海未「ふふふん…ふふっ」

絵里「やけにご機嫌ね」

にこ「そうなのよ。そうなんだけど、そこじゃなくて」

穂乃果「絵里ちゃん。海未ちゃんをよく見て？」

絵里「え〜…あら〜…」

穂乃果「分かった？」

絵里「随分と短く切ったわね、前髪」

穂乃果「でしょ？」

にこ「あれ、どう思う？」

絵里「いや…可愛いと思うけど」

にこ「そうなんだけど。それにしても短くない？」

絵里「そう…ね」

にこ「失敗よね？」

絵里「どうなのかしら？気分転換とかじゃないの？」

穂乃果「海未ちゃんって子供の頃から一度も髪型変えた事なかったんだよね」

にこ「気分転換であんなコケシみたいにしないでしょ」

絵里「わ〜…コケシって…酷っ」
　
穂乃果「その言い方はないよ」

にこ「なっ…あんただって、失敗したのかな〜とか言ってたじゃない」
　
穂乃果「それはそうだけど。海未ちゃんってああ見えて繊細な所あるじゃん？」

にこ「あんたよりはね」

穂乃果「にこちゃんよりもだよ」

絵里「いちいちお互いに突っかからないの」

穂乃果「とにかく海未ちゃんは意外と繊細だから、変に突っ込むと落ち込んじゃいそうなんだよね」

にこ「でも、なんであんなご機嫌な感じなのよ？」

穂乃果「そうなんだよね。それが不気味だよね」

絵里「不気味って」

穂乃果「だってさ、これでもかってくらいルンルンじゃん？あんなご機嫌なの一年に一回あるかないかだと思うよ」

にこ「って言うか教室とかではどうだったのよ？」

穂乃果「いつも通りだよ。ただ、周りはザワザワしてたけど、海未ちゃん全然気がつかないし、自分からは何も言わないし。…普通さ！！！あれだけ髪切ったら言うよね？」

にこ「あれじゃない？強がってるんじゃない？」

穂乃果「強がってる？」

にこ「そうよ。機嫌良いふりして、失敗してない風にしてるのよ」

絵里「まさか。にこじゃあるまいし」
　
にこ「じゃあ、どう説明するのよ」

絵里「それは…」

にこ「よしっ！穂乃果！聞いて来なさい」

穂乃果「え！！？なんで、私が？」

にこ「なんでって幼馴染でしょう」

穂乃果「それ関係ある？」

にこ「ある。だから、聞いて来て」

穂乃果「む、無理だよ。なんて聞くの？」
　
にこ「髪切ったの？って」

穂乃果「そんな直接的に？」

絵里「ご機嫌ね〜とかは？」

にこ「それよ！」

穂乃果「絵里ちゃんまで〜どさくさに紛れて私に聞きに行かせようと…」

絵里「そう言う訳じゃ」

にこ「いいからGO！！」

穂乃果「も〜なんで私が…海未ちゃ〜ん」

海未「ん？なんですか？」

穂乃果「あのさ…今日、随分とご機嫌と言うか…様子が…なんかあった？」

海未「分かっちゃいましたか？」

穂乃果「う、うん」

海未「実は欲しかった登山グッズが手に入って。ずっと、お小遣いをやりくりして購入したんです！ふふっ」

穂乃果「そ、それだけ？」

海未「はい。そうですが？」

穂乃果「あれ〜…ちょっと待ってね」

にこ「なんで戻って来るのよ」

穂乃果「狭い部室なんだから聞こえてたでしょ？どうする？」

にこ「どうするって」

海未「どうしたんですか？」

穂乃果「だから、海未ちゃんが髪切ったかって…え？」

海未「髪…」

穂乃果「髪…切った？」

にこ「聞けたじゃない」

絵里「事故みたいなものだけど」

海未「……」

穂乃果「あの…」

海未「……わ、わかりますか〜？」

穂乃果「う、うん」

海未「イメチェンしてみました〜！」
　
穂乃果「そ、そうなんだ」

にこ「に、似合ってるわよ！」

海未「…やっぱり変ですか？」

穂乃果「変って言うか…変じゃないよ。ただ…思い切ったな〜と思って」

海未「前髪が？」

穂乃果「うん…」　

海未「……」

穂乃果「あの…可愛いよ！あの、ほんと！」

海未「………」

穂乃果「前髪…が…短くなったなと」

海未「………」

穂乃果「え？海未ちゃん？あの…可愛いよ？ね？」

絵里「え、ええ。そうね」

にこ「うん。可愛い可愛い。雰囲気だいぶ変わったけど、可愛い！」

海未「雰囲気変わりました？」

絵里「そうね〜ちょっとだけ幼く見えるかな。海未は普段大人びてるからギャップに感じるわね」

海未「そうですか。ギャップ」

にこ「そうそう。それに前髪なんてすぐに伸びてくるから気にする必要ないわよ」

海未「え？」

絵里「バカっ…」

海未「やっぱり変ですか？」

にこ「いや…そうじゃなくてかっこ

海未「いえ。いいんです。自分でも分かってましたから。鏡見てこけしみたいだなぁって思ってましたから」

穂乃果「いや…そんな事ないって」

にこ「そうよ。こけし可愛いじゃない」

穂乃果「そうそう。可愛いよ、こけし。伝統あるし。いつまでも守っていきたいよね。伝統」

にこ「それに…ほら！海外でも人気あるってテレビでやってたわよ！こけし」　

海未「こけし…」

穂乃果「あの…ほら！にこちゃん見てみなよ！左右で髪の長さ違うじゃん？みんなこんなもんなんだよ」

にこ「私のはお洒落でやってんのよ」

穂乃果「え？そうなの？」

にこ「怒るわよ」

絵里「あのね、二人とも…」

ガチャ

花陽「遅くなりま……」

穂乃果「花陽ちゃん！！！」

花陽「あっ、用事を思い出したので…」

にこ「なんで逃げようとするのよ！！！！」

花陽「だって、だって、なんか空気が…」

穂乃果「今、空気をおかしくしたのは花陽ちゃんだよ」

にこ「そうよ。責任取りなさいよ」
　
花陽「えぇ…そんな…」

にこ「さあ。こっち来なさい」

絵里「花陽…」

花陽「絵里ちゃん…海未ちゃ………海未ちゃん！！！！！！？」

海未「そんな反応しなくても…」

にこ「あ〜あ、やったわね〜花陽」

花陽「え？えぇ…いや…海未ちゃん」

海未「いいんです。変でしょう？こけしみたいでしょう？」

花陽「いや…あの…えぇ…変じゃないよ。こけし…可愛いし」

穂乃果「花陽ちゃん。その件もうやった」

花陽「え…」

絵里「あのね、海未。本当に変だとは思ってないの。ただ、ちょっと驚いただけで。どうして、急に前髪短くしたの？」

海未「それは…美容院で長さを揃えて貰ってる最中にくしゃみをしてしまって…誤ってザックリと…」

絵里「なるほど。そう言う事」

穂乃果「あ〜…怪我なくて良かったね」

海未「そうですね。なので、こんな髪型に」

穂乃果「あの…そりゃあ、ちょっと切り過ぎたのかなとは思ったし、海未ちゃん何事なかったかの様に過ごしてるから、私達もリアクションに困ったのは事実なんだけど。でも、変だとは本当に思ってなくて」

にこ「そうそう。それに、綺羅ツバサも同じくらいじゃない？あの、A-RISEと同じなのよ！ね？」

絵里「そうね。ね？」

花陽「うん。私も本当に可愛いと思う。確かに少し切り過ぎたのかなって思ったけど。でも、本当に食べてしまいたいなって思うくらい可愛いなって思ったよ」

穂乃果「え？」

にこ「は？」

海未「食べてしまいたい？私をですか？」

花陽「え？あっ、違うの」

穂乃果「そんな風に見てたんだ…」

花陽「違う、違うの。あの、お腹…お腹空いてて。間違えて…可愛くて抱きしめたいって言おうと思ったの」

にこ「じゃあ何？ずっと、お腹空いたな〜早く話終わらないかな〜って思いながら聞いてたの？」

花陽「違うの…」グゥゥゥゥゥ

穂乃果「素直なお腹だね」

花陽「うぅ…誰か助けてぇぇぇぇ」

ガチャ

凛「かよちんが困ってる気がしたにゃ！」

花陽「凛ちゃん」

絵里「凄いタイミングで来たわね」

凛「なんか、かよちんに呼ばれた気がして」

にこ「凄いわね、あんた」

凛「え？本当にかよちん困ったの？」

花陽「困ってたって言うか」

海未「いいんですよ、花陽」

花陽「あの…海未ちゃん。さっき言った事は本当に思ってて」

海未「私を食べたいと？」

花陽「そっちじゃなくてぇ。可愛いって」

凛「ん？あっ、海未ちゃん、髪の毛切ったんだね」

海未「あっ、は、はい」

凛「ふいんき変わったね！」

海未「そうですか。雰囲気変わりましたか…」

凛「うん！とっても可愛いにゃ」

海未「ありがとうございます…」

凛「あまり嬉しそうじゃないね」

海未「だって…こんなに短くなって…」

凛「凛だって髪の毛短いよ？ま〜凛は可愛いくないけどさ」

海未「いえ、凛のはショートカットですし。とても可愛いですよ。私のは…こけし…」

凛「え〜海未ちゃん可愛いって。ね？」

穂乃果「うんうん。本当に可愛いよ。もう、真似したいくらいだもん」

凛「ハサミあるよ！」

穂乃果「ほら！ハサミもあるし…ハサミ？」

凛「真似したいって言ったから」

穂乃果「いや…でも、ハサミ…それはほら？髪を切るハサミじゃないし」

凛「にこちゃんいつも持ってるよね！一式」

にこ「いや、あるけど」

穂乃果「なんでそんなもの持ち歩いてるの」

にこ「たまに切り揃えたくなるから」

凛「ほら！」

穂乃果「ちょっと待って！なんで、切らせようとするの」

凛「穂乃果ちゃんが言ったんだよ。真似したいって」

穂乃果「言ったけど…じゃあ、凛ちゃんも可愛いって言ったじゃん」

凛「言ったよ」

穂乃果「じゃあ、同じくらい短くしても…」

凛「いいよ〜。にこちゃんハサミ貸して」

にこ「え…」

凛「も〜このハサミでいいや」　　

にこ「あっ…」

絵里「ちょっ、凛」

海未「やめてください、凛」

凛「えいっ！」

ジョキ、ジャキ

にこ「ば、バカ…何してんのよ…髪は女の命でしょ」

花陽「凛ちゃん…」

海未「な、なぜそんな事を」

凛「海未ちゃんとお揃いにしたかったからだよ。どう？可愛い？」

花陽「可愛い…可愛いけど…凛ちゃん」

にこ「バカ…何もそんな適当に切らなくても」

穂乃果「……にこちゃん。ハサミ貸して」

にこ「え？穂乃果？」

海未「穂乃果？」

穂乃果「凛ちゃんがしてるのに幼馴染の私がお揃いにしてないのは、なんだか嫌だ」

海未「へ、変な意地を張らないで下さい」

穂乃果「意地じゃないもん。私がそうしたいんだもん」

花陽「……私も！私もお揃いにします！」

にこ「ちょっ、あんた達ね。いい加減に」

海未「そうです。もう、いいですから。私は気にしてないので」

穂乃果「嫌だ。切るったら切る」

絵里「はあ…じゃあ、私が綺麗に揃えてあげるから、座りなさい」　

海未「絵里…」

絵里「だってもう、言い出したら聞かないでしょう？自分で切るより、私が切り揃えた方がまだいいから」

穂乃果「ありがとう、絵里ちゃん」

絵里「じゃあ、ほら。座って。凛も」

凛「え？凛も？」

絵里「そうよ。綺麗に揃えてあげるから」

凛「は〜い」

絵里「じゃあ、ほら。座って。凛も」

凛「え？凛も？」

絵里「そうよ。綺麗に揃えてあげるから」

凛「は〜い」

穂乃果「で、絵里ちゃんとにこちゃんはどうする？」

絵里「え？」

にこ「へ？いや…」

数分後

ガチャ

希「う〜遅くなったぁ」

穂乃果「うわっ、切りすぎた」

にこ「え？嘘でしょ？嘘でしょ？どんだけ切った？」

絵里「うわぁ」

希「なにしてるん？」

真姫「なんか知らないけど。皆んなで前髪短く揃えるんですって」　　

希「え〜…楽しそう！ウチも混ぜて〜」

真姫「これ…私達もやらなきゃいけないのかしら？絶対に嫌なんだけど」

ことり「うへへ…みんな可愛いよぉ」

真姫「……私だけはしっかりしてなきゃ」

おわり