1: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/08/08(土) 12:08:21.640 ID:Vyx+N5fy00808
その大きな壁は突然現れた

そして多くのものを分け隔てた

日本もその例外でなく

やがてその壁はこう呼ばれた

「さよならの壁」

2: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/08/08(土) 12:08:39.479 ID:Vyx+N5fy00808
平沢唯は高校に通う普通の学生だ

少し怠惰ではあるが、やる気になればなんでもできる

いわゆる天才型という少女である

当局も彼女を優良市民と認定している

3: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/08/08(土) 12:08:53.592 ID:Vyx+N5fy00808
唯「もー!なんで起こしてくれないのさ!」

憂「なんども起こしたよぉ!」

唯「起きなかったら意味ないじゃん!」

憂「もう!お姉ちゃんは今日アイス抜きだよ!」

唯「それは勘弁して!」

4: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/08/08(土) 12:09:07.473 ID:Vyx+N5fy00808
「さよならの壁」は、彼女たちにはなんの関係もないただの風景だ

壁は何十年も前に突然現れたこと以外、なにも知らない

何度か壁を越える試みがあったが、その全てが失敗したと聞く

壁の向こう側は、異世界だ

5: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/08/08(土) 12:09:22.140 ID:Vyx+N5fy00808
唯「なんとか間に合った…」

律「おー唯!ギリギリセーフだな!」

唯「おはようりっちゃん。助かったよぉ」

律「さ、早く教室に行こうぜ」

6: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/08/08(土) 12:09:37.013 ID:Vyx+N5fy00808
さわ子「今日はなんと転校生を紹介します!」

律「なんだよ初耳だぞー?」

さわ子「初めて言ったのだから当然でしょ」

さわ子「さ、入って来て」

教室に入って来たのは、背の高い、黒髪の美少女だった

7: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/08/08(土) 12:09:50.842 ID:Vyx+N5fy00808
澪「秋山澪です。よろしく」

転校生、秋山澪は軽く会釈した

さわ子「なんと秋山さんは市民テスト800点中790点の天才です。みんな仲良くしてあげてね」

唯「格が違う…」

律「いけすかねーな。よろしくねみぃおちゃん!」

澪「たしか…田井中律さんだよね?よろしくね」

澪は既に、クラスメイトの名前を覚えていたのだ

8: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/08/08(土) 12:10:07.466 ID:Vyx+N5fy00808
壁からは何時間かおきにサイレンが鳴る

それが学校では始業と終業の合図となっている

そのサイレンが何を意味しているのかは、もちろん誰も知らない

9: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/08/08(土) 12:10:20.603 ID:Vyx+N5fy00808
澪「私、軽音部に入りたいんだ」

休み時間に澪は、唯と律のところへやって来た

律「拒む理由はねーよ。歓迎するよみぃおちゃん」

唯「軽音部に新たなメンバーが…」

澪「私のことは澪と呼んでくれ。もちろん私も2人を名前で呼ぶからさ」

秋山澪は、唯と律しかいない軽音部に入部した

10: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/08/08(土) 12:10:40.960 ID:9/h3Bmdvd0808
唯「秋山さんは…」

澪「澪でいいよ」

唯「あ、澪ちゃんはどこから転校してきたの?」

澪「んーと、別の惑星かな」

律「その冗談、全然面白くないよ」

澪「うるさいぞ、律」

3人は仲良く下校した
唯は、こんな時間がずっと続けばいいと思った

11: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/08/08(土) 12:10:59.103 ID:9/h3Bmdvd0808
秋山澪は平沢唯と田井中律を重視している

彼女たちは鍵だ

少なくとも澪はそう思っている

しばらくは仲良く友達ごっこをすることになる

澪は素直に、声を出して笑った

12: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/08/08(土) 12:11:19.122 ID:9/h3Bmdvd0808
唯「もう!なんで起こしてくれないのさ!」

憂「なんども起こしたよぉ!」

唯「あ、澪ちゃんだ!」

澪「おはよう唯」

憂「はじめまして、姉がお世話になってます」

澪「こちらこそ、お姉さんには良くしてもらって感謝してるんだ」

13: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/08/08(土) 12:11:37.799 ID:9/h3Bmdvd0808
律「おはよーふたりとも!」

唯「おはよりっちゃん!」

3人は他愛もない会話をしながら教室へ向かう

教室に入ってすぐ、澪は口を開いた

澪「ところであの壁ってなんなんだろうな」

唯「!!!」

14: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/08/08(土) 12:11:55.294 ID:9/h3Bmdvd0808
「さよならの壁」の事を話すのは、禁忌とされてきた

公共の場で話せば、最悪死刑もあり得る危険なことなのだ

それを澪はなんの恐れもなく口に出した

律の顔から血の気が引いていた

15: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/08/08(土) 12:12:27.795 ID:9/h3Bmdvd0808
唯「澪ちゃん…ね、やめよ?」

唯は澪に耳打ちした

澪「なんで?誰も疑問に思わないの?あんな壁がドカーンと建ってるなんて、おかしいじゃないか」

クラスメイトの何人かは恐怖のあまり泣いていた

律も動かない

澪はなおも続ける

澪「あの壁には何の意味があるんだろうな?壁の向こうはどうなってるんだろうな?」

16: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/08/08(土) 12:12:45.044 ID:9/h3Bmdvd0808
唯「やめて!!!」

澪「ごめんごめん、悪ふざけが過ぎたよ。みんなもごめん」

教室の中に安堵の空気がどっと吹き込んだ

澪「…」

だがこれは悪ふざけで済まされることではない

そのことは澪自身が一番わかっているはずだ

市民テストで790点を取る彼女は、「模範市民」としてあるべきだからだ

18: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/08/08(土) 12:13:10.306 ID:Vyx+N5fy00808
放課後のサイレン(少なくとも彼女たちにはその意味しかない)が鳴り響き、唯たちは部活へと向かった

澪は用事があるからと言って、今日は不参加だ

唯と律の間には微妙な沈黙が訪れる

唯「ねぇ、朝のこと…」

律「やめろ!!」

律「もう私は誰も失いたくないんだ。お願いだから…」

唯「わかったよ…」

律の家族は、壁の意味を大衆に問い掛けて「処理」されてしまった

今の彼女は、ひとりぼっちだ

19: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/08/08(土) 12:13:30.684 ID:Vyx+N5fy00808
唯「あれ?あれは澪ちゃん…」

唯は家の近くで澪を見つける
こんなところでなにをしているのだろうか

唯は、秋山澪を追いかけていた

澪は、黒いパーカーに身を包み、人気のないところへと徐々に入り込んでいく

唯は必死になって彼女を見失うまいと追いかけた

20: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/08/08(土) 12:13:45.125 ID:Vyx+N5fy00808
澪「バレバレだよ、唯」

唯「?!」

澪「私がなにしてるか、興味あるの?」

唯「えっと…」

澪「まぁいいや」

澪「ついてきなよ、面白いもの見せてあげる」

21: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/08/08(土) 12:14:03.411 ID:Vyx+N5fy00808
澪は、唯を「さよならの壁」近くの立ち入り禁止区域へと連れてきた

澪は金網の穴を器用にくぐり抜けて進んでいく

唯もあたふたと彼女に続いた

澪の足は、壁の麓で止まった

22: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/08/08(土) 12:14:19.993 ID:Vyx+N5fy00808
梓「澪先輩、お疲れ様です」

壁の一部がゴトリと動いたかと思うと、そこから小柄な少女が現れた

唯は混乱する

まさか

壁の向こう側から?

澪「おう梓、この子は唯。私の友達になってくれた子だ」

梓は訝しげに唯を見た
そしてペコリと頭を下げた

23: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/08/08(土) 12:14:34.089 ID:Vyx+N5fy00808
梓「はじめまして、私は中野梓です」

澪「梓、こっちの人間だけど、相当堅物が多いみたいだ」

澪「誰も壁なんて気にしちゃいない」

唯「み…澪ちゃん」

澪「どうした?」

唯「澪ちゃんは…あっち側の人なの?」

24: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/08/08(土) 12:14:49.005 ID:Vyx+N5fy00808
澪「その通りだよ」

澪から、至極当たり前の回答が返ってきた

それは唯にとって、宇宙人と遭遇した事にも匹敵する重大な出来事だ

澪「まぁ定例の報告は以上」

梓「わかりました。お気をつけて」

梓は、また壁を動かしてあちら側へと帰った

唯は腰が抜けていた

25: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/08/08(土) 12:15:10.003 ID:Vyx+N5fy00808
澪は意外にもすんなりと唯を解放した

そして、今日の事を誰かに話したければ構わないとまで言われた

もちろん唯はそのことを話す事はない

壁の事を話せば、自分の身に危害が及ぶ可能性がある

彼女は不思議なほど冷静になっていた

27: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/08/08(土) 12:15:25.527 ID:Vyx+N5fy00808
唯「りっちゃんおはよー」

律「おー唯、今日は早いんだな」

唯「なんだか眠れなくて…」

律「なんだぁ?ゲームでもしてたのか?」

唯「もう!そんなんじゃないよ!」

澪「じゃあなんなの?」

唯は身の毛もよだつという感覚を初めて感じた

澪はいつの間にか2人の間に入っていた

29: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/08/08(土) 12:15:44.314 ID:Vyx+N5fy00808
澪「唯、あとで話したい事があるんだ」

澪「2人きりで、ね」

唯には拒否権はない

ただ、澪の言う通りにしなければいけない気がした

唯「わかった…」

30: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/08/08(土) 12:16:01.591 ID:Vyx+N5fy00808
澪「唯、誰にも言わなかったんだね」

唯「言ったら…大変な事になるから」

澪「じゃあ私は唯にお願いするよ」

澪「そのかわり唯には全部話す。それでいいだろ?」

唯「わかった…」

31: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/08/08(土) 12:16:16.091 ID:Vyx+N5fy00808
澪「まず私は壁の向こう側の人間じゃない」

唯「どういうこと?!」

澪「昨日の梓って子ももちろんこちら側の人間だ」

澪「壁のあの部分だけ細工をして、向こうから来たみたいにしてただけなんだ」

唯「何の意味があってそんな…」

32: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/08/08(土) 12:16:34.862 ID:Vyx+N5fy00808
澪「私たちは政府直属のある機関の人間だ」

澪「目的は【交渉人】を探すこと」

唯「交渉人…?」

澪「つい3ヶ月前、壁の向こう側からコンタクトがあったんだ」

澪「もちろん私たちの誰も向こう側に何があるのかは知らない。向こう側からのメッセージは簡単なものだった」

澪『おんがくをしりたい』

33: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/08/08(土) 12:16:52.155 ID:Vyx+N5fy00808
澪「それで私たちは大急ぎであっち側と交渉できる人物をピックアップして…」

澪「それで見つけたんだ、平沢唯を」

唯「私が…交渉人…?」

34: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/08/08(土) 12:17:09.228 ID:Vyx+N5fy00808
澪「ファイルだけでは唯のことは何もわからない」

澪「だからこの目で見て、唯にお願いできるか確かめてたんだ」

唯「全部…お芝居だったの?」

澪「…」

唯「軽音部に入りたいっていうのも!友達になりたいっていうのも!」

37: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/08/08(土) 12:17:24.116 ID:Vyx+N5fy00808
澪「耳が痛いな」

澪「信じてもらえないかもしれないけど、軽音部に入ったのも、友達になったのも…」

澪「唯と律が好きだったからだ」

澪「3日後…迎えに来るよ」

38: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/08/08(土) 12:17:43.434 ID:Vyx+N5fy00808
唯「憂…」

憂「お姉ちゃん?」

唯「私、なにかできるのかな?」

憂「大丈夫だよ」

憂「お姉ちゃんはきっと大丈夫」

唯「ありがとう」

39: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/08/08(土) 12:19:33.366 ID:Vyx+N5fy00808
唯「きたよ、澪ちゃん」

澪「来てくれて嬉しいよ、唯」

澪「覚悟してくれたんだな」

唯「私は壁の向こうなんて興味ないよ」

唯「ただみんなを…今を守りたいだけ」

澪「それでいいよ」

42: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/08/08(土) 12:21:36.129 ID:Vyx+N5fy00808
唯は郊外にある寂れたビルの一室へと連れて行かれた

そこにはビッシリとなにかよくわからない計器が部屋に敷き詰められている

梓「あ、平沢さん」

唯「えっと、中野さんだっけ?」

澪「彼女はお前のサポートをしてくれる。わからないことがあったら何でも聞いてくれ」

そういうと澪は出て行った

部屋には唯と梓だけが取り残された

45: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/08/08(土) 12:24:08.127 ID:Vyx+N5fy00808
梓「まずは、向こうから届いた電子メッセージを聞いてもらいます」

唯「わかった…」

「ガー…ギャギャ…ツー…」

「オンガ…ク…ヲシリ…タイ」

「オンガクヲシリタイ」

梓「どう思いますか?」

唯「どうって…そのまんま、音楽を知りたいって意味じゃないかな?」

47: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/08/08(土) 12:26:31.419 ID:Vyx+N5fy00808
梓「だといいんですけど」

唯「というと?」

梓「これが罠って可能性もあるんです」

梓「私たちの返答次第では、もしかしたら世界が滅びるかもしれない」

梓「壁の向こうにいるのが、人間とは限らないじゃないですか」

唯「…」

壁が出来る前のことを、唯も梓も詳しくは知らない

ただ、壁が世界を隔てた事実しかわからないのだ

48: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/08/08(土) 12:28:41.408 ID:Vyx+N5fy00808
唯「返事…」

梓「いいですか、平沢さん」

梓「あなたの使命はこのメッセージを送ってきた何者かとの交渉です」

梓「もし失敗したら…」

梓「一族全員銃殺刑だってあり得るんですよ」

唯「脅しのつもり?」

梓「いえ、事実を伝えたまでです」

49: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/08/08(土) 12:32:46.975 ID:Vyx+N5fy00808
唯「それじゃいくね…」

唯『いま、私の願い事が叶うならば』

唯『翼が欲しい』

♫ ♩ ♪ ♫

梓「…!」

梓「返答が…!」

「ガー…ギャギャ…コノセナカニ…トリノ…ヨウニ…」

♫ ♩ ♪ ♫

唯「信じられない…」

梓「歌が返って…きた」

51: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/08/08(土) 12:37:46.380 ID:Vyx+N5fy00808
唯「この歌を知ってるんだよ!向こうの人も!」

梓「待って下さい!まだ続きが…!」

「ガー…ワタシハ…コトブキツ…ムギ…アナタハダレ…?」

唯「コトブキツムギ…ムギちゃんってことだね!」

唯『私は平沢唯!16歳の女子高生!』

それから数度のやりとりがあり、その日の交信は途絶えた

唯は、壁の向こう側に人間がいること、そして自分たちと文化を共有していることを証明した

これだけでも国家栄誉褒章を受けるに値する偉業である

53: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/08/08(土) 12:40:03.403 ID:Vyx+N5fy00808
唯はそれから数日間、壁の向こう側のコトブキツムギと交信を行った

そして、彼女は自分たちと同じ女子高生であることや、向こう側の世界についてあらゆることを聞き取った

そして最後に

『かべをこえたい』

そのメッセージが送られてきたのだ

54: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/08/08(土) 12:42:01.692 ID:Vyx+N5fy00808
唯「壁を越えたいって…」

梓「それは不可能です。今まで何回も壁を越えようという試みがありましたけど…」

梓「すべて失敗しています」

梓「それに…」

澪「壁を越えるのは、死罪だ」

唯「澪ちゃん…」

55: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/08/08(土) 12:44:03.772 ID:Vyx+N5fy00808
唯「でも私、この壁を越えてみたい!ムギちゃんに直接会ってみたいよ!」

梓「無茶言わないでください…たしかにあなたの功績は認めますけど…」

唯「お願い…」

澪「やれやれ」

澪「お前の頑固なとこは調査済みだよ」

澪は1枚の紙切れを取り出した

56: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/08/08(土) 12:46:21.959 ID:Vyx+N5fy00808
澪「壁に触れる許可状だ。私が偉い人に掛け合って出してもらった」

唯「じゃあ…!」

澪「ただし、許可が出たのは『触れる』ことだけだ。越えようとしたら即射殺される危険もある」

唯「…」

唯「私、やるよ」

57: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/08/08(土) 12:49:41.900 ID:Vyx+N5fy00808
平沢唯はその夜、壁の向こう側にメッセージを送った

『私は、壁を越える』

返答はなかった。だがきっと、コトブキツムギはそれを聞いてくれていると信じた

深夜1時、唯は壁の側に来た

唯「この壁が…りっちゃんの家族を奪った」

唯「この壁が、私たちの自由を奪った」

唯「私は自由に、会いたい人に会いたい!」

59: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/08/08(土) 12:52:00.924 ID:9/h3Bmdvd0808
唯は、持ってきたギターの演奏を始めた

そして喉が枯れるまで歌い続けた

やがて、壁の向こうからも音が聞こえてきた

唯「気づいてくれた!」

だが、「さよならの壁」は、雲の上までそびえ立っている

唯は諦めない

そっと、壁に触れた

60: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/08/08(土) 12:53:28.952 ID:9/h3Bmdvd0808
>>58
唯「これで567521251回目の高校生活かぁ」
書きました

61: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/08/08(土) 12:55:55.552 ID:9/h3Bmdvd0808
唯は壁の意外な暖かさに安らぎを感じた

何故かはわからない

憎むべき壁から、それを感じる

きっと…
壁の向こう側でコトブキツムギがいるに違いない

この暖かさはコトブキツムギの暖かさだ

その瞬間、壁は唯の触れた部分からすうっと消え始めた

62: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/08/08(土) 12:57:30.567 ID:9/h3Bmdvd0808
梓「信じられない…壁が消えていく…」

澪「唯!大丈夫か!?」





唯「大丈夫」

唯「はじめまして、だね」

唯「コトブキツムギさん」

紬「えぇ、はじめまして」

紬「ヒラサワユイちゃん」

64: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/08/08(土) 12:59:15.767 ID:9/h3Bmdvd0808
紬「ねぇ、よかったら歌を歌いましょう」

紬「私たちが壁を越えて」

紬「出会った記念に」

唯「うん」

唯「世界が一つになった」

唯「喜びを込めて」

65: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/08/08(土) 13:01:44.322 ID:9/h3Bmdvd0808
そして世界は

ひとつに戻った

だけどそれぞれの世界は、争いを始めてしまった

私たちにできることはほんの小さなことだけ

友達を大切にすることだけだ

唯は、そう思っていた


お わ り

67: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/08/08(土) 13:06:42.362 ID:9/h3Bmdvd0808
梓「こんなんじゃだめですー!」

律「そうだぞ!私の出番全然ないじゃんか!」

唯「えぇ~文化祭はこれで行こうと思ったのに~」

澪「だいたい、なんで唯が主役なんだよ!」

紬「澪ちゃんはまだ出番があるからいいじゃない!」

本当のおわり

引用元: 唯「あの壁を越えて」