善子「TRPGみたいなやつ？」

梨子「うん。よっちゃんなら詳しいと思ってた」

花丸「てぃーあーるぴーぎー？」

梨子「RPGってあるじゃない。あれは、コンピューターが色々やってるけど」

梨子「これは、それを人力で。あとは、ダイスで決めるの」

善子「ちなみに、RPGとはロール・プレイング・ゲームの略。役割を演じる、という意味よ」

梨子「そうそう。よっちゃんにとってのヨハネみたいなものね」

善子「あれは演技じゃなくて、実際に堕天使なのよ！！」

千歌「あ！　でもわかりやすい！！」

梨子「さて。このゲームは、主人公たちが、剣とか魔法とかで大魔王を倒す。オーソドックスなものだよ」

鞠莉「なかなか面白そうでーす！」

ダイヤ「ゲームの進行をダイスで決める、というのは？」

梨子「例えば、剣士がモンスターに攻撃をする時。互いの戦力差とかから、その成功率を80%とする」

梨子「そこでダイスを振って、出る値は1～100になるのだけど、これが80以下の時に成功、ダメージを与えられるの」

ダイヤ「なるほどですわ」

梨子「例外は2つ。クリティカルとファンブル」

梨子「1～5が出たときはクリティカルといって、成功にボーナスが発生するの」

梨子「逆に、96～100が出たときにはファンブルといって、大失敗。ペナルティが発生するわ」

梨子「ちなみに、100っていうのは両面ダイスのどっちも0/0のことを指すわ」

花丸「はぇ～。善子ちゃんはファンブルしか出なさそうずら」

善子「なによ！！　……ひ、否定はしないけどさぁ……」

果南「ま、たまには息抜きもいいかもね」

千歌「よーっし！　じゃあ今日はゲームの日だ！！」

曜「梨子ちゃんは？」

梨子「私はゲームマスターをやるわ。要するにこのゲームの管理をする……まあ、皆の敵役だね、ふふっ」

千歌「よ～っし！！　大魔王梨子ちゃんを倒して、世界に平和を取戻すぞーっ！！」

梨子「簡単にやられはしないわよ？」

梨子「それじゃまず。ダイスを振って、職業を決めるの」

梨子「職業に応じてパラメーターや特殊能力が決まるわ」

千歌「よーっし！！　とびっきりすごいの引いてやるぞー！！」

曜「頑張れ千歌ちゃん！！」

ｶﾗｶﾗｶﾗｶﾗ

梨子「えっと……これは、召喚士だね」

千歌「なにそれなにそれ！？」

梨子「パラメーターは平均的だけど……」

千歌「やはり普通星人……ッッ！！」

梨子「か、代わりに召喚魔法が使えるの。特殊な精霊やモンスターを呼び出して、自分の代わりに戦わせるのよ」

曜「ある意味千歌ちゃんらしいかもね。しいたけとか召喚したりして」

梨子「それはやめてっ！！！」

曜「よーし！　次は私の番！」

ｶﾗｶﾗｶﾗｶﾗ

梨子「これは……ふふっ。流石だね曜ちゃん。曜ちゃんの職業は、勇者だよ」

曜「勇者！　なんか主人公みたいでかっこいい！！」

梨子「全体的にパラメーターが高くて、肉弾戦も、魔法も十分に使いこなせる。戦ってよし、守ってよしの職業だね」

千歌「勇者！？　曜ちゃん、こんなところまですごい職業だなんてずるいよ！！！」

曜「ダイスに言って！？」

花丸「次は私ずらー！」

ｶﾗｶﾗｶﾗｶﾗ

梨子「あっ。これも花丸ちゃんらしいね。僧侶だって」

花丸「僧侶？」

梨子「回復魔法の使い手だよ。更に、闇属性の魔物……アンデッドなどに対して特攻能力を持ってるの」

花丸「ずら～！」

ルビィ「次、ルビィ、行きます！」

ｶﾗｶﾗｶﾗｶﾗ

梨子「ふふっ。ルビィちゃんはね、踊り子」

ルビィ「やった！」

梨子「踊り子は、様々な支援効果や、敵への妨害効果を与える踊りを使いこなす職業だよ」

花丸「ルビィちゃんらしいずら～！」

善子「ふっ……次は私よ！！　見事に堕天使を引いてみせるわ！！」

ｶﾗｶﾗｶﾗｶﾗ

梨子「あ、でも惜しい。呪術師だって」

善子「じゅ、呪術師……」

梨子「暗黒魔法の使い手だよ。攻撃、妨害に特化した魔法使い」

花丸「善子ちゃんらしいずら」

善子「ちょっと！！　ルビィのときとテンション違うじゃない！！」

ダイヤ「さあ！　次は私ですわ！！」

ｶﾗｶﾗｶﾗｶﾗ

梨子「えっと……これは、パラディンだね」

ダイヤ「パラディン？」

梨子「いわゆるタンク、パーティーの盾だよ。重装備で味方をかばったりするの」

鞠莉「ダイヤらしく、頑固で硬いジョブね～☆」

ダイヤ「おだまり！」

果南「次は私だね。ほらっ！」

ｶﾗｶﾗｶﾗｶﾗ

梨子「果南さんは、レンジャーですね」

果南「レンジャー？」

梨子「弓使い、狩人です。サバイバル術や、潜入工作などに特化した職業ですよ」

果南「あはは。私らしいね」

鞠莉「最後は私っでーす！！　シャイニー！！」

ｶﾗｶﾗｶﾗｶﾗ

梨子「鞠莉さんは、魔法剣士」

梨子「剣術と魔法を使いこなす、オールレンジに戦える職業ですよ」

鞠莉「イエース！　マリーらしい、万能職ねー！！」

梨子「それじゃ、これが皆のコマだよ」

千歌「わっ！　私達のちっちゃい人形だ！！」

梨子「ふふっ。ついはりきっちゃって」

梨子「それじゃ、このメモにパラメーターとか職業を書いていってね」

梨子「キャラクターの名前は、どうしようかな」

千歌「私は、召喚士チカチー！」

曜「勇者、ヨウ！」

善子「堕天使、ヨハネ……」

花丸「ヨ、シ、コ。と」

善子「勝手にメモしてんじゃないわよ！！」

花丸「マルは、マルでいいずら」

果南「カナン、でいいかな」

鞠莉「マリーで決まりねー！」

ダイヤ「ディア、というのはどうですの？　イタリア語のディアマンテからとった言葉ですわ」

ルビィ「じゃあ、ルビィは？」

ダイヤ「ルベウスというのはどうでしょう？　ラテン語で、ルビーの語源ですわ」

ルビィ「うん！　そうする！」

チカチー：召喚士
・パラメーターは平均的だが、召喚魔法を用いて、精霊やモンスターを召喚、使役できる。

ヨウ：勇者
・全体的なパラメーターが高く、高いレベルの剣術と、汎用的な魔法も使いこなす。攻守共に優れた職業。

マル：僧侶
・回復魔法の使い手。また、闇に属する魔物を祓う術を持つ。攻撃魔法は不得手。

ヨシコ：呪術師
・暗黒魔法の使い手。攻撃や妨害に特化した魔法を使いこなす。肉弾戦はからっきしである。

ルベウス：踊り子
・様々な支援・妨害の効果を持つ踊りを駆使する職業。基本的な運動能力は高く、回避能力に優れる。

ディア：パラディン
・重装備でパーティーの盾となる職業。広範囲の味方をかばったり、敵の攻撃を引き付けるスキルを持つ。

マリー：魔法剣士
・魔法と剣術を操る剣士。剣に魔法を帯呪させたり、そのまま魔法で攻撃したりとオールレンジに戦える。

カナン：レンジャー
・弓を操る、いわゆる狩人。サバイバル術や、潜入工作などを得意とする。

梨子「それじゃ、始めようか」

梨子「こほんっ……この世界は大魔王の手によって、暗黒に包まれていた」

梨子「人々は憔悴し、絶望の中で日々を過ごしていた」

梨子「君たち8人は、王宮に呼び出され魔王討伐の命を受けた、選ばれし戦士たちだ」

梨子「この世界を救うことができるのは、君たちしか居ない」

梨子「かくして冒険者たちは、魔王の城に向けて、旅立つことになった」

千歌「よぉーし！」

曜「全速前進、ヨーソロー！」

花丸「世界を救うずらー！」

ルビィ「かんばルビィ！」

ダイヤ「と言いましても、まずはどうすればいいんですの？」

善子「この手のゲームで重要なのは情報収集よ。まずは、町の人々に話を聞くのよ」

果南「さすが、ゲームに関しては詳しいね」

善子「というわけでGM。誰か村人とかは居ないの？」

梨子「そうね。ならば冒険者たちは酒場に入ったわ」

千歌「あのっ！　ちょっと教えてほしいんですけど！！」

梨子「ふふっ。困ってる人を放っておけないタイプの冒険者だね」

梨子「さて……酒場にあるのは活気ではなく、現実の辛さから逃げ出すために無理に明るく振る舞うような騒がしさだった」

梨子「酒場のマスターは、重苦しい表情で語り始める」

梨子「ここから離れたところにある、暗黒の森……」

梨子「その奥には、魔王の城があるらしい」

梨子「今まで数多の冒険者が向かっていったが、帰ってきたものは誰もいない、と」

ルビィ「ごく……」

果南「つまり、その暗黒の森とやらに行けばいいのかな？」

鞠莉「んー。でも、なんだか物騒ねぇ」

曜「他に情報はないのかな？」

梨子「特にめぼしい情報はなかったわね」

千歌「それじゃあ、その森に行ってみようよ！！」

善子「ちょっと！！　いきなりすぎるんじゃないの！？」

千歌「大丈夫！！　私達9人がいれば、どんな敵だって立ち向かえるよ！！」

善子「リリーは今回敵でしょうが！！！」

千歌「あっ」

梨子「うふふっ。それじゃ、街を出ることにするね」

梨子「道中にもモンスターが出現することがあるわ」

梨子「ここで、ダイスを振るね」

ｶﾗｶﾗｶﾗｶﾗ

梨子「あ。モンスターが現れたわ」

果南「お、初戦闘だね」

梨子「ここで、凶暴な爬虫類型のモンスターの登場よ」

梨子「さて。まずはプレイヤーから行動だよ」

善子「ふっ……私の暗黒魔術で蹴散らしてやるわ！！」

善子「火炎魔法で、薙ぎ払ってやる！！」

梨子「じゃ、ダイスロールどうぞ」

ｶﾗｶﾗｶﾗｶﾗ

87

梨子「あ……失敗だね」

善子「なんでよぉ！！」

花丸「かっこつかないずら」

ルビィ「えっと、支援の踊りっていうのは」

梨子「皆を元気づけて、攻撃力を上げることができるよ。ダイスを振ってね」

ルビィ「ルビィ、いきます！」

45

梨子「成功だね。味方パーティーの攻撃力が上昇したわ」

ダイヤ「さすが我が妹ですわ！！」

ルビィ「えへへへ」

果南「それじゃ、遠距離から弓で攻撃するよ！」

鞠莉「その弓に、炎をEnchantするわ！！」

梨子「いきなり上級テクニックで来ますね。ダイスどうぞ」

12、39

梨子「成功です！　炎をまとった矢が、モンスターを貫いた！！」

梨子「戦闘終了です」

鞠莉「やったわ！　果南！！」

果南「ナイスコンビネーションだよ、鞠莉！！」

善子「ぐぬぬぬぬ……！」

梨子「冒険者たちは、魔王城に向かうために暗黒の森に入ったわ」

千歌「ここが、暗黒の森……」

曜「不気味な雰囲気だね……」

梨子「ここは先程よりも強力なモンスターが出現しやすいわ」

ｶﾗｶﾗｶﾗｶﾗ

梨子「モンスター出現！！　その数は、5体！！」

花丸「ずらっ！？」

梨子「しかも不意を突かれた冒険者は、すぐに行動はできない」

梨子「まずは、モンスターの攻撃だよ！」

ｶﾗｶﾗｶﾗｶﾗ

54

梨子「ひとまずは成功。攻撃対象は、ルベウスちゃんだよ！」

ルビィ「ピギィ！？」

ダイヤ「私が盾になりますわ！！」

梨子「オッケー。パラディンのかばう技能、ダイスロールしてください」

ダイヤ「頼みましたわよ……！！」

12

梨子「流石です。盾でモンスターの攻撃を弾き返した！」

ルビィ「お姉ちゃん！！」

ダイヤ「ふっ、当然ですわぁ！」

梨子「続いて……」

ｶﾗｶﾗｶﾗｶﾗ

96

梨子「あっ……」

千歌「えっと、96ってことは……」

鞠莉「Oh！　ファンブル！！」

梨子「やっちゃったぁ……モンスターはうっかり他のモンスターに攻撃してしまったわ」

果南「あははは……こういうこともあるんだね」

梨子「ま、まだよ！　まだ残ってるもの！　引き続き、別のモンスターで攻撃！」

ｶﾗｶﾗｶﾗｶﾗ

11

梨子「いい値ね。これで、ヨウちゃんに攻撃！！」

曜「くっ！　なかなかやるね！！」

梨子「勇者ヨウにダメージ！　これでこっちのターンは終了よ」

花丸「まず、ヨウに回復魔法を使うずら！！」

梨子「ダイスロール、どうぞ」

ｶﾗｶﾗｶﾗｶﾗ

49

花丸「成功ずら～！！」

梨子「勇者ヨウはダメージを回復したわ」

曜「ありがとう花丸ちゃん！！　よーっし！　やってるやるぞー！！」

曜「モンスターに攻撃！！！」

梨子「ダイスどうぞ」

ｶﾗｶﾗｶﾗｶﾗ

01

梨子「クリティカル！？」

曜「いっけええええええ！！！！」

梨子「勇者の必殺技、タイダルスラッシュが炸裂したわ！　敵モンスター3体をまとめて撃破！！」

千歌「曜ちゃんすごーい！！！」

果南「さっすが勇者！！」

曜「えへへへ……」

鞠莉「続くわよー！　私の攻撃！！　火炎斬り！！」

梨子「どうぞ」

ｶﾗｶﾗｶﾗｶﾗ

87

鞠莉「Shit！！　空振りだわ！！」

果南「ならば、弓攻撃だよ！！」

梨子「ダイスどうぞ」

ｶﾗｶﾗｶﾗｶﾗ

65

果南「なんとかヒットしたけど、あと1体残った……」

千歌「えっと……わ、私ってどんな攻撃ができるの？」

梨子「召喚攻撃だね」

千歌「よ、よーし！　召喚攻撃、いくよ！！」

ｶﾗｶﾗｶﾗｶﾗ

97

千歌「！？」

梨子「あっ……ファンブル……」

曜「千歌ちゃんっ！？」

千歌「何！？　何が起きるの！？」

梨子「えっと……うん」

梨子「使い魔を召喚したはいいけど……制御を離れてしまって……」

千歌「わわっ！！　なんかモンスターに襲われちゃってるよぉー！！！」

梨子「触手モンスターに襲われて、千歌ちゃんは身動きがとれないわ」

ルビィ「えっと……ルビィの踊りで、お姉ちゃんの防御力をあげます！！」

梨子「うん、ダイスを振ってね」

ｶﾗｶﾗｶﾗｶﾗ

32

梨子「成功よ。防御力が上昇するわ」

ルビィ「やった！」

善子「ふっふっふっ……真打ち登場！！　さあ、私の攻撃よ！！！」

ｶﾗｶﾗｶﾗｶﾗ

88

善子「なんでよっ！！！」

梨子「あはは……まあ、確率ってこういうものだから」

梨子「さて。モンスターの攻撃だよ」

梨子「身動きの取れないチカチーに攻撃！！」

ダイヤ「盾になりますわ！！」

梨子「ダイスロールだよ」

ｶﾗｶﾗｶﾗｶﾗ

73

梨子「さっき防御力が上昇したから、かばうのは成功！」

千歌「さすがルビィちゃん！！　ファインプレイだよ！！」

曜「よし！！　それじゃ、最後の一体に攻撃だよ！！」

ｶﾗｶﾗｶﾗｶﾗ

41

梨子「最後の一体を、ヨウが一閃、撃破！」

梨子「おめでとう。無事にモンスターを撃破したわ！」

曜「やった！！」

花丸「さっすが勇者、かっこいいずら！！」

ルビィ「お姉ちゃんも、パラディンすごかった！！」

ダイヤ「ルビィもナイスアシストでしたわあ～！　さっすが、我が妹ですわ！！」

鞠莉「ぐぐぬぬぬ……！」

果南「まあまあ。次は活躍できるはずだよ？」

千歌「………」

一同（あっ……）

曜「だ、大丈夫だよ千歌ちゃん！！」

果南「そ、そうだよ！！　まだ、活躍できる機会はあるはずだから！！」

千歌「うわーん！　私だけまだ何にもできてないよぉー！！」

善子「私だって二回連続ミスよ……」

花丸「あ、善子ちゃんのはもはや様式美ズラ」

善子「ずらまるぅ！！」

ﾜｲﾜｲｷﾞｬｰｷﾞｬｰ

梨子「………クスッ」

曜「？　梨子ちゃん？」

梨子「ふふ。油断していてもいいのかしら？」

梨子「ここは既に魔王の領域なのよ？」

梨子「さて……改めてモンスターの出現判定よ！」

ｶﾗｶﾗｶﾗｶﾗ

01

善子「！？」

ダイヤ「モンスターの出現判定で、クリティカル……」

曜「と、いうことは……！！」

梨子「あっはっはっはっはっ！！」

梨子「冒険者達にとっては、最低最悪の出目が出てしまったわね！！」

梨子「冒険者たちの眼前に現れたのは、巨大なドラゴン！！！」

曜「ドラゴン！？」

善子「ちょっと！！　超凶悪なモンスターじゃない！！　いきなりだなんて、聞いてないわよ！！」

花丸「あわわわわわわわわ」

果南「これは……かなりピンチみたいだね」

ダイヤ「大丈夫よルビィ！　あ、貴女は私が守ってみせますわ！！！」

梨子「さて、まずはドラゴンの攻撃、ダイスは……」

ｶﾗｶﾗｶﾗ

04

曜「またクリティカル！？」

梨子「攻撃は必中。そしてターゲットは……マリー！！」

鞠莉「What！？」

梨子「炎のドラゴンブレス！！　これにより、マリーは一撃で戦闘不能！！」

鞠莉「Oh,NO！！！」

曜「戦闘不能になったらどうなっちゃうの？」

梨子「………大丈夫。初回は、戦闘不能になっても特別なルールがあるから」

千歌「特別なルール？」

鞠莉「あ……」ﾌﾗｯ

ﾊﾞﾀﾝ

千歌「え？　鞠莉さん？」

曜「鞠莉さん？　鞠莉さん！？」

果南「ど、どうしたの鞠莉！？」

ダイヤ「急に倒れて、一体……！！」

？？？「Oh、ちかっちがでかっちになったわ！？」

千歌「え！？」

善子「ふ、腹話術！？」

？？？「皆、何を言ってるの！？　私はこっちよこっち！！」

花丸「鞠莉さんの声が……」

ルビィ「！　皆、見て！！」

マリー「どういうこと！？　みんながGiantになっちゃったわ！！」

果南「ゲームのコマが……」

ダイヤ「喋ってる……！？」

梨子「そう……ゲームの中で一度絶命したキャラクターは、プレイヤーの魂を吸収することで一度は復活する……！！」

梨子「ただし、再度絶命した場合、その魂は帰ってこないけどね……」

千歌「梨子ちゃん！？　これ、どういうことなの！？」

梨子「……これは、闇のゲーム」

梨子「貴女達の魂を賭けたゲームなのよ」

ダイヤ「そんな……そんなこと……！！」

果南「梨子。悪い冗談はやめて。鞠莉を、もとに戻して！！」

梨子「それは出来ないわ。このゲームを終わらせるには、大魔王を倒すか、貴女達が全滅するかしかない」

ダイヤ「付き合いきれませんわ！！　こんなゲーム、今すぐ―――」

梨子「やめるの？　でもその場合鞠莉さんの魂は永遠の闇のなかよ？」

ダイヤ「な……！！」

梨子「やめる、ということは貴女達が負けを認めるということ」

梨子「それでもいいわよ？　貴女達は助かるから。でも、鞠莉さんはもう帰ってこれない……」

マリー「そんな……そんなことって……！」

ダイヤ「貴女……梨子さんじゃ、ありませんわね！？　何者ですの！？」

梨子「おかしいことを言うんですね。私は梨子、桜内梨子。貴女達のよく知る、Aqoursのメンバーですよ？」

千歌「違う……梨子ちゃんは、そんなことしない！！」

曜「そうだ！！！　本当の梨子ちゃんを、どこにやったの！？」

梨子「さぁ……？　いずれにせよ、貴女達は、もうこのゲームを降りることは出来ないの」

梨子「で、続けるの？　やめるの？」

ダイヤ「……上等ですわ。やってやりますわ！！」

梨子「オーケー、では続けましょう」

善子「暗黒魔法でドラゴンに攻撃よ！！」

果南「同じく！！　弓攻撃！！」

曜「剣で攻撃だよ！！」

ｶﾗｶﾗｶﾗｶﾗ

梨子「全員成功ね。でも……！」

善子「魔法が効いてない！？」

果南「弓が弾かれた！？」

曜「辛うじてダメージは通ったけど、ほとんどダメージになってない……！」

梨子「あははははは！！！　ドラゴンの装甲値はこのゲームの中でも上位クラス！！」

梨子「貴女達が束になろうとも、ろくなダメージを与えることも出来ないわ！！」

梨子「さあ、ドラゴンの攻撃！！」

梨子「ダイスロール！！！」

ｶﾗｶﾗｶﾗｶﾗ

04

梨子「クリティカル！！」

曜「そんな、馬鹿な！！」

梨子「消え去りなさい！！　ダーク・ギガブレス！！！」

ダイヤ「パラディン！！　範囲防御を発動しますわ！！」

曜「勇者ヨウも、パーティー全体をかばうよ！！！」

花丸「防御魔法で、みんなを守るずら！！！」

梨子「あははは！！　無駄な抵抗よ！！　ダイスを振りなさい！！」

ｶﾗｶﾗｶﾗｶﾗ

梨子「成功したようだけど……このブレスには、耐えられないわ！！」

曜「ああああああ！！」

ダイヤ「きゃああああ！！！」

花丸「うあああああっっ！！」

千歌「曜ちゃん！！」

ルビィ「お姉ちゃん！！」

果南「ダイヤァアア！！」

ﾊﾞﾀﾊﾞﾀﾊﾞﾀｯ

梨子「ヨウ、ディア、マルを撃破！！　初めて絶滅したキャラクターは、プレイヤーの魂を吸収して復活！！」

ヨウ「うっ……こ、ここは」

ディア「まさか、私達も」

マル「ゲームの中に……」

マリー「な、なんてことなの……！」

梨子「さあ。プレイヤーのターンよ」

梨子「どうするの？　このままだと全滅だよ？　くすくすくす」

果南「梨子……！！　許さないよ！！」

梨子「おっと。GMに直接手をかけるのはルール違反よ？」

果南「ぐっ……！」

梨子「今この場では私が支配者。迂闊なことをしたら、ゲームの中の四人は永遠にここから出られない……」

果南「ならば！！　ゲームで倒す！！　ダイスロールだ！！」

ｶﾗｶﾗｶﾗｶﾗ

00

梨子「あらあらあら」

果南「ファンブルッ！？」

梨子「精神の動揺が見て取れるよ、果南ちゃん」

果南「くっ……！」

梨子「ファンブルの代償として、果南ちゃんに対してドラゴンのカウンター攻撃！！」

梨子「ドラゴンテイル！！　レンジャーカナンを撃破！！」

果南「うわあああああ！！！！」

ﾊﾞﾀｯ

千歌「果南ちゃん……！！」

梨子「さあて、どうするち・か・ちゃ・ん？」

千歌「……ううっ……！！」

ヨウ「千歌ちゃん！」

マル「千歌ちゃん！」

ディア「千歌さん！！」

マリー「ちかっち！！」

カナン「……千歌！」

ルビィ「千歌さん！」

善子「千歌！」

千歌「みんな……！」

千歌「そうだ。諦めちゃダメなんだ。諦めたら、それこそ0になっちゃう！！」

千歌「私達は、諦めない！！」

梨子「そう。でも、絶体絶命の状況には変わりはないわ」

ルビィ「まずは、ドラゴンに弱体化のダンスを使います！！」

善子「そして私も、ドラゴンにデバフをかけるわ！！」

「「ダイスロール！！」」

ｶﾗｶﾗｶﾗｶﾗ

梨子「くっ……二人共成功ね」

梨子「でも、弱らせたところで致命打を与えないことには意味がない」

梨子「さあ！　どうするの千歌ちゃん！！」

千歌「召喚魔法！！　行くよ！！」

梨子「ならば、ダイスロールをどうぞ」


千歌「ダイスロール！！」

ｶﾗｶﾗｶﾗｶﾗ

千歌「お願い……！！」

01

千歌「クリティカル！！」

梨子「！　この状況でクリティカルですって！？」

千歌「行くよ！！　召喚魔法、普通怪獣ちかちーの召喚！！」

ヨウ「オレンジ……いや、みかん色の巨竜！！」

ディア「召喚士が行使しうる、最強の召喚獣！！」

千歌「いっけぇえええええ！！！　サンシャインメガフレア！！！」

梨子（流石に、このブレス攻撃には耐えられない！！）

梨子「ドラゴンはブレス攻撃によって爆散……！！」

千歌「やった！！　やったよ！！」

梨子「うふふふふ………」

千歌「Aqoursは負けない！！」

ルビィ「私達の力を合わせて！！」

善子「リリーを倒してみせるわ！！」

梨子「ふふふ……面白い。面白いわ」

梨子「今から、貴女達の顔が絶望にゆがむ様を想像するのが、ね」

善子「ど、どういうことよ……」

梨子「ドラゴンが撃破されたとき！！　ドラゴンの心臓を生贄として魔法陣が描かれる！！」

千歌「ボード上に、血の魔法陣が！！」

ルビィ「お姉ちゃん達！　そこから逃げて！！」

ディア「わ、わかりましたわ！！！」

マリー「にしても、でっかいルビィちゃんとかに見下されるのはなんか妙な気分ねー……」

カナン「言ってる場合じゃないよ！！　ほら！　走った走った！！」

千歌「この、魔法陣は……」

梨子「そう。この魔方陣は、魔王の城とこれを繋ぐワープホール……」

善子「まさか！！」

梨子「そうよ！！　大魔王リリーが、この場に顕現するわ！！！」

マル「！？」

ヨウ「何！？　あの、おぞましいオーラは！？」

リリー「うふ、うふふ、うふふふふふふ」

ディア「あれが……」

カナン「大魔王、リリー……！」

マリー「見た目はキュートだけど……あのオーラは……まさに、魔王って感じね……」

リリー「哀れな冒険者達……私の、永遠のしもべにしてあげるわ」

千歌「くっ！！　でも！！　みんなの力を合わせれば勝てる！！　いくよ！！」

千歌「サンシャインメガフレア！！！」

梨子「………ダイスロール」

ｶﾗｶﾗｶﾗｶﾗ

01

千歌「！？」

梨子「大魔王リリーのクリティカル攻撃……ストロベリートラッパー！！」

ヨウ「地面から、巨大な蔦が！！」

梨子「普通怪獣を撃破！！」

千歌「そ、そんな……！！」

カナン「千歌！！　私達の攻撃を！！　ダイスを振って！！！」

千歌「わ、分かった！！」

ディア「ルビィ！！　任せましたわよ！！」

マル「頼んだずら！！」

ルビィ「う、うん！！」

ヨウ「善子ちゃん！！」

マリー「いーい！？　クリティカルを出してね！！」

善子「無茶言うな！！　でも……やってやるわ！！」

ｶﾗｶﾗｶﾗｶﾗｶﾗｶﾗｶﾗｶﾗ

千歌「成功……だけど……」

ルビィ「全部、出目は大きい……」

善子「こんな数字じゃ、ろくなダメージが通らない……！」

梨子「あははははははははははは！！！！」

梨子「なぁに！？　その哀れな攻撃は！！」

梨子「ぜぇんぜん効かないわぁ！！」

梨子「そして！！　大魔王リリーの攻撃判定よ！！！」

ｶﾗｶﾗｶﾗｶﾗ

03

善子「嘘でしょ！？」

ルビィ「またクリティカル！？」

千歌「そんな！？」

梨子「さあ、これでゲームオーバーよ！！！」

リリー「ギルティーキッス！！」

千歌「うああっ！！」

善子「きゃああっ！！」

ルビィ「うゅぁあああっ！！」

ﾊﾞﾀﾊﾞﾀﾊﾞﾀｯ

チカチー「うう……」

ルベウス「うゅ……」

ヨシコ「そんな……」

ヨウ「みんな、こっちに来ちゃった……」

カナン「これじゃ、誰もダイスを振れない……」

ディア「うそ、でしょ……」

マリー「マリー達の……負け……？」

マル「それじゃマルたち……一生、このまま……？」

梨子「あらあら……これでプレイヤーは全滅。残念ながら、ゲームセットみたいね」

梨子「うふふふ……安心して。貴女達の魂は、私がちゃんと綺麗に管理してあげる」

梨子「はぁああああ……///　この調子で、他の子の魂も次々と……！」

？？「……それはどうかしら」

梨子「！？」

梨子「馬鹿な！　貴女の魂は、既にゲームの中に……！」

？？「ダイスを振る人間がいれば、まだゲームは続行可能よね」

マリー「まさか、10人目の、Aqours……！？」

ディア「！？　一体誰が！？」

カナン「あれは……！」

善子「ふっふっふっ……我が名はヨハネ。津島善子の肉体に眠る、もう一つの魂！！」

ヨシコ「ちょっとぉ！？」

花丸「善子ちゃん自身が驚いてるずら！！」

ヨシコ「いやいやいやいや！！　だって、え、え、えええええ！？」

善子「ふっ……この身体は所詮は器。だが、器が虚ろになった今！　このヨハネが顕現したのです！！」

ヨウ「よ、よくわかんないけど……」

カナン「全滅は免れたみたいだね……！」

チカチー「よしこちゃああああん！！！！」

ヨシコ「ヨハネよ！！　いや、ああもう紛らわしいわね！！」

ヨシコ「仕方ないわ！！　今この瞬間だけは貴女にヨハネを譲ってあげるから！！」

善子「ふふふふふ……さあ、ゲームを続けましょう」

梨子「……まあ、いいわ」

梨子「ええ、続行よ」

梨子「でも、貴方達は既に満身創痍……」

梨子「次の一手で、とどめを刺してあげるわ」

梨子（本当、お馬鹿な人たち……）

梨子（私の使うダイスは、重心の位置が変えてある……）

梨子（偶数面を上にするように落とせば、確実にクリティカルを出せる……！）

梨子「ダイスロー――！！」

善子「お待ちなさい！！」

梨子「！？」

善子「……その手に握られているダイス。ちょっと私に貸してもらえるかしら」

梨子「なっ……！？」

善子「そして、貴女には私達が使っていたダイスを使ってもらう」

梨子「……なに。私がイカサマをしてるっていいたいの……？」

善子「別に？　ただ、イカサマしてないんだったらダイスを入れ替えても問題はないでしょう？」

梨子「ぐ……ぐぎ……！」

善子「その様子だと、図星のようね、リリー」

善子「リリーの姿に免じて、今回は不問にしてあげましょう」

善子「でも、今度は互いにイカサマなしのダイスを用いること」

善子「そして、今までイカサマしてた分、こっちにはボーナスを貰うわ。構わないわよね？」

梨子「……オーケー。認めましょう。任意のキャラクターで、クリティカルを認めるわ」

梨子（その程度のペナルティで済むならば……安いものよ）

善子「2回」

梨子「？」

善子「2回分。貰いますわ」

梨子「……構わないわ」

善子「ならば、私が選択するのは当然……ずら丸！！　出番よ！！」

マル「回復魔法、いくずら！！」

善子「当然結果はクリティカル！！　全員、全回復よ！！！」

ヨウ「おおっ！！」

カナン「力が、漲ってくる……！」

ルベウス「うん！　まだ、戦える！！」

善子「そして、もう一人！！」

善子「チカチー！！」

チカチー「ふぇ？」

善子「召喚魔法で、クリティカルを発動する！！」

善子「さあ、呼び出しなさい！！　私達の―――――もう一人の、仲間を！！」

チカチー「！！」

チカチー「うん！　わかったよ！！」

チカチー「召喚！！」

ヨウ「！　もしかして！」

カナン「その、姿は……！！」

リリー「そんな……なぜ、お前がここにっ！！」

善子「大方、貴女が封印していたんでしょう？　ならば、呼び出せると思ったのよ」

リコ「みんな、おまたせ！」

善子「本当の、リリーをね！！」

チカチー「梨子ちゃああああああああん！！！！」

リコ「千歌ちゃん！？」

チカチー「よかった！！　本物のリコちゃんなんだね！？　そうなんだね！？」

リコ「千歌ちゃん……く、苦しいよ……！」

チカチー「あ……ごめん」

ヨシコ「再会の喜びに浸ってる暇はないわよ。とっととあいつを倒さないと！」

リコ「うん。私のジョブは、聖魔道士。何か、役に立てると思う！」

善子「さあ、行くわ！！！」

善子「ダイスロール！！！」

ｶﾗｶﾗｶﾗｶﾗ

02

梨子「クリティカルですってぇ！？」

チカチー「いっけー！！　サンシャインメガフレア！！！」

リリー「きゃあああ！！！！」

善子「さあ、次々行くわよ！！！」

ｶﾗｶﾗｶﾗｶﾗ

ヨウ「タイダルスラッシュ！！！」

マリー「シャイニーブレード！！！」

カナン「アクアスプラッシュ！！」

梨子「そんなっ！！　そんな馬鹿なっっ！！　連続でクリティカルだなんて！？」

梨子「まさか、イカサマ……くっ！　そのダイスを貸しなさい！！」

善子「ええ、どうぞ」

梨子「！？　ダイスには何も仕込んでいないというの……？」

梨子「試してみるわ！！　大魔王、リリーの攻撃よ！！」

ｶﾗｶﾗｶﾗｶﾗ

52

梨子「くっ……！　攻撃には成功したけど、威力は低い……！！」

善子「さぁ！　防御のダイスロールよ！！」

ｶﾗｶﾗｶﾗｶﾗ

ディア「ファランクス！！　全員をかばいますわ！！！」

ルベウス「支援の踊りで、お姉ちゃんの防御力を上げるよ！！」

マル「防御魔法も、合わせるずら！！！」

リリー「何っ！　私の攻撃の前に、無傷だなんて！！！」

梨子「そんな……そんなことが！！」

梨子「津島善子！！！　一体、何をしたの！？」

梨子「津島善子！！！　一体、何をしたの！？」

善子「何を？　愚かなことを聞くわね……」

善子「これが、人間の結束の力！　Aqoursの力！！　堕天使の力をも凌駕する、人の秘められし力なのです！！」

ヨシコ「リリー……いいえ、リコ！！　行くわよ！！」

リコ「ええ！　行きましょう！！」

ｶﾗｶﾗｶﾗｶﾗ

梨子「そんな……そんな、ばかなっ！！！」

リリー「きゃあああああああああ！！！！！！」

チカチー「はっ……はっ……」

カナン「や、やったの……？」

ヨウ「もう……動けないよ……」

ディア「……ですが、これだけの攻撃を与えれば……」

ルベウス「うゅ………」

マル「……ま、まさか」

ヨシコ「そんな……」

マリー「嘘でしょ……」

リコ「あれが……大魔王、リリー……！」

梨子「残念だったわねぇ……まだ、体力はギリギリ残っているわ……」

梨子（だが、このままだとスリップダメージで自滅することは確実……）

梨子（私が負ける？　この私が？）

梨子（認めない、認めない、認めない、認められない！！）

梨子「くく……くふふ……うふふ、うふふふふふふ」

梨子「あははははははははははは！！！！」

善子「ついに壊れたのかしら？」

梨子「こうなったらぁ……大魔王リリー、最後の攻撃よぉ……！！」

梨子「大魔王リリーには、ダイスロールを用いることなく発動できる最後の攻撃がある……！」

マリー「なにそれ！？」

カナン「最後の切り札ってやつか……！」

梨子「ギルティーハグ……これが、貴女の死の抱擁よ！！」

梨子「対象は、ヨシコ！！！」

ヨシコ「げっ！！」

チカチー「ヨシコちゃん！！」

リリー「ふふふふふ、もう、離さないわ……！！」

ヨシコ「ぎゃー！！　抱きつかれたー！！！」

マル「邪悪なエネルギーが集中してる……ま、まさか！」

ディア「自爆！？」

梨子「そう！　勘が鋭いのね貴女達！！」

梨子「ヨシコを撃破すれば、プレイヤーであるもう一人の善子もゲームの中に連れ込まれる！！」

梨子「そうすれば、貴女達は再度全滅！！　私の勝利よ！！！」

ヨシコ「いーーーーやーーーー！！！　死にたくなーーーーい！！！」

善子「くっ……！」

リコ「諦めないでよっちゃん！！」

善子「リコ……」

リコ「私の……私の力を使って！！」

善子「リコ……分かりましたわ。貴女の力を、信じましょう！！」

よしりこ「ダイスロール！！」

チカチー「お願い……！」

ヨウ「力を……！」

マル「私たちに……！」

ルベウス「っっ……！」

ディア「お願いしますわ……！」

マリー「私達を……」

カナン「Aqoursを……信じてる！！」

ｶﾗｶﾗｶﾗｶﾗ



21

梨子「………あは」

梨子「あははは」

梨子「あーーーーっはっはっはっはっ！！！」

梨子「残念！！　残念ねえ！！　無念よねえ！！」

梨子「確かにいい出目だったわ！！　でも、その程度の出目じゃ、この状況は変えられない！！」

善子「……私が発動した魔法は、高位の魔法ではありません」

梨子「……なん、ですって……」

善子「成功率30%。至ってシンプルな補助魔法」

善子「ダイスロール、成功よ」

リリー「何……その魔法は……！」

ヨシコ「ふぇっ！？」

リコ「リプレイス！！」

善子「対象のキャラクター二人を入れ替える、リプレイスの魔法！！」

ヨシコ「だ、脱出した！！」

リリー「そんな、お前は……！」

リコ「……うん。私だよ」

梨子「馬鹿な！！！　やめろ！！！　そんなことをしたら、お前はどうなるか……！」

ヨシコ「リコ！！！！」

リコ「大丈夫、よっちゃん。私、皆のこと信じてるから」

善子「ギルティーハグの効果発動！！　大魔王リリーの、自爆攻撃よ！！！」

梨子「そんな……そんな……！！！」

梨子「いやあああああああああああ！！！！！！！！！」

善子「っ……結果、リコは戦闘不能。同時に、大魔王リリーも撃破……！」

梨子「……ん……」

善子「リリー……いいえ、桜内、梨子」

チカチー「梨子ちゃん！？」

梨子「こ……ここは……」

ヨウ「元に戻ったんだね！！！」

カナン「ということは……」

リコ「ば……馬鹿な！！　この私が、ゲームの世界に……！！」

マリー「オー……イッツミラクール！」

ヨシコ「……ということは」

マル「こ、こいつを倒せば……！」

ルベウス「わ、私達の……」

ディア「勝利……！！」

リコ「ま……待ちなさい！！　あ、貴女達！？　仲間を！！　Aqoursの仲間を攻撃できるの！？」

リコ「私だって、桜内梨子なのよ！？　ねえ！！」

梨子「……Aqoursの桜内梨子は、私だけだよ」

リコ「！　梨子！！　そう！　貴女はGMなのよ！！　神にも等しい存在なのよ！！」

リコ「貴方が望めば、私達を意のままにできる！！　他のメンバーを、貴方のしもべに――――」

梨子「そんな絆は、いらない」

梨子「こほん……GMとして、宣言します」

リコ「やめてええええええええええええ！！！！！！！！！！」

梨子「冒険者たち。貴女達の勝ちです。魔王リリーは……冒険者たちに討たれ、浄化されてしまいました」

リコ「消える……！　消えていく……！！　わ、私の身体が……私の思念が……！！！」

リコ「嫌だ！！　消えたくない！！　嫌、嫌あああああああああ！！！！！！！！！！」

梨子「………」

善子「……終わったみたい、ですね」ﾊﾟﾀﾝ

梨子「よ、よっちゃん！？」

千歌「うう……」

ルビィ「こ……ここは……」

ダイヤ「部室に……戻ったんですの……？」

曜「みんな……帰ってきたの？」

花丸「みんなが元の姿ずら……」

鞠莉「勝った……」

果南「みたいだね……」

梨子「よっちゃん！　よっちゃん！？」

善子「う……うるさいわよ耳元で……」

千歌「善子ちゃあああん！！！」

曜「ヨーーシコーーー！！！」

ルビィ「善子ちゃああん！！！」

花丸「ずらー！！」

善子「ちょっと！！　何！？　何なのよ！！」

千歌「善子ちゃんのおかげだよぉお！！」

花丸「いっつも中二病だとか言っててごめんずらー！！」

善子「……そう、そうなのよ！！　私の中に眠るもう一人の私……それこそ――」

曜「もう一人ってことは、つまり善子ちゃんは善子ちゃんで、ヨハネはヨハネ……」

花丸「つまり、善子ちゃんのときは善子ちゃんって呼んでいいってことずらね」

善子「あ……ち、違うわ！　今は二人が一人に溶け込んでいるの！　だから私はヨハネ！　ヨ・ハ・ネ！」

果南「……梨子、大丈夫？」

梨子「ごめんなさい。私のせいで、皆を巻き込んじゃったみたいで……」

果南「ううん。それは気にしなくていいよ」

鞠莉「それにしても、このゲーム……」

梨子「東京で買ったおみやげの中に入ってたの」

鞠莉「What？」

梨子「……これは、処分しておこうか」

ダイヤ「その方がいいですわ……」

梨子「……闇のゲーム。一体、何だったんだろう」

千歌「あ～……さんざん動いたから、おなかすいちゃったよ～」

鞠莉「So,Hungry……」

ダイヤ「貴女達……現実の世界ではダイス振っただけではありませんか……」

曜「のはずなんだけど……でも」

果南「確かに、お腹すいたね……」

花丸「なんだかどっと疲れたずら……」

ルビィ「い、色々熱中してたからかな」

善子「魔力のストックが底をついたわ……」

梨子「じゃあ、今からクレープでも食べに行こ？」

千歌「さんせー！！　じゃ、早速行こう！！」

曜「あ！　千歌ちゃん待ってよー！」

ダイヤ「こらー！　走るんじゃありませーん！！」

鞠莉「きゃー！　ダイヤが怒ったー！」

ﾄﾞﾀﾄﾞﾀﾄﾞﾀﾄﾞﾀ……

果南「やれやれだね」

梨子「ふふ……じゃ、これ片付けて行きましょうか」

果南「うん。そうだね」

梨子「……」

梨子「あれ」

果南「？　どうしたの？」

梨子「……ダイスが、ないわ」

おしまい。