曜「でも……怖いね、痴漢なんて」

千歌「しかもね……女性専用車両だったんだ……」

曜「ふぇぇっ！？」

梨子「この場合は痴漢、というよりも痴女、という方が正しいのかしら？」

千歌「うん。冷静な分析ありがとう。でも少し黙っててね」

梨子「」

曜「ち、ちなみにいつの話なの？」

千歌「この前梨子ちゃんとお出かけした時なんだけど」

曜（え、なにそれ私聞いてない）

千歌「丁度人がいっぱいの時間でさ、女性専用車両だったのに結構ぎゅーぎゅーで……」

千歌「そしたら、こう、お尻に人の手が……！」

曜「ひぇっ……」

梨子「許せないよね……なんて猥褻、もとい卑劣な犯人……」

曜「うん……」

梨子「千歌ちゃんのみかん色のホットパンツに包まれた未成熟ながらもフレッシュさ溢れる弾力、内浦の太陽を内包するかのような温かみ……」

曜「……うん？」

梨子「布を１枚、２枚隔てても尚吸い付くような瑞々しさ、それでいて母性すら感じさせる芸術的曲線……それを手のひらでじっくりしっとりねっとりと慈しむように撫で回すだなんて……！」

千歌「とりあえず、梨子ちゃんが犯人なのはわかったから一緒にお警察に行こうね」

梨子「待って千歌ちゃん。きっとこれは真犯人の卑劣な罠よ。ギルティートラップなのよ。痴漢冤罪によって人生を狂わされた犠牲者の末路を知ってる？」

千歌「仮に今回の件が冤罪だったとしても、長期的には内浦の風紀を守るための犠牲ってことにしておくよ」

梨子「なんてこと……そりゃあ、確かに千歌ちゃんのお尻をソフトタッチ、かましちゃったよHand in Handしちゃったのは悪いと思ってるよ？」

千歌「あれをソフトタッチというか」

梨子「でも、あんな設えられたかのようなシチュエーション、据え膳食わぬは女の恥、まさに最終痴漢電車（ﾊｯﾋﾟｰﾊﾟｰﾃｨｰﾄﾚｲﾝ）なのよ？」

千歌「そのルビの件で果南ちゃんにビンタされても知らないからね」

曜「まあまあ……梨子ちゃんも悪気があったわけじゃ……いや、あったと思うけど」

梨子「もうちょっと弁護頑張って欲しかったなぁ」

曜「でも、痴漢にはちゃんと気をつけないとね」

千歌「そうだね」

曜「……だ、だからさ！　今度は、私が一緒についてってあげるよ！！」

千歌「そうだね、曜ちゃんと一緒なら大丈夫だね」

梨子「あ」

千歌「梨子ちゃんはいらない」

梨子「」

あくる日


ｶﾞﾀﾝｶﾞﾀﾝ

ｶﾞﾀﾝｶﾞﾀﾝ


千歌「今日も人が多いね……この電車」

曜「そうだね……」

梨子「あの、千歌ちゃん」

千歌「なぁに？　梨子ちゃん」

梨子「流石に両手でずっと吊革捕まってるのは肩が痛くなってきたんだけど」

千歌「下ろした瞬間に、この梨子痴漢ですって叫ぶからね」

梨子「」

梨子「ねえ、千歌ちゃん」

千歌「なに？」

梨子「せめて片方だけ降ろさせてくれない？」

千歌「えぇ……」

梨子「それで、もう片方の手は千歌ちゃん手を握ってれば大丈夫でしょ？　Hand in Handならダイジョウブでしょ？」

千歌「えっ、握るの？」

梨子「先っちょだけ！　先っちょだけだから！！」

千歌「やっぱり訴えていい？」

梨子「両手で吊革掴んでます」

ｻﾜｧ……

千歌「！」

梨子「どうしたの千歌ちゃん？」

千歌（い……今、まさか……！）

梨子「………」

曜「………」

梨子（ふふふ……私には分かるよ。分かるよ曜ちゃん。ハミングフレンドな私には曜ちゃんの考えはすぐわかったよ」

梨子（曜ちゃんも、きっと千歌ちゃんのお尻の誘惑に抗えなかったんでしょ？）

梨子（だから、ボディーガードを買って出るふりをして、今こうやって千歌ちゃんの未熟Dreamerを堪能してるんでしょ？）

梨子（そんな曜ちゃんのために、私がこうやって千歌ちゃんの注意を引いておくことによって曜ちゃんの括約の舞台を整える……）

梨子（私は愛の伝道師。友人の百合で今宵も自室でシングル　　がとまらないわ）

千歌「………ぁぅ……！」

梨子（ふふっ。普段は太陽のように元気な千歌ちゃんも、恐怖と悦楽で声が出ないみたいね）

梨子（きっと曜ちゃんのことを信じてるんだろうけど、言い出して何かトラブルにならないか、怯えてるんだよね？）

梨子（でも、その騎士（ﾅｲﾄ）こそが魔王（ｴﾙｹｰﾆﾋ）なんだよ）

梨子（幼馴染の手のひらからもたらされる感触に戸惑いつつも発達段階にあるその身体は生理的反応に抗うことができずあばばば）

千歌「うぅ………」

曜「……ゃ」

曜「やめてくださいっ……！」ｶﾞｼｯ

？？？「なっ……！」

曜「い、今千歌ちゃんのお、お尻触ってましたよね……！」

？？？「そ、そんなことありません！　誤解です！　言いがかりです！！」

千歌「よ、曜ちゃん……！」

？？？「違います！　違うのです！　私は断じてそんなこと……！」

曜「話はちゃんとしたところで聞きますから……！」

？？？「違います！　違うのです！！　ほ、ほのかぁあああああ！！！！！」


ﾌﾟｧｰｰｰｰﾝ

曜「なんとか引き渡せたね……」

千歌「うぇえええん！　曜ちゃぁああん！！！」ﾓｷﾞｭｯ

曜「わわっ！」

千歌「本当に怖かったよぉ……」

曜「だ、大丈夫だよ千歌ちゃん…！」

曜（うわどうしようちかちゃんのちちっちもすごいやわらかい）

梨子（……ふふっ。私の目論見とは違っちゃったけど、これもまたハッピーエンドよね）

梨子（二人の邪魔しちゃ悪いから、私は１人乙女の花園であなた達を見守っているわ……）

千歌「………」

曜「落ち着いた？」

千歌「うん……」

曜「よかった……ちゃんと千歌ちゃんを守ることができて」

千歌「ありがとう、曜ちゃん」

曜「どういたしまして！」

千歌「……落ち着いたところでね、実は一つ思い出したんだ」

曜「な、何を？」

千歌「……二つ、あったんだよね」

曜「な、なにが？」

千歌「手」

曜「手って……手？」

千歌「うん」

曜「ってことは、千歌ちゃんのその……お、おしりを……」

千歌「うん」

曜「触ってた手が、ふ、ふた、二つあったってこと？」

千歌「うん」

曜「…………」

曜「て、てててて、てことわわわわわ」

千歌「………」

曜「……！！　あ、あの痴漢……りょ、両手で触ってただなんてね！！　ゆ、許せないね！」

千歌「両方右手の痴漢さんだったの？」

曜「」

千歌「曜ちゃん」

曜「あっはい」

千歌「ーーーヘンタイ///」

曜「」

お　し　り