ﾂｰｯ　ﾂｰｯ


梨子「疲れる...LINEで言えばいいや」


ﾌﾟﾙﾙﾙﾙ


梨子「...」


梨子「...はい、もしもし」


善子「あの...ふざけてごめんなさい...怒らないで」


梨子「怒ってないから」


善子「ほんと？」

梨子「怒ってない」


善子「絶対怒ってる！」


梨子「大きい声出さないで」ｽﾞｽﾞｯ


善子「ごめ...、ん？リリーなんか声が」


梨子「うん...風邪引いちゃった」


善子「え、」


梨子「だから今日のデートの約束...ごめんね、厳しそう」


善子「...」


善子「...そっか、うん！大丈夫！仕方ないわよ！」


梨子「ん」ｽﾞｽﾞｯ

善子「それよりゆっくり休んで、ちゃんと水分とって薬飲んで寝なさい」


梨子「ん」


善子「わかってる？」


梨子「ん」


善子「ほんと？」


梨子「ん」


善子「絶対わかってない！」


梨子「大きい声出さないで」ｽﾞｽﾞｯ


善子「うぐっ...」


梨子「ごめん、切るね」ｽﾞｽﾞｯ

善子「...」


梨子「...」


善子「...お昼、お見舞い行く」


梨子「...」


梨子「だめ」


善子「どうして？」


梨子「うつしちゃうからだめ」


善子「へーきよ、堕天使なめないで」


梨子「来たって家にあげないから」


善子「それでも行く」

梨子「...おばか」


ﾌﾟﾂｯ


ﾂｰｯ　ﾂｰｯ


梨子「はぁ...」


梨子「...」


梨子「寝よう」ﾊﾞｻｯ


梨子(心細い...お母さんも居ないし)


梨子(寝たらすぐ治るよね) ｳﾄｳﾄ


-----
---
-

梨子「ん...んあ」ﾊﾟﾁﾘ


梨子「？」


ﾋﾟﾝﾎﾟｰﾝ


ﾋﾟﾝﾎﾟｰﾝ


梨子「誰か来てる...お母さん、はいないし...はぁ」ﾊﾞｻｯ


ﾃｸﾃｸﾃｸ


梨子「はい、今出ます」


ｶﾞﾁｬ

善子「おはよ」ﾌﾘﾌﾘ


梨子「...」ｼﾞﾄｯ


善子「あはは、来ちゃった」


梨子「...」


善子「やっぱり怒ってる？」


梨子「はぁ...ほら、入って」


善子「うん！」

善子「お家の人は？」


梨子「出掛けてるみたい」


善子「そっか、タイミング悪いわね」


梨子「お茶出すから、部屋行ってて」ﾖﾛﾖﾛ


善子「...」


ｸﾞｲｯ


梨子「うわっ！？」


善子「そういうのいらないから、お部屋いこ？」


梨子「...」

善子「はい、寝て」


梨子「先輩に命令するなんて」ｽﾞｽﾞｯ


善子「今日のリリーは先輩でもなくナースでもなくただの病人」


梨子「むっ」ﾎﾞｽﾝｯ


善子「りんご、食べるわよね？」


梨子「あんまり食欲ない」


善子「それでも食べるの」


梨子「いや」


善子「実はもう家で剥いてきた」ﾊﾟｶｯ


梨子「聞いてないし」

善子「どうどう？うさぎにした」ﾆｺﾆｺ


梨子「...じょーず」


善子「うん、すごい頑張ったから...食べて？」


梨子「ん」ｺｸｯ


善子「あーん」


梨子「あー...」ﾊﾟｸｯ


善子「ちゃんと噛んで」


梨子「うるさい」ﾓｸﾞﾓｸﾞ

善子「ほら、あーん」


梨子「ん」ﾊﾟｸｯ


善子「ふふっ、餌付けしてるみたい」


梨子「...」ﾓｸﾞﾓｸﾞ


善子「美味しい？」


梨子「うん」ｺｸｯ


善子「ねぇ...やっぱり怒ってるでしょ」


梨子「うん」


善子「...」


梨子「でも」

善子「？」


梨子「...やっぱりなんでもない」


善子「えー気になるじゃない」


梨子「ふんっ」ﾌﾟｲｯ


善子「ご機嫌ななめなしこだ」


梨子「なしこいうな」ｽﾞｽﾞｯ


善子「ほら、鼻かみなさい」


梨子「ん」

善子「...」


梨子「手、貸して」


善子「？、...うん」


梨子「...」ﾆｷﾞﾆｷﾞ


善子「どうしたの？」


梨子「...ごめんなさい...今日の約束」


善子「気にしないの」ﾎﾟﾝﾎﾟﾝ


梨子「うん」


善子「気にしてるわね」


梨子「うん」

善子「せっかくの３連休は残念だけど、リリーの体のほうが大事よ」


梨子「...」


善子「ちがう？」


梨子「よっちゃんのくせに生意気」


善子「なんでよ！？」


梨子「ふふっ」


善子「ん、やっと笑ってくれた」ﾆｺｯ


梨子「...」ﾌﾟｲｯ


善子「ちょ、なんでそっち向くのよ！」


梨子「しらなーい」

...


善子「さてと、そろそろ帰るわ、いつまでもここに居たら眠れないだろうし」


ｷﾞｭｯ


梨子「...」


善子「リリー？」


梨子「やだ」


善子「え？」


梨子「帰っちゃやだ...傍にいて」


善子「うっ」ﾄﾞｷｯ

梨子「お願い」


善子「ん、わかったから、ちゃんと横になって」


梨子「うん」ｺﾞﾛﾝｯ


善子「ふふっ、来るなってあんな怒ってたのに」


梨子「...」ﾌﾟｲｯ


善子「でもね、リリーの本心はさ」


善子「電話越しで、口ではあー言ってたけど」


善子「ほんとは私に来てほしいんだなぁって気がした...違う？」ﾆｺﾆｺ


梨子「...」


善子「ふふーん！」ﾄﾞﾔｯ

梨子「よっちゃん、嫌い」


善子「え、なんで！？」


梨子「知りません、よっちゃんなんて嫌いです」


善子「え、え、なんで」ｵﾛｵﾛ


梨子「...」


梨子「...」ﾌﾌｯ


善子「んなっ、今笑ったわね！」


梨子「笑ってない」


善子「絶対笑ったし！」

梨子「よっちゃん」


善子「なによ！」


ﾋﾟﾄｯ


梨子「あたま...よしよしして」


善子「え」


梨子「して？おねがい...」ｳﾙｳﾙ


善子「っ」ﾄﾞｷｯ


善子「し、仕方ないわね...」


梨子「はやく」


善子「ん、よしよし」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ


梨子「んーんー、もっとぉ」ｸﾞｲｸﾞｲ


善子「嫌いな人に撫でられたいなんて、変ななしこ」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ


梨子「好き...よっちゃんのこと実は好きでした...まんまとよっちゃんは騙されたのです」


善子「なんでよ！！」ﾋﾞｼｯ

梨子「でもね...私、よっちゃんのこと」


善子「ん？」


梨子「よっちゃんのことね...もっと好きになっちゃったみたい」ﾎﾞｿｯ


善子「っっっ///」ﾄﾞｷﾄﾞｷﾄﾞｷ


梨子「すごい心細かったの...一人でここにいるの」


梨子「だから、お見舞いに行くって言ってくれたとき、すごい嬉しかった...」


梨子「こうしてりんごまで剥いてきてくれて、すごい嬉しかった」


梨子「風邪うつしちゃうかも、ってわかってたけど」


梨子「わがままになっちゃった」


梨子「...」

善子「...そっか」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ


梨子「だから、ありがと」ﾆｺｯ


善子「いいのよ...私のわがままでもあるんだから」


梨子「...」ﾆｷﾞｯ


善子「？」


梨子「そういうとこ」


善子「え？」


梨子「...」


善子「そういうとこ...なによ？」


梨子「...なんでもない」ﾌﾟｲｯ

善子「んなっ、また隠し事！恋人なのに！」


梨子「恋人だからだよ、口に出さなくていいこともあるの」


善子「意味わかんないし！」


梨子「大きい声出さないの」ﾑﾆｰｯ


善子「ごめぇんにゃしゃい...」


梨子「ふふっ」ﾆｺﾆｺ

-----
---
-


梨子「ありがと、そろそろお母さんも帰ってくる頃だと思うし、うつしても悪いから」


善子「そうね、おいとまするわ」


梨子「ん」


善子「立てる？」


梨子「うん、平気...」


善子「ん」ﾆｷﾞｯ


梨子「手...」

善子「玄関までだけど、いいでしょ」


梨子「ふふっ、仕方ないなぁ♪」ﾆｺﾆｺ


善子「ち、勘違いしないで、別に手繋ぎたいわけじゃなくて、なしこが転ばないようにって！」


梨子「はいはい♪」


善子「むきぃぃぃ！信じてない！」


梨子「信じてるよぉ、よっちゃんは良い子だなぁ、よしこだなぁって」


善子「よしこいうな！！」

...


梨子「ん、気を付けてね」ﾌﾘﾌﾘ


善子「あ、ちょっと待って」ｶﾞｻｺﾞｿ


梨子「...どうしたの？」


善子「これ、バレンタインの...」ｽｯ


善子「チョコ作ってくれたお返し///」ﾌﾟｲｯ


梨子「わぁ、すごい嬉しい！」ﾊﾟｧ


善子「...リリーには勝てないと思うけど、一生懸命作ったから///」ﾃﾚﾃﾚ


梨子「ぐすっ...嬉しすぎる」


善子「そんな！？そんなに！？」

梨子「ちゃんと味見した？」


善子「した！前よりは上達してるはず！」


梨子「ふーん...」


善子「な、なによ」


梨子「もしもだけど...味見したのかも怪しいようなとんでもないものだったら...」ｷﾞﾛｯ


善子「ひっ」ﾋﾞｸｯ


梨子「どうなるか...わかってるよね」ﾎﾞｿｯ


善子「だ、大丈夫なはず...たぶん」


梨子「ふふっ、冗談だよ...半分」ﾎﾞｿｯ


善子「はんぶん！？」

梨子「それじゃ、ありがとね」ﾌﾘﾌﾘ


善子「うん、また連絡するわ」ﾌﾘﾌﾘ


ﾊﾞﾀﾝｯ


ｼｰﾝ


梨子「はぁ...また一人になっちゃった」


梨子「ちょっと熱上がっちゃったかも...戻って寝よう」


ﾃｸﾃｸ


梨子(そういえば...バレンタインのお返しってなんだろ)ｶﾞｻｶﾞｻ


梨子「わぁ、ほんとに手作り...頑張ったんだろうなぁ」

ﾊﾟｸｯ


梨子「ん...美味しい」ﾓｸﾞﾓｸﾞ


梨子「まずかったらこのまま追いかけて叱ってやろうかと思ったのに」ｸｽｯ


ﾌﾞｰﾌﾞﾌﾞｯ


梨子(ライン...よっちゃんから)


梨子(ふふっ、寂しくなったら連絡しろって)


梨子(寂しいのはどっちよ)


梨子「...」ｽﾞｽﾞｯ


梨子「...私か、ばかなしこ」


おわり