2: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/14(日) 22:20:19.18 ID:53c91Y7K
▼この物語のAqoursは初期設定の学年です。

3: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/14(日) 22:20:36.58 ID:53c91Y7K
 静岡県内浦にある創立百年を越えた伝統ある学校、浦の星農業高校。
 緑化科、動物科、園芸科、食品科、デザイン科の5つの学科から成り立つこの学校だが、生徒数が年々減少していることから、来年度からの生徒募集を取り止め、三年後には廃校が決定している。
 今年は三学年全員が揃う最後の年。
 緑化科の生徒である高海千歌を初めとした9人の奮闘劇が、ここから始まる。

4: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/14(日) 22:20:54.48 ID:53c91Y7K
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四月

果南「おはよ、千歌」

千歌「おはよー……果南ちゃん……」ズーン

果南「あらら。新学期早々どうしたの」

千歌「……ねぇ、果南ちゃん」

果南「ん〜?」

千歌「今日の時間割、聞きたい?」

果南「なぁに。言ってみな」

5: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/14(日) 22:21:12.47 ID:53c91Y7K
千歌「実習四時間と国語と体育」

果南「あちゃー。嫌な時間割になったね」

 農業高校では、割とありがちである。
 実習のある専門科目は基本二時間でひとつの授業になっていて、専門科目が並んでしまうと、午前中はずっと実習。ということもある。

千歌「これ国語要らなくない?どう頑張っても寝ちゃうんだけど」

果南「寝たらダイヤに叱られるよ」

千歌「もーっ!どうしてダイヤちゃんったら直ぐに怒るの〜!」ムキーッ

6: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/14(日) 22:21:48.23 ID:53c91Y7K
果南「……それより千歌、聞いた?今日千歌のクラスに転入生来るらしいよ」

千歌「え!?この学校に転入生!?しかも緑化科に!?」

千歌「動物科じゃないんだ……って違くて。それ、本当?」

果南「みたいだよ。噂になってるし」

千歌「どうせ嘘だよ〜。だってこの時期に農業高校に転入生なんて有り得ないもん」

果南「まあそうなるよね。実際来てみないと分かんないし」

千歌「だね〜、それじゃあここで」フリフリ

果南「うん。頑張ってね千歌」フリフリ

7: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/14(日) 22:22:15.87 ID:53c91Y7K
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緑化科 教室

千歌「あ〜、実習だるいよ〜……どうせまたツツジの剪定なんだ……私は知ってるよ……ここ最近ツツジしか刈ってないもん……」ドンヨリ

ダイヤ「千歌さん。しゃんとしなさい。みっともないですわよ」

千歌「……だってぇ、毎日同じことの繰り返しだし……代わり映えしないし……私、農業高校ってもっと自由で楽しいものだと思ってたもん」

ダイヤ「そんなこと言って……ほら、千歌さん今年は造園技能士の資格を取るのでしょ。造園技能士は一応国家資格なのでとても達成感を感じられますわよ」

 毎年緑化科の二年生は造園技能士三級の資格を取ることになっている。筆記、実技から成る試験で、そのほとんどは授業で習得する。農業や造園の基礎知識や、基本技術を試される試験で、合格率は70%ほどだと言われている。

8: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/14(日) 22:22:41.18 ID:53c91Y7K
千歌「それは皆取るやつだし、大体、私お庭が好きってわけでもないし……」

ダイヤ「だったらどうして緑化科に来たのですか……」ハァ…

千歌「…………む〜……あっ、ダイヤちゃん、今日このクラスに──」

ガラララッ

緑化科担任「おはようございます」

緑化科生徒「おはようございます〜」

緑化科担任「噂になっていて知っている方は居ると思いますが、今日からこのクラスに新しく転入してくる生徒が居ます」

緑化科担任「桜内さん、入っておいで」チョイチョイ

「は、はいっ……」

9: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/14(日) 22:22:57.00 ID:53c91Y7K
千歌「──ぁ、」

梨子「初めまして。東京から転校してきました。桜内梨子といいます。よろしくお願いします」ペコリ

千歌「嘘でしょ……本物の転入生じゃん!?しかも美少女じゃん!?東京人じゃん!?!?」ガタッ

ダイヤ「千歌さん、お静かに」

千歌「は、はひ……」ストン…

千歌「(な、なんであんな美少女が農業高校に!?有り得ない、有り得ないよ!?!?)」

 何故農業高校に居るのか分からないくらいの美少女が居るのも、割とあるあるである。

10: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/14(日) 22:23:15.98 ID:53c91Y7K
千歌「(農業高校は農業をする場所なんだよ!?合コンなんか無いし制服も可愛くないし実習服は世界で一番ダサいし!)」

千歌「(そんな農業高校にどうしてこんな美少女が!?)」

緑化科担任「それじゃあ桜内さんは高海さんの隣の席が空いてるので、そこに座りましょうか」

梨子「は、はい……っ」ストン

千歌「……………………」ジーッ

梨子「えっと……」

千歌「あぁ、えっと、高海千歌。よろしくね」ニッ

11: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/14(日) 22:23:37.32 ID:53c91Y7K
千歌「それより、梨子ちゃんって本当可愛いね!どうして浦の星を選んだの?どうして東京からここまで転校してきたの?どうして農業高校に来たの?」ズイッ

ダイヤ「千歌さん」

千歌「ぁあっ!つ、つい……」

ダイヤ「気持ちは分かりますが、質問責めをしていてもいい事はありませんよ」

千歌「それもそっか……あ、桜内さん。実習服はもうある?一時間目から実習だけど……」

梨子「ああ、それなら大丈夫。何が必要か分からなかったから、取り敢えず全部持ってきたの」

千歌「ん、そっか。それならおっけーだね!」グッ

12: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/14(日) 22:23:55.19 ID:53c91Y7K
千歌「まず、このHRが終わったら走って緑化棟の更衣室まで行って実習服に着替えるの。そこから階段を登って、9時までに緑化教室の自分の席に着席。おっけー?」

梨子「え、えぇ?走って……?」

ダイヤ「ここの敷地は広いですから、歩いていると更衣や実習に間に合わないんです」

梨子「な、なるほど……」

緑化科担任「はい、それではHRを終わります。起立、礼」

緑化科生徒「ありがとうございました〜」

千歌「さっ、行こ!梨子ちゃん!」タッ

ダイヤ「急がないと怒られますわよ!」タッ

梨子「ま、待って……そんないきなりぃっ……!」アワアワ

13: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/14(日) 22:24:12.23 ID:53c91Y7K
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緑化棟 緑化教室

梨子「……はぁ……はぁ……」ゼェゼェ

千歌「あっ、やっと来た!もう向こう行くって〜」

ダイヤ「記録用紙は私が書いておきましたから、刈り込みバサミを運搬車に積んでそこからまた校舎の方に戻ってツツジの剪定を行います」

梨子「えっ……ええぇ?……も、戻るの?」

ダイヤ「?……ええ、戻りますが?」

梨子「何がおかしいのか分からないって顔してる……これが農業高校の普通なのね……」

千歌「はやく行こ〜っ!」タッ

ダイヤ「早くしないと怒られますわよ!」タッ

梨子「あぁっ、ま、待ってぇ……」ヘトヘト

14: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/14(日) 22:24:36.84 ID:53c91Y7K
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校舎前

千歌「刈り込みバサミはこの持ち手の先端。真ん中らへんは作業しにくいから持たない方がいいよ。それから、作業する時は危ないから手袋を必ず付けてね。今日は持ってる?」

梨子「ご、ごめんなさい……手袋は持ってきてなくて……」

千歌「なら私の貸してあげるね!」

梨子「高海さんはどうするの……?」

千歌「バレなきゃ素手でも大丈夫だから!梨子ちゃんは今回が初めてなんだし、一応手袋あった方がいいでしょ?」

梨子「本当に大丈夫?手とか切っちゃうんじゃ……」

千歌「大丈夫だいじょーぶっ、そんな簡単に手切らないから。ほら、まずはここの飛び出してるとこがあるでしょ?そこを……」ジャキン ジャキン

千歌「こんな感じで整えていくの。桜内さんもやってみて!」

梨子「わ、分かった……」スッ

15: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/14(日) 22:24:54.31 ID:53c91Y7K
梨子「(お、重いっ……刈り込みバサミって意外と腕に負担が掛かるのね……)」ヨロッ

千歌「おっと……大丈夫?」スッ

梨子「ぁ、う、うん。大丈夫」

ブーンッ

梨子「ひゃっ!?な、何!?虫!?」ビクッ

千歌「あ、クマバチだ。かわい〜!」

梨子「か、可愛い!?ハチが!?」

千歌「え?うん。可愛いよ?クマバチは何もしないから優しいんだよ〜♪」

梨子「え、えぇ……」

梨子「(……農業高校の人って、みんなこうなの……?)」

16: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/14(日) 22:25:13.68 ID:53c91Y7K
ダイヤ「千歌さん、梨子さん。うるさいですわよ。早く作業しなさいな」

千歌「ちぇ〜……怒られちゃった……だって先週も先々週もずーっとツツジの刈り込みじゃん!楽しくないよ〜」

ダイヤ「楽しいかどうかは関係ありません。これは授業ですから」

千歌「む〜……ダイヤちゃんの鬼……」

梨子「そういえば、黒澤さん……凄い実習服似合いますよね。それにその刈り込みバサミとの相性が……」

千歌「あ!梨子ちゃんもそう思う!?私もずっっと思っててさぁ!」

ダイヤ「……褒められてる気がしませんわね」

千歌「ほら!ダイヤちゃん!強そう!!」

ダイヤ「は?」

千歌「なんて言うか、その実習服と刈り込みバサミで敵を蹴散らして来たんだなって!」

ダイヤ「しょうもないですわ」フンッ

17: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/14(日) 22:25:38.55 ID:53c91Y7K
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梨子「………………」ゼェゼェ

梨子「え……刈り込みバサミが重くて腕痛いし……なんか上手く刈り込めないし……」

千歌「あちゃ〜……梨子ちゃんがやってたとこ、見事にハゲちゃってるね」

梨子「うぅ……ごめんなさい……」

千歌「いいのいいの!私もよくするし、案外刈り込みって難しいでしょ?」

梨子「ええ。もっと簡単にできると思っていたけど……こんなに大変だったなんて……」

千歌「私も最初は簡単なことだと思ってたよ〜!難しいよねぇ」ウンウンッ

実習助手「おーい、そろそろ戻るぞー。道具片付けろー!」

千歌「はぁーい!」

梨子「……あの人は?」

千歌「緑化科の実習担当の山崎先生だよ。といってもあの人は実習助手なんだけどね」

梨子「実習助手っていうのは?」

千歌「えー、なんて言うんだろう……正式な先生じゃないんだよね」

18: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/14(日) 22:25:54.35 ID:53c91Y7K
ダイヤ「千歌さん、梨子さん。刈り込みバサミ貰いますわよ」スッ

千歌「ありがとうダイヤちゃ〜ん!」スッ

梨子「こ、このくらい自分でするよ、申し訳ないし……」

ダイヤ「大丈夫ですわ。こうした方が早く終わりますし……あ、では梨子さん達はホウキで刈った草を拾い集めてくださいな」

千歌「おっけー。梨子ちゃん、一緒にやろ!」タッ

梨子「わ、ま、待ってよ〜!」アワアワ

19: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/14(日) 22:26:15.95 ID:53c91Y7K
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緑化棟 緑化教室

梨子「これは何を記録しているの?」

千歌「今日の日付とか温度、湿度を記録して、今日したことを書くの。人目見て分かるように、かな」

梨子「へぇ……」

梨子「……緑化科はいつも刈り込み作業をしているの?」

千歌「この時期はほとんど刈り込みかな〜?でも去年は野菜も作ったよ。ナスとピーマンとトマト!今年はブドウ栽培するみたい。あとは、造園技能士三級を取るんだって」

梨子「造園技能士?」

ダイヤ「造園……日本庭園などの庭園を作る人ですわ。その為の専門的な知識な技術を試される資格です。国家資格なので持っているといい資格ですわよ」

梨子「へぇ……造園、ねぇ……」

20: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/14(日) 22:26:36.52 ID:53c91Y7K
千歌「そうだ!せっかく休み時間なんだし、梨子ちゃんのこと、聞いてもいい?」

梨子「あ、う、うんっ」

千歌「ええ、……こほん。梨子ちゃんはどうして浦の星農業高校に来たの?」

梨子「私はお父さんの仕事の都合で内浦に来たんだけど、……何か新しいことがしたくて、農業高校に転入してみようって思ったの」

梨子「私ね、今まで皆と同じように何となく勉強して、何となく進学して……それでいいんだって思ってたんだけど、……突然つまらなくなったゃって」

梨子「どうしたらいいのかなって思った時に、家の近くに農業高校があるって知って」

ダイヤ「……なるほど、それで、どうして緑化科に?」

梨子「たまたま目に止まったから……って言ったら怒られるかな……」

千歌「ううん!私も何となくこの学科に入ったから!」

ダイヤ「何となくって、あなたねぇ……」ゲッソリ

21: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/14(日) 22:26:53.02 ID:53c91Y7K
梨子「黒澤さんは何か理由が?」

ダイヤ「……ええ、昔家族旅行で京都に行きまして、その時見た枯山水式庭園に心を奪われたんです。私もこんな風に人の心を動かせるような庭を作りたい、と思って浦の星農業高校に入学しましたわ」

千歌「色々考えてて凄いねぇダイヤちゃん」

梨子「高海さんは、どうしてこの学校に?」

千歌「………………」ジッ

梨子「な、なぁに?」

千歌「その高海さん、って呼び方。やだ」

梨子「や、やだ!?」

千歌「千歌ちゃんって呼んで!!」ズイッ

ダイヤ「そ、それなら私も是非ダイヤちゃんと呼んでくださいな!」ズイッ

梨子「わ、わかった!呼ぶ!呼ぶからぁ!」アワアワ

24: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/14(日) 23:07:10.46 ID:53c91Y7K
ガラララッ

おじいちゃん先生「はーい、授業始めるぞ〜」

梨子「あの人は……?」

千歌「白津先生だよ。すっごいんだよ、白津先生!色々な資格持ってるし、結構偉い人らしくて……まあ見た目はただのおじいちゃんなんだけどね」

白津「今年から始まる課題研究の授業なんやけど、全員で同じことは出来んから3つの班に分けないといけないんですね」

 課題研究。毎年一月には一年間のまとめを行い、クラスの前で発表し、クラス代表を決めることになっている。クラス代表となった班は学校全体で発表し、更にその中から学校代表の班を決め、県大会へと進めることになっているのだ。

25: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/14(日) 23:07:35.38 ID:53c91Y7K
白津「私の班はブドウのツルを使ったグリーンカーテン制作を行います」

ガチャッ

おじいちゃん先生2「すみません、遅れました〜」トテトテ

梨子「おじいちゃんが増えた……」

ダイヤ「薦田先生ですわ。同じく農業の先生ですの」

薦田「先生の班は放置された農場を新しくリニューアルして野菜の栽培を行う予定です」

山崎「俺の班は文化祭や農販会で販売する苔玉制作をします。使用する植物は学校にある余った植物を使う予定です」

白津「今から五分間時間を取るので、入りたい班のところに黒板に名前を書いていってください」

26: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/14(日) 23:07:52.64 ID:53c91Y7K
千歌「んー、どうしよっかなぁ」

ダイヤ「迷いますわねこれ……」

千歌「苔玉作るのは楽しそうだけど……後々考えたら白津先生の班かなぁ……でも野菜作るのもいいしなぁ……」ウーン

梨子「…………」アワアワ

千歌「……梨子ちゃんは、どこか興味あるとこある?」

梨子「えっ、わ、私は……」

梨子「……ねぇ、私、……二人と同じ班が良いなって思うんだけど、……ダメかしら?」

千歌「私は全然いいよ!ダイヤちゃんは?」

ダイヤ「仕方ないですわね。それで、どこにするんですの?」

27: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/14(日) 23:12:28.68 ID:53c91Y7K
千歌「あ、見て。山崎先生の班、誰も居ないよ。どんだけ人気無いんだろう」

山崎「なんか言ったか?」ヌッ

千歌「ぎゃあああっ!?!?」ドンガラガッシャーン

梨子「だ、大丈夫!?凄い勢いで椅子から落ちたけど……」

千歌「な、何するんですか先生!痛いんですけど!」

山崎「痛いも何も、千歌が変な事言うのが悪いっちゃろ」

千歌「なんだとぉ!」

28: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/14(日) 23:12:51.02 ID:53c91Y7K
ダイヤ「どうするんですの?この人の班しか残ってませんが」

山崎「この人言うなこの人」

千歌「えー、じゃあもうここでいいよー。苔玉にしよー」

山崎「雑」

梨子「わ、私は楽しいと思いますよっ、苔玉……」

山崎「ん?……ああ、転入してきた」

梨子「桜内梨子です。よろしくお願いします」ペコリ

山崎「…………なんか千歌達とは大違いやな」

千歌「なんだとぉ!やんのかこらぁ!」

梨子「や、やめなさいよ千歌ちゃん……」

29: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/14(日) 23:51:09.64 ID:53c91Y7K
山崎「まあ決まったなら名前書いとき。後でゆっくり話そうな」

千歌「ちぇー……」

梨子「か、変わった人ね……?」

千歌「そうかな?うちの学校にはああいう人しか居ないけど……」

梨子「(農業高校、やっぱり変わってる……)」

31: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/15(月) 00:07:12.44 ID:KIzof4HN
ダイヤ「名前は私が書いておきましたよ」スッ

千歌「ダイヤちゃん!ありがとう!」

千歌「課題研究はこの三人で出来るね!良かった〜!」

白津「はい、じゃあ決まったみたいなので担当の先生の近くに座って班ごとに活動してください」

山崎「お前らはここでいいか」

千歌「雑過ぎ!こんにゃろ!!」ドスッドスッ

梨子「ち、千歌ちゃん!叩かないの!」

32: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/15(月) 00:07:29.50 ID:KIzof4HN
山崎「えー、さっきも話した通りこの班は農販会や文化祭で販売する用の苔玉制作を行います」

梨子「あの、その農販会っていうのは?」

ダイヤ「農産物販売会のことですわ。学科ごとに作物や食品を生徒主体で売っていたりしています」

梨子「へぇ、それが農販会」

山崎「次の農販会は緑化が担当やろ?」

ダイヤ「はい。うちだったと思いますわ」

33: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/15(月) 00:21:59.53 ID:KIzof4HN
千歌「毎回凄い人なんだよー!梨子ちゃん、最初の農販会が次回って、大丈夫かなぁ」

梨子「そ、そんなに人が来るの?」

千歌「うんっ、あのねこの間うちの学校、テレビに出たの!その影響もあって人がいっぱい来るんじゃないか〜って噂になってるよ!」

梨子「テレビに……凄いわね……」

山崎「まあ次回の農販会には間に合わんやろうから取り敢えず文化祭を目標にな」

34: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/15(月) 00:22:24.81 ID:KIzof4HN
山崎「それで、苔玉に使用する植物を決めようと思うんやけど、なんか案あるか?」

千歌「オリーブかなぁ。あとはイロハモミジ!」

ダイヤ「私はイチョウがいいですわね。沈丁花とかも余ってましたよね?」

梨子「えっ?えっ?」ポカーン

山崎「そりゃ、梨子は分からんやろうな……」

山崎「ええっと、オリーブ、イロハモミジ、イチョウ、沈丁花……あ、フィカスプミラもあったな」

千歌「フィカスプミラ?」

35: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/15(月) 00:22:42.65 ID:KIzof4HN
山崎「こんなやつ。去年の三年生が買ってきたやつ」スッ

千歌「おお!かわいい!」

ダイヤ「これも使うとして……梨子さん、何か案はありますか?」

梨子「え、えっと…………」

梨子「……ぁ、さ、桜!桜が良い、かも……」

山崎「桜……ソメイヨシノなら校舎前に沢山咲いとるし、それ使うか」

39: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/15(月) 23:07:38.06 ID:KIzof4HN
山崎「取り敢えず、まず挿し木を行ってからじゃないと苔玉には入れられんけん、挿し木をしないといけんっちゃね」

梨子「挿し木?」

千歌「うん、採取した植物をそのまま使うっていうのは出来ないんだ。枯れちゃうから」

ダイヤ「根付かせてからではないと簡単に枯死してしまいますが、採取したものに植物調整剤を付け、苗に刺しておくことで根が出てくるのですわ」

梨子「な、なるほど……」メモメモ…

山崎「……っふ、」

山崎「メモせんでもええけどな。千歌達も見習っとけ」

千歌「なっ!?なんてこと言うんだ〜!」

40: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/15(月) 23:35:57.60 ID:KIzof4HN
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校舎前

千歌「……よし、これで100本かな」パチン

梨子「これから挿し木、するのよね……」ハァ…

ダイヤ「ええ。戻りましょうか」

梨子「ええっ、またぁ?」

ダイヤ「当たり前です。校舎前は車通りが激しいですから早く退かないと邪魔になってしまうでしょう。行きますよ千歌さん、梨子さん」

千歌「はーい、梨子ちゃんもバケツ持ってくよ〜」

梨子「ええっ、ま、待ってぇ……」ヘトヘト

41: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/16(火) 00:05:04.11 ID:2YvNz0K7
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緑化棟 ブドウハウス前

梨子「わっ……このビニールハウスは?」

千歌「これはブドウハウスだよ。その名の通り、ブドウ作ってるの!」

梨子「へぇ、ブドウを……」

梨子「そういえば山崎先生は?」

千歌「ああ、あの人色んなとこ行ったりしてるからずっとここに居るわけじゃないんだ。今はサツマイモ圃場に行ってると思う」

ダイヤ「早速始めますわよ」ストン

千歌「ああ、梨子ちゃんも座って座って」ストン

梨子「えっ……じ、地べたに座るの?」

千歌「他にどこがあるの……?」

梨子「……い、いや、……なんでもないわ」ストン

梨子「(こ、この学校で生きていくためには考えるのを止めないと行けないわね……)」

43: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/16(火) 19:02:22.86 ID:2YvNz0K7
千歌「まずね、採取してきた植物があるでしょ?これをね、木バサミでこう……」パチンッ

梨子「あっ……ど、どうして葉っぱを半分切っちゃうの!?」

千歌「水分の蒸散を防ぐんだよ。ただでさえ本体から切り離されちゃって弱ってるのに、エネルギーが水分の蒸散に使われてたら中々発根しないんだ」

梨子「な、なるほど……」パチンッ

ダイヤ「育苗ポットに割り箸で植物を挿入する穴を開けておくのですわ。今回、土は赤玉土を使用します。はい、どうぞ」

千歌「ありがとっ。そしたらね、この切り口をこう斜めに切って、割り箸で空けておいた穴に入れるの!」

千歌「どうして斜めに切るかって言うと、普通に真っ直ぐ切るよりもこっちの方が水分を吸収する面積が大きくなるからだよ」

45: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/16(火) 20:36:34.07 ID:2YvNz0K7
梨子「へぇ……色々考えられてるのね……」

千歌「一応お客さんに出す商品だからね。農業してる身としてそこは一番気を使っていかないと」

ダイヤ「千歌さん、そのまま入れてますけどコレ忘れてますわよ」

千歌「あっ!しまった!!」ガーン

梨子「この白い粉は何?」

ダイヤ「発根剤ですわ。その名の通り、これを切り口に付けておくと発根しやすくなるんですわ」

千歌「それで、その挿した植物にしっかり土を密着させるの!これが一番大事!」ビシッ

梨子「そ、そんなに大事なの?」

46: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/16(火) 20:36:57.90 ID:2YvNz0K7
千歌「うん!本当に大事!ここが運命を左右するから!」

梨子「ふ、ふぅん……?」

千歌「去年、今と同じようにダイヤちゃんと二人で100本の挿し木に挑戦したんだけどね……55本は枯死しちゃって、結局上手くいかずに終わったんだよね……」

ダイヤ「失敗理由は根と土の密着が甘かったこと。だからこそ、今回は失敗出来ないんです。前回の反省を活かしてリベンジですわ!」

千歌「梨子ちゃんも一緒に頑張ろ!あと99本あるよ!」

梨子「ああっ、そうだったぁ……」ショモ

ダイヤ「急ぎましょう。あと30分で授業が終わりますわよ!」

49: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/16(火) 22:30:12.69 ID:2YvNz0K7
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昼休み

緑化科 更衣室

千歌「梨子ちゃん!今からどっかの学科が作ってるみかんをもぎって勝手に食べに行くんだけど梨子ちゃんも行く──って」

梨子「…………」コクン コクン……

千歌「ありゃ、寝ちゃった。さっきまでこんなに汚い更衣室でご飯食べるの嫌〜って言ってたのに」

ダイヤ「転校初日に四時間実習は大変でしょうからね……私達ですら眠くなってしまいますし」

ダイヤ「……って、貴女今みかんを──」

千歌「なっ、何でもないよ!?別に他所の学科からみかんを取って食べようだなんてそんな……」

ダイヤ「はぁ、……全く。今の時期みかんがなっていると思うのですか?」

千歌「まだ青いよねぇ〜」

50: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/16(火) 22:30:33.82 ID:2YvNz0K7
千歌「あ、時間やば!?掃除始まっちゃうよ!?」

ダイヤ「あ、本当ですわ!梨子さん、起きてください!掃除行きますよ!」ユサユサ

梨子「ん、んん……」ムニャムニャ

千歌「あ。かわい……」ツンツン

千歌「ダイヤちゃ〜ん……私、掃除サボる……」

ダイヤ「良いわけないでしょ!二人とも行きますわよ!」グイグイ

千歌「あ〜ん……掃除も国語も嫌だあああぁっ」

ダイヤ「一時間くらい我慢しなさいな!一時間頑張れば貴女の大好きな体育でしょう!?」

千歌「年度始めは集団行動だよどうせ!ラジオ体操と行進と駆け足!」💢

51: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/16(火) 22:37:17.36 ID:2YvNz0K7
ダイヤ「文句言わずに立ちなさいな!間に合いませんわよ!」

千歌「どうせまたトイレ掃除なんだよおおおおおぉっ!!!」💢

梨子「ん、んぅ……何の騒ぎ……?」ムニャ…

千歌「り、梨子ちゃん!今から掃除サボ──」

バッチーンッ

ダイヤ「さ、行きますわよ」

千歌「はい」ヒリヒリ

梨子「えっ、何?何!?」

52: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/16(火) 22:58:09.82 ID:2YvNz0K7
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体育館 六時間目終了

体育教師「はい、気を付け。礼」

生徒「ありがとうございました〜」

梨子「……はぁ、……やっと終わった……」クタクタ

ダイヤ「梨子さん、お疲れ様でした」

梨子「ありがとう、ダイヤちゃん……農業高校の一日ってこんなに大変なのね……」ゲッソリ

ダイヤ「慣れるまでは大変でしょうけど……慣れたら心地良い疲れですわ。夜もぐっすり眠れますし、農作業は良い運動になりますし」

梨子「そうね、ここまで動いてたら運動と一緒。……私、農業高校を甘く見てたわ……今日自力で帰れるか分からないもの……」

53: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/16(火) 22:58:32.72 ID:2YvNz0K7
梨子「それに比べて千歌ちゃんは──」チラッ

千歌「善子ちゃーん!!お疲れ様〜!!今度また遊びに行ってもいい〜!?」

善子「ちょっ、来るなぁ!私は堕天使ヨハネだってば!」

梨子「他の学科の子にちょっかい出しに言ってるし……」

ダイヤ「千歌さんは顔が広いですからね」

千歌「善子ちゃん!次はいつ同好会ある!?」

善子「いつもあるに決まってんでしょ!私と鞠莉先輩以外人居ないのよ!」

千歌「はへ〜……動物科ってそんなに人居ないの?」

善子「そりゃ当然よ。動物科だからこそ同好会に入ってまで動物の面倒見たくないんでしょ」

54: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/16(火) 22:58:51.87 ID:2YvNz0K7
千歌「え〜、私からしたら動物に触れるだけでも幸せなのになぁ」

善子「ただ触るのと世話をするのは違うのよ。私達動物科は動物として、じゃなくて商品として動物と関わってる。勿論大切な命だけど。……ただ、商品を管理する者として責任を伴うか伴わないか。ここは重要なことなの」

千歌「……なるほどねぇ。私、動物科じゃなくて良かったかも」

善子「そうね。あんたは向いてないわ」

善子「能天気に農業してるのがお似合いね。それじゃ私これから畜産棟行かなきゃいけないから」ヒラヒラ

千歌「うんっ、またね〜」フリフリ

55: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/16(火) 22:59:06.82 ID:2YvNz0K7
梨子「お友達?」

千歌「うん、動物科の。あ、今度梨子ちゃんも一緒に動物同好会行こうよ!」

梨子「動物同好会?」

千歌「うんっ。イヌとかウサギとか、カメも居るよ〜!」

梨子「へぇ、良いわね。学校で飼ってるの?」

千歌「そうそう、だからそのお世話をする部活〜みたいのが動物同好会!」

梨子「なるほど……うん、考えておくね」

千歌「ありがとう!……あっ、やば、バス間に合う?早く着替えて急いでバス停行こ!」ダッ

梨子「あっ、ちょっと待ってよ〜っ!」ダッ

56: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/16(火) 23:04:29.14 ID:2YvNz0K7
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翌日 桜内宅

梨子「……………………」ガチゴチ

梨子「あー……なるほど……全身筋肉で起き上がれないわね…………」

梨子「(……今日が入学式で良かった。今日が登校日だったら私死んじゃってたもの)」ゴロッ

梨子「(……ダイヤちゃんは生徒会で出席って言ってたっけ。皆忙しそう……千歌ちゃんは確か──)」

千歌『入学式?そりゃ行くよ!』

千歌『私の幼馴染がこの学校に入学してくるんだ〜!だからそのお祝い!』

梨子「(……千歌ちゃんの幼馴染、か。どんな子なんだろう……)」ウト…

57: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/16(火) 23:37:52.50 ID:2YvNz0K7
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入学式後

曜「千歌ちゃーん!果南ちゃーん!」トテテテ

千歌「よーちゃん!入学おめでと〜っ!」ギューッ

曜「ありがとう!ふたりと同じ学校に入れて良かったよ〜!」ギューッ

果南「まさか私と同じ園芸科でも千歌と同じ緑化科でもないのは驚いたけど……」

曜「えへへぇ、デザイン科も中々楽しそうだな〜って思って!」

曜「それに友達も出来たんだよ!おーいっ!」

果南「にゅ、入学式初日に!?」

千歌「よーちゃんすごーい!」

58: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/16(火) 23:38:11.78 ID:2YvNz0K7
ルビィ「はっ……はじめ、まして……」ヒョコッ

千歌「わっ、かわいい!」

千歌「はじめまして〜、私は緑化科二年の高海千歌!それでこの人が園芸科の松浦果南ちゃんだよ!」

果南「よろしくね」

ルビィ「は、はひぃ……」

千歌「そんなに怖がらなくてもいいんだよ?ほら、飴!食べる?」スッ…

ルビィ「は、はいっ……」ギュッ…

千歌「くうぅ〜っ、……かわいいっ!」

59: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/16(火) 23:38:57.42 ID:2YvNz0K7
曜「この子は黒澤ルビィちゃん!裁縫が得意でデザイン科に進学したんだって!それから緑化科にお姉ちゃんが──」

ダイヤ「ルビィ!」ダッ

ダイヤ「こんなところに居たのですね。入学おめでとう」

ルビィ「お、お姉ちゃんっ!」

千歌「あぁ、この子、ダイヤちゃんの妹ちゃんだったんだ!」

ダイヤ「……この方は?」

ルビィ「わ、渡辺曜ちゃん。……ルビィとお友達になってくれたの」

ダイヤ「……そう。曜さん、ルビィをよろしくね」

曜「はいっ、ルビィちゃんを任せてください!」ビシッ

60: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/16(火) 23:39:42.45 ID:2YvNz0K7
ダイヤ「あ、……果南先輩」

果南「久しぶり。相変わらず千歌とは仲良くしてくれてるみたいで良かったよ。私の方こそ千歌を宜しくね」

ダイヤ「はい、勿論ですわ。……それより聞きました?この人、園芸科のみかんを勝手に──」

千歌「ああーっ!!一年生の前でそれはダメー!!!」

68: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/17(水) 19:17:31.78 ID:+73+s+me
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次の日 登校中

曜「えへへ〜♪こうして三人で学校行くのも久しぶりだね〜♪」ルンルン

果南「曜も今日から立派な高校生だね」ウンウンッ

曜「えへへ、早くふたりと同じ学校に通いたくてうずうずしてたんだ」

千歌「よーちゃんは何か部活入るの?」

曜「んー……千歌ちゃん達は何だっけ?」

果南「私は太鼓部。千歌は書道ね」

曜「うーん……でも私、水泳クラブあるし……やっぱりそっちを続けようかな」

千歌「ああ、そっか……うち、プール無いもんね」

69: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/17(水) 19:17:48.90 ID:+73+s+me
曜「農業高校ってプールも音楽室も無いんだねぇ。それに比べて農場の方は止まれ!とかの看板もあるし、こんなに広いし、色々な建物があるし……何だか違う街に来たみたい」

千歌「分かるよ〜、チカも入学した時びっくりしたもんね。学校の中なのに、学校の外に居る気持ちになっちゃうもん」

千歌「あ!そうだ、よーちゃん今日放課後に動物化の畜産棟行こうよ!たくさん動物居るよ!」

曜「えー!いくいくー!果南ちゃんは?」

果南「ごめん、私は今日部活あるから……」

千歌「そっかぁ、残念……」

70: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/17(水) 19:18:10.76 ID:+73+s+me
果南「千歌と曜二人で行って来たら?」

千歌「うんっ……あ、そうだ!梨子ちゃんも一緒に行ってもいい?」

かなよう「「りこちゃん?」」

千歌「うんっ!一昨日転入してきたばっかりの超絶美少女だよ!桜内梨子ちゃん!」

曜「美少女!?」

千歌「そーだよ!東京から来たんだって!梨子ちゃんってば何か良い匂いするし……あれが東京のじぇーけーなんだ!」

千歌「東京のじぇーけーってみんなあんなに良い匂いがするのかな?」

果南「何言ってんのさ……」

71: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/17(水) 19:18:43.15 ID:+73+s+me
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緑化科 教室

千歌「あ、梨子ちゃんおはよ!」

梨子「おはよう千歌ちゃん、今日も元気ね……」

千歌「梨子ちゃんどうしたの?元気無いけど……ん、湿布の匂い……」スンッ…

梨子「一昨日のやつで全身筋肉痛なのよ……昨日一日じゃ治らなかったし……」

千歌「梨子ちゃんったら弱いなぁ。私を見習ってよこの元気さ!」ムンッ

梨子「それは一年も通ってたらそうなるわよ……私なんか初登校でアレだったんだから……」

72: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/17(水) 19:19:09.49 ID:+73+s+me
ダイヤ「ん……湿布の匂い……あ、千歌さん梨子さん。おはようございます」

梨子「おはよう……ってそんなに湿布の匂いする?」

ダイヤ「ええ、少し」

梨子「嘘……は、剥がしてこようかな……」

ダイヤ「心配無いですわ。特別気になるというわけではないので。……それに、何故かこの学校に来てから鼻が良くなった気がするのです」

梨子「や、野生化してるとか?」

ダイヤ「……………………」

千歌「梨子ちゃん…………酷い………………」

梨子「ご、ごめんなさあぁいっ……」ピエェ…

73: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/17(水) 19:19:50.12 ID:+73+s+me
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昼休み
デザイン科 教室

曜「ルビィちゃーん!一緒にお昼食べよ!」

ルビィ「うんっ、あ、そうだ……お友達、呼んでもいい……?」

曜「友達?全然良いよ!一緒に食べた方がもっと美味しいに決まってるもん!」ビシッ

ルビィ「えへへ、ありがとう。ちょっと呼んでくるね」

曜「私も行く〜!」トテテ

74: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/17(水) 19:49:20.20 ID:+73+s+me
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食品科 教室

ルビィ「あれ……マルちゃん居ない……」

曜「マルちゃん」

ルビィ「うん、国木田花丸ちゃんだからマルちゃん。……教室、だぁれもいないね」

曜「実習なのかな?」

ルビィ「たぶん……」

花丸「あ、ルビィちゃん!」

ルビィ「あ!マルちゃん!」パアァッ

花丸「オラ、今教室に戻ってきたばっかだから、ちょっと待ってな」

75: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/17(水) 19:49:41.32 ID:+73+s+me
曜「あの子、すっごい訛ってるね?」

ルビィ「マルちゃんのおじいちゃんが凄い訛ってる人でね、それを聞いてたらマルちゃんもこうなっちゃったんだって」

曜「なるほどねぇ。私の周り、あんなに訛ってる子居ないから何か興味出てきた!」

曜「マルちゃーん!」ブンブン

花丸「あらら、どうしたずら。ルビィのお友達?」

ルビィ「う、うんっ。渡辺曜ちゃんだよ」

花丸「渡辺曜ちゃん。ああ、はじめまして。オラは国木田花丸ずら、よろしくね」

曜「よろしくね、花丸ちゃん!」ビシッ

76: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/17(水) 19:50:02.98 ID:+73+s+me
ルビィ「三人でご飯食べようって思ったんだけど……良いかな……?」

花丸「オラはいいよ。曜ちゃんは?」

曜「私はそのつもりで着いてきたから!三人で食べよ〜!」

ルビィ「でも……何処で食べたらいいんだろう……」

花丸「あ、食堂の裏。あそこは景色が良いからあそこで食べるずら!」

曜「良いね!それじゃあ全速全身〜っ、ヨーソロー!」タッ

花丸「行こ、ルビィちゃん!」タッ

ルビィ「ああっ、ま、待ってよ〜っ!」タッ

79: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/18(木) 00:22:45.57 ID:Pi4TNvod
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放課後

梨子「(今日は一日座学だったから何とかなったけど……明日からはまた実習か……憂鬱だな……)」教科書トントンッ

千歌「あ、梨子ちゃーん!今日用事ある?」

梨子「え?いや、何も無いけど……」

千歌「なら一緒に動物同好会に行こうよ!今日、私の幼馴染の曜ちゃんと一緒に行く予定が──」

曜「千歌ちゃ〜ん!」オーイ

千歌「あっ、よーちゃん!今行くね〜!」

80: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/18(木) 00:23:04.98 ID:Pi4TNvod
千歌「それでね、梨子ちゃんも一緒にどうかなーって!」

梨子「私は行きたいと思ってたけど……お邪魔じゃない?」

千歌「そんなことないよ!一緒に行こ!」ギュッ

梨子「あ、うんっ」コクリ

千歌「よーちゃん、お待たせっ。この子が桜内梨子ちゃんだよ」

曜「初めまして!デザイン科一年生の渡辺曜です!梨子先輩っ、よろしくお願いします!」ビシッ

梨子「け、敬礼……?」

曜「ほら、梨子先輩も一緒に!」

梨子「よ、よろしくね曜ちゃん」ビシ…

曜「はい!よろしくお願いします!」ニパ

梨子「(な、何だかワンちゃんみたいね……)」

千歌「それじゃあ畜産棟まで、レッツゴー!」

曜「おーっ!」

梨子「お、おおーっ!」

81: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/18(木) 00:23:25.38 ID:Pi4TNvod
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動物科 畜産棟

千歌「ここが畜産棟だよ。畜産棟にはウシとか、ポニーとかヤギとか……あとはニワトリも居るね。動物同好会の方にはイヌとカメとウサギも居るよ!」

曜「ポニー乗れる!?」

千歌「50キロまでなら大丈夫みたいだよ!」

鞠莉「あら、珍しいお客さんね」ヒョコ

曜「こ、こんにちは!」

千歌「あっ!鞠莉先輩!こっちは転入生の桜内梨子ちゃんと、一年生の渡辺曜ちゃんです」

梨子「よ、よろしくお願いします!」ペコリ

曜「よろしくお願いします!」ビシッ

82: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/18(木) 00:23:44.12 ID:Pi4TNvod
鞠莉「よろしくね。動物科三年の小原鞠莉よ」

千歌「鞠莉先輩は動物同好会の部長でもあるの。私はよく遊びに来てるから偶にお喋りするんだ〜」

鞠莉「あ、今日は善子も当番だったはずよ」

善子「………………」ドンヨリ

鞠莉「あら、噂をすれば。善子ったら泥だらけの実習服でどうしたの?」

善子「用水路に落ちたんです……って千歌」

千歌「ああ、善子ちゃんも相変わらずだね〜……」

曜「千歌ちゃん、この人は……?」

千歌「こっちは津島善子ちゃん。動物科の二年生だよ」

83: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/18(木) 00:24:03.40 ID:Pi4TNvod
善子「善子じゃなくてヨハネ!……クックック……このヨハネと出会ってしまったからには貴女も不幸の星か灯るのよ……逃げても無駄、私の不幸の星からは一生逃げられないんだから!」

曜「はい?」ポカーン

曜「先輩、何言ってるんですか?」

善子「〜っ!!」カアァッ

善子「な、なんか調子狂うんだけど……」

鞠莉「善子も立派な二年生になったんだし、メリハリつけないとダメね」

善子「……ん、……ああ。貴女、転入してきた」

梨子「さ、桜内梨子です。よろしくね、善子ちゃん」

善子「……その呼び方辞めて。嫌なの」ムッ

梨子「えっ?あ、……そ、それじゃあ……よっちゃん、とか……?」

千歌「なにそれダサ──」

鞠莉「…………」サッ

千歌「っむぐ!?」

84: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/18(木) 00:24:24.10 ID:Pi4TNvod
善子「よっちゃん……まあいいわ。それで、貴女は初めて見るけど」

曜「はいっ、デザイン科一年の渡辺曜です!善子先輩っ、よろしくお願いします!」ビシッ

善子「だから善子は……むむ、でもこの子一年生だし……もうそれでいいわ」

千歌「そんなことより早く動物見に行かない!?可愛いよ!?」

曜「そうだった!善子先輩、鞠莉先輩、動物見て行ってもいいですか!?」

鞠莉「ええ、好きにしてくれていいわよ。私達も各自で色々作業してるから、困ったら声掛けて。行くわよ、善子」

善子「はぁい。また後でね」

梨子「うん、またね」

千歌「ウシ見ようウシ!おっきいんだよー!」

89: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/18(木) 18:48:50.12 ID:Pi4TNvod
梨子「ウシが居るなんて凄いわね……私が前通ってた学校じゃ考えられない……」

千歌「ウチの学校は黒毛和牛を5頭か4頭飼ってるんだって!あ、でもついこの間出荷したばっかだったっけ……まあ覚えてないけどね!」

梨子「出荷ってことは……やっぱりお肉にするのね」

千歌「動物科はそういうのばっかりだからつらいよねぇ。でもでも、出荷したウシはA5ランクだったんだって!1キロ当たり2500円以上!凄いよねぇ!」

曜「…………」ジーッ

梨子「よ、曜ちゃん?……どうかした?」

90: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/18(木) 18:49:09.23 ID:Pi4TNvod
曜「ほんとだ。梨子先輩……良い匂いする……」スンスン

梨子「え!?」

曜「千歌ちゃん!これが東京のじぇーけーの匂いなんだね!」

千歌「げっ……」

梨子「…………千歌ちゃん、まさか曜ちゃんに変なこと……」

千歌「………………」汗ダラダラダラ

千歌「や、ヤギでも見に行こうかー」メソラシ

梨子「こらー!説明しなさいってば!」

千歌「ぎゃーっ!ごめんなさああぁいっ!」

曜「……私、何か変なこと言っちゃったのかな……?」

91: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/18(木) 23:34:19.14 ID:Pi4TNvod
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牛舎

曜「……動物園の匂いがする……」

梨子「ええ……ちょっと。……ちょっとね……」

千歌「そんなに臭う?まあ気持ちは分かるけど……」

千歌「ほら見てウシだよウシ!こっちおいで〜!」

🐮「…………」ジョババババ

千歌「あ〜、おしっこしちゃった」

千歌「まあ目の前でうんちされるよりは全然良いよね〜」ゲラゲラ

ようりこ「「……………………」」

梨子「千歌ちゃん……」

曜「……私、ヤギ見たい……」

千歌「えっ」

92: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/19(金) 00:44:42.96 ID:j76kcnOU
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畜産棟

千歌「ふたりともウシ嫌いだった?ごめんね……?」

梨子「そういうわけじゃないんだけど……」

曜「わーっ!見て!ヤギにポニー!可愛い〜!」キャッキャ

曜「千歌ちゃん、ポニー触ってもいいかな?」

千歌「良いと思うよ!私もよく撫でるんだ〜!」ヨシヨシ

鞠莉「あら。案外早く戻って来たのね」

千歌「ふたりがウシはもういい〜って。何が嫌だったんだろ〜……」

93: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/19(金) 00:45:11.06 ID:j76kcnOU
曜「千歌ちゃん!私、ポニー乗りたい!」

千歌「えっ!?の、乗るの!?」

曜「ダメ?」

千歌「ダメ……じゃないけど……」チラッ

鞠莉「ん?ああ、別に乗ってもいいけど今まで本当に乗ったことある人が居ないから、どうなっても自己責任よ」

曜「ひぇっ……」

千歌「鞠莉先輩は乗ったことないんですか?……馬、好きなんですよね?」

鞠莉「ええ、馬は好きよ。愛馬が居るくらいだもの。……でも私が好きなのはポニーじゃなくて馬。ポニーはお子ちゃま専用って感じがするし」

94: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/19(金) 00:45:33.10 ID:j76kcnOU
鞠莉「……まあ、この子も好きよ。スターブライトには勝てないけどね」ナデ…

梨子「……どうして同好会に入ったんですか?」

鞠莉「えっ……?」

梨子「い、いや……深い意味とかは無くって。気になったので」

鞠莉「……実はね……勘違いしていたのよ」

曜「勘違い?」

鞠莉「馬術部があると思い込んでいたのだけど、実際この学校に来てみたら小さくて可愛いポニーしか居なくてね」

鞠莉「最初はかなりショックだったけど、もう慣れたわ」

98: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/19(金) 19:27:15.01 ID:j76kcnOU
善子「あっ、ちょっと待ちなさい!」

🐶「わふっ!」トテテテ

梨子「な、何!?犬!?」

🐶「わんっ!」

曜「かわいい〜っ!何の犬種ですか?かわいい!」

善子「雑種よ雑種。ほら、こっち来なさいってば」

🐶「……っふ」プイッ

善子「あっ、こいつ……」

鞠莉「善子は相変わらず舐められてるわね」

善子「何とかしてくださいよ。自分のゲージ戻らなくて……」

99: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/19(金) 19:27:36.07 ID:j76kcnOU
鞠莉「簡単よ。見てて」スッ

梨子「ボール?」

鞠莉「てりゃああぁっ!」ブンッ

千歌「な、投げたーっ!!!」

🐶「わん!」トテテテッ

曜「わ、凄い!ボールがぴったりゲージに入って……」

鞠莉「……っよ、っと……」ガシャン

鞠莉「ほら、簡単じゃない」

善子「嘘でしょ……こんなやり方、アリなの……?」

鞠莉「善子のやり方はこの子に合わないのでしょうね。だから舐められるのよ」

善子「ぅぐ……」

千歌「善子ちゃん、年中発情されてるもんね♪」

善子「そういうの後輩の前で言わないでくれる?」

100: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/19(金) 19:28:06.05 ID:j76kcnOU
梨子「よっちゃんが出てきた部屋は何?」

善子「ああ。あそこが同好会の活動場所よ。ウサギとかカメとかいるし、見ていく?」

曜「いいんですか!?」パアァッ

善子「ええ。勝手に入ってる人とか居るし。こいつとか」ユビサシ

千歌「やめてよ〜、私はちゃんと鞠莉先輩に許可取ってるもん。ねー、鞠莉先輩」

鞠莉「そんなこと滅多に無いじゃない」

千歌「やーめーてーよーっ!嘘でも頷いてくださいよー!」

曜「見て千歌ちゃん!ウサギだよウサギ!いっぱい居る!」

千歌「って!もう入ってるし!」

101: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/19(金) 19:28:25.89 ID:j76kcnOU
曜「かわいい〜っ」スッ

🐰「!?」ビクッ

曜「わっ!?ご、ごめんね!?」

善子「ああ、ダメよそんなにいきなり撫でたら」

善子「撫でるならそーっとね」

曜「…………そーっと、そーっと……」スッ

🐰「…………」

曜「わあぁ……もふもふ……触らせてくれてありがとう〜っ」ナデナデ

鞠莉「貴女達も入ったら?」

千歌「ありがとうございます!よーちゃん!私もウサギ触るー!」タッ

梨子「ありがとうございます、……あっ」

🐢「………………」

梨子「……カメだ……」

102: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/19(金) 19:28:44.61 ID:j76kcnOU
鞠莉「満咲よ」

梨子「まんさく?」

鞠莉「カメの名前。小さくて可愛いでしょう?」

梨子「……はい。とっても可愛いです」

曜「善子先輩!私エサあげたいです!」

善子「ええ……なんかあったかしら……」ガサゴソ

鞠莉「あ、善子。水も替えて」

善子「はぁい。千歌も手伝って」

千歌「またー?パシリだよそれー」

善子「いつもやってんでしょ。早くして」

千歌「ちぇーっ……」

曜「私も手伝いまーす!」トテテテ

103: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/19(金) 19:28:59.91 ID:j76kcnOU
鞠莉「…………ねぇ」

梨子「は、はい」

鞠莉「梨子はどうしてこんな時期に農業高校に来たの?」

梨子「……ああ、やっぱり皆気になるんですね。私はお父さんの仕事の都合で内浦に引っ越してきたんですけど……私の通っていた普通科の高校が凄く窮屈で……」

梨子「毎日毎日勉強ばっかりしかなくて……これでいいのかなって思ってた時に転勤の話が出て」

梨子「どうせなら今度は普通科の高校じゃないところに行こうって思ったんです。それで見つけたのがここの、浦の星農業高校で」

鞠莉「ふぅん。なるほどね」

104: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/19(金) 19:29:19.43 ID:j76kcnOU
梨子「あの、……何か?」

鞠莉「……うちの学校、……と言ってもうちだけじゃないと思うけど。結構辞めていく人が多くてね」

鞠莉「東京の子がうちの学校に来た、なんて聞いたから、どうしてかなって。直ぐに辞められても困るしね」

鞠莉「……梨子が入れたのは、梨子のクラスメイトが一人辞めたからなのよ」

鞠莉「千歌っちは全力で止めたわ。もっと良い事があるって、楽しいことがあるって。……まあ、その頃千歌っちはどうすればいいのか分からなくて泣きながら私に相談して来たりしてたんだけど」クスッ

梨子「……千歌ちゃんが……?」

鞠莉「ええ、意外でしょ?」

105: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/19(金) 19:29:43.17 ID:j76kcnOU
梨子「……はい。少し。千歌ちゃんってもっとこう……勢いだけでいきているような人じゃないですか」

梨子「だから……色々考えてるんだなぁって……びっくりで……」

鞠莉「それ、悪く言ってる?」

梨子「いえそんな!」アワアワ

梨子「……でも、千歌ちゃんが……」チラッ

千歌「あはは!うんちしたー!」

善子「小学生か!」

曜「ウサギかわいい〜!」

106: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/19(金) 19:30:01.73 ID:j76kcnOU
鞠莉「……梨子は、辞めない?」

梨子「……私は……」

梨子「……辞めないです。絶対に」

鞠莉「……そう」フッ

鞠莉「はーい、そろそろ片付けて。帰るわよ〜」パンッ

ちかようよし「「「はーい」」」

梨子「(鞠莉先輩、最初は雰囲気怖かったけど……良い人なのかも)」

梨子「(やっぱり農業高校って色々な人がいて面白いな……)」

107: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/19(金) 19:30:31.85 ID:j76kcnOU
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五月

農販会 当日

千歌「五、六時間目に実習はほんとにだるい〜っ……それに今日農販会だし……お昼食べて眠たいし……」スンスン…

梨子「泣き真似してないでいいから……」

千歌「梨子ちゃんは眠くないの?」

梨子「私は平気。もう慣れちゃった」

千歌「まだうちの学校来て一ヶ月しか経ってないのにすごい……」

山崎「駐車場係、整列係、販売係が大まかな担当やけど、どこか希望はあるかー?」

ダイヤ「あの、私は販売で」スッ

山崎「お前いつも販売やな。まあ頭の回転早いからお釣りの計算も早いし、黒澤な。他にはー?」

108: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/19(金) 19:30:51.20 ID:j76kcnOU
梨子「ねぇ千歌ちゃん。この学科って何を売ってるの?ブドウはまだただの草だし……売るもの無いわよね?」

千歌「ああ、今日はローズマリーの苗売るよ」

梨子「ローズマリー……?」

千歌「いっぱい余ってるんだよね……うちの学科の緑化物、需要無くて」コソッ…

梨子「な、なるほど……?」コソッ…

山崎「そこ聞こえとるぞ」

109: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/19(金) 19:31:12.65 ID:j76kcnOU
千歌「私は駐車場係しよっかな〜。販売のとこ行くといつも怒られるんだよね〜」

梨子「怒られるって誰によ?」

千歌「お客さんだよお客さん……早くしろーだのもっと考えて動けーだの、色々言ってくる人が毎回居て……」

梨子「その標的になってるのね……」

山崎「千歌は駐車場。梨子は?」

梨子「え、ええっと……」アワアワ

山崎「……じゃあ、整列が足りとらんけん整列係な。よーし、それじゃあローズマリーの苗持って行くぞ〜。帽子は必ず持って行けよ〜」

千歌「ああぁ……まだ座っていたい……」

ダイヤ「行きますわよ千歌さん」ズルズル

千歌「いやだあぁ……」

110: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/19(金) 22:07:59.55 ID:j76kcnOU
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農販会 会場

梨子「わ、もう来てる人がいる……まだ二時間前なのに……」

千歌「よくやるよね〜。待ち時間長いって怒られるよこりゃ」

梨子「え?私達は時間通りにやってるのに……?」

ダイヤ「先に来た人がクレームを言い始めるのは割とありがちですわね。正直迷惑だから辞めて欲しいですわ」

千歌「自分が待てる時間に来ればいいのにねー」

梨子「困るわね……どうしよう怒られたら……」

千歌「梨子ちゃんは可愛いし平気平気」

梨子「千歌ちゃんだって可愛いでしょ?」

千歌「……むーっ……」

山崎「ほら、早く運べー」

千歌「げっ、運搬車山崎が来たよ〜……」

ダイヤ「ローズマリー、降ろしましょうか」

114: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/20(土) 09:57:20.30 ID:xGuIv2s3
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30分後

ワラワラ ガヤガヤ

梨子「ど、どうしよう……人が多い……」

梨子「もう100人越えてるらしいし……私がここを動かすなんて無理だよぉ……」ペソ…

山崎「梨子、そろそろ抽選のくじ引かせて並ばせようか」

梨子「わ、わかりましたっ……」

曜「あっ!りーこ先輩〜っ!」タッ

梨子「あ、曜ちゃん!曜ちゃんのところは何か出すの?」

曜「いえ何にも!でも今日の農販会が緑化科が運営だって聞いたから駆け付けてきたんです!」

千歌「やっほー、よーちゃん!」

梨子「え!?ちょ、ちょっと駐車場係はどうしたのよ!?」

115: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/20(土) 09:57:51.18 ID:xGuIv2s3
千歌「さっき白津先生が桜内を手伝ってやれーって言ってきたから」

梨子「それでこっちに……あ、千歌ちゃんそろそろ抽選のくじ引くって言ってたんだけどどうやって……」

千歌「ああ、任せて」スゥ…

千歌「今から抽選を行いまーす!整理券の順番にこちらに並んで頂いて、一人ずつくじを引いて行ってくださーい!再び抽選での順番で並び直すのでご確認をお願いしまーす!」

ゾロゾロ

曜「千歌ちゃんすごい!」

千歌「えへへ、声だけは大きいからこの役はいつも私なんだ」

千歌「はい、梨子ちゃん。くじ引いてもらって」スッ

梨子「ありがとう。整理券1番の方どうぞーっ」

梨子「(……千歌ちゃんって、私の思ってるよりずっと凄いわ……)」

116: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/20(土) 09:58:37.44 ID:xGuIv2s3
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数十分後

梨子「9番のくじをお持ちの方はいらっしゃいますかーっ!こちらにお並びくださーい!」

曜「あれ、梨子先輩。千歌ちゃんは?」

梨子「えっ?さっきまでそこに居たと思うけど……」

曜「何処行ったんだろう……トイレかな」

鞠莉「今日は凄い人ね〜、テレビの影響かしら?」

梨子「ええ、……多分。駐車場のところも凄いことになってましたよ」

117: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/20(土) 09:59:02.16 ID:xGuIv2s3
鞠莉「これは争奪戦になるわね。買えない人も沢山居るんじゃないかしら」

梨子「買えないこともあるんですか?」

鞠莉「そりゃ勿論。テレビで放送してなくても売り切れるんだから今日は大変かもしれないわね」

 浦の星農業高校の農産物販売会では、早く来れば必ず商品が買える。というわけではない。
 早く来た順から整理券が配られる。定員は100名。それを越えてしまったら整理券は貰えない。
 その整理券の順番毎に、更に抽選が行われる。これは商品を購入する順番を決めるもので、例えば、一番最初に来た人が抽選で100番を引いてしまった場合は、来た順番関係無く100番目に購入することになる。
 学校で出せる商品にも限りがある為、100番に行く前に全て売り切れてしまうケースも多いのだ。

118: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/20(土) 09:59:19.60 ID:xGuIv2s3
梨子「それより、千歌ちゃんを探さないと……」

鞠莉「動物科はもう準備終わってるから、千歌っち探しに行っても良いわよ」

曜「で、でも忙しいんじゃ……ひとりでこの人数は大変じゃないですか?」

鞠莉「まあ何とかなるなる。善子とかがぼちぼち帰って来るでしょうし、気にしないで」

梨子「そこまで言うなら……行ってきます」

鞠莉「はーい、気を付けてー」フリフリ

119: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/20(土) 09:59:41.57 ID:xGuIv2s3
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曜「梨子先輩、あれ……」ユビサシ

梨子「……えっ?」

千歌「……………………」モグモグモグ

曜「なんか……食べてますね……」

梨子「……ええ」

千歌「わっ、このみかん美味しい!まだこーんなに緑なのにすごーい!」モグモグ

梨子「」

120: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/20(土) 10:00:12.83 ID:xGuIv2s3
千歌「あっ、梨子ちゃん、よーちゃん。見て見て、どっかの学科のみかん!これお金払ってみかん狩りしてる人可哀想だよね、だってここからちぎって食べちゃえば──」

梨子「こらあああぁっ!!」

千歌「げっ……」

梨子「それは園芸科のみかんよ!?みかん狩りがあるんだから今のうちから食べちゃダメじゃない!足元に転がってる皮からして……3つは食べたでしょ!?」

千歌「で、でもほら、この辺りみかん農家さんが沢山居るから、お金払ってみかん狩りしに来る人なんて居ないと思うんだよね?」

千歌「みかんがありすぎても嫌じゃない?ねっ?ねっ?」

曜「たしかに!」

梨子「たしかに!じゃないわよ、良いわけないでしょ!?」

121: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/20(土) 10:00:36.49 ID:xGuIv2s3
千歌「梨子ちゃん厳しいな〜……ほら、梨子ちゃんも食べてみて?ほら、あーん……」

梨子「……んっ!?……むぐ……」モグ…

梨子「すっぱ!!!!」

曜「千歌ちゃん!私も食べたい!」

千歌「ほら、あーんっ」

曜「あーむっ!」ハムッ モグモグ…

曜「すっぱい!!!」

山崎「おい」

千歌「あっ……」

122: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/20(土) 16:47:03.84 ID:xGuIv2s3
山崎「なんばしよっと。それ園芸科のみかんやろ。お前何個食っとるんや」

千歌「い、いやぁ……私ったら美味しいみかんに目がないというか……」汗ダラダラダラ…

千歌「違うんです!梨子ちゃんが食べ始めて!」

梨子「なんでよ!?」

山崎「お前毎回農販会の度に食ってるからな。こんな熟れてないみかん食べてもどうしようも無いやろ……」

山崎「一年生まで巻き込んで……お前恥ずかしくないと?」

千歌「ぅぐ……ごめんなさい……」

山崎「……明日、放課後実習な」

千歌「いやああああぁっ!!!」

124: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/20(土) 21:13:41.41 ID:xGuIv2s3
花丸「あの、すみません」

山崎「ん?」

花丸「農販会の会場って何処ですか?お手洗い行っている間に、学科の皆とはぐれちゃって」

千歌「ああ、今から私達も行くから一緒に行こ」

花丸「ありがとうございます」ペコリ

曜「あれ!花丸ちゃん!花丸ちゃんも農販会で何か売り物があるの!?」パアァッ

千歌「はなまるちゃん?」

梨子「お友達?」

125: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/20(土) 22:27:15.61 ID:xGuIv2s3
曜「うん、ルビィちゃんとの繋がりでお友達になったの!」

花丸「あら、曜ちゃんずら。曜ちゃんも農販会……じゃなさそうな。制服だし……」

曜「うん、今日はお手伝いに来たんだ!花丸ちゃんは?」

花丸「オラは今日パンと梅ジュースと肉味噌を売るずら。毎回食品科が出してる商品で、一年生は大まかな流れを掴む為に見に来たずら」

曜「なるほどね〜」

梨子「オラ……?」

千歌「……ずら?」

126: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/20(土) 22:27:35.05 ID:xGuIv2s3
曜「ああ、花丸ちゃんはお寺の子で、おじいちゃんがすっごい訛ってる人なんだって。だから花丸ちゃんも移っちゃったというか……」

花丸「お、オラの喋り方、変……?」アワアワ

千歌「そんなことない!かわいいよ!」

花丸「えっと……」

千歌「私は緑化科二年の高海千歌!で、こっちが桜内梨子ちゃん!」

梨子「よろしくね、花丸ちゃん」

花丸「はい、よろしくお願いします」ペコリ

山崎「自己紹介はいいけど、お前ら早く戻らんでいいと?」

千歌「……あっ」

127: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/20(土) 23:05:54.79 ID:xGuIv2s3
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農販会 会場

善子「ちょっと!千歌達は何処行ったのよ!?」💢

ダイヤ「知りませんわよ!私がお金の管理をしている間に千歌さんも梨子さんも居なくなったんですわ!」💢

果南「やっほー、って……なんか荒れてる?」

ダイヤ「あ、果南先輩!果南先輩も販売物があるんですの?」

果南「うん、うちはお花を売るよ。って、人ヤバ……」

ダイヤ「運営していた千歌さん達が居ないんですわ」

鞠莉「ああ、梨子なら居なくなった千歌っちを探しに行ったわよ。私が善子と回しとくから〜って言って」

善子「何適当言ってるんですか」

128: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/20(土) 23:06:15.82 ID:xGuIv2s3
おじさん「あの、すみません」

善子「あ、はーい。どうなさいましたか?」

おじさん「あそこに生えてる木は何の木ですか?」

善子「…………はい?」

おじさん「だから、あそこに生えてる木です」

ダイヤ「ユーカリじゃないんですの?」

おじさん「いーや、あれはユーカリじゃないな。俺は植物に詳しくて──」

善子「は???」ポカーン

ダイヤ「(どう見てもユーカリですわ)」

129: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/20(土) 23:06:36.41 ID:xGuIv2s3
千歌「ごめんなさあぁい遅れました!」タッ

千歌「……っげ……あの人…………」ピタッ

おじさん「ああ、君。あそこの木は──」

千歌「(こ、今度はそっち系……答えられないとチカが怒られるやつだ……)」

千歌「ゆ、ゆーかり?……じゃないんですかね〜、あはは〜……」

おじさん「………………」😠

千歌「ひょええぇ……」ガクブル

130: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/20(土) 23:06:59.26 ID:xGuIv2s3
山崎「すみません、今から販売を行うので抽選の番号順に整列お願いします」スッ

千歌「せ、先生……っ、」

山崎「お前また絡まれてんのか。もう少し気を付けろ」

千歌「ううぅ……せんせーっ……」ウルウル

ダイヤ「やっと来ましたわね。鞠莉先輩、善子さん。ありがとうございました」

善子「千歌、後でジュース奢りね」

鞠莉「じゃあ私はパウンドケーキ」

千歌「いやいやいや!何で私だけ!」

131: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/20(土) 23:07:20.08 ID:xGuIv2s3
山崎「梨子、販売するから10人ずつ中に入れて行って。また合図するから少しずつな」

梨子「分かりました」

曜「せんせー、私、何か手伝いますよ!」

山崎「ん、じゃあ並んでない人に声掛けて来て」

曜「分かりました!行ってきます!」ビシッ

梨子「千歌ちゃんも行くわよ」

千歌「はぁい……」

132: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/21(日) 00:37:51.04 ID:bAmgEMRB
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農販会 終了
更衣後 緑化棟 緑化教室

千歌「だあああっ……疲れたぁ……」グデ

梨子「中々キツかったわね……」グッタリ

ダイヤ「ふたりともお疲れ様です、大変でしたね……」ゲッソリ

ルビィ「お、お姉ちゃんっ……」タッ

ダイヤ「あら、ルビィ……?」

梨子「るびぃ?」

千歌「ダイヤちゃんの妹だよ。デザイン科の一年生」

ルビィ「こ、これ……皆に……」スッ

千歌「わ!ジュースだ!買って来てくれたのっ!?」パアァッ

133: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/21(日) 00:38:11.32 ID:bAmgEMRB
ルビィ「は、はい……お姉ちゃん達が頑張って販売してるの、見てたから……」

曜「千歌ちゃーん!梨子先輩ー!」タッ

曜「あ!ルビィちゃんのお姉ちゃんも!こんにちは!」

ダイヤ「あら、曜さんではないですか」

曜「えへへ、差し入れ買ってきたんです!皆で食べましょー!」

ルビィ「マルちゃんがまだ……」

曜「花丸ちゃんは着替えてから来るって!あとは、果南ちゃんにも声掛けたし、善子先輩と鞠莉先輩にも声掛けたよ!」

千歌「オールスターじゃん!?」

134: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/21(日) 00:38:27.96 ID:bAmgEMRB
梨子「……果南ちゃんっていうのは……」

千歌「ああ、私とよーちゃんの幼馴染だよ!園芸科の三年生!」

千歌「果南ちゃんはね、カッコイイんだよ!背も高いしスタイルも良いし!おっぱいもおっきいし!」

梨子「おっぱ……!?」

千歌「え?うん!大きいよね!」

曜「わかる!果南ちゃん良いおっぱいしてるよねー!」

ダイヤ「千歌さん、曜さん」圧

ようちか「「はい、すみませんでした」」

135: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/21(日) 00:38:46.17 ID:bAmgEMRB
ガララッ

花丸「お待たせしたずら〜」

果南「おわ、……めちゃくちゃ人居る」

鞠莉「なぁに?この集まりは」

善子「え、帰っていい?」

千歌「ダメだよー!せっかく集まったんだから皆で仲良くやろうよー!」

鞠莉「…………まあ、偶にはこういうのも……」ポソ

善子「?……なにか?」

鞠莉「んーん、何でもない」フルフル

136: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/21(日) 02:27:36.94 ID:bAmgEMRB
千歌「自己紹介しようよ自己紹介!まず私からね、私は緑化科二年の高海千歌!好きな食べ物はみかん!あ、部活は書道部!」

千歌「はいっ、次梨子ちゃん!」

梨子「え!?わ、私!?」

梨子「……えっと……さ、桜内梨子です。4月からこの浦の星農業高校に転入してきました。クラスは千歌ちゃんとダイヤちゃんと同じ緑化科です。よ、よろしくお願いしますっ」ペコリ

千歌「梨子ちゃんかたーい」

梨子「仕方ないでしょ!?」

果南「あ、この子が梨子ちゃんか」

梨子「え!?ち、千歌ちゃん!また変なこと言って……っ!」

千歌「言ってない言ってない言ってない!!」フンブン

137: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/21(日) 02:28:05.87 ID:bAmgEMRB
果南「はじめまして、私は園芸科三年の松浦果南。千歌と曜から梨子ちゃんの話は聞いてるよ。部活は太鼓をしてて、実家はダイビングショップを経営してるんだ。よろしくね」

ダイヤ「えっと、はじめましての方は、はじめまして。知り合いの方はご機嫌よう。千歌さんと梨子さんと同じ緑化科二年の黒澤ダイヤですわ。部活は華道部に所属しております。よろしくお願いいたします」ペコリ

ダイヤ「……ほら、ルビィ。自己紹介なさい」

ルビィ「ぅえええっ!る、るびぃ?……え、ええっと……その……ルビィは、……デザイン科の一年生で……」

ルビィ「それで、部活は……製菓製パン部で……」ジワッ

梨子「あああ……大丈夫?無理しなくてもいいのよ?」背中サスサス…

ルビィ「ううぅ……ごめんなさい……」

ダイヤ「相変わらずですわね、ルビィ……」呆

138: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/21(日) 02:28:34.50 ID:bAmgEMRB
花丸「……じゃあ、今度はオラが」ガタッ

花丸「はじめまして、オラは国木田花丸です。食品科の一年生で、部活はルビィちゃんと同じ製菓製パン部に入っています。よろしくお願いします」ペコリ

曜「私は渡辺曜!ルビィちゃんと同じデザイン科の一年生です!部活とかはやってなくて近所のスイミングクラブに通ってます、よろしくお願いいたしますっ」ビシッ

善子「つ、津島善子です。動物科の二年生で、普段はこの鞠莉先輩と二人で動物同好会として動物のお世話をしています」

鞠莉「あら、今日はヨハネじゃなくていいの?」

善子「ちょっっ!!先輩も後輩も居るのにヨハネ出来るわけないじゃないですか!」

花丸「よはね?」

善子「い、いやなんでもないのよ!この人直ぐ変な事言う先輩で、こ、困っちゃうよねぇ〜。よねぇ〜、あはは〜」

ダイヤ「無理してるのがバレバレですわ」

善子「うっさい!」

139: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/21(日) 02:28:54.28 ID:bAmgEMRB
鞠莉「……最後は私ね。私は動物科三年の小原鞠莉。さっき善子が言った通り、私も同好会に入ってるわ。……大人数なんて、そんなに好きじゃないんだけど……今日は楽しくなりそうね」

花丸「覚える名前がいっぱいあるずら」

果南「花丸ちゃんはあんまりこの人達と関わったこと無さそうだし、一気に覚えないといけないもんね」

花丸「はい、……オラ、人の名前覚えるの苦手で……」

千歌「そんなことより!早く農販会の打ち上げしようよ〜!よーちゃんが沢山お菓子買って来てくれたんだし!」

曜「ほら!皆さん食べてください!」ドサアァッ

善子「それもそうね。幾らだった?あとでお金渡すわよ」

曜「えっ!?い、いえそんなっ……申し訳ないですっ!」アワアワ

鞠莉「いいのいいの。甘えちゃいなさい」

曜「そ、それなら……」コクリ

140: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/21(日) 02:29:16.97 ID:bAmgEMRB
ルビィ「……ぁ、チョコ……」ポソ…

梨子「チョコ、好きなの?」

ルビィ「っ!……ぁ、は、はい……」カアァッ

梨子「……っふふ、怖がらなくても大丈夫よ。ルビィちゃんと仲良く出来たら嬉しいな、なんて」ナデナデ

ルビィ「なかよく……」

ダイヤ「…………」

ダイヤ「(梨子さんが良い人で安心しましたわ。これならルビィも直ぐに心を開きそう)」クスッ

141: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/21(日) 02:29:50.21 ID:bAmgEMRB
千歌「あ、そう言えばルビィちゃんが買って来てくれたジュース、私と梨子ちゃんとダイヤちゃんの分しかない……これじゃ足りないや。ちょっとチカ買って来るけど、皆何がいい〜?」

善子「私炭酸がいい」

鞠莉「……んー、じゃあ紅茶で」

千歌「おっけー、善子ちゃん炭酸、鞠莉先輩はミルクティーです?ストレートティーです?」

鞠莉「ストレートで」

千歌「はぁい。果南ちゃんと花丸ちゃんとルビィちゃんはどうする?」

果南「私は緑茶でいいよ」

花丸「オラもそれで」

142: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/21(日) 02:30:09.99 ID:bAmgEMRB
ルビィ「あ、あのっ……」

千歌「んー?」

ルビィ「る、るびぃも……買うの手伝いますっ……ルビィの所為で、足りない、から……」

千歌「ルビィちゃんの所為じゃないよ〜!でも手伝ってくれるの嬉しい!一緒に自販機まで行こうね〜♪」

ルビィ「は、はいっ……!」

145: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/21(日) 09:41:27.92 ID:bAmgEMRB
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ワイワイガヤガヤ…

ガララッ

山崎「お前らまだおったと?早く帰る準備しろ、もう19時やぞ」

千歌「あ、もうそんな時間?」

曜「完全に時計見てなかったね」

山崎「こんな大人数で何しよったと?意味分からんメンツやし」

ダイヤ「農販会の打ち上げを知り合い同士が集まってやっていたのですわ」

山崎「なるほどな。ゴミとかは各自で持ち帰れよ」

花丸「あ、ゴミはオラが貰います」

善子「良いわよ、私が持って帰るから。ペットボトルも回収するから皆飲みきっちゃってください」

鞠莉「はい、ありがと善子」

146: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/21(日) 09:41:53.49 ID:bAmgEMRB
花丸「えっ、でも……」

善子「一年生に押し付けたら私が嫌な人になるでしょ。こういうのは先輩を敬いつつ、後輩にサポート出来る二年に任せておけばいいの」

花丸「善子先輩……」

千歌「あっ!善子ちゃん!私のペットボトルどーぞ!」

善子「あんたはもう少し気遣ってくれる??」

梨子「私もゴミ集めるよ、……あ、ウェットティッシュ持って来てるから手拭いたり自分が使ってたところの机拭いたりして」

ダイヤ「ルビィも早く飲みきっちゃいなさい」

ルビィ「ま、待って…っ……もうルビィ飲めないよぉ……」ピエェ…

果南「貸して、私が飲んじゃうよ」ヒョイ

ルビィ「果南先輩……」

果南「あ”……ご、ごめん。嫌だったかな?」

ルビィ「い、いえっ……その……ありがとう、ございます……」

果南「……っふふ、どういたしまして」ナデナデ

147: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/21(日) 09:42:17.90 ID:bAmgEMRB
鞠莉「じゃあ大体片付けも出来たし帰りましょ。皆、家は何処?全員うちが送っていくわよ」

千歌「え、鞠莉先輩ちの車ってそんなにおっきいんですか!?」

鞠莉「ええ、全員乗れると思うけど」

曜「お金持ちすごい!」

山崎「あ、千歌と梨子」ヒョコ

梨子「は、はいっ」

山崎「明日、一年生と一緒に田植えするけん覚えといて。千歌は放課後実習はそれで。梨子はまだ田植えしてないやろうけん、一年生と一緒な」

梨子「分かりました」

千歌「えーっ!田植え〜!?……んん、まあ刈り込みよりはいいけど……」

花丸「……オラ達と一緒?」

曜「千歌ちゃんと梨子先輩と一緒に出来るんですか!?」パアァッ

キーンコーンカーンコーン

果南「やば、あと五分で出ないと閉められちゃうよ」

ダイヤ「急ぎますわよ!」

150: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/21(日) 16:42:03.46 ID:bAmgEMRB
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翌日
緑化科 緑化教室

千歌「昨日は楽しかったねぇ〜♪」

ダイヤ「ええ、とても。……まあ、家に帰ってから帰りが遅いと叱られましたが」

梨子「私も少しだけ怒られちゃった。でも楽しかったし良いかな」

千歌「皆怒られちゃったの!?厳しいな〜」

梨子「千歌ちゃんのところは怒られないの?」

千歌「私はよく遅くまで学校に残ってたりするし、あんまりかな」

ダイヤ「そんな遅くまで何をしているんです?」

千歌「私、隙あらば他所のみかんばっかり食べてるから放課後実習はよく入れられるんだけど、その後先生とお喋りしたり昨日みたいに友達とお話したりすると、気が付いたら19時過ぎてたりするかな」

151: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/21(日) 16:42:28.94 ID:bAmgEMRB
ダイヤ「ちゃんと勉強してるんですの?再来月には造園技能士の筆記試験がありますのに」

梨子「あ、ダイヤちゃん、それなんだけど……ここがちょっと不安で……」

ダイヤ「ああ、縮景と借景ですわね。これは最初誰でもごちゃごちゃになってしまうので気にしないで大丈夫ですわ」

ダイヤ「まず縮景ですが、これは最初に各地の名所を思い浮かべましょう。例えば静岡は富士山。富士山を庭園に取り入れたいと思っても不可能でしょう?」

ダイヤ「ですが富士山を模写し、縮小したものを庭園に取り入れることは出来ますよね。それが縮景の技法となります」

梨子「なるほど……名前の通り縮小させるのね。借景は……?」✍

152: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/21(日) 16:42:51.24 ID:bAmgEMRB
ダイヤ「借景は庭園から見える景色だと思ってください。敷地外の山や林、森林、それから滝までもを取り込み、景色を借りる技法ですわ」

梨子「……ふむふむ……そのままね」✍

ダイヤ「そうでしょう?難しいようで簡単なのですよ」

千歌「あー……そういえば筆記試験の模擬テストって今日提出だったっけ……」

ダイヤ「一時間目からですわよ。間に合いますの?」

千歌「余裕だよ〜、朝読書なんてしないで寝てるか白津先生から貰った課題やるだけだもん」

ダイヤ「お先真っ暗ですわね……これで農業技術検定はクラス一番で合格してるんですから、腹立ちますわ」

梨子「そうなの!?千歌ちゃんが!?」

千歌「まぐれだよ〜、まさかダイヤちゃんが私より点数取れてないとは思わなくて……」

ダイヤ「……はぁ、つ、次は負けませんから」

千歌「再来月の筆記試験、勝負しようね〜」

ダイヤ「ね〜、ってやかましい!」

154: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/21(日) 18:33:12.55 ID:bAmgEMRB
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緑化棟
授業:課題研究

千歌「今日は苔玉を作るって聞いたんですけど……挿し木の方は……」

山崎「そんな簡単に根付くわけないやろ。あ、あとまたソメイヨシノ枯れてたぞ」

ちかダイ「「いやああああああああっっ!!」」

千歌「あんなに頑張ったのに!」

ダイヤ「あんなに気を付けたのに!」

梨子「ご、ごめん……私が……」

山崎「千歌がしたとこだけ枯れてたな」

ダイヤ「千歌さん!」💢

千歌「あっははぁ……おかしいなぁ……」

155: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/21(日) 18:33:36.00 ID:bAmgEMRB
ダイヤ「大体、貴女去年も枯死させてましたわよね!?半分以上は貴女の責任ですわよ!」

千歌「え〜!私?」

山崎「ほらやるぞ」

千歌「はぁい……」

山崎「これ、何の植物か覚えとる?」

梨子「えっと、たしか……フィカスプミラ……」

山崎「正解。これがフィカスプミラな。今日はこれで苔玉を作っていこうと思っとる」

山崎「用意するものは麻布、お椀、天糸、赤玉土、……あー、そうやな……ケト土も用意しておいて。あとは木バサミ」

梨子「お椀?……何に使うんですか?」

山崎「後で説明するけん、道具準備しようか」

156: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/21(日) 18:33:53.80 ID:bAmgEMRB
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山崎「まずこの赤玉土と、ソフトシリカミリオン……ケイ酸塩白土を10対1の割合で混ぜる」サッサッ…

千歌「ソフトシリカミニオン?」

ダイヤ「ミニオンじゃなくてミリオンですわ。これは何の効果があるんですの?」

山崎「これは病原菌を抑制して、植物の抵抗力を高める役割があるんよね。根腐れを防いで発根を促進することが出来る」

山崎「安いところだと1キロ500円くらいで買えるな」

千歌「ミニオンすごーい!」

梨子「ミリオンよ……」

157: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/21(日) 18:34:11.96 ID:bAmgEMRB
山崎「お椀貸して」

ダイヤ「はい」サッ

山崎「そしたらまず、お椀に25×25のサイズに切ったを敷いて、底に軽くさっきミリオンを混ぜた土を引く」サッサッ…

山崎「次はこのフィカスプミラを苗から出して、根っこを露出させる。これは慎重にやらんと根っこが切れるから気を付けないといかんよ。特に千歌」

千歌「えっ」

山崎「このくらい。このくらい根っこを出したら、お椀の中に入れて……周りに土を被せる」

山崎「麻布で土と一緒に植物を包み込んで、こんな感じで……」キュッ

梨子「おにぎりみたいにするんですね」

山崎「そう。そうしたら、天糸で周りから麻布を固定するように巻き付ける」クルクル…

山崎「こうやな。最後にミズゴケを付けて、もう一度同じように天糸で巻き付けたら完成。分かったか?」キュッ

ダイヤ「一旦やってみないと分からないですわね……」

梨子「じゃあ、取り敢えずやってみましょう。実践あるのみ!よね」

千歌「うん!それじゃ誰が一番上手く作れるか勝負だー!」

158: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/21(日) 18:46:56.06 ID:bAmgEMRB
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梨子作苔玉:まだ丸い。惜しい。

ダイヤ作苔玉:綺麗な丸。お手本みたい

千歌作苔玉:原型を留めてない。植物が死にかけ。天糸が絡まりまくってる。

千歌「…………モウヤダカエリタイ……」

ダイヤ「この勝負、私の勝ちですわ!」ドヤァ

千歌「悔しい悔しい悔しい〜っ!なんでだよ〜っ!」ジタバタ

161: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/21(日) 23:38:08.60 ID:bAmgEMRB
梨子「ちょっと千歌ちゃん。暴れないの。背中砂だらけじゃない。ほら立って」パッパッ…

千歌「ううぅ……りこえもーん!ダイヤんがいじめるよーっ!」ギューッ

梨子「誰がりこえもんよ!?」

ダイヤ「誰がダイヤんですか!!」

山崎「まあどっちにしろ、梨子はともかく、今の千歌の苔玉を売るのは厳しそうやな……」

千歌「なっ!?そ、そんなに!?」

山崎「ダイヤのと比べてみろよ」

ダイヤ作苔玉✨

千歌作苔玉😇

千歌「モウヤダ」

164: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/22(月) 20:21:13.66 ID:2SduZt2V
千歌「むーっ……何でこうなるのかなぁ……」

ダイヤ「沢山作っていけば上手くいくはずですわ」

梨子「そうよ、千歌ちゃん元気出して?」

千歌「……うん……」

山崎「まぁ、大体容量は掴めたやろうし、もう一個作ってみるか」

千歌「こ、今度こそ……っ!」

169: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/23(火) 19:25:38.37 ID:r+CZX90e
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苔玉2つ目

梨子作苔玉:形にはなったが、植物が傾いている。でも丸い。許容範囲。

ダイヤ作苔玉:もはや職人。

千歌作苔玉:巨大。何故こんなに大きくなったのか誰も分からない。でも丸いし、植物は真っ直ぐになった。

山崎「ま、まあ……ギリ合格ラインやな」

千歌「私がこんなに頑張ったのにギリ!?」

ダイヤ「努力と商品価値は比例しませんからね……」

千歌「ダイヤちゃんが言わないで。むかつく」

170: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/23(火) 19:46:02.86 ID:r+CZX90e
梨子「千歌ちゃんも上手になってるわよ。元気出して?」

千歌「ううぅ……りこちゃぁん……」ギューッ

山崎「あ、もうこんな時間か。片付けるぞ」

ダイヤ「はい。ほら、千歌さんも動く!」

千歌「うるさいなー!もー!」💢

ダイヤ「何ですのその言い方!大体貴女は!」💢

梨子「も、もう…っ、ふたりともやめなさいよ……」

171: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/23(火) 21:55:31.80 ID:r+CZX90e
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放課後
浦の星農業高校 水田

花丸「……五月、暑いなぁ……」

花丸「(せっかく仲良くなったルビィちゃんも曜ちゃんも、違う学科だから会えないし……寂しいなぁ……)」

梨子「あ、花丸ちゃん?」

花丸「梨子先輩!?」パアァッ

梨子「田植え、私はしてないから、食品科にお邪魔させてもらうことになったの。食品科って聞いたら花丸ちゃんだなって……迷惑だった?」

172: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/23(火) 21:55:56.65 ID:r+CZX90e
花丸「いえ!オラも仲良い人が居なくて寂しかったので心強いです」

梨子「そう?良かった」クスッ

「それじゃあこの位置から始めまーすっ」

花丸「うひゃあぁ……水があったかいずら……」

梨子「へ、変な感じするわね……痛っ……なんか鋭いもの踏んだし……」

花丸「油断してたら足持ってかれちゃいますね……」

梨子「そうね……」

173: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/23(火) 21:58:43.87 ID:r+CZX90e
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一方その頃……

浦の星農業高校 水田(小さめ)

千歌「なんで私も田植え……」ズーン

果南「あ、千歌。やっほー」

千歌「果南ちゃん!今暇!?」

果南「今日は部活も無いしね。暇だよ」

千歌「チカひとりじゃ寂しいから、一緒に田植えしよ!田植え!」

果南「ひとりで水田で何してんだろうって思ったら……そっか。放課後実習」

174: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/23(火) 21:59:00.27 ID:r+CZX90e
千歌「ねー!お願い!一生のお願い〜!」

果南「……もー……仕方ないなぁ」

果南「待ってて。実習服、着替えてくるよ」

千歌「果南ちゃん!ありがとう!だーいすき!」パアァッ

千歌「あ、でも早くしないとチカの足持ってかれちゃうから急いでね〜」

果南「やっぱ手伝うの辞めようかな」

千歌「わー!ごめんごめん!もう言わないからーっ!」

175: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/23(火) 22:46:54.52 ID:r+CZX90e
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一時間後

花丸「はひゃあぁ……腰が痛いずらぁ……」グデッ

梨子「そ、そうね……お米農家さんって凄い……」

花丸「流石に農家さんは機械じゃないですかね……」

梨子「そ、そっか……」

花丸「……でも、農業高校って、なんかいいですね」

梨子「……えっ?」

176: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/23(火) 22:47:15.02 ID:r+CZX90e
花丸「オラ、入学前は凄い不安だったんです。中学の時から環境が一気に変わって……こんな街みたいな学校に来て、……着いて行けるかなって」

花丸「オラは農業なんてしたことないし……受験の面接の時も、周りの皆が農家さんだったり、夢を持っていたりして、オラには何も無いなってずっと考えてたんです」

花丸「……だけど、違った」

花丸「皆が皆、農業をしたくて此処に来ているんじゃなくて、……学校生活を思う存分楽しむ為に此処に来てるんじゃないかって思うんです」

花丸「千歌先輩は特に……学校がいつも楽しそうで、笑顔で。だから、オラも釣られて笑顔になっちゃうし、学校が楽しいなって思えるんです」

花丸「……変、ですかね……?」

177: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/23(火) 22:47:35.15 ID:r+CZX90e
梨子「……ううん、とっても素敵」

梨子「私もね、農業高校ってこんなに楽しいものなんだって知らなかったの」

梨子「……私も花丸ちゃんと一緒で、千歌ちゃんにそう気付かせてもらったの。農業高校は楽しいよって」

梨子「千歌ちゃんったら、実習嫌だ嫌だって直ぐにぐずるのに、楽しそうに授業を受けてるんだから……狡いわよね」クスッ

梨子「千歌ちゃんと同じクラスにならなかったら、皆と出会えなかったし……何より農業は辛いものだって思い込んじゃってたかもしれない」

梨子「千歌ちゃんには、感謝しかないわね」

梨子「……千歌ちゃんの話してたら会いたくなって来ちゃった。花丸ちゃんも一緒に行く?」

花丸「……はいっ!」

178: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/23(火) 22:55:31.54 ID:r+CZX90e
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緑化棟 農環室裏 高台

果南「お疲れ様。はい、オレンジジュース」

千歌「実習後のオレンジジュースはちょっと……でもありがと」

果南「……景色がいいね」

千歌「ここは水田も見えるし、学校の外も見えるし……全部見えちゃうスペシャルな場所だからね。私のお気に入りの場所なの」

果南「良いね。私も今度からここに来ようかな」

千歌「風が気持ちいよねぇ〜」

179: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/23(火) 22:55:47.87 ID:r+CZX90e
千歌「…………ねー、果南ちゃん」

果南「んー?」

千歌「……私ね、浦の星を楽しい学校にしたいんだ」

果南「楽しい学校?」

千歌「うんっ。そりゃあ、あと三年もすれば廃校になっちゃうんだけど……でも、残りの期間、在校生みんなが楽しかったって心の底から笑える学校にしたいの」

千歌「……辞めちゃったあの子にも、辞めなきゃ良かったなって思って貰えるような楽しい学校」

千歌「その為にどうしたらいいのかなってずっと考えてた。みんなに、楽しんでもらうには……」

果南「……千歌……」

千歌「だから──」

180: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/23(火) 23:29:23.22 ID:r+CZX90e
千歌「文化祭、一緒にステージ発表出よう!」

果南「な、なんでそうなるの?」

千歌「楽しいと言ったら文化祭!雑用だらけの農業高校で唯一楽しい行事なんだよ!?思い出作るにはここしかないって思うの!」

果南「まあ?……でもステージ発表なんて何するの?」

千歌「ほらっ、最近流行ってるじゃん。スクールなんちゃら〜ってやつ!」

果南「もしかして、スクールアイドルのこと?」

千歌「そう!それのコピーユニットしようよ〜!」

千歌「あっ、それとも私達が曲作っちゃう!?衣装はデザイン科のルビィちゃんとか曜ちゃんに手伝ってもらって──」

果南「千歌」

182: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/24(水) 00:43:40.67 ID:L2+MR7rs
千歌「……や、やっぱり……ダメ?」

果南「……私達は都会のキラキラした学校に居るわけじゃないの。泥んこだらけで汗だくで……そんな農業高校で、スクールアイドルなんて出来ると思う?」

千歌「それは……」

果南「……ごめんね、本当は応援してあげたいんだけど──」

千歌「でもっ!」

千歌「でもね、果南ちゃんもきっと楽しめると思う!私、絶対後悔させない。約束する!だから……だから……」

千歌「果南ちゃんも、一緒にステージ発表出てくれる……?」コテリ

果南「千歌……」

183: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/24(水) 00:43:59.21 ID:L2+MR7rs
果南「……しょうがないな……文化祭だけ、なんだよね?」

千歌「してくれるのっ!?」パアァッ

果南「流行りのスクールアイドル……より大々的には出来ないけどさ、なんかこういうのも良いよね。裏で静かに輝くアイドル〜みたいなの」

千歌「うううぅ……果南ちゃ〜んっ!」ギューッ

千歌「絶対成功させようね!」

果南「……うんっ」

千歌「あっ、そうだ。なら皆誘おうよ!よーちゃんも、ダイヤちゃんも梨子ちゃんも!それからルビィちゃんに花丸ちゃん、善子ちゃんに鞠莉先輩!」

千歌「接点の無かった皆が集まってスクールアイドルするなんて、凄い面白いと思わない?見てる皆も変なメンバーで笑っちゃうと思うんだ!」

184: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/24(水) 01:01:14.57 ID:L2+MR7rs
果南「まあ、そういうのもいいんじゃない」クスッ

千歌「えへへ、まずね〜、よーちゃんとルビィちゃんに衣装作って貰ってね!それでそれで、果南ちゃんには振り付け作ってもらうの!」

千歌「作曲は……うーん、鞠莉先輩とか?鞠莉先輩はお金持ちだからピアノとか弾けそうだし!あ、梨子ちゃんもピアノ絶対似合う!」

千歌「ダイヤちゃんと花丸ちゃんと善子ちゃんは作詞かな〜?でもなんか皆の個性が強過ぎて凄い曲出来ちゃいそうだよね」クスクス

果南「じゃあ……千歌は何をするの?」

千歌「私?私は……リーダーかな!」ドヤァ

果南「り、リーダー?」

千歌「皆をまとめることも仕事のひとつなんだよ!だから私はリーダーをする!」ムンッ

梨子「あっ!居た居た!」タッ

花丸「千歌先輩、此処に居たずらぁっ……」ゼェゼェ

192: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/24(水) 21:18:52.95 ID:L2+MR7rs
果南「あれ、梨子ちゃんとマルちゃんだ」

千歌「なになに?誰か探してたの?」

花丸「千歌先輩の話をしてたら、会いたくなっちゃって……」ゼェゼェ

千歌「えー!なにそれうれしい!かわいい!」ギューッ

梨子「果南さんと千歌ちゃんで何してたんですか……?」

果南「ちょっとね。千歌ったら私に田植え手伝えって言うもんだから」

千歌「……あ、あはは〜……ひとりじゃ寂しいし?」

曜「ちかちゃーん!かなんちゃーん!」タッ

梨子「あれ、曜ちゃんも?」

曜「田んぼでふたりを見つけたから走って来たの!梨子先輩も花丸ちゃんも居てビックリ!」

193: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/24(水) 21:19:17.31 ID:L2+MR7rs
千歌「丁度いいところに!私、皆に話があったんだ!」

梨子「話?」

果南「え”。千歌、本当に言うの?」

千歌「言わないつもりなの?」

果南「あー……いや、なんでもない……」

果南「(千歌のことだからどうせすぐ忘れるだろうと思って承諾したけど……これは本当にアイドルやらないといけなくなるやつだ……)」

花丸「何かあるんですか?」

千歌「うんっ、最近テレビとかで取り上げられてるスクールアイドルってあるでしょ?」

花丸「その……スクールアイドルというのは……?」

曜「高校生とかがアイドルの真似して歌とか振り付けとか衣装とか作ってるやつ?」

千歌「そう!それを今年の文化祭でやりたいなーって思ってて!」

194: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/24(水) 21:19:40.00 ID:L2+MR7rs
千歌「メンバーはこないだ一緒に農販会の打ち上げをした9人!絶対このメンバーがいいんだー!」

梨子「す、凄いメンバーになりそうね……」

千歌「何他人事みたいなこと言ってるの?梨子ちゃんもメンバーだよ!」

梨子「だ、だよねぇ……」

曜「えー!果南ちゃんもやるの!?」

果南「え、いや、私は──」

千歌「うん!果南ちゃんもメンバーになってくれるって!」

果南「え!?いや違っ!」

千歌「ちがうの?」ウルッ

果南「ぅ”っ……」メソラシ

曜「果南ちゃんも千歌ちゃんもやるなら私もやるー!」

195: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/24(水) 21:19:56.49 ID:L2+MR7rs
曜「梨子先輩も花丸ちゃんも一緒にやろうよ!絶対楽しいですよ!」

梨子「わ、私はそういうの向いてないし……」

花丸「オラもアイドルはちょっと……」

千歌「そっかぁ……」ションボリ

曜「せっかく皆と出来ると思ったのに……」ションボリ

花丸「…………ぁ」

りこまる「「………………」」メアワセ

花丸「……あの、……やっぱり、話だけ聞いてもいいですか?」

梨子「私も……少しだけ考えてみるね」

千歌「花丸ちゃん!梨子ちゃん……!」パアァッ

千歌「これで5人か!」

果南「千歌、早とちりし過ぎだよ……」呆れ

196: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/24(水) 21:47:00.50 ID:L2+MR7rs
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翌朝
デザイン科教室

ルビィ「──スクールアイドルの、コピーユニット?」

曜「うん、千歌ちゃんがやろう!って言ってるんだけど……ルビィちゃん、こういうの興味無い?」

ルビィ「ルビィは……」

ルビィ「……興味、あるけど……」ポソリ

曜「本当っ!?」パアァッ

ルビィ「……でも、お姉ちゃんが許してくれるかどうか、分からなくって」

曜「お姉ちゃん……あ、ダイヤ先輩?」

曜「ダイヤ先輩って、アイドル嫌いなの?」

ルビィ「う、うーん……なんて言うか……うちの両親、けっこう厳しくてね。家のテレビで流れてるはニュースだけなの」

曜「にゅ、ニュースだけ!?」

197: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/24(水) 21:47:17.69 ID:L2+MR7rs
ルビィ「うん……一回、夜中にお姉ちゃんとベッドから抜け出して、クラスの子達がいつもお話してるアイドルを見ようってなったんだけど……結局見つかってお母さんに怒られちゃって……」

ルビィ「ルビィの我儘でお姉ちゃんも巻き込んじゃったから……嫌じゃないかなって……」

曜「……そっか……」

ルビィ「うん、……だから、お姉ちゃんが良いよって言うまで待ってて欲しいな。ルビィは……千歌先輩達と一緒にしたいなって、思ってるから」

曜「……分かった。じゃあルビィちゃんのポジションは私が守っておくから!」ビシッ

ルビィ「うんっ……ありがとう!」

198: 名無しで叶える物語(SB-iPhone) 2023/05/24(水) 21:49:04.12 ID:fW+mpPHf
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動物科 緑化科 教室前

善子「──はぁ?スクールアイドル?」

千歌「うん!ぜーったい入って欲しいの!善子ちゃんったら可愛いじゃない?だから似合うと思うの!アイドル!」

善子「興味無いから」スンッ

千歌「そんなこと言わずにさぁ!お願い!」

善子「千歌のクラスに可愛い人沢山居るでしょ。そっちを誘いなさいよ」

千歌「私は絶対善子ちゃんがいーの!」

善子「どうして?」

千歌「………………善子ちゃんがいちばん可愛いから……」ポソッ

善子「……………………」

199: 名無しで叶える物語(SB-iPhone) 2023/05/24(水) 21:50:26.64 ID:XsZts4xT
善子「はい残念〜、善子じゃなくてヨハネって言ってたらスクールアイドルやってました〜」

千歌「ちくしょおおおぉっ!」床ダンッッ

善子「残念だったわね。そういうとこ考えていかないと」

千歌「善子ちゃんに言われたくない……」

善子「どういう意味よ」

ダイヤ「お二人とも。朝から騒がしいですわよ」

千歌「あ、ダイヤちゃん!良いところに!」タッ

千歌「ダイヤちゃん……!一緒に、スクールアイドルやりませんか!」パッ

ダイヤ「……スクール、アイドル?」

200: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/25(木) 00:06:48.05 ID:9s/PFZ28
ダイヤ「……何ですの?それ」

善子「今テレビとかでやってる……って、あんたん家、テレビ自由に見れないんだっけ」

ダイヤ「ええ。まあ」

善子「……んー、高校生がアイドルごっこするのが流行ってるのよ。自分達で曲を作ったり、衣装を作ったりして、オリジナルMVとかを投稿してる人も居て結構有名なのよ」

ダイヤ「はぁ、そうなんですか」

千歌「うん!ダイヤちゃんもやってくれるよね!」

ダイヤ「お断りさせていただきますわ」

千歌「……えっ」

203: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/25(木) 23:26:18.26 ID:9s/PFZ28
ダイヤ「そういうの興味無いので」

善子「ほら、皆スクールアイドルなんて興味無いのよ」

千歌「で、でも……ダイヤちゃんだって浦の星で思い出作りたいでしょ?」

ダイヤ「……それならアイドルじゃなくてもいいじゃない」

ダイヤ「……私は、アイドルなんて……」キュッ

キーンコーンカーンコーン

善子「あ、やば!?予鈴じゃない!」

千歌「わ、わあぁっ急げ急げ〜っ!」アワアワ

ダイヤ「………………」

千歌「ぁ……」ハッ

千歌「(ダイヤちゃん、なんか変……?)」

204: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/25(木) 23:44:15.43 ID:9s/PFZ28
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緑化棟 緑化教室
授業:造園技術 (自習)

千歌「…………」モグモグ

千歌「…………グミ食べる?」

ダイヤ「いりません」カキカキ…

千歌「梨子ちゃんは?」

梨子「ぁ、ううん。私はいい」フルフル

千歌「皆真面目に勉強してて偉いなぁ」

ダイヤ「筆記試験落ちますわよ」

千歌「大丈夫大丈夫」

ダイヤ「……ぁ、」ピタッ

ダイヤ「そういえば千歌さん、今年測量はどうするのですか?」

千歌「あー、去年私達二人しか居なくて出れなかったもんねぇ……」チラッ

梨子「…………」カリカリ

ダイヤ「………………」ジッ

梨子「…………なぁに?その、測量っていうのは……」

千歌「毎年農業クラブが開催してる平板測量競技大会だよ。3人1組でやるんだけどね、制限時間内に地面に書かれた複雑な五角形を測量して、面積を求めたりするの」

千歌「解答と誤差が少ないチームが勝ち。全国大会もあるんだよ」

梨子「農業クラブ?」

ダイヤ「まあ、農業高校の生徒会のようなものですわ」

213: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/26(金) 22:02:49.54 ID:S3uXf+wN
千歌「それで……梨子ちゃん、測量とか興味無い……?」

千歌「大会は平日だから学校公欠になるし、早く終わったらその後遊べるし!いいことばっかりだよ!ねっ?」

梨子「私は別に……」

千歌「梨子ちゃんしか居ないの!……おねがい……」ウルウル

梨子「ぅ”っ!!!」

梨子「………………わかった……」

千歌「ほんとっ!?やったー!この調子でスクールアイドルも──

梨子「それはまだ」

千歌「ちぇ〜っ……」

千歌「あ、今日から体育祭の練習の後に測量の練習するらしいからよろしくね〜」

梨子「」

梨子「ちょ、ちょっとそれは聞いてないんだけど!?」

ダイヤ「そういえば私も初めて聞きましたわ」

千歌「白津先生、最近忙しいみたいだしね〜」

ダイヤ「流れは私達がやりながら説明しますから、梨子さんも頑張りましょう」

梨子「わ、わかった。やってみるよ」

214: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/26(金) 23:52:44.62 ID:S3uXf+wN
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放課後
浦の星農業高校 グラウンド

梨子「はぁ……体育祭の練習が終わったと思ったら今度はこっち……」

梨子「ジャージでもいいって言われてたのにわざわざ実習服に着替えに行ったダイヤちゃん偉過ぎるわ……」

千歌「だよねぇ。あ、そろそろ白津先生来るんじゃない?」

ブロロロロロロ……

千歌「あ、軽トラ来た」

白津「おー、お前ら〜」

ダイヤ「…………」荷台に正座で乗るダイヤちゃん

千歌「っふ…………」

梨子「何で荷台に????」

ダイヤ「……荷物おろしましょうか」ヨッコラセ

千歌「いやなんで!?なんで荷台に乗ってんの!?www」

ダイヤ「助手席も荷物でいっぱいなんですの!早く下ろしなさいな!」

215: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/27(土) 00:24:30.68 ID:zO4t9LpI
千歌「はいはい、今下ろしますよーだ」

梨子「……沢山あるのね……」ヨッコラセ

 平板測量を行う際に使用するのは、三脚、測板、移動器、アリダード、求心器、垂求、デグリ(磁針)、それから測量ポール。
 
白津「それじゃ桜内が居るから改めて、測量のやり方を説明します」

まず、図面を書きたい測点の上に三脚を立て、その上に測板をセットする。このとき図面を書くための用紙も測板上にマスキングテープか何かで固定しておく。

 測板は移動器を使って水平にセットする。ここで測板が水平になっていないと、作図した時に大きくズレが生じてしまう。
 水平にする際は、アリダードについている気泡管を利用するか、平板用T字水平器を使用する。

216: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/27(土) 00:24:48.03 ID:zO4t9LpI
 測点を、求心器と下げ振りを使って、測板上に測点の位置を決める。
 測りたい位置を、求心器で決めた位置を中心にアリダードを回転させ測りたい目標を視準し、メンバーの一人が立てている測量ポールへと合わせる。

 求心器で求めた点には測量針を立てると便利。
測点から測りたい点までの距離を記録主以外の二人が巻尺等で測り、その距離を全員で復唱する。それから、アリダードのスケールで測った距離を書き込む。

白津「これを繰り返して製図していきます。詳しいことはやってみながら教えるので、取り敢えず記録主を決めてください」

千歌「私記録苦手だし、ダイヤちゃんで。梨子ちゃんは私と一緒にポール立てと巻尺担当ねっ!」

梨子「わ、わかった」

ダイヤ「それではやってみましょうか」

219: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/27(土) 21:21:05.51 ID:zO4t9LpI
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数十分後…

千歌「ありゃ、めちゃくちゃズレてる」

ダイヤ「どうしてこうズレていくのですか!」

ダイヤ「もう無理です終わりました……」ズーン

千歌「何処でズレたんだろ……」

梨子「あそこ、水平取ってたっけ?」

千歌「あー、そういえば水平取ってなかった気がする。ダイヤちゃん何してるんだよ〜」

ダイヤ「ぅぐ……た、確かに私が悪いですが、ポールを持って立ってるだけの千歌さんに言われたくありませんわ!」

千歌「いやいやいや、あれも重要な役割だよ?それにポールを持って立ってるだけじゃなくてちゃんと巻尺で距離測ったりしてるし!」

ダイヤ「絶対嘘ですわ!貴女、去年測量の練習が嫌だからって学校抜け出してましたけどそれもどうかと思いますの!」

千歌「去年の話は今関係なくない!?」

梨子「ふ、二人とも止めなさいよ……」

225: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/28(日) 12:13:26.55 ID:IiY6V2/W
白津「まあズレるのは仕方ないですね。練習を重ねていかんとどうしようも無い」

白津「それと時間が掛かり過ぎてるから、側板を運ぶ時は全員で手伝った方がいいですね」

梨子「改善点が沢山あるわね……」

白津「測量はこれだけじゃなくて、その作図した図形の面積も求めなくちゃいけないですからまだまだ課題はありますね」

梨子「な、なるほど……」

ダイヤ「大体、貴女はいつも──!」

千歌「何で私ばっかり悪いみたいな言い方するの!?ダイヤちゃんだって──!」

白津「……皆疲れてるみたいやし、今日は解散にしましょうか」

梨子「そうですね……」

梨子「(午前中は四時間全部実習で、午後の二時間は体育祭練習……その後に暑い中で測量の練習……流石に千歌ちゃんやダイヤちゃんも疲れちゃうよね……)」

白津「おーい、高海、黒澤。荷物片付けるぞー!」

226: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/28(日) 12:13:48.52 ID:IiY6V2/W
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ブロロロロロロ…

ダイヤ「結局またトラックの荷台で緑化棟まで移動……」正座

梨子「トラックの荷台なんて始めて乗ったわ……」体操座り

千歌「まあ人が乗るとこじゃないもんねぇ……」胡座

ダイヤ「疲れましたね……」

千歌「……うん、疲れた」

ダイヤ「……千歌さん、先程はすみませんでした」

千歌「ええっ!?ぜ、全然いいのに!?気にしてないよ!」

千歌「……私の方こそごめんね」

ダイヤ「お互い疲れていましたし、仕方ないですね……」

梨子「二人とも……良かった……」ホッ

227: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/28(日) 12:14:15.29 ID:IiY6V2/W
千歌「……っふふ、」

梨子「何?」コテリ

千歌「ううん。なんかね、梨子ちゃんを見ると、梨子ちゃんったらすっかり農業高校に染まったな〜と思っちゃって」

梨子「え、そう?」

千歌「うん。だって何の抵抗も無く地べたに座るようになったし、更衣室でご飯食べるのも当たり前になってきたし!」

千歌「梨子ちゃんの実習服の落ちない泥を見て、私は胸が熱くなるよ……」

梨子「何よそれ……」

ダイヤ「でも、私も思っていましたわ。梨子さん、農業高校は楽しいですか……?」

千歌「………………」ジッ

梨子「………………」フゥ…

梨子「うん、とっても楽しい」ニコ

千歌「!」パアァッ

千歌「良かったぁ〜!ダイヤちゃん!梨子ちゃん農業高校楽しいって!」ワーイワーイ!

ダイヤ「ええ、良かったですね」ニコ

228: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/28(日) 12:14:36.79 ID:IiY6V2/W
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一週間後
体育祭 当日
浦の星農業高校 グラウンド

赤ブロック:千歌、梨子、ダイヤ、果南、花丸

青ブロック:鞠莉、善子、曜、ルビィ

『100mリレーに出る選手は入場門へ整列してください』

千歌「梨子ちゃん!今から行ってくるからチカのカッコイイとこ見てて!!」ガタッ

梨子「うん、ちゃんと見てるよ」

千歌「じゃあ行ってくるから!!」ダッ εε= 从c*^ヮ^§

梨子「走るとスタンドから落ちるわよ〜!」

梨子「……うーん……私は綱引きしか出ないし……ずっとスタンドに居るのも退屈なのよね……」ウーン

花丸「……ぁ、梨子先輩!」

梨子「あれ、花丸ちゃん!今ひとり?」

花丸「はい。曜ちゃんもルビィちゃんも敵だからあんまり話せなくって……」

梨子「て、敵でも話していいと思うけど……」

229: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/28(日) 12:14:57.67 ID:IiY6V2/W
花丸「あの……心細いので一緒に座って見てもいいですか……?」

梨子「勿論!ほらおいで」ポンポン

花丸「!……ありがとうございます!」パアァッ

花丸「……千歌先輩とダイヤ先輩は一緒ではないんですか……?」

梨子「ああ、うん。千歌ちゃんはこの後のリレーに出るの。ダイヤちゃんは生徒会演舞の最終打ち合わせがあるんだって」

花丸「なるほど……」

花丸「次の100mリレー、曜ちゃんと果南先輩も出るみたいです」

梨子「あ、そうなの?曜ちゃんは分かるけど、果南先輩のことまで知ってるのね」

花丸「あの日、あの場に同じ学科の人が居ない同士意気投合して、少しだけ仲良くなったんです。その時に教えてもらいました」

230: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/28(日) 12:15:19.88 ID:IiY6V2/W
梨子「そうだったのね。……どう?果南先輩優しい?」

花丸「はい、とっても。優しいし面白いし、笑顔がとっても可愛い良い先輩です」

梨子「良いなぁ……私も果南先輩と仲良くなりたいんだけど……果南先輩って、私のこと、千歌ちゃんの友達〜みたいな感じに思われてるんじゃないかって思ってて……」

花丸「……」ポカーン

梨子「え、どうしたの?」

花丸「てっきりもう仲良しさんなのかと思ってました。果南、オラと一緒に帰る度に梨子ちゃんは〜、梨子ちゃんが〜って話してるので」

梨子「そうなの!?というか果南先輩と一緒に帰ってるの!?」

花丸「はい、意気投合して」

梨子「意気投合は関係無くない!?」

231: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/28(日) 12:15:46.58 ID:IiY6V2/W
梨子「……どんな話されるの?」

花丸「……梨子ちゃんが可愛い。梨子ちゃんは良い匂いがする。梨子ちゃんは千歌には勿体無い。……とかですかね」

梨子「本当にそんなこと言ってるの!?」

花丸「言ってますよ」

『100mリレーの選手は入場してください』

花丸「あ、ほら見てください」🫵

果南「………………」キョロキョロ

梨子「な、なんかすっごい赤ブロックのスタンド見てるわね……」

果南「!」ハッ

梨子「あ、気付いた」

果南「──!──!!」ブンブン

花丸「すっごい笑顔で手振ってますね」

梨子「……か、かわいい……っ……」💘

232: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/28(日) 12:16:06.70 ID:IiY6V2/W
花丸「あ、梨子先輩見てください。曜ちゃんも……」

曜「…………」キョロキョロ

曜「!」パアァッ

曜「──!──!!」ブンブン

梨子「さ、流石幼馴染ね……似てるわ……かわいい……」💘

千歌「……」キョロキョロ

花丸「千歌先輩は青ブロックの方探してますね」

梨子「そういえば青ブロックって誰が……」

鞠莉「──、──?」

ルビィ「」

善子「──、──。──?」

梨子「あぁ……鞠莉先輩とよっちゃんに挟まれてるわ……」

花丸「魂出ていきそうずら……」

梨子「何話してるんだろう……」

233: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/28(日) 12:16:37.62 ID:IiY6V2/W
--

青ブロック スタンド

鞠莉「あそこにいるの千歌っち達じゃない?」

善子「本当ですね。めちゃくちゃ手振ってる」

ルビィ「…………」チーン

善子「あ、見て、ルビィ。花丸達よ」🫵

ルビィ「ほ、ほんとだぁ!あのっ、ルビィあっちに……」パアァッ

鞠莉「ダメよ。あっちは敵陣だもの。死にたいの?」

ルビィ「死っ!?!?」ピエエェッ

善子「適当言ってるだけよ。気にしないで」

善子「……ん?見て、あれ千歌じゃない?」

千歌「…………」キョロキョロ

鞠莉「本当ね、誰探してるのかしら?」

ルビィ「死……ルビィ……死……」

善子「さぁ、誰でしょう。私たちとか?」

234: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/28(日) 12:16:56.97 ID:IiY6V2/W
千歌「鞠莉せんぱーい!善子ちゃーん!ルビィちゃーん!」

善子「あのバカっ……!」ガタッ

ルビィ「ぅゆ!?」ビクッ

鞠莉「善子、そんなに急に立ち上がると──」

善子「……あっ……」ガタッ!

鞠莉「……っ!」ガシッ

鞠莉「もう……気をつけなさいよ……」

善子「あ、ありがとうございます……死ぬかと思った……」バクハグ

ルビィ「だ、大丈夫ですか……?」

善子「ええ……私みたいにスタンドから勢い良く立ち上がらないようにするのよ……」

ルビィ「はい……」

236: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/28(日) 22:22:23.54 ID:IiY6V2/W
『位置について、よーい』

パァンッッ!!

果南「──っ!」タッ

鞠莉「あら、果南が走り始めたわよ」

善子「早いわねぇ、あの人」

ルビィ「……かっこいい……」

鞠莉「転べ転べ〜っ♪カッコ悪いところ見せちゃえ〜っ♪」

善子「やめなさいよ」

鞠莉「私、先輩だけど?」

善子「うっざいわねこの人……」ハァ…

ルビィ「ぁ、見てください。次、千歌先輩……」

千歌「──っ!──っ、」ダッ

鞠莉「千歌っちは動けるけど特別早いって訳じゃないのよね」

善子「果南先輩見ちゃうと皆遅く感じますよね」

鞠莉「あの人がずば抜けて早過ぎるのよ」

237: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/28(日) 22:22:44.53 ID:IiY6V2/W
ルビィ「あっ!曜ちゃん!」

曜「──っ!」ビューンッッ

鞠莉「まるで飛行機ね」

善子「こうして走ってるところ見るとあの子って本当犬っぽいですよね」

鞠莉「分かるわ〜、一度でいいから撫で回してみたい」

鞠莉「………………」チラッ

ルビィ「……っ?……??」キョトン

鞠莉「ルビィを撫で回しちゃえ〜!」ワシャワシャ

ルビィ「わぁあぁっ……な、なんでるびぃがぁ……っ……」アワアワ

ルビィ「た、……たすけてぇ、善子せんぱ──」チラッ

善子「…………」ソワソワ

ルビィ「な、なんでぇ!うらぎりものぉ!」ウユ…

240: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/29(月) 15:53:54.36 ID:YmWVLWXs
鞠莉「それはそうと、善子とルビィは何の競技に出るの?状況次第では応援してあげなくもないけど」

善子「なんですか状況次第って」

ルビィ「……る、ルビィは綱引きに……」

善子「私は障害物リレーです」

鞠莉「じゃあルビィだけ応援するわ」

善子「なんでですか」

鞠莉「善子も応援してほしいの?」

善子「………………まあ」

鞠莉「fu〜〜♪」( 🤞ᐛ )🤞⤴︎⤴︎⤴︎

善子「今日テンション高くてめちゃくちゃ面倒臭いわこの人」

鞠莉「体育祭だからね」

善子「先輩そんな燃えるタイプじゃないでしょ」

241: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/29(月) 21:28:43.05 ID:YmWVLWXs
ルビィ「鞠莉先輩は何に出るんですか……?」

鞠莉「ん〜?気になる?」

ルビィ「……はい、ルビィも、応援……したいので……」

鞠莉「やだもうかわいい〜♪」ナデナデ

善子「え〜私も鞠莉先輩応援した〜い!」

鞠莉「ふーん」

善子「なんでよ」

242: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/29(月) 23:04:59.79 ID:YmWVLWXs
----

梨子「千歌ちゃん達カッコよかったね」

花丸「はい、皆足速くてビックリしました……オラ、全然早くないから……」

梨子「そうねぇ……リレーに出てる人は凄いわ」

『障害物リレーに出る選手は──』

花丸「あ、オラの競技ずら。それじゃ、梨子先輩、ありがとうございました」ペコ

梨子「こちらこそありがとう、頑張ってね。応援してるから」

花丸「はい。それではまた」フリフリ

梨子「うん、またね」フリフリ

梨子「………………花丸ちゃんも何だかんだリレー出てるじゃない…………」

千歌「梨子ちゃーん!ただいまー!」

梨子「ああ、走らないの。お疲れ様、千歌ちゃん」

千歌「どう?速かった?カッコよかった?」

梨子「うん、凄いカッコよかったよ」

千歌「えへへぇ……うれしい……」フニャリ

243: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/30(火) 00:52:33.17 ID:Ylcnnu+n
善子「──、──」トテトテ

千歌「あ!見て!あそこにスタンバイしてるのって善子ちゃんじゃない?」

梨子「あら、ほんとだ。一番最初なのね」

千歌「障害物リレーはあんまりやる人居ないから誰かが三年生と一緒に走らないといけないって聞いてたけど、善子ちゃんだったんだね〜」

梨子「よっちゃん運動神経良いんだ……」

千歌「割と良い方だと思う。まあよく良いところで転んでるんだけどね」

善子「──、」スッ…

千歌「あ、走り始めるんじゃない?」

『位置について、よーい』

パァンッッ!!

善子「──っ!」ダッ

千歌「おお!善子ちゃん速い!」

244: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/30(火) 00:52:53.71 ID:Ylcnnu+n
善子「……っ!──っ!」ダッ

梨子「な、何あれ!?今何持ったの!?」

千歌「3キロの砂袋だよ。あれを持って、あそこの一輪車に乗せるの。そこから、一輪車を押して、1年生の子にバトンを届けるんだよ」

梨子「さ、3キロ……重そう……よっちゃん、よくあんなの持って走れるわね……」

千歌「一輪車押すの上手いなぁ。アレ、重いと真っ直ぐ進まなくて大変なんだよ〜」

梨子「そうなのね……よっちゃん凄い……」

善子「──っ!?」ガクッ

千歌「あ、やばいよ一輪車が石に躓いた」

善子「──〜っ!!」ドンガラガッシャーン

梨子「す、凄い勢いで転んだけど!?大丈夫なのあれ!?」

千歌「あっはっはっはっは!もう最高だよ善子ちゃ〜ん!」ゲラゲラ

梨子「最悪ね貴女!」

245: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/30(火) 00:53:12.92 ID:Ylcnnu+n
花丸「──っ!?──!」ソワソワ

梨子「花丸ちゃん、敵なのにすっごい心配そう……」

善子「──っ、……」ヨロヨロ

千歌「ひぃ……お腹痛いお腹痛い……」

梨子「な、なんとか次の人にバトンが渡ったわね……」

千歌「あ、見て。今袋に入ったの花丸ちゃんじゃない?」

花丸「──っ……」ヨイショヨイショ

梨子「何に入ってるの?」

千歌「麻袋だよ〜、あれでぴょんぴょんして前に進むの」

花丸「──っ!──っ!」ヨッコラセ ヨッコラセ

梨子「……なんだか重そうね……」

千歌「……うん、一歩一歩がゆっくり……小学校低学年の子がしてる縄跳びみたい……」

248: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/30(火) 17:10:39.11 ID:Ylcnnu+n
千歌「ああほらこうしてる間にもめちゃくちゃ抜かされて行ってるよ……」

花丸「……っ、…………っ!」ゼェゼェ

梨子「麻袋は終わったけど、……あと半分……大丈夫なのかな……」

花丸「……っ、……」ゼェゼェ ピラッ

梨子「何か紙を貰ったわね」

千歌「借り物競争みたいなやつだよ。あそこに各学科がよく使ってる道具があるでしょ?それが書いてあるから、それを持ってゴール!」

梨子「な、なるほどね……あの人みたいのは何?」

千歌「柔道部が使ってるダミーくんだよ。あれ、意外と軽いんだよ〜」

梨子「……あ、見て。鞠莉先輩」

鞠莉「………………」チョコン

🐶「………………」ハッ ハッ

千歌「あ、ほんとだ。同好会のワンちゃんも居るんだ」

249: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/30(火) 17:11:12.38 ID:Ylcnnu+n
花丸「──っ!……っ、……」ゼェゼェ

千歌「あ、丁度花丸ちゃんがワンちゃん引き当てたみたいだね」

鞠莉「──?──!」ハイドウゾ

🐶「──!」タッ

花丸「──っ!──っっ!!」ズルズル

梨子「…………花丸ちゃん……引っ張られて行ってるわね……」

千歌「小型犬なのに…………」

『赤ブロック、一位でゴールしました』

千歌「でも一位なんだ。すごい」

梨子「さっきまで最下位まっしぐらだったのにね」

千歌「ほんとにね」

250: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/30(火) 17:11:39.22 ID:Ylcnnu+n
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善子「………………」ボロッ

千歌「ひいいぃっ……くるしいっ……くるしい〜!」ゲラゲラ

ルビィ「そ、そんなに派手に行くとは思いませんでした……」

善子「……慰めないで。……辛いから……」

ルビィ「……はい。これで大丈夫ですよ」ペタッ

善子「ありがと。今担当してる保健委員がルビィで良かったわ。知らない人に同情されながら絆創膏貼られると気が可笑しくなるもの」

千歌「あっはっはっはっ!くるしいくるしい!腹筋割れる!シックスパック!」ゲラゲラ

善子「あんたは少しでも同情しなさいよ!」💢

ルビィ「……でも、善子先輩、とってもカッコよかったですよ。ルビィ、思わずがんばれーって叫んじゃいました」

善子「!……ありがとね」

ルビィ「はいっ」ニコ

251: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/30(火) 17:11:58.32 ID:Ylcnnu+n
『綱引きに出る生徒は入場門前に整列してください』

千歌「ああ、ルビィちゃん、そろそろ整列しないと綱引き始まっちゃうよ」

ルビィ「っあ!そうでした!……ルビィ、行ってきますね」

善子「ええ、頑張ってね。応援してるわ」

ルビィ「ありがとうございます、失礼します」ペコリ

善子「…………どっかの誰かさんと比べて良い子ね〜」

千歌「どっかの誰かさん?ダイヤちゃんのこと?」

善子「あんたに決まってんでしょ」

ダイヤ「あら、千歌さんに善子さん。どうして救護テントに……」チラッ

善子「…………」ボロッ

ダイヤ「ああ……なるほど……」

善子「辞めてくれる?その反応」

252: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/30(火) 17:12:18.75 ID:Ylcnnu+n
ダイヤ「次は梨子さんとルビィの競技ですわね」

千歌「そうだねぇ。どっち応援するか迷っちゃうなぁ」

善子「そこは同じチームの梨子を応援しなさいよ」

千歌「後輩を応援しないなんて嫌な先輩じゃない?」

善子「面倒臭いわねぇあんた」

ダイヤ「そろそろ始まりますわよ」

『位置について、よーい』

パァンッッ!!

梨子「──!」

千歌「あ!梨子ちゃんだ!頑張れー!梨子ちゃーん!」

善子「あ、見て。相手のチームにはルビィも居るわよ」

ルビィ「──っ…………っ!」ウユウユ…

千歌「ありゃ、青負けちゃいそう」

善子「ルビィ、今にでも泣き出しそうね」

ダイヤ「情けないですわ……」

「ファイトーっっ!!!!」

千歌「青ブロックに凄い声援送ってる人居る……」

善子「一体誰が……」

253: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/30(火) 17:12:49.27 ID:Ylcnnu+n
曜「ルビィちゃーん!!がんばれー!!!!」

鞠莉「負けるなー!!!全員蹴落とせー!!!!」

ダイヤ「」

千歌「まあ予想的中だよね」

パァンッッ!!

『ただいまの結果、赤ブロックの勝ちです』

善子「でしょうね」

千歌「あっ!見て!ルビィちゃん泣いちゃう」

ルビィ「……っ……」ジワッ

善子「赤ちゃんか」

ダイヤ「ルビィー!しゃきっとしなさい!」

ルビィ「…………っ……」フルフル

千歌「なんか言ってるけど、なんにも聞こえないね」

善子「……ええ」

254: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/30(火) 17:13:06.98 ID:Ylcnnu+n
梨子「…………」チラッ

善子「あ、梨子がこっち見てる」

千歌「どこどこー!?!?」

梨子「……っ……」フリフリ

善子「!」ドキッ

善子「ん、んん……?ドキッ……??」

千歌「あ、居た!りこちゃーん!おーい!!」ブンブン

ダイヤ「お止めなさい。救護テントで騒ぐんじゃないですの」

千歌「ああそうだった……ちょっと退場門で梨子ちゃん達にお疲れ様してくる〜!」タッ

255: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/31(水) 00:44:37.62 ID:4jOpNDsN
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『三年生全員は入場門前に整列してください』

千歌「いよいよ三年生の学年種目だね〜」

ダイヤ「鞠莉先輩がどこまで本気になってくるかが勝負の鍵を握ってますわね」

梨子「鞠莉先輩ってそんなに体育祭で手を抜いたりしてるんですか?」

ダイヤ「ええ。去年はそもそも学校に来てませんでしたから」

千歌「面倒臭いって言ってサボってたよね。その度胸カッコイイ〜!」

梨子「絶対見習っちゃダメなやつね」

花丸「あそこに準備されてる竹はなんですか……?」

千歌「孟宗竹だよ〜、学校に生えてる竹なんだけど、あれを使って台風の目っていう競技をするの」

花丸「台風の目?」

梨子「あら、知らない?」

花丸「はい……あんまり……」

256: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/31(水) 00:44:59.63 ID:4jOpNDsN
ダイヤ「あの竹を四人一組で持って、コーンの周りを回っていきます。二つ目のコーンを回ったところが往復地点ですわ。自分のチームが並んでいるところまで戻ってきたら、今度は両側の二人だけが竹を持ち、並んでいるチームメイトの足元へ通します」

梨子「この時、ぶつかったり転ばないようにしないように並んでる人は竹を跳ぶの。後ろ列まで行ったら、また前に戻ってきて、一番前に並んでいる人に竹を回す」

千歌「一番早く全員回ったチームが優勝!わかった?」

花丸「なるほど……少し分かりました」

千歌「大体は見てたらわかると思うから!皆で果南ちゃんを応援するぞー!」エイエイオー!

257: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/31(水) 00:45:19.64 ID:4jOpNDsN
『位置について、よーい』

パァンッッ!!

果南「──っ!」ダッ

千歌「始まった!」

花丸「果南先輩、一番前です!」

千歌「がんばれー!果南ちゃーん!」フレーフレッ!!

ダイヤ「果南先輩が端だと有利ですね。脚も速いし力もある」

梨子「が、頑張ってくださーいっ!果南先輩ー!」

果南「──っ!」ハッ

果南「……っ……」カアァッ

梨子「ぁ……目逸らされちゃった……」シュン

千歌「(果南ちゃん、梨子ちゃんのこと大好きだからなぁ……)」

花丸「(果南先輩、完全に照れてるずら)」

ダイヤ「(分かりやすい人ですわ)」

258: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/31(水) 00:46:18.32 ID:4jOpNDsN
体育祭長くなってきちゃった
あと一種目書く。つまらなかったらごめん

261: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/31(水) 01:18:25.64 ID:4jOpNDsN
千歌「果南ちゃーん!!梨子ちゃんに良いとこ見せちゃ──っもご!?」

ダイヤ「ちょっとお止めなさい!果南先輩の気持ちも考えるんですわ!」ガバッ

花丸「流石にオラも命の危機を感じるずらっ……」ガバッ

千歌「んー!!んんーっっ!!」モゴゴ…

果南「後で覚えとけ千歌ーっ!!」

千歌「ひいぃっ……」

梨子「??……?」

264: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/31(水) 17:23:14.67 ID:4jOpNDsN
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青ブロック スタンド

曜「あれぇ……鞠莉先輩はどこに?」キョロキョロ

善子「どうせあの先輩のことだから出ないんじゃないの?結局出る種目聞けなかったし」

ルビィ「最後まで教えてくれませんでしたよね……」

曜「あ!居た!あそこ!一番後ろ!」🫵

善子「一番後ろ!?あの人が!?」

鞠莉「…………」

ルビィ「ほ、ほんとだ……アンカーだからゼッケンも着てる……」

善子「嘘でしょ……あの人がちゃんと種目に出てるなんて……」

善子「あの人、去年の体育祭サボってるからね」

曜「そうなんですか!?」

善子「ええ。私も鞠莉先輩休んだと思ったんだけど、実は学校には居たのよね」

ルビィ「??……どういう意味ですか……?」

善子「木の上登ってたのよ」

曜「野生か!!!!!」

265: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/31(水) 17:23:41.94 ID:4jOpNDsN
鞠莉「……」ヒョイッ

善子「いやせめて出てるならもっと楽しそうにしなさいよね……真顔って……」

ルビィ「あ、あれはあれで楽しんでるんじゃ……」

鞠莉「…………」ポケーッ

曜「あんなぼーっとしてたらぶつかっちゃいそうですけど……」

ワイワイワイ! ワイワイワイ! ワーイワーイワイ ワイワイワイ!

鞠莉「…………」ポケーッ

善子「あの人、竹が迫ってることに気がついてないわね」

鞠莉「──っ!?!?」ゴッ

ルビィ「脛、打ちましたね」

鞠莉「──っ……〜〜っっ……」ウズクマリィ

曜「本気で痛そう……涙目になってる……」

善子「今までクールキャラ演じてた人が脛ぶつけただけでこんなに面白いのね」

鞠莉「〜っ……っ……」

ルビィ「……あ、立ち上がれてないですよ」

果南「!──っ?──!」タッ

曜「あ、果南ちゃん気付いた」

果南「──っ」ヨッコラセ

鞠莉「〜っ!……っ、……」プルプル

善子「……お姫様だっこで運ばれて行ったわね……」

曜「………………」

ルビィ「………………」

266: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/31(水) 17:24:23.70 ID:4jOpNDsN
----

救護テント

千歌「ひぃいぃwwwwww」ゲラゲラ

鞠莉「………………」

果南「千歌。やめな」

千歌「だってwwwだって気がついたら脛押さえて蹲ってんだもん!www」

梨子「もう、千歌ちゃんいい加減にしなさい」

ダイヤ「脚、大丈夫ですの?」

果南「いや、かなり腫れてたよ。握り拳くらい!」

善子「そりゃあんな太い孟宗竹に真正面からぶつかったらそうなるわよね」

268: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/31(水) 21:36:45.09 ID:4jOpNDsN
ルビィ「相当痛そうでしたし……」

曜「ほんとほんと。脚にこんな大きなこぶなんか出来ちゃって……っぶふwww」

果南「こら曜!」

曜「分かってる……分かってるよぅ……www」

千歌「よーちゃんだけに分かってるよぅってこと!?www」\\\ドッ///

果南「いやどこにツボってんの」

花丸「最悪ずら」

鞠莉「…………帰る…………」

果南「えっ?」

鞠莉「帰るぅ……皆して私のこと笑ってぇ…………」ポロポロ

千歌「えええええ!!違うんです!!!違うんです待ってチカ悪くない!!!!」

善子「あんたが一番悪いでしょ」

269: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/31(水) 21:37:12.46 ID:4jOpNDsN
鞠莉「皆本当のこと言って」

全員「…………………………」ゴクリ…

鞠莉「私は別に、皆が私の姿を見て笑うことはいいの」

鞠莉「ただ、それを隠されてるのが悲しいの」

鞠莉「私に気を使ってるんでしょ?」

ダイヤ「ですから――」

鞠莉「ちゃんと受け止めるから。怒らないから」

鞠莉「皆私を見て面白いなって思ったんでしょ?」

全員「……………………」




全員「……………………」コクリ

鞠莉「ほ゛ら゛や゛っ゛ぱ゛り゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛」ポロポロ

善子「全然受け止められてないじゃないですか……」

270: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/05/31(水) 21:46:09.68 ID:4jOpNDsN
鞠莉「だって嫌だもんこんなっ……こんな両脚の脛におっきくこぶ出来てるの〜!!」ポロポロ

鞠莉「千歌っちと曜に笑われたもんんんんんん!!!」ポロポロ

ようちか「「ご、ごめんなさい…………」」

鞠莉「皆のばかあああああああああぁぁぁ!!もう嫌い!!!帰らせてぇえ」ポロポロ

果南「お、落ち着いて?確かにこのこぶは面白いけど……ここに皆が来てくれたってことは、少なくとも鞠莉を心配してるからなんだよ」

鞠莉「……っ……心配……?」グスン

梨子「そ、そうですよ!心配で駆け付けて来たんです!」

鞠莉「ほんと……?」

千歌「はい!勿論!鞠莉先輩の脚が心配で心配で……っぶふ!wwwwww」

ダイヤ「貴女もういい加減にしなさい!!」💢

275: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/01(木) 18:31:12.47 ID:jrkhNSK7
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『続いては、学科対抗リレーです』

梨子「──なんて言ってるけど、」

梨子「実習服着ていつも使ってる道具持って皆でトラック回ってるだけじゃない!」

千歌「何がリレーだ!って感じだよね」アハハ…

千歌「よっこらせっ、っと……」ヨイショ

梨子「千歌ちゃんはダブルスコップなのね……重そう……」

千歌「かなり重いよ〜、ダイヤちゃん見て見て」🫵

ダイヤ「緑化科でーす」

千歌「緑化科〜って書かれた看板しか持ってないよ。梨子ちゃんはちゃんと刈り込みバサミ持ってるのにぃ……」

梨子「ちょっとずるいよね……」

ダイヤ「……二人とも、何か?」圧

ちかりこ「「い、いえ何も〜……」」メソラシ

276: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/01(木) 18:32:03.26 ID:jrkhNSK7
果南「園芸科でーす」ワイワイワイ

梨子「果南先輩の周り、沢山人が居るわね」

千歌「人気者だからね〜果南ちゃん」

ダイヤ「綺麗なお花が持てて羨ましいですわ。私達なんか小汚い道具ですし」

ちかりこ「「看板だけしか持ってないダイヤちゃんが言わないで」」

梨子「あ、見て。あっちは動物科よ」

善子「あ、こら!走らないの!」

🐶「わふ!」

梨子「よっちゃん大変そうね……」

277: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/01(木) 18:32:41.59 ID:jrkhNSK7
千歌「いいなぁ、緑化も何か動物飼おうよ動物〜」

ダイヤ「害虫なら沢山居るでは無いですか」

千歌「ダイヤちゃんは害虫をペットにするのかって話!」💢

梨子「あはは……なんかこの学科対抗リレーって、各学科の差が激しいわね……」

千歌「だよねぇ……」苦笑

千歌「でも、パレードみたいで面白いでしょ?」

梨子「……ええ、すっごい楽しい」

千歌「……っふふ、良かった」ニッ

白津「おー、桜内、高海、黒澤」

ダイヤ「あ、白津先生。どうかしましたの?」

白津「体育祭が終わった後、グラウンドで測量の練習するので残っててくださいね」

千歌「ちくしょおおおおおおおっ!!!!帰れると思ったのに!!!帰れると思ったのに!!!!!」

278: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/01(木) 18:33:46.54 ID:jrkhNSK7
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六月
平板測量競技会当日
静岡県 某農業高校

ブロロロロ……

ガチャッ

千歌「おおーっ!他所の農業高校ってなんか良いね〜!」

梨子「千歌ちゃんも、はしゃがないで荷物運んでよ〜っ……」

ダイヤ「そうですわよ。こんな大荷物、どうして二人だけで持たせるんですの!」

千歌「ああ、ごめんごめん。自分の学校じゃないところってテンション上がっちゃうから……」

梨子「気持ちは分かるわね……私なんて、浦の星しか農業高校知らなかったから、何だか不思議な気分」

千歌「広いね〜!楽しいね〜!」

ダイヤ「あんまり騒がないでください。バカに見えますわよ」

千歌「ばかって言ったダイヤちゃんの方がばかだよ!ばーか!」

ダイヤ「なんですってえぇええ!!」💢

梨子「ふ、二人とも落ち着いて……」

279: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/01(木) 18:35:03.02 ID:jrkhNSK7
生徒「あの、測量で来た方ですか?」

梨子「は、はい……浦の星農業高校です」

生徒「浦の星農業高校の生徒さんですね、ご案内します」

梨子「ありがとうございます。ほら、千歌ちゃんダイヤちゃん、行くよ」

280: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/01(木) 18:35:23.10 ID:jrkhNSK7
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生徒 控え室

生徒「こちらで実習服に着替えてください。開会式は9時からになります。遅れないように時間を見ながら隣の教室へ集まるようにお願いします」

千歌「はい、ありがとうございます!」

ガララッ

ピシャ……

ダイヤ「……かなり汚い教室に案内されましたわね……」

梨子「ちょっと荷物退けただけの教室、って感じね……」

千歌「まあまあ、文句言ってても仕方ないよ。そもそも浦の星はこんな空き教室用意出来ないもんね」

千歌「さっと着替えて最後打ち合わせしていこう。私達、まだ全然練習出来てないし、測量の大会って授業で測量やってるところがほとんどだから絶対悪く目立つよ」

梨子「それもそうね……早く着替えちゃいましょ」

ダイヤ「仕方ないですわね……」

281: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/01(木) 18:35:43.96 ID:jrkhNSK7
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開会式 会場 教室

司会「起立」

司会「これより、農業クラブ平板測量競技大会を開催致します。礼」

司会「FFJの歌。皆様、ご斉唱ください」

梨子「FFJの歌……?」

生徒「……」スッ

梨子「(指揮出てきたし。絶対要らないわよねこれ……)」

梨子「(それよりFFJの歌って何?)」チラッ

千歌「………………」ニコニコ

ダイヤ「………………」スンッ

梨子「(え、二人とも知ってるの!?)」アワ…

282: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/01(木) 18:36:00.47 ID:jrkhNSK7
みのる和穂に 富士と鳩
愛と平和を表わした

梨子「(うわ……何この曲……歌詞書いてあるけど全然歌えないし……)」

ダイヤ「♪〜」

梨子「(ダイヤちゃんはちゃんと歌ってるみたいだけど……)」チラッ

♪旗はみどりの、風に鳴る
土にとりくむ 若人の意気と熱とが もりあげた

千歌「……ぁ、ふふふ〜ん、ふ〜んふ〜ん!」

梨子「(せめて口パクとかにしなさいよ!どうして歌えないのにチャレンジするのよ!声大きいし!)」

♪ FFJ FFJ われらの誇り

千歌「えふえふじぇー!えふえふじぇー!わーれらっの ほっこっりー!」

梨子「(なんか恥ずかしいから千歌ちゃんお願い今の一瞬だけ黙っててーっ!)」

283: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/01(木) 18:36:21.06 ID:jrkhNSK7
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競技場 グラウンド


梨子「結局千歌ちゃん最後しか歌わなかったわよね」

千歌「なんにも歌ってない梨子ちゃんよりはマシだよー」

梨子「だってFFJの歌なんて聞いたことないし!」

ダイヤ「私もまさかここで歌うとは思っていませんでしたけどね」

梨子「え、そうなの?ダイヤちゃん、ちゃんと歌ってたからビックリ……」

ダイヤ「まあ、私は生徒会副会長ですから!」ドヤァ

千歌「関係無いと思うよー」

ダイヤ「お黙らっしゃい!!」💢

千歌「でも逆に、農業クラブ長の鞠莉先輩はFFJの歌とか全く歌えないらしいよ」

梨子「え、そうなの!?」

千歌「歌えなくても損することは無い〜、覚えるだけ無駄だ〜って言ってたもん」

梨子「メンタル強……」

千歌「前、脛ぶつけただけであんなに泣いてたのにねwww」

ちかダイりこ「「「wwwwwwwwwwww」」」

287: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/01(木) 22:40:51.11 ID:jrkhNSK7
白津「おー、お前らちゃんと水分摂ったか」

千歌「あ、白津先生〜」トテテテ

白津「今日は暑いけんね、水分摂らな熱中症になりますからね」

ちかダイりこ「「「はーい」」」

千歌「…………」チューッ ゴクゴク ←ストロータイプの水筒

梨子「…………」トポポポ… ゴクゴク ←コップタイプの水筒

ダイヤ「…………」ゴクゴク ←そのまま飲めるタイプの水筒

白津「お前らバラバラやなぁ……」

289: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/02(金) 19:11:34.21 ID:YRjXCXnY
白津「いよいよ大会本番ですからね、皆で協力して、取り敢えずどれだけ時間が掛かっても良いので完成を目指してください」

白津「授業で測量やってるとこばっかりですから、勝ちに行けとは言いませんが、諦めないで楽しんで測量してきてください」

ちかダイりこ「「「はい!」」」

千歌「頑張ろうねふたりとも」👊

梨子「頑張ろう」👊

ダイヤ「やるからには全力ですわ」👊

コツン…

千歌「……」スッ…

梨子「……」コクリ

梨子「……」スッ…

ダイヤ「……」コクリ


白津「お前ら何しようとね」

294: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/03(土) 20:05:29.22 ID:z0Go2+1l
『只今より平板測量競技大会を始めます。位置について、よーい』

パァンッッ!!

千歌「今だ急げ!」ダッ

ダイヤ「いやリレーじゃありませんから!」ガタッ…

ガッシャーンッ

ダイヤ「ああ!ほら!測板が倒れてしまったではないですか!」

梨子「水平器とか全部落ちたわよ!」アワアワ

千歌「こうしてる間にも向こうの学校は進めて行ってるしアフリカでは一分間に六十秒もの時間が流れてるんだよ!?」

ダイヤ「当たり前でしょ!!」💢

梨子「せめて拾ってから喧嘩しよう!?」

白津「(終わりましたね~)」

296: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/03(土) 22:44:31.61 ID:z0Go2+1l
 平板測量は測板に画用紙をマスキングテープで貼り付け、用紙の右端に方角を書いておきます。その測板を三脚へ取り付け、アリダート、磁針箱など必要な道具を測板の上へ出した状態から始めます。

 基準点へ合うように下げ振りを使い、水平器で測板を水平にしていきます。
 用紙の下側には基準点となる点を書いておきます。測量し、作図していく際の大きな基準となります。

千歌「最初私が行くね」タッ

梨子「ええ、ありがとう。お願い」

 記録主以外の二人、測定主は次の目標点へと立ち、ポールを立てます。記録主は、水平を保つ為に測板を取り付けた木の板のみ動かします。そして、アリダートの後視準板の穴を覗き、前視準板の視準糸と目標のポールに合わせます。

ダイヤ「…………」ジッ…

297: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/03(土) 22:44:45.47 ID:z0Go2+1l
ダイヤ「……ええ、大丈夫ですわ」

梨子「分かった。千歌ちゃん!」タッ

千歌「おっけー!」タッ

 測定主は二人で巻尺を使って距離を測り、用紙へ三角スケールで縮尺に合わせ、点を打ちます。この点は最初書いた基準点と繋ぎ、これを繰り返すことで競技場を上から見た図形を描くことが出来ます。

千歌「梨子ちゃん押さえてて。チカが測るから」ビューン

梨子「わ、分かった」グッ

梨子「(千歌ちゃんったら真剣になり過ぎて果南先輩や曜ちゃんの前でしか出さない一人称になってるわ……)」

298: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/03(土) 22:44:59.38 ID:z0Go2+1l
千歌「………………」スッ… ジィィィッ……

千歌「12m52!」

ダイヤ「12m52!」

梨子「じゅ、12m52!」

 この時、測定した記録を全員で大きな声で繰り返します。これを行わなかった場合、減点されてしまいます。

梨子「(千歌ちゃん、練習の時は一個ずつメモリ数えてたのに……農業高校生って大会になるとここまでゾーンに入るものなのね……)」
⚠︎人によります

千歌「りこちゃーん!引っ張ってー!」

梨子「はーい!」グッ

千歌「ありがとー!」グルグルグルグル

 これを繰り返すことで、平板測量を行うことが出来るのです。

299: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/03(土) 23:30:18.00 ID:z0Go2+1l
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数十分後

審査員「皆さん、お疲れ様でした。全学校測定が終わったため、今から学校内に移動して──」

千歌「……結局私達が最後だったねぇ」

梨子「そうね……まあ仕方ないわよ。授業でやってる所に勝てっこないわ」

ダイヤ「でも作図は今までで一番良いのではないですか?誤差も少なかったですし、大丈夫なはずです」

千歌「でも最初に測板倒したりしちゃってるし……減点されてそうだよねぇ……」

白津「おー、高海、黒澤、桜内。どうだったか」

ダイヤ「あまり自信はありませんわ……」

梨子「そうね……ちょっと不安です」

白津「まあ練習もそんなに出来とらんけんね、仕方ないっちゃけどね」

生徒「あ、すみません。お二人はこっちで、もう一人は……」

白津「こっちですね、ありがとうございます」

千歌「それじゃ梨子ちゃんダイヤちゃん、またあとで」フリフリ

梨子「ええ、よろしくね」

ダイヤ「お互い頑張りましょう」

千歌「うんっ、また」フリフリ

300: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/03(土) 23:34:17.89 ID:z0Go2+1l
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某農業高校 空き教室

 平板測量が終わると、各チームごと三斜法に二人、三辺法に一人で分かれ、作業を行い、面積を求めたりします。これを二次作業と言います。

白津「えー、三辺法の試験監督をすることになりました。浦の星農業高校の白津です、よろしくお願い致します」ペコ

白津「それでは解答用紙を配るので裏にして机の上に置き、時間まで待機していてください。また、机の上に置いてある電卓が付かない場合は声を掛けてください」

白津「……全員行き渡りましたね。それでは始めます」ピッ

千歌「………………」カキカキ…

千歌「………………」カタカタッ…

千歌「…………」ウーン…

千歌「………………」カキカキ…

千歌「(──えっと……3,540…これって、点つけるかな……)」カタカタ…

千歌「(……付けちゃお)」カタッ

カタカタッ カタカタッ

千歌「(他の学校の人、もう終わってる……電卓打つ手も早かったし、これが経験の差かぁ……)」カタッ

千歌「(よし、これで合計が出て──)」

千歌「(ん?……何でこんなに小さい値になるんだ……?)」ピタッ

千歌「(………ちょっと待って、なんかおかし──)」

ピピピピッ ピピピピッ

白津「時間になりましたので筆記用具を置いてください。回収します」

千歌「(終わった……え、何であんな数字になったんだろ……)」

303: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/04(日) 18:27:34.89 ID:FZoeZPsT
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白津「荷物は全部積み込めましたか?」

ダイヤ「はい、忘れ物も確信してきたので大丈夫ですわ」

千歌「……………………」

梨子「ど、どうしたの?千歌ちゃん、さっきから元気ないけど……」

千歌「さっきの三辺法、何故か合計がすっごい小さい数字になっちゃって……なんでかなって……」

梨子「あらら……まあ大丈夫よ。元気出して?まだお昼前なのに帰れるのよ!」

千歌「んん……そうだけど……」

ダイヤ「してしまったことをいつまでも考えても仕方ないですわ。前向きに行きましょう」

305: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/04(日) 22:24:33.54 ID:FZoeZPsT
真鍋「お、高海さんと黒澤さんじゃん」ヒラヒラ

千歌「あ!真鍋先生!お久しぶりです!」

梨子「だ、誰……?」

ダイヤ「去年まで浦の星に居た先生ですわ」

真鍋「一年生?」

梨子「い、いえ……今年転校してきました、桜内です」

真鍋「え、この時期に転入してきたの?凄いなぁ、高海さんうるさいやろ?」

梨子「い、いえそんな……」

真鍋「あっはっはっ!まあお疲れさんやな。気を付けて帰りよ」

ダイヤ「はい、ありがとうございます」

千歌「それではまた」フリフリ

白津「おーい、高海、黒澤、桜内~。駅に行くぞ~。車乗れ~」

ちかダイりこ「「「はーい」」」

307: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/04(日) 22:39:47.76 ID:FZoeZPsT
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某農業高校 最寄り駅 (無人駅)

白津「おにぎり買ってきておいてますから、これ皆で食べてくださいね。先生は学校に戻るので気をつけて帰ってください」

ダイヤ「はい、ありがとうございます」

千歌「先生、また明日!」

梨子「送ってくれてありがとうございました」

白津「また」フリフリ

ブロロロロロ……

ちかダイりこ「「「……………………」」」ストン

ダイヤ「電車来ませんわね」

梨子「来ないわね~」

千歌「あー…………沼津でも行こうかな」

梨子「えっ、帰らないの?折角お昼に終わって帰れる~ってワクワクしてたのに」

千歌「折角お昼に終わったからこそじゃない?三人で沼津行ってお茶しようよ」

ダイヤ「……ま、偶には良いですわね」

梨子「ダイヤちゃんまで……」

千歌「どうせ公欠で学校行かなくていいんだしさ!一緒に行こ!」

梨子「……もう、仕方ないわね……」

308: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/04(日) 22:40:02.49 ID:FZoeZPsT
ダイヤ「……あ、白津先生から頂いたおにぎりでも食べますか?電車、中々来ないようですし」

千歌「あ、食べよ食べよ」ガサッ…

千歌「えっと、鮭、鮭、鮭、ツナマヨ、ツナマヨ、ツナマヨ………………」

梨子「白津先生………………」

千歌「ま、まあおじいちゃん先生が女子高生の好みなんて分からないもんね……鮭とツナマヨ、一個ずつ食べよ」

ちかダイりこ「「「いただきます」」」

ちかダイりこ「「「………………」」」パリッ

ちかダイりこ「「「………………」」」モグモグ

ちかダイりこ「「「………………」」」

千歌「(そういえば、合計があそこまでズレ始めたのって、私が点を付けたから──)」ハッ

千歌「あそこかあああああああああぁぁぁ!!!!!」クワッ

梨子「え!?何!?どうしたの!?」

千歌「コンマ!コンマ付けちゃった!!!だからあんなに数が少なかったんだ!!」

ダイヤ「千歌さん……」

309: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/05(月) 00:12:41.36 ID:5wQsw7xM
千歌「あれって点付けなくて良かったやつじゃん!!どうすんの!!今から戻って直してくる!!」タッ

梨子「ダメに決まってるでしょ!?!?」ガシ

ダイヤ「もう諦めなさいな。ほら、松月さんのメニューでも見て落ち着きなさい」スッ…

千歌「あ、私みかんタルトにしよ。……みかんどら焼きも買って帰ろっかな」

梨子「機嫌直るの早っ……」

ダイヤ「梨子さんは何か気になるメニューはあります?」

梨子「えっ?うーん……」

梨子「あ、私このケーキにしようかな。ダイヤちゃんは?」

ダイヤ「私はプリンにしますわ」

梨子「いいね、プリンもあるんだ」

千歌「あ、それならこっちもおすすめだよ~」

ダイヤ「なら私はこっちをおすすめしますわ」

梨子「ちょ、ちょっとそんなに食べられないから~!」アワアワ

310: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/05(月) 00:34:12.65 ID:5wQsw7xM
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松月

千歌「そういえば、二人ともあの話考えてくれた?」

ダイりこ「「あの話?」」キョトン

千歌「うん、スクールアイドルの話」

梨子「あ、あー……そんな話もあったわね……」

ダイヤ「私はお断りさせて頂いたはずなのですが」

千歌「でもでも、やっぱりあの九人で出たいな~って思うの。ダメかな?」

ダイヤ「九人……?」ピクッ

千歌「うんっ、まず出るのが決まってるのが私でしょ、それから果南ちゃんと、よーちゃん!あとは、梨子ちゃんとダイヤちゃんと、善子ちゃん、花丸ちゃん、ルビィちゃん、鞠莉先輩も入ってくれたら嬉しいな~って思うんだけど……」

ダイヤ「……ルビィも……」

311: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/05(月) 00:34:29.00 ID:5wQsw7xM
ダイヤ「…………やはりダメですわ。ルビィをステージ発表には出せません」

梨子「えっ?」

千歌「え、なんで?なんでダメなの?」

ダイヤ「知っているでしょう。ルビィは極度の人見知りです。初対面の人はもちろん、大勢の人の前に立つことすら出来ません」

ダイヤ「今まで、私はルビィと一緒に数々の習い事を経験してきましたが、ルビィは毎回発表会には出られなかった。……ルビィは、人の目が怖いんです」

ダイヤ「……だからこそ、ルビィに怖い思いはさせたくない……」ギュッ

梨子「ダイヤちゃん……」

千歌「……そんなこと言うのは、ルビィちゃんの気持ちを聞いてからにしようよ」

ダイヤ「えっ……?」

312: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/05(月) 00:42:30.03 ID:5wQsw7xM
千歌「私、よーちゃんから言われたの。ルビィちゃんに絶対入って欲しいから、ルビィちゃんのところは空けておいてって」

千歌「……ルビィちゃん、スクールアイドル、興味あるんだって」

梨子「!……そうだったのね……」

千歌「ダイヤちゃん、一度ルビィちゃんと二人でアイドルの番組見ようとしたことあるんだよね。それでね、私思ったんだ。ダイヤちゃんも、ルビィちゃんと同じくらいアイドルとか興味あるんじゃないかなって」

ダイヤ「……ええ、確かに……千歌さんからスクールアイドルの話を聞いた日、少しだけ自分の携帯で調べてみましたの」

ダイヤ「自分達で曲を作って、振り付けを作って、衣装を作って、周りの人々を笑顔にする……スクールアイドルはテレビに出ているアイドルと違い、ただの自己満足だと思いました」

ダイヤ「でも、自己満足だけでは終わらない何かがあるんだと思ったんですの。スクールアイドルは、浦の星に足りない何かを持っている気がします」

ダイヤ「……賭けをしましょう。これに勝ったらルビィを、……私を、スクールアイドルに入れる権限をあげますわ」

千歌「賭け……」ゴクリ

千歌「分かった。受けるよ、その賭け」

梨子「ち、千歌ちゃん、本当に良いの?その賭けに負けたらルビィちゃんもダイヤちゃんも入ってくれなくなっちゃうのよ?」

千歌「分かってる。でも私に任せてよ」ニッ

梨子「千歌ちゃん……」

316: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/05(月) 18:57:28.37 ID:5wQsw7xM
千歌「あ!心配してくれてるってことは、梨子ちゃん、入る気になってくれた!?」

梨子「…………はぁ、」

梨子「……まあ、少しだけ、興味出てきたかも」

千歌「ほんと!?やったー!!」ワーイワーイ!

千歌「この調子で九人集めるぞ~!!」

千歌「あっ!早速果南ちゃんとよーちゃんに報告しないと!私学校行ってくる!」ガタッ

ダイヤ「おバカ。今は授業中ですわ」

千歌「ああそうだった」ストン

梨子「それに千歌ちゃん、声大きいわよ。静かにね」

千歌「はぁーい」

千歌「……あ、それより、二人とも見て!」バッ

ダイりこ「「これは……歌詞?」」

千歌「うん!私ね、スクールアイドルやりたいって思った時から作詞に挑戦してみたんだ!これを皆で曲に出来たらいいなって思うんだけど……どうかな?」

ダイヤ「……ええ、千歌さんらしい真っ直ぐな歌詞だと思いますわ」

梨子「千歌ちゃんってこんなに素敵な歌詞が書けるのね……ちょっと意外かも」

千歌「なにそれ?褒められてるの?貶されてるの?」

梨子「っふふ……褒めてるのよ」

319: 名無しで叶える物語(SB-iPhone) 2023/06/06(火) 20:48:24.48 ID:CKSj/1qO
ダイヤ「……さ、食べ終わったことですし……どうします?」

千歌「ちょっと沼津で遊んでこーよ!」

ダイヤ「はぁ?」

梨子「お茶して帰るーって言ってたじゃない」

千歌「なんかここで帰るの勿体なくて。……あ、もしかしてもう帰りたかったりする……?」ショモ…

ダイヤ「……まあ、……私もこのまま帰るのは何だか寂しいなと思っていたところです。折角の公欠ですし、何処か行きますか」

千歌「いいの!?わーい!梨子ちゃんは?」

梨子「もう……しょうがないわね……」フゥ…

梨子「良い機会だし、二人が好きな場所教えて?」

千歌「うん!じゃあ早速行こう!」ガタッ

320: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/06(火) 22:40:42.61 ID:J3BL985l
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千歌「はーっ、遊んだ遊んだ~!」

梨子「そうね、結構楽しかったかも」

ダイヤ「学校もそろそろ六時間目が終わる時間ですし、長いこと遊んでしまいましたね……増援技能士の筆記試験を控えているというのに……」

千歌「まあ偶には良いじゃない!だって今日はこーんなに楽しかったんだし!私、ダイヤちゃんと梨子ちゃんと、もっともっと仲良くなれたなって思った!」

梨子「……そうね、私も楽しかったし、二人と仲良くなれた気がしたわ」

梨子「……こう思い返してみると、転校してきてから皆で遊ぶ、なんてしてなかったし」

321: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/06(火) 22:41:19.71 ID:J3BL985l
ダイヤ「それもそうですわね、私も学校以外で千歌さんと遊ぶのは初めてですわね」

梨子「え?そうだったの?」

千歌「そっか!私確かにダイヤちゃんと学校以外で会わないかも」

ダイヤ「休日はお互い習い事や家の手伝いがありますからね」

梨子「そういえば千歌ちゃんのお家って旅館だったっけ」

千歌「そうなの!毎日のようにこき使われて大変だよ~」

梨子「私で良ければいつでも手伝いに行くから呼んで?」

千歌「梨子ちゃん!ありがとう~!」ギューッ

ダイヤ「……さて、そろそろ帰りましょうか」

千歌「あー、ごめん。私学校に忘れ物してきちゃった。学校戻るから先帰ってて!」

梨子「わかった、また明日ね千歌ちゃん」

ダイヤ「暗くなる前に帰るんですよ」

千歌「はぁーい!じゃあね二人とも~!」フリフリ

千歌「…………」

千歌「………………」タンタンッ

千歌「…………」prrr… prrr……

千歌「……あ、もしもしルビィちゃん……?今から学校の近くでで会えたりしないかな?」

322: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/06(火) 23:44:17.19 ID:J3BL985l
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浦の星農業高校 空き教室

ルビィ「すみません、お待たせしましたっ……」タッ

千歌「ううん、私こそ急に呼び出しちゃってごめんね……っあ!?ダイヤちゃんには何も言ってないよね!?」

ルビィ「はい、お姉ちゃんには花丸ちゃんと勉強して帰るって言ってあります」

千歌「そっかぁ……良かった~っ……」

千歌「……それでね、ちょっとルビィちゃんに聞きたいことがあって……」

ルビィ「聞きたいこと……ですか……?」キョトン

千歌「……ルビィちゃん、スクールアイドル興味ある?」

ルビィ「……!」

ルビィ「……ぇっ、……ぁ、る、ルビィは……その……」

千歌「私、ダイヤちゃんと賭けをすることになったの」

323: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/06(火) 23:53:49.72 ID:J3BL985l
千歌「私がダイヤちゃんと賭けに勝ったら、ルビィちゃんはスクールアイドル出来るんだよ」

千歌「私は絶対負けない。約束する」

千歌「だからその前に、ルビィちゃんの、本音を聞きたいなと思って」

千歌「……ルビィちゃんは、スクールアイドルやりたい?」

ルビィ「………………ルビィは……」

ルビィ「……ルビィ、アイドルやりたいです……っ、千歌先輩と、お姉ちゃんと一緒に……!」

千歌「……うん」クスッ

千歌「わかった。それだけ聞きたかったの。明日の放課後、緑化教室でする予定だから、ルビィちゃんも応援に来て欲しいな」

ルビィ「……はいっ」

千歌「あとこれ!」

千歌「ルビィちゃんとお話出来て嬉しかったから、今日のお礼!みかんどら焼き!」

ルビィ「……あ、ありがとうございますっ……」

千歌「うんっ、じゃあ帰ろっか!」

ルビィ「はいっ……!」

325: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/07(水) 00:46:39.32 ID:U8Q7XzhF
 
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翌日 放課後
浦の星農業高校 緑化棟 緑化教室

千歌「………………」

ダイヤ「………………」

果南「い、一体何で呼び出されたの……?」

曜「何?どうしたの?喧嘩しちゃったの?」

梨子「……実は、ダイヤちゃんとルビィちゃんを加入させるために賭けをすることになって……」

果南「賭け!?千歌がダイヤとの賭けを受けたの!?」

梨子「はい……私に任せてって……」

果南「千歌……」

果南「(千歌にとって、スクールアイドルはそんなに本気でやらないといけないものなの……?)」

果南「(そんなに、この学校を楽しくしたいの?)」

果南「(……どうせあと三年で廃校になっちゃうこの学校を、思い出として、残そうとしてるの?)」

329: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/07(水) 22:10:35.25 ID:U8Q7XzhF
ダイヤ「勝負は一回のみです。分かりましたね」

千歌「……分かった。何をするの?」

ダイヤ「ダウトです」

千歌「ダウト……」グッ

曜「千歌ちゃん、大丈夫かな……」

果南「どうだろう……千歌は嘘が下手だからな……」

梨子「千歌ちゃん……」

千歌「……わかった。それでいいよ」

ダイヤ「それでは始めましょう」

ダイヤ「…………善子さん、カードの配布をお願いします」

梨子「えっ?よっちゃん……?」キョロキョロ

善子「げっ……」

善子「……どうして分かったのよ」

ダイヤ「気になっていた様子だったので。もしかしてと思いまして」

善子「……あー……あー、まあ?気になっていたけど……はぁ……仕方ないわね……」

善子「……私のカード、大事に使いなさいよ」スッ…

ダイヤ「ありがとうございますわ」

330: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/07(水) 23:51:56.09 ID:U8Q7XzhF
善子「……ったく、……千歌、本気なの……?」コソッ

千歌「…………本気だよ」

善子「…………そう……」

千歌「……私ね、本気で浦の星を楽しい学校にしたいって思ってる」

千歌「楽しいっていうのは私だけじゃなくて、ダイヤちゃんに善子ちゃん。果南ちゃんによーちゃん、ルビィちゃんに花丸ちゃん、鞠莉先輩……」

千歌「それから……梨子ちゃん」

千歌「私は、この学校で良かったって思って欲しい。この学校が無くならなきゃいいのにって、皆に思ってもらいたい」

千歌「……その為にも、まずは第一歩、みたいな」ニッ

善子「!」

善子「あんた、本当、どこまでもバカね」

千歌「っえへへ、ありがとう」

善子「ふんっ……」フイ

善子「…………まあ、精々頑張りなさいよね。私も……期待してるんだから」ポソ

善子「──配り終わりました。始めてください」

333: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/08(木) 18:24:51.85 ID:5Uwsgsyi
--

緑化教室前

ルビィ「………………」

花丸「ルビィちゃん、入らないの?」

ルビィ「……ルビィは……いい……」ギュッ

花丸「でも塀の後ろに隠れてたら千歌先輩とダイヤ先輩の賭けが見られないずら」

ルビィ「……そうだけど……ルビィが行くと、千歌先輩も、お姉ちゃんも……集中出来なくなっちゃうと思うから……」

「──わっ!」

るびまる「「わっ!?!?」」ビクッ

鞠莉「おおおっと、こらこら。しーっ……ね?」

花丸「鞠莉先輩が脅かすからですっ……」

334: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/08(木) 18:25:05.32 ID:5Uwsgsyi
鞠莉「ごめんごめん。そんなところで何してるんだろーって思ってね」

花丸「実は、千歌先輩とダイヤ先輩が賭けをしてるんです」

鞠莉「え?何で????」

花丸「とにかくっ、鞠莉先輩も隠れてください」グイッ

鞠莉「お、おおっと……意外と強引ね……それで?」

ルビィ「千歌先輩が、ルビィの為に賭けに勝ってくるから応援して欲しいって……」

鞠莉「な、何でルビィの為にダイヤと千歌っちが賭けしてるの……??」

花丸「色々ありまして」

鞠莉「うん、そうね。私の知らないところで私の知らない何かが繰り広げられていることは分かるわ」

335: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/08(木) 18:25:18.20 ID:5Uwsgsyi
ルビィ「……二人とも、ルビィの為って……思ってるから……」

鞠莉「だから、応援しに行かないの?」

ルビィ「…………」

鞠莉「私はね、別にそれでも良いんじゃないのかなって思うわよ」

るびまる「「……え?」」

鞠莉「ルビィはルビィなりに色々気を遣って、そうやって隠れているんでしょう?でも、隠れてるだけでしっかりこの場に来てるじゃない」

鞠莉「応援してないように見えるかもしれないけど、この場に居る誰よりも一番ルビィが応援していると思う。だから別に後ろめたい気持ちになる必要は無いのよ」

ルビィ「……鞠莉先輩……」

鞠莉「信じましょう、千歌っちを」

ルビィ「…………はい」コクリ

336: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/08(木) 18:25:31.23 ID:5Uwsgsyi
--

ダイヤ「7」スッ…

千歌「……っ……」ペロッ

千歌「……8、」スッ…

ようかなよし「「!」」ハッ

善子「(……このバカ……)」

果南「(……自分じゃ気が付いてないかもしれないけど……千歌、嘘つく時に唇舐める癖あるんだよ……)」

曜「(ああああああっ……どうなっちゃうのぉ……)」オロオロ

ダイヤ「……千歌さん、喉が渇いてますの?」

千歌「……え?な、なんで?」

ダイヤ「唇が乾燥していたようでしたから。……お水でも飲んで来ます?」

千歌「あ、あはは~……そうしようかな?ちょっと冷水機でお水飲んで──」ガタッ

ダイヤ「ダウト」

ようかなよしりこ「「「「!!!」」」」

337: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/08(木) 18:25:44.72 ID:5Uwsgsyi
ダイヤ「千歌さん、先程のカードは8ではありませんでしたね」

千歌「……どうして?」

ダイヤ「唇を舐める癖……千歌さんが嘘をつく時、毎回そうしているのです」

千歌「……なるほどね。それじゃあ、カードを確認して」

善子「ちょっ!?あんた少しは嘘ついたことくらい隠しなさいよ!?」ギョッ

ダイヤ「……ええ、そうさせて貰いますわ」スッ…

ダイヤ「──っえ……?」

善子「う、嘘でしょ……」

果南「こんなことってある……?」



曜「ど、どうして……どうして本当に8のカードなの!?」

338: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/08(木) 18:25:56.29 ID:5Uwsgsyi
千歌「昨日からずっと考えてたんだ。どんなゲー厶が来てもいいように、戦い方は考えようって」

千歌「まず私の弱点を考えてみたの。私は嘘が下手。賭け事に関して、嘘が下手だと絶対に勝てない」

千歌「だから昨日は、”嘘をつく”練習をしたの」



果南『千歌、今嘘ついたでしょ』

千歌『え”っ……何で分かったのー?』

果南『千歌、嘘つく時絶対唇舐めるからね』



千歌「昔果南ちゃんが私に千歌は嘘が下手だねって言った時のこと思い出してね」

千歌「去年一年間一緒に過ごしてきたダイヤちゃんでも分かるんじゃないかと思って仕掛けてみたんだ」

339: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/08(木) 18:26:06.58 ID:5Uwsgsyi
梨子「………………」ゴクリ…

梨子「(千歌ちゃん……本気なんだ……)」

ダイヤ「……っ……分かりました……ここに置かれたカードは私が貰います」

ダイヤ「ですが勝負は手札のカードが無くなるまで。まだ負けではないですわ」

果南「(ダイヤの手元には積まれたカードが沢山ある……奇跡が起きない限り、勝ち目は無さそうだけど……)」チラッ…

千歌「………………」

果南「(今まで素直で純粋な千歌の嘘を見抜けなかったことなんて無かった。……なのに今は──)」

果南「(千歌が何を考えてるのか分からない……千歌が、怖い……)」

340: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/08(木) 22:22:09.03 ID:5Uwsgsyi
曜「(……千歌ちゃん……カッコイイ!)」キラキラ

ダイヤ「次こそ……っ……」

ダイヤ「9……」

千歌「……んーっと、……あった。10」パサッ

ダイヤ「……J」パサッ

千歌「……Q」

ダイヤ「K……!」

千歌「──ダウト」

千歌「ダイヤちゃん、今の嘘だよね」

梨子「えっ……!?」

善子「は、はぁ!?何してんのよこいつ!?何処に嘘ついた要素があったのよ!」

343: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/10(土) 00:01:13.23 ID:cJE0/zkc
果南「!」ハッ

果南「(目だ。千歌、ずっとダイヤの目を見てた。……嘘をついてたら、直ぐに揺らぐのが分かるんだ)」

ダイヤ「…………っ……」

千歌「ダイヤちゃん、カード、確認してもいい?」

ダイヤ「……っ、……」グッ

曜「ダイヤ先輩……?」

ダイヤ「……黒澤家に相応しいのは、常に勝利のみ……」

ダイヤ「…………ルビィ、すみません……私は黒澤家の長女失格です……」パラッ…

梨子「カードは、……A……」

ダイヤ「……千歌さん。貴女の勝ちですわ」

千歌「……で、でもまだダイヤちゃんの手札は残って……」

ダイヤ「……いいんです。時には相手の戦意に敬意を示すことも大切ですから」

ダイヤ「……約束通り、ルビィをスクールアイドルにしてあげてください」

ダイヤ「ルビィを、よろしくお願いします」

344: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/10(土) 00:22:43.52 ID:cJE0/zkc
曜「!やったぁ!これでルビィちゃんもスクールアイドルになるんだね!」パアァッ

千歌「……ダイヤちゃんもだよ」

ダイヤ「……えっ……?」

千歌「約束通り、ダイヤちゃんもスクールアイドルになるんだよ!今から誤魔化したって無駄だぞ~!」

ダイヤ「えっ!?わ、私はそもそもスクールアイドルなんて──」

千歌「捕まえた~っ!」ギューッ

ダイヤ「ちょ、ちょっと!離しなさいな!」

千歌「やだ!ぜ~ったい離さないぞ~!」ギュムッ

ダイヤ「千歌さん!ちょっともう!」

千歌「(……私ね、ダイヤちゃんとルビィちゃんがスクールアイドル一緒にやってくれることもすっごく嬉しいけど……)」

千歌「(何より……ダイヤちゃんを騙して、引っ掛けた私の戦意に敬意を示すって言って、降参してくれたダイヤちゃんの優しさに触れられたことが一番嬉しいんだ)」

千歌「(賭け事じゃ私は勝てない。ダイヤちゃんは、……きっと私に態と負けてくれたのかなって、そう思うんだ)」

347: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/10(土) 14:03:02.23 ID:cJE0/zkc
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ワイワイ

鞠莉「あら、千歌っちが勝ったみたいね」

花丸「良かったなぁ、ルビィちゃん!千歌先輩が勝ったって!」

ルビィ「……っえ?」

ルビィ「(お、お姉ちゃんが……負けたの……?)」

ルビィ「…………」ソローリ


千歌「ダイヤちゃーん!」ギューッ!

ダイヤ「ちょっと!もういい加減離れなさいな!果南先輩も何か言ってやってください!」

果南「まあ千歌楽しそうだし良いんじゃない?」


ルビィ「……ほんとに……お姉ちゃんが負けちゃったんだ……」ポソッ

348: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/10(土) 14:03:17.87 ID:cJE0/zkc
善子「ちょっと。さっきからそんなところで何してるの?」

ルビィ「わ、あぁっ!?」ビクッ

花丸「あ!善子先輩っ、何でオラ達が居ることに気が付いたんですか?」

善子「私からは丸見えなのよね……鞠莉先輩の輪っか」🫵

鞠莉「わっか? ……ああ、髪の毛?」

善子「千歌とダイヤが賭けをしてる間もぴょこぴょこ動いてるから何かと思いましたよ」

鞠莉「Sorry。私のせいでバレちゃったみたい」テヘペロ

花丸「Sorry、じゃないんですよ……」

ダイヤ「る、ルビィ……どうしてここに……」

ルビィ「……ごめんなさい……気になって、見に来ちゃってた……」

ダイヤ「……謝るのは私の方ですわ、……ごめんなさい。ルビィ……」

ルビィ「ど、どうしてお姉ちゃんが謝るの……?」

ダイヤ「黒澤家の長女として、……情けないことをしてしまいました……」

ダイヤ「私も、……千歌さんが本気でやろうとしているところを見て、段々、私もやってみたいという気持ちが出てきて…」

ダイヤ「……すみません、ルビィ……」

ルビィ「お姉ちゃん……」

349: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/10(土) 14:03:30.48 ID:cJE0/zkc
鞠莉「……ダイヤは勝負に負けたことを謝ってるんじゃなくて、ルビィの姉としてかっこ悪いことをしてしまったことに謝っているのよ」

果南「ルビィちゃん、どうする?ダイヤにお仕置しちゃう?」

ルビィ「……お姉ちゃん……あのね、ルビィ……」

ルビィ「ルビィ、お姉ちゃんとアイドル出来たらいいなって……ずっと思ってたの……」

ルビィ「お姉ちゃんとやりたくて、曜ちゃんにも、ルビィが入るの待ってって……」グスッ

ルビィ「ルビィ、お姉ちゃんとやりたい……っ……お姉ちゃんと、千歌先輩と、皆でやりたい……」ポロッ…

ルビィ「千歌先輩が勝ったって聞いた時……少しだけほっとしちゃったの。これでお姉ちゃんとスクールアイドル出来るんだって……」

ルビィ「だから……ルビィもごめんなさい……お姉ちゃんを応援しないといけなかったのに……」ポロポロ…

千歌「……ルビィちゃん……」

350: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/10(土) 14:03:50.31 ID:cJE0/zkc
ダイヤ「……ルビィ」ギュッ

ルビィ「ごめんなさい……ごめんなさいお姉ちゃん……」ギュウゥ……

ダイヤ「……一緒にスクールアイドル、頑張りましょうね」

ルビィ「……っうん……!」

鞠莉「……一件落着ってことね。良かったじゃない」

千歌「そうですね……これで五人!私と果南ちゃんとよーちゃんと、ルビィちゃんとダイヤちゃん!五人になったよ~!」ワーイワーイ!

351: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/10(土) 14:04:01.56 ID:cJE0/zkc
善子「……スクールアイドル、ね……」ポソッ

花丸「善子先輩、興味あるんですか……?」

善子「ぅぐ……き、聞こえてたの?」

花丸「……はい。オラも、……少しだけ」

善子「……ああ、そういえば花丸も誘われてたって言ってたわね」

善子「……やるの?スクールアイドル」

花丸「まだ考えてる途中ですけど……ルビィちゃんも居るならやってみようかなって、……でもオラ、運動苦手で……」

善子「やってみたらいいじゃない。貴女、きっとアイドルとか似合うんじゃない」クスッ

花丸「!」カアァッ

花丸「……は、はい……まだ考えてる途中なので……」ポフッ

善子「な、何で顔隠すのよ?」

花丸「内緒です」

352: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/10(土) 14:04:14.76 ID:cJE0/zkc
果南「あれ、梨子ちゃんはまだメンバーじゃないの?」

梨子「はい、一応、考えてるところで……」

曜「梨子先輩も一緒にやりましょ~よ~っ!!」グイグイ

梨子「うーん……どうしようかな……」

果南「やりたいかやりたくないかで言ったらどっちなの?」

梨子「それは、まあ……」

梨子「…………やりたい、ですけど……」

果南「ふ、ふーん……」ニヘラ

ようりこ「「(嬉しそう……)」」

353: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/10(土) 14:04:45.79 ID:cJE0/zkc
千歌「あ!鞠莉先輩、あの──」

鞠莉「あ、ごめん。私、今から同好会行かないといけないから」

鞠莉「また明日」フリフリ

千歌「ぁ……、はい……」ショモ…

鞠莉「(私の知らないところで色々な事が起きてるわね~)」スタスタ…


鞠莉「(……というか、スクールアイドルって……何の話かしら……)」

355: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/10(土) 16:04:01.51 ID:cJE0/zkc
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翌日 緑化棟 実技試験練習場
授業:造園技術

白津「今日から造園技能検定の、実技試験の練習を行います」

 毎年浦の星農業高校緑化科の二年生が受けることになっている造園技能士試験3級。

 この試験は学科試験と実技試験に分けられ、両方の試験に合格する必要があります。学科試験は、正誤法による問題と4肢択一式問題があわせて出題されています。
 実技試験は実際に課題を作成する作業試験と樹木の枝を見て樹木名を判定する要素試験に分けられ、共に合格しなければなりません。
 学科と実技の両方の試験に合格すると、「技能士」の称号が与えられます。1級は厚生労働大臣の、2・3級は都道府県知事名の合格証書が交付されます。

 合格率は70%程度。 技能検定試験の中でも難易度は低めで、造園を学ぶ学生ではほとんどが合格しているとの情報もあります。 とはいえ、学科試験と実技試験の両方に合格する必要がありますから、暗記すれば合格できる試験ではないということも心得ておく必要があります。

 実技試験は図面通りに竹垣製作、縁石・敷石敷設、植栽、整地・清掃を行います。



https://imgur.com/a/1W6ZKwR

356: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/10(土) 19:03:21.94 ID:cJE0/zkc
白津「それでは今から一緒にやりながら説明していくので、まずはこの剣スコップを使って土を掘り返して、土を柔らかくしていきましょう」

千歌「えっ……全部掘り返すんですか?」

白津「はい。土を柔らかくすると作業がしやすくなるんでね。早速始めてください」

梨子「……ふ、ふんっ……!」ガツンッッ

梨子「い、いったぃ……土相当硬いわよこれ……」

ダイヤ「わ、私も負けませんわ!」ガツンッッ

ダイヤ「痛い!!土硬すぎですの!!」

白津「一年間手を付けてない土ですからね。硬くもなります」

357: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/10(土) 19:03:35.67 ID:cJE0/zkc
千歌「ふんっ!……ふんっ!」ガッ ガッ!

梨子「千歌ちゃんすごい……」

千歌「こういうのは腰を落として、剣スコを地面に刺す感じでやったら上手くいくよ~!」

千歌「あとはね、こう斜めに剣スコを立てて……こう!」ガッ!

千歌「ここを思いっ切り踏み込むと地面に刺さるから、剣スコをこうやって倒すと……」ボコッ

千歌「こうやって土が掘れるの!簡単だからやってみて!」

梨子「わ、分かった……えいっ!」ガッ!

梨子「ふ、ふんっ……!」ボコッ

梨子「で、出来た……、出来たよ千歌ちゃん!」パアァッ

千歌「うん!梨子ちゃん上手上手!」

ダイヤ「ふんっ……!ふんっ……!」ガッ ガッ!

千歌「あ!ダイヤちゃんも上手になった!すごいね~!」

358: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/10(土) 19:04:04.97 ID:cJE0/zkc
数十分後

白津「──よし、大体の人が土を掘り返せたようなのでこのこうがい板を使って整地していきましょう」

千歌「うぅ……私こういう作業苦手……」サッサッ…

梨子「確かに難しいよね……」サッサッ…

千歌「難しいんじゃなくて面倒臭いんだよ~」

千歌「……って、そんなこと言って、梨子ちゃん上手じゃん!」サッサッ…

ダイヤ「…………」サッ…サッ…

千歌「あー!!梨子ちゃん見て!ダイヤちゃん、ジョレン使ってる!ズルい!」

ダイヤ「ズルではありませんわ。借りたんですの」

千歌「ひとりだけ!?ズルすぎるよ!」ムキーッ

山崎「梨子も終わらなさそうやな。はい」スッ…

梨子「あ、ありがとうございます」

千歌「梨子ちゃんまで!?私は!?」

山崎「千歌はこういうの一瞬で終わるやろ」

千歌「終わるけど!終わるけど~っ!!!」

365: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/12(月) 18:17:07.95 ID:wRNgtEjT
白津「よし、全員居るな」

白津「最初、大体3センチくらいの厚さで柱の天端を切り揃えます」

梨子「な、何で切り揃えるの?」

ダイヤ「柱が真っ直ぐ切れているのかも審査の基準となるんですわ。手を付けていない柱は真っ直ぐ切られているのが当たり前。切らないとズルになってしまうでしょう?」

梨子「な、なるほどね……」ギコギコ…

千歌「あー!みて!斜めになっちゃった!!」

梨子「ど、どんまい……」

366: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/12(月) 18:17:31.57 ID:wRNgtEjT
白津「次にこの柱を図面に書いてある900ミリ……90センチのところに印を付けますが、これよりも少し長めに切ります。巻尺は道具箱に入ったものを腰につけていると思うので、それを使いましょう」

白津「道具箱の中に赤鉛筆も入っていたと思うのでそれで印をつけてください」

梨子「80……90……よし、ここね」スッスッ…

千歌「梨子ちゃんえんぴつ貸して~」

梨子「ええ?千歌ちゃんの道具箱にも赤鉛筆入ってたでしょ?」

千歌「芯が潰れてたんだよ~…これじゃ何にも書けないもん……」

梨子「あ、ほんとだ……これは酷いわね……ダイヤちゃんも見て、これ酷──」チラッ

サッ…サッ…

ダイヤ「………………」サッ…サッ…

千歌「剪定バサミでえんぴつ削ってる……」

梨子「これがもし本番の試験だったら時間切れになるやつね……」

367: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/12(月) 18:17:58.71 ID:wRNgtEjT
千歌「……はい、梨子ちゃんありがとう。私達は印もつけたし早く切っちゃお」

梨子「そうね、他の人はもう切り終わってるし、急ぎましょ」

千歌「うおおおおおっ!!私が一番になるぞ~!!!」ベコンベコン

ダイヤ「情けないですわね!ノコが踊ってますの!」ベコンベコン

千歌「えっちょっとなにこれ」ベコンベコン

ダイヤ「ああもう上手く切れないですの!」ベコンベコン

梨子「ふ、二人とも一旦落ち着こっか……」ギコギコ…

白津「おー、切り終わったかー」

千歌「や、やば!急ご!」ギコギコ! ギコギコ!

368: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/12(月) 18:18:10.21 ID:wRNgtEjT
白津「次は自分のところに戻って図面通りに柱を設置していきます」

白津「図面を見ながら長さを測定したところにピンポールを二本立てて、ダブルスコップで土を掘ります」ザッカ ザッカ

白津「大体掘ったらですね、柱を入れて、90センチピッタリ合うように土の量を調節しながら柱を設置してください」

白津「この時、先程立てたピンポールを抜いて掘った穴へ橋になるように置くと線に合っているのか確認することが出来ます」

千歌「よくわかんないね~」

ダイヤ「やってみるしかなさそうですわね」

369: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/12(月) 22:35:30.58 ID:wRNgtEjT
梨子「……あれ……深く掘り過ぎちゃったみたい……」

山崎「土を足せばいいんだよ」サッサッ…

山崎「それからつき棒で突いたら良い感じに高さが出るから、そんな感じで調節していったらいい」

梨子「ありがとうございますっ、……なるほど、つき棒で……」

ダイヤ「………………」トントンッ トントンッ…

ダイヤ「どうです!?高さはバッチリですの!」

山崎「ああ。じゃあその調子で真っ直ぐ据えてみろ」

ダイヤ「勿論ですわ!私にかかればこのくらい余裕ですの!」トントン! トントン!

梨子「ダイヤちゃん凄いやる気ですね……」

山崎「ダイヤは割とこういう実技の授業好きだからな。座学もしっかり話を聞いてたりはするけど、何だかんだイキイキしてるのは実習の時だし」

千歌「山崎せんせー!梨子ちゃーん!ダイヤちゃーん!見てー!」

371: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/13(火) 22:28:32.71 ID:QOdeheeK
千歌「ピサの斜塔」バーンッッ
With 斜めに据えられた柱

山崎「落ちたな」
ダイヤ「技能試験不合格ですわね」
梨子「先生(審査員)の前でそれは……」

千歌「先生これ据えてる途中から動かなくなっちゃったんですけどどうしたらいいんです?」

山崎「木槌で叩いたらええやん」コンコンッ…

379: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/14(水) 18:12:37.62 ID:ssXFs28+
千歌「おおおすごい!さっきまでビクともしなかった柱が動いた!!」

山崎「本当は据え付ける時に調節しないといけないんだけどな。ほら、水平器で測ってみろ」

千歌「うおおおおおすげー!!!水平だ!!!梨子ちゃん梨子ちゃん見て~!!」

ダイヤ「うるさいですわよ」

梨子「う、うん、……すごいねー」

山崎「梨子、ウザイ時はウザイって言っていいんだぞ」

ダイヤ「大体貴女、天端切り揃えた時物凄く斜めってたではないですか」

千歌「ありゃほんとだ……めっちゃずれてる……」

梨子「千歌ちゃんはまず真っ直ぐ切れるようにしないとダメね……」

千歌「し、仕方ないじゃん?すっごい急いでたんだし!」

白津「二本立て終わったか~」

ダイヤ「先生が異次元レベルで進めていきますわね……」

梨子「着いて行くのに精一杯で作業に集中出来ないわ……」

ダイヤ「とにかく急ぎましょう」

380: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/14(水) 18:13:03.27 ID:ssXFs28+
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一時間後

キーンコーンカーンコーン

千歌「ああ!やばいチャイム鳴っちゃったよ!」

梨子「次国語でしょ?間に合うかしら……」

白津「道具箱と使った工具はシャッターの部屋に片付けて行ってください。それでは授業終わりまーす」

ダイヤ「あと10分で着替えて教室に戻らないといけないのに片付けまで……」

梨子「これ間に合わないわね……」

千歌「ふたりともダブルスコップと剣スコ貸して。私が片付けてくる」

ダイヤ「ありがとうございます。なら千歌さんの道具箱は私が持っていきますわ」

千歌「あ、つき棒も持てそう」プルプル…

ダイヤ「流石に死にますわよ。私と梨子さんで持っていくので早く行ってくださいな」

千歌「はぁい……お願いしま~す」プルプル…

梨子「…………あれ本当に大丈夫なの……?」

ダイヤ「…………さぁ?」

ガッシャーンッッ

山崎「おい、何の音だー」

千歌「ぎゃー!!!全部落とした!!!全部落としたー!!!!」

ダイりこ「「…………はぁ……」」

381: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/14(水) 18:13:23.20 ID:ssXFs28+
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緑化科 教室前

キーンコーンカーンコーン…

国語教師「…………誰も、居ない……」

国語教師「というか、鍵も閉まってる……」

国語教師「前の時間が実習なのかな……帰ってきてないみたい……」

国語教師「…………」キョロキョロ

国語教師「ちょっとだけ、ちょっとだけ……」タプタプッ

国語教師「………今流行りのスクールアイドル………」

国語教師「私も、……もう少し遅く生まれてたら出来たのかな……アイドル……」

千歌「何見てるんですか?」ヒョコ

国語教師「ああ、高海さんこんにちは。これは今流行りのスクールアイド──って高海さん!?!?」ビクッ

382: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/14(水) 18:13:40.90 ID:ssXFs28+
千歌「小泉先生、何か見てたから気になっちゃって!」ニシシ

小泉「そ、そう……あ、前の時間、実習だったの?」

千歌「はい、片付けもしてないのにチャイム鳴っちゃって……皆まだ着替えると思います」

小泉「そうだったんだ、お疲れ様だね。……それにしても……高海さん速いね……」

千歌「私は今日お昼が食堂なので……見てください!手作りチキン買ったんです!」バーンッ

小泉「わ、良い匂い……私もお腹空いてきちゃうなぁ……」

千歌「あの!さっき先生が見てたのって、スクールアイドルの動画ですよね!」

千歌「先生、スクールアイドル好きなんですか!?」キラキラ

小泉「す、好きっていうか……まあ……好き、なのかなぁ……」ムムム…

383: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/14(水) 18:13:51.87 ID:ssXFs28+
千歌「私、文化祭でスクールアイドルする予定なんです!」

小泉「高海さんが……?」

千歌「はい!もし成功したら先生も感想聞かせてくださいね!」

小泉「高海さん……」

千歌「……あ、ごめんなさい。教室の鍵取ってくるの忘れちゃいました……ちょっと職員室行ってきます!」タッ

小泉「ああ、廊下は走っちゃダメだよ~っ!」

小泉「…………高海さんが、スクールアイドル、かぁ……」

384: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/14(水) 18:14:16.96 ID:ssXFs28+
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昼休み
緑化科 教室前


善子「…………」チラッ…

善子「………………」キョロキョロ

梨子「何してるの?」

善子「ぎゃっ!?」ビクッ

善子「な、なんだ……梨子か……」

梨子「お、驚かせちゃってごめんね?……一体何してたの?」

善子「ねぇ、千歌居ない?」

梨子「千歌ちゃん?千歌ちゃんならチキン三つ目とアイス買いに食堂に行ったよ」

善子「どんだけチキン食べてんのよ……」

千歌「あー!善子ちゃんじゃん!どうしたの?」

善子「…………ふん……」スタスタ

385: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/14(水) 18:14:33.79 ID:ssXFs28+
善子「千歌」スッ…

千歌「……なにこれ?黒い羽根?」

千歌「あー!分かった!これカラスの羽でしょ?拾ったらダメだよー、バイ菌だらけだから──」

善子「カラスの羽じゃなくて買ったのよ!!!!!!」

千歌「買ったの?羽を?なんで?」

善子「うっさい!!」

善子「これは契約よ。堕天使ヨハネとしての私を、スクールアイドルへ加入──」

千歌「よはね?あー!あったね!そんな設定!」

善子「設定言うな!」

386: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/14(水) 18:14:55.67 ID:ssXFs28+
善子「……と、とにかく……後輩も出来て、先輩とも知り合って……私の中の堕天使を制御しないといけない場面ばかりだったの……」

善子「だからこそ……こうして堕天使ヨハネとしての私を、解放したい……っ!堕天使ヨハネとして、千歌と一緒にステージに立ちたいの!」

千歌「ええっと……つまり……それは……」ムム…

千歌「一緒にスクールアイドルやってくれるってこと!?」ハッ

善子「そう言ってるでしょ!察し悪いわね!!」

千歌「そうは言ってなかったよね」

善子「ほんとウザイわねあんた」

387: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/14(水) 18:15:11.80 ID:ssXFs28+
ダイヤ「こんな廊下のど真ん中で何をしているのかと思えば……」

千歌「ダイヤちゃんダイヤちゃん!善子ちゃんスクールアイドルやってくれるって!」

ダイヤ「えっ、本当ですの?」

善子「………………」



花丸「……オラ一人で入ります~って言うのは中々……千歌先輩もオラを誘ったこと忘れちゃってるんじゃないかなって……」

善子「……じゃあ、私が入ったら入って来れる?」

花丸「えっ?」

善子「明日の昼休み、私がチャンスを作るから、花丸はそれに乗っかってきなさいよ」



善子「……まあ、色々考えてね……」

388: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/14(水) 18:15:26.67 ID:ssXFs28+
「ほら頑張って花丸ちゃん!」

「う、うんっ……頑張ってマルちゃん!」

「お、オラには無理ずらぁっ……」

千歌「この声……もしかして!」パアァッ

花丸「わわっ、曜ちゃん押さないでぇ……」ピェェ…

梨子「あら、花丸ちゃん!」

花丸「こ、こんにちは……」ペコ

曜「千歌ちゃん!捕獲して来ました!」ビシッ

千歌「よーちゃん!よくやった!」ビシッ

ダイヤ「なんとまぁこんな強引に……」呆

ルビィ「ご、ごめんなさい……ルビィもどうしてもマルちゃんにスクールアイドルして欲しくて……」

389: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/14(水) 18:15:40.95 ID:ssXFs28+
花丸「お、オラは別に……アイドルなんて向いてなくって……」

善子「やってみたらいいじゃない」

花丸「……えっ……?」

千歌「そうだよ!善子ちゃんの言う通り!」

千歌「一番大切なのは自分に向いてるかとか、出来るかどうかじゃない」

千歌「やりたいかどうかなんだよ!」

梨子「千歌ちゃん……」

千歌「うおおおお今良いこと言った!良いこと言ったよね!」

曜「よっ!出ました名言!!」

善子「台無しね」

390: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/14(水) 18:16:14.45 ID:ssXFs28+
花丸「……でも、オラは……」

善子「……良いんじゃない。やってみて、やっぱり自分には向いてないって思ったらまた考える。やってないことを向いてないって諦めるよりはずっと良いと思うけど?」

花丸「……善子先輩……」

善子「それに花丸、こんなに可愛いんだしね」フッ…

花丸「な、なあぁっ!?」カアァッ

花丸「こ、これが沼津に住んでる人の輝きっ……眩しい……オラには眩しいよぉ……」顔隠し

善子「い、意味分かんないんだけど……」

千歌「それでそれでっ、花丸ちゃん!スクールアイドルやってくれるの!?」

花丸「………………」ゴクリ…

花丸「オラにも……出来ますか……?」

千歌「私だって自分はアイドルなんか向いてないって思うよ。でも、やっぱり大切なのはやってみたいって気持ち!」

千歌「花丸ちゃんが少しでもやってみたいって思うなら、私は心から歓迎するよ!」スッ…

花丸「…………やってみたいって気持ち……」チラッ

善子「…………ん、」ニコ

花丸「……それなら……よろしくお願いします」ギュッ

千歌「えへへ、ようこそ花丸ちゃん!」ギュッ

393: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/14(水) 23:34:28.06 ID:ssXFs28+
曜「…………梨子せんぱぁぁい……」ウルウル…

ルビィ「……まだ入る気にならないですか……?」ウルウル

梨子「ぅ”っ……」💘

梨子「……ち、違うのよ……?別に入る気にならないというか……そういうのじゃなくって……」

梨子「……まだ、勇気が出ないの。……やっぱり私も何処かスクールアイドル…アイドルに対して引け目を感じてる」

梨子「……私なんかがアイドルしていいのかなって、ずっと考えてたら……気が付いたらもうあと私と鞠莉先輩だけになってて……」

梨子「中々、言い出すタイミングも無くて……」

394: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/14(水) 23:34:41.41 ID:ssXFs28+
ダイヤ「……梨子さんはやりたいんですの?」

梨子「それは……勿論……」

ダイヤ「だったらそれでいいではないですか。考えるのは後にして、今は前進あるのみ」

ダイヤ「そう思いませんか?」フッ…

梨子「ダイヤちゃん……」

梨子「……後で千歌ちゃんに話してみるね」

梨子「ありがとう、ダイヤちゃん。曜ちゃんもルビィちゃんもありがとう」

曜「いえ!早く一緒にスクールアイドルしたいので!」ニパ

キーンコーンカーンコーン

ルビィ「あぁっ!掃除始まっちゃう!曜ちゃんマルちゃん、早く戻ろうっ……!」アワアワ

花丸「も、もうそんな時間ずら!?」アワアワ

曜「急げ急げ~!」タッ

ルビィ「怒られちゃうよぉ~っ」タッ

花丸「先輩方、失礼します」ペコ

花丸「待ってよルビィちゃん曜ちゃ~ん!」タッ

399: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/15(木) 18:49:09.45 ID:dXkFoPyX
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五、六時間目

緑化棟 製図教室
授業:造園計画

千歌「………………」ムムム…

梨子「あ、あの……千歌ちゃん……」

千歌「ちょっと待って……あと少し……あと少しだから……」スススッ…

千歌「こうだ!絶対真っ直ぐ線引けたでしょこれ!」パッ

ダイヤ「有り得ないくらい斜めですわよ」

千歌「ちくしょおおおおおおっ!!!!」ダンッ

白津「こら高海。製図台叩きませんよ」

千歌「は、はぁい……」

白津「ドラフターの製図台は30万円以上しますからね。壊さないでください」

千歌「わ、わかってまぁす……」

千歌「……もう……本当ムカつくなぁこれ……」ムムム…

 緑化科、二年生は資格取得が多く、七月と八月には国家資格である造園技能検定、九月頃にはトレース技能検定を取得する予定となっている。

 造園計画はそのふたつの中のトレース技能検定の取得を目指して、授業の中で製図台を使用し、トレース技能検定3級の課題を練習している。

梨子「ち、千歌ちゃん、あのね……」

千歌「あと少しで完成するから……ちょっとだけ待ってて」ニッ

千歌「……この丸いところが一番難しいんだよねぇ……」スススッ…

梨子「…………」ガタッ

千歌「えー!梨子ちゃんもう終わったの!?」

梨子「うん。実は前回終わってて……」

401: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/15(木) 23:21:34.13 ID:dXkFoPyX
千歌「は、速いなぁ……流石美術部……」

梨子「それ関係ある……?」

ダイヤ「トレース検定の三大原則は「正しく」「速く」「美しく」ですからね。速いのは良いことですわ」

千歌「ダイヤちゃんまだ一枚目でしょ~?そろそろ終わらせないと怒られちゃうよ~」

ダイヤ「い、良いんですの!気になるところばかりで……」

梨子「……んー……綺麗だと思うけど……」

ダイヤ「本当ですの!?」パアァッ

梨子「え、う、うん?綺麗だよ?」

ダイヤ「……な、なら一旦これで提出しましょうかね……」ガタッ

千歌「あ!!待って!私も!!私ももうすぐで終わるから!」

白津「高海」

千歌「はいごめんなさいちょっと黙ります」

402: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/16(金) 00:46:40.86 ID:BUn7S1M2
梨子「……先生、終わりました」サッ

ダイヤ「私もですわ」サッ

白津「はい、お疲れ様です」スッ…

白津「……うん、二人ともよく書けてますね。桜内はここの部分が少しはみ出ているのでこれを気を付けて書きましょう」

白津「黒澤はこの円の部分ですね。少し歪んでしまっているので綺麗に書けるようにしましょうね」

千歌「せんせー!私も出来ました!」

白津「どれどれ……」ジィィ…

梨子「ち、千歌ちゃん上手い……」

ダイヤ「……ええ、悔しいですけど上手いですわ……」

白津「高海は割とこういうの得意ですからね。よく書けました」

千歌「えへへ、ありがとうございます!」

403: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/16(金) 00:46:56.61 ID:BUn7S1M2
白津「それじゃあ桜内と高海は三枚目、黒澤は二枚目を書きましょう」ピラッ…

ちかダイりこ「「はーい」」

千歌「いやぁ、なんか細かい作業だから頭痛くなるけど楽しいよねトレースって」

ダイヤ「そうですわね。何より集中力も鍛えられますし」

梨子「……ねぇ、千歌ちゃん。ちょっと話があるんだけど……」

千歌「ああ、そう言えば言ってたね!どうしたの?」

梨子「……耳貸して」

千歌「んー?」ススッ…

梨子「わ、私も……スクールアイドル、やってみたいなって……」ボソッ

千歌「え!!!!!!やってくれるの!!!」クソデカ声

白津「高海」

千歌「す、すみませぇん……」

404: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/16(金) 00:49:14.34 ID:BUn7S1M2
千歌「……それで、本当にしてくれるの?」コソッ…

梨子「……うん。折角誘ってくれたんだし……皆もやるって言ってたから、私もやりたくなっちゃった」

千歌「り、梨子ちゃぁん……」ウルウル

千歌「梨子ちゃんだーいすき!!!!」ギューッ!

梨子「わっ、ちょっと危ないわよ!」グラッ

ダイヤ「ちょ、大丈夫ですの!?倒れますわよ!」

千歌「だって、だって嬉しいんだもん!!!」

白津「高海。桜内。黒澤」

ちかダイりこ「「「はい。すみませんでした」」」

405: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/16(金) 00:54:46.69 ID:BUn7S1M2
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放課後

千歌「ダイヤちゃん梨子ちゃん帰ろ~!」

梨子「ごめん、私今日部活があって……」

千歌「そっかぁ……梨子ちゃん美術部入ったばっかだもんね……忙しいかぁ……」ショモ

ダイヤ「私も部活ですわ」

千歌「えっ、華道部も?……そっかぁ……」

梨子「千歌ちゃん先帰っていいわよ」

千歌「うーーん…………ぁ、私畜産棟に遊びに行ってくる!なんか久々に動物触りたくなっちゃって!」

千歌「もし時間が合えば一緒に帰ろ!」

ダイヤ「また善子さんと鞠莉先輩の邪魔をしに行くだけでしょ?全く……」ハァ…

千歌「ま、まあ間違っては無いけど……」

406: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/16(金) 00:55:02.47 ID:BUn7S1M2
梨子「鞠莉先輩勧誘しに行くの?」

千歌「うん!よく考えたら鞠莉先輩にまだ言ってなかったから言いに行こうと思って!」

千歌「せっかく皆やりたいって言ってくれたんだもん、……絶対成功させたい」

梨子「……そっか」

千歌「っていうことで、鞠莉先輩を誘ってきます!二人とも、部活頑張ってね!」ニッ

千歌「じゃーねー!」ブンブン

梨子「い、行っちゃった……」

ダイヤ「騒がしい人ですね……」

梨子「……千歌ちゃん、そんなにスクールアイドルが好きなのかな……?」

ダイヤ「……あの人はスクールアイドルが好き、と言うよりはこの学校が好きなんでしょうね」

梨子「学校が?」

407: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/16(金) 00:55:13.85 ID:BUn7S1M2
ダイヤ「ええ。浦の星は人が少ない田舎町にありますけど……こんなに自然が豊かで、人も優しくて、様々なことを経験させてくれる……そんな学校は中々ありませんの」

ダイヤ「……千歌さんは、そんな浦の星が大好きなんです。無くなっても仕方ない、なんて言い方していますけど、この学校で誰よりも廃校になって欲しくないと願っています」

ダイヤ「……だからこそ、せめて思い出だけでも残したいのでしょう」

梨子「……そっか」

梨子「千歌ちゃん、とっても良い子ね」

ダイヤ「……ええ、本当に」フッ…

408: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/16(金) 00:55:41.90 ID:BUn7S1M2
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畜産棟

鞠莉「──スクール、アイドル……」

千歌「はい、鞠莉先輩も興味無いかなって。善子ちゃん達もメンバーになってくれるって言ってたし、……鞠莉先輩も……」

鞠莉「Sorry。そういうの興味無いの。それじゃあ、私は同好会の仕事があるから」

鞠莉「……じゃあね、千歌っち」

千歌「……はい……」

鞠莉「……………………」スタスタ…

鞠莉「……………………」スタスタスクスタ…

409: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/16(金) 00:56:01.22 ID:BUn7S1M2
鞠莉「(うわあああなんで断っちゃったんだろおおおおっ……)」頭抱え

鞠莉「(そりゃ…まあ最初は私だけ誘われなくって……ダイヤと千歌っちが賭けをした時に初めて知ったくらいだし……ちょっと寂しかったけど……)」グスン…

鞠莉「(あそこで強がるんじゃなかった~っ!)」

鞠莉「(私も皆とアイドルした~い!曲作ったり振り付け作ったり衣装作ったりして青春した~い!)」

鞠莉「(こんな泥まみれの実習服より可愛い衣装が着たい~!!!!)」

千歌「あっ、鞠莉先輩っ」タッ

鞠莉「なぁに、千歌っち。何度も言うけど私はスクールアイドルなんて──」キリッ

千歌「いえ!実習服にカナブン付いてました!」ヒョイッ

鞠莉「あ、あー……カナブン……カナブンね……」

鞠莉「(……ホントに嫌~っ!!!!!!!)」

414: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/17(土) 00:49:42.00 ID:hilOUDZe
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校舎 自動販売機前ベンチ

千歌「だあああっ……ダメだぁ……」ドサッ

善子「そこ汚いわよ」

千歌「善子ちゃんからも何とか言ってよ~……鞠莉先輩、あの調子じゃ絶対入ってくれないよ」

善子「……さぁ、あの人のことだし強がってるだけじゃないの?」

千歌「そんな訳無いじゃん。絶対入らないよあれ……」

善子「ふぅん……」グイッ

千歌「よしこちゃ~ん……そのジュースおいし?」

善子「普通。特別美味しくもないし不味くもない」

千歌「ふーん……ねー、どうしたら鞠莉先輩入ってくれると思う?」

善子「全員で押しかけたらいいんじゃない?」

千歌「全員で?」

415: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/17(土) 02:24:22.81 ID:hilOUDZe
ごめんなさい頑張ろうと思ってたけど眠過ぎるので今日は一旦寝ます。起きたら頑張ります

419: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/17(土) 23:28:01.29 ID:hilOUDZe
善子「さっきも言ったでしょ。あの人、ただ強がってるだけなのよ。全員で押しかけたら尻尾出すでしょ」

千歌「善子ちゃんかしこーい!」

善子「あんたがアホなだけよ」

千歌「それより善子ちゃん、今日は同好会行かなくてもいいの?」

善子「……ま、偶にはサボってもいいでしょ」

千歌「行けないんだー!怒られるよ」

善子「週に二回しかない部活をほぼ毎回サボってるあんたに言われたくないわよ」

千歌「だってこの時期書道教室すっごい暑いんだよ?書道教室は冷房無いし、汗が半紙に垂れてびちょびちょになるし」

善子「うわ……嫌ねそれ」

千歌「でしょ~?でもそろそろ作品仕上げないといけないんだけどね」

善子「……それで、スクールアイドルはどんな感じなの?」

千歌「えっ?いや、鞠莉先輩を勧誘しないと──」

善子「そうじゃなくて。スクールアイドルって自分で曲とか作ったりするんでしょ?何か進んでるの?」

千歌「えっ」

420: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/17(土) 23:46:22.61 ID:hilOUDZe
善子「まさか……あんた……」

千歌「い、いやいやいや違う違う違う」ブンブンブン

千歌「な、何にも考えてなかったなんてないないないないない!!!!」ブンブンブン

善子「考えてなかったのね。期待して損した」

千歌「ごめん~っ!!善子ちゃんやっぱり辞めるとか言わないでぇ~っ!!」ギューッ!

善子「言ってないでしょ!離れなさいよ!」グイグイ

曜「あっ!千歌ちゃーん!善子先輩~!」ブンブン

善子「あ、曜じゃない」

ルビィ「せ、先輩っ……こんにちは……」ペコリ

千歌「よーちゃん!ルビィちゃんもこんにちは!」ニコ

421: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/17(土) 23:46:37.98 ID:hilOUDZe
ルビィ「……あ、あの……千歌先輩」クイクイ

千歌「んー?どうしたの?」コテリ

ルビィ「これ……」スッ…

善子「何それ?ノート?」

曜「衣装デザインですよ!スクールアイドルやるって決まった時から二人で考えてみたんです!」

千歌「おおー!可愛い!」パアァッ

曜「これが千歌ちゃんの衣装で~、これが善子先輩のです!」

善子「えっ、全員分考えたの!?」

ルビィ「は、はい……どうですか……?」

善子「うん……良いじゃない、とっても可愛いわ」

ルビィ「!」パアァッ

ルビィ「え、えへへ……」フニャリ

千歌「ルビィちゃん……か、可愛い~っ……」キュウゥ…

424: 名無しで叶える物語(SB-iPhone) 2023/06/18(日) 02:06:10.01 ID:K7q50BaW
善子「……二人とも、ジュース買いに来たの?」

曜「あ、はいそうです!休憩に~と思って自販機に来たんですけど、千歌ちゃんと善子先輩がいたので話しかけちゃいました!」

善子「……どれがいい?奢るわよ」

ルビィ「えっ……でも……」

善子「良いの。さ、選んで」

曜「私これがいいです!オレンジジュース!」

善子「はいはい、オレンジね。ルビィは何がいい?」ポチッ

ルビィ「ルビィは、えっと……」アワアワ

ルビィ「ぃ……いちごみるくが良いです……」

善子「いちごみるくね」ポチッ

善子「はい、どうぞ」スッ…

曜「善子先輩ありがとうございます!」

ルビィ「あ、ありがとうございます……」ペコリ

千歌「えー!ずるい!善子ちゃん私にもジュース買って!」

善子「嫌」

千歌「なんでだよー!!!」

425: 名無しで叶える物語(SB-iPhone) 2023/06/18(日) 02:17:00.31 ID:Q1SvaeiM
善子「あんたは自分で買えばいいでしょ」

千歌「今日もうお金無いんだって!買って!」

善子「チキン食べ過ぎなのよ。今日三個食べたって聞いたけど」

千歌「だ、だって食堂のチキン、すっごい美味しいじゃん?ほら、ケンタッキーのクリスピーみたいな味するし」

曜「わかる!」

千歌「美味しいよね~!」

曜「ね~!」

ルビィ「る、ルビィは大学芋が好きです……」

善子「私はピリ辛チキンが……って何この学食トーク」

426: 名無しで叶える物語(SB-iPhone) 2023/06/18(日) 02:17:18.35 ID:Q1SvaeiM
千歌「ああ。そういえば花丸ちゃん知らない?今から皆で鞠莉先輩のところに押しかけようと思ってるんだけど、花丸ちゃんにだけ会えなくて……」

ルビィ「マルちゃんならコンビニにお菓子買いに行ってます」

千歌「な、なんで?」

曜「ルビィちゃんと私で衣装デザイン考えてる時、ずっと見守っててくれてたんですけどどうしてもお腹空いたから~って買いに行っちゃって!」

ルビィ「それでルビィ達も喉乾いたから飲み物買いに……と思ったんですけど……っあ!マルちゃんにジュース買っていかないと!」

善子「あの子何飲むの?」

曜「お茶とか飲んでますね。緑茶」

善子「んー、あの子抹茶ラテとか飲むかしら」

ルビィ「あっ、それマルちゃんが気になってたやつです」

善子「あ、そうなの?じゃあこれ買うから渡してあげて」ポチッ

曜「わー!善子先輩やっさしー!」

千歌「ねぇ!ねぇ優しい善子先輩!チカにも!」

善子「嫌」

千歌「なんでだよおおおおっ!」

429: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/18(日) 21:52:49.40 ID:7BURWujJ
花丸「あ、ルビィちゃん曜ちゃん。こんなところに居たずら」

善子「あら、噂をすれば」

花丸「よ、善子先輩もこんにちは……っ」ペコッ

千歌「ちょちょちょちょ、私も居るよーっ!」

花丸「あっ、す、すみません……こんにちは」

千歌「善子ちゃんたらしてるね~……」

善子「たらしてないわよ……っあ、丁度良いからあげるわ」

花丸「抹茶ラテ、ですか……?」

善子「それ、気になってたんでしょ?」

花丸「~っ!」カアァッ

花丸「は、はいぃ……」プシューッ

曜「花丸ちゃん顔隠しちゃった」

ルビィ「善子先輩苦手なのかな……?」コソッ

千歌「いや逆だよ逆。絶対好きだよあれ」コソッ

善子「そこ。聞こえてるわよ」

430: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/19(月) 00:19:19.36 ID:savrxOJn
花丸「それで……こんなところで先輩達は何をしているんですか?」

千歌「あ、そうだ。あのね、鞠莉先輩を勧誘しに行こうと思ってるんだけど上手くいかなくて……だからもう全員で押しかけようと思って」

ルビィ「偶然千歌先輩と善子先輩に会ったからルビィ達も行こうってなって」

曜「あと居場所が分からないのが花丸ちゃんだけだったんだけど、丁度来てくれたから助かったよ~!」

千歌「それじゃあ今から美術部と華道部に行って、梨子ちゃんとダイヤちゃんを捕まえに行こう!」ガタッ

善子「あんた背中砂だらけよ」

曜「汚いベンチで寝転がってるから~」パッパッ

千歌「さぁ!早速行こう!」ギュッ

ルビィ「え、えぇ……?」

千歌「れっつごー!!」タッ

ルビィ「わあぁぁっ……引っ張らないでくださぁぁいっ……」ウユウユ

善子「ちょっとあんた活動場所知ってるの!?」

千歌「全くわかんない!!!」

善子「ダメね、あいつ……」

曜「あ、あはは……」

花丸「変わった人ずら……」

434: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/19(月) 18:29:09.14 ID:savrxOJn
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畜産棟 裏口

ダイヤ「…………これはどういう状況ですの?」

千歌「ダイヤちゃん、しっ!聞こえちゃうでしょ!」

善子「あんたが一番うるさいけどね」

梨子「こんな所で隠れてたら私達が変な人みたいじゃない……」コソコソッ

花丸「こんなことしてる時点で手遅れずら……」

ルビィ「あっ、いました……!あれ、鞠莉先輩じゃ……!」🫵

鞠莉「──、──……」トボトボ…

曜「何か言ってますね……なんて言ってるんだろう……」

ダイヤ「それに元気が無いですわよ」

梨子「鞠莉先輩にしては珍しい……」

435: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/19(月) 18:29:30.79 ID:savrxOJn
果南「そんなとこで何してるの?」ヒョコ

千歌「あのね果南ちゃん、今から鞠莉先輩を勧誘しに……って果南ちゃん!?」ビクッ

善子「こらあんたうるさいわよ!」バッ

果南「畜産棟の階段で皆してへばりついてるから何かと思ったら……そういうこと?」

梨子「か、果南先輩はどうしてここが分かったんです……?」

果南「そりゃ太鼓部の活動場所から丸見えだからね。挙動不審な千歌達」

花丸「ま、まさかの丸見え……」

曜「そういえば皆果南ちゃんのこと忘れてたね……」

果南「えっ…………」ガーン…

果南「そっか……私、別にスクールアイドルやらなくても……」ズーン…

梨子「ち、違うんです違うんです!」アワアワ

ダイヤ「あ!鞠莉先輩が近付いてきましたわよ!皆さん隠れて!」サッ…

436: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/19(月) 18:29:45.43 ID:savrxOJn
鞠莉「…………はぁ、」

鞠莉「……どうして素直になれないのかしら……」


果南「あれ……なんかいつもと様子違うくない?」

善子「強がって千歌からの勧誘断ったんですよあの人」

花丸「何だかこどもみたいずら……」


鞠莉「……私は別に、アイドルなんて……」


曜「なんか、ドラマ観てるみたい……」

千歌「アイドル、なんて……、」ゴクリ

437: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/19(月) 18:30:04.86 ID:savrxOJn
鞠莉「うわあああああああぁぁんっ!!やっぱり私もアイドルしたああぁい!!」

鞠莉「スクールアイドル!?文化祭のステージ発表!?何それすっごい楽しそうじゃない!!このっっ!!!」バシーンッ


ルビィ「何か床に叩きつけましたね……」

善子「自分の実習服の帽子じゃない?」


鞠莉「千歌っちったらどうして最初に私を誘ってくれなかったの!?言ってくれれば絶対最初に入ったのに!!」


鞠莉以外の八人「…………………………」
▼絶対最初は断るだろ。という顔

438: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/19(月) 18:30:28.28 ID:savrxOJn
鞠莉「もううんざりよ……泥だらけの実習服を着て、動物園みたいな臭いがする畜産棟で毎日毎日……同じことの繰り返しで……」

鞠莉「もうこんな毎日は嫌!絶対抜け出してやる!」バッ

🐴「…………」バーンッ!

鞠莉「行くわよ偽スターブライト!!こんな生活から抜け出すのよ!!」スタッ

鞠莉「Let's Go!!!!!」タッ!


梨子「ぽ、ポニーに乗ってどっか行っちゃったけど!?」

果南「何!?偽スターブライトって」

善子「言ってる場合!?」

千歌「と、とにかく追いかけよう!」タッ

439: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/19(月) 18:30:46.58 ID:savrxOJn
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果南「園芸の方は居なかったよ。そっちは?」

花丸「食品科の畑にも居なかったです……」ゼェゼェ

果南「何処行っちゃったんだろう……」

曜「果南ちゃーん!花丸ちゃーん!」タッ

果南「曜とルビィちゃん。デザイン科の畑はどうだった?」

ルビィ「何も無かったです……足跡とかも無くて……」

果南「じゃあ畜産棟か緑化棟かな。ちょっと行ってみよっか」

440: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/19(月) 18:31:06.92 ID:savrxOJn


千歌「ポニー居ないねぇ」

梨子「あれだけ大きかったら直ぐに分かりそうだけど……」

ダイヤ「居ないですわね……」

千歌「うん、何処に……って、ああああああああああああっ!?!?」

梨子「う、うるさいわよ千歌ちゃん!」ビクッ

ダイヤ「一体何なんですの!?」ビクッ

千歌「み、見てあれ!!さっきのポニーじゃない!?」🫵

🐴「………………」ムシャムシャ…

441: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/19(月) 18:31:20.03 ID:savrxOJn
梨子「あ、本当だ。雑草食べてる……じゃなくてポニーに乗ってた鞠莉先輩は何処に行ったのよ!?」

ダイヤ「そんなの鞠莉先輩とポニーにしか分かるわけないでしょう!?一旦善子さんを呼んでポニーを畜産棟に戻してもらいましょう」

千歌「そ、それもそうだね……おーい!善子ちゃーん!!津島善子ちゃーん!!!」

梨子「なんでフルネーム!?」

千歌「動物科の津島善子ちゃーん!!!!」

ダイヤ「迷子のアナウンスですか!!」

善子「ちょっとあんまり大声で善子善子言わないでくれる?」

千歌「ヨハネちゃーん!堕天使ヨハネちゃーん!」

善子「今すぐ辞めなさい」

善子「ほら、こっち来なさい」ドウドウ

🐴「………………ブルルッ」プイッ

千歌「……なんで善子ちゃんはこう、……好かれないんだろうね?」

善子「黙って」

442: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/19(月) 22:50:08.85 ID:savrxOJn
🐴「……ブルルッ」

梨子「わ、わぁっ!?」

🐴「………………」スリスリ…

ダイヤ「梨子さん……」

善子「なんか懐かれてるわね……」

梨子「こ、怖い怖い!誰か助けてよぉ!」アワアワ

千歌「……梨子ちゃん……ちょっと失礼」ヒョイッ

梨子「ひゃ!?ちょ、ちょっと何してるの!?」

善子「…………ポニーに乗ったわね」

ダイヤ「………………ええ、乗りましたね」

千歌「いけー!畜産棟に帰るのだ~!」ビシッ

🐴「……っ!」タッ!

梨子「きゃあぁっ!?!降ろして!降ろして~!!!」

443: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/19(月) 22:56:45.77 ID:savrxOJn
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畜産棟

梨子「……何か言うことは?」ゴゴゴゴゴ…

千歌「すみませんでした」土下座

果南「梨子ちゃんが怪我しないで良かったよ。多分鞠莉は振り落とされたんだろうけど、梨子ちゃんは軽いみたいだから振り落とされなくて良かったね」

ダイヤ「その言い方だと鞠莉先輩が重いみたいな……」

千歌「あのおっぱいだもん。重そうだよね」

果南「千歌」

千歌「はい。すみませんでした」土下座

花丸「それより鞠莉先輩を探さないとですよ……」

曜「このままじゃ下校時間になっちゃいます……」

善子「それもそうね。早くあのバカ探しに行きましょ」

千歌「じゃあ次はサツマイモ圃場の方に行ってみよう。それで居なかったら水田の方も探しに行ってみよう」

ルビィ「わ、わかりまし──」

ポタリッ

ルビィ「ぅわあぁっ!?」ビクッ

花丸「ルビィちゃん!?どうしたずら!?」

ルビィ「あぁっ……雨、降ってきましたっ……」

梨子「本当に時間が無さそうね……」

善子「ったく、何処で何してるのよあの人!さっさと探しに行きましょ!」タッ

444: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/20(火) 00:59:31.29 ID:Z7WM4/PV
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鞠莉「…………」トボトボ…

鞠莉「(偽スターブライトに振り落とされたわ……)」ボロッ

鞠莉「(……というか、なんで私こんなことしてたんだろう……)」

ポタリッ……

鞠莉「……ぁ……」

鞠莉「……雨……」

鞠莉「………………っと、」ポフリッ…

鞠莉「……地面湿ってるわ……背中が濡れる……」ゴロッ

445: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/20(火) 00:59:43.13 ID:Z7WM4/PV
鞠莉「………………」

鞠莉「(どうして内浦の農業高校なんかに来ちゃったんだろう。……なんて、よく考える)」

鞠莉「(私は別に自然が好きって訳でも無いし、動物だって……正直、相棒のスターブライト以外興味無い)」

鞠莉「(そんな私が、どうして農業高校なんかに居るのかなって……)」

鞠莉「(……私ね、千歌っちが羨ましかったの)」

鞠莉「(毎日楽しそうで、毎日笑ってて……そんな千歌っちが、羨ましかった)」

鞠莉「(私も、その中に入りたかったの)」ポロッ…

446: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/20(火) 00:59:57.66 ID:Z7WM4/PV
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梨子「雨が強くなってきた……そろそろ何処かで雨宿りしないと皆揃って風邪引いちゃうわよ!」タッタッ

ルビィ「ぅわあぁっ!!」ツルッ

果南「おっ、とと……大丈夫?」ガシッ

ルビィ「は、はひ……」

善子「階段で転んだら怪我じゃ済まないことだってあるし気を付けてよね?」

ルビィ「す、すみません……」

ダイヤ「それにしても鞠莉先輩、何処にも居ないなんてどうなってますの……!?」

花丸「本当にまだ学校に居るずら……?」ゼェゼェ

曜「あ!千歌ちゃん、あそこに寝転がってるのって!」

千歌「本当だっ……見つけた……!」タッタッ

447: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/20(火) 01:00:08.66 ID:Z7WM4/PV
千歌「鞠莉先輩っ!」

鞠莉「……へっ?」クルッ

千歌「はぁっ……はぁ……やっと見つけた……」

鞠莉「千歌っち……それに皆も……どうしたの?」

千歌「やっぱり一緒にやりましょう。スクールアイドル!」

鞠莉「だから、……さっきも言ったはずよ。興味無いって……」グッ…

千歌「……そりゃ、こんな田舎だし……何にしろ、農業高校生っていう地味な私達だけど……でも、思い出は刻まれる。私達が輝いた成果が、三学年全員揃う最後の文化祭で!」

果南「まったく。いい加減入ります~って折れたらどうなの?」

ダイヤ「果南先輩の言う通りですわ。せっかく三学年全員が揃う最後の文化祭なんです。思い出作りしたいとか思わないんですの?」

448: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/20(火) 01:00:24.61 ID:Z7WM4/PV
ルビィ「ま、鞠莉先輩の衣装も……考えてあるんです。入ってくれると、思って……」

鞠莉「……衣装……」

花丸「デザイン科の曜ちゃんとルビィちゃんの二人で考えてくれてるんです。それに、衣装だけじゃなくて、オラは9人居た方がしっくりすると思います」

曜「目の前のことに何でも全速全身で突き進む、それが千歌ちゃんなんです!鞠莉先輩も、私達と追い風に乗っていきましょうよ!」

梨子「何としてでも、生徒全員に楽しかったって心の底から言って貰えるような学校にしたいんです。千歌ちゃんは」

善子「って、皆言うけど……どうしますか、鞠莉先輩」

鞠莉「………………」

鞠莉「…………っふ、そんなこと言われて断ったら私が悪者じゃないの」

鞠莉「絶対後悔させないで。それだけ約束」

千歌「!」パアァッ

千歌「はい!」

 こうして三学年全員が揃う最後の文化祭は、この学科も学年もバラバラな9人でステージ発表を行うこととなった。
 奇跡としか言いようがないこの出会いを歓迎するかのように、晴れ間が見えて、虹が出た。

453: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/20(火) 21:36:03.38 ID:Z7WM4/PV
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初練習当日
浦の星農業高校 体育館裏

千歌「ということで!やっと九人揃ったので練習を始めたいと思います!」

曜「やったー!九人だー!」

果南「よし、皆体操服に着替えてるね。それじゃあまだ曲も衣装も出来てないから、簡単なステップからやってみようか」

鞠莉「果南はダンスとかやってたの?」

果南「経験はないけど……昨日スクールアイドルの動画見てみて、練習方法を考えてみたんだ」

鞠莉「おお……わざわざノートにもまとめてるのね……凄いじゃない」

果南「ま、やるからには本気でやらないとね」

ルビィ「そ、それで言うならお姉ちゃんも昨日ステップを練習していたような……」

ダイヤ「ち、違いますわ!あれはたまたま……」

梨子「たまたま……?」

ダイヤ「ううぅ……練習ですの練習!私だってやるからには自分が満足するレベルでやりたいんです!!」

457: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/21(水) 18:08:33.13 ID:O5f7tfUa
花丸「……あの、」スッ…

果南「どうしたの?」

花丸「……オラ、ダンスとか全く出来なくて……」

花丸「お遊戯会のダンスも、中学校の時の体育祭のダンスも、オラだけいつも踊れなくて背が低いのに後ろに回されてて……」

梨子「今年のダンスはどうだったの?あれ、ちょっと難しくなかった?」

ダイヤ「そうですね、去年より遥かに難易度が高かった気がします」

千歌「私もあのステップ全然出来なかったし!果南ちゃんは踊れてたけど」

果南「あのくらいならね」

458: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/21(水) 18:08:53.11 ID:O5f7tfUa
花丸「今年の体育祭のダンスも全然……放課後までダンスリーダーの先輩に教えられてました……」ズーン

善子「それで、結局踊れたの?」

花丸「…………いえ……」

善子「致命的みたいね」

ルビィ「る、ルビィも運動が苦手で……ダンスって結構体力使うし、着いて行けるか分からなくて……」

梨子「そ、それなら私もあんまり体力無くて……」

果南「ルビィちゃんはまあ、そんな感じするけど……梨子ちゃんもそうなの?」

千歌「いや?梨子ちゃんこの学校来てからだいぶ体力ついたよ」

曜「はいはい!果南ちゃん果南ちゃん!私は体力凄いあるよ!」ムンッ

果南「それは知ってるから……」

459: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/21(水) 18:09:10.07 ID:O5f7tfUa
鞠莉「それで、どうするの?体力無い、運動出来ない、ダンスも苦手……スクールアイドルするならまずこれ何とかしないと」

ダイヤ「そうですわね……どうしたものか……」

果南「じゃあ今からランニングに行こっか!」

りこまるびぃ「「「えっ」」」

善子「ら、ランニングって……まさかこの学校の中を?」

果南「うん!この学校は広いし、坂道とかも沢山あるからきっと直ぐに体力つくよ!」ムンッ

曜「いいね!私も頑張るぞー!」エイエイオー!

善子「ちょ、ちょっと千歌、この脳筋達何とかしなさいよ!」

千歌「あ、あはは……こうなった果南ちゃんとよーちゃんは誰にも止められないのだ……」苦笑

果南「よーし!それじゃ皆、ついてこーい!」タッ

曜「行くぞー!」タッ

ダイヤ「あぁっ!本当に行ってしまいましたわ!」

ルビィ「どどどどどうするんですか!?」

鞠莉「どうするも何も……追いかけるしかなさそうね」タッ

花丸「ま、待ってぇっ……オラ、靴紐ちゃんと結べてないずらぁっ……」アワアワ

善子「もう……」キュキュッ

善子「これで良し。ほら、行くわよ」タッ

花丸「は、はいっ……」タッ

千歌「折角アイドル出来ると思ったのにこれじゃ持久走と一緒だよー!」タッ

460: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/21(水) 18:09:30.85 ID:O5f7tfUa
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果南「はーい、休憩~!」

ルビィ「もうダメしんじゃうぅ……」グデッ

梨子「ほんとにダメ……足が震えるわ……」ガクガク

花丸「オラもう限界ずらぁ……」プルプル

果南「三人ともよく頑張ったね!ちゃんと着いてこれて偉いよ!」

梨子「一周だけかと思ったのに、……結局学校の中三週もして、……何キロくらい走ったのかな……」ゼェゼェ

曜「学校の中が大体……2キロ近くあるのかな?」

果南「うん、多分そのくらいはあると思う」コクリ

ルビィ「じゃあ、ルビィ達は6キロも……休憩なしで……」

花丸「お、恐ろしいずら……」

461: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/21(水) 18:09:45.51 ID:O5f7tfUa
千歌「だあああっ……疲れたぁ……」ドサッ

ダイヤ「……汚れますわよ」

千歌「いいのいいの。実習服と同じで、洗っちゃえば問題ないよ!」

ダイヤ「貴女の実習服、もう洗っても落ちない泥だらけじゃないですか……」

花丸「…………ダイヤ先輩と千歌先輩って、全然タイプが違うのに一年生の時から仲良しだったんですか……?」

千歌「そうだよ~っ、去年は基本ダイヤちゃんと一緒だったかな」

曜「何がきっかけで仲良くなったの?」

千歌「んー、なんだったっけ……」

ダイヤ「覚えていないのです?……こほん。この人とは浦の星の受験二日目……つまり、面接が同じだったんです」

ダイヤ「その時に──」

463: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2023/06/21(水) 18:09:59.80 ID:O5f7tfUa
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受験生A「わたしの夢はこの学校に入って、農業を学び、大好きなお米のことを更に詳しく知って、米マイスターになることです!」

千歌「こめ、まいすたー……」ボソ

ダイヤ「(隣の人、何か呟いてますわ……)」チラッ

千歌「ぷっ……あっはっはっはっは!」

千歌「なにそれなにそれ!あ、もしかして今のはお米のコメとマイをかけた……」

ダイヤ「説明しなくていいですから」

試験監督A「………………」

試験監督B「………………」

受験生A「………………」

ちかダイ「「………………あっ」」