1: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 21:09:53.149 ID:LdDb8VYT0
あかり「お魚さんおいしそう」

3: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 21:14:03.444 ID:LdDb8VYT0
回遊する

回る

旋回する

赤座あかりちゃんも回る

世界も回る

太陽も回る

銀河も回る

すべてのものはみんなくるくると回っている

電子だって陽子だって中性子だって

くるくると回る

そして同じように

あかりちゃんも櫻子ちゃんもくるくると回るのだ

4: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 21:17:06.923 ID:LdDb8VYT0
あかり「お魚さん綺麗だなぁ」

あかり「あかり水族館に久しぶりに来たよぉ」

あかり「色んなお魚さんや」

あかり「ペンギンさんや」

あかり「カニさんや」

あかり「くらげさんがいるけど」

あかり「あかりはやっぱり」

あかり「一番大きな水槽で泳ぐ」

あかり「たくさんのお魚さんが大きく回遊している水槽を」

あかり「見るのが一番好きだなぁ」

5: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 21:19:18.301 ID:LdDb8VYT0
あかり「キラキラしてて幻想的で」

あかり「あかりいつまで見てても飽きないよぉ」

櫻子「あれ?あかりちゃん?」

あかり「あれ?櫻子ちゃん??」

櫻子「こんなところで会うなんて偶然だね!」

あかり「わぁ!偶然だねぇ櫻子ちゃん!」

6: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 21:23:09.397 ID:LdDb8VYT0
櫻子「あかりちゃんもお魚さんとか見るの好きなの?」

あかり「そうだよぉあかりいつまでも見る事が出来るなぁ」

櫻子「私も!」

あかり「うん!」

櫻子「・・・・・・・・・」

あかり「・・・・・・・・・」

お互いに言葉を交わさず水槽を見つめる

本当に海の中から見上げているように

水槽は巨木のように高くそして何処までも広い

7: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 21:25:20.422 ID:LdDb8VYT0
櫻子「あかりちゃんはお魚さんに詳しいの?」

あかり「そんなことないよぉ」

あかり「ただ見てるだけで」

あかり「種類とかは全然だよぉ」

櫻子「そうなんだ」

あかり「あ!でも!ハンマーヘッドシャークとマンボ―みたいなのは」

あかり「強烈過ぎてあかり覚えちゃったなぁ」

あかり「きっかいな姿だよぉ」

櫻子「たしかに!ハンマーヘッドシャークかっけぇ!」

あかり「櫻子ちゃんはお魚詳しいのぉ?」

櫻子「んーそうだなぁ・・・」

8: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 21:29:13.457 ID:LdDb8VYT0
櫻子「あそこの似てる三匹はマアジ・ロウニンアジ・ギンガメアジ」

櫻子「平べったいマダラトビエイ・ホシエイ・ヤジリエイ」

櫻子「他にもクエとかナンヨウツバメウオとかいるよ」

あかり「わぁ!凄いねぇ!」

櫻子「えへへぇちょっと自信あるんだ」

あかり「あかりにはできないよぉ」

櫻子「ずっと見てると、なんとなくわかってくるよ」

あかり「そうなんだぁあかりはまだまだ初心者だねぇ」

櫻子「ゆっくり見ようよ」

あかり「うん!」

9: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 21:33:36.953 ID:LdDb8VYT0
櫻子「・・・・・・・・・」

あかり「・・・・・・・・・」

櫻子「・・・・・・・・・」

透明な水槽にうつる再現された海

周りに人はいなくて

照明の絞られた館内は水の織り成す幻想的な光の反射で

夢見心地な空間を演出していた

外の鮮烈な明るさと比べると

館内はそのまま異世界へと繋がっているようだった

平日の朝だった

あかりちゃんと櫻子ちゃんは平日の朝

偶然そこにいた

制服は着ていなかった 👀
Rock54: Caution(BBR-MD5:0be15ced7fbdb9fdb4d0ce1929c1b82f)

10: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 21:37:25.680 ID:LdDb8VYT0
そのことについてお互い

何も聞かなかった

くるくると回遊するお魚さんたち

大きな流れに乗って

宇宙の星のようにキラキラ煌めきながら

ゆっくりと回遊している

そこに理由はいらなかった

海というおおきな存在と

自分がお魚さんであるという事実以外

この銀河のように織り成す光の円転を表すことに

理由の存在する余地はなかった

それと同じだった

12: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 21:41:50.660 ID:LdDb8VYT0
あかり「綺麗だねぇ」

聞くというよりも木霊する為の言葉だった

だから櫻子ちゃんも応えなかった

それは理由のいらない言葉だから

しばらくしてから櫻子ちゃんは言った

櫻子「そろそろ私は行くね」

あかり「あ!うん。それじゃあね、櫻子ちゃん」

13: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 21:43:16.210 ID:LdDb8VYT0
櫻子「お先に、あかりちゃん。最後に一ついいかな」

あかり「なぁに?櫻子ちゃん」

櫻子「かわいい服だね、水族館にぴったりだよ」

あかり「ありがとう、櫻子ちゃん」

櫻子「制服と水族館は合わないんだ。誰もパリでフルブレックファストを食べないようにね」

あかり「・・・・・・・・・」

櫻子「今度そのお洋服に合うアクセサリーを紹介するね、それじゃあ」

最後まで二人はお互いここにいる理由を話さなかった

14: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 21:47:04.901 ID:LdDb8VYT0
水槽を眺める

この既存の世界、

お互いの枠組みもなく

回遊するお魚さんたちは何を考えているのだろうと

あかりちゃんは思ってそこで

あかりちゃんは水槽を離れた

なぜだか水槽に引き込まれそうな恐怖を

感じたからだった

第一次世界大戦、深淵を覗いたウィトゲンシュタインのときのように

16: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 21:50:39.640 ID:LdDb8VYT0
あかり「今日は櫻子ちゃんと一杯喋ったよぉ」

あかり「えへへぇ久しぶりに櫻子ちゃんとこんなにも」

あかり「喋った気がするなぁ」

あかり「あかり、とっても嬉しいよぉ」

あかり「明日も櫻子ちゃんと一緒に一杯お喋りしたいなぁ」

あかり「・・・・・・・・・」

あかり「明日も水族館に行けば櫻子ちゃんに会えるかなぁ」

あかり「・・・・・・・・・」

18: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 21:53:46.835 ID:LdDb8VYT0
あかり「・・・・・・・・・」

あかり「あかり明日も行くよぉ」

あかり「それであの大水槽の前で」

あかり「櫻子ちゃんと一緒にまたお魚さんを見るんだぁ」

次の日あかりちゃんは水族館へ行って

大水槽の前で櫻子ちゃんを待っていた

夕方

閉館まで待っても

櫻子ちゃんは現れなかった

19: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 21:57:59.868 ID:LdDb8VYT0

生徒会

櫻子「あかりちゃん今日も学校お休みしたんだね・・・」

櫻子「もしかしたら」

櫻子「今日もまた水族館に・・・」

櫻子「でも二日連続なんてね・・・」

櫻子「・・・・・・・・・」

向日葵「今日は生徒会のお仕事が多くて忙しから」

向日葵「おうちに電話しとかないとですわ」

櫻子「あ!そうだったな向日葵」

20: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 22:01:08.465 ID:LdDb8VYT0
櫻子(確かあの水族館の入場は六時まで・・・)

櫻子「生徒会の仕事って何時くらいに終わるっけ」

向日葵「六時頃には終わるかしら・・・」

櫻子(間に合わないか・・・)

櫻子(ううん、それにあかりちゃんがいるとは限らないしね)

向日葵「さて仕事も多いし生徒会室に早くいかないとですわ」

櫻子「言われなくても行くっての!」

21: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 22:04:15.815 ID:LdDb8VYT0


あかり「今日は櫻子ちゃんこなかったなぁ」

あかり「でもそれは仕方ないよねぇ・・・」

あかり「あかり今日も休んじゃった」

あかり「でもいいよぉ」

あかり「今日もお魚さんたち一杯見れたし!」

あかり「それになんだか櫻子ちゃんの」

あかり「言った通りお魚さんたちの見分けが」

あかり「出来る様になってきたよぉ」

あかり「えへへぇ、お魚さん!あかりお魚さんたちだぁいすき!」

22: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 22:06:22.860 ID:LdDb8VYT0
あかり「それにあかりは」

あかり「ずっと学校に行ってないからね・・・」

あかり「ずっとずっと・・・」

あかり「だからあかりのこともう」

あかり「みんな全然気にしないだろうし」

あかり「あかりはいつ水族館にきても大丈夫だから」

あかり「だから・・・」

あかり「・・・・・・だから」

あかり「・・・・・・・・・」

23: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 22:09:17.853 ID:LdDb8VYT0
あかり「えへへぇでも、あかり昨日櫻子ちゃんと」

あかり「一杯話せて良かったよぉ」

あかり「あかり、とっても嬉しい」

あかり「うれしいよぉ・・・」

あかり「・・・・・・・・・」

あかり「・・・・・・・・・」

布団に入る

唇を固く絞める

涙が出てくる

24: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 22:15:44.275 ID:LdDb8VYT0
「どうしてあかりはそうなんだ」

夜になると襲ってくる自己嫌悪

悪辣な星が降りてくるように

暗い感情に苛まれる

常闇から風が吹いてくるように

恐怖に憑りつかれる

あかりちゃんは何処か内側に入ろうともがいて

布団の中で丸くなる

それでもなお抑えきれない恐怖に

目を瞑る

「あかりは消えてしまいたい」

「あかりはもう限界なんだよお」

25: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 22:17:57.197 ID:LdDb8VYT0
「あの綺麗なお魚さんたちの一匹に」

「どうしてあかりはなれなかったの」

「あかりは無限の海の中でただ泳ぐ」

「そんな小さなモノで良かったのに」

「あかりはこんなにも酷く胸を」

「苦しませている」

27: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 22:20:22.607 ID:LdDb8VYT0
「それはきっとあかりは悪い子だからだよね」

「それなら仕方ないよねそれは多分」

「あかりへの罰だということだから」

「だけどそうだったとしてもあかり」

「こんなにも苦しいのには無理だよ」

「あかり、もう耐えられない」

「あかりはもう・・・」



「・・・あかりにとって人生はあまりに暗く重いよぉ」

29: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 22:24:33.205 ID:LdDb8VYT0
覚めながら夢を見る

茫洋とした感覚が

現実感を喪失させるからだ

そして時に

その感覚は夢を現実的にみせることだってある

逆流は常に

流れあるものに起こりうる

流動的な事柄は全て

いついかなる時にその潮流を変えるのか

誰にもわからないからだ

セーヌもラインも悠久ではない

あかり「此処は・・・どこ・・・?」

櫻子「ここは海王星だよあかりちゃん」

あかり「櫻子ちゃん!」

30: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 22:28:02.686 ID:LdDb8VYT0
櫻子「こんばんは」

あかり「どうしてこんなところにいるの?」

櫻子「それは私が海王星人になったからだよ!」

あかり「海王星・・・?」

櫻子「そうだよ。地表は全部海で」

櫻子「空はたくさんの魚が泳いでる」

櫻子「あかりちゃんは海の王様、海王星にきたんだよ」

あかり「わぁ!すごいなぁ!」

32: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 22:31:35.074 ID:LdDb8VYT0
櫻子「どう?あかりちゃん」

あかり「すごいよぉ!」

あかり「見渡す限り、あかりの大好きな青い海が広がってて」

あかり「空ではたくさんのお魚さんが」

あかり「渡り鳥のように泳いでるよぉ!」

櫻子「なんてったってここは海王星だからね」

あかり「海王星ってすごいんだねぇ」

櫻子「そうだよ太陽系第八惑星はこの系内惑星で一番」

櫻子「優しい色をしているからね」

あかり「わぁい!あかり海王星さんだぁいすき!」

33: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 22:36:08.432 ID:LdDb8VYT0
櫻子「よかった。いっしょにお魚さんに乗ろうよ」

あかり「うん!あかりわくわくだよぉ」

櫻子「あかりちゃんはこのジャイアントシャベルノーズレイっていう魚に乗って!」

あかり「わぁ!ひらめみたいなのに、大層な名前だよぉ!」

櫻子「私はハンマーヘッドシャークでいくから!」

あかり「かっこいいよぉ!」

あかりちゃんはお魚さんに乗って飛んで行く

カスティーリャを駆け抜ける風よりも早く

彼らが目指したものよりあかりちゃんには大切なものが必要だったから

35: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 22:39:41.889 ID:LdDb8VYT0
星は正直に五角の形をしていた

その星が尾を引いて空を飛び回り

魚たちは大きく回遊していた

惑星はくるくると回っている

海では穏やかな波が立っている

時折巨大な魚や水竜が顔を見せて

あかりちゃんを喜ばせる

この星は海という一つの真理に支配されていた

36: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 22:43:24.311 ID:LdDb8VYT0
地球とか小物の惑星が持つ

社会性などといった

綿密で薄暗いシステムを有していなかった

全ては明快なお魚さんの論理で動いていた

海王星は海そのものの世界だった

37: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 22:43:38.030 ID:LdDb8VYT0
あかり「わぁ!大きな魚!」

櫻子「ジンベイザメだね!彼は千年くらい生きてるから」

櫻子「全長は10kmくらいかなぁ」

あかり「ぶっひぇー!すごいよぉ!」

櫻子「ふふふ、この鮫よりももっと大きな亀さんだっているんだぞ」

あかり「えええええええ!!」

櫻子「しかも根性で5cm浮遊できるペンギンさんだっているんだ!」

あかり「すごいよぉ!!」

櫻子「漫画を描くくらげだっているんだぞ!」

あかり「それは嘘だよぉ」

櫻子「ばれたか」

39: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 22:46:55.422 ID:LdDb8VYT0
あかり「でもとにかく凄いなぁ」

櫻子「そうだね!次は海に降りてみようか」

あかり「わぁい!」

あかりちゃんは海にぷかぷか浮かんだ

あかり「気持ちいいよぉ」

櫻子「そうだね。ここには海しかないんだよ」

あかり「どこまで行っても海」

櫻子「そうだよ」

あかり「お空にはお魚さんたちが泳いでいてキラキラしてて」

あかり「まるでのんびり屋の流れ星さんみたい」

櫻子「うん。ここでは全部海に溶けて」

櫻子「そして海から生まれるだけだから」

櫻子「なにも急ぐ必要なんてないんだ」

あかり「そうなんだぁ」

41: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 22:49:59.707 ID:LdDb8VYT0
あかり「それじゃあ・・・」

あかり「・・・あかりも・・・・・・」

あかりちゃんも溶けていく

地球さんで染みついたものが流れ落ちていく

あかりちゃんは流れに身を任せる

理由があるものはすべてなくなる

事実だけが残る

複雑相互に絡み合ったものは

すべて解けるまでもなく消えていく

苦しみも全部

何が誰の為に作った人間か

何が神

地球にあるものでハカル矮小さ

そういった無知

壮大に組まれた仕組みの空虚さも全部

42: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 22:52:59.253 ID:LdDb8VYT0
ねぇあかりちゃん

その声に呼ばれてあかりは櫻子ちゃんに目を向けた

綺麗で好奇心に満ちていて

勝気で真っ直ぐな瞳

櫻子ちゃんの瞳があかりを見つめていた

櫻子「踊ろうよ。この海の舞台で」

あかり「・・・・・・うんっ!」

あかりちゃんと櫻子ちゃんは海の上に立つ

波はあかりちゃんと櫻子ちゃんの足元を優しく撫でる

お互いの手をとる

櫻子ちゃんはあかりを見つめる

あかりは櫻子ちゃんを見つめる

そうして二人は舞い始めた

43: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 22:55:40.565 ID:LdDb8VYT0
海の流れにあわせ

空の色合いに合わせ

風に乗ってあかりと櫻子ちゃんはワルツを踊る

螺旋を上げくように

風は二人の舞踏に合わせて

あかりと櫻子ちゃんは空へと運んで行く

流れる髪も、遊ぶスカートも、ワルツを華やかせた

44: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 22:57:11.364 ID:LdDb8VYT0
楽しいね

楽しいよぉ

あかりと櫻子ちゃんは声に出さずとも

お互いの気持ちを伝えあって

そして笑い合った

天は次第に闇へとなっていく

宇宙に近づいていく

それでもあかりと櫻子ちゃんは踊りながら昇り続ける

45: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 22:59:28.960 ID:LdDb8VYT0
櫻子「あかりちゃん」

踊り始めて

初めて櫻子ちゃんが声を出した

あかりちゃんの名前だった

その瞬間にあかりちゃんは

お布団の中で目を覚ました

あかりはお布団の中の闇を見て

そしてむせび泣いた

46: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 23:03:12.168 ID:LdDb8VYT0

あかり「あかりは今日も学校を休んで水族館だよぉ」

あかり「お魚さんたち、羨ましいなぁ」

あかり「あかりとってもいい夢みたんだよぉ」

あかり「櫻子ちゃんと海王星で」

あかり「ワルツを踊ったんだぁ」

あかり「あかりとっても死にたい気分だったけど」

あかり「それでも少しは救われた気になったんだぁ」

あかり「・・・・・・・・・」

あかり「お魚さんたち返事してくれないよぉ」

47: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 23:05:44.206 ID:LdDb8VYT0
あかり「でもきっと」

あかり「お返事したらそれはもう」

あかり「お魚さんたちじゃなくなるんだよねぇ」

あかり「そうなればあかりももう」

あかり「お魚さんになりたいなんて思わないよねぇ」

あかり「しかたないよぉ」

あかり「・・・・・・・・・」

あかり「寂しいなぁ・・・」

櫻子「あかりちゃん!」

あかり「え?」

あかり「・・・・・・さ、櫻子ちゃん?」

49: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 23:07:42.947 ID:LdDb8VYT0
櫻子「そうだよ!」

あかり「え?だって・・・」

櫻子「おはようあかりちゃん」

あかり「おはようだよぉ・・・でも櫻子ちゃんは・・・」

櫻子「昨日はワルツを踊ってとっても楽しかったね」

あかり「!!」

あかり「うん・・・!うんっ!」

あかり「とっても楽しかったよぉ!」

櫻子「お魚さんたちも私たちのワルツと一緒に回ってくれて」

あかり「そうだねぇ!みんなでとっても楽しかったなぁ」

櫻子「そうだね!」

51: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 23:09:22.710 ID:LdDb8VYT0
あかり「・・・・・・・・・」

櫻子「・・・・・・・・・」

あかり「・・・・・・・・・」

櫻子「・・・・・・・・・」

あかり「ねぇ」

櫻子「理由なんていらないんだよ」

あかり「え?」

櫻子「海王星に一緒に行ったことにさ」

あかり「・・・・・・・・・」

櫻子「おいで、あかりちゃん」

あかり「・・・・・・うん」

櫻子「よしよし、あかりちゃん」

あかり「・・・・・・うぅ・・・」

櫻子「今は泣いていいんだよ」 👀
Rock54: Caution(BBR-MD5:0be15ced7fbdb9fdb4d0ce1929c1b82f)

52: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 23:12:04.062 ID:LdDb8VYT0
あかり「・・・・・・うえぇぇぇん!うわぁぁあん!」

あかり「ぶっひぇーん!」

櫻子「よしよし、海王星はよかった?」

あかり「よかったよぉぉぉお!うわぁぁぁあああん!」

櫻子「学校にくるの?」

あかり「あかり嫌だよぉ!いきたくないよぉ・・・」

櫻子「うん。つらいならいいんだよ」

あかり「・・・・・・うん」

櫻子「でもね・・・こうやって頭を撫でてあげることも」

あかり「・・・・・・・・・」

櫻子「いつでも出来るわけじゃないから・・・」

あかり「・・・・・・うぅ・・・」

櫻子「ごめんね」

あかり「・・・・・・うん・・・」

53: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 23:14:20.555 ID:LdDb8VYT0
頭を撫でられる

優しく包み込むように

あかりちゃんはぐすぐすと泣く

ハンカチは三枚は必要だった

だけどあかりちゃんはハンカチを三枚も持っていなかった

だから櫻子ちゃんはあかりちゃんを胸の中に包んであげた



櫻子「泣き止んだね、あかりちゃん」

あかり「うん・・・」

櫻子「待ってるから」

あかり「うん」

櫻子「それじゃあね」

あかり「うん」

54: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 23:16:37.684 ID:LdDb8VYT0

翌朝

あかり「学校だよぉ」

あかり「あかり久々に学校に・・・」

あかり「うぅ・・・こわいよぉ・・・」

あかり「櫻子ちゃん・・・」

あかり「・・・・・・ううん、大丈夫だよね」

あかり「あかり、櫻子ちゃんがいれば」

あかり「教室で浮くくらい・・・」

あかり「大丈夫だよぉ」

55: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 23:18:11.733 ID:LdDb8VYT0
あかり「櫻子ちゃん・・・」

あかり「なんとか教室前まで・・・」

あかり「たどりついたよぉ」

あかり「ぜぇ・・・ぜぇ・・・コヒューコヒュー」

あかり「ひえええ!あかりの息があやしいよぉ!」

あかり「うぅ・・・恥ずかしいなぁ」

あかり「で、でも櫻子ちゃん・・・」

あかり「櫻子ちゃんさえいれば」

あかり「教室のドアを開けるよぉ!」

あかり「」ガラリン

56: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 23:21:51.564 ID:LdDb8VYT0
あかり「あ」

櫻子ちゃんの席

そこに櫻子ちゃんはいなかった

教室を見渡す

櫻子ちゃんはいない

あかり「あ、あかり・・・あかり・・・」

あかり「・・・あかりは・・・」

向日葵「赤座さん?」

あかり「あ、ひま・・・ひまわりちゃ・・・おは・・・」

向日葵「おはようですわ。それじゃあ」

あかり「あ・・・」

向日葵「・・・・・・・・・」

あかり「・・・・・・・・・」

57: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 23:23:25.898 ID:LdDb8VYT0
あかりちゃんは手負いのクマのように

のそのそと自分の席について机に倒れ伏した

ホームルームが始まった

櫻子ちゃんは欠席だった

あかり「ぐえぇ・・・あかり櫻子ちゃんが学校に」

あかり「いることを前提にいっちゃったから」

あかり「これは死ねるよぉ」

58: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 23:26:01.894 ID:LdDb8VYT0
あかり「どれくらい死ねるかというと」

あかり「ワキガばかり乗った満員電車くらい」

あかり「四面楚歌だよぉ」

あかり「きついよぉ」

あかり「うえぇぇぇん」

あかり「櫻子ちゃん・・・」

あかり「櫻子ちゃんは水族館にいるのかなぁ・・・」

ちなつ「あかりちゃん!」

あかり「ひっ・・・ごめんなさ・・・あれ?ちなつちゃん?」

59: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 23:29:02.281 ID:LdDb8VYT0
ちなつ「やっと学校に来てくれたね、あかりちゃん」

あかり「あ・・・うん・・・」

ちなつ「ちーなほんとうに心配して・・・」

あかり「あかりのこと・・・嫌いじゃないの?」

ちなつ「そんなことないよ・・・!だれもそんなこと・・・」

あかり「・・・・・・・・・」

ちなつ「・・・・・・・・・」

あかり「・・・・・・・・・」

ちなつ「とにかくっ!」

ちなつ「あかりちゃんが学校に来てくれて」

ちなつ「ちーなはとっても嬉しいから!」

ちなつ「だから!」

ちなつ「明日もきてね・・・明日は一緒にいこう・・・」

60: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 23:31:33.259 ID:LdDb8VYT0
あかり「あかり・・・でも櫻子ちゃん・・・」

ちなつ「・・・・・・ううん。明日絶対ちーなが迎えにいくから」

あかり「・・・あ、ありが・・・」

ちなつ「・・・・・・・・・」

あかり「あ、ありがとうだよぉ」

ちなつ「・・・・・・あかりちゃんの久しぶりに見れた・・・」

あかり「えっ?」

ちなつ「あかりちゃんのこと・・・ずっと心配しててそれで・・・」

あかり「・・・・・・・・・」

ちなつ「・・・・・・・・・」

あかり「ありがとう、ちなつちゃん」

ちなつ「うん!!」

62: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 23:33:33.401 ID:LdDb8VYT0


あかり「放課後になったよぉ」

あかり「今日も水族館にきたよぉ」

あかり「あ!」

あかり「櫻子ちゃん・・・」

櫻子「あ!あかりちゃん!」

あかり「今日も来てたんだねぇ」

櫻子「そういうあかりちゃんこそ!」

あかり「ここはあかりにとてもマッチしてるんだよぉ」

63: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 23:36:31.815 ID:LdDb8VYT0
櫻子「それはきっとあかりちゃんが

櫻子「この水槽のお魚さんに似てるからだね」

あかり「・・・!!」

あかり「そ!そんなことないよっ!あかりはずっと!」

あかり「ここのお魚さんたちみたいに自由に泳ぎたいって!ずっと!」

あかり「だけどあかりはっ!」

あかり「だから全然違うんだよぉ!」

櫻子「ううん。そうだよ」

64: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 23:38:08.252 ID:LdDb8VYT0
櫻子「だってあかりちゃんがとっても」

櫻子「この場所に合うのはきっと」

櫻子「同じだからだよ」

あかり「あかりはここのお魚さんたちみたいにっ!」

あかり「広い水槽で悠々と泳いでないから!こんなにも苦しんでるから!」

あかり「だから全然っ!」

櫻子「広くないよ」

あかり「え?」

櫻子「だってどれだけ広く見えても」

櫻子「これは水槽だから」

あかり「・・・・・・・・・」

65: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 23:38:44.607 ID:LdDb8VYT0
櫻子「海はもっとひろいんだよ。外国まで繋がってるんだ。それなのに」

櫻子「水槽のお魚さんたちは海よりもとってもとっても狭い水槽で」

櫻子「泳ぐしかないから。だから」

櫻子「きっとここのお魚さんたちも」

櫻子「あかりちゃんと一緒なんだよ」

66: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 23:39:50.113 ID:LdDb8VYT0
あかり「・・・・・・・・・でもお魚さんたちにとってのそれと」

あかり「あかりにとってのそれは・・・」

櫻子「そうだよ。ここでは何も悩まなくていいんだよ」

櫻子「水槽でもお魚さんたちにとって理由はいらないのだから」

櫻子「そしてきっとあかりちゃんもそうなりたいから」

櫻子「ここにくるんだね」

あかり「・・・・・・うん」

櫻子「・・・・・・・・・」

あかり「・・・・・・・・・」

67: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 23:42:33.081 ID:LdDb8VYT0
櫻子「ごめんね、あかりちゃん」

あかり「え?」

櫻子「私のせいでこうなっちゃって」

あかり「・・・・・・・・・」

櫻子「あの日お付き合いしてから」

櫻子「初めてのデートで私が交通事故になんか巻き込まれちゃったから・・・」

あかり「・・・・・・そんなことないよぉ」

櫻子「あかりちゃんはずっと私の為に気に病んでくれたんだね・・・」

あかり「そんなことないよぉ!!」

68: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 23:43:58.779 ID:LdDb8VYT0
櫻子「私の体はずっと病院で眠ってるから」

櫻子「あかりちゃんは私と同じように外に出てくれないんだよね」

櫻子「私がこうなったのを」

櫻子「私と一緒にいたせいでクラスメイトに責められてるかもしれないって」

櫻子「それが怖いんだね、あかりちゃん」

69: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 23:45:06.680 ID:LdDb8VYT0
あかり「それはあかりのせいで・・・!」

櫻子「優しいね、あかりちゃん。好きだよ」

あかり「・・・・・・あかりは・・・」

櫻子「でもねあれはあかりちゃんのせいじゃないんだよ」

櫻子「私の不注意と運転手さんの居眠りのせいなんだからあかりちゃんは・・・」

あかり「あかりは・・・」

あかり「あかりは・・・!」

あかり「それでもあかりは・・・!櫻子ちゃんがこんなことになって苦しくて・・・!」

あかり「今も病院で眠ってる櫻子ちゃんの為に何もできなくて・・・!」

71: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 23:46:26.555 ID:LdDb8VYT0
あかり「もしこのまま櫻子ちゃんが目覚めなくて」

あかり「死んじゃったら・・・あかり・・・あかり・・・」

櫻子「大丈夫だよ」

あかり「全然大丈夫じゃないよぉ・・・!」

櫻子「ねぇねぇあかりちゃん」

あかり「・・・なぁに?」

櫻子「私はあの日からずっと」

櫻子「ずっとこの水族館にいたの」

櫻子「本当の私は病院にいるんだけどね」

櫻子「でもくるくると回遊するお魚さんたちをずっと見てたの」

櫻子「あかりちゃんが来る前から」

72: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 23:47:34.628 ID:LdDb8VYT0
櫻子「だからお魚さんの名前を覚えてしまうくらい」

櫻子「ずっと水槽の中のお魚さんたちを見ていられた」

櫻子「それでね、この世界もきっと全部くるくる回ってるんだって事にも気付いた」

櫻子「地球も星も太陽も全部全部くるくる回って」

櫻子「時計の針だってくるくる回るんだよ」

櫻子「だから止まってちゃダメなんだよ」

櫻子「海王星さんの世界もくるくる回ってるんだよ」

櫻子「どこにいても何の論理で動いていても」

櫻子「世界はくるくる回るから」

櫻子「あかりちゃんにもくるくる回らないといけないんだ」

櫻子「ワルツのように」

73: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 23:48:18.711 ID:LdDb8VYT0
あかり「だけど・・・あかりは・・・・・・もうこれ以上回るのに疲れて・・・」

櫻子「ねぇ」

あかり「なぁに」

櫻子「もう一度踊って、あかりちゃん」

あかり「・・・・・・・・・」

櫻子「あかりちゃん」

あかり「・・・うん」

74: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 23:48:58.123 ID:LdDb8VYT0
照明の絞られた館内

人の気配は二人以外にない

背後には水の織り成す幻想的な光の反射がある

夢見心地な空間

回遊するお魚さんたちがキラキラと舞っている

あかりちゃんと櫻子ちゃんはワルツを踊る

最初は静かに次第に軽やかに

優雅に

時に幼いステップで

淡い照明の下で舞踏する

75: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 23:49:36.246 ID:LdDb8VYT0
「ねぇあかりちゃん」

「なぁに櫻子ちゃん」

「辛くて苦しい事があってもね」

「うん」

「理由がいらない事だってあるんだよ」

「櫻子ちゃんのこと?」

「そうだよ、あかりちゃん、私とあかりちゃんの関係」

「でも、それでも櫻子ちゃんが死んじゃったらあかり・・・」

「・・・・・・わたしはね」

「うん」

76: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 23:50:45.ウンコ ID:LdDb8VYT0
「ここで回遊するお魚さんたちを見てくるくる回ることについて考えてみたの」

「うん」

「きっと死んでもくるくる回るんだよ、いつかあかりちゃんに会うために」

「死ぬなんて言わないで・・・櫻子ちゃん」

「それがきっと輪廻とかいうものだろうね」

「そんなの・・・あかり悲しいよぉ・・・」

「回遊して旋回してくるくる回ってそうやって繋がってるから心配はいらないよ」

「そんなの・・・そんなのって・・・」

「でもね」

「・・・うん、櫻子ちゃん」

78: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/04/05(日) 23:52:26.943 ID:LdDb8VYT0
「あかりちゃんがあの日以来、これなくなった私の病室・・・」

「・・・・・・うん」

「あかりちゃんが私に声を掛けてくれたらもしかしたら・・・」

「・・・・・・」

「私はもう一度あかりちゃんの名前を呼び返すかもしれないから・・・」

「櫻子ちゃん」

「あかりちゃんって返すかもしれないから」

「・・・・・・うん・・・うん!」

「だから」

その時はもう一度ワルツを

おわり

引用元: あかり「水族館にきたよぉ」