炭酸抜きコーラ「――って、驚いてる場合じゃねえ！　助けねえと！」

おじや「そりゃそうだわ」

バナナ「急がないと！」

炭酸抜きコーラ「コーラをぶつけてやる！　コーラシャワー！」ﾌﾞｼｭｩｩｩｩｩ

少年「うわっ！」ｸﾞﾗｯ

おじや「ロープを切るわ。梅干しショット！」ﾊﾞｼｭｯ

ズバッ！

バナナ「男の子のクッションになるよ！」ｻｻｯ

ドサッ……



メガネ「ほう、コンビネーションですか……たいしたものですね」

炭酸抜きコーラ「助けたはいいけど……生きてるか？」

少年「うう……」

炭酸抜きコーラ「よかった、生きてるみたいだ！」

おじや「ほっとしたわ」

バナナ「坊や、喋れるかい？」

少年「う、うん……」



メガネ「ほう、救助成功ですか……たいしたものですね」

少年「ノド……かわいた……」

炭酸抜きコーラ「だったらオレを飲みな」

少年「……」ｸﾞﾋﾞｸﾞﾋﾞ

少年「おいしい！」


メガネ「ほう、炭酸抜きコーラですか……たいしたものですね」

メガネ「炭酸を抜いたコーラはエネルギーの効率がきわめて高いらしく、
　　　　レース直前に愛飲するマラソンランナーもいるくらいです」


少年「へぇ～」

炭酸抜きコーラ「ボウズ、なぜ死のうとしたんだ？」

少年「ボク、学校でいじめられてて……」

少年「ずっと我慢してたんだけど、耐えられなくなって、縄跳びのロープで首を吊ろうと……」

メガネ「ほう、いじめですか……許しがたいものですね」

バナナ「お父さんやお母さんに相談しなかったのかい？」

少年「お父さんもお母さんも今大事な時期だから、相談できなかったんだ……」

炭酸抜きコーラ「だったら、こうして出会ったのもなにかの縁」

炭酸抜きコーラ「オレらがいじめっ子どもに天誅を下してやるぜ！」

おじや「悪党退治だわ」

バナナ「このまま放っておけないからね！」

―小学校―

ガキ大将「いやぁ～、今日もあいつをいじめまくってスカッとしたぜ！」

ガキ大将「あいつ、泣きながら逃げてったけど、どうしてっかなぁ～？」

手下A「まさか自殺してたりして……」

手下B「もし死んじまったら、さすがにヤバイんじゃないすか？」

ガキ大将「関係ねえよ。むしろ武勇伝にしてやろうぜ！」

アハハハ……　キャハハハ……



炭酸抜きコーラ「この外道どもがァ！」ｼｭﾜｧｧｧｧｧ

炭酸抜きコーラ「てめえらに天誅を下しにきたぜ！」

ガキ大将「な、なんだこのコーラは！？」

炭酸抜きコーラ「コーラシャワー！」ｼｭﾊﾞｧｧｧｧｧ

ガキ大将「ギャアアッ！　コーラが目と鼻に入っ――ゲホッ、ゴボッ、ゲボォォォォォッ！」


おじや「梅干しショット！」ﾊﾞｼｭｯ

手下A「ああああ～っ！　よだれが止まらない～っ！」ﾄﾞﾊﾞﾊﾞﾊﾞﾊﾞ


バナナ「ボクで滑ってしまえ！」ﾇﾙﾝｯ

手下B「グギャア！」ｽｯﾃﾝ

炭酸抜きコーラ「いいか、今度いじめなんかやったら、こんなもんじゃ済まさないからな！」

炭酸抜きコーラ「次はメントスコーラ地獄に溺れさせてやるぜ！」

ガキ大将「ひゃ、ひゃいっ！　ごめんなさいっ！」ｹﾞﾎｹﾞﾎｯ

手下A「もうしません！」ｼﾞｭﾙｼﾞｭﾙ…

手下B「あ、頭が痛い……」ｽﾞｷｽﾞｷ…



メガネ「ほう、改心させましたか……たいしたものですね」

少年「あいつら泣いて土下座して謝ってたよ！　……どうもありがとう！」

炭酸抜きコーラ「へっ、礼をいわれるようなことじゃねえや！　ほんの息抜きってやつだ」

おじや「そういうことだわ」

バナナ「困ってる人がいたら助けるのは当然のことだからね」

少年「でもこのままじゃ、ボクの気が済まないよ。よかったら、ボクんちに来てよ！」

少年「晩ご飯ぐらいご馳走したいからさ」

炭酸抜きコーラ「オイオイオイ」

おじや「いただくわ」

バナナ「ディナー」



メガネ「ほう、恩返しですか……たいしたものですね」

―少年の家―

少年「ただいまー」

母「ううっ……」ﾖﾛﾖﾛ…

少年「お母さん！？」

母「ゴホッ、ゴホッ……お、お帰り……」

少年「すごい熱だ……！」



メガネ「ほう、風邪ですか……こじらせると大変ですね」

おじや「風邪か……こういう時はオレらの出番だわ」

バナナ「うん！」


メガネ「特大タッパのおじやとバナナ、これも速効性のエネルギー食です。
　　　　しかもウメボシもそえて栄養バランスもいい」


母「いただきます」ﾓｸﾞﾓｸﾞ

母「あら、おいしい！　このおじや、柔らかさが丁度いいわぁ～！　いくらでも食べれちゃう！」

母「さらに、梅干しのすっぱさとバナナの甘さが絶妙なハーモニーをかもし出してる！」

母「一口食べるたびに、体の中に元気がみなぎってくるわ！」

母「すっかり回復したわ！」ｼｬｷｰﾝ

少年「よかったー！」

炭酸抜きコーラ「オイオイオイ」

おじや「回復早すぎるわ」

バナナ「コイツ」

母「おかげで助かりました。今晩は泊まっていって下さいな」

炭酸抜きコーラ「そうさせてもらうぜ！」ｼｭﾜｧｧｧ

父「ただいまー」

少年「お帰りなさい！」

母「お帰りなさい、あなた」

炭酸抜きコーラ「お邪魔してます」ﾍﾟｺｯ

父「おや、お客さんが来てるのか、どうぞごゆっくり」

炭酸抜きコーラ「お前のお父さん、かなり体が引きしまってるな」

おじや「大した鍛え方だわ」

バナナ「アイツ」

少年「お父さんはマラソンランナーなんだ」

少年「しかも、オリンピック代表候補なのさ！」

少年「枠はあと一つで、お父さんはあと一人に入れるかどうかってところなんだけどね」

少年「ライバルの選手も手強いしさ」

メガネ「ほう、マラソンランナーですか……たいしたものですね」

メガネ「フルマラソンはエネルギーをきわめて消費するらしく、
　　　　レース途中でリタイアするランナーも出るくらいです」

バナナ「さっきいったお母さんもお父さんも大事な時期ってのはそういうことだったのかい」

少年「でも……」

母「あなた、また脅迫状が届いてたわ」

父「脅迫状？」


『今度のオリンピック代表選考会を辞退しろ。さもなくばお前には死あるのみだ』


母「やっぱり警察に届けた方がいいんじゃない？」

父「大丈夫だよ、こんなのただのイタズラさ」

父「こんなイタズラに気を病んで、調子を落としたら大変だからね」

父「俺ももう年だ。次のオリンピックがラストチャンスになるかもしれないから……」

母「うん……」

次の日――

父「さて、朝のジョギングに出かけるかな」

炭酸抜きコーラ「ついてっていいか？」ｼｭﾜﾜﾜ

父「もちろんいいとも！　大勢で走る方が楽しいからね」

炭酸抜きコーラ（昨夜、ボウズからこのオヤジさんが脅迫されてることを聞いた）

おじや（だとすると、いつ犯人から狙われるか分からないわ）

バナナ（ボクらがそれとなく護衛しないと……）

メガネ「ほう、ボディガードですか……たいしたものですね」

ﾀｯﾀｯﾀ…

父「はっ、はっ、はっ」

炭酸抜きコーラ「オイオイオイ」

おじや「疲れたわ」

バナナ「アツイ」

メガネ「もうすぐ10kmになりますね」

ﾀｯﾀｯﾀｯﾀｯﾀ…



シュッ！！！

おじや（殺気！？）

おじや「梅干しショット！」ﾊﾞｼｭｯ


バチッ！　ｶﾗﾝ…


炭酸抜きコーラ「ナイスおじや！　飛んできた矢を梅干しで撃ち落とした！」

父「これは……！」

メガネ「ほう、クロスボウの矢ですか……危険なものですね」

炭酸抜きコーラ「おっさん、やっぱりあの脅迫は単なるイタズラなんかじゃないぜ！」

おじや「犯人は本気だわ」

バナナ「やっぱり警察に相談した方が……」

父「……」

父「うん……大きな騒ぎにはしたくなかったが、仕方ない」

父「家に戻ったら、警察に通報しよう」



メガネ「ほう、素直に助言を聞き入れましたか……たいしたものですね」

―少年の家―

父「ただい……」

父「――――！？」


覆面「ふへへへ……あんたにゃ選考会を辞退してもらうぜ！」

少年「お、お父さん……」

母「あなた……」

覆面「辞退しねえと、こいつらをブッ殺しちまうぜ～？」


父「くっ……！」

炭酸抜きコーラ「オイオイオイ」

おじや「危険だわ」

バナナ「アイツ」

炭酸抜きコーラ（だが、オレたちが動くコーラだとは思ってないハズ……！）

炭酸抜きコーラ「コーラシャワー！」ﾌﾞｼｬｧｧｧｧｧ

おじや「梅干しショット！」ﾊﾞｼｭｯ

バナナ「バナナ・トラップ！」ﾇﾙﾝｯ

覆面「うわっ、あぶねえ！」

覆面「なんなんだ、こいつらは！？　――オラァァァッ！」

ドカッ！　バキッ！　ドゴッ！

炭酸抜きコーラ「ぎゃふっ！」

おじや「いでえわ！」

バナナ「ぎゃあっ！」

覆面「くっそ！　まさかコーラやおじやが攻撃してくるなんて……！」

父「み、みんな！」

覆面「どりゃ！」ﾌﾞｵﾝｯ

バキィッ！

父「ぐあっ！　足を……！」

覆面「ひひひ、クリーンヒット！　これでどのみちフルマラソンなんざ走れねえ！」



メガネ「ほう、大ピンチですか……私の出番ですね」

メガネ「キャオラッッッ！！！」

ドドドドッ！！！

覆面「ぐぎゃあああああっ！！！」




炭酸抜きコーラ「正中線四連突き！？」

おじや「あんなもん写真でしか見たことねえわ」

バナナ「メガネさん、あんなに強かったんだ……」

少年「お父さん、大丈夫！？」

母「しっかりして！」

父「ぐっ……！」


おじや「警察には通報しといたわ」

メガネ「どうやら覆面の男は金で雇われただけのようですね」





ライバル「……」ｺｿｯ

ライバル「ちっ、あいつめ、高い金払ったのにしくじりやがって……」

ライバル「まぁいい、あの足じゃ満足に走れまい……俺の五輪代表入りは確実だ！」

選考会当日――

―会場―

父（この大会で優勝しないと、オリンピック代表にはなれない）

父（しかし、足が……！）ｽﾞｷｯ

父「この足では、優勝どころか、完走すらできるかどうか……」ｽﾞｷｽﾞｷ…



炭酸抜きコーラ「心配するな！」

おじや「オレたちがいるわ」

バナナ「さ、走る前に食事しちゃってよ！」

父「どれどれ……」ｸﾞﾋﾞｸﾞﾋﾞ

父「こ、これは！？」


メガネ「ほう、炭酸抜きコーラですか……たいしたものですね」

メガネ「炭酸を抜いたコーラはエネルギーの効率がきわめて高いらしく、
　　　　レース直前に愛飲するマラソンランナーもいるくらいです」

メガネ「それと特大タッパのおじやとバナナ」

メガネ「これも速効性のエネルギー食です。しかもウメボシもそえて栄養バランスもいい」

メガネ「それにしても、レース直前だというのにあれだけ補給できるのは、
　　　　超人的な消化力というほかはない」


父「よし……と――」

父「痛みが消えた！　体力もマンタンだ！」ｼｬｷｰﾝ

父「これならフルマラソンを余裕で走り切れるぞ！」

炭酸抜きコーラ「オイオイオイ」

おじや「回復早すぎるわ」

バナナ「コイツも」



メガネ「ほう、夫婦そろって回復が早いのですか……たいしたばけものですね」

レース開始――

パァン！

父「うおおおおおっ！！！」ﾀﾀﾀﾀﾀｯ

ライバル「な、なんだとォ！？」ﾀﾀﾀﾀﾀｯ

ライバル（バカな……こいつは足を怪我してるはず！　なぜこんなに早く走れる！？）

ライバル（しかもあんなハイペースで走って失速しないなんて……！）



炭酸抜きコーラ「レースが始まったってのに、どこ行くんだよ？」

バナナ「トイレ！」ｽﾀｽﾀ

ライバル「ハァ、ハァ……くそっ、こうなったらどんな手を使っても一位を取ってやる！」

ライバル「まず、あいつに近づいて、怪我を負わせて――」


バナナ「トイレ、トイレ～」ﾇﾙﾇﾙ


ライバル「な、なんでこんなところにバナナが！？」ﾂﾙｯ

ライバル「ぐはっ！」ｺﾞｯ

ライバル（ぐ……汚い手段でライバルを蹴落とそうとした報いか……）ｶﾞｸｯ…



バナナ（ボク、知～らない！）

少年「お父さん、いっけーっ！」

母「あなた、頑張ってーっ！」



父「ああ……このペースなら優勝できる！」ﾀｯﾀｯﾀ…

父（炭酸抜きコーラ、おじや、バナナ……ありがとう！）

父（ラスト１キロ！）

父「ハァ、ハァ、ハァ……」ﾀｯﾀｯﾀ…

父「よーしっ！　やったーっ！！！」

実況『日本記録を更新してダントツ優勝です！　同時にオリンピック出場を決めました！』


少年「やったーっ！　お父さんが優勝だーっ！」

母「おめでとう、あなた！」


炭酸抜きコーラ「オイオイオイ」

おじや「すごいわ」

バナナ「アイツ」

メガネ「ほう、オリンピック出場ですか……たいしたものですね」







おわり