11: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 19:00:00.90 ID:OIeXJANv0
盛岡駅
京太郎「八幡平から着いたぜ、17時ちょい過ぎか」
京太郎「盛岡から久慈に行くには……」
京太郎「JRだと青森県に出ちゃうから駄目だな」
京太郎「となるとバスか?この時間にあるかな?」
京太郎「おお、『久慈こはく号』で最終便がある!」
京太郎「んじゃ、岩手の沿岸部に行きますか~」
12: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 19:01:38.32 ID:OIeXJANv0
久慈 駅前ホテル
京太郎「さーて、チェックインは済ませたぞ」
京太郎「明日は朝一で『浄土ヶ浜』行きたいから……」
京太郎「遅くても朝7時までには駅にいないとな」
京太郎「……んー?」グゥゥゥ
京太郎「腹減ったから飯食いに行くか」
京太郎「駅前に何か食えるとこあったかな?」
13: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 19:03:50.15 ID:OIeXJANv0
喫茶モカ
京太郎「……ん?喫茶店か」
京太郎「地方で、それも夜に営業してる」
京太郎「珍しいなー、ここに入るか」ガチャ
店員「いらっしゃいのん」
京太郎(あれ?この店内どっかで見たこと……)
14: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 19:06:47.74 ID:OIeXJANv0
※台風とか天候が悪い日の夜は早く閉まるのかな?
店員「一人ですかのん?お好きなとこどうぞのん」
京太郎「あ、はい」キョロキョロ
京太郎(壁にサインがたくさん飾ってる……)
京太郎(そうか、某朝ドラに登場したとこか!)
京太郎(……うーむ、懐かしい雰囲気な店だ)
15: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 19:08:30.45 ID:OIeXJANv0
京太郎「すみません、注文いいですか?」
店員「はいのん、どうぞのん」
京太郎「ナポリタン、コーヒーセットを1つ」
京太郎「それとたまごサンドを単品で御願いします」
店員「分かりましたのん」
京太郎(昼飯、温泉卵だけだったからイケるだろ)
17: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 19:11:06.72 ID:OIeXJANv0
店員「どうぞのん」コト
京太郎「おお、ドラマで見たナポリタン」
京太郎「うむ、美味い」モグモグ
京太郎「これがあばずれの食い物か」
京太郎「どこか懐かしい味だな……」
18: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 19:13:06.95 ID:OIeXJANv0
店員「どうぞのん」コト
京太郎「おお、ドラマで見たたまごサンド」
京太郎「うむ、美味い」モグモグ
京太郎「オムレツみたいな玉子だな」
京太郎「見た目に反して腹がふくれそう」
京太郎「ちょいと一服」ズズゥ
19: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 19:15:43.04 ID:OIeXJANv0
翌朝 久慈駅前
京太郎「昨日の夜は食ったぜ……」
京太郎「そのおかげであんま腹減ってねぇ」
京太郎「お、朝に見て気づいたけど駅2つあるのな」
京太郎「JRと三陸鉄道か、宮古へは三陸鉄道だな」
京太郎「うーん、それにしても……」キョロキョロ
京太郎「久慈って震災の被害は無かったのか?」
京太郎「なんか被害らしき被害が見えないな」
20: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 19:18:08.43 ID:OIeXJANv0
宮古駅
京太郎「気づいたら宮古に着いてた」
京太郎「直ぐ眠っちまったから景色見てねぇ……」
京太郎「朝起きて直ぐに1時間半だったからなー」
京太郎「あ、宮古にも久慈と同じく駅2つあるのか」
京太郎「見た感じ宮古の方が栄えてそうな雰囲気」
京太郎「……っと、浄土ヶ浜行きのバス来たな」
21: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 19:20:29.69 ID:OIeXJANv0
ブロロロロロロ
京太郎「いやー!楽しみだわー!」
京太郎「いよいよ浄土ヶ浜を見れるのかー♪」
京太郎「今回の旅じゃ山や森がメインだったし」
京太郎「内陸県民にしてみりゃ憧れがあるからなー」
京太郎「長野って海無いし、行くまで遠いんだよ」
京太郎「まだかな~…………!!?」チラッ
22: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 19:22:04.55 ID:OIeXJANv0
京太郎「なっ、なんだよ……これ……」
京太郎(建物が……『ない』!?)
京太郎(こ、これ、見たら分かるけど……)
京太郎(建物が『あった』場所だろ、絶対……)
京太郎(あっ!向こうにあるのは鉄柱か!?)
京太郎「捻じ切れちまってるよ……」ゾクッ
23: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 19:23:47.17 ID:OIeXJANv0
京太郎「…………」
京太郎(確かに、復興は進んでるよ……)
京太郎(工事しているのだって見えるし)
京太郎(住居だって新しいのがチラホラ見える)
京太郎(でもよ……今でもこんな状態かよ……)
京太郎「浮かれちまって……馬鹿だな、俺……」
24: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 19:25:51.50 ID:OIeXJANv0
京太郎「こんなにたくさんのモノが奪われて……」
京太郎「自然の力って……本当に怖いんだな……」
京太郎(海が楽しみとか……無神経な発言だった!)
京太郎(実際には何人もの人が亡くなったり……)
京太郎(助かっても自殺した人もいるんだよな……)
京太郎「現場見て……思い知ったわ……」
25: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 19:28:02.60 ID:OIeXJANv0
奥浄土ヶ浜
運転手「お客さん着いたのん、大丈夫のん?」
京太郎「…………え?」ボー
運転手「終点だのん、降りないのん?」
京太郎「……あ、はい!降ります!」ガタッ
運転手「……大丈夫かのん?」
京太郎「はっ、はい、すみません……」スタスタ
26: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 19:29:38.89 ID:OIeXJANv0
京太郎「…………」
京太郎「……綺麗なところだよな」
京太郎「うん、美しい景観だよ……」
京太郎「…………」パシャ
京太郎「息をのむ程の絶景だけどよ……」
京太郎「さっきの光景が、頭から消えないな……」
27: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 19:31:47.51 ID:OIeXJANv0
京太郎「……ん?」
「…………」
京太郎「……あそこの岩の上」
京太郎「女の人が立ってないか……?」
京太郎「おいおい、結構高いじゃんかよ」
京太郎「危ないんじゃ…………まさか!!」
28: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 19:34:04.81 ID:OIeXJANv0
塞「……ふぅ……」
「だぁぁあああああああ!!」バシャバシャ
塞「え?何?」クルッ
京太郎「死んじゃ駄目だぁあああ!!」グオオッ
塞「ひいいぃぃっ!?」サッ
京太郎「……んえ?」
ドボーーーーン!!
29: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 19:35:36.20 ID:OIeXJANv0
塞「あああ!あまちゃんか!?アンタは!!」
京太郎「駄目なんだよぉおおおお!!」バシャバシャ
京太郎「ずっと泣いてたら幸せになれない」バシャバシャ
京太郎「だから笑うべきなんだぁぁああ!」バシャバシャ
京太郎「死んじゃ駄目なんだよぉおおおお!!」
塞「…………はい?」キョトン
30: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 19:37:10.68 ID:OIeXJANv0
塞「――よし、怪我はしてないみたいね」
塞「ここは浅いから、頭に怪我してなくて良かった」
京太郎「なんか……その、すみません……」ズーン
塞「流石に驚いたよ、君が海に落ちたのは」
塞「迫ってきたときは殺されるかと思った(笑)」
京太郎「本当に……すみません……」ズーン
31: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 19:39:08.07 ID:OIeXJANv0
塞「え?じょ、ジョークだよ?」
塞「そんな真に受けなくてもさ、ね?」
京太郎「そうですよね……すみません……」ズーン
塞(うわー、めっさ落ち込んでるよ……)
塞(これ私のせいなんだろうか……?)
京太郎「…………」
32: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 19:41:07.60 ID:OIeXJANv0
塞「……あのさ、何かあったの?」
京太郎「……え?」
塞「さっきさ、『死んじゃ駄目』とか言ってたじゃない」
塞「身投げする様に見えちゃった、かな?」
京太郎「いいえ、ただの俺の勘違――」
塞「何があったか、それを聞きたいんだけどな」
京太郎「……実は――」
33: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 19:42:45.57 ID:OIeXJANv0
塞「……なるほどね、あの光景を見ちゃって、か」
京太郎「色々とショックを受けてしまいまして……」
塞「それで勘違いしちゃった訳ね」
京太郎「……馬鹿ですよね、俺って……」ズーン
塞(見た目は完全にチャラ男なんだけど)
塞(この子……意外と純粋なんだなー)
34: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 19:44:09.24 ID:OIeXJANv0
塞「君、名前は?」
京太郎「……須賀京太郎です、あ、高一です」
塞「私は臼沢塞よ、よろしく」
京太郎「どうも……」ペコッ
塞「今日は、朝早くからなんでここに?」
京太郎「海を見たくて観光に来まして……」
35: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 19:46:12.82 ID:OIeXJANv0
塞「海?海が珍しいっての?」
京太郎「俺、長野県に住んでまして……」
塞「長野県!?ちょ、ここ岩手だよ!」
京太郎「クジで岩手旅行引いてしまいまして……」
塞「はー、高一でよく県外旅行なんてできるわねー」
京太郎「……無駄に行動力はあるみたいなんですよ」
京太郎「さっきみたいな馬鹿な方向にでしょうけど……」
36: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 19:48:03.64 ID:OIeXJANv0
京太郎「ふふふふふ……」ズーン
塞(うわー、どうしたもんかねこりゃー)
塞(特に義理は無いけど、このままってのはな……)
塞(一応、私を助けようとしての行動だったしねー)
塞「…………」
塞「……おい!京太郎!!」
37: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 19:49:42.78 ID:OIeXJANv0
京太郎「ファッ!ふぁい!?」ビクッ
塞「いつまでもウジウジするな!男だろ!」
塞「両親からもらった名前が泣くぞ!」
京太郎「はっ、はい……」
塞「せっかくの海に来たんでしょ!」
塞「さっさと水着に着替えなさい!!」
京太郎「ひえっ……!」ビクッ
39: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 19:51:34.32 ID:OIeXJANv0
塞「え……何よ?」
京太郎「いえ、海パンは持ってきたんですけど」
塞「なんだ、アンタも泳ぐつもりだったんじゃない」
京太郎「こ、ここで着替えればいいんですか?」
塞「……んんん、んな訳あるかー!」
塞「さっさとレストハウスで着替えてこーい!」
京太郎「わっ、分かりましたー!」ダダダ
40: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 19:53:33.58 ID:OIeXJANv0
塞「んー!そりゃ!」ヒュッ
京太郎「ちょっ、塞さん!投げ過ぎですよ!」
塞「あっはは、ごめんねー」バシャ
京太郎「取ってきますよ、もー」バシャバシャ
塞(……うーむ、凄く犬っぽい)ジー
京太郎「ボール投げますよー」
41: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 19:55:10.49 ID:OIeXJANv0
京太郎「それにしても、浄土ヶ浜って泳げるんですね」
塞「そりゃそうよ、ここ海だし」
京太郎「いやー、先にこの景観見ちゃったら」
京太郎「絶対に海水浴場だなんて思わないですって」
塞「ちなみに、ここは『海水』じゃなくて『快水』浴場よ」
京太郎「快水、ですか?初めて聞きましたけど」
塞「環境省が決めた水質の良い水浴場のこと」
42: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 19:57:17.80 ID:OIeXJANv0
京太郎「ほえー、物知りですねー」
塞「それと、ほら、あっち見てみなさい」
京太郎「ん?レストハウスが賑やかになってきた」
塞「そこのスタッフの人たちよ」
塞「ということは、そろそろ混み始めるか……」
京太郎「?」
43: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 19:59:21.87 ID:OIeXJANv0
塞「ここ景勝地としても浴場としても人気だからね」
塞「水も綺麗でとても静かな場所だし」
塞「夏なんて人で溢れかえっちゃうのよ」
塞「静かに観光したいならシーズン外か朝一番ね」
京太郎「泳ぐ前に写真撮っておいて良かったー」
塞「……あ、バスが来た」
44: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 20:02:21.43 ID:OIeXJANv0
おばちゃんS「おもろー!」ゾロゾロ
おばちゃんT「おもろー!」ゾロゾロ
おばちゃんU「おもろー!」ゾロゾロ
おばちゃんV「おもろー!」ゾロゾロ
おばちゃんW「おもろー!」ゾロゾロ
京太郎(未だかつてない手抜きを感じる……)
45: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 20:04:17.03 ID:OIeXJANv0
京太郎「って、あれ何人降りてくるんですか……?」
塞「シーズンだからねぇ……」
京太郎「いやいや多過ぎでしょ、車で来ればいいのに」
塞「ここは許可車両以外の一般車両は来れないのよ」
京太郎「え?そうなんですか?」
塞「4月から10月は×、夜間は年間通じて駄目だけど」
46: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 20:06:28.31 ID:OIeXJANv0
京太郎「……ん?なら塞さんはどうやってここまで?」
京太郎「まさか、この山道を歩いて来たんですか?」
塞「そんなわけないでしょ、まぁ歩いてきたけどさ」
塞「バスで来る途中にホテル見えなかった?」
京太郎「そういや、それらしき建物ありましたね……」
塞「昨日泊まってそこから歩いてきたの」
塞「10分くらいかしら、そうでもなきゃバテるわよ」
47: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 20:08:53.92 ID:OIeXJANv0
ざわっ・・・! ざわっ・・・! ざわっ・・・!
京太郎「あ、岸周辺があっという間に人で一杯に……」
塞「さて、静かな海も満喫したし上がるかな」バシャ
京太郎「そうですね」バシャバシャ
塞「……どう?ちょっとは気分晴れた?」
京太郎「え……?」
48: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 20:10:38.72 ID:OIeXJANv0
塞「私もね、震災後の光景は見てきたんだ」
塞「釜石から宮古まで、電車で来たよ」
塞「本当に元通りになるのかなって……」
京太郎「…………」
塞「君は、今日はどこから来たの?」
京太郎「久慈から、ですが……」
49: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 20:12:10.50 ID:OIeXJANv0
塞「久慈は……どう見えた?」
京太郎「駅前くらいしか分かりませんけど」
京太郎「建物は特に損傷は無かったかと」
塞「駅前は……ね」
京太郎「え……」
塞「駅近くの市役所から海岸までは被害があった」
京太郎「そんな……」ゾクッ
50: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 20:14:21.36 ID:OIeXJANv0
塞「宮古駅周辺もなかなか広くて綺麗だったでしょ?」
京太郎「ええ……」
塞「津波の被害もなく建物の倒壊もなかった……」
塞「でも、そこから徒歩で5分くらい歩いたところわね」
塞「完全な津波の被災地だったそうよ」
京太郎「…………」
塞「でもね、だからといって暗くなる必要はないんだ」ニコッ
51: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 20:16:08.76 ID:OIeXJANv0
塞「確かに、震災の爪痕は今も深く残ってる」
塞「あまりにも……大きな犠牲が出てしまった……」
塞「まだ、立ち上がれない人だって当然いる……」
京太郎「…………」
塞「それでもね、少しずつでも復興は進んでいる」
塞「みんな、前を向こうと頑張っているんだ」
52: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 20:17:59.44 ID:OIeXJANv0
ワー!キャー!ウホッ!アッー!
塞「……この浜だってそうだよ」
塞「今、私たちが見てるこの風景が見れるのだって」
塞「現地のみんなが頑張って取り戻したからなんだ」
京太郎「…………」
塞「だから、君も純粋に旅行を楽しみなさいよ」ニコリ
京太郎「塞さん……」
53: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 20:20:19.82 ID:OIeXJANv0
塞「元気だしなって!イイ男が台無しだぞ!」パァン
京太郎「いだっ!せ、背中ハタかないてください////」
塞「あはっ、元気出てきたじゃない!」
塞「そうそう、自分で言ったんだからそうしないとね」
塞「『笑うべきなんだー!』って、ぷっくくく……」
京太郎「わ!忘れてくださいよそれー////」
京太郎(もろ受け売りだったー!恥ずかしー!!)
54: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 20:22:16.55 ID:OIeXJANv0
京太郎「……ありゃ、バスの時間キツいな」
塞「宮古駅行き、直ぐ来ちゃうね」
京太郎「塞さんも駅まで戻るんですね」
塞「まーね、私は急ぐわけじゃないけど」
京太郎「まだシャワー浴びてないのに……」
塞「……そうだ」ポン
55: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 20:24:56.30 ID:OIeXJANv0
塞「君は急いでるの?」
京太郎「いえ、今日中に盛岡に着けばいいんで」
塞「なら、シャワー浴びたら付き合ってくれない?」
京太郎「ええ、構いませんけど」
塞「よっし、ならさっさと着替えるわよ!」
京太郎「了解です!」
56: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 20:27:15.77 ID:OIeXJANv0
浄土ヶ浜マリンハウス
京太郎「トンネルの向こうは、不思議の街でした」
塞「…………」
京太郎「…………」
塞「うん、ツッコンで欲しかった?」ニコッ
京太郎「すんませんしたーだ」
57: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 20:29:55.96 ID:OIeXJANv0
京太郎「でも、こんなとこがあったとは驚きました」
京太郎「海沿いの道歩いてどこ行くかと思ってたら」
京太郎「小さなトンネルがあってくぐった」
京太郎「そしたら小さな売店が1つありましたとさ」
京太郎「え?なんでこっちにも売店あるんですか?」
京太郎「さっきの快水浴場から結構離れてますよ」
58: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 20:32:12.91 ID:OIeXJANv0
塞「こっちは『浄土ヶ浜マリンハウス』って名前」
塞「マリンハウスでは、ボート観光が売りなのよ」
塞「『青の洞窟』って聞いたことある?」
京太郎「ええ、テレビで見ました、海外のどこだっけ?」
塞「国内でも見れるところが数箇所あるの」
塞「その1つがここ、浄土ヶ浜ってわけよ」
59: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 20:34:06.33 ID:OIeXJANv0
おばちゃんS「おもろー!」ズカズカ
おばちゃんT「おもろー!」ズカズカ
おばちゃんU「おもろー!」ズカズカ
おばちゃんV「おもろー!」ズカズカ
おばちゃんW「おもろー!」ズカズカ
京太郎(こっちも賑わってるんだなー)
60: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 20:35:42.55 ID:OIeXJANv0
受付「お客さん、乗るのん?直ぐ出せるのん」
塞「あ、乗りまーす」
京太郎「乗るんですか?」
塞「来たことはあるけど乗ったことないのよ」
京太郎「初めてなんでワクワクします」
塞「あら、奢らないわよ?」
京太郎「いーですよ、俺も乗ってみたいんで」
61: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 20:37:25.61 ID:OIeXJANv0
受付「ヘルメットとライフジャケット必着のん」
塞「わはっ、楽しみー♪」
受付「あとこれ、あげるのん」サッ
京太郎「かっぱえびせん?」
受付「ウミネコのエサなのん」
塞「へー!餌付けもできるんだ!」
受付「それじゃあ発進するのーん!」ゴゴゴ
62: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 20:39:53.35 ID:OIeXJANv0
ニャア ニャア ニャア
京太郎「うわっ!多い!てか近い!」
塞「人懐っこいというか度胸があるというか」
京太郎「ふふふ、カモメとの見分け方知って――」
塞「ニャアニャア鳴くのはウミネコ、でしょ?」ヒョイ
ウミネコ「うめーうめー」パクッ
京太郎「敵いませんねー」
63: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 20:41:36.02 ID:OIeXJANv0
京太郎「塞さんて、いいなぁ……」ボソッ
塞「……ん…………うんっ!!?」ギョッ
塞(いっ、いきなり何を言うのこの子は……!?)アセッ
塞(ちょっと……どう反応したらいいのよ……)トッ
京太郎(なんか姉さん女房って感じだよなぁ……)
京太郎(あー、母ちゃん元気にしてるかなー)
京太郎「……はっ!」
64: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 20:44:24.21 ID:OIeXJANv0
京太郎「……塞さん」ジッ
塞「な、何かな……?」
京太郎「……動かないで」スッ
塞「!!?」
京太郎「そのままで……」
塞(ちちちちょっとー!?)
65: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 20:46:50.46 ID:OIeXJANv0
塞(いきなりとか!ええっ!?)
塞(ま、まだ会って少ししか経ってないって!)
京太郎「…………」ジッ
塞(そんな真剣な目で見られると!こっ、困る!)
京太郎「はいっ、チーズ!」パシャ
塞「…………ふぇっ」トッ
66: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 20:49:29.69 ID:OIeXJANv0
京太郎「あー、飛んでいっちゃったー」
京太郎「ほらほら、見てくださいよ!」スッ
京太郎「塞さんの頭にウミネコが乗ってたんですよ」
塞「…………」ポカーン
京太郎「良く撮れてるでしょー!あははー!」
塞「……」
67: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 20:51:33.44 ID:OIeXJANv0
塞「ふんっ!」バララッ
京太郎「え、ちょ!なんで俺に餌かけ――」
ニャア ニャア ニャア
京太郎「ぎゃあああ!来るなーーーー!!」バタバタ
船頭「お客さん、船の中に撒かないでほしいのん」
塞「すみませーん」パシャパシャ
68: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 20:54:03.72 ID:OIeXJANv0
京太郎「酷い目に遭った……」
塞「大袈裟ね、良い写真撮れたわよ」プイッ
船頭「えー、目の前に見えるのが『青の洞窟』のん」
船頭「別名『八戸穴』とも言われてるのん」
船頭「ここには不思議な犬の伝承があるのん」
船頭「洞窟を通り抜け、宮古~八戸までワープしたのん」
京太郎(どう考えても無理だろ……)
69: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 20:55:59.92 ID:OIeXJANv0
塞「ふーん、中は薄暗いのね」
京太郎「岩が鍾乳洞みたいだなー」キョロキョロ
塞「鍾乳洞見たことあるの?」
京太郎「ええ、一関の幽玄洞を数日前に見まして」
塞「へー、結構行ってるのねー」
ブッシャアァァアアアアッ!!
70: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 20:57:55.79 ID:OIeXJANv0
京太郎「うおっ!奥から潮吹きが!」
塞「びっ、びっくりしたー!」
船頭「お客さんたち運が良いのん」
船頭「この現象見た人は、幸せになれるのん」
京太郎「やりぃ!俺たち幸せになれるそうですよ!」
塞「そっ、そうね……」ドキッ
塞(意識して言ってるんじゃないのよね……?)
71: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 21:00:00.17 ID:OIeXJANv0
船頭「それじゃあ後ろを見るのん!」
京太郎「おおっ!すげっ!」
塞「うっわー!」キラキラ
船頭「これが『青の洞窟』のん」
船頭「今はエメラルドグリーンなのん」
船頭「季節、まぁ温度によって水の色変わるのん」
船頭「寒くなるにつれてコバルトブルーになるのん」
72: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 21:02:15.85 ID:OIeXJANv0
京太郎「天井の岩に綺麗に反射してますね」
塞「ええ、鮮やかで綺麗ねー」
船頭「次は下を見るのん、水深は8mくらいあるのん」
京太郎「塞さん!凄い!小魚がたくさんいます!!」
塞「わっ!動いてる!速い!」
船頭「楽しんでくれてなによりのーん」
73: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 21:03:58.87 ID:OIeXJANv0
浄土ヶ浜マリンハウス
京太郎「浄土ヶ浜ラーメン、美味かったですねー」
塞「具沢山だったわね、海鮮系って本当に豪勢」
塞「ま、その分値段は張ったけどねー」
京太郎「あはは、そんなもんですって」
塞「……っと、もうちょっとしたらバスの時間ね」
京太郎「ならアイスでも買って待ってますか」
74: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 21:05:37.95 ID:OIeXJANv0
京太郎「青の洞窟ソフト、青いですね」ペロペロ
塞「見た目は完全にハワイアンブルーよね」ペロペロ
塞「味はソーダ?ラムネ?っぽかった」バリバリモグモグ
京太郎「海水浴客、また増えてますよ」バリバリモグモグ
塞「だから言ったでしょ、シーズンだって……あ、来た」
運転手「宮古駅行きだの~ん」ガチャ
75: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 21:07:29.34 ID:OIeXJANv0
宮古駅前
京太郎「あー!楽しかった!」ノビノビ
塞「ふふっ、それは良かったわ」
京太郎「全部塞さんのおかげです!」
京太郎「本当にありがとうございました!」ペコリ
塞「ちょっ、お、大袈裟だって////」
76: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 21:10:26.25 ID:OIeXJANv0
塞「それで、今から盛岡に帰るの?」
京太郎「うーん、そう考えていたんですけど」
京太郎「まだ13時じゃないですか……」
京太郎「直ぐ帰るのはもったいないかなと思いまして」
塞「確かにね、沿岸部まで来る機会も中々ないでしょ」
京太郎「ええ、でも周辺に観光名所って……」キョロキョロ
塞「……そうだ」ポン
77: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 21:12:46.23 ID:OIeXJANv0
塞「鍾乳洞を見たって言ってたけど、興味あるの?」
京太郎「ええ、というより自然系が好きなんです」
京太郎「景観や名所とか見たいなーと」
塞「なら岩泉町にある『龍泉洞』に行ってみなさいよ」
塞「『日本三大鍾乳洞』の1つで、かなり有名って聞くわ」
京太郎「おお、それは見たい!」
78: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 21:14:37.25 ID:OIeXJANv0
塞「そう、それなら途中まで案内してあげる」
塞「小本駅までだけど、大丈夫?」
京太郎「え、そこまでしてもらっていいんですか?」
塞「ああ、それは気にしないで」
塞「私、親と小本で合流する予定だから」
京太郎「そうなんですか」
塞「あっ、出発5分前だ!ほら、行くよ!」
79: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 21:16:20.78 ID:OIeXJANv0
ゴトンゴトン ゴトンゴトン
京太郎「小本駅まではどのくらいなんですか?」
塞「宮古駅からだと約30分、ってとこかしらね」
京太郎「そこでご両親が駅で待ってるんです?」
塞「ええ、昨日は岩泉町に泊まったのよ」
塞「駅との距離は20分くらいかしらね」
京太郎「……あれ?でもなんで一緒じゃないんですか?」
80: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 21:18:09.24 ID:OIeXJANv0
塞「最初は岩泉町に泊まる予定だったんだけど」
塞「まぁ……私が駄々こねちゃってねー」
塞「1人で宮古に宿泊ってことになった、とさ」
京太郎「えー、嘘だー」
塞「なんでよ?」
京太郎「塞さんが駄々こねる姿がイメージできません」
81: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 21:21:21.10 ID:OIeXJANv0
塞「あら?見えないところでは甘えるタイプかもよ?」
京太郎「いや、それは可愛くて凄く萌えますけど」
塞「!!?」
塞(ちょっ、ちょっと!そんなことポロっと言う!?)
京太郎「夫婦水入らずの時間をつくってあげたとか?」
塞「……もう、それは買い被り過ぎってもんよ」
82: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 21:23:06.50 ID:OIeXJANv0
塞「まぁ、結果的にはそうなったみたいだけど」
塞「私自身、1人で浄土ヶ浜を見たかったの……」
京太郎「1人で、ですか…………あ!」
京太郎「じゃあ、やっぱ何か思い詰めてたんですか!?」
京太郎「岩の上に虚ろな感じで立ってて――」
塞「あああ!そっ、それは忘れてちょうだい////」
塞「あれは反省ね、本当は浜での禁止事項なんだから」
83: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 21:24:51.58 ID:OIeXJANv0
塞「少し落ち着きたかったの、静かな場所でのんびりとね」
京太郎「……聞いちゃいけない悩みとかですか?」
塞「ふふっ、悩みなんて大袈裟なものじゃないわ」
塞「ま、初めて感じるプレッシャーってところね……」
塞「だって……IH出場、それにキャプテンだもの……」
京太郎「IH!?凄いじゃないですか!!」
塞「良いチームメイトたちがいてくれたおかげよ♪」
84: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 21:26:54.04 ID:OIeXJANv0
京太郎「ところで何の競技――」
『だんご三兄弟 だんご!だんごだんごだんごだんご』
塞「あ、ごめん電話だ」ガタッ
塞「少し話してくるから」スタスタスタ
京太郎「了解でーす」
京太郎「…………」
京太郎(IHか……俺も、雑用頑張らないとな……)グスッ
85: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 21:28:49.05 ID:OIeXJANv0
小本駅前
京太郎「今回の旅で、周りに何も無いランキング1位だ」
京太郎「……でも、その割に人は結構いるな」
京太郎「『龍泉洞』目当ての観光客なんだろうか?」
京太郎「うーん、これは期待大だぜ!」
塞「はー、どうしろっていうのよ……」トコトコ
京太郎「……塞さん?どうかしたんですか?」
86: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 21:30:50.57 ID:OIeXJANv0
塞「親がね、岩泉でもう1泊するって急に言い出してね」
塞「今は『大川七滝』ってとこで川釣りしてるみたい」
塞「夕方まで色々回るから先にホテル行っててだって……」
京太郎「そうなんですか、でもまだ14時前ですよ」
塞「微妙な時間帯なのよねー」
京太郎「……あ、なら一緒に『龍泉洞』行きません?」
87: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 21:32:31.57 ID:OIeXJANv0
塞「え……一緒に?」
京太郎「塞さんも見たこと無いんですよね?」
塞「ええ、聞いたことがあるだけ……」
塞「県外からも人気みたいで私も気になってたわ」
塞(でも……確かあそこって……)
京太郎「じゃあ行ってみましょうよ!」
京太郎「鍾乳洞って凄く綺麗なんですよー!」
88: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 21:34:35.74 ID:OIeXJANv0
塞(いや……そういうのじゃなくて……)
塞(確か、『恋人の聖地』とも呼ばれてる場所……)
塞(そんなとこに、男女が2人だけで行ったら……)
塞「…………」
塞「////」ボンッ
京太郎「塞さん?聞いてます?」
塞「わっー!?」ビクッ
89: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 21:37:48.94 ID:OIeXJANv0
塞「きっ、君!こここ、こういうところはだよ!」
塞「きちんと段階を踏んでからだと思うんだ!!」
京太郎「は、はぁ……?」キョトン
塞「今朝知り合ったばかりの人がだよ、急展開にも――」
京太郎(んー?俺の観光の遠慮でもしてるのかな……?)
京太郎(俺は一人じゃなくても全然構わないんだけどな)
京太郎(鍾乳洞はエイスリンさんとも一緒に楽しんだし)
90: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 21:39:49.91 ID:OIeXJANv0
塞「私だって君のことは嫌いじゃないし、むしろ――」
京太郎(あ、初めての鍾乳洞だから不安なのかも?)
塞「運命的な出会いだって悪いとは決して思――」
京太郎「塞さん!」ガシッ
塞「はっ!はいっ!?」ビクッ
京太郎「俺がちゃんとエスコート(洞窟案内)しますから」
塞「エスコート(大切な女性を守る)……」ポー
92: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 21:42:04.53 ID:OIeXJANv0
龍泉洞
京太郎「ここが『龍泉洞』かー!へー!」キョロキョロ
塞「…………」ソワソワ
京太郎「龍のモニュメントがむっちゃある!」
京太郎「流石、龍の名前が入ってるだけあるなー」
塞「……」チラッ
龍の像「見世物じゃないのん、むちゅー」イチャイチャ
塞「////」
京太郎「お、盛岡駅行きのバスがある、ラッキー」
93: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 21:44:24.88 ID:OIeXJANv0
京太郎「……あれ?この飲料水ってもしかして……」
塞「ええ、『龍泉洞の水』ね、『日本百名水』の1つよ」
京太郎「こういうのって飲んで本当に大丈夫か?」ゴクゴク
京太郎「美味い!エキノコックスとか考えると怖いけど」
塞「そう言いながらも躊躇わずに飲んだわね」
京太郎「あはは、だって北海道だけですもん」
塞「え?本州でも確認されてるじゃない、2014年とか」
京太郎「え……うそっ……」サァァ
94: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 21:46:27.57 ID:OIeXJANv0
塞「…………」
京太郎「じょ、冗談キツいなー!塞さんたら……」
塞「…………」
京太郎「……」
塞「君のことは忘れないよ、京太郎」ホロリ
京太郎「ぎゃああああ!嘘だぁぁああああぁ!!」
塞「嘘よ、まぁ本当でもあるかなー」ニヤニヤ
京太郎「どっちなんですか!?」ガクガグブルブル
95: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 21:48:10.77 ID:OIeXJANv0
塞「本州で感染者が見つかってるのは本当だけど」
塞「感染経路は不明だし、そこまで怯えなくていいでしょ」
京太郎「だだだ、だってぇ……」ブルブル
塞「それに飲料可なら衛生面は守られてるはずよ」
京太郎「そんなの分からないじゃないですかー……」
塞「しっかりしなさい、エスコートしてくれるんでしょ?」ニコッ
塞(年下も可愛くて悪くないかも……って!何考えてるの私!)
96: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 21:50:30.36 ID:OIeXJANv0
京太郎「さてと、入場券も買ったし……ん?」
塞「どうかした?」
京太郎「チケットの下、『龍泉新洞科学館』って付いてます」
塞「龍泉洞とは違うのかしら?パンフはと……」ペラッ
塞「へぇ、龍泉洞入口の向かい側にも鍾乳洞があるみたい」
塞「そっちは10分くらいで見学できちゃうみたいね」
京太郎「なら、先にそっちから行きましょう!」
97: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 21:52:03.84 ID:OIeXJANv0
龍泉新洞科学館 入口
ゴウンウンウンウン
塞「じ、自動ドア!?」
京太郎「おー、幽玄洞と同じか!期待できますよこれ!」
塞「面白そうじゃない!ワクワクしてきた!」
京太郎「ええ!行きましょう!」テクテク
塞「ひんやりして気持ちいいなー!」テクテク
98: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 21:53:53.80 ID:OIeXJANv0
龍泉新洞科学館 出口
ゴウンウンウンウン
塞「…………」
京太郎「…………」
塞「ごめん、私のドキドキを返してくれる?」
京太郎「…………」
塞「初めてなのよ?初めての鍾乳洞なのよ?」
99: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 21:56:22.79 ID:OIeXJANv0
京太郎「いやまぁ……うん、綺麗でしたよ?」
塞「疑問系にするなー!言っちゃ悪いけどショボ過ぎよ!」
京太郎「で、でも『龍泉新洞人』は面白かったですって!」
京太郎「温厚なので危害は加えません、って表記」
京太郎「あれにはちょいとニヤリとさせられま――」
塞「鍾乳洞に笑いなんか求めてないわーーーー!!」クワッ
京太郎「めっ、メイン行きましょう!メイン!」
101: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 21:58:23.67 ID:OIeXJANv0
龍泉洞 入口
塞「…………」ジー
京太郎「こっ、こっちはきっと大丈夫ですって!」
京太郎「『日本三大鍾乳洞』と呼ばれるくらいなんですから!」
京太郎「だからさっきみたいなテンションで――」
塞「……あ、ああ!違う違う、ちょっと気になっただけ」
京太郎「?」
102: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 22:00:52.05 ID:OIeXJANv0
塞「上着持ってきてなくてさ、大丈夫かなって」
塞「さっきのところも結構涼しかったじゃない」
塞「こっちは温度10℃だって、それに距離も長いだろうし」
京太郎「あ、良かったらこの上着どうぞ」スッ
塞「え?いいの?でも君は自分の分を持ってるの?」
京太郎「大丈夫です、なんか体が慣れちゃったみたいで」
103: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 22:03:05.97 ID:OIeXJANv0
京太郎「あ、1時間くらいしか着てない中古になりますが」
京太郎「塞さんが気にしないなら遠慮なくどうぞ」
塞「かっ、借りるわ////」スッ
塞(……あれ?香水の匂い?)クン
塞(へぇ、この子も香水つけたりするんだー)
塞(好みの匂い…………ん?この匂いどっかで……)クンクン
京太郎「……塞さんってクンカーなんですか?」
塞「ちっ!違うわよ!さぁ、行くわよ////」バッ
104: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 22:04:58.50 ID:OIeXJANv0
京太郎「…………」テクテク
塞「…………」テクテク
京太郎「…………」キョロキョロ
塞「…………」ジー
京太郎「……」
塞「……」
京太郎・塞「凄い……」
105: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 22:06:55.19 ID:OIeXJANv0
京太郎「幽玄洞と違って全体的に暗いけど……」
京太郎「それが鍾乳洞にマッチしてとても幻想的だ……」
塞「ええ、本当に凄いとしか言えないわ……」テクテク
塞「それに広くて歩き易いし、良い所……」
塞(流石、デ、デートスポットね……)キョロキョロ
京太郎「……おっ、塞さん!あれ!」テクテク
106: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 22:08:39.24 ID:OIeXJANv0
塞「わはっ!ライトアップじゃない!」
京太郎「短時間で色が変化してますよ!面白い!」
塞「芸が細かいわねー♪」テクテク
京太郎「でも、鍾乳洞としてはどうなんでしょうね?」
塞「あら?私はこういうのも好きよ、子供っぽい?」ニコッ
京太郎「いやいや、ホント敵いませんねー」
京太郎「美人で尚且つ可愛いとか反則でしょーに」テクテク
塞「…………」ドキッ
107: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 22:10:42.32 ID:OIeXJANv0
京太郎「いやー!地底湖も凄かったですねー!」
京太郎「3つありましたけど、どれも特徴があって良い!」
京太郎「あの透明度!吸い込まれそうになりますよ!」
京太郎「それとライトアップされた長階段も地味に好き!」
京太郎「蝙蝠が見れなかったのは残念でしたけど」
塞「…………」
京太郎「本当に素晴しい観光名所…………塞さん?」
塞「……ここ……覚えてる?」
108: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 22:13:10.31 ID:OIeXJANv0
京太郎「え?ああ、さっきのライトアップしたとこですよね?」
塞「うん、ここで君は笑えない冗談を言った……」
京太郎(……ん?俺何か言ったか?もしかして、アレ?)
京太郎「いや冗談じゃないですって!塞さん本当に美人――」
塞「本当に……笑えないよ……」ギュッ
京太郎「…………え?」
109: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 22:15:55.01 ID:OIeXJANv0
京太郎「えっ!さ、塞さん……////」オロオロ
京太郎(胸におもちが当たってますって……!)
京太郎「やっ、やだなー!もー!」
京太郎「まっ、また冗談で慌てふためく俺を見たいんすか!」
京太郎「からかうのは止めてくださいよー!」
塞「……本気に……なっちゃうんだよ」
京太郎「」
110: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 22:17:49.63 ID:OIeXJANv0
塞「私だって……女なんだよ……」
塞「きょっ、京太郎にそう言われたら……」
京太郎「ああ、それは――」
塞「たとえ冗談でも、嬉しくなっちゃうんだよ……」
塞「他の誰でもない……京太郎だから嬉しいんだよ……」
京太郎「塞さん……本当に……?」ドキッ
111: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 22:20:14.95 ID:OIeXJANv0
塞「今日、一緒にいて知った……」
塞「優しくて馬鹿正直で少しぬけてるところもあって……」
塞「とても楽しかった……この人とならって思えた……」
塞「だからね、冗談はこれで終わりにしてほしい」パッ
塞「勇気を出したの、京太郎の本気の答えを聞きたい」
京太郎「…………」
塞「私以外でも、そう思う人はきっといるはずだよ」ニコッ
京太郎「そう思う人――」
112: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 22:22:21.91 ID:OIeXJANv0
エイスリン『 ツキガ キレイ デスネ 』
胡桃『ただのファーストキスのやり直しなんだから!!』
白望『今日のお礼、どうぞほっぺに』
豊音『1つだけ……お願いがあるの……////』
京太郎「も、もしかしてあの時も本当は……」
塞「……」クスッ
京太郎「あっ……」
113: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 22:24:32.10 ID:OIeXJANv0
塞「君は、思ったことをそのまま言っちゃうときがあるね」
塞「良い場面でも、悪い場面でも……」
京太郎「すっ、すみません……」
塞「んーん、でもやっぱりそうだったかー」テクテク
塞「君にアプローチしてる人、絶対にいる気がした……」
塞「そのときは相手の好意には気づいてなかったけど」
塞「今では、心当たりがあるんでしょう?」
京太郎「……はい、あります」
115: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 22:26:25.41 ID:OIeXJANv0
塞「聞いても……いいよね?」
塞「今、君が思い浮かべた人は、もしかして複数?」
京太郎「……そうです」
塞「その中に……私も入れさせてもらえるのかな?」
京太郎「も、勿論です!今だって……緊張してます……」
塞「そう、嬉しいな♪」ニコッ
116: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 22:28:32.02 ID:OIeXJANv0
塞「……できれば、もっと一緒にいたいけど、時間ね」
京太郎「時間……?」
塞「ほら!そろそろ出ないと!」パァン
京太郎「いつっ!さ、塞さん……」
塞「盛岡行きの最終のバス、もう少しで来ちゃう」
塞「乗り過ごしたら笑えないよ!」
京太郎「……はい」
118: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 22:30:44.30 ID:OIeXJANv0
運転手「盛岡駅行きだのーん」ガチャ
塞「健康に気をつけて、怪我にも注意しなさいよ」
京太郎「…………」
塞「……宮古でお礼を言われたけど、私からも言うわ」
塞「今日の事は絶対に忘れない、本当にありがとう、」ペコリ
京太郎「……さっ、塞さん!!」
119: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 22:33:43.95 ID:OIeXJANv0
京太郎「おっ、俺!まだ頭の中整理できてませんし!」
京太郎「誰が本当に好きか自分でも分かってないんです!」
京太郎「でっ、でも、真剣に悩みます!考えます!」
京太郎「実は……俺もIHに行くことになってるんですが……」
京太郎「それが終わったら……ちゃんと答えを出します!」
塞「……うん!」
120: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 22:36:52.68 ID:OIeXJANv0
京太郎「だから――」
運転手「出発のーん!」ガチャン
京太郎「あああ!空気読んでくれー!」
運転手「うるさいのーん!他のお客に迷惑だのーん!」
ブロロロロロロ
塞「ふふっ、今度会うときまでには……」クスッ
塞「上手くカッコつけれるようになりなさいよねー!」
121: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 22:38:16.64 ID:OIeXJANv0
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∨:::∧ __彡へ}/ , /
京太郎は砕けない 三陸編 完
122: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 22:40:04.29 ID:OIeXJANv0
次回予告
旅はいつか終わる、つーか次で終わる
と、思いきやここに来て新ヒロイン?
とりあえず遊ぶんだ!牧場で!
125: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 22:41:15.78 ID:OIeXJANv0
京太郎「ん?俺ですか?」
おばちゃんX「XYZって知っとるか?」
おばちゃんY「もう後がないってことやで」
おばちゃんZ「この状況やと助けてくれっちゅう意味や」
おばちゃんX「まぁ、ウチらも老い先短いし」
おばちゃんY「助けても意味ないかもしれんけどな」
おばちゃんZ「ギャーハッハッハッハッハッ!!」
126: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 22:42:12.05 ID:OIeXJANv0
京太郎「探そうと思えば、たくさん探せるんですねぇ」
ハギヨシ「ええ、その通りなのです」
ハギヨシ「どんな地域でも見所は少なからずあるもの」
ハギヨシ「季節によって、違った味も出てくるのも面白い」
ハギヨシ「田舎でも良い所は確かに存在します」
ハギヨシ「そして……その逆もまた然り、なのです……」
京太郎「……え?」
127: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 22:43:11.46 ID:OIeXJANv0
白望「エイスリン、その絵見せてもらっていい?」
エイスリン「…………」パッ
『 須賀!? 京ちゃん 京太郎君! 京太郎!! 』
全員「…………え?」
豊音「ええっ!みんな京太郎君と知り合いなのー!?」
塞「どっ、どうやら……そうみたいね……」
胡桃(あ、頭痛くなってきた……)クラッ
128: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 22:44:48.97 ID:OIeXJANv0
末原「すすす!すんまへん!」ペコペコ
咲(チッ、下っぱのカス能力が……!)
咲(おまえらごときの浅知恵でこの宮永咲の能力)
咲(『嶺上開花』の上を行くことは絶対にない……)
咲(くぐり抜けることもないッ!いくらカスみたいでもな……)
咲「フフフ……ククク……」
咲「“帝王”はこの宮永咲だッ!!依然変わりなくッ!」
129: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 22:45:39.82 ID:OIeXJANv0
おばあちゃんΔ「ふん!見直したで!ボケェ」
おばあちゃんΣ「トシちゃん!後は任せるで!ボケェ」
おばあちゃんΩ「帰ってテレビ見るで!ボケェ」
京太郎「え、あの……」
おばあちゃんΔΣΩ「じゃあの!幸せにおなり、や……」
トシ「ありがとうございます」ペコリ
130: ◆GtxVadXeUQ 2016/02/15(月) 22:46:27.98 ID:OIeXJANv0
京ちゃんの風 最期編 次回完結
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