1: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/19(月) 20:56:09.466 ID:yZaOP+bh0.net
―会社―

社長「君」

社畜「はい」

社長「企業戦士にとって、最も必要なことはなにか分かるかね?」

社畜「己の感情を殺し、滅私奉公することだと思います」

社長「……なるほど」

社長「君は今日でクビだ」

社畜「へ?」

社長「よってこれより……君を斬首する」チャキッ

3: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/19(月) 20:59:05.338 ID:yZaOP+bh0.net
社長「悪く思わないでくれたまえ」

社畜「お待ち下さい。なぜでございますか」

社長「ぬん!!!」

ザシュッ!



生首「……」ゴロン…

4: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/19(月) 21:00:38.703 ID:yZaOP+bh0.net
社長「では、さらばだ」

生首「社長……なぜ……」

社長「ていっ!」ゲシッ

生首「……」コロコロコロ…



生首(こうして私は会社を追い出され、二つの意味でクビになった――)

6: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/19(月) 21:02:20.118 ID:yZaOP+bh0.net
生首(どうにか、顔の筋肉を動かすことで転がることはできるな)コロコロ…

生首(しかし、なぜ私はクビになってしまったんだろう)

生首(まあいい……会社の決断なのだから、仕方ないことだ)

生首(それより今後のことを考えなければ)

生首(さっそくハローワークに向かうとするか)

9: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/19(月) 21:04:24.792 ID:yZaOP+bh0.net
―ハローワーク―

ハロワ職員「ン~……首だけでできる仕事ですか」ニヤニヤ

生首「はい」

ハロワ職員「あると思いますか? そんなの」ニヤニヤ

生首「難しいとは思いますが、ないと困るのです。紹介して下さい」

ハロワ職員「ハローワークをなんでも出せる魔法の杖のように思われても困りますなぁ……」ニヤニヤ

生首「……」

ハロワ職員「いや、ありましたぞ!」

14: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/19(月) 21:07:37.475 ID:yZaOP+bh0.net
ハロワ職員「ほらこれ!」

ハロワ職員「あるサッカーチームでボールを募集してます」

ハロワ職員「時給は150円ですが、いかがです?」ニヤニヤ

生首「……失礼します」コロコロ

ハロワ職員「おやおや、お気に召さなかったかな? ハッハッハッハッハ!」

17: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/19(月) 21:10:42.002 ID:yZaOP+bh0.net
生首(会社員だった頃は、孤高のエリートだの社畜だのと持てはやされた私だが)コロコロ…

生首(首だけになったとたん、こうも冷遇されるようになるとは……)

生首(なんと世間は冷たいのだ……)

生首(いや、違うな)

生首(もし体がある状態の私に、生首の輩がやってきたとしたら、私もああいう態度を取るだろう)

生首(自分がするであろう反応を、他人にやられているだけなのだ……)

生首(しかし、ずっと転がってるわけにもいかん)

生首(この状態だとどうやら腹は減らないのは、不幸中の幸いだが――)

生首(――ん?)

18: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/19(月) 21:13:56.875 ID:yZaOP+bh0.net
―広場―

ワァァ…… ワァァ……


少年「……」ポツン…



生首(あの男の子……みんなが遊んでるのに、一人だけ隅で見ている)

生首(仲間に入れないのかな?)

生首(同じく冷遇されてる者同士、放ってはおけんな)コロコロ…

19: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/19(月) 21:16:40.453 ID:yZaOP+bh0.net
生首「やあ」コロコロ…

少年「うわっ! おじさん、どうして首だけなの?」

生首「会社をクビになってしまってね」

生首「それはさておき、君こそどうしてあの子たちの仲間に入れてもらわないんだい?」

少年「……だって」

少年「ボクなんかが仲間に入っても迷惑だから……」

生首「……」

20: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/19(月) 21:20:26.978 ID:yZaOP+bh0.net
生首「そんなことはないさ」

少年「そんなこと……あるよ!」

生首「どうして?」

少年「だってうち、パパもママもいつも仕事でいないし……お姉ちゃんもあまり家にいないし……」

少年「みんな、ボクのこと嫌いなんだ」

少年「ボクなんか、いない方がいいんだ!」タタタッ

生首「あっ」

生首(この体じゃとても追いつけない……)コロコロ

22: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/19(月) 21:22:27.437 ID:yZaOP+bh0.net
生首(私からあの子に、なにかしてあげられることはないだろうか?)

生首(仮にあったとしても、首だけじゃ……)

生首(いや待て! 諦めるな!)

生首(私はこういう逆境でこそ燃える男だったはずだ!)

生首(あの子を救う方法を考えるんだ!)

生首(よし……また明日の同じ時間にこの広場に来よう)コロコロ…

23: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/19(月) 21:25:26.873 ID:yZaOP+bh0.net
次の日――


―広場―

ワァァ…… ワァァ……


少年「……」ポツン…

生首「やぁ」コロコロ…

少年「あ、首だけおじさん!」

生首「今日もみんなが遊ぶのを見てるだけかい?」

少年「……」

生首「大丈夫、君ならあの子たちの仲間に入れる!」

生首「おじさんを持ってごらん」

少年「でも……」

生首「大丈夫、おじさんを信じて!」

少年「うん……分かった!」ヒョイッ

24: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/19(月) 21:28:26.911 ID:yZaOP+bh0.net
子供A「ん……?」

子供B「お前、生首なんか持ってどうしたんだよ」

少年「あの……」

生首「イッショニアソボ!」

少年「!」

子供A「お前、腹話術なんかできるのかよ!」

子供B「すっげー、見直したぜ! 俺たちと一緒に遊ぼうぜ!」

少年「……うん!」

25: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/19(月) 21:32:15.931 ID:yZaOP+bh0.net
ワイワイ…… ガヤガヤ……

少年「この首だけおじさんを、お腹の中に隠して……」

少年「妊娠しちゃった!」ボテッ

子供A「アハハハハッ!」

子供B「おもしれー!」ヒーヒー

子供A「お前ってこんなに面白かったんだなー」

子供B「ヤバイ、ツボに入った」ヒーヒー

子供A「今まで誘わなくてごめんな! これからはずっと友達だ!」

少年「うんっ!」

27: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/19(月) 21:35:57.734 ID:yZaOP+bh0.net
少年「ありがとう、首だけおじさん」

少年「おじさんのおかげで、ボク友達ができたよ!」

生首「私としても力になれて、喜ばしい気分だよ」

生首「君はもう、一人でも大丈夫だ」

生首「じゃあしっかり遊んで、しっかり勉強するんだよ!」

少年「はいっ!」

生首(こんな明るい気分になったのは久しぶりだな……)コロコロ…

28: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/19(月) 21:38:24.064 ID:yZaOP+bh0.net
会社をクビになってから三日後――


生首(首で転がるのにもだいぶ慣れてきたな)コロコロ…

生首「!」コツン

DQN「いてっ!」

DQN「おい、こんなところに生首が転がってやがるぜ」

金髪「きもちわりー! 叩きのめしてやろうぜ!」


ドカッ! バキッ! ドガッ! ドゴッ! ガッ!


生首「ぐっ……!(私もここまでか……!)」

30: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/19(月) 21:41:25.856 ID:yZaOP+bh0.net
不良娘「弱い者いじめはやめな!」

DQN「なんだてめえは!?」

金髪「女のくせに生意気だ! やっちまえ!」

不良娘「ふん……」

ドゴッ! バキッ!

DQN「ぐええ……」ドサッ

金髪「ぐふっ……」ドサッ



不良娘「大丈夫かい、おっさん」

生首「あ、ありがとう……」

31: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/19(月) 21:44:23.280 ID:yZaOP+bh0.net
不良娘「しかし、なんであんた、首だけなんだい?」

生首「実は会社をクビになってしまってね」

不良娘「ふうん」

不良娘「ま、だけど、あんな風に絡まれたら怒らなきゃダメさ」

不良娘「人間、戦わなきゃならない時ってのがあるんだからね」

生首「そうだね……君のいうとおりだ」

生首(信念あっての無抵抗ならともかく、単にやられっ放しじゃいけないよな……)

34: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/19(月) 21:47:39.427 ID:yZaOP+bh0.net
不良娘「それじゃあね」スタスタ

生首「待った」

不良娘「なんだい?」

生首「妙に殺気立ってるけど、もしかして君もこれから戦いに行くんじゃ?」

不良娘「あたしにさわるとヤケドするよ」スタスタスタ



生首「……」

生首(転がるスピードもだいぶ上がったし、ついていってみるか)コロコロッ

37: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/19(月) 21:52:20.860 ID:yZaOP+bh0.net
―河川敷―

番長「待ってたぜ、クソ女」

番長「タイマンだと思ってたろうが、残念だったな!」

「へっへっへ」 「なかなか美人じゃねーか」 「ぐへへへ……」

ズラッ……


不良娘「ま、こんなことだろうと思ってたけどね」

不良娘「目障りな小娘一人片付けるのにこんなに集めるなんて、男の風上にも置けない奴だ」

番長「今さら何をほざこうが、負け惜しみにしかならねえよ!」

番長「野郎ども、やっちまえ!」


ワァァッ!!!

38: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/19(月) 21:54:34.500 ID:yZaOP+bh0.net
不良娘「どりゃあ!」ドカッ

「うげっ!」

不良娘「だりゃあ!」バキッ

「ぎゃあっ!」

不良娘「うりゃあっ!」ドゴッ

「ありがとうございます!」


不良娘「ふん、こんなもんかい」ハァハァ…

番長「やるじゃねえか。だが、そんなに消耗しててオレに勝てるかなァ!?」

番長「ダラァッ!」ドゴォッ

不良娘「ぐっ……!」ヨロッ…



生首(一人の女の子に対して、あんな複数でかかるなんてなんと卑怯な!)

生首(許せん……!)メラメラ…

40: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/19(月) 21:59:26.705 ID:yZaOP+bh0.net
生首「うおおおおおおおおおお!!!」コロコロコロ

不良娘「おっさん!」

番長「ひっ、生首!?」

生首「私を蹴るんだ!」

不良娘「おっさん……」

生首「早く!」

不良娘「分かった!」ドシュッ

番長「うわっ、生首が飛んできた!」

生首「……」ガブッ

番長「ひいいいいいいっ! 噛みついてきた! 痛い痛い痛い!」

生首「二度とこの子に手を出さないと誓うか?」ガブガブ

番長「誓う! 誓うよぉぉぉぉぉ!!!」

41: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/19(月) 22:03:18.482 ID:yZaOP+bh0.net
不良娘「おっさん……助かったよ」

生首「君こそナイッシューだった」

不良娘「……ありがとう」

生首「いや、お礼をいうのはこっちだ」

不良娘「へ?」

生首「君のおかげで久々に怒りや闘争心というものを感じることができたのだから」

不良娘「おっさん……」

生首「だけど、これからはケンカは控えた方がいい。もしケガをしたら、家族が悲しむ」

不良娘「うん、そうだね……肝に銘じておくよ、おっさん」

42: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/19(月) 22:06:17.905 ID:yZaOP+bh0.net
会社をクビになってから一週間後――


―公園―

中年男「……」ポツン…

生首(おや、スーツを着た中年男性が公園のベンチでうなだれてる)

生首「もしもし、どうしました?」コロコロ

中年男「実はわたくし、会社をリストラされまして……」

生首「ほう」

生首(私と似たような境遇だな……)

中年男「家族に告げることもできず、こうして会社に行くふりをして公園で過ごしているのです」

生首「なるほど……」

43: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/19(月) 22:09:53.085 ID:yZaOP+bh0.net
中年男「いっそこのまま死のうかと……」

生首「バカをいっちゃいけない!」

生首「死んでどうなるのです!? いくらでもやり直せるでしょう!」

中年男「だって……だって私は長年あの会社に勤めてきたのですよ!?」

中年男「なのに、こうもあっさりクビを切られるなんて私は悔しい! いや……悲しい!」

中年男「やり直すにしても、そんな気力などとても……!」

生首「!」ハッ

生首(そうだ、私はあっさり受け入れてしまったが……)

生首(会社をクビになるというのは、こんなにも辛いことだったんだ……)

44: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/19(月) 22:12:18.602 ID:yZaOP+bh0.net
生首「しかし、死んではいけない!」

生首「私も会社をクビになったが、こうしてマジで首まで斬られてしまったのですよ!?」

生首「私よりずっとマシではないですか!」

中年男「た、たしかに……!」

生首「今すぐ行きましょう……ハローワークに!」コロコロ…

45: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/19(月) 22:18:04.909 ID:yZaOP+bh0.net
―ハローワーク―

ハロワ職員「あなたみたいなリストラ親父が再就職なんて逆立ちしたって無理でしょう」ニヤニヤ

ハロワ職員「ま、ロープか屋上か電車か睡眠薬か、好きなのを選ぶんですな」ニヤニヤ

中年男「やっぱり……」

生首「そんなはずはない!」ガルル…

ハロワ職員「ひっ!」

生首「本気出して探してやれ! この人の再就職先を!」クワァッ

ハロワ職員(この生首、一週間前とは迫力が違う!)

ハロワ職員「わ、分かりました! ハローワークの本気、見せてあげましょう!」

46: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/19(月) 22:22:40.839 ID:yZaOP+bh0.net
中年男「ありがとうございました……」

中年男「あなたのおかげで再就職活動に専念することができそうです」

中年男「家族にも、リストラされたことを打ち明けようと思います」

生首「いえいえ私こそ、組織を外される哀しみというものを痛感することができました」

生首「今のあなたならもう大丈夫。きっとどこかいい会社に入れるでしょう」

生首「では、私はこれで……」コロコロ…

中年男「どうか、お元気で」

47: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/19(月) 22:26:42.489 ID:yZaOP+bh0.net
会社をクビになってから十日後――


―スーパーマーケット―

生首(なかなか活気のあるスーパーだな……)コロコロ…

パート女「いらっしゃい、いらっしゃい!」

パート女「そこの生首さん、試食いかがですか?」

生首「いやー、首だけなんで。食べてもすぐノドから出ちゃうでしょうから」

パート女「そりゃそうですね! アッハッハ!」

生首(明るい女性だ……)

48: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/19(月) 22:30:08.030 ID:yZaOP+bh0.net
生首「スーパーの店員さんというのも、なかなか大変な仕事だと思いますが」

生首「なぜそうやって明るい笑顔でいられるのですか?」

パート女「そりゃもちろん、楽しいからですよ!」

パート女「お客さんと話すのは楽しいし、商品が売れたら楽しいし……」

パート女「大変ではありますし、子供にも寂しい目にあわせちゃってますけどね」

生首「!」ハッ

生首(会社に勤めていた時の私は……こんなに生き生きと働けていただろうか)

生首(笑っていただろうか……)

50: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/19(月) 22:33:23.036 ID:yZaOP+bh0.net
生首「あのー」

パート女「なんですか?」

生首「もしよろしければ、私にも手伝わせてもらえませんか」

生首「これでも営業トークは得意ですから」

パート女「店長どうしましょ?」

店長「……」ビッ

パート女「オーケーですって! よろしくお願いしますね!」

生首「はりきってやらせてもらいますよ!」

52: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/19(月) 22:37:04.895 ID:yZaOP+bh0.net
生首「そこの美しいお姉さん、このヨーグルト買っていかない?」

主婦「あらやだ、上手いこというわね、この生首! 買っちゃおうかしら!」

生首「毎度ー!」


生首「そこのお兄さん、このヨーグルトを食べるとモテますよ!」

学生「ちょうど甘いものを食べたかったし……一つもらうよ」

生首「毎度ー!」



店長「……」ニヤッ

パート女「あなたのおかげでだいぶ売上が増えたわ!」

生首「お力になれて嬉しいです」

54: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/19(月) 22:40:34.133 ID:yZaOP+bh0.net
パート女「ところで今夜、我が家はスキヤキなんですけど……」

パート女「よかったらご一緒しません?」

生首「申し訳ありませんが、私は首だけですし……」

生首「それに、やることができましたので……」

パート女「そうですか……残念だわ」

パート女「それじゃ、誰かに踏み潰されないよう気をつけて下さいね」

生首「ありがとうございます。あなたもお元気で」コロコロ…



生首(機は熟した……)

生首(今こそ体を取り戻す時!!!)

58: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/19(月) 22:43:38.404 ID:yZaOP+bh0.net
―会社―

生首「お久しぶりです、社長」コロコロ…

社長「おお、戻ったかね」

生首「私の体を返して頂きに参りました」

社長「では問おう」

社長「君はクビになっていた期間で、なにを学んだ?」

生首「はい」

59: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/19(月) 22:46:41.741 ID:yZaOP+bh0.net
生首「ある少年からは、誰かの力になることの喜びを学び」

生首「ある少女からは、理不尽に対する怒りを学び」

生首「ある男性からは、組織から必要とされなくなる哀しみを学び」

生首「ある女性からは、働く楽しさを学びました」

生首「この喜怒哀楽こそが、社畜と化していた私に足りなかったものなのです」

社長「うむ」

社長「よくぞ、この短期間で喜怒哀楽を学んだ。褒めてつかわす」

社長「企業というのは人の集まり、顧客とのやり取りも人との関わりだ」

社長「無感情では真の企業戦士にはなれん」

社長「感情があるからこそ、他人の気持ちが分かり、よりよい仕事をすることができるのだ」

61: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/19(月) 22:52:07.179 ID:yZaOP+bh0.net
社長「今こそ体を返そう」

生首「ありがとうございます」

社長「そして……君はもう社畜ではない。今日からは君が社長だ!」

生首「えっ、私が!?」

社長「元々、君は能力だけなら我が社でもずば抜けていた」

社長「感情を学んだ今の君ならば、部下に慕われ、顧客から重宝される立派な経営者になれる」

社長「企業と従業員のことをよく考える、よき社長となってくれ」

生首「ありがとうございます」

生首「私は新社長として、もう“社畜”は生み出しません!」

社長「よくぞいった。では、首を体に戻す」スッ

社長「我が社を頼むぞ!」

新社長「はいっ!」シャキーン

64: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/19(月) 22:59:32.880 ID:yZaOP+bh0.net
ちょうど時を同じくして――

―家―

パート女「今夜はスキヤキよ!」

少年「おいしそー!」

不良娘「へへへ、うまそうじゃん」

パート女「一家四人で晩ご飯なんて、本当に久しぶりね!」

中年男「ああ、そうだね。家族四人とも、なんだか顔付きが変わったようだよ」

パート女「ところで私、今日不思議な生首に会ったのよ~」

少年「あ、お母さん! ボクもボクも! おかげで友達ができたの!」

不良娘「あたしも! 生首のおっさんのおかげで、あたし少し改心したんだよ!」

中年男「私も……生首さんに勇気を与えてもらったんだよ」

パート女「あらやだ、みんな会ってたの? ずるいんだから!」

パート女「もしかしたら、あの生首は……」

パート女「我が家にとっての一足早いサンタさんだったのかもしれないわね」


――――

――

68: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2016/12/19(月) 23:03:25.201 ID:yZaOP+bh0.net
―会社―

社員A「お、社内報に新社長載ってるぞ」

社員B「へぇ、結構感情豊かな人っぽいな。こりゃ期待できるぞ」


中年男(なんとかこの会社に再就職することができた……)

中年男(ところでこの新社長、どこかで見覚えがあるような?)

中年男(いや……まさか、な)







―おわり―

引用元: 社畜「会社をクビになり、首だけになってしまった」