1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/30(日) 19:23:46.36 ID:uBkgDmDt0
どうやら私はあかりちゃんを怒らせてしまったらしい。

ちなつ「……」

あかり「……」

ちなつ「……あかりちゃん?」

あかり「……ぷいっ、だよ!」プイッ

ちなつ「声に出さなくても」

あかり「あかり、出して無いもん」

ちなつ「出してたよ」

あかり「……」プイッ

これは本格的にやばいかも。
今まであかりちゃんがこんなふうに怒ったところ見たこと無いのに。

2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/30(日) 19:26:13.65 ID:uBkgDmDt0
ちなつ「……あかりちゃん」

あかり「……」

ちなつ「……」

あかり「ちなつちゃん」

ちなつ「なに?」

あかり「……間違えただけだよっ!」フイッ

う。
明らかに何か私に言おうとしてたよね。
一体なんでこんなにあかりちゃんが膨れているのかわからない私としては甚だ困ってしまうわけで。
というより、むしろ困ることしかできない。

4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/30(日) 19:30:36.62 ID:uBkgDmDt0
放課後。
けど、ここはごらく部の部室ではなくって私たちの教室。
誰もいない教室で二人きり。あかりちゃんはどうしても嫌だと言って部室に行こうとしなかった。

ちなつ「……」

あかり「……」

ちなつ「あかりちゃん、今日ずっと怒ってない?」

あかり「怒ってない」

ちなつ「給食のときもほら、なんか不機嫌そうだったし」

あかり「あれは牛乳が鼻から出そうだったからだよ!」

ちなつ「反応しにくいよあかりちゃん」

あかり「ごめんね……でじゃないよ!」

ちなつ「う、うん……」

7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/30(日) 19:34:30.36 ID:uBkgDmDt0
あかり「とりあえずあかりはぷんぷんなの!」

ちなつ「ぷんぷん」

あかり「ぷんぷん!」

ちなつ「……」フルフル

あかり「……ちなつちゃん?」

ちなつ「……な、なんでもないよ」

耐えなさい、チーナ!
いくら「ぷんぷん」が可愛くって噴出しそうになってもここで笑ったら
あかりちゃんの怒りにもっと火がついちゃうだけよ!

あかり「ふーん……」チラッ、チラッ

ちなつ「……」プルプル

気にしてる気にしてる。
私を無視してる振りしながらすごく気にしてる。
そもそもまず最初から無視なんてできてないよね。

10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/30(日) 19:38:24.79 ID:uBkgDmDt0
あかり「うー……」チラリ、チラリ

ちなつ「……」ククッ

いつも優しいあかりちゃんだから。
たぶん、怒りなれてなんかいないのだろう。
怒ってるならさっさと一人で帰っちゃったりすればいいのにね。
そんなあかりちゃんを怒らせちゃったらしい私って逆にすごい気がする。

なんて、喜んでる場合じゃないか。

あかり「……」チラチラチラリ

ちなつ「……あ、あかりちゃん」スーハー

ようやく笑いがおさまった。
あかりちゃんがあまりにも大袈裟に私の声に反応するから、また噴出しそうに
なっちゃったけど。

14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/30(日) 19:41:54.49 ID:uBkgDmDt0
現在、私たちの距離は机二つ分。
一番後ろの席にあかりちゃんがいて、その二つ前に私。

ちなつ「あかりちゃん、怒ってるなら」

あかり「怒ってないよ!」

ちなつ「あ、うん、じゃあえっと……部室行きたく無いなら帰らないの?」

あかり「か、帰らないよ」

あかりちゃんがぱっと目を逸らして言う。
もしかして、帰るなんてこと思いもつかなかったんじゃないだろうか。

ちなつ「どうして?」

あかり「それは……」

ちなつ「うん」

あかり「ち、ちなつちゃんが!」

15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/30(日) 19:45:42.41 ID:uBkgDmDt0
ちなつ「私が?」

あかり「ちなつちゃんが、その!」

必死で考えているらしい。
うぅーと頭を抱える姿がなんとも。

あかり「ちなつちゃんが帰ったら帰るよ!」

ちなつ「はい」スタッ

あかり「あぁー!だ、だめ!やっぱりだめ!」

ちなつ「えー」

あかり「うぅ……ちょっと待って、今考えるから」

ちなつ「別に無理して考えなくてもいいんだけど」

苦笑しつつ、私も私だよねーと思う。
私だってこんなあかりちゃんほうっておいてさっさと結衣先輩たちがいる部室に
行っちゃえばいいんだけど。

16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/30(日) 19:48:07.14 ID:uBkgDmDt0
ちなつ「あかりちゃん」

あかり「まだだよ!」

ちなつ「もう理由はいいよ……」

あかり「ほんと……?」

ちなつ「うん」

あかり「えへへ、ちなつちゃんありが……とうじゃないからね!」

これは貴重なあかりちゃんのツンデレ(デレツン)と受取ってもいいのかな。
どちらにしてもあまりにも様にならなさ過ぎてこれまた笑えてくる。

18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/30(日) 19:53:39.15 ID:uBkgDmDt0
ちなつ「どうしておこ……じゃくって、どうして部室行きたくないの?」

あかり「言わないよっ」

ちなつ「じゃあどうして私と話したくないの?」

あかり「そんなことはないけど……言わないもん」

ちなつ「言ってくれなきゃわかんないよ」

あかり「だって……」

ちなつ「……」

あかり「……」

ちなつ「あかりちゃん、私のこと嫌い?」

20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/30(日) 19:56:41.64 ID:uBkgDmDt0
あかりちゃんが「えっ」と俯かせた顔を上げた。
それからはっとしたような顔をして。

あかり「き、嫌い、だよ」

ちなつ「そっか……」

あかり「……うん」

ちなつ「あかりちゃん、どうしよう」

あかり「へ?」

ちなつ「私泣いちゃうかも」

あかり「えっ!?」ガタターンッ

まあもちろん嘘だけど。
あかりちゃんが驚いたように椅子を蹴飛ばして立ち上がる。
ふふっ、焦ってるわね……。

23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/30(日) 19:59:20.98 ID:uBkgDmDt0
ちなつ「私、あかりちゃんにそんなこと言われるなんて、思わなくって……」

あかり「え、えと、あの……」オロオロ

ちなつ「あかりちゃんが、私のこと嫌いなんて……!」バッ

あかり「ち、ちなつちゃん!」

ちなつ「うぅー……しくしく、しくしく」

あかり「そ、その、さっきのはやっぱり違うんだよぉ!だからあかりはえっとね!」

ちなつ「……」

あかり「……ちなつ、ちゃん?」

ちなつ「引っ掛かったー」パッ

あかり「!?」

25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/30(日) 20:01:24.12 ID:uBkgDmDt0
あかりちゃんが怒ってるとわかってはいても、あかりちゃんで遊ぶのって
楽しいんだよね。
京子先輩がよくあかりちゃんをおもちゃにしてる理由がわかる気がする。

あかり「も、もうー!」

ちなつ「だって、あかりちゃんが拗ねてるんだもん」

あかり「拗ねてなんかないよ!」

ちなつ「じゃあ怒ってる?」

あかり「怒ってもないし……あ、でもあかり、怒ってる!今のでぷんすかだよ!」

ぷんぷんが、ぷんすかに進化したようです。

36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/30(日) 20:27:09.56 ID:uBkgDmDt0
ちなつ「ごめんね?」

あかり「もう許さないもん!ちなつちゃんなんか知らないもん!」

ちなつ「……あかりちゃん、マンボウみたい」

あかり「あかりマンボウだよぉー」

ちなつ「……」

あかり「……」

ちなつ「うん、そうだね」

あかり「ち、ちがうよ今のは違うんだからちなつちゃんのせいだもん!」

37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/30(日) 20:29:40.99 ID:uBkgDmDt0
ちなつ「えっ……」

あかり「えっ……」

ちなつ「あかりちゃんが私のせいにするなんて……」

あかり「い、今のもその……!」

あかり「って、もう騙されないんだからね!」

ちなつ「えー」

あかり「もうもうもう!」

ぶーっと頬を膨らませるあかりちゃんは小さな駄々っ子みたいだ。
本当に怒ってるのかどうかすらわからない。
(あかりちゃんのことだから怒ってるつもりなんだろうけど)

38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/30(日) 20:33:07.79 ID:uBkgDmDt0
あかり「あかり、ぷんすかぷんぷんだよ!」

ちなつ「うん」

あかり「ほんとだよ!」

ちなつ「うん」

あかり「ほんとに、ほんとなんだから……!」

ちなつ「うん」

あかり「だ、だから……」

じーっと眺めているのも楽しい。
だんだんフェードアウトしていく様子が実にいい。
なんてこと言ってると、私変な趣味持った子みたいに思われそうだけど
実際あかりちゃんの様子がこんなのだから仕方無い。

42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/30(日) 20:39:21.97 ID:uBkgDmDt0
あかり「うぅ……」

ちなつ「わかったわかった、ぷんすかぷんぷんなんだね?」

そろそろあかりちゃんがかわいそうになってきたので助け舟。
立ち上がってあかりちゃんに近付いて、そしたらあかりちゃんは及び腰。

あかり「ぷんすかぷんぷんだもん……」

ちなつ「わかったから大丈夫だよ?」

あかり「う、うん……」

ちなつ「よしよし」ナデナデ

けど、あかりちゃんの頭を撫でてみるとあかりちゃんの身体から一気に力が
抜けていったのがわかった。
なんだかわんちゃんみたいだ。

あかり「う、嬉しくなんて、ないもん……ぷんすか、ぷんぷんなんだもん」

ちなつ「うん、そうだねー」ナデナデ

あかり「ほんとに、ほんとで……えへへ」

ちなつ「あ、笑った」

あかり「わ、笑ってないよ!?」

46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/30(日) 20:43:30.27 ID:uBkgDmDt0
ちなつ「そっか」

あかり「うん……」

笑ってくれないなら撫でても意味ないもんね、あかりちゃん。
だったら手、下ろさなきゃ。あかりちゃんは怒ってるし。
頭を撫でる手を止めた。するとあかりちゃんは。

あかり「……ちなつちゃん?」

ちなつ「うん?」

あかり「……あの、どうしたの?」

ちなつ「なにが?」

あかり「えと、だからその……どうして」チラッ

ちなつ「言ってくれなきゃわかんないよー」

あかり「……うぅ、な、なでなで」

48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/30(日) 20:47:52.17 ID:uBkgDmDt0
小さな声で、あかりちゃんが言うものだから。
ついもっと意地悪したくなっちゃうの、許してね?

ちなつ「なでなで?」

あかり「なでなで……」

ちなつ「それがどうしたのかなー?」

あかり「えっ、えっと……なでなで」

ちなつ「だけじゃわからないよ」

あかり「……して?」

50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/30(日) 20:52:54.36 ID:uBkgDmDt0
あ、だめだ。
これはだめだわチーナ。
威力が強すぎて勝てる気がしない。

あかり「……ほしくなんかないよっ!」ハッ

ちなつ「ほんとに?」

あかり「う、うん……っ」

ちなつ「なでなで」ナデナデ

あかり「ほんとだ、もん……」ホワー

ちなつ「そっか」ピタッ

あかり「ほんとだよ……!」チラチラッ

52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/30(日) 20:56:37.70 ID:uBkgDmDt0
ちなつ「……」ナデナデ

あかり「ほんとにほんと……」ホワー

ちなつ「……」ピタッ

あかり「だもん!」

ちなつ「うん、わかった」ナデナデ

あかり「うん……」ホワー

あかり「……」ハッ

あかり「って、あかりで遊ばないでよぉ!」

55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/30(日) 21:03:19.35 ID:uBkgDmDt0
遊ばれていることにようやく気付いたあかりちゃんが顔を真っ赤にして言う。
あぁでも残念。
もうちょっと遊びたかったな。

ちなつ「ごめんごめんつい」

あかり「ひどいよぉ」

ちなつ「はいはい」ナデナデ

あかり「またぁ……」ホワワーン

ちなつ「あかりちゃんが怒ってるからだよー」ナデナデ

あかり「怒ってないもん……」ホワーン

ちなつ「じゃあぷんぷんぷんすか」ナデナデ

あかり「うん……」ハワワー

57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/30(日) 21:06:45.65 ID:uBkgDmDt0
ちなつ「ならどうしてぷんぷんぷんすかになってるか教えてくれる?」ナデナデ

あかり「えっ」ビクッ

ちなつ「そしたらなでなでやめてあげるよ」ナデナデ

あかり「それは……」

ちなつ「やめてほしくない?」ナデナデ

あかり「あ、あかりぷんぷんぷんすかだからやめてほしいもん!」

ちなつ「じゃあその理由を教えてよー」

あかり「そ、それは……」カアッ

59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/30(日) 21:13:50.70 ID:uBkgDmDt0
ちなつ「言えない?」ナデナデ

あかり「……だって」

ちなつ「あかりちゃん」

あかり「なあに……?」

ちなつ「私、あかりちゃんがどうして怒ってるか、わからないよ。教えてくれなきゃ
    謝りたくても謝れないよ?」

あかりちゃんが困ったように目を伏せた。
教室に差し込んでくる夕日のせいもあってか、その頬は赤い。

あかり「だって……あかり、ちなつちゃんに謝ってほしいわけじゃないんだもん」

60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/30(日) 21:16:35.44 ID:uBkgDmDt0
ちなつ「じゃあどうして」

あかり「だって、だって……ただ、あかりのこと気付いてほしかっただけで」

ちなつ「……あかりちゃん?」

あかり「昨日も、一昨日も、ちなつちゃんはずっと結衣ちゃんや京子ちゃんばっかりと
    一緒にいるんだもん。あかりだってもっとちなつちゃんと仲良くなりたいのに」

だから、あかりはぷんすかぷんぷんしてるの。
泣きそうな顔で。泣きそうな声で。

64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/30(日) 21:21:26.88 ID:uBkgDmDt0
ちなつ「……もう」ギュッ

あかり「ち、ちなつちゃん?」

ぎゅっとあかりちゃんを引き寄せて抱き締めると、
あかりちゃんは驚いたような声を上げた。
ほんとにもう。
私はあかりちゃんを泣かせたかったわけじゃないのに。

ちなつ「そんなことで怒らないでよ、あかりちゃん」

あかり「……怒ってないもん」

ちなつ「怒ってるでしょ」

あかり「……怒ってない」

65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/30(日) 21:22:24.49 ID:uBkgDmDt0
ちなつ「なでなで」ナデナデ

あかり「も、もうちなつちゃん!」

ちなつ「ね?」

あかり「え?」

ちなつ「こうしてても、嫌じゃないでしょ?」

あかり「……う、うん」

ちなつ「だから大丈夫だよ、私たちは仲良しだよ」

68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/10/30(日) 21:26:32.46 ID:uBkgDmDt0
あかり「……でも」

ちなつ「うん?」

あかり「もうちょっと、あかりの傍にいてほしいよ」

ギュッ

ちなつ「あかりちゃん……」

あかり「もっともっと、仲良しになりたいのに」

ちなつ「……しかたないんだから、あかりちゃんは」

あかり「ちなつちゃん?」

ちなつ「今日はチャイム鳴るまで二人でいよっか」

あかり「……いいの?」

ちなつ「ぷんぷんぷんすかのあかりちゃんをほっとくわけにはいかないもん」

あかり「……えへへ」

終わり

引用元: ちなつ「あかりちゃんを怒らせた」