猫俺（　　…なくなるのか…）


飼い主「やっぱ家の中でスプレー行為されても嫌だしさー」

友「わかるわかる。あれ臭いきっついんだよな」

飼い主「だからそれが始まる前に　　しなきゃね」


猫俺（そんな……）ぴょんっ


飼い主「あっ！　ちょっとどこいくの！！」

猫俺「　　がなくなるってことは…子供が残せなくなる…」

猫俺「にゃおおおん、そんなの嫌だ」

猫俺「♂として生まれたからには、一度くらいは…一度くらいは」

飼い主「ちょっとまちなさい！　逃げちゃだめ！！」



猫俺「飼い主の元から離れて１日…腹が減った…」

美猫「みゃ～お」

猫俺「あっ…美猫さん…」

美猫「元気ないね。どうしたの」

猫俺「お、俺…来月　　されるっぽいです…」

美猫「そうなんだ。まぁあなた飼い猫だものね」

美猫「いまは多いらしいよ」

美猫「私の姉弟で人間に引き取られた子も避妊されてみたいだもん」

猫俺「うう…」

美猫「つらいけどしかたないわよ」

美猫「そのかわりあなたは餌をたっぷりもらって、快適な寝床があって、いっぱい撫でてもらえるでしょう？」

美猫「　　はその対価ね」

猫俺「そんな……誰も飼ってくれなんて頼んでないのに」

美猫「そう思うならしばらく放浪して野良猫生活をしてみたら？」

美猫「まぁ飼い猫のあなたにたえられるものじゃないとおもうけどね」

猫俺「やってやりますよ」

猫俺「このままおとなしく　　とられるわけにはいきません」

美猫「がんばってにゃ」

猫俺「……と、ところで美猫さんは…えっと発情ｋ」

美猫「？」

猫俺「ぁ、ぃぇ。なんでもないです」

猫俺「こうして俺の野良猫ライフが始まった」



猫俺「あー腹減った……」

猫俺「いつもならとっくにフードを腹いっぱいもらってる時間だなぁ…」

猫俺「…なんか食いもん…」


婆「あら、見かけない顔だねぇ」

猫俺「にゃ」

婆「首輪してるわねぇ。どこかの猫さんかしら」

猫俺「にゃご、にゃご…」

婆「お腹すいてるのかしらねぇ…」

婆「あらそうだわ。お昼につくった焼き飯がのこってわね」

婆「ちょっとまってなさいね」

猫俺（なぬ？　餌くれるのか？）


婆「ほら、しっかりお食べ」

猫俺「……にゃー」

猫俺（なんだこれは？　食えるのか？　人間の食い物か？）

猫俺（カリカリしてなさそうだな…臭いはうまそうだが…）ｸﾝｸﾝ

猫俺（ええい空腹にはかえられん）

猫俺「んまぐっ、んまぐっ、んまぐっ」

婆「あらあらよかった。すごい食べっぷりねぇ」

婆「けどよその子猫に勝手に餌あげて大丈夫かしら？」

婆「迷子だったら大変ねぇ」

婆「どう？　うちで少し休んでいかない？」

猫俺「にゃ？」

婆「今日はお天気も崩れそうだし。おいでなさいな」

猫俺「知らない家だ…」ｷｮﾛｷｮﾛ

猫俺「……」


老猫「ぬ…」

猫俺「あっ……お、お邪魔します」

老猫「誰にゃ貴様は」

猫俺「お、俺は…えっと」

婆「だめよ喧嘩しちゃ。今日は仲良くね」

婆「私はご町内で捜索願いがでてないか掲示板を見てくるわね」

老猫「何をしに来た」

猫俺「いえ…ちょっとおばあさんに連れられて…」

老猫「帰れえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ！！！」

老猫「ここは１５年間ワシの縄張りじゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ！！！」

猫俺「ひぃぎゃああああああ！！！」


老猫「今すぐ出ていかんとワシの爪と牙で八つ裂きにしてやるからの」

猫俺「ひっ、ひっ、ひっ」

老猫「いますぐ失せろおおおおおおおおおおおおおおおお！！！」

猫俺「ひ～～～～～！！！」

猫俺「怖かった…あんな爺さんなのに」

猫俺「どうしよう。天気がわるくなってきた」

猫俺「どこかで雨宿りしなきゃな…」

猫俺「飼い主の家の中なら雨にこまることなんてなかったなぁ…」

猫俺「いやいや。あそこには絶対に戻らないぞ。　　とられてたまるかってんだ」


猫俺「お、この軒下なんて良さげだな」

黒猫「……あ？」

黒猫「にゃんスかあんた。ここ俺の縄張りなんスけど」

猫俺「あ……」

黒猫「へぇ。元飼い猫ねぇ。満足な暮らししてたんじゃねぇの」

黒猫「顔も腹もたぷんたぷんじゃないの。良いもん食ってたんだろ」

猫俺「でもでも、飼い主ったら俺のこと　　するって」

黒猫「　　ねぇ…そういや、野良でもたまに　　されてるやついらぁな」

黒猫「人間につかまっちまうとよ、どっか連れてかれてひどい目に合わされるらしいんだ」

黒猫「最悪殺されて二度ともどってこれねぇ」

黒猫「人間は時々餌をくれるが、あんまり心を許さないようにして気をつけな」

猫俺「あんた野良猫なのに詳しいんだな」

黒猫「俺はここらの事情通だからな」

黒猫「餌のとれる場所から盛り場までなんでも知ってるぜ」

黒猫「とりあえず、雨が止むまでここにいろよ」

黒猫「そんで人間との暮らしってもんを俺に教えてくれよ」

猫俺「あ、うん…いいよ」


猫俺「こうして俺にも猫の友達が出来た」

黒猫「雨がやんだな」

猫俺「じゃあ俺いくよ…色々ありがとう」

黒猫「おう、またあおうぜ」

黒猫「で、例の場所はしっかり覚えたか」

猫俺「うん。一度行ってみる」

黒猫「ご武運を」



猫俺「近くに猫達の盛り場があるらしい」

猫達「そこへいけば俺も　　ができるかも！！」

猫達「もしかしたら美猫さんがいたりして…うへへ」

-公園の茂み


猫俺「ここかぁ…」

猫俺「うわ、野良猫がいっぱいだ」

猫俺「みんなここで　　して子供を産むんだな」


美猫「にゃ？　あら、君は…」

猫俺「美猫さん！」

美猫「にゃー、元気そうね。野良生活はどう？」

猫俺「た、大変ですけど。結構たのしいです。いろんなところ歩き回れるし、空気は綺麗だし」

美猫「ふふ、そっか。それはよかったねぇ」

ボス猫「おいガキ」

猫俺「！」

ボス猫「俺の美猫になにちょっかいだしてやがる…」

猫俺「え……い、いや…」

猫俺（やばい…なんて迫力だ…あのときの老猫よりずっとでかいぞ……）

ボス猫「てめぇごら。失せろや」

美猫「ちょ、ちょっと。まだ子猫よ」

ボス猫「うるせぇんだよ！　ここは俺のシマだ！　俺の認めた猫以外の立ち入りを禁ずる！」

ボス猫「なにしにきやがった？　あ？」

猫俺「……」

ボス猫「ガキのくせにいっちょまえにサカってやがるのか」

ボス猫「おい美猫に手だそうとしてたんならここでぶっ殺して食っちまうぞ！」

ボス猫「野郎ども…」

手下猫「へい。ボス」

猫俺「……」ｶﾞｸｶﾞｸﾌﾞﾙﾌﾞﾙ




猫俺「う、うぅ……ぁ…死ぬ…」

美猫「ごめんね……これが野良の世界なの」

美猫「これに懲りたら飼い主さんのもとに戻りなさい。次は半殺しではすまないわよ」

美猫「せめて、カラスに見つからない場所にうつしてあげる」

美猫「傷がなおったらすぐ立ち去りなさい」

猫俺「…うにゃ」ｺｸｺｸ

美猫「じゃあね」



猫俺「これが外の世界か…」

猫俺「美猫さん…きっと今頃…あのボス猫と…」

猫俺「ううっ、うう……」

猫俺「俺の　　は一体なんのために…」

人間A「お、いたいたこいつらが通報にあったドブ猫どもだ」

人間B「よーし、捕まえるぞ」

人間C「ったく。ゴミ箱や民家を荒らしてばっかり」

ボス猫「や、やべぇ全員逃げろ！」

手下猫「ひぃ！　人間たちだ！　逃げろ！」

人間A「待ちやがれ！　害獣は全部殺処分してやる！！」

ｶﾞｼｬﾝ　


猫俺「あいつらみんな捕まっていく…」

猫俺「あぁ！　美猫さんまでっ」

人間A「こ、ここにも嫌がったか。死にかけてんなぁ」

人間A「よーし保健所おくり……っとあぶねぇあぶねぇ、こいつ首輪してやがる」

人間A「んだよ飼い猫かよ」

猫俺「にゃ…」

人間A「じゃあ無視だな。おい他探すぞ」

人間B「うーっす」


～回想～

　　飼い主「はい、ちょっと苦しいけどこれつけようね」
　
　　猫俺「嫌にゃー！！苦しいにゃー！！！」

　　飼い主「だめだよ、これがないとお外に行っちゃった時つかまっちゃうからね」
　　飼い主「あなたのお守り」

猫俺「にゃぅぅ…」

猫俺「帰るにゃ…あったかい家にかえって飼い主になでなでしてもらいたい…」

猫俺「お腹すいた…」


黒猫「よぉ、心配で様子をみにきたら、ひでぇザマだな」

猫俺「にゃあ、ボロボロだ」

黒猫「よし、俺についてこい。帰り道くらいなら外敵からまもってやるぜ」

猫俺「ありがとう…」

黒猫「これでも数少ない友達だからな」

黒猫「俺にも昔は友達がいっぱいいたぜ」

黒猫「けどみーんないなくなっちまった」

黒猫「飢えて死んだり、冬を越せなかったり、人間につかまったり」

黒猫「死に方は猫それぞれだ」

黒猫「けど家猫のお前は違うだろう？」

黒猫「こんなところで惨めにくたばっちゃいけねぇよ」

猫俺「にゃ…お前の言うとおりかもしれない」

猫俺「俺って恵まれてたんだな」

黒猫「そうさ。お前らなんて、外で暮らす俺らを見下すくらいの気持ちでいりゃいいんだよ」

猫俺「たった数日なのに厳しい世界だったな」

猫俺「顔も尻尾もボロボロだ…」

黒猫「顔の傷は野良猫の勲章だぜ」

猫俺「あのボス猫たち、どうなるにゃ？　美猫さんもつかまっちゃったにゃ」

黒猫「俺が仲間に聞いた話だと」

黒猫「運がよければ、また野良にもどってこれるらしい」

黒猫「けどそんときは子供をうめない体になってて。耳の一部がちょん切られてるってよ」

黒猫「それが人間たちのつくったルールなんだろうよ」

黒猫「戻ってこれなかったやつは知らねぇ」

猫俺「……にゃ」

猫俺「家の中にいても外にいても、人間のルールに従って俺たちは生きるんだな」

黒猫「それも自然の掟さ」

黒猫「どの世界でも強いやつらがルールを決めるんだ」

黒猫「じゃあここからは一人で行けるか？」

猫俺「ありがとう黒猫。元気でやれよ」

黒猫「たまに餌でももってきてくれ…ってお前はもう一生家ン中で暮らすんだったな」

猫俺「ごめんにゃ」

猫俺「……ただいまにゃ。あけてほしいな」ｶﾘｶﾘ

飼い主「……！　クロベェ！　も～～～心配した！！」

飼い主「なにやってたのよ！」

猫俺「にゃぅぅ…」

飼い主「ほんと心配したんだから…あなたはうちの子なんだからね」

猫俺「……」

飼い主「生傷だらけじゃない…」

猫俺「にゃぅぅ」

飼い主「よしよし、がんばったんだね」

飼い主「とりあえず、先に動物病院いきましょうね」

猫俺「……は？　あそこは嫌にゃあああああああああ！！」

猫俺「でっかい犬とか他の猫とかいっぱいいるにゃああああああああ！！　へんな臭いするにゃああああああああ！！」

猫俺「注射いやにゃあああああああああああああ！！　ふおおおおおおおおおおおお！！」

飼い主「こらっ！　暴れない！　あんたが勝手に逃げ出したからこんなことなってるんでしょうが！」

飼い主「あとあんた超ばっちいからお風呂も入るよ！！」

猫俺「ああああああああああああああああああああそれだけはああああああああ」


猫俺（でもこんなわがまま言っても生きていけるのは飼い主のおかげだにゃ…）

猫俺（外の世界では満足に何もできなかった）

　

～１ヶ月後


猫俺「寒くなってきたにゃ」

猫俺「黒猫のやつ大丈夫かなぁ。いまごろ震えてなければいいけど」

猫俺「けどあいつはなんでもしってるから、きっと暖かい場所もわかってるはずだな」

猫俺「それより…　　のあった場所が痒いにゃ……」ﾍﾟﾛﾍﾟﾛ

猫俺「　　はされちゃったけど、これで俺も一人前の飼い猫にゃ…」

猫俺「でも…一度くらいは可愛いメス猫と…くすん」


飼い主「ただいま～♪」

猫俺「あ！　飼い主！！」ぴょんっ

飼い主「ふふふ」

猫俺「な、なんか臭いがするにゃ…」

猫俺「その箱はなんにゃ」

飼い主「気になるね～？　これはね～」

飼い主「じゃ～ん、今日から家族がふえまーす」

飼い主「仲良くしてくれるといいんだけどなー」


美猫「まぁ～お」

美猫「あら、なんか嗅いだことある臭いだとおもったら」

猫俺「！！！」

飼い主「この子もうすぐ保健所で殺処分されるところだったんだけど」

飼い主「ギリギリ間に合ってうちで引き取ることになったから、これからよろしくね」


美猫「あなたの飼い主様だったんだ？　顔すりすりばっかりしてきて、へんな人よね」

猫俺「にゃ…にゃっ、美猫さん…」

美猫「私が主様の寵愛をうけても嫉妬しないでね？　先住猫くん。よろしく」

猫俺「にゃお～～ん♥」ｽﾘｽﾘ

美猫「うざ…あなたも飼い主に似てるのね」


飼い主「あらら、ふたりとも避妊手術したのにラブラブね。よかったぁ」

飼い主「これから３人仲良く暮らしましょうね」

猫俺「みゃぉぉぉお！！」

猫俺（　　がなくても俺は幸せにゃん！）


おわり