1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/10(水) 00:03:55.87 ID:MolQL9rh0
初投稿です。

~居酒屋~

P  「・・・・・・」

ちひろ「・・・何か問題でも?」

P  「いえ・・・」


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2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/10(水) 00:15:51.70 ID:MolQL9rh0
ちひろ「冷めますよ?早く食べましょう」

P  「いやそうなんですけど・・・はい」

ちひろ「お腹いっぱいなら私食べますよ」

P  「いや食べますよ」

物事の結果というものには全て過程というものがある。まったくもってその通
りだと思う。

私が今居酒屋で、向かいに座ったプロデューサーの唐揚げにレモンをかける、こんな些細な行為、些細な嫌がらせにも

れっきとした理由があることに、向かい合ったプロデューサーは気づくことができるだろうか。


3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/10(水) 00:32:23.11 ID:MolQL9rh0
~事務所・今日の昼~

ちひろ「今日、飲みにでも行きませんか?」

P  「ええ、まあ、いいですけど」

ちひろ「良かった、何時ごろがいいですか?」

P  「今日の仕事が七時にテレビ局で終わりですから、そのあとならいくらで
も」

ちひろ「了解です。で八時、駅前のいつもの居酒屋で。」



なるべく簡潔に。されど丁寧に。業務の上でプロデューサーと接するときに心
がけている大事なことだ。

プロデューサーと仕事の上で一緒にいる時間は長い。彼が他のアイドルと接す
る時間ばかり目立っているような気がする、

というよりかは実際そうなんだけど、それでも「時間」だけなら私と接してい
る時間が一番多いだろう。

そんな大事な時間に、慣れ慣れしくしすぎるのもどうなのかと思って、彼との
そこそこの距離感というものを探しつつ

今に至っている。


4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/10(水) 00:53:55.35 ID:MolQL9rh0
~テレビ局前・午後7時過ぎ~

P  「・・・びっくりした」

ちひろ「・・・びっくりしました?」

P  「そりゃもう。だっているんですもの、ちひろさんが」

ちひろ「いちゃいけませんか?」

P  「そういう訳では、でも8時に居酒屋って」

ちひろ「8時に居酒屋を予約しただけです。別にどこ集合だとかは言っていま
せん」

P  「ああ、そういう・・・」

ちひろ「さっ、行きましょう。本日もお仕事お疲れ様でした。」



ただ、そんな距離感を気にしなければいけないのも仕事中のみ。そういうこと
にしている。しかし現実的な問題として「ON」の千川ちひろと「OFF」の千川
ちひろの時間配分に大きな問題がある気がする。だってプロデューサーが
「OFF」の私を見ることができる時間は今みたいな時くらいで、その圧倒的時
間差によって今でも二人とも心を開いて話せていない、と思う。少しでも一緒
に「OFF」の状態でいたくて、こうしてテレビ局まで迎えに来ても、彼はどう
も思っていないのかと思うと少し悲しくなる。むしろ迷惑だっただろうか。

・・・私も普段の仕事中からプロデューサーとベタベタしていたい。他のアイ
ドルの子と同じように。そしたらこんな面倒くさい女にならずに済んだのかも
しれないのに。

・・・いつからこんな面倒くさい女になったっけ。

・・・ああそうか。彼のことを好きになってからだ。



・・・面倒くさい女。

5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/10(水) 01:17:05.09 ID:MolQL9rh0
~居酒屋~

ちひろ「ビールでいいですか?」

P  「あー・・・」

ちひろ「飲まないんですか?」

P  「いや、明日も仕事あるしなー、って思って」

ちひろ「別に一杯くらいいでしょう」

P  「それなら・・・まあ」

ちひろ「飲んで疲れをとるのも大事ですよ、後は何にしますか?」

P  「あー・・・じゃあ唐揚げと枝豆」

ちひろ「焼き鳥もお願いします」



居酒屋に来て、飲む気もなかったのかこの男は。びっくりだよ。

プロデューサーの根がまじめな性格が「週の終わりでもないのに酒を飲んじゃ
いけない」という発想に至ったのか。

それとも私とは酒を飲む仲じゃないのか。そんなことを考えてしまうくらい今
日はなんだか弱っている。

一応何回も居酒屋には来ているので、そんなことはないのだけれど、いまだか
つて彼が酔いつぶれたところは見たことない。

酒に強いタイプじゃなさそうなんだけれど。というより酔いつぶれたところが
見たいのだけれど。

思えば半年前くらい、私が調子に乗ってペース配分を間違えて、物の見事につ
ぶれてしまったこと思い出す。

あの時は・・・そうだ。タクシー呼んでくれたっけ。とっても冷静に。・・・
厭味ったらしいほど。

あくまで彼的には、仕事仲間との飲み会。私は・・・もう何をしたらいいのか
わからない。

6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/10(水) 01:26:03.31 ID:MolQL9rh0
~事務所・今日の昼~

ちひろ「今日、飲みにでも行きませんか?」

P  「ええ、まあ、いいですけど」

ちひろ「良かった、何時ごろがいいですか?」

P  「今日の仕事が七時にテレビ局で終わりですから、そのあとならいくらで
も」

ちひろ「了解です。で八時、駅前のいつもの居酒屋で。」



なるべく簡潔に。されど丁寧に。業務の上で千川ちひろと接するときに心がけ
ている大事なことだ。

千川ちひろと仕事の上で一緒にいる時間は長い。僕が他のアイドルと接する時
間ばかり目立っているような気がする、

というよりかは実際そうなんだけど、それでも「時間」だけなら彼女と接して
いる時間が一番多いだろう。

そんな大事な時間に、慣れ慣れしくしすぎるのもどうなのかと思って、彼女と
のそこそこの距離感というものを探しつつ

今に至っている。

14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/10(水) 20:19:33.99 ID:MolQL9rh0
~テレビ局前・午後7時過ぎ~

P  「・・・びっくりした」

ちひろ「・・・びっくりしました?」

P  「そりゃもう。だっているんですもの、ちひろさんが」

ちひろ「いちゃいけませんか?」

P  「そういう訳では、でも8時に居酒屋って」

ちひろ「8時に居酒屋を予約しただけです。別にどこ集合だとかは言っていま
せん」

P  「ああ、そういう・・・」

ちひろ「さっ、行きましょう。本日もお仕事お疲れ様でした。」



ただひたすらに驚いた。ちひろさんが迎えに来てくれているという事実。

もちろん喜ばしいことなのだが、咄嗟には感情にできなかった。

せっかくのチャンス、彼女に「OFF」の自分を見せるチャンス。

それなのに、反応ができなかった。

これじゃあ、いつまでたってもこの距離は変わらないというのに。

自分の本能が、拒否してしまう。

只の仕事上のパートナー。それ以上でもそれ以下でもない距離。

昔はもう少し笑顔で話せたはずなんだけど。

・・・ああ、ちひろさんのことが好きになってからか。



・・・面倒くさい男。


22: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/11(木) 00:26:36.85 ID:NB8/im7Z0
~居酒屋~
ちひろ「ビールでいいですか?」

P  「あー・・・」

ちひろ「飲まないんですか?」

P  「いや、明日も仕事あるしなー、って思って」

ちひろ「別に一杯くらいいでしょう」

P  「それなら・・・まあ」

ちひろ「飲んで疲れをとるのも大事ですよ、後は何にしますか?」

P  「あー・・・じゃあ唐揚げと枝豆」

ちひろ「焼き鳥もお願いします」



自分の仮面を外すのが怖い。

甘い、と言われたらそれまでなんだろうけども、僕にはできない。

コミュニケーションというものが得意なわけではないが、人生の中で

壁は作って生きている気がする。



いつだったか、ちひろさんが酔い潰れた時も、自分の「殻」に隠れた。

それはあまりに本能的だった。

この距離に甘んじている自分が情けない。

23: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/11(木) 00:39:13.08 ID:NB8/im7Z0
~居酒屋~

P  「・・・ちひろさん」

ちひろ「・・・はい?」

P  「・・・怒ってますよね」

ちひろ「いいえ別に」

P  「・・・はあ」

ちひろ「箸、止まってますよ」

P  「大丈夫、大丈夫です」

ちひろ「それは大丈夫じゃない人の大丈夫です」

P  「はあ・・・」

ちひろ「・・・」

P  「・・・すいませんでした」

ちひろ「はい・・・はい?」


24: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/11(木) 00:58:43.57 ID:NB8/im7Z0
P  「本当にすいません!」

ちひろ「・・・ん?」

P  「僕が至らないばっかりに・・・」

ちひろ「・・・どこの話ですか?」

P  「今日って・・・説教なんですよね」

ちひろ「・・・説教」

P  「その・・・最近の・・・こととか」

ちひろ(最近のこと・・・)

P  「至らないこと、やっぱり多かったですよね」

ちひろ「・・・」

P  「反省してます・・・仕事、もっとしっかりやります。・・・僕の仕事が至らないから、今日もテレビ局までついてきて下さったんですよね」

ちひろ(何言ってるんだろう)

P  「できる限り直します・・・どこ直せばいいかわからないですけど、頑張ります、わからないですけど」

ちひろ(ごめん、私もわからない)

26: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/11(木) 01:18:55.53 ID:NB8/im7Z0
P  「というわけで、本当にすいませんでした・・・」

ちひろ「馬鹿なのかなあ!?・・・プロデューサー、思ったより馬鹿だ」

P  「すいません!」

ちひろ「違うだろお!?」

P  「・・・ハゲじゃないです!」

ちひろ「違うだろ・・・」

P  「すいません・・・」

ちひろ「・・・いろいろと言いたいことがあります」

P  「ごめんなさい」

ちひろ「一回黙っていてください!・・・黙って、聞いていてもらえませんか?」

P  「・・・はい」

27: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/11(木) 01:43:16.38 ID:NB8/im7Z0
ちひろ「まず当たり前のことなんですけど・・・仕事のことについて、私は何も文句はありません。
    むしろ感謝しています。こんなに一生懸命な人、馬鹿にするわけないじゃないですか」

P  「はい・・・はい?」

ちひろ「でも・・・すいません、分からないんです。自分でも。どうやって、貴方と接すればいいか。ここのところ、分からないんです。」

P  「・・・それは」

ちひろ「本当に謝らなければいけないのは私の方なんです、多分。私が勝手に、妄想してたんです。・・・あんまり言いたくはなかったんですけど。
    このままだと、誤解を与えたままなんで。」

ちひろ「私が悪いんです。私が勝手に暴走しただけで、勝手に意識しただけだったんです。貴方への恋心を・・・」

P  「・・・?」

ちひろ「私が勝手に貴方のことを好きになって、勝手に意識して、勝手にフラれて、勝手に嫌がらせして、勝手に怒ってるだけです」

ちひろ「それで、まったく態度の変わらないプロデューサーーに勝手に悲しんで、で、勝手に唐揚げにレモンかけて」

ちひろ「あなたが唐揚げなら私はレモンです」

P  「ちょっと何言ってるかわからないです」

28: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/11(木) 02:00:15.78 ID:NB8/im7Z0
ちひろ「私にもわかりません!
    ・・・わかられてたまるかって感じですけど。」

P  「・・・」

ちひろ「・・・というわけです。つまらない話失礼しました。笑って忘れてくれると嬉しいです。」

P  「・・・あの」

ちひろ「今日はもうお開きにしましょうか?明日も仕事が・・・あるんですから」

P  「・・・あの!」

ちひろ「何ですか!変な慰めならマジでいらないんで!」

P  「・・・唐揚げおいしいです。」

ちひろ「・・・はい?」

P  「ですから、唐揚げ、おいしいです。」

ちひろ「・・・酔いました?」

P  「まだ酔ってません。貴方がレモンをかけた唐揚げ、おいしいです。それだけのことです」

ちひろ「酔ってますよね」

P  「知りません。大体、分かりにくいんです。ちひろさんの感情」

ちひろ「・・・」


31: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/11(木) 02:24:11.74 ID:NB8/im7Z0
P  「普通に知りませんでした、というよりかは・・・分かりませんでした。ちひろさんの感情。僕はてっきり僕のこと、仕事上のパートナーとしか
   見てくれてないのかと」

ちひろ「それはこっちのセリフですけど」

P  「そうかもしれないですけど・・・好きです。この流れだから言いますけど。僕、貴方のこと好きです」

ちひろ「・・・!」

P  「でも、こっちも勝手に恋をしてたんだと思ってました。でも、どこかで自分をさらけ出せなかったんです。今の距離に甘んじて。
   だから・・・馬鹿ですよね僕。勝手に傷つけてました。」

ちひろ「・・・本当なんですか?」

P  「本当です。・・・ちひろさん、泣いてます?」

ちひろ「泣いてません、・・・馬鹿すぎますプロデューサー。私と同等の馬鹿です。」

P  「そうかもしれませんね・・・」

ちひろ「大体さっきからちょっとカッコつけてますけど、おかしいですからね?貴方の態度も相当ですから」

P  「いやまあ、本当に申し訳なかったですけど、その点はちひろさんもですよ」

ちひろ「飲み会誘ってもあいまいな返事で、いつもいつも一歩引いたところから話してるみたいなその感じ、これははっきり言って印象悪いです」

P  「良かれと思ってやったんです・・・すいませんでした」

ちひろ「もうやめてください・・・ありのままの自分で話してください」

P  「お互い様です。・・・ありのままの僕、面倒くさいですよ」

ちひろ「見ればわかります(笑)」

P  「(笑)・・・キスしませんか?」

ちひろ「・・・いきなり気持ち悪くなるのやめてもらえませんか?」

P  「半年前、貴方が酔いつぶれた時に我慢したことをやりたかったので
   ・・・僕、こんな感じですよ?」

ちひろ「・・・そういうところも含めて好きになっていきたいです」

P  「そもそも僕唐揚げにはマヨネーズ派なんです」

ちひろ「いきなり由々しき問題ですね」

P  「・・・でも今キスしたら、・・・それはレモン味です」

ちひろ「・・・やっぱり少し嫌いです」











引用元: 千川ちひろ 「プロデューサーさんの唐揚げにレモンをかける」