「っあいたぁっ!?」

しずく「ま、またおでこにっ!」

しずく「もー…冗談なのに…」

しずく「従妹には興味ないって言ってるくせに」

53: 名無しで叶える物語(茸) 2023/03/22(水) 21:13:15.46 ID:artYsosZ
しずく「高校? ニジガク」

しずく「虹ヶ咲学園…あれ? 知ってますよね?」

しずく「そう、女子だけ…」

しずく「あー…って何ですかあーってその得心いった感じ…なんですか?」

しずく「はしたなっ…はしたないって、私がですか?」

しずく「…」

しずく「学校ではこんなことしないですっ!」

しずく「ほんとっ! ほんとにほんとだからっ!」

しずく「もーっ…」

しずく「もーっ! お兄ちゃんのバカっ!」

しずく「なんで笑うのっ!」

しずく「ば、化けの皮って…」

しずく「なんとなくお兄さんがしっくり来たってだけで」

しずく「お兄ちゃんよりお兄さんの方が大人びた言い方とか思ってないですよ」

しずく「むー…子ども扱いしないで…」

しずく「私も、もう高校生なんだから…」

59: 名無しで叶える物語(茸) 2023/03/22(水) 21:27:01.98 ID:artYsosZ
しずく「それはそうですよ…小さい頃はお兄ちゃんって呼びます」

しずく「お兄ちゃ…お兄さんだって私が小学生の頃はまだ、全然子供って感じで」

しずく「お兄さんって呼ぶにはあまりにもやんちゃだったじゃないですか」

しずく「でも、今はもうすっかり大人…なのかは保留しますけど」

しずく「私にとっては一応、大人に近いですし」

しずく「だから、お兄さんって呼んでるんです」

しずく「もしかして…昔みたいにお兄ちゃんって呼ばれたいんですか?」

しずく「別に、お兄さんがそう呼ばれたいならそうでもいいですけど」

しずく「…」

しずく「けど、お兄さんだって呼び方変えてますよね」

しずく「ほら、前はしずくって呼び捨てだったじゃないですか」

しずく「おいしずく、海行こうぜーとか、しずくー! オフィーリアと散歩行くぞーとか…」

しずく「でも、今はしずくちゃん。じゃないですか」

66: 名無しで叶える物語(茸) 2023/03/22(水) 23:22:30.35 ID:artYsosZ
しずく「あー確かに…言われてみれば…」

しずく「子供の頃って、従兄妹とかの親戚関係ってあんまり気にしないと言うか」

しずく「関係ないかもしれないですね…」

しずく「深く考えずに、一緒に遊んでくれる人…みたいな…」

しずく「…」

しずく「お兄さんに刷り込まれちゃったんだ…っぁいたっ!」

しずく「ま、またデコピン!」

しずく「私、スクールアイドルなんですよ?」

しずく「そして演劇で舞台にも立ってる…」

しずく「どうせ、お兄さんは覚えてないでしょうけどっ」

しずく「…え?」

しずく「覚えてる…? み、観たこともある!?」

しずく「あっニジガクのライブ映像がお気に入りに登録されてる…!」

しずく「お兄さんまさか…」

しずく「わた…へっ? 彼方さん? 果林さ…エm」

しずく「そうですねちんちくりんですよ私は!」

しずく「もうっ…」

69: 名無しで叶える物語(茸) 2023/03/22(水) 23:40:26.64 ID:artYsosZ
しずく「彼方さん達は3年生で、私は1年生…分かってます? そこらへん…」

しずく「 い ち ね ん せ い 」

しずく「なのに比べて子供っぽいって酷いじゃないですか」

しずく「…別に、1年生の中でも飛びぬけて成長してるかって言われればそんなことないですよ」

しずく「実質2年生みたいなものだって友達にも言われます」

しずく「同じユニットの歩夢さんやせつ菜さんは2年生ですけど、比べてどうなんだって言われたらぐうの音も出ませんし」

しずく「子供ですよ。どうせ」

しずく「…」

しずく「今は頭撫でるところじゃないですっ…もうっ…どうしてこう…」

しずく「言っておきますけど、今から煽てたって彼方さん達のこと紹介したりしませんからねっ」

しずく「ぜーったいっ!」

しずく「怒ってないもんっ!」

72: 名無しで叶える物語(茸) 2023/03/23(木) 00:03:13.08 ID:ftS6BNfo
しずく「え、客用布団がない?」

しずく「てっきりあるものだと…」

しずく「床で寝るのは百歩譲ってあれですけど、お布団無しはちょっと…」

しずく「風邪引きますよ?」

しずく「冬用布団にくるまればって…」

しずく「…」

しずく「別に、子供なら一緒に寝たって良いんじゃないですか?」

しずく「それはダメって…」

しずく「でも、これでお兄さんが風邪引いたりしたら私…」

しずく「昔みたいに一緒に寝るって思えばいけないですか?」

しずく「…」

しずく「お兄ちゃん…一緒に寝よ?」

しずく「ば、馬鹿なことって…私は心配して言ってるのにっ」

しずく「良いもん。私も布団使わないっ」

しずく「やーだ。お兄さんが布団使わないなら私も使わない」

しずく「お兄さんが布団を使う。私を冬用布団で簀巻きにする。一緒に寝る」

しずく「…どれにします?」

75: 名無しで叶える物語(茸) 2023/03/23(木) 00:39:50.63 ID:dGFW57Cq
しずく「そんな避けるように壁を向かなくたっていいじゃないですか」

しずく「昔は私のことなんて抱き枕みたいにしてたのに…」

しずく「お金なんて取らないですよっ」

しずく「そんな、悪いことみたいな…」

しずく「…」

しずく「…泊めてくれたお礼、なにがいいですか?」

しずく「明日の朝は私が作るとか、今度一緒にお出かけするとか…」

しずく「…3年生のこと、紹介するとか」

しずく「そうだ。私の連絡先とか欲しくないですか?」

しずく「あー…要らないって言われても」

しずく「もう友達登録してますけどね」

しずく「えへへ…」

しずく「…」

しずく「2人で一緒に入ると、暑いですね…お兄さん」

78: 名無しで叶える物語(茸) 2023/03/23(木) 08:25:03.49 ID:n/vTAfWn
しずく「…お兄さん、私のこと嫌いですか?」

しずく「当たりが強いというか、冷たいじゃないですか」

しずく「久しぶりなのに…」

しずく「どちらかといえば、優しくされたいですよ」

しずく「…」

しずく「あはは…確かに急に従妹を泊めてってなったらアレですよね」

しずく「彼女さんに知られたら面倒ですし」

しずく「…」

しずく「ほんとに居ないんですか?」

しずく「そっか」

しずく「えー? 嬉しそうってそんなこと無いですよー」

しずく「私の恋人ですか?」

しずく「…居ませんよ。だって、まだ子供だもん」

しずく「っていう設定。かもしれないですけど」

80: 名無しで叶える物語(茸) 2023/03/23(木) 08:40:19.08 ID:n/vTAfWn
しずく「ほんとは居るって言ったら、どうします?」

しずく「でもでも、実はありがちな言い回しで誤魔化してるかもしれないですよ?」

しずく「これが演劇部…? ってなんですか…」

しずく「ちゃんとした演劇部ですよ! 」

しずく「もうちょっと頑張れって…」

しずく「私、結構頑張ってると思いますけど…」

しずく「…」

しずく「あ…お兄さん。もしかしてアレ期待してます?」

しずく「小さい頃の、大人になったらお兄ちゃんと結婚するって言ったアレ…」

しずく「嘘ですね。ぜーったい覚えてた」

しずく「言ったじゃないですか。お兄さんの癖、知ってるって」

しずく「ああ言うのって、その場では本気ですけど」

しずく「大人になればただの笑い話ですよ」

しずく「…私はまだ子供だけど」

しずく「悪かったってなにがですか…」

しずく「えー…別に子供扱いしてくることに怒ってるわけじゃないですよ」

しずく「むー…」

83: 名無しで叶える物語(茸) 2023/03/23(木) 09:18:54.86 ID:n/vTAfWn
しずく「そんな端に寄ってたら寝苦しくないですか?」

しずく「大丈夫ですよ…もうっ…ほらっ」

しずく「こうやってお兄さんとくっつくなんて今更ですし…そんな避けてくれなくても平気です」

しずく「…そういう、無理してる優しさはありがたくないです」

しずく「そうですよ。女の子は面倒なんです」

しずく「わたっ…私だけってわけではなく、女の子みんなですよ」

しずく「私は面倒な女の子じゃないですよ。結構簡単です」

しずく「昔みたいにしてくれれば、良いだけですから」

しずく「…おやすみ、お兄ちゃん」

しずく「…」

しずく「…」

しずく「…えへへ、やっぱりお兄さん。で」

85: 名無しで叶える物語(茸) 2023/03/23(木) 10:17:51.74 ID:n/vTAfWn
しずく「おはようございます。お兄さん」

しずく「昨日はよく眠れました?」

しずく「私がいて落ち着かなかったんですか…?」

しずく「ふーん…」

しずく「そうですか。いつもいない他人がいると違和感があるんですかそうですか」

しずく「朝ごはん作ってるので先に顔洗ってきてください」

しずく「別に怒ってないですよ」

しずく「…」

しずく「あの…私だって一応、お料理できますよ?」

しずく「こんなことで嘘つかないですよ」

しずく「だからそんな、不安そうに見てないで顔洗ってきてください」

しずく「不安じゃなくて心配…? もうっ、指を切ったりするほど不得手じゃないですからっ」

しずく「お兄さん…私だってもう、高校1年生の女の子なんですよ?」

88: 名無しで叶える物語(茸) 2023/03/23(木) 12:47:50.21 ID:n/vTAfWn
しずく「はーい。召し上がれ」

しずく「…」

しずく「どうですか? 美味しいですか?」

しずく「それはそうですよ。一人暮らししてから毎日作ってるお兄さんと、時々な私とじゃ差は歴然ですし」

しずく「比較は必要ないですっ」

しずく「美味しいか美味しくないか言ってくれればそれで…」

しずく「まあまあって、もうっ…」

しずく「いーえ。別に怒ってないですー」

しずく「お兄さんの本心はともかく、その嫌味みたいな言葉の出自くらいは察しがつきますし」

しずく「美味しいなら美味しいって言ってくれればいいのになー」

しずく「ふふっ」

しずく「明日から寂しくなっちゃうんじゃないですか?」

しずく「どうだか」

しずく「えー? 見つめてないですよ? 観察です。観察」

91: 名無しで叶える物語(茸) 2023/03/23(木) 13:14:59.21 ID:n/vTAfWn
しずく「お兄さん何時に家出ます?」

しずく「なるほど…」

しずく「私は学校が近いのでもう少し時間あるんですよ」

しずく「…合鍵とかあれば、締めておきますよ?」

しずく「だって、本鍵だと渡すために会いに来ないとじゃないですか」

しずく「その点、合鍵ならまた後日郵送とかでもいいですし」

しずく「それとも、また私に会いたいんですか?」

しずく「一緒に家出れば良いって、えー…」

しずく「学校まで時間があるのに」

しずく「従妹のこと追い出すなんてお兄ちゃん酷い…」

しずく「むー…」

しずく「鍵を渡したくないって、なんでですか」

しずく「別に友達集めて勝手に部屋使うとかしないですよ?」

しずく「合鍵くらい良いじゃないですか…」

96: 名無しで叶える物語(茸) 2023/03/23(木) 19:25:05.87 ID:n/vTAfWn
しずく「分かりました」

しずく「じゃぁ、こうしませんか?」

しずく「ここに花の女子高生が作ったお弁当があります」

しずく「これをあげるので、合鍵ください」

しずく「私の分もありますよ? お兄さんの予備のお弁当箱があったので」

しずく「…要らないとか言ったら、泣きますよ?」

しずく「えへへっ、やったー」

しずく「女子高生ですよ?」

しずく「ちょっとはずる賢くもなりますよ」

しずく「そっかもうすぐですよね」

しずく「…」

しずく「ネクタイ結んで欲しい?」

しずく「そんな、首閉めたりなんてしないもん」

しずく「私、そんな悪い子じゃないよ?」

しずく「えー…お兄さん的には悪い子なんですか?」

しずく「…ばか」

しずく「しーらない」

100: 名無しで叶える物語(茸) 2023/03/23(木) 20:45:11.73 ID:n/vTAfWn
しずく「帰って来ても私は居ませんからね」

しずく「寂しければ、電話…してくれてもいいですよ?」

しずく「出るかは気分次第ですけど」

しずく「…寂しいくせに」

しずく「どうしてもって言うなら、もう一泊してあげても良いですよ?」

しずく「…」

しずく「…そんなに帰って欲しいんですか?」

しずく「邪魔ですか?」

しずく「…嫌い、ですか?」

しずく「…じゃぁ、好き?」

しずく「…」

しずく「頭を撫でて誤魔化すのはダメですよ」

しずく「…従妹として、ですか?」

しずく「ん~…」

しずく「昔は普通に好きだって言ってくれてたのになー」

しずく「ふふっ、言いにくい年頃なんて…お兄さんも可愛いこと言うんですね」

しずく「馬鹿になんてしてないですよ。馬鹿になんて…」

しずく「…」

しずく「行ってらっしゃい。お兄ちゃんっ」

106: 名無しで叶える物語(茸) 2023/03/23(木) 22:48:07.96 ID:n/vTAfWn
しずく「…」

しずく「もしもし?」

しずく「お帰りなさい…って言っても、私は鎌倉ですけどね」

しずく「やっぱり寂しかったんじゃないですか」

しずく「お弁当の…ハートマーク?」

しずく「うーん…偶然じゃないですかー?」

しずく「海苔がたまたまそういう形だったんですよ」

しずく「あははっ」

しずく「…人に見られちゃったんですか?」

しずく「それで…恋人って言いました?」

しずく「お母さんの悪戯? へー…私ってお母さんだったんですね…」

しずく「え?」

しずく「声が反響してる…?」

しずく「…どうしてだと思います?」

しずく「ぶっぶー」

しずく「今、入浴中なんですよ」

しずく「えー? 今さらじゃないですか」

しずく「別に、想像しても良いですよ?」

112: 名無しで叶える物語(茸) 2023/03/24(金) 00:22:55.94 ID:rPqdAsVj
しずく「そういえば、明日って土曜日じゃないですか」

しずく「お兄さんってお休みですか? おうちにいます?」

しずく「いえ、お兄さんと違って私は部活がありますから」

しずく「そうですよ。頑張ってます」

しずく「そこで、ついでにお弁当箱を返そうかなと」

しずく「はい? あいk…はがき? お絵かき?」

しずく「ちょっと良く聞こえないです」

しずく「聞こえないです」

しずく「とにかく、お弁当箱返しに行くので家に居て欲しいです」

しずく「時間…朝かな…朝に伺います」

しずく「んー…」

しずく「良く聞こえないのでビデオ通話にします?」

しずく「もー、冗談に決まってるじゃないですかっ」

しずく「合鍵もちゃんと持っていきます」

しずく「…お兄さんのけちんぼ」

しずく「とにかく、明日。明日また会いに行きますから」

しずく「嬉しかったらハグくらいはさせてあげますよ?」

しずく「うん…うん…」

しずく「じゃぁ、ゆっくり休んで…」

しずく「おやすみなさい。お兄さん」

しずく「…」

しずく「ちゅっ…」

しずく「え? 舌打ちですけど」

しずく「ふふっ、冗談です。ただの水しぶきですよ」

124: 名無しで叶える物語(茸) 2023/03/25(土) 13:07:22.62 ID:3eU+latj
しずく「どちら様って、私ですよ。私」

しずく「ドア開けてください」

しずく「…」

しずく「私私詐欺って何ですか! どう見ても可愛い従妹ちゃんじゃないですか…」

しずく「かわいいを疑問視するの止めません?」

しずく「もうっ…」

しずく「やっと開けてくれた…」

しずく「合鍵があっても開けて貰いたい年頃なんです」

しずく「そうですよ。面倒くさいんです」

しずく「そうだ。時間までもうちょっとあるので、上がっても?」

しずく「ん~?」

しずく「…もしかして、見られたら困るものでもあるんですか?」

しずく「あやしいなぁ」

しずく「少しだけ。ね? お兄ちゃん。お願いっ」

しずく「えへへっ、やったー私の勝ちー」

128: 名無しで叶える物語(茸) 2023/03/25(土) 13:25:34.93 ID:3eU+latj
しずく「お兄さん、やっぱりお兄ちゃんって呼ばれるときの方が反応良いですね」

しずく「恥ずかしいですか? なんで…」

しずく「あー…確かに、普段は呼ばれることないですよね」

しずく「じゃぁ、私も名前で呼――」

しずく「不敬とか関係あります? 年上を敬うべきですか…?」

しずく「うーん…どこを敬った方が良いですか?」

しずく「ぁいたっ!?」

しずく「もーっ! デコピン禁止!」

しずく「ふふっ」

しずく「べっつに~」

しずく「従妹が来たのにまたゲームですか?」

しずく「…2人プレイできないんですか?」

しずく「んーん。お兄さんがやってるとこ見てるから良いですよ」

しずく「…」

しずく「…」

しずく「退屈じゃ、ないですよ」

130: 名無しで叶える物語(茸) 2023/03/25(土) 13:47:12.23 ID:3eU+latj
しずく「…」

しずく「ちょっとくらい寄りかかったって良いじゃないですかー」

しずく「え? 時間ですか?」

しずく「そうですね」

しずく「…」

しずく「いえ、サボらないですよ」

しずく「今日は、そもそも体を休めるためのお休みってだけです」

しずく「部活に行くのにこんなおしゃれ着で来るわけないじゃないですかー」

しずく「もー…」

しずく「お兄さんに会うから、ですよ」

しずく「かわいくないですか?」

しずく「適当だなぁ…」

しずく「…おでかけ、しませんか?」

134: 名無しで叶える物語(茸) 2023/03/25(土) 21:21:25.82 ID:3eU+latj
しずく「お休みだからこそ、じゃないですかー」

しずく「出不精は不健康ですよ」

しずく「ね? ね?」

しずく「おにーさん」

しずく「おーにーいーさーん」

しずく「むー…」

しずく「…」

しずく「で、デートしよ?」

しずく「~~~~~~っ!」

しずく「もうっ」

しずく「そうやって適当にあしらうの、止めません?」

しずく「むぅ…」

しずく「…」

しずく「えっ? お出かけしてくれるんですかっ?」

しずく「やったっ」

135: 名無しで叶える物語(茸) 2023/03/25(土) 21:28:51.51 ID:3eU+latj
しずく「えへへっ」

しずく「えー? それはそうですよ」

しずく「お家でごろごろするよりお出かけ気分だったんだもん」

しずく「お出かけするってなったらテンション上がりますよ」

しずく「お兄さんだって、かわいい女の子とお出かけ出来て幸せじゃ――」

しずく「わーっ、帰ろうとしないでください!」

しずく「ばーか」

しずく「え?」

しずく「ん~…お兄さんはどこか行きたいところってあります?」

しずく「私は…」

しずく「…」

しずく「…じゃぁ、デートではないですけど、デートっぽいところ行ってみます?」

140: 名無しで叶える物語(茸) 2023/03/25(土) 21:55:49.86 ID:3eU+latj
しずく「別に、あれ買ってこれ買ってなんておねだりしないですよ」

しずく「リボンは…」

しずく「そんな昔のことよく覚えてますね」

しずく「テレビの中の人達に憧れて、よくよく、お兄さん…」

しずく「コホンッ」

しずく「お兄ちゃんお兄ちゃんあれやってあれやってっ」

しずく「なーんて。色んな髪型やって貰ってましたよね」

しずく「…ふふっ」

しずく「どうですか? 今の私」

しずく「かわいいですか?」

しずく「それなりって何ですかそれなりって」

しずく「…まぁ」

しずく「良いですけど」

しずく「それなりって言うからには、かわいくしてくれるってことですよねー?」

しずく「おねだりはしてないもーん」

141: 名無しで叶える物語(茸) 2023/03/25(土) 22:50:26.86 ID:3eU+latj
しずく「そうですね。基本的にはリボンです」

しずく「なんでって…」

しずく「まぁ、色々と…」

しずく「…」

しずく「弄りたいですか? 私の髪」

しずく「そこは嘘でも頷いて欲しいなぁ…」

しずく「そうだ。似合いそうなの見繕ってください」

しずく「お兄さんのセンス、信じてますから」

しずく「あっ」

しずく「でも、お兄さんの好きに私を染めてくれてもいいんですよ?」

しずく「…」

しずく「おふざけじゃなければ、怒らないですよ」

144: 名無しで叶える物語(茸) 2023/03/25(土) 23:12:18.51 ID:3eU+latj
しずく「えへへ~」

しずく「ん~ん。こっち付けていく~」

しずく「お兄さんのセンスはそこそこですけど」

しずく「あーっ、引っ張っちゃダメっ」

しずく「要るもんっ」

しずく「あっ…」

しずく「…」

しずく「もうっ…髪やりたいなら素直にそう言ってくれればいいのに」

しずく「…いつも、誰かにやってあげてるんですか?」

しずく「彼女さんとか」

しずく「まだ疑ってますよ」

しずく「へへっ」

しずく「そうだ…映画。映画見ませんか?」

しずく「見たい映画というより…お兄さ…」

しずく「…ううん。何でもないです」

しずく「どうですか?」

しずく「じゃあ決まり。ですねっ」

145: 名無しで叶える物語(茸) 2023/03/25(土) 23:25:40.59 ID:3eU+latj
しずく「ん~…どれがいいかな…」

しずく「へっ?」

しずく「あ、お兄さんのお友達…?」

しずく「どうも…桜坂しず――」

しずく「同好会のこと知ってるんですか? 嬉しいです」

しずく「いえ、そんなっ」

しずく「…」

しずく「そうですよ。従妹です」

しずく「一緒にですか?」

しずく「わっ、お兄さん?」

しずく「ごめんなさい。そう言うことなので失礼します」

しずく「…」

しずく「…」

しずく「そんな、女癖悪そうには見えなかったですけど」

しずく「…ううん」

しずく「お兄さんが手を握って引っ張ってくれる間は、離れませんよ」

146: 名無しで叶える物語(茸) 2023/03/25(土) 23:41:39.54 ID:3eU+latj
しずく「それにしても、素直に従妹って言わなくてもよかったんじゃないですかー?」

しずく「ほら」

しずく「見栄張って、か…彼女、とか…」

しずく「む…そーですかないですか」

しずく「別に、怒りませんよ」

しずく「お兄さんの彼女だって紹介されただけで、怒るような関係じゃないですし」

しずく「ふふっ。確かにからかわれたかもしれないですね」

しずく「…」

しずく「あー…私のお友達はからかったりなんて…」

しずく「か…」

しずく「…いる。かもしれない」

しずく「そうですね。まだ。従兄妹で良いと思いますよ」

しずく「え? まだ。なんて言ってないですよ。言うわけないじゃないですかーもーっ」

しずく「まぁ、従兄妹で良いと思います。って言ったんです」

しずく「そういう願望あるからそう聞こえたんじゃないですか?」

しずく「ふふふっ。どうだか」

150: 名無しで叶える物語(茸) 2023/03/26(日) 09:38:02.21 ID:L02+CYNW
しずく「面白い映画でしたね」

しずく「ヒロインが命を懸けて主人公を救うところとか」

しずく「へー…お兄さん的にはNGなんですか?」

しずく「言われてみれば、力不足だって言われてるみたいですね…」

しずく「でもですよ?」

しずく「2人背中合わせでって関係も良いって思いません?」

しずく「ふーん…」

しずく「お兄さんは見栄っ張りですね」

しずく「女の子だって、守られるだけで良いって思うわけじゃないんですよ?」

しずく「十人十色なんです」

しずく「お兄さんは、女の子の前では格好良くありたいんですね」

しずく「ふふっ」

しずく「いーえ、別に」

しずく「可愛いなぁって」

しずく「昔もそうでしたよね」

しずく「お兄さんは、私の前ではいつも格好良かったです」

しずく「…からかってるわけじゃないのに」

しずく「なに言ってるんですか。忘れてなんてあげませんよ」

しずく「今お兄さんが忘れろって言ったのは、私の大事な思い出ですし」

しずく「けど…」

しずく「その思い出を上書きするって手段がありますよ?」

154: 名無しで叶える物語(茸) 2023/03/26(日) 11:49:02.21 ID:g/6UQcI3
しずく「…」

しずく「格好良いところを見せてやるって言いませんでしたっけ?」

しずく「それでどうして、ゲームセンターなんですか?」

しずく「お兄さんの格好良いって…」

しずく「まぁ、私は子供ですけど」

しずく「…」

しずく「じゃぁ、あれ…あれ取ってください」

しずく「ぬいぐるみよりお菓子がいいなーって」

しずく「形としては、もう戴きましたし」

しずく「お菓子が良いです」

しずく「あっ…」

しずく「もしかしてぬいぐるみしか得意じゃないんですか?」

しずく「えへへっ」

しずく「良いですよ。ハンデで500円」

しずく「サービス有りの6回で取れたらご褒美あげます」

158: 名無しで叶える物語(茸) 2023/03/26(日) 17:48:39.46 ID:g/6UQcI3
しずく「これ、掴めるほどおりないんですね…」

しずく「…あっ」

しずく「下に引っ掛かっちゃいましたね」

しずく「あと5回ですけどいけます?」

しずく「動かす前に考えた方が…」

しずく「ほらっ、また途中で引っ掛かっちゃいましたよ?」

しずく「慎重に動かし…」

しずく「むー…黙ってますよーだ」

しずく「…」

しずく「あと3回」

しずく「あと2回」

しずく「あといっか…」

しずく「あっ…」

しずく「今まで散らかした景品の上を滑って…」

しずく「…もうっ」

しずく「もっとスマートに格好良い取り方してくださいよっ」

しずく「ご褒美って…」

しずく「えっ…ご、ご褒美のために…!?」

しずく「勝ちに拘ったって…」

しずく「そこでプライド捨てるの無しですよっ!」

しずく「もーっ!」

162: 名無しで叶える物語(茸) 2023/03/26(日) 18:23:00.85 ID:g/6UQcI3
しずく「でも、お願いを聞くとは言ってませんからね?」

しずく「あくまでもご褒美をあげる。ですから」

しずく「内容は私が決めますよ」

しずく「そんな、変な言うこと聞かせようとか思ってたってダメですからね」

しずく「残念でしたね」

しずく「そんなつもりはないって…」

しずく「怪しいなぁ…」

しずく「…」

しずく「でも、参考までに聞いてあげても良いですよ」

しずく「…お兄さん」

しずく「どんなご褒美が欲しいですか?」

165: 名無しで叶える物語(茸) 2023/03/26(日) 20:54:14.09 ID:g/6UQcI3
しずく「…」

しずく「…そんな悩みます?」

しずく「怒らない? ってなに聞いてるんですか…」

しずく「前ふりやめて貰って良いですか?」

しずく「そんな、怖い…」

しずく「私が聞いたんですよ?」

しずく「紹介?」

しずく「えっと…」

しずく「あー…」

しずく「そういえば彼方さんや果林さん、エマさんが推しって言ってましたっけ」

しずく「…」

しずく「ふふっ」

しずく「えー? 別に怒ってないですよ」

しずく「怒ってないですって」

しずく「もちろん…」

しずく「絶対に紹介しませんよ」

170: 名無しで叶える物語(茸) 2023/03/26(日) 21:10:04.30 ID:g/6UQcI3
しずく「彼方さんの方が家庭的で可愛らしいです」

しずく「果林さんの方が綺麗で大人びています」

しずく「エマさんの方が優しく朗らかで、大きいです」

しずく「…」

しずく「私なんて、ただのちんちくりんに見えちゃうじゃないですか」

しずく「…」

しずく「お兄さん、私のこと嫌いですよね」

しずく「…」

しずく「私は…」

しずく「…」

しずく「ご褒美」

しずく「ご褒美に合鍵、返します」

しずく「…それで、良いですか?」

しずく「ダメって…」

しずく「…」

しずく「確かに、何にもあれですよね…」

しずく「それなら」

しずく「…」

しずく「料理、ですか? 彼方さんの…?」

しずく「え、私のですか?」

しずく「…別に、良いですけど」

173: 名無しで叶える物語(茸) 2023/03/26(日) 21:45:27.27 ID:g/6UQcI3
しずく「…」

しずく「…」

しずく「…えっ? あ、いえ…」

しずく「…怒ってはないですよ」

しずく「怒っては」

しずく「…私の得意料理ですか?」

しずく「うーん…」

しずく「得意と言えるほどのものは…」

しずく「逆にですけど、お兄さんはなにが食べたいんですか?」

しずく「お、お寿司…?」

しずく「私にさばけってことですか?」

しずく「なるほど…酢飯とお刺身で…」

しずく「…」

しずく「お兄さんがいいなら良いですけど…」

しずく「女子高生に握って貰うとか、贅沢ですね」

しずく「なんて…興味、ないですよね」

しずく「そんなことないって…」

しずく「嘘ばっかり」

しずく「…」

しずく「ばーか」

175: 名無しで叶える物語(茸) 2023/03/26(日) 21:58:24.71 ID:g/6UQcI3
しずく「あっ」

しずく「こ、このスーパーは止めません?」

しずく「お、お刺身高いですし!」

しずく「それはもう、日本一高いでゆうめっ…」

しずく「えっと、日本い…あっ…待ってくださいっ」

しずく「ここはっ…」

しずく「だめっ…」

しずく「どうしてもやだ…っ…」

しずく「それは…」

しずく「その…」

しずく「だ、だって…」

しずく「…」

しずく「か、彼方さんがいるかもしれないから…」

しずく「へっ、あ、そんなっ…彼方さんはいい人ですよ」

しずく「イビられたりしてないです、けど…」

しずく「でも、お兄さん…彼方さんのこと好きじゃないですか…」

しずく「だから…」

しずく「…ですよね。そんなこと言われたらむしろ行きますよね…」

しずく「…良いですよ。もう…」

179: 名無しで叶える物語(茸) 2023/03/26(日) 22:13:18.64 ID:g/6UQcI3
しずく「…」

しずく「…」

しずく「わっ…」

しずく「か、彼方さんっ?」

しずく「えっと、その…」

しずく「この人は従兄で…」

しずく「あー…」

しずく「…? え、待っ…」

しずく「と、とと 泊めて貰った話!」

しずく「泊めてくれた優しい従兄って話ですよ!」

しずく「ね? 彼方さん? ね?」

しずく「悪口言ったりしてないですよ」

しずく「そ、そんなことより…」

しずく「お兄さんってば彼方さんのファンらしいですよ」

しずく「はい…」

しずく「せっかくですし、その…少しお話でも…」

しずく「え、お兄さん?」

しずく「彼方さん、仕事があるのはそうですけど…」

しずく「良いんですか? せっかく…」

しずく「お刺身が売り切れるって…はぁ…」

しずく「そうですか…」

しずく「…頭撫でるのやめてください」

184: 名無しで叶える物語(茸) 2023/03/26(日) 22:31:06.44 ID:g/6UQcI3
しずく「…普通に買えちゃったじゃないですか」

しずく「良いんですか?」

しずく「彼方さんと…」

しずく「そうですか」

しずく「…」

しずく「本命はやっぱり、エマさんなんですか?」

しずく「一番、大きいですし」

しずく「じゃぁ、果林さん」

しずく「綺麗だし、大人っぽいし」

しずく「私なんて、子供ですよ」

しずく「…」

しずく「言っておきますけど、彼方さんは偶然ですよ?」

しずく「果林さんとエマさんに会わせる気はないです」

しずく「…」

しずく「…」

しずく「はぁ」

しずく「…別に、今日は疲れちゃっただけです」

しずく「…やだ」

しずく「泊まりたくない」

187: 名無しで叶える物語(茸) 2023/03/26(日) 22:40:12.14 ID:g/6UQcI3
しずく「それじゃ…」

しずく「お寿司握ったら帰ります」

しずく「…」

しずく「お寿司屋さんみたいに…?」

しずく「い、良いですけど…」

しずく「…え、入店からやるんですか?」

しずく「…コホン」

しずく「らっしゃーいっ」

しずく「一名様? 好きな席へどうぞ」

しずく「ふぇっ!?」

しずく「あ、は、はいっ…そーなんですよ」

しずく「女将なんです。男性の方が良いですか?」

しずく「美人って…あの、居酒屋じゃないんですけど」

しずく「ナンパしないで貰って良いですか?」

しずく「醍醐味…? 醍醐味かなぁ…」

189: 名無しで叶える物語(茸) 2023/03/26(日) 22:48:54.76 ID:g/6UQcI3
しずく「おすすめ握り?」

しずく「かしこまりー!」

しずく「おすすめ三貫いきますよ~」

しずく「はいよっ」

しずく「ワサビ握り、ワサビ軍艦、わさびマヨ握り!」

しずく「えー? おすすめですよー」

しずく「搾りたてのワサビ」

しずく「どうぞどうぞ」

しずく「…」

しずく「まぁ、冗だ――あっ!」

しずく「ほ、本当に食べちゃダメですよ!」

しずく「あぁほらっ…お茶、お茶飲んでくださいっ」

191: 名無しで叶える物語(茸) 2023/03/26(日) 23:02:04.72 ID:g/6UQcI3
しずく「ワサビ削って握り直せば無駄にならないですって…」

しずく「もうっ…」

しずく「八つ当たりした私が悪者じゃないですか…」

しずく「こっちはちゃんとしたやつですよ」

しずく「サーモンです」

しずく「炙りは怖いので無しで」

しずく「あと、やっぱりまぐろですよね」

しずく「どうぞ」

しずく「あと…かつおです」

しずく「…」

しずく「ふふっ、ワサビが尾を引いて泣いちゃってるじゃないですか」

しずく「ばーか」

しずく「…」

しずく「…でも、お兄さんが悪いんです」

しずく「あの場面で、彼方さん達を紹介するって…普通言いませんよ」

しずく「お兄さんの好みはそっちだって分かります」

しずく「そう言ってたから…」

しずく「…」

しずく「でもねお兄ちゃん…それでもやだったの」

しずく「…ごめんね」

195: 名無しで叶える物語(茸) 2023/03/26(日) 23:38:10.04 ID:g/6UQcI3
しずく「最初に冗談交じりに言い返したから大丈夫だって思ったって…」

しずく「…笑ってるからって笑ってるとは限らないんですよ?」

しずく「もうっ…」

しずく「女の子だって知ってるのと分かってるのとでは違うって言ったじゃないですか…」

しずく「それと同じです」

しずく「…でも」

しずく「…だから焦って、料理なんて言い出したんだ」

しずく「私が思ったより、その…不機嫌になってたから」

しずく「…」

しずく「焦ったんだ。嫌われたと思ったんだ?」

しずく「ふーん…」

しずく「…でも、私の方が嫌われてるのかも。って悲しかったですけど」

しずく「ごめんって言われても」

しずく「…」

しずく「…許したくないなぁ」

しずく「えへへ」

200: 名無しで叶える物語(茸) 2023/03/26(日) 23:56:37.45 ID:g/6UQcI3
しずく「お兄さんは私に嫌われたのかもって焦ったんですよね?」

しずく「うんうん」

しずく「私は私で、嫌われてるのかも…って胸が痛かった」

しずく「…」

しずく「けど、どっちが悪いかと言えば?」

しずく「そうですよねっ」

しずく「お兄さんです」

しずく「じゃぁ、こうしませんか?」

しずく「お兄さんは私に好きって言う」

しずく「1回じゃないですよ?」

しずく「何回も何回も。もちろん、無造作に言うのは無し」

しずく「何かしてるときとか、したときとか」

しずく「好きって言う」

しずく「その代わりに、私もお兄さんのこと好きって言ってあげます」

しずく「どうですか?」

しずく「…」

しずく「良いですよ。無理には言わなくても」

しずく「なっっ…こ、このタイミングでいきなり言うんですか…?」

しずく「もっ…もうっ…」

しずく「私だって…」

しずく「す、す…」

しずく「…」

しずく「寿司ネタはなにが良いですか!?」

しずく「もーっ!」

205: 名無しで叶える物語(茸) 2023/03/27(月) 09:55:44.16 ID:xc767jxO
しずく「そ、そういうとこも可愛くて好きって…」

しずく「なに言ってるのか分からないですっ」

しずく「私まだなにも見せてないですけど?」

しずく「演劇部ですよっ」

しずく「…これ、でも」

しずく「え? はい…どうぞ。ブリです」

しずく「…」

しずく「わ、私の好きは安くないんですよ」

しずく「高校生ですよ? 高校1年生」

しずく「そう簡単に好きって言えませんよ」

しずく「言い出したのはそうですけど」

しずく「うっ…」

しずく「じゃ、じゃあ…」

しずく「す、好き…」

しずく「好き! お兄さんのこと好きです!」

しずく「雑じゃないですよっ…き、気持ちはこもってます」

しずく「むぅ…」

207: 名無しで叶える物語(茸) 2023/03/27(月) 10:13:36.92 ID:xc767jxO
しずく「頭撫でるのやめて…」

しずく「もうっ…」

しずく「私ですか?」

しずく「サーモ…炙りオッケーなんですか?」

しずく「トーチバーナーなんて持ってるんですね…」

しずく「それなら、えんがわの炙りとか出来ます? 塩で」

しずく「おー…」

しずく「…!」

しずく「い、今のバーナー使ってるお兄さんは格好いいですよっ!」

しずく「ありがと…ってそれだけですか?」

しずく「私が言ったんだからお返し…」

しずく「あっ…好きとは言ってな…」

しずく「うぅ…」

しずく「言わないもんっ!」

しずく「そういう意地悪なとこ…好きって言えないなぁ…」

しずく「ばかお兄ちゃん…」

しずく「えへへ」

しずく「…料理が出来るお兄さんは好きだけど好きじゃない」

しずく「…出来ないままの方が好き」

208: 名無しで叶える物語(茸) 2023/03/27(月) 10:25:20.27 ID:xc767jxO
しずく「だって…」

しずく「自分のためじゃ、ないですよね?」

しずく「お兄さんが元から料理好きとかその道の人になりたいとか」

しずく「そうならともかく、違ってて」

しずく「なら、自分のためならそこそこで良いじゃないですか」

しずく「面倒だって言ってたし…」

しずく「だからきっと」

しずく「食べさせたい人がいたとか」

しずく「そういうのを喜んでくれる人とか」

しずく「…いそうで」

しずく「彼女さんとかっ」

しずく「口だけなら言えますし?」

しずく「それに…彼方さんとか…あ、あるいは愛さんのところに婿入り狙ってるとかっ」

しずく「…あり得なくはないじゃないですか」

213: 名無しで叶える物語(茸) 2023/03/27(月) 11:46:03.92 ID:xc767jxO
しずく「色々出来た方が良いのは、それはそうかもですけど…」

しずく「し、嫉妬じゃないですっ!」

しずく「かわっ…好…」

しずく「…」

しずく「お兄さん…簡単に好きって言いすぎじゃないですか?」

しずく「気持ち込めてないんじゃないですか?」

しずく「軽いなぁ…」

しずく「えー? わがままじゃないですよ」

しずく「私の好きは重いんです」

しずく「へっ? 違っ…」

しずく「そういう意味じゃなくてっ!」

しずく「重い女じゃないですからっ!」

しずく「そんなぁ…」

しずく「うー…」

しずく「また好きって言ったっ!」

221: 名無しで叶える物語(調整中) 2023/03/28(火) 13:02:48.11 ID:IGhu3q8P
しずく「私が言って欲しいって言ったのはそうですけど…」

しずく「お兄さん。私のことからかおうとしてません?」

しずく「してますよね」

しずく「してる」

しずく「何が本心ですか」

しずく「普段は嘘ばっかりじゃないですか」

しずく「そこそことか、まあまあとか、そればっかり」

しずく「お兄さんの癖は知ってますよ」

しずく「でも、そう言う誤魔化しみたいなの、されたくない時だってあるわけで…」

しずく「だ、だからって好きを連発するのは違うと思いますけど」

しずく「かわっ…っ…かわいい、ですか?」

しずく「…」

しずく「もうっ…どうしてそこで誤魔化さないんですか…」

しずく「…サーモンください」

224: 名無しで叶える物語(調整中) 2023/03/28(火) 14:43:59.72 ID:IGhu3q8P
しずく「わ、私ですか…?」

しずく「分かってます。分かってますけど…」

しずく「す、好きって言うのは簡単じゃないんですよ」

しずく「嫌いだからってわけでは…その、嫌悪感が勝って口が裂けても言いたくないなんてわけではないです」

しずく「催促止めません…?」

しずく「要求ばっかり…です、か?」

しずく「欲求不満は違いますっ」

しずく「うぅ…」

しずく「言われたいなぁ…とか、言うの止めてください…」

しずく「分かりました。分かりましたからっ!」

しずく「言い出したのは私ですし、ちゃんと守りますよ」

しずく「…コホンッ」

しずく「お、お兄さん」

しずく「…す」

しずく「好き…です…」

しずく「好きですっ、お兄さんのこと!」

しずく「うぅぅっ…こんなはずじゃ…お兄さんが追い詰められるはずなのに…っ…」

228: 名無しで叶える物語(茸) 2023/03/28(火) 20:15:48.96 ID:IGhu3q8P
しずく「はぁ…」

しずく「ちょっと…暑くないですか…?」

しずく「そうですか…」

しずく「いえ、その…て、照れてないですよっ」

しずく「照れては…」

しずく「ひゃっ…」

しずく「な、なんっ…頬になにかついてます、か…?」

しずく「えっ…お兄…さん? あの、だ、ダメですよ?」

しずく「き、キスとか、そういうのは…だっ――」

しずく「っ…」

しずく「ぅ…」

しずく「…」

しずく「あれ…?」

しずく「するわけないって…あのっ、でも今…」

しずく「汗、拭っただけ…? え…でもっ…」

しずく「…」

しずく「~~~~~~っ!」

237: 名無しで叶える物語(茸) 2023/03/29(水) 23:23:25.23 ID:l7TURhYL
しずく「お兄さん…最低ですね…」

しずく「なにがって…」

しずく「そういう、ところですよ…」

しずく「されたっ…くは…その、あの…」

しずく「だって…お兄さんですし…」

しずく「私、高校1年生なんですよ…?」

しずく「ほんの数ヶ月前まで中学生ですよ?」

しずく「分かってます…?」

しずく「え…」

しずく「子供扱いされたいわけじゃ…」

しずく「…」

しずく「必死なとこも好きって…酷い人ですね…」

しずく「そもそも、別に必死じゃないですけど…」

しずく「必死じゃないですけどっ」

240: 名無しで叶える物語(茸) 2023/03/29(水) 23:48:21.34 ID:l7TURhYL
しずく「…」

しずく「そ、そうだっ」

しずく「酢飯、なんとか余らずに済みそうですね」

しずく「へ?」

しずく「デザート…」

しずく「デザっっ…わ、私は食べ物じゃないですっ!」

しずく「言ってませんけど…それっぽい雰囲気だったじゃないですかっ」

しずく「気にしすぎって…」

しずく「もうっ…」

しずく「頭撫でるのやめてください…」

しずく「くすぐったいです…」

しずく「頬も触っちゃダメ」

しずく「…」

しずく「え、あ、はいっ」

しずく「じゃぁ…ショートケーキで…」

249: 名無しで叶える物語(茸) 2023/04/01(土) 18:54:18.79 ID:iGc+bbwE
しずく「頬にクリーム付けるなんて…」

しずく「そんなベタなことしませんよ」

しずく「…お兄さんがしても、とってあげないですからね」

しずく「え?」

しずく「お兄さん正気ですか?」

しずく「私、女子高生ですよ?」

しずく「ほんの数か月前までは中学生だった女の子ですよ?」

しずく「そんな子に、ケーキを食べさせて欲しいんですか?」

しずく「…して、欲しいんですか?」

しずく「んー…」

しずく「?」

しずく「私に、ですか?」

しずく「…」

しずく「あー…」

しずく「むっ…」

しずく「…」

しずく「…食べさせるついでに私の頬にクリーム付けるのは反則では?」

252: 名無しで叶える物語(茸) 2023/04/01(土) 19:25:52.75 ID:iGc+bbwE
しずく「触っちゃだめですっ」

しずく「自分で拭くから…」

しずく「だ、だってお兄さん絶対悪戯するじゃないですかっ」

しずく「唇触ってきそうだし…」

しずく「いっ…意識なんて、してないです、けどっ」

しずく「また好きって言う…」

しずく「…」

しずく「じゃ、じゃぁ…拭いても良いですよ」

しずく「別に意識なんてしてないですし…」

しずく「で、でもっ」

しずく「へ、変なことしたらお兄さんの指、一本減らしますよ」

しずく「がぶッッていきますからね」

しずく「…」

しずく「ん…」

しずく「…」

しずく「…」

しずく「…」

しずく「むー…何もしないなんて、お兄さん小心者ですね」

256: 名無しで叶える物語(茸) 2023/04/01(土) 21:43:56.16 ID:iGc+bbwE
しずく「噛むかもしれないですけど」

しずく「でも、そのリスクを冒してでも…」

しずく「なんて、勝負するのがお兄さんでは?」

しずく「えー…」

しずく「さ、されたかったわけじゃないですよっ」

しずく「そんなわけ、無いじゃないですかっ」

しずく「お兄さん、やらしいですよ…そういうの」

しずく「もうっ」

しずく「お兄さんってば…」

しずく「…」

しずく「えへへっ…」

しずく「違い、ますよ?」

しずく「…」

しずく「そ、そうだっ」

しずく「私、今日はもう帰りますねっ」

しずく「泊まっ…る、のは、さすがにちょっと…」

しずく「だって…」

しずく「泊まったら、お兄さんに何されちゃうか分かりませんし…」

しずく「私、女の子だから…」

259: 名無しで叶える物語(茸) 2023/04/01(土) 22:43:55.61 ID:iGc+bbwE
しずく「しないですか?」

しずく「ん…」

しずく「でも、さすがにお兄さんのところに泊まる…なんて」

しずく「この前みたいに大義名分でもない限り無理ですよ」

しずく「分かりませんか?」

しずく「私達、従兄妹なんです」

しずく「同性ならともかく、違うのに…」

しずく「ですよね?」

しずく「お兄さんもそれはちょっと…って思いますよね?」

しずく「ということで…」

しずく「うっ…」

しずく「す、好きって言うゲームは終了ですっ」

しずく「私の負けで良いですよ…」

しずく「別に、罰ゲームとかあるわけじゃないですしっ」

しずく「な、何で負けたかって…?」

しずく「…」

しずく「…」

しずく「しゅ、羞恥心の差と、あと…あとっ、軽い男と慎重な女の差ですっ!」

しずく「私、軽くないので」

しずく「体重の話じゃないですっ!」

262: 名無しで叶える物語(茸) 2023/04/01(土) 23:22:52.11 ID:iGc+bbwE
しずく「私は別に重くは…」

しずく「さっきの重いはそう言う意味じゃなくて…」

しずく「ふ、太ってなんてっ」

しずく「抱きっっ…だっ…」

しずく「え…ご褒美…?」

しずく「でもっ、それは、あのっ…」

しずく「お寿司を握ってあげましたし…」

しずく「好き好きゲームって…」

しずく「確かに言い出したのは私ですし、それで負けたのも私ですけど…」

しずく「…」

しずく「う~…」

しずく「へ、変な風に触るのは無しですよ?」

しずく「あくまで…」

しずく「あくまで私のこと…抱くだけですからねっ?」

しずく「約束してくれるなら…いい、ですよ?」

しずく「二つ返事なんて…も~…」

しずく「お兄ちゃんのえっちっ!」

264: 名無しで叶える物語(茸) 2023/04/02(日) 00:39:54.21 ID:4LmnFSYI
しずく「…良いですよ。どうぞ」

しずく「…」

しずく「…?」

しずく「お兄さん?」

しずく「前からでいいのかって…」

しずく「…」

しずく「あっ」

しずく「…う、後ろ、からで」

しずく「…」

しずく「…」

しずく「…!?」

しずく「ちょっ…お兄さっ…抱くだけってっっ」

しずく「抱き上げっ…きゃぁっ」

しずく「待っ…お兄さ…っ…!?」

しずく「べ、ベッド…?」

しずく「だ、抱くってそうい…っ…待っ…ダメっ」

しずく「本当にこれは、それは…っ…だめ…っお兄ちゃんっ…」

270: 名無しで叶える物語(茸) 2023/04/02(日) 08:46:39.35 ID:qwiOYx7d
しずく「お兄ちゃん…っ…」

しずく「だめっ」

しずく「…」

しずく「…」

しずく「…?」

しずく「お兄ちゃん…?」

しずく「…え?」

しずく「嫌だろうって…あの…どういう…」

しずく「…」

しずく「無防備…? 私が…?」

しずく「こうならないよう気をつけて欲しいからって…」

しずく「だ、だからってこんな、急に…」

しずく「ベッドに連れ去られたら怖いよっ」

しずく「口で言ってくれたら…」

しずく「あ…」

しずく「それは、その…」

しずく「口だけなら、からかったかもしれないけど…」

しずく「…でも…ばか…っ…」

271: 名無しで叶える物語(茸) 2023/04/02(日) 09:22:43.97 ID:qwiOYx7d
しずく「…うぅ」

しずく「撫でて機嫌取ろうとしてもだめ…」

しずく「ばか…」

しずく「…」

しずく「…」

しずく「お兄さん…」

しずく「私に…そういうことしたくなっちゃったんですか…?」

しずく「…なったら、大変だって話…?」

しずく「…じゃぁ、なってないんですか…?」

しずく「…そっか」

しずく「…」

しずく「…もし、私が今日は泊まるつもりだったって言ったら…」

しずく「お兄さん…」

しずく「なっちゃう?」

しずく「ならないって…絶対って言えます?」

しずく「ふ~ん…」

しずく「…」

しずく「じゃぁ、泊めてください」

しずく「ダメ? 私の貞操…守ってくれる自信、ないんですか?」

しずく「!?」

しずく「び、ビッチじゃないもん!」

しずく「こ、こんなことっ…お兄さんにしか…」

273: 名無しで叶える物語(茸) 2023/04/02(日) 09:35:30.19 ID:qwiOYx7d
しずく「怖くは、ありました…」

しずく「当たり前じゃないですか」

しずく「そんな素振り見せなかったのに…」

しずく「急に抱き上げられて、ベッドに連れ去られて…」

しずく「心身の準備だってでき…」

しずく「…」

しずく「…とにかく、急にしてきたから驚いたんです」

しずく「事前に、したいかも…とか言ってくれれば」

しずく「私、怯えたりしませんし」

しずく「ちゃんと…然るべき対応しますよ」

しずく「無理矢理は犯罪ですから」

しずく「…ね?」

しずく「んー…出来れば泊まりたいですけど」

しずく「…」

しずく「協力してくれるか…友人に聞いてみますね…」

しずく「ふふっ」

しずく「本気…ですよ?」

277: 名無しで叶える物語(茸) 2023/04/02(日) 12:43:54.14 ID:qwiOYx7d
しずく「え…誤魔化すのは禁止って…」

しずく「泊まるならお兄さんのところって正直に言わないとだめなんですか…?」

しずく「むっ…無理じゃないですかっ」

しずく「この前はまだ、緊急だったからあれですけどっ」

しずく「今はそんなことないのにっ」

しずく「なのに…」

しずく「…」

しずく「確かに、友達に迷惑かかっちゃいますよね…」

しずく「リスクから逃げ…」

しずく「…もうっ」

しずく「意地悪…」

しずく「良いですよ私だってリスクを取りますよ」

しずく「家に電話してお兄さんの家に泊めて貰うって言っちゃいますよ」

しずく「勘繰られても知りませんからねっ!」

280: 名無しで叶える物語(茸) 2023/04/02(日) 14:32:24.58 ID:qwiOYx7d
しずく「…え?」

しずく「うん…」

しずく「いいの?」

しずく「そういうわけじゃないけど…」

しずく「反対されると思って…」

しずく「違っ…」

しずく「そ、それは子供の頃の話でっ!」

しずく「今は別に…」

しずく「そ、そうだけど…」

しずく「…うん…うん…」

しずく「え? お兄さんに?」

しずく「ん…」

しずく「お兄さん。母が話したいって」

281: 名無しで叶える物語(茸) 2023/04/02(日) 14:59:22.77 ID:qwiOYx7d
しずく「…」

しずく「…」

しずく「…」

しずく「…」

しずく「…終わりました?」

しずく「…」

しずく「なんか…」

しずく「全然、なんの問題もなく許可貰えちゃいましたね…」

しずく「?」

しずく「従兄妹だとしてもですよ?」

しずく「男の人と女の子…しかも花の女子高生と2人きりって…」

しずく「心配にならないんでしょうか?」

しずく「…」

しずく「…お兄さん、もしかして女の子に興味ない人ですか?」

しずく「それはそれで…別に、否定はしませんけど…」

しずく「違うんですか?」

しずく「じゃぁ、女の子が好きですか?」

しずく「…も、もちろんって、そんなはっきり言われちゃうと反応に困りますっ」

しずく「やだなぁ…怖いなぁ…」

しずく「えへへ…」

285: 名無しで叶える物語(茸) 2023/04/02(日) 18:41:55.38 ID:qwiOYx7d
しずく「それはそうと、お兄さんなにか言われました?」

しずく「え…」

しずく「そ、それはそうですよ!」

しずく「昔ほど子供じゃないもんっ」

しずく「あの頃みたいに迷惑はかけませんよ…」

しずく「…? 年末年始…?」

しずく「あー…そう言えば、お兄さん親戚の集まりとか来ないから…」

しずく「母も父も、オフィーリアだって」

しずく「お兄さんに会いたいんですよ」

しずく「…今年は来ます?」

しずく「その行けたら行くは来ないってことでは…?」

しずく「彼方さんなんて、行けたら行くって言うと8割くらいの頻度で来ますよ?」

しずく「もー…」

しずく「私ですか?」

しずく「これと言って…え…あぁ…慌てたのは違いますよ」

しずく「ほら、子供の頃ってお兄さんが居ればお兄さんにべったりだったじゃないですか」

しずく「だから、小さい頃から大好きだものね。って母が笑い交じりに言うから…」

しずく「…」

しずく「あと…結婚する気なの? って」

しずく「子供の頃のアレ、覚えてたみたいで…からかわれました」

292: 名無しで叶える物語(茸) 2023/04/03(月) 20:41:54.01 ID:VPpwrq3E
しずく「…」

しずく「…んー」

しずく「あ…」

しずく「お兄さんお兄さん」

しずく「先にお風呂入ってきていいですよ」

しずく「私、ちょっと部活のことで電話しなきゃなので」

しずく「?」

しずく「別に気にしませんよ」

しずく「お兄さんの後だって、平気です」

しずく「もし気になるなら、お風呂洗って張り替えてくれてもいいですけど…」

しずく「そこは、お任せします」

しずく「いってらしゃい」

しずく「…」

しずく「…ふふっ」

297: 名無しで叶える物語(茸) 2023/04/03(月) 22:25:29.66 ID:VPpwrq3E
しずく「…」

しずく「…」

しずく「おにーいさーん」

しずく「…ふふっ」

しずく「入っても、良いですか?」

しずく「えー?」

しずく「…いいじゃないですか」

しずく「お背中流しますよ?」

しずく「むー…」

しずく「じゃぁ、何か着ます」

しずく「裸じゃなければ、入っても?」

しずく「…」

しずく「…ダメって言っても、入っちゃいますけどね」

301: 名無しで叶える物語(茸) 2023/04/03(月) 22:56:22.26 ID:VPpwrq3E
しずく「ふふっ」

しずく「まさか、何か着るとか言って裸で来ると思いました?」

しずく「そんなことしませんよ」

しずく「…」

しずく「さすがに、恥ずかしいじゃないですか…」

しずく「…?」

しずく「…気づいちゃいました?」

しずく「…これ、お兄さんがさっきまで着ていたシャツです」

しずく「だって、着てきたお洋服濡らしたくないですし…」

しずく「えへへ…」

しずく「これなら…多少濡れたって、別に問題ないでっっっっ!?」

しずく「っはぁっ…だ、だからってシャワーかけてくるのは酷いじゃないですかっ!」

しずく「あーっ…もしかして、脱がせたいんですか?」

しずく「やらしいなぁ…」

しずく「もうっ」

310: 名無しで叶える物語(茸) 2023/04/04(火) 17:47:07.56 ID:JJMkZ70j
しずく「…びちゃびちゃになっちゃった」

しずく「…」

しずく「えへへ…残念ですけど、透けても肌は見えませんよー?」

しずく「下着付けてますから。ほら、ちゃんと水色…」

しずく「え…?」

しずく「…」

しずく「し、下着はべ、別に?」

しずく「み、水着みたいなものだって思えば…」

しずく「特に…こう…」

しずく「…」

しずく「…」

しずく「…」

しずく「だ、だからってまじまじと見つめないでくださいっ!」

315: 名無しで叶える物語(茸) 2023/04/04(火) 19:46:20.14 ID:JJMkZ70j
しずく「…」

しずく「そんな女の子みたいに隠そうとしなくたって、大丈夫ですよ」

しずく「わざと覗いたりしませんし」

しずく「それとも…」

しずく「まさか…お兄さんじゃなくてお姉さん。だったんですか?」

しずく「ちょっ…い、いいですっ!」

しずく「見せようとしなくていいですからっ!」

しずく「ごめんなさいっ冗談ですっ!」

しずく「あ、タオル…」

しずく「タオルで隠してるならそれっぽい悪戯しないでくださいっ」

しずく「むぅっ…」

しずく「見ちゃったらどうするんですか…」

しずく「別に見るために入ってきたわけじゃ…」

しずく「…いえ」

しずく「さっきは、本当にびっくりしました」

しずく「お兄さんに襲われたみたいで…」

しずく「試してる…わけでもない、ですよ…?」

しずく「…」

しずく「もしかして…」

しずく「…どきどきとか、してます?」

318: 名無しで叶える物語(茸) 2023/04/04(火) 20:15:36.81 ID:JJMkZ70j
しずく「…私…?」

しずく「私は…」

しずく「それはもちろん…しないわけないじゃないですか…」

しずく「水着みたいなものって言っても、下着は下着ですし…」

しずく「それに…」

しずく「さっき、あんなことされたばっかりですし…」

しずく「じゃぁどうしてって…」

しずく「それは…」

しずく「違っ…違いますよ…」

しずく「おそわれるのとか、怖いのは…嫌です…」

しずく「…」

しずく「…こういうの、昔はしてたことじゃないですか」

しずく「…」

しずく「そうですよ。もう子供じゃないです」

しずく「でも、お兄さん…私のこと子供扱いしてばっかりだから…」

しずく「子供じゃなくて妹って…ほぼ同じですよ…そんなの…」

319: 名無しで叶える物語(茸) 2023/04/04(火) 21:52:01.34 ID:JJMkZ70j
しずく「…」

しずく「…えっと、でも、あれですよ」

しずく「さっき、お兄さんに驚かされたじゃないですか」

しずく「そうですよ。凄く、驚いて…」

しずく「だから、ちょっと仕返し…みたいな…」

しずく「お兄さんを試すとか、怖いことされたいとかじゃないです」

しずく「当たり前じゃないですか…」

しずく「さ、されるにしても?」

しずく「もちろん、普通に…こう、嫌な気持ちにならないようにして欲しいですし…」

しずく「…」

しずく「…」

しずく「…!」

しずく「…っっっなっ…なんっ…なんてこと言わせるんですかっ!」

しずく「もうっ!」

しずく「…あっ」

しずく「…」

しずく「せ、背中…叩くと良い音しますね…」

しずく「…えへへっ」

しずく「あっ…やっ…た、叩くのだめっ! 暴力反対っ!」

しずく「シャワー! シャワーかけて良いからっ!」

324: 名無しで叶える物語(茸) 2023/04/04(火) 23:53:50.52 ID:JJMkZ70j
しずく「…うぅ」

しずく「濡れ鼠…」

しずく「お兄さんって…女の子濡らすの好きなんですか?」

しずく「否定する割には、目の前にびしょ濡れな女の子がいますよね…?」

しずく「自業自得って…得してるところそんなにないんですけど」

しずく「むー…」

しずく「…」

しずく「…背中だけ、やってあげますよ」

しずく「さっき、叩いちゃいましたし…」

しずく「わ、私はいいですよっ」

しずく「やって欲しいからじゃなくて、お詫びです」

しずく「 お わ び 」

しずく「だから、私の身体に触ろうとか…」

しずく「考えちゃだめですよ?」

しずく「振りって…」

しずく「…もうっ」

しずく「なに馬鹿なこと言ってるんですか」

しずく「…えっち」

329: 名無しで叶える物語(茸) 2023/04/05(水) 23:33:00.92 ID:5f/9Y7zT
しずく「昔は…昔も、私からおねだりしていたんでしたっけ」

しずく「お兄ちゃんと一緒が良いって」

しずく「…」

しずく「その頃はまだ、私もお兄さんも抵抗なんて無くて、異性とかそう言う意識も全くなくて」

しずく「ただ、好きか嫌いかみたいな感じしかなくて」

しずく「お兄さんは普通にお世話してくれていましたし」

しずく「私はお兄さんにべったりで」

しずく「…そうですよ」

しずく「今も昔も変わらず、好意的ですよ。私は」

しずく「…お兄さんが洗ってくれるから」

しずく「私も私もって、弱い力で一生懸命になって…」

しずく「…今は、どうですか?」

しずく「力加減は…気持ちいいですか?」

しずく「なら、よかったです」

330: 名無しで叶える物語(茸) 2023/04/05(水) 23:47:33.04 ID:5f/9Y7zT
しずく「ま、前は自分でやってくださいね?」

しずく「私…触るのはちょっと…」

しずく「そんな強く拒否しなくたっていいじゃないですか」

しずく「それはそうですけどっ」

しずく「なっ…触ったらビンタですよビンタっ!」

しずく「思いっきり、ばしんっっってしますよっ!?」

しずく「もうっ…女の子の身体に触るのは犯罪ですよ…」

しずく「合意のうえならいいですけど、私は駄目って言ってますから」

しずく「背中って…」

しずく「やですよ」

しずく「脱がなくちゃいけないじゃないですか」

しずく「うーん…」

しずく「いえ、それは分かります。それは…」

しずく「えー…」

しずく「お兄さんの裸と私の裸、見たら犯罪なのは私の方ですけど」

しずく「う゛っ」

しずく「入ってきたのは私です…はい…」

しずく「…」

しずく「そ、そんなに…興味あります…?」

331: 名無しで叶える物語(茸) 2023/04/05(水) 23:59:03.28 ID:5f/9Y7zT
しずく「…」

しずく「…」

しずく「…」

しずく「…向こう」

しずく「向こうっ、向こう向いててくださいっ」

しずく「そのっ」

しずく「お兄さんのせいで貼り付いてて気持ち悪いですし…」

しずく「だ、だから…」

しずく「でもっ、絶対見ちゃダメですからねっ」

しずく「絶対っ」

しずく「前振りでも鶴の恩返しでも何でもないですっ」

しずく「少しでも見たら、責任取らせますから…」

しずく「…」

しずく「…」

しずく「…駄目ですよ」

しずく「絶対、振り向かないでくださいね…」

332: 名無しで叶える物語(茸) 2023/04/06(木) 00:12:05.08 ID:or+lXdPQ
しずく「…も、もう…いい、ですよ」

しずく「…」

しずく「残念ですけど、タオルは使いますよ。もちろんっ」

しずく「見られるのは…恥ずかしいですし…」

しずく「え? あ…出て行かなくていいですよっ」

しずく「そんなっ、シャワーだけじゃ温まれないじゃないですかっ」

しずく「お兄さんが入ってきたならアウトですけど」

しずく「私からなのでギリギリセーフですから」

しずく「…良いじゃないですか。少しくらい」

しずく「…ね? お兄ちゃん」

しずく「何がしたいって…」

しずく「…」

しずく「昔みたいに、仲良くしたい…って言ったら、信じてくれますか?」

しずく「お財布からお金抜いたりしませんってばっ…」

しずく「援助交際してるわけでもありませんし…」

しずく「裏って…」

しずく「お兄さんに嫌われるようなこと…するつもりなんてないですから」

357: 名無しで叶える物語(茸) 2023/04/15(土) 21:53:04.31 ID:dLVUjjh+
しずく「お兄さんは信じていないみたいですけど」

しずく「私としては…本当に仲良くしたいって思ってるんですよ?」

しずく「…なんですかそれ」

しずく「親が許してくれているわけですし、関係も単純明快」

しずく「警察や近隣住民の誰かに何か言われたって」

しずく「お兄さんが堂々と、そして私が嘘偽りなく答えれば良いだけじゃないですか」

しずく「警察から両親に連絡させたって何にも問題ありませんし」

しずく「ね?」

しずく「…ふふっ」

しずく「お兄さんってば、やっぱり臆病じゃないですか」

しずく「はぁ…」

しずく「…」

しずく「…」

しずく「そうだ」

しずく「どうしてもって言うなら…」

しずく「背中を流す権利くらい、あげても良いですよ?」

しずく「そうですか」

しずく「別に、私は構わないですよ」

しずく「お兄さんが、女の子の肌に触れる貴重なチャンスを逃すだけですし」

361: 名無しで叶える物語(茸) 2023/04/15(土) 22:12:30.46 ID:dLVUjjh+
しずく「…」

しずく「…」

しずく「…」

しずく「…お兄さん。もう少し広いお家にお引越しする気はありません?」

しずく「えー…」

しずく「なんでって…」

しずく「聞きます?」

しずく「聞かないで察するとか…」

しずく「むー…」

しずく「…」

しずく「昔みたいに、一緒に湯船に入ろうかなと」

しずく「こ、殺しませんってばっ!」

しずく「社会的にも!」

しずく「一緒にお風呂入ったくらいじゃどうにもなりませんよ」

しずく「…」

しずく「お兄さんが、下手に自慢したりしなければ…」

しずく「ですけどね?」

364: 名無しで叶える物語(茸) 2023/04/15(土) 22:57:22.20 ID:dLVUjjh+
しずく「自慢にならないとか…酷くないですか?」

しずく「誰もが知るほど…」

しずく「それこそ国民的かと言われればそうではないかもしれないですけど」

しずく「でも…」

しずく「桜坂しずく。なんですよ?」

しずく「虹ヶ咲学園のスクールアイドル同好会、桜坂しずく」

しずく「そこそこ名前が売れているんです」

しずく「お兄さんやお兄さんの友人くらいは知っていると思います」

しずく「その人達の妹さん達だって知っているかもしれないです」

しずく「…だから」

しずく「多少の自慢にはなると思いますけど」

しずく「じ、自慢されたいわけでは…ない、ですよ?」

しずく「だけど」

しずく「…貴重だって、ちょっとは思って欲しいなって」

366: 名無しで叶える物語(茸) 2023/04/15(土) 23:54:44.13 ID:dLVUjjh+
しずく「…だって。お兄さんが自慢にならないって言うから…」

しずく「…」

しずく「お兄さん、失言ばっかり」

しずく「やっぱり私のこと嫌いですか?」

しずく「それはそうですよ」

しずく「何回だって聞きます」

しずく「…不安にさせたのはお兄さんじゃないですか」

しずく「昔はあんなに…」

しずく「褒めたりしてくれてたのに」

しずく「意地悪なこというだけで…」

しずく「さっきまでの好きは嘘なのかなって思いますよ。誰でも」

しずく「…え?」

しずく「照れ隠し…?」

しずく「…」

しずく「そう言えば誤魔化せるとか思ってません?」

しずく「どうだか」

しずく「信じられないなぁ」

しずく「責任取って、証明して欲しいなぁ」

しずく「んー…」

しずく「…」

しずく「じゃぁ…今日も、一緒に寝てくれませんか?」

374: 名無しで叶える物語(茸) 2023/04/16(日) 14:29:43.97 ID:iiUapxub
しずく「はぁ…」

しずく「…」

しずく「…」

しずく「…お兄さん。私も湯船に浸かりたいんですけど」

しずく「どうします?」

しずく「出るか…ちょっとだけ、狭い思いをするか」

しずく「…」

しずく「…迷わず、出る方選ぶんですね」

しずく「別に、良いですけど」

しずく「お兄さん」

しずく「…」

しずく「いえ、またあとで」

376: 名無しで叶える物語(茸) 2023/04/16(日) 16:47:49.48 ID:iiUapxub
しずく「…あれ?」

しずく「お兄さん、本当にベッド1つしか用意しなかったんですね」

しずく「んー…」

しずく「確かに、潜り込んだかもしれませんけど」

しずく「ふふっ。冗談ですよ」

しずく「お兄さん」

しずく「…」

しずく「…」

しずく「お兄さん」

しずく「…お兄ちゃん」

しずく「ねぇ…」

しずく「…私のこと、好き?」

380: 名無しで叶える物語(茸) 2023/04/16(日) 17:42:27.07 ID:iiUapxub
しずく「そんな冗談みたいな言い方は、やだ」

しずく「…好きって言われたい」

しずく「本当に…ちゃんと、言われたい…」

しずく「…」

しずく「なーんて…」

しずく「えへへっ」

しずく「冗談、ですよっ」

しずく「冗談…」

しずく「…」

しずく「むー…」

しずく「なんで頭撫でるんですか…」

しずく「かわいいとか言ったら、怒りますよ」

しずく「まだ怒ってないですよ。まだ」

383: 名無しで叶える物語(茸) 2023/04/16(日) 18:41:15.97 ID:iiUapxub
しずく「…もう寝るんですか?」

しずく「…」

しずく「女の子と並んで寝るのに慣れてますね」

しずく「もしかして…」

しずく「…?」

しずく「まだ何にも言ってないです」

しずく「…確かに、彼女さんがいるんじゃって言おうとしましたけど」

しずく「もうっ」

しずく「…」

しずく「…本当にいないんですか?」

しずく「しつこくないですっ」

しずく「…変な女の子に引っかかりそうなので」

しずく「え…わ、私のどこが男慣れしてるんですかっ」

しずく「いないですよっ。私…付き合ってる人なんて…一回も!」

しずく「なっ…っ…これは…」

しずく「こう、してるのは…っ…お兄さん…だけで…」

しずく「本当だからっ!」

385: 名無しで叶える物語(茸) 2023/04/16(日) 19:34:35.99 ID:iiUapxub
しずく「違うって言ったのに…」

しずく「…」

しずく「う…わ、私と同じって…」

しずく「何回も聞かれるのは嫌…ですか…」

しずく「…」

しずく「ごめんなさい…」

しずく「でもっ、あれですよ…」

しずく「お兄さんのこと馬鹿にしているわけじゃないですよ」

しずく「彼女さんがいないとか、出来ないとか…そういう…」

しずく「ただ…」

しずく「…」

しずく「お兄さんは、私に恋人がいたら…どう思いますか?」

しずく「嫌に、なったりとか――」

しずく「え…その方がいいって…嬉しいってことですか? 私に恋人がいてくれた方が良いって…」

しずく「…お兄さん」

388: 名無しで叶える物語(茸) 2023/04/16(日) 21:13:17.30 ID:iiUapxub
しずく「恋人がいたら…お兄さんにこんなこと…」

しずく「しない…かも、しれないですけどっ」

しずく「でもっ…」

しずく「…じゃぁ」

しずく「私のこと…やっぱり嫌い…」

しずく「っ…」

しずく「振り向かないでくださいっ」

しずく「こっち…見ないでください…」

しずく「見たら…私…っ…」

しずく「…」

しずく「妹…妹って…私、お兄さんにとってはただの妹なんですか?」

しずく「…」

しずく「…妹じゃないですよ」

しずく「妹じゃない」

しずく「…私は、従妹であって妹じゃないです」

しずく「…だから」

しずく「…」

しずく「…いいじゃないですか」

392: 名無しで叶える物語(茸) 2023/04/16(日) 23:35:12.52 ID:iiUapxub
しずく「…良くない、ですか?」

しずく「…」

しずく「…」

しずく「お兄さん」

しずく「お兄さん…」

しずく「…」

しずく「どっきりとかじゃないですよ…」

しずく「私…」

しずく「…そんなに、魅力ないですか?」

しずく「やっぱり、彼方さん達みたいに胸が大きい人が良いんですか?」

しずく「…」

しずく「私、まだ高校1年生ですよ?」

しずく「大きく、なるかもしれないですよ…?」

しずく「…妹じゃないって、言ってるじゃないですか」

394: 名無しで叶える物語(茸) 2023/04/16(日) 23:49:04.36 ID:iiUapxub
しずく「…」

しずく「…妹でもいいじゃないですか。従兄妹ならセーフですよ?」

しずく「だって…お兄さんがそればっかり気にするから…」

しずく「…」

しずく「世間体と私、どっちが大事なんですか?」

しずく「…」

しずく「…」

しずく「そこは迷わず、私って言ってくれないとダメですね…」

しずく「…ダメなんですか?」

しずく「どうしても?」

しずく「絶対…?」

しずく「何が何でも?」

しずく「…私のこと好きですか?」

しずく「妹とかどうとかじゃなくて…そのまま、恋人にしたいかって意味で…」

しずく「…ね?」

しずく「好き?」

395: 名無しで叶える物語(茸) 2023/04/16(日) 23:52:49.55 ID:iiUapxub
しずく「…」

しずく「その、好きか嫌いかで言えば…って前置き嫌いです」

しずく「素直に答えてください」

しずく「…嫌いなら、ここまでにします」

しずく「こういうことするのも」

しずく「遊びに来るのも、誘うのも…」

しずく「私の…胸の内も。全部」

しずく「でも、でもですよ?」

しずく「好きって言ってくれるなら」

しずく「私のこと、好きなら…」

しずく「…」

しずく「世間体が気にならない年齢になるまでは…かわいい妹でいてあげます」

しずく「ただただ、仲の良い妹とお兄さんでいられるように、努めてあげます」

しずく「どうですか?」

しずく「…好き、ですか?」

400: 名無しで叶える物語(茸) 2023/04/17(月) 10:49:17.87 ID:PRMytsdl
しずく「狡いですか…?」

しずく「そうかもしれないですね」

しずく「…別に、否定する理由もありませんし」

しずく「だって、狡くないとお兄さんは断るじゃないですか」

しずく「煙に巻くように…色々と、時には酷いことを言って」

しずく「こうでもしなきゃ、お兄さんはどうせまた…からかうじゃないですか」

しずく「それに…」

しずく「ずっと…会うのを避けてた今までみたいに」

しずく「のらりくらり…逃げようとするじゃないですか」

しずく「…」

しずく「…」

しずく「…だから、追いかけちゃうんですよ」

しずく「嫌なら嫌って…はっきり言ってください」

417: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2023/04/22(土) 20:39:41.89 ID:iYyivPp7
しずく「…」

しずく「…」

しずく「…」

しずく「困ります? 困っちゃってます?」

しずく「…自業自得ですよ」

しずく「お兄さんがずっと、ずぅっと右顧左眄に逃げ回るから」

しずく「困ることになっちゃってるんですよ?」

しずく「…私が嫌なら嫌って言えば良いですし」

しずく「好きなら好きって言ってくれればそれで解決ですよ?」

しずく「…さっきまでのお遊びみたいなのはノーカンに決まってるじゃないですか」

しずく「え…?」

しずく「…」

しずく「…まぁ、私は」

しずく「…」

しずく「私が何も言わないのは狡いって…」

しずく「言わせます? 普通…私に」

しずく「幻滅した? って聞くテンションじゃないですよね。それ」

しずく「もうっ…」

419: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2023/04/22(土) 20:54:27.91 ID:iYyivPp7
しずく「…むー」

しずく「…」

しずく「…私が言えば、応えてくれるんですか?」

しずく「答えて。じゃないですよ? 応えて。ですよ?」

しずく「…私が言わないのはせめてもの情けですから」

しずく「…逃げ場、無くなっちゃいますよ?」

しずく「え?」

しずく「あ…」

しずく「もうないのは…そう、ですけど」

しずく「…」

しずく「もしかして」

しずく「仕切り直し狙ってません?」

しずく「私が恥ずかしがって有耶無耶になるのを狙ってますよね」

しずく「狙ってますよね?」

しずく「…背中、抓って良いですか?」

しずく「…」

しずく「ぎゅーっ」

しずく「その痛いは私の痛いかもしれませんけどね」

420: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2023/04/22(土) 21:10:18.89 ID:iYyivPp7
しずく「んー…」

しずく「妹でいるっていうことに嘘偽りはありませんよ」

しずく「妹…というより、従兄妹ですけどね」

しずく「ただの仲が良い従兄妹」

しずく「多少親密でも大きな問題のない従兄妹」

しずく「泊まったり、遊んだり…2人でいたって問題ない関係」

しずく「…子供っぽい従妹に連れ回される優しい従兄」

しずく「そんな感じで付き合ってくれればいい感じじゃないですか」

しずく「…お兄さん」

しずく「私は――」

しずく「っ…」

しずく「…」

しずく「言えって催促した癖に」

しずく「言おうとしたら手で口塞ぐのは酷くないですか?」

421: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2023/04/22(土) 21:20:38.75 ID:iYyivPp7
しずく「…言わない方が良いって」

しずく「じゃぁ、私のこと嫌――」

しずく「違うって何が違うんですか」

しずく「…」

しずく「…」

しずく「…互いに言わないままの関係の方が良いって」

しずく「何が良いんですか?」

しずく「私は知りたいです」

しずく「…?」

しずく「従兄妹じゃなくなるって」

しずく「…」

しずく「…」

しずく「!」

しずく「それって――」

しずく「それってどういう意味ですか?」

しずく「教えて? ね? 教えてよ…お兄ちゃん」

423: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2023/04/22(土) 21:32:59.91 ID:iYyivPp7
しずく「声…作ってないですよ?」

しずく「そういう声なの」

しずく「…」

しずく「耳元で囁かれるの嫌なんですか?」

しずく「ふふっ」

しずく「…お兄さんっ」

しずく「おにーさんっ」

しずく「 わ・た・し 」

しずく「むぐっ」

しずく「…」

しずく「…むふむふむー」

しずく「っはっ」

しずく「…」

しずく「ぁー…」

しずく「…布団に付いてた毛か何かが口についちゃって…」

しずく「ん…」

しずく「お兄さん、頭撫でるの好きですよね」

しずく「…撫でやすいって」

しずく「そう、かなぁ…」

424: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2023/04/22(土) 22:03:22.68 ID:iYyivPp7
しずく「…本当に、言い合わないままの関係が良いんですか?」

しずく「お兄さんも、私も」

しずく「…」

しずく「…お兄さんお兄さん」

しずく「…こっち見てください。こっち」

しずく「ねぇ、お兄さん」

しずく「我慢できなかったら、言っても良いですか?」

しずく「好きって」

しずく「あっ、言っちゃった」

しずく「えへへっ」

しずく「わざとじゃないですよー」

しずく「口が滑っちゃって」

しずく「…」

しずく「…えへへ」

しずく「…え?」

しずく「きゃぁっ」

しずく「てっ…ど…ど、どう手が滑ったら抱きしめるんですかっ!?」

しずく「!?」

しずく「好きって…い、今言いますか!?」

しずく「~~~~~~~~っ!」

429: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2023/04/22(土) 22:14:20.39 ID:iYyivPp7
しずく「か、からかってなっ…」

しずく「やっ…」

しずく「耳元で囁かっ…」

しずく「~~~っ!」

しずく「ひゃんっ」

しずく「おにいさっ…」

しずく「おにっ…」

しずく「お兄さんっ!」

しずく「はぁ…はぁ…」

しずく「わ、私達…従兄妹ですよ?」

しずく「ちょっとスキンシップの域――」

しずく「え…」

しずく「あ…す、好きって言い合いましたけど…っ」

しずく「恋びっ…まっ…まだ恋人になったわけじゃっ…」

しずく「だ、だめっ!」

しずく「…だめっ」

しずく「…ま、まだ…高校1年生だから」

しずく「…」

しずく「…へっ?」

しずく「そ、そこまでする気はないって…」

しずく「…」

しずく「っ…う…うぅっ…もーっ!」

しずく「ばかっ!」

433: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2023/04/22(土) 22:37:51.27 ID:iYyivPp7
しずく「節度は守ってくださいね」

しずく「…」

しずく「?」

しずく「お風…」

しずく「あれはっ…」

しずく「い、言い訳は…でき、ないですけど…」

しずく「…」

しずく「…はい」

しずく「気を付けます」

しずく「…」

しずく「…どこまでならセーフか、明日、ちゃんと線引きしませんか?」

しずく「…ねっ?」

しずく「えへへ」

しずく「よろしくね」

しずく「お兄ちゃんっ」

435: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2023/04/22(土) 22:45:13.51 ID:iYyivPp7
関係が変わったので終わり

引用元: しずく「急にごめんなさい。今日、お兄さんの家に泊めて貰えませんか?」