璃奈「真面目な話、かすみちゃんのソロライブシーンはあとで絶対あるから。心配しなくていいと思う」

かすみ「うぅ……でもせっかくの沖縄だったのにぃ……最高のロケーションで踊るかすみんがぁ……」ｼｸｼｸ

璃奈「沖縄もいいけどかすみちゃんは真打ちなんだから。もっと凄い場所でライブできるよ」

璃奈「ほら、優勝特典はドームって言ってたでしょ？」

かすみ「……ホントに？　かすみんがドームに立てるって、そう思う？」

璃奈「立てるよ。だってかすみちゃんだもん」

かすみ「……だよね。そうだよね。世界一カワイイかすみんなら、きっとスクールアイドルGPXだって余裕で優勝できるよね！」

璃奈「うんうん。その通り」

かすみ「何万人ものファンに囲まれて歌うかすみん……。いやぁー、今から胸が高まっちゃいますねぇ！！」ﾜｸﾜｸ


璃奈「あれ？　でもその場合、今回はソロでの競争だから……私がドームに立てなくなる？」

かすみ「……そうなるのかな？」

璃奈「ごめん。やっぱり今のはなかったことに。璃奈ちゃんボード『私が天に立つ』」

かすみ「そりゃないよりな子ぉぉぉ！！！」

璃奈「でもかすみちゃん、歌わなかったのに9位まで行ってた」

璃奈「それは素直にスゴいと思う。璃奈ちゃんボード『パチパチ』」

かすみ「嬉しいけど……でも動物さんたちの力みたいなものだったしなぁ」

璃奈「きっかけは動物バズだったとしても、みんなちゃんとかすみちゃんの魅力に気づいたから投票したんだよ」

かすみ「えへっ。だよねぇ」ﾃﾚﾃﾚ

璃奈「うん。かすみちゃんは自分のために策を練ると、まあ基本的にはうまく行かなくて、面白い結果になることが多いけど」

かすみ「りな子？」

璃奈「でもそういう頑張り屋さんで憎めないところも、かすみちゃんの魅力の一つだって思う」

璃奈「それにかすみちゃんは、誰かのために動いちゃう人だから」


璃奈「口ではよく自分のためって言うけど」

璃奈「自分のライブのことも忘れて、ランジュさんとお母さんを仲直りさせたみたいに」

璃奈「結局はいつも自分より仲間のことを考えちゃう。かすみちゃんはそんな人」


璃奈「だからかすみちゃんはみんなに愛されるんだと思う。そんなかすみちゃんに、みんな惹かれるんだと思う」

璃奈「私もそんなかすみちゃんのことが、好き」

かすみ「……………………」

璃奈「かすみちゃん？」

かすみ「……い、いやー、ですよね！そうですよね！！///」

かすみ「りな子の言う通り、かすみんがとってもカワイくていい子だから、みんなメロメロになっちゃったわけですよねぇ！！！////」

かすみ「さすがかすみん！！！　世界一カワイイスクールアイドルはダテじゃないですねぇ！！！！/////」

璃奈「めちゃくちゃ照れてるかすみちゃん、かわいい。璃奈ちゃんボード『ニヤニヤ』」

かすみ「照れてないっ！！！！」ｶｧｰｯ


かすみ「……あれ？　でもかすみん、ランジュママに突撃した時って配信してなかったよね？」

かすみ「投票してくれた人たちは、かすみんが裏でも頑張ってたこと知らないはずじゃ」


璃奈「………………」

かすみ「……はっ。つまりかすみんの隠しきれなかったいい子オーラが、みんなをメロメロに」

璃奈「いや、やっぱりかすみちゃんは動物パワーと面白さで勝ち上がったってことで」

かすみ「なんでさっきからハシゴ外そうとしてくるの！！？」

璃奈（ちゃんとかすみちゃんをカワイイって言ってるコメントもあったけどね）

璃奈「それはそうと、私の出番全然なかった。璃奈ちゃんボード『しょんぼり』」

かすみ「いやいや。そんなこと言って、次はりな子の出番いっぱいあるでしょ」

かすみ「ミア子が今回のランジュ先輩みたいなポジションだとして、りな子もセットっぽいじゃん」

璃奈「そうかな？　ミアちゃんと私の時代来るかな？　璃奈ちゃんボード『そわそわ』」

かすみ「来るかは知らないけど……愛先輩のことはいいの？」

璃奈「璃奈ちゃんボード『両手に花』」

かすみ「その発言はよくないと思うし、次は本当に愛先輩とミア子が二人とも揃ってるから笑えないんだって」

璃奈「それを言ったら愛さん視点でも私とミアちゃんが揃ってる。あえて自分で言うと、両手にロリ」

かすみ「……りな子がそれでいいなら……いや、やっぱよくないよ？それ」

璃奈「あの金髪の人がミアちゃんのお母さんってことだよね？」

かすみ「そうじゃない？　ランジュ先輩のママさんと仲良さそうだったし」

璃奈「ミアちゃんとは仲良いのかな？」

かすみ「どうなんだろう……？　やっぱり一悶着あるのかなぁ」

璃奈「ミアちゃんって家族にコンプレックスあるし、そういう話なのかな」

かすみ「ミア子はミア子なんだし、気にしすぎだと思うんだけどなぁ」

璃奈「かすみちゃんはそういうコンプレックスはなさそうだよね。普通の家庭っぽいし」

かすみ「かすみんが普通って言うか、他のみんなが金持ち過ぎなんだってばぁ！！」

かすみ「しお子やしず子やりな子はもちろん、歩夢先輩たちもしれっといいマンション住んでるし！！」

かすみ「案の定、ランジュ先輩のママさんもすっごい金持ちだったし！！」

璃奈「まぁ、それは前からわかってた」


璃奈「ランジュさんのお母さん」

かすみ「？」

璃奈「どうなることかと思ったけど、言葉が足りないだけでいい人だったね」

かすみ「そだね」

璃奈「沖縄に行った他のみんなのことも話そう」

かすみ「いいよー」


璃奈「しずくちゃんの曲、すごく元気いっぱいだった。掴みはバッチリ」

かすみ「……最初の頃のしず子は、『先手必勝！』とか言い出す子じゃなかったはず……」

璃奈「しずくちゃんがあんなに弾けるようになったのって、かすみちゃんがきっかけじゃなかった？」

かすみ「いや、あの時のかすみんもしず子がここまではっちゃけるとは思ってなかった……はず」

璃奈「何にしても、ありのままの自分でいられるって、すっごくいいことだと思う」

かすみ「彼方先輩は、いつも通り欲張りさんでしたねぇ」

璃奈「遥さんとの仲も良好みたいで、生き生きしてたね」

かすみ「生き生きしすぎて宇宙まで飛び出しちゃってたけど」

璃奈「あくまでMVのイメージ映像だけど、それくらいやりたいことで心が溢れてるんだって伝わった。全部叶うといいね」


かすみ「そういえば彼方先輩としず子、いつになく絡みが多かったけど……まさかそういう戦略！？」

璃奈「仮にそうだとしたら、誰の発案だと思う？」

かすみ「…………しず子？」

璃奈「かすみちゃんもしずくちゃんのこと、そういう風に思ってるじゃない」

璃奈「エマさん、初めて会った子たちをあっという間に仲直りさせてた。すごい」

かすみ「エマ先輩、癒し系ーみたいな顔して意外と押し強いよね。もちろんいい意味で」

璃奈「うん。それがエマさんの良さや強さだと思う。誰かを癒すことに対してすごく積極的」

かすみ「ランジュ先輩にもガンガン行ってましたねぇ。ホテルでランジュ先輩を引き留めてくれなかったら、どうなってたんだろう……」


かすみ「で、その仲たがいしてたスクールアイドル……天さんと」

璃奈「小糸さん」

かすみ「そうそう。言いたいこと言えて仲直りできて、めでたしめでたし！だね。思ったよりいっぱい怒ってたけど」

璃奈「素直に感情をぶつけられるって、いいことだよ。それがしたくてもできない人だっているんだから」

かすみ「りな子がそういう事を言うと重いんだってば」

璃奈「うん、わかってて言った」

かすみ「今さらだけどランジュ先輩も、最初の頃とは全然イメージ違うよね」

璃奈「そうだね。でも実は最初から、強い人に見えるけど寂しがり屋だった。仲間を求めてた」

かすみ「勘違いだったけど、ヒイキされた状態でかすみんたちと戦いたくないなんて熱いこと言ってくれるじゃないですか」

璃奈「でもその勘違いのせいで、かすみちゃん達スイートルーム逃してなかった？」

かすみ「…………かすみんは聞き分けがいい子だから。それくらいのことじゃ悔しがらないから」

璃奈（そうかな？）

かすみ「本人も驚いてたけど歩夢先輩、ランジュ先輩にめちゃくちゃ一目置かれてたんですねぇ」

璃奈「うん。確かに歩夢さんは自分の事を普通って言うけど、誰よりも挑戦してる」

かすみ「スクールアイドルを広めるために、外の国に旅立った……言われてみればかすみんにもなかった発想ですね」

璃奈「かすみちゃんの場合、自分のかわいさを広めるために世界に旅立ちそう」

かすみ「おっ、わかってるじゃんりな子～」

璃奈「やるしかないね、かすみちゃん地球一周ファンミツアー。璃奈ちゃんボード『レッツゴー』」

かすみ「いきなり規模大きすぎない？　まずは日本から制覇しないと！」


璃奈「ところであの侑さんぬいぐるみ、何？」

璃奈「わざわざ家から持ってきたの？　というか売ってるの？」

かすみ「何？って言われても。ぬいぐるみはかわいかったけど」

璃奈「侑さんも重……凄いよね。あの電話から即決即断で荷物まとめて沖縄まで来ちゃうなんて」

かすみ「それももう今さらだって」

璃奈「――ふぅ」

璃奈「色々振り返ってみたけどみんなが楽しそうで、それにみんなの魅力がいっぱい詰まっててよかった」

かすみ「ま、魅力って話なら一番はやっぱりかすみんだけどね」

璃奈「それは甲乙つけがたいかな」

かすみ「えぇー、そこは即答してよりな子ぉー」ﾌﾞｰﾌﾞｰ


璃奈「みんなのライブも、いろいろな観光地も見れて、満足した。璃奈ちゃんボード『にっこりん』」

かすみ「うんうん」




璃奈「いろいろなところを巡って」

璃奈「色んな人と出会って」

璃奈「美味しそうなものいっぱい食べて」

璃奈「ステキなことも楽しいことも、いっぱいいっぱいあって――」

璃奈「きっと、あのかすみちゃんたちにとっても忘れられない思い出になっただろうね」






璃奈「ねっ、かすみちゃん」

かすみ「そだねー」

璃奈「次は、私の番」

璃奈「私は――あの天王寺璃奈は」

璃奈「どこに行って、どんなライブをするんだろう？」

璃奈「私も今から楽しみ。璃奈ちゃんボード『ワクワク』」

かすみ「いやぁー、期待が高まりますねぇー」




かすみ「でもさぁ」

璃奈「？」

かすみ「なるべく思わないようにって、ずっと頑張ってたんだけどさぁ」

かすみ「やっぱり言っていい？」

璃奈「いいよ」

かすみ「私も」

璃奈「………………」







かすみ「　――――――　私゛も゛！！！　」




かすみ「　行゛き゛た゛か゛っ゛た゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛！！！！　沖゛縄゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛！！！！　」ﾌﾞﾜｯｯｯｯ

かすみ「青い海やお魚さんたちに囲まれて、ライブしたりさぁ！！！」


かすみ「たくさんのスクールアイドル達と、お友達になったりさぁ！！！」


かすみ「色んなとこ観光したり！！！美味しいビュッフェ食べたり！！！民宿料理食べたり！！！」


かすみ「ランジュ先輩のママさんのでっかいお肉食べたり！！！！！」

璃奈（あ、やっぱりそれ入るんだ）




かすみ「“あっち”のかすみんばかりいい思いして、ズルいよぉぉぉぉぉ！！！！！」

璃奈「かすみちゃん。どうどう」

かすみ「うぅ……泊まりたかったよぉ……スイートルームぅ……」

璃奈「それは“あっち”のかすみちゃんたちも泊まってないから」




璃奈「仕方ないよ。ここにいる私たちと“あっち”の私たちは、同じだけど違うんだから」


璃奈「どこにいても私は私で、かすみちゃんはかすみちゃんだけど」




璃奈「私たちは『あの子』と出会い、彼女たちは『侑さん』と出会った」

璃奈「たとえ同じ人格をもった同じ人間でも、まったく同じ道を辿ることはない」

璃奈「違う人と出会って、違う歌を歌って、違うライブをして、」

璃奈「そしてきっと――違う結末を迎える」


璃奈「それがマルチバース。彼女たちは、私たちの別の可能性なんだよ」




かすみ「でも……それってさ？」

かすみ「ひょっとしたら私たちだって、沖縄とか行けたかもしれないし、ドームにだって立てたかもしれないってことだよね？」

璃奈「…………それは」

かすみ「りな子は何も思わないの！！？」

かすみ「きっと“あっち”のりな子もこの後、どっかいい所を観光して、美味しいもの食べて、すっごいライブするんだよ！！？　いいの！！？」

璃奈「……私だって。何も思わないことはない」

璃奈「でも、私たちが“あっち”の私たちを羨ましく思うように」

璃奈「“あっち”の私たちがこの世界の私たちのことを知ったら、きっと羨ましがると思うんだ」


かすみ「“あっち”から、羨ましく思われるようなことってあるの？」

かすみ「私には――“あっち”のかすみんの方が、キラキラまぶしく見えちゃうのに」

璃奈「あるよ。例えば、」

璃奈「数えきれないくらいたくさんの衣装を着て、ライブできた」

璃奈「沖縄じゃないけど島で合宿したり、薫子先生の運転でみんなで遠出したり、ステキな思い出だっていっぱいあるし」

璃奈「お台場のお祭りの準備だって、とっても楽しかった」

璃奈「このままずっとこんな日が続けばいいのに、って思うくらいに」


璃奈「それにμ'sやAqoursの人たちと、いっぱい仲良くなれた」

璃奈「何より、この世界の同好会のみんなと出会えた。私だけの、大切な仲間」

璃奈「みんなの力で、私たちのスクールアイドルフェスティバルを作り上げることができた」




璃奈「そして――『あの子』と、私たちが出会えた。深い深いキズナを作れた」

璃奈「いろいろと、大変なこともあったのは事実だけど」

璃奈「それでも私たちの日々だって、“あっち”の私たちに負けないくらい輝いてた」

璃奈「私たちだけが感じることができるトキメキが、間違いなくあった」


璃奈「私は、私たちが過ごしてきた日々を、私たちの世界を誇りに思う」


璃奈「だから私は、彼女たちを羨ましがることはやめた」

璃奈「私と同じで違う私を、“あっち”の天王寺璃奈のことを、影ながら見守ることにした」




かすみ「……それが、りな子の結論ってこと？」

璃奈「うん」

かすみ「かすみんはね。『かすみん』が世界一かわいいスクールアイドルだって証明したいの」

璃奈「うん。知ってる」


かすみ「かすみんは、りな子みたいにキレイに割り切れないけどさ」

かすみ「もし“あっち”のかすみんが、スクールアイドルGPXで世界一かわいいスクールアイドルになれたら、」

かすみ「かすみんが――『私』がずっと信じてきた私は、何一つ間違ってなかったんだ――って」

かすみ「そう言うことになるのかな？」




璃奈「そうだよ。だって、同じかすみちゃんなんだから」

かすみ「……はぁ。仕方ないなぁ」


かすみ「なら私も、“あっち”のかすみんを応援しないわけにはいかないよね」

かすみ「あんなに頑張ってるんだから。ちょっと美味しい思いするくらい、大目に見てあげるとしますか」


璃奈「私も『天王寺璃奈』がもっともっとたくさんの人と繋がれるように、“あっち”の私を応援する」

璃奈「もちろんかすみちゃんや、他の同好会のみんなのことも」

璃奈「それに忘れてない？　かすみちゃん」

かすみ「？」




璃奈「私たちの物語だって、まだ続くよ。続いてるんだよ。そうでしょ？」




かすみ「――そっか、羨ましがってる場合じゃなかったね。私も頑張らないと」

かすみ「マルチバースだって、ぜーんぶかすみんのワンダーランドにしちゃうんだから！」

璃奈「そう、その意気だよ。璃奈ちゃんボード『フレーフレー！』」

かすみ「やっぱりりな子は凄いね。いつだって冷静で」

璃奈「そんなことない。ただ感情が出せないだけ」

かすみ「ごめん」

璃奈「いいよ、気にしなくて。璃奈ちゃんボード『無問題ラ』」




璃奈「“あっち”の私のお母さんは、どんな人なんだろうな」

かすみ「………………」

璃奈「いい人なのかな」

かすみ「だったらどうする？」

璃奈「………………」


璃奈「よかった、って思う」

かすみ「そっか。きっとそうだよ」

璃奈「うん」

にじちず時空

かすみ「でも、やっぱりかすみんも沖縄行きたかったなぁ」

璃奈「まだ言ってる」

かすみ「だってぇ～」

璃奈「かすみちゃんがそこまで言うなら、一個手段がないでもない」

かすみ「おっ？なになに？」






璃奈「私たちが“あっち”の私たちに成り代わるスイッチを作っ

かすみ「はーい！この話しゅーりょー！！」


終