1: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 20:47:36.08 ID:gx3oKrbV0
沙織「うひょー! お泊りだー!」

麻子「うるさいぞ沙織」

華「もう夜も遅いですし、みほさんに御迷惑ですよ」

沙織「いーじゃんちょっとくらい。みぽりんだって楽しそうなんだしさ」

みほ「うん。みんなが私の部屋へ泊まりに来てくれて、すっごく嬉しいよ」

華「そうは言っても……」

みほ「大丈夫。隣は階段だし、もう片方の隣は空き部屋だし」

優花里「あ、そういえばここは角部屋だったですね」

みほ「飛んだり跳ねたりしない限り、大丈夫だと思うよ」

麻子「そんな奴はいないけどな」

華「もう寝る仕度してますしね」

みほ「女子高生みたいで楽しい。友達が集まって、お泊りでパーティーするなんて」

麻子「いや、女子高生だから」

みほ「みんなのパジャマ姿、すっごく新鮮」

沙織「さー、パジャマパーティーだー!」

華「沙織さん。はしゃいでないで、お布団敷くのを手伝ってくださいな」

みほ「お布団、人数分なくてごめんね」

優花里「全く無問題であります!」

みほ「雑魚寝で、うまく分け合ってもらうしかないんだけど」

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2: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 20:49:24.84 ID:gx3oKrbV0
沙織「ゆかりん、寝袋持ってきてるでしょ」

優花里「え。武部殿、どうして分かるんですか?」

沙織「そりゃ、ゆかりんのノリを考えれば」

麻子「で、それは迷彩柄だろ」

優花里「うっ、冷泉殿まで。いきなり披露して羨望の的になろうと思ってたのに」

沙織「別に羨ましくないけど」

優花里「あ、何ということを。これはあらゆる天候に耐えるスグレモノで……」

沙織「私はこれからのトークに備えて、お菓子を用意しなくちゃっ」

華「優花里さん、それなら寝袋用にスペースを空けておきましょう」

優花里「恐縮です、五十鈴殿。あ、そっちの隅の方でいいです」

麻子「布団の配置は、大体こんなものか」

華「各人がどう寝るかは、成り行き任せですね」

みほ「部屋が狭くてごめんなさい」

沙織「もー、みぽりん、さっきから謝り過ぎだよ」

みほ「あの、嫌じゃなければ……」

麻子「ん?」

みほ「私のベッドに、もう一人寝られるよ?」

沙織「……」

みほ「私と一緒に寝ることになっちゃうから、嫌じゃなければ、なんだけど」

華「……」

優花里「……」

麻子「……」

みほ「え? みんな、どうしたの? 私、何か変なこと言った?」

3: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 20:52:01.84 ID:gx3oKrbV0
沙織「それは……」

華「それは、遠慮申し上げますわ」

優花里「ここは西住殿の部屋なんですよ?」

沙織「みぽりんは、普段どおりに寝なくちゃ駄目」

麻子「私たちはお邪魔してる立場だ」

みほ「……みんな……」

優花里「何ですか?」

華「どうしましたか」

沙織「何ウルウルしてるの?」

みほ「……気を遣ってくれて、ありがとう……」

優花里「気を遣ってくださってるのは、西住殿の方じゃないですか」

華「いろいろと心配りが足りないかもしれないのは、わたくしたちです」

麻子「私は相変わらず、気を遣えてないんだろうが」

沙織「さー、そんなことはいいから、全員真ん中に集まれー!」

みほ「……でも、さっきのは一体、何だったんだろ?」


~~~~~~~~~~


優花里「冷泉殿、そっちのお菓子取ってもらえませんか」

麻子「これか。幾つ欲しい?」

優花里「じゃあ二つください」

みほ「このお菓子おいしいな。初めて食べる味」

華「うわ、これ甘いですねえ」

4: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 20:54:17.51 ID:gx3oKrbV0
麻子「五十鈴さんは、甘いものは駄目か」

華「好きですけど、余り甘いのはちょっと……」

優花里「これですね。さっき食べましたけど、確かにすごく甘いです」

みほ「華さんは、塩味とかの方が好きなの?」

華「甘いものと同じくらい好きです。辛いのも大丈夫ですよ」

優花里「このすごく甘いもの、誰のチョイスでしたっけ」

みほ「私……」

麻子「西住さんだったか」

みほ「このくらいの甘さ、普通だと思ったけどなあ」

華「逆にみほさんは、塩味や辛いものは……」

みほ「辛いものは駄目。食べられないよ」

優花里「なるほど」

麻子「こういう時に、それぞれの好みが分かる」

華「面白いですね」

沙織「……さて」

5: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 20:56:32.96 ID:gx3oKrbV0
みほ「何? 沙織さん」

優花里「改まって、どうしました?」

沙織「お泊り、パジャマパーティーと言えば、ガールズトークだよね」

華「ガールズトークという言葉、聞いたことがあります」

沙織「で、ガールズトークといえば、恋バナだよね」

みほ「こいばな?」

麻子「恋の話、恋愛話。略して恋バナらしい」

華「麻子さんは何でも知ってますね」

麻子「沙織の知り合いを長くやってると、こういうことまで憶えてしまう」

沙織「何それ。とにかく全員、お泊りでこうやって集まってるんだし」

みほ「うん」

沙織「今夜のトークで語り合うのは、恋バナしかないでしょー!」

みほ「……」

華「……」

優花里「……」

沙織「あ、あれ?」

6: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 20:58:27.93 ID:gx3oKrbV0
麻子「沙織」

沙織「何?」

麻子「学園艦にいる私たちに、そういう話題を期待するのか」

沙織「そんなこと言ったって、分からないよ?」

麻子「何が」

沙織「実は、我がチームに彼氏持ちがいましたー!なんてことになったら、大ニュースじゃん?」

麻子「みんなの今の沈黙で、分かりそうなものだ」

沙織「でも、彼氏がいる子って、どのクラスにも大抵いるよね」

優花里「私のクラスにもいます。話を詳しく聞いたことはありませんけど」

沙織「ほら見なよ。みんなに訊くだけ訊いてみても、いいんじゃない?」

麻子「好きにしろ」

沙織「じゃあ……今、彼氏がいて、ラブラブな人ー!」

みほ「……」

華「……」

優花里「……」

沙織「あ、あれ?」

7: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 21:00:25.18 ID:gx3oKrbV0
麻子「それ見ろ」

沙織「……みんな、嘘つかなくていいんだよ?」

みほ「嘘なんて、つくわけないよ」

華「そんな嘘をついたって、追及されたらすぐバレます」

優花里「そもそも、嘘をつく必要がないですし」

沙織「……」

麻子「おい。沙織」

沙織「何?」

麻子「そう言う、沙織自身はどうなんだ」

みほ「あ」

華「麻子さん」

優花里「それは、言っては……」

沙織「……」

優花里「あーあ……。武部殿、落ち込んじゃいました」

8: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 21:02:10.62 ID:gx3oKrbV0
みほ「麻子さん、駄目だよ」

華「こういう話題の時に、沙織さんに訊くのは……」

優花里「それがタブーなのを、冷泉殿が知らないはずありません」

麻子「もちろん知ってる。でも、余りうるさい時はお灸をすえた方がいい」

華「確かに、一人ですごく盛り上がってますけど……今夜の沙織さんは」

沙織「……ふ、ふーんだ。じゃあ、もう一回訊きまーす!」

優花里「お?」

みほ「もう復活した」

華「今回は立ち直りが早いですね」

沙織「質問をちょっと変えまーす!」

麻子「まあ何度訊いても同じだろうが」

沙織「今までに、彼氏がいた人ー!」

みほ「……」

華「……」

優花里「……」

麻子「それ見ろ……ん?」

9: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 21:04:14.70 ID:gx3oKrbV0
優花里「武部殿が……笑ってます」

華「今までに見たことのない笑みですね」

麻子「正直、気味が悪い」

沙織「……ふっふっふ……」

みほ「……」

沙織「見たぞ、みぽりん……」

みほ「……え……? な、何を……?」

沙織「その手がちょっと、動くのを……」

みほ「……」

沙織「嘘をつかない、嘘をつけない性格……さすが、私たちの信頼する隊長だよね」

優花里「西住殿……!」

麻子「思わず、手を挙げそうになってしまったのか」

みほ「……」

華「と、いうことは……」

麻子「昔、彼氏がいたんだな。西住さんに」

華「こんなに可愛らしいかたですから、全然、不思議ではありませんけど……」

優花里「今、問題なのは……」

麻子「今夜の沙織に、格好のエサを与えてしまったことだ」

沙織「ふふふふふふふふふふふふふふふふふふ。みぽりん……」

みほ「……な……何……?」

沙織「どうしたの? 何をそんなに怯えてるの?」

みほ「……だって……」

10: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 21:06:33.38 ID:gx3oKrbV0
華「この状況は……」

優花里「肉食獣に追い詰められた、小動物も同然です……」

沙織「ね、みぽりん。これから、私たちの訊くことに……」

みほ「……」

沙織「ほんの少しだけ、答えてくれないかなあ……?」

麻子「“私たち”と言っても、どうせ訊くのは沙織だけだが」

沙織「悪いようにはしないから、ね?」

みほ「……」

華「“悪いようにはしない”というのは……」

優花里「悪いようにする時のセリフですね」

麻子「どこかの漫画家も、そんなことを書いてたな」

沙織「それで? いつだったの?」

みほ「……中2の時」

沙織「前にいた学校って、中高一貫の女子校じゃなかったっけ?」

みほ「お姉ちゃんは中学から黒森峰だったけど、お母さんが“みほには外の世界も見せる”とか言って……」

沙織「みぽりんは違ったのね」

みほ「中学までは、普通の学校に通った。近所にある公立の学校で……」

沙織「じゃ、もちろん共学だよね」

みほ「うん。戦車道の備品や施設がないから、それはずっと、うちでやってて……」

沙織「その彼は、同じクラスの男子? それとも先輩?」

みほ「……同じクラス……」

11: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 21:08:39.04 ID:gx3oKrbV0
華「みほさんが、詳しく話し始めてしまいました」

麻子「やはり西住さんは、訊かれたら、素直に答えるしかない人なんだな」

優花里「さっき武部殿が言ったとおりですね。演技や駆け引きをするのは試合の時、対戦相手にだけです」

華「みほさんは、学校や戦車道の方に話をそらそうとしたみたいですけど……」

麻子「沙織には無駄な抵抗だった。あいつは、こういう話題だとブレないから」

沙織「で? で?」

みほ「……何?」

沙織「どうだった?」

みほ「どうだった、って……何が?」

沙織「何が、って? 決まってんでしょうが。ああ?」

優花里「……武部殿がヤバいです。もはや別人格です」

華「沙織さんは、何を訊いているんでしょうか」

麻子「具体的な行為だろう。恋人同士がするような」

優花里「いきなりですね。怖いくらいに」

華「こういう場合、どうしたらいいんでしょう」

麻子「分からない。こんなモードの沙織は初めて見る」

華「……沙織さん」

沙織「何?」

華「思ったんですけど」

沙織「だから何よ、華」

華「お話の順序が違うんじゃないでしょうか」

沙織「順序?」

12: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 21:10:42.16 ID:gx3oKrbV0
華「みほさんが、詳しく話し始めてしまいました」

麻子「やはり西住さんは、訊かれたら、素直に答えるしかない人なんだな」

優花里「さっき武部殿が言ったとおりですね。演技や駆け引きをするのは試合の時、対戦相手にだけです」

華「みほさんは、学校や戦車道の方に話をそらそうとしたみたいですけど……」

麻子「沙織には無駄な抵抗だった。あいつは、こういう話題だとブレないから」

沙織「で? で?」

みほ「……何?」

沙織「どうだった?」

みほ「どうだった、って……何が?」

沙織「何が、って? 決まってんでしょうが。ああ?」

優花里「……武部殿がヤバいです。もはや別人格です」

華「沙織さんは、何を訊いているんでしょうか」

麻子「具体的な行為だろう。恋人同士がするような」

優花里「いきなりですね。怖いくらいに」

華「こういう場合、どうしたらいいんでしょう」

麻子「分からない。こんなモードの沙織は初めて見る」

華「……沙織さん」

沙織「何?」

華「思ったんですけど」

沙織「だから何よ、華」

華「お話の順序が違うんじゃないでしょうか」

沙織「順序?」

13: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 21:13:05.83 ID:gx3oKrbV0
華「はい。こういう場合、まず相手がどんなかただったのかを訊いて……」

麻子「そういう基本の情報を知ってから、具体的な行動について訊く」

華「ええ。そうすればもっとお話が分かりやすくなると思います」

優花里「確かにその方が、いろいろイメージしやすいですね」

沙織「ふーん。でも結局、何をやったかは訊くんでしょ?」

華「……それは……」

麻子「……話の流れ次第だが……」

沙織「何よ、華も麻子も。急に歯切れが悪くなって」

華「……」

麻子「……」

沙織「どうせ訊くんだったら、早い方がいいじゃん?」

華「……うまく諫めた積もりだったんですけど」

麻子「厄介なことに、今夜の沙織は頭のキレも、普段と少し違うようだ」

優花里「得意分野だからですかね。“自称”みたいですが」

沙織「ほんで? どうなのよ、みぽりん?」

みほ「……言わなきゃ駄目?」

華「みほさん、嫌なら話さなくてもいいんですよ?」

麻子「今の沙織は、酔っ払いみたいなものだからな」

沙織「二人とも、さっきから素直じゃないね。ホントは聞きたいくせに」

華「……」

麻子「……」

14: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 21:15:19.38 ID:gx3oKrbV0
沙織「華も麻子も、興味津々の顔してるじゃん」

華「それは……」

麻子「興味がないと言えば嘘になるが」

沙織「でしょ?」

優花里「冷泉殿が……こう言っては失礼ですけど、意外です」

麻子「小説で読んだことのある行為を、実際にしたかもしれない人が、目の前にいる」

優花里「はい」

麻子「その話をしてくれるんだったら、聞かない理由がない」

優花里「なるほど」

みほ「……何だか……」

華「どうしました?」

みほ「……だんだん……思い出してきちゃったな……」

沙織「お。いいぞみぽりん、おねーさんに話してごらん?」

優花里「おねーさん?」

沙織「何をしたのかな? その彼と?」

みほ「何、って……?」

沙織「デートは当たり前だよね。で、その時に手をつなぐ」

みほ「……」

沙織「そして、キス。それとも、もっと先まで?」

みほ「……」

沙織「これ以上、私に言わせる気?」

華「沙織さんが勝手に言っているのでは」

15: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 21:17:49.94 ID:gx3oKrbV0
みほ「……それは……やっぱり……」

沙織「うん?」

みほ「付き合ってたわけだし……」

沙織「……奥さん聞きました?」

優花里「誰が奥さんですか」

みほ「うー……恥ずかしいよぉ……」

沙織「でも今、みぽりんの顔、ニヤケてるよ?」

みほ「……」

優花里「あ、笑うのを引っ込めた」

華「だけど、どうしても微笑んでしまっています」

麻子「だから、何だか歯が痛い時みたいな顔になってるな」

みほ「……ス……」

沙・華・優・麻「え?」

みほ「……キス……1回だけ……」

沙・華・優・麻「おお~」

みほ「やっぱり、恥ずかしいよぉ……」

沙織「……ね、キスって……」

みほ「……何?」

沙織「どんな感じなの……?」

16: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 21:19:58.76 ID:gx3oKrbV0
みほ「どんな感じ、って……」

華「感想ですよ、みほさん」

みほ「それは……その……唇同士が触れ合う……」

麻子「西住さん、それは感想じゃなくて事実だ」

みほ「……あ、そうか。えーと……」

沙織「うん」

みほ「唇って、温かくて、柔らかいんだなあ、って……」

沙・華・優・麻「……」

みほ「それで、ガムとか噛んだ後だったのかな……ミントの味がした」

沙・華・優・麻「味!」

みほ「うわ、びっくりした」

沙織「ね、それって……抱き合ったりした時?」

優花里「映画とかで見ます。そういうシーン」

みほ「ううん、そうじゃなかった……私の顔に、手を伸ばして……」

沙・華・優・麻「……」

みほ「顔、向けさせて……もう、私、何話してるんだろ」

沙・華・優・麻「いいから続けて!」

みほ「……みんな、どうしたの?」

沙織「それで? 彼が、顔を向けさせて?」

みほ「そしたら、向こうの顔が近づいてきて……」

沙織「……」

みほ「私、何となく目、閉じちゃって……」

優花里「……」

みほ「……そのまま……」

麻子「……」

17: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 21:21:46.70 ID:gx3oKrbV0
華「……すごく……生々しいです……」

優花里「……何だか、ムズムズしますね」

麻子「ああ。何がムズムズするのか、自分でも分からないが」

優花里「そこらへんを走り回りたい気分です!」

沙織「お酒飲みたいわ。私は」

麻子「飲んだことあるのか?」

沙織「まさか」

優花里「でも、大人がお酒飲む気持ちが、分かるような気がしますね」

華「“飲まなきゃやってられない”ということですね」

麻子「“シラフで聞いてられるか”だな」

華「だけど御存じのとおり、この学園艦では……」

麻子「酒類に触る人は、納入業者から消費者に至るまで、全員、ライセンスが必要だ」

優花里「何年か前に、隠れて手に入れた生徒が、飲み会を開いて暴れたっていう事件がありました」

華「存じ上げてます。購買免許を持つ大人のかたが関係したとか。艦史の汚点といわれていますね」

沙織「お酒無しで、こんな話聞かなくちゃいけないなんて」

優花里「武部殿が訊いたからだと思いますが」

沙織「うおー! 酒だー! 酒持ってこーい!」

麻子「黙れ沙織」

華「元気ですねえ、沙織さんは」

優花里「夜が更けるにつれ、どんどん勢いが増してる気がします」

18: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 21:23:54.57 ID:gx3oKrbV0
沙織「ね、ね、みぽりん」

みほ「……何?」

沙織「もー、ビビんないでよ。普通に答えてくれたらいいだけなんだから」

みほ「……」

沙織「彼って、カッコ良かった?」

みほ「あ、そういうことなら、すぐ答えられるよ」

沙織「おおっ、どうだったの?」

みほ「全然、カッコ良くなかったよ」

沙織「えー」

華「どうして、沙織さんがガッカリするんでしょう」

優花里「じゃあ、どんな人だったんですか?」

みほ「何ていうか……モッサリしてる人だった」

華「モッサリ?」

みほ「何をするにも、まず周りを見回してから、みたいな感じ」

沙織「……よく分かんない」

華「落ち着いた雰囲気のかた、ということでしょうか」

みほ「女子からは“オヤジ臭い”とか、はっきり“オジサン”って言われてた」

沙織「みぽりん、そういうのが好みなの?」

みほ「そんなわけじゃないけど」

麻子「クラスに大抵一人は、そういう奴がいるな」

優花里「いますね。何だかやたらと老けてる……いえ、大人っぽい人」

沙織「でも、そういう男って、女子からのウケは微妙だよね。みぽりんには悪いけど」

みほ「うん。人気なんてなかったよ。けど、嫌われてはなかったと思う」

19: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 21:26:13.74 ID:gx3oKrbV0
華「みほさん、デートの時なんですけど……」

みほ「何?」

沙織「あれ。華もそんなこと訊くんだ」

華「二人で、どういうお話をしてたんですか?」

沙織「おっ、それは私も興味ある」

麻子「沙織の質問に比べて、かなり趣が違うな」

沙織「いいから。黙って聞きなよ」

優花里「やっぱり、戦車の話ですかっ!?」

沙織「わっ」

麻子「秋山さん、急に身を乗り出すな。びっくりする」

優花里「ものすごく詳しかったりして!? 性能とか、開発時の話とか!?」

華「……優花里さんにも火が点いてしまったでしょうか」

沙織「盛り上がり方が、ゆかりんらしいわ」

優花里「だって、西住殿と付き合うくらいの人なんですから!」

みほ「戦車の話なんて、全然しなかったよ」

優花里「えー」

華「今度は、優花里さんがガッカリしましたか」

優花里「……」

麻子「さっきの沙織より落胆してる」

みほ「そういえば、何を話してたのかな……。忘れちゃった」

20: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 21:28:24.32 ID:gx3oKrbV0
沙織「もー、みぽりんの話、聞いてるのツラいんだけど」

麻子「何だ? その反応は」

沙織「だって、これって超ラブラブだったってことじゃない?」

華「そうなんですか?」

沙織「二人きりでいられれば、話の中身なんてどーでもよかったんでしょ?」

みほ「ううん、そうじゃなかった。話の内容が普通過ぎて、憶えてないっていうか」

沙織「ありゃ」

優花里「じゃあ、学校のこととか」

みほ「学校とか、最近読んだ本のこととか……だったかな」

華「優しい人だったんですね。そのかたは」

みほ「え?」

華「気を遣っていらしたのではないでしょうか」

優花里「どういうことです?」

華「みほさんは中学の時、おうちのことで忙しかったのでは」

みほ「戦車道っていう意味? うん。私、どの部にも入ってなかったくらいだし」

沙織「中学で、部活は強制?」

みほ「私は特別に免除されてたの。家の事情ってことで」

優花里「理解のある学校ですね」

華「戦車道へ力を入れている土地柄がよく出ています」

優花里「演習三昧だったんですか?」

みほ「戦車へ乗ったり、整備をしたりで、ほとんど毎日、戦車道をやってた」

優花里「……おお……」

沙織「ゆかりん。“羨望”ってのは、今のゆかりんみたいなことをいうんだよ?」

21: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 21:30:40.23 ID:gx3oKrbV0
華「みほさんは、戦車道一色ともいえるような毎日だったのですね」

みほ「うん」

華「だからそのかたは気を遣って、そういうお話をしなかったのでは」

みほ「……そう言われてみれば、そんな感じだったのかな」

麻子「“戦車漬け”状態の相手に、自分といる時まで戦車の話をさせることはない、ということか」

みほ「そういえば、付き合ってたことは、お母さんに全然バレなかったんだけど……」

沙織「もしバレたら、超大変なことになってたの?」

みほ「うん、多分……。でもそうならなかったのは、相手が、気を遣ってくれたからかも」

優花里「と言いますと?」

みほ「会う約束とかは全部、学校にいる時のメールだったの。それ以外の時間には絶対になかった」

華「おうちのかたに分からないよう、連絡方法に心配りをされていたのかもしれませんね」

沙織「ふーん。ルックスはアレだけど、優しい、いいヤツだったってこと?」

みほ「そう言われれば、なんだけど。優しい人だった、かな……」

沙織「うーむ。これも恋の、一つのかたちだよね。外見に囚われない、性格重視の関係」

優花里「でも、その人は絶対、ルックス重視してますよね」

沙織「あ、それはもちろんだけど」

麻子「言うまでもない」

優花里「付き合う相手に選んだのが、ほかでもない西住殿だったんですから」

麻子「で、実際に付き合った」

華「そのかたは、周りの男子から闇討ちやリンチをされたりしませんでした?」

みほ「何それ?」

22: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 21:32:59.22 ID:gx3oKrbV0
沙織「あーあ、可愛い子は得だなー。やっぱり女は顔かあ」

麻子「“女は顔”という言い方は、顔以外のことはどうでもいいのかと誤解されるぞ」

みほ「沙織さんは可愛いよ? 私なんかより」

沙織「ね、みぽりん」

みほ「何?」

沙織「彼は、“可愛い”とか“好き”って、たくさん言ってくれた?」

みほ「……」

麻子「西住さんの顔が、一気に赤くなった」

華「これは、返事の内容に期待が持てますね」

優花里「盛り上がってまいりました!」

沙織「そもそも、告白したのはどっちだったの?」

みほ「それは……向こうの方から……」

沙織「直接言われたの? それともラブレターとか?」

みほ「直接……」

沙織「告白の言葉って、何だった?」

みほ「別に、普通だったよ……。好きだから付き合って、とか……」

華「どこかに呼び出されたりしたんですか?」

みほ「ホームルームが終わって、帰ろうとしたら、“西住、ちょっと来て”って……」

優花里「普段から仲がいい人だったんですか?」

みほ「少し話をしたことがあるくらいだった。だから、すごくびっくりした」

23: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 21:35:14.57 ID:gx3oKrbV0
沙織「OKの返事って、どうやってしたの?」

みほ「……それがどんなことなのか、よく分からなくて」

華「お付き合いする、ということが?」

みほ「うん。だから、まあいいか、って思って……その場で」

沙織「えー? それはどうなのよ」

麻子「よく分からなければ、返事を保留することもできたと思う」

みほ「……そうだよね。今なら私もそう思う」

優花里「その時は違ったんですか?」

みほ「うん。何だか……」

華「何でしょう」

みほ「私……何だかその時、嬉しかったの」

沙織「嬉しかった……」

華「好き、って言われたことが?」

みほ「……うん」

24: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 21:37:13.24 ID:gx3oKrbV0
沙織「彼は、“可愛い”って言ってくれた?」

みほ「……それは……」

華「みほさん、もう、首筋まで真っ赤です」

優花里「思い出してるんでしょうね」

みほ「訊いたことが、あって……」

沙織「何て?」

みほ「“どうして私を、好きになったの?”って」

沙織「うん」

みほ「そしたら、“西住は可愛いから”って……」

沙織「……」

みほ「“西住が可愛いから、好きなんだ”って……言ってくれた……」

華「あらあら、ごちそうさま」

優花里「ヒューヒュー!」

麻子「微笑ましいとはこのことか」

華「こちらの顔まで、ほころんでしまいます」

優花里「ニヤニヤが止まりません!」

みほ「ううー……もうこんな話、やめようよぉ……」

華「微笑みながら言っても、説得力がありませんよ?」

みほ「……」

麻子「また、歯が痛い時の表情になった」

25: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 21:39:08.24 ID:gx3oKrbV0
沙織「………………………………………………」

優花里「武部殿?」

華「どうしました? ぷるぷる震えて」

麻子「どこか具合でも悪いのか」

みほ「さっき晩御飯、食べ過ぎたのかな」

沙織「あーもー! いーないーなー!! このー!!」

優花里「うわ。爆発した」

麻子「叫ぶな沙織。近所迷惑だ」

沙織「あたしも言われたいー!」

優花里「何をですか?」

沙織「“好き”ってー!」

華「“可愛い”は?」

沙織「それもー!」

みほ「私、沙織さん好きだよ?」

優花里「武部殿は可愛いと思います!」

華「わたくしも、沙織さんが大好きです」

麻子「沙織可愛いよ沙織」

26: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 21:41:11.02 ID:gx3oKrbV0
沙織「………………………………………………」

華「また、どうかしましたか?」

優花里「何だか、不服みたいですが」

みほ「やっぱり、1回言ったくらいだと……」

優花里「足りないんですかね」

華「では、一人につき……」

麻子「あと3回くらい言ってみるか」

沙織「うるさーい! 黙れー! みんなの意地悪ー!」

優花里「うわ。また爆発した」

沙織「もー、わざとやってるんでしょー!」

みほ「やっぱり、分かっちゃったか」

優花里「そりゃ分かりますよ」

沙織「あたしもみぽりんみたいに、男に言われたいー!」

華「そういうことですよね」

麻子「沙織が考えそうなことといったら、それ以外にないからな」

沙織「何よ、みんなであたしをイジメて……泣くぞー!」

みほ「でも、沙織さん」

沙織「……何よー」

27: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 21:43:25.27 ID:gx3oKrbV0
みほ「さっきのは嘘じゃないよ?」

華「皆さん、可愛い沙織さんが大好きなんですよ」

優花里「我がチームのアイドルですから、武部殿は」

沙織「それは……気持ちは嬉しいけどさ」

麻子「私たちじゃ不満か?」

沙織「大体、みんなどうして、みぽりんの話をそんな余裕で聞いてられるの?」

優花里「どういうことです?」

沙織「みんなも、あたしみたいに羨ましがれー!」

華「そう言われましても」

沙織「女子なら、こういう経験、自分もしたいって思うはずだよ! 絶対!!」

優花里「それはそうなんでしょうけど」

華「でも、いくら羨ましがっても……」

優花里「相手があること、ですからねえ」

華「自分だけが幾ら力んでも、どうにもなりませんし」

優花里「西住殿みたいな美少女なら、いざ知らず」

麻子「人にはできることと、できないことがある」

沙織「はぁ? どうして悟っちゃったみたいなこと言ってんの? 今から諦めてどうすんのよ!」

優花里「だって、ねえ?」

華「それは、やっぱり?」

麻子「ま、そういうことだ」

沙織「何よみんなヘラヘラして! あたしが一人でアツくなっててバカみたいじゃん!」

麻子「今頃、気付いたのか」

沙織「何だと? 麻子?」

みほ「まあまあ」

28: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 21:45:18.91 ID:gx3oKrbV0
華「沙織さん」

沙織「何よ」

華「わたくしだって、興味が全くないわけではありません」

沙織「おお! 華は分かってくれるか!」

華「だから、みほさんのお話を聞いて、あることに気付きました」

沙織「あること?」

華「みほさん」

みほ「何? 華さん」

華「男女の機微について、是非、経験者であるみほさんにうかがいたいんです」

みほ「そんな……」

華「今から申し上げることに、怒らないでくださいね」

みほ「え、何……? 私が華さんに怒るなんて、そんなことしないよ」

華「みほさんの、今のお話には……」

みほ「うん」

華「“そういえば”や“そう言われてみれば”という言葉が、多い気がしました」

みほ「……」

華「これは、どうしてなんでしょう」

みほ「……」

29: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 21:47:21.99 ID:gx3oKrbV0
優花里「……五十鈴殿」

華「はい」

優花里「……実は、私も……」

沙織「……ゆかりんも?」

優花里「はい。……武部殿も、ですか?」

沙織「うん……。何でみぽりんは、そんなこと何回も言うのか……」

麻子「やっぱり、気付くし、気になるな」

華「麻子さんも……」

みほ「……それは……」

沙織「何?」

みほ「私、分かるよ」

優花里「何がです?」

みほ「みんなの、言ってること」

華「……」

みほ「“言われてみれば”なんて言っちゃうのって、こう話してるのと同じだと思う」

優花里「……」

みほ「“本当は、それを気にしてなかった。自分の心の中で、大きなことじゃなかった”って」

沙織「……」

みほ「普段の話だったら、よく使う言葉だよね。でも……」

華「……」

みほ「私がそれを言ったのは、昔付き合ってた人のことで、だよね……」

30: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 21:49:39.92 ID:gx3oKrbV0
優花里「何だか、話の雲行きが……」

麻子「妙な具合になってきた」

沙織「今までは、明るい恋バナだったのに」

華「ごめんなさい……。わたくしが、おかしなことを言ったせいで……」

優花里「五十鈴殿、それはちょっと違うと思います」

沙織「うん。みんな、華と同じこと感じてたみたいじゃん」

優花里「五十鈴殿が言わなかったら、ほかの誰かが言ってたかもしれません」

麻子「それに、西住さんの話しぶりは、何か変だった」

沙織「話しぶりが、変?」

麻子「恋愛経験などない私が、こんなことを言うのはおこがましいが」

華「麻子さん、そういうことはお互い、言いっこなしにしましょう」

麻子「西住さんは、昔の彼氏について語ってるのに、屈託がなさ過ぎると思った」

優花里「昔の彼氏、元カレ……つまり、今はもう、別れてしまった男性ということですからね」

沙織「そうか。別れる時、修羅場とか、あったかもしれないんだよね」

麻子「西住さんにとって、彼氏とのことは、思い出したくない出来事だという可能性もあった」

沙織「麻子? ひょっとして、私がみぽりんへいろいろ訊いたこと、怒ってるの?」

麻子「いや、そうじゃない」

華「わたくしたちだって、調子に乗って、みほさんを質問責めにしてしまいました」

麻子「沙織のしたことは、確かに、褒められたものじゃないが……」

優花里「私たちも、同じですよね」

31: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 21:51:53.62 ID:gx3oKrbV0
みほ「みんな、気にしないで。私、昔のことはもういいの」

沙織「みぽりん、最後に修羅場とかなかったの?」

麻子「おい沙織、まだそんなことを訊くのか」

みほ「麻子さん。私、平気だよ」

麻子「いいのか? 西住さん」

みほ「一旦話し始めたんだから、訊かれたことにはちゃんと答えるよ」

沙織「こんなに明るく話せるんだから、修羅場なんて、なかったんだろうけど」

みほ「しゅらば、っていうのがどんなことか知らないけど、その人と、最後は……」

沙織「……」

みほ「何となく会わないようになって、メールとかもしないようになっちゃったの」

優花里「いわゆる、“自然消滅”ということですか」

みほ「クラスが同じの、2年の時に付き合い始めて……」

沙織「うん」

みほ「でも、3年になったら別々のクラスになっちゃって……」

華「はい」

みほ「会うのも、メールとかも減っていって……そのうち、お互い、受験で忙しくなって」

優花里「そのまま、卒業……?」

みほ「うん……」

華「……」

32: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 21:54:16.97 ID:gx3oKrbV0
沙織「……何だか、よく分かんない」

優花里「……」

沙織「ていうか、わけ分かんない。どういうこと?」

みほ「……」

沙織「“そういえば”とか、“自然消滅”とか」

みほ「……」

沙織「ね、みぽりん。はっきり訊いていい?」

麻子「もう、そのくらいにしておけ。沙織」

沙織「これで最後だよ。最後の質問で、一番肝心なことを訊きたいんだけど」

みほ「……」

沙織「一言で、はっきり訊いてあげる。一発で終わらせてあげるわ」

優花里「何だか、他校が私たちに対して言ってそうなセリフですが」

沙織「みぽりん」

みほ「……何?」

沙織「みぽりんは、彼と“付き合ってた”って言ってるよね」

みほ「うん……」

沙織「でも、本当に“付き合ってた”の? 彼のこと、本当に好きだったの?」

みほ「……」

33: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 21:56:17.14 ID:gx3oKrbV0
華「……」

優花里「……」

麻子「……これか」

華「これ、だったんですね……」

優花里「確かに、西住殿の話には、これが決定的に欠けてました」

華「みほさんが、そのかたについてどう思っていたか。これですね」

優花里「何かを言われて、それをどう感じたか、とかじゃないです」

麻子「心の中で、彼氏がどういう存在だったか、だな」

優花里「西住殿の話から覚えてた、微妙な違和感……」

華「それが今、やっと、沙織さんのお陰で言葉になりました」

麻子「“自称”得意分野なのに、今の頭のキレは、なかなかだったな」

華「さすが……」

優花里「モテ道、武部流……」

沙織「ね? みんな?」

麻子「……」

沙織「みんなの訊きたかったことを、代わりに言ってあげたよ?」

華「……沙織さんが、晴れやかな顔をしています」

優花里「誇らしげな表情ですね」

華「自信に満ち溢れた、いい表情です」

麻子「でも、偉そうで、何だかムカつく顔だな」

優花里「ああいうのを、ドヤ顔っていうらしいですよ」

34: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 21:58:58.53 ID:gx3oKrbV0
沙織「みぽりん」

みほ「うん……」

沙織「私、ひどいこと訊いてる?」

みほ「ううん、そんなことない。みんなに言われて、自分でもやっと分かった」

沙織「どうなの?」

みほ「その人のこと、嫌いじゃなかったよ。でも、じゃ好きなのか、っていったら……違った」

華「みほさん……」

みほ「全部、相手からだった。告白も、メールも、会う約束するのも……キスも」

優花里「西住殿……」

みほ「私からは、何もしなかった。向こうは“好き”って言ってくれたけど」

麻子「……」

みほ「私からはそういうこと、何も言ってない……」

華「……」

優花里「……」

麻子「……」

沙織「みぽりん」

みほ「何?」

沙織「みぽりんには悪いけど、私、ちょっと信じらんない」

みほ「……」

35: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 22:01:09.68 ID:gx3oKrbV0
沙織「別に好きじゃなくても、私は何も言わないよ。それは、みぽりんの正直な気持ちだと思うから」

みほ「……」

沙織「でも、そういう相手と、どうしてキスまでしたの?」

みほ「……」

沙織「好きでもない男に、ファーストキス、あげちゃったわけ?」

みほ「……うーん……」

沙織「ファーストキスだったんでしょ?」

みほ「もちろんだよ……」

麻子「おい沙織、いい加減にしろ。本当に怒るぞ」

沙織「麻子、同じ女として分かるでしょ? こう思うのって当然じゃない?」

みほ「……ファーストキスって……」

優花里「何ですか?」

みほ「そんなに、大事なのかな……」

沙織「はぁ? 何ですと?」

優花里「……これは予想外のお答えでした」

沙織「今、全員が心の中でズッコケたんじゃない?」

麻子「……」

沙織「麻子だって、そうでしょ?」

麻子「んー……ま、そうかもしれない」

華「反応に困ってる麻子さん、可愛らしいです」

36: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 22:03:39.63 ID:gx3oKrbV0
みほ「……それが大事だっていわれてるのは、知ってるけど……」

沙織「当ったり前でしょ? 何でも“初めて”は大事なんだよ?」

みほ「でも、どうしてそれが大事なのか、分からない……」

沙織「……あちゃー……」

みほ「……こう考えるのって、変なのかな……?」

沙織「また、みぽりんには悪いけど、言わせてもらうと……」

みほ「……ちょっと、ズレてる……?」

沙織「そういうことね」

みほ「そうなんだ……」

優花里「でも……私は、分かる気がします」

沙織「何? ゆかりん」

優花里「たとえ世間のやり方や考え方がそうでも、それが、自分の理解できないものだったら……」

麻子「従ったり、合わせたりする必要はない、ということか」

華「芯の強い、みほさんらしい考え方です」

沙織「何よなによ何よ、みんなでこの子の味方しちゃって」

麻子「味方したら悪いか?」

沙織「別に、悪いわけじゃないけど」

華「それなら、よろしいじゃありませんか」

優花里「ファーストキスについて、こう考える女の子もいる、ということで」

沙織「むー」

麻子「不満そうだな」

37: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 22:06:08.82 ID:gx3oKrbV0
沙織「仕方ない。この恋愛大明神の武部沙織様が、有難い忠告を授けよう」

みほ「へ?」

優花里「あのー、誰ですか?」

麻子「いきなり芝居がかって、気色悪いな」

華「麻子さん……わたくしたち、何か反応すべきなんでしょうか」

麻子「分からない。今夜の沙織は、今までに見たことのないノリが多過ぎる」

華「わたくしも同じことを思ったんですけど」

麻子「最近の付き合いが多い五十鈴さんなら、この状況を把握できると思ったが」

沙織「コラそこ! 何をごちゃごちゃ言ってるの!」

華「とにかく、そのお告げみたいなものを拝聴しましょうか」

優花里「武部大明神殿、お考えをお聞かせください」

沙織「うむ。よろしい」

優花里「……ノリノリですね」

華「ちょっと面白いかもしれませんね」

麻子「相手してやれば、暇潰しにはなるな」

沙織「さっきからうるさいよあんたたち! マジメに聞く気あんの!?」

優花里「へへーっ。申し訳ありません」

華「失礼いたしました。それで、御忠告は?」

沙織「うむ。この考え方は、危険なのよ」

38: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 22:07:55.98 ID:gx3oKrbV0
みほ「危険?」

華「危ないって、何がでしょう」

沙織「よく考えてみ? この考え方の延長線上に、何があると思う?」

麻子「……ふうん。沙織にしては珍しく、論理的な思考をしたな」

沙織「誰にでも分かることだよ」

麻子「でも、さすがにそこまではいかないと思う」

沙織「どうして?」

麻子「嫌悪感を覚えたり、身の危険を感じたりすれば、そういうことは拒否するだろう」

優花里「……話が見えないんですが」

華「麻子さんは聡明だから、沙織さんの言いたいことをもう察したんですね」

優花里「私にも分かるように説明してもらえませんか?」

沙織「単純に言えば、さ」

優花里「はい」

沙織「“初めて”の大事さが分からないで、どんどん許していっちゃうと……」

麻子「そのうち、最後の一線まで……」

沙織「簡単に男へ越えさせちゃうかもしれない、っていうこと」

優花里「なるほど……」

39: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 22:09:57.62 ID:gx3oKrbV0
麻子「確かに西住さんのガードが甘いことは、否定できないな」

沙織「でしょ? 好きでもない男に、付き合うのをすぐOKしたり、ファーストキスあげちゃったり」

麻子「何かあっても嫌なら拒否すればいいが、前もって、簡単に自分をそんな状況にしない準備も必要だ」

優花里「そのための心構えが必要、ってことですね」

沙織「そのとおり。この考え方のままだと“危険”なのよ」

華「……」

みほ「麻子さん」

麻子「ん?」

みほ「麻子さんが言った、その“最後の一線”って、何?」

麻子「……それは……」

沙織「……」

優花里「……」

沙織「……本日2度目の、心の中ズッコケね」

優花里「……今、全員が心の中で、ズコーって音立てましたよね」

沙織「……うーん……じゃあさ、みぽりん」

みほ「うん」

沙織「こう言えば分かるでしょ? 私たち女子にとって、一番大事な“初めて”だよ」

みほ「……」

40: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 22:11:55.48 ID:gx3oKrbV0
優花里「西住殿?」

みほ「……ごめん……やっぱり、分からない……」

優花里「……西住殿。こんなこと言うのは、すごく失礼ですけど」

みほ「何?」

優花里「まさか、そういうこと自体を、知らないわけじゃないと思うんですが」

華「皆さん」

沙織「どした?」

華「わたくしも、それが何なのか分かりません」

沙織「げげっ」

麻子「五十鈴さんもか」

優花里「うわあ……」

織「ちょっとちょっとちょっと、二人して一体どおゆうことなんだってばってよ」

優花里「武部殿、日本語がおかしいです」

沙織「おかしくならいでかい。こんなことがあって」

優花里「気持ちは分かりますけど、まだかなり普段と違います」

麻子「これは、私でさえ分かることだが」

優花里「私もです。小さい頃から戦車以外に興味のなかった、自分でも分かることです」

42: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 22:13:51.10 ID:gx3oKrbV0
麻子「……でも、二人の共通点を考えれば、この事態を理解できなくもない」

沙織「麻子、説明できるの?」

麻子「ああ。飽くまで推測だが」

優花里「聞かせてください。冷泉殿」

麻子「けど、本人たちを目の前にして言うのも、妙な話だ」

華「わたくしは構いませんよ。自分のことなら、むしろ聞きたいです」

みほ「私も興味あるな。私と華さんとの共通点なんて、そんなのあるの?」

麻子「じゃあ言う。二人の共通点は、いわゆる“お嬢様”ということだ」

沙織「……そうか。片や、華道の家元の娘」

優花里「片や、戦車道の家元の娘」

麻子「その生活様式、考え方や知識は多分、一般とは違ったものだと思う」

優花里「今、思い出したんですが……」

沙織「何?」

優花里「以前、五十鈴殿の御実家へ、みんなでお邪魔したことがありましたよね」

みほ「聖グロリアーナとの親善試合の後だね」

優花里「正直言って、私は、驚きの連続でした」

43: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 22:15:59.84 ID:gx3oKrbV0
麻子「あの時私は、おばあの所へ顔出しに行ったから、いなかったんだが」

優花里「冷泉殿。私が驚いたのはまず、新三郎殿という奉公人のかたがいらっしゃることでした」

沙織「ああ、あのイケメンの人」

華「“イケメン”って、よく聞きますけど、新三郎みたいなのを言うんですか?」

優花里「カッコいい男性ってことです。とにかく、私はあの時“奉公人”っていう人を初めて見ました」

沙織「みぽりん」

みほ「何?」

沙織「みぽりんの実家は? 奉公人っているの?」

みほ「いないけど、お手伝いさんはいるよ」

沙織「……やっぱりいるんだ」

みほ「え、また何か変? 別に変なことじゃないよね?」

沙織「変なんて、そんなわけないじゃん」

みほ「ああ良かった」

沙織「でも、庶民の家には普通、そういうのはいないよ」

みほ「……」

44: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 22:17:56.65 ID:gx3oKrbV0
優花里「あと、驚いたのはお屋敷の大きさです」

沙織「ね、華」

華「はい」

沙織「あの時私たち、お母さんの部屋をちょっと覗き見しちゃったでしょ?」

華「気になさらないでください」

沙織「ううん、ごめんね、あんなことして。でも、あの部屋の大きさにはたまげたわ」

優花里「私も、あの時は申し訳ありませんでした。で、あのお部屋は一体、どのくらいの広さなんですか?」

華「広さ、ですか? 存じませんけど……あそこは何十畳くらいかしら」

沙織「な、なんじゅうじょう~?」

優花里「もう、数え方が違いますね」

麻子「そんなに広い部屋なのか」

沙織「時代劇の撮影に使えるよ。幕府の偉い人たちが集まって、会議するシーンとか」

優花里「テレビでよく見るみみっちいセットなんか、問題になりません」

沙織「みぽりんの実家も、華んちくらいなの?」

みほ「うちは、もう少し小さかったよ……多分」

45: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 22:19:38.85 ID:gx3oKrbV0
優花里「五十鈴殿のお屋敷で、さらに衝撃的だったのは」

華「何でしょうか」

優花里「門を入ってから、玄関までが遠いということでした」

麻子「広大な庭が、門と玄関の間にあるということか」

優花里「そうです。門を入った時、私にはお屋敷の玄関がはるか彼方、霞んで見えました」

沙織「これは? みぽりん」

みほ「門と玄関との距離? そんなの気にしたことなかったけど……うちもあのくらいだったかなあ」

沙織「ひえ~っ」

優花里「私の家なんてそもそも、門がありません」

沙織「街なかの家だったら、それが別に珍しくないよね」

優花里「玄関を出たらすぐ道路で、人が歩いてます」

麻子「五十鈴さんの実家、私も行ってみたかった」

華「近いうちにぜひ、いらしてくださいな」

麻子「うん」

華「皆さんも、もう一度」

優花里「ありがとうございます。光栄です」

みほ「ありがとう、華さん」

沙織「誘ってくれるのは、嬉しいけど……」

華「何でしょう」

46: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 22:21:15.76 ID:gx3oKrbV0
沙織「華はお母さんと、完全に仲直りした、ってことでいいのね?」

華「あの時は親子で、皆さんにみっともないところを見せてしまいましたね」

優花里「あれは、私が口を滑らせたせいでした。本当にごめんなさい」

沙織「私たち、変なタイミングでお邪魔しちゃって……」

みほ「華さんだけじゃなくて、おうちのかたにも御迷惑だったよね?」

華「皆さん、それは逆ですわ」

優花里「逆?」

華「わたくしはあの時、あんなことがあったせいで……」

沙織「うん」

華「皆さんを大しておもてなしできなかったのが、心苦しいんです」

みほ「華さん、そんなこと考えなくていいのに」

優花里「すごい気の遣い方をしますね、五十鈴殿は……」

沙織「気の遣い方の格? みたいなの?が、違い過ぎ」

麻子「これこそ、“お嬢様”の特質だと思う」

優花里「そうなんですか?」

沙織「どういう意味?」

47: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 22:23:14.41 ID:gx3oKrbV0
麻子「私たちが今してた会話は、受け取り方によっては、金持ちへの揶揄だ」

沙織「やゆ?」

麻子「からかう、ってことだ」

沙織「ふーん……まあ、そう思われても仕方ないけど」

優花里「家の大きさとか部屋の広さを、庶民の感覚で勝手に、あーだこーだ言ってたわけですからね」

麻子「だけど五十鈴さんはそれ聞いても、鷹揚な態度を全然崩してない」

沙織「おうよう?」

麻子「ゆったりして落ち着きがある、ってことだ」

沙織「もー、さっきから麻子は漢字ばっかり。ひらがなで話してよ」

麻子「何言ってるか、自分で分かってるのか?」

優花里「確かに五十鈴殿は、何を言われても笑顔で聞いてるだけです」

麻子「そして、そんな話をしてる私たちをむしろ、その家に招待してる」

優花里「大らかというか、余裕というか……」

沙織「まねしようとして、できることじゃないよね」

優花里「これが、“育ち”ってやつですか」

沙織「ま、私の親友だから」

麻子「すごいのは五十鈴さんで、沙織じゃないけどな」

沙織「分かってるよ。いちいち言うな」

48: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 22:25:55.96 ID:gx3oKrbV0
優花里「西住殿についてはどうでしょう」

麻子「西住さんも同じだと思う」

みほ「私が?」

沙織「確かに、みぽりんにもちょっと似た感じはあるかな」

みほ「私が華さんと同じなんて……そんなことないと思うけど」

優花里「でも西住殿には、私みたいな人間にない、落ち着きとか冷静さがあります」

みほ「うーん……よく分からない」

沙織「その雰囲気は、私にはもちろんないし、麻子の落ち着きとも違う種類だよ」

みほ「……私じゃなくて、お姉ちゃんだったら、そういうタイプかもしれないけど」

沙織「みぽりんのお姉さん? 落ち着いてるっていうより、迫力がすごくない?」

華「何回かお目に掛かりましたけど、凛として、威厳に満ちたかたですね」

優花里「あの存在感は半端ないです。西住流第一後継者、マスコミにも出る有名人ですもんね、西住まほ殿は」

みほ「私なんて、お姉ちゃんに比べたら不出来で、ガサツで……」

沙織「みぽりんがガサツだったら、私なんてどうなっちゃうのよ」

みほ「例えば、お姉ちゃんはお母さんのことを、“お母様”ってちゃんと呼んでたの」

沙織「へえ」

みほ「だけど私はどうしても、それができなかった。お姉ちゃんのことだって“お姉様”って言えなかった」

優花里「はあ」

沙織「そう呼ばなきゃ駄目とか、言われてたわけ?」

みほ「うん」

49: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 22:27:42.75 ID:gx3oKrbV0
沙織「何か……すげー……」

優花里「そういう感想しか、出てきませんよね」

麻子「沙織もそう言われたいか」

沙織「いいかもしんない。私も今度、お姉様とお呼び、って言ってみようかな」

優花里「武部殿には……」

麻子「妹がいる」

沙織「絶対あいつ、抵抗するよ。無理強いしたら面白いかも。小さい頃以来の殴り合いのケンカになるわ」

華「沙織さん、自重してくださいね」

みほ「……あのー、ところで……」

優花里「何ですか?」

みほ「私たち、違う話、してなかったかな」

沙織「え? そうだっけ?」

優花里「話が、脱線してた?」

華「そうだとすれば、そのことすら分からなくなっていましたね」

沙織「どんな話だっけ」

華「……何だったでしょうか」

優花里「……忘れちゃいましたね」

沙織「無理ないよ。華とみぽりんの、話のインパクトがデカ過ぎだったもん」

50: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 22:30:11.21 ID:gx3oKrbV0
麻子「“最後の一線”とか、“女にとって一番大事な初めて”とは何か、ということだ」

みほ「あっ、そうか」

華「さすが麻子さん」

沙織「そうか……そんな話、してたね」

優花里「脱線しまくった話を元に戻せる人って、本当にすごいと思います」

みほ「こういうのが、“頭がいい”ってことなんだよね。私には絶対できない」

麻子「いや、話を脱線させたのは私だから、責任を感じてた」

華「麻子さんが? そうだったでしょうか」

優花里「あ、思い出しました。もともとは、二人がそのことを分からない、っていう話でした」

沙織「でも、それが何なのか、はっきり言ってなかったんだっけ」

麻子「そのまま私は、二人がそれを分からない背景について、話し始めてしまった」

みほ「で、そっちの方向で話が進んでいったんだね」

沙織「……でも、何となく分かったかな。みぽりんと華が、それを分からない理由」

優花里「やっぱり、生活が全然違うんですね……」

麻子「ああ。生活様式が違えば……」

優花里「知ってることや、考え方も、違ってきますよね」

沙織「だけど、みぽりんも華も、私たちの親友に変わりはないじゃん」

優花里「もちろんです!」

麻子「当然だ」

沙織「麻子に言われるまで、そんなこと全然分からなかったし、気にもならなかった」

優花里「私もです。言われて初めて気付きました」

麻子「今回はたまたま、そういう違いが表に現れるような話題だったんだと思う」

51: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 22:32:19.82 ID:gx3oKrbV0
みほ「それで……」

沙織「何?」

みほ「結局何なの? “最後の一線”って」

華「わたくしも知りたいです」

沙織「……やっぱり、その話に戻るの?」

みほ「だって、分からないから」

沙織「……」

みほ「沙織さん、“危険”って言ってたでしょ」

華「それが何なのか分からないのは、危険かどうか以前の問題では」

みほ「危険を回避、それとも排除するなら、何なのか分かってないと」

沙織「……ゆかりん。これって……」

優花里「何ですか?」

沙織「さっき、ゆかりんが言ったみたいに、本当にそのこと自体を、知らないってことなの……?」

優花里「……いや、まさか、あり得ないとは思いますが」

沙織「だよね……だって私たち、もう高校生なんだよ?」

麻子「訊けばいい」

優花里「え゛」

沙織「麻子、冗談でしょ?」

麻子「知ってるかどうか、訊くのが一番手っ取り早い」

優花里「それはそうですが……」

沙織「……怖過ぎるんだけど。訊くのも、その返事も」

52: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 22:38:24.48 ID:gx3oKrbV0
麻子「ああ。今の二人の様子を見れば……」

みほ「?」

華「?」

優花里「……二人とも多分、私たちが何を話してるのか、全然分かってません」

麻子「その様子だと、もう答えは予想どおりといっていい」

沙織「でも、どうやって訊くの?」

麻子「沙織の言ってる意味が分からないが」

沙織「だって……あれとか……どうするのか知ってる?とかって訊くのかな、って……」

麻子「何をごにょごにょ言ってるんだ」

優花里「はっきり、セッ……あの、これを、知ってるか訊くんですね?」

麻子「いや、恐らくその言葉を知らないと思う」

優花里「あ……それもそうですね。この言葉を知ってるくらいなら、その意味も知ってるはずです」

沙織「それなら、作り方を知ってるか、とか?……嫌あもう」

麻子「その訊き方がベストだと思う」

優花里「直球の質問ですね……」

沙織「……もちろん、麻子が訊いてくれるんだよね?」

麻子「まず隗から始めよ、だ」

優花里「冷泉殿、御武運をッ……!」

沙織「その言葉、使うところ間違ってない?」

53: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 22:40:38.78 ID:gx3oKrbV0
麻子「西住さん。五十鈴さん」

みほ「何?」

華「何でしょう」

麻子「質問に質問で答えて、申し訳ないが」

華「謝ったりしないでください。お話を進めるのに、必要なんでしょう?」

みほ「気にしないで訊いて、麻子さん」

麻子「じゃあ訊く。人間の赤ん坊はどうやって作るか、知ってるか?」

優花里「来ましたッ。ド直球です! 徹甲弾攻撃です!」

沙織「やだああああああもおおおおおお」

優花里「いきなり何つー声を出すんですか、武部殿」

沙織「もう嫌あああ恥ずかしい。どうしてあたしたちこんなこと話してるのよおおお」

麻子「沙織がそれを言うのか」

優花里「元はといえば、武部殿が始めた話題だったのでは」

沙織「こんなにナマな話になるなんて思わなかったよおおお」

麻子「そのナマな話を、聞きたがったくせに」

沙織「もっと恋バナ的なのを聞きたかったのよおお」

優花里「……でもこれは、むしろ」

麻子「ん?」

優花里「いい機会じゃないですか?」

沙織「いい機会?」

54: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 22:42:40.23 ID:gx3oKrbV0
優花里「生意気なこと言いますけど、もし二人がそれを知らないなら……」

沙織「うん」

優花里「知った方が絶対いいと思います。いろんな意味で。今後のためにも」

沙織「確かにね……」

麻子「同感。知らない方がいいなんてことは、ない」

優花里「とにかく、知ってるかどうか、答えを聞いてみましょう」

麻子「西住さん、五十鈴さん。それを知ってるか?」

みほ「……赤ちゃんの作り方?」

華「そう言われてみれば……」

みほ「詳しくは、知らないかな」

華「赤ちゃんは、“できる”ものではないことは知っています」

みほ「うん。“作る”ものなんだよね」

華「男性と女性とが、何かをするのだと思いますけど……」

みほ「その“何か”って、そういえば、何なんだろうね」

華「裸だったと思います」

みほ「裸で、抱き合ったり?」

華「抱き合うと、赤ちゃんは作れるんでしょうか」

みほ「抱き合うだけで?」

華「わたくしも、詳しくは存じません」

沙織「……」

優花里「……」

55: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 22:45:20.35 ID:gx3oKrbV0
麻子「……やはり、だ」

沙織「……マジ信じらんない……超あり得ない……」

優花里「いるんですね……高校生で、知らない人」

麻子「今、二人がしてた会話は、率直に言って……」

沙織「小学生レベル。小学生でも高学年の子なら、多分もっとマシだわ」

優花里「はい。二人には失礼ですけど、そうとしか……」

沙織「嘘をついてるようには見えないし」

麻子「こんなことで嘘をつく必要もないからな」

優花里「かえって、知ったかぶりをした方が、まだ分かります」

沙織「大体、これって、私たち自身の体のことでもあるんだよ?」

優花里「一応、私たちはもう……」

麻子「赤ん坊を作れるようになってるはず。あれが来てれば、だが」

沙織「自分の体がそうなった時に、その意味や赤ちゃんのこと、誰かに教わらなかったのかな」

優花里「私は、母から教わりました。だけど、二人は……」

沙織「……よーし」

優花里「武部殿?」

沙織「麻子があんなこと訊いてくれたんだから、今度は、私の番」

麻子「何をする気だ」

56: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 22:47:01.05 ID:gx3oKrbV0
沙織「みぽりん。華」

みほ「何?」

華「何でしょう」

沙織「私たちの体ってさ……」

華「はい」

みほ「何? 沙織さん」

沙織「すごく言いにくいんだけど……毎月……ああなるよね?」

華「それは、生理のことでしょうか」

沙織「ぐはっ」

麻子「ストレートな返答だな」

優花里「しかも即答です。相手も徹甲弾攻撃です!」

麻子「沙織が、わざわざ遠回しに訊いた意味が全然ない」

みほ「生理がどうかしたの?」

沙織「……」

麻子「沙織がダメージを受けてる」

優花里「突撃を敢行したけど、反撃の方が勝ってましたね」

麻子「あいつが何をしたいのかは分かったが」

優花里「この話題だと、さっき西住殿を問い詰めてた時みたいな勢いは、出ないようです」

麻子「無茶しやがって」

優花里「武部殿、相手の打撃力は強大です。撤退してください」

57: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 22:48:49.69 ID:gx3oKrbV0
沙織「……ま、まあ、良かったわ。二人とも、もうそれが来てるみたいで」

優花里「お?」

麻子「沙織が立ち直った」

優花里「武部殿、再起動!」

沙織「……さっきの様子で、ひょっとしたらまだなの?って思ったから」

みほ「初潮が?」

沙織「ぐはっ」

優花里「再び徹甲弾攻撃です!」

みほ「私は早かったよ。小4だった」

華「わたくしも小学生の時でした。遠足の最中で」

みほ「あ、私も外出先」

華「でも事前に知識があれば、大したことにはなりませんね」

みほ「うん。周りの人たちも気を遣ってくれたなあ」

沙織「……」

優花里「武部殿、またも沈黙」

麻子「畳み掛けるような反撃だったからな」

沙織「……もー、この子たち……どうしてこんな簡単に話せるのよう」

優花里「こういう話題なのにアケスケですよね」

麻子「天真爛漫、天衣無縫か」

58: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 22:50:39.34 ID:gx3oKrbV0
沙織「……じゃあ、二人に訊くけどさ」

みほ「何?」

華「何でしょう」

沙織「生理の意味って、どういうもんだと思ってるわけ?」

みほ「それは……私たちの体の中には、子宮っていう赤ちゃんが入る部屋があって……」

沙織「うん」

みほ「そこに、赤ちゃんの寝るお布団が敷いてあるんだけど」

沙織「ふむ」

みほ「いつ赤ちゃんが来てもいいように、月に一回、それを新しく敷き直してるんだって、聞いた」

華「出てくる血は、怪我などのときとは違う、ごく自然なものということですね」

沙織「何だ、ちゃんと知ってるじゃん」

麻子「これについては、正しい知識を持ってるようだな」

優花里「でも、その赤ちゃんをどうやって作るか、ということは……」

沙織「知らないんだね……」

みほ「沙織さん」

沙織「何?」

みほ「それなら、教えてほしいな」

沙織「えっ」

華「わたくしからもお願いします」

沙織「あ、あたしが教えるの!?」

59: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 22:52:30.32 ID:gx3oKrbV0
華「皆さんの言っていることが、大体、分かってきました」

みほ「“最後の一線”って、そのことなんだね」

華「男性と女性とが何かをすることで、赤ちゃんを作る。その“何か”ですね」

みほ「それを最初にするのが、私たち女の子の“一番大事な初めて”ってことなんでしょ?」

沙織「う、うん……」

優花里「そのとおりです。西住殿、五十鈴殿」

麻子「二人とも、理解が早いな」

みほ「どんなこと、するの?」

華「どのようにすれば、赤ちゃんを作れるんでしょうか」

沙織「……」

麻子「じゃあ、沙織」

沙織「何よ、じゃあ、って……」

麻子「説明して差し上げろ」

沙織「……どうしてあたしなのよう」

麻子「知ってることを話せばいいだけだ」

沙織「そんなの……恥ずかしくてできないよう」

麻子「実地に教えろとは、誰も言ってない」

沙織「なっ……何てこと言うのアンタは! 女同士でそんなこと、するわけないでしょ!」

優花里「相手が男性でも、実地に教わるのは勘弁願いたいですが」

沙織「教わるなら、やっぱイケメンに限るよねー……って、何言わすのよゆかりん!」

優花里「いや、武部殿が勝手に……」

60: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 22:54:27.59 ID:gx3oKrbV0
沙織「麻子がやってよ……。生物、教えるみたいに」

優花里「あ。それ、名案です。生物の授業っぽい説明にすればいいのでは」

沙織「私だと恥ずかしくて、言葉をボカしたりしながらになっちゃう。そんな説明じゃ意味ないよ」

麻子「確かに、授業みたいなやり方なら、客観的に事実だけを伝えられるかもしれないな」

優花里「説明する方も聞く方も、恥ずかしくないですし」

麻子「分かった。私がやる」

みほ「麻子さんが教えてくれるの?」

華「よろしく御教授ください」

麻子「ヒト、つまり私たち人間の生殖は……」


~~~(説明中)~~~~


麻子「……と、いうことだ」

みほ「……」

華「……」

麻子「説明で、分からないことは?」

みほ「……人間って、そういうことしなくちゃ、赤ちゃんを作れないの?」

麻子「基本的には、そうだ」

華「“試験管ベビー”という言葉を、聞いたことがあります。あれは何でしょうか」

麻子「確かに、試験管内で、赤ん坊のもとを作ることは可能だ」

みほ「……」

麻子「今話したように、必要なのは卵子が受精し、それが子宮内に  すること」

華「……」

麻子「それさえ行われれば、手段は何でもいいことになる」

61: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 22:56:18.80 ID:gx3oKrbV0
優花里「  と  を人間の体から取り出して、試験管内で受精させてもいいんですね」

麻子「その受精卵を子宮に入れる。  すれば妊娠だ」

華「……“試験管ベビー”というのは、そうやって作った赤ちゃんですか」

麻子「だから、男女の性交渉は、絶対に必要なことじゃない」

沙織「逆にそれ、幾らやっても、赤ちゃんを作れない夫婦もいるんだよね」

みほ「赤ちゃんを欲しいのに、何年も授からないっていう話、聞いたことある。どうしてなんだろ」

優花里「理由はいろいろあるみたいですよ。夫婦のどっちかが原因だったり、両方に原因があったり」

麻子「そういう夫婦から  と  をもらって受精卵を作り、奥さんの子宮へそれを戻す」

沙織「普通にしてても妊娠しないから、お医者さんの手で、そういうことするんだよね」

優花里「それが、不妊治療ですね」

みほ「ふーん……」

華「理解しました……」

沙織「はぁー……疲れた……」

麻子「もう、こんな時間か」

優花里「  話……いえ、内容の濃い話をすると、あっという間ですね」

みほ「寝る? じゃ、交代で歯、磨く?」

沙織「……こんなこと話したすぐ後に? 麻子なんて絶対無理でしょ」

麻子「私が夜に強いのはもともとだ」

62: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 22:58:13.12 ID:gx3oKrbV0
華「……人間って、そういうこと、するんですね」

沙織「華、まだ言ってるの? もう終わりにしようよ……」

華「わたくしたちも、するんでしょうか」

優花里「将来、結婚すればそうなりますね」

沙織「結婚の前にする人もいるけどね。ていうか、それがほとんど?」

華「どんな感じなのかしら……」

沙織「どんな感じ、って……」

麻子「五十鈴さんは……もともとの疑問は、人間の生殖についてだったが」

優花里「関心が、その行為自体に移ったんでしょうか」

沙織「イカン。親友を、性に目覚めさせてしまった」

麻子「だが、おぞましいとかの感想を持たなくて、良かったともいえる」

沙織「まあね……みぽりんも別に、ショックを受けたりしてないみたいだし」

優花里「私は初めて聞いた時、かなり動揺しましたけど……。何日も気分悪かったです」

みほ「だって、誰でもすることなんでしょ?」

麻子「ああ。私たちの親も、だ」

優花里「うぐ。それです。私はその話が、すごく苦手なんです」

みほ「私、麻子さんの説明聞いて、そのことを一番最初に思った」

優花里「あう。西住殿、お願いですから“そのこと”の中身を言わないでください」

みほ「私は、親がそういうことをしたから、生まれたんだ、って」

優花里「ぐああああ。許してください。自分の両親で想像してしまいます」

みほ「でも、親の話なんて、麻子さんに悪いから……」

優花里「うががが。私には悪くないんでしょうか。あんまりです」

みほ「だから今、麻子さんが“私たちの親も”って言って、ちょっとびっくりした」

63: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 23:00:15.55 ID:gx3oKrbV0
沙織「麻子なら大丈夫だよ。みぽりん」

麻子「西住さん、気にしないでほしい」

華「私たちが今いるのは、親が、そういうことをした結果……」

沙織「親の親も、そのもっと前も、ね」

麻子「今、自分の親がいようといまいと、このことに変わりはない」

みほ「うん。そうだね、麻子さん」

優花里「……」

沙織「ゆかりんがグッタリしてる」

麻子「さっきから一人で悶え苦しんでたが」

優花里「……いえ、大丈夫です……見苦しくてすみません」

華「優花里さん……顔、真っ赤ですよ」

優花里「え……そうですか?」

沙織「うん」

優花里「私は今、皆さんの顔がそうだって、言おうとしてたんですが……」

沙織「……」

華「……」

麻子「……まあ、こんな話をした後だから」

64: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 23:01:32.98 ID:gx3oKrbV0
優花里「……何だか……暑いですね……」

沙織「うん……」

華「……どうして、なんでしょうね……」

優花里「……もう、脱いじゃっていいですか……?」

沙織「やめてよ……これ以上、ナマな雰囲気、作らないでよ……」

みほ「え? 暑い? エアコンのスイッチ入れる?」

沙織「ううん……そうじゃなくて……」

華「みほさんは、どうして……」

優花里「平然と、してるんでしょうね……」

麻子「恋愛感情がなかったとはいえ、男と、キスまでした経験が……」

優花里「余裕を、生み出してるんでしょうか……」

沙織「もう……寝る……?」

麻子「……おい、沙織」

沙織「……何?」

麻子「寝てる間に、私を襲うなよ」

66: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 23:03:49.46 ID:gx3oKrbV0
沙織「なっ」

麻子「今夜の沙織なら、やりかねない」

沙織「ななな、何言ってんの!?」

麻子「もう女が相手でもいいや、とか考えそうだ」

沙織「どうしてあたしがそんなことすんの! さっきから気持ち悪いことばっかり言って! バーカバーカ!」

麻子「危ない、枕を投げるな。ほら西住さんの顔面に当たった」

沙織「麻子がよけるからでしょ! よけるなアホ! 大人しく当たってろ!」

みほ「あ痛たー」

沙織「みぽりんごめんね」

みほ「ううん、大丈夫」

沙織「……一緒に寝るんだったら……」

優花里「え? 武部殿?」

沙織「ねえ……みぽりん……」

みほ「何?」

沙織「みぽりんの、ベッドに……」

みほ「うん」

沙織「もう一人……寝られるんだよね……?」

優花里「ちょっと待ったァァ!」

67: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 23:05:42.52 ID:gx3oKrbV0
華「抜け駆けは許されません!」

麻子「気持ち悪いことなんじゃ、なかったのか?」

沙織「ああ? 文句あるの? 早い者勝ちでしょ!?」

みほ「何? 何? 急にどうしたの? みんな?」

優花里「暗黙の了解だったはずです! 武部殿!」

麻子「全員、自重してたのが分からないとはな」

沙織「何よ、みぽりんと一緒に寝るのは、あたしよ!」

華「こうなったら、わたくしが身を挺して、みほさんを守らないと……!」

優花里「お言葉ですが、西住殿は誰にも渡しません!」

みほ「みんな、目が怖いよぉ……」

麻子「床で雑魚寝より、ベッドで西住さんを抱いて寝た方が、安眠できるに決まってるからな」

沙織「は? それはあんたの本音でしょ? 麻子?」

華「お下劣な動機ですわ」

優花里「考えてることは全員、同じなんじゃないですか?」

沙織「ゆかりんは、自分の寝袋持ってきてるんだから退きなよ」

優花里「雑魚寝スペースが一人分空くことに、変わりはありませんけど?」

華「スペースのことでいえば、一番大柄なわたくしが、ベッドへ行くのが最善です」

麻子「どいつもこいつも詭弁ばかりだ」

みほ「みんな、ベッドに寝るのはいい、って言ってたんじゃ……」

68: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 23:07:02.14 ID:gx3oKrbV0
麻子「ここは、平等に決めよう」

華「それがよろしいかと」

優花里「望むところです」

沙織「ふん、仕方ないね。勝ち抜き戦にする?」

華「いえ、一人が勝つまで、何回でもやりましょう」

優花里「賛成です。全員を一度に、まとめて倒せば……」

麻子「文句無しの、完全勝者ってわけだ」

沙織「了解!」

華「勝負です!」

優花里「絶対負けません!」

麻子「束になってかかってこい」

みほ「何でこうなっちゃうの……?」

沙織「それじゃあ、いくよっ!?」

沙・華・優・麻「最初は、グー!!」

みほ「ちょっと、みんなぁ……」

沙・華・優・麻「じゃーん、けーん……!!」



引用元: 【ガルパン】みほ「……キス……1回だけ……」