「こずえー。気をつけるのよー」

おかあさんのこえをききながら、こげ【ちゃいろ】のどあをあける。
とたんにざあざあとふりだした、【しろいろ】のあめ。
いえのなかにいるときは、きこえなかったのに。

おかあさんからのぷれぜんと。【みどりいろ】のかさ。
【きいろ】のれいんこーとを、ようふくのうえにきて。
そのうえから、【あか】いらんどせるをしょった。
まえにかってもらった、【あおいろ】のながぐつは、すこしよごれちゃったけれど。
あめがあらってくれるから、きれいになるはず。

そらをみてみると、きれいな【はいいろ】。
ときどき、【きんいろ】がくもとくものあいだから、かおをだす。
でも、ずっとそらをみていたら、おくれちゃうから。
こずえはぱしゃんと、【とうめい】なみずたまりをふんだ。

すこしあるくと、みえてくるのはともだちのいえ。
【しゅいろ】のやねがめじるし。

「おはよー！　こずえちゃーん！」

【おれんじ】いろのかさのむこうから、ひょいとともだちがかおをみせた。
てをふっていたので、こずえもてをふった。
【きみどり】のすかーとが、ひらひらゆれた。

ふたりでならんで、【くろ】いどうろをあるく。
みちのむこうがわに、【むらさき】のあじさいがたくさんさいていた。
【あいいろ】や、【ぴんく】いろのもある。

「それでねー。ともだちがねー」
「うん……」

おはなししているともだちのくちから、【きいろ】いおんぷが、とびだしてくる。
このいろは、たのしいいろ。
だから、たぶん、わらうのがいいんだと、おもう。

「えへー……」
「ねー！　おもしろいよねー！」

ともだちのくちから、もっともっと、たくさんの【きいろ】がとびだして、うかんでいく。
これで、よかったみたいだ。
このともだちは、いつも【きいろ】のおんぷをだすから、こずえもいっしょにいるときは、いつもわらってる。
でも、ほかのおともだちは、ちがう。

【あかい】おんぷはおこっているとき。
【あおい】おんぷは、かなしいとき。
【みどり】のおんぷは、つかれたとき。
【くろい】おんぷは―――

「あ、学校着いちゃったね」
「えへー……？」

おんぷのことをかんがえているうちに、がっこうについた。
ともだちとは、くらすがちがうから、【はいいろ】のげんかんでおわかれ。
【みどり】のかさをたたんで、【きいろ】のれいんこーとをぬいで、【とうめい】なびにーるぶくろにいれる。
ぎゅってくちをしばったら、おしまい。

「こずえちゃん！　またねー！」

そういってともだちは、【しろい】ゆかをはしっていった。
こずえも【あおい】ながぐつをげたばこにしまって、【しろい】うわばきをはいた。

「……」

ここは、おんぷだらけ。
いろんないろのおんぷが、たくさんくうちゅうをうかんでる。
でも、それだと、とってもあるきづらい。

「……ふわぁ」

だから、みないようにした。
【くろ】と【しろ】いがい、みえないようにした。
がっこうが、えんぴつでかかれたように、【くろ】と【しろ】だけになる。
すこし、さみしいようなきもしたけれど。
ずっとまえから、がっこうは、【しろ】と【くろ】。
もう、へいき。

【しろ】いどあをあけて、【くろ】いこずえのせきにすわる。
せっかくの【あか】いらんどせるも、いまは【まっしろ】け。
みんなのおようふくも、
せんせいのつくえも、
えんぴつも、けしごむも、ふでばこも。
あと、こずえも。

こくごのじかん。
せんせいが、【こく】ばんに、チョークでもじをかいた。
じゅぎょうちゅうは、とってもしずか。
だから、すこしだけなら、いろがみえる。

こい【みどり】いろの【こく】ばん。
きょうのせんせいは、【べーじゅ】のかーでぃがん。
せんせいはくちから、【くろい】おんぷをだしてる。
えっと、【くろい】おんぷは……

「先生は君達にいい子に育ってもらいたくて―――」

うそを、ついているときのいろ。

【まっくろ】なすーぷをのんで、
【まっしろ】なおやさいをたべる。
きょうのごはんも、あんまり、おいしくない。
やっぱり、いろがついてるごはんが、いちばんおいしい。

よこをむけば、【しろ】いまど。
そのむこうがわの、【しろ】いそらと、【しろ】いこうてい。
そのもっとむこうがわの、【しろ】いこうもんのそば。

あったかい、【くろ】がみえた。

「あ……せんせー……」

てをあげてせんせいをよぶ。
そして、こうもんをゆびさすと、せんせいはわらってうなずいてくれた。
こずえは、【まっしろ】ならんどせるをしょって、きょうしつのそとにでた。

げんかんについたら、またこずえは、いろをみる。
【しろ】いうわばきをくつばこにもどして、【あお】いながぐつをはく。
【ぐれい】のげんかんをぬけて、こうもんへ。
【みどり】のかさは、もういらない。
そらは、きれいな【みずいろ】。

【ぎんいろ】にひかる、こうもん。
そのちかくにたっている、【くろ】いかげ。
でも、その【くろ】いかげは、
こずえがしっている、【くろ】じゃないみたいで。

「ぷろでゅーさー……」
「あ、出てきちゃったか。ごめんな。給食中だったみたいだから、落ち着いてから迎えに行こうと思ったんだけど」
「だいじょうぶ……」

こずえがそういうと、ぷろでゅーさーはこずえのてをひいてあるきだした。
おおきくて、あったかい【はだいろ】。
こずえも、これくらいおおきくなれるのかな？

「じゃあこずえ、行こうか」

ぷろでゅーさーのくちからとびだすおんぷのいろは、【とうめい】。
なにいろでもない、こずえもしらない、【とうめい】なおんぷ。
でも、だから、
みんな、ぷろでゅーさーをすきになる。
どんないろにもなれる、ぷろでゅーさーがすきになる。

【まっくろ】だったこずえを、かえてくれた。
【まっくろ】だったせかいを、かえてくれた。
【にじいろ】のせかいを、おしえてくれた。

ぷろでゅーさーはまるで、まほうつかいみたいだ。