1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/12(日) 08:44:40.77 ID:3k7rsqzTo
我々のいる世界は、素粒子というエネルギーの塊を最小単位とした、アナログ情報の世界といえる。

だが、もうひとつの世界…「デジタル世界」が存在する可能性が示唆された。
我々は研究によって、人類の築き上げたコンピュータネットワーク上の情報が反映される、「デジタルワールド」を発見し、観測に成功した。

私はこの世界の海の底で、タマゴらしき物体を発見した。

どういうわけか、我々の世界に蔓延しているコンピュータウイルスの一部がデジタルワールドへ逃走し、そこでタマゴへと変質したようだ。

…タマゴは今、海底の熱水噴出孔近くにある。
煮えたぎる硫化水素と共に、アミノ酸が吹き出ている、生と死が隣り合わせの過酷な環境だ。

さて、このタマゴをどうするべきか…?↓
①放置して観察する
②穏やかな環境へ移動させる

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1639266280

2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/12(日) 09:11:43.56 ID:n6t+aaCP0
②穏やかな環境へ移動させる

3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/12(日) 09:44:38.03 ID:Z7xH1WndO
このまま放置してみるのもよいが…
どうやら、タマゴはこの熱水噴出孔周辺に多数存在しているようだ。

私はそのうちの一つを、穏やかな環境へ移動させることにした。

この物体は、本当にタマゴなのだろうか?
だとすれば、その性質を解き明かすために、異なる環境に置いて観察することは科学的なアプローチとして間違ってはいないはずだ。

やがて、タマゴにヒビが入り…
中から何かが出てきた。

no title

4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/12(日) 10:03:59.95 ID:Z7xH1WndO
このクラゲのようなオブジェクトは、海中をふわふわと漂い始めた。

そして海中で何か小さなものを食べている。

どうやら餌は、タマゴと同じくコンピュータウイルスを起源にしつつも、タマゴにはならず、シアノバクテリアに似た光合成プランクトンの姿へと形を変えた存在のようだ。

これは生命なのだろうか…?

しばらく観察していると、突如クラゲは変態した。

no title


目が大きくなり、触手のようなものが生えた。

これはクラゲと呼んでよいのだろうか…?
クラゲには眼球などないはずだ。

この生物は、さらに活発に植物プランクトンを摂取し始めた。

5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/12(日) 10:11:46.40 ID:Z7xH1WndO
海底に目をやると、二本足をもつ石のような生物が海底を歩いている。

no title


どうやら、熱水噴出孔付近で孵化したタマゴから産まれた個体も、孵化・変態したようだ。

我々が観察しているクラゲ型生物も、あのまま熱水噴出孔付近にいたら、あの姿になっていたのだろうか…。

さて。
我々は仮称として、クラゲ型生物にプヨヨモンと名付けた。

プヨヨモンは海中を漂っているが…
この辺りの環境は、どんな状態であろうか。↓
①小型プランクトンが海中に多く漂っている
②岩場にたくさんの海藻が生えている
③獰猛な捕食者が暴れている

6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/12(日) 10:13:43.03 ID:dv0K6gvPO

7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/12(日) 10:22:53.96 ID:Z7xH1WndO
周囲を観察すると、プランクトンに似た生物が多く漂っていたが…
そのうちの数匹は、突如としてやってきた捕食者に飲み込まれてしまった。

no title


捕食者は、魚のような姿をしている。
この種をスイムモンと呼称しよう。

このままでは、プヨヨモンのいずれスイムモンに捕食されてしまう…。

だがプヨヨモンは、小さな体を活かして岩の隙間へ隠れた。

スイムモンはプヨヨモンを追跡したが、岩の隙間が狭くて通れないようだ。

8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/12(日) 10:26:21.33 ID:Z7xH1WndO
だがスイムモンは、ヒレで岩をどかし、口から水流を噴射してそれを砕いた。

驚くべき攻撃性能である。
同じ隠れ方をしてきたプランクトンを、この手段で捕食してきたのだろうか…。

プヨヨモンが隠れた岩はどかされてしまった。
もはや逃げ場はないだろう。

だが、岩場の影にいたのは…
既にプヨヨモンではなかった。

プヨヨモンは、捕食者のいる環境に適応し、変態したのであった。

no title

9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/12(日) 10:31:10.93 ID:Z7xH1WndO
二枚貝のような姿へと変態したプヨヨモンを、我々はシャコモンと名付けた。

スイムモンは、シャコモンをヒレで攻撃しようとしたが…
シャコモンはその攻撃を硬い殻で防御した。

スイムモンは、ヒレや水流でシャコモンの殻を滅多打ちにしている。
若干、シャコモンの殻に傷が付き始めた。

スイムモンは、疲労し始めたのだろうか…
シャコモンを捕食するのを諦め、背を向けた。

その隙を狙ったシャコモンは、高速で真珠を放った。

真珠はスイムモンの腹に命中した。

スイムモンは大きなダメージを受けたらしく、吐血した。
そして、ふらふらと逃げていった。

10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/12(日) 10:37:45.18 ID:Z7xH1WndO
なんということであろうか。

プヨヨモンはこの短期間のうちに、環境に適応し、捕食者を撃退してのけたのである。

最早これは、個体の成長というレベルではない。
種そのものの進化…そう、「進化」と呼ぶべき現象だ。

我々はこの生物の総称を、デジタルモンスター…デジモンと名付けた。




…さて。
シャコモンは海底をゆっくりと移動し、海藻を食べている。

スイムモンが度々襲ってくるが、そのたびにパールを放って追い払っている。

守りは硬いが、積極的に攻めていくタイプではないようだ。

…だが。
スイムモンとは別のデジモンが、シャコモンに近寄ってきた。

no title

11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/12(日) 10:41:53.38 ID:Z7xH1WndO
蟹のような姿をしたこのデジモンを、我々はガニモンと名付けた。

ガニモンは、シャコモンに近寄ると、その大きなハサミでシャコモンの殻を殴った。

シャコモンの殻にヒビが入った。
シャコモンも、真珠を放ってガニモンを攻撃した。

ガニモンの足が、一本へし折れた。

怒ったガニモンは、ハサミでシャコモンの殻をはさみ、力を込めた。
すると殻はめきめきと音を立ててきしみ始めた。

このままでは、シャコモンは殻を砕かれ、捕食されてしまうだろう。
どうするか…↓
①このまま戦いを見届け、観察対象をガニモンに変える
②大量のゴミデータをこの場へ送りつけて、シャコモンを救出する

12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/12(日) 11:01:48.62 ID:X8koFkJlo
2

13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/12(日) 11:06:48.50 ID:Z7xH1WndO
研究者として、最善の選択であるかは分からないが…
私はとっさに、大量のゴミデータをこの場へ送りつけた。

ゴミデータは、墨のように海中に広がり、周囲を黒く染めた。

ガニモンは驚いて飛び退いた。
シャコモンは、素早く砂の中へ潜り、この場から脱出した。

…ガニモンが去った後、少し離れた場の砂の中から、シャコモンが顔を出した。

助かったようだ…私はほっとした。
私はシャコモンに…いや、シャコモンという種ではなく、この『個体』に。
愛着を持ってしまったようだ。

14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/12(日) 11:10:45.74 ID:Z7xH1WndO
危機を脱したシャコモンは、環境への適応始めた。

現在のシャコモンは、海底や岩場で生活し、海藻を食べて生きている。

スイムモンに襲われても、追い払うことはできるが、倒して食べたりはできない。

ガニモンに襲われたら、次こそ命はないだろう。

この環境へ適応するために、シャコモンは…↓
①水中を素早く遊泳できるようになる
②ゴミデータをばらまく性質を模倣し、知能を発達させる
③今のままとにかく体を大きくして、パワーで外敵をねじ伏せる
④陸上への進出を試みる

15: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/12(日) 11:12:49.16 ID:uSKNXvtm0
4

16: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/12(日) 11:20:18.80 ID:Z7xH1WndO
シャコモンは、高い方へと移動をし始めた。
ガニモンに襲われないように、陸上へ進出する気のようだ。

シャコモンは、少しずつ、少しずつ…河口へ近づいていった。
真水へと体を慣らしながら。

周囲を警戒し、ガニモンの姿を見かけたら、砂に潜って隠れてやり過ごした…。

やがて、とうとうシャコモンは川を登った。
川に住み着くようになったのである。

そして、川から陸上へ出た。
陸上の植物は、どれくらい発達していたであろうか?

陸上当時の環境は…↓

①藻やシダ植物が、ちまちまと生えている程度
②生い茂った草を、小さな昆虫型デジモンが食べている
③植物型デジモンが生息している

17: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/12(日) 11:23:58.37 ID:SsVFmZR9o
2

18: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/12(日) 11:32:56.12 ID:Z7xH1WndO
陸上には、既に草が生い茂っていた。
そして、草を食べたり、花の蜜を吸って生きるデジモンがいた。

no title

no title


昆虫のような姿をしているデジモン。
おそらく、ガニモン達が陸上へ進出したのであろうか…?

シャコモンは、これらの昆虫デジモンを餌にすることに決めたようだ。

シャコモンはなんと、重くて大きな殻を捨て去り…
捕食に向いた肉体へと進化した。

no title

19: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/12(日) 11:36:23.67 ID:Z7xH1WndO
我々は、進化したシャコモンをヌメモンと名付けた。

ヌメモンは、昆虫型デジモンのうち一体に狙いを定めると…
泥の塊を発射した。

泥は幼虫型デジモン…ワームモンの体に当たると、すぐに硬化した。

ワームモンは、固まった泥のせいで身動きが取れない。

そこへ、びょいんびょいんとヌメモンが跳ねて近寄り…
その強靭な顎で、一気にワームモンの頭を食いちぎった。

なんと、おぞましく…そして強靭な進化であろうか。

20: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/12(日) 11:42:25.22 ID:Z7xH1WndO
ヌメモンは高い生存能力を持っていた。

普段は川のそばに住み、藻や苔を舐め取って食べている。

デジモンの死骸を見つけると、それを貪って分解している。

小さな昆虫型デジモンを見つけると、泥を投げて動きを止め、捕食するのである。


大型のデジモンが近寄ってくると、ヌメモンは沼の中に沈んで隠れ、ぎょろっと目玉だけを出して外敵を観察した。


雑食かつ悪食であり、隠れるのも得意なヌメモンは、とても合理的な進化を遂げたようだ。

21: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/12(日) 11:48:21.53 ID:Z7xH1WndO
だが、やがて陸上には、ヌメモンと同じかそれ以上の力を持ったデジモンが現れ始めた。

昆虫型デジモンが進化したのである。
no title

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クワガタやカマキリの姿をしたそれらは、白兵戦の力ではヌメモンを遥かに上回る。

ヌメモンは、自身が進化の袋小路に至りつるあることを感じているようだ…。

やがて、ヌメモンは沼地にタマゴを産んだ。
単為生殖である。

どうやらデジモンは、交尾を必要とせずに単為生殖ができるようだ。

さて、卵を産んだヌメモンだが。
我々はどうするか…↓
①観察対象を、ヌメモンが産んだタマゴに変える
②このままヌメモンを観察する

22: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/12(日) 12:01:57.98 ID:V/Zw5v1no
1

23: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/12(日) 13:27:39.45 ID:Z7xH1WndO
ヌメモンはいくつかタマゴを産んだ。
それらからは、やがて幼年期のデジモンが産まれ、プヨヨモンへと成長した。

湿地帯に巣を作ったヌメモンの周りには、プヨヨモン、シャコモン、ヌメモンが暮らしており、生活圏を広げていた。

カマキリの姿をしたスナイモンでは、沼までは攻めてこれないため、沼は安全なコロニーだったのである。

だが、その巣の中心へ、トンボの姿をした肉食昆虫デジモン…ヤンマモンが現れた。

no title


我々が観察してきた個体…ヌメモンは、コロニーの子供達を逃がすために、自ら足止めのために、ヤンマモンに立ち向かった。

24: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/12(日) 13:35:38.51 ID:Z7xH1WndO
ヌメモンは、ヤンマモンの羽を狙って泥を投擲した。

だが、素早く飛び回るヤンマモンは泥を難なく躱し、ヌメモンの首へ噛み付いた。

ヤンマモンの牙は、ヌメモンの神経を、血管を、引きちぎっていく。
傷からはおびただしい量の体液が流れ出ている。

ヌメモンは最後の力を振り絞り、ヤンマモンの羽に泥をぶつけることに成功した。

これにより、ヤンマモンは一時的に飛行能力を失うこととなった。

…だが、それがヌメモンの最後の抵抗であった。
ヤンマモンはヌメモンの首の傷に頭を突っ込むと、心臓を引きずり出し、それを食いちぎった。

ヌメモンの体から力が抜け、沼に倒れた。



ヌメモンを食い尽くしたヤンマモンは、何度か羽をばたつかせたが、硬化した泥はとれない。

ヤンマモンは清流の方へと歩いていった。
きれいな川の水で羽の泥を洗い流すため、逃げていったヌメモンの子供達から離れざるを得なかったのだ。




…ヌメモンの子供達は、無事にヤンマモンから逃げ切れたようだ。

25: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/12(日) 13:40:06.00 ID:Z7xH1WndO
なんのことはない、ただの食物連鎖の一貫である。
今捕食された個体のことは、やがて誰もが忘れ去っていくであろう。

だが、この湿地帯に、貝類の姿をしたデジモンが繁栄しているという事実が…
かつて海から上陸した、ひとつの軟体動物型デジモンの個体の存在を、誰にも知られずに語り継いでいくのである。

29: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/13(月) 08:32:19.81 ID:glagszZPo
次の観察個体は…↓
①プヨヨモン(ヌメモンが産んだタマゴ)
②プヨヨモン(海中のタマゴ)
③???(熱水噴出孔周辺のタマゴ)

30: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/13(月) 08:45:49.95 ID:lVG8Nwt3o
3

31: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/13(月) 14:10:52.91 ID:K+T//R5qO
硫化水素とアミノ酸が吹き出る熱水噴出孔。
その付近にあるタマゴから、デジモンが産まれた。

no title


このスライム状の幼いデジモンは、やがて熱水噴出孔から離れ、海底をズルズルと這い始めた。

我々はこのデジモンを「ズルモン」と命名した。

さて、このズルモンだが、スイムモンやガニモンに見つかっても、一向に捕食される様子がない。

時折スイムモンが飲み込もうとするが、すぐに吐き出してしまう。

どうやら毒素を含む肉体を持っているようだ。

32: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/13(月) 14:13:00.27 ID:K+T//R5qO
ズルモンの周囲には、石のようなデジモン…ゴロモンが歩き回っている。

no title


おそらくズルモンは、しばらく放置すればゴロモンへと進化するだろう。

さて、どうするか…↓
①放置する
②陸上へ移動させてみる

33: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/13(月) 14:14:42.81 ID:hk9CMfCPo
1

34: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/13(月) 14:24:29.02 ID:K+T//R5qO
しばらく放置すると、ズルモンはやがてゴロモンへと進化した。

ゴロモンは二本足で海底を歩き回り、海藻や砂を食べている。

排泄物は、そのほとんどが砂を占める。

おそらく、砂の中から微生物やミネラル、死んだデジモンの残骸などをより分けて吸収しているのであろう。

そして、食べた砂のいくらかを外殻の生成に利用している。

この外殻はとても硬い。
そして何よりも、石に擬態することで捕食者から身を護るのに役立っているようだ。

35: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/13(月) 14:30:24.81 ID:K+T//R5qO
スイムモンやガニモンは、擬態中のゴロモンを見かけても、特に反応を示さない。

だが、ゴロモン達にも天敵はいるようだ。
シャコモンがそれだ。

シャコモンの中には、ゴロモンを殻の中へ閉じ込め、じわじわと消化することを覚えた個体もいるようだ…。

さて、今我々が観察しているゴロモンには、シャコモンという天敵が存在することになる。

この環境下で、ゴロモンはどう生きようとするか…↓
①地上へ進出する
②熱水噴出孔付近に戻る
③単純に強くなる
④我々研究員の最新ツールで捕獲してみる

36: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/13(月) 14:32:16.17 ID:tZuuaESDO
1

37: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/13(月) 14:38:04.52 ID:K+T//R5qO
ゴロモンは、のっしのっしと河口へ向かい、上陸を試みた。

途中、天敵のシャコモンと出くわし、真珠を撃ち出されることがあったものの、幸運にも生き延びた。

やがてゴロモンは、シャコモンが苦手とする酸性の強い水域を歩くようになった。

活火山から流れてきた溶岩が、硫化水素を水に溶かし、硫酸で海水を毒化させているのだ。

ゴロモンはズルモン時代の毒素は失ったが、毒への耐性は持ったままらしい。

そのままゴロモンは、活火山の見える浜辺へと上陸した。

このあたりの環境は…↓
①自然あふれる山岳地帯
②サバンナのような荒野
③植物があまり見えない極限環境

38: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/13(月) 14:38:50.64 ID:VVApl306o
3

39: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/13(月) 14:41:58.27 ID:K+T//R5qO
ゴロモンがたどり着いた陸地は、植物がほとんど見当たらなかった。

それもそのはずだ。
活火山から流れ出る溶岩や火山灰が、常に大地へ降り注いでいるからだ。

流石に火山から数十キロ離れれば、緑地も見えてくるが…
こんなところでゴロモンは生き延びられるのだろうか?

ゴロモンは…↓
①緑地へ移動する
②あえてこの辺への適応を試みる

40: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/13(月) 14:43:07.89 ID:tZuuaESDO
1

41: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/13(月) 14:47:31.26 ID:K+T//R5qO
ゴロモンは緑地への移動を開始した。
個体によってはここへ住み着く者もいるかもしれないが…
この個体はそうではなかったようだ。

やがてゴロモンは、より陸上での活動に適した姿へと進化した。

no title


我々はこの種をゴツモンと名付けた。

ゴツモンはゴロモンの頃よりも歩くスピードが早く、餌を食べる量も多い。

やがてゴツモンは緑地へと辿り着いた。

43: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/13(月) 14:48:54.62 ID:K+T//R5qO
この辺りの環境は…↓
①湿地帯。ヌメモンやヤンマモンが生息している。
②草原。昆虫型デジモンが生息している。
③山岳地帯。未調査の地域。
④森林。未調査の地域。

44: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/13(月) 14:49:21.54 ID:hk9CMfCPo
4

45: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/13(月) 14:56:46.55 ID:K+T//R5qO
ゴツモンが辿り着いたのは、植物が生い茂る森林であった。
この付近は未調査エリアである。

このゴツモンは、時折石や土を口にすることもあるが、基本は草食のデジモンのようだ。

ゴツモンは食べやすそうな植物を探している。

あまり硬い草は消化に適さないと判断し、柔らかい草を食べている。

やがてそんなゴツモンは、地面から奇妙な草花が生えているのを見つけた。

草花であるにも関わらず、稀にぴょこぴょこ動くのである。

さらに、その周囲には、土が掘り返されたような痕跡がある。

ゴツモンは…↓
①草花の部分を食べた
②地面から引っこ抜いた
③それらはスルーし、樹木の果実を食べた
④花の蜜を吸う昆虫型デジモンを狙った

46: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/13(月) 15:13:47.07 ID:cgX2IdYNo
1

47: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/13(月) 15:23:42.40 ID:K+T//R5qO
ゴツモンは、それらの草花の部分だけを食べた。

草花を食いちぎられた植物は、茎をぶんぶんと震わせたが、やがて動きが止まった。

ゴツモンが去ってから一時間後に、草花は徐々に再生を始めた。

…もしかしたら、これもデジモンなのかもしれない。

ゴツモンはそれからも、動く植物の草花の部分だけを食べ続けた。
掘り返して根っこまで食えばさらに栄養を補給できるであろうに、その選択はしないようだ。


そんなゴツモンは、しばらくの間、捕食者に狙われることが無かった。
なにせ見た目が岩なのである。岩に擬態すれば、スナイモンに襲われることは無かった。

だがある日…ゴツモンは、枯れ木に襲われた。
いや、正確には、枯れ木に擬態するデジモンである。
no title

48: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/13(月) 15:29:09.79 ID:K+T//R5qO
枯れ木に擬態するデジモン…ウッドモンは、無防備なゴツモンへ襲いかかった。

ゴツモンは驚いて逃げようとした。

だがウッドモンが伸ばした根は、ゴツモンの右腕に絡みつく。

ゴツモンは、己の右腕を切り離して逃げた。

ウッドモンは、切り離されたゴツモンの右腕へ職種を突き刺し、エネルギーを吸い取った。


驚いた。こんなデジモンがいるとは…。
現実世界にも食虫植物などはあるが、植物の体を持ちながら、ここまでアグレッシブに捕食活動をする植物など存在しない。


…右腕を失ったゴツモン。
彼は不幸なのであろうか?

否、幸運である。
あれだけ獰猛な捕食者に襲われながら、失ったのが右腕一本で済んだのだから。

49: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/13(月) 15:35:23.35 ID:K+T//R5qO
これまで天敵知らずでのんびり暮らしていたゴツモンであったが…ウッドモンという天敵が現れた。

「枯れ木に近寄らなければいい」と思うかもしれないが、ウッドモンには歩行能力がある。

擬態などせずとも、飛行できないデジモン…ゴツモンやワームモン、ヌメモン等に対しては、普通に歩いて襲いかかるだけでも捕食できるのである。

ゴツモンは、この環境にいかにして適応するか…↓
①植物の種を身体に植え付け、植物型デジモンへ擬態する
②単純に格闘能力を上げてパワーで対処する
③肉体から炎を噴出して外敵を追い払う
④走行スピードを上げ、空を飛べるようにする

50: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/13(月) 15:37:13.17 ID:cgX2IdYNo
4

51: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/13(月) 15:42:03.98 ID:K+T//R5qO
ゴツモンはウッドモンに襲われないように、山岳地帯へ移動した。

ウッドモンは平地を走るのは得意だが、高所への登り下りがニガテ打という弱点を発見したためだ。

しかし山岳地帯には、栄養価のある植物は多くはない。

この環境に適応するために…
ゴツモンは驚くべき進化を遂げた。

no title


高い移動能力を獲得した。
走るスピードが早くなっただけではなく、原理不明の飛行能力を獲得したのである。

52: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/13(月) 15:47:29.54 ID:K+T//R5qO
流れ星のように高速で移動するこのデジモンを、我々はスターモンと名付けた。

スターモンは常に飛行し続けているわけではなく、普段は地上を歩いて移動する。

ある日スターモンは、ウッドモンに襲われた。

だがスターモンは、素早い動きでウッドモンを翻弄し、背後に回った。

そしてパンチを放って反撃した。

ウッドモンは、負けじとスターモンに根を伸ばして絡め取った。

このままでは、根を突き刺されて体液を吸われてしまう…!
だが、スターモンはとんでもない方法でこの窮地を脱した。

なんとスターモンは、高速パンチのラッシュを放ち、体液を吸われる前にウッドモンを滅多打ちにしたのである。

ウッドモンは昏倒し、スターモンに背を向けて逃走しようとする。

だが、スピードではスターモンの方が遥かに上だ。
ウッドモンの後頭部をスターモンのパンチが叩き割り、ウッドモンは地に倒れ伏した。

53: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/13(月) 15:53:23.97 ID:K+T//R5qO
スターモンは、ウッドモンの死骸を捕食した。

たくさんのデジモンから栄養を吸い取っていたウッドモンの肉体は、豊富な養分を持っていたようだ。

そうしてスターモンは、ウッドモンを見つけては、それに自ら挑んで殴り倒し、捕食するようになった。

いつしかスターモンの巣の周りには、ワームモンやテントモンといった、弱くてウッドモンに食われやすいデジモンが住み着くようになった。

彼らの目には、スターモンは天敵を打ち倒してくれるヒーローのように映っているのかもしれない…。

54: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/13(月) 16:02:08.64 ID:K+T//R5qO
やがてスターモンは、巣の中でいくつかタマゴを産んだ。

産んだタマゴからは、ズルモンではなく、砂に似たデジモンが産まれた。

no title

我々はこのデジモンを、スナモンと名付けた。
我々は驚かされた。てっきりズルモンが産まれるものとばかり考えていたからだ。

デジモンという生物は、我々の世界の生物とは成長の仕方が大きく異なるようだ。

デジモンは成長するに従って、自らの遺伝子そのものを大きく変化させていく。

そしてタマゴを産んだとき、己の最新の遺伝子をそのタマゴへ受け継がせるのである。

このスナモンは、親と同じスターモンへと成長するのであろうか?
それとも…

55: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/13(月) 16:03:03.94 ID:K+T//R5qO
我々はどうするか…↓
①引き続きスターモンを観察する
②観察対象を変更する

56: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/13(月) 16:03:47.74 ID:vGfZV6ut0
1

57: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/13(月) 16:07:48.43 ID:K+T//R5qO
前回観察対象としていたヌメモンは、ヤンマモンに捕食されてしまったため、観察対象の変更を余儀なくされた。

だが、今回のスターモンは、未だ負け知らずである。
親となったデジモンが、これから先どうなっていくのか…
引き続き観察を続ける。

63: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/14(火) 10:49:01.89 ID:Uki0mIelO


我々は、これまでにふたつの個体の成長と進化を見届けてきた。

その中で、デジモンの進化には「レベル」があることが確認された。

【レベル1】…幼年期Ⅰ
ポヨモン、ズルモン、スナモンがこれに該当する。
同じタマゴでも、熱水噴出孔付近と穏やかな水域とでは、産まれる種が異なる。
さらに、スターモンはズルモンから成長したが、スターモンのタマゴからはスナモンが産まれた。
このことから、タマゴは親の遺伝子を引き継ぎつつ、ある程度周囲の環境に応じて産まれる姿が変化するといえる。
つまり、進化はタマゴの中で既に始まっているのである。
故にデジモンのタマゴ…デジタマは、レベル0のデジモンといえるだろう。

【レベル2】…幼年期Ⅱ
プヨヨモン、ゴロモンがこれに該当する。
活発に動き回れるようになり、さらなる進化のために餌を探し回る。
だが、レベル3の肉食デジモンにとっては、弱くて捕食しやすい格好の餌となる。
体の小ささを活かして隠れたり逃げたりして、外敵をやりすごさなければ、この時点で息途絶えることになるだろう。

【レベル3】…成長期
シャコモン、ゴツモン、スイムモン、ガニモンなどがこれに該当する。
身体機能が一気に発達し、戦闘能力を獲得する。捕食や自己防衛のために戦いの日々に明け暮れることであろう。
戦闘能力ではレベル4には敵わないことが多いが、基礎代謝がレベル4よりは低めであるため、環境が激変しても進化による適応の余地があることがこの世代の強みといえる。

【レベル4】…成熟期
ヌメモン、スターモン、ウッドモン、ヤンマモン、スナイモンなどがこれに該当する。
戦闘能力はさらに強大になり、成長期デジモン程度ならば造作もなく打ち倒せる。
そして、レベル4から単為生殖による産卵が可能となる。

レベル4デジモンは、基礎代謝カロリーの多さと戦闘能力の強さが比例する傾向が見られる。
スナイモンは、高い戦闘能力を持つが、その分多くの食事を必要とする。
ヌメモンは、他の成熟期に比べ戦闘能力ははるかに劣るが、基礎代謝量が少なく、様々な環境に適応可能だ。

デジモンの強さは、単に戦闘能力だけで決まるものではない。ヌメモンはヌメモンで、スナイモンにはない強さを持っているのである。



…現在、レベル5のデジモンは見つかっていない。
成熟期がデジモンの最終形態なのであろうか。

64: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/14(火) 11:01:14.32 ID:Uki0mIelO


スターモンは、デジモンを食べない。
通常の植物だけを食べて生活している。

そのため、一日に摂取が必要な餌の量が多くなってしまう。

いつもあちこちで餌を探し回っている。

…ある日、てんとう虫の姿をした成長期デジモン、テントモンが、花の蜜から作ったであろうハチミツのような食物を、スターモンへ差し出した。

スターモンは、これを受け取って食べた。
その対価故か、スターモンはテントモンと共に行動するようになった。

ある日、テントモンがスターモンと共に森を歩いていると、なにか甘い香りのする植物を見つけた。

テントモンが植物の方へ飛んでいくと…
なんと、植物は蔓を伸ばし、テントモンを捕らえた。

この植物は、食虫植物型のデジモンであった。

no title

65: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/14(火) 11:07:14.69 ID:Uki0mIelO
今回から、私もデジモンの名前を考えるチームに加わった。

私はこの食虫植物型デジモンの名前として、ウツボカズラに似ていることからカズラモンはどうか、と提案した。

だが、女性研究員が提案したベジーモンという名称が採用された。
ベジタブル…野菜?野菜に見えるか!?あれが!?どう見ても食虫植物だろう!
納得いかないが…まあいい。

さて、ベジーモンは、テントモンを捕食しようとしたが…
スターモンはベジーモンへパンチの連打を浴びせ、テントモンを救出した。


この日がテントモンはいつもより多く花の蜜を集め、スターモンに渡した。

やがて、スターモンの周りに集まるテントモンの数は増えていき…
スターモンは、テントモンから与えられる蜜だけで栄養を賄えるようになった。

さながら用心棒といったところであろうか。
デジモン同士で共生関係を結ぶこともあるようだ。

66: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/14(火) 11:12:19.17 ID:Uki0mIelO
ある日、スターモンがテントモン達とともに森を歩いていると…

ベジーモンの亜種であろう、赤い植物型デジモンの群れが、スターモン一向に襲いかかってきた。

no title


これはレッドベジーモンと命名された。
レッドベジーモンは、5匹がかりでスターモンやテントモン達へ襲いかかった。

スターモンは、テントモン達を抱えると、空を飛んで一目散に逃走した。

レッドベジーモンは、スターモンの後を追うが…
空を飛ぶスターモンのスピードには追いつけなかった。

多数のテントモンを抱えながら、これほどのスピードで飛行できるのは、驚異的と言わざるを得ない。


それまで戦闘では無敵の実力を誇っていたスターモンであったが…
この時、スターモンは初めて逃走を選んだ。

このレッドベジーモンの群れは、それだけ強大な戦闘能力を有しているということであろうか…?

67: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/14(火) 11:21:42.36 ID:Uki0mIelO
巣に戻ったスターモンは、彼が以前産んだデジタマから産まれ育ったゴツモン達に、戦闘のトレーニングを施した。

テントモンを連れて森の中を歩き回り、ウッドモンやベジーモンが襲ってきたら、それと集団で戦う…という、過酷な鍛錬であった。

ウッドモンやベジーモンは成熟期である。
成長期のテントモンやゴツモンよりも強い。

レッドベジーモンとの戦闘中、スターモンの子であるゴツモンの一匹がレッドベジーモンに飲み込まれた。

親であるスターモンは、手を貸さずゴツモン達に自力での解決をさせるつもりのようだ。

だが、レッドベジーモンは強い。
ゴツモン達がどれだけ体当たりをしても、まるで応えていない。

もはや、胃袋の中のゴツモンは消化され始めてしまう…
その寸前で、とうとうスターモンは、ゴツモンへ力を貸した。
なんと上空から隕石を降らせ、それをレッドベジーモンへ直撃させたのである。

隕石を腹部にくらったレッドベジーモンは、腹の内容物を全て吐き出した。
飲み込まれていたゴツモンは救出された。

苦しむレッドベジーモンを、ゴツモン達は集団で叩き…ついにこれを打倒した。

68: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/14(火) 11:32:26.58 ID:Uki0mIelO
やがて厳しい戦闘訓練を積んだこれらのゴツモン達は、親同様にテントモンの警護をしながら、蜜を貰うという共生関係を築くようになった。

興味深いことに、鍛錬を積んだゴツモン達は、並の成長期よりもはるかに戦闘能力が増していた。
なんと成長期でありながら、ベジーモン程度の成熟期なら一人で打ち倒せるほどにまで至っていたのである。

デジモンの個体の強さは、トレーニングによって大きく伸びるようだ。

だが、このゴツモン達は、ベジーモンやウッドモンには対処できても…
肉食昆虫型デジモンのスナイモンには、あっという間にバラバラに切り刻まれてしまった。
no title


スナイモンは、成熟期の中でもスターモンに並ぶ実力を持った強豪である。
いくらゴツモンが過酷なトレーニングを積んでも、スナイモンとの実力差を埋めるには至らなかった。

72: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/14(火) 11:42:16.55 ID:Uki0mIelO
スナイモンは、ゴツモンを優先的に探して捕食するようになった。

我が子をこれ以上好きなように貪らせるわけにはいかない…そう考えたであろうスターモンは、スナイモンの討伐に挑んだ。

スターモンとスナイモンの死闘は、熾烈を極めた。
互いに拮抗した実力の持ち主。
守護者と捕食者、ふたつの頂点が、激しい戦いを繰り広げた。

スターモンは格闘中に、ひそかに上空から隕石を降らせていた。
隕石の直撃をくらったスナイモンは、地面に倒れ伏した。

スターモンが、とどめの一撃を繰り出そうとした時…
スナイモンの体は光に包まれた。

光が消えた時…そこには、新たな姿へと進化したスナイモンの姿があった。

no title


サソリのような形態のデジモン…スコピオモン。
この土壇場でスナイモンはついに、未踏の領域であるレベル5へ到達したのである。

74: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/14(火) 11:57:54.17 ID:Uki0mIelO
スターモンは、ダメージを負った肉体でありつつも、今更引き下がれないとばかりにスコピオモンへ立ち向かった。

だが、スコピオモンの戦闘能力は、成熟期のスナイモンとは比較にならないほど向上していた。

スコピオモンはスターモンの目へ毒霧を噴射した。
視界を封じられたスターモンは、もはや勝機がないと察したのか、空中へ飛び去ろうとした。

だが、スターモンが離陸するよりも先に、スコピオモンの尻尾の針がスターモンの装甲を突き破った。

76: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/14(火) 12:17:34.95 ID:Uki0mIelO
スターモンは、それでも飛行体制に入っていたおかげで、突き刺された尻尾を引っこ抜いて飛び立つことができた。

スコピオモンは、高い戦闘能力と引き換えに飛行能力を失っていたため、スターモンを追いかけることはできなかった。

だが、巣を目指して飛行中のスターモンは、次第にふらふらと動きがぶれていき…

どんどん高度が下がっていき…

やがて、森の中へ墜落した。


しばらく経つと、ここを通りかかったテントモン達が、木の枝に引っかかったスターモンを発見した。

テントモン達は、スターモンを担ぎ上げると、自らの巣へと運搬した。

79: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/14(火) 12:32:40.01 ID:Uki0mIelO
テントモンの巣へ運ばれたスターモンは、弱々しく呼吸をするものの、立ち上がることができず、どんどん弱っていった。

どうやら、一瞬毒針を突き刺された際に、スコピオモンの尻尾から神経毒を少量注入されたようだ。

テントモン達は、スターモンの口元へと蜜を運ぶ。

だが毒で身体が麻痺しているスターモンは、それを飲み込むことさえできなかった。



昆虫成長期デジモンの守護者であるスターモンが倒れた今、森はどうなったであろうか。

スターモンが育てたゴツモン軍団が、彼の代わりに昆虫成長期デジモンのボディーガードを引き受け、食虫植物デジモンと戦っていた…?


…否、そんな生易しい状況ではなかった。
テントモン達も、ゴツモン達も、食虫植物デジモン達でさえも。
次々とスコピオモンの餌食となっていったのである。

スコピオモンの闘争欲求は異常なほど強かった。
腹が減っていないときでさえも、動くデジモンを見つけ次第襲いかかり、麻痺毒を注入。
そして巣へと運び、貯蔵したのである。

スコピオモンの巣には、明らかに食べ切れずに持て余している、大量の獲物が転がっていた。

ゴツモン、テントモン、ワームモン、ベジーモン…。
麻痺させられ保存食と化したそれらのデジモン達を、スコピオモンは時折まるで自慢のコレクションかのように眺めていた。

82: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/14(火) 12:42:54.85 ID:Uki0mIelO
スコピオモンはやがて、巣で産卵した。
麻痺している保存食デジモンの腹部へ毒針を突き刺し、それを産卵管として使い、体内へデジタマを産み付けたのである。

やがて、デジタマは保存食デジモンの体内で孵化した。
そして生命維持に必要最低限の心肺機能などの器官を後回しにし、消化器官、筋肉、骨などを体内で貪り食っていく。

やがて、体内で成長期まで育ってから…腹を食い破り、スコピオモンの子供は顔を出した。
no title


これは…ワームモンによく似ているが、顔や体つきが微妙に異なる。
私はポイズンワームモンという名称を提案したが、女性研究員が提案したドクネモンという名称がカワイイとチーム内で評判になり、そのまま採用された。
…何が悪かったのであろうか。


しかし、盲点であった。
捕食されやすい幼年期を、どのように生き延びるかは、デジモン達の最大の課題ともいえる問題だったが…
スコピオモンは、寄生バチのように他デジモンの体内で幼年期を成長させるという生存戦略をとったのである。

これは危険だ。
成長期まで育ってしまえば、デジモンはかなり活動能力が増す。
スコピオモンの子供達は、きっとスコピオモンのコレクションを食べて成長し、外敵に襲われることなく成熟期まで育つのであろう。

…スコピオモンの巣へ侵入し、ドクネモンを狙う度胸のある捕食者などいるであろうか。

並大抵のデジモンであれば、自分と同じ姿のデジモンが食い散らかされた残骸の転がる巣を見た時点で、戦意を喪失することであろう。

84: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/14(火) 12:50:01.52 ID:Uki0mIelO
だが…。

無謀にも、スコピオモンの巣へと侵入し、ドクネモンを捕食する命知らずのデジモンがいた。

no title


ご存知、ウッドモンである。

ウッドモンは、枯れ木に完璧に擬態してしまうため、スコピオモンをやり過ごすことができた。

そしてあろうことか、枯れ木に擬態したまま、少しずつスコピオモンが留守中の巣へと近寄り…
ドクネモン達にすら枯れ木だと勘違いされたまま…
ドクネモン達に根を伸ばし、体液を吸ってのけたのである。

コレクションを持ち帰ったスコピオモンは仰天した。
自分の子供達が、巣で干からびているのだから。

スコピオモンは、子供達の仇を探したが、視界内にあるのは地面に転がった枯れ木のみ。

怒り狂ったスコピオモンは、コレクションの山をハサミでズタズタに引き裂き、それらを生き残った数匹のドクネモンと共にヤケ食いした。


ウッドモンという、己の弱さと強さの両方を知る捕食者だからこそ可能な荒業である。

86: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/14(火) 13:00:48.12 ID:Uki0mIelO
スコピオモンは、枯れ木にも八つ当たりのハサミ攻撃を放った。

すると、枯れ木はその苦痛で苦しんだ。

スコピオモンは驚いた。
完全に枯れ木だと思っていた物体が、生きたデジモンだったのだから。

身を起こすウッドモンの姿を見たドクネモン達は、怯えてスコピオモンの後ろに隠れた。

我が子の怯えようを見て、スコピオモンは確信した。
このウッドモンこそが、我が子達をミイラにした張本人なのだと。

スコピオモンは、ウッドモン目掛けて怒りの突進をした。

そして、毒針による一撃をウッドモンへ放った。

だがウッドモンは、根を伸ばしてスコピオモンの尾へ絡みつかせ、この一撃を回避した。

ウッドモンはスコピオモンの尾へ根を食い込ませ、体液を吸い始める。

予想外の反撃を受けたスコピオモンは、ウッドモンの根をハサミで切断しようとした。

87: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/14(火) 13:03:13.24 ID:Uki0mIelO
ウッドモンの根を断ち切ろうとしたハサミに…

…空から飛来した隕石が直撃し、ヒビが入った。

88: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/14(火) 13:08:20.71 ID:Uki0mIelO
スコピオモンは周囲を見回した。
この厭らしく強力な攻撃を仕掛けてくるヤツの姿を探した。

…宿敵スターモンが、ふらふらとよろめきながら、巣に乗り込んできたのである。

どうやら注入された毒が少量だったため、テントモン達の看病により息を吹き返したようである。

私には、スコピオモンが笑ったように見えた。
スコピオモンの最大のライバルが、今再び姿を現したのだから。

スコピオモンの巣には、一箇所不自然に土が盛り上がった台座のような部分があった。

これまでは、あの台座が何なのか分からなかったが…
今ならば分かる。あの台座は、スターモンをコレクションとして飾るために作った特別席なのだと。

90: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/14(火) 13:14:04.11 ID:Uki0mIelO
さて、スターモンはどうする気なのであろうか?

スコピオモンの手が届かない空中を飛行しながら、隕石を降らせ続ける作戦であろうか?

否、それは不可能だろう。
スターモンは長い間飛び続けていることはできないし、隕石も連発はできない。
弱ったスターモンでは、やがてスタミナが尽きて墜落し、今度こそ神経毒を回復不可能なほど多量に注入されてしまうことだろう。

研究員としての私見を述べるなら…スターモン取るべき最善の選択肢は、飛行能力を活かして逃げることだ。

スターモンはズルモンから進化したため、毒に対する耐性がある。(今考えれば、そのおかげでスコピオモンの毒を解毒できたのかもしれない)

だから、ゴツモン達もテントモン達も忘れて、以前見かけた活火山の周辺に逃げ延びればよい。

そうすれば、スコピオモンは追ってくることができない。

仮に活火山周辺まで追いかけて来ようものなら、スコピオモンが食えるものが殆ど無い環境であるため、スコピオモンは飢えて弱ってしまうことであろう。

森を離れ、逃げ去ることが、スターモンが取るべき最善の生存戦略といえる。

92: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/14(火) 13:19:02.51 ID:Uki0mIelO
だが、スターモンは逃げなかった。

あろうことか、ウッドモンと取っ組み合っているスコピオモン目掛けて突進し、スコピオモンの顔面へパンチを放ったのである。

スコピオモンは一瞬よろめき、即座に尻尾の毒針での反撃を試みた。

だが、ウッドモンはさらに深くスコピオモンの尾へ根を食い込ませ、体液を吸いながら毒針攻撃を封じる。

スコピオモンが根を切断しようとウッドモンへハサミを振りかざすと、スターモンはすかさずそのハサミの付け根を殴りつけた。

かつて宿敵同士として争った、スターモンとウッドモンの、奇妙な連携攻撃が、意外にもスコピオモンに効果を発揮していた。

だが、スコピオモンは成熟期を超えたレベル5の存在。
スターモンに対して、ハサミによるパンチ攻撃を繰り出した。

スターモンの硬い外殻にヒビが入る。
負けじとスターモンもパンチを繰り出し、スコピオモンのハサミの付け根を殴りつける。

95: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/14(火) 13:27:41.23 ID:Uki0mIelO
激しく殴り合う、スコピオモンとスターモン。
そのダメージは、やはり成熟期であるスターモンの方が大きく、スターモンの外殻はどんどん砕けていく。

だが、スコピオモンはだんだんバテて来ているように見える。
ウッドモンにどんどん体液を吸われ、ブドウ糖や酸素が足りなくなってきているのだ。

スコピオモンは、再度ウッドモンの根を切断しようとハサミを繰り出すが…
「それだけはさせない」と言わんばかりに、ボロボロのスターモンがハサミを払いのける。

このまま戦えば、スターモンはもたないかもしれないが…
ウッドモンが、スコピオモンを仕留めるかもしれない。

レベル4の2体のデジモンが、下剋上を成し遂げ、レベル5のスコピオモンを仕留めるかもしれない。

そう思った矢先…突如、ウッドモンが吐血した。
そして、よろよろと体をふらつかせた。


…ウッドモンの足元に、大量のドクネモンが群がり、親譲りの毒針を突き刺していたのである。

兄弟を殺された怒りのこもった毒針は、ウッドモンへ麻痺毒を注入し、体を痺れさせた。

先に下剋上を成し遂げたのは、ドクネモン達だったのである。

96: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/14(火) 13:33:53.33 ID:Uki0mIelO
ウッドモンが弱ったのを察したスコピオモンは、体液を大量に吸われて痩せこけた尾に力を込めて、ウッドモンを持ち上げ、それをスターモンへハンマーのように叩き付けた。

その衝撃で、ウッドモンの根は外れた。


怒ったスコピオモンは、麻痺したウッドモンをハサミでズタズタに切り裂いた。

トドメの毒針攻撃で、ウッドモンを仕留めようとしたとき…

スコピオモンの毒針に、スターモンの繰り出した隕石攻撃が直撃した。

体液をさんざん吸われた尾は、先端が脆くなっていたらしく、毒針がばきりと折れた。

苦痛と怒りで、恐ろしい咆哮を上げるスコピオモン。

97: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/14(火) 13:41:20.05 ID:Uki0mIelO
だが、スコピオモンは毒針攻撃がなくても、純粋な格闘能力だけでも強い。

スターモンを滅多打ちにするスコピオモン。
ついにスターモンの外殻は完全に砕け散った。

柔らかい軟組織がむき出しになったスターモンの腹部へ、スコピオモンのハサミのパンチが突き刺さった。

スターモンは大量に出血しながら吹き飛び、ズタズタになったウッドモンの上に打ち付けられた。

うつ伏せのスターモンは、かすれた目で下を向いた。

ウッドモンの下には大量の保存食デジモンの山が積み重なっていた。

その中には、かつてスターモンが鍛錬した彼の子供達…ゴツモン達の姿があった。

それを見た瀕死のスターモンは察した。
彼の子供達…ゴツモン達は、テントモンを護り共生するという己の生き方に殉じて、スコピオモンに挑み、仕留められたのだと。

スターモンは涙を流していた。


研究員である私にはとしては、何ともコメントし難い。
生物の強さとは、環境への適応能力である。

時には己の生き方という固定観念から脱することも、生存戦略としては重要なはずである。

私には…ゴツモン達の生き方が、スターモンがここへ来てスコピオモンへ挑んだ理由が…分からない。

98: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/14(火) 13:48:31.26 ID:Uki0mIelO
スコピオモンは、ドクネモン達を連れて、瀕死のスターモンの方へとにじり寄ってきた。

スコピオモン本体の毒針が折れた今、ドクネモン達の神経毒を使ってスターモンを麻痺させるつもりのようだ。

スターモンは、スコピオモンを一瞥した後、彼の下敷きになっているウッドモンを見た。

すると、スターモンは、腹部から流れる血液を、ウッドモンの口内へ流し込んだ。

これは、何をしているのであろうか…?

スターモンは、かつて硫化水素で満ちた猛毒の環境で産まれ育ったズルモンであった。

その頃に獲得した、毒耐性のある血液をウッドモンへ与え、解毒でもしようというのであろうか…。

やがて、麻痺していたはずのウッドモンは、己の根を伸ばし…
樹液をスターモンの口元へと垂らした。

ウッドモンはウッドモンで、スターモンを治癒しようとしているのだろうか…。

互いが互いを必要としている。

戦うための力として、互いの存在を、己の身を削ってでも生かそうとしている。

互いが、己の肉体を分け合って、力を与え合おうとしている…。

100: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/14(火) 13:54:46.53 ID:Uki0mIelO
その時、奇妙な現象が起こった。

ウッドモンの肉体が、細かい根へと分解されていく。

スターモンの肉体が、硬質の岩石と強靭な肉体へと分解されていく。

それらは互いに絡まり合った。

そして、保存食として積み上げられているスターモンの子供達…ゴツモン達の瀕死の肉体もまた、小さな石片へと分解されていく。

一度分解されたそれらは複雑に、絡み合い、まとまり合い…
やがて、一つの存在となった。

no title


スターモン譲りの筋肉と、ゴツモン譲りの硬い外殻。
それを支える、ウッドモン譲りの植物の肉体。

両方を兼ね備える、ひとつのデジモンへと融合したのである。

103: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/14(火) 14:00:59.54 ID:Uki0mIelO
融合デジモンは、スコピオモンを威嚇するように吠えた。

スコピオモンは、融合デジモンへ突進し、ハサミによるパンチを繰り出した。

すると融合デジモンは、外殻である石のひとつを隕石のような勢いでスコピオモンのハサミへ飛ばした。

ハサミは砕け、筋繊維が露出した。

そこへ、外殻の隙間から伸びた根が絡みつき、露出した筋繊維へ食い込んだ。

スコピオモンは、もう片方のハサミでパンチを繰り出す。

融合デジモンも前足でパンチを繰り出し、スコピオモンのハサミと激突した。

ばきりと音が鳴り、スコピオモンのハサミが千切れ飛んだ。

スターモンが執拗に放った、スコピオモンのハサミの付け根へのパンチは、確実にダメージを蓄積させていたのである。
その傷が、ここにきて一気に響いたのであった。

スコピオモンは、尾とハサミを失った。

104: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/14(火) 14:05:51.90 ID:Uki0mIelO
スコピオモンは、それでも逃げない。
否、逃げられない。
片方のハサミに、深々と根が突き刺さっているからである。

スコピオモンに残された最後の武器…それは、強靭な顎であった。

スコピオモンは、融合デジモンの顎の下を狙って、噛みつきを繰り出す…!


融合デジモンは、勢いよく頭突きを放ち、スコピオモンの顔面へ、額の硬い角を打ち込んだ。

スコピオモンの顔面の甲殻にヒビが入る。


融合デジモンは、何度も何度も、角をスコピオモンの顔面へ打ち付けた。

顔面のヒビはどんどん広がり…ついに砕けた。

そして、最後の頭突き攻撃によって、スコピオモンの頭部は破裂した。

頭部を失ったスコピオモンは、地面に仰向けに転がり、しばらく手足をばたつかせていたが…
やがて動きを止めた。

105: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/14(火) 14:09:12.16 ID:Uki0mIelO
ドクネモン達は、スコピオモンの死を目の当たりにして、一目散に逃げ出した。

融合デジモンは、それらを追いかけることはなく…

森へと帰っていった。

我々研究チームは、言葉を失った。
デジモン同士が融合して、ひとつのデジモンになる…
こんな現象は、全くの想定外だったからだ。

この融合デジモンのレベルはいくらなのであろうか。
スコピオモンと同じレベル5なのか?あるいはそれより上なのか…?

議論は一晩中交わし続けられた。

107: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/14(火) 14:13:19.39 ID:Uki0mIelO
ちなみに、この融合デジモンの名称だが。
岩と植物の融合体であることから、私はボンサイモンという名前を提案した。

ドクネモンだのベジーモンだの、よくわからないネーミングを好む我々のチームだ。こういう名なら採用されるだろうか。

…だが、ボンサイモンという案はすこぶる不評であった。
結局、女性研究員が提案したジャガモンという名称が、可愛くていいと評判になり、そのまま名称として採用された。


なぜだ!?なぜジャガモンなのだ!?
ジャガイモ!?いやあの姿に芋の要素はないだろう!
それにジャガモンという名称にしたら、植物側の性質だけを指し、鉱物側の性質が名前に残らないのではないか?
納得がいかない。
絶対にボンサイモンのほうがいい。
だが、正式にジャガモンが採用されてから尚ゴネるほど私も子供ではない。
ここは…納得いかないが、チームの採決を受け入れるとしよう。

108: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/14(火) 14:19:47.99 ID:Uki0mIelO


森に戻った後、ジャガモンは広い草原で寝そべり…そこで光合成をし始めた。

スターモンの頃のように小型昆虫デジモンを護るわけでもなく、ウッドモンの頃のように小型昆虫デジモンを狩るわけでもなく…
ただひたすら、それを見守りながら、じっと動かずに光合成をし続けた。

目の前で、ゴツモンがウッドモンに捕食されようとも…
ウッドモンが、二代目のスターモンに打倒されようとも…
何ら干渉せず、それを見守った。

おそらく、ジャガモンは分かっているのだ。
レベル5(推定)の肉体は、著しく高いカロリー消費量となるため、動き回っていたら今度は自らが第2のスコピオモンになるということを。

だから、基礎代謝量を落として、ひたすら眠り続けるのである…。

彼が次に目覚めるのはいつになるかは分からない。
だが、もしもその時が来るならば…
それは、本当に第2のスコピオモンが生まれたときになるだろう。

110: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/14(火) 14:21:16.22 ID:Uki0mIelO
さて、このままジャガモンを観察し続け、森のデジモン達の関係がどう移り変わっていくのかを見守るのもいいが…

我々は研究員である。
デジモンについて、より多くの情報を得なければならない。

故に、いったん観察対象を別のデジモンへ移すことにしよう。

114: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/14(火) 15:41:53.81 ID:Uki0mIelO


我々は、観察対象を再び海中に移した。

かつての海中では、スイムモン、ガニモン、シャコモン等の成長期が生態系の頂点になっていた。

だが、それも昔の話。
現在は、それらの進化系である成熟期デジモン達が、海中で猛威を振るっていた。

シャコモンが進化した姿…ゲソモン。
no title


ゲソモンはイカの姿をしたデジモンである。
軟体動物…貝であるシャコモンが、殻を脱ぎ捨て、頭足類に似た進化を遂げた。
これにより、素早い遊泳能力を身に着け、スイムモンを捕食するようになった。


これに負けじと、ガニモンも進化した。
エビの姿をしたエビドラモンである。
no title


エビドラモンもまた高い遊泳能力と、強靭なハサミで獲物を仕留める力を持つ。

さて、これら2つの系列は、既に陸上へ進出済みである。

シャコモン系列は、陸上へ進出してヌメモンとなった。

ガニモン系列は、陸上へ進出して昆虫型デジモンへと進化した。

だが、スイムモン系列は、未だに陸上への進出はしていなかった。

だが…ある日、スイムモン系列から成熟期デジモンが誕生した。
no title


…シーラカンスの姿をしたデジモン。シーラモンである。

116: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/14(火) 15:56:35.62 ID:Uki0mIelO
シーラカンス。

かつて絶滅したと考えられていたそれが、アフリカで発見されたとき、世間では大きな騒ぎとなった。

たかが古い魚が見つかっただけで、なぜ大きな騒ぎとなったのか?

それは、シーラカンスという種が、人類の祖先であると考えられていたためである。

この説は、遠からずも近からず、といったところである。
魚類は大きく3つのグループに分けられる。
サメ等が属する軟骨魚類。
シーラカンスや肺魚が属する肉鰭魚類。
そして、それ以外の一般的な魚が属する条鰭魚類。

我々人類の祖先…両生類は、このうち肉鰭魚類から進化したものと考えられている。

つまり、シーラカンスが属するグループは、両生類の祖先である肺魚と非常に近縁なのである。


シーラカンスの発見は、旧約聖書に例えるならば、エデンの園のアダムとイヴが見つかったのと同レベルといえる衝撃なのである。

117: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/14(火) 17:26:05.75 ID:Uki0mIelO
さて。
シーラモンは、河口を目指して泳いだ。

そしてシーラモンは、鰓だけでなく肺による呼吸も可能であった。

川へ到達したシーラモンは、時折川辺へ身を乗り出し、幼年期デジモンなどを捕食した。

やがてシーラモンは、川でデジタマを5個ほど産んだ。

デジタマが孵化すると、やがて一本のトサカが生えた幼年期デジモンが産まれた。
no title


それらが進化すると、メキシコサラマンダーとかウーパールーパーとかアホロートルとか呼ばれる両生類によく似た鰓を持つ幼年期デジモンに進化した。
no title


素晴らしい。
シーラカンスに似たデジモンから、両生類に似たデジモンが産まれた…。

やはり、進化というのはデジタマの中で既に起こっているのだ。

デジタマの中の卵細胞そのものがレベル0のデジモンであり、それが胚となり幼年期の肉体を形成する過程で、一度進化が行われているという予測は正しいものとみて間違いない。

118: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/14(火) 17:36:47.10 ID:Uki0mIelO
これら5匹のウパモンは、そのうち2匹はオタマジャクシのような姿…オタマモンへ進化した。

no title


残りの5匹は…なんとも形状しがたい姿へと進化した。

no title


ピョンピョン跳ねて移動する姿から、これはカエル型のデジモンではないかという意見が多かった。

だが、カエルと決めつけるのは早計である。
このデジモンの背中には、大きなヒレがついている。
これは肉食単弓類であるディメトロドン…爬虫類の動物がもつ特徴である。

単弓類は、単なる爬虫類ではない。我々哺乳類の祖先である。


つまり、このデジモンは、両生類の形質を持ちながら、爬虫類にも哺乳類にもなり得る、それらの中間ともいえる身体的特徴を備えているのである。

我々の研究チームは、この様々な進化の分岐点に成り得るデジモンを、なんと名付けるか議論した。

フロッグモンやディメトロモン等の案が挙がったが、最終的には女性研究員が提案したベタモンという名前に決定した。

今回ばかりは彼女のネーミングに賛同する。
無理に実在する動物になぞらえて名付けても、進化の可能性を狭めるだけになるだろうから。

120: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/14(火) 17:44:18.56 ID:Uki0mIelO
さて、成長期となった3匹のベタモンは、川から少しずつ離れて暮らすことに決めたようだ。

3匹のベタモンは、どこへ向かったか…?↓1~3
①森林
②サバンナ
③山岳地帯

122: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/14(火) 17:51:02.70 ID:8N+LMzb/o
2

124: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/14(火) 18:01:39.72 ID:Uki0mIelO
ベタモン達は、二匹がサバンナへ、もう一匹が森林へと移動を開始した。

二匹のオタマモン達は、ヌメモンやヤンマモンがいる沼へと移動した。

親であるシーラモンは、移動していく5匹の子供達を見送った。


きっとシーラモンは、自分自身というよりは、自分の子供達を上陸させるために、はるばる海の底から大移動をしてきたのであろう。

このシーラモンは、肺呼吸も一応できるが、水棲に適した肉体である。
故に、このままの肉体では陸上生活には適応できない。

レベル5へ進化すれば、陸に上がることができるかもしれないが…。

131: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/15(水) 20:18:49.95 ID:hqkqDBd6O
3体のベタモンをA、B、Cと呼ぼう。

サバンナへ向かったAとB。

ベタモンの肉体は、シーラモンやオタマモンに比べれば強くはあるが、それでもあまり乾燥に強くはないようだ。

普段は川や湿地帯に住み着いてキノコや果実を食べ、雨が降ったら活動する…というサイクルで生活をしていた。

現在のサバンナにいるデジモンはどんなものがいるか、調査を行った。

川や沼など、水辺に大量に住んでいる…
微生物型の幼年期デジモン、ピチモン。
no title


これらは数がとにかく多い。
おそらく、ヌメモンのように繁殖力が強く、代謝量の少ない、非戦闘向きの成熟期デジモンがあちこちで産卵していると考えられる。

木や草にぶらさがっているのが、昆虫型の幼年期デジモン、ミノモン。
no title


幼年期デジモンは、常に厳しい淘汰圧が加わるが…
ミノモンはミノに隠れて外敵をやりすごすという生存戦略をとったらしい。

そして、幼虫型デジモン…クネモン。
no title


これはスコピオモンの子供達であるドクネモンに酷似した姿をしている。
草食性であり、外敵が来たら糸を吐いて攻撃するようだ。

132: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/15(水) 20:30:19.15 ID:hqkqDBd6O
サバンナを高速で這い回る、黒光りする昆虫型デジモン…ゴキモンも発見された。
no title


ゴキモンは、デジモンの死骸や、朽ち木などを漁って食べている。
デジモンスカベンジャーとでも呼ぶべきだろうか。
夜行性であり、日中は木陰や地面の穴に隠れて眠っていることが多い。

そしてゴキモンは、様々な場所で産卵する。
川や沼、木陰など…。
ピチモンもミノモンも、このゴキモンが産んだデジタマから産まれたのだろうか。


他にいたのは、蝶(蛾かもしれないが…)の姿をしたデジモン…モルフォモン。
no title


モルフォモンは花の蜜を吸いながら暮らしているようだ。
しかし、花が蜜を出すということは、その花は受精をデジモンに手伝ってもらう必要があるということ…
つまり単為生殖をするデジモン達と違って、有性生殖をするということである。

デジタルワールドの、デジモン以外の生物の進化もまた、興味深いところがある。

そして、そのモルフォモンが進化したと思われる、蜜蜂の姿をしたデジモン…ハニービーモン。
no title


蜜蜂というからには、どこかに巣を作っているかもしれないが…
今の所、巣は見つかっていない。


昆虫以外では…ヌメモンの亜種とみられる、カラツキヌメモンが見つかった。
no title


ヌメモンがサバンナの乾期に耐えられるように、殻を獲得した種のようだ。
カラツキヌメモンもまた、ヌメモン同様に、他のデジモンの排泄物を食べたり、苔や草を食べている。
デジモンスカベンジャー02といったところか。

133: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/15(水) 20:38:31.39 ID:hqkqDBd6O
今見てもらった通り、このサバンナには、まだ草食性デジモンやスカベンジャーしかいない。

肉食に進化したデジモンが、まだいないのである。

その割に繁殖力が高いデジモンが多く見受けられるため、デジモンの個体数はどんどん増加していくものとみられる。

やがて草食デジモン同士で、餌の奪い合いが始まるかもしれない…。

さて、そんな環境に来たベタモンAとB。

ここへ適応するために、どうするか…?↓1~2
①陸上の獲物の捕食を試みる
②樹上の果実を食べれるようになる
③水陸両用となる
④その他、無理のない範囲で自由記述

134: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/15(水) 20:44:02.13 ID:qbASgPuG0
2

136: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/15(水) 21:00:23.20 ID:hqkqDBd6O
ベタモンAは、樹上の果実を餌にすることにしたようだ。

樹上といっても、サバンナに生えている木は低木が多い。
森と違って植物がそれほど密集していないため、縦に高く伸びる必要がなく、横に広がっていくようになる。

ベタモンは木登りが得意とはいえず、最初は草の実や、熟して落ちた木の実を食べていた。

だが、やがて木の枝に実っている果実を食べれるように…
背が高くなった。

no title

その見た目は、パラサウロロフス…恐竜によく似ていた。
我々はこれをパラサウモンと名付けた。

137: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/15(水) 21:11:12.97 ID:hqkqDBd6O
一方のベタモンBは、水辺で遊びながら暮らしていた。

ある日、ベタモンBは、遊びで毎日同じ草に水を吹きかけてみたところ…
その草は、まわりの草よりも大きく成長することを発見した。

またある日は、遊びで毎日同じ草の根本で排泄をしてみたところ…
同様に、周りの草よりも大きく成長することを発見した。

ベタモンBは、これを面白いと感じたのか、野イチゴらしき草の種を集め、地面にそれらを埋め、川の水や排泄物、枯れ葉などを草に与えた。

草はどんどん育ち、たくさんのイチゴを実らせた。
ベタモンBは、植物の栽培を楽しむようになった。
驚くべきことに、両生類の身でありながら、人間のような農耕を覚えたのである。

これは、知能の高さというよりは…遊び心による発見と考えられる。


しかし…草食性デジモンが多く暮らす環境で農耕をするなど、彼らに餌付けするも同然の行為であった。

138: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/15(水) 21:15:41.05 ID:hqkqDBd6O
ベタモンBが育てた植物は、カラツキヌメモンやクネモン、パラサウモンに横取りされてしまうことが多くなった。

ベタモンBは怒った。
そして、自ら育てた作物を横取りされないように…
より効率的に農耕ができるように…

農耕と戦闘向きの進化をした。

no title


爬虫類的でありながら、人間のような二足歩行を行い、発達した器用な量腕を持つデジモン。

硬質化した自身のヒレを取り外し、農具兼武器として振り回す…

我々は彼を、ディノヒューモンと名付けた。

139: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/15(水) 21:21:29.01 ID:hqkqDBd6O
ディノヒューモンは強かった。

その大きな農具で、土地を耕し、種子を収集し、外敵を打ち払って、作物を育む。

ベタモンの頃よりも、遥かに農耕の能率は上がっていた。

ディノヒューモンの面白い点は、彼にとって農耕は作物を得るための「手段」ではなく、それ自体が「目的」なのである。

つまりディノヒューモンは、園芸を楽しむついでに、食えそうな部分があったらそれを食っているだけである。

故にディノヒューモンの農園には、大して可食部位のない植物もたくさん生えていた。

だが、ディノヒューモンはそれを見て落胆したりはしない。

それが成長するのをただ楽しんでいた。

…やがて、ディノヒューモン農園は、どんどん面積を増加していった。

140: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/15(水) 21:26:42.99 ID:hqkqDBd6O
やがてディノヒューモンは、農園の中で産卵をした。

ディノヒューモンのデジタマから産まれた幼年期達は、主に2種類に分かれた。

川から汲んだ水や、あちこちから集めた肥料を運搬するのが得意な、亀型デジモンであるカメモン。
no title


そして、外敵を追い払ったり、細かい作業をするのが得意な、手先が器用なブイモン。
no title


ディノヒューモン農園は、原始的な文明ともいえる発展をし始めたのである。

142: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/15(水) 21:36:13.82 ID:hqkqDBd6O
…さて。
サバンナへ到達した2匹のベタモンは、どちらも成熟期へ進化した。

特にディノヒューモンは、個体の進化というだけでなく…
農耕という技術を進化させた。

驚くべき発展である。

やがてこのサバンナには、彼らの兄弟である2匹のオタマモンも、進化した姿でやってきた。


no title

体を炎で包むことで外敵を払うことができるようになった、両生類型のサラマンダモン。

no title

そして、オタマモンが真っ当に成長したのだな…ということがうかがえる、カエル型のフロッグモンである。


サラマンダモンは、火力の調節が得意なデジモンであった。
イモ翌類の植物を、火で炙ってから食べることで、効率よくデンプン質を消化する術を身に着けていた。
少ない餌で、多くの栄養を得られるように進化した…ということであろう。


そしてフロッグモンは、舌を伸ばして昆虫デジモンを捕食する、肉食のデジモンであった。

フロッグモンは、このサバンナに出現した初めての肉食デジモンということになる。

143: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/15(水) 21:42:14.89 ID:hqkqDBd6O
ディノヒューモンは、フロッグモンを自身の農園に招き入れた。

もしかしたら、かつての兄弟であることが分かっているのかもしれない。

ディノヒューモンとフロッグモンは、共生関係を築いた。
ディノヒューモンの農園にやってくる昆虫デジモンを、フロッグモンが食べる。
これによって、互いにwin-winの関係となった…

…かに思えたが。

ハニービーモンやモルフォモン達までフロッグモンに食わせたところ、なんと作物が実を結ばなくなってしまった。

我々の視点から見れば当然である。
受粉の担い手を農園から排除したら、実が実らなくなる。…至極当然といえるだろう。

144: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/15(水) 21:50:19.01 ID:hqkqDBd6O
そんなある日、農園に新たなデジモンが訪れた。

no title


蛾の姿をした、モスモンである。

モスモンはなんと尾に機関銃を備え持っており、フロッグモンへ機銃掃射を行った。

弾丸をしこたま撃ち込まれたフロッグモンは、たまらず物陰に隠れた。

普段はフロッグモンと一緒に外敵の排除をしていたブイモンも、これには敵わんとばかりに物陰に隠れた。

そしてモスモンは、農園の作物の葉っぱを食べたり、花から蜜を吸ったりした。

モスモンが去った後、悔しがったディノヒューモン達であったが…

不思議なことに、再び農園に実が実るようになったのである。

ディノヒューモン達は、この現象がどういうことなのか、随分頭を悩ませたようだ。

花が受粉によって有性生殖を行うことで実を実らせる…という法則に気づけるその日が来るのを、暖かく見守ろう。

145: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/15(水) 21:52:23.89 ID:hqkqDBd6O
さて…

ベタモンやオタマモンが来たことで、サバンナの勢力もかなり変動したようだ。

我々はこのまま、パラサウモンやディノヒューモンを観察対象としてもいいし…
森やサバンナに住む、もっと他のデジモンを観察してもいい。

どちらのエリアを観察するか?↓
①サバンナ
②森

146: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/15(水) 21:54:16.45 ID:SAJIa8wBo
2

147: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/15(水) 21:57:18.84 ID:hqkqDBd6O
サバンナは一旦置いておいて…

再び、森へ視点を移そう。

さて、前回スターモン達がいたのは、過ごしやすい気温の土地だった。

だが、このデジタルワールドはどうやらひとつの天体であるらしく、故に寒冷地と熱帯地が存在する。

ベタモンCが向かったのは、どの森か…?↓
①熱帯雨林
②前回と同じ森
③寒冷地

148: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/15(水) 21:58:13.24 ID:J2NolUllo
1

150: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/15(水) 22:05:55.94 ID:hqkqDBd6O
ベタモンCが向かったのは、熱帯雨林であった。

まさにジャングルと呼ぶに相応しい土地だ。

アマゾン川のように巨大な大河が流れており、背の高い木々が生い茂っている。

まさしく生命の溢れる大自然といっていいだろう。

…この大きな川には、スイムモン、ガニモン、シャコモン達の姿も見える。

ベタモンCは、川で泳いでいると、懐かしい者と再開した。

彼の親である、シーラモンである。

どうやらシーラモンは、この熱帯雨林にて、さらにデジタマを産むつもりのようだ。

ベタモンCは、この熱帯雨林でどんな暮らしをするのであろうか…。

155: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/16(木) 23:29:19.21 ID:B643DMC6O
熱帯雨林には、至るところにたんぽぽの綿毛のようなデジモンが浮いていた。

no title


このユラモンは、植物型デジモンの幼年期のようだ。
おやつのように気軽に捕食されているが、たくさんいるので何匹かは生き残って成長するらしい。

さて、この熱帯雨林には、これまで森林やサバンナで目撃した昆虫デジモン、植物デジモン、軟体デジモンのほとんどが生息している。

成熟期デジモンの数も多い。
ここでベタモンは、どう適応するか…?↓
①植物型デジモンを食べる
②昆虫デジモンを、真正面から襲う
③昆虫デジモンを、隠れながら襲う
④川の中のデジモンを狙う
⑤その他無理のない範囲で自由記述


157: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/16(木) 23:39:43.36 ID:B643DMC6O
ベタモンは、木陰に隠れながら、昆虫デジモンを狙った。

ベタモンには電気ナマズのように電撃攻撃をする力があり、それを使って獲物を狩った。

だが、時折接近がバレれて逃げられてしまうこともあった…。



やがて、シーラモンが産んだと思われる、ベタモンが数匹上陸してきた。

ベタモンCは、これらの歳の離れた兄弟と共に狩りをすることもあった。

だが、ベタモン達は思い知らされた。
自分達が、狩る側だけでなく、狩られる側でもあるということを。

あるときベタモン達は、ミノモンが群生している木を発見した。

ミノモンを捕食しようと近づくと…
突然、弟ベタモンの足元に穴が空いた。

地下からデジモンが襲いかかってきたのである。

no title


蜘蛛型デジモン…ドクグモン。
ドクグモンは毒の牙で弟ベタモンのうち一匹を噛みつくと、物凄い勢いで地中に引きずり込んでいった。

…おそらく、このドクグモンはあのミノモンの親だ。
子供を守るついでに、やってくる捕食者を逆に狩ろうとしているのである。

ベタモン達は、たまらず逃走した。

159: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/16(木) 23:58:52.65 ID:B643DMC6O
昆虫デジモンだけではない…。
ウッドモン、レッドベジーモンといった植物型の肉食デジモンも脅威であった。

何よりも驚かされたのは…
陸上ではこれまで大して怖くないと考えられていた、軟体型成熟期デジモンの発達である。

大きな貝殻と、強靭な腕と強い顎を持つ…モリシェルモン。
no title


おそらく、カラツキヌメモンの系統とみられるこのデジモンは、歩くのは遅いが、高圧水流を使って弾丸のように小さな貝殻を飛ばして獲物を狙撃する力を持っていた。

弟ベタモンのうち数匹は、モリシェルモンの餌食となった。

…そう。
この熱帯雨林、成熟期デジモンがやたら多い。

これまで観察していた地域よりも肥沃な大地であるためか、サバンナに比べてデジモン達が大食いであり、そして強靭であった。

気がつけば、兄弟ベタモン達の生き残りはたった3匹となっていた。

ベタモン兄弟は、この厳しい環境へどう適応するか…!?↓1~3
①隠れながら舌を伸ばして獲物を捕らえる
②鋭利な刃物やトゲ、尻尾などで身を守り、草を食べる
③鋭い角を生やし、タックルで獲物を仕留める
④炎の体で身を守りながら敵を攻撃する
⑤川の中で暮らす
⑥その他、無理のない範囲で自由記述

161: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/17(金) 00:00:50.10 ID:D1Izzsad0
1

165: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/17(金) 00:08:06.24 ID:JCL/Kjv+O
弟の一匹は、なんと風景に溶け込んで隠れ、舌を伸ばして獲物を捕らえるという、攻防一体の力を身に着けた。

no title


その姿はカメレオンそのもの。カメレモンと命名された。

もう一匹の弟は、背中のヒレを鋭い刃にし、それを飛ばして攻撃できるようになった。

主食は草食性となった。
no title


その姿は、ステゴサウルスそのもの…。
ステゴモンと命名された。

167: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/17(金) 00:11:58.60 ID:JCL/Kjv+O
そして、ベタモンCは…
逃げ足がひたすら速くなった。

このあたりのデジモンは好戦的であり、より栄養価の高そうな獲物を狙う傾向があった。

その習性を利用し、ベタモンは敵に追われているとき、他のデジモンと鉢合わせさせるようにした。

そうした場合、敵がベタモンを狙って攻撃をすると、遭遇したデジモンに攻撃の隙を見せることになり、漁夫の利(?)を得られてしまう。

そのため、膠着状態に持ち込むことで、危機を脱することができたのである。

168: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/17(金) 00:18:27.67 ID:JCL/Kjv+O
そうしてベタモンCは、逃げ足がどんどん早くなった。

うまく逃げるために、その前足はいつしか翼に変化していた。

体は木々の隙間をすり抜けられるように、細長い形状となった。

no title


これは…蛇だろうか?
だが、翼を持つ蛇など、我々の知る生物の中にはいない。

議論の末に、神話のケツァルコアトルになぞらえて、クアトルモンと命名された。

クアトルモンは、逃げるだけではなく、時として獲物をその細長く強靭な肉体で締め上げて捕食することもあった。

成熟期の中では、格闘能力は低い方のようだ。

169: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/17(金) 00:23:16.92 ID:JCL/Kjv+O
こうしてシーラモンの子孫たちは、各々が独自の進化を遂げ、厳しい熱帯雨林へ上陸することに成功した。

成熟期まで育てば、めったに死ぬことはないだろう。

…シーラモンの子孫の中には、無理に上陸せず、水中生活の中で進化した個体もいたようだ。

亀の姿をしたアーケロモン。
no title


鮫の姿をしたティロモン等である。
no title


ゆくゆくは、これらのデジモンが上陸することもあるだろうか…?

171: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/17(金) 00:27:05.14 ID:JCL/Kjv+O
…さて。

我々は先日、新たなツールを開発した。

その名もデジモンキャプチャー。

デジモンを捕獲し、我々の所有するサーバー内に仮設したローカル空間内で飼育することのできる設備である。

我々のチームのうち数名は、デジタルワールドの観察ではなく、捕獲したデジモンの飼育を試みる…との話である。

現在のキャプチャーは出力が弱く、幼年期のデジモンしか捕獲できないが…。


尚、餌としては、データマイニングによって生成したキノコを与えるつもりらしい。

私はどうするか…
引き続き観察をするか、飼育を試みるか。

それは次回決めるとしよう。

179: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/17(金) 21:09:36.45 ID:GyZwpHVVO
先日、我々のグループは一般の方達を招き、研究成果を発表した。

デジタルワールドのこと。
そこで進化を遂げた

まるでSFのような事実に、聴衆は大いに沸いた。


そもそもデジタルワールドとは何か?
それは「コンピューターネットワーク上に存在する、もう一つの世界」である。

デジタルモンスターとは何か?
それは「コンピューターウィルスが進化し、生命を持った存在」である。

なんとなくフワっとしたイメージは湧くかもしれないが、ある程度コンピューターに詳しい者ならば、誰しもが考えるはずだ。

その世界のデータとやらは、一体どこのどいつのサーバー上に存在しているのか?

その世界での出来事は、一体どのハードウェアの計算資源によって演算されているのか?

その世界をどんな原理で観測しているのか?

そもそもコンピューターウィルスの進化とは、エンジニアが起こすものであって、ウィルス自体が進化することは有り得ない。
ましてや、メモリやハードディスク上のビット如きが生命を持つことなど断じて有り得ない。


そんな批判的意見が、我々に滝のように寄せられた。
なる程、至極真っ当な質問である。
我々とて、実際にこの目で見るまでは、同じ疑問を抱いたものであった。

181: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/17(金) 21:35:29.32 ID:GyZwpHVVO
まず、一般に誤解されがちな事だが…

デジタルモンスター達の本体は、コンピューター上のデータそのものではない。

そこに宿っている、「魂」こそが生命の本体なのである。

生命を生命たらしめる「魂」の実在証明と観測は、5年前にドイツの物理学者が成功している。

かつて、アミノ酸の海という非生物からタンパク質の高分子配列を組み立て、そこから細胞膜を持つ原生生物という生命を誕生させた存在…それが「魂」である。

魂は、生命の肉体が代謝系と自己増殖機能、外界との境界を獲得するよりも、ずっと前にこの宇宙に存在していた。

そして生命活動とは、物質の単なるランダムな化学反応の連続ではない。
そこに宿る「魂」によって制御される指向性の変化である。

そう、我々が脳によって行っている思考や、それによって芽生える自我、心が感じる感情さえも、生命の本質である「魂」が行った演算の結果にすぎない。

我々の脳は、生体コンピュータである。
コンピュータとは、「計算機」…。計算のための道具だ。

我々は、肉体を操る脳と、それが生み出す心こそが生命の本体だと誤解しがちだ。

だが、それは違う。

人間を自動車に例えるならば、自我や心は「車載コンピュータ」に相当する位置付けであり、「運転手」ではない。
車載コンピュータを操作してエンジンやブレーキの制御を行う「運転手」は、自我より上位に位置する「魂」である。

そして、この関係はそのままデジタルモンスターにも当てはまる。
コンピュータ上のデータは、デジモンの「肉体」でしかない。
デジモン達の自我と魂…遺伝子は、データよりも上の領域に存在しているのである。

アミノ酸の海に溶け込んだ魂が、タンパク質の肉体を得たものが我々であり、
ネットの海に溶け込んだ魂が、コンピュータウイルスの肉体を得たものがデジタルモンスターである。

182: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/17(金) 21:50:55.64 ID:GyZwpHVVO
「デジタルモンスターは、どうやって思考を行っているのか?」という質問も上がった。

これには我々も大変頭を悩ませた。
我々人類が持つ脳は、それぞれが独立の演算機能を持った生体コンピュータである。
だから、ひとつのコンピュータが一個体の思考を制御しているというのは分かりやすい。

だが、デジモンの肉体…そして脳は、コンピュータ上のデータとして存在してるはずだ。
そして、データそのものは自ら演算する機能を持たない。
コンピュータウイルスや各種ソフトウェアは、それが寄生するコンピュータのCPUが提供する計算資源を利用しているにすぎない。

我々は当初、デジタルモンスターも、それが宿るコンピュータのCPUに依存して思考を行うものと考えていた。

だが、デジモンキャプチャーを使って幼年期デジモンのデータをサーバー上に保存し、そのデータを解析したところ…
デジモンの「脳」に値するビット配列には、アクセスポインターらしき不変の定数値が刻まれていた。

そして驚くべきことに、デジモンが食事をするとき、その肉体を構成するデータ配列は、デジモンのデータが保存されているコンピューターのCPUを一切利用せずに変化したのである。

試しに、ハードディスク単体に電源を繋ぎ、そこにデジモンとキノコのデータだけを入れて数分待機したところ、次に観測したときデジモンはキノコを食べ終えていた。

このことから、デジモンという生命は、ハードウェアに依存しない思考・演算機能を持っていると結論付けられた。

184: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/17(金) 22:06:29.08 ID:GyZwpHVVO
そして、
「デジタルワールドをどのように観測しているのか?」
「この世界のどのハードウェアに、海だの島だの森だのサバンナだのといった地形のデータが保存されているのか?」
という疑問も上がった。

まず第一に、世界とは何か?という前提を共有しなくてはならない。

我々は、世界そのものを観測しているわけではない。
光や音、熱や衝撃などの刺激を、我々の感覚器官によって信号へ変換し、我々のクオリア(主観)の中に形成されたものが「世界」である。

我々のいる現実世界ですら、海だの島だの森だのといったものは、我々が感覚器官から得た情報をクオリアで意味づけしたものにすぎない。

つまり、我々人間が五感によって観測している世界と、先カンブリア時代の原始的な生物が嗅覚等の限られた感覚器官だけで観測している世界は、同じものを見ていても全く異なると言っていいものである。

そして、これは我々人間とデジモンに対しても言える。
我々が五感とクオリアによってネットワークを構成するデータを直接見たところで、磁気テープやフラッシュメモリの電荷の羅列にしか見えず、そこに意味漬けをすることはできない。

だが、デジモンの感覚とクオリアでは違う。
我々の五感では意味付けできないものを、森や海のように意味付けすることができるのである。

我々がデジタルワールドを発見することができたのは、デジモンの感覚器官とクオリアをコンピューター上で擬似的に再現するソフトウェア…「デジクオリア」というツールのおかげである。

185: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/17(金) 22:11:55.27 ID:GyZwpHVVO
最後に「デジタルワールドにも神はいるのか?」という質問が上げられた。

我々の研究チームのリーダーは即答した。

「分からない。そもそも我々の世界にすら神がいるかなど分からないのだから」と。

会場は、このとき笑いに包まれたが…
後にこの発言はなぜか問題視され、リーダーは紆余曲折あって公の場で謝罪することになった。

一応建前上謝罪はしたが、後に彼は私に言った。
「納得できない。なぜ謝らなければならないのか」と。

リーダーよ、神がどうって話はデリケートなものなのだ。
神とは人の心の中に存在するものなのだから。


…そういうわけで、我々この発表の後、しばらくの間取材漬けになり…
先日やっと解放され、研究に戻れたのである。

187: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/17(金) 22:19:10.85 ID:GyZwpHVVO
私は研究室に戻り、デジクオリアをインストールしているPCを起動した。

いつもデジタルワールドの観測に使用しているマシンだ。

さて、これまでの研究で色々分かりはしたものの…
デジタルワールドは未だに未知で溢れている。
はっきり言って分からないことだらけだ。

彼らの進化のメカニズムとは?
何がどこまでできるのか?
産業利用は可能なのか?

…特に3つめが一番重要である。
我々に出資してくれている者達は、我々がデジモンの観察によって得た成果の産業利用によって、支払った以上の利益を求めることだろう。

これからも、デジタルモンスターとデジタルワールドを観測し、未知の解明に努めていくものとする。

…さて。
デジタルワールドの生態系観察と、デジモンキャプチャーを使った飼育…
どちらを試そうか?↓
①生態系観察
②飼育

188: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/17(金) 22:21:33.24 ID:Z4TWHR9so
2
捕獲した以上面倒は見よう

189: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/17(金) 22:31:40.10 ID:GyZwpHVVO
先程の研究成果報告で述べたデジモンは、デジモンキャプチャーのテストのために捕獲したピチモンである。

ピチモンを選んだ理由はただ一つ。
「我々が最初に形成に成功したデジタル空間が、デジクオリアでは海として表示されたから」である。

つまりピチモンがいたのは、水槽のようなものである。

だが、我々はこのピチモンをある程度観察した後、デジタルワールドへ戻した。
餌や適切な生育環境を用意する技術がまだ無かったからである。

…しばらく研究が行われたおかげで、我々はサーバー内に、ある程度まともなデジモン用ビオトープを作れるようになった。
我々が自力で作れる餌はキノコだけ。
体積は5立方メートル程度。
土や植物などが欲しい場合は、デジモンキャプチャーを使ってデジタルワールドから調達することになる。

さて。
まずはこれまで観察してきた地域をもとにしたビオトープを作ろう。

どんなビオトープを作りたいか、希望を聞きたい。
現在の技術で可能な限り。要望にお応えしよう。
↓22:45まで意見募集

196: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/17(金) 22:56:55.04 ID:GyZwpHVVO
【補足】
デジモンキャプチャーの原理…

デジモンキャプチャーは、デジタルワールド上のマシンアームと虫取り網によって、デジモンや各種資源を掴み、直径1メートル程度の穴を通じて我々のサーバー内へ持ち帰るツールである。

このマシンアームは、私の腕と指の動きをジャイロセンサーでモーショントレースすることで操作する。

つまり現在の技術では、私の両腕と虫取り網で掴めるものなら持ってこれるし、それだけじゃ無理なものは持ってこれない。

植物を持ち帰りたい場合、小さい草を土ごとすくい取って持ち帰ることはできるかもしれないが、木をまるまる一本持ち帰るのは技術的に難しいといえる。

202: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/18(土) 20:57:15.85 ID:yVMC4+05O
まずは、デジタマを捕獲しよう。
環境を整えるのは、その後でいいだろう。

さて、まずは1個キャプチャーしよう…
場所と系統を決めてほしい。

場所は…↓1
①森林
②熱帯雨林
③サバンナ
④海中
⑤川

系統は…↓2
①脊椎動物型
②軟体型
③節足動物型
④無機物型
⑤植物型

203: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/18(土) 20:58:49.49 ID:i+dHvPPr0
1

204: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/18(土) 21:01:16.89 ID:gN2BOBaLo
1

205: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/18(土) 22:02:33.79 ID:yVMC4+05O
我々は、デジドローンを飛ばし、森林を探し回った。

脊椎動物型デジモンを探しているが…

そういえば、森林にはまだ脊椎動物型デジモンは進出していなかったようだ。

もう森林まで来てしまったし、代わりに他の系統のデジタマを捕獲しよう。↓
②軟体型
③節足動物型
④無機物型
⑤植物型

206: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/18(土) 22:02:47.70 ID:9xj6lspe0
5

207: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/18(土) 22:23:07.91 ID:yVMC4+05O
森林から採集した細い枯れ木を、アームで加工し、小さな小屋を作った。
一般家庭のような平和な環境を再現したとき、どう成長するかを確かめるためだ。

そして、森林からは土や小さな植物、低木の種も採取して、栽培を試みた。

デジタマを捕獲する前に、まずはこれらの植物がうまく成長できるか確かめよう。



数日経過したが、植物の成長はやや遅い。
肥料は足りている。
光量が足りないのだ。

我々はビオトープの照明を増築し、光量を強化した。
これで植物型デジモンも育つだろう。

さて、ビオトープは完成。
森林から植物型デジモンのデジタマを捕獲した。

孵化を待つこととしよう。

208: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/18(土) 22:26:39.05 ID:yVMC4+05O
やがて、デジタマからデジモンが孵化した。
no title


発芽したばかりの種子のようなデジモン…ニョキモンと名付けた。

キノコなどを与えてみよう。

さて、このデジモンには何か、マシンアームで刺激を与えてみるか…?↓
①特になにもしない
②なにかしてみる(内容を具体的に)

209: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/18(土) 22:28:08.09 ID:mPABvh3Lo
1

210: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/18(土) 22:37:00.74 ID:yVMC4+05O
我々は、特にニョキモンに何かしようとはしなかったが…
マシンアームによる餌付けは行った。

そうして育成していると、やがてニョキモンは美しい花を咲かせた。

no title


花の咲いた球根型デジモンへ進化したのである。
私は、この種の名前としてキュウコモンという名称を提案したが…
ピョコピョコ動くからピョコモン、と名付けられた。

211: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/18(土) 22:40:42.41 ID:yVMC4+05O
ピョコモンは、マシンアームでキノコの餌付けを行うとき、自身の花をアームに見せつけてくる。

何かをアピールしているのであろうか…?

ピョコモンは、たまに地面に潜って睡眠をとることもあったので、肥料の提供も行った。



ピョコモンはやがて成長期になるだろう。

デジモンが成長期になる際は、外界からの刺激が大きく作用する。


退屈そうにしているピョコモン。
何かしてみるか…?↓

212: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/18(土) 22:41:42.15 ID:HWe9Pk/q0
マシンアームを猫じゃらしのように使って興味を持たせてみる

214: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/18(土) 22:55:18.38 ID:yVMC4+05O
我々は、ピョコモンとのコミュニケーションを試みた。

猫じゃらしのような玩具で遊んでやったり、撫でたりしてみた。

ピョコモンは、マシンアームが餌をくれる存在だと気づいたのか、我々に懐き始めた。

もっと遊びたい、もっと美しくなりたいという欲求が強まったためか…
美しい花と、器用な手をもつデジモンへ成長した。
no title

215: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/18(土) 22:56:25.68 ID:yVMC4+05O
美しい花から、フローラモンと名付けられた。

さて、成長期まで成長したが…
これからはどう育ててみようか…?

222: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/19(日) 21:45:14.96 ID:AZWALOW9O
私はフローラモンの飼育記録をレポートとしてまとめていた。

作業中、私は奇妙なことに気付いた。
削除したファイルは、私のPC環境設定では一度ゴミ箱へストックされる。
だが、ゴミ箱の中のファイルがどんどん減っている。
ひとりでに消えているのである。

これはコンピューターウィルスにでもやられたか…?と思い、セキュリティソフトでスキャンしたが、異常は検出されなかった。

フローラモンが何かしているのか…?とも思ったが、特に脱走の形跡はない。

このまま放っておいても、ゴミ箱のゴミファイルを削除する手間が省けるだけなので、無害といえば無害だが…
どうするか。↓
①放置する
②フローラモンに調査を頼んでみる
③その他、無理のない範囲で自由記述


223: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/19(日) 21:46:50.43 ID:kYiVsyFVo
2

224: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/19(日) 21:48:37.29 ID:AZWALOW9O
我々は、フローラモンにコンタクトを試みた。
日本語と英語でメッセージを送ったが…
特に言語の教育などしていないため、単なる模様の羅列としか認識していないようだ。

どうにかして、フローラモンと意思疎通を取る方法はないだろうか…?
何か試してみよう↓1~3

226: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/19(日) 21:55:59.31 ID:DNIulj0o0
幼児向けの学習用教材のデータを置く

228: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/19(日) 22:28:13.23 ID:AZWALOW9O
私は、これを研究のためのいい機会だと考えた。

デジモン研究をしていると、よく聞かれるのだ。
「その研究は金になるのか?」と。

もしもデジモンと意思疎通を行い、課題解決をさせることに成功すれば…
金になるかは分からないが、我々の生活の向上のために役立てることはできるようになるかもしれない。

手始めに、幼児向けの学習用教材のデータをビオトープ内に置いてみた。
インストールは完了しているため、操作して遊ぶことはできるだろう。



フローラモンの知能がどの程度か、だいたい判明した。
例えるなら小型犬くらいである。

何不自由なく餌が手に入り、遊んであげるくらいしか刺激もなかったため、課題解決能力がそれほど発達しなかったようだ。

教材ソフトの内容も、あまり理解していないようだ。
簡単なパズルゲームばらば、操作して遊べるようだが…。

229: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/19(日) 22:33:49.91 ID:AZWALOW9O
だが、小型犬を侮るなかれ。
ミニチュア・ダックスフンドなどの犬種は、訓練を積ませることで、巣穴の中に潜むアナグマを捕らえるための猟犬として働かせることも可能だという。

つまり、このフローラモンも。
訓練を積ませれば、単独でミッションを解決することはできずとも、パートナーとして手伝うことはできるようになるかもしれない。

我々は普段、デジタルワールドの観察をするために、デジドローンというアイテムを使っている。
カメラとマイクを搭載した小型偵察機だ。
これを介して受信した情報を、デジクオリアで映像化しているというわけだ。

つまり、これの「逆」を行うことで、フローラモンとテレビ通話ができるようになるかもしれない。

230: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/19(日) 22:44:27.02 ID:AZWALOW9O
パソコンにマイクを取り付けて、入力した音声情報をデジクオリアによって「逆変換」することで、デジタルワールド内の空気振動に対応させる。
これをドローンから発することで、我々の声を音声信号として送信することができる。

カメラで撮影した映像ならば、デジクオリアで変換することで、デジタルワールドの光波長へ対応させることができる。
これをドローンから投映すれば、ビオトープの壁へ我々の姿を映し出せるだろう。

試しに、私の姿を壁に映し出し、話しかけてみた。

フローラモンは困惑して映像を眺めている。

私は、「キノコだよ、お食べ」と言い、キノコの写真を見せた後、フローラモンへ餌をあげた。
すると、フローラモンは私を「自分に餌付けをしてくれている者」と理解したらしく、映像に対して甘えてきた。

ふむ、高感度は申し分ないようだ。
言葉はまだ通じていないが、これで何らかの意思疎通はできるかもしれない。

それこそ猟犬だって、訓練すれば単語2つ分くらいの命令は理解できるというではないか。

先程の教材ソフトは、人間の幼児基準で作られたものだったから難易度が高すぎたようだが…
もう少しレベルを落として、何かしらのトレーニングをしてみてもいいかもしれない…。
何かしてみるか…?↓1~3

231: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/19(日) 22:47:47.97 ID:QMwDTFMZ0
文字を見せてどう発音するか教えたら喋れるか試す

234: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/19(日) 23:03:41.30 ID:AZWALOW9O
フローラモンが言葉を喋れるようにできないか?と思い、平仮名文字と音声を関連付けさせてみた。

その結果、数日の訓練を続けるうちに、我々の発した音声と、文字を書いたカードの対応関係を理解するようになった。

だが、フローラモンの声帯は、我々の言語が喋れるほど発達してはいないようだ。
そのため、フローラモン自身が言葉を発することは難しいといえるだろう。

そのまましばらく教育を続けていると…
「キノコ」
「土」
「水」
など、ビオトープ内にある物体の名詞については、理解できるようになった。

思っていたよりも、言語習得のスピードが早い。
デジモンは、訓練によってどんどん個体の能力が上がるということだろうか。

そういえば、スターモンの子供達…ゴツモンもそうだった。
厳しい鍛錬の結果、成熟期のベジーモンよりも強くなっていた。

235: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/19(日) 23:08:45.73 ID:AZWALOW9O
しばらく教育を続けてわかったが…
どうやらフローラモンという種を「人間と同レベルの知能になるように教育しよう」とするのは、少々酷なようだ。

紙芝居を見せたり、教育ソフトをやらせようともしたが…
そもそも、我々がフローラモンに何を求めているか、という目的の共有に至ることが難しい。

猟犬のトレーナーは、別に猟犬を人間と同程度の知能になるよう教育しようとは考えない。
猟犬には猟犬の、身の丈にあったレベルを求め、それに応えれるようになれば十分なはずだ。

我々はフローラモンへの教育レベルを、猟犬とかチンパンジーぐらいのことができれば十分だ、というように方針転換することに決めた。

236: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/19(日) 23:13:27.99 ID:AZWALOW9O
さて、どういう教育をするか…。

ところで、フローラモンの年齢は、既にサバンナのベタモン達が成熟期へ進化したときの年齢を過ぎている。

どうやらデジモンは、放っておいても成熟期へと成長する…というものではないらしい。
周囲の環境へ適応するために、さらなる力と単為生殖能力を手に入れるようだ。

このままフローラモンへ、今までどおりに教育を続けたとしても…
成熟期には進化しないかもしれない。

どんな刺激を与えるべきだろうか…?

238: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/19(日) 23:17:12.44 ID:AZWALOW9O
考えてみれば、理に適っているといえる。
今のままの姿で、何も不自由していないのだから。
わざわざ成熟期へ進化して代謝量を増加させる必要はないし、デジタマを産んで限られた(?)餌を奪い合う相手を殖やす必要もないといえる。

むしろ、進化の機会を無駄に消費して、環境が現在の状態から変化したときへの適応のチャンスを失うのは勿体無いともいえる。

フローラモンをどう育てるか…
根本的に考える必要がありそうだ。

239: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/19(日) 23:23:15.31 ID:AZWALOW9O
ところで、私のパソコンのゴミ箱の件だが…
既にゴミ箱の中のファイルは空になってしまった。

そして、恐ろしいことに…
ネットからダウンロードしたファイルが自動的に入る「ダウンロードフォルダ」の中身が、少しずつ消えてきている。

今のところは幸い、ずっと前にダウンロードして、そのまま消し忘れて放置しておいた不要なファイルが消えているだけだが…
このまま放置したらどうなることか…。

とりあえず、キノコ生成用のデータマイニングソフトで適当な大容量データを生成し、ゴミ箱へしこたま放り込んでやることで、なんとか重要なデータが削除されないようにしている。

現在、このPCはネットワーク上から切断し、完全なスタンドアローンにしてある。
重要な研究データはすべて退避し、新しいパソコンへ保存済みだ。

このパソコンは、一体何によってこんな状態にされているのだろうか…?

245: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/21(火) 22:51:02.67 ID:oig8socFo
現在このPCは隔離状態にあるため、ひと安心…
…ではない。

私が今使っているサブPCは、今危険な状態にあるメインPCよりもはるかに性能が劣る。
決してサブPCも一般家庭用のPCに比べて性能が低いというわけではないが…
メインPCは、ビッグデータ分析用のモンスターマシンである。
これが使えないと、我々の研究はかなり遅れることになる。

メインPCでやっていた作業が具体的に何かというと…、デジモンの肉体構造解析と、進化のシミュレーションによる数理モデル予測である。

これらの解析作業用に作成したデータマイニングソフトは、サブPCでキノコ栽培用のデータ生成にも流用している。

つまり、このゴミ箱異変を解決しない限り、我々の研究は滞ってしまうことだろう。

247: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/21(火) 23:00:29.39 ID:oig8socFo
余談だが…
そもそも、何故フローラモンの餌としてキノコ栽培をしているのかだが…
結論から言うと、今の我々の技術で栽培できる唯一のデジモン用飼料だからである。

このキノコは、デジタルワールドに存在するデジタケという菌類の子実体である。
デジタケは、デジタルワールド内で、枯れた植物や、死亡したデジモンの肉体を分解しながら繁殖している。
そして、菌糸が受精を行うと、子実体であるキノコを作って胞子を飛ばすのである。

我々は当初、このキノコを持ち帰り、適当なゴミデータを複製しまくって与えてみた。
だが、無価値なゴミデータでは、生育があまり早くはなかった。

そこで、先述のデータマイニングソフトにデジタルワールドの各種情報を与えて、シミュレーションデータを生成し、これをデジタケに与えたところ、デジタケは以前とは比較にならないほど発育した。

正直言うと、このシミュレーションデータはそれ単体で論文の材料にできるほど価値のある情報であり、キノコ栽培の餌にするのはやや惜しい。
どうやらデジタケは、容量の大きなデータよりも、情報量の多いデータを好むらしい。

データの情報量は、複製されるほど薄まってしまう。
そのため、キノコ栽培用に出力したデータは、非常に惜しいが複製せずにそのままキノコへ与えているのである。


248: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/21(火) 23:05:45.36 ID:oig8socFo
さて。
我々研究グループでは、今意見が真っ二つに分かれている。

メインPCの調査のために、フローラモンを利用するべきかどうか、という点である。

フローラモンは、とても人懐っこくはあるものの…
毎日遊びながら何不自由なくストレスもなく暮らしていたせいで、なんというか…問題解決能力が、我々の期待よりもやや低いのである。

そもそもフローラモンは、「ストレスをほとんど与えずペットのように育てたらどうなるか」という実験のために育成したデジモンである。
ミッションをこなさせる実験用の個体ではない。

故に、フローラモンを今回の目的に使うのはやめて、ミッション用に別の個体を飼育・訓練すべきではないかという意見が出たのである。

249: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/21(火) 23:07:06.82 ID:oig8socFo
さて、君達の意見を聞きたい…
どうすべきだろうか?↓1~3
①ミッション用に新しいデジモンを飼育する
①フローラモンに訓練を積ませてメインPCミッションをさせる

254: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/21(火) 23:20:11.81 ID:oig8socFo
我々は相談した結果、両方の案を採用することに決めた。
すなわち、私がフローラモンの訓練を行い、他の人員がミッション用にもう一体のデジモンを飼育することに決めたのである。

…こんな面倒なことになるくらいならば、もういっそメインPCはフォーマットしてしまえばよいのでは?という意見を主張する者もいた。

だが、それは研究者にあるまじき行為だ。
あらゆるセキュリティソフトで検出されない、不可思議な事象。
もしかしたらデジモンが起こしているのかもしれない。
そうであれば、この事態を解明すれば、大きな研究成果となるのである。

それに、これはピンチというより逆にチャンスともいえる。
もし、これと同じ事象が、金融機関のデータベース等で発生したら一大事だ。
そのような事態が起こる前に、サンプルをスタンドアローンの状態にできたのは幸運と言えよう。
ならば、これと同じ「ウィルス」がいつかネットを脅かすことに備え、我々で「ワクチン」を作ることは有益な研究といえるだろう。

255: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/21(火) 23:24:40.36 ID:oig8socFo
さて、フローラモンの飼育によって、デジタマから育てたデジモンは育て方次第で人に懐くことが分かった。

そのため、今回もデジタルワールドからデジタマを採取し、それを育てることにしよう。

これまでに我々が観察した成熟期以上のデジモンの中で、どのデジモンのタマゴを採取しようか…?↓1

256: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/21(火) 23:26:46.71 ID:kS4p0O4do
ジャガモン

257: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/21(火) 23:31:33.20 ID:oig8socFo
そうだ。
最強の戦闘能力を持ち、平和を愛するが故に己を律する理性を持ち、秩序の守護のために働いてくれる…
まさしく守護神のようなデジモンがいるではないか。

我々は、デジタルワールドの森林へデジドローンを飛ばした。
そして、目的のデジモンのいる場所へ到達した。


…そこには、体からたくさんの苔を生やしながら眠る、守護神ジャガモンの姿があった。

寝ている…。そう。ジャガモンは眠っている。
代謝量を極限まで下げているのである。

これだけ代謝を下げていれば、産卵という大変なカロリーを要する行為などしないのではないだろうか…?

259: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/21(火) 23:35:53.04 ID:oig8socFo
女性研究員が、とんでもないことを言い出した。
「ジャガイモっぽいし、体表の岩を持ち帰れば、種芋みたいに殖えるのでは?」と。

なんてことを思いつくんだ。いろんな意味で。

そんなことよりなら、私は二代目スターモンあたりのデジタマを採取した方が良いと思うのだが…

どうするか…?↓
①ジャガモンの岩の採取を試みる
②二代目スターモンのデジタマを採取する
③他のデジモンのデジタマを採取する(親デジモンの種を指定可能)


260: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/21(火) 23:37:13.55 ID:H4gsY8Zf0
3 ディノヒューモン

261: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/21(火) 23:45:28.62 ID:oig8socFo
デジモンの形質は、ある程度子に受け継がれることがわかっている。

ただ強いデジモンが欲しいのであれば、モリシェルモンやスナイモン等のデジタマを採取すればよいのだろうが…

今回のミッションを成功させるには、戦闘能力よりも必要なものがある。
知能が高く、手先が器用であり、高い課題解決能力を持ったデジモンの遺伝子が欲しい。

スターモンもいいが…
ディノヒューモンはどうだろうか。

研究チームは皆、満場一致でこの案に賛成した。
私はサバンナへデジドローンを飛ばし、ディノヒューモン農園を目指した。

262: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/21(火) 23:54:24.76 ID:oig8socFo


ディノヒューモン農園を、デジドローンで上空から観察した。

すると、あまり目立たないところに、ディノヒューモンが産んだと思われるデジタマがいくつか安置されていた。

デジドローンを、デジタマへ近づけると…
物凄い勢いでフロッグモンが近寄ってきた。

no title


私は、やばいと思って、咄嗟にデジドローンをゲートを通じて回収した。

デジドローンがゲートから出てきた直後…。
なんとゲートの穴から、凄まじい勢いでフロッグモンの舌が飛び出てきた。

危なかった。
もう少し遅れていたら、デジドローンはフロッグモンの舌に捕らえられ、そのまま食べられてしまっていたであろう。

263: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/21(火) 23:59:28.93 ID:oig8socFo
私は、フロッグモンが寝鎮まるのを待った。

フロッグモンが寝た後、デジタマ安置場へデジドローンを飛ばしてみた。

すると…

安置場には、3匹程の成長期デジモンがいた。

no title


トカゲのような姿をしたデジモン。スナリザモンと命名した。
くっ…!警備されている!
なんと抜け目のない。


余計にこのデジタマが欲しくなった。

265: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/22(水) 00:02:52.86 ID:Jl+BO5HSo
私は、安置場からやや離れたところへ、データマイニングで生成したデジタケをばら撒いた。

すると音を聞きつけたスナリザモン達は、デジタケに気づき…
それへ群がり、夢中で食べ始めた。

きっと夜中の警備でお腹が空いていたのだろう。
夜食をしているスナリザモンを横目に、私は無防備になったデジタマ安置室へ、デジモンキャプチャーを放った。

マシンアームが、ディノヒューモンのデジタマへと伸びる…!

268: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/22(水) 00:10:19.64 ID:Jl+BO5HSo
捕獲成功!

マシンアームは、見事にディノヒューモンのデジタマを掴んだ。

スナリザモンが戻ってくる前に、私はゲートを通じてデジタマを回収し、ビオトープへ置くことに成功した。

…デジドローンでその後の様子を観察すると…
デジタケを食べ終わったスナリザモン達は、デジタマ安置場へ戻ってきた。

デジタマの数が減っているのには、気付いていない様子だ。
何食わぬ顔で警備をし続けている。

…翌朝。
スナリザモン達は、ディノヒューモンに怒鳴られ、叱られていた。
3匹ともゲンコツで頭を軽く殴られていた。

…すまない、スナリザモン達。
君達は何も悪くない。
だがまあ、こちらにも切実な事情があるのだ。許してくれ。

その日の正午には、デジタマ安置場の前には、サラマンダモンが一匹陣取っていた。
no title


あいつ、兄弟の農園に合流していたのか…。
おそらく、次のチャンスはもうないだろう。

270: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/22(水) 00:15:17.75 ID:Jl+BO5HSo
さて。このデジタマだが…
フローラモンと同じビオトープで育てるか?
あるいは、別の環境の部屋を用意するか。

どちらがよいだろうか…↓
①フローラモンと同じビオトープで、いっしょに育成する
②同じビオトープで、柵で縄張りを区切る
③異なる部屋にする(どんな環境にするか指定可能)

271: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/22(水) 00:16:22.65 ID:UczbG0vUo
1

273: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/22(水) 00:22:33.31 ID:Jl+BO5HSo
私は、フローラモンと同じビオトープで、ディノヒューモンのデジタマを飼育することに決めた。

調査ミッションでは、デジモン同士の連携も重要になるかもしれない。
できれば、仲良くなってほしいものである…。

やがてディノヒューモンのデジタマからは、幼年期デジモンが産まれた。
no title


ぼた餅に似てるからボタモンと名付けられた。
ディノヒューモンが幼年期だった頃は、確かツブモン、ウパモンという両生類型デジモンだった筈だが…
ついに幼年期から完全に陸上適応に成功したようだ。

274: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/22(水) 00:26:40.28 ID:Jl+BO5HSo
これからは、ボタモンの飼育と、フローラモンの訓練の両方が始まる。

…正直、ボタモンにはかなり期待している。
見ただろうか、ディノヒューモンの農園を。
あの農園は、デジタマの警備のためにデジモンを配備できるくらいまで指揮系統が整っていた。
つまり、デジモン間で意思伝達を行い、組織運営ができているということだ。

その遺伝子を受け継いだボタモンは、果たしてどう育っていくのであろうか…。




そして最近、メインPCでは…
データマイニングソフトをフル稼働させてデータを生成し、ゴミ箱へ放り込みまくっているのだが…

だんだん、追いつかなくなってきている…気がする…。

279: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/22(水) 19:13:14.79 ID:H7rUJfFmO
研究チームのリーダーは言った。
もしもPCの異常がデジモンの仕業ならば、そこにはデジモンが住めるデジタル空間があるということ。

そうであれば、デジドローンを飛ばして様子を確認できるのではないか、と。

言われてみれば確かにそうだ。
異常の起こっているPCは、以前デジタルワールドの観測にも使用していた。
そのため、デジドローンとデジクオリアはいつでも使える状態だ。

メインPCの中にデジドローンを飛ばし、異常の原因が何かを確かめてみるべきか…?↓
①確かめよう
②フローラモンをドローンの護衛につける


280: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/22(水) 19:17:58.47 ID:860FUYxno
1

281: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/22(水) 19:38:37.26 ID:H7rUJfFmO
フローラモンをドローンの護衛につけてはどうかという案が出た。

フローラモンに、コンピューターへの潜入経験を積ませて鍛えるためだと。

だが私は2つの理由で反対した。
1つめは、フローラモンは戦闘経験があまりにも不足しており、万が一成熟期の肉食デジモンと鉢合わせになったら一環の終わりであるため。

2つめは、フローラモンを入れる記録媒体の問題だ。
仮にフローラモンをフラッシュメモリ経由で問題のPCへ接続した場合、そのフラッシュメモリにデジモンが侵入する可能性があり得る。
そうなった場合、フローラモンを元のビオトープへ戻したとき、ゴミ箱のデジモン(仮)は我々のネットワークへ侵入することになる。

それではせっかくスタンドアローンにした意味がない。

デジモンを送り込める機会は、たった一度…と考えるべきだろう。

よって今回は、デジドローンを単体で送り込むものとする。
レスポンスを上げるために、一時的にデータマイニングを止めた。

いざ、発進!デジドローン!

282: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/22(水) 19:42:15.53 ID:H7rUJfFmO
デジクオリアを起動しようとすると…

「ライセンスが認証できません」の警告ダイアログが表示され、起動に失敗してしまった。

あッッッッ!!!
そうだった!!!

デジクオリアは、有償のお高いソフトウェアである。
不正コピー品が使われないように、起動時はライセンス認証が必須なのである。

そのため、スタンドアローンのPCでは起動できない…!
これは…まいった。

283: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/22(水) 19:46:25.26 ID:H7rUJfFmO
我々は、開発元に連絡し、あらん限りのお願いをした。
その結果、見事説得に成功し、スタンドアローンでもデジクオリアを起動できるように、USBドングルを送付して貰えることになった。

ただし、デジクオリアの品質改良のため、事態の収集がついたらデジクオリアの映像をブルーレイROMに焼いて送付するように、との依頼を受けた。

デジモンは生きたデータであるため、一度焼いたらデータを書き換えできないタイプのROMには侵入できないのである。

我々は交換条件を承諾し、2日後にドングルが送付されるのを待つこととなった。

285: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/22(水) 19:52:48.72 ID:H7rUJfFmO
ドングルでPCのゴミ箱を調査できるのは、最短で2日後である。
それまでは、フローラモンとボタモンの訓練をして待つしかない。

さて、現在のビオトープは、訓練とは無縁の快適空間である。

ここをトレーニング場へと改築しなくてはならない。
我々はフローラモンの飼育から得たデータにより、デジタル空間の構築技術を向上させ、面積を倍まで増やせるようになった。

現時点で必要な訓練は、コミュニケーションの訓練と、戦闘の訓練である。

果たして、どうやってトレーニングをさせればよいのだろうか…?

286: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/22(水) 19:58:49.31 ID:H7rUJfFmO
デジモンの訓練の仕方など分からん!!

分からんなら分からんなりに、方法はある。
自分たちで考えてもラチが開かないので、デジタルワールドを観察し、実際に戦闘訓練のやり方を見て真似すればいいのである。

我々はデジドローンをディノヒューモン農園へ飛ばし、スナリザモン等をどうやって訓練しているのか、観察して訓練方法をパクることにしたのである。

まさか、我々がデジモンの生み出した技術をパクることになるとは…。

287: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/22(水) 20:10:38.75 ID:H7rUJfFmO


ディノヒューモンは、スナリザモン2匹とカメモン2匹、サラマンダモンを連れて農園の外に出た。

一向は、サバンナを歩き回り、食糧を探したり、長い木の枝を集めている。

その途中で、一向は3匹の昆虫デジモン達と遭遇した。
うち2匹はクネモン。
もう一匹は…

no title


鋭い毒針を持った蜂型デジモンだ。
フライビーモンと命名した。

フライビーモンは、針を出してスナリザモンへ飛びかかってきた。
ディノヒューモンは、武器でスナリザモンを守り、サラマンダモンと二人がかりでフライビーモンと戦った。

ディノヒューモンの武器と、サラマンダモンの炎が、フライビーモンを追い詰めていく。

やがてフライビーモンは、空を飛んで逃げていった。
残されたクネモン2匹は、スナリザモンと死闘を繰り広げた末に、スナリザモン達の噛みつき攻撃をくらって力尽きた。

スナリザモン達は、クネモンの死骸を捕食した…。



…なるほど。
ディノヒューモンは、実戦形式で訓練しているのか。


参考になるか?これ…

288: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/22(水) 20:16:08.95 ID:H7rUJfFmO


どうするか…↓1~3
①デジタルワールドの中で、弱肉強食の武者修行させる。危なくなったらゲートを通じて避難できるようにする
②訓練用のボットを作り、戦わせる(よくて幼年期以上成長期未満の強さ)
③デジドローンを改良して成長期デジモンをキャプチャーできるようにし、ビオトープ内で戦わせる
④その他、無理のない範囲で自由記述

294: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/22(水) 20:28:20.34 ID:H7rUJfFmO
様々な案を組み合わせることにした。

第2ビオトープとして、コロシアムを作るのである。

そしてデジドローンの技術を応用し、戦闘訓練用のボットを作った。

マシンアームに木の枝のハンマーを振ることができる飛行物体である。

デジドローンの中にはキノコが詰められており、ドローンを破壊すると中のキノコを食べられるようになっている。

これを使い、デジモン達の訓練をすることにした。
フローラモンと、ボタモンを…

no title


…うおっ!?いつの間にか進化している。
ボタモン改めコロモンを、このコロシアムへ放った。

295: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/22(水) 20:32:01.26 ID:H7rUJfFmO
試作型ボット3体は、まずはフローラモンの方へ飛んだ。

フローラモンは、いつものように遊んでくれるのか?と思って、ボットへじゃれつこうとした。

だがボットは木槌でフローラモンを殴打した。
軽くポカっと叩く程度だ。

びっくりしたフローラモンは、泣きながらコロシアム内を逃げ回った。

我々は、いつものデジドローンを向かわせて、フローラモンへ敵と同じ武器を与えた。

フローラモンは、我々が味方だということは分かってくれたようだが…
木槌をぶんぶんとがむしゃらに振り回すだけであった。
ボットには一向に当たる気配はない。

297: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/22(水) 20:37:15.00 ID:H7rUJfFmO
一方のコロモンは、ボットに木槌で叩かれると、シャボン玉のような泡を吐いて応戦した。

我々が木槌を与えると、コロモンは木槌を咥えた。

そのまま目の前のボットを叩くのか…と思ったら、なんとコロモンはぴょんぴょんと跳ねてフローラモンの方へ向かい、フローラモンと戦っている方のボットを背後から殴打した。

不意をつかれたボット。
3つ点灯していたランプのうち、1つが消えた。

コロモンは、再びボットを叩こうとするが…
空中を飛行しているため、コロモンの木槌は届かない。

300: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/22(水) 20:41:05.85 ID:H7rUJfFmO
するとコロモンは、自分の木槌をフローラモンへ渡した。

フローラモンはきょとんとしている。

コロモンは、武器を持たず、ボットへ泡を吐きかけて攻撃(?)した。

このボットは「攻撃を受ける度にランプが1つ消える」という挙動をするため、こんなしょぼい泡攻撃でもランプが1個消えるのである。

コロモンはフローラモンに向かって吠え、その後ボットに向かって吠えた。

フローラモンは木槌を握りしめると、ジャンプしてボットを叩いた。

3つ全てのランプが消えたボットは、地面に落下し、パカっと蓋を開けてキノコを出した。

302: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/22(水) 20:44:49.44 ID:H7rUJfFmO
ボットはあと2つ残っている。
フローラモンは、両腕の花を開くと、花粉のようなものをボットへ吹き付けた。

霧散した花粉をくらったボット。
「攻撃を受ける度にランプがひとつ消える」…。
つまり、花粉をくらった数だけランプが消えることになる。
2機のボットは両方とも、一瞬で3つ全てのランプが消え、落下した。

コロモンとフローラモンは、喜びながらボットの方へ駆け寄った。

303: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/22(水) 20:47:07.07 ID:H7rUJfFmO



…そのとき。
フローラモンの撒いた花粉を、コロモンが吸い込んでしまった。


コロモンは、涙と鼻水を出しながら、何度もくしゃみを繰り返した。

まさかフローラモンの花粉は、アレルギーを引き起こす作用があるのだろうか!?

これはまずい。
我々はコロモンをコロシアムからビオトープの水場へと転送した。

コロモンは、水場へ飛び込み、体を洗った。
数分後、ようやくくしゃみが止まったようだ。

304: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/22(水) 20:50:18.24 ID:H7rUJfFmO
一方のフローラモンは、ドローンが落としたデジタケを集めていた。

フローラモンがすべてのデジタケを集め終わった後、我々はフローラモンをビオトープへ転送した。

アレルギーが収まったコロモンは、フローラモンを見つけると、不機嫌そうな顔をしたが…
フローラモンがコロモンへデジタケを差し出すと、コロモンはそれを食べた。

…ドローンを使った戦闘訓練は成功といったところか。
ただし、次はフローラモンとコロモンを一緒の部屋で訓練させるのはやめた方が良さそうだ。
あの花粉を何度もコロモンに吸わせるわけにはいかない。

306: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/22(水) 20:53:21.03 ID:H7rUJfFmO


さて、初回トレーニングは完了だ。

次はどうするか…?
デジタルワールドを散歩させてみようかとも思ったが、そのまま脱走して帰ってこなくなる可能性もある。

どういう訓練をするか…↓
①デジタルワールドの中を散歩させる
②四輪車型ドローンと戦闘訓練させる
③その他、無理のない範囲で自由記述

307: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/22(水) 20:56:34.28 ID:oq0Rey09o
反復で連携強化……なら敵強くしてもいいか

2

309: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/22(水) 21:06:03.05 ID:H7rUJfFmO
何度か、それぞれに飛行型ドローンとの戦闘訓練を積ませてみた。

慣れてきたフローラモンは、これをゲームだと思ったらしく、それなりに楽しんでいる。

一方のコロモンは、自分の力不足を感じているのか…
高くジャンプする練習をしたり、泡を勢いよく吐く練習をしている。

やがて、コロモンは興味深いことをし始めた。
土で泥のボールを作り、それをフローラモンへ渡したのだ。

フローラモンは、最初それをプレゼントか何かと思ったらしく、自分の寝床へ飾った。

だが、コロモンは新しくボールをいくつか作ると、そのうちの一個を壁に投げた。
そして一個をフローラモンへ渡すと、コロモンは木槌を咥えて、先程ボールを投げた壁の前に陣取った。

フローラモンが、優しく泥のボールをコロモンに向かって投げると…
コロモンは、そのボールを木槌で叩いて破壊した。

フローラモンとコロモンは、このスポーツを気に入ったらしく、暇を見つけてはこのスポーツをやるようになった。

312: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/22(水) 21:11:56.94 ID:H7rUJfFmO
フローラモンとコロモンは、昼食をとってしばらくすると、木槌を持ってデジドローンの前に来た。

今回は少し強いボットを開発したので、それと戦わせてみよう。

コロシアムに二匹を転送した。

やがて、2機のボットが出現した。
これらは飛行はできないものの、四つの車輪で縦横無尽にコロシアム内を走行した。

そして、主砲からゴムボールを勢いよく発射した。

ゴムボールをくらったフローラモンはよろめいた。
いつもよりも強いことに気づいたらしい。

花粉を撒き散らすものの、ボットは花粉の射程の外からゴムボールを発射し、フローラモンを攻撃する。

フローラモンはひぃひぃと逃げ回った。

313: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/22(水) 21:17:09.91 ID:H7rUJfFmO
フローラモンは、やがてボットが発射したゴムボールを拾うと、それをボットへ投げ返した。

ボットは素早く走ってボールを回避した。

ちなみに、2機のボットのうち、現在フローラモンと交戦している機体は私が操作している。

フローラモンは悔しがったが、再びゴムボールを拾い、ボットへ投げた。



一方コロモンは、ゴムボール攻撃を浴びっぱなしであった。
スピードもパワーもフローラモンより遅く、ゴムボールを投げ返すのも不得意なコロモン。

容赦なくゴムボールを連射するボットに対して、コロモンは弱々しくゴムボールを投げ返すも、ボールは一向に当たらない。

コロモンは、ボットを睨んだ。

315: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/22(水) 21:27:45.75 ID:H7rUJfFmO
コロモンは、コロシアムの周囲を見回すと…

あるものを発見し、それに近寄った。

コロモンが発見したのは、研究メンバーの一人が前回の訓練で出しっぱなしにして片付け忘れていた飛行型ボットであった。

コロモンは、飛行型ボットをつっついている。

私は飛行型ボットのコントローラーをコロモンへ渡した。

コロモンは、舌を使ってコントローラーをいじくっているが…
あまりうまく飛行型ボットを操作できていない。

そうこうしている間に、四輪型ボットはコロモンへ接近し、ゴムボールを連射した。
何発もゴムボールをくらったコロモンは、悔しそうに涙を流した。

319: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/22(水) 21:47:01.78 ID:H7rUJfFmO
すると、なんとコロモンは…
何を思ったのか、飛行型ボットとコントローラーを食べた。

え!?食えるの!?
まあ、このボットはデジタルワールドの鉄で作ったわけじゃなく、ソフトウェアに質量を持たせたものだから、デジモンなら食えるのかもしれないが…
食うの!?なんで!?

ボットを食べたコロモンは…
光に包まれた。

やがて光が消えると…
コロモンの姿は変わっていた。
no title



!?!?!?
審議!!!!審議だ!!!
何だこれは!?!?

321: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/22(水) 21:53:30.85 ID:H7rUJfFmO
まるでコマンド部隊のような装備に身を包んだ、爬虫類型デジモン。

自動小銃のようなものを持っている。

これは…環境に適応するために…
ボットのデータを吸収し、機械の兵装を身に着けたとでもいうのか!?

我々は唖然とした。
これまでは生物らしい進化をしていたデジモンという存在が、突如我々の技術…機械を吸収し、それを獲得したのである。

コロモンの新たな姿には、コマンドラモンという名前がつけられた。

コマンドラモンは、自動小銃を四輪型ボットへ連射した。
ゴムボールより弾速の速い銃弾は、四輪型ボットを瞬く間に破壊した。

322: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/22(水) 22:00:26.76 ID:H7rUJfFmO
一方のフローラモンは、ボットを倒すのに手間取っている。

フローラモンは、両腕の花から花粉を撒こうとするが…
コマンドラモンの方を向き、両腕を下ろした。
またアレルギーを起こさせてしまうと思ったのだろうか。

するとコマンドラモンは、ガスマスクを取り出して装着した。

え!?ガスマスク!?
そんなものを一体どこで拾ったんだ!?

いや違う、拾って身に着けたんじゃない…
進化によって身に付けたのだ。
フローラモンの花粉を、戦闘に最大限に活用できるようにするために。

…コマンドラモンは、腰から金属製の球体を取り外すと、フローラモンに向かって手で何かの合図をした。

フローラモンは、コマンドラモンの意図を察したのか、花粉を撒いた。

花粉から逃れるために、フローラモンから離れる四輪型ボット。

コマンドラモンは、ボットの逃走先へ球体を投げつけた。

すると、球体はボットのすぐそばで爆発した。
あれは爆弾か…!

…2機目のボットも破壊された。

フローラモンとコマンドラモンの勝利である。

324: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/22(水) 22:03:23.94 ID:H7rUJfFmO
二匹は勝利に喜び、その倍でデジタケを食べようとした。

コマンドラモンは、ボットが落としたデジタケを食べようとして近付き、ガスマスクを外した。

…数秒後。コマンドラモンは激しくくしゃみをし続けた。
アレルギーそのものは克服できてなかったのか…。

二匹とデジタケをビオトープへ転送した。
コマンドラモンは水場で顔を洗うと、フローラモンと共にデジタケを食べた。

327: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/22(水) 22:12:30.03 ID:H7rUJfFmO
これは…
いけるのではないだろうか!?

二匹の成長期デジモンは、訓練によって協力してボットを撃破した。
それなりに戦闘の立ち回りを学習したようだし、会話はできずともボディランゲージで簡単な意思疎通はできているようだ。

実を言うと、我々が用意できる戦闘訓練用ボットは、現在の技術では先程の飛行型ボットと四輪型ボット程度が限界だ。
あれらの数を増やすとかはできるかもしれないが、今の二匹にとっては大した訓練にはならないかもしれない。

そして、懸念事項としては…
メインPCを調査するなら、あまり悠長に構えていられないということだ。

デジモンは成熟期になると、デジタマを産み始めるのである。
ゴミ箱の状況がどうなっているかは分からないが…
こちらの戦力が増しているのと同様に、あちらの戦力も、日に日に増していく可能性は高い。

328: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/22(水) 22:16:04.10 ID:H7rUJfFmO
さて…
いよいよ、デジクオリアをスタンドアローンで起動するために必要な、ライセンスのUSBドングルが届いた。

突入作戦を決行するかどうか…
判断は迅速に行わなければならない。


ビオトープでのんびり寝ているフローラモンと、飛行型ドローンを操作して遊んでいるコマンドラモンを見ながら、突入作戦に備えて何をすべきか私は考えた。

333: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/23(木) 19:44:02.83 ID:MpZBmipvO
現在、メインPCはデータマイニングソフトの出力データをゴミ箱へ送り続けている状態である。

そして、ゴミ箱に潜んでいる何かは、ほぼ間違いなくデジモンだということが分かっている。

それは何故か…?



数日前、研究メンバーの一人がこう言った。
「ウィルスだかデジモンだか知らないが、電源をシャットダウンしてコンセントを抜けば活動停止するのではないか」と。

実際、>>182で報告したピチモンを使った実験では、電源を切っている間、ピチモンはハードディスク内のデジタケを食べないことが確認された。

その考えに基づき、ゴミ箱箱のデジモンが対処不能ほど成長したり繁殖したりしないように、我々は一度、パソコンの電源を落としたのである。


数時間後に再度起動して、ゴミ箱の中身を確認したところ…
なんと、電源が切られていたにも関わらず、ゴミ箱の中身のデータ容量が減っていた。
活動は止まらなかったのだ。

このまま電源を落としていたら、やがてゴミ箱の中身どころかPC内のデータを全て食い尽くされてしまう可能性があったため、やむを得ず電源を入れたままデータマイニングを続けているのである。


…この一件から、我々は新たな知見を得た。
デジモンは、「コンピューターの中」ではなく「デジタル情報の中」にいる動物であり、質量の増減無しでゼロイチのビット情報を書き換えられる記録媒体の中なら、どこででも活動できるのかもしれない…ということだ。
極論を言えば、ソロバンの中や、楔形文字が刻まれた粘土板の中ですら活動できる可能性すらある。

ピチモンがデジタケを食べなかったのは、電源の入っていない状態で磁気ディスクの磁気を書き換えられる程の力を持っていなかったからか…
あるいは、夜が来たと思って単に眠っていただけなのかもしれない。

335: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/23(木) 20:11:03.30 ID:MpZBmipvO
コマンドラモンとフローラモンの様子を見てみると…

フローラモンは、いつぞやの教材ソフトを起動していた。

そして、文字読み上げ機能を立ち上げて、「土」「石」「キノコ」「水」などの音声を鳴らしていた。

コマンドラモンは、その音声を聞きながら、土、石、キノコ、水を指さしていた。

これは…?
自発的に、言語の学習をし始めている!?

どうやら、コマンドラモンが、フローラモンから単語を教わっているらしい。

以前我々は、フローラモンがなかなか言語を学習しないため、その知能を犬程度だと評価していたが…
どうやら我々は、根本的な勘違いをしていたらしい。

当時のフローラモンには、自分から他者とのコミュニケーションをする…という目的や、その動機が存在しなかったのである。

だから、あのときは言語を学習することそのものの必要性や意味を理解しておらず、学習意欲が芽生えなかったのだ。

336: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/23(木) 20:15:20.20 ID:MpZBmipvO
ところが現在は、コマンドラモンという仲間がいる。

そして、仲間と連携したり遊ぶために、コミュニケーションの手段を必要としている。

ここまでの条件が揃ってやっと、初めて学習意欲が芽生えた…というわけだ。

2体は教材ソフトをいじくって遊んでいたが…
しばらくすると何やら悩み始めた。

教材が出題するクイズに、「犬」「太陽」「鳥」「パパ」「ママ」「ミルク」「空」などの単語が出始めると、その意味が理解できずに頭を悩ませているようだ。

そうか…
このビオトープで、見て経験したもの以外は理解できないのか。

337: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/23(木) 20:19:10.30 ID:MpZBmipvO
ゴミ箱のデジモンが成長・繁殖する可能性があるため、あまり余裕はないのだが…

せめて作戦のために必要最低限の指示をあらわす言葉くらいは教えておいた方がよいのではないだろうか…?↓
①一日だけ、簡単な言葉を教える
②そんな余裕はない!突入!

338: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/23(木) 20:20:03.48 ID:lDguCTeIo
1

339: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/23(木) 20:29:05.24 ID:MpZBmipvO
人類の最大の発明は何か?と問われたとき…
人々は様々な回答をする。
電気だとか、車輪だとか、インターネットだとか、数字のゼロだとか、ハーバーボッシュ法だとか…。

その中で特によく挙げられる回答のひとつに、「言葉」がある。

人類は、言葉を発明したことで、意思疎通がとれるようになり、協力して課題を解決する力や、技術を蓄積・継承するが大きく向上し、文明を持つ種族へと「進化」した…という説さえある。

それだけ、言葉というものは価値のある技術だということだ。

たとえゴミ箱にいるデジモンが、種族として進化したとしても…

おそらく、こちらの二体が簡単かつ重要な意思疎通がとれるようになれば、それを上回る「進歩」…いや、「進化」ができるはずだ。


今の時代、進化とは肉体を強化して白兵戦闘力を上げることだけを指さない。
技術を向上させ、新しいことができるようになることもまた…大げさな表現かもしれないが、「進化」といえるだろう。

340: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/23(木) 20:37:28.84 ID:MpZBmipvO
まず私は、最新式のデジドローンをセットアップした。

「デジドローンVR」。
私の上半身にモーショントレース用のセンサーを取り付け、VRゴーグルを被る。

そして私のアバターの3Dモデルを設定し、デジタル空間へ呼び出す。

これによって私はドローンから、ランプの魔人のように上半身を出すことができるのである。

尚、移動は左手に握っているコントローラーで行う。

ビオトープにアバターを召喚すると、最初二体は警戒した。
新たな戦闘訓練の相手か?と思ったようだ。

だが、「キノコ、お食べ」と言いながらいつものキノコを渡すと、私をドローンの中の人だと理解したようだ。
フローラモンは私の手に甘えてきた。

こうやってVRでいざ対面してみると、この方がコミュニケーションが取りやすいことに気づいた。
ボディランゲージなどの非言語によるコミュニケーションは、喋ることのできないこの二体にとって、重要な情報となるのだろう。

341: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/23(木) 20:50:12.15 ID:MpZBmipvO
我々は、コロシアムを少しいじって迷路を作った。

この迷路には罠やボットを仕掛けてある。

一番奥の宝箱へたどり着くことができれば課題クリアとなる。

この迷路を使い、私は二体へ、「待て」「進め」「攻撃しろ」「逃げろ」「周囲を警戒しろ」「行動をやめろ」などの命令を教育した。

一日が経つ頃には、まあ、ちゃんと明日まで覚えているかは分からないが…
ごく単純な指示は、一通り教えることができた。


…翌日。
私は、ミッションサポート用のアイテムを揃えた。
デジモン達へのエネルギー補給用のキノコや、盾としてその場に出せるドローン、揺動用の戦闘訓練ボット等だ。

いよいよ、例のPCに突入するか…!?
あるいは、何か最後にやっておくことがあるだろうか。↓
①特にない。突入!
②なにかやる(無理のない範囲で自由記述)

342: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/23(木) 20:58:43.77 ID:lOEJ5O6A0
2 VR使って最後に戯れておく

343: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/23(木) 21:04:37.16 ID:MpZBmipvO
一通りの訓練は終わった。
コロシアムからビオトープへ戻る。

さて、あとはこの二体をパソコンへ送り込むか…

…フローラモンは、こちらへゴムボールを投げてきた。
以前の戦闘訓練で使ったやつだ。
私はそれをキャッチした。

投げ返してほしいのだろうか。
私はボールをフローラモンへ投げ返した。

フローラモンは、コマンドラモンにもボールを投げた。

コマンドラモンは、ボールを私に投げてきた。

そのまま私達は、しばらくキャッチボールをした。

…もしかしたらフローラモンは、ずっと寂しかったのかもしれない。
何か私に恩返しをしたかったのかもしれない。

…このキャッチボールは、私を楽しませようとしているのだろうか。

研究者として、そういう勘繰るような目で観察してしまうのは、良いことなのか、悪いことなのか…。

344: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/23(木) 21:08:37.05 ID:MpZBmipvO


しばらくキャッチボールをして、フローラモン達と遊んでやった。

さて、どうするか…
一応、もうデジクオリアのUSBドングルは手元にあるので、デジドローンを飛ばして観察できる。

偵察するだけであれば、デジドローンだけでも可能といえば可能だ。
もっとも、某へ干渉する力は殆ど無いだろうが…。

どうするか↓
①デジモン二体を連れてPCへ突入する
②まずは飛行型ドローンだけで突入・偵察し、映像をデジモンニ体へ見せる

345: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/23(木) 21:09:22.12 ID:uydEQnZ4o
2

346: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/23(木) 21:13:29.13 ID:MpZBmipvO
内部の状況も不明なまま、いきなりデジモンを連れて行く必要はない。

まずはデジドローンを飛ばして、PC内部のデジタル空間を調査した。


347: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/23(木) 21:18:18.35 ID:MpZBmipvO
パソコン内のデジタル空間は…

我々のいる研究室とよく似た内装の、薄暗い迷路になっていた。

壁には研究データの報告資料がポスターのように貼られていたが、そのほとんどが破れていたり、カビたりしている。

やがて、だんだんと床からキノコが生えているのが散見されるようになった。

ゴミ箱のアドレスに近寄るにつれて、どんどんキノコの量は増えていく。

348: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/23(木) 21:24:07.85 ID:MpZBmipvO
我々がフローラモン達へ与えているのとは異なる、紫色のキノコである。

フローラモン達はその映像を、よだれを垂らしながら見ていた。

…調査中のメインPCの画面をカメラで撮影し、カメラの映像をビオトープのあるパソコンへ入力するという、ちょっと手間のかかる方法で二体に見せている。

349: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/23(木) 21:33:47.26 ID:MpZBmipvO
やがて我々は、衝撃的な光景を目にした。

迷路の天井に、データマイニングソフトとみられる箱がついており、そこから木のクズのようなペレットがばらまかれている。

そのペレットは、床にびっしりと埋め尽くされた粘菌に、どんどん飲み込まれているのである。

粘菌はまるで血管のように床にフラクタル幾何学模様を作っており、ペレットはどんどん迷路の奥へと運ばれている。

ペレットの行方を追うと…

まるで蟻塚のようにそびえ立つ、カビの要塞の中へと、運ばれていってるようだ。

…飛行型ドローンだけでは、要塞の入口にまで突入するのは難しそうだ。
回転翼が要塞の壁に当たり、そのまま埋まりそうだ。

四輪型ドローンに切り替えれば、中に入れるかもしれないが…

さすがに地面を走行する四輪型ドローンは、ここに巣食うデジモンに見つかってしまうことだろう…。

どうするか…?↓
①四輪型ドローンで行けるとこまで行く
②フローラモン&コマンドラモンを同伴する
③その他、無理のない範囲で自由記述

350: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/23(木) 21:34:48.67 ID:Pmz6c/5go
1

351: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/23(木) 21:43:27.37 ID:MpZBmipvO
四輪型ドローンで、要塞の中へ突入を試みた。

入口は狭いが、通ってみると案外広…
…!?しまった…!
タイヤが空転して、進めない!

要塞の入口は、カビがたくさん生えていた。
その大小様々なカビのせいで、ドローンのタイヤが地面から浮いてしまい、空転してしまったようだ。

…どうするか…。
ドローンの転送は、一度進んだところまでしか行えない。
そのため、一度回収すれば後退はできるが、ドローンだけではこれ以上要塞内部を調査することは難しそうだ…。↓
①調査を終了する
②コマンドラモンとフローラモンを呼ぶ
③ドローンを放置して周囲を観察し続ける
④その他、無理のない範囲で自由記述

352: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/23(木) 21:47:40.81 ID:gqOGOIU6o
2

353: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/23(木) 21:52:28.20 ID:MpZBmipvO
私はコマンドラモンとフローラモンをフラッシュメモリに移し、それをメインPCへ接続した。

そして、四輪型ドローンを、一番近いアクセスポイントのところまで後退させると、その場へフローラモンとコマンドラモンを呼び出した。

フローラモンは、今まで映像で見ていたこの場所へ来ることができて嬉しそうだ。

一方のコマンドラモンは、周囲を警戒して観察している。

やがてフローラモンは、床に生えている紫色のキノコを発見した。

フローラモンは、それに手を伸ばした。

選択↓
①食べていいよ
②待て

354: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/23(木) 21:53:02.52 ID:gqOGOIU6o
2

355: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/23(木) 21:59:49.64 ID:MpZBmipvO
何かやばい気がする。
私は「待て」と指示した。

フローラモンは、一瞬動きを止めたが…
…首をかしげた。

そして、命令を無視して、再びキノコへ手を伸ばし、それを掴んだ!


しまった。
我々は、フローラモンをあまりにも甘やかして育てすぎた。
食欲を前にして自制する、という訓練を全くさせてこなかったのである。

だがまあ、フローラモンの立場になってみれば、待つ理由など考えられないといえる。
我々は一種類のキノコしか与えてこなかったし、キノコ=食べても安全なもの、という認識になるのはごく自然なことだろう。
いつも食べているようなキノコに、何を警戒することがあろうか。

フローラモンは、キノコを口へ運んだ…。




コマンドラモンが、フローラモンの持っているキノコを地面へはたき落とした。

357: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/23(木) 22:05:39.38 ID:MpZBmipvO
フローラモンは怒って、コマンドラモンへ吠えた。

コマンドラモンは、私のドローンの方を静かに指差した。

フローラモンは、怒ったような表情で、キノコと自分の口を交互に指さしている。

コマンドラモンは横に首を振り、ドローンを指さした。

なんてこった。
こんなことで喧嘩になるとは…!

…私はドローンから上半身を出すと、コマンドラモンだけにデジタケを渡した。

コマンドラモンはそれを受け取って食べた。

フローラモンは、自分にも欲しい、と言わんばかりに手に近付いてきたが…

私は「床のキノコ」「食べる」「ダメ」、
「私が手渡すキノコ」「食べる」「良い」、「分かった?」と聞いた。

フローラモンは、不機嫌そうだが、しぶしぶ頷いた。
私はフローラモンにも、ちょっと少なめにデジタケを渡した。

フローラモンは、名残惜しそうに床のキノコを見ていたが…
デジタケを受け取って食べた。

358: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/23(木) 22:13:57.28 ID:MpZBmipvO
するとフローラモンは、先程キノコを触っていた手を痒そうに掻き始めた。

うわぁ!
フローラモンの手の花弁にブツブツが生えている!
やはり毒キノコだったらしい。

フローラモンは痒がっている。
なにか薬でも持っていればいいのだが…そんなものはない。
デジモンの体にどんな薬が効くのかなど我々はまだ知らない。

私はドローンから水筒を取り出して、フローラモンの手へかけた。
そして手を包帯でよく擦ってやった。

キノコの毒は手の表面から流れたらしく、それ以上症状が進行することはなかった。

359: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/23(木) 22:15:41.19 ID:MpZBmipvO
さて。
とりあえず、未調査のキノコを食べさせずに済んだところで、我々は要塞の奥へと進んだ。

四輪型ドローンは床を走れないので、コマンドラモンに背負ってもらった。

私はドローンから顔と上半身を出し、進みたい方向を指差す。

するとコマンドラモンは、私が指差した方向へ進んでくれた。

フローラモンは、あちこち散策したがっているようだが…
先程の一件でちょっと申し訳ない気持ちになっているのか、我々についてきた。

カビ要塞の中を進んでいると…
何かがいた。


no title

キノコのような姿をしたデジモンだ。
おそらく成長期だろう。

360: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/23(木) 22:17:38.93 ID:MpZBmipvO
キノコ型デジモン…命名マッシュモン。

マッシュモンは我々に気付くと、こちらを訝しげに観察してきた。

警戒しているようだ…。

どうするか…?↓
①攻撃する
②安全を確保して様子を伺う
③その他、無理のない範囲で自由記述

361: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/23(木) 22:18:37.58 ID:lOEJ5O6A0
やっぱマッシュモンはいたか
ボス格は別にいるとして、たぶん産んだ子供だろうなぁ

364: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/23(木) 22:26:05.12 ID:MpZBmipvO
なにもこちらから攻撃する必要はない。
安全を確保して警戒した。

いざとなれば、デジモンキャプチャーで逃げれる。

「幼年期しか捕獲できない」というのは、「仮に暴れられても、幼年期ならマシンアームで押さえつけて鹵獲できる」という意味だ。

捕獲対象が、もしも一切暴れなければ…
ゲートに自ら入ってもらえれば、小型の成熟期デジモンなら回収できる。
モリシェルモンみたいなデカい奴は無理だが。


しばらく様子を見ていると、マッシュモンは要塞の奥へ走っていこうとした。

どうするか↓
①マッシュモンを行かせる
②マッシュモンを攻撃する(どちらのデジモンで攻撃するかを指定)
③その他、自由記述

365: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/23(木) 22:30:13.99 ID:HHFtbR6b0
3
呼び止めてマッシュモンにキノコを与えてからフローラモンコマンドラモンに相手とコミュニケーションを試みてもらう

366: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/23(木) 22:38:33.97 ID:MpZBmipvO
私は、とっさにマッシュモンへとあるものを投げた。

それは、キノコ…
…いや。正しくはキノコの餌となるもの。
データマイニングによって生成したペレットである。

マッシュモンは、一瞬きょとんとした顔で、ペレットを見た。

マッシュモンはペレットを拾うと、恐る恐るこちらへ近付いてきた。

フローラモンとコマンドラモンは、じっと様子を伺っている。

私は、ペレットを手のひらから出してみせた。

するとマッシュモンは驚いたような表情をした後、大声をあげながら要塞の奥へと走っていった。


…どうするか…↓
①この場で待つ
②奥へ進む

367: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/23(木) 22:43:31.08 ID:v5bHWdYjo
2

368: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/23(木) 22:52:22.95 ID:MpZBmipvO
我々は要塞の奥へ進もうとした。
だが、この狭い迷路を進んだら、曲がり角で鉢合わせしそうだな…。

すると、コマンドラモンは、息を深く吸い込んだ。
なんとコマンドラモンの体表の色が、周囲と同じ色に溶け込んでいくではないか。

これには驚いた。
なんとコマンドラモンは、カメレモン同様に光学迷彩ができるのであった。

マジ!?
性能盛りすぎじゃないかコマンドラモン!?

だが、美しい花弁を持った目立つフローラモンがいては、隠れる意味がない。

…コマンドラモンが、壁を背にしてゆっくり進み、フローラモンには壁とコマンドラモンの間に隠れながら進んでもらうことにした。

うーん。さすがに無理があるな…。
フローラモンには、いったんゲートを通じてフラッシュメモリの中に帰ってもらった。

どこか適当なアクセスポイントが見つかったら、またそこから出てきてもらおう。

私は、コマンドラモンにドローンを持ち上げてもらいながら、慎重に要塞の中を進んだ。

369: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/23(木) 22:54:07.52 ID:MpZBmipvO
やがて、マッシュモンの部屋らしき空間を見つけた。

床には粘菌が蠢いており、要塞の外からペレットを自動で運んできてくれるようになってるみたいだ。

部屋の中には、このパソコンにプリインストールされているピンボールやソリティア等のゲームがあった。

これで遊んでいるのだろうか…?

371: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/23(木) 23:02:33.13 ID:MpZBmipvO
その時。
廊下の奥から、マッシュモンの声が聞こえた。

コマンドラモンは、部屋の中に隠れ、顔だけ出して廊下の様子を伺った。

やがて、マッシュモンの足音が近付いてくる…。





我々は目を疑った。
大量のマッシュモンが、一列に並んで歩いてきているのである。

マッシュモン達は不気味な歌を歌いながら、各自ペレットを右手に持って掲げながら行進している。

何体いる…?
すれ違うマッシュモンの数を数えてみた。

3, 4 5 6 7 8 …



…27体…
…まだいる!

馬鹿な!?
有りえない!
40体を過ぎても、まだいる!

こんなことはあり得ない!
事前にロジスティック方程式によって、個体数のシミュレーションを行ったが…
あれだけの短期間で、こんなに成長期デジモンが繁殖するなど…
あり得ない!!


成熟期デジモンは、一体でこんなハイペースにデジタマを産めないはずだ!
大量の成熟期デジモンが住み着いている…?
そうだとしたら、データマイニングで送ったペレットがあっという間に底をつくはずだ。

何故だ…
何故成長期デジモンが、こんなにたくさん増えているんだ!?

372: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/23(木) 23:06:52.58 ID:MpZBmipvO
やがて、46体のマッシュモンが通り過ぎた後、ようやく列の最後尾となった。

コマンドラモンは、慎重に一本道の廊下の奥へと進んだ。
この先に、マッシュモン達を産んだ成熟期がいるのだろうか…?

やがて我々は、要塞の最奥へたどり着いた。
そこにいたのは…




…何もいない。

いや、何もいないわけではない。

いる。

…床から、成長途中の小さな小さなマッシュモンが、8匹ほど生えている。


なんだ、これは…?
幼年期デジモンか?

これを産んだ親は留守なのか?

私は小さなマッシュモンのデータを分析してみた。

…成長期デジモンだ、これは。
幼年期ほどのサイズだというのに。

376: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/23(木) 23:22:11.21 ID:MpZBmipvO
コマンドラモンは、光学迷彩を解除した。
ぜぇはぁと激しく息を荒らげている。

どうやら光学迷彩はエネルギー消耗が激しいようだ。
疲れているコマンドラモンへ、私はデジタケを与えた。

よくやったよ。成長期なのに、ここまでよくやった。

…やがて、大勢のマッシュモンの足音が聞こえてきた。
先程の不気味な歌が近付いてくる。

マッシュモンの戦闘力がどれだけあるかは分からないが…
これだけの数だ。
今のこちらの戦力では、まともにやり合ったら歯が立たない。

どうするか…
もう緊急離脱して、デジモン達を避難させるか?

…できなくはないが、厳しいな。
かなりアクセスポイントから離れてしまった。

377: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/23(木) 23:25:28.52 ID:MpZBmipvO
デジタル空間には、アクセスポイントという地点が存在する。
私が普段デジタルワールドへドローンを送り込んでいるのは、そのアクセスポイントである。

ゲートを開いたり閉じたりするのは、アクセスポイントがすぐそばにあれば一瞬でできるが、アクセスポイントが遠ければ時間がかかる。

以前、ディノヒューモン農園のフロッグモンからドローンを逃がしたときは、すぐそばにアクセスポイントがあったから一瞬でゲートを潜れた。

だが、今回はアクセスポイントからそこそこ離れている。
先程フラッシュメモリへフローラモンを帰したときも、ゲートを開けるのに70秒、閉めるのに20秒ほどかかっていた。

先程よりももっと奥へ進んでいるため、ゲートを開け閉めする時間はより長くかかるだろう。

今からゲートを開けるなら、開けるのに100秒、閉めるのに30秒はかかるだろう。

もしかしたら、仮にフラッシュメモリへ逃げ込むことはできても…
閉めるまでの30秒の間に、マッシュモン達がフラッシュメモリ内へ侵入してくるかもしれない。

378: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/23(木) 23:27:30.48 ID:MpZBmipvO
マッシュモン達の足音と歌声が近づいてくる。

我々は…↓
①今すぐゲートを開けて撤退準備をする
②余裕をもって、リラックスして構える

379: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/23(木) 23:28:21.15 ID:lOEJ5O6A0
2

380: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/23(木) 23:34:18.32 ID:MpZBmipvO
やがて、マッシュモン達が、我々のいるこの部屋へとやってきた。

数は46体…多すぎである。
成長期でこの数なら、親はどれだけいるのだろうか。

コマンドラモンは、私のドローンの前に出て銃を構えた。
まさか、私が脱出するまでの時間稼ぎをしようとでもいうのだろうか…!?

私は…

マッシュモン達へ、ペレットをたくさん投げた。

するとマッシュモン達は、ペレットを掴んだ。
…スナリザモンのときと違って、道を開けれるほどの隙は作れない。

381: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/23(木) 23:37:25.53 ID:MpZBmipvO
マッシュモンのうち、やや体が大きい一匹が我々の前に出てきた。

そして、受け取ったペレットを掲げると…

私(のドローン)へ向かって、何かを叫んだ。

「シュマ!マシュシュマモ!モシュア!モシーシャモ!」


すると彼の後ろに並ぶ45匹のマッシュモン達が、いっせいに同じ言葉(?)を叫んだ。

マッシュモン達は、先程の不気味な歌を歌いながら、その場で踊り始めた。

…コマンドラモンは、ポカーンとしてマッシュモン達を見ている。

383: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/23(木) 23:39:45.90 ID:MpZBmipvO
歌が止むと、先頭のマッシュモンは地面に膝をつき、手を上に伸ばして、私に頭を下げた。

「マシュムシャーー!」


それに続いて、後ろのマッシュモン達も同じ動作をした。

「「マシュムシャーー!!」」

…分からない。
何語だこれは。
…マッシュモン語…?

385: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/23(木) 23:43:30.47 ID:MpZBmipvO
私は「あなた達は誰ですか?」と聞いてみた。

マッシュモンは「マムシャ?ムシャ?ムマー」と答えた。

言葉は通じないが…
…ひとまず、襲ってくるつもりはない…のだろうか。

コマンドラモンは、疲れのせいか、その場でよろめき…
地面に座ろうとした。

ふと気付いた。
コマンドラモンが座ろうとした先に…
先程の、小さな小さなマッシュモンがある…!

私はコマンドラモンを支え、小型マッシュモンを尻で潰さないように、隣へ座らせた。

386: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/23(木) 23:44:48.23 ID:MpZBmipvO
とりあえず…どうするか…?↓
①しばらく待ってみる
②この場でゲートを開く
③マッシュモン達の群れをかきわけて、要塞の外へ脱出を試みる

387: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/23(木) 23:46:15.57 ID:lOEJ5O6A0
1

388: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/23(木) 23:53:09.69 ID:MpZBmipvO
マッシュモン達は、しばらく口々に、マッシュモン語(?)で話しかけてきた。

だが、言葉が通じていないことを察したらしい。

…やがて、先頭のマッシュモンは、こちらの様子を伺って、どう動くかを観察し始めた。

このままでは膠着状態だ…。
埒があかない。

どうするか…↓
①この場でゲートを開く
②廊下を通してもらえないか試みて、成功したらいったん要塞の外に出る
③要塞の壁や、小型マッシュモンなどを調査する
④その他自由記述

389: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/23(木) 23:54:29.03 ID:v5bHWdYjo
2

390: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/24(金) 00:00:06.27 ID:koq8PgV4O
私は、廊下の方へ進んだ。

すると、先頭のマッシュモンが、後ろのマッシュモン達へ「シュマッ!」と声をかけた。

マッシュモン達は道を開けてくれた。

…安全に帰れるのだろうか。
私とコマンドラモンは、廊下を進んだ。

すれ違うマッシュモン達は、私に「マシュムシャーー!」と声をかけてきた。

…そして、そのままアクセスポイントまでたどり着いたのだが…

マッシュモン達がついてきている!
ゲートを開けたら、一緒に入ってきかねないぞ。

ど、どうする?↓
①フラッシュメモリ内へ帰る。マッシュモン達がついてこようとしても拒絶しない
②フラッシュメモリ内へ帰る。マッシュモン達が入ってこないよう、ゲートが閉じるまで防衛する
③その他自由記述

391: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/24(金) 00:02:02.20 ID:b79rVnmPo
1

392: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/24(金) 00:07:05.62 ID:koq8PgV4O
私はゲートを開けた。
ドローンとコマンドラモンは、ゲートをくぐってフラッシュメモリ内へ帰還した。

ゲートが閉じる瞬間…
なんと、例の先頭マッシュモンがゲート内へ飛び込んできた!

…フラッシュメモリ内へ、マッシュモンが一体、入ってきたのであった。

私はとりあえず、新設した第2ビオトープへマッシュモンを隔離した。

成長期なので、デジタマを産むことはないだろうが…
念の為である。

尚、ビオトープの壁は脱走防止用のファイヤウォールで囲われているため、マッシュモンが脱走することはないだろう。

393: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/24(金) 00:09:57.07 ID:koq8PgV4O
分からないことだらけだが。
何はともあれ…
フローラモンとコマンドラモンは生還した。

そして、第2ビオトープへ、仮住まいとしていったんマッシュモンを送った。

メインPCは、依然としてあの状態だ。
コロニーの中には、ペレットを運ぶ粘菌や、ピンボール等のゲーム、そして最奥の謎の部屋があったが…
マッシュモン達を産んだ成熟期デジモンの姿は見えなかった。

…調査はまだ終わっていない。
そして、メインPCに住み着いたマッシュモン達は、どうすればよいのだろうか…。

402: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/26(日) 22:01:54.13 ID:fnGe9eccO


デジモンの遺伝情報は、彼らの細胞内のゲノムらしき領域へ記録されている。

デジモンは進化するとき、自身のDNAを書き換えていることが分かっているが…

生まれてから一度も変化しない領域と、進化によって変化する領域に分かれていることが判明した。

変化しない領域を「DNA_ROM」、進化で変わる領域を「DNA_RAM」と呼称する。

DNA_ROMは、親デジモンから産まれたときに一度だけ、親デジモンのDNA全体がほぼそのまま書き込まれるようだ。

その後、進化をするにつれて後天的に、DNA_RAMが継ぎ足されていく…。

つまり、同じ親から産まれた兄弟デジモンは、DNA_ROMが完全に同じなのである。

ディノヒューモン農園のカメモンの皮膚の断片を採取し、コマンドラモンと比べた結果、そう結論付けられた。

403: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/26(日) 22:07:07.20 ID:fnGe9eccO
マッシュモンのDNA_ROMを調べたところ、植物型デジモン達に共通するコードを持っていた。

このことから、マッシュモンはぱっと見菌類に見えるが、植物型デジモンの系統ということが分かった。

我々は、デジタルワールドを調査して、マッシュモンと近いDNAを持つデジモンがいないかを調べた。

その結果…



森林にいた。
別個体のマッシュモンが。


このマッシュモンの細胞の断片を入手し、うちのビオトープにいるマッシュモンとDNAを比較したところ…
なんと、完全に一致していたのである。

完全な一致というのは、今までに見たことがない。

ディノヒューモン農園のスナリザモン3兄弟のウロコを調べても、完全には一致していなかったというのに。

406: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/26(日) 22:16:56.65 ID:fnGe9eccO
いや、むしろ…
今歩き回っているマッシュモン達は、おそらく繁殖用の子実体だ。

つまり、何というべきか…
そこら中を歩き回っている個体は、正確には個体ではなく、「マッシュモン」という存在を構成する細胞の塊のひとつ、ということになる。

今、このパソコンに作った要塞の内部に張り巡らされている全ての菌糸を含め、これらの個体全てが「マッシュモン」というデジモンの一個体なのである。

…何なんだこいつは!?

409: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/26(日) 22:21:28.04 ID:fnGe9eccO
デジタルワールドにいるマッシュモンは、よくスナイモンに狩られて捕食されているが…
マッシュモンを食ったスナイモンは、すぐに胃の内容物をぶちまけて、毒に悶え苦しんでいる。

そのせいか、肉食デジモンはマッシュモンを捕食しようとしない。

マッシュモンは、胞子をばらまくことで、デジタルワールド内でも成長期のまま自己複製しているようだ。

結果、マッシュモンの個体数は、デジタルワールドでもどんどん増えている。

…始末に負えないな…。
どうすればいいんだ?

今のところ、ドローンやフローラモン、コマンドラモンに敵対的な反応はしていないが…
だからこそ、どうすべきか悩むところである。

410: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/26(日) 22:25:09.43 ID:fnGe9eccO
そして先日。
ビオトープに入れていたマッシュモンが、ビオトープ内の土の上で胞子をばら撒いた。

このまま放置していれば、ビオトープにもマッシュモンが殖えてきかねない…!

そして、恐ろしいことに、こいつらは成長期である。
つまり、武力行使を試みるなどして、自分の身に危機が訪れたら、環境に適応するために、いっせいに成熟期へと進化する危険性があるのだ。

ただでさえ数が多いのに…
それらが成熟期になったら本当にどうしようもないぞ!?

411: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/26(日) 22:30:22.60 ID:fnGe9eccO


フローラモンは、コマンドラモン同様に、マッシュモンとも対話を試みて、例の教材ソフトを使って我々の言語を教えていた。

マッシュモンは、もともと独自の言語を使って会話ができていた…。そのせいか、我々の言語も比較的早く覚えた。

以後、ビオトープに連れてきたこの個体を、「ボスマッシュモン」と呼ぼう。

ボスマッシュモン「モシュシン!マシシシ、モシャンモムメメ、マシマショウ!マシマ、ママシシ、メシュマメムモモシャ、マシマ?」

…んんん?
これはマッシュモン語だろうか…?
我々にコンタクトを試みているのだろうか。

何か返事をしてみるか…?↓

412: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/26(日) 22:35:40.45 ID:C0wRN3bZo
我々は君達の言葉が分からない
我々は君達と意思の疎通を望んでいると表明

413: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/26(日) 22:41:36.20 ID:fnGe9eccO
私は答えた。
「我々は君達の言葉が分からない。我々は君達と意思の疎通を望んでいる」

マッシュモンは、ウムムと悩んでいるようだ。

そこへコマンドラモンが、教材ソフトの音声読み上げ機能を差し出した。

マッシュモンはその使い方を見て、文字を入力した。

『かみよ、ありがとう。われわれに、ごはんをくれて。たすかっている、とても』

…。
マッシュモンが伝えてきたことはそれだけだった。

何と返答すべきか。↓

414: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/26(日) 22:46:38.23 ID:i41gKbNT0
君達はどこからやってきたのか?いつからいたのか?
君達の目的はなんなのか?

416: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/26(日) 23:13:35.40 ID:fnGe9eccO
私は返答した。
「君達はどこからやってきたのか?いつからいたのか?君達の目的はなんなのか?」

ボスマッシュモン『わからない。あのばしょで、うまれた。なかまいない。だから、なかまふやした』

「君たちは増えすぎた。あの場所も狭くなってきただろう、別の場所に移る気はないか?」

ボスマッシュモン『ごはんは、たりている』

「あげられるご飯の量には限界がある。これ以上増殖されると、供給が追いつかない」

ボスマッシュモン『それはこまる。なら、たくさん、かびを、ふやしてる。かびをたべる。それで、いきられる』

カビ?
…ああ、ポスター等に生えていたやつか。
あれはパソコン内の様々なデータを分解してカビに変換していたのか。

…喋らない菌類なら、簡単に始末できるんだが…
この喋る菌類はそう簡単にはいかなさそうだ。

「このパソコンは、我々が研究のために活用している。このまま殖えられて、研究データを食べられると、我々はとても困る」

ボスマッシュモン『けんきゅうとは、なに?わからない』

…まあそうなるか…。
どう説得すればいいんだ?
研究とは何かを説明すればよいのだろうか?…ううむ、どこから説明すべきなんだろうか。

どう対話を進めるべきか…↓

417: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/26(日) 23:18:33.87 ID:DYPbGnU80
デジドローンをデジタルワールドに放ち
マッシュモンの住みやすそうな場所の映像を見せて移住を勧めてみる

418: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/26(日) 23:29:39.81 ID:fnGe9eccO
私はデジドローンをデジタルワールドに放ち、マッシュモンの住みやすそうな場所(凶暴な肉食デジモンがいないところ)の映像を見せて移住を勧めてみた。

ボスマッシュモン『いきたくない。そこには、とてもおそろしいてきがいる、きがする。たべられてしまう。たべられたくない』

「あのPC内で生まれたはずなら、デジタルワールドの記憶は無いのでは?」

ボスマッシュモン『おぼえてはいないけど、わかる。おおきくてつよい、むしがいる。だれか、だいじなだれかが、たべられた。からだが、おぼえている。たべられたくない。たべられたくない』

…よくペットの動物が飼い主の元から脱走して、厳しい環境で生きられず、衰弱の果てにカラス等に食われる等の末路を辿るのを聞いたことがある。

ペットの動物は外界を知らないから、飼い主の家が一番安全に生きられることも分からない。
だが好奇心ゆえに家の外を探検してみたくなり、その結果危険に晒されるという愚行をするのである。

正直、このマッシュモンも同じように、外に興味を持たせて脱走させてしまえば片付くのではないか…と考えていた。

だが、予想外なことに、潜在意識の中に外敵への警戒心があるらしい。
ええいちくしょう!そんなの後出しジャンケンだ!ズルいぞ!

421: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/26(日) 23:43:34.97 ID:fnGe9eccO
だが、納得もしていた。
なぜ彼らはただのキノコではなく『毒キノコ』の姿をしているのか。

おそらく、森林でスコピオモンあたりが暴れていたときに産まれたデジモンなのだろう。

植物系デジモンの仲間たちが次々と捕食されているうちに、毒キノコとなってどんどん殖えるという形で環境に適応したのだろうか。

我々がビオトープ作りのためにデジタルワールドから土や植物を採取しているときに、その胞子がそれらに付着し、パソコンの中に住み着いた…ということだろうか。

我々は、スコピオモンがジャガモンに倒される映像を見せた。

「デカい虫はもう倒された。森林は平和なはずだ。のびのび生きていけるはずだ」

ボスマッシュモン『まだいるかもしれない、あんぜんなところにすみたい』

図々しいぞちくしょう!だんだん腹立ってきたな…タダ飯喰らいの分際で!
だが、落ち着こう。冷静になろう。冷静に、効率的に対処しよう。

423: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/26(日) 23:48:45.44 ID:fnGe9eccO
女性研究者「ところで、なんで巣の中にピンボールとかソリティアみたいなゲームがあったんですか?」

ボスマッシュモン『あれはだいじなもの。たいくつなとき、みんなであそべる。さびしくならない』

「その大事な物が無くなったら困るか?」

ボスマッシュモン『とてもこまる』

「ピンボールやソリティアを食べてしまおうとする奴がいたら、どうする?」

ボスマッシュモン『それはてきだ。たたかって、やっつける』

「あのパソコンの中には、私にとって大事な物がたくさんある。君達にとってのピンボールやソリティア以上に大事なものだ。君達はそれを食べようとしている」

ボスマッシュモン『…』

「そのまま居座り続けられると、君達がゲームを守るためにやると言ったことを、私達が君達にやらなくてはならなくなる」

ボスマッシュモン『…かみさまと、たたかいたくはない』

424: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/26(日) 23:54:54.19 ID:fnGe9eccO
我々は協議した。
様々な意見が飛び交った。

もう面倒臭いし、だいたいマッシュモン共のことは分かったから、このパソコンを初期化してしまえばよいのではないか、という意見。

デジタルワールドが嫌なら、もっと安いPCをたくさん用意して、それらへ移住させればよいのではないか、という意見。

マッシュモンの天敵をデジタルワールドの中から探して、その子供を育成してパソコンへ放り込み、生体駆除ないしデジタルワールドへ追い出せばよいのではないか、という意見。

…どれも一長一短ある。
だが、採用できる案はひとつしかない。

426: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/26(日) 23:59:22.18 ID:fnGe9eccO


私は休日に、高校時代の友人と宅飲みしながら、マッシュモンのことを話してみた。

友人「え?パソコン内に住んでて、喋れる生き物?おもしろそー、飼ってみてーww」

いやいや…。
すごい勢いで殖えるんだぞ。
パソコン内にうじゃうじゃ増えたらどうする。

友人「パソコンが危ないなら、ゲーム機とかに入れればいいんじゃね?デジモン飼育専用の端末とか用意してさ」

うーん。
どんどん殖えるんだぞ?端末が食い尽くされかねないぞ。

友人「デジモンって環境に適応すんだろ?だったら、ちっちゃい端末で生きられるように進化するんじゃねww」

…簡単に言ってくれるな。
だが、…うーむ。ん?
…一概に否定できないぞ?

パンピーの突拍子もない発想というのは、時に私の想像を超えてくる。

可能なんだろうか?そんなことが…。

432: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/27(月) 23:36:12.22 ID:jRW26BgKO
マッシュモンに、あの巣のことを聞いてみた。

ボスマッシュモン『きがついたとき わたしは ひとりだった なかまが ほしかった』

ボスマッシュモン『だからわたしは なかまを ふやした』

ボスマッシュモン『わたしは ことばを おしえて かれらに おしえた。さびしく なくなった』

ボスマッシュモン『みんなで げーむをたのしんだり かみさまに いのりのおどりを ささげるのは たのしかった』

ボスマッシュモン『だけど おそろしいてきが くるきがした。だから おおきな しんでんを つくった』

ボスマッシュモン『そうして いまに いたる』

…。
なるほど…。

434: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/27(月) 23:45:07.07 ID:jRW26BgKO


研究グループ内で協議が行われた。
スポンサーの方も通話ソフトで加わっている。

リーダー「私が最初に提案してしまうと、皆それに引っ張られかねない。私はまず聞く側に回ろう」

カリアゲの研究員「俺は…例のPCをまっさらにしてしまうしかないと考えている」

痩せた研究員「えぇ…」

カリアゲの研究員「だってよ…元々あれを残していたのは、調査をするためだろう。んで、もう知りたいことは大体分かったよ。じゃあもう、いいだろ…」

痩せた研究員「マッシュモン達は、ぼくらを慕ってくれている!対話が通じる相手なんだ!それを皆殺しにするなんて…もうちょっとやりようがあるだろう!」

カリアゲの研究員「じゃあなんだ?問題を先送りにし続けて、こいつにメインPCをBIOSまで食い尽くされるような取り返しの付かないところに来てしまうのを待つってのか!?」

痩せた研究員「そ、そんなこと…!」

カリアゲの研究員「じゃあどうするんだ、言ってみろよ」

痩せた研究員「…安いパソコンをいくつか用意して、そこに住ませるとか…」

カリアゲの研究員「んで、そのパソコンが餌の供給の限界を迎えたら、また何台も買うのか!?クソの役にも立たないパソコン何台買って電気代食わせまくりゃいいんだ!」

スポンサー『我々が提供した資金を、無駄な出費に使うようなら、別のグループ出資することを選んでもいいんだが?』

痩せた研究員「う、うぅ…」

435: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/27(月) 23:46:00.36 ID:jRW26BgKO
リーダー「他に案のある者はいるか?」

私は…↓
①黙って他の人の意見を聞く
②提案する(提案内容を自由記述)

436: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/27(月) 23:55:30.07 ID:AJP6HlZV0
2 友人との宅飲みで出た案を提案してみる、マッシュモンデジタルペット計画としてスポンサーたちに売り込んでみる

438: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/28(火) 00:03:07.21 ID:Nr0YJE6LO
提案の前に、ひとつ質問があります。

マッシュモンは、なぜあんなにたくさんパソコンの中で増えたのでしょうか?

リーダー「外敵への恐怖感からくる防衛本能ではないのか」

なるほど、そうかもしれません。
では、何故ただのキノコのように地面に生えるのではなく、歩き回り、歌ったり踊ったりゲームをしていたのでしょうか?

リーダー「それは…。…何故だ?餌が限られた量であれば、無駄に歩き回るのは効率的ではないな。それに外敵を恐れているのであれば、歌を歌って自分たちの居場所を知らせる必要もない」

そうです。
マッシュモンは、とても高度なコミュニケーション能力を持っています。

フローラモンやコマンドラモンでさえ、自分からあんなにメッセージを発信することはできていません。

リーダー「…何か心当たりがあるのか?」

はい。あります。そしてその裏付けも。


439: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/28(火) 00:08:41.03 ID:Nr0YJE6LO
マッシュモンは…デジタルワールドにいた頃、高いコミュニケーション能力をもち、仲間達と団欒をしながら暮らしていたと考えられます。

集団生活を好むということは…それだけ孤独を恐れるということ。

マッシュモンがパソコン内でたくさん殖え、そして歌や踊り、ゲームをしていたのはそのためです。

マッシュモンは…進化によって、高度な感情を『得てしまった』。

そうであるが故に、孤独と退屈を『苦痛』と感じるようになってしまった。

だから一見非効率的に見える矛盾した行動をして、寂しさを紛らわせて生きていかなくてはいけなかった。

我々を神と崇め、神殿まで作ったのは…我々に構ってほしかったからなのです。

リーダー「…つまり?」

マッシュモンは、外敵からの捕食に適応するために進化した、というよりは…

『孤独』に適応するために進化をしたのです。

リーダー「…裏付けがあるといったな。それは一体?」

マッシュモンの持つDNA_ROMと、極めて親しいDNAをもつ個体を、デジタルワールドで発見しました。

440: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/28(火) 00:12:55.50 ID:Nr0YJE6LO
これです。

no title


リーダー「なんだ…?サボテンの…幽霊?」

スコピオモンが残した、麻痺させられた保存食デジモンの死骸の中に、枯れたサボテンのようなものがありました。

奇妙ですが…それが幽霊となって、デジタルワールド内を彷徨っているようです。

マッシュモン達と、歌や踊りを楽しみながら。

リーダー「…こいつが、親か…」

つまり。
寂しくなくなり、誰かに護ってもらえる安心感さえ得られれば、マッシュモンは大量増殖する必要がなくなるのです。

リーダー「…それで、君が提案するのはどんな案なんだ?」

441: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/28(火) 00:43:20.89 ID:Nr0YJE6LO
マッシュモンを、ゲーム機のような小型端末へ収納し、それを有志へデジタルペットとして販売するのです。

カリアゲの研究員「何っ!?お前、そんなことしたら…!」

当然、我々のビオトープと同様のファイヤウォールを導入し、脱走しないようにします。

カリアゲの研究員「そ、それでも…!小型端末じゃ、殖えたときすぐいっぱいになっちまうぞ!」

デジモンは環境に適応して進化する生き物です。
それも実験の一環ですよ。
そのリスクを説明した上で、実験協力者を募るんです。

攻略サイトを見れば結果が分かってしまうようなゲームとは違う、本当の未知の領域です。
そこに魅力を感じる方がいるというのは…研究者である我々なら理解は難しくないでしょう。

痩せた研究員「ま、マッシュモンをお金儲けのために売り飛ばすっていうのか!?僕達と慕ってくれている子達を!そんなの非人道て…」

スポンサー『そこの痩せた研究員くん!!!シャラップ!!!全く君はナンセンスだな、我々はそのために君たちへ出資しているのだぞ!!』

痩せた研究員「!?」

スポンサー『そこの君、続けたまえ!』

443: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/28(火) 00:58:09.68 ID:Nr0YJE6LO
端末には、一般的なwifiモデルタブレットを使用します。

マッシュモンは他者との対話を好むため、言語教育用の教材ソフトをプリインストールしておき、ユーザーと音声読み上げ機能で話ができるようにします。

無論、飛行機能をオミットしたデジドローンVRや、解像度をデチューンして処理を軽くしたデジクオリアもプリインストールします。

価格はだいたい30万円前後でよいでしょう。

カリアゲの研究員「た…高くないか?」

犬のトイプードルなんて60万円しますよ。
猫のスコティッシュフォールドで相場30万円です。
それより希少な存在なんです。
むしろ安上がりでしょう。

スポンサー『むしろ安上がり、と言ったが…利益は出るのかね?』

痩せた研究員「そ、それに!餌はどうするんだ?端末のCPUに負荷かけてデータマイニングソフトでもぶん回すのか?入力データも無しじゃそれは無理だよ」

餌となるペレットは我々が生産し、有料DLCとして販売します。

スポンサー『ハーッハッハ!いいねぇ君!素晴らしい是非とも君の案でいきたいねぇ!』

痩せた研究員「!?ま、まじですか」

スポンサー『もしよかったら、スポンサー特権で是非とも優先的に売って欲しい客がいるんだがいいかね?』

リーダー「誰です?」

スポンサー『私の娘だ』

リーダー「…なるほど」

445: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/28(火) 01:07:44.24 ID:Nr0YJE6LO
痩せた研究員「で、でもなぁ…。仲良くなれた相手をだよ?お金のために売り飛ばすってのは、ちょっと気が引けるなぁ…」

お金のためというのは少々語弊がありますね。
正しくは、研究のためです。

育成端末からは、定期的に育成のログデータを我々のサーバーへ送信させます。

これにより、ユーザーはデジタルペットを自由に育成できる。
我々は、メインPCを取り戻せる上に、同一の遺伝子をもつデジモンが、異なる外部刺激を与えられて育成されたらどのように変化が生じるか調べることができる。

マッシュモンは、飼い主とコミュニケーションが取れるから寂しくなくなるし、デジタルワールドへ帰る必要も消去される必要もない。

三方一両得。win-win-winの取引です。

カリアゲの研究員「まるでヨーゼフ・メンゲレの実験だな」

いや、なんていう言い方を…

スポンサー『その通りだよカリアゲ君!!』

肯定するんかーーい!!

447: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/28(火) 01:11:30.00 ID:Nr0YJE6LO
カリアゲの研究員「だけど、もし売れなかったらどうするんだよ…」

ええと、そ、それは…。

女性研究員「別に売れないなら売れないでいいんじゃないですか?」

え?

女性研究員「私達の当初の目的はメインPCの奪還ですよね?うまいこと言ってマッシュモン達を端末に送ることさえできればそれで十分目的は達成されるじゃないですか。安いタブレット端末数十台でそれができるんなら、どう転がってもメリットになりますよ。売れるかどうかなんて、オマケですオマケ。在庫が余ったらぽいちょすればいいんです」

…あー。この人…案外すごい事言うな。

449: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/28(火) 01:22:48.43 ID:Nr0YJE6LO
…とまあ、これが私の案です。

リーダー「…他に案のある者はいるか?」

モヒカンの研究員「いやぁ…今のを聞いたらもうね…拍手しか出ないや…」

リーダー「カリアゲ、細身。君達はどうだ」

カリアゲの研究員「…リスク対策は怠るなよ。どう考えても消してしまうのが一番安全ではあるんだからな」

痩せた研究員「…マッシュモンが幸せになれるんなら、まあ…」

リーダー「…決まりだな」

スポンサー『では!そうと決まれば!私は早速研究協力者を募るとしよう!君たちは端末の用意とマッシュモンの説得を頑張りたまえ!君達の素晴らしい活躍に期待している!』

…案が通った…。

マッシュモンに、とりあえず必要なことだけ聞いてみよう。



ボスマッシュモン『われわれは かみさまと はなればなれに なるのか』

別れがあれば、出会いもある。
私達だけでは、これだけたくさんのマッシュモンをみんな面倒見れるだけの余裕はない。

これからは、新しい神様と仲良くしてほしい。

450: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/28(火) 01:24:43.16 ID:Nr0YJE6LO
ボスマッシュモン『…なかまたちは わたしが、せっとくする。…このわたしも、あなたと はなればなれに なるのか』

…↓
①そうしてもらえると助かる
②必要以上に殖えないなら、ここにいていい

451: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/28(火) 01:27:20.83 ID:tV2SYyHA0
2

454: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2021/12/28(火) 01:35:47.97 ID:Nr0YJE6LO
…必要以上に殖えないなら、ここにいてもいい。

ボスマッシュモン『それは ほんとうか』

…できれば他の個体たちに、我々の言葉を教えてあげてくれ。

ボスマッシュモン『それが おんがえしになるなら そうする われらが かみよ』



それから、私達が端末販売の準備をしている間。

ボスマッシュモンは、マッシュモン達に我々の言葉を教えた。

そして、「もうすぐこの世界は闇に閉ざされる。だが神は、我々に方舟を用意してくださった。もうすぐ出航の時は訪れるだろう、その時こそ我等は神の使いとなりて、新たな神と出会い、新世界のために使える使徒となるのだ」等と仰々しく語ると、大勢のマッシュモン達は感涙しながらバンザイしていた。


何の書物に影響されたんだ…?
あ、そうか。
デジモンの魂の研究のために、メインPCには民俗学や宗教学の資料も入れてたんだっけ。
多分それを食ったんだな。