1 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2015/11/22(日) 23:19:55 UnC1X/Nw
「矢張り人間!!皆殺しにするしか...

ドゴォッ!
「ぐっはあああああああ!!!」

・・・また、ワンパンで終わっちまった。

いつからだろう、敵に相対した時の恐怖、緊張、武者震い、高揚感。
そんなものが一切なくなったのは。

とはいえそんなことは既に日常となっていた。

いつものように野菜やなんかを入れたレジ袋を片手に下げ、少しため息を漏らし、

手袋を洗い飼っているサボテンに水をやるために帰途につく。

家のドアを開けふとテーブルをみやると、テニスボール大の黒光りする鉄球が置いてあった。


"
"

2 : 以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/22(日) 23:24:47 UnC1X/Nw
「んだこれ・・・?」
手袋を外し球体を手に取り眺める。


よくみると白い文字が浮かんでいる。


フォントも文法もめちゃくちゃで、
読むのにやや手間がかかった。


「『ちきぅがゃby』ので、
すケつととしてきてくだちぃ」
地球がやばいので、助っ人としてきて下さい。

といったところだろうか?

どこに、まずいつ誰がこんなものを置いた?
というか不法侵入じゃねえか。



3 : 以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/22(日) 23:33:54 UnC1X/Nw
訝しんでいると、サイタマは自らの身体の変化に気付いた。


「おわっ!?わっ!?なんだこれ!?」

綺麗に禿げ上がった頭部から徐々に、削られるようにして体が消えていっている。


その内それは目まで侵食していき、それと同時に視界がかわった。


突然の眩しい光に目がくらむ。


「あ?」

光から目をそらすと、そこは彼のマンションの一室ではなかった。

周りには黒い全身タイツのようなものを着た老若男女の男たち。

そして日本刀を持った黒服姿のホスト風の男と黒髪を前でぱっつんと切りそろえた目つきの鋭い女。


その黒服の2人と全身タイツの大勢がどうやら争っている...?ように見える。



4 : 以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/22(日) 23:43:04 UnC1X/Nw
黒い全身タイツの上に学生服を着た中学生ぐらいの少年とやや長髪のサングラスをかけや男が手をかざすと同時に、黒服の女が宙に浮いた。


いわゆる超能力・・・?だろうか。


すぐにホスト風の男が少年に日本刀を振るい、それと同時に超能力の信号が途絶えたのか黒髪の女は落下、着地する。


あーたーらしーいーあーさがきた
きーぼーおの あーさーだー

どこからかラジオ体操の歌が聞こえてきた。


部屋の奥を見やると、先ほど見たものによく似た黒い球体があった。

こちらは目測で直径1mほどありそうだったが。

ラジオ体操の歌の音源はあれだろうか。


・・・ああもう。

意味がわからない。



5 : 以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/22(日) 23:47:51 UnC1X/Nw
さっきのは一体何で、ここはどこで、今は何時で、
あの黒い球はなんなのか、なぜラジオ体操の歌なのか、こいつらは一体なにをやっているのか、
どういう状況なのか、こいつらの全身黒タイツという珍妙な格好はなんなのか。


「おいあんた!」

黒タイツの1人がこちらに話しかけてきた。


どうやらさっきの騒ぎはおさまったらしく、ホスト風の男は黒球の前であぐらをかいている。



"
"


7 : 以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/22(日) 23:54:26 UnC1X/Nw
「あんたは多分一回死んでいる。

こちらに話しかけてきた男はそう続けた。

背も高くオールバックの強面だったが、自分より年上ではなさそうだ。


「いや、そんな記憶全然ねえんだけど」
サイタマは即答した。


「おそらく死ぬ瞬間の記憶が
「いやマジだって。

部屋でへんなビー玉見たいの見つけたと思ったら
「とにかく話を聞いてくれ!」
「へい」
「これから俺たちは戦争に行くことになる。

ゲームじゃなくてマジの奴だ。

相手はそこの球に映っているやつ。

そういってオールバックの青年は黒い球体を指差した。



8 : 以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/23(月) 00:00:08 /Yd52x42
てめぇ達は今から
この方をヤッつけに行って下ちい。


ぬらりひょん

特徴
つおい
頭がいい
わるい

好きなもの
タバコ
お茶

口癖
ぬらーりひょーん
ぬらーりひょーん

という文章と、なるほど「ぬらりひょん」らしい老人の画像が黒球の表面に映し出されていた。



9 : 以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/23(月) 00:04:57 /Yd52x42
「もうすぐその球が開いてスーツと武器が出てくる。

特にスーツは筋力を増強するだけでなく体を守ってくれる。

だから最低限スーツだけは着ておいてほしい。


オールバックの青年は視線を黒球からサイタマへと戻し、そう説明した。


「スーツってお前が来てる奴のことか?
身を守ってくれるようには見えねえんだけど」


10 : 以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/23(月) 00:15:01 /Yd52x42
「ああ、確かにそう見えるかもしれないな。

俺もこのスーツの仕組みはよくわからない。

だけど今はこっちの指示に従ってほしい」
「いや、お前の言ってることがホントだとしても俺は別にそんなんつけなくても
「頼むから真面目に聞いてくれ!今まで何人も死んだ!お前みたいに遊びかTVのドッキリかなにかと思って挑んだやつは特にだ!」

「・・・はいはい、分かったよ」
しぶしぶ相槌をうち、あたりを見回した。

戦争に行くと言っていたが、皆とて兵士のようには見えない。

この男に加え、ブレザーの下からこの男のいうスーツを覗かせたやたら目つきのわるい中学生ぐらいのぶっきらぼうそうな少年、

先ほどの超能力者らしき2人。


可愛らしい童顔に黒のロングヘア、さらに抜群のスタイルを持つアイドルのようなルックスの少女、

短く顎髭を生やした美形で体格のいい、だが誰よりも怯えた様子の青年、

筋骨隆々とした髭を蓄えた見るからに強そうな男と、
その横にぴったりとくっつく年端もいかない子供。



11 : 以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/23(月) 00:20:57 /Yd52x42
先ほどの黒服の2人、

サイタマには羨ましく感じられるほどだが
禿げた頭の小柄な老人、

それになぜかパンダまでいた。


ガシャンッ
突然の音にやや驚いたが、すぐにあのオールバックの男が言っていた時が来たのだと理解した。


こちらからみた黒球の左右と真後ろが
ラックのような形に展開し、そこに様々な形の銃がぶら下がり、スーツを入れているであろうアタッシュケースのようなものが収納されている。



12 : 以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/23(月) 00:33:05 /Yd52x42
「それぞれのスーツに自分の名前が書いてある。

そのスーツを着てほしい。


オールバックの青年はそう説明を加えた。

サイタマはおもむろに黒球の方へ歩み寄り、ケースの一つをみた。


自分のものだとは分かったが、それよりも先にケースに雑な字で書かれた
「わかハゲ」
という字が目に入ってきた。


馬鹿にしてんのか。



13 : 以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/23(月) 00:37:38 /Yd52x42
静かな怒りを燃やしケースを強く握りしめた。

ケースはパキパキと音を立て亀裂を走らせ、
そしてバキッという音とともに壊れた。

下を向きケースを眺めていたら、また自分の体が、今度はつま先から消えていってることに気がついた。


転送が、始まった。



14 : 以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/23(月) 00:43:15 /Yd52x42
その頃、ヒーロー協会本部は大混乱となっていた。

「O市の道頓堀川底、及びO市上空にて怪人の姿を確認!」

「災害レベルは!?」

「まだ動きが見えないため不明ですが、数と分布規模からして鬼は確実に超えるものかと・・・!」

「近場にヒーローはいないのか!?」


15 : 以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/23(月) 00:51:58 /Yd52x42

「んだここ・・・」
サイタマとガンツチームが転送された場所は、O市の一角だった。

「とりあえずぬらりひょんってのを見つけてブッ殺せばいいんだよな?」
「おい!待ってくれ!エリアを超えると頭の爆弾が・・・!
え・・・?え?・・・ええええ!?」
オールバックの青年(以下加藤)は止めに入ったが、目の前の光景に絶句した。

ガンツチームが転送されてきた場所は制限されたエリアのラインギリギリの場所だった(とはいえ数メートル進まないとアラームが鳴らない程度だが)。

それをサイタマはエリアの方に走って行き、
あろうことか何事もなかったかのようにエリアを超えた。

どういう訳か頭の爆弾が作動しないらしい。

いや、埋め込まれていないのか?


17 : 以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/23(月) 01:31:56 /Yd52x42
うわん!!


うわん!!!

「うるせー」
バゴッ
さっきの連中のところを離れてからずっとうわんうわん叫びまくっていた奴。

たった今見つけたがとりあえずこいつは多分ぬらりひょんじゃなんだろう。

見た目が違いすぎる。


エリアの内側、ガンツチーム達はさまざまな異形の妖怪、
いや、「妖怪星人」とでも言うべきか...?それらを相手に戦うのに手一杯で、すぐ近くに存在する、
過去最強最悪の星人にまだ気づかないでいた。



18 : 以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/23(月) 01:42:54 /Yd52x42
「田を返せぇッー!」

大柄で恵体の顎髭を蓄えた男(以下風)は、度重なる虐待の末ガンツ部屋に転送されてきた子供(以下タケシ)を守るため小ぶりのビルほどの大きさのある泥田坊を相手に奮戦していた。

風が与えたダメージに加え
タケシが見よう見まねで放った風の得意技である「鉄山靠」、
それらが重なり泥田坊はかなり弱っていたが
意地であるかのように2人を殺さんと襲いかかる。

泥田坊を首を素手で捥ぐことを考えた風は、泥田坊の頭部によじ登ろうとしていた。

「きんにくらいだぁーっ!」
何度も振り落とされそうになりながらも、下で待っているタケシのため死ぬわけにはいかなかった。

そうしたなかで一閃、
泥田坊の脳天が突然の破裂した。



19 : 以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/23(月) 01:49:33 /Yd52x42
風が泥田坊の脳漿の飛沫を通り抜けて下に着地した人影を見やると、
それはつい先ほどガンツ部屋にいたスキンヘッドに白いマントの男だった。


「『まだ』...俺より強い奴がおった...」

風はもはや地獄絵図と化した道頓堀の摩天楼を駆けるその男を眺め、そうつぶやいた。



20 : 以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/23(月) 02:05:44 /Yd52x42
「ったくどこにいんだよ...ぬらり...ぬる....ああもうまた名前忘れた」
ガンツチームが大阪のチームと衝突する中、
サイタマはすでに雑魚を数えなくとも13体ほどは斃していた。

あのオールバックいわく身を守るらしい黒スーツを着た連中を一撃で斬り殺していた鳥の頭に
人間の男のような胴体、両腕は刃となっており下半身は蛇、それが6mほどある化け物、
巨大な単眼の顔面に手二本と足一本が生えた妖怪
「一本だたら。

舌と毛髪が大蛇となっている何mもある老婆
「蛇骨婆」等。

ほとんどがガンツ部屋で数回100点を取るような猛者が徒党を組み始めて勝てるような相手にだったが、
やはり彼にかかればどれも一撃で終わった。



21 : 以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/23(月) 02:24:37 /Yd52x42
すでにヒーロー協会では災害レベル「竜」に設定されており、
O市及び近辺の地域の人間への避難勧告が出されていた。

そんな中、O市の一角で体育座りになり震えている大阪のガンツチームが1人。

今回のミッションが初参加。

当然機転の利く立ち回りなんてできるはずのない、
メガネをかけた17歳のどこにでもいる男子高校生だった。

思い出す。

友人と自転車を並走していた帰り道、事故にあいいつの間にか
あの黒い玉の部屋に居たこと。

道頓堀に転送されたと思ったら、川から頭を覗かせたあの巨大な牛の化け物が放った無数の蜘蛛。


それが友人の肉を抉り、血をすすり、自分の見ている目の前で沢山の魑魅魍魎が沢山の人々を殺したこと。



22 : 以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/23(月) 02:32:14 /Yd52x42
きゅるーきゅるー。



下を向いていたが、耳はしっかりと捉えた。

その鳴き声。



きゅるるー。

聞きたくない。

だが聞かなければならない。

顔を上げたくない。

だが上げねば死ぬ。

小刻みに震える体に鞭打ち、ゆっくりと前を見やった。


あのとき友人を殺した無数の蜘蛛。

そして様々な様相の異形たち。

ねばっこい目つきでこちらを見つめ、ついに組みつかれた。

「ひひひひひ」
「うふふふふふふ」
「へへへへっ」
「ひっぱれひっぱれ」
6、7体ほどの妖怪星人が四肢を根っこから掴み、捥ぎ取ろうとする。

死ぬのかと思ったらその時、
化け物たちの体が急に吹き飛んだ。




24 : 以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/23(月) 03:14:49 /Yd52x42

目の前に立っていたのは、ガンツ部屋にあったXショットガンを握りしめ、スーツを身に纏い、女のような小綺麗な顔つきをし、どこかかかわってはいけない、そんな感じのする瞳でこちらを見つめる男だった。



27 : 以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/23(月) 19:06:58 /Yd52x42
「えっとなー
それ上のトリガーだけ引いてなー
んで妖怪見つけたらエンタキーなーっ」
ミッション初参加の高校生(以下メガネ)は先ほど自分を助けた男にガンツバイクの後部座席に乗せられ、デジカメがガンサイトに貼り付けられたXガンとそのデジカメにUSBケーブルで繋げられたPCを渡されそう説明を受けた。

「まだ一匹もみつかりませーん」

「くそっさっきから全然おらん。

もうすぐ終わるんか?」

かなり大規模なミッションだったにも関わらず、原因は分からないが始まってからまだ20分も立たないうちに生きている星人はほとんど見かけなくなっていた。

が、一匹。

メガネの視線の先にいたのは、禿げ上がった頭、老人のような顔、
浮き出ているあばらとは対照的に異常に腹も膨れた全裸の男。

「餓鬼」、というやつである。

「おい!何点やねん!」
男(以下花紀京)が問うと、
メガネは餓鬼に向かい上のトリガーのみを引きPCのモニターに視線をうつした。



28 : 以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/23(月) 19:19:46 /Yd52x42
1point
モニターにはそう表示された。

「えーと...一点みたいですわ」
花紀京は突然バイクを止めた。

「あれ?歩いてくんですか?」
「おう、それ持ってこいや。

「あっはい!」
花紀京はメガネを連れ何も言わず餓鬼の後をつけていく。

メガネは花紀京の思惑を察した気になり、口を開いた。

「あ、そっか。

あいつが仲間んとこいけば5人おれば最低5点ですね...」
が、それは見当違いだった。

「あの類の奴やと10体おっても10にしかならへん...そんなん期待しとらん。

俺は100点の奴をねらってんねん...
そいつがまだおるはずや」


29 : 以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/23(月) 19:22:04 /Yd52x42
「きたきたきた
臭ってきたでぇ...!」

餓鬼の後をつけていくと、そこにあったのは
道頓堀川に設置された
工事用設備。

そしておびただしい数の餓鬼。

先ほど単体で一点と表示されていたが、これら全てを相手にするだけで簡単に100点に届くのではないか。

が、それよりも異様だったのはその餓鬼が群がるように、あるいは拝むようにして視線を注いでいる、
工事用設備の比較的高台に位置する仮説オフィスの上に乗った
三体の星人だった。

屋根の両端にいるのは天狗、そして陰陽師のような格好をした
犬男...?とでも言うべきだろうか。

そしてその真ん中。

天狗と犬を従えるようにしてたたずむ老人のような星人。

まちがいなく「ぬらりひょん」であった。




32 : 以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/23(月) 21:58:50 /Yd52x42
「きゅるるるるる・・・ご
ドガッ
「たぶんこいつもちげーんだろー?」
両手のひらを払いながらつまらなそうな表情で本来なら単体でも災害レベル虎の上位には食い込むであろう星人を見下ろしサイタマはそういった。

奥でなにやら「ぴょん太!ぴょん太が!」
などと叫んでいる子供がいるがこの化け物のことか?
少し目をやればセミショートヘアの女(以下山崎)と加藤がぴょん太(?)の体内に吸収された人間の救出を行っている。

とりあえず手伝おうと近寄ろうとすると、
加藤の方から話しかけてきた。



33 : 以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/23(月) 22:09:03 /Yd52x42
「なんなんだあんたは?見た所スーツも着ていないようだが...、
あの部屋の関係者かなにかか?」
加藤がそう問うた。

「は?なに言ってんのお前?」
当然援軍として死んでもいないのになんの予告もなく転送、言わばGANTZにスカウトされただけであり、
今でも状況をほとんど理解出来ていないサイタマにその質問はおよそ見当違いのものだった。

「とにかく名前だけでも教え...ん?」
サイタマから少し視線を外したすきに、彼は何処かへ消えていた。

「どうしたん?」
山崎が加藤にそう問いかけるも加藤の耳には入って来ず、ただ加藤の頭には疑問符ばかりが浮かんでいた。

(本当に何者なんだ?)


34 : 以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/26(木) 12:20:50 uSvJttoI
サイタマは加藤の確実に長くなるであろう話が始まると同時に全速力でその場を去っていた。

どうにもああいう人間は苦手だ。

ひゅんっ
普通の人間なら肉眼で捉えることも難しい速度だったが、
サイタマの驚異的な動体視力はその白い刃をハッキリと捉え、なんのこともなくそれを回避した。

「なにがしそれがし...キデン...」
「ふふふっばかばか...うふふ...」
サイタマの目の前に立っていたのは
比喩などではなくそんまま能面の般若と小面のような顔をした、
着流し姿の浪人のような2体の星人だった。



35 : 以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/26(木) 14:08:13 uSvJttoI
メガネは、ぬらりひょんの首を抱え全力で逃げていた。

さっきから何度も同じ映像が頭の中でループしている。

餓鬼の大群。

それを見下ろす天狗と犬神。

そしてぬらりひょん。


花紀京がその三体の星人のデータをPCでスキャンする。

天狗と犬神はモニターにそれぞれ「71点」と「68点」という
点数と災害レベル「鬼」という表示がなされた。

ぬらりひょんはスキャンされたデータによると「100点」
そして災害レベル「竜~」であった。

花紀京がまだ気づいていないらしいぬらりひょんに銃口を向ける。

トリガーに手をかける指は震えていた。

原因はマリファナ切れか、はたまた恐怖感か。



36 : 以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/27(金) 23:29:19 U5wSeFsA
ともかく花紀京はぬらりひょんに向けたXショットガンのトリガーを引き絞った。


数秒のラグの後、
最初の老人の姿から幼女に、そしてそれがものすごいスピードで成熟するように髪の長い全裸の女の姿となっていたぬらりひょんの上半身が爆ぜた。


「やった...!?」
メガネが呟くが、当然やってない。

ぬらりひょんは現在胴体と下半身が文字通り薄皮一枚でつながった状態。

普通の人間なら即死だが、
100点の星人がそんな呆気ない終わり方をする筈もなかった。



37 : 以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/28(土) 00:56:14 hdZWGCy2
ぬらりひょんの胴体はすぐに繋がり、それと同時に体格は男のようになり、髪はなくなるまで短くなってゆき、瞑った目は異常なまでに切れ長となってゆく。

その二つ合わせれば顔の半分を覆い尽くすかのような目が、
ぬらりひょんの足元の餓鬼達に向けて開かれた。

怒っている...?ように見える。

ぬらりひょんは両目からサーチライトのような光線で餓鬼を照らし、それに当たった餓鬼は次々と溶かされていった。

そして光線を放射したまま、きょろきょろと辺りを見回す。

ぬらりひょんの視界に入った建物や避難に遅れていた一般人が溶けてなくなる。

間違いなくこちらを探していた。



38 : 以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/29(日) 00:42:04 103uHC1c
しらばらくするとぬらりひょんがこちらに近づいてきた。

「わっおわっ
わああああああああ!!」
花紀京が半狂乱になりその場を離れる。

ど素人であるメガネも事の重大さを察しついていった。

逃げつつも花紀京は振り返りざまにXショットガンを乱射した。

ぬらりひょんの上半身全体が膨張し、破裂する。

首が飛びこちらに転がってきた際に、
花紀京は目を光線を肩口と側頭部に浴びた。



39 : 以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/29(日) 00:42:40 103uHC1c
メガネは光線を発し続けるぬらりひょんの生首と花紀京の死体を前に半ば泣き顔になり立ち尽くしていた。

どうすることもできずしどろもどろしていたメガネの目の前に、
天狗と犬神が空を舞い降りたった。

遠目だと自分とさほど変わらない背丈にも見えたが、そんなことはなかった。

2体とも4mは優に超えているだろうか。

その2体の星人がぞっとするような目つきでこちらを見下ろしてきた。



40 : 以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/29(日) 00:43:14 103uHC1c
「あっわあっわあああああああ!!」
メガネはパニック状態に陥り、PCに接続したままのXガンを天狗と犬神に交互に向けるようにして振り回す。

天狗は煩わしそうな表情をし、メガネの腕からXガンをもぎ取り、
自分の背後に投げ捨てた。

天狗と犬神の無言の圧力に耐えかねたメガネは、あるものの存在を思い出した。

自分の右側にある、破壊光線を発し続けるぬらりひょんの首。



41 : 以下、名無しが深夜にお送りします:2015/11/29(日) 00:44:06 103uHC1c
「ああああああああ!!!」
スーツを着ているのもあるが自分でも信じられないような速さで
メガネはぬらりひょんの首を拾い、両手で掲げ目の前で振り回した。

天狗と犬神はとっさにその場から飛び去る。

その際に天狗が道頓堀川へ向けて指示を出すように指差すと、
水面が蠢き始める。



42 : 以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/02(水) 17:18:42 u6D38F9E
間も無く水面から見ただけで鳥肌が立つような魑魅魍魎が大量に出現する。

様々な動物の体の一部を張り合わせたようなもの、
昆虫が異常に肥大化したようなもの。

そして...、
友人の命を奪った牛の化け物。

よく見れば下半身は蜘蛛のようである。

「牛鬼」というやつだろうか。



43 : 以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/04(金) 20:46:39 ZZnUtssQ
その頃サイタマは、般若の太刀を期待外れと言わんばかりの面持ちで避け続けていた。

「はぁっ!!!」
「ぬ"ん!!!」
「え"いや"!!!!!!」
先ほど小面を右ストレート1発で仕留めてから般若が急に冷静さを失い始めている。

「は"ぁっ!!!!!」
サイタマは般若の太刀を片手で受け止めた。

「あのなー」
「フーッ...フーッ....キデン...クサイぞ.......
斬りとうてぐはっぱあああああああ!!!!」
腹パン1発で般若の上半身が吹き飛ぶ。

「ちょっとべつんとこ行きたくなったからいい加減にしろ」
サイタマは大量の妖怪の鳴き声が響き渡る方角へと走り出した。





46 : 以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/10(木) 15:54:32 iqbw3rPk
メガネは走った。

ほとんど覚醒状態だったといってもいい。


少し距離が取れた時点で牛鬼の方へ向き直り後退しつつ光線を浴びせる。


「死ねえええええええ!!!」

牛鬼がヴモオオオオオオという叫び声をあげ悶絶する。


頭部を重点的に狙ったためその顔は爛れて凄まじい様相になっていた。



47 : 以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/10(木) 16:09:05 iqbw3rPk
だがメガネはあることに違和感を覚える。


ぬらりひょんの目から放たれる光線の火力は一定で、徐々に牛鬼の分厚い皮膚を破壊していたが、

頭部に限らず体の随所が弾け飛んでいるのだ。


眼鏡をかけていてもやはり視力は悪いので詳しくは分からなかったが、

人(?)のように見えた。


驚いたことに光線が彼の頭部を掠めたはずなのにピンピンしている。


ものの数秒で牛鬼は力尽き、

道頓堀川の水面へゆっくりと倒れこんだ。


「・・・なんやねんなあいつ・・・」

その光景を大阪チーム最強の男、岡八郎は手近なビルの上から怪訝な面持ちで眺めていることしか出来なかった。


自分でもあの牛鬼を瞬殺出来る自信はあった。


だが明らかに生身のマントを羽織った男が拳だけであのレベルの星人を屠る様子はまさに異常という他なかった。





49 : 以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/12(土) 00:57:37 fvPY8bY2
とどめの一発を牛鬼の顔面に打ち込む際に、

速度をつけすぎてかなりの距離まですっ飛んでしまった。


「あーあメンドくせー.....まあぼちぼちぬるぬるとやらも出る頃だろ。

ちゃっちゃと戻るか。

5kmほど離れた地点。

そしてジョギングにもかかわらずサイタマはありえない速度できた方へと走り出した。



50 : 以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/12(土) 21:45:58 fvPY8bY2
牛鬼が倒れてから30分ほど経った。


天狗と犬神は大阪の猛者二人に敗れ、

その二人のうち一人はぬらりひょんに喰われ、もう一人の方も四肢をもがれ戦闘不能となった。


岡と風の奮戦もむなしく、ぬらりひょんの余裕は崩せない。

ぬらりひょんは幾度もの変態を繰り返し、
現在の姿は第9形態。


3m弱程の大きさ。

頭頂部から背中にかけて突き出た長い角や棘。

むき出しになった攻撃的な表情にも見える頭蓋に
皮膚はなく骨と筋肉のみの胴体。

肋骨の上に心臓が浮き出、両腕の肘からは鎌のような長い突起物が出ている。

それが「フーッフーッ」という吐息をもらし、こちらを見下ろしていた。



51 : 以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/12(土) 22:00:07 fvPY8bY2
風がぬらりひょんに掴みかかるが、一瞬で勝負はついた。


ただでさえスーツの機能は失われているのにその上疲れ切っている風を戦闘不能に追い込むことなどぬらりひょんにとっては造作もなかった。


風は、顎を撫でられただけでその場に倒れ込み動けなくなった。

加藤を含めたその場の誰しもが絶望の表情を浮かべる中、


ぬらりひょんの向かい側、加藤達の背後ににマントを翻す人影。



52 : 以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/12(土) 22:11:35 fvPY8bY2
「お、見た目からして全然違うような気もするけど手え焼いてるっぽいし、お前でいいのかな?」

サイタマはぬらりひょんにそう問いかける。

「え...?あのハゲさっきウチらと一緒におった...
いやでも生身やん!なんであないに自信満々やねんあいつ!」
「いや」
杏の言葉に対して加藤がやや被せ気味にそういった。


「彼ならひょっとしたら...」


53 : 以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/12(土) 22:17:22 fvPY8bY2
「フーッ....フーッ....」
サイタマとぬらりひょんの睨み合いが続く。

加藤にはサイタマの表情がプレゼント期待する子供のようないきいきとしたものに見えた。

「下がってな」

サイタマがその場の全員にそう言うのとほぼ同時だった。

十数メートルはあった距離をぬらりひょんは一瞬で移動し、サイタマに券撃を浴びせかける。


が、サイタマは紙一重でそれを避け、
自分の横を通過したぬらりひょんの腕を見つめていた。



54 : 以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/12(土) 22:22:53 fvPY8bY2
「フーッ....なるほど...」

その言葉を言い終わるか終わらないかのタイミング、
ぬらりひょんはサイタマに連打をしかける。

「少しはやりそうだな」
スローで見ればかなり無駄の多い動き、だが驚異的なスピードで連打を避け続けていたサイタマはそう呟くとぬらりひょんの腹にストレートを打ち込む。

凄まじい勢いでぬらりひょんは地面と水平に吹き飛び、遥か向こうのビルの壁面に衝突した。



55 : 以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/12(土) 22:33:05 fvPY8bY2
「加藤くん...?確かうちの部屋の新参だったわよね・・・?」
レイカが加藤に困惑と驚愕の入り混じった面持ちで問いかける。

「ああ...その筈だ....
だが本当に何m
「俺は」

サイタマが加藤の言葉を遮る。


「趣味でヒーローをやっている者だ」

ぬらりひょんがすっ飛んだ方向からレーザービームが飛んできた。


サイタマはこれを交わすがビームはサイタマの背後の建造物にあたり建造物は四散する。

遥か遠くでぬらりひょんが立ち上がる。

サイタマのパンチで腹に空いた穴は完全に治癒していた。

「フーッ.......面白い......!!」
ぬらりひょんはサイタマのいる地点に
目にも止まらぬスピードでジャンプし、

拳を叩きつけるようにして地面に打ち込む。

「こいよ!」
すでにぬらりひょんの背後に移動していたサイタマはぬらりひょんを煽り立てる。



56 : 以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/12(土) 22:42:52 fvPY8bY2
ぬらりひょんがサイタマの方を向くと同時にサイタマはありえない高度のバック宙により背後の半壊したグリコビルを超え、

ぬらりひょんはそれを追った。


「連続普通のパンチ」

サイタマは落下しつつ壁を置くようにして
ラッシュをしぬらりひょんを迎撃する。

が、
驚いたことにぬらりひょんはそれらの全てを受け止め、右ストレートをサイタマにお見舞いした。


「うおっ!」

サイタマはビルというビルに亀裂を走らせ跳ね返りながら吹っ飛ぶ。

が、当然吹っ飛んだというだけで本人は全くの無傷だった。



57 : 以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/15(火) 20:30:56 J9WOCT3s
とはいえサイタマは驚いたことを隠そうとしなかった。


何せ彼の虚を突き攻撃をあてた者は無敵の力を手に入れてから初めてだったのである。


殴られた場所から十数メートルの所でズザザザという音を立て
滑るように後退して着地しつつ
サイタマは前方の空を見上げた。

ぬらりひょんが自分の目の前に着地する。

「こうか?
こんな感じか?」
ぬらりひょんの右腕が肥大化する。

ぬらりひょんがその拳で足下を殴ると、

地割れが起きあたりの建物が沈み、サイタマはほんの一瞬浮き上がり亀裂の中に落下していく。



58 : 以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/16(水) 18:14:22 D4vlEl9I
その拳の威力は最初にサイタマがぬらりひょんを殴りつけた際のものにも引けを取らない程だった。


追い討ちをかけるようにぬらりひょんは亀裂の間に落ちたサイタマへ向けて超能力を使用する。


「お!?おお!!??んだこれ!?
筋肉がなんかぷるぷるする」

並の人間なら喰らえば四肢が捻じ切れる程の出力だが、サイタマには蚊に刺されたほどのダメージも与えられない。


サイタマは壁を蹴り上がってゆき、亀裂の隙間から顔を出した。



59 : 以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/16(水) 18:22:30 D4vlEl9I
その瞬間にぬらりひょんがサイタマの頭を殴りつける。


が、首を左右に振るキャラクターの置物よろしくぶるるんと揺れただけでダメージを負ったようには見えない。


「やったなこのやろー」

言うが早いがサイタマはアッパーカットをお見舞いし、
ぬらりひょんの首が吹き飛ぶ。


「はははは!ははははは!」

しかしぬらりひょんは倒れる様子もなく、
むき出しの声帯からさも愉しそうな笑い声をあげ再びサイタマとのインファイトを展開する。




61 : 以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/18(金) 20:45:28 5k91Q7UM
「両手・連続普通のパンチッ!」

ぬらりひょんが10個ほどのの肉片となり飛び散る。


が、それらの肉片は宙を舞う間に堆積を増し、
それぞれが小柄な女性のような姿になった。

それらの目は焦点があっておらず飛び出しており、
どこか両生類を彷彿とさせる顔をしている。



62 : 以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/19(土) 19:58:56 80ulQPN.
それらここの戦闘力は先ほどの形態とも引けをとらないらしく、

サイタマほどではないにしろ拳や足のストロークは恐ろしく速い。


「うわっ・・・気持ち悪・・・」
サイタマに攻撃はあたりこそしたが、あきらかに力不足である。


やはりサイタマがダメージを受けている様子がない上、

ぬらりひょん一体の拳が1発当たるより前に3体以上のぬらりひょんは消し飛んでいる。


「必殺"マジシリーズ"・・・」

サイタマはさすがに煩わしくなり、

手のひらを上に向けしゃがみ込む。


「マジちゃぶ台返し」



64 : 以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/24(木) 13:06:09 mLoR8roY
サイタマが文字通りちゃぶ台返しの要領で地面をひっくり返す。

瓦礫はありえない高度まで浮き、ぬらりひょんも同じように宙を舞った。


「なんのこれしき...!なんの...!!!なんの...!!!」

複数体となっていたぬらりひょんは再び一つの結合し、もとの死神の様な姿に戻る。

そして生首の時より更に高火力かつ凝縮された光線を放つ。


光線が当たったあらゆる地面や建物が爆散し、鉄筋コンクリートは煙と化し、
雲は裂ける。


サイタマの姿は見えなくなり、ぬらりひょんは勝利を確信した。


が、その数秒後、顔面に禿げた男の顔。


ぬらりひょんは後悔していなかった。


これほどまでに強力な異星人は初めてであった。

「マジ殴り」

サイタマの正面から5kmほどにわたって放射状にエネルギー波が炸裂し、
彼方の海では大波を起こし、
余波は遥か遠くの天候までも晴天とした。


閃光がおさまるころには、ぬらりひょんは跡形もなく消し飛んでいた。



65 : 以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/24(木) 13:23:18 mLoR8roY
「・・・っていうこともあったんだけど、あいつはこれまでの怪人でも2、3番目ぐらいには入るかな。

強かったよ」
ジェノスに過去の話をせびられ、ぬらりひょんとの戦いのことを話していた所だった。

「確かに半年ほど前O市で怪人の大量発生が起こっていましたね。

まさか先生が一人で片付けていたとは。

流石です」
「やめろよ気持ち悪い。

でも一個引っかかることがあんだよなあ・・・」
「はい?」


66 : 以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/24(木) 13:27:25 mLoR8roY
「いやあな、その後あの黒い玉の部屋に戻ったんだけど、突然その部屋にいた中坊がカタストロフィだとかなんとか言い始めて。

あれはなんだったんだろうなあ・・・」

ズズンッ!!
話していると突然地面が大きく揺れた。


湯のみからお茶が溢れ服につき、思わずサイタマは顔をしかめる。

ジェノスはとっさにカーテンを開け外を見渡した。


空は赤く染まり、巨大な宇宙船や見上げるほどのロボット。

それに大量の武装した巨人があたりを跋扈していた。



67 : 以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/24(木) 13:30:09 mLoR8roY
ピリリリ!
尻ポケットに入れていた携帯が鳴り、ジェノスはその電話に出る。


『もしもし、ジェノス様!S級集会です!
災害レベル竜いじょ______』
「いや、集まらずとも問題はない。

こちらでも状況は把握できている」

ジェノスはサイタマの後についていき外に出た。


「いくか。

「はい。


おしまい