1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/03(日) 03:29:05.71 ID:uXVNGQen0
女「お母さんもお父さんも、みているのはあたしじゃなくてもっと遠く」

女「友達だって、本当に私を思ってくれる人なんかいるわけがない」

女「誰も、誰も……あんただって、そうなんでしょ!?」

男「……そんなわけ、ねぇだろ。みんなお前のこと、」

女「うるさい! 帰って! もうウンザリなの!」

男「……」

3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/03(日) 03:36:32.60 ID:uXVNGQen0
女「……どうして、こうなっちゃったんだろう」

女「あの頃は楽しかったのに。なのに、どうして」コンコンガチャ

母「女ー? 勉強はしてる? 来週はテストでしょう?」

女「……大丈夫だよ、ただ、少し休憩を、」

母「休憩って……まだこれしかやってないじゃないの」

母「それにさっき、男君が来たけれど……いくら幼馴染みの男君だからって、
  女の勉強の妨げになるのなら今後は家に上げられないわね」

母「ともかく貴女は勉強だけに集中しなさい」


わかってる。

あたしはこの期待に応えないといけないってことくらい。

だから、他人に甘えていてはいけないということも。

4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/03(日) 03:48:13.08 ID:uXVNGQen0
~~♪ ~~♪

from 男
to 女

さっきはごめんな
けど、お前は一人じゃないから
何かあったら相談しろよな!

女「……ッ」


やめて、やめてよ

表面だけの心配 顔だけの笑顔 みせかけの優しさ

そんなモノはいらないのに 

いらないのに。いらないのに。いらないって、言ってるのに。


翌日。初めて仮病を使って、学校を休んだ。

7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/03(日) 03:58:15.29 ID:uXVNGQen0
母「熱はないみたいだし、これなら午後は勉強できるわね」

母「今日は学校も午前だけなんでしょう? その分しっかりしないと」

女「でも、ダルいし……」

母「何言ってるの。それは甘えでしょう?」

女「……」

母「はぁ……じゃあ、仕事に行ってくるからしっかりやるのよ」


溜息。

何回聴いたかわからない、溜息。


本当は少し、心配して欲しかったのかもしれない。
偽りなんかでなく。


女「……何の為に生きているんだろう」

8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/03(日) 04:01:40.13 ID:uXVNGQen0
どうしてだろう

どうして、私の望むモノは手に入らないのだろう


お金でも、地位でも、何でもない

本当に些細なことなのに


どうして、私の望むモノは手に入らないのだろう


どうして、気付いてくれないの?

9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/03(日) 04:06:42.78 ID:uXVNGQen0
同級生「あ、女ちゃん。おはよう、昨日どうしたの?」

女「おはよう、ちょっと頭が痛くて」

男「女! ……一昨日は、悪かった。あのさ、風邪、」

男「……なんだよ、それ」


男「お前、切ったのか?」


女「……だとしたら、どうするの?」

男「何で……お前、ほんとどうしたんだよ!? おばさん達は知ってるのか!?」

女「……関係ないでしょ? ほら、こうして袖で見えないようにしてるの」

女「あんたには偶然みられたけれど、でも、他は誰も気付かない」

女「それで良いじゃない。あたしなんて、どうなっても良いじゃない」

10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/03(日) 04:13:24.80 ID:uXVNGQen0
男「良くねぇよ……お前「やめてよ」」

女「あたしの気持ちも知らないで、偉そうに」

女「……もうHR始まるから」


同級生「それでね、同級生2がさー」

同級生3「え、マジで!? ねぇ女ちゃんはどう思う!? ……聞いてるー?」

女「聞いてるよ~、ただまだ頭痛くて」

同級生3「そっか~、どんまい」

12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/03(日) 04:17:20.30 ID:uXVNGQen0
――6時間目

同級生「ねぇねぇ、お昼の女ちゃんの態度」ヒソヒソ

同級生3「あれはないよねー」ヒソヒソ

同級生「空気読めないっていうかさぁ」ヒソヒソ

同級生3「てゆーかぶっちゃけ、ウチあの子苦手だなぁw」ヒソヒソ

同級生「え、うそー! 実は私もー。なんていうか、ノリ悪いよね」ヒソヒソ

教師「えーだから此処はーこうでー……そこ二人、喋らない」



女(聞こえてるのに)


14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/03(日) 04:24:13.61 ID:uXVNGQen0
――放課後

男「女! 今日一緒に帰ろうぜ」

女「……」

男「ちょ、まっ」


女「……もう関わらないでってば」

男「お前さ……悩み、あるんだろ? 何で一人で抱えるんだよ。何で誰にも、」

女「黙ってよ! いっつもいっつも知ったような口きいて、鬱陶しいの!」

女「だって誰も分かってくれない、味方なんていないんだもん!」

女「そう前にも言ったのに! 結局何も分かっていない! 私の事なんて何にも!」

男「ちょ、落ち着けって……!」

女「あたしなんて、消えてしまえば良いのに……」

15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/03(日) 04:26:35.00 ID:uXVNGQen0
結局あの後、女は走って帰ってしまった。

俺は追いかける事もできないまま、ただやりきれない思いでいっぱいだった。


あの時、追いかけていれば。

せめて俺が、女のことをもっと理解してやれたら。

結果は、未来は変わっていたのだろうか――?


16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/03(日) 04:33:40.53 ID:uXVNGQen0
女母「女、起きなさい、何やってるの」

女「……学校、行かない」

母「どうしたの? 具合でも悪いの?」

女「行きたくない……」

母「はぁ……」

また。溜息。聞きたくないモノ。ウンザリするほど聞いたモノ。

母「それが何て言うか分かる!? サボりよ!? そんなので良いと思っているの!?」

女「あたしに当たらないでよ! どうせお姉ちゃんのことでしょう!?」

女「あの時お姉ちゃんが出て行ってからお母さんもお父さんも!」

女「あたしのことを自分たちの理想のお人形にしたいだけじゃない!」

母「……何言って……」

女「部屋から出てってよぉ!」

17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/03(日) 04:40:22.65 ID:uXVNGQen0
―――――

女母「お父さん、女のことなんだけど。あの日からもう3日も学校を休んでいるの」

女父「どうすれば良いんだ……。カウンセリングでも受けさせるか?」

母「それでも良くならなければ最悪病院かしら……」



~~♪ ~~♪
只今近くにいないか、電源が……
『あ、男だけど……風邪がぶり返したのか? 明日は来れるといいな』

『女ちゃーん! ウチウチ、同級生3だけど! どしたぁ!? 女ちゃんいないと寂しいよー』


酷く吐き気がした。

クラクラガンガンと頭痛がした。


なのに、携帯の電源を切ることができずにいた。

ただ、手首に赤い筋が増えた。


嫌悪感でいっぱいで、ただ、それが何に対してなのか分からない。

18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/03(日) 04:48:07.90 ID:uXVNGQen0
いつの間にか、トイレや風呂以外に部屋からでることが無くなった。

ご飯が部屋の前に置いてあって、ドラマでも見ている気分だった。


いつの間にか、お母さんもお父さんも、勉強しろと言わなくなった。

ただ、夜お父さんが仕事から帰って来るとお母さんのヒステリックな声が響くようになった。


いつの間にか、お母さんが仕事を辞めていた。

その代わり、毎週決まった日、決まった時間に病院に通っているようだった。


いつの間にか、同級生から何の連絡もこなくなっていた。

それで少しは楽になるかもしれないと思ったけれど、それは甘えだった。



いつの間にか。

何もない、空っぽになってしまった様な気がした。

19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/03(日) 04:56:06.57 ID:uXVNGQen0

女が学校に来なくなってから数週間。

偶然おばさんと会ったとき、女は風邪をこじらせ、細菌感染のせいで少し入院するときいた。


けれど、本当はそうでないことは、クラスの大半が気付いている。

女は学校に来れなくなった。

自分で全てを抱え込んで、ついに、壊れてしまった。


誰のせいだと自問する。

女の友達が女のことをあまりよく思っていないことにも気付いていた。

女が勉強以外のことに手を伸ばしてみたがっていたことも知っていた。


誰のせいだと自問する。

陰口を叩いた同級生か、彼女に勉強を強いた両親か。

それとも、それを知っていて尚、彼女を追い詰めてしまっていた自分なのか。

20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/03(日) 05:03:13.87 ID:uXVNGQen0
女母「……あ、男君……」

男「どうも……今帰りですか? おつかれさまです」

母「ふふ……私ねぇ、仕事、辞めたのよぉ……」

男「そうだったんですか。あの……女は」

母「そうねぇぇぇ……あの子はねぇ……ふふ、ふ、ぅ」

男「あの、大丈夫……ですか……あの俺、これから行かないと、」

母「……何言ってるの。あなたは女のオムコサンでしょう?」





母「あなたには責任がある!」

21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/03(日) 05:10:00.80 ID:uXVNGQen0
母「あなたが女をたぶらかしたのでしょう!?」

母「返しなさいよぉ! 私のあの子を!」

男「おばさん、落ち着いてくださいよ! あなたが取り乱してどうするんですか!」

男「女と、会わせてください」



女「……何で入ってきたのよぉ! 出てって! 私は人形じゃ――」

男「……女」

女「……あ、あぁ……



いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/03(日) 05:15:40.27 ID:uXVNGQen0
男「女……っ! ごめん、俺……」ギュ

女「あ、うぇぇぇ、やめて……やめ、qあwせdrftyふじこlp」

男「俺は、俺だけはお前の味方だから……なのに今まで、本当に……」

女「………」

男「お前が学校を息苦しく感じていたのも、知ってたのに」

男「勉強だって、辛かったことを知ってたのに」

男「何も、できなくて……」


女「……男……あたしの、望み」


普通で良いから、友達と呼ぶ存在が欲しかった。

誰かと心の底から笑ってみたかった。

両親から、お母さんとお父さんから、一度で良いから、優しい言葉を掛けて欲しかった。



それだけの、望みだったのに。

24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/03(日) 05:21:32.96 ID:uXVNGQen0






「男……


 わ た し を 殺 し て 」





25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/03(日) 05:24:19.26 ID:uXVNGQen0

死ねない私を、死ぬ勇気の無い私を。

生きていても意味のない。もう死んでいる私を。


―――――終わらせて、欲しかった…………


一生に一度、最期くらい。

大好きな人から心地の良い贈り物を貰いたいと望むことは

いけないことなの――?


ワガママになってしまったということくらい、分かってる。


                               終

引用元: 女「だって、誰もわかってくれないじゃない……」