1: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/03/29(日) 23:13:36.930 ID:lAltlra/0NIKU.net
課長「暇か?」
右京「暇っぽいですねぇ」
課長「なんだ、その『ぽい』ってのは。珍しく砕けた表現だな」
右京「……ああ、僕としたことが。つい、つられてしまいました」
課長「つられたって何に? らしくもなく、何かに感化されちゃったとか?」
右京「ええ、おそらくこの『艦隊これくしょん』の影響でしょうか」
課長「かんたいこれくしょん……なんだそりゃ。DVDってことは、映画かなんかか?」
右京「正確には、ブルーレイディスクですが」
右京「『艦隊これくしょん』、ブラウザゲームを原作としたアニメーション作品です」
右京「都内のマンションから発見された男性遺体の件で、押収したディスクの中に入っていました」
課長「へー。警部殿がアニメか、似合わないね」
右京「僕自身、アニメには興味が無かったのですが……気になるキャラクターがいましてね?」
右京「この子。白露型駆逐艦夕立です」
課長「なんか、変わった名前だな。軍艦みたいな」
右京「そうっ。そうなんですよー、この作品は実在した戦艦を少女に見立て、いわゆる擬人化をしているんです」
右京「暇っぽいですねぇ」
課長「なんだ、その『ぽい』ってのは。珍しく砕けた表現だな」
右京「……ああ、僕としたことが。つい、つられてしまいました」
課長「つられたって何に? らしくもなく、何かに感化されちゃったとか?」
右京「ええ、おそらくこの『艦隊これくしょん』の影響でしょうか」
課長「かんたいこれくしょん……なんだそりゃ。DVDってことは、映画かなんかか?」
右京「正確には、ブルーレイディスクですが」
右京「『艦隊これくしょん』、ブラウザゲームを原作としたアニメーション作品です」
右京「都内のマンションから発見された男性遺体の件で、押収したディスクの中に入っていました」
課長「へー。警部殿がアニメか、似合わないね」
右京「僕自身、アニメには興味が無かったのですが……気になるキャラクターがいましてね?」
右京「この子。白露型駆逐艦夕立です」
課長「なんか、変わった名前だな。軍艦みたいな」
右京「そうっ。そうなんですよー、この作品は実在した戦艦を少女に見立て、いわゆる擬人化をしているんです」
5: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/03/29(日) 23:19:45.439 ID:lAltlra/0NIKU.net
課長「へー、軍艦の擬人化ねぇー」
右京「その『艦隊これくしょん』の夕立というキャラクターが、『ぽい』という単語を多用していましてね?」
課長「ふーん」
右京「『ぽい』とは本来、『傾向がある』あるいは『しやすい』という意味合いで使用します」
右京「『粉っぽい』『埃っぽい』『飽きっぽい』『怒りっぽい』といった具合です」
右京「現在では意味変化を経て『らしい』という意味合いでも使われますねぇ」
右京「『素人っぽい』『日本人っぽい』『嘘っぽい』『男っぽい』『女っぽい』などなど」
右京「問題は、この夕立の『ぽい』の使い方なんですよー。いいですか?」
右京「『ここが教室っぽい』」
課長「え、なんだって?」
右京「『艦隊これくしょん』第一話での夕立の台詞です。これ、妙なんですよ」
課長「ここが教室っぽい……別におかしくないと思うけど」
右京「ええ。夕立が可能性を論じているのであれば、おかしくはありません」
右京「『ここが教室らしい』という意味での『ここが教室っぽい』……」
右京「ですが、この作品ではこれとは違った意味合いで使われているんです」
右京「その『艦隊これくしょん』の夕立というキャラクターが、『ぽい』という単語を多用していましてね?」
課長「ふーん」
右京「『ぽい』とは本来、『傾向がある』あるいは『しやすい』という意味合いで使用します」
右京「『粉っぽい』『埃っぽい』『飽きっぽい』『怒りっぽい』といった具合です」
右京「現在では意味変化を経て『らしい』という意味合いでも使われますねぇ」
右京「『素人っぽい』『日本人っぽい』『嘘っぽい』『男っぽい』『女っぽい』などなど」
右京「問題は、この夕立の『ぽい』の使い方なんですよー。いいですか?」
右京「『ここが教室っぽい』」
課長「え、なんだって?」
右京「『艦隊これくしょん』第一話での夕立の台詞です。これ、妙なんですよ」
課長「ここが教室っぽい……別におかしくないと思うけど」
右京「ええ。夕立が可能性を論じているのであれば、おかしくはありません」
右京「『ここが教室らしい』という意味での『ここが教室っぽい』……」
右京「ですが、この作品ではこれとは違った意味合いで使われているんです」
10: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/03/29(日) 23:24:41.830 ID:lAltlra/0NIKU.net
右京「『ここが教室っぽい』と発言するのは、夕立が主人公に施設を案内するシーンです」
右京「つまり、夕立は既に自分たちの教室がそこであると確信しているはずなんですよ」
右京「『ここが教室だ』という意味で『ここが教室っぽい』と言っているわけです。おかしいですよね?」
課長「あー、要するに。その夕立ってやつは『ぽい』を誤用してるわけだな」
右京「そうなんです。その誤用が気になりましてねぇ。気づけば夕立ばかりを目で追っていました」
右京「夕立の『ぽい』の誤用はここだけではありません。例えば、これも第一話のシーンですが」
右京「夕立が迫りくる敵の大群を前に『こんなにいるっぽい』と言います」
右京「この場合、『らしい』と推測する必要は無いわけです。目の前の状況が見えての発言なんですから」
課長「まあそうだな。見えてるなら、『こんなにいる』でいいよな」
右京「僕は最初、脚本家が文法を誤ったのだと思いました。ですが、その次のシーン」
右京「敵の攻撃を受けた夕立が悲鳴をあげるんですが……なんと叫んだと思います?」
課長「話の流れからすると……『きゃーっぽい』とか?」
右京「惜しい。夕立は敵の攻撃に驚き『ぽい~』とだけ叫びました」
課長「なんだそりゃ」
右京「そこで確信しました。この作品ではいわゆるキャラ付けのために『ぽい』を多用しているのだなと」
右京「つまり、夕立は既に自分たちの教室がそこであると確信しているはずなんですよ」
右京「『ここが教室だ』という意味で『ここが教室っぽい』と言っているわけです。おかしいですよね?」
課長「あー、要するに。その夕立ってやつは『ぽい』を誤用してるわけだな」
右京「そうなんです。その誤用が気になりましてねぇ。気づけば夕立ばかりを目で追っていました」
右京「夕立の『ぽい』の誤用はここだけではありません。例えば、これも第一話のシーンですが」
右京「夕立が迫りくる敵の大群を前に『こんなにいるっぽい』と言います」
右京「この場合、『らしい』と推測する必要は無いわけです。目の前の状況が見えての発言なんですから」
課長「まあそうだな。見えてるなら、『こんなにいる』でいいよな」
右京「僕は最初、脚本家が文法を誤ったのだと思いました。ですが、その次のシーン」
右京「敵の攻撃を受けた夕立が悲鳴をあげるんですが……なんと叫んだと思います?」
課長「話の流れからすると……『きゃーっぽい』とか?」
右京「惜しい。夕立は敵の攻撃に驚き『ぽい~』とだけ叫びました」
課長「なんだそりゃ」
右京「そこで確信しました。この作品ではいわゆるキャラ付けのために『ぽい』を多用しているのだなと」
11: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/03/29(日) 23:30:19.235 ID:lAltlra/0NIKU.net
課長「あー、バカボンパパの『~なのだ』みたいなもんだな」
右京「そう。ですが、『ぽい』というのは、キャラ付けにしてもいささか強引な気がしましてねー」
右京「気になって気になって、PCの壁紙も夕立にしてしまいました」
課長「へー。ハマっちゃったわけか」
右京「動画配信サイトの会員になり、『艦隊これくしょん』を全話視聴し終えたところです」
課長「警部殿がハマるくらいだから、面白いのか?」
右京「ストーリーに関しては洗練の余地がありますねぇ。ただ、夕立の『ぽい』の誤用は面白いと思います」
米沢「これはこれは、杉下警部がアニメの話とは。どうも」
右京「おはようございます。昨日の男性遺体の件でしょうか」
米沢「はい。現場の状況からみて、間違いなく自殺と思われるのですが……雲行きが怪しくなりまして」
右京「おおかた、動機が見当たらない、といったところでしょうか」
米沢「これまた、御明察。仕事やプライベートに悩み事はなかったようでして、一課は首をひねってます」
課長「それで、なんでお前がここに来たんだ?」
米沢「気になるデータがありまして、一応、杉下警部にお見せしようかと」
右京「気になる、データ?」
右京「そう。ですが、『ぽい』というのは、キャラ付けにしてもいささか強引な気がしましてねー」
右京「気になって気になって、PCの壁紙も夕立にしてしまいました」
課長「へー。ハマっちゃったわけか」
右京「動画配信サイトの会員になり、『艦隊これくしょん』を全話視聴し終えたところです」
課長「警部殿がハマるくらいだから、面白いのか?」
右京「ストーリーに関しては洗練の余地がありますねぇ。ただ、夕立の『ぽい』の誤用は面白いと思います」
米沢「これはこれは、杉下警部がアニメの話とは。どうも」
右京「おはようございます。昨日の男性遺体の件でしょうか」
米沢「はい。現場の状況からみて、間違いなく自殺と思われるのですが……雲行きが怪しくなりまして」
右京「おおかた、動機が見当たらない、といったところでしょうか」
米沢「これまた、御明察。仕事やプライベートに悩み事はなかったようでして、一課は首をひねってます」
課長「それで、なんでお前がここに来たんだ?」
米沢「気になるデータがありまして、一応、杉下警部にお見せしようかと」
右京「気になる、データ?」
12: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/03/29(日) 23:37:18.576 ID:lAltlra/0NIKU.net
米沢「これです。このフォルダ内のファイルを開くときにパスワードを要求されまして」
課長「開けなかったのか?」
米沢「いえ、この程度のものなら難なく」
右京「では、そのファイルの内容が気になったと?」
米沢「いえ、そちらも、いわゆるエッチな画像でして。取るに足らないものですね」
課長「じゃあ何が気になるんだよ」
米沢「そのパスワードがですね、こちら、『50605291』というものだったんです」
右京「……」
課長「特に意味は無いんじゃないか?」
米沢「いや、こういったパスワードは大概何かしらの意味が含まれていることが多いので」
米沢「もしかしたら、自殺の原因に関わる情報が得られるかも、と思った次第でして」
右京「なるほど……そういうことでしたか……」
米沢「えっ」
課長「何か分かったのか?」
右京「ええ。男性の自殺した動機……その答えが、パスワードに隠されていたっぽいですよ?」
課長「開けなかったのか?」
米沢「いえ、この程度のものなら難なく」
右京「では、そのファイルの内容が気になったと?」
米沢「いえ、そちらも、いわゆるエッチな画像でして。取るに足らないものですね」
課長「じゃあ何が気になるんだよ」
米沢「そのパスワードがですね、こちら、『50605291』というものだったんです」
右京「……」
課長「特に意味は無いんじゃないか?」
米沢「いや、こういったパスワードは大概何かしらの意味が含まれていることが多いので」
米沢「もしかしたら、自殺の原因に関わる情報が得られるかも、と思った次第でして」
右京「なるほど……そういうことでしたか……」
米沢「えっ」
課長「何か分かったのか?」
右京「ええ。男性の自殺した動機……その答えが、パスワードに隠されていたっぽいですよ?」
13: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/03/29(日) 23:43:08.508 ID:lAltlra/0NIKU.net
右京「『50605291』。この数字を逆から読むと、19250605……つまり、1925年6月5日となります」
課長「その日付が、死んだ男にとって重要な日だったってわけか?」
米沢「1925年6月5日……とくに歴史的な事件が起きたわけではないようですな」
課長「祖父か祖母の誕生日とか?」
米沢「エロ画像のパスワードにそれはないと思いますが……」
右京「米沢さん。ファイルに保存されていたエッチな画像、このキャラクターのものだったのではありませんか?」
米沢「あ、あ! そうです! で、でもよくわかりましたね!」
課長「なんのキャラクターなんだ、そいつ……あ、もしかして」
右京「はい。『艦隊これくしょん』の睦月型駆逐艦如月というキャラクターです」
右京「如月のモデルになった駆逐艦の進水が1925年6月5日ですからねぇ」
米沢「な、なるほど……!」
課長「その日付が、死んだ男にとって重要な日だったってわけか?」
米沢「1925年6月5日……とくに歴史的な事件が起きたわけではないようですな」
課長「祖父か祖母の誕生日とか?」
米沢「エロ画像のパスワードにそれはないと思いますが……」
右京「米沢さん。ファイルに保存されていたエッチな画像、このキャラクターのものだったのではありませんか?」
米沢「あ、あ! そうです! で、でもよくわかりましたね!」
課長「なんのキャラクターなんだ、そいつ……あ、もしかして」
右京「はい。『艦隊これくしょん』の睦月型駆逐艦如月というキャラクターです」
右京「如月のモデルになった駆逐艦の進水が1925年6月5日ですからねぇ」
米沢「な、なるほど……!」
15: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/03/29(日) 23:50:46.918 ID:lAltlra/0NIKU.net
右京「自殺した男性は、この如月の信奉者だったのではないでしょうか」
課長「でも、それが自殺の動機とどう繋がるんだ?」
右京「如月は『艦隊これくしょん』の第三話で轟沈……いわゆる死を迎えています」
右京「最終話でも報われず、終始不遇なキャラクターでした。おそらく、これを悲観しての自殺でしょう」
課長「いくらなんでも、それはないんじゃないか? たかがアニメのキャラクターで」
右京「価値観というものは、人それぞれです。他人の物差しでおいそれと測れるものではありませんよ」
米沢「分かる気がします……かくいう私も、敬愛する落語家の死に精神的な苦痛を覚えますから」
右京「僕も、『艦隊これくしょん』の次回作で夕立が轟沈したら、何をするか分かりません」
課長「え、続きがあるの?」
右京「制作されるようです」
課長「へー。……カイトがあんなことになっても毅然としていたアンタが、アニメのキャラでねぇ」
右京「夕立にはそれだけの魅力があるということですよ」
米沢「ははー、好きものですな。私は断然、金剛姉妹でして。夕立の魅力はさっぱり」
右京「ぽいぃ?」プルプル
END
課長「でも、それが自殺の動機とどう繋がるんだ?」
右京「如月は『艦隊これくしょん』の第三話で轟沈……いわゆる死を迎えています」
右京「最終話でも報われず、終始不遇なキャラクターでした。おそらく、これを悲観しての自殺でしょう」
課長「いくらなんでも、それはないんじゃないか? たかがアニメのキャラクターで」
右京「価値観というものは、人それぞれです。他人の物差しでおいそれと測れるものではありませんよ」
米沢「分かる気がします……かくいう私も、敬愛する落語家の死に精神的な苦痛を覚えますから」
右京「僕も、『艦隊これくしょん』の次回作で夕立が轟沈したら、何をするか分かりません」
課長「え、続きがあるの?」
右京「制作されるようです」
課長「へー。……カイトがあんなことになっても毅然としていたアンタが、アニメのキャラでねぇ」
右京「夕立にはそれだけの魅力があるということですよ」
米沢「ははー、好きものですな。私は断然、金剛姉妹でして。夕立の魅力はさっぱり」
右京「ぽいぃ?」プルプル
END
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