～後日～

就活生「……やった、やった！」

就活生「合格通知届いたっ！」

就活生「やっぱりあの面接マニュアル本は正しかった！」

就活生「潤滑油連呼……よけいなことを言わなきゃ揚げ足もとられない、圧迫質問も簡単に躱せる……！」

就活生「よぉし、明日から社会人として精一杯がんばるぞ！」

～出勤初日～

機械「ごぅん、ごぅん、ごぅん……」

就活生「あ、あの先輩？」

先輩「ん？　なんだ？」

就活生「ここはなんですか？　ぼく、事務職で応募したはずなんですけど……機械整備とかできないんですけど」

先輩「ははは、何言ってるんだ。新入社員に機械整備なんてやらせるわけないだろ？」

就活生「ほっ。そうですよね、ってことはああ、これは見学ですか。実際にどういう風に我が社が商品を作ってるか――」

先輩「ん、何言ってんだ？」



　　　先輩「お前、潤滑油なんだろ？」



就活生「え……？」

先輩「いやあ、最近この機械もガタがきててなあ。原油高と本社の節制方針のせいで潤滑油もなかなか仕入れてくれなくて」

就活生「え？　え？　あ、あの……それって」

先輩「おっと。固形のままじゃ使えないから、ちゃんと崩さないとな。ってことで、この中に入ってくれ」




　　　じゃりじゃりぐちゃぐちゃめちゃにちゃどりゅぴゅっ




面接官「おー、おつかれ」

先輩「お疲れ様っす」

面接官「あの潤滑油、どうだった？」

先輩「ダメっすね。すぐ詰まっちゃいました。また新しいの仕入れて下さいよ」

面接官「そうかー。そいつは残念だったな－。結構自信持ってたから長く使えると思ったんだがなー」

先輩「そんじゃ、私は業務日誌書いて上がりますんで」

面接官「わかった。気をつけて帰れよ」

先輩「ありがとうございます。お疲れ様です」



先輩「（業務日誌カキカキ……）

先輩「『本日も、通常業務に異常なし』」


たららららっ、たららららっ
たららららったったらららっ
たららららっ、たららららっ
たららららったったらららっ
たーん、たーん
たーん、たーん
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　～完～