1: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/06(火) 00:12:25.123 ID:AGcTgJGp0.net
普段は顔に険しさを帯び、身も心も会社に捧げ、営業スマイルを除けば決して笑みなど見せない社畜――

しかし、今日の社畜は満面の笑みを浮かべていた。

ネクタイも彼の心を象徴にするように真っ赤だ。


社畜「……」ワクワク


なぜなら今日は――

ボーナスの日なのだから!

2: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/06(火) 00:15:10.533 ID:AGcTgJGp0.net
コツッ… コツッ… コツッ…


規則正しいハイヒールの足音が近づくたび、社畜の胸が高鳴る。

己のネクタイのように、社畜の顔が紅潮していく。


社畜「……」ドキドキドキ

4: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/06(火) 00:16:27.250 ID:AGcTgJGp0.net
ガチャッ…

女社長「待たせたな」

女社長「ほぉ~ら、ボーナスだぞ~」

社畜「!」ピクッ

社畜「ワンワン! ワン!」

女社長「ふふふ、かわいい奴め」

6: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/06(火) 00:18:35.424 ID:AGcTgJGp0.net
女社長「ボーナス、つまり明細はこの封筒の中に入っている」ピラ…

社畜「!」ビ ビ ッ

社畜「ハッハッハッ」フリフリフリ

女社長「コラコラ、ベルトの振りすぎだ。ベルトが壊れてしまうぞ」

社畜「ハッハッハッ」フリフリフリフリフリ

女社長「衝動を抑えきれないか……しょうがない奴め」

8: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/06(火) 00:20:40.837 ID:AGcTgJGp0.net
女社長「しまった! 投げたら、窓から会社の外に落ちてしまった!」

社畜「ハウッ!?」

女社長「まずいぞ! 明細とはいえ誰かに拾われたら、ボーナスはそいつのものになってしまう!」

社畜「マジスカ!?」

女社長「それが嫌なら、外まで取ってくるのだ!」

社畜「ワンワンワン!」スタタタタッ

9: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/06(火) 00:21:56.980 ID:AGcTgJGp0.net
女社長「しまった! 投げたら、窓から会社の外に落ちてしまった!」

社畜「ハウッ!?」

女社長「まずいぞ! 明細とはいえ誰かに拾われたら、ボーナスはそいつのものになってしまう!」

社畜「マジスカ!?」

女社長「それが嫌なら、外まで取ってくるのだ!」

社畜「ワンワンワン!」スタタタタッ

10: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/06(火) 00:23:17.590 ID:AGcTgJGp0.net
通行人「……ん?」

ピラ…

通行人「あそこにあるビルから、封筒が落ちてきたぞ……」

通行人「どれ、拾ってみるか……」

社畜「ワンワンワンワンワン!!!」

通行人「!?」ギョッ

12: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/06(火) 00:26:33.840 ID:AGcTgJGp0.net
社畜「ガルルルル…」

通行人「な、なんだよ!?」

社畜「フーッ! フシャーッ!」

通行人「ひっ!」

通行人「わ、分かったよ! 拾わないよ!」

社畜「……」ニッコリ

14: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/06(火) 00:29:15.627 ID:AGcTgJGp0.net
社畜「ワン!」

女社長「おお、拾ってきたか。えらいえらい」ナデナデ

社畜「クゥ~ン」

女社長「では拾ってきたご褒美に……その封筒を開封することを許す!」

社畜「!」ビ ビ ッ

社畜「ハッハッハッハッハ…」ビリッ

15: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/06(火) 00:32:22.325 ID:AGcTgJGp0.net
『スカ』



社畜「……」

女社長「アッハッハッハッハ!」

女社長「どうだ? 面白かったか?」

社畜「クゥ~ン」シナッ…

女社長「あらら、ベルトがしなびてしまった」

18: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/06(火) 00:35:17.863 ID:AGcTgJGp0.net
女社長「冗談だよ、冗談」

女社長「実は今回のボーナスは、現金で手渡すことにしたんだ」

女社長「その方がありがたみも増すだろうと思ってな」

社畜「!」ビ ビ ッ

社畜「ハッハッハッ…」フリフリフリ

女社長「よしよし、いい子だ。それじゃボーナスをやろう」

19: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/06(火) 00:37:44.170 ID:AGcTgJGp0.net
女社長「はい、五円」チャリーン

社畜「……」

女社長「お前はまだ独身だろう? ご縁があるように、ということで五円だ!」

女社長「どうだ? 嬉しいだろう?」

社畜「イヤイヤイヤン」

女社長「そんなにしょぼくれた顔をするな……私まで悲しくなる」

20: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/06(火) 00:40:50.649 ID:AGcTgJGp0.net
女社長「実はな……ボーナスはここにはないのだ」

社畜「!」ガビーン

女社長「今はたしか、経理にいる娘が持っているはずだ」

女社長「というわけで、ひとっ走りもらってこい! 行け!」

社畜「ワンワンワン!」タッタッタ…

21: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/06(火) 00:44:24.509 ID:AGcTgJGp0.net
経理娘「あら、社畜さん。どうしました?」

社畜「ワン!」

経理娘「ボーナス? わたしが? 持ってるわけないじゃないですか」

社畜「ナンデスッテ!?」

社畜「ソンナハズハ…」

経理娘「社長が? アハハ、またからかわれたんですよ。あの人、イタズラ好きだから」

社畜「ヤラレタ!」

22: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/06(火) 00:47:35.782 ID:AGcTgJGp0.net
社畜「ワン!」

経理娘「え? 社長のもとに戻る? ちょっと待って下さい」

社畜「?」

経理娘「実はわたし、昼間はこうして眼鏡をかけて地味に経理なんてやってますけど」

経理娘「夜はSM嬢なんです!」

社畜「キャン!?」

経理娘「ボーナスはあげられないけど……その代わり、鞭を受け取って下さい!」バシーンッ

社畜「イミワカラン!」

25: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/06(火) 00:50:58.070 ID:AGcTgJGp0.net
経理娘「オラオラオラ、この会社の犬っ! 会社のためなら靴でもなめる犬畜生がっ!」

経理娘「女王様とお呼びっ!」ヒュバッ


ビシッ! バシッ! ビシィッ!


社畜「キャイ~~~~~ン!」

経理娘「オーッホッホッホ! いい声よ! それでこそ社畜よ!」

26: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/06(火) 00:53:18.301 ID:AGcTgJGp0.net
社畜「……」ボロッ…

女社長「そうか、ボーナスはもらえず、鞭をもらってしまったか」

女社長「それはすまないことをしたな」

社畜「デモ…」

女社長「でも?」

社畜「チョットキモチヨカッタ…」

女社長「それはよかった」

28: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/06(火) 00:56:26.885 ID:AGcTgJGp0.net
社畜「ワン!」

女社長「分かった分かった、今度こそボーナスをあげるって」

女社長「え~っと、どこにやったかな……」

女社長「あっ、そうだ! 社長室に忘れてきてしまった!」

女社長「というわけで、取りに行ってきてくれるか?」

社畜「ワンワン!」タタタッ

31: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/06(火) 01:00:25.108 ID:AGcTgJGp0.net
秘書「え? ボーナス?」

社畜「ワン!」

秘書「社長室にはありませんわよ。多分、社長にからかわれたのでは?」

社畜「クソー、マタカー」

秘書「あ、お待ち下さいませ」

社畜「クン?」

秘書「まさか、手ぶらで帰られるおつもりですか?」

社畜「エエッ!?」

33: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/06(火) 01:04:03.144 ID:AGcTgJGp0.net
秘書「わたくし、トリミングの資格を持っておりますの」チョキチョキ

秘書「身だしなみを整えて差し上げますわ」サッサッ

社畜「ワン!」

秘書「え、トリミングはペットの手入れをする資格だろうって?」

秘書「なにをおっしゃる。社畜さんは社長のペットのようなものではありませんか」

秘書「シャンプーします。かゆいところがあったら、おっしゃって下さい」ワシャワシャワシャ

社畜「アオンアオンアオン!」ビ ビ ビ ッ

35: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/06(火) 01:06:33.730 ID:AGcTgJGp0.net
社畜「……」ビシッ

女社長「おや、ずいぶん身だしなみが整ったじゃないか」

社畜「ワン!」

女社長「なに? 秘書が、お前は私のペットだといったのか?」

社畜「ワンワン!」

女社長「気分を害してしまったか。すまんすまん」

社畜「デモキモチヨカッタ…」

女社長「それはなによりだ」

38: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/06(火) 01:09:31.131 ID:AGcTgJGp0.net
女社長「では、今度という今度こそ、ボーナスをやろう」

社畜「ワン!」

女社長「まず、棒を用意します」サッ

女社長「続いて、ナスを用意します」サッ

女社長「棒をナスに刺して……」グサッ

女社長「はい、ボーナス!」ジャン!

社畜「……」

39: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/06(火) 01:13:04.445 ID:AGcTgJGp0.net
社畜「ウ~…」

女社長「あ、やっぱりダメ?」

社畜「ワン! ワンワン!」

女社長「ハハハ、すまんすまん」

社畜「ワン!」

女社長「しかし、ナスをなめてもらっては困るぞ」

女社長「今から私が少しばかりナスの素晴らしさをレクチャーしてやろう」バサッ

社畜「アオン!」

女社長「エプロン姿もよく似合う? ふふっ、ありがとう」

40: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/06(火) 01:16:50.947 ID:AGcTgJGp0.net
女社長「まずはナスを切り……」トントン

女社長「水につけ、アクを抜く」

女社長「その間に味噌、砂糖、みりん、醤油を混ぜる」

女社長「フライパンを温め、ナスを入れて炒める」ジャッジャッ

女社長「先ほど混ぜた味噌などを加え、絡めながら炒める」ジャッジャッ

女社長「仕上げに白ごまをかけたら――完成!」

女社長「ナスの味噌炒めだ!」ジャンッ

社畜「アオンッ」

42: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/06(火) 01:21:57.245 ID:AGcTgJGp0.net
社畜「ハッハッハ…」フリフリフリ

女社長「待て! ステイ!」

社畜「!」ピタッ

女社長「まだだぞ……まだ!」

社畜「……」

女社長「よし!」

社畜「!」ピクッ

社畜「ワンワンワン!」ガツガツムシャムシャ

女社長「あまりがっつくな。ノドにつっかえてしまう」

43: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/06(火) 01:25:40.358 ID:AGcTgJGp0.net
社畜「ゴチソウサマデシタ!」

女社長「全部食べてくれたか。味はどうだった?」

社畜「ワン! オイシイ!」

女社長「ふふっ、ありがとう」

社畜「デモ…」

女社長「ん?」

社畜「ヤッパリチャントシタボーナスモホシイ…」

女社長「そうか……その通りだ。年に二回のボーナス、会社員にとっては命綱だろう」

女社長「だが、大変言いづらいことなのだが……」

44: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/06(火) 01:29:46.178 ID:AGcTgJGp0.net
女社長「実は我が社も不景気でな」

女社長「今年の冬は……ボーナスを出せないのだ! すまないっ!」

社畜「!」ガーン

女社長「どうしても言い出せなくて……こんな回りくどいことをしてしまった!」

女社長「来年の夏は絶対に出すから……この冬だけは我慢してくれ!」

女社長「この通りだっ!」ガバッ

社畜「……」

45: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/06(火) 01:35:11.720 ID:AGcTgJGp0.net
社畜「頭を……上げて下さい、社長」

女社長「!」

社畜「今、会社が厳しいことも、それでも社長が精一杯やってることも、私はよく理解しています」

社畜「だから……大丈夫です」

女社長「ボーナスがなくても……我慢してくれるの?」グスッ…

女社長「こんな不甲斐ない経営者を……許してくれるの?」ウルウル…

社畜「許すもなにも、私は雇って頂いてる身……会社の存続のためなら、ボーナスがなくても平気です」

社畜「泣かないで下さい」

女社長「ありが……とう……」

48: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/06(火) 01:39:41.306 ID:AGcTgJGp0.net
女社長「なーんちゃってな」

社畜「へ?」

女社長「ちゃんとボーナスは出るぞ。ほら明細だ」

社畜「ワン!?」

女社長「たしかに景気は厳しいが、うちとて堅実にやっているからな」

女社長「もうイタズラはないぞ、受け取れ!」

社畜「ワン! ワンワン!」フリフリ

49: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/06(火) 01:42:47.237 ID:AGcTgJGp0.net
社畜「コンナニイタダケルンデスカ!?」

女社長「ああ、お前は頑張ってくれていた。これぐらいは当然だろう」

社畜「アオンアオンアオン!」フリフリフリ

女社長「おお、よしよし」

社畜「ハッハッハ…」ガバッ

女社長「ハハ……飛びつくのはよせ。くすぐったいぞ」

社畜「クゥ~ン」

女社長「よしよし」ナデナデ

50: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/06(火) 01:47:29.612 ID:AGcTgJGp0.net
女社長「と、ところで……今夜なんだが……」

女社長「どうだろう? ぜひ、二人きりで夜のボーナスとでもしゃれ込み……」


同僚「おーい、ボーナス出たから飲みに行こうぜーっ! 今日ぐらい残業はやめとこうぜーっ!」


社畜「おーうっ!」

女社長「あっ……」

社畜「社長、ありがとうございました! 今後も会社のために尽くします! では私はこれで!」

女社長「う、うむ……」

51: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/06(火) 01:51:11.319 ID:AGcTgJGp0.net
女社長「……」

女社長「社畜……」

女社長「会社員としては思い通りになるが、一人の男としてはなかなか思い通りにならない……」

女社長「私が彼というボーナスを手に入れるのは、一体いつになるやら……」





<終わり>

引用元: 女社長「ほぉ~ら、ボーナスだぞ~」社畜「ワンワン!」