1: 名無しで叶える物語 2017/06/12(月) 12:58:27.62 ID:jBkqgEwG.net
─放課後、学校玄関前


善子「─さてと…じゃあそろそろ帰りましょうかルビィ」

ルビィ「うん、善子ちゃん」

善子「今日はまあまあ楽しかったわね、それに天気もいいし」

ルビィ「そうだねぇ、今日はとってもいい日かも」ニコッ

善子「ええ、あとはこのまま無事に終わってくれればいいんだけど……」

ルビィ「え?」

2: 名無しで叶える物語 2017/06/12(月) 12:59:29.13 ID:jBkqgEwG.net
ルビィ「善子ちゃん、無事ってなにが……」


ポツポツ


ルビィ「?」

善子「……」


ザーッ


ルビィ「…あれ?急に雨が降ってきたよ」

3: 名無しで叶える物語 2017/06/12(月) 13:00:31.69 ID:jBkqgEwG.net
善子「…………やっぱり」

善子「…あーもうっ!また雨じゃないの!」

ルビィ「結構降ってるね……天気予報では晴れだって言ってたのに」

善子「全くよ!天気予報なんてホンット全然当てにならないわね!」


善子「はぁーっ、こういう時くらい不運を発動させなくてもいいのに……」タメイキ

ルビィ「…善子ちゃん?」

4: 名無しで叶える物語 2017/06/12(月) 13:01:21.74 ID:jBkqgEwG.net
善子「あぁ…不幸だわ……本当に不幸だわ…」ウツムキ

ルビィ「ねぇ善子ちゃん……雨、止むかなぁ…」

善子「…多分止まないわよ、私がいるから」

ルビィ「……」

ルビィ「善子ちゃん、そんなこと言わないでちょっとだけ待ってみようよ…ね?」ニコッ



善子「……まあいいけど」

5: 名無しで叶える物語 2017/06/12(月) 13:02:18.47 ID:jBkqgEwG.net



善子「……はぁーっ、それにしても憂鬱だわ…」

ルビィ「……うーん」

ルビィ「善子ちゃんは雨があまり好きじゃないんだね」

善子「それはそうよ、何度も何度も急に降ってきて…濡れずに帰ることが出来たのなんて数えるほどしかないのよ?」ジトメ

善子「それだけやられれば嫌気もさすわよ」

ルビィ「そっかぁ…」

6: 名無しで叶える物語 2017/06/12(月) 13:03:01.06 ID:jBkqgEwG.net
ルビィ「でも雨にも良いところはあると思うよ?」

善子「何言ってるのよ、そんなことあるわけないじゃない」

ルビィ「そうかなぁ?」

善子「そうよ、さっき私はいきなり降ってくるのが嫌だって言ったけど」

善子「でもね、私が雨を嫌うのってそれだけじゃないわよ」

8: 名無しで叶える物語 2017/06/12(月) 13:04:56.62 ID:jBkqgEwG.net
ルビィ「?じゃあ、他にもあるの?」

善子「ええ、例えば水たまりがあるじゃない」

ルビィ「うん」

善子「車が来て、こっちに水しぶきが跳ねたら嫌でしょ?」

ルビィ「うーん、確かにそうかも」

善子「あと何かジメジメしてるし……」

善子「それに何より濡れるのが嫌、服が濡れてビショビショのまま…なんて気持ち悪いじゃない」

ルビィ「そうだねぇ…乾くのに時間もかかるし、ルビィも嫌かも」

9: 名無しで叶える物語 2017/06/12(月) 13:06:05.89 ID:jBkqgEwG.net
善子「でしょ?」

ルビィ「うん」

善子「ほら、やっぱり良いところなんてないじゃない」


ルビィ「……そうかなぁ?」

善子「…何よ、これでもまだ良いところがあるって言うの?」

ルビィ「あるよ、これはルビィだけが思ってることかもしれないけど」

善子「……」

ルビィ「あのね、善子ちゃん」

10: 名無しで叶える物語 2017/06/12(月) 13:06:53.64 ID:jBkqgEwG.net
ルビィ「確かにさっき善子ちゃんが言ったことはルビィも嫌だよ……だけど」

ルビィ「ルビィね、雨が降ってるときって濡れてる間は結構気持ちいいなぁって思うことがあるの」


善子「…言ってることおかしくない?さっき濡れるのは嫌だって…」

ルビィ「それは後の話、雨が降っちゃって自分が濡れてるそのときはね…結構楽しいんだぁ」

ルビィ「なんでだろう?ルビィにもよく分からないんだけどね、何かひとつになったなぁって感じがするの」

11: 名無しで叶える物語 2017/06/12(月) 13:08:21.65 ID:jBkqgEwG.net
善子「……雨と?」

ルビィ「うん、帰ったらビショビショで嫌だし…お姉ちゃんにも怒られちゃうけど……」アハハ

ルビィ「だけどね、ルビィはあの時間が結構好きなんだぁ」

ルビィ「だから嫌いにはなれないかも」


善子「……まあ、分からなくもないわ…解放感っていうのかしら?」

善子「確かに雨に濡れてる間はそう感じるときもあるわね」

ルビィ「えへへっ、そうでしょ?…でもね善子ちゃん、それだけじゃないんだよ」

12: 名無しで叶える物語 2017/06/12(月) 13:10:56.12 ID:jBkqgEwG.net
善子「?まだ何かあるの?」

ルビィ「うん、すっごく素敵なものがあるの」

ルビィ「ねぇ善子ちゃん…空、見てみて」ユビサシ

善子「空って……」



善子「………あっ……」

13: 名無しで叶える物語 2017/06/12(月) 13:11:37.86 ID:jBkqgEwG.net
ルビィ「ね?綺麗でしょ?」

善子「晴れてる……いつの間に…」

ルビィ「善子ちゃん、待っててよかったね」ニコッ

善子「ルビィ…」


善子「……そうね」ニコ

ルビィ「うん、そうなの」

善子「フフッ……でも、虹までかかるなんて…ここまで晴れるのも珍しいわね」

14: 名無しで叶える物語 2017/06/12(月) 13:12:18.02 ID:jBkqgEwG.net
ルビィ「クスッ、そうかも……あのね?善子ちゃん」

善子「なに?」

ルビィ「ルビィは雨が降った後のお日様って、いつもの晴れよりずっと…ずっと綺麗だと思うんだぁ」

ルビィ「こういうのを見るとね、心がスッキリするの、明日からも頑張ろうってそう思えるんだよ」

善子「……」

ルビィ「きっと雨が汚れを落としてくれてね、お日様がルビィたちを乾かしてくれるからなんだと思う」

15: 名無しで叶える物語 2017/06/12(月) 13:13:03.20 ID:jBkqgEwG.net
善子「……洗濯みたいね、それ」

ルビィ「えへへっ…そうかもね」

ルビィ「でも、そうじゃなきゃダメな気がするんだぁ」


善子「……?どういうこと?」

ルビィ「だって…皆がずっと綺麗なままで生きられるなんて、きっと無理だと思うから」

ルビィ「だから、そのために雨があるんじゃないかな…ってルビィはそう思うの」

善子「……成程、そういう考え方もあるのね」

16: 名無しで叶える物語 2017/06/12(月) 13:13:54.12 ID:jBkqgEwG.net
ルビィ「それに……クスッ」

善子「?」

ルビィ「善子ちゃん、水たまり見てみて」

善子「何よ、なにかあるの?…………って」


ルビィ「分かった?善子ちゃん、自分では気付いてなかったかもしれないけど」

ルビィ「こうして映してみると分かるでしょ?ルビィも善子ちゃんもね、笑ってるの」

17: 名無しで叶える物語 2017/06/12(月) 13:14:29.10 ID:jBkqgEwG.net
善子「……」

ルビィ「さっきまであんなにムスーッとしてたのにね」

ルビィ「これもきっと…お日様が善子ちゃんのモヤモヤを晴らしてくれたおかげなんだって」

ルビィ「そんな気がするんだぁ」



善子「……そうね、そうかもしれない」

善子「ありがとうルビィ、ルビィのおかげでちょっとだけ…雨のことが好きになれそうだわ」ニコ

ルビィ「えへへっ、そっか……よかったぁ」

18: 名無しで叶える物語 2017/06/12(月) 13:15:04.60 ID:jBkqgEwG.net
善子「まあなんにせよ、これで帰れるわね」

ルビィ「そうだね」

善子「フフッ…さ、行きましょうかルビィ」

ルビィ「うんっ善子ちゃん!」


……


19: 名無しで叶える物語 2017/06/12(月) 13:15:42.18 ID:jBkqgEwG.net



善子「─それじゃあ私、こっちだから」

ルビィ「うん、またね善子ちゃん」

善子「……」

善子「ルビィ、ちょっと待って」

ルビィ「え?どうしたの善子ちゃん」クルッ


善子「……あのね」

20: 名無しで叶える物語 2017/06/12(月) 13:16:24.41 ID:jBkqgEwG.net
善子「ルビィにお願いがあるんだけど」

ルビィ「お願い?」キョトン

善子「ええ、今度またこういうことがあったら困るから……」

善子「私が傘を忘れたときのために、一本…持ち歩いててくれないかしら?折り畳みのやつでいいから」

ルビィ「え?ずっと?」

善子「そうね、私と一緒に帰るといつ雨が降るかなんて分からないんだから……今日みたいなことだって日常茶飯事よ?」

21: 名無しで叶える物語 2017/06/12(月) 13:17:45.37 ID:jBkqgEwG.net
ルビィ「あー、そっかぁ…うん、そうだね」

善子「まあ、ルビィが嫌なら無理にとは言わないけど……」

ルビィ「別にいいよ?」

善子「……本当に?」

ルビィ「うん、だってルビィ…もっと善子ちゃんと一緒に帰りたいから」ニコッ

善子「……あんたってそういうところは本当に素直で真っ直ぐよね……///」

ルビィ「善子ちゃん?」


善子「なんでもないわよ……」メソラシ

ルビィ「?それならいいけど」

22: 名無しで叶える物語 2017/06/12(月) 13:18:21.64 ID:jBkqgEwG.net
善子「それじゃあ、お願いねルビィ」

ルビィ「うんっ早速明日から持ってくるね!バイバイ善子ちゃん!」タッ

善子「ええ、また明日…」テヲフリ



善子「…………」

善子「…ルビィ、あの子気付いてないのかしら…」

23: 名無しで叶える物語 2017/06/12(月) 13:19:02.96 ID:jBkqgEwG.net
善子「私が忘れる、持ってないってことは傘はルビィが持ってる一本だけになるのよ?それってつまり…そういうことでしょ?」

善子「…はぁーっ、なんであんなに真っ直ぐなのにそういうところには鈍いのよ全く…」

善子「……」

善子「……だけどまあ」



善子「クスッ、初めて雨が待ち遠しくなったかもね」

24: 名無しで叶える物語 2017/06/12(月) 13:19:40.34 ID:jBkqgEwG.net
終わりです。ありがとうございました

引用元: 善子「雫が映したその顔は」