1: ◆cgcCmk1QIM 24/01/03(水) 07:39:19 ID:OWFx
■タイトル『ウルトラセブン』

●サブタイトル『あの月を討て』

19: ◆cgcCmk1QIM 24/01/04(木) 14:00:07 ID:ZxJ4
○シーン⑩アパート地下

 アパートの地下。モロボシ・ダンとアベ・ナナ、宇宙船内部で施設を整備している。

ナナ「いやー助かりました。もう随分ほったらかしで調子悪いのに、ナナ機械に弱くてさっぱり解らなくて。ダンさんが手伝ってくれなかったらどうしようかと思ってました」

ダン「……」

ナナ「で、どうでしょうかダンさん。ウサミンUFO、動きそうでしょうか」

ダン「ああ。少し部品がゆるんでいるだけだ。整備すれば夕方にはエンジンが始動するだろう」

ナナ「よかったあ、これで動かなかったらどうしようかと」

 ホッとした様子のナナ。だがダンの顔は険しい。

ダン(……燃料がないというのは嘘だ。この宇宙船には別の銀河団まで飛んでいけるだけのエネルギーが充填されている)

ダン(武装こそないが、すごい宇宙船だ。ウサミン星の科学は発展していたと聞いていたが、これほどとは。しかし)

20: ◆cgcCmk1QIM 24/01/04(木) 14:00:41 ID:ZxJ4
ダン「アベ・ナナ。この宇宙船の調整が終わったら、君はどうするのだ」

ナナ「……」

ダン「宇宙船で地球を離れるのは、君の権利だ。だが何故君を慕う子供たちに嘘をついた。これほどの宇宙船なら君が大事に思う人々を、君を愛する人々を、たくさん助けることができる。なのに何故彼女たちを救える宇宙船があることを隠したのだ」

ナナ「……」

 ナナ、計器を調整しながら独白をはじめる。

ナナ「昔、ウサミン星人は本当にギリギリでもう太陽が爆発するんだと気がついて、大慌てで宇宙船に乗り込んだんです」

21: ◆cgcCmk1QIM 24/01/04(木) 14:01:06 ID:ZxJ4
ナナ「本当に時間がなくて。近くにいる大事な人を、大事なものを大慌てで積み込んで……そうして飛び立った宇宙船の大半も、結局太陽の爆発に巻き込まれて助からなかったんですけどね」

 ダン、沈鬱な顔で独白を聞いている。

ナナ「そしてなんとか逃げ延びて地球に落ち着いたナナたちも、ずっと悩むことになったんです」

ダン「……悩む?」

ナナ「自分たちが生き残ってしまったことにです」

ナナ「自分が助かってよかったんだろうか。もっとほかに、助けるべき人がいたんじゃないだろうか。もう少しだけ頑張れば、もっとたくさんの人を助けられたかもしれない……故郷の消滅からは逃れられても、だれもそんな悩みから逃れることはできなかったんです」

ダン「……君も、そうなのか」

ナナ「ナナの時間は、ウサミン星を失った十七歳のあの日で止まったままです」

ダン「……」

22: ◆cgcCmk1QIM 24/01/04(木) 14:01:56 ID:ZxJ4






ナナ「イカルス星人、ペダン星人……地球に宇宙人が攻めてくるようになって、地球を離れたウサミン星人もいます。あの人たちは、またどこかの星で、地球を捨てたことを悔やむのでしょうか。残してきた人々を思って苦しむのでしょうか」

 ナナ、くるりと振り向いてダンを見る。

ナナ「ナナ、思うんです。ナナたちはあの時、逃げるべきではなかったのかもって。たとえ、その直後に太陽が爆発したとしても」

ダン「それは」

 ダン、何か言葉をかけようとして、出来ない。ナナ、笑う。

ナナ「こんな思い、あの子たちにさせたくありません。故郷を捨てる苦しみも、生き残ってしまった苦しみも、誰にも味あわせたくない。 だからこの円盤に誰も乗せるつもりはありません。ナナたちも、乗るつもりはありません。これは地球に残ったウサミン星人の総意です」

 ハッとするダン。ナナの意図を察したのだ。

ダン「しかし宇宙船を失えば、君たちウサミン星人はどこにも行けなくなってしまうぞ。それどころか、ここで地球とともに滅ぶかもしれない」

ナナ「さっき言いましたよね。ナナたちはあの時、逃げるべきではなかったのかもって」

ダン「……ああ」

ナナ「あれはウサミン星で死んでいればよかったって意味ではありません。最後の瞬間まで母星を救うために踏ん張ればよかった、と言う意味です」

ダン「……」

ナナ「あの時は出来なかった。だから、今度こそはそうしたい。故郷の星を守るために、踏ん張ってみたい。だから……」

23: ◆cgcCmk1QIM 24/01/04(木) 14:02:11 ID:ZxJ4

 ナナ、まっすぐにダンを見る。

ナナ「モロボシ・ダン。いえ、ウルトラセブン。ナナに力を貸してください」

ダン「いいのか」

ナナ「いいんです。それに、これはウサミン星人の責任ですから」

ダン「責任? どういうことだ」

ナナ、悲しげに空を見る。

ナナ「あの星は、ウサミン星の月なんです」

ダン「!」

ナナ「レーダーに映らなかったのは、ナナの体を透視から守っているのと同じシールドのせい」

ナナ「ナナたちはワープで逃れて来たけど、あの月はウサミン星の太陽が爆発したその日から、ずっと寂しい宇宙を飛んでいたんでしょうね。それが今になって、地球まで」
 
 ナナの目から涙がこぼれる。

ナナ「あの日からずっと、ずっと、お月様はナナたちを追いかけていたのかなあ……」

24: ◆cgcCmk1QIM 24/01/04(木) 14:05:41 ID:ZxJ4
○シーン⑪夕日に染まる下町

 ぐらぐらと地面が揺れ、下町の人々が騒然となる中、古びたアパートが二つに割れてその下から巨大な円盤が浮上する。いや、ウルトラセブンが円盤を持ち上げているのだ。

子供「なんだいあれ!」

老人「宇宙人の円盤じゃ!」

おばさん「こんな町に宇宙人の基地があったっていうのかい!?」

ナナ「みんなー、大丈夫ですよ。落ち着いて!」

 高い電柱にしがみついて、アベ・ナナが叫ぶ。

ナナ「ウルトラセブンが、あれを使って地球を助けてくれるんですから。さあ、細かい事はいいからみんなで応援してあげてください!」

 ウルトラセブンとナナの視線が一瞬交差する。セブン、静かに頷いて夕日の空へと飛び立ってゆく。下町の人々の声援がセブンを見送る。

25: ◆cgcCmk1QIM 24/01/04(木) 14:06:09 ID:ZxJ4
○シーン⑫宇宙

 ウサミン円盤を押して猛スピードで宇宙を飛ぶウルトラセブン。やがて宇宙の彼方から飛来するウサミン星の月が迫る。もとは科学都市に覆われていたであろう月は凍り付き、ゆがみ、焼け焦げている。

セブン「デャッ!」

 セブン、ウサミン円盤を月へと突き飛ばす。ウサミン円盤、せわしなく明滅しながらまっしぐらに月へと飛ぶ。

セブン「セヤァッ!」

 もう円盤が月に激突するかという刹那、ウルトラセブン、エメリウム光線で円盤を撃つ。爆発。凄まじい光がウサミン星の月を飲み込む。ウサミン円盤の超エネルギーで光まで分解され、ウサミンの月は影も残さず消滅した。

 ウルトラセブン、しばし虚空を見つめた後、背を向けて地球へと飛び去る。

26: ◆cgcCmk1QIM 24/01/04(木) 14:10:36 ID:ZxJ4
○シーン⑬ウルトラ警備隊作戦司令室

 小惑星消失から数日後。ウルトラ警備隊が作戦司令室に勢ぞろいしている。

キリヤマ「あの宇宙船が出てきた地下基地を調べたが、もぬけのからだったそうだ」

フルハシ「上に建ってたアパートの住民は災難だが、死傷者もなくてよかったよ」

ソガ「結果として助かったが、結局あの円盤は何だったんだろう。ウルトラセブンは一体何故」

ダン「どうでもいいじゃないですか、そんなこと」

アンヌ「ダン」

ダン「地球を侵略する宇宙人も居れば、地球を故郷と愛する宇宙人もいる。たとえ宇宙船を失っても地球を、そこに住む人を守りたいと考えた宇宙人がいたっておかしくない。僕はそう思います」

 頷くアンヌ。

27: ◆cgcCmk1QIM 24/01/04(木) 14:11:41 ID:ZxJ4
○シーン⑭エンディング

ナレーション「……貴方の隣の家には怪しい人はいませんか? 地球は狙われています。もし怪しい人に気がついたら地球防衛軍基地までお電話をください。ひょっとすると貴方の隣人は惑星から来た宇宙人かもしれないのです」

 下町にナナの姿。下町の住人や少女アイドルたちに取り巻かれている。

ナレーション「しかし、あなたの隣人がもしあなたと同じように誰かを愛し、地球人として今日を大事に暮らす変わった宇宙人だとしたら。それはもう、地球人と呼んでもいいのかもしれませんね……」

 ナナの姿が下町に消えてゆく。その姿は地球の人々にまぎれ、もう見分けがつかない。

                       (終)

28: ◆cgcCmk1QIM 24/01/04(木) 14:12:59 ID:ZxJ4
最後まで読んでくださってありがとうございました。
モバマスとウルトラのクロスに挑戦されているたくさんの先人に触発されて書きました。

引用元: 【モバマス×ウルトラ】アベ・ナナ「あの月を討て」