1: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/12/12(月) 03:12:10.97 ID:pxnwtYk4.net
果南 「ふう、今日もいっぱいお客さんが来てくれてよかったなあ」

???「すみません」

果南 「いらっしゃいませ」

???「まだお店、空いてますか?」

果南 「はい、大丈夫ですよ!」

???「よかった!」

果南 「私は当店のインストラクターの松浦果南です。
    今日はどういったご用件で?」

???「早速ですが、ダイビングがしたいのです」

果南 「承知しました! ダイビングは初めてですか?」

???「そうですね、現世では初めてです」

果南 「げんせ?」

???「前世は海に住んでたので、行住座臥、ダイビングであったと言っても過言ではないのですが」

果南 「うーん……よく分かりませんが、毎日ダイビングをされていたということは、プロのダイバーの方ですか?」

???「まあ、そういうふうにも言ってもよいと思います」

果南 「それはすごい! じゃあきっと、私なんかよりずっとお上手なんですね。
    ちなみに、どういったお仕事をされていたんですか?
    やっぱりインストラクターですか? それとも漁業関係の…….」

???「ヤドカリです」

2: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/12/12(月) 03:13:48.59 ID:pxnwtYk4.net
果南 「ヤドカリ? ああなるほど、ヤドカリ漁の専門家なんですね!」

???「いや、私がヤドカリなんです」

果南 「はあ」

???「前世は竜宮城に住んでいたんです」

果南 「ははあ」

???「罪を犯したために竜宮城を追われ、地上をかりそめの宿としているのです。
    ヤドカリだけに……なんちゃって」

果南 (え、これ笑うとこなの?)

???「ふふふ、つまりは堕天ですよね。
    いや、えーと、この場合は深海から昇ってきたわけだから……」

果南 「水揚げですね」

3: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/12/12(月) 03:15:09.56 ID:pxnwtYk4.net
???「ちょっと待ってください、それじゃあまるで漁獲じゃないですか」

果南 「だってお客様はヤドカリなんですよね」

???「まあそうですね」

果南 「じゃあ水揚げでいいんじゃないかな、という気がしますけど」

???「でも『ヨハネ、堕天』はカッコいいけど、『ヨハネ、水揚げ』はちょっとなあ……」

果南 「あれ? お客様の名前はヨハネって言うんですか?」

ヨハネ「そうです、私はヨハネと申します」

果南 「ヤドカリじゃなかったんですか?」

ヨハネ「ヤドカリは種の名前で、ヨハネがパーソナルネームですね」

果南 「へー、ヤドカリにもパーソナルネームってあるんですね」

ヨハネ「乙姫様からつけてもらったのです」

果南 「驚きました。以外と設定がしっかりしてるんですね」

ヨハネ「設定とは失礼な、これは厳然たる事実です」

果南 「これは失礼しました、ヤドカリのヨハネさん」

ヨハネ「分かってもらえて嬉しいです」

4: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/12/12(月) 03:15:58.98 ID:pxnwtYk4.net
果南 「ところでヤドカリのヨハネさん、当ダイビングショップでは、フリーダイビングとスキューバダイビングができますが」

ヨハネ「スキューバダイビングでお願いします。竜宮城を探すには時間がかかりそうなので」

果南 「でもスキューバダイビングの場合、空気ボンベを背負う必要があるんですけど」

ヨハネ「いけると思います。こう見えても私、結構体力あるんです」

果南 「でもヨハネさんはヤドカリなんですよね」

ヨハネ「はい、そうです」

果南 「ヤドカリはもう貝殻を背負ってますよね」

ヨハネ「そりゃまあ、ヤドカリですからね」

果南 「じゃあ空気ボンベは背負えないんじゃないですか」

ヨハネ「あっ」

6: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/12/12(月) 03:17:07.41 ID:pxnwtYk4.net
果南 「どうしますか? 一旦、貝殻を脱ぎますか」

ヨハネ「……   ///」

果南 「いや、ちょ、まっ……え?」

ヨハネ「だってヤドカリが貝殻を脱いだら、もう全部見えちゃうじゃないですか!」

果南 「ナニが見えるというのですか?」

ヨハネ「そりゃもちろん、腹肢とか尾肢とか……」

果南 「ほうほう、ほかには?」

ヨハネ「び、尾節とか///」

果南 「へー、尾節ってどんな形をしてるんですか?」

ヨハネ「年頃の女の子のヤドカリにそんなこと言わせるんですか? 
    もー、果南さんのス・ケ・ベ!」

果南 「あ、うん、ごめんなさい」

7: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/12/12(月) 03:17:59.84 ID:pxnwtYk4.net
―――――――

《おまけコーナー ダイヤさんと学ぶヤドカリの生態》

ヤドカリの腹部は七つの節に分かれており、尾節はその最後の部分を形成していますの。
つまり尾節はヤドカリの貝殻に隠された最深奥の部分であり、これはもう陰部と言っても過言ではありませんわ。
だからみなさんは、うら若き乙女のヤドカリと話をするときは言葉に気をつけてください。
くれぐれも果南さんのようなセクハラ発言をすることがないように。
ダイヤとの約束ですわよ! 

ちなみに参考までにヤドカリのフルヌード写真を以下に貼っておきます。
ただし、非常に刺激が強いので18歳以下のヤドカリの方々は見てはいけませんわ。
それではまた、ごきげんよう!

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―――――――

8: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/12/12(月) 03:19:48.13 ID:pxnwtYk4.net
ヨハネ「だから貝殻を脱げっていうのは、それはもう下着を脱げっていうのも同然なわけです」

果南 「うん、そうだったのか……そうとも知らず不用意な発言をして申し訳ない」

ヨハネ「デリケートなんです、ヤドカリの腹部は」

果南 「でもそれなら、どうやって空気ボンベを背負えばいいのかな」

ヨハネ「うーむ、困りましたね」

9: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/12/12(月) 03:21:14.03 ID:pxnwtYk4.net
果南 「あっ」

ヨハネ「どうしたんですか、果南さん?」

果南 「ヨハネちゃんはヤドカリなんだよね」

ヨハネ「そうですよ」

果南 「ということは、水中でも呼吸ができるわけだよね」

ヨハネ「そうなりますね」

果南 「ということは、そもそも空気ボンベなんて必要ないわけだ」

ヨハネ「それもそうですね。
    あらやだ、私ったらつい、地上の生活が長かったもので、えら呼吸ができること忘れてた」

果南 「もー、ヨハネちゃんたら、うっかりさん!」

ヨハネ「てへぺろ!」

果南 「HAHAHAHAHA!」

ヨハネ「HAHAHAHAHA!」
::

10: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/12/12(月) 03:22:47.62 ID:pxnwtYk4.net
―――――――

《おまけコーナー ダイヤさんと学ぶヤドカリの生態》

ヤドカリは節足動物の中でも、甲殻類に属していますの。
甲殻類は一般に、えらで呼吸をしています。
ですから、ヤドカリとキスをする場合はパートナーが呼吸困難に陥らないよう、水中で行うようにしましょう。
甲殻類はデリケートですから、キスは優しく、安全に!
ダイヤとの約束ですわよ!

ちなみに参考までに、オガサワラヒメホンヤドカリちゃんのキス待ち顔の写真を貼っておきます。
とても美人さんなので、恋に落ちても知りませんわよ。
それではまた、ごきげんよう!

no title


―――――――

11: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/12/12(月) 03:23:54.74 ID:pxnwtYk4.net
果南 「ヨハネちゃん、竜宮城が見つかるといいね」

ヨハネ「ありがとう果南さん、無事に竜宮城が見つかったら、玉手箱をもって戻ってきますね」

果南 「ふふふ、礼には及ばないよ。
    だって私は、お客さんが気持ちよくダイビングできれば、それだけで満足だからね」

ヨハネ「お姉様……」

果南 「さあ、それではダイビングスーツに着替えて」

12: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/12/12(月) 03:24:56.43 ID:pxnwtYk4.net
【数分後、砂浜にて】

ヨハネ「準備オッケーです、果南さん!」

果南 「よーし、ばっちり似合ってるよ、そのスーツ!」

ヨハネ「でも果南さん、どうして私たち砂浜にいるんですか?」

果南 「だってヨハネちゃん、あなたは地上に水揚げされてからずいぶん経つんでしょう?」

ヨハネ「はい、かれこれ15年ほど」

果南 「そしたら、もうエラ呼吸も忘れちゃってるかもしれないし、泳ぎのテクニックも鈍ってると思うんだ」

ヨハネ「確かにそうかもしれません、どちらかといえばインドア派のヤドカリでしたから」

果南 「だから、いきなり深いところに潜るのは危険だと思うんだよね」

ヨハネ「それもそうですね。
    さすがはインストラクター!」

果南 「ふふふ、まずはお客様の安全が第一ですからね。
    それじゃあヨハネちゃん、まずは浅いところで呼吸がどれくらい続くか、試してごらんよ」

ヨハネ「分かりました、果南お姉様!」

13: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/12/12(月) 03:25:57.33 ID:pxnwtYk4.net
(ヨハネ、前かがみになって海水に顔をつける)

果南 「いーち、にー、さーん……」

ヨハネ「……! ぷはー、ぜいぜい」

果南 「まだ10秒くらいしか数えてないよ?」

ヨハネ「もうダメ、これ以上は息、続かない」

果南 「まあ無理することはないよ、ゆっくりリハビリしよう」

ヨハネ「そうですね、15年も水揚げされてたら、肺活量も減りますよね」

果南 「おっとヨハネちゃん、えら呼吸なのに肺活量とはこれいかに」

ヨハネ「おっ、こりゃまた一本取られましたな!」

果南 「ヤドカリン・ジョークですな!」

ヨハネ「HAHAHAHAHA!」

果南 「HAHAHAHAHA!」

14: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/12/12(月) 03:27:31.90 ID:pxnwtYk4.net
(ヤドカリン・ジョークに抱腹絶倒する二人のもとに、鞠莉が駆け寄ってくる)

鞠莉 「ハロー、果南と……こちらの方は、ダイビングショップのお客様?」

果南 「やあ、よく来たね、鞠莉!
    紹介するよ。こちらは、お客様のヨハネちゃん」

ヨハネ「こんにちは!」

鞠莉 「まあ、とっても可愛いお嬢さんですね!
    私は小原鞠莉と言います。
    果南の友人で、近くに住んでいるものですから、ときどきダイビングショップの手伝いに来るんです」

果南 「ふふふ、手伝いなんて偉そうなこと言ってるけど、本当は水遊びに来てるだけでしょ」

鞠莉 「あー、ひどーい!
    今日は張り切って、腕によりをかけた料理を作ってきたんだもん!」

果南 「お、ありがとう!
    それじゃあヨハネちゃんのフリーダイビングが終わったら、いただくことにするよ」

鞠莉 「ヨハネちゃんも、一緒にどうですか?」

ヨハネ「ありがとうございます! いただきます!」

15: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/12/12(月) 03:29:08.02 ID:pxnwtYk4.net
鞠莉 「ふふふ、嬉しいわ。
    今日のメニューは「シェフの気まぐれシャイ煮」よ。
    とっておきのメニューだから、お楽しみにね♡」

ヨハネ「わー、すごいなあ。
    ところでシャイ煮って、どんな料理なんですか?」

果南 「鞠莉が気まぐれにいろんな食材を煮込んだ海鮮鍋みたいなものだね。
    入っているのは、魚介類、海藻、それから…..」

鞠莉 「ふふふ、今日はエビも入ってるんだよ!」

果南 「それはすごい!」

ヨハネ「エビ……」

鞠莉 「どうしたのヨハネちゃん、急に震えだして」

ヨハネ「エビは私にとって親戚のようなものですから」

16: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/12/12(月) 03:29:50.82 ID:pxnwtYk4.net
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《おまけコーナー ダイヤさんと学ぶヤドカリの生態》

甲殻類には、ヤドカリのほかに、エビやカニが属していますの。
それゆえヤドカリの中にも、食べられる種類もいますわ。
可食部は少ないのですが、味はエビに似た甘味があってすこぶる美味であるとされます。
郷土料理として常食しているところもありますのよ。

ちなみに参考までに、ホカホカに茹で上がったヤドカリ料理の写真を貼っておきます。
同種族の方々にとってはグロテスクな画像ですので、甲殻類の方は閲覧を控えてください。
それではまた、ごきげんよう!

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17: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/12/12(月) 03:30:53.00 ID:pxnwtYk4.net
鞠莉 「エビが親戚? それは一体どういう……」

果南 「ああ、ごめんごめん、説明が遅れていたね。
    実はヨハネちゃんはヤドカリなんだ」

鞠莉 「ヤドカリ? ああなるほど、お家がヤドカリ漁をやっていらっしゃるのね!」

果南 「ふふふ、違うよ。
    ヨハネちゃんがヤドカリなんだよ」

鞠莉 「はあ」

果南 「前世は竜宮城に住んでたんだよ」

鞠莉 「ははあ」
   (え、何これ……ジャパニーズ・落語?)

18: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/12/12(月) 03:32:00.27 ID:pxnwtYk4.net
果南 「止むに止まれぬ事情があって竜宮城を追われ、深淵の暗き水底から地上に……ええと、何だっけ?」

ヨハネ「水揚げ」

果南 「そうそう、水揚げされたんだよ」

鞠莉 (えーと、ここが笑いどころなのかな?)
   「HA, HAHAHA……」

果南 「笑いごとじゃないよ! ヨハネちゃんは故郷を追われてとても悲しんでいるんだ!」

ヨハネ「さめざめ……」

鞠莉 「ああ、うん、ええと……ごめんなさい」

20: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/12/12(月) 03:32:48.77 ID:pxnwtYk4.net
果南 「分かってもらえればいいんだよ。
    こちらこそ悪かったね、急にこんな話をして」

鞠莉 (どんな話やねん)

果南 「ちなみにヨハネっていうのは、乙姫様につけてもらった彼女のパーソナル・ネームなんだ」

鞠莉 「So great! 結構しっかり設定が作ってあるんだね!」

果南 「ノンノン、鞠莉、これは設定じゃない、厳然たる事実なんだ」

鞠莉 「集団催眠にでもかかってるの?」

果南 「いや、大いに真面目だよ、ヨハネちゃんも私も」

ヨハネ「深淵の暗き水底より……ヨハネ、水揚げ!」
   (貝殻を頭のお団子に挿す)

鞠莉 (やはり集団催眠にかかってるのね)

21: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/12/12(月) 03:35:23.33 ID:pxnwtYk4.net
果南 「さあヨハネちゃん、気をとりなおしてエラ呼吸の練習を再開しよう!」

ヨハネ「はい、果南お姉様!」

鞠莉 「えーと……どうしてヨハネちゃんはエラ呼吸の練習をしてるのかな?」

ヨハネ「我が故郷、竜宮城へ還るのです」

果南 「チャラチャチャー、チャチャチャー」

ヨハネ「オウ、オウ、オーウ……」

(BGM:海へ還るもの)

鞠莉 「ん? これ感動するとこなの?」

果南 「さめざめ……」(すすり泣きつつ、頷く)

ヨハネ「さめざめ……」(むせび泣きつつ、頷く)

鞠莉 「ああ、なるほど……うん、よくわかった」

22: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/12/12(月) 03:37:57.81 ID:pxnwtYk4.net
果南 「そういうわけで、私はヨハネちゃんが竜宮城に里帰りするためのお手伝いをしていたというわけ」

鞠莉 「でも竜宮城って、けっこう深いところにあるんでしょう?
    それなら素潜りより、空気ボンベを使ったほうがよくない?」

ヨハネ「でももう私、貝殻を背負ってますから、この上にボンベを背負うのは無理かなと」

鞠莉 「貝殻を脱いだらいいじゃない」

ヨハネ「……   ///」

鞠莉 「いや、ちょ、まっ……え?」

ヨハネ「だってヤドカリが貝殻を脱いだら、もう全部見えちゃうじゃないですか!」

鞠莉 「ええと、私、ヤドカリの身体構造ってよく知らないんだけど……ナニが見えるのかな?」

ヨハネ「そりゃもちろん、腹肢とか尾肢とか……」

鞠莉 「ふむふむ、ほかには?」

ヨハネ「果南お姉様、助けて……///」

果南 「び、尾節とか///」

鞠莉 「何で果南まで恥ずかしそうなの!?」

果南 「年頃の女の子のヤドカリにそんなこと言わせちゃダメだよ! 
    もー、マリーさんのス・ ・ !」

ヨハネ「ス・ ・ ー!」

鞠莉 「おい松浦、お前いつからヤドカリになったんだ!」

23: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/12/12(月) 03:38:52.99 ID:pxnwtYk4.net
果南 「……尾節///」

鞠莉 「もー、甲殻類の腹部の最終節が  いわけないでしょ!」

ヨハネ「……尾節///」

鞠莉 「まだ言うの? 私はそんな集団催眠には……」

果南 「……尾節///」

鞠莉 「あうう……」

ヨハネ「ところで鞠莉さん、甲殻類の腹部の最終節は?」

鞠莉 「……尾節///」

果南 「え、もっと大きな声で言ってみて?」

鞠莉 「年頃の女の子のヤドカリにそんなこと言わせないでよ!
    もー、果南のス・ケ・べ!」

ヨハネ「ス・ケ・ベー!」

果南 「HAHAHA、小原、これでお前も晴れてヤドカリの仲間入りというわけだ!」

鞠莉 「HAHAHAHAHA!」

ヨハネ「HAHAHAHAHA!」

24: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/12/12(月) 03:39:37.60 ID:pxnwtYk4.net
果南 「ねえねえ、ところでヨハネちゃんは、どうして地上に水揚げされたの?」

鞠莉 「そして、これからどんなふうに地上で生きていくつもりなの?」

ヨハネ「よくぞ聞いてくれました、実は……」

25: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/12/12(月) 03:45:27.57 ID:pxnwtYk4.net
―――――――

《おまけコーナー ダイヤさんと学ぶ集団催眠》

誰か一人がアホなことを言い出すと、ツッコミまでボケの論理に引き込まれてしまうことがあります。
これを難しい言葉では集団催眠、より一般的には、ツッコミ不在と言います。
ツッコミ不在のグループの会話は一般的には無害です。
でも、急にお友達がヤドカリのフルヌード画像に興奮してあなたの耳元で「……尾節///」と囁いたり、
あなたのお弁当のエビフライを見て「同志よ」と言って涙を流しはじめたら、要注意ですわ。

でも、もしかすると思春期の少年少女は、みんな竜宮城を追放されて、はぐれヤドカリになるのかもしれませんね……

え? 私も集団催眠に罹ってるって?
そんなはずはありません。
生徒会室をヤドカリ軍団が襲撃してきても、きっと毅然とした態度で対応してみせます。

―――――――――――

26: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/12/12(月) 03:46:29.63 ID:pxnwtYk4.net
【翌日、浦の星女学院、生徒会室】

(ノックの音)

ダイヤ「どうぞ」

???「失礼します」

ダイヤ「あら、あなたは一年生の……」

???「ヨハネです」

ダイヤ「津島善子さんじゃありませんか」

善子 「善子じゃありません、ヨハネですよう!」

ダイヤ「いつも妹のルビィと仲良くしてくださって、ありがとうございます」

善子 「あうう……」

27: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/12/12(月) 03:48:09.42 ID:pxnwtYk4.net
ダイヤ「仲良くしてくださるのは嬉しいんですけどね、いろいろルビィから聞いてますのよ、あなたのこと」

善子 「というと?」

ダイヤ「深淵の暗き水底から水揚げされたとか」

善子 「おっ、よく分かっていらっしゃる」

ダイヤ「いつか羽……じゃなかった、腹肢と尾肢が生えて竜宮城に還るとか」

善子 「なはは、そこまで分かってるなら話は早いですね!」

ダイヤ「それで今日は、生徒会室に何の用ですか?」

善子 「新しい部活の申請に来ました!」

ダイヤ「どんな部活ですか?」

善子 「ハーミット・クラブ」

28: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/12/12(月) 03:50:37.35 ID:pxnwtYk4.net
ダイヤ「クラブはクラブでも、部活のクラブとはスペルが違いますわ。
    それ、ヤドカリの英名でしょう」

善子 「さすがは賢くて可愛い生徒会長、ヤドカリの生態にも詳しいんですね!」

ダイヤ「それで、ハーミット・クラブというのは、具体的にはどういう活動をするのですか?」

善子 「宿を借りるのです」

ダイヤ「宿?」

善子 「そうです。
    ねえ生徒会長、この世界には、本当に自分たちの定位置があると思いますか?」

ダイヤ「それは……」

善子 「私、ずっとモヤモヤしてたんです。
    私の定位置はここにはないし、あそこにもない。
    どこにいっても、落ち着くところが見つからないんです。
    私にしかできないことがあるわけじゃない。
    私を必要としている人がいるわけでもない。
    私が伝えたいことも……たぶん、ない」

29: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/12/12(月) 03:53:53.66 ID:pxnwtYk4.net
ダイヤ「それなら、自分の居るべき場所を探したらいいじゃないですか。
    大丈夫です。自分の夢に向かって走っていけば、いつかきっとゴールが見つかりますよ」

善子 「見つけたゴールに、人数制限があったらどうしますか?」

ダイヤ「競争するしかないでしょうね」

善子 「そんな椅子とりゲームみたいなこと、私、したくはありません。
    私は慎ましいヤドカリですから、いま背負ってる貝殻の住居に満足してるんです。
    たとえそれが、雨風をしのぐための仮の住居にすぎないとしても」

ダイヤ「でも、それは……」

善子 「輝くためには、光に当たらなくちゃいけません。
    光に当たるためには、日向場所に出なくちゃいけません。
    日向に出るためには……そこで日向ぼっこをしている人を、押しのけなくちゃいけません」

ダイヤ「……だから、輝きたくないと言うのですね」

善子 「そうです。
    そんなふうにして輝くくらいなら、私はヤドカリとして今のかりそめの居場所に満足して、
    水たまりの中で、ひとりでこっそり暮らしたい。
    眩しいサンシャインなんて、必要ないんです」

30: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/12/12(月) 03:55:09.50 ID:pxnwtYk4.net
ダイヤ「……それがあなたの生き方なのですか?」

善子 「……長々と語ってしまいましたが、まあそういうことですね」

ダイヤ「それならハーミット・クラブは、どんな活動をするのですか?」

善子 「家に帰って、部屋のドアを閉めて、そこに身を潜めます」

ダイヤ「それって要するに、帰宅部の一形態ですよね」

善子 「まあ、そうなりますね」

31: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/12/12(月) 03:57:23.39 ID:pxnwtYk4.net
ダイヤ「なるほど、ハーミット・クラブの活動実態については、それでよく分かりました」

善子 「じゃあ、活動を認めてくれるのですね?」

ダイヤ「はい。
    まあ帰宅部の一形態ですから、ホントは認めるも認めないもないのですけどね」

善子 「あれ、そうなんですか?」

ダイヤ「だって生徒会は、生徒のプライベートな生き方にまで口を挟む権限はありませんから」

善子 「なるほど、言われてみれば、そりゃそうですよね。
    お騒がせしてしまい、すみませんでした。それでは失礼しま……」

ダイヤ「でもね善子さん、あえてこの活動を認めてもらいに来たということは、あなたにはヤドカリ仲間がいるんじゃないですか?」

善子 「はい、昨日たまたま、知り合いました」

ダイヤ「へー、それはどういう人たち?」

善子 「紹介しましょう、松浦果南お姉様と、小原鞠莉お姉様です」

ダイヤ「ズコー」

32: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/12/12(月) 03:58:30.42 ID:pxnwtYk4.net
(生徒会室の扉をドンドンドンと叩く音)

???「たのもー!」

???「たのもー!」

ダイヤ「声で誰だか丸わかりですわよ……
    どうぞ」

(果南と鞠莉、手作りの貝殻を背負って入室)

果南 「われら!」

鞠莉 「ヤドカリ!」

善子 「三姉妹!」

33: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/12/12(月) 03:59:33.45 ID:pxnwtYk4.net
ダイヤ「果南さん! 鞠莉さん!
    あなたたちがついていながら、どうしてこんなことになったのです?」

果南 「いや、昨日の夕方に砂浜でヨハネちゃんの身の上話を聞いていたら、何だか胸を打たれてしまって」

鞠莉 「ほら、私たちも、こう……夢の途中で、立ち止まってしまったでしょ?」

ダイヤ「それにしたって、未来ある一年生のこんな告白を聞いて、あなたたちは……」

果南 (ダイヤに耳打ちする)
   「まあまあダイヤ、ちょっと私たちの考えを聞いてほしいんだ、ゴニョゴニョ…..」

鞠莉 (ダイヤに耳打ちする)
   「私たちだって、ヨハネちゃんがこのまま水揚げされたままでいいとは思ってないわよ。
    だから、ゴニョゴニョ……」

ダイヤ「なるほど、そういう考えがあったのですか」

34: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/12/12(月) 04:01:14.40 ID:pxnwtYk4.net
善子 「お姉様方、どうしてヒソヒソ話をしてるのですか?」

果南 「いや、ちょっとハーミット・クラブの今後の活動方針のことで、ダイヤ会長に相談をね」

鞠莉 「せっかくだから、ダイヤも我らの帰宅部に入ってもらえないかと思ったのよ」

ダイヤ「決めましたわ、善子さん。
    私を入れて、ハーミット・クラブ三姉妹を四姉妹にしてくださいませんか」

善子 「わーい、もちろんです!
    でもどうしてダイヤさんも、ヤドカリになろうと思ったんですか」

ダイヤ「私とあなたが、とってもよく似ているからですよ」

善子 「そうですか?
    まあ確かに、髪型とか目の形とかは似てるかもしれませんが……」

ダイヤ「ふふふ。
    それだけじゃなくて、心の中までそっくりですよ」

善子 「へー、どんなところが?」

ダイヤ「怖がりなところ」

35: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/12/12(月) 04:02:33.82 ID:pxnwtYk4.net
―――――――

《おまけコーナー ダイヤさんと学ぶ内浦の放送事情》

内浦では、町内放送は要所に設置してあるスピーカーによって行なわれます。
もちろん町内放送が聞こえるのは内浦の地区内だけですから、例えば善子さんが住んでいる沼津市街には届きません。
さらにいえば、町内放送にきちんと耳を傾けてもらうためには、それなりの工夫が必要です。
例えばヤドカリのヨハネちゃんに町内放送を聞いてもらうためには、ヨハネちゃんの姉妹になっておくのがよいでしょう。
果南さんと鞠莉さんは、そこまで考えてハーミット・クラブの一員になったのだと思います。
だから私も二人に協力し、ある日の放課後、黒澤家にヨハネちゃんを招待したのです。

―――――――――――――

36: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/12/12(月) 04:03:12.56 ID:pxnwtYk4.net
【ある日の夕方、黒澤家】

善子 「おじゃまします」

ルビィ「さあ善子ちゃん、あがってあがって!」

花丸 「何して遊ぶ?」

善子 「呼んでもらえるのは嬉しいけど、どうして突然三人で遊ぶことになったの?」

ルビィ「えへへ、理由なんてないよ」

花丸 「強いていうなら、おらたちはみんな、善子ちゃんのことが大好きだからだよ」

37: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/12/12(月) 04:04:11.48 ID:pxnwtYk4.net
善子 「ふふふ、それは嬉しいわ。
    ありがとね、ルビィ、花丸」

ルビィ「えへへ、嬉しいな。
    それに、善子ちゃんのことを大好きなのは、私たちだけじゃないんだよ」

善子 「え、どういうこと?
    だってここにいるのは、私たち三人だけじゃない」

花丸 「ここにいるのはね。
    ……あ、今のチャイム、町内放送が始まる音だよ。
    さあさあ善子ちゃん、耳を澄ませて!」

善子 「へー、内浦の町内放送ってこんな感じなのね。
    でもそんな、私たちに関係ある内容だとは……」

38: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/12/12(月) 04:05:04.82 ID:pxnwtYk4.net
―――――――

放送:
   ピンポンパンポーン。
   今日は、役場の方々の許可を得まして、浦の星女学院のスクールアイドル部によるライブの告知を行います!
   私は、このたび結成された新生Aqoursのメンバー、高海千歌と申します!

―――――――

善子 「ふーん、スクールアイドル部、か。
    そういえば高海先輩たちが勧誘してたわね」

ルビィ「そうそう、Aqoursっていうんだよね」

花丸 「善子ちゃん、知ってるってことは興味あったりする?」

善子 「いや、私はそういうの、別にいいかな。
    自分から進んで、スポットライトに当たりに行きたいとは思えないもの」

ルビィ「そうなの?」

善子 「うん、そうなのよ。
    もちろんルビィや花丸がやりたいなら、私は応援するわ。
    でも私は……いいの」

花丸 「どうして?」

善子 「ヤドカリにはヤドカリの生き方があって、ヤドカリなりの幸せがあるの」

39: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/12/12(月) 04:05:45.79 ID:pxnwtYk4.net
―――――――

放送:
   ○月×日の夕方△時から、浦の星体育館でAqoursのファーストライブを行います!
   みなさんのお越しを、ぜひお待ちしております!

―――――――

善子 「帰宅部には帰宅部の生き方があって、帰宅部なりの幸せがあるの。
    だから……」

40: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/12/12(月) 04:06:43.42 ID:pxnwtYk4.net
―――――――

放送:
   あ、そうそう!
   実はこの告知のために、何と急遽、旧Aqoursのメンバーにも応援に来てもらいました!

―――――――

善子 「え? 旧Aqoursって……前にも同じグループ名のスクールアイドルがいたの?」

花丸 「うん、そうだよ。いまの三年生にね」

善子 「三年生? それならまだ活動できるじゃない!
    何を燻ってるのよ!
    その人たちは、いま何をしてるわけ?」

ルビィ「それは善子ちゃんもよく知ってるはずだよ」

41: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/12/12(月) 04:07:28.52 ID:pxnwtYk4.net
―――――――

放送:
   
果南 「内浦のみなさん、おひさしぶりです!
    旧Aqoursの松浦果南と!」

鞠莉 「小原鞠莉と!」

ダイヤ「黒澤ダイヤでーす!」

―――――――

善子 「ズコー」

42: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/12/12(月) 04:08:09.75 ID:pxnwtYk4.net
―――――――

梨子 「先輩方、ありがとうございます!
    先輩方は、今は新しい部活を作って活躍されてるんですよね」

果南 「そうです! ハーミット・クラブっていうんですけどね」

曜  「わー、カタカナでめっちゃカッコいいじゃないですか!」

千歌 「だよね、だよねー!
    なんかこう、すごくナウい部活って感じがする!」

―――――――

善子 「いやそれ、ただの帰宅部の亜種だから!」

43: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/12/12(月) 04:09:43.10 ID:pxnwtYk4.net
―――――――

放送:

梨子 「でも先輩、どうして旧Aqoursは解散しちゃったんですか?」

果南 「東京でのパフォーマンスで、私が緊張のあまり声が出なくなったんです。
    そしたら、それはもうひどい評価をいただきまして(笑)」

―――――――

善子 「ちょっと踏み込み過ぎじゃない?
    そんなデリケートな過去、訊いちゃダメでしょ!
    ていうか果南さんも、どうして笑って話せてるのよ!」

花丸 「事前に打ち合わせをしてるんじゃないかな」

善子 「それにしたって、ここまで恥ずかしい部分を曝け出す必要はないでしょ!」

ルビィ「ここまで恥ずかしい部分を曝け出してまで、伝えたいことがあるんじゃないかな」

44: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/12/12(月) 04:10:48.91 ID:pxnwtYk4.net
―――――――

放送:

曜  「あちゃー、それは大変でしたね」

鞠莉 「それで私たち、前に進むのが怖くなったんです。
    このまま前に進んだら、また誰かを傷つけてしまうかもしれないと思って(笑)」

果南 「なはは! それって私のこと?」

鞠莉 「なはは! 果南もそうだし、私も、ダイヤも、それから……競争相手の皆さんもそうだよ!」

ダイヤ「そこまで怖いものばかりだと、もはや自分の殻に籠るしかありませんよね(笑)」

―――――――

善子 「……そうね。怖がりのヤドカリみたいにね」

45: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/12/12(月) 04:11:47.80 ID:pxnwtYk4.net
―――――――

放送:

千歌 「こんなふうに自分の恥ずかしい過去を曝け出すのって、辛くないですか?」

―――――――

善子 「そうよ、辛いでしょ?
    だって町内放送で、自分の過去の恥 を開けっ広げにしてるのよ!?」

46: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/12/12(月) 04:13:59.44 ID:pxnwtYk4.net
―――――――

放送:

果南 「そうですね、貝殻を脱いで尾節を曝け出すのと同じくらい、恥ずかしいです」

千歌 「え? 果南ちゃん、尾節って何?」

果南 「年頃の女の子のヤドカリにそれを説明させるの?
    いやーん、ちかちーのス・ケ・べ!」

千歌 「HAHAHAHAHA!」

果南 「HAHAHAHAHA!」

―――――――

善子 「それは私の持ちネタよ!
    アホなこと言ってないで、早く自分の貝殻に戻りなさいよ!
    どうして、どうして……」

47: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/12/12(月) 04:15:25.80 ID:pxnwtYk4.net
―――――――

放送

梨子 「どうして尾節を見せようと思ったのですか?」

果南 「一番恥ずかしくて人に見せたくないところを見せてまで、ある人に伝えたいことがあるからです」

曜  「へー、それは誰に?」

果南 「まだ海に出たことがない、愛しい妹のヤドカリに」

―――――――

善子 「……」

48: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/12/12(月) 04:16:38.20 ID:pxnwtYk4.net
―――――――

放送:
   私たち、あなたにお礼が言いたいの。
   ずっと怖くて自分の殻に籠っていたけど、あなたを見たら、自分たちのしたいことを思い出せたから。
   私たち、あなたみたいな優しいヤドカリに勇気をあげたくて、歌ってたんだ。
   誰かを傷つけるのが怖くて、殻に籠ったままで、未熟すぎて夢を見ることすらできない、ちっぽけなヤドカリに。

―――――――

善子 「……でも、日向に出るのはやっぱり怖いよ」

49: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/12/12(月) 04:20:13.94 ID:pxnwtYk4.net
―――――――

放送
   日向に出るのが怖いなら、無理しないで。
   ほかの人を押しのけるのが辛いなら、無理して自分の貝殻から出る必要はない。
   引きこもったままでも、いいんだよ。
   そのままで、自分で輝けばいいんだよ。

―――――――

善子 「何もないよ、私の貝の中には」

50: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/12/12(月) 04:20:45.23 ID:pxnwtYk4.net
―――――――

放送:
   何もなくなんかないよ。
   あなたの貝の中にあるもの、大声で、私たちに教えてよ。
   眩しくはないけど、太陽の光よりも、ずっとずっと輝いてるから。

―――――――
   
善子 「……」

―――――――

放送:
   おしえてくれて、ありがとう。
   それじゃあまた明日から、明るく楽しく引きこもろうね。

51: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/12/12(月) 04:22:05.90 ID:pxnwtYk4.net
―――――――


《おまけコーナー ダイヤさんと学ぶ鉱物の秘密》

今日は、オパールについて勉強しましょう。
オパールには遊色効果があって、きらきらと火のように輝いて見えます。
たいへん珍しい石ですが、もしかすると、あなたが籠っているその貝殻の奥にも見つかるかもしれません。

no title


見つけたら、大声で私たちに教えてください。
Aqoursとの約束ですよ。

それではまた、ごきげんよう!

―――――――

52: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/12/12(月) 04:23:13.31 ID:pxnwtYk4.net
【数週間後、学校の屋上】

千歌 「あー、うまくいってよかったなあ、ファーストライブ」

曜  「もー、千歌ちゃんったら、最近毎日そればっかり」

梨子 「でも確かに、最初のライブとしては上出来だったと思うな。
    三年生の先輩達が手伝ってくれたし、たくさんの人が観に来てもくれた」

千歌 「そのうえ観客の中には、メンバーになってくれた人もいたからね、ルビィちゃん、花丸ちゃん!」

ルビィ「えへへ、嬉しいです。
    でも……」

千歌 「でも?」

花丸 「きっとそのうち、もっと仲間が増えますよ」

53: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/12/12(月) 04:24:07.23 ID:pxnwtYk4.net
(屋上の扉をドンドンドンと叩く音)

???「たのもー!」

???「たのもー!」

???「たのもー!」

???「たのもー!」

千歌 「うん、そっか、そうだよね。
    声でもう誰かは分かるけど……一応聞いておこうかな。
    どちらさまですかー?」

???「ヤドカリです!」

???「ヤドカリです!」

???「ヤドカリです!」

???「ヤドカリです!」

千歌 「ふむふむ、うふふ、なるほどね。
    今日はどういったご用件で?」

???「「「「とっておきのもの、見つけました!」」」」

千歌 「へー、それはいったい、何ですか?」



それはね……

54: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/12/12(月) 04:24:48.73 ID:pxnwtYk4.net
―――

おわり

引用元: 【SS】善子「貝の火」