1: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/09/05(火) 00:28:06.281 ID:04g1MHrR0.net
喪黒「私の名は喪黒福造、人呼んで笑ゥせぇるすまん」
喪黒「ただのセールスマンじゃございません」
喪黒「私の取り扱う品物は心……人間のココロでございます」
喪黒「この世は老いも若きも男も女も、心の寂しい人ばかり」
喪黒「そんな皆さんの心のスキマをお埋めいたします」
喪黒「いいえ、お金は一銭も頂きません」
喪黒「お客様が満足されたら、それがなによりの報酬でございます」
喪黒「さて、今日のお客様は……」
≪芸夢 選太(36) サラリーマン≫
オーッホッホッホッホッホ……
喪黒「ただのセールスマンじゃございません」
喪黒「私の取り扱う品物は心……人間のココロでございます」
喪黒「この世は老いも若きも男も女も、心の寂しい人ばかり」
喪黒「そんな皆さんの心のスキマをお埋めいたします」
喪黒「いいえ、お金は一銭も頂きません」
喪黒「お客様が満足されたら、それがなによりの報酬でございます」
喪黒「さて、今日のお客様は……」
≪芸夢 選太(36) サラリーマン≫
オーッホッホッホッホッホ……
7: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/09/05(火) 00:31:38.167 ID:04g1MHrR0.net
― 会社 ―
課長「芸夢君!」
選太「は、はい……」
課長「なんだね、この見積り書は!? こんなものお客様に出したら怒られてしまうよ!」
選太「申し訳ありません……」
OL「芸夢さん、また怒られてるわ。カワイソー」
若手社員「しょうがねえよ。芸夢さんって典型的な無能社員だもん」
OL「まあねー、いい年して浮いた話の一つもないしね」
若手社員「あの人、何が楽しくて生きてるんだろうな」
課長「芸夢君!」
選太「は、はい……」
課長「なんだね、この見積り書は!? こんなものお客様に出したら怒られてしまうよ!」
選太「申し訳ありません……」
OL「芸夢さん、また怒られてるわ。カワイソー」
若手社員「しょうがねえよ。芸夢さんって典型的な無能社員だもん」
OL「まあねー、いい年して浮いた話の一つもないしね」
若手社員「あの人、何が楽しくて生きてるんだろうな」
9: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/09/05(火) 00:34:19.600 ID:04g1MHrR0.net
― ゲームセンター ―
ピキューン ズガガガガ ピキューン ズババババ
選太「このっ! このっ! いけっ!」
ズババババ ガガガガガ ズガーン
選太「よしっ、いいぞ!」
チャラリラッチャ~♪
選太「やった、クリア! ハイスコアだ!」
選太(ふぅ~、絶好調! 今日のイライラがすっかり吹き飛んだぞ!)
ピキューン ズガガガガ ピキューン ズババババ
選太「このっ! このっ! いけっ!」
ズババババ ガガガガガ ズガーン
選太「よしっ、いいぞ!」
チャラリラッチャ~♪
選太「やった、クリア! ハイスコアだ!」
選太(ふぅ~、絶好調! 今日のイライラがすっかり吹き飛んだぞ!)
12: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/09/05(火) 00:37:12.746 ID:04g1MHrR0.net
喪黒「お見事です」ヌゥッ
選太「うわわっ!?」
喪黒「先程から後ろで拝見していたのですが、ずいぶんゲームがお上手なんですねえ」
喪黒「わたくし、惚れ惚れしてしまいましたよ」
選太「え、ハハ……いやぁ~、ボクの取り柄なんてこれぐらいなもので……」
選太「じゃ、失礼します」
喪黒「おや、もうお帰りで?」
選太「ええ、ゲームは程々にすると決めてあるもので」
喪黒「……」
選太「うわわっ!?」
喪黒「先程から後ろで拝見していたのですが、ずいぶんゲームがお上手なんですねえ」
喪黒「わたくし、惚れ惚れしてしまいましたよ」
選太「え、ハハ……いやぁ~、ボクの取り柄なんてこれぐらいなもので……」
選太「じゃ、失礼します」
喪黒「おや、もうお帰りで?」
選太「ええ、ゲームは程々にすると決めてあるもので」
喪黒「……」
14: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/09/05(火) 00:40:31.099 ID:04g1MHrR0.net
― 会社 ―
課長「まったく……この程度のクレームは自分で処理してくれたまえよ!」
課長「私の手をわずらわせるな!」
選太「申し訳ありません、申し訳ありません!」ペコペコ
若手社員「あーあペコペコ頭下げちゃって……あんな風にはなりたくねえな」
OL「反面教師ってやつ~?」
クスクス… ハハハ…
選太(こんな日は……行きつけのゲーセンに行くしかないな)
課長「まったく……この程度のクレームは自分で処理してくれたまえよ!」
課長「私の手をわずらわせるな!」
選太「申し訳ありません、申し訳ありません!」ペコペコ
若手社員「あーあペコペコ頭下げちゃって……あんな風にはなりたくねえな」
OL「反面教師ってやつ~?」
クスクス… ハハハ…
選太(こんな日は……行きつけのゲーセンに行くしかないな)
17: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/09/05(火) 00:43:45.604 ID:04g1MHrR0.net
― ゲームセンター ―
選太「ええっ、まもなく店を閉じてしまうんですか!?」
店主「うん……常連さんのためにと頑張ってきたんだけどね。さすがに限界になってきてねえ」
選太「そんな……まだまだやれますよ!」
店主「いやー、このところは客足がぱったり途絶えちゃってね」
店主「今の若い人はほら、スマホでゲームしたりしてるんだろう?」
店主「まして、うちのゲームは古いのばかりだからねえ」
店主「このままずるずる赤字で経営するより、土地を売っちゃった方がいいと思ったのさ」
選太「そうですか……」
選太(ここがなくなったら、ボクはどうすれば……)
選太「ええっ、まもなく店を閉じてしまうんですか!?」
店主「うん……常連さんのためにと頑張ってきたんだけどね。さすがに限界になってきてねえ」
選太「そんな……まだまだやれますよ!」
店主「いやー、このところは客足がぱったり途絶えちゃってね」
店主「今の若い人はほら、スマホでゲームしたりしてるんだろう?」
店主「まして、うちのゲームは古いのばかりだからねえ」
店主「このままずるずる赤字で経営するより、土地を売っちゃった方がいいと思ったのさ」
選太「そうですか……」
選太(ここがなくなったら、ボクはどうすれば……)
18: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/09/05(火) 00:46:38.999 ID:04g1MHrR0.net
― 街 ―
選太「はぁ~……」トボトボ
喪黒「おや、これはこれは奇遇ですなぁ」
選太「! あなたは……この前、ゲーセンでお会いした……」
喪黒「まるでこの世の終わりが来るかのような表情で歩いてましたが、どうかされたのですか?」
選太「この世の終わりですか……フフッ、たしかにそうかもしれませんね」
選太「実は、あなたとお会いしたゲーセンが、今度閉店してしまうことになったんです」
喪黒「そうなんですか。私もちょくちょく通っていただけに、誠に残念なことです」
選太「はぁ~……」トボトボ
喪黒「おや、これはこれは奇遇ですなぁ」
選太「! あなたは……この前、ゲーセンでお会いした……」
喪黒「まるでこの世の終わりが来るかのような表情で歩いてましたが、どうかされたのですか?」
選太「この世の終わりですか……フフッ、たしかにそうかもしれませんね」
選太「実は、あなたとお会いしたゲーセンが、今度閉店してしまうことになったんです」
喪黒「そうなんですか。私もちょくちょく通っていただけに、誠に残念なことです」
19: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/09/05(火) 00:49:37.159 ID:04g1MHrR0.net
喪黒「しかし……あの店が閉店するからといって、ゲームができなくなるわけではありません」
喪黒「たとえば、駅前にはもっと大きなゲームセンターがあるじゃないですか」
喪黒「ああいったところに移ればよろしいのでは……?」
選太「ゲームセンターならどこでもいい、というわけではないんですよ」
喪黒「なにやら、込み入った事情をお抱えのようですね」
喪黒「立ち話もなんですし、ここからは飲みながらお話ししましょ。ねえ?」
選太「は、はい……」
喪黒「たとえば、駅前にはもっと大きなゲームセンターがあるじゃないですか」
喪黒「ああいったところに移ればよろしいのでは……?」
選太「ゲームセンターならどこでもいい、というわけではないんですよ」
喪黒「なにやら、込み入った事情をお抱えのようですね」
喪黒「立ち話もなんですし、ここからは飲みながらお話ししましょ。ねえ?」
選太「は、はい……」
20: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/09/05(火) 00:52:33.437 ID:04g1MHrR0.net
― BAR魔の巣 ―
マスター「……」キュッキュッ
喪黒「ほう、昔ながらのゲームセンターが恋しいのですか」
選太「そうなんです」
選太「ボクは子供の頃から、少ない小遣いをやりくりしてよくゲーセンに通っていたのですが」
選太「まだその頃は、家の近所にも昔ながらのゲームセンターがたくさんありました」
選太「あの頃のゲームセンターはよかった……」
喪黒「たしかに、一昔前のゲームセンターといえば、怪しい魅力に満ちあふれていましたなぁ」
喪黒「外観は地味で、店内は薄暗く、古いアーケードゲームが立ち並んでいて……」
喪黒「女性や子供が安易に立ち寄れないような雰囲気がありました」
選太「そうでしょう、そうでしょう!」
マスター「……」キュッキュッ
喪黒「ほう、昔ながらのゲームセンターが恋しいのですか」
選太「そうなんです」
選太「ボクは子供の頃から、少ない小遣いをやりくりしてよくゲーセンに通っていたのですが」
選太「まだその頃は、家の近所にも昔ながらのゲームセンターがたくさんありました」
選太「あの頃のゲームセンターはよかった……」
喪黒「たしかに、一昔前のゲームセンターといえば、怪しい魅力に満ちあふれていましたなぁ」
喪黒「外観は地味で、店内は薄暗く、古いアーケードゲームが立ち並んでいて……」
喪黒「女性や子供が安易に立ち寄れないような雰囲気がありました」
選太「そうでしょう、そうでしょう!」
23: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/09/05(火) 00:57:14.465 ID:04g1MHrR0.net
選太「それが今のゲームセンターときたら……」
選太「やたら派手な外観で、若い女性も平気で出入りして、店員はきっちり教育されたアルバイト」
選太「店内は巨大な音ゲーやらメダルゲームやらが占拠……情緒もへったくれもありません」
選太「ボクも何度か足を運びましたが、とても馴染めるものじゃありませんでした」
選太「しかし今や、昔ながらのゲーセンは続々と閉店していき」
選太「この地域で唯一残っていた、あのゲームセンターもついに店を閉めることになってしまいました」
選太「これも時代の流れとはいえ……寂しいものです」
選太「ああ、ボクはこれからどうすればいいんだ……!」
喪黒「……」
選太「やたら派手な外観で、若い女性も平気で出入りして、店員はきっちり教育されたアルバイト」
選太「店内は巨大な音ゲーやらメダルゲームやらが占拠……情緒もへったくれもありません」
選太「ボクも何度か足を運びましたが、とても馴染めるものじゃありませんでした」
選太「しかし今や、昔ながらのゲーセンは続々と閉店していき」
選太「この地域で唯一残っていた、あのゲームセンターもついに店を閉めることになってしまいました」
選太「これも時代の流れとはいえ……寂しいものです」
選太「ああ、ボクはこれからどうすればいいんだ……!」
喪黒「……」
24: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/09/05(火) 01:00:43.728 ID:04g1MHrR0.net
喪黒「よろしい」
喪黒「でしたら、私があなた好みのゲームセンターをご紹介いたしましょう」
選太「え……!? あなたは一体……!」
喪黒「申し遅れました。わたくし、こういう者です」スッ
選太「ココロのスキマ……お埋めします……」
喪黒「失礼ですが、私の見たところ、あなたはあまり豊かな人生を送られていない」
喪黒「しかし、どうにか昔ながらのゲームセンターに通うことで、心の平穏を保っておられる」
選太「ううっ……!」ギクッ
喪黒「今、新しく通えるゲームセンターを見つけなければ、あなたは精神的に参ってしまうでしょう」
喪黒「明日、あなたが仕事を終える頃を見計らって、あなたの会社へうかがいます」
喪黒「その時、とっておきのゲームセンターをご紹介しましょう」
喪黒「でしたら、私があなた好みのゲームセンターをご紹介いたしましょう」
選太「え……!? あなたは一体……!」
喪黒「申し遅れました。わたくし、こういう者です」スッ
選太「ココロのスキマ……お埋めします……」
喪黒「失礼ですが、私の見たところ、あなたはあまり豊かな人生を送られていない」
喪黒「しかし、どうにか昔ながらのゲームセンターに通うことで、心の平穏を保っておられる」
選太「ううっ……!」ギクッ
喪黒「今、新しく通えるゲームセンターを見つけなければ、あなたは精神的に参ってしまうでしょう」
喪黒「明日、あなたが仕事を終える頃を見計らって、あなたの会社へうかがいます」
喪黒「その時、とっておきのゲームセンターをご紹介しましょう」
25: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/09/05(火) 01:03:53.774 ID:04g1MHrR0.net
翌日――
― 会社 ―
選太(はぁ~……今日も散々な一日だった)
喪黒「こんばんは、芸夢さん」ヌウッ
選太「あ、喪黒さん! まさか、ずっとここで待っていたんですか!?」
喪黒「いえいえ、私もちょうど来たところです。お気になさらず」
選太「あの……ところで昔ながらのゲームセンターに連れてってくれるというのは……」
喪黒「はい、私は約束を果たしに来たのです」
喪黒「さっそく参りましょう。私についてきて下さい」
― 会社 ―
選太(はぁ~……今日も散々な一日だった)
喪黒「こんばんは、芸夢さん」ヌウッ
選太「あ、喪黒さん! まさか、ずっとここで待っていたんですか!?」
喪黒「いえいえ、私もちょうど来たところです。お気になさらず」
選太「あの……ところで昔ながらのゲームセンターに連れてってくれるというのは……」
喪黒「はい、私は約束を果たしに来たのです」
喪黒「さっそく参りましょう。私についてきて下さい」
26: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/09/05(火) 01:06:20.424 ID:04g1MHrR0.net
スタスタ…
喪黒「ここでこの裏通りに入ります」
選太(この街にこんな場所があっただなんて……)キョロキョロ
喪黒「こちらです」
選太「≪古井ゲームセンター≫……」
喪黒「さ、どうぞ。お入り下さい」
選太「は、はい……お邪魔します」ガラガラ…
喪黒「ここでこの裏通りに入ります」
選太(この街にこんな場所があっただなんて……)キョロキョロ
喪黒「こちらです」
選太「≪古井ゲームセンター≫……」
喪黒「さ、どうぞ。お入り下さい」
選太「は、はい……お邪魔します」ガラガラ…
30: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/09/05(火) 01:09:38.060 ID:04g1MHrR0.net
― 古井ゲームセンター ―
喪黒「いかがですか?」
選太「おお……」
選太(この暗さ、この怪しさ! まさにボクが通い詰めた“昔ながらのゲームセンター”だ!)
喪黒「こちら、店主の古井さんです」
選太「ど、どうも」
古井「……いらっしゃい」プイッ
選太(このサービス精神の欠片もないぶっきらぼうな店主も、昔ながらのって感じだぁ!)
喪黒「いかがですか?」
選太「おお……」
選太(この暗さ、この怪しさ! まさにボクが通い詰めた“昔ながらのゲームセンター”だ!)
喪黒「こちら、店主の古井さんです」
選太「ど、どうも」
古井「……いらっしゃい」プイッ
選太(このサービス精神の欠片もないぶっきらぼうな店主も、昔ながらのって感じだぁ!)
33: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/09/05(火) 01:12:34.292 ID:04g1MHrR0.net
選太「おおっ……!」
選太「ああっ、これは≪リアル・ファイター≫! こっちは≪メテオシューティング≫! 懐かしいなぁ!」
選太「ボクも名前しか知らないような、古いアーケードゲームもいっぱいある!」
選太「あ、あの……プレイしていいんですか!?」
喪黒「もちろんです。お好きなゲームをどうぞ」
選太「よぉ~し、どれからやろうかな……」
選太「ああっ、これは≪リアル・ファイター≫! こっちは≪メテオシューティング≫! 懐かしいなぁ!」
選太「ボクも名前しか知らないような、古いアーケードゲームもいっぱいある!」
選太「あ、あの……プレイしていいんですか!?」
喪黒「もちろんです。お好きなゲームをどうぞ」
選太「よぉ~し、どれからやろうかな……」
35: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/09/05(火) 01:15:36.060 ID:04g1MHrR0.net
ピキューン ズガガガガッ ドガガガガッ ピロリン
選太「このっ! こうか!? いけっ!」
選太「よしっ、一面クリア!」
喪黒「オーッホッホッホ、相変わらずお上手ですなぁ」
選太「ええ……このゲームのランキング一位のスコアはかなりのものですが」
選太「ボクがすぐに塗り替えてやりますよ!」
選太「このっ! いけっ! ――いいぞ!」
ピキューン ズガガッ ズババババッ ピキューン
喪黒「……」
選太「このっ! こうか!? いけっ!」
選太「よしっ、一面クリア!」
喪黒「オーッホッホッホ、相変わらずお上手ですなぁ」
選太「ええ……このゲームのランキング一位のスコアはかなりのものですが」
選太「ボクがすぐに塗り替えてやりますよ!」
選太「このっ! いけっ! ――いいぞ!」
ピキューン ズガガッ ズババババッ ピキューン
喪黒「……」
36: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/09/05(火) 01:19:35.969 ID:04g1MHrR0.net
選太「いやぁ~……面白かった! スコアも更新できて、スカッとしました」
喪黒「ホッホッホ、ご満足いただけたようで何よりです」
喪黒「これでもう、あなたがあんな暗い表情をして歩くようなことはないでしょう」
選太「ええ、こんなにいいゲーセンを紹介してもらったんですから!」
喪黒「しかし、芸夢さん」ズイッ
選太「はい?」
喪黒「私があなたとの約束を果たした代わりに、あなたも一つだけ約束して下さい」
選太「というと?」
喪黒「ここでゲームをするのは一日につき一時間までにして下さい」
喪黒「ゲームは一日一時間、というやつです」
喪黒「あまりゲームにのめり込むと、よくない結果をもたらしますからな」
選太「大丈夫です! ゲームは程々に、がボクのモットーですから!」
喪黒「ホッホッホ、ご満足いただけたようで何よりです」
喪黒「これでもう、あなたがあんな暗い表情をして歩くようなことはないでしょう」
選太「ええ、こんなにいいゲーセンを紹介してもらったんですから!」
喪黒「しかし、芸夢さん」ズイッ
選太「はい?」
喪黒「私があなたとの約束を果たした代わりに、あなたも一つだけ約束して下さい」
選太「というと?」
喪黒「ここでゲームをするのは一日につき一時間までにして下さい」
喪黒「ゲームは一日一時間、というやつです」
喪黒「あまりゲームにのめり込むと、よくない結果をもたらしますからな」
選太「大丈夫です! ゲームは程々に、がボクのモットーですから!」
39: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/09/05(火) 01:23:43.022 ID:04g1MHrR0.net
― 会社 ―
選太「……」カタカタ
若手社員「芸夢さん、たまには飲みに行きません?」
OL「会社の近くに新しい居酒屋ができたんですよー!」
選太「いや……ボクはいいや」
若手社員「あ、そうすか」
若手社員「かーっ、たまに気をつかって誘ってやってもこれだもんよ。付き合い悪くてやんなるよ」
OL「ま、いいじゃん。どうせ多く勘定払ってもらう要員に過ぎなかったしさ」
若手社員「まあなー」
クスクス… ハハハ…
選太(なんとでもいえ……ボクには新しい生きがいができたんだ!)
選太「……」カタカタ
若手社員「芸夢さん、たまには飲みに行きません?」
OL「会社の近くに新しい居酒屋ができたんですよー!」
選太「いや……ボクはいいや」
若手社員「あ、そうすか」
若手社員「かーっ、たまに気をつかって誘ってやってもこれだもんよ。付き合い悪くてやんなるよ」
OL「ま、いいじゃん。どうせ多く勘定払ってもらう要員に過ぎなかったしさ」
若手社員「まあなー」
クスクス… ハハハ…
選太(なんとでもいえ……ボクには新しい生きがいができたんだ!)
40: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/09/05(火) 01:26:04.122 ID:04g1MHrR0.net
― 古井ゲームセンター ―
ズガガガガッ ドガガガガッ ピロン ピロリン
選太「よし……いけっ、いけっ!」
ズガガーン テロテロテローン
選太「やったぁ!」
選太「よぉーし、このゲームもスコアランキング一位になれた!」
選太「おっと、そろそろ一時間か。今日のところは退散しよう」
ズガガガガッ ドガガガガッ ピロン ピロリン
選太「よし……いけっ、いけっ!」
ズガガーン テロテロテローン
選太「やったぁ!」
選太「よぉーし、このゲームもスコアランキング一位になれた!」
選太「おっと、そろそろ一時間か。今日のところは退散しよう」
41: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/09/05(火) 01:29:02.295 ID:04g1MHrR0.net
― BAR魔の巣 ―
選太「いやぁ~、ありがとうございました!」
選太「あれからというもの、仕事帰りに古井ゲームセンターに行くのがすっかり日課になりました!」
選太「これなら会社でどんな辛いことがあってもやっていけそうですよ」
喪黒「ホッホッホ、それはなによりです」
喪黒「ですが……芸夢さん。くれぐれも約束を破らないようにお願いしますね」
選太「分かってますよ。ゲームは一日一時間、ちゃんと守りますよ!」
選太「いやぁ~、ありがとうございました!」
選太「あれからというもの、仕事帰りに古井ゲームセンターに行くのがすっかり日課になりました!」
選太「これなら会社でどんな辛いことがあってもやっていけそうですよ」
喪黒「ホッホッホ、それはなによりです」
喪黒「ですが……芸夢さん。くれぐれも約束を破らないようにお願いしますね」
選太「分かってますよ。ゲームは一日一時間、ちゃんと守りますよ!」
45: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/09/05(火) 01:33:19.671 ID:04g1MHrR0.net
― 会社 ―
選太(今日はどのゲームをやろうかな……久しぶりに≪メカマシンバトル≫でも……)ボー…
課長「おい、芸夢君」
選太「は、はい!」
課長「はい、じゃないよ! なにをボーっとしていたんだね!?」
選太「すみません、考え事をしていまして」
課長「考え事ォ? “下手の考え休むに似たり”という言葉があるが、君はまさにそれだな!」
課長「いいかね、うちの社には有望な若手が毎年入り、育っている!」
課長「君のようななんの取り柄もない社員は、はっきりいっていらないんだよ!」
選太「!」カチン
課長「君みたいな無能を課に置くはめになった私の気持ちにも……」クドクドクドクド
選太(下手だとぉ~? なんの取り柄もない……だとぉ~?)
選太(今日はどのゲームをやろうかな……久しぶりに≪メカマシンバトル≫でも……)ボー…
課長「おい、芸夢君」
選太「は、はい!」
課長「はい、じゃないよ! なにをボーっとしていたんだね!?」
選太「すみません、考え事をしていまして」
課長「考え事ォ? “下手の考え休むに似たり”という言葉があるが、君はまさにそれだな!」
課長「いいかね、うちの社には有望な若手が毎年入り、育っている!」
課長「君のようななんの取り柄もない社員は、はっきりいっていらないんだよ!」
選太「!」カチン
課長「君みたいな無能を課に置くはめになった私の気持ちにも……」クドクドクドクド
選太(下手だとぉ~? なんの取り柄もない……だとぉ~?)
47: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/09/05(火) 01:36:36.245 ID:04g1MHrR0.net
選太「誰がヘタクソだぁ!? 誰がなんの取り柄もないだぁ!?」ガタッ
課長「わわっ!?」
選太「あんた≪リアル・ファイター≫をノーコンティニューでクリアできんのか!?」
選太「≪メテオシューティング≫で10万点以上出せるのかぁっ!?」
選太「――!」ハッ
シーン……
課長「わわっ!?」
選太「あんた≪リアル・ファイター≫をノーコンティニューでクリアできんのか!?」
選太「≪メテオシューティング≫で10万点以上出せるのかぁっ!?」
選太「――!」ハッ
シーン……
49: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/09/05(火) 01:39:12.778 ID:04g1MHrR0.net
― 古井ゲームセンター ―
選太「ううう……今日はやってしまった。明日からどういう顔で会社に行けばいいんだ……」
選太「どいつもこいつもボクをバカにしやがって……!」
選太「ええい、こういう時こそゲームだ! ゲームでストレス発散だ!」
選太「お金入れて、と」チャリンッ
ピキューン ズガガガッ ピキューン ボーンッ
選太「ちっ、調子が悪い! もう一回だ!」チャリンッ
ピロリロピロリロ… ズガガガガッ ピキューン バシューン
選太「ううう……今日はやってしまった。明日からどういう顔で会社に行けばいいんだ……」
選太「どいつもこいつもボクをバカにしやがって……!」
選太「ええい、こういう時こそゲームだ! ゲームでストレス発散だ!」
選太「お金入れて、と」チャリンッ
ピキューン ズガガガッ ピキューン ボーンッ
選太「ちっ、調子が悪い! もう一回だ!」チャリンッ
ピロリロピロリロ… ズガガガガッ ピキューン バシューン
51: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/09/05(火) 01:42:15.167 ID:04g1MHrR0.net
ボーンッ
選太「あ~……くそっ! やられた!」バンッ
選太「なんなんだ、今日は~!? 思うようにプレイできない!」
選太「……ん?」
選太(そろそろ一時間だな……もう一回プレイしたら確実に一時間をすぎちゃう)
選太(だけど、こんな状態でゲームをやめられっか! イライラを明日に引きずっちゃうよ!)
選太「もう一回!」チャリンッ
選太「あ~……くそっ! やられた!」バンッ
選太「なんなんだ、今日は~!? 思うようにプレイできない!」
選太「……ん?」
選太(そろそろ一時間だな……もう一回プレイしたら確実に一時間をすぎちゃう)
選太(だけど、こんな状態でゲームをやめられっか! イライラを明日に引きずっちゃうよ!)
選太「もう一回!」チャリンッ
53: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/09/05(火) 01:46:32.246 ID:04g1MHrR0.net
ピローン ズガガガガガッ ズバババババッ ピキューン ズガーンッ
選太(よし……このままいけば、ハイスコア間違いなしだ!)
喪黒『芸夢さん』
選太「わぁっ!?」ガタッ
選太(な、なんで!? ゲーム画面に喪黒さんが!?)
喪黒『ゲームは一日一時間といったのに、あなた約束を破りましたね』
選太「……! う、うるさいな! たまにはたくさんゲームをやりたい日だってあるんだよ!」
選太「せっかくのハイスコアをどうしてくれる!」
喪黒『どうやら、あなたはゲーム……いえゲームセンターにのめり込みすぎてしまったようですね』
選太「そ、そうだよ! それのなにが悪い!」
喪黒『でしたら、昔ながらのゲームセンターの雰囲気をとことん味わっていただきましょう』
喪黒『とことんね』
選太「あ、あああ……あああああ……」
選太(よし……このままいけば、ハイスコア間違いなしだ!)
喪黒『芸夢さん』
選太「わぁっ!?」ガタッ
選太(な、なんで!? ゲーム画面に喪黒さんが!?)
喪黒『ゲームは一日一時間といったのに、あなた約束を破りましたね』
選太「……! う、うるさいな! たまにはたくさんゲームをやりたい日だってあるんだよ!」
選太「せっかくのハイスコアをどうしてくれる!」
喪黒『どうやら、あなたはゲーム……いえゲームセンターにのめり込みすぎてしまったようですね』
選太「そ、そうだよ! それのなにが悪い!」
喪黒『でしたら、昔ながらのゲームセンターの雰囲気をとことん味わっていただきましょう』
喪黒『とことんね』
選太「あ、あああ……あああああ……」
55: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/09/05(火) 01:49:52.690 ID:04g1MHrR0.net
喪黒『ドーン!!!』
選太「うぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
ああぁぁぁぁぁ……
…………
……
選太「うぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
ああぁぁぁぁぁ……
…………
……
58: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/09/05(火) 01:54:22.138 ID:04g1MHrR0.net
……
…………
ピキューン ズガガガガッ ピキューン ズガーンッ
選太「くそっ! また調子が悪くなっちまった!」
「おい、おっさん」
選太「くそっ! このっ! 連射連射!」
「おっさん」
選太(さっきからうるさいな!)
「いつまでやってんだよ。そろそろ替わってくれよ」
選太「うるさい、邪魔だ! すっこんでろ!!!」バシッ
…………
ピキューン ズガガガガッ ピキューン ズガーンッ
選太「くそっ! また調子が悪くなっちまった!」
「おい、おっさん」
選太「くそっ! このっ! 連射連射!」
「おっさん」
選太(さっきからうるさいな!)
「いつまでやってんだよ。そろそろ替わってくれよ」
選太「うるさい、邪魔だ! すっこんでろ!!!」バシッ
59: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/09/05(火) 01:57:31.210 ID:04g1MHrR0.net
不良「あ……?」
選太「え……」
不良「おいてめえ、今誰に向かってすっこんでろっつったんだ? あぁん?」グイッ
選太「ひっ……!」
不良「おい、もう一度いってみろよ」
選太「いや、さっきのは……つい……ゲームにのめり込みすぎて……」
不良「おーい、みんな来てくれ」
ゾロゾロ…
リーゼント「おう」
学ラン「どしたどした?」
選太「え……」
不良「おいてめえ、今誰に向かってすっこんでろっつったんだ? あぁん?」グイッ
選太「ひっ……!」
不良「おい、もう一度いってみろよ」
選太「いや、さっきのは……つい……ゲームにのめり込みすぎて……」
不良「おーい、みんな来てくれ」
ゾロゾロ…
リーゼント「おう」
学ラン「どしたどした?」
62: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/09/05(火) 02:00:54.299 ID:04g1MHrR0.net
不良「このオヤジがよー、オレにすっこんでろってほざきやがったんだよ」
不良「しかも、オレの手を振り払いやがったんだぜ」
リーゼント「マジで? ずいぶんイキってるオヤジじゃん」
学ラン「こういう奴はヤキいれてやらねぇとな」
古井「やるなら外でやってくれよー」
不良「へーい」
不良「じゃ、オモテ出ろや。たっぷり可愛がってやるよ」パキポキ…
選太「あ、あ、あああ……!」
不良「しかも、オレの手を振り払いやがったんだぜ」
リーゼント「マジで? ずいぶんイキってるオヤジじゃん」
学ラン「こういう奴はヤキいれてやらねぇとな」
古井「やるなら外でやってくれよー」
不良「へーい」
不良「じゃ、オモテ出ろや。たっぷり可愛がってやるよ」パキポキ…
選太「あ、あ、あああ……!」
63: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/09/05(火) 02:04:03.284 ID:04g1MHrR0.net
……
…………
ピーポーピーポー… ピーポーピーポー…
野次馬A「さっき救急車で運ばれたサラリーマン見たか? ひっでえもんだ」
野次馬B「ああ……顔面は血まみれ、手足だけじゃなくあちこちの骨が折れてたな」
野次馬A「多分ここらを縄張りにしてる不良グループと揉めたんだろうな」
野次馬B「今時あそこまでやるヤンキーがいるとはねえ。くわばら、くわばら」
喪黒「……」
…………
ピーポーピーポー… ピーポーピーポー…
野次馬A「さっき救急車で運ばれたサラリーマン見たか? ひっでえもんだ」
野次馬B「ああ……顔面は血まみれ、手足だけじゃなくあちこちの骨が折れてたな」
野次馬A「多分ここらを縄張りにしてる不良グループと揉めたんだろうな」
野次馬B「今時あそこまでやるヤンキーがいるとはねえ。くわばら、くわばら」
喪黒「……」
64: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/09/05(火) 02:07:32.949 ID:04g1MHrR0.net
喪黒「だから、のめり込みすぎてはいけない、といったのに……」
喪黒「かつての非行少年達はゲームセンターを溜まり場にしていることが多かったですからねぇ」
喪黒「しかし、昔ながらのゲームセンターの雰囲気をこれ以上ないほど味わうことができたのです」
喪黒「痛い思いはしましたが、芸夢さんもきっと満足してらっしゃるのではないでしょうか」
喪黒「オ~ッホッホッホッホッホ……」
―おわり―
喪黒「かつての非行少年達はゲームセンターを溜まり場にしていることが多かったですからねぇ」
喪黒「しかし、昔ながらのゲームセンターの雰囲気をこれ以上ないほど味わうことができたのです」
喪黒「痛い思いはしましたが、芸夢さんもきっと満足してらっしゃるのではないでしょうか」
喪黒「オ~ッホッホッホッホッホ……」
―おわり―
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