1: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 17:12:07.75 ID:E9AL+0kF
にこ「UTXはね、アイドルの育成にすごい力を入れてる学校なの。プロのアイドルも何人も排出してるし、現役生徒で結成されてるスクールアイドルもすごい人気なの」
にこ母「へ、へえー……」
にこ「だから私もそこに行って、アイドル目指すの!それでね、それでね……」
にこ母「うん…うん……」
にこ母(いつかこんなこと言い出すなんてことはずっと分かってた…)
にこ母「へ、へえー……」
にこ「だから私もそこに行って、アイドル目指すの!それでね、それでね……」
にこ母「うん…うん……」
にこ母(いつかこんなこと言い出すなんてことはずっと分かってた…)
4: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 17:13:29.43 ID:E9AL+0kF
母(UTX学園…もちろん存在は知ってるわ。一流のアイドルの育成に力を入れてる学校。まして家からも近い)
母(あの子は昔からずっとアイドルになりたいって言ってたから、こういうことを言われるのも予測はできていたわ)
母(もちろん親として、子供の夢はできるかぎり叶えてあげたいのが本音。むしろこの年齢でああやってはっきり夢を語れる娘を誇らしくも思う)
母(だけど……だけど……)
母(UTXって…私立なのよね)
母(あの子は昔からずっとアイドルになりたいって言ってたから、こういうことを言われるのも予測はできていたわ)
母(もちろん親として、子供の夢はできるかぎり叶えてあげたいのが本音。むしろこの年齢でああやってはっきり夢を語れる娘を誇らしくも思う)
母(だけど……だけど……)
母(UTXって…私立なのよね)
5: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 17:14:05.30 ID:E9AL+0kF
母(UTXについて調べたことはあったけど……とてもじゃないけど今の家には学費なんかを払ってはいけない…余裕がないとかそういう次元じゃなく、無理)
母(特待生制度も今のところないみたいだし……)
母(……でも金銭的事情で子供の夢を諦めさせるなんて、親としては最もやってはいけない行為だわ)
母(……)
母(……稼ぐしかないわね)
母(特待生制度も今のところないみたいだし……)
母(……でも金銭的事情で子供の夢を諦めさせるなんて、親としては最もやってはいけない行為だわ)
母(……)
母(……稼ぐしかないわね)
6: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 17:15:47.11 ID:E9AL+0kF
数日後
にこ「おはよう……って、ママ?」
母「あらおはよう。朝ごはんはもうできてるから早く食べちゃいなさい」
にこ「いや…うん。ご飯は食べるけど……なにやってるの?」
母「ああ。これ?鉛筆の袋詰めよ」
にこ「??なんでそんなことしてるの?しかも大量に……」
母「うん。ちょっとお仕事でね」
にこ「…鉛筆を袋に詰めるのが仕事?」
母「そうよ。これが割と楽しいのよ」
にこ「楽しいの?それが。っていうかなんでママがそんな仕事してるの?コールセンターの仕事はどうしたの?」
母「コールセンターならこの後行くわよ。なんか家でもできる仕事ないか探してたら、内職というのを見つけてね。それがこれなのよ」
にこ「…世の中には色んな仕事があるのね」
母「これなら家にいながら仕事できるし、ね。まだ赤ちゃんの虎太郎を見ないわけにはいかないし」
にこ「へえ…私もやろうかな」
母「あなたは学校行きなさい。学生は学校へ行くのが仕事でしょ」
にこ「はーい」
にこ「おはよう……って、ママ?」
母「あらおはよう。朝ごはんはもうできてるから早く食べちゃいなさい」
にこ「いや…うん。ご飯は食べるけど……なにやってるの?」
母「ああ。これ?鉛筆の袋詰めよ」
にこ「??なんでそんなことしてるの?しかも大量に……」
母「うん。ちょっとお仕事でね」
にこ「…鉛筆を袋に詰めるのが仕事?」
母「そうよ。これが割と楽しいのよ」
にこ「楽しいの?それが。っていうかなんでママがそんな仕事してるの?コールセンターの仕事はどうしたの?」
母「コールセンターならこの後行くわよ。なんか家でもできる仕事ないか探してたら、内職というのを見つけてね。それがこれなのよ」
にこ「…世の中には色んな仕事があるのね」
母「これなら家にいながら仕事できるし、ね。まだ赤ちゃんの虎太郎を見ないわけにはいかないし」
にこ「へえ…私もやろうかな」
母「あなたは学校行きなさい。学生は学校へ行くのが仕事でしょ」
にこ「はーい」
9: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 17:21:49.91 ID:E9AL+0kF
…………
母「…さて、私もそろそろ仕事の時間ね。行かなきゃ」
母「……にこにはあんなこと言ったけど、内職が楽しいのなんて最初だけね。数分で飽きるわね」
母「おまけに大したお金にはならないし……まあ何もやらないよりはマシよね」
母「虎太郎ー!出かけるわよー!」
虎太郎「だー」
母「この子を家に置いて他の仕事するわけにはいかないわよね……ふう。あのコールセンターが育児施設付きで本当よかったわ」
母「…ん?」クンクン
母「…手に鉛筆の匂いが染み込んでる…洗わないとね」
母「…さて、私もそろそろ仕事の時間ね。行かなきゃ」
母「……にこにはあんなこと言ったけど、内職が楽しいのなんて最初だけね。数分で飽きるわね」
母「おまけに大したお金にはならないし……まあ何もやらないよりはマシよね」
母「虎太郎ー!出かけるわよー!」
虎太郎「だー」
母「この子を家に置いて他の仕事するわけにはいかないわよね……ふう。あのコールセンターが育児施設付きで本当よかったわ」
母「…ん?」クンクン
母「…手に鉛筆の匂いが染み込んでる…洗わないとね」
12: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 17:28:28.23 ID:E9AL+0kF
数週間後
母「……え、それは、本当ですか!?」
責任者「ああ。いきなりですまないが、今月末でこのコールセンターを閉鎖することになった」
母「そんな…今月末って、あと2週間後じゃないですか」
責任者「そうだ」
母「なんで…」
責任者「会社の経営が思ったほどうまくいってなくてな。うちともう1つ郊外のコールセンターを閉鎖することが決まったんだ」
母「…そ、そんな…」
母「…従業員は、今働いてる従業員はどうなるんですか!?」
責任者「…正社員はとりあえず別店舗へ回されたり、本社に配属になったりするが…」
責任者「アルバイトやパート従業員、契約社員などは……残念ながら面倒を見きれないそうだ」
母「…そ、そんな……」
母「……リストラ?」
母「……え、それは、本当ですか!?」
責任者「ああ。いきなりですまないが、今月末でこのコールセンターを閉鎖することになった」
母「そんな…今月末って、あと2週間後じゃないですか」
責任者「そうだ」
母「なんで…」
責任者「会社の経営が思ったほどうまくいってなくてな。うちともう1つ郊外のコールセンターを閉鎖することが決まったんだ」
母「…そ、そんな…」
母「…従業員は、今働いてる従業員はどうなるんですか!?」
責任者「…正社員はとりあえず別店舗へ回されたり、本社に配属になったりするが…」
責任者「アルバイトやパート従業員、契約社員などは……残念ながら面倒を見きれないそうだ」
母「…そ、そんな……」
母「……リストラ?」
23: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 17:39:04.94 ID:E9AL+0kF
3月末
母(今日であの職場は終わり……)
母(正社員以外は全員リストラ。なんでこんなことに…)
母(子育てしながら仕事ができる職場だったし、給料も悪くなかったから、良い職場だったのに)
母(まさか会社の中身はそんなに困窮してたなんて…)
母(……会社と家庭という違いはあるけれど、経営難の厳しさを私も分かってるから、何も言い返せなかった……言い返したところでどうにもならないけどね)
虎太郎「だー?」
母「あら、虎太郎。どうしたの?」
虎太郎「あー、だーだー」
母「……ふふ。ごめんなさいね。ママがこんな暗い顔してちゃだめよね。虎太郎はママのことよく見てるのね」
母「なーんにも心配しなくていいんだからね。虎太郎も、他のみんなも。成長期なんだから沢山食べて大きくならないとね」
虎太郎「やー!」
母「ふふ……」
母(今日であの職場は終わり……)
母(正社員以外は全員リストラ。なんでこんなことに…)
母(子育てしながら仕事ができる職場だったし、給料も悪くなかったから、良い職場だったのに)
母(まさか会社の中身はそんなに困窮してたなんて…)
母(……会社と家庭という違いはあるけれど、経営難の厳しさを私も分かってるから、何も言い返せなかった……言い返したところでどうにもならないけどね)
虎太郎「だー?」
母「あら、虎太郎。どうしたの?」
虎太郎「あー、だーだー」
母「……ふふ。ごめんなさいね。ママがこんな暗い顔してちゃだめよね。虎太郎はママのことよく見てるのね」
母「なーんにも心配しなくていいんだからね。虎太郎も、他のみんなも。成長期なんだから沢山食べて大きくならないとね」
虎太郎「やー!」
母「ふふ……」
29: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 17:54:42.76 ID:E9AL+0kF
4月中盤
にこ「はあ…めんどくさいわね」
母「あら、どうしたのにこ。ため息なんてついて」
にこ「今日進路希望調査表をもらったんだけど、私はもうUTXって決めてるから、それを伝えたら、一応形式だから第三希望まで書いてくれ、って言われて」
母「そう……まあ高校は受験があるから、必ず希望したところに行けるわけじゃないからね」
にこ「っていってもUTXは偏差値なんてほとんど関係ない学校よ?犯罪歴でもない限り受かるわよ」
母「でも書かなきゃだめなんでしょ?」
にこ「うん……」
にこ「…もう適当でいいかしら。どうせ行くわけないんだから」
にこ「第二希望は、音ノ木坂…と」
母「あら、どうして数ある学校の中から音ノ木坂なのかしら」
にこ「近いから」
母「あら、そう……」
にこ「第三希望は……って考える必要なんてないのよ。行かないんだから。パッと思い付いた学校を書けばいいのよ」
にこ「第三希望、慶應女子、と……」
母「……あんた、本当に適当ね」
にこ「はあ…めんどくさいわね」
母「あら、どうしたのにこ。ため息なんてついて」
にこ「今日進路希望調査表をもらったんだけど、私はもうUTXって決めてるから、それを伝えたら、一応形式だから第三希望まで書いてくれ、って言われて」
母「そう……まあ高校は受験があるから、必ず希望したところに行けるわけじゃないからね」
にこ「っていってもUTXは偏差値なんてほとんど関係ない学校よ?犯罪歴でもない限り受かるわよ」
母「でも書かなきゃだめなんでしょ?」
にこ「うん……」
にこ「…もう適当でいいかしら。どうせ行くわけないんだから」
にこ「第二希望は、音ノ木坂…と」
母「あら、どうして数ある学校の中から音ノ木坂なのかしら」
にこ「近いから」
母「あら、そう……」
にこ「第三希望は……って考える必要なんてないのよ。行かないんだから。パッと思い付いた学校を書けばいいのよ」
にこ「第三希望、慶應女子、と……」
母「……あんた、本当に適当ね」
31: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 18:01:50.44 ID:E9AL+0kF
4月後半
母「やったわ!ついに新しい職場を見つけたわ!」
母「飲食店の調理場の仕事よ!私はこう見えても料理に自信はあるんだから!」
母「しかも前の職場にいたベビーシッターさんが今別の託児所で働いてて、顔見知りだからって割安で虎太郎の面倒を見てもらえることになったし」
母「さすがに内職だけじゃ、にこの進路どころか、家計すらまずいものね。助かったわ」
母「昇給制度もあるみたいだし、頑張るわよ!」
母「やったわ!ついに新しい職場を見つけたわ!」
母「飲食店の調理場の仕事よ!私はこう見えても料理に自信はあるんだから!」
母「しかも前の職場にいたベビーシッターさんが今別の託児所で働いてて、顔見知りだからって割安で虎太郎の面倒を見てもらえることになったし」
母「さすがに内職だけじゃ、にこの進路どころか、家計すらまずいものね。助かったわ」
母「昇給制度もあるみたいだし、頑張るわよ!」
34: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 18:12:42.61 ID:E9AL+0kF
母(典型的な居酒屋って感じね。で、昼は定食屋みたいな形で営業している、と)
母(まあ私は夜は働けないから、昼間だけの勤務になるけど)
店長「今日から調理場スタッフとして働いてくれる矢澤さんです。経験はないそうですが、家事などで料理等は毎日やっているそうです」
母「よ、よろしくお願いします!」
料理長「…言っとくけど、家事と飲食店の厨房は別物だからな」
母「え?」
料理長「まあいいや。おい主任。新人に仕事教えてやれ」
主任「あ、はい」
主任「よろしくお願いします」
母「こちらこそよろしくお願いします」
母(若っ……未成年?いや、さすがにそれはないか…でも少なくとも私よりはずっと年下ね)
主任「じゃあまずどんな時でも厨房に入るときはここで手を洗って……」
母「は、はい」
母(…やるわよ。私。これからこの仕事で頑張って稼ぐのよ)
母(まあ私は夜は働けないから、昼間だけの勤務になるけど)
店長「今日から調理場スタッフとして働いてくれる矢澤さんです。経験はないそうですが、家事などで料理等は毎日やっているそうです」
母「よ、よろしくお願いします!」
料理長「…言っとくけど、家事と飲食店の厨房は別物だからな」
母「え?」
料理長「まあいいや。おい主任。新人に仕事教えてやれ」
主任「あ、はい」
主任「よろしくお願いします」
母「こちらこそよろしくお願いします」
母(若っ……未成年?いや、さすがにそれはないか…でも少なくとも私よりはずっと年下ね)
主任「じゃあまずどんな時でも厨房に入るときはここで手を洗って……」
母「は、はい」
母(…やるわよ。私。これからこの仕事で頑張って稼ぐのよ)
39: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 18:36:58.10 ID:E9AL+0kF
数日後
母「あっ!」ツルッ
ガシャアン!
料理長「おい矢澤あ!何度目だこれで!」
母「す、すみません!」
料理長「毎回謝っても全然直んねえじゃねえか!すみませんってのは口だけかあ!?」
母「…すみません」
料理長「すみませんしか言えねえのかよ。ったく最近の主婦は満足に皿も拭けねえのかよ。使えねえな」
母「……」
料理長「おい主任!てめえ教育者だろ!皿を割ることでも教えてんのかあ!?」
主任「…申し訳ありません」
料理長「ったく。どいつもこいつも仕事なめやがって。そんなんで給料もらってんだからこっちはやってらんねーよ」
母「主任…すみません。私のミスのせいで…主任まで怒られて」
主任「気にしないでいいですよ。あの人は怒りっぽいんで、毎日ああやって怒鳴らないと気がすまないんですよ」
主任「ミスは誰にでもあります。私なんか矢澤さんの何倍も割ってますから」
主任「大切なのは失敗した原因をしっかり理解して、それを繰り返さないことです。頑張りましょう」
母「…ありがとうございます。主任」
母「あっ!」ツルッ
ガシャアン!
料理長「おい矢澤あ!何度目だこれで!」
母「す、すみません!」
料理長「毎回謝っても全然直んねえじゃねえか!すみませんってのは口だけかあ!?」
母「…すみません」
料理長「すみませんしか言えねえのかよ。ったく最近の主婦は満足に皿も拭けねえのかよ。使えねえな」
母「……」
料理長「おい主任!てめえ教育者だろ!皿を割ることでも教えてんのかあ!?」
主任「…申し訳ありません」
料理長「ったく。どいつもこいつも仕事なめやがって。そんなんで給料もらってんだからこっちはやってらんねーよ」
母「主任…すみません。私のミスのせいで…主任まで怒られて」
主任「気にしないでいいですよ。あの人は怒りっぽいんで、毎日ああやって怒鳴らないと気がすまないんですよ」
主任「ミスは誰にでもあります。私なんか矢澤さんの何倍も割ってますから」
主任「大切なのは失敗した原因をしっかり理解して、それを繰り返さないことです。頑張りましょう」
母「…ありがとうございます。主任」
51: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 19:33:04.07 ID:E9AL+0kF
とある日の朝
母「……ふう」
にこ「…ねえママ。なんか疲れてない?」
母「え?」
にこ「心なしか最近痩せたような気もするし……」
母「え?あ、あら、そうかしらー?嬉しいわねー」
にこ「茶化さないでよ。ダイエットなんてしてないでしょ」
母「う…」
にこ「まあ新しい仕事始めたばかりだから色々疲れてるんじゃないの?」
母「はは……にこはお見通しね」
にこ「無理しないでよ。間違ってママが倒れたりしたら、虎太郎とかの世話をする人がいなくなっちゃうし、ウチは終わりなんだから」
母「…大丈夫よ。これでも4人産んだ体だから、そう簡単には倒れたりしないから」
にこ「……そう。ならいいんだけど」
母「……ふう」
にこ「…ねえママ。なんか疲れてない?」
母「え?」
にこ「心なしか最近痩せたような気もするし……」
母「え?あ、あら、そうかしらー?嬉しいわねー」
にこ「茶化さないでよ。ダイエットなんてしてないでしょ」
母「う…」
にこ「まあ新しい仕事始めたばかりだから色々疲れてるんじゃないの?」
母「はは……にこはお見通しね」
にこ「無理しないでよ。間違ってママが倒れたりしたら、虎太郎とかの世話をする人がいなくなっちゃうし、ウチは終わりなんだから」
母「…大丈夫よ。これでも4人産んだ体だから、そう簡単には倒れたりしないから」
にこ「……そう。ならいいんだけど」
54: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 19:39:53.68 ID:E9AL+0kF
主任「じゃあ矢澤さん、30分休憩で」
母「はい」
母「はあ、疲れたわ…仕事は大分慣れたけど、精神的に来るわね…」
母「しかし本当に料理長は毎日誰かしらに怒鳴ってるわね。本当に怒鳴らないと生きていけないのかしら」
母「……ったく。面倒な人の下に来ちゃったわ」
母「ん?着信が……10件も?」
母「…ベビーシッターさんだわ。何かあったのかしら」
プルルルル
母「あ、もしも」
ベビーシッター「矢澤さん!虎太郎君が!」
母「!!」
母「はい」
母「はあ、疲れたわ…仕事は大分慣れたけど、精神的に来るわね…」
母「しかし本当に料理長は毎日誰かしらに怒鳴ってるわね。本当に怒鳴らないと生きていけないのかしら」
母「……ったく。面倒な人の下に来ちゃったわ」
母「ん?着信が……10件も?」
母「…ベビーシッターさんだわ。何かあったのかしら」
プルルルル
母「あ、もしも」
ベビーシッター「矢澤さん!虎太郎君が!」
母「!!」
59: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 19:54:37.67 ID:E9AL+0kF
料理長「なに?早退したい?」
母「はい…息子が急病になったみたいで」
料理長「……他に見てくれる人はいないのか?」
母「…娘たちは学校ですし…私しか」
料理長「……これから夜の分の仕込みがあるのはわかってるよな?」
母「…はい」
料理長「……お前がいなくなる分、他の人間の負担が増える。これはわかるよな?」
母「承知しております…」
料理長「……」
料理長「おい主任!」
主任「はい」
母(うわ…このパターンは…また私のせいで主任が怒られるパターンだわ)
料理長「今の話聞いてただろ」
主任「はい」
料理長「……お前、矢澤の仕事も受け持ってやれ」
母「……え」
料理長「もし間に合いそうになかったら言えよ。手伝ってやるから」
主任「はい。わかりました」
母「料理長…」
料理長「なにやってる?」
母「え?」
料理長「早く行けよ!息子が急病なんだろ!母親のお前が行かなくて誰が行くんだよ!」
料理長「調理場の代わりの人材はいても母親の代わりはいないんだぞ!こっちのことは任せて早く行け!」
母「……は、はい!」
主任「矢澤さん。こっちのことは心配しないでいいんで、息子さんに会いに行ってあげて下さい」
母「料理長…主任、ありがとうございます!」
母「はい…息子が急病になったみたいで」
料理長「……他に見てくれる人はいないのか?」
母「…娘たちは学校ですし…私しか」
料理長「……これから夜の分の仕込みがあるのはわかってるよな?」
母「…はい」
料理長「……お前がいなくなる分、他の人間の負担が増える。これはわかるよな?」
母「承知しております…」
料理長「……」
料理長「おい主任!」
主任「はい」
母(うわ…このパターンは…また私のせいで主任が怒られるパターンだわ)
料理長「今の話聞いてただろ」
主任「はい」
料理長「……お前、矢澤の仕事も受け持ってやれ」
母「……え」
料理長「もし間に合いそうになかったら言えよ。手伝ってやるから」
主任「はい。わかりました」
母「料理長…」
料理長「なにやってる?」
母「え?」
料理長「早く行けよ!息子が急病なんだろ!母親のお前が行かなくて誰が行くんだよ!」
料理長「調理場の代わりの人材はいても母親の代わりはいないんだぞ!こっちのことは任せて早く行け!」
母「……は、はい!」
主任「矢澤さん。こっちのことは心配しないでいいんで、息子さんに会いに行ってあげて下さい」
母「料理長…主任、ありがとうございます!」
69: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 20:15:53.82 ID:E9AL+0kF
病院
にこ「……びっくりしたわ。ただの風邪だったみたいでとりあえず安心したわ」
母「ええ。でもちょっと悪化してるみたいで、今点滴を打ってるわ」
にこ「そう…」
母「……よく考えてみたら、今朝から虎太郎の調子はおかしかった」
母「虎太郎は無口だけど、今日はいつにもまして口数が少なかったし、ちょっとぼーっとしてたし…」
母「私がそのことに気を配っていれば…」
にこ「そんなこと言ったって始まらないわよ。ベビーシッターさんに感謝だわ」
母「そうね……」
母「そういえばにこ、学校はどうしたの?早退したの?」
にこ「はあ?何言ってるの?もう4時近いのよ?学校終わってから来たのよ」
母「え?あら、もうそんな時間?」
母「参ったわね…虎太郎はまだ時間かかりそうだし……夕食の支度ができないわ」
にこ「じゃあ私が夕食を作るわ」
母「え?」
にこ「……びっくりしたわ。ただの風邪だったみたいでとりあえず安心したわ」
母「ええ。でもちょっと悪化してるみたいで、今点滴を打ってるわ」
にこ「そう…」
母「……よく考えてみたら、今朝から虎太郎の調子はおかしかった」
母「虎太郎は無口だけど、今日はいつにもまして口数が少なかったし、ちょっとぼーっとしてたし…」
母「私がそのことに気を配っていれば…」
にこ「そんなこと言ったって始まらないわよ。ベビーシッターさんに感謝だわ」
母「そうね……」
母「そういえばにこ、学校はどうしたの?早退したの?」
にこ「はあ?何言ってるの?もう4時近いのよ?学校終わってから来たのよ」
母「え?あら、もうそんな時間?」
母「参ったわね…虎太郎はまだ時間かかりそうだし……夕食の支度ができないわ」
にこ「じゃあ私が夕食を作るわ」
母「え?」
70: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 20:25:52.45 ID:E9AL+0kF
母「あなた、料理なんてできるの?」
にこ「大丈夫よ。家庭科の成績は優秀だから」
にこ(他の教科に比べたら、だけど)
母「答えになってないわよ……」
にこ「いいから、ママはここで虎太郎のそばにいてあげて。私だってママの子供なんだから、料理の才能あるに決まってるわよ」
母「…うう、恐ろしく不安。にこに料理を教えておくべきだったかしら」
にこ「大丈夫よ。身をわきまえて、簡単に作れるもので済ますから」
母「…包丁は使っちゃだめよ?危ないから。あとガスコンロを使う時は絶対に離れないで…いや、それなら使わない方が…」
にこ「はいはい。わかったわよ。一応もう中学三年なんだし、危険なものの判断や取り扱いはできるから気にしないで」
母「……そうだ、確か振りかけが余ってたはず……あとは、インスタントの味噌汁と……」
にこ「……もういいや。行こ」
にこ「大丈夫よ。家庭科の成績は優秀だから」
にこ(他の教科に比べたら、だけど)
母「答えになってないわよ……」
にこ「いいから、ママはここで虎太郎のそばにいてあげて。私だってママの子供なんだから、料理の才能あるに決まってるわよ」
母「…うう、恐ろしく不安。にこに料理を教えておくべきだったかしら」
にこ「大丈夫よ。身をわきまえて、簡単に作れるもので済ますから」
母「…包丁は使っちゃだめよ?危ないから。あとガスコンロを使う時は絶対に離れないで…いや、それなら使わない方が…」
にこ「はいはい。わかったわよ。一応もう中学三年なんだし、危険なものの判断や取り扱いはできるから気にしないで」
母「……そうだ、確か振りかけが余ってたはず……あとは、インスタントの味噌汁と……」
にこ「……もういいや。行こ」
72: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 20:43:01.73 ID:E9AL+0kF
夜
母「ただいま…」
ここあ「あ、ママと虎太郎。おかえり」
母「こころ。お姉ちゃんたちは?」
ここあ「洗い物してるよ」
母「?」
にこ「いい?洗った食器は並べる場所も重要なのよ」
にこ「こうやって小さいものはこう…そこから徐々に大きいものを並べて……ほら、こうしたらスッキリ並んで場所も取らないでしょ」
こころ「本当ですね!さすがお姉さま!スーパーアイドルは違いますね」
にこ「あったりまえでしょー。このスーパーアイドルにこにこにーに不可能はないのよ!」
母「……」
母(心配無用だったみたいね)
母(それににこったら、すっかりお姉ちゃんになっちゃって)
母(親が思うより、子供は成長しているのね)
母(……こんな子が、夢を諦めるなんて、あってはならないわ)
母(絶対に)
母「ただいま…」
ここあ「あ、ママと虎太郎。おかえり」
母「こころ。お姉ちゃんたちは?」
ここあ「洗い物してるよ」
母「?」
にこ「いい?洗った食器は並べる場所も重要なのよ」
にこ「こうやって小さいものはこう…そこから徐々に大きいものを並べて……ほら、こうしたらスッキリ並んで場所も取らないでしょ」
こころ「本当ですね!さすがお姉さま!スーパーアイドルは違いますね」
にこ「あったりまえでしょー。このスーパーアイドルにこにこにーに不可能はないのよ!」
母「……」
母(心配無用だったみたいね)
母(それににこったら、すっかりお姉ちゃんになっちゃって)
母(親が思うより、子供は成長しているのね)
母(……こんな子が、夢を諦めるなんて、あってはならないわ)
母(絶対に)
73: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 20:53:02.87 ID:E9AL+0kF
翌朝
ここあ「やったー!今日はママの料理が食べれる!」
にこ「ちょっと!それどういう意味よ!」
ここあ「だって昨日お姉ちゃんの作った料理もやし炒めじゃん。しかももやしは何故か細かく刻まれてたし、塩コショウかけすぎて味が濃すぎたし、おまけにもやしは焦げてるし、お米はおかゆみたいにふにゃふにゃだったし」
にこ「ぐっ…」
母「もやしが細かく刻まれて…?どういうこと?」
ここあ「なんか、包丁が使えてこそ料理人とか言って、必要ないのに包丁を使いたいがためにもやしを切ったみたい」
にこ「ちょっ…ここあ、あんたなんでそれ…」
母「……にこ、包丁は使わないでって言わなかったかしら?」
にこ「え?う、えーと、その…」
にこ「にっこにっこに」
母「誤魔化しても無駄よ」
にこ「……すみません」
母「……まあ、あなたの気持ちに免じて許してあげるわ。昨日は助かったし」
母「今度はママが直々に料理を教えてあげるわ。お米を研ぐときの水分量から色々ね」
にこ「え?本当?やったー!」
ここあ「やったー!今日はママの料理が食べれる!」
にこ「ちょっと!それどういう意味よ!」
ここあ「だって昨日お姉ちゃんの作った料理もやし炒めじゃん。しかももやしは何故か細かく刻まれてたし、塩コショウかけすぎて味が濃すぎたし、おまけにもやしは焦げてるし、お米はおかゆみたいにふにゃふにゃだったし」
にこ「ぐっ…」
母「もやしが細かく刻まれて…?どういうこと?」
ここあ「なんか、包丁が使えてこそ料理人とか言って、必要ないのに包丁を使いたいがためにもやしを切ったみたい」
にこ「ちょっ…ここあ、あんたなんでそれ…」
母「……にこ、包丁は使わないでって言わなかったかしら?」
にこ「え?う、えーと、その…」
にこ「にっこにっこに」
母「誤魔化しても無駄よ」
にこ「……すみません」
母「……まあ、あなたの気持ちに免じて許してあげるわ。昨日は助かったし」
母「今度はママが直々に料理を教えてあげるわ。お米を研ぐときの水分量から色々ね」
にこ「え?本当?やったー!」
74: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 21:03:12.37 ID:E9AL+0kF
こころ「そういえばお母様、今日は鉛筆の袋詰めはしないのですか?」
母「ああ、この後やるわよ」
にこ「この後って、仕事は?」
母「少し休むわ。本当は出たいけど、虎太郎が治らないと、ベビーシッターさんに預けることもできないし」
にこ「そう……まあこれでママも少しは疲れを癒せるのかしらね」
母「そうね…災い転じて、じゃないけど」
母「って、もうこんな時間よ。早くみんな学校行かないと遅刻するわよ!」
にこ「げっ!本当だ!」
こころ「行ってきます」
ここあ「行ってきまーす」
にこ「行ってきまあす」
母「……ふう。疲れを癒せる、か。確かに必要かもしれないわ今の私には」
母「……でも、もちろんその間給料は出ないのよね……」
母「ああ、この後やるわよ」
にこ「この後って、仕事は?」
母「少し休むわ。本当は出たいけど、虎太郎が治らないと、ベビーシッターさんに預けることもできないし」
にこ「そう……まあこれでママも少しは疲れを癒せるのかしらね」
母「そうね…災い転じて、じゃないけど」
母「って、もうこんな時間よ。早くみんな学校行かないと遅刻するわよ!」
にこ「げっ!本当だ!」
こころ「行ってきます」
ここあ「行ってきまーす」
にこ「行ってきまあす」
母「……ふう。疲れを癒せる、か。確かに必要かもしれないわ今の私には」
母「……でも、もちろんその間給料は出ないのよね……」
77: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 21:35:11.72 ID:E9AL+0kF
母(結局仕事は一週間休むことになり、次週から復帰したわ)
母(仕方ないこととはいえ、今は少しでも多く稼がないといけない)
母(このままじゃUTXの入学金すら払えない……)
母(……)
母「ねえにこ、今度の土日、何か予定あるかしら?」
にこ「え?まあ今のところ特にないけど」
母「じゃあ悪いんだけど、虎太郎見ててくれない?ママちょっと土日に予定が入っちゃって」
にこ「?別にいいけど」
母「ありがと。お願いね」
にこ「……以前から子供のために土日はほとんど家にいるママが、用事?なにかしら…」
母(仕方ないこととはいえ、今は少しでも多く稼がないといけない)
母(このままじゃUTXの入学金すら払えない……)
母(……)
母「ねえにこ、今度の土日、何か予定あるかしら?」
にこ「え?まあ今のところ特にないけど」
母「じゃあ悪いんだけど、虎太郎見ててくれない?ママちょっと土日に予定が入っちゃって」
にこ「?別にいいけど」
母「ありがと。お願いね」
にこ「……以前から子供のために土日はほとんど家にいるママが、用事?なにかしら…」
81: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/06/28(日) 23:03:40.32 ID:E9AL+0kF
土曜日
先輩「ここに座ってやってもらいます」
母「こ、こんな道の真ん中で……」
先輩「この横断歩道を向こう側から渡ってくる人数を数えて下さい」
母「け、けっこう人通り多いですね…」
先輩「土曜日ですからね。まあ正確にとは言いません。初心者なんで多少の見落としや取りこぼしはあるでしょうから」
先輩「ここのカウンターで男性、こっちのカウンターで女性をカウントして下さい」
母「はい……あの、他のカウンターは?なんか10個くらいついてますけど」
先輩「今回は使いません」
母「今回は…?」
先輩「まあ慣れた人だと年代別とかこっち側から渡る人とか数えるんですが、矢澤さんは通行人調査は初めてなんで、まずはその2つでやりましょう」
母「わ、わかりました」
先輩「とりあえずこの場所で2時間やってもらいます」
先輩「私は監督として見ていますので、困ったことがあったら言って下さい」
母「はい、わかりました」
先輩「ここに座ってやってもらいます」
母「こ、こんな道の真ん中で……」
先輩「この横断歩道を向こう側から渡ってくる人数を数えて下さい」
母「け、けっこう人通り多いですね…」
先輩「土曜日ですからね。まあ正確にとは言いません。初心者なんで多少の見落としや取りこぼしはあるでしょうから」
先輩「ここのカウンターで男性、こっちのカウンターで女性をカウントして下さい」
母「はい……あの、他のカウンターは?なんか10個くらいついてますけど」
先輩「今回は使いません」
母「今回は…?」
先輩「まあ慣れた人だと年代別とかこっち側から渡る人とか数えるんですが、矢澤さんは通行人調査は初めてなんで、まずはその2つでやりましょう」
母「わ、わかりました」
先輩「とりあえずこの場所で2時間やってもらいます」
先輩「私は監督として見ていますので、困ったことがあったら言って下さい」
母「はい、わかりました」
115: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/06/29(月) 15:57:11.15 ID:lUP4B28g
母「1、2、3……あ、あれは女性か。間違って…ってあれ?どうやって減らせば……あ!数え忘れ……ちょっとあの子供男の子か女の子かわからないし!ああーもう!」
母「やっと赤信号になった……たった一回やっただけでこんなに疲れるなんて…」ダラーン
先輩「矢澤さん。待機中も姿勢をなるべく崩さないで下さい」
母「えっ?」
先輩「ここは色んな人からみられる場所です。だらけた姿勢では仕事に対するイメージやあなた自身のイメージを損ないます」
先輩「なるべく背筋は伸ばしたままで、足組みや腕組みもだめです。どんな時でも人に見られているという意識を忘れずに」
母「は、はい。わかりました…」
母(こ、こんなに難しくて疲れるものだったなんて……正直この仕事舐めてたわ)
母「ああっ、子供の集団が!お願い走らないでえ!わけがわからなくなるからー!」
母「ちょっと!なんで急にUターンするのよ!だったら最初から渡らないでよ!」
母「ちょっとあの車停止線越えすぎ!歩行者が見えないじゃない!」
母「ああああああー……赤信号が恋しい……」
母「やっと赤信号になった……たった一回やっただけでこんなに疲れるなんて…」ダラーン
先輩「矢澤さん。待機中も姿勢をなるべく崩さないで下さい」
母「えっ?」
先輩「ここは色んな人からみられる場所です。だらけた姿勢では仕事に対するイメージやあなた自身のイメージを損ないます」
先輩「なるべく背筋は伸ばしたままで、足組みや腕組みもだめです。どんな時でも人に見られているという意識を忘れずに」
母「は、はい。わかりました…」
母(こ、こんなに難しくて疲れるものだったなんて……正直この仕事舐めてたわ)
母「ああっ、子供の集団が!お願い走らないでえ!わけがわからなくなるからー!」
母「ちょっと!なんで急にUターンするのよ!だったら最初から渡らないでよ!」
母「ちょっとあの車停止線越えすぎ!歩行者が見えないじゃない!」
母「ああああああー……赤信号が恋しい……」
116: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/06/29(月) 15:57:38.27 ID:lUP4B28g
日曜日
母「……」カチカチカチ
先輩「はい、時間です。これで調査は終了です」
母「え?あら、もうそんな時間でしたか…」
先輩「時間が短く感じるのは集中していた証拠です。二日間よく頑張りましたね」
先輩「作業も思ったよりも早く慣れていただいて、出来ればこのまま継続してお願いしたいものです」
母「あ、ありがとうございます」
母「でも本来は土日は子供の世話があって……継続はちょっと難しいですね」
先輩「それは仕方ないですね」
先輩「はい、給料です」
母「あ、ありがとうございます」
母(手渡しなんだ…)
先輩「もし機会があれば、また応募して下さい。お疲れ様でした」
母「お疲れ様でした」
給料チラッ
母「……まあこんなものか…」
母「これじゃあ継続して仕事する気にはならないわね……」
母「……」カチカチカチ
先輩「はい、時間です。これで調査は終了です」
母「え?あら、もうそんな時間でしたか…」
先輩「時間が短く感じるのは集中していた証拠です。二日間よく頑張りましたね」
先輩「作業も思ったよりも早く慣れていただいて、出来ればこのまま継続してお願いしたいものです」
母「あ、ありがとうございます」
母「でも本来は土日は子供の世話があって……継続はちょっと難しいですね」
先輩「それは仕方ないですね」
先輩「はい、給料です」
母「あ、ありがとうございます」
母(手渡しなんだ…)
先輩「もし機会があれば、また応募して下さい。お疲れ様でした」
母「お疲れ様でした」
給料チラッ
母「……まあこんなものか…」
母「これじゃあ継続して仕事する気にはならないわね……」
118: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/06/29(月) 16:06:10.08 ID:lUP4B28g
月曜日
料理長「矢澤。1つ頼みたいことがあるんだが」
母「な、なんでしょうか?」
料理長「今日の遅番の奴がどうやら家庭の不幸で休むことになってな。人数が足りなくなってしまったんだ」
料理長「夜まで働くことはできないか?」
母「え……」
母(さすがにそれは……でも、店にはこの前迷惑かけちゃったし……)
母「……」
母(い、1日だけなら…)
母「わかりました。私で良ければ」
料理長「助かるよ。まあ今日は月曜日だしそんなに忙しくはならないだろうから、なるべく早く上げてやるから」
母「はい、ありがとうございます」
母(仕方ないわね……それに給料はその分増えるし、時間超過分も上乗せされるから…)
母(あ、にこに連絡しておかないとね)
料理長「矢澤。1つ頼みたいことがあるんだが」
母「な、なんでしょうか?」
料理長「今日の遅番の奴がどうやら家庭の不幸で休むことになってな。人数が足りなくなってしまったんだ」
料理長「夜まで働くことはできないか?」
母「え……」
母(さすがにそれは……でも、店にはこの前迷惑かけちゃったし……)
母「……」
母(い、1日だけなら…)
母「わかりました。私で良ければ」
料理長「助かるよ。まあ今日は月曜日だしそんなに忙しくはならないだろうから、なるべく早く上げてやるから」
母「はい、ありがとうございます」
母(仕方ないわね……それに給料はその分増えるし、時間超過分も上乗せされるから…)
母(あ、にこに連絡しておかないとね)
120: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/06/29(月) 16:13:50.28 ID:lUP4B28g
夕方
にこ「……さて、学校も終わったし、ママに頼まれた虎太郎を迎えにいかないとね…」
生徒「ねえねえ、今日この後秋葉原でアイドルがゲリラライブやるらしいよ!」
生徒「マジ!?ゲリラってことはタダで見れるんでしょ?超ラッキーじゃーん!」
生徒「行こう行こう!」
生徒「ちょっと待ってよー」
にこ「……」
にこ「虎太郎の預けられてる託児所は反対方向……」
にこ「私もアイドルのライブ見たいけど」
にこ「ママは家のために頑張ってるんだし、仕方ないわよね」
にこ「ううん、仕方ないという考えがもうだめなのよ」
にこ「優先順位を考えたら私の行動は必然なのよ」
にこ「さて、迎えに行きますか」
にこ「あ、来月のUTXの学校説明会の紙、しっかりママに見せなきゃね」
にこ「……さて、学校も終わったし、ママに頼まれた虎太郎を迎えにいかないとね…」
生徒「ねえねえ、今日この後秋葉原でアイドルがゲリラライブやるらしいよ!」
生徒「マジ!?ゲリラってことはタダで見れるんでしょ?超ラッキーじゃーん!」
生徒「行こう行こう!」
生徒「ちょっと待ってよー」
にこ「……」
にこ「虎太郎の預けられてる託児所は反対方向……」
にこ「私もアイドルのライブ見たいけど」
にこ「ママは家のために頑張ってるんだし、仕方ないわよね」
にこ「ううん、仕方ないという考えがもうだめなのよ」
にこ「優先順位を考えたら私の行動は必然なのよ」
にこ「さて、迎えに行きますか」
にこ「あ、来月のUTXの学校説明会の紙、しっかりママに見せなきゃね」
121: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/06/29(月) 16:28:36.52 ID:lUP4B28g
数週間後
にこ「おはよう」
母「おはよう……」フゥ…
にこ「……」
にこ「ママ、大丈夫?」
母「ふえっ?何が?」
にこ「何がって、体がよ。誰がどう見ても疲労困憊してるのはわかるわ」
にこ「最近は飲食店の仕事も毎日のように夜までやってるし、土日も単発の仕事入れたりして、ほとんど休む暇ないじゃない」
母「なーに心配してるのよ。ママは頑丈だから大丈夫だって、以前言ったでしょ?」
にこ「何かあってからじゃ遅いのよ」
母「大丈夫よ。まあにこには家事とか任せてばかりで大分負担かけちゃってるけどね」
にこ「それは別にいいわよ…負担だなんて思ってないし、料理も大分覚えたしね」
にこ「あ、あと以前から言ってるけど、今週の日曜日はちょっと無理だから。学校説明会があるから」
母「大丈夫。ちゃんとわかってるから」
にこ「……それじゃ学校行ってくるわ」
母「行ってらっしゃい」
母「ふう……」ビキビキ
母「よいしょっと」
母「…かなり腰にきてるわね…立つのも一苦労だわ」
にこ「おはよう」
母「おはよう……」フゥ…
にこ「……」
にこ「ママ、大丈夫?」
母「ふえっ?何が?」
にこ「何がって、体がよ。誰がどう見ても疲労困憊してるのはわかるわ」
にこ「最近は飲食店の仕事も毎日のように夜までやってるし、土日も単発の仕事入れたりして、ほとんど休む暇ないじゃない」
母「なーに心配してるのよ。ママは頑丈だから大丈夫だって、以前言ったでしょ?」
にこ「何かあってからじゃ遅いのよ」
母「大丈夫よ。まあにこには家事とか任せてばかりで大分負担かけちゃってるけどね」
にこ「それは別にいいわよ…負担だなんて思ってないし、料理も大分覚えたしね」
にこ「あ、あと以前から言ってるけど、今週の日曜日はちょっと無理だから。学校説明会があるから」
母「大丈夫。ちゃんとわかってるから」
にこ「……それじゃ学校行ってくるわ」
母「行ってらっしゃい」
母「ふう……」ビキビキ
母「よいしょっと」
母「…かなり腰にきてるわね…立つのも一苦労だわ」
123: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/06/29(月) 16:37:04.88 ID:lUP4B28g
店長「今日から調理場スタッフとして新しく働いてくれる新人さんです。みなさんよろしく」
新人「よ、よろしくお願いします」
料理長「若いな、お前何歳だ」
新人「じゅ、19です…」
料理長「そうか。よし、矢澤!」
母「はい?」
料理長「お前こいつの教育係な。仕事教えてやれ」
母「ええっ?わ、私が?」
新人「よろしくお願いいたします!矢澤さん」
母「あ、よ、よろしく」
母(私もついに仕事を教える立場か……)
母(最近はもう夜まで働くのが当たり前になっちゃったし)
母(自分で言うのもなんだけど、頑張ってるから、信頼度も上がったのかな)
新人「よ、よろしくお願いします」
料理長「若いな、お前何歳だ」
新人「じゅ、19です…」
料理長「そうか。よし、矢澤!」
母「はい?」
料理長「お前こいつの教育係な。仕事教えてやれ」
母「ええっ?わ、私が?」
新人「よろしくお願いいたします!矢澤さん」
母「あ、よ、よろしく」
母(私もついに仕事を教える立場か……)
母(最近はもう夜まで働くのが当たり前になっちゃったし)
母(自分で言うのもなんだけど、頑張ってるから、信頼度も上がったのかな)
124: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/06/29(月) 16:47:41.57 ID:lUP4B28g
翌日 学校
にこ「~~♪」
にこ(次の日曜日はいよいよ学校説明会…しかもスクールアイドルによるライブも見られるなんて、今からワクワクドキドキが止まらないわね)
生徒A「今週からうちのお姉ちゃんが飲食店でバイト始めたんだよね」
生徒B「へえーバイトって響き、なんかいいよね」
生徒A「そこでね、仕事教えてくれる主婦の人がいるらしいんだけど、その主婦の娘さんが私たちと同じ中3らしいんだ」
生徒B「へえー」
にこ「……!」ピクッ
生徒B「もしかしたらうちらの学校の生徒かも」
生徒A「ありえるー!今度名前聞いてみるよ」
生徒A「でもその主婦ってすごい頑張り屋さんらしくて、なんでもその娘の入学金や学費稼ぐために、元々昼勤だけだったシフトを通しにしたり、他にも日雇いの仕事したりして超頑張ってるんだってー」
生徒B「へえー、なんか苦労人、って感じで泣けるねえ、ドラマだよドラマ」
にこ「……」ガタッ
にこ(なんか居心地悪いわね。トイレ行こ)
にこ「~~♪」
にこ(次の日曜日はいよいよ学校説明会…しかもスクールアイドルによるライブも見られるなんて、今からワクワクドキドキが止まらないわね)
生徒A「今週からうちのお姉ちゃんが飲食店でバイト始めたんだよね」
生徒B「へえーバイトって響き、なんかいいよね」
生徒A「そこでね、仕事教えてくれる主婦の人がいるらしいんだけど、その主婦の娘さんが私たちと同じ中3らしいんだ」
生徒B「へえー」
にこ「……!」ピクッ
生徒B「もしかしたらうちらの学校の生徒かも」
生徒A「ありえるー!今度名前聞いてみるよ」
生徒A「でもその主婦ってすごい頑張り屋さんらしくて、なんでもその娘の入学金や学費稼ぐために、元々昼勤だけだったシフトを通しにしたり、他にも日雇いの仕事したりして超頑張ってるんだってー」
生徒B「へえー、なんか苦労人、って感じで泣けるねえ、ドラマだよドラマ」
にこ「……」ガタッ
にこ(なんか居心地悪いわね。トイレ行こ)
125: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/06/29(月) 16:56:00.30 ID:lUP4B28g
にこ(……あいつらの話してたこと、十中八九うちのママのことよね)
にこ(…最近やたら働いてるのは知ってたけど、私の学費を稼ぐため…?)
にこ(……冷静に考えたらそうよね。確かに以前も裕福ではなかったけど、普通の暮らしをしてきたはず)
にこ(それに不満はなかった……ママが働き詰めになったのは、おそらく私がUTXの話をしてから)
にこ(……私立ってそんなにお金かかるのかしら。私、学校の特性や設備ばかりに注目してて、肝心のそっちを全然調べてなかったわ)
にこ(……ママが働き詰めになったのは、私のせい…)
にこ(…最近やたら働いてるのは知ってたけど、私の学費を稼ぐため…?)
にこ(……冷静に考えたらそうよね。確かに以前も裕福ではなかったけど、普通の暮らしをしてきたはず)
にこ(それに不満はなかった……ママが働き詰めになったのは、おそらく私がUTXの話をしてから)
にこ(……私立ってそんなにお金かかるのかしら。私、学校の特性や設備ばかりに注目してて、肝心のそっちを全然調べてなかったわ)
にこ(……ママが働き詰めになったのは、私のせい…)
127: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/06/29(月) 17:03:40.79 ID:lUP4B28g
日曜日
ガヤガヤ……
にこ「……」
にこ(学校説明会の集合場所にきたはいいけど)
にこ(なによこれ!参加者お嬢様ばっかりじゃない!)
にこ(みんなバッチリ化粧決めて……しかもほとんどが母親同伴)
にこ(私なんて一人よ!しかも服装に至ってはパーカーよ!せめて制服にするべきだったわ…)
にこ(…いえ、逆に言えば、みんな着飾っていないと不安になるということ)
にこ(素の部分なら私だって負けてないはずよ)
にこ(アイドルは見た目も大事だけど、中身、キャラクターも重要なのよ)
にこ(ふふん。アイドルをただの装備品にしか思ってない人には、心からアイドルになれる私には敵わないわよ)
にこ(見てなさい。誰がライバルになるかわからないけど、私がいずれこのUTXの頂点に立つんだから!)
ガヤガヤ……
にこ「……」
にこ(学校説明会の集合場所にきたはいいけど)
にこ(なによこれ!参加者お嬢様ばっかりじゃない!)
にこ(みんなバッチリ化粧決めて……しかもほとんどが母親同伴)
にこ(私なんて一人よ!しかも服装に至ってはパーカーよ!せめて制服にするべきだったわ…)
にこ(…いえ、逆に言えば、みんな着飾っていないと不安になるということ)
にこ(素の部分なら私だって負けてないはずよ)
にこ(アイドルは見た目も大事だけど、中身、キャラクターも重要なのよ)
にこ(ふふん。アイドルをただの装備品にしか思ってない人には、心からアイドルになれる私には敵わないわよ)
にこ(見てなさい。誰がライバルになるかわからないけど、私がいずれこのUTXの頂点に立つんだから!)
128: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/06/29(月) 17:15:41.96 ID:lUP4B28g
とある日
店員「へっ?うちのステージでライブがしたい?」
にこ「はい…だめですか?」
店員「いや、だめじゃないけど……君、何歳?」
にこ「14です」
店員「…まあ見た感じは悪くはないが……他のメンバーは?」
にこ「いません」
店員「ソロか…まあソロ活動してるアイドルも最近は多いし、否定はしないが…」
にこ(感触が悪いわね。やっぱり中学生が一人でライブやるだなんて変なのかしら)
にこ(でも簡単には引き下がれないのよ。こうやってライブをして稼げたら、学費の足しにもなるし、何よりアイドルとしての経験値が増える)
にこ(大丈夫よ。歌や踊りはいつも家でやってたんだから)
店員「君、うちのライブハウスのハウスルールは知ってるかい?」
にこ「ハウスルール?」
店員「まあ簡単に言うと、出演料とノルマだ」
にこ「??」
店員「へっ?うちのステージでライブがしたい?」
にこ「はい…だめですか?」
店員「いや、だめじゃないけど……君、何歳?」
にこ「14です」
店員「…まあ見た感じは悪くはないが……他のメンバーは?」
にこ「いません」
店員「ソロか…まあソロ活動してるアイドルも最近は多いし、否定はしないが…」
にこ(感触が悪いわね。やっぱり中学生が一人でライブやるだなんて変なのかしら)
にこ(でも簡単には引き下がれないのよ。こうやってライブをして稼げたら、学費の足しにもなるし、何よりアイドルとしての経験値が増える)
にこ(大丈夫よ。歌や踊りはいつも家でやってたんだから)
店員「君、うちのライブハウスのハウスルールは知ってるかい?」
にこ「ハウスルール?」
店員「まあ簡単に言うと、出演料とノルマだ」
にこ「??」
138: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/07/01(水) 19:00:20.12 ID:5B6azBxm
店員「ライブに出演するというだけでもうちは2万の出演料が必要だ」
にこ「にっ…2万!?」
店員「その出演料をチケットを売りさばいて稼ぐ、というのがスタイルなんだよ。チケットは1枚1000円。つまり、最低でも20人は連れてこないと元は取れない」
にこ「20人…」
店員「別にライブをやろうというその意気は否定はしない。だが、君は活動もほとんどしていなかったようだし、さすがに最初からたった一人で全てやろうとするのは無茶なんじゃないかな」
にこ「……ぐ」
店員「ましてやここはアイドルの聖地。厳しいことを言うようだが、普通の中学生がいきなりステージに上がったからって、誰も見向きはしないよ」
にこ「私は!」
店員「?」
にこ「……いえ、何でもないです」
にこ「にっ…2万!?」
店員「その出演料をチケットを売りさばいて稼ぐ、というのがスタイルなんだよ。チケットは1枚1000円。つまり、最低でも20人は連れてこないと元は取れない」
にこ「20人…」
店員「別にライブをやろうというその意気は否定はしない。だが、君は活動もほとんどしていなかったようだし、さすがに最初からたった一人で全てやろうとするのは無茶なんじゃないかな」
にこ「……ぐ」
店員「ましてやここはアイドルの聖地。厳しいことを言うようだが、普通の中学生がいきなりステージに上がったからって、誰も見向きはしないよ」
にこ「私は!」
店員「?」
にこ「……いえ、何でもないです」
139: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/07/01(水) 19:00:49.85 ID:5B6azBxm
にこ「金、金、金…世の中金か」
にこ「……アイドルとして活動するにも金、高校に行くのにも金……なによそれ。お金がない人は全て諦めなさいって言ってるようなものじゃない」
にこ「……でも、普通にバイトしようにも私はまだ中学生。中学生ができるバイトなんてほとんどないわ」
にこ「ママに相談したところで反対されるのは見えてるし……」
にこ「……でもこのままじゃママが…」
テクテク
にこ「あ…UTX…」
にこ「…何度みても立派な校舎ね。よく考えたら学費が高いのも当たり前ね」
にこ「あそこのモニターはいつも何かしらのアイドルの映像が流れてるし……本当に学校か疑いたくなるような設備ね」
にこ「……ここに行けば私は…」
通行人「…ふん。何がUTXよ」
にこ「!?」
にこ「……アイドルとして活動するにも金、高校に行くのにも金……なによそれ。お金がない人は全て諦めなさいって言ってるようなものじゃない」
にこ「……でも、普通にバイトしようにも私はまだ中学生。中学生ができるバイトなんてほとんどないわ」
にこ「ママに相談したところで反対されるのは見えてるし……」
にこ「……でもこのままじゃママが…」
テクテク
にこ「あ…UTX…」
にこ「…何度みても立派な校舎ね。よく考えたら学費が高いのも当たり前ね」
にこ「あそこのモニターはいつも何かしらのアイドルの映像が流れてるし……本当に学校か疑いたくなるような設備ね」
にこ「……ここに行けば私は…」
通行人「…ふん。何がUTXよ」
にこ「!?」
142: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/07/01(水) 19:42:21.97 ID:5B6azBxm
通行人「流行りに乗っかって知名度を上げて全国から生徒を集めようって魂胆が見え見えなのよ。これだから私立は…所詮私立は経営者の金の肥やしなのよ」
にこ(何コイツ……いきなりUTXdisり始めたし…)
通行人「歴史と伝統を重んじる和の心はもうここにはないのかしら……」
にこ(和の心って……ド金髪のあんたが言っても全く説得力ないわよ)
通行人「ん?」チラッ
にこ「!」
通行人「あなた何よ?私のこと見て」
にこ(やば。こういうタイプの人種だったのか)
通行人「あなたもまさかUTXに憧れてる人かしら?」
にこ「……だったらなんなのよ」
通行人「ここはアイドルの育成を目的に造られた女子校よ。まさかあなたアイドル目指すの?」
にこ「……」
通行人「…違うのね。じゃあいい」
にこ「目指すわよ」
通行人「!?」
にこ「私はアイドルを目指す。世間からは白い目で見られることもあるかもしれないけど、そんなの構わない」
にこ「あんたみたいに、何も知りもしないで頭ごなしに否定する人もいるだろうけど、現にアイドルという存在に勇気や笑顔をもらった人はたくさんいるの」
にこ「私もそう。だから私自身もそういう存在になりたいと思った。いや、決めたの」
にこ「笑いたきゃ笑えばいいわ。私はこれからも、この道を選んだことを後悔することはない」
通行人「……」ジーッ
にこ「な、なんなのよ」
通行人「…後悔、するわよ?」
にこ「?」
にこ(何コイツ……いきなりUTXdisり始めたし…)
通行人「歴史と伝統を重んじる和の心はもうここにはないのかしら……」
にこ(和の心って……ド金髪のあんたが言っても全く説得力ないわよ)
通行人「ん?」チラッ
にこ「!」
通行人「あなた何よ?私のこと見て」
にこ(やば。こういうタイプの人種だったのか)
通行人「あなたもまさかUTXに憧れてる人かしら?」
にこ「……だったらなんなのよ」
通行人「ここはアイドルの育成を目的に造られた女子校よ。まさかあなたアイドル目指すの?」
にこ「……」
通行人「…違うのね。じゃあいい」
にこ「目指すわよ」
通行人「!?」
にこ「私はアイドルを目指す。世間からは白い目で見られることもあるかもしれないけど、そんなの構わない」
にこ「あんたみたいに、何も知りもしないで頭ごなしに否定する人もいるだろうけど、現にアイドルという存在に勇気や笑顔をもらった人はたくさんいるの」
にこ「私もそう。だから私自身もそういう存在になりたいと思った。いや、決めたの」
にこ「笑いたきゃ笑えばいいわ。私はこれからも、この道を選んだことを後悔することはない」
通行人「……」ジーッ
にこ「な、なんなのよ」
通行人「…後悔、するわよ?」
にこ「?」
145: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/07/01(水) 19:52:02.49 ID:5B6azBxm
通行人「靴」
にこ「は?」
通行人「つま先の革、はがれてるわよ」
にこ「!」
通行人「アイドルを目指すならそういうところに気を使うべきじゃないかしら。さっきの熱弁は口だけかしら?」
にこ「ーー!」
通行人「それとも、新しい靴を買うお金もないのかしら?」
にこ「あんたねえ!」
通行人「ごめんなさい。さすがに言い過ぎたわ。そんな人が私立のUTXを目指すはずないものね」
にこ「…あんた、最悪な性格してるわね」
通行人「ついでにもう1つ教えてあげるわ」
通行人「夢って、どんなに努力しても、掴めないこともあるのよ」
にこ「は?」
通行人「それじゃあね。せいぜい頑張ってね」
にこ「…今日はきっと厄日なのね」
にこ「は?」
通行人「つま先の革、はがれてるわよ」
にこ「!」
通行人「アイドルを目指すならそういうところに気を使うべきじゃないかしら。さっきの熱弁は口だけかしら?」
にこ「ーー!」
通行人「それとも、新しい靴を買うお金もないのかしら?」
にこ「あんたねえ!」
通行人「ごめんなさい。さすがに言い過ぎたわ。そんな人が私立のUTXを目指すはずないものね」
にこ「…あんた、最悪な性格してるわね」
通行人「ついでにもう1つ教えてあげるわ」
通行人「夢って、どんなに努力しても、掴めないこともあるのよ」
にこ「は?」
通行人「それじゃあね。せいぜい頑張ってね」
にこ「…今日はきっと厄日なのね」
156: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/07/02(木) 07:24:38.74 ID:z5ohLd2x
にこ「一体なんだったの?あいつ……なんであんな見ず知らずのやつに説教されなきゃいけなかったのよ…」
にこ「……」靴チラッ
にこ「ママに言えば買ってくれるとはおもうけど…」
にこ「…私のために働いてくれてるのに、私が足を引っ張るわけにはいかないわよね」
にこ「……帰ろ」
にこ「……」靴チラッ
にこ「ママに言えば買ってくれるとはおもうけど…」
にこ「…私のために働いてくれてるのに、私が足を引っ張るわけにはいかないわよね」
にこ「……帰ろ」
160: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/07/02(木) 19:42:09.95 ID:z5ohLd2x
家
にこ「ただいまー」
虎太郎「だー」
シーン
にこ「あら、誰も帰ってないのかしら」
にこ「そういえばこころとここあは運動会の準備があるって言ってたわね。忘れてたわ」
にこ「ママは仕事……私が全部やらないとね」
ガチャーン
にこ「!?」
虎太郎「……」
にこ「ママの引き出しをひっくり返して…」
にこ「虎太郎?大丈夫?怪我はない!?」
虎太郎「……う」
にこ「…とくに外傷は見当たらないわね。とりあえずよかったわ」
にこ「片付けないと……ん?」
にこ「これは……ママの預金通帳」
にこ「ただいまー」
虎太郎「だー」
シーン
にこ「あら、誰も帰ってないのかしら」
にこ「そういえばこころとここあは運動会の準備があるって言ってたわね。忘れてたわ」
にこ「ママは仕事……私が全部やらないとね」
ガチャーン
にこ「!?」
虎太郎「……」
にこ「ママの引き出しをひっくり返して…」
にこ「虎太郎?大丈夫?怪我はない!?」
虎太郎「……う」
にこ「…とくに外傷は見当たらないわね。とりあえずよかったわ」
にこ「片付けないと……ん?」
にこ「これは……ママの預金通帳」
161: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/07/02(木) 19:42:39.54 ID:z5ohLd2x
にこ「……」チラッ
にこ「あら、結構貯まってる」
にこ「…そりゃそうよね。あれだけ身を粉にして働いてるんだから」
にこ「…でも、自分が働いてるんだから自分の為に使えばいいのに……」
にこ「……やっぱり私が」
ガチャ
ここあ「ただいまー」
にこ「!」ササッ
こころ「あら?部屋が散らかって」
にこ「ごめんねーちょっと物をひっくり返しちゃって。すぐ片付けるから」
ここあ「もうー、ドジだなーお姉ちゃんは。仕方ないから手伝ってあげるよ」
にこ「あら、ありがとう」
こころ「じゃあ私は虎太郎と遊んでますね」
にこ「ありがとう。でも二人とも、まずはうがいと手洗いを忘れずにね」
二人「はーい」
にこ「……」
にこ「あら、結構貯まってる」
にこ「…そりゃそうよね。あれだけ身を粉にして働いてるんだから」
にこ「…でも、自分が働いてるんだから自分の為に使えばいいのに……」
にこ「……やっぱり私が」
ガチャ
ここあ「ただいまー」
にこ「!」ササッ
こころ「あら?部屋が散らかって」
にこ「ごめんねーちょっと物をひっくり返しちゃって。すぐ片付けるから」
ここあ「もうー、ドジだなーお姉ちゃんは。仕方ないから手伝ってあげるよ」
にこ「あら、ありがとう」
こころ「じゃあ私は虎太郎と遊んでますね」
にこ「ありがとう。でも二人とも、まずはうがいと手洗いを忘れずにね」
二人「はーい」
にこ「……」
165: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/07/03(金) 18:46:08.30 ID:1u7Xh/ph
とある日
新人「おはざまーす」
母「おはよう、って、あなた、手洗いは?」
新人「あ、すみません」ジャー
母「手洗いは必ずやるのよ」
新人「はーーい」
新人「ん?あ、これ美味しそう」ヒョイパク
料理長「!?」
料理長「おいお前何やってんだ!」
新人「ひえっ!」
料理長「矢澤。お前あいつの教育係だよな。なに教えてるんだ?」
母「すみません」
料理長「お前がしっかり教えないからあんな感じになるんじゃないのか?ああ?」
母「すみません」
料理長「すみませんすみませんばかりだなお前は。母親だから人を育てることは得意なのかと思ったら……」
母「……」
料理長「もっと厳しくしつけとけ!」
母「はい……」
新人「矢澤さん、さっき料理長に怒られてましたね。なんかやったんですか?」
母「え、いや、いつものことよ…」
母(誰のせいだと思ってるのよ!)
新人「おはざまーす」
母「おはよう、って、あなた、手洗いは?」
新人「あ、すみません」ジャー
母「手洗いは必ずやるのよ」
新人「はーーい」
新人「ん?あ、これ美味しそう」ヒョイパク
料理長「!?」
料理長「おいお前何やってんだ!」
新人「ひえっ!」
料理長「矢澤。お前あいつの教育係だよな。なに教えてるんだ?」
母「すみません」
料理長「お前がしっかり教えないからあんな感じになるんじゃないのか?ああ?」
母「すみません」
料理長「すみませんすみませんばかりだなお前は。母親だから人を育てることは得意なのかと思ったら……」
母「……」
料理長「もっと厳しくしつけとけ!」
母「はい……」
新人「矢澤さん、さっき料理長に怒られてましたね。なんかやったんですか?」
母「え、いや、いつものことよ…」
母(誰のせいだと思ってるのよ!)
167: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/07/03(金) 18:56:48.02 ID:1u7Xh/ph
夜
母「はあーっ。もうなんなのかしらあの子。なんで教えたことができないのかしら…」
母「おかげで私はいつも料理長に怒られて……以前より怒られる回数増えたかもしれないわ」
母「…ストレスで死にそう」
ガチャ
母「ただいま…」
にこ「おかえり」
ここあ「ねえママ!聞いて聞いて!」
母「ちょっ…どうしたのそんなに慌てて」
こころ「虎太郎が言葉を!」
母「!」
虎太郎「にっこにっこにー…」
母「……はは。うちの子らしいわね」
にこ「まあまだ棒読みだけど、とりあえずスーパーアイドルとしての第一歩を踏み出したのは間違いないわ」
母「あら、虎太郎にもアイドルさせるつもり?」
にこ「させるつもりはないわよ。ただ自ら選ぶ可能性だってあるでしょ」
虎太郎「にっこにっこにー…」
ここあ「にっこにっこにー!」
こころ「にっこにっこにー!」
母「ふふっ」
母(どんなに疲れた仕事のあとでも……この子たちの笑顔を見たら全てが許せるわ)
母(この子たちのためなら私はどんなことでも頑張れる…)
にこ「……」
母「はあーっ。もうなんなのかしらあの子。なんで教えたことができないのかしら…」
母「おかげで私はいつも料理長に怒られて……以前より怒られる回数増えたかもしれないわ」
母「…ストレスで死にそう」
ガチャ
母「ただいま…」
にこ「おかえり」
ここあ「ねえママ!聞いて聞いて!」
母「ちょっ…どうしたのそんなに慌てて」
こころ「虎太郎が言葉を!」
母「!」
虎太郎「にっこにっこにー…」
母「……はは。うちの子らしいわね」
にこ「まあまだ棒読みだけど、とりあえずスーパーアイドルとしての第一歩を踏み出したのは間違いないわ」
母「あら、虎太郎にもアイドルさせるつもり?」
にこ「させるつもりはないわよ。ただ自ら選ぶ可能性だってあるでしょ」
虎太郎「にっこにっこにー…」
ここあ「にっこにっこにー!」
こころ「にっこにっこにー!」
母「ふふっ」
母(どんなに疲れた仕事のあとでも……この子たちの笑顔を見たら全てが許せるわ)
母(この子たちのためなら私はどんなことでも頑張れる…)
にこ「……」
172: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/07/03(金) 19:35:21.51 ID:1u7Xh/ph
とある日の朝
母「……う」ボーッ
母「だるい……というか頭が痛い……」
母「……もしかして」
体温計ピピッ
母「…38度」
母「やってしまったわ……」
母「…だめ、今日は土曜日。今日は交通整備のバイトがあるのよ…休むわけには」
母「幸いそんなに忙しくはなさそうだし、きっと大丈夫よ」ムクッ
母「朝5時……虎太郎の世話はにこに頼んであるし、バレないうちに出掛けましょ」
母「うちの子たちはなぜか鋭いし、体調不良がバレるといけないし」
母「うう……」フラッ
母「……う」ボーッ
母「だるい……というか頭が痛い……」
母「……もしかして」
体温計ピピッ
母「…38度」
母「やってしまったわ……」
母「…だめ、今日は土曜日。今日は交通整備のバイトがあるのよ…休むわけには」
母「幸いそんなに忙しくはなさそうだし、きっと大丈夫よ」ムクッ
母「朝5時……虎太郎の世話はにこに頼んであるし、バレないうちに出掛けましょ」
母「うちの子たちはなぜか鋭いし、体調不良がバレるといけないし」
母「うう……」フラッ
180: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/07/04(土) 07:45:34.32 ID:myrvwZz3
母「どうぞー、どうぞー…」
母(思ったよりは疲れるけど、居酒屋よりはマシね。ストレスがないのがでかいわ)
通行人「あのーすみません」
母「はい?」
通行人「道を聞きたいんですけど…」
母(いるのよね、交通整備の人間を道案内の人と勘違いする人。まあ私は多少この近辺には詳しいからいいけど)
通行人「音ノ木坂学院っていう女子校はどこにありますかね?」
母「ああ、それなら……」
母(音ノ木坂か……場所を探してるんだから在校生じゃないわよね。何の用かしら)
通行人「あ、ありがとうございます」
母「いえ…」
母(あ、今の身ぶり手振りで少し頭が…)クラッ
通行人「!」
ガシッ
通行人「だ、大丈夫ですか!?」
母「え、ええ。すみません…」
ピタッ…
通行人「す、凄い熱ですよ!こんなところにいる場合じゃないですよ!早く病院に…」
母「お願い……誰にも言わないで……」
通行人「え」
母(思ったよりは疲れるけど、居酒屋よりはマシね。ストレスがないのがでかいわ)
通行人「あのーすみません」
母「はい?」
通行人「道を聞きたいんですけど…」
母(いるのよね、交通整備の人間を道案内の人と勘違いする人。まあ私は多少この近辺には詳しいからいいけど)
通行人「音ノ木坂学院っていう女子校はどこにありますかね?」
母「ああ、それなら……」
母(音ノ木坂か……場所を探してるんだから在校生じゃないわよね。何の用かしら)
通行人「あ、ありがとうございます」
母「いえ…」
母(あ、今の身ぶり手振りで少し頭が…)クラッ
通行人「!」
ガシッ
通行人「だ、大丈夫ですか!?」
母「え、ええ。すみません…」
ピタッ…
通行人「す、凄い熱ですよ!こんなところにいる場合じゃないですよ!早く病院に…」
母「お願い……誰にも言わないで……」
通行人「え」
181: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/07/04(土) 07:59:58.05 ID:myrvwZz3
母「責任者に報告されたら……間違いなく帰らされる……それじゃだめなの」
通行人「だ、だめって、何が…」
母「今私が働くか働かないかで、未来が決まる人がいる……私はその人の夢を、できる限り応援する義務が、責任があるの」
母「だって私の子供なのよ……私の元に生まれたという理由を足枷にはできないわ…」
母「だからお願い……見逃して……一生に一度のお願い」
通行人「……だからって、あなたが倒れたら元も子も……」
母「…そこは気合いよ…」
通行人「気合いって……」
通行人「……」
通行人「はい」ヒョイ
母「?何?これ」
通行人「風邪薬です。といっても市販の薬ですけど」
母「…くれるの?」
通行人「はい。どうせ私はもう必要ありませんし」
母「……いいの?」
通行人「いいんですよ。道を教えてくれたお礼です。ここで出会ったのも何かの運命。私もあなたのお子さんの夢を応援したくなりました」
通行人「今日はなんかスピリチュアルな日ですねえ」
母「す、スピ…?」
通行人「だ、だめって、何が…」
母「今私が働くか働かないかで、未来が決まる人がいる……私はその人の夢を、できる限り応援する義務が、責任があるの」
母「だって私の子供なのよ……私の元に生まれたという理由を足枷にはできないわ…」
母「だからお願い……見逃して……一生に一度のお願い」
通行人「……だからって、あなたが倒れたら元も子も……」
母「…そこは気合いよ…」
通行人「気合いって……」
通行人「……」
通行人「はい」ヒョイ
母「?何?これ」
通行人「風邪薬です。といっても市販の薬ですけど」
母「…くれるの?」
通行人「はい。どうせ私はもう必要ありませんし」
母「……いいの?」
通行人「いいんですよ。道を教えてくれたお礼です。ここで出会ったのも何かの運命。私もあなたのお子さんの夢を応援したくなりました」
通行人「今日はなんかスピリチュアルな日ですねえ」
母「す、スピ…?」
195: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/07/06(月) 19:04:26.86 ID:cwhJTess
母(結局もらった風邪薬を飲んでなんとか仕事はやり通せたわ)
母(薬をくれた子……にこと同じくらいの年齢かしら。本当に感謝だわ)
母(でもね、市販の薬って、そう効力が長続きしないのよね……)
ガチャ
母「ただいま…」フラフラ
にこ「おかえ……って、ママ!大丈夫?」
母「な、何が…?」
にこ「ふらふらじゃない!どう見たって大丈夫じゃないわよ!」
にこ「こころ!急いで冷やしたタオルと体温計を!ここあは布団を敷いて!」
こころ「は、はい!」
ここあ「わかった!」
母「だ、大丈夫よこれくらい……ちょっとスピリチュアルな魔法をかければすぐ治るわ」
にこ「とうとう発言まで支離滅裂ね。救急病院探しといた方がいいかしら」
母(薬をくれた子……にこと同じくらいの年齢かしら。本当に感謝だわ)
母(でもね、市販の薬って、そう効力が長続きしないのよね……)
ガチャ
母「ただいま…」フラフラ
にこ「おかえ……って、ママ!大丈夫?」
母「な、何が…?」
にこ「ふらふらじゃない!どう見たって大丈夫じゃないわよ!」
にこ「こころ!急いで冷やしたタオルと体温計を!ここあは布団を敷いて!」
こころ「は、はい!」
ここあ「わかった!」
母「だ、大丈夫よこれくらい……ちょっとスピリチュアルな魔法をかければすぐ治るわ」
にこ「とうとう発言まで支離滅裂ね。救急病院探しといた方がいいかしら」
199: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/07/06(月) 19:24:20.17 ID:cwhJTess
母「ふう…」グッタリ
にこ「どう?横になって少し楽になった?」
母「ええ、かなりね……」
にこ「熱は39度もあったわ。明日は仕事はお休みするしかないわね」
母「な、なに言ってるの…そんなわけには…」
にこ「無理でしょ」
母「む、無理じゃ…」
にこ「無理だって言ってるでしょ!!!!」
母「……に、にこ?」
にこ「…私、知ってるのよ。ママがなんでそこまで働き詰めになってるか」
にこ「ママは家計を潤したいって誤魔化してたけど、本当は私のせいなんでしょ。私がUTXに行きたいって言ったから」
母「……その通りよ」
母「娘が行きたい学校に行かせる。夢を追うその姿を精一杯応援したい。それは親として当たり前の感情」
母「お金だって、頑張ればいくらでも稼げるわ。大事な娘のためなら」
にこ「……だからって」
にこ「これじゃあ意味ないわよ。ママが頑張って働いて、私は志望校へ無事入学、でもその代償にママは倒れ、動けない体に…」
にこ「そんな結末じゃ全然意味ないのよ!」
にこ「どう?横になって少し楽になった?」
母「ええ、かなりね……」
にこ「熱は39度もあったわ。明日は仕事はお休みするしかないわね」
母「な、なに言ってるの…そんなわけには…」
にこ「無理でしょ」
母「む、無理じゃ…」
にこ「無理だって言ってるでしょ!!!!」
母「……に、にこ?」
にこ「…私、知ってるのよ。ママがなんでそこまで働き詰めになってるか」
にこ「ママは家計を潤したいって誤魔化してたけど、本当は私のせいなんでしょ。私がUTXに行きたいって言ったから」
母「……その通りよ」
母「娘が行きたい学校に行かせる。夢を追うその姿を精一杯応援したい。それは親として当たり前の感情」
母「お金だって、頑張ればいくらでも稼げるわ。大事な娘のためなら」
にこ「……だからって」
にこ「これじゃあ意味ないわよ。ママが頑張って働いて、私は志望校へ無事入学、でもその代償にママは倒れ、動けない体に…」
にこ「そんな結末じゃ全然意味ないのよ!」
207: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/07/07(火) 18:11:17.72 ID:muffwI1Y
にこ「私でも誰でもいいけど、ママを犠牲にした上で夢を叶えて、誰が喜ぶと思う?少なくともうちの家族にそんな人はいないわ」
にこ「だからお願い……明日は休んで」
母「にこ……」
母「ごめんね」
にこ「?」
母「うちがもう少し裕福だったら、あなたやみんなに、こんな思いさせなくて済んだのに……」
母「私も知ってるわ。あなたが色んなことを我慢してること。欲しかった服や、行きたかったアイドルのコンサートもたくさんあったでしょ」
母「でもあなたは文句も言わず今まで下の子たちの面倒を見続けてきてくれた…本当に感謝してる」
母「あなたが、私の子供でよかった、って」
母「だからせめて、アイドルになりたいって夢だけは、障害なく追わせてあげたいの…」
にこ「……」
にこ「だからお願い……明日は休んで」
母「にこ……」
母「ごめんね」
にこ「?」
母「うちがもう少し裕福だったら、あなたやみんなに、こんな思いさせなくて済んだのに……」
母「私も知ってるわ。あなたが色んなことを我慢してること。欲しかった服や、行きたかったアイドルのコンサートもたくさんあったでしょ」
母「でもあなたは文句も言わず今まで下の子たちの面倒を見続けてきてくれた…本当に感謝してる」
母「あなたが、私の子供でよかった、って」
母「だからせめて、アイドルになりたいって夢だけは、障害なく追わせてあげたいの…」
にこ「……」
208: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/07/07(火) 18:23:55.42 ID:muffwI1Y
母「ゴホッ、ゴホッ!」
にこ「ま、ママ!?」
にこ「血が……どうして!?」
母「うう……ゴホアッ!」
にこ「ちょっと待ってて!今すぐ救急車呼ぶから!」
母「待って…病院なんて行ったら……お金が…」
にこ「うるさい!黙って運ばれなさい!こんな時に使えないお金なんてなんの価値もないわ!」
ピーポーピーポー…
にこ(病院に運ばれたママ。命に別状はなかったけど、どうやら胃に穴があいていたらしい)
にこ(手術をすればほぼ完治はできるらしいけど…)
ここあ「ママ……死んじゃうの?」
にこ「バカね。死ぬわけないでしょ」
ここあ「でも胃に穴って…食べた物が落ちちゃうんじゃない?」
にこ「うーん……どうなのかしら。医学的なことは私も全然わからないから」
こころ「でもお医者さんは、手術をすれば完治するって言ってましたよ」
にこ「そうよ。だから心配することないのよ」
ここあ「…でもさ、ドラマとか見てたら、手術って失敗することもあるらしいじゃん」
にこ「ま、ママ!?」
にこ「血が……どうして!?」
母「うう……ゴホアッ!」
にこ「ちょっと待ってて!今すぐ救急車呼ぶから!」
母「待って…病院なんて行ったら……お金が…」
にこ「うるさい!黙って運ばれなさい!こんな時に使えないお金なんてなんの価値もないわ!」
ピーポーピーポー…
にこ(病院に運ばれたママ。命に別状はなかったけど、どうやら胃に穴があいていたらしい)
にこ(手術をすればほぼ完治はできるらしいけど…)
ここあ「ママ……死んじゃうの?」
にこ「バカね。死ぬわけないでしょ」
ここあ「でも胃に穴って…食べた物が落ちちゃうんじゃない?」
にこ「うーん……どうなのかしら。医学的なことは私も全然わからないから」
こころ「でもお医者さんは、手術をすれば完治するって言ってましたよ」
にこ「そうよ。だから心配することないのよ」
ここあ「…でもさ、ドラマとか見てたら、手術って失敗することもあるらしいじゃん」
215: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/07/08(水) 19:20:40.27 ID:ngoolfjO
にこ「何言ってるのよ。それは難しい手術の話でしょ。ママのは簡単なものだから失敗する可能性はほぼないってお医者さんが言ってたじゃない」
ここあ「でも……」
こころ「心配ありませんよ。きっと大丈夫です。きっと……」
虎太郎「ママ……」
にこ(うう…空気が悪い。そりゃママが手術するなんて話が出たらそうなるのはわかるけど)
にこ(ここは……せめてうわべだけでもいいから明るくしないと)
にこ「よーし!みんな、にこにー体操いくわよ!」
妹たち「!?!?」
こころ「にこにー体操?」
ここあ「なにそれ?」
にこ「いい?私のあとに続いて同じ動きをするの。虎太郎もできるところだけでいいからやってね」
虎太郎「……」
にこ「にっこにっこにー!」
妹たち「…に、にっこにっこにー…」
にこ「元気が足りない!そんなんじゃママも元気にならないわよ!」
にこ「今私たちにできることは、少しでも明るくいることよ。今みたいな暗い雰囲気じゃママまで暗くなっちゃって、病気の治りが遅くなるかもしれないわ」
にこ「だから、家族である私たちがママに元気を届けるのよ。そうすればきっとママはすぐ元気になるわ」
にこ「これは…家族である私たちにしかできないことよ」
にこ(もちろん医学的な根拠など全くない。けど、暗い顔よりは明るい顔がいいのは当たり前の話)
にこ(そしてそれを作り出すのがアイドルの役目)
にこ(なんだ……アイドルって、お金かけなくてもなれるかもしれないわね)
ここあ「でも……」
こころ「心配ありませんよ。きっと大丈夫です。きっと……」
虎太郎「ママ……」
にこ(うう…空気が悪い。そりゃママが手術するなんて話が出たらそうなるのはわかるけど)
にこ(ここは……せめてうわべだけでもいいから明るくしないと)
にこ「よーし!みんな、にこにー体操いくわよ!」
妹たち「!?!?」
こころ「にこにー体操?」
ここあ「なにそれ?」
にこ「いい?私のあとに続いて同じ動きをするの。虎太郎もできるところだけでいいからやってね」
虎太郎「……」
にこ「にっこにっこにー!」
妹たち「…に、にっこにっこにー…」
にこ「元気が足りない!そんなんじゃママも元気にならないわよ!」
にこ「今私たちにできることは、少しでも明るくいることよ。今みたいな暗い雰囲気じゃママまで暗くなっちゃって、病気の治りが遅くなるかもしれないわ」
にこ「だから、家族である私たちがママに元気を届けるのよ。そうすればきっとママはすぐ元気になるわ」
にこ「これは…家族である私たちにしかできないことよ」
にこ(もちろん医学的な根拠など全くない。けど、暗い顔よりは明るい顔がいいのは当たり前の話)
にこ(そしてそれを作り出すのがアイドルの役目)
にこ(なんだ……アイドルって、お金かけなくてもなれるかもしれないわね)
216: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/07/08(水) 19:26:49.03 ID:ngoolfjO
にこ(数日後、ママは手術に踏みきった。もちろん最初は渋っていたが、私たちの強引な説得によって、ママは手術を決断)
にこ(その後、数日でママは退院した)
母「ふう。やっぱり我が家はいいわね。落ち着くわ」
ここあ「わーい!ママー!おかえりー!」
こころ「おかえりなさいお母様」
虎太郎「ママー」
にこ「おかえりママー!」
母「ふふふ。ただいま」
母(帰ってきた場所で待っていた屈託のない笑顔たち。それを見て私は思った)
母(この場所に戻ってこれて、本当によかった、と)
にこ(その後、数日でママは退院した)
母「ふう。やっぱり我が家はいいわね。落ち着くわ」
ここあ「わーい!ママー!おかえりー!」
こころ「おかえりなさいお母様」
虎太郎「ママー」
にこ「おかえりママー!」
母「ふふふ。ただいま」
母(帰ってきた場所で待っていた屈託のない笑顔たち。それを見て私は思った)
母(この場所に戻ってこれて、本当によかった、と)
218: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/07/08(水) 19:41:00.87 ID:ngoolfjO
母(しかし、手術を決行したことやその間仕事を休んでいたことにより、金銭的な事情は劇的に変わった)
母(不足分を考えると、もはや普通の仕事で稼いでも間に合わない)
母(しかしそんなことを我が子に打ち明けるわけにもいかない……のだが……)
にこ「そうそう、ママ、これ、見て」スッ
母「これは……音ノ木坂学院の学校案内?」
にこ「私、ここに行くわ」
母「え?で、でもUTXは…」
にこ「勘違いしてほしくないから言うけど、別に金銭的な理由でUTXを諦めた訳じゃないわよ」
にこ「気づいたの私。別に、UTXに行かなくてもアイドルになれるって」
にこ「それなら、アイドル候補たちばかりのUTXより、ただの女子校の音ノ木坂に行って、そこでスーパーアイドルを目指す」
にこ「何もない環境で見つけられるものも、きっとたくさんあるわ」
にこ「それに、無名校から突如トップアイドル出現!の方がインパクトあるでしょ」
母「にこ……」
母(にこはこう言ってるけど、それが建前なのは明らかだわ)
母(やっぱり私のせいで……)
prrrr
母「?」
にこ「電話?」
母(不足分を考えると、もはや普通の仕事で稼いでも間に合わない)
母(しかしそんなことを我が子に打ち明けるわけにもいかない……のだが……)
にこ「そうそう、ママ、これ、見て」スッ
母「これは……音ノ木坂学院の学校案内?」
にこ「私、ここに行くわ」
母「え?で、でもUTXは…」
にこ「勘違いしてほしくないから言うけど、別に金銭的な理由でUTXを諦めた訳じゃないわよ」
にこ「気づいたの私。別に、UTXに行かなくてもアイドルになれるって」
にこ「それなら、アイドル候補たちばかりのUTXより、ただの女子校の音ノ木坂に行って、そこでスーパーアイドルを目指す」
にこ「何もない環境で見つけられるものも、きっとたくさんあるわ」
にこ「それに、無名校から突如トップアイドル出現!の方がインパクトあるでしょ」
母「にこ……」
母(にこはこう言ってるけど、それが建前なのは明らかだわ)
母(やっぱり私のせいで……)
prrrr
母「?」
にこ「電話?」
240: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/07/13(月) 19:07:27.47 ID:+f4IW5GK
にこ「はい矢澤です」ガチャ
にこ「……はい。少々お待ちください」
にこ「ママ。電話よ。男の人から」
母「!?」
にこ「新田さんっていう人よ。誰か知らないけど……ママ、まさか」
母「新田さん?」
母「もしもし、代わりました」
にこ「……」ジーッ
母「はい、はい……いえ、おかげさまで……」
母「…え?」
にこ「?」
母「……はい。いえ…そんな……お気持ちはありがたいですが」
にこ「……」モヤモヤ
母「少し……考えさせていただけますか」
母「はい……はい……失礼します」ガチャ
母「……ふう」
にこ「……」
にこ「……はい。少々お待ちください」
にこ「ママ。電話よ。男の人から」
母「!?」
にこ「新田さんっていう人よ。誰か知らないけど……ママ、まさか」
母「新田さん?」
母「もしもし、代わりました」
にこ「……」ジーッ
母「はい、はい……いえ、おかげさまで……」
母「…え?」
にこ「?」
母「……はい。いえ…そんな……お気持ちはありがたいですが」
にこ「……」モヤモヤ
母「少し……考えさせていただけますか」
母「はい……はい……失礼します」ガチャ
母「……ふう」
にこ「……」
256: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/07/20(月) 01:23:38.92 ID:mS230EMc
にこ「……ねえ、まさか、ママ、私たちの知らない間に…」
母「?」
にこ「……私は認めないわよ!ある日突然見知らぬ男の人が現れてもその人を父親とは呼べないから!」
母「…何を言ってるの?」
にこ「私たちのパパはこの世にただ1人よ!今さら名字だって変わりたくないし!」
母「あ、あの……」
にこ「でも、仕方ないのかな……ママが入院したのも、元はと言えば多忙さのせいだし、支えてくれる大人の人も必要よね…」
母「にこさん?」
にこ「さっきの電話…結構低い声で渋かったわね……勝手なイメージだけど、ダンディーで仕事とか凄いできそうな…」
母「おーい」
にこ「ねえママ、どんな人なの?新田さんって」
母「え?ああ、新田さんは職場の料理長よ」
にこ「ふーん……へ?」
母「?」
にこ「……私は認めないわよ!ある日突然見知らぬ男の人が現れてもその人を父親とは呼べないから!」
母「…何を言ってるの?」
にこ「私たちのパパはこの世にただ1人よ!今さら名字だって変わりたくないし!」
母「あ、あの……」
にこ「でも、仕方ないのかな……ママが入院したのも、元はと言えば多忙さのせいだし、支えてくれる大人の人も必要よね…」
母「にこさん?」
にこ「さっきの電話…結構低い声で渋かったわね……勝手なイメージだけど、ダンディーで仕事とか凄いできそうな…」
母「おーい」
にこ「ねえママ、どんな人なの?新田さんって」
母「え?ああ、新田さんは職場の料理長よ」
にこ「ふーん……へ?」
257: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/07/20(月) 01:24:54.90 ID:mS230EMc
母「まったく、勘違いもいいところね。そんなわけないでしょ」
にこ「……そ、そうよね…」
にこ「で、でも、だとしたら、なんでうちに電話を?」
母「それは……」
母「……私が退院したから、状況確認、ってとこかしら」
母「ほら、職場の責任者だから、雇ってる人間の管理はしっかりしなきゃいけないじゃない?」
にこ「そっか。それはそうね。考えたら当たり前のことよね」
母「そうよ。だから気にしないの。ああ、久々の我が家で安心したらトイレ行きたくなってきたわ」スタスタ
ここあ「……ママ、嘘ついてる」
にこ「えっ?」
ここあ「ママは嘘をつくとき、少しだけ声が高くなるんだよ。だから、あれはきっと嘘」
にこ「声が高く……?なってた?」
ここあ「うん」
にこ「まったく気付かなかったわ……ここあ、あんた目敏いわね」
ここあ「…嘘にまみれた世界だから、それに気づけなきゃ、生きていけない、って、学校の先生が教えてくれたんだ」
にこ「……小学校低学年に教える内容か?」
にこ「……そ、そうよね…」
にこ「で、でも、だとしたら、なんでうちに電話を?」
母「それは……」
母「……私が退院したから、状況確認、ってとこかしら」
母「ほら、職場の責任者だから、雇ってる人間の管理はしっかりしなきゃいけないじゃない?」
にこ「そっか。それはそうね。考えたら当たり前のことよね」
母「そうよ。だから気にしないの。ああ、久々の我が家で安心したらトイレ行きたくなってきたわ」スタスタ
ここあ「……ママ、嘘ついてる」
にこ「えっ?」
ここあ「ママは嘘をつくとき、少しだけ声が高くなるんだよ。だから、あれはきっと嘘」
にこ「声が高く……?なってた?」
ここあ「うん」
にこ「まったく気付かなかったわ……ここあ、あんた目敏いわね」
ここあ「…嘘にまみれた世界だから、それに気づけなきゃ、生きていけない、って、学校の先生が教えてくれたんだ」
にこ「……小学校低学年に教える内容か?」
259: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/07/20(月) 01:34:06.46 ID:mS230EMc
一週間後
母「長い間ご迷惑をおかけしました。今日から再びお世話になります。よろしくお願いします」
料理長「おう。よく戻ってきたな」
主任「体調はもう大丈夫なんですか?」
母「はい、おかげさまで」
新人「別にもうちょっと休んでても良かったんですよ?私が矢澤さんの代わりをバッチリ勤めあげて」
主任「君はまだまだだ」
新人「うぐっ…」
料理長「さて、早速仕事を……と、言いたいところだが」
料理長「矢澤…ちょっと事務所へ」
母「はい」
新人「な、なんですかね?料理長に呼び出しって…まさか、クビ?」
主任「わざわざ店に来させてそれはないでしょ。君は気にしなくていいから、早く仕込みをやりなさい」
新人「ふあーーい」
主任「……」
母「長い間ご迷惑をおかけしました。今日から再びお世話になります。よろしくお願いします」
料理長「おう。よく戻ってきたな」
主任「体調はもう大丈夫なんですか?」
母「はい、おかげさまで」
新人「別にもうちょっと休んでても良かったんですよ?私が矢澤さんの代わりをバッチリ勤めあげて」
主任「君はまだまだだ」
新人「うぐっ…」
料理長「さて、早速仕事を……と、言いたいところだが」
料理長「矢澤…ちょっと事務所へ」
母「はい」
新人「な、なんですかね?料理長に呼び出しって…まさか、クビ?」
主任「わざわざ店に来させてそれはないでしょ。君は気にしなくていいから、早く仕込みをやりなさい」
新人「ふあーーい」
主任「……」
261: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/07/20(月) 01:52:59.14 ID:mS230EMc
料理長「まあ、そこに座ってくれ」
母「はい…」スチャッ
料理長「…さて、話があるんだが」
母「この間の電話の件でしょうか?」
料理長「まあその通りだ」
母「……新田料理長が、私の家庭に、金銭的援助をしてくれる、という話ですか」
料理長「…矢澤がうちで働いている理由は知っている。その理由があるから、昼だけだったシフトも夜まで延ばし、土日も単発のバイトをしていることもな」
母「……」
料理長「頑張っていることは素晴らしい。だがその結果君は体調を崩した」
料理長「君はうちの大事な従業員だが同時に母親でもある。家庭を犠牲にしてまで働くのは決して正しいとは言えない」
母「……」
料理長「だから……俺が少し援助してやる。娘さんが、高校へ行くための入学金くらいは貸せる」
料理長「だから……お前はあまり無理をするな。お前がもし取り返しのつかないけがや病気になってしまったりしたら、その上での高校進学など娘も望まないだろ」
母「…娘と同じこと言いますね」
母「はい…」スチャッ
料理長「…さて、話があるんだが」
母「この間の電話の件でしょうか?」
料理長「まあその通りだ」
母「……新田料理長が、私の家庭に、金銭的援助をしてくれる、という話ですか」
料理長「…矢澤がうちで働いている理由は知っている。その理由があるから、昼だけだったシフトも夜まで延ばし、土日も単発のバイトをしていることもな」
母「……」
料理長「頑張っていることは素晴らしい。だがその結果君は体調を崩した」
料理長「君はうちの大事な従業員だが同時に母親でもある。家庭を犠牲にしてまで働くのは決して正しいとは言えない」
母「……」
料理長「だから……俺が少し援助してやる。娘さんが、高校へ行くための入学金くらいは貸せる」
料理長「だから……お前はあまり無理をするな。お前がもし取り返しのつかないけがや病気になってしまったりしたら、その上での高校進学など娘も望まないだろ」
母「…娘と同じこと言いますね」
264: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/07/20(月) 02:09:43.29 ID:mS230EMc
母「一つ、聞いていいですか?」
料理長「なんだ」
母「なんで料理長は、私にそんなことを……?料理長には何の得もないのに」
料理長「…さあな」
母「え?」
料理長「と誤魔化してもお前は納得しないだろうから話しておくか」
料理長「俺は今独身だ。バツイチのな」
料理長「俺も新婚だったころ、裕福とは言えない家庭だった。子供も二人。その頃の俺はまだ何の肩書きもない平社員。給料も安い」
料理長「とにかく出世するしかなかった。がむしゃらに働き、早く一人前になって、役職をもらい、いい給料をもらって、家庭を安定させたかった」
料理長「そしてなんとか出世して、それなりの給料をもらうようにはなった。だがその給料で安心させる家族はもうその時にはいなかった」
料理長「家庭を省みずに働きすぎた結果、家族は離れていってしまったんだ」
料理長「皮肉なもんだったよ。家族のために働いたつもりだったが、それが家族を冷えさせる原因になっていたんだからな」
母「……そんなことが」
料理長「なんだ」
母「なんで料理長は、私にそんなことを……?料理長には何の得もないのに」
料理長「…さあな」
母「え?」
料理長「と誤魔化してもお前は納得しないだろうから話しておくか」
料理長「俺は今独身だ。バツイチのな」
料理長「俺も新婚だったころ、裕福とは言えない家庭だった。子供も二人。その頃の俺はまだ何の肩書きもない平社員。給料も安い」
料理長「とにかく出世するしかなかった。がむしゃらに働き、早く一人前になって、役職をもらい、いい給料をもらって、家庭を安定させたかった」
料理長「そしてなんとか出世して、それなりの給料をもらうようにはなった。だがその給料で安心させる家族はもうその時にはいなかった」
料理長「家庭を省みずに働きすぎた結果、家族は離れていってしまったんだ」
料理長「皮肉なもんだったよ。家族のために働いたつもりだったが、それが家族を冷えさせる原因になっていたんだからな」
母「……そんなことが」
279: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/07/24(金) 21:04:53.12 ID:ctfvyvvo
放課後
にこ「……」ジーッ
にこ(ママにはあんなこと言っちゃったけど)
にこ(やっぱり行きたかったわね……この学校に)
にこ(って私なにやってるんだろ。さっさと虎太郎迎えに行かなきゃいけないのに)
にこ(それにもう決めたんだ。ここにはもう行かないって)
にこ(さて…)クルッ
ドンッ!
ズテッ
にこ「痛っ…ご、ごめんなさい。ぶつかっちゃって」
通行人「いえ……」ボーッ
にこ「怪我は……大丈夫ですか?」
通行人「いえ……」ボーッ
にこ(な、なにこの人?大丈夫なのか大丈夫じゃないのかはっきりしなさいよ)
にこ(というかどうでもよさそうな……魂が抜けてる感じね)
にこ「あ……あの…?」
通行人「……はい?」
にこ「どうかしたんですか?心ここにあらず、みたいな感じですけど」
通行人「そうですか…?別に普通ですけど」
にこ(うーん、なんかよくわかんないけどあまり関わらない方がいいみたいね。よく見たら私と同じくらいの体格で、年も同じくらいかしら)
別の通行人「こんなところにいたのね」
にこ「ん?」
通行人「あ……」
にこ「……」ジーッ
にこ(ママにはあんなこと言っちゃったけど)
にこ(やっぱり行きたかったわね……この学校に)
にこ(って私なにやってるんだろ。さっさと虎太郎迎えに行かなきゃいけないのに)
にこ(それにもう決めたんだ。ここにはもう行かないって)
にこ(さて…)クルッ
ドンッ!
ズテッ
にこ「痛っ…ご、ごめんなさい。ぶつかっちゃって」
通行人「いえ……」ボーッ
にこ「怪我は……大丈夫ですか?」
通行人「いえ……」ボーッ
にこ(な、なにこの人?大丈夫なのか大丈夫じゃないのかはっきりしなさいよ)
にこ(というかどうでもよさそうな……魂が抜けてる感じね)
にこ「あ……あの…?」
通行人「……はい?」
にこ「どうかしたんですか?心ここにあらず、みたいな感じですけど」
通行人「そうですか…?別に普通ですけど」
にこ(うーん、なんかよくわかんないけどあまり関わらない方がいいみたいね。よく見たら私と同じくらいの体格で、年も同じくらいかしら)
別の通行人「こんなところにいたのね」
にこ「ん?」
通行人「あ……」
280: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/07/24(金) 21:13:32.63 ID:ctfvyvvo
別「あら、さっそく現地調査?やるじゃない」
通「そんなんじゃ……」
別「さすがは私の娘ね。将来のビジョンを肉眼でも確かめにくるなんて」
通「……っ」
別「大丈夫よ。ママの言う通りにしていれば、きっとあなたは大人気のアイドルになれるわ」
別「そのために今まであなたに随分投資してきたんだから」
通「……うん」
にこ(なにかしらこの茶番……)
にこ(母親は娘をトップアイドルにしたい……けど娘は、どうみても喜んでいるようには見えないわね)
別「ん?あなたは?」
にこ「へっ?」
通「この人は関係ないのよ」
にこ「あ、いや、ただの通りすがりの者でして」
別「ふうん……」ジロッ
別「…勝ったわね」
にこ「は?」
通「ママ!やめてよ!そうやって私と誰かをすぐに見比べるの!」
別「あらやだ、ごめんなさい。つい癖で」
にこ「あ、いえ、ほほほ……」
にこ(なにが勝ったわね、よ!)
通「そんなんじゃ……」
別「さすがは私の娘ね。将来のビジョンを肉眼でも確かめにくるなんて」
通「……っ」
別「大丈夫よ。ママの言う通りにしていれば、きっとあなたは大人気のアイドルになれるわ」
別「そのために今まであなたに随分投資してきたんだから」
通「……うん」
にこ(なにかしらこの茶番……)
にこ(母親は娘をトップアイドルにしたい……けど娘は、どうみても喜んでいるようには見えないわね)
別「ん?あなたは?」
にこ「へっ?」
通「この人は関係ないのよ」
にこ「あ、いや、ただの通りすがりの者でして」
別「ふうん……」ジロッ
別「…勝ったわね」
にこ「は?」
通「ママ!やめてよ!そうやって私と誰かをすぐに見比べるの!」
別「あらやだ、ごめんなさい。つい癖で」
にこ「あ、いえ、ほほほ……」
にこ(なにが勝ったわね、よ!)
281: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/07/24(金) 21:20:35.35 ID:ctfvyvvo
別「あら?ツバサちゃん。その手に持っているものは?」
通「!」ギクッ
バッ
別「なになに……音ノ木坂学院…?」
別「あらツバサちゃん。滑り止めは受けなくていいと言ったはずよ?UTXはお金さえ払えば入学できる学校なんだから」
通「か……」
別「?」
通「返してっ!」バッ
別「キャッ!」
別「な、何をするの!ママに向かって!」
通「私……別にアイドルなんかになりたくない!」ダッ
別「ちょっ…待ちな……待ちなさい!」ダッ
にこ「……」
にこ「事情は違えど、行きたいところに行きたくても行けない人っているのね…」
にこ「あ、いけない。虎太郎迎えに行かなきゃ」
通「!」ギクッ
バッ
別「なになに……音ノ木坂学院…?」
別「あらツバサちゃん。滑り止めは受けなくていいと言ったはずよ?UTXはお金さえ払えば入学できる学校なんだから」
通「か……」
別「?」
通「返してっ!」バッ
別「キャッ!」
別「な、何をするの!ママに向かって!」
通「私……別にアイドルなんかになりたくない!」ダッ
別「ちょっ…待ちな……待ちなさい!」ダッ
にこ「……」
にこ「事情は違えど、行きたいところに行きたくても行けない人っているのね…」
にこ「あ、いけない。虎太郎迎えに行かなきゃ」
345: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/08(土) 23:13:47.81 ID:y42igOUG
帰り道
にこ「さーて夕飯の買い出しも終わったし、帰りましょうか虎太郎。妹たちも待ってるだろうから」
虎太郎「かえるー」
にこ「……ん?」チラッ
にこ「あら?迎えのカフェに居るの……もしかして」
虎太郎「ママー」
にこ「本当だわ……しかも一緒に居るのは…」
虎太郎「男ー」
にこ「やってくれるわね…ママったら退院直後に、アイドルだったらスキャンダルよ……」
にこ「もしかして噂の新田さんかしら」
にこ「……ここは確認しておく必要があるわね」
にこ「こんな時のために、気付かれない変装グッズを常に持ち歩いているのよ!」ジャン
虎太郎「サングラスー」
虎太郎「巻きグ…」
にこ「こら!どこでそんな言葉を!」
にこ「まあいいわ。行くわよ!コーヒー一杯で何時間でも粘ってやるわ!現場を抑えるのよ!」
虎太郎「……お腹減ったー……」
にこ「さーて夕飯の買い出しも終わったし、帰りましょうか虎太郎。妹たちも待ってるだろうから」
虎太郎「かえるー」
にこ「……ん?」チラッ
にこ「あら?迎えのカフェに居るの……もしかして」
虎太郎「ママー」
にこ「本当だわ……しかも一緒に居るのは…」
虎太郎「男ー」
にこ「やってくれるわね…ママったら退院直後に、アイドルだったらスキャンダルよ……」
にこ「もしかして噂の新田さんかしら」
にこ「……ここは確認しておく必要があるわね」
にこ「こんな時のために、気付かれない変装グッズを常に持ち歩いているのよ!」ジャン
虎太郎「サングラスー」
虎太郎「巻きグ…」
にこ「こら!どこでそんな言葉を!」
にこ「まあいいわ。行くわよ!コーヒー一杯で何時間でも粘ってやるわ!現場を抑えるのよ!」
虎太郎「……お腹減ったー……」
347: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/08(土) 23:30:28.97 ID:y42igOUG
カフェ
にこ(仕切り越しに隣の席に座ることに成功したわ)
にこ(さて、どんな会話をしてるのかしら……)
料理長「……どうだ?悪い話じゃないと思うが」
母「確かに…私、いや、私たち家族にとってはありがたいお話です…」
にこ(えっ、家族?もうそんなところにまで話が!?)
母「……だけど、やっぱり申し訳ないですし……」
母「私もそうですが、きっと娘も、そんな形での進学は望んでいません」
にこ(えっ?娘?進学?)
料理長「そこは誤魔化せば問題ないだろう。嘘も方便って言うだろ」
母「……ですが、仮にそんな大金、借りたとしても返す宛が…」
にこ(大金?一体さっきから何の話をしているの?)
料理長「別に返済に期限なんて設けない。利息もな」
料理長「何より経済的な理由で夢を断念してしまうことほど惨めで悔しいことはない」
料理長「俺は君に俺と同じ道を歩んでほしくはないんだ」
にこ(なるほどね……だいたいの話は掴めたわ)
にこ(仕切り越しに隣の席に座ることに成功したわ)
にこ(さて、どんな会話をしてるのかしら……)
料理長「……どうだ?悪い話じゃないと思うが」
母「確かに…私、いや、私たち家族にとってはありがたいお話です…」
にこ(えっ、家族?もうそんなところにまで話が!?)
母「……だけど、やっぱり申し訳ないですし……」
母「私もそうですが、きっと娘も、そんな形での進学は望んでいません」
にこ(えっ?娘?進学?)
料理長「そこは誤魔化せば問題ないだろう。嘘も方便って言うだろ」
母「……ですが、仮にそんな大金、借りたとしても返す宛が…」
にこ(大金?一体さっきから何の話をしているの?)
料理長「別に返済に期限なんて設けない。利息もな」
料理長「何より経済的な理由で夢を断念してしまうことほど惨めで悔しいことはない」
料理長「俺は君に俺と同じ道を歩んでほしくはないんだ」
にこ(なるほどね……だいたいの話は掴めたわ)
349: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/08(土) 23:43:10.70 ID:y42igOUG
料理長「君の娘が新たに決めた進学先の音ノ木坂学院……まあはっきり言うが何の取り柄もない女子校だ。そこそこ歴史があるというだけで進学率も今じゃ並以下…」
料理長「加えて生徒数も右肩下がり……統廃合の話まで上がっているくらいだ」
料理長「誰の目に見ても音ノ木坂よりUTXの方がいいのは一目瞭然……なのになぜ君は形にこだわる?」
料理長「きっと君の娘もまだ心の中ではUTXに対する未練はあるはずだ。それに今ならまだ間に合う」
料理長「矢澤。君は形にこだわりすぎて本質を見落としているんじゃないか?」
母「そ、それは……」
にこ(未練……確かになくはないわ……でも)
にこ(ママにこれ以上重荷を背負わせないで!UTXの学費知ってるの?仮にあんたがその金を出せたとして、返済するまでにママはずっと今みたいな過酷な労働をしなきゃいけなくなる……)
料理長「矢澤。もう意地を張るな」
にこ(……だめ、もう我慢できない!)
ダンッ!
「私は、音ノ木坂学院に行きたいの!」
にこ(!?)
母「!?」
料理長「!?」
料理長「加えて生徒数も右肩下がり……統廃合の話まで上がっているくらいだ」
料理長「誰の目に見ても音ノ木坂よりUTXの方がいいのは一目瞭然……なのになぜ君は形にこだわる?」
料理長「きっと君の娘もまだ心の中ではUTXに対する未練はあるはずだ。それに今ならまだ間に合う」
料理長「矢澤。君は形にこだわりすぎて本質を見落としているんじゃないか?」
母「そ、それは……」
にこ(未練……確かになくはないわ……でも)
にこ(ママにこれ以上重荷を背負わせないで!UTXの学費知ってるの?仮にあんたがその金を出せたとして、返済するまでにママはずっと今みたいな過酷な労働をしなきゃいけなくなる……)
料理長「矢澤。もう意地を張るな」
にこ(……だめ、もう我慢できない!)
ダンッ!
「私は、音ノ木坂学院に行きたいの!」
にこ(!?)
母「!?」
料理長「!?」
350: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/08(土) 23:54:51.01 ID:y42igOUG
大人の女性「えっ……」
若い女性「私、別にアイドルなんてなりたくない!UTXなんて行きたくないわ!」
にこ(あの子……さっきUTXの前にいた…)
大人「ちょっ……何言ってるのツバサちゃん。もう決めたことなのよ」
若「なんでママが勝手に決めるの?私アイドルになりたいなんて一言も言った覚えはないわ!」
大人「ちょっ……ツバサちゃん、声が大きいわよ」
若「ふーっ、ふーっ……」
にこ(あの子、かなり興奮してる……)
大人「ツバサちゃん。よく聞いて。あなたは私の娘。アイドルになるために生まれた一番星なのよ」
大人「その為に今まで色々な準備をしてきたじゃない……ダンスのレッスンや、歌のトレーニング、ファッションモデル…」
大人「あなたは私が一生懸命磨きあげた宝石なのよ。それを今さら、音ノ木坂?なんでかしら?」
若「別に……ただ、私は普通の高校生になりたいの。普通に遊んで、勉強して……」
若「何より……誰かのレールに敷かれる人生が嫌なの。それがたとえママでも」
若い女性「私、別にアイドルなんてなりたくない!UTXなんて行きたくないわ!」
にこ(あの子……さっきUTXの前にいた…)
大人「ちょっ……何言ってるのツバサちゃん。もう決めたことなのよ」
若「なんでママが勝手に決めるの?私アイドルになりたいなんて一言も言った覚えはないわ!」
大人「ちょっ……ツバサちゃん、声が大きいわよ」
若「ふーっ、ふーっ……」
にこ(あの子、かなり興奮してる……)
大人「ツバサちゃん。よく聞いて。あなたは私の娘。アイドルになるために生まれた一番星なのよ」
大人「その為に今まで色々な準備をしてきたじゃない……ダンスのレッスンや、歌のトレーニング、ファッションモデル…」
大人「あなたは私が一生懸命磨きあげた宝石なのよ。それを今さら、音ノ木坂?なんでかしら?」
若「別に……ただ、私は普通の高校生になりたいの。普通に遊んで、勉強して……」
若「何より……誰かのレールに敷かれる人生が嫌なの。それがたとえママでも」
351: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/09(日) 00:10:02.96 ID:RYLxBqDW
大人「ふーん……ツバサちゃんも言うようになったわねえ」
大人「じゃあ今までのレッスン代金なんかはお金の無駄だった、ってことになるわね」
若「……!」
大人「返して」
若「えっ?」
大人「今まであなたにかけたお金……返して。私のかけたお金がふいになるんだから、それくらい当然でしょ?」
若「そ、そんな…」
にこ(な、なんて理不尽なやつなの?母親のくせに我が子に返金をせまるなんて)
大人「なんでもっと前に言ってくれなかったのかしら?そしたらあなたにかける無駄金も減らせたのに」
若「そ、それは……」
大人「それに、普通の高校生ってあなた、別に何をやりたい、ってそういうことはないんでしょ?」
若「……」
大人「ツバサちゃん。よく考えてみなさい。私の言うとおり、一人前のアイドルを目指し脚光を浴び続けるか、それらを全て捨てて、普通という名の社会の汚点に成り下がるか」
大人「後者を選んだ場合、我が家の援助も全て打ち切られるけどね……」
若「う……」
大人「じゃあ今までのレッスン代金なんかはお金の無駄だった、ってことになるわね」
若「……!」
大人「返して」
若「えっ?」
大人「今まであなたにかけたお金……返して。私のかけたお金がふいになるんだから、それくらい当然でしょ?」
若「そ、そんな…」
にこ(な、なんて理不尽なやつなの?母親のくせに我が子に返金をせまるなんて)
大人「なんでもっと前に言ってくれなかったのかしら?そしたらあなたにかける無駄金も減らせたのに」
若「そ、それは……」
大人「それに、普通の高校生ってあなた、別に何をやりたい、ってそういうことはないんでしょ?」
若「……」
大人「ツバサちゃん。よく考えてみなさい。私の言うとおり、一人前のアイドルを目指し脚光を浴び続けるか、それらを全て捨てて、普通という名の社会の汚点に成り下がるか」
大人「後者を選んだ場合、我が家の援助も全て打ち切られるけどね……」
若「う……」
353: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/09(日) 00:29:20.33 ID:RYLxBqDW
にこ(理不尽な二択……これが親のやること?もう黙って見てられない……!)
ダンッ!
「あなた。音ノ木坂はいい場所よ。社会の汚点になんてなりはしないわ」
にこ(!?)
大人(!?)
若(!?)
にこ(あっ……あいつ!この前私の靴をけなした金髪の嫌味女!)
大人「どちらさん?」
金髪「ただの通りすがりよ。ただ、音ノ木坂をバカにされたことにちょっと遺憾を覚えてね」
料理長(う……俺も、音ノ木坂は取り柄がないとかバカにするようなこと言ったな…)
金髪「音ノ木坂には歴史がある。UTXみたいな新設校にはない、奥ゆかしさと気品が」
金髪「今まであそこに通ってきた生徒たちの一生と、その礎が、あそこには眠っているのよ」
大人「……ぷっ」
大人「あはははは!何を言い出すかと思ったら!歴史?奥ゆかしさ?何それ!何もないって言っているのと同じじゃない!」
大人「この子に必要なのは未来!輝かしい未来なの。音ノ木坂みたいな古ぼけた遺品みたいな場所は、この子にはにあわないのよ」
金髪「未来……それって、確かなものなの?」
大人「は?」
金髪「歴史とはそこに刻まれた、確かに存在するもの。でも未来って、まだ訪れてもいない時に溺れる、破滅の沼なのよ」
金髪「未来を裏切られた時、人は絶望するしかないの。それなら、確かな今を選ぶべき」
金髪「どうせUTXに行ったからって、トップアイドルになれるわけじゃないわ。だったら、あなたの望む道の方が……いいわ」
にこ(あの金髪……この前から、夢や未来を随分否定するわね。何かあったのかしら)
ダンッ!
「あなた。音ノ木坂はいい場所よ。社会の汚点になんてなりはしないわ」
にこ(!?)
大人(!?)
若(!?)
にこ(あっ……あいつ!この前私の靴をけなした金髪の嫌味女!)
大人「どちらさん?」
金髪「ただの通りすがりよ。ただ、音ノ木坂をバカにされたことにちょっと遺憾を覚えてね」
料理長(う……俺も、音ノ木坂は取り柄がないとかバカにするようなこと言ったな…)
金髪「音ノ木坂には歴史がある。UTXみたいな新設校にはない、奥ゆかしさと気品が」
金髪「今まであそこに通ってきた生徒たちの一生と、その礎が、あそこには眠っているのよ」
大人「……ぷっ」
大人「あはははは!何を言い出すかと思ったら!歴史?奥ゆかしさ?何それ!何もないって言っているのと同じじゃない!」
大人「この子に必要なのは未来!輝かしい未来なの。音ノ木坂みたいな古ぼけた遺品みたいな場所は、この子にはにあわないのよ」
金髪「未来……それって、確かなものなの?」
大人「は?」
金髪「歴史とはそこに刻まれた、確かに存在するもの。でも未来って、まだ訪れてもいない時に溺れる、破滅の沼なのよ」
金髪「未来を裏切られた時、人は絶望するしかないの。それなら、確かな今を選ぶべき」
金髪「どうせUTXに行ったからって、トップアイドルになれるわけじゃないわ。だったら、あなたの望む道の方が……いいわ」
にこ(あの金髪……この前から、夢や未来を随分否定するわね。何かあったのかしら)
355: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/09(日) 00:48:22.02 ID:RYLxBqDW
「まあまあ。そんなに未来を否定しなくてもいいんじゃない?」
金髪「!?」
大人「!?」
若「!?」
にこ(また新キャラ?今度は誰よ!?)
母(あっ、あの子……私に薬をくれたスピリチュアルガール…)
金髪「誰?お呼びじゃないんだけど」
大人「あなたもね」
スピ「そんな大きな声で話してたら注目されるに決まってるじゃないですか」
スピ「夢や未来を否定するのは自分自身だけ……それは他の誰にもできないこと」
スピ「とはいえ音ノ木坂をけなされて怒るあなたの気持ちもわかるけどね」
大人「あら、あなたも音ノ木坂擁護派?随分いるのね。日本人にありがちな、古きよきを守るってやつ?馬鹿馬鹿しいわね」
スピ「まあまあ。音ノ木坂はそんなに悪い場所じゃないですよ。この前学校見学に行ったんですけど、生徒たちがみんな生き生きとしてて、まさに学園、って感じで」
大人「あのねえ、あなたたち、誰かは知らないけど、音ノ木坂を擁護するのならもっとしっかりとした数字でも持ってきなさいよ」
大人「さっきからやれ歴史だの、やれ生き生きしてるだの、表現が抽象的すぎるのよ。説得力がまるでないわ」
スピ「だからこそ、じゃないですか?」
大人「は?」
金髪「!?」
大人「!?」
若「!?」
にこ(また新キャラ?今度は誰よ!?)
母(あっ、あの子……私に薬をくれたスピリチュアルガール…)
金髪「誰?お呼びじゃないんだけど」
大人「あなたもね」
スピ「そんな大きな声で話してたら注目されるに決まってるじゃないですか」
スピ「夢や未来を否定するのは自分自身だけ……それは他の誰にもできないこと」
スピ「とはいえ音ノ木坂をけなされて怒るあなたの気持ちもわかるけどね」
大人「あら、あなたも音ノ木坂擁護派?随分いるのね。日本人にありがちな、古きよきを守るってやつ?馬鹿馬鹿しいわね」
スピ「まあまあ。音ノ木坂はそんなに悪い場所じゃないですよ。この前学校見学に行ったんですけど、生徒たちがみんな生き生きとしてて、まさに学園、って感じで」
大人「あのねえ、あなたたち、誰かは知らないけど、音ノ木坂を擁護するのならもっとしっかりとした数字でも持ってきなさいよ」
大人「さっきからやれ歴史だの、やれ生き生きしてるだの、表現が抽象的すぎるのよ。説得力がまるでないわ」
スピ「だからこそ、じゃないですか?」
大人「は?」
356: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/09(日) 00:57:04.37 ID:RYLxBqDW
スピ「目に見える証拠は確かにない…だけどなぜか守りたくなる……それが音ノ木坂学院」
スピ「そんな学校、スピリチュアルだと思いません?」
大人「……はあ。一つ教えてあげるわ。私の一番嫌いなもの。それは無駄」
大人「あなたたちと話したこの時間、最高に無駄な時間だったわ。行くわよ、ツバサちゃん」
若「あっ……」
にこ(……あの子には気の毒だけど、こればかりは仕方ないのかもしれない)
にこ(私たちみたいな子供がどうこう言ったって、代えられない現実はたくさんあるんだから)
テクテク
大人「ん?」
若「?」
金髪「?」
スピ「?」
大人「またキャスト追加?もういい加減に……」
大人「って!?」
若「あ、赤ちゃん!?」
金髪「な、何?この子?」
スピ「まさにスピリチュアル!」
にこ(こっ、こここ虎太郎!?あんた何やってんのー!?)
虎太郎「にっこにっこにー!」
にこ(!?!?!?!?)
スピ「そんな学校、スピリチュアルだと思いません?」
大人「……はあ。一つ教えてあげるわ。私の一番嫌いなもの。それは無駄」
大人「あなたたちと話したこの時間、最高に無駄な時間だったわ。行くわよ、ツバサちゃん」
若「あっ……」
にこ(……あの子には気の毒だけど、こればかりは仕方ないのかもしれない)
にこ(私たちみたいな子供がどうこう言ったって、代えられない現実はたくさんあるんだから)
テクテク
大人「ん?」
若「?」
金髪「?」
スピ「?」
大人「またキャスト追加?もういい加減に……」
大人「って!?」
若「あ、赤ちゃん!?」
金髪「な、何?この子?」
スピ「まさにスピリチュアル!」
にこ(こっ、こここ虎太郎!?あんた何やってんのー!?)
虎太郎「にっこにっこにー!」
にこ(!?!?!?!?)
357: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/09(日) 01:04:59.74 ID:RYLxBqDW
大人「……ぷっ」
若「……ふふっ」
金髪「……ははっ」
スピ「……あはっ」
四人「あははははは!」
にこ(!?)
スピ「この子反則!いきなり現れてそれはずるいよ!」
金髪「全くもって同意だわ。いきなり主役の座を奪っていったわね!」
大人「何のおまじないか全くわからないけど、最高よキミ!アイドルになれるんじゃないかしら!」
若「ふっ……ふふふふ」
にこ(あれっ……なにこれ)
にこ(さっきまでの殺伐とした雰囲気が、一気に和んだ……そしてみんなが笑顔に……)
にこ(まるで魔法……虎太郎、あんた魔法使いでもはじめちゃったの?)
母「こっ、こここ虎太郎!?ななななんでこんな場所に!?」ダッ
にこ(やばっ!ママにバレた!)
若「……ふふっ」
金髪「……ははっ」
スピ「……あはっ」
四人「あははははは!」
にこ(!?)
スピ「この子反則!いきなり現れてそれはずるいよ!」
金髪「全くもって同意だわ。いきなり主役の座を奪っていったわね!」
大人「何のおまじないか全くわからないけど、最高よキミ!アイドルになれるんじゃないかしら!」
若「ふっ……ふふふふ」
にこ(あれっ……なにこれ)
にこ(さっきまでの殺伐とした雰囲気が、一気に和んだ……そしてみんなが笑顔に……)
にこ(まるで魔法……虎太郎、あんた魔法使いでもはじめちゃったの?)
母「こっ、こここ虎太郎!?ななななんでこんな場所に!?」ダッ
にこ(やばっ!ママにバレた!)
363: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/10(月) 03:52:39.20 ID:itb4aiHn
料理長「や、矢澤の息子!?」
母「は、はい。本来なら託児所にいて娘が迎えに行く予定のはずなんですが、なんでこんな場所に……」
にこ「……」
母「……あんた、なんでここに…」
にこ「に、にっこにっこにー…」
母「……まさか、話、聞いてたの…?」
にこ「い、いやあ、聞くつもりはなかったんだけどね」
母「聞くつもりないのにこんな場所にいるわけないでしょ…しかも中途半端な変装までして…」
大人「なんかよくわからない状況になったわね」
大人「まあいいわ。行くわよ、ツバサちゃん。どうやらここは、音ノ木坂を愛する愚民たちの巣窟らしいから、同じ空気を吸ったら汚れてしまうわ」
にこ「…さっきから黙って聞いてたら……」
にこ「あんたそれでもいい年した大人!?音ノ木坂は何もない古ぼけた遺品?娘に脅迫?」
にこ「あんた、よっぽど自分の娘がトップアイドルだっていうステータスが欲しいのね」
大人「またモブキャラ登場?もういい加減にしてよね?」
母「は、はい。本来なら託児所にいて娘が迎えに行く予定のはずなんですが、なんでこんな場所に……」
にこ「……」
母「……あんた、なんでここに…」
にこ「に、にっこにっこにー…」
母「……まさか、話、聞いてたの…?」
にこ「い、いやあ、聞くつもりはなかったんだけどね」
母「聞くつもりないのにこんな場所にいるわけないでしょ…しかも中途半端な変装までして…」
大人「なんかよくわからない状況になったわね」
大人「まあいいわ。行くわよ、ツバサちゃん。どうやらここは、音ノ木坂を愛する愚民たちの巣窟らしいから、同じ空気を吸ったら汚れてしまうわ」
にこ「…さっきから黙って聞いてたら……」
にこ「あんたそれでもいい年した大人!?音ノ木坂は何もない古ぼけた遺品?娘に脅迫?」
にこ「あんた、よっぽど自分の娘がトップアイドルだっていうステータスが欲しいのね」
大人「またモブキャラ登場?もういい加減にしてよね?」
364: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/10(月) 04:00:15.69 ID:itb4aiHn
にこ「ふん。私に言わせたらあんたの方がモブキャラよ。いい?覚えておきなさい」
にこ「私は将来、誰もが羨望の眼差しを送るスーパーアイドルになるんだから!」
大人「……は?」
にこ「それもあんたがさんざん遺品だとかバカにした音ノ木坂を経てね。アイドルに学歴なんて関係ないのよ」
大人「…あなた、大丈夫?病院行った方が…」
にこ「もしかしたらあんたの娘と近いうちに、ステージの上で顔を合わせることになるかもね。ま、その子が本当にアイドルを目指すなら、だけど」
若「……!」
大人「……行くわよ。さすがにこの子はちょっとおかしすぎるから、構ったらいけないわ」
若「あっ……」
タッタッタ
母「にこ……あなた」
にこ(ふふふ……もう、なるようになれ、よ)
にこ「私は将来、誰もが羨望の眼差しを送るスーパーアイドルになるんだから!」
大人「……は?」
にこ「それもあんたがさんざん遺品だとかバカにした音ノ木坂を経てね。アイドルに学歴なんて関係ないのよ」
大人「…あなた、大丈夫?病院行った方が…」
にこ「もしかしたらあんたの娘と近いうちに、ステージの上で顔を合わせることになるかもね。ま、その子が本当にアイドルを目指すなら、だけど」
若「……!」
大人「……行くわよ。さすがにこの子はちょっとおかしすぎるから、構ったらいけないわ」
若「あっ……」
タッタッタ
母「にこ……あなた」
にこ(ふふふ……もう、なるようになれ、よ)
365: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/10(月) 04:11:11.97 ID:itb4aiHn
ガチャ
にこ「!」
若「あ、あの!」
にこ「あれ、なんで戻ってきて……」
若「……私、確かにアイドルになりたいなんて思ってなかった……でもそれは、私がアイドルを知らなかったから」
若「でも今、あなたはすごい輝いて見えた……今まで会った人の、誰よりも」
若「高すぎる目標を、なんのためらいもなく堂々と宣言できる……そんなあなたを見て、私はすごいと思ったわ」
若「今のあなたは、まさに、私のアイドルだった……初めて見たアイドル、こんなに眩しいものだったなんて」
にこ「いっ!?ま、まあね。私レベルになると、まずオーラから違うというか、環境を選ばないというか、むしろ環境が私を選ぶというか」
若「ふふっ。あなた、面白い人ね。会えてよかったわ」
にこ「サインもらうなら今のうち……」
若「じゃあ早く行かないとママに怒られちゃうから」
にこ「……」
にこ「……ねえ、あなた、音ノ木坂に行きたいんでしょ?私と一緒に行かない?」
にこ「私と一緒に、アイドル目指して…」
若「……お誘いありがとう。考えておくわ」
バタン
にこ「……」
にこ「!」
若「あ、あの!」
にこ「あれ、なんで戻ってきて……」
若「……私、確かにアイドルになりたいなんて思ってなかった……でもそれは、私がアイドルを知らなかったから」
若「でも今、あなたはすごい輝いて見えた……今まで会った人の、誰よりも」
若「高すぎる目標を、なんのためらいもなく堂々と宣言できる……そんなあなたを見て、私はすごいと思ったわ」
若「今のあなたは、まさに、私のアイドルだった……初めて見たアイドル、こんなに眩しいものだったなんて」
にこ「いっ!?ま、まあね。私レベルになると、まずオーラから違うというか、環境を選ばないというか、むしろ環境が私を選ぶというか」
若「ふふっ。あなた、面白い人ね。会えてよかったわ」
にこ「サインもらうなら今のうち……」
若「じゃあ早く行かないとママに怒られちゃうから」
にこ「……」
にこ「……ねえ、あなた、音ノ木坂に行きたいんでしょ?私と一緒に行かない?」
にこ「私と一緒に、アイドル目指して…」
若「……お誘いありがとう。考えておくわ」
バタン
にこ「……」
366: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/10(月) 04:18:06.58 ID:itb4aiHn
金髪「あなた……本当にアイドルになりたかったのね」
にこ「……っていうかなんであんたがここにいるのよ。もしかしてにこのストーカー?」
金髪「はあ……無謀な夢を見る人間って、随分代わった思考回路してるのね」
金髪「でも、音ノ木坂を選ぶっていう点だけはさっきのおばさんよりは評価できるけどね」
にこ「評価って……あんたなんでそんな上から目線なの?私と同い年でしょ?」
金髪「同じ目線で語って欲しかったら、せめて入学式までには靴を新丁しておくことね。じゃあね」
タタタタ
ガチャ
にこ「……本当嫌味な女」
スピ「まあ、彼女も彼女なりに何か考えることがあったんじゃないかな。何の理由もなしに人をとぼすような感じには見えないし」
にこ「……そうかしら」
にこ「…で、どちら様でしたっけ?」
にこ「……っていうかなんであんたがここにいるのよ。もしかしてにこのストーカー?」
金髪「はあ……無謀な夢を見る人間って、随分代わった思考回路してるのね」
金髪「でも、音ノ木坂を選ぶっていう点だけはさっきのおばさんよりは評価できるけどね」
にこ「評価って……あんたなんでそんな上から目線なの?私と同い年でしょ?」
金髪「同じ目線で語って欲しかったら、せめて入学式までには靴を新丁しておくことね。じゃあね」
タタタタ
ガチャ
にこ「……本当嫌味な女」
スピ「まあ、彼女も彼女なりに何か考えることがあったんじゃないかな。何の理由もなしに人をとぼすような感じには見えないし」
にこ「……そうかしら」
にこ「…で、どちら様でしたっけ?」
367: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/10(月) 04:46:48.25 ID:itb4aiHn
母「あっ…あの……」
スピ「あ、この間の」
にこ「ママ?知り合いなの?」
母「いや、そういうわけじゃないんだけど、以前助けてもらった恩があってね」
にこ「助けてもらった?」
スピ「恩だなんてそんな大層なことじゃないですよ。ただカードの導きに従っただけで」
にこ「カードの導き?なにそれ」
スピ「ふっふっふ。一般人には理解できないスピリチュアルなことだよ」
にこ(なに…こいつもめんどくさいタイプの人間?)
にこ「ま、まあ、詳細はよくわからないけど、ママを助けてもらったみたいで、その節は本当にありがとうございました」
スピ「どういたしまして。しかしその娘さんとこんな形で会うことになるなんて、本当に世の中はスピリチュアルだねー」
にこ(だからそのスピリチュアルってなんなのよ!)
スピ「ってなわけで私もそろそろ行くかな。まだ荷ほどき終わってないし」
にこ「えっ?」
スピ「それじゃあねー」
スタスタ
ガチャ
にこ「……」
母「……」
料理長「……」
虎太郎「……」
にこ(き、気まずい…!)
スピ「あ、この間の」
にこ「ママ?知り合いなの?」
母「いや、そういうわけじゃないんだけど、以前助けてもらった恩があってね」
にこ「助けてもらった?」
スピ「恩だなんてそんな大層なことじゃないですよ。ただカードの導きに従っただけで」
にこ「カードの導き?なにそれ」
スピ「ふっふっふ。一般人には理解できないスピリチュアルなことだよ」
にこ(なに…こいつもめんどくさいタイプの人間?)
にこ「ま、まあ、詳細はよくわからないけど、ママを助けてもらったみたいで、その節は本当にありがとうございました」
スピ「どういたしまして。しかしその娘さんとこんな形で会うことになるなんて、本当に世の中はスピリチュアルだねー」
にこ(だからそのスピリチュアルってなんなのよ!)
スピ「ってなわけで私もそろそろ行くかな。まだ荷ほどき終わってないし」
にこ「えっ?」
スピ「それじゃあねー」
スタスタ
ガチャ
にこ「……」
母「……」
料理長「……」
虎太郎「……」
にこ(き、気まずい…!)
368: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/10(月) 04:47:22.93 ID:itb4aiHn
にこ「オホン!新田さん、で良かったでしたっけ?」
料理長「え?あ、ああ、そうだが……君が矢澤の娘さんか」
にこ「矢澤にこ、来年の春から音ノ木坂に通う中学三年生です」
にこ「話は聞かせてもらいました。申し出はありがたいですが、私もう決めたんで」
料理長「し、しかし…」
にこ「まあ正直確かに未練はありましたよ。ついさっきまでは」
にこ「でもさっきのやりとりで、もう決めたんです」
にこ「音ノ木坂に行く!って」
にこ「そして見せつけてやるんですよ。音ノ木坂からだって、こんなにすごいアイドルが誕生するんだって!」
料理長「……」
母「にこ……あなた」
料理長「……そうか。わかったよ」
料理長「君の目……そんなに強い目をした人間はなかなかいない。そしてそんな目をした人間は、ほとんどが何かしらの成功を納めている人間ばかりだ」
料理長「信頼できる目だ。俺も、音ノ木坂から誕生するアイドルを応援したくなったよ」
母「……料理長」
料理長「え?あ、ああ、そうだが……君が矢澤の娘さんか」
にこ「矢澤にこ、来年の春から音ノ木坂に通う中学三年生です」
にこ「話は聞かせてもらいました。申し出はありがたいですが、私もう決めたんで」
料理長「し、しかし…」
にこ「まあ正直確かに未練はありましたよ。ついさっきまでは」
にこ「でもさっきのやりとりで、もう決めたんです」
にこ「音ノ木坂に行く!って」
にこ「そして見せつけてやるんですよ。音ノ木坂からだって、こんなにすごいアイドルが誕生するんだって!」
料理長「……」
母「にこ……あなた」
料理長「……そうか。わかったよ」
料理長「君の目……そんなに強い目をした人間はなかなかいない。そしてそんな目をした人間は、ほとんどが何かしらの成功を納めている人間ばかりだ」
料理長「信頼できる目だ。俺も、音ノ木坂から誕生するアイドルを応援したくなったよ」
母「……料理長」
369: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/10(月) 04:54:34.10 ID:itb4aiHn
帰り道
母「本当にびっくりしたわ。まさかにこと虎太郎がすぐ隣にいたなんて」
にこ「ま、まあ、私の変装が完璧だったからね」
母「オーラがまだなかっただけじゃないかしら」
にこ「なっ……ふふん。私ほどにもなれば、オーラの出し入れさえ自由自在なのよ」
母「まるで超人ね」
母「ねえ……本当にいいの?」
にこ「くどいわよ。決めたって言ったでしょ」
にこ「どうせならにこの手で、音ノ木坂を人気校にするくらいやってやるわ」
にこ「……それに」
母「…それに?」
にこ「もしママが今までみたくオーバーワークで倒れちゃったりしたら、私が一番見てほしい人に見てもらえなくなっちゃうじゃない……」
母「……にこ」
母「本当にびっくりしたわ。まさかにこと虎太郎がすぐ隣にいたなんて」
にこ「ま、まあ、私の変装が完璧だったからね」
母「オーラがまだなかっただけじゃないかしら」
にこ「なっ……ふふん。私ほどにもなれば、オーラの出し入れさえ自由自在なのよ」
母「まるで超人ね」
母「ねえ……本当にいいの?」
にこ「くどいわよ。決めたって言ったでしょ」
にこ「どうせならにこの手で、音ノ木坂を人気校にするくらいやってやるわ」
にこ「……それに」
母「…それに?」
にこ「もしママが今までみたくオーバーワークで倒れちゃったりしたら、私が一番見てほしい人に見てもらえなくなっちゃうじゃない……」
母「……にこ」
370: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/10(月) 05:00:11.43 ID:itb4aiHn
母「さて、今日は久々に遅番も免除されたし、ママが夕飯を作るわよ!」
にこ「えっ!本当?」
母「そうよ!何が食べたい?」
にこ「うーんとね……あっ、でももう食材は買っちゃったし」
母「にこ、まだまだ甘いわね。私が何年母親やってると思ってるの?」
母「私にかかれば、大量のもやしもハンバーグに早変わりよ」
にこ「ええっ!?それは言い過ぎでしょ!」
母「あら、そうでもないわよ」
にこ「あるわよ!もやしをハンバーグって、もはや魔法よ魔法!」
母「そうね……でもそれならなおさらじゃない」
にこ「?」
母「私は、あなたたちの母親よ」
母「人を笑顔にする魔法使い……そんな子供たちの母親なんだから」
にこ「えっ!本当?」
母「そうよ!何が食べたい?」
にこ「うーんとね……あっ、でももう食材は買っちゃったし」
母「にこ、まだまだ甘いわね。私が何年母親やってると思ってるの?」
母「私にかかれば、大量のもやしもハンバーグに早変わりよ」
にこ「ええっ!?それは言い過ぎでしょ!」
母「あら、そうでもないわよ」
にこ「あるわよ!もやしをハンバーグって、もはや魔法よ魔法!」
母「そうね……でもそれならなおさらじゃない」
にこ「?」
母「私は、あなたたちの母親よ」
母「人を笑顔にする魔法使い……そんな子供たちの母親なんだから」
371: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/10(月) 05:06:35.44 ID:itb4aiHn
にこ(その後、ママは調理場から事務作業に配置がえをしてもらい、肉体的な負担も減り、夕方にはほぼ確実に帰ってくるようになった)
にこ(虎太郎のお迎えも以前のようにママが担当して私は少しだけ自由な時間が増えた……と思いきや)
にこ(音ノ木坂は国立……私には受験が待っていた!)
にこ(何を隠そう、私は、勉強は、あーんまり、ちょーっとだけ、得意じゃないのよね)
にこ(でも音ノ木坂だってそんな難関校ってわけじゃないから、頑張れば…)
にこ(あーっ!ダメダメ!何が二次関数よ!何が関係代名詞よ!意味がわかんない!こんなの社会に出て必要なの!?)
にこ(はあ……こんな形でUTXが恋しくなるとはね……)
にこ(虎太郎のお迎えも以前のようにママが担当して私は少しだけ自由な時間が増えた……と思いきや)
にこ(音ノ木坂は国立……私には受験が待っていた!)
にこ(何を隠そう、私は、勉強は、あーんまり、ちょーっとだけ、得意じゃないのよね)
にこ(でも音ノ木坂だってそんな難関校ってわけじゃないから、頑張れば…)
にこ(あーっ!ダメダメ!何が二次関数よ!何が関係代名詞よ!意味がわかんない!こんなの社会に出て必要なの!?)
にこ(はあ……こんな形でUTXが恋しくなるとはね……)
372: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/10(月) 05:16:15.56 ID:itb4aiHn
時は流れ……
にこ(私はなんとか音ノ木坂学院に合格した)
にこ(制服と一緒に靴も新しくしたわ)
にこ(確かに人数は少ない。定員割れらしい)
にこ(でも、アイドルに逆境は付き物。こうなったら、校舎に銅像を奉ってもらうくらいビッグになってやるんだから!)
にこ(そしたらお金もそこそこ稼いで……妹たちには私みたいに、進路で無駄に悩むようなことはさせない)
にこ(未来は希望に満ち溢れているもの……悲しみや、苦しみの表情は似合わないからね)
にこ(そう、確かに私の家は貧乏な部類に入るかもしれない)
にこ(けど、そんなことどうでもいいくらい、愛と、笑顔で溢れている)
にこ(それが私に課せられた役目……私の夢なんだから!)
にこ(私はなんとか音ノ木坂学院に合格した)
にこ(制服と一緒に靴も新しくしたわ)
にこ(確かに人数は少ない。定員割れらしい)
にこ(でも、アイドルに逆境は付き物。こうなったら、校舎に銅像を奉ってもらうくらいビッグになってやるんだから!)
にこ(そしたらお金もそこそこ稼いで……妹たちには私みたいに、進路で無駄に悩むようなことはさせない)
にこ(未来は希望に満ち溢れているもの……悲しみや、苦しみの表情は似合わないからね)
にこ(そう、確かに私の家は貧乏な部類に入るかもしれない)
にこ(けど、そんなことどうでもいいくらい、愛と、笑顔で溢れている)
にこ(それが私に課せられた役目……私の夢なんだから!)
373: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/08/10(月) 05:27:53.32 ID:itb4aiHn
入学式を終えて数日後
にこ「ま、予想はしてたけど、アイドルに関する部活動なんてあるはずもないわよね」
にこ「まあないなら自分で作るのみよ。部活申請の仕方は、っと……」
にこ(そういえば、一つだけ気づいたことがあった)
にこ(あの日、カフェで私が音ノ木坂に誘ったあの子……入学式から数日がたったけど、見かけていない)
にこ(……世の中には色々な家族の形がある。私みたいに、背中を押してくれる家族もいれば、あの子みたいに、全てを縛られた家族もいる)
にこ(所詮私はまだ子供。あの子も子供。夢を語ったところで、まだ叶えたわけじゃないから、何でも思い通りにいくわけじゃない)
にこ(あの子…UTXに行ったのかしら……)
にこ(せめて……せめて、あの子が望む形で、自分の道を選んだことを願いたい)
にこ「…さて、必要な書類はそろったし、あとは部員の勧誘ね。最低5人は必要らしいから、頑張らないとね」
にこ「やっぱり一番手っ取り早いのは、校庭でのチラシ配りね」
にこ(私もまだまだ前途多難。だけど、今はすごく楽しい。自分の道を自分で切り開いているんだから)
にこ(さあ!ここから始まるのよ!スーパーアイドル、矢澤にこの伝説が!)
にこ「一緒にアイドルやりませんかー!?」
END.
にこ「ま、予想はしてたけど、アイドルに関する部活動なんてあるはずもないわよね」
にこ「まあないなら自分で作るのみよ。部活申請の仕方は、っと……」
にこ(そういえば、一つだけ気づいたことがあった)
にこ(あの日、カフェで私が音ノ木坂に誘ったあの子……入学式から数日がたったけど、見かけていない)
にこ(……世の中には色々な家族の形がある。私みたいに、背中を押してくれる家族もいれば、あの子みたいに、全てを縛られた家族もいる)
にこ(所詮私はまだ子供。あの子も子供。夢を語ったところで、まだ叶えたわけじゃないから、何でも思い通りにいくわけじゃない)
にこ(あの子…UTXに行ったのかしら……)
にこ(せめて……せめて、あの子が望む形で、自分の道を選んだことを願いたい)
にこ「…さて、必要な書類はそろったし、あとは部員の勧誘ね。最低5人は必要らしいから、頑張らないとね」
にこ「やっぱり一番手っ取り早いのは、校庭でのチラシ配りね」
にこ(私もまだまだ前途多難。だけど、今はすごく楽しい。自分の道を自分で切り開いているんだから)
にこ(さあ!ここから始まるのよ!スーパーアイドル、矢澤にこの伝説が!)
にこ「一緒にアイドルやりませんかー!?」
END.
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