1: 名無しで叶える物語◆uYKs9eR4★ 2024/06/26(水) 23:22:18 ID:???Sr
※活動記録最新話のネタバレがありますので、活動記録を見た後で読むことを推奨いたします

活動記録最新話のあとのこずめぐのお話です。
こんなこずめぐも有りなのではないでしょうか。

記念すべき通算50作目になりました

2: 名無しで叶える物語◆uYKs9eR4★ 2024/06/26(水) 23:23:06 ID:???Sr
目前に迫った撫子祭。
私たちスクールアイドルクラブは各ユニットごとに出し物をすることになっていた。
私たちみらくらぱーく!も撫子祭に向けて準備を進めようという段階になって私は補習に引っかかってしまい、断腸の思いでるりちゃんと姫芽ちゃんに準備を任せた。

そして、晴れて私は補習室から帰還、これでようやく私もみらくらぱーく!の一員として準備に参加することが出来る、と思っていた矢先にるりちゃんと姫芽ちゃんの間に溝が出来てしまい…
めぐちゃんが一肌脱いでやることになった。

そんな私の努力の甲斐があってか、2人の可愛い後輩ちゃんたちは晴れて本当の意味での仲間になった。とっても喜ばしいことで実際私も嬉しかったんだけど…

あれ、なんだろう、この気持ち…

るりちゃんと姫芽ちゃんいくら何でも仲が進展するの早すぎない??

3: 名無しで叶える物語◆uYKs9eR4★ 2024/06/26(水) 23:23:48 ID:???Sr
いや、喜ばしいことなんだけどさ!

夜になっても私のもやもやは決して消えることはなかった。
ああもう、このもやもやは何なんだよ。

一人で部屋にいて悶々とした気持ちを抱え続けるのも嫌だし、かといってるりちゃんにカッコつけてみらくらぱーく!の在り方について語ってしまった手前、るりちゃんに話を聞いてもらうのも違う…
何て言ったってるりちゃんの前では最高にカッコよくて可愛いめぐちゃんでいたいからね…

慈「……」

4: 名無しで叶える物語◆uYKs9eR4★ 2024/06/26(水) 23:24:34 ID:???Sr
そんなことを考えながら私の足は自然と寮のある部屋へと向かっていた。

コンコン

慈「梢~。いるでしょ~?」

ガチャ

梢「慈。こんな時間にどうしたの?」

慈「いや~。遊びに来ちゃった☆」

梢「遊びに来たって…もう消灯時間も近いのだけれど」

ふと腕時計を見ると確かに消灯時間も近い。
だけどこのまま帰りたくない…

5: 名無しで叶える物語◆uYKs9eR4★ 2024/06/26(水) 23:25:26 ID:???Sr
慈「まあまあ固いこと言わないで。」

梢「来てしまったものは仕方ないわね…とりあえず入ってちょうだい」

慈「その言い方は何だ~~」

梢「寮母さんに怒られるから静かにしてちょうだい」

ワイワイキャッキャ

軽口を叩き合いながら梢の部屋にお邪魔する。

6: 名無しで叶える物語◆uYKs9eR4★ 2024/06/26(水) 23:26:08 ID:???Sr
―――――――――梢の部屋―――――――――

梢「とりあえず、お茶を淹れるから座って待ってて」

慈「ありがと」

数分後、2人分の紅茶を淹れた梢はテーブルをはさんで私の正面に座る。

慈「はぁ~。梢のお茶はいつもおいしいね」

梢「そう言ってもらえると嬉しいわね。それで、用件は何かしら?」

梢には私が何かしらの用事があってここに来たのだと分かっているのだろう。
まあ三年目の付き合いだしそりゃそうか。
私だって梢のことは他の人よりは分かっているつもりだしね。
本人には言うつもりはないけど。

7: 名無しで叶える物語◆uYKs9eR4★ 2024/06/26(水) 23:27:07 ID:???Sr
慈「梢ってさ、花帆ちゃんがスリーズブーケの先輩をしているところを見て、どう思う?」

梢「何の話かしら?」

いきなり花帆ちゃんの話題を出されて梢は困惑した表情になる。
そりゃそうだろう。

だけどあえて私は話を先に進める。

慈「いいからいいから。嬉しいとか、頼もしいとか、何かあるでしょ?」

梢「そうね。確かにここのところの花帆の成長は目を見張るものがあるわ。それに関して私は嬉しいわ。吟子さんを指導する花帆を見ていると1年前のあの花帆がもう立派なスクールアイドルになったんだなって、とても感慨深いわね。ただ…」

そう言って遠くを見る梢。
私には真似できないその美しい表情が少し羨ましい…

8: 名無しで叶える物語◆uYKs9eR4★ 2024/06/26(水) 23:28:10 ID:???Sr
慈「ただ、何?」

梢「ただ、ちょっと寂しくもある、わね。まるで花帆が私の手から離れていくような感覚を感じることはあるわ…」

やっぱり、梢も寂しかったんだね。

梢「それで、その話と貴女の用件は何か関係はあるのかしら?」

9: 名無しで叶える物語◆uYKs9eR4★ 2024/06/26(水) 23:28:55 ID:???Sr
慈「うん。実は私も…」

とりあえずここ最近起こった出来事を梢に簡単に説明する。

梢「なるほど、ね」

そう言って梢は紅茶を一口、口にする。

慈「な~んかさ、るりちゃんにあれだけカッコいいことを言っておきながら私の方こそこんな風になってたらそれこそダメじゃん…」

梢「ふふっ」

慈「何笑ってんだ~」

梢「ごめんなさい。私と同じ気持ちを慈も抱いていたと分かったらなんかおかしくなって」

こずめぐ「「…」」

梢「慈は、寂しくなっちゃったのよね?」

慈「そうだよ。寂しくなっちゃったんだよ!」

梢「だから私のところに来たのね。」フフッ

10: 名無しで叶える物語◆uYKs9eR4★ 2024/06/26(水) 23:29:46 ID:???Sr
慈「だから笑うな~!」

梢「慈の気持ちは痛いほどよく分かるわ。」

急に真面目なトーンになって梢は言う。

梢「これが三年生になるということなのかもしれないわ」

三年生になるということ…
なるほど確かにそうかもしれない。
るりちゃんはもう甘々なだけの下級生ではない。
花帆ちゃんだってそう。

梢「どうすればいいのかしらね…」

寂しそうに笑う梢。
その顔はやっぱり美しい。

11: 名無しで叶える物語◆uYKs9eR4★ 2024/06/26(水) 23:30:42 ID:???Sr
慈「そうだね…」

その後私たちは暫く沈黙した。
時間だけが流れていく。

沈黙なのに居心地は悪くない。
梢とこうしている時間も悪くない。

梢「それは私達3年生が受け入れなければならない運命、なのかもしれないわね」

おもむろに梢が口を開く。

梢「基本的には2年生が1年生の指導を行う。3年生はそのサポート役に回る。ちょうど、去年の私が花帆に、貴女が瑠璃乃さんにやっていたように…最も、去年は3年生は部にいなかったのだけれど…そうやって伝統を紡いで行くものなんじゃないかしら」

12: 名無しで叶える物語◆uYKs9eR4★ 2024/06/26(水) 23:31:32 ID:???Sr
分かっている。
梢の言うことは、分かっている。

梢「勿論、貴女の気持ちは理解できるわ。私だってそうだもの…」

慈「ねえ、梢?」

梢「何?」

慈「私たち、寂しい者同士だね?」

梢「寂しい者同士…?」

慈「だってそうでしょ?梢は、花帆ちゃんに対して、私はるりちゃんに対して。それぞれ後輩がさ、立派になって、寂しい者同士」

梢「そう、なのかしら」

13: 名無しで叶える物語◆uYKs9eR4★ 2024/06/26(水) 23:32:16 ID:???Sr
いまいちよく分からないという顔をする梢。
でも、どんなにそんな顔をしたって私たちは寂しい者同士なんだよ。

慈「そうなのっ」

梢「…」

慈「ねえ、梢」

梢「?」

私は梢の目の前に移動し、思い切ってこう言った。

慈「慰めてよ?」

14: 名無しで叶える物語◆uYKs9eR4★ 2024/06/26(水) 23:33:13 ID:???Sr
梢「何を言っているの?」

慈「寂しいんだよ、私。梢だって寂しかったら慰めてあげるから…」

梢「そんなことっ…//」

慈「早く~」

梢を催促すると仕方ないという表情でこちらを見つめてくる。

梢「分かったわ…」

梢「慈、寂しかったのね…」

そう言って梢は私の頭を撫でる。

梢「これで、いいかしら?//」

梢が照れている。
可愛い…

15: 名無しで叶える物語◆uYKs9eR4★ 2024/06/26(水) 23:33:53 ID:???Sr
慈「ん。まあ梢にしてはよく出来ました。じゃあ、今度はめぐちゃんの番だね」

そう、今度は梢を慰めてあげる番だ。

梢「私は別に、大丈夫なのだけれど…」

慈「いやいや、めぐちゃんの好意を素直に受け取っときなって!ほらっ」

そう言って梢を抱き寄せる。

慈「梢、花帆ちゃんのこと、寂しかったんでしょ?私がいるから大丈夫だよ」ナデナデ

密着した身体。
お互いの熱を感じる。

16: 名無しで叶える物語◆uYKs9eR4★ 2024/06/26(水) 23:34:53 ID:???Sr
梢「慈…」

慈「ねえ、梢?」

梢「何かしら」

慈「今夜は梢の部屋に泊まっていっていい?」

梢「いいも何も、もう消灯時間過ぎているわよ。今から廊下をうろついたら寮母さんに怒られるわ。貴女が怒られるだけならまだしも、一緒に部屋にいた私まで巻き込みを食らうのはごめんだわ」

全く、こいつは素直じゃないんだから…

慈「ん。そういうことにしておいてあげる☆」

17: 名無しで叶える物語◆uYKs9eR4★ 2024/06/26(水) 23:36:59 ID:???Sr
梢「貴女ねえ…」

そう言ってため息をつく梢だがすぐに口を開く。

梢「さ、明日も朝練があるからもう寝ましょう」

慈「ん。おやすみ、梢」

梢「おやすみ、慈」


たまにはこんな夜も、悪くないよね。



おしまい

引用元: SS 慈「ねえ梢、私、寂しくなっちゃった」