2: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/14(木) 20:02:43.48 ID:EjjHIdTP.net
にこ「だから、別に今生の別れとかじゃないから」
にこちゃんはそう笑いながら、缶ジュースに口を付ける。
私はうつむいたまま、それには答えない
明日は三年生の卒業式
私はにこちゃんに呼び出された
「ちょっと渡したいものがある」と一言だけ告げて
それで会ってみたら私の顔を見て、今こうしていた
にこ「卒業しても会えるでしょ?別ににこは遠くに行くわけじゃないから」
穂乃果「うん……」
にこ「てか、もっと笑顔で送ってくれないと困るんだけど」
穂乃果「……うん」
にこ「何よ、あんたらしくない、寂しいの?」
にこちゃんはそう笑いながら、缶ジュースに口を付ける。
私はうつむいたまま、それには答えない
明日は三年生の卒業式
私はにこちゃんに呼び出された
「ちょっと渡したいものがある」と一言だけ告げて
それで会ってみたら私の顔を見て、今こうしていた
にこ「卒業しても会えるでしょ?別ににこは遠くに行くわけじゃないから」
穂乃果「うん……」
にこ「てか、もっと笑顔で送ってくれないと困るんだけど」
穂乃果「……うん」
にこ「何よ、あんたらしくない、寂しいの?」
3: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/14(木) 20:03:11.08 ID:EjjHIdTP.net
にこちゃんはまたジュースに口を付けながら、また軽く笑う
寂しい。
だなんて、かわいげのある感情ならまだ良かったのに、そう心の中で悪態をつく
穂乃果「明日なんて、来なきゃ良いのに」
そして、またいつものように、みんなで笑いあってすごしたいのに
ぽつんとつぶやいた言葉に対して、にこちゃんがひどく悲しそうな、怒りたいような不思議な顔をしていた
にこ「あんたって、本当馬鹿ね」
そして、最後に私に向けた感情は、呆れだった。
それでも、どこか愛情を感じる眼を、私に向けていた。
寂しい。
だなんて、かわいげのある感情ならまだ良かったのに、そう心の中で悪態をつく
穂乃果「明日なんて、来なきゃ良いのに」
そして、またいつものように、みんなで笑いあってすごしたいのに
ぽつんとつぶやいた言葉に対して、にこちゃんがひどく悲しそうな、怒りたいような不思議な顔をしていた
にこ「あんたって、本当馬鹿ね」
そして、最後に私に向けた感情は、呆れだった。
それでも、どこか愛情を感じる眼を、私に向けていた。
4: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/14(木) 20:03:37.94 ID:EjjHIdTP.net
にこ「明日が来るからいいんじゃない。私は、もう戻りたくない。あんな想いするのなんてもう勘弁したいわ」
私は、何も答えられなかった。
けど、それでも
この夜が明けたら、もう離れ離れだ。
にこ「……あーもう!!」
穂乃果「ど、どうしたの?」
にこ「なっんかイライラすんのよねー、そういうところ」
にこちゃんは乱暴に頭を掻きながら、吐き出すようにそう告げる。
私はわけが分からず「ど、どういうところ?」と聞き返した
にこ「そういうところよ。いつも見てるこっちが恥ずかしいくらい真っ直ぐの癖に、こういうときばっかりうじうじしちゃってさ」
穂乃果「別に、うじうじなんてしてない……」
図星だったけど、反論する以外私にはできなかった。
私は、何も答えられなかった。
けど、それでも
この夜が明けたら、もう離れ離れだ。
にこ「……あーもう!!」
穂乃果「ど、どうしたの?」
にこ「なっんかイライラすんのよねー、そういうところ」
にこちゃんは乱暴に頭を掻きながら、吐き出すようにそう告げる。
私はわけが分からず「ど、どういうところ?」と聞き返した
にこ「そういうところよ。いつも見てるこっちが恥ずかしいくらい真っ直ぐの癖に、こういうときばっかりうじうじしちゃってさ」
穂乃果「別に、うじうじなんてしてない……」
図星だったけど、反論する以外私にはできなかった。
5: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/14(木) 20:04:08.14 ID:EjjHIdTP.net
にこ「してるじゃない。私にはそうとしか見えないわよ?」
声が、少しだけ優しい。
けれど、その優しさに甘えるだけの気力を、私は持ち合わせていなかった。
思わず握る手の力が強くなって、そのまま縮こまる。にこちゃんは何も言ってこなくて、それが余計に私をつらくさせた。
穂乃果「明日が来たら、離れ離れだよ?」
喉から振り絞るように、その一言だけがようやく漏れ出した。
にこ「そうね」
にこちゃんは、こちらを見ようともしないし、私もにこちゃんの事を見ない。
穂乃果「一緒に部室で遊んだり、できなくなるよ?」
にこ「そうね」
穂乃果「にこちゃんは……嫌じゃないの?」
にこ「嫌に決まってるじゃない」
穂乃果「だったら……!!」
声が、少しだけ優しい。
けれど、その優しさに甘えるだけの気力を、私は持ち合わせていなかった。
思わず握る手の力が強くなって、そのまま縮こまる。にこちゃんは何も言ってこなくて、それが余計に私をつらくさせた。
穂乃果「明日が来たら、離れ離れだよ?」
喉から振り絞るように、その一言だけがようやく漏れ出した。
にこ「そうね」
にこちゃんは、こちらを見ようともしないし、私もにこちゃんの事を見ない。
穂乃果「一緒に部室で遊んだり、できなくなるよ?」
にこ「そうね」
穂乃果「にこちゃんは……嫌じゃないの?」
にこ「嫌に決まってるじゃない」
穂乃果「だったら……!!」
6: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/14(木) 20:04:34.55 ID:EjjHIdTP.net
にこ「でも、卒業したところであんたとの関係は変わらないし、他の皆とも同じよ」
穂乃果「それは……」
にこ「それに、そんなこと言ったら花陽たちはどうするの?私たち3年はもういなくなるけど、あの子達はまた1年あんたたちと過ごして……同じ想いをもう一度繰り返すのよ」
返す言葉もなかった。にこちゃんの言うとおりだ。私は私の都合でわがままを言ってるだけだ。
にこちゃんが空になったジュースを放り投げると、鮮やかな軌道を描いてゴミ箱に入り込んだ。
にこ「高校生活最後の思い出くらい、笑顔でいたいじゃない。泣いたりなんなりってラブライブで散々やったんだし、もう泣くのめんどくさいのよ」
穂乃果「そう、だね」
穂乃果「それは……」
にこ「それに、そんなこと言ったら花陽たちはどうするの?私たち3年はもういなくなるけど、あの子達はまた1年あんたたちと過ごして……同じ想いをもう一度繰り返すのよ」
返す言葉もなかった。にこちゃんの言うとおりだ。私は私の都合でわがままを言ってるだけだ。
にこちゃんが空になったジュースを放り投げると、鮮やかな軌道を描いてゴミ箱に入り込んだ。
にこ「高校生活最後の思い出くらい、笑顔でいたいじゃない。泣いたりなんなりってラブライブで散々やったんだし、もう泣くのめんどくさいのよ」
穂乃果「そう、だね」
7: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/14(木) 20:05:03.31 ID:EjjHIdTP.net
にこ「まーそれにどうせあんたとは今まで通りだし、明日が来ても学校変わるだけでなんも変わらないわよ」
穂乃果「ちょっと、なにそれ」
思わず噴き出すと、にこちゃんはとても上機嫌に笑った。
にこ「ほら、やっぱ笑ってるほうが似合ってる」
穂乃果「そうかな、えへへ」
そうしてお互い少しだけ笑いあった後、はあ、とにこちゃんが小さくため息を吐く。
にこ「ごめん、ちょっと泣く」
穂乃果「さっき自分で笑って、って言ったくせに」
にこ「私はいいのよ。三年なんだし本当に最後なんだから……ちょっと胸貸してよ」
穂乃果「……良いよ。はい」
穂乃果「ちょっと、なにそれ」
思わず噴き出すと、にこちゃんはとても上機嫌に笑った。
にこ「ほら、やっぱ笑ってるほうが似合ってる」
穂乃果「そうかな、えへへ」
そうしてお互い少しだけ笑いあった後、はあ、とにこちゃんが小さくため息を吐く。
にこ「ごめん、ちょっと泣く」
穂乃果「さっき自分で笑って、って言ったくせに」
にこ「私はいいのよ。三年なんだし本当に最後なんだから……ちょっと胸貸してよ」
穂乃果「……良いよ。はい」
8: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/14(木) 20:05:34.79 ID:EjjHIdTP.net
両手を広げてにこちゃんを迎え入れると、私の胸にすぽんと収まって、そのまま肩を震わせた。
いつも見た目よりも大きく感じるその体が、いつも以上に小さくなっているように思えた。
けど、泣き声を上げないのがなんだかとてもにこちゃんらしくて少しだけ笑うと「何笑ってんのよバカ」と鼻声で怒られてしまった。
それから3分くらいしてにこちゃんは私の体から引っ張られるように離れた。
少し目が腫れて、鼻が赤くなっている。
にこ「はー、すっきりした」
穂乃果「もう大丈夫?」
にこ「うん。これで明日ちゃんと笑顔になれそう」
ぱん、と頬を叩いて、にこちゃんがはにかんで笑う。まだ瞳が滲んでいたような気がしたけど、その笑顔は晴れやかだった。
穂乃果「ならよかった」
そう笑う私も、今はなんだか気持ちが穏やかだ。涙目にはなっちゃったけど。
いつも見た目よりも大きく感じるその体が、いつも以上に小さくなっているように思えた。
けど、泣き声を上げないのがなんだかとてもにこちゃんらしくて少しだけ笑うと「何笑ってんのよバカ」と鼻声で怒られてしまった。
それから3分くらいしてにこちゃんは私の体から引っ張られるように離れた。
少し目が腫れて、鼻が赤くなっている。
にこ「はー、すっきりした」
穂乃果「もう大丈夫?」
にこ「うん。これで明日ちゃんと笑顔になれそう」
ぱん、と頬を叩いて、にこちゃんがはにかんで笑う。まだ瞳が滲んでいたような気がしたけど、その笑顔は晴れやかだった。
穂乃果「ならよかった」
そう笑う私も、今はなんだか気持ちが穏やかだ。涙目にはなっちゃったけど。
9: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/14(木) 20:06:11.78 ID:EjjHIdTP.net
にこちゃんが「あ、そういえば忘れてた」と何かを思い出したようにつぶやいた。
私が「そういえば何の用だったの?」と聞くとにこちゃんが
にこ「いや、どうせ着なくなるし受け取って欲しいもんがあるんだけど……これ貰ってくれない?」
穂乃果「別に良いけど……これ、結構お気に入りじゃないの?」
にこ「いいのよ、卒業してから着ようと思わないし」
穂乃果「……じゃあ貰うね、ありがとう」
そんな簡単な会話をして、私たちは明日へ向かうために別れた。
月明かりも街灯の影に消えてしまったけど、私たちは同じ空を見上げながら日々を過ごしていけるし、にこちゃんの言うとおり、人生最後になるわけじゃない。
明日はどれほど望まなくったって、絶望的に私たちの前に現れてしまう。
だからといって悲観する必要はどこにもない。むしろ新鮮な気持ちで迎えないといけない
夜が明けたら、きっと離れ離れだ。
でも、それ以上の何かを私たちは手に入れた。だから離れていても安心だ。
いつか純粋に昔話だと笑い合える日になることを望んで、今はそう思いたい。
私が「そういえば何の用だったの?」と聞くとにこちゃんが
にこ「いや、どうせ着なくなるし受け取って欲しいもんがあるんだけど……これ貰ってくれない?」
穂乃果「別に良いけど……これ、結構お気に入りじゃないの?」
にこ「いいのよ、卒業してから着ようと思わないし」
穂乃果「……じゃあ貰うね、ありがとう」
そんな簡単な会話をして、私たちは明日へ向かうために別れた。
月明かりも街灯の影に消えてしまったけど、私たちは同じ空を見上げながら日々を過ごしていけるし、にこちゃんの言うとおり、人生最後になるわけじゃない。
明日はどれほど望まなくったって、絶望的に私たちの前に現れてしまう。
だからといって悲観する必要はどこにもない。むしろ新鮮な気持ちで迎えないといけない
夜が明けたら、きっと離れ離れだ。
でも、それ以上の何かを私たちは手に入れた。だから離れていても安心だ。
いつか純粋に昔話だと笑い合える日になることを望んで、今はそう思いたい。
10: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/14(木) 20:06:47.01 ID:EjjHIdTP.net
新学期になると桜もそろそろ終わりかと思うくらい寂しくなってしまう。
今日から高校3年生。多分いろいろ大変な時期になると思う。
受験があるのに皆と一緒に青臭く青春を追いかけて、時間を作って好きな人と遊んで
誘ったのは向こうなのに「あんた受験生なのに遊んでて良いの?」なんてからかわれたりして
-でも、遊んでた人には言われたくないなあ。
バッグを持ちながら独り言でそうつぶやくと、かつて彼女から受け取ったそれが目に入る。
-そうだね、せっかくだし
私はバッグを下ろし、制服のジャケットを脱いでから、それに袖を通す。
どことなくぶっきらぼうに遠くを見つめる彼女の横顔が目に浮かんで、すこし笑ってしまう。
「穂乃果ー、遅刻するわよー!」
「今行くー!!」
お母さんに急かされて、私は早足で玄関へと向かう。
そして桜舞う空へと、私は駆け出した。
今日から高校3年生。多分いろいろ大変な時期になると思う。
受験があるのに皆と一緒に青臭く青春を追いかけて、時間を作って好きな人と遊んで
誘ったのは向こうなのに「あんた受験生なのに遊んでて良いの?」なんてからかわれたりして
-でも、遊んでた人には言われたくないなあ。
バッグを持ちながら独り言でそうつぶやくと、かつて彼女から受け取ったそれが目に入る。
-そうだね、せっかくだし
私はバッグを下ろし、制服のジャケットを脱いでから、それに袖を通す。
どことなくぶっきらぼうに遠くを見つめる彼女の横顔が目に浮かんで、すこし笑ってしまう。
「穂乃果ー、遅刻するわよー!」
「今行くー!!」
お母さんに急かされて、私は早足で玄関へと向かう。
そして桜舞う空へと、私は駆け出した。
11: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/14(木) 20:07:18.37 ID:EjjHIdTP.net
目新しい扉を勢いよく開くと、いつもの二人が、仲良く談笑していた。
私はいつものように元気良く二人に駆け寄る。
始まりの時期は、いつだって笑顔で迎えたい。
穂乃果「おっはよー。ごめんね、先に行ってもらって」
ことり「ううん、大丈夫。おはよー、穂乃果ちゃん」
海未「おはようございます。三年生早々遅刻するかと思いましたよ……」
ことり「まあまあ海未ちゃん……あれ、穂乃果ちゃん、それ……」
ことりちゃんが気づいてくれて、海未ちゃんも「貰ったんですね」と笑ってくれる。
私はくるっと一回転してから、飛び切りの笑顔で
穂乃果「結構可愛いと思うんだけど、どうかな?」
ことり「うん、すっごく似合ってるよ!」
海未「良いですね、季節感にもあってますし」
でしょ?だって私の一番好きな人のくれたものだから。
新しい季節、新しい出会い。
別れは確実に訪れるものだけど、それ以上のものを私たちにもたらしてくれる。
そんな出会いがあるんだって願いをこめて
彼女のピンクのカーディガンが、春の風を受けて、上機嫌に揺らめいた。
私はいつものように元気良く二人に駆け寄る。
始まりの時期は、いつだって笑顔で迎えたい。
穂乃果「おっはよー。ごめんね、先に行ってもらって」
ことり「ううん、大丈夫。おはよー、穂乃果ちゃん」
海未「おはようございます。三年生早々遅刻するかと思いましたよ……」
ことり「まあまあ海未ちゃん……あれ、穂乃果ちゃん、それ……」
ことりちゃんが気づいてくれて、海未ちゃんも「貰ったんですね」と笑ってくれる。
私はくるっと一回転してから、飛び切りの笑顔で
穂乃果「結構可愛いと思うんだけど、どうかな?」
ことり「うん、すっごく似合ってるよ!」
海未「良いですね、季節感にもあってますし」
でしょ?だって私の一番好きな人のくれたものだから。
新しい季節、新しい出会い。
別れは確実に訪れるものだけど、それ以上のものを私たちにもたらしてくれる。
そんな出会いがあるんだって願いをこめて
彼女のピンクのカーディガンが、春の風を受けて、上機嫌に揺らめいた。
12: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ 2016/07/14(木) 20:07:49.12 ID:EjjHIdTP.net
これにておしまい
どれだけ月日が経っても、私たちは同じように笑いあえる。
だからは今は、この別れを笑顔で迎えたい。
そんなテーマでした
ありがとうございました
どれだけ月日が経っても、私たちは同じように笑いあえる。
だからは今は、この別れを笑顔で迎えたい。
そんなテーマでした
ありがとうございました
引用元: ・穂乃果「夜が明けたら」
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