1: 2018/01/09(火) 14:39:28.09 ID:DtQr2eK+.net
曜「……何言ってんの?」

千歌「ホントだよ。ほら、この歯見てよ」

曜「わ、すごい尖ってる」

千歌「ね。こんなのが生えてるなんて、これはもうひとつしかないよ」

曜「ひとつって?」

千歌「吸血鬼だよ!」

曜「いや、牙が生えてる生き物なんてたくさんいるでしょ」

千歌「うぅ、私はもう人間には戻れなくなってしまったのだ……」

曜「おーい、千歌ちゃーん…………聞いてないし」

2: 2018/01/09(火) 14:40:01.19 ID:DtQr2eK+.net
千歌「よーちゃん!」

曜「わっ」

千歌「今すぐチカから離れるのだ! 傍にいたらキケンだよ!」

曜「はいはい、ふざけるのはそこまでにしようねー」

千歌「って、全然信じてないでしょ!」

曜「私を驚かせようったってそうはいかないよ。どうせ作り物なんでしょ?」

千歌「うぅ……信じてよ。チカだって、ご飯が食べづらくて困ってるのだ」

曜「本当に外せないの? いたずらじゃなくて?」

千歌「だーかーらー、本当のことしか言ってないんだよ!」

3: 2018/01/09(火) 14:40:27.41 ID:DtQr2eK+.net
キーンコーンカーンコーン


曜「やば、先生来ちゃう。その歯、今日は頑張って隠してるんだよ? 笑いさえしなければうまく隠れるみたいだし」

千歌「ふぁーい……」


曜「そういえば、梨子ちゃん来ないね。今日はお休みかな」

千歌「……無理させちゃったのがいけなかったのかも」

曜「何かしてたの?」

千歌「新曲の打ち合わせしてたんだ。結構遅くまで話し込んじゃったから……」

曜「だったら、放課後梨子ちゃんのお見舞いにいこうよ」

千歌「うん、そうする」

4: 2018/01/09(火) 14:40:56.29 ID:DtQr2eK+.net
―――




教師「……で、あるからして」


バキッ


教師「ん? なんの音だ」


千歌「やっば」

曜「千歌ちゃん……?」


教師「……気のせいか。続けるぞ」


曜「千歌ちゃん、今の……」

千歌「アハハ。シャーペン折っちゃった」

曜「嘘でしょ……」

5: 2018/01/09(火) 14:41:23.42 ID:DtQr2eK+.net
―――




ダイヤ「今日、梨子さんは風邪でお休みですわね」

鞠莉「みんな体調管理にはビーケアフルよ」

果南「じゃ、練習始めるよ」


~~~


千歌「よっ、ほっ」

ルビィ「今日の千歌ちゃん、ダンスのキレがいつもと違うような……」

花丸「曜ちゃんや果南ちゃんと同じ……いや、もっとすごいかもしれないずら」

善子「まさか、天界の眷属が憑依したのかしら?」

6: 2018/01/09(火) 14:41:51.74 ID:DtQr2eK+.net
曜「ねえ千歌ちゃん」

千歌「ん?」

曜「家でなんかしてた?」

千歌「いや、特になにもしてないけど」

曜「それにしては……変わりようがすごいというか」

千歌「いやー、なんか体が軽いんだよね」

曜「……吸血鬼になったから?」

千歌「そうかも」

曜「――プッ」

曜「まさか、そんなわけないよねー!」パンパン

千歌「も、もう。よーちゃん、背中叩かないでよー」

7: 2018/01/09(火) 14:42:18.30 ID:DtQr2eK+.net
曜「ほら、練習再開だよ」フワッ

千歌「――っ」


千歌(よーちゃんの匂い、いつもより濃く感じる)

千歌(髪がなびいて、白い首筋が……)ドクン


グイッ


曜「え? 千歌ちゃ……」


ペロッ


曜「ひゃっ!!」

9: 2018/01/09(火) 14:42:46.63 ID:DtQr2eK+.net
果南「ん? どうしたの、曜」

曜「いや……あの……///」カァァァ

千歌「――はっ」

曜「うぅ、千歌ちゃんのバカ……///」


千歌「えっと……何でもない! 何でもないよ、果南ちゃん」

果南「そう? ならいいんだけど」


曜「……ちょっと千歌ちゃん、いきなりなにすんの」ボソボソ

千歌「ごめんね。なんか、無意識だった」

曜「無意識に首舐めるって、それどういう……」ゴニョゴニョ

10: 2018/01/09(火) 14:43:28.28 ID:DtQr2eK+.net
―――


桜内家


千歌「お邪魔しまーす」

梨子「いらっしゃい、二人とも」

曜「ヨーソロー! お見舞いにきたであります」

千歌「体調はどう?」

梨子「うん、今は落ち着いてる。明日は学校に行けそうだよ」

千歌「よかったぁ。昨日無理させちゃったかなって、心配してたんだ」

曜「新曲作りのためとはいえ、無理しちゃダメだよ?」

梨子「うん……でも、どっちかといえば……」

曜「え?」

11: 2018/01/09(火) 14:43:57.00 ID:DtQr2eK+.net
梨子「ほら、最近千歌ちゃん、毎日私の部屋に来てるじゃない」

曜「そうなの?」

千歌「ま、まあ……時々」

梨子「毎日です。千歌ちゃんったら、いつもベランダ飛び越えてくるんだから」

曜「何してんの千歌ちゃん……」

千歌「いやあ、梨子ちゃんが飛び越えられるならいけるかなーって」

梨子「そういう問題じゃないでしょ! 危ないからやめてって言ってるのに」

千歌「でも案外よゆーだよ」

曜「いや、結構距離あるよね?」

梨子「最近の千歌ちゃん、妙にアクロバティックっていうか……」

12: 2018/01/09(火) 14:44:23.70 ID:DtQr2eK+.net
曜「それで、毎日梨子ちゃんの部屋で何してんの?」

千歌「ギクッ」

梨子「……///」

曜「え……なに、その反応」

千歌「えっと……ハグしたりとか、抱っこしたりとか」ボソボソ

梨子「それ以上は言わないで!」

曜「ふーん……私のいないとこで、2人はそんなことしてるんだ」

千歌「だって梨子ちゃんの体、抱き締めると気持ちいいし……」

梨子「千歌ちゃんっ!!///」

13: 2018/01/09(火) 14:45:00.43 ID:DtQr2eK+.net
曜「私、帰る」


千歌「よーちゃん?」

曜「知らないっ、バカ!!」ドタドタ


梨子「……千歌ちゃん、曜ちゃんのこと送ってきて」

千歌「え、でも」

梨子「私のことはいいから。どうせまた夜に来てくれるんでしょ?」

千歌「……うん。わかった」

14: 2018/01/09(火) 14:45:47.10 ID:DtQr2eK+.net
―――




曜「フンだ、千歌ちゃんなんか……」


千歌「――おーい、よーちゃん!」

曜「ビクッ」

曜「ち、千歌ちゃん……何しに来たの?」

千歌「送ろうと思って」

曜「送るって、バス停すぐそこだよ」

千歌「だから、バスがくるまで」

曜「……ありがと」ボソッ

15: 2018/01/09(火) 14:46:12.59 ID:DtQr2eK+.net
曜「あのね、千歌ちゃん」

千歌「ん?」

曜「ああいうの……よくないと思う」

千歌「なんのこと?」

曜「梨子ちゃんと、毎日イチャイチャしてるんでしょ」

千歌「い、イチャイチャなんて……」

曜「嘘。だって梨子ちゃん、あんなに顔真っ赤にしてた」

千歌「うぅ……///」

曜「酷いよ。私には、全然しないくせに……」ボソッ

千歌「――っ」ドクンッ

17: 2018/01/09(火) 14:46:53.74 ID:DtQr2eK+.net
千歌「……チカね。最近なんだか変なんだ」

曜「変?」

千歌「よーちゃんとか、りこちゃんとか……みんなのこと見てるとさ」グイッ

曜「えっ……」


千歌「――なんか、メチャクチャにしたくなるの」


曜「……!」カァァァ///

曜「千歌ちゃん……近いよ」

千歌「よーちゃん」ジィ…

18: 2018/01/09(火) 14:47:20.11 ID:DtQr2eK+.net
ブーッ…プシュッ…


曜(バス来た!)

曜「じゃ、じゃあこれで……」スッ

曜「千歌ちゃん、またねっ!」パタパタ


千歌「またね、よーちゃん」ニコッ


曜(た、助かった……///)

19: 2018/01/09(火) 14:47:47.17 ID:DtQr2eK+.net
―――




千歌「はぁ……」

千歌(私、どうしちゃったんだろ)


志満「――おかえり、千歌ちゃん」

千歌「あ、ただいま~」


美渡「……ちょっと千歌」

千歌「え?」

美渡「口、開けてみな」

千歌「口って……そんな、ダメだよ」

美渡「千歌っ! 大人しくしろ!」グイッ

千歌「は、はひぃ!」カパ…

21: 2018/01/09(火) 14:48:13.38 ID:DtQr2eK+.net
美渡「……やっぱり」

志満「はぁ……だと思ったわ」

千歌「ふぇ?」


高海母「――千歌ちゃん」

千歌「あれ、お母さん。なんで帰って来てるの?」

志満「今朝、スプーンを噛んでダメにしちゃったでしょう。それで確信したの。千歌ちゃんはお母さんの血を濃く受け継いでるんだって」

千歌「お母さんの……血?」

志満「そのことをお母さんに言ったら、すぐに帰って来てくれたわ」


美渡「ねえ千歌。おかしいと思った事はない?」

千歌「なにを……」

美渡「お母さん、いくらなんでも若すぎでしょ」

千歌「あ――」

22: 2018/01/09(火) 14:48:52.78 ID:DtQr2eK+.net
高海母「千歌ちゃん、よく聞きなさい」

千歌「うん」


高海母「お母さんはね……ヴァンパイアなの」

千歌「え……?」


千歌「いや、ちょっと待ってよ。冗談だよね?」

高海母「冗談なんかじゃない、本当のことよ。お母さんは、不老長寿の純血ヴァンパイア。お父さんも知ってるわ」

千歌「そんな……」


高海母「千歌ちゃん、見て。お母さんの歯」

千歌「……!」

高海母「鋭いでしょう? これがヴァンパイアの証。千歌ちゃんにも同じものが生えているはずよ」

23: 2018/01/09(火) 14:49:25.15 ID:DtQr2eK+.net
千歌「で、でも私のは、今朝初めて……」

高海母「千歌ちゃんが成長するにつれて、段々と私の血が濃くなっていったの。それが今、ようやく形となって表れたのよ」

千歌「だったら、どうして志満姉や美渡姉は……」

志満「私たちは血が薄いのよ。だから、ほとんど普通の人と変わらないの」

美渡「千歌と同じ、人間とヴァンパイアのハーフだけどね。まあこれは遺伝的なやつ」


高海母「――お母さんが怖い?」

千歌「……ううん、怖くないよ。だってお母さんだもん」

高海母「よかった」


千歌「あの……私、これからはもう普通の生活はできないのかな」


志満「そんなことないわよ」

千歌「ほんと? 研究所とかに連れていかれない?」

美渡「バーカ。そんなの、私たちがさせないっつーの」

千歌「うぅ……美渡姉……」グスッ

24: 2018/01/09(火) 14:49:56.13 ID:DtQr2eK+.net
高海母「千歌ちゃん。お母さんとの、大事な約束があります」

千歌「約束……?」

高海母「今日から毎日このタブレットを飲むこと」

千歌「なにこれ?」

高海母「血液錠剤よ。1日3回、食事の時に必ず飲みなさい」

千歌「血液……」

高海母「ヴァンパイアとして生きるためには、人間の血が必要です。でも、他人から血を吸うなんてことは絶対に許されないの」

高海母「だからタブレットを飲む必要があるのよ」

千歌「これ飲めばチカ、普通の人になれる?」

志満「……千歌ちゃん。残念だけど、それは無いわ」

高海母「タブレットを飲んだヴァンパイアは、生きるために必要最低限の栄養を補給した状態。歯は元に戻るけれど……吸血衝動を抑えることはできないの」

美渡「欲が湧けば歯もヴァンパイアのものになる。自分の欲求は自分で抑えんのよ」

25: 2018/01/09(火) 14:50:38.84 ID:DtQr2eK+.net
千歌「もし吸っちゃったら……その人も吸血鬼になっちゃうの?」

美渡「やっぱ馬鹿チカだなー。なるわけないでしょ、そんなもん」

千歌「よ、よかったぁ」ホッ

高海母「だからって吸血が許されるわけじゃない。下手をすれば事件にもなるんだから」

千歌「わかった、絶対我慢する」


志満「それにしても、千歌ちゃんがねぇ」

美渡「身体能力とかも私たちよりすごいのよね。正直羨ましいよ」

高海母「ウフフ。お母さん嬉しいわ」

千歌「笑い事じゃないよー!」

26: 2018/01/09(火) 14:51:09.04 ID:DtQr2eK+.net
―――




梨子「おはよう千歌ちゃん」

千歌「おはよう、昨日はよく眠れた?」

梨子「ええ。誰かさんが来なかったおかげでね」

千歌「いや、その……ちょっとごたごたしてて。怒ってる?」

梨子「別に? 怒ってなんかないわよ」

千歌「怒ってるじゃん」

梨子「寂しくなんかありませんよーだ」ベー

千歌「だからごめんってー」

梨子「フンだ。千歌ちゃんのバカ」サラッ

千歌「あ……」ドクン


梨子「……千歌ちゃん? 早く行かなきゃ遅刻しちゃうわよ」

千歌「う、うん」パタパタ

千歌(危なかった……)

27: 2018/01/09(火) 14:51:56.94 ID:DtQr2eK+.net
―――




曜「今日の体育はリレーだって」

梨子「やだなあ……走るの苦手なのに」

曜「大丈夫だよ、いつも散々走ってるからね」

梨子「そうかもしれないけど……」


千歌「よいしょ……んしょ……」

曜「千歌ちゃん、はりきってるねー」

千歌「準備体操しなきゃ怪我しちゃうでしょ」

梨子「さっきしたばっかじゃない」

千歌「念入りにしないとね」

千歌(ホントは、体動かしてないと気が済まないからだけど)

29: 2018/01/09(火) 14:53:51.69 ID:DtQr2eK+.net
―――




梨子「ハッ…ハッ……曜ちゃん!」

曜「梨子ちゃーん、こっちこっち」


梨子「えいっ」

曜「よし、受け取ったであります!」

千歌「いっけー、よーちゃん!」


梨子「――きゃっ!」ザーッ

千歌「りこちゃん!?」


梨子(恥ずかしい……こんな所で転ぶなんて……///)

梨子「いったた……」


よしみ「梨子ちゃん、膝から血が出てる」

いつき「保険室いかなきゃだよ」


千歌「……」ドクン

30: 2018/01/09(火) 14:54:31.80 ID:DtQr2eK+.net
梨子「うん、大丈夫。一人でいけるから」

千歌「……」フラッ

梨子「千歌ちゃん? ごめんね、心配かけちゃ……」


千歌「――っ」カプッ


梨子「えっ!?」

むつ「ひゃー……///」

千歌「ペロッ……ジュルッ……」


梨子「ちちちち千歌ちゃんっ!!?」ドンッ

千歌「わっ」


千歌「あれ……私」

梨子「ち……ち……」

千歌「梨子ちゃん、膝怪我して……ん? なんか砂が口の中に……」


梨子「――千歌ちゃんのバカぁ!!///」

33: 2018/01/09(火) 15:03:38.26 ID:DtQr2eK+.net
―――


保険室



千歌「……はい。できたよ、絆創膏」

梨子「ありがと……」


千歌「じゃあ私、戻るから」

梨子「……」キュッ

千歌「え……ちょっと、梨子ちゃん? 服掴まれてると、戻れないんだけど……」

梨子「なんで、あんなことしたの?」

千歌「あんなことって……」

梨子「私の膝、な……舐めたでしょ……///」ウツムキ

千歌「それは……その……」

千歌(梨子ちゃんに打ち明ける? そんなこと、できるわけないよ)

34: 2018/01/09(火) 15:04:33.49 ID:DtQr2eK+.net
千歌「ほら、よく言うでしょ? 傷は舐めれば治る!」

梨子「……どこの田舎の知識よ、それ」

千歌「えーっと、内浦の?」アハハ


梨子「もういい。二度とあんなことしないで」

千歌「あの……ごめんね。怒ってる?」

梨子「怒ってない」

千歌「怒ってるじゃん……」

梨子「うるさい、早く戻ってよ!」

千歌「……うん」


ガラッ…


梨子「……」モゾッ


梨子「千歌ちゃんのばか……」

35: 2018/01/09(火) 15:12:29.92 ID:DtQr2eK+.net
―――




曜「あの、千歌ちゃん」

千歌「ん?」

曜「梨子ちゃん、大丈夫だった?」

千歌「……うん、大丈夫だよ」

曜「そっか」


~~~

むつ『やばーい! さっきの見た?』

いつき『見ちゃった! 千歌ちゃんが、梨子ちゃんの膝を……///』

よしみ『あの二人、前から怪しいと思ってたんだよねー!』

曜『……ねえ、さっき梨子ちゃんが転んだって?』

むつ『あ、よーちゃん』

いつき『あのねあのね、千歌ちゃんと梨子ちゃんが――』

~~~


曜「……はぁ」

36: 2018/01/09(火) 15:12:59.26 ID:DtQr2eK+.net
千歌「どうしたの、ため息なんか吐いて」

曜「別に」

千歌「なんか梨子ちゃん機嫌悪くてさー。私、なんかしちゃったかな……」


曜「……千歌ちゃんって馬鹿なの?」

千歌「へ?」

曜「吸血鬼の真似事なんかして、周りを困らせて……それってそんなに楽しい?」

千歌「吸血鬼の……真似?」

曜「ふざけないでよ。千歌ちゃんの言動に、一々振り回される私のの気持ち……少しは考えて!」

千歌「よー……ちゃん……」


曜「――はっ」

曜「ごめん……千歌ちゃん」パタパタ


千歌「……」

38: 2018/01/09(火) 15:21:49.82 ID:DtQr2eK+.net
―――




キーンコーンカーンコーン


曜「部活……いかなきゃ」

曜(行く気しないなぁ)


千歌「今日はお休みだよ、よーちゃん」

曜「……千歌ちゃん」


千歌「梨子ちゃん、用事あるからって先に帰っちゃった」

曜「そう……」


千歌「あのね、よーちゃんにお話があるんだ」

曜「話?」

千歌「ついてきてくれる?」

曜「それって、ここじゃできないの」

千歌「うん。よーちゃんにしか話せないこと」

曜「……わかった」

39: 2018/01/09(火) 15:22:26.68 ID:DtQr2eK+.net
―――


部室


千歌「よかった、誰もいないや」

曜「そりゃあ休みだもん。来てる方がおかしいよ」

千歌「みんな真面目だからさー」

曜「それで、何?」


千歌「……吸血鬼のこと」

曜「またそれ? いい加減に……」


ガタッ


曜「――千歌……ちゃん?」

千歌「ねえ、よーちゃん。私、今までこんなに力強かったっけ?」

曜「はな……して……」グイッ

曜(動けない……嘘でしょ?)

40: 2018/01/09(火) 15:24:13.63 ID:DtQr2eK+.net
千歌「今の私は、よーちゃんを完全に力で上回ってる。一晩でこんな風になるなんて、ありえないでしょ」

千歌「見て、この歯。偽物じゃないんだよ」

曜「なんで今まで……」

千歌「詳しい事情は、ちょっと話せないんだ」スッ

千歌「ごめんね、荒っぽい手段しかなくて」

曜「ううん」

千歌「でも……本当だから。信じてほしい」


曜「……わかった。信じるよ」

千歌「ありがと、よーちゃん」ニコッ

41: 2018/01/09(火) 15:32:23.12 ID:DtQr2eK+.net
曜「それで、私は何をすればいいの?」

千歌「うーん……毎日私に血を吸わせてくれるとか?」

曜「うぇぇっ!?」

千歌「……ダメ?」


曜「うぅ……だ、ダメじゃ……ない……///」

曜「けどぉ……毎日吸われたら、私の血が無くなっちゃう……」


千歌「よーちゃん?」

曜「ビクッ」


千歌「フフッ……うっそでーす!」

曜「ふぇ?」

42: 2018/01/09(火) 15:32:57.02 ID:DtQr2eK+.net
千歌「あ、私がヴァンパイアっていうのはホントだよ? でもね、誰かから血を吸うのはお母さんからダメって言われてるんだ」

曜「え……え?」

千歌「フフッ、さっきのよーちゃん、可愛かったなあ」エヘヘ

曜「な……なっ……///」

曜「千歌ちゃんのバカぁっ!!///」パタパタ


曜(もう、何言ってんの私、恥ずかしいよ……///)


曜(千歌ちゃんがヴァンパイア……か)

曜「そっちも、冗談だったらよかったのになぁ」

46: 2018/01/09(火) 15:46:07.27 ID:DtQr2eK+.net
―――




梨子「千歌ちゃん、今なに飲んだの?」

千歌「ビタミン剤だよ」

梨子「ふーん……健康志向?」

千歌「そうそう。チカは健康オタクなのだ」

曜(梨子ちゃんも知らない……私たちだけの秘密なんだ)

曜「えへへ……」

千歌「よーちゃん、なんだか機嫌いいね?」

曜「そんなことないよー」

千歌「梨子ちゃん、その卵焼きもらってもいい?」

梨子「いいわよ、はい」

47: 2018/01/09(火) 15:46:38.28 ID:DtQr2eK+.net
千歌「あーん」

梨子「ふえぇ!?」

千歌「どしたの? いつもやってるじゃん」

梨子「そう……だけどぉ」


~~~


千歌「ペロッ……ジュルッ……」


梨子「ちちちち千歌ちゃんっ!!?」ドンッ

千歌「わっ」

~~~


梨子「自分で食べてっ!///」

千歌「わわっ、危ないなあ」パクッ

千歌「んー、おいひい」モグモグ

48: 2018/01/09(火) 15:55:17.90 ID:DtQr2eK+.net
―――




果南「ワンッ…ツッ……はい、お疲れ様ー」

鞠莉「今日の練習はここまでデース!」

ダイヤ「皆さん、ストレッチは念入りにするように」


曜「……ねえ、千歌ちゃん」コソコソ

千歌「なに?」

曜「太陽の光とか……大丈夫なの?」

千歌「あー……うん、大丈夫じゃないかな。お母さんは平気そうだし、それに私ハーフだし」

曜「そっか……」

千歌「なになに、心配してくれてるの?」

曜「そんなことっ……ないし……」

千歌「へー」クスクス

曜「フン、千歌ちゃんなんか知らない!」


千歌「んっ……ふぅ」

千歌(ちょっと、ヤバい……かも)

49: 2018/01/09(火) 15:55:54.81 ID:DtQr2eK+.net
―――




美渡「は? タブレットをもっと寄こせって?」

千歌「そんな言い方してないじゃん。ただ、もうちょっとさ」

美渡「我慢しなさいって言ってんでしょ。欲求の問題なんだから」

千歌「我慢っていっても……」


千歌(そんなの……無理だよ)


―――




美渡「どう思う、お母さん」

高海母「……ヴァンパイアにとって最大の標的は、美しい女性よ」

高海母「私の場合は、そういう環境を避けてきたから……何とか耐えられてはいたけれど」

高海母「今の千歌ちゃんがどんな状況なのかは、正直予想もつかない」

美渡「千歌……」 👀
Rock54: Caution(BBR-MD5:0be15ced7fbdb9fdb4d0ce1929c1b82f)

52: 2018/01/09(火) 16:07:04.19 ID:DtQr2eK+.net
―――




果南「あれ、千歌は?」

鞠莉「トイレにしては長いわね」

ダイヤ「曜さん、少し様子を見に行ってくださいますか」

曜「うん……」


~~~


千歌「ゴクッ…ゴクッ……ハッ……」

千歌(ダメだ。水なんかじゃちっとも……)


曜「千歌ちゃーん、どこー?」

千歌「よーちゃん……!」

曜「あ、いたいた。どうしたの、練習抜け出して」


千歌「ごめん、ちょっと……近づかないで」

曜「え……?」

53: 2018/01/09(火) 16:07:34.02 ID:DtQr2eK+.net
曜「もしかして今、タブレット飲んでたの?」

千歌「……うん」

曜「ダメだよ、1日3回って決まってるんでしょ」

千歌「そうだけど」


曜「もしかして……血、飲みたいの?」

千歌「――っ」


曜「我慢できないの?」

千歌「あ……ぁ……」ドクンッドクンッ


曜「だったら、私が……」


千歌「よーちゃんっ!」グイッ

曜「あっ……」


曜「千歌ちゃん……」ウットリ

千歌「うぅ……ぐっ」フーッフーッ


曜「――いいよ」


曜「飲んでも、いいよ」

曜「千歌ちゃんなら……構わない」

56: 名無しで叶える物語 2018/01/09(火) 16:17:06.12 ID:DtQr2eK+.net
千歌「ごめん……よーちゃん」

千歌「――っ」カプッ


曜「あっ……ん……」

千歌「チュー…ジュルッ…ゴクッ……」

曜「ん……あぅ……なに……これぇ……」

千歌「ペロッ…ゴクッ…ゴクッ……」

曜「はっ……ぁ……ち……か……」


曜(千歌ちゃんの歯が、首筋に突き刺さって)

曜(体の中の血が、どんどん首筋に集まって、抜き取られていく)

曜(私の全部が、千歌ちゃんに吸い取られていく)


曜(痛いはずなのに……それなのに)

曜(力が抜ける)

曜(頭がボーっとする)

曜(何もかも、全部放り出したくなる)

曜(何も考えたくない)

曜(全てを千歌ちゃんに委ねて)


曜(それがどうして……こんなに気持ちいいの)

58: 2018/01/09(火) 16:21:19.03 ID:DtQr2eK+.net
千歌「ゴクッ…ゴクッ…プハッ……ハァッ…ハァッ……」

千歌「あ……う……よーちゃん?」


曜「ち……か……ちゃん……」グッタリ

千歌「よーちゃん……よーちゃん!」


曜「大丈夫……ちょっと、眠いだけ」

千歌「ごめん……ごめんねっ……!」

曜「少しだけ……寝かせて?」

59: 2018/01/09(火) 16:22:03.22 ID:DtQr2eK+.net
>>57
新作です
似たようなのがあったらすみません

68: 2018/01/09(火) 18:16:34.10 ID:DtQr2eK+.net
梨子「千歌ちゃーん、曜ちゃーん。練習終わったわよー? みんなもう帰って……」

千歌「うぅ……りこちゃん……」グスッ

梨子「え? なに、どうしたの?」

千歌「よーちゃんが……よーちゃんがぁ……!」ウルウル

梨子「曜ちゃん? ちょっと、しっかりして曜ちゃん!」

梨子「大変……救急車呼ばなきゃ!」


~~~

「救急隊です、こちらの方ですね」

梨子「お願いします……曜ちゃんを助けてください……!」


「呼吸脈拍著しく低下。隊長、CPR実施します」

「了解……」

(なんだこの傷は……まるで、吸血鬼にでも襲われたかのような……)

69: 2018/01/09(火) 18:17:02.33 ID:DtQr2eK+.net
―――


病院


梨子「……そう。そんなことが」

千歌「黙ってて、ごめん」

梨子「ううん、仕方ないわ」


梨子「でも曜ちゃんだけじゃなくて、私にも相談してほしかった」

千歌「……ごめんね」

梨子「さっきから千歌ちゃん、謝ってばかり」


千歌「私、最低だ」

千歌「よーちゃんをあんな目に遭わせるなんて……」

梨子「千歌ちゃん……」

千歌「もう、本当に人間じゃないんだね」

70: 2018/01/09(火) 18:17:33.65 ID:DtQr2eK+.net
梨子「――そんなことないわ」ギュッ


千歌「りこちゃん……ダメだよこんな……私、血吸っちゃうよ?」

梨子「いいの」

千歌「私……人間じゃないんだよ。ヴァンパイアなんだよ」


梨子「千歌ちゃんは千歌ちゃんだよ」

千歌「うっ……うぅ……」ギュー

71: 2018/01/09(火) 18:19:41.37 ID:DtQr2eK+.net
―――


1週間後


曜「おっはヨーソロー!」

むつ「あ、曜ちゃん! 大丈夫だった?」

いつき「ずっと入院してたんだってね」

よしみ「ごめんね、お見舞い行けなくて。なんか面会謝絶とか言われてさー」


ザワ…ザワ…


曜「フー、人気者は辛いですなあ」

梨子「はいはい、お疲れ様」

曜「……あれ、千歌ちゃんは?」

梨子「……」

曜「ねえ、どうしたのさ」

梨子「千歌ちゃんは……休んでるわ」

曜「どうして……?」


梨子「あれからずっと部屋に引きこもっちゃってて。窓から呼びかけても、開けてくれないし……私、どうすればいいのか」

曜「そんな……」

72: 2018/01/09(火) 18:21:29.07 ID:DtQr2eK+.net
―――




美渡「おーい、馬鹿チカ」

襖「」

美渡「返事くらいしな。いるんでしょ?」

襖「」

美渡「返事しろっつーの」ドスッ

襖(蹴るなよ……)


曜「あの、いいんですよ。出てくれないなら……その……」

美渡「そんなわけにはいかないって。あーあ、せっかく曜が来てくれてんのになー」


ドスドスドス…

ガラッ


千歌「……よーちゃん?」

美渡「ほら、曜」

曜「うん……あの、休んでるって聞いたから」

千歌「あ――」キュンッ

73: 2018/01/09(火) 18:32:50.09 ID:DtQr2eK+.net
―――




千歌「調子はどう?」

曜「この通り、全然元気だよ」

千歌「よかった……って、チカが心配するのは、変だよね……白々しいよね。よーちゃんをあんな目に遭わせたのは私なのに……」

曜「いいんだよ。私が好きでやったことだから」

千歌「……え?」

曜「言ったでしょ。千歌ちゃんになら……血なんて、いくらでもあげるよ」

千歌「……そんなわけにはいかないよ。よーちゃん、死んじゃうよ」

曜「そこは、うーん……死なない程度にお願いします」エヘヘ

74: 2018/01/09(火) 18:33:21.09 ID:DtQr2eK+.net
千歌「――そんなの、ダメだよ」

千歌「本当は私、よーちゃんに……ううん、誰にも会っちゃいけないんだよ」

千歌「お母さんにも、すっごい怒られて……曜ちゃんのお母さんを、あんなに泣かせて」

千歌「私……私……」グスッ


曜「――千歌ちゃん」


チュッ


千歌「え……」

曜「……」カァァァ///

千歌「よーちゃん、今……」

75: 2018/01/09(火) 18:33:51.50 ID:DtQr2eK+.net
曜「千歌ちゃんが、私を求めてくれたようにさ……私だって、千歌ちゃんが欲しいんだよ」

曜「ヴァンパイアだとか、人の血を吸うとか、そんなの関係ない」

曜「だから……勝手に私の前からいなくならないで」


千歌「うん…………うん……!」ウルウル

千歌「うぇぇ……よーちゃん」グスッ

曜「もう、泣かないでよ」ナデナデ


曜「明日から、ちゃんと学校にいこ? みんな心配してる」

千歌「グスッ…」ゴシゴシ


千歌「――ありがとう、よーちゃん」ニコッ

76: 2018/01/09(火) 18:34:50.55 ID:DtQr2eK+.net
まだ続けたいけどそろそろ終わらせないと埋められそう

82: 2018/01/09(火) 19:03:45.44 ID:DtQr2eK+.net
―――




曜(以来、私たちは奇妙な関係を続けている)



果南「はい、今日の練習はここまで」

鞠莉「水分補給をしない子は勘当デース!」

ダイヤ「みなさん、お疲れ様でした」


ルビィ「今日の千歌ちゃんもカッコよかった!」

千歌「ええ、そうかなー」テレテレ

花丸「まるでテレビでも見てるみたいだったずら!」

千歌「まるちゃんだけに?」

花丸「ちっ、違うよ! 今のは……違うもん……///」

善子「何照れてんのよずら丸」

千歌「ヨハネちゃん、嫉妬しないで。まるちゃんはとらないからさ」

善子「だから善子よ! ……あれ?」

ルビィ「逆になってるよ」クスクス

善子「んにゃー!!///」

83: 2018/01/09(火) 19:04:21.21 ID:DtQr2eK+.net
梨子「もう、千歌ちゃん。一年生をからかわないの」

千歌「からかってないよー。もう、梨子ちゃんも嫉妬?」

梨子「バカ、そんなわけないでしょ」

千歌「そういえば梨子ちゃん、言われてた歌詞できたよ。――はい」

梨子「もう? 随分早いわね……」ペラッ

梨子「わ……」

千歌「どうかな?」

梨子「……」ウルッ

千歌「りこちゃん?」

梨子「はっ……な、泣いてないんだからね!?」ゴシゴシ

千歌「何も言ってないよー、よしよし」ナデナデ

梨子「も、もう……///」ウツムキ

84: 2018/01/09(火) 19:04:52.50 ID:DtQr2eK+.net
果南「どうしたの、あれ……」

鞠莉「無自覚イケメンね。果南と同じ」

果南「なんでそこで私が出てくんの?」

鞠莉「さあ? ユアバストに聞いてみたら?」

ダイヤ「2人とも話してないで、早く帰りなさい。皆さんもですわ」


「「はーい」」


千歌「――よーちゃん、帰ろ?」

曜「うん!」

梨子「千歌ちゃん……今日もよーちゃんの家に?」

千歌「そうだよ。梨子ちゃんも来る?」

梨子「うーん……まだ作曲終わってないから、また今度ね」

千歌「はーい。じゃあね、梨子ちゃん!」

85: 2018/01/09(火) 19:06:00.46 ID:DtQr2eK+.net
―――




千歌「ペロッ…ジュルッ……」

曜「あっ……ん……?」

千歌「ゴクッ…プハッ……よーちゃん……」

曜「ちか……ちゃ……ぅ……?」

チュウ…

千歌「チュッ…チュル…ペロ……」

曜「ムゥ…プチュ…チュパ……?」

千歌「んっ……ふぅ……よーちゃん?」

曜「千歌ちゃん……好き……?」

千歌「チカも、大好きだよ?」

86: 2018/01/09(火) 19:07:38.49 ID:DtQr2eK+.net
―――




千歌「ペロッ…ジュルッ……」

曜「あっ……ん……♡」

千歌「ゴクッ…プハッ……よーちゃん……」

曜「ちか……ちゃ……ぅ……♡」

チュウ…

千歌「チュッ…チュル…ペロ……」

曜「ムゥ…プチュ…チュパ……♡」

千歌「んっ……ふぅ……よーちゃん♡」

曜「千歌ちゃん……好き……♡」

千歌「チカも、大好きだよ♡」

87: 2018/01/09(火) 19:08:37.78 ID:DtQr2eK+.net
連投すみません >>86が正規です
ハートが文字化けしました

88: 2018/01/09(火) 19:15:17.95 ID:DtQr2eK+.net
曜(沼津で練習した後、終バスの時間ギリギリまで、千歌ちゃんが私の家に来る)

曜(それは、私の血を飲んでもらうため)

曜(勿論、この間のような事態にはならないように、千歌ちゃんが飲むのはほんの少しだけ)

曜(その分の吸血欲求は、こうしてキスで発散する)


曜(どうやら今の千歌ちゃんには、タブレットだけでは足りないらしい)

曜(Aqoursのみんなが可愛すぎるのがいけないんだと思う)

曜(とにかく、今のままでは千歌ちゃんは普通ではいられない)


曜(だから、千歌ちゃんが普通でいられるように……私が千歌ちゃんのものになるの)


曜(これが一番合理的だからね)

89: 2018/01/09(火) 19:21:15.77 ID:DtQr2eK+.net
―――


翌日


曜「おはよー……」

梨子「おはよう。って、なんか元気ないね」

曜「そう……かな。私、朝に弱いからさ」

梨子「でも……」


千歌「おっはよー!」

梨子「あ、おはよう千歌ちゃん」

曜「千歌ちゃん……おはよ」ニコッ

千歌「あれ、よーちゃん……顔色悪いよ、大丈夫?」

曜「そんなことないよ。大体いつもこんな感じだって」

梨子「うーん……千歌ちゃんがこんなに元気なのに、それに反比例して曜ちゃんが……」


曜「――そんなことない!」


梨子「え?」

曜「私、元気だよ! フフッ、曜ちゃん復活であります!」ケイレイッ

梨子「本当に大丈夫?」

曜「平気平気!」


千歌「よーちゃん……」

100: 名無しで叶える物語 2018/01/09(火) 21:53:54.85 ID:DtQr2eK+.net
―――




梨子「今日の体育、長距離走だって」

曜「……うん」

梨子「大丈夫?」

曜「当然」

梨子「無理しちゃダメよ? 体調悪いなら休んでた方が……」

曜「――大丈夫って言ってんじゃん!」

梨子「っ……ごめんなさい」

曜「あ……その……ごめん」スタスタ

曜(こんなつもりじゃなかったのに)


「位置について、よーい……」


パン

101: 2018/01/09(火) 21:56:31.20 ID:DtQr2eK+.net
むつ「ハッ…ハッ……しんどー」

いつき「どうせきっと曜ちゃんが一位なのにね」

むつ「で、千歌が二位ね」

よしみ「……あれ、曜ちゃんは?」


曜「ハアッ…ハアッ……」

曜(ヤバい、想像以上に体力が落ちてる)

曜(このままじゃ、完走も……)


曜「――わっ!」ザーッ

曜「いった……」


曜(あれ……力、入らないや)

曜「う……ぐっ……」

曜(嘘でしょ……今の私、立ち上がることもできないんだ)

曜(――惨めだなあ)

曜(このまま、先生が来るのを待つしかないのか)

102: 2018/01/09(火) 21:57:06.29 ID:DtQr2eK+.net
千歌「――よーちゃん」

曜「へ? ……ちょっ」


グイッ


よしみ「うっそ……もう一周してる」

いつき「ひゃー……お姫様だっこだよ……///」

むつ「最近の千歌、なんかカッコよすぎない?」


曜「千歌ちゃん……///」

千歌「よーちゃん、大丈夫?」

曜「う、うん……」コクッ

千歌「今保健室に連れてくからね」

曜「だって、今タイム測ってるのに」

千歌「そんなのどうでもいいよ」


千歌「よーちゃんの方が、ずっとずっと大切だから」

曜「――っ」ドキッ


曜(これだから……やめられないんだよ)


曜(千歌ちゃんのためなら、どうなったっていい)

曜(私の全て、千歌ちゃんにあげるから)

曜(だから……ほんの少しの間だけ、私の傍にいて)


曜(――そのためなら、死んだって構わない)

103: 2018/01/09(火) 21:57:45.47 ID:DtQr2eK+.net
―――


保健室


千歌「もう、なんでこんな時に限って先生いないの」

曜「……千歌ちゃん」

千歌「ん?」

曜「2人きりがいい」

千歌「よーちゃん……」


曜「ねえ……キス、して」


千歌「――うん」

104: 2018/01/09(火) 21:58:30.95 ID:DtQr2eK+.net
~~~


千歌「ハッ…ハッ……よーちゃん……!」

曜「チュルッ…チュパッ……ジュルル……?」


千歌(ダメ、これ以上は)


千歌「チュッ…プハッ…………ごめんね、そろそろ戻らなきゃ」

曜「……ダメ」ギュー

千歌「よーちゃん」

曜「イヤ、離れたくない」

千歌「ワガママ言わないでよ……」


曜「なら……血、吸っていいから」


千歌「――え? 何言ってるの、よーちゃん」

千歌「これ以上飲んだら、本当に死んじゃうんだよ!?」

曜「知らないっ! 私の体とか、死ぬとか、そんなのどうだっていい!」

曜「なんでもいいから……千歌ちゃんの傍にいたいの」

105: 2018/01/09(火) 21:59:50.11 ID:DtQr2eK+.net
~~~


千歌「ハッ…ハッ……よーちゃん……!」

曜「チュルッ…チュパッ……ジュルル……♡」


千歌(ダメ、これ以上は)


千歌「チュッ…プハッ…………ごめんね、そろそろ戻らなきゃ」

曜「……ダメ」ギュー

千歌「よーちゃん」

曜「イヤ、離れたくない」

千歌「ワガママ言わないでよ……」


曜「なら……血、吸っていいから」


千歌「――え? 何言ってるの、よーちゃん」

千歌「これ以上飲んだら、本当に死んじゃうんだよ!?」

曜「知らないっ! 私の体とか、死ぬとか、そんなのどうだっていい!」

曜「なんでもいいから……千歌ちゃんの傍にいたいの」

106: 2018/01/09(火) 22:01:15.27 ID:DtQr2eK+.net
ハート誤字連投すみません

108: 2018/01/09(火) 22:02:09.90 ID:DtQr2eK+.net
千歌「よーちゃん……」ドクッ

千歌(抑えなきゃ……抑えなきゃ……抑えなきゃ……)

千歌(でないと本当に、よーちゃんを殺しちゃう……!)


曜「……」グイッ

千歌「――え」

曜「んっ……」チュッ

千歌「う……うぅ……」ドクンッドクンッ

千歌(ダメ……ダメ……ダメだよ……!)

千歌「ぐ……あ……」



梨子「――こんなことだろうと思った」

110: 2018/01/09(火) 22:08:27.55 ID:DtQr2eK+.net
千歌(梨子ちゃん……?)

曜「……ねえ、なんでカッターなんか持ってるの?」

梨子「……」


グ…グッ…


梨子「う……うぅ……!」ポタポタ…

曜「ちょ……梨子ちゃん、手首が……なにしてんのさ!?」


千歌「――っ」ドックン


梨子「さあ、千歌ちゃん……おいで?」


千歌「ああああああああああああああっ!!!」

梨子「……!」ゾクッ


千歌「ガブッ…ジュルルルル……」

梨子「ひっ……」ガクガク

113: 2018/01/09(火) 22:22:39.64 ID:DtQr2eK+.net
梨子(初めてだけど、わかる)

梨子(圧力なのか……それとも吸引力なのか)

梨子(全身の血液の巡りが、強引に活性化されて……手首に集まってる)

梨子(これが……ヴァンパイア)


梨子(やば……意識が……)フラッ


曜「――梨子ちゃん、しっかり!」ガッ

梨子(曜ちゃん……?)


曜「離して! 千歌ちゃん、やめて!」

千歌「ゴクッ…ゴクッ……」

曜「千歌ちゃん……お願いだから、元に戻ってよ……!」ポロポロ


千歌「――よーちゃん?」スッ

曜「はっ……千歌ちゃん!」

千歌「私、また……」

114: 2018/01/09(火) 22:23:18.79 ID:DtQr2eK+.net
梨子「ハァッ…ハァッ……」プルプル

曜「梨子ちゃん、大丈夫?」

梨子「ええ……なんとか、吸われてた時間はほんの少しだったから」

千歌「りこちゃん……」


梨子「――触らないでっ!!」


千歌「あっ……ごめ……ん……なさい……」

曜「梨子ちゃん……?」

梨子「あ――その、違うの……」

梨子「私……怖くて……」

梨子「どうしても、あの時の曜ちゃんの姿が……離れなくて!」

梨子「自分でやったことなのに……どうして……」


千歌「――本当にごめんね、梨子ちゃん。怖がらせちゃって」

曜「千歌ちゃん……」

千歌「私、今日は帰るよ」

115: 2018/01/09(火) 23:02:03.17 ID:DtQr2eK+.net
―――




果南「今日は千歌が休みか」

鞠莉「最近全員揃わないわねー」

ダイヤ「仕方ない事とはいえ、体調管理はしっかりしてほしいものですわね」


曜「梨子ちゃん、大丈夫? フラフラしない?」

梨子「曜ちゃんこそ……貧血気味なんでしょ? 体育の時は倒れたんだし、休んだ方がいいわ」

曜「私はまあ、慣れてるからいいんだけど」

梨子「なにそれ。千歌ちゃんは自分のものとでも言うつもりなの?」

曜「そんなこと言ってないよ。ただ、梨子ちゃんは初めてじゃん? 私は梨子ちゃんの体を心配して――」


梨子「一番心配かけたのは曜ちゃんでしょっ!」

曜「え……」

梨子「毎日毎日、2人でこそこそ帰って……どうせ血を飲ませてたんだよね」

梨子「曜ちゃんは日に日に元気無くなっていくし、逆に千歌ちゃんはパワー全開になっていくし」

梨子「あんなの、誰が見たってわかるよ……」

曜「梨子ちゃん……」

116: 2018/01/09(火) 23:02:30.02 ID:DtQr2eK+.net
ダイヤ「……はぁ。一体何があったというのですか」

果南「なんか、このまま練習ってわけにもいかなそうだね」

鞠莉「ここ最近千歌と曜の様子がおかしかったのと、何か関係があるの?」


曜「それは……その……」

梨子「もう話すべきよ。これ以上は無理があるわ」


善子「なによ、隠し事でもしてるわけ?」

花丸「話してみるずら。まるたちは仲間なんだから」

ルビィ「ルビィたちにできることなら、何でも協力するよ」


曜「――ごめん。少しだけ時間がほしい」

曜「みんなを信用してないわけじゃないよ。ただ……千歌ちゃんがいないと、話せないことだから」

117: 2018/01/09(火) 23:03:03.79 ID:DtQr2eK+.net
おやすみ

141: 2018/01/10(水) 20:10:26.40 ID:vXRzl3Sm.net
―――




千歌(授業サボって帰ってきたはいいものの)

千歌「暇だなあ」

千歌(ラブライブ決勝まで、あと1ヵ月しかないのに)

千歌(練習、しなくちゃいけないのに)


トントン


高海母「千歌ちゃん、入るよ」

千歌「うん」


ガラッ…


高海母「また何かあったんだね」

千歌「じゃなきゃ、授業サボらないよ」

142: 2018/01/10(水) 20:11:00.37 ID:vXRzl3Sm.net
高海母「……千歌ちゃん、お願いがあるの」

千歌「お願い?」


高海母「――私と一緒に、東京に行きましょう」

千歌「……え」

高海母「わかってるでしょ? 今のままだと、千歌ちゃんは確実に誰かを殺してしまう」

高海母「この間の曜ちゃんの件、一歩間違えれば本当に危なかった」

高海母「それだけじゃない。千歌ちゃん、あれから何度も血を飲んでいるでしょう」

千歌「……!」

高海母「見てればわかるよ。お母さんだもん」

高海母「血の味を知ったあなたは、それに依存してしまっている」

千歌「そんなことない。我慢できるもん」

高海母「またあんなことが起こってからじゃ遅いのよ」

千歌「それは……」

高海母「麻薬中毒から簡単に抜け出せないのと同じように、血に依存した生活を変えるのは簡単なことじゃない」

高海母「でも今のままだと、いつか取り返しのつかないことになってしまう」

高海母「環境を変えるの。生き血の手に入らない環境で、1年間血液錠剤だけを口にして生活する」

千歌「1年も……」

143: 2018/01/10(水) 20:11:25.39 ID:vXRzl3Sm.net
高海母「私の住んでいるマンションはね、セキュリティや設備がしっかりしていて、その気になれば誰とも会わずに暮らすことだってできる」

高海母「きっと尋常じゃないストレスがあなたを襲うわ。血が欲しくて欲しくてたまらない、そんな衝動に駆られるかもしれない」

高海母「それでも、タブレットだけで我慢するの。元の生活に戻るために」

高海母「もう手段はそれしかない」


千歌「……無理だよ。そんなに長い間、よーちゃんたちに会えないなんて」

高海母「2度と、会えなくなるかもしれないんだよ」

千歌「――っ」

高海母「ごめんね、千歌ちゃん。人間として生んであげられなくて……ごめんなさい」

千歌「そんな……お母さんは悪くないよ」

高海母「私は、あなたを人殺しになんてしたくない。友達を手にかけて悲しむあなたの姿を、これ以上見たくない」


高海母「いい子だから……お願い」

千歌「あ……あぁ……」

144: 2018/01/10(水) 20:12:12.12 ID:vXRzl3Sm.net
―――




曜「千歌ちゃーん、いるんだよね?」

曜「入るよー」ガラッ


曜「千歌ちゃん……どうしたの、電気もつけずに」

千歌「……」

曜「梨子ちゃんのことなら気にしないで? 今は落ち着いてるから」

曜「自分で切った手首も、いつもみたいにちゃんと塞がってたしさ」

曜「いやー、ヴァンパイアってすごいよね。血を吸った相手の傷も、唾で塞いじゃうんだもん」

千歌「そうだね。やっぱり、人間じゃないから」

曜「あ……その、そういうつもりで言ったわけじゃ」

145: 2018/01/10(水) 20:13:32.30 ID:vXRzl3Sm.net
千歌「ごめんね。なんかさっきから、よーちゃんに気を遣わせてる」

曜「そんなことないよ。ね、見てみて」フリフリ

千歌「……髪飾り?」

曜「そう。今度のライブで、みんなでつけるんだよ。へへ、可愛いでしょ」

千歌「よーちゃんが着けると、まるで鳥みたいだね」

曜「今回のテーマだからね。千歌ちゃんもつけてみて」

千歌「うん……どうかな」

曜「すっごく似合う! ほら、こうして髪を下ろしてさ」スッ

千歌「……!」ドキッ

曜「うん! やっぱり千歌ちゃんは、こっちの方が可愛い!」

千歌「あり……がと」

曜「どういたしまして」ニコッ

146: 2018/01/10(水) 20:14:11.92 ID:vXRzl3Sm.net
千歌「あの……よーちゃん」

曜「ん?」

千歌「どうして、来てくれたの? こんな時間に家にきたら、バス無くなっちゃうよ」

曜「……今日は、千歌ちゃんちに泊まりたいなって」

千歌「――そんなの駄目だよ!」

曜「千歌ちゃん……」

千歌「あ……その、お母さんに怒られちゃうし」

曜「えへへ。実はもう、千歌ちゃんのお母さんから了承を得ているのです」

千歌「うそ……お母さんが?」

曜「うん、千歌ちゃんがいいならって」

千歌「――っ」


曜「ダメ……かな?」

千歌「ごめん、よーちゃん」

曜「……そっか」

147: 2018/01/10(水) 20:15:03.43 ID:vXRzl3Sm.net
曜「だったら」ギュー

千歌「よーちゃん?」

曜「だったら……ギリギリまで、こうしてたいな」

千歌「私でいいの?」

曜「千歌ちゃんがいいの」

千歌「だって私……よーちゃんの血を奪っちゃうんだよ? それで……殺しちゃうんだよ?」

曜「いいよ」

千歌「よくないよ……全然よくないよ!」

千歌「よーちゃんを殺しちゃうくらいなら、私……私……!」


曜「ねえ、私言ったじゃん」

曜「勝手に私の前からいなくならないでって」

曜「約束したじゃん。……それくらい、守ってよ」


千歌「ごめんね。その約束、守れそうにないや」

千歌「私……学校を辞めて、お母さんの所にいく」

曜「酷いよ」

千歌「それ以外、方法はないんだよ」

148: 2018/01/10(水) 20:15:34.98 ID:vXRzl3Sm.net
曜「――っ」グイッ

千歌「よーちゃ……」


チュッ


曜「チュッ…チュル…ペロ……」

千歌「ムグ……プチュ…チュパ……」


曜「ハッ……ん……」パサッ

千歌「え? あ……ジュル…チュパ……ん……」

千歌(よーちゃん、どうして服脱いでるの……///)


ドクン


千歌(やば……!)


曜「はぁ……はぁ……///」パサッ…パサッ…

曜「ん……千歌ちゃん……」

149: 2018/01/10(水) 20:16:01.33 ID:vXRzl3Sm.net
千歌(よーちゃんの体……白くて、滑らかで、すっごく綺麗)

千歌(こんなの、耐えられないよ)


ドクンッドクンッ


曜「千歌ちゃん……目、赤くなってる」

曜「牙も、あの時みたいに鋭い」


千歌「フーッ…フーッ…」

千歌「よーちゃん、逃げて……お願いだから」


曜「……おいで? 飲んでいいよ」

曜「千歌ちゃんの、好きなようにしていいよ」

曜「大好きな千歌ちゃんに殺されるなら、本望だよ」


千歌「よー……ちゃん……」


曜「千歌ちゃん」



曜「愛してる」

154: 2018/01/10(水) 23:09:15.39 ID:vXRzl3Sm.net
千歌「あ……ぐ……」ガリッガリッ

曜「千歌ちゃん……?」

千歌「フーッ……うぅ……」ムシャッ

曜「いつの間にタブレットを……」

千歌「よーちゃん……そこのペットボトル、持ってきて」

曜「……わかった」


曜「はい」ソッ

千歌「ゴクッ…ゴクッ…ゴクッ……」

千歌「プハッ……ハアッ…ハアッ……」

千歌(静まれ……静まれ……!)

千歌(お願い、静まって!)


千歌「フーッ……はぁ……はぁ……」

千歌「フフッ……耐えたよ」

曜「千歌ちゃん……」

155: 2018/01/10(水) 23:09:48.31 ID:vXRzl3Sm.net
千歌「ごめんね。よーちゃんの血を飲むわけにはいかないの」

千歌「私……よーちゃんをこれ以上傷つけたくないから」ギュッ

曜「……うん」ポロポロ


千歌(大丈夫、我慢できる)

千歌(よーちゃんを抱き締められる)

千歌(よーちゃんとキスできる)

千歌(よーちゃんの愛を、ちゃんと受け止められる)


千歌(血に支配なんか、されてたまるか)

千歌(乗り越えてみせるよ。どんなに辛くても、どんなに困難でも)


千歌(だからお願い。もう少しだけ、私に時間をちょうだい)

156: 2018/01/10(水) 23:10:41.32 ID:vXRzl3Sm.net
―――




果南「ようやく全員揃ったね」

鞠莉「トゥーレイト! ラブライブ決勝まで、残り1ヵ月ないんだから!」

ダイヤ「全員、より一層気を引き締めて練習に臨むように」


果南「と、その前に……」ジーッ

曜「……え? 私?」

果南「昨日の続き。みんなに言う事、あるんじゃないの」

曜「ああ……うん。そうだね」


曜「――千歌ちゃん」

千歌「へ?」

曜「みんなにさ、全部話そうよ」

千歌「それは……」

梨子「大丈夫、みんな千歌ちゃんの味方だから」

千歌「だって……話したらもう、今まで通りじゃいられないよ」

157: 2018/01/10(水) 23:11:09.69 ID:vXRzl3Sm.net
梨子「――もう、既に違うでしょう」

梨子「曜ちゃんのパフォーマンスは、日に日に落ちていってる……ううん、それだけじゃない」

梨子「昨日の体育で、校庭を一周することもできなかった……あの曜ちゃんがよ。そんなの、どう考えたっておかしいじゃない」

梨子「話すべきだよ。話して、みんなで考えよう?」

千歌「……わかった」


~~~


花丸「ヴァンパイア……現実に存在していたなんて、驚いたずら……」

善子「そ、そんなの当たり前でしょっ! よよよヨハネは、とっくに知ってたんだからね!」アセアセ

ルビィ「うゆ……」

千歌「ごめんね、ルビィちゃん。怖がらせちゃったかな」

ルビィ「……ううん、怖くないよ。だって、千歌ちゃんだもん」

千歌「そっか……ありがとう」

158: 2018/01/10(水) 23:12:22.12 ID:vXRzl3Sm.net
ダイヤ「曜さんが、今まで千歌さんに血を飲ませていたと」

果南「だからこんなに弱ってたんだね」

曜「うん……ごめんね、心配かけて」

鞠莉「自分たちだけで抱え込むんじゃないわよ。少しは上級生を頼りなさい」


梨子「それで、どうしようか」

千歌「やっぱり、私がお母さんの所にいくしか……」


曜「――それはダメ!」

曜「勝手にいなくならないでって、言ったじゃん」

千歌「でも、このままじゃ……」

159: 2018/01/10(水) 23:13:07.59 ID:vXRzl3Sm.net
果南「ま、ラブライブ決勝を間近に控えてるわけだしさ。私たちとしても、千歌にはいてもらわないと困るわけ」

千歌「それどころじゃないよ。私、人を殺しちゃうんだよ?」

鞠莉「うーん、問題はそこよねえ。練習中は我慢できたとして、帰り道に通行人を襲う……なんて可能性もあるわけで」


千歌「……私のこと、怖くないの?」

ダイヤ「怖い? まさか。千歌さんは私たちのチームメイトですわ」

鞠莉「チームメイトを怖がるなんて、少なくともAqoursには一人もいない」

果南「それにさ。仲間の悩みは、チーム全体で解決する。基本だよ?」

花丸「千歌ちゃんがいないAqoursなんて、Aqoursじゃないずら」

ルビィ「千歌ちゃんが私たちを引っ張ってくれたから、ここまで来ることができたんだよ」

善子「最後まで責任、取りなさいよね」

千歌「みんな……」

160: 2018/01/10(水) 23:14:04.73 ID:vXRzl3Sm.net
梨子「問題は、千歌ちゃんの吸血欲求をどうするか」

千歌「一応……昨晩は、タブレットだけで我慢できたんだよ」

梨子「それは昼に私の血を飲んだからでしょ? それだけじゃない、一昨日もよーちゃんの血を飲んでるはずよ」

千歌「それはそうだけど……でも」

曜「私も、正直言って無茶だと思う」

千歌「よーちゃん……」

梨子「長期間血を飲ませないのは、現実的じゃないってことね」


善子「全員で回し飲みさせればいいんじゃないの?」

「「――っ!」」


善子「な、なによ……みんなして私を見て」

ルビィ「みんなが意図的に避けてた話題を……」

花丸「流石善子ちゃんずら……」

善子「ヨハネヨ……なに、なんか不都合でもあるわけ?」

鞠莉「善子、あれを見なさい」

161: 2018/01/10(水) 23:15:17.77 ID:vXRzl3Sm.net
曜「……」ムスッ


善子「……あー、そういうこと」

梨子「曜ちゃん、落ち着いて?」

曜「別に、落ち着いてるよ」


果南「まあ、それしかないか」

ダイヤ「他に方法もなさそうですしね」

鞠莉「曜には我慢してもらって、8人交代で、千歌に血を飲んでもらう」


千歌「できないよ、そんなこと! それに血が少なくなったら、よーちゃんみたいに弱っちゃうんだよ? いつもみたいなパフォーマンスが、できなくなっちゃうんだよ?」

善子「そこは、あんたがカバーしなさいよ」

ルビィ「最近の千歌ちゃん、Aqoursの誰よりも上手いから。きっとできるよ」

花丸「かっこいいダンス、期待してるずら」

162: 2018/01/10(水) 23:16:18.43 ID:vXRzl3Sm.net
千歌「本当にいいの? そんなことして、私……」

梨子「千歌ちゃんしつこい。みんないいって言ってるじゃない」

曜「私はまだ、いいなんて一言も言った覚えないんだけど……」ボソボソ

梨子「チームのためよ。我慢しなさい」

曜「むぅ……」

果南「私たちが千歌の手助けをする分、千歌はAqoursのセンターとして全力のパフォーマンスを見せればいい」

鞠莉「それがチームってものじゃない」

千歌「果南ちゃん……鞠莉ちゃん……」ウルウル


果南「ま、そういうことだから。順番はどうしようか」

ダイヤ「そうですわね……とりあえず、バスがない場合はその方の家に宿泊してもらうということで」

鞠莉「あら、私のホテルの部屋を使ってもいいのよ?」

梨子「それじゃ、まるでラブ……」

165: 2018/01/10(水) 23:46:05.31 ID:vXRzl3Sm.net
安価下
千歌に血を飲ませるAqoursメンバー
(順番に回していく予定)

明日書きます

176: 2018/01/11(木) 22:16:59.40 ID:1pWq/m3m.net
―――




高海母「こんな時間にどこへ行くの、千歌ちゃん」

千歌「お母さん……」

高海母「明日は朝早くに学校に行って、退学の手続きをするって言ったじゃない。千歌ちゃんは寝坊しがちなんだから、早く寝ないと」

千歌「友達の家に行ってくるよ」

高海母「自分が何を言ってるのか分かってる?」

千歌「わかってる」

高海母「力づくで止めなきゃ駄目かな」

千歌「お母さん……」


千歌「――お願いします。私に時間をください」ペコッ

高海母「言ったでしょう、これ以上は限界だって」

千歌「ラブライブ決勝まで、あと1ヵ月もない。それまで、お願い……!」

高海母「……自分の子が、他所の子を傷つけるのを見逃せって?」

千歌「ごめん。とんでもない事を言ってるのは分かってる」

高海母「分かってない……千歌ちゃん、自分が何を言ってるのか全然わかってない!」


高海母「千歌ちゃん、貴方は――――禁忌を犯そうとしているのよ」

177: 2018/01/11(木) 22:17:24.97 ID:1pWq/m3m.net
高海母「千歌ちゃんと一緒にスクールアイドルをやっている子たちは、きっと本当にいい子なんだろうね。もしかしたら、進んで千歌ちゃんの力になろうとしているのかもしれない」

千歌「どうしてそれを……」

高海母「母親の勘よ。でも、概ね間違ってはいないでしょう」

高海母「でもね……人間とヴァンパイアは、お互いの秩序を乱してはいけないの。昔から、事が起こる度に穏便に済ませてきた」

高海母「私とお父さんだって、こうして静かに暮らせるようになるまで相当苦労したんだから。……それでも、ずっと一緒に住むことはできなかった」

高海母「全部が全部、お互いの秩序を守るためなの。千歌ちゃんは、それを破ろうとしているのよ?」


千歌「――関係ないよ」

高海母「千歌ちゃん……!」

千歌「お母さんたちが守ってきたものが、どれだけ大切なものなのか。私バカだけど、何となくわかる」

千歌「それでも、私たちにとって一番大切なのは…………今、この時間だから」


千歌「お母さん。どうか、私たちを見逃してください」

178: 2018/01/11(木) 22:18:34.15 ID:1pWq/m3m.net
―――




美渡「結局、行かせたんだね」

志満「どうしようもないでしょう。あんな顔されちゃったら」

美渡「よかったのかな……これで」

志満「いいわけない、決して許されることじゃないのよ。それでも……行かせたの」

志満「お母さんの気持ち、分かってあげて」


美渡「……分かってるよ。イヤになるくらい」

179: 2018/01/11(木) 22:20:16.40 ID:1pWq/m3m.net
―――




善子「……来たわね」

千歌「来ちゃったね」

善子「感じるかしら、千歌。この禍々しい瘴気を」

千歌「おお、瘴気…………感じない」

善子「もう戻れないのね……いい、千歌。最早私たちは、先へ進むしかないのよ」

善子「――目の前に立ちはだかる、この魔窟へ!」


千歌「いや、普通に鞠莉ちゃんのホテルだけどね」



鞠莉「ウェルカームトゥーマイホーム! パーティーの準備はとっくにできてるわよ!」

千歌「鞠莉ちゃん……」アハハ

善子「できるだけ穏便にって話、忘れたわけ?」

鞠莉「イッツジョーク♪」

180: 2018/01/11(木) 22:20:59.80 ID:1pWq/m3m.net
千歌「えーっと……私たち、本当に泊まっていいの?」

鞠莉「心配しないで。お父さんには話してあるから。勿論、重要な部分は伏せてね」

千歌「そっか……ありがとう、鞠莉ちゃん」

鞠莉「本当は私が千歌のファーストをもらいたかったんだけど、急用ができちゃってねー。ざーんねん」

千歌「ファーストって……それはよーちゃんだし……」ボソボソ


善子「いいから、用があるならさっさと行きなさいよ」

鞠莉「あらあら、そんなに早く二人っきりになりたいの?」

善子「んにゃー!! そんなんじゃないわよっ……そんなんじゃ……///」

181: 2018/01/11(木) 22:21:27.24 ID:1pWq/m3m.net
―――




千歌「フー、ようやくゆっくり休めるね」

善子「そう……ね」

千歌「善子ちゃん、座ったら? ほら、ベッドふかふかだよ」

善子「座るわよ、座るから……うぅ」

善子「ったく、どうして私が最初なのよ……」ボソボソ

千歌「何か言った?」

善子「……ううん、別に」


善子「じゃあ、その……座るわよ?」

千歌「何回も確認取らなくていいよ」

善子「……」ストン

千歌「……なんでそんな遠いの?」

善子「だ、だって……」

182: 2018/01/11(木) 22:22:08.02 ID:1pWq/m3m.net
千歌「――私が怖い?」

善子「いや……その、怖いわけじゃなくて」

千歌「ん?」

善子「は……は……恥ずかしいというか……」

千歌「恥ずかしい? どうして?」

善子「だって、首……噛むんでしょ」

千歌「まあね」

善子「そんなの、今まで一度だって……」ゴニョゴニョ

183: 2018/01/11(木) 22:22:36.44 ID:1pWq/m3m.net
千歌「……」スッ

善子「――!」ビクッ


千歌「怖がらないで。優しくするから……ね?」ニコッ

善子「……うん」

千歌(やば……流石にこれだけ密着すると、善子ちゃんの匂いが……)


ドクン


善子「千歌……?」

千歌「ハッ…ハッ……大丈夫」ギュー

善子「か、噛む時は噛むっていいなさいよね!?」

千歌「うん、わかってる」

善子「千歌……ちかぁ……」ギュッ

千歌「善子ちゃん……」

善子「やっぱり、ちょっと……怖いかも」ウルウル

千歌「怖くない」ナデナデ

善子「千歌っ……!」プルプル

184: 2018/01/11(木) 22:23:10.95 ID:1pWq/m3m.net
千歌「じゃあ、噛むよ」

善子「うんっ……」


ガブッ


善子「あ……ぅ……ん……」

千歌「グチュ…チュル……」

善子「一滴でも零したら……許さないんだから……!」

千歌「……」ナデナデ


ゴクッ…ゴクッ…


善子「や……あっ……///」

善子「なんっ……で……こんな……」ガクガク

185: 2018/01/11(木) 22:23:38.00 ID:1pWq/m3m.net
千歌「プハ…ペロペロ……」

善子「ああんっ……だめぇ……」

千歌(ダメって言われても、唾液で傷塞がなきゃだし……)

千歌「チュッ…レロ……」

善子「ちかぁ……///」ウルウル


千歌「――はい、終わったよ」ナデナデ


善子「はぁっ……はぁっ……///」

善子「ち……か……」ギュウウウ

千歌「善子ちゃん?」

善子「お願い……傍にいて……」

千歌「うん、わかった」ナデナデ

善子「はぁ……んぅ……」グスッ

188: 2018/01/11(木) 22:36:23.42 ID:1pWq/m3m.net
千歌(ヤバい……全然足りないや)

千歌(よーちゃんの時は、どうしてたっけ)


千歌「……善子ちゃん」グイッ

善子「へ? 千歌……まだ目が――」


チュッ


善子「!?!?!?!?!?」

千歌「チュ…チュパ…ハッ…アム……」

善子「ふあ……ん……う……///」

善子「んん”~~~~~~~~!!!」パタパタ


千歌「――善子ちゃん、ちょっと黙って」

善子「は……ふぁい……」

千歌「いい子だから……ね」ニコッ

善子「……っ」カァァァ///

189: 2018/01/11(木) 22:36:51.96 ID:1pWq/m3m.net
千歌「チュパ……ん……レロ…チュウウ……」

善子「や……ぁ……ん……///」


千歌「ペロ…チュルル…」

善子「んっ……プハ…ちょっ、舌入って――」

千歌「……悪い子だね」


ガシッ


善子「え……ふぇぇ!!」

善子「こんなの……押し倒されるとか……聞いてないよぉ……///」


千歌「ハッ…ハッ……ごめん、善子ちゃん」

千歌「もう、我慢できないや」スッ

190: 2018/01/11(木) 22:38:44.83 ID:1pWq/m3m.net
鞠莉「――はーい、そこまで」


千歌「鞠莉ちゃ……」


プスッ


千歌「あっ……ん……」ドサッ

善子「え……千歌?」

鞠莉「ふう、危なかったねー」

善子「ちょっと鞠莉、千歌になにしたの?」

鞠莉「ただの鎮静剤よ。千歌は眠ってるだけ」

千歌「…スー…スー……」

善子「なんだ……」ホッ

191: 2018/01/11(木) 22:46:01.69 ID:1pWq/m3m.net
鞠莉「ところで善子……なんで裸なの?」

善子「え? ……いやあああああああ!!」ササッ

鞠莉「Oh、ソーリーソーリー。でも女の子同士なんだから、少しは大目に見てよね」

善子「うー……グスッ……///」

鞠莉「察するに、千歌が善子の服を脱がせたのね。なんかキスもしてたみたいだし……吸血欲と性欲が強く結びついてるって話は本当だったわけか。みんなに報告しておかなきゃね」

善子「あの……一々口にするの、ホントやめて……」

鞠莉「あのまま放っておいたら、今頃善子……どうなってたのかしら?」クスクス

善子「からかうんじゃないわよっ!!」

鞠莉「案外満更でもなさそうだったわよ?」

善子「そんなことっ……ない……うぅ……///」

鞠莉「フフ、可愛いんだから♪」

192: 2018/01/11(木) 22:51:40.90 ID:1pWq/m3m.net
鞠莉「ま、今日はゆっくり休みなさい。小原家特製の高級ベッドでね」

鞠莉「少しとはいえ、血を抜かれたばかりなんだから。安静にしてなさいよ?」

善子「……わかってるわよ」

鞠莉「じゃあね~、グッナイ♪」


パタン…


千歌「…スー…スー……」

善子「……あんなことしたくせに、どうして子供みたいな寝顔してんのよ」

善子「吸血欲……か」ボスン


善子(千歌の息が、顔にかかるくらいの距離……あったかい)

善子「……」ギュー


善子「……ばか」

206: 2018/01/12(金) 21:18:45.32 ID:Tx2wQf+D.net
―――




千歌「ふわぁ……あれ?」

善子「スー……スー……」

千歌「あ、そっか……私たち、昨日……」

千歌「――っ///」


千歌「やっば……なんでこんなに記憶残ってるの?」カァァァ///


スー…ムニャ…


千歌「……?」

千歌(誰かの寝息……善子ちゃんじゃない)

千歌(部屋に、微かに鞠莉ちゃんの匂いが残ってる)クンクン

千歌「まさか……」

207: 2018/01/12(金) 21:19:47.02 ID:Tx2wQf+D.net
千歌(やっぱり……部屋の外から聞こえてくる)


スタスタ…

ガチャッ


千歌「鞠莉ちゃん? そんな所で寝てたら、風邪ひいちゃう――」


曜「スー……ムニャムニャ……」


千歌「え……? うそ……なんでよーちゃんが……」

曜「う……ん……ふわぁ…………ん?」キョロキョロ

曜「あれぇ……千歌ちゃん? どうしてここにいるの?」

千歌「それ、こっちのセリフ」

曜「……あ」

209: 2018/01/12(金) 21:20:52.07 ID:Tx2wQf+D.net
曜「――なんでもない」スッ

千歌「待ってよーちゃん!」


ドタドタ…


千歌「……なんでもないって」


ペタッ


千歌「……床、あったかい」

千歌(よーちゃんの匂いが充満してる)

千歌(こんな隅っこで、毛布も何もなしに……)


千歌「よーちゃん……」

210: 2018/01/12(金) 21:21:29.24 ID:Tx2wQf+D.net
―――


通学路


千歌「……」テクテク

善子「……」テクテク


((気まずい……))


千歌「……あの、善子ちゃ――」

善子「わっ!!」ズルッ

善子(持ち前の不運がこんな時に……!)


ギュッ…


千歌「危なかったね」

善子「――っ!」カァァァ///

211: 2018/01/12(金) 21:22:19.38 ID:Tx2wQf+D.net
千歌「あの、怪我はない?」

善子「……ない……です」

千歌「もしかしてフラッてした? やっぱり昨日、血飲んだから……」

善子「――っ///」スッ


千歌「あっ……変なところ触っちゃったかな?」

善子「うるさいバカっ!」

千歌「……ごめん」


善子「――ったく、も”~~~~~~~~」ガシガシ

千歌「やっぱり、怒ってるよね。昨日の事」

善子「……別に」

千歌「ホントごめんね。私、理性飛んでて……」

善子「……///」

善子「ったく、さっさと行くわよ!」ズカズカ

千歌「うん……」トボトボ


善子「……」クルッ


善子「さっきの…………ありがとう」


千歌「あ……」

千歌「――うん」ニコッ

212: 2018/01/12(金) 21:22:48.97 ID:Tx2wQf+D.net
―――



キーンコーンカーンコーン


千歌「わわっ、ギリギリセーフ!」

担任「ギリギリ遅刻よ、高海さん」


クスクス…


千歌「アハハ、すいません……」


千歌「おはよう、よーちゃん、梨子ちゃん」コソコソ

曜「おっはヨーソロー」コソコソ

梨子「……おはよう」

千歌「梨子ちゃん?」

梨子「……」プイッ

千歌「……?」


千歌(――あ、そういえば)

千歌(今日は、梨子ちゃんの日だ)

213: 2018/01/12(金) 21:23:45.41 ID:Tx2wQf+D.net
―――




よしみ「つぎ体育だねー」

いつき「今日はなんだっけ、バスケ?」

むつ「いいじゃん、やっぱ展開が早い競技って面白いよねー」


千歌「梨子ちゃんもう着替えたの? 早いねー、私まだ……」

梨子「……」スタスタ

千歌「ちょ、梨子ちゃん待って……」


千歌「……いっちゃった」


千歌(あからさまに避けられてる)

千歌(やっぱ、この間のが原因かな)

214: 2018/01/12(金) 21:24:43.96 ID:Tx2wQf+D.net
千歌「はぁ……」トボトボ


キーンコーンカーンコーン


千歌「ってやば、もう始まるじゃん」パタパタ


グイッ


千歌「わわっ!」


千歌「……よーちゃん?」

曜「……」

千歌「もー、引っ張らないでよー。服伸びちゃう…………よーちゃん?」


千歌(喧騒が遠ざかる)

千歌(辺りが静まり返っていく)


千歌(まるで……世界に2人っきりになったみたい)

215: 2018/01/12(金) 21:25:16.52 ID:Tx2wQf+D.net
千歌「もう始まっちゃうよ?」

曜「……きて」

千歌「へ?」


グッ


千歌「え、ちょ――」

曜「こっちきて」


ツカツカ…


千歌「よーちゃん!? どこに……」

曜「……」スタスタ


千歌「今からはヤバいよ、授業始まってるってば!」

曜「知らない」


千歌「知らないって……」

216: 2018/01/12(金) 21:26:25.25 ID:Tx2wQf+D.net
―――


教室


曜「今なら誰もいないよ」

千歌「そりゃそーだよ、体育だもん」


千歌「そういえばよーちゃん、朝ホテルにいたよね。毛布も無しに……風邪とかひいてない?」

曜「別に」


千歌「そっか……それで、どうしてこんなとこに連れてきたのさ」

曜「わからない?」

千歌「わかんないよ」

曜「そう……なら、わからせてあげる」グイッ

千歌「え――」


チュッ

217: 2018/01/12(金) 21:27:03.81 ID:Tx2wQf+D.net
曜「チュッ…チュル…ペロ……」

千歌「ムグ……ん……ぅ……」

曜「チュウウウ…ジュルル……レロ……」

千歌「ん……よーちゃ……はげし……」

曜「ハッ……ペロ……ん……」サワサワ

千歌「――っ!」

千歌(胸は……だめぇ……)

千歌「やっ……あ……んっ……」

曜「ジュル…チュパ……千歌ちゃん……」コリコリ

千歌「はぅ……だ……め………んっ……」


ドクン


曜「千歌ちゃん……愛してる」

千歌「ハッ…ハッ……うぐっ……」ドクンドクン

218: 2018/01/12(金) 21:28:03.76 ID:Tx2wQf+D.net
曜「目、赤くなってきたね。歯も尖ってる」

千歌「あ……あ”……」

曜「さあ……おいで、千歌ちゃん」ギュウッ


千歌「白い首筋が、目と鼻の先に……)


千歌「くっ……」


パカッ


曜「千歌ちゃん? その容器……」

千歌「ガリッ…ガリッ……」

曜「そっか……タブレットが入ってるんだ」

219: 2018/01/12(金) 21:29:26.42 ID:Tx2wQf+D.net
千歌「フーッ…フーッ…」


曜「なんで……なんで……」スッ


千歌「ハッ…ハッ…ハッ…」


曜「どうして……」フラッ


千歌「ハァ…ハァ……」


曜「――そんなに、私の血はいや?」


千歌「よー……ちゃん……?」


曜「ばかっ……」パタパタ


千歌「よーちゃん! 待って……!」

220: 2018/01/12(金) 21:31:02.93 ID:Tx2wQf+D.net
梨子はもうちょっと待って

222: 2018/01/12(金) 22:10:50.18 ID:Tx2wQf+D.net
―――


屋上


曜「ぐすっ……えぐっ……」ポロポロ


千歌「よーちゃん」


曜「どうして……来ちゃうの……」

千歌「よーちゃんがどこにいるのかなんて、すぐにわかるよ」

曜「そんなこと……きいて……ないし……」グスッ


千歌「よーちゃん」ギュッ

千歌「泣かないで」ナデナデ

曜「う……うぅ……」

千歌「よーちゃんの血が、イヤなわけないじゃん」

曜「じゃあっ……なんで……」


千歌「まだフラフラしてるでしょ」

曜「え……?」

223: 2018/01/12(金) 22:11:27.55 ID:Tx2wQf+D.net
千歌「ずっとそんな状態が続いてたから、もしかしたら慣れちゃったのかもしれないけどさ」

千歌「よーちゃん、全然全快じゃないよ」

曜「そんなことないよ」

千歌「ある。自分では気づいてないだろうけど……私にはわかるもん」


千歌「とにかく、今のよーちゃんから血を貰う事はできないよ」

曜「……」

千歌「わかってよ。よーちゃんが心配なの……だから……」

曜「いいよ」

千歌「え?」

曜「わかった……もうわかったよ」

曜「たくさん食べて、早く復活する。そしたら……私のとこに、ちゃんと戻って来てね」

224: 2018/01/12(金) 22:11:58.15 ID:Tx2wQf+D.net
千歌「……フフッ、当たり前だよ」


チュッ


曜「ふぇ?」

千歌「何があっても、必ずよーちゃんの下に戻ってくる。約束」

曜「~~~~~~~~~~~~~~///」


千歌「えと……どうしよっか、授業」

曜「サボる」

千歌「えぇ……」

曜「2人でサボれば怖くないよ♪」

千歌「もう……どうしてそんなに上機嫌なのさ」

曜「ねえ、ハグして~」

千歌「仕方ないなぁ……」


ギュッ…

225: 2018/01/12(金) 22:12:31.88 ID:Tx2wQf+D.net
―――


桜内家


ポロン…

~♪ ~♪


桜内母「梨子ー? 今日はもう寝なさい」

梨子「……うん」


桜内母「どうしたの? なんか、機嫌悪いみたいだけど」

梨子「そんなことないよ」

桜内母「無理しないでね。ラブライブ決勝、近いんでしょう?」


バタン…


梨子「……はぁ」

226: 2018/01/12(金) 22:13:00.58 ID:Tx2wQf+D.net
ピロン


梨子「ライン……?」


千歌《窓開けて》

梨子「――っ」


「……梨子ちゃーん」


梨子「あ……ぅ……」


「開けてよー、約束だよー」


梨子「わかってる……けどぉ……」


千歌《今日は、やっぱり無理っぽいかな?》

梨子《そんなことない。でも、もう少しだけ待って》

千歌《さっきからすっごく待ってるよ? もう待ちくたびれちゃった》

梨子《お願いだから》

227: 2018/01/12(金) 22:13:53.56 ID:Tx2wQf+D.net
コンコン…


梨子「まさか、石でも投げてるの?」


ガラッ


梨子「え――」

千歌「やっ、梨子ちゃん。来ちゃった」

梨子「千歌ちゃん……なんてとこに掴まってるの!?」

千歌「なにって、窓の縁?」

梨子「危ないよ! ほら、早く上がって……」グイッ

千歌「大丈夫だよ……よいしょっと」


ズルッ


千歌「へ?」

梨子「きゃ――」


千歌「わわっ!」

228: 2018/01/12(金) 22:14:39.93 ID:Tx2wQf+D.net
梨子「――千歌ちゃんっ!!」


ドサッ


梨子「千歌ちゃ……千歌ちゃん……!!」

梨子「ごめんなさい……ごめんなさい……」グスッ


千歌「……泣かないで」

梨子「え?」


梨子「千歌ちゃん……落ちたはずじゃ……」

千歌「このくらいの高さなら平気だよ。だって……ヴァンパイアだもん」


ヒュゥゥゥ…


梨子(カーテンがたなびいて)

梨子(窓枠に飄々と立っている千歌ちゃんの姿は、まるで)


梨子「スーパーマンみたい……」

229: 2018/01/12(金) 22:30:36.12 ID:Tx2wQf+D.net
千歌「よっと」

梨子「まさか、ジャンプして飛び越えてきたの?」

千歌「ハハ、できないことはないと思うけど。ロッククライミングみたいに駆け上がる方が楽かな」


梨子「へぇ……」


千歌「えと……梨子ちゃん」

梨子「は、はい!」

千歌「準備できてる?」

梨子「はぅ……」

千歌「できてないよね。さっきの感じからして」

梨子「ごめんなさい……」

千歌「謝らないで。仕方ないよ……怖がらせた私が悪いんだもん」

梨子「怖がらせた?」

千歌「この間保健室で、梨子ちゃんの手首に噛みついちゃって、それで……」

梨子「――違うよ」

230: 2018/01/12(金) 22:31:08.46 ID:Tx2wQf+D.net
スッ


梨子「見て、この手首。綺麗に塞がってるでしょう」

千歌「うん……」

梨子「普通、カッターでリスカしたらこんな風にはならない。もっと痛々しく、傷跡が残るの」

梨子「そうならなかったのは、千歌ちゃんのおかげ」

千歌「そんなの……だって元々梨子ちゃんは、よーちゃんを助けるために……」

梨子「私だって、なんの覚悟もなしにあんなことしたわけじゃない。多少のリスクは承知の上だった。でも、この手首の傷は……もう跡すら消えてしまいそうで」


梨子「――なんだか、千歌ちゃんの優しさを感じたの」


梨子「だから、もう怖くなんてないよ」ニコッ

千歌「そっか……」

231: 2018/01/12(金) 22:34:49.27 ID:Tx2wQf+D.net
千歌「でも、だったらどうして?」

梨子「へ?」

千歌「今日一日、チカのこと避けてたでしょ」

梨子「ギクッ」

千歌「なんで? ひどくない? チカ、すっごく傷ついたんだよ?」

梨子「それは……その……恥ずかしかったというか」

千歌「え?」


梨子「だって…うぅ……」


鞠莉《千歌の吸血欲は、どうやら性欲と強く結びついているみたいなの》

鞠莉《きっと梨子のこと、熱く求められるでしょうね。キスだけじゃ済まないかもしれない》

鞠莉《ウフフ♪ 千歌の攻め、しっかり堪能しなさいよ?》

鞠莉《それにしても……昨晩の千歌、ホントに   だったのよ♡》

鞠莉《楽しみにしてなさいね( ´艸`)♡》

246: 2018/01/14(日) 15:58:46.71 ID:jycKvhYq.net
千歌「鞠莉ちゃん……」アハハ

梨子「うぅ……」

千歌「あの、違うよ? ちゃんと優しくするし!」

梨子「善子ちゃんに、キスしたの?」

千歌「うぇ?」

梨子「したんでしょ」

千歌「はい、しました」

梨子「最低」

千歌「うぅ、ごめんなさい……」


梨子「する……の?」ボソ

千歌「へ?」

梨子「私にも……その……そういうこと、するの?」

千歌「そういうことって?」

梨子「……///」カァァァ

千歌「あの、あれは無意識というか、理性がもたなかったというか」

247: 2018/01/14(日) 15:59:46.04 ID:jycKvhYq.net
梨子「   」

千歌「え」

梨子「変態」

千歌「あの」

梨子「浮気者」

千歌「えっと」

梨子「曜ちゃんにあんなことしておいて、善子ちゃんにも見境なくしちゃうんだ」

千歌「それは……吸血欲といいますか」

梨子「へぇ、ヴァンパイアって都合がいいのね」

千歌「梨子ちゃん……怒ってる?」

梨子「怒ってない」

千歌「怒ってるじゃん」

梨子「怒ってないもん!」

248: 2018/01/14(日) 16:00:18.30 ID:jycKvhYq.net
桜内母「梨子ー、まだ寝てないの?」

梨子「あっ……」

桜内母「誰かと電話? それとも千歌ちゃん?」

梨子「ごめん、もう寝るから!」

桜内母「さっきから声響いてるわよ……ふぁ、静かにしてちょうだい」

梨子「はーい」


千歌「怒られた」

梨子「うるさいわよ」

千歌「静かにしないとね」

梨子「もう遅いから」


ギュッ


梨子「へ?」

千歌「大きい声、出しちゃダメだよ」

梨子「――っ///」

249: 2018/01/14(日) 16:00:48.32 ID:jycKvhYq.net
千歌「ごめんね……もう、我慢できないや」

梨子「千歌ちゃん、目が……」


梨子(赤黒い瞳……少し怖いかも)

梨子(怖くて、震えてしまいそうなのに……目が離せないのは、どうして?)


千歌「ハッ…ハッ…」

梨子「ちょ、ちょっと待って……」

千歌「待てない」

梨子「えぇ、でも……」アセアセ

千歌「大丈夫、すぐに終わらせるから」

梨子「うぅ……」


梨子「――痛く、しないでね」

250: 2018/01/14(日) 16:01:16.66 ID:jycKvhYq.net
カプッ


梨子「ひっ……ん……」

千歌「グチュ…チュパ…ジュルル……」

梨子「あ……ぅ……んんっ……」ビクン

千歌「チュル…グチャ……ゴク……」

梨子「は……ぁ……」ガクガク


梨子(私の血が首筋に集まって、千歌ちゃんの口に吸い取られていく)


梨子(怖いはずなのに……もっと、こうしていたいと思っている私がいる)

梨子(千歌ちゃんに包まれているみたいで、心地よくて)

梨子(まるで、体中をまさぐられているみたい)

251: 2018/01/14(日) 16:01:58.02 ID:jycKvhYq.net
梨子「ふあ……ん……あぅ……」ビクビクッ


梨子(どうして、こんなに気持ちいいの?)

梨子(体中の血液が循環して……全身の感度が上がってるんだ)


千歌「ゴク…ゴク……チュパ……ペロペロ……」


千歌(梨子ちゃん、   だなぁ)

千歌(漂ってくる甘い香りも、甘美な声も、火照って恍惚とした表情も……全部滅茶苦茶にしたい)


千歌「フッ…フッ……」


千歌(足りないどころの話じゃない)

千歌(もっと……もっと……もっと欲しい)

千歌(梨子ちゃんの、全てを)

252: 2018/01/14(日) 16:02:43.79 ID:jycKvhYq.net
梨子「は……ぅ……」ガクンッ

千歌「――はっ……梨子ちゃんっ!?」ギュッ


梨子「はぁ…はぁ……ち……か……ちゃん……」

千歌「ごめんね、飲み過ぎちゃったみたい」

梨子「千歌ちゃん……!」ギュッ


梨子「千歌ちゃん……千歌ちゃん……」スリスリ

千歌「梨子ちゃん?」

梨子「お願い……今日だけでいいから、一緒に……」

千歌「……うん、わかった」ナデナデ


パカッ


千歌「ボリ…ボリ……コクン」


千歌(――まさか、血を飲むだけじゃ足りなくなってる?)

253: 2018/01/14(日) 16:03:16.19 ID:jycKvhYq.net
―――




志満「……あら?」

美渡「どーしたの」

志満「変ねえ……タブレットが見当たらないのよ」

美渡「箱から出しなよ」

志満「無いのよそれが」

美渡「はぁ? あんなにあったのに?」

志満「お母さんが、その時のためにってたくさん用意してたはずなんだけど……おかしいわねぇ」

美渡「お母さんがもってったとか」


志満「――もしかして」

美渡「……千歌?」

254: 2018/01/14(日) 16:06:16.47 ID:jycKvhYq.net
下安価コンマ
00~49 花丸
50~99 果南

順番決めて両方やる予定

261: 2018/01/15(月) 00:37:06.07 ID:iejYJfqQ.net
―――




千歌「次の時間ってなんだっけ」

梨子「体育だよ、今日は三年生と合同だって。確かバスケって言ってたかな」

曜「いつも負けちゃうから、一度くらいは勝ちたいよねー」


~~~


果南「一個下だからって手加減はしないからね」

鞠莉「いつもしてないじゃない」

曜「いくよー、果南ちゃん!」

ダイヤ「まあ、手加減など不要でしょうね」

千歌「フッ…フッ…」

262: 2018/01/15(月) 00:38:05.06 ID:iejYJfqQ.net
梨子「じゃあ、始めまーす」


果南「今日は千歌がジャンプ?」

千歌「うん」

果南「千歌が勝ったことあったっけ」

千歌「ない」

果南「……千歌?」


ピー


千歌「――っ」

果南「うそっ……」


鞠莉「エキサイティング……果南が高さで負けるなんて」

ダイヤ「言っている場合ではありませんわ!」

鞠莉「わかってる!」


曜「千歌ちゃんナイス!」ダムダム

鞠莉「曜! 簡単に抜けるなんて思わないでよね!」

263: 2018/01/15(月) 00:38:49.68 ID:iejYJfqQ.net
千歌「――よーちゃん、パス!」

曜「え、もう!?」


ダイヤ(着地から最高速度までの加速が速すぎる……まるで別人のようですわ)


果南「千歌っ、行かせないよ!」

果南(バスケはバスケだもん、止められないはずがない!)


千歌「――怪我、するよ?」


果南「えっ……」ゾクッ


キュッ…


鞠莉「――果南がっ」

ダイヤ「抜かれた!?」

264: 2018/01/15(月) 00:39:19.70 ID:iejYJfqQ.net
千歌「ハッ…」ダッ


よしみ「たかっ!」

いつき「嘘でしょ?」


バコンッ


むつ「だ……だ……ダンクシュート!?」


千歌「――ふぅ」スタッ


曜「すっご……」

梨子「……///」ポー


果南「ハッ…ハッ……」ジー

265: 2018/01/15(月) 00:40:15.95 ID:iejYJfqQ.net
―――




曜「……おかしい」

梨子「うん、おかしいわね」


曜「最近の千歌ちゃん……モテすぎだよ」

千歌「そ、そんなことないって」

梨子「今日だけでラブレター3通も貰ってるじゃない」

曜「朝と昼休みの2回屋上に呼ばれてたし」

千歌「えと、放課後にも呼ばれてたり」


ようりこ「はぁ……」


千歌「大丈夫大丈夫……全部断ってるからさ」

曜「当然だよ」

梨子「断ってなかったら今頃刺してるところよ」

千歌「冗談だよね?」

梨子「冗談だったらいいわね」ニコッ

266: 2018/01/15(月) 00:40:51.61 ID:iejYJfqQ.net
千歌「でも……私、普通にしてるだけだよ?」

曜「その普通が既に普通じゃないんだよ」

梨子「少しは控えて」

千歌「何を……?」

梨子「カッコよさをバラまくの」

千歌「そんな無茶な」

曜「あれだ、千歌ちゃんを屋上に縛り付けておくとか」

梨子「名案ね。休日しか練習できないけど」

曜「平日は沼津で練習するからねー。まあ今の千歌ちゃんなら余裕余裕」

千歌「いやいやいや」

267: 2018/01/15(月) 00:41:31.31 ID:iejYJfqQ.net
―――


屋上


「好きです、付き合ってください!」カァァァ///


千歌「ごめんね」


「……曜さんと付き合っているからですか」


千歌「違う違う、付き合ってなんかないって」アセアセ

千歌「ただ今は、誰とも付き合うつもりはないんだ」

千歌「だから……ごめんね」

268: 2018/01/15(月) 00:42:11.81 ID:iejYJfqQ.net
―――



ワン…ツー…スリー…


果南「はい、今日の練習は終わり。みんなお疲れ様ー」


花丸「――あの、千歌ちゃん」

千歌「ん?」

花丸「さっきの、ここの振り付けなんだけど……」

ルビィ「あ……ルビィも、そこわかんなくて」


千歌「いいよ。教えてあげるね」ニコッ

ルビまる「――っ」ドキッ

ルビまる「は、はい……///」

269: 2018/01/15(月) 00:43:01.12 ID:iejYJfqQ.net
曜「はぁ……」

梨子「露骨に落ち込まないでよ。仕方ないじゃない」

曜「いや、でもさ……ダンスの振り付け教わるって言ったら、私か果南ちゃんだったじゃん」

梨子「それはそうだけど……」

曜「最近はずっと千歌ちゃんばっか」

梨子「なら私に教えて? ちょっと不安だったから」

曜「……!」パァァァ

曜「うん、いいよ!」


果南「……」ハァ

鞠莉「なーに落ち込んでんの?」

果南「いや、別に落ち込んでないし」

ダイヤ「すぐにバレる嘘はつくものじゃありませんわよ」

果南「むぅ……」

鞠莉「後輩を取られて嫉妬ファイヤーしてるのかしら?」クスクス

果南「そんなんじゃないし……」ムスッ

ダイヤ「我慢しなさい、先輩でしょう?」


鞠莉「あ、そうそう。今日の当番って果南だよね?」

ダイヤ「当番? ……ああ、千歌さんの」

鞠莉「ホテル、一部屋空けといたから。自由に使っていいわよ♪」

270: 2018/01/15(月) 00:43:28.53 ID:iejYJfqQ.net
―――


淡島


千歌「色々考えてるうちに、もう着いちゃった」

千歌「やっぱ淡島までは早いや」


千歌(――今の私は、本当の私じゃない)


千歌(異常な力を発揮できるのも、傷の治りが早いのも、色んな人に好かれるようになったのも……全部、ヴァンパイアの血がやってること)

千歌(人間の私じゃ……ない)


千歌「そう……人間じゃないんだよ、私」

千歌(毎晩誰かの血を飲んでるのは、食欲を食べて発散するように、眠気を寝て発散するように、性欲を行為で発散するように……吸血欲を発散してるだけ)

千歌(これじゃあ、動物と一緒だよ)


千歌「今日はやっぱ帰ろうかな……って、船終わっちゃってるか」

千歌(でも今の私なら、きっと泳いで帰れるよね)

271: 2018/01/15(月) 00:44:26.58 ID:iejYJfqQ.net
果南「千歌」

千歌「……果南ちゃん」


果南「どこ行くの? 今日は約束してたでしょ」

千歌「でも……」

果南「ほら」グイッ

千歌「わわっ」トテトテ


果南「せっかく鞠莉がホテル貸してくれたんだよ。使わなきゃもったいないって!」

千歌「そりゃそーかもしれないけどさ」


果南「フフッ……なんか、千歌と二人っきりで歩くの久しぶりだね」

千歌「そう……だね」

272: 2018/01/15(月) 00:45:42.40 ID:iejYJfqQ.net
果南「千歌はどう?」

千歌「どうって」

果南「楽しい?」

千歌「え……」


果南「私は楽しいよ。千歌とこうしてるの」

果南「2人で手を繋いでさ。小さい頃みたいに、淡島を探検して」


千歌「懐かしいよね」

果南「うん」ニコッ


千歌「私も、楽しいよ」

273: 2018/01/15(月) 00:47:02.27 ID:iejYJfqQ.net
―――




果南「やばーい! ねえ千歌、超フカフカだよ!」モフモフ

千歌「小原家特製ベッドなんだって。お金かかってそうだよね」

果南「特製……これだから金持ちは」

千歌「果南ちゃんって、鞠莉ちゃんちにお泊りとかしないの?」

果南「んー、あんまり泊まったことはないや。一応宿泊施設だしさ」

千歌「そっか、そうだよね」

果南「そんなわけだから、こういう時は目一杯漫喫しないとねー」ゴロゴロ

千歌「あ、ずるーい。チカもゴロゴロするー」ボフン


ゴロゴロ……ピタッ


千歌「……あ」

果南「あ」


千歌(もしかして今……鼻がかすった?)

274: 2018/01/15(月) 00:48:25.36 ID:iejYJfqQ.net
果南「――っ///」カァァァ


スッ


果南「他になんか楽しそうなやつないかなー!」パタパタ

千歌「ハッ…ハッ……んっ…………チカも探す!」トテトテ

果南「お、宝探しする?」

千歌「する!」


果南「ぅ……」ジー

千歌「果南ちゃん、どうかした?」

果南「千歌、目が」

千歌「え?」

果南「赤くなってる」

千歌「うそ……」

275: 2018/01/15(月) 00:49:50.98 ID:iejYJfqQ.net
果南「……」ジー

千歌「その……あんま見ないで」サッ

果南「あ、ごめ……なんか逸らせなくて」

千歌「この目、人を魅了する力があるんだって。お母さんが言ってた」

果南「そっか……」

千歌「それ、聞いたらさ。なんか私、頭からつま先まで全部人間じゃないのかも……って」

果南「千歌……」


千歌「今日の体育さ、正直私自身もびっくりした。あんなの、どう考えたって普通じゃない」

千歌「何もかもヴァンパイアなんだって……人間の私じゃないんだって」


千歌「もう、戻れないのかな」

276: 2018/01/15(月) 00:50:57.67 ID:iejYJfqQ.net
ギュッ


千歌「へ……果南ちゃん?」

果南「千歌がどう変わったって、千歌は千歌だよ」

千歌「私……は……」

果南「もしかして、ずっと悩んでた?」

千歌「うん……」

果南「ホント馬鹿なんだから。人間の千歌も、ヴァンパイアの千歌も……両方が千歌だよ」

千歌「私、化け物だから……」

果南「化け物なんかじゃない」


果南「今日の千歌、すごいカッコよかった」

千歌「果南ちゃん……」


果南「妹みたいな千歌も大好きだけどさ。カッコいい千歌も、同じくらい好きだよ」

千歌「うん……」グスッ

果南「悩んだら、また私の所においで。一応年長者だしさ」

千歌「うん……!」ギュウッ


果南「よしよし」ナデナデ

277: 2018/01/15(月) 00:51:25.80 ID:iejYJfqQ.net
千歌「ハァ…ハァ……」

果南「千歌?」

千歌「ごめん……果南ちゃん」


千歌「――もう限界」


ズイッ


果南「ヒャッ!」ボスン

果南「私を押し倒すなんて、いい度胸して……」


千歌「ハッ…ハッ……」

果南「ち……か……?」

千歌「大人しくしててね……すぐに終わるから」

278: 2018/01/15(月) 00:52:14.64 ID:iejYJfqQ.net
果南(これが……千歌?)

果南(力で完全に押さえつけられてて、身動きできないや)

果南(こんなの……まるで別人じゃん)


千歌「できる限り、優しくするよ」

果南「――っ」ドキッ

果南(やば……)


カプッ


果南「うっ……」

千歌「グチュ…」

果南「はぅ……」


果南(耳元でジュルジュル音が鳴ってる)

果南(この音、私の血なんだ)

果南(私の血を、千歌が飲んでるんだ)

279: 2018/01/15(月) 00:53:07.89 ID:iejYJfqQ.net
千歌「ジュルル……ゴクッ…ゴクッ……」

果南「あぁ……ん……だ…め……」


果南(なにこれ……私の体、どうなってんの)

果南(体全体、熱く火照ってきた)

果南(熱く、熱く……込み上げてくる)


果南「はあっ……ん……きもち……い……」

千歌「チュル……チュパ……レロ……ペロペロ……」

果南「や…あ……舐めない……で……///」


千歌「ハァ…ハァ……終わった……よ」

果南「は……あ……」ガクッ

千歌「大丈夫?」ギュッ

果南「大丈夫じゃ……ない」

千歌「休んでていいよ」

280: 2018/01/15(月) 00:54:25.82 ID:iejYJfqQ.net
パカッ

千歌「ボリ……ボリ……」


果南「それ……なに?」

千歌「血液錠剤。これ飲まなきゃ足りなくて」


果南「そんなのより……私の血、飲んでよ」

千歌「へ?」

果南「今日は私が当番じゃん」

千歌「えと……」

果南「千歌を満足させるのが、私の役目なんでしょ?」グッ

千歌「ちょ、起き上がらない方が……」

果南「平気だよ。いいから、飲みなって」ギュウッ

千歌「ハァ…ハァ…」ドクン

果南「いいよ……千歌の好きなだけ、飲んで」

千歌「ハッ…ハッ…ハッ…」ドクンドクン

281: 2018/01/15(月) 00:55:36.44 ID:iejYJfqQ.net
~~~


ジュルッ…グチャッ……ゴクッ…ゴクッ……



果南「あ……ぁ……」ガクガク

果南「ち……か……」


ガクンッ…ポスッ……


千歌「ハァ…ハァ……」

千歌「果南……ちゃん?」


千歌「――果南ちゃんっ、果南ちゃん!」

果南「はは…………だい……じょーぶ」

千歌「ごめん……ごめんね……!」

果南「いいよ……平気だからさ」


果南「でも、明日はちょっと……練習は見学かな」

千歌「果南ちゃん……」ギュウッ

果南「よかった……目の色、戻ったね」ナデナデ

千歌「うん……」

291: 2018/01/15(月) 23:02:04.17 ID:+59yYQqF.net
―――




果南「千歌、下ろしてよぉ……」

千歌「ダメ」

果南「恥ずかしいからぁ……」

千歌「まだふらついてるでしょ。学校休みたくないっていうなら、せめてこれくらいはさせて」

果南「だからって、おんぶなんて……///」

千歌「転んだら危ないよ」

果南「千歌は私のなんなのさ」

千歌「友達でしょ?」

果南「……」ムスッ

千歌「え? 何かマズい事言ったかな……」

果南「別に」ギュー

千歌「ちょっと不機嫌じゃん」

果南「そんなことないもん」


千歌「――ケホッ、ケホッ」

果南「千歌?」

千歌「大丈夫。風邪引いたのかなぁ」

果南「ヴァンパイアが風邪引くの?」

千歌「……多分?」

292: 2018/01/15(月) 23:02:51.10 ID:+59yYQqF.net
―――




鞠莉「ワオ! どうしちゃったの果南!」

ダイヤ「お、お……おんぶで登校だなんて、破廉恥ですわ!」

千歌「いうほどかな……」

果南「お願いだからあんまり騒がないで……///」


千歌「よいしょっと」

果南「あ、ありがと……」ボソボソ

千歌「どういたしまして」

鞠莉「ありがとね、千歌っち」

千歌「ううん。それより果南ちゃんのこと、無理しないようにちゃんと見張ってってね? 今日だって、休めって言ったのに来るって聞かなくて」

ダイヤ「そんなことだろうと思いましたわ」

果南「うるさいなー」

千歌「果南ちゃん、今日の練習は見学だからね」

果南「むぅ……」


千歌「……じゃ、私行くから」

鞠莉「はーい。授業中にスリープモードはナッシングよ?」

千歌「分かってるー」パタパタ

293: 2018/01/15(月) 23:03:29.85 ID:+59yYQqF.net
ダイヤ「……」

鞠莉「ん? ダイヤ、どうかした?」

ダイヤ「いえ……千歌さん、少し顔色が悪かったような」

果南「ああ、風邪引いたんだって」

鞠莉「ヴァンパイアが?」

ダイヤ「いや、あれは風邪ではなく……」

鞠莉「ダイヤ、何か知ってるの?」

ダイヤ「……何でもありません」


ダイヤ「――悪化しなければいいのですが」


~~~
トイレ


オエ……ウプ…ゲェェ……


千歌「ハァ……ハァ……ケホッ」

千歌(まさか、本当に風邪引いた?)

294: 2018/01/15(月) 23:04:06.16 ID:+59yYQqF.net
―――




鞠莉「今日の練習はフィニッシュよ!」

ダイヤ「皆さん、お疲れ様でした」


花丸「――千歌ちゃん。さっきのダンスなんだけど、分からない所があって」

千歌「いいよー、教えてあげるね」

花丸「うん、ありがとう」ニコニコ


千歌「……花丸ちゃん」

花丸「うん?」

千歌「えと……今日、なんの日か覚えてる?」

花丸「何の日って、ラブライブ本番まであと3週間の日?」

千歌「いや、それもそうなんだけど……」

花丸「フフ、冗談ずら。マルが千歌ちゃんに血を飲ませてあげる日だよね」

千歌「あ……うん」

花丸「せっかちだなあ、千歌ちゃんは。焦らなくても逃げないから安心してよ」クスクス

295: 2018/01/15(月) 23:04:36.22 ID:+59yYQqF.net
―――

― 


千歌「変だなあ……」

梨子「何が?」

千歌「いや、てっきり梨子ちゃんの時みたいに避けられると思ってたから」

梨子「花丸ちゃんに?」

千歌「うん」

曜「案外抵抗ないのかも」

千歌「怖くないの?」

曜「私はね。だって千歌ちゃんだし」

千歌「……さりげなく恥ずかしいこと言うね」アハハ

曜「……///」

296: 2018/01/15(月) 23:05:10.56 ID:+59yYQqF.net
千歌「ふぅ……」パカッ

千歌「ゴク…ゴク……」

梨子「タブレット、もう無いんじゃない?」

曜「ほとんど空だね」

千歌「一回家に帰らなきゃ」


千歌(やばい、すごい喉が渇く)

千歌(タブレットの量、もっと増やさないと……)


梨子「今日は淡島でしょ?」

千歌「すぐホテルに向かうよ」

297: 2018/01/15(月) 23:07:19.55 ID:+59yYQqF.net
―――




千歌「えと、台所の下に……って、もうほとんど無いや」


高海母「――千歌」

千歌「お母さん……」

高海母「何してるの?」

千歌「えと、それは……」

高海母「聞かなくても分かるけどね。東京から帰ってきて見た時には、最低3ヵ月は持つはずだったのに」

千歌「ごめんなさい」

高海母「1日3回、3錠ずつ。その約束だったはずでしょう」

高海母「それ以上飲むと、危険なのよ」

千歌「危険……?」

298: 2018/01/15(月) 23:07:49.49 ID:+59yYQqF.net
高海母「ヴァンパイアの体は生き血以外受け付けない。血液錠剤はその体質を強制して無理やり血中成分を吸収させるの」

高海母「タブレットはヴァンパイアが人として生きるために作られた、いわばヴァンパイア専用の薬なのよ」

高海母「薬は容量を間違えれば容易に毒へと変わり得る。……千歌、体調崩してるでしょう。顔色が酷いわ」

千歌「そうだけど……でも」

高海母「これ以上の服用は危険よ。命に関わるかもしれない」


高海母「それだけじゃないの。多分、この先タブレットを飲み続けても意味はない」

千歌「え、どういうこと……?」

高海母「血液錠剤には、体質を抑える特別な物質が入ってる。つまり、ヴァンパイアにとっては毒のようなもの。それを余りにも大量に摂取し続けると……どうなると思う?」


高海母「――抗体ができてしまうのよ」


高海母「無意味に血中成分だけを摂取し続けても、吸血欲が満たされることはないわ」

千歌「それって……まさか……」


高海母「千歌、あなたの体はもう……生き血以外受け付けない」

316: 2018/01/16(火) 22:08:03.98 ID:EmvATyjs.net
―――


淡島ホテル


花丸「やっと来た」

千歌「遅くなってごめんね」

花丸「どうしたの? 顔色が悪いずら」

千歌「そんなことないよ」

花丸「ううん、きっと体調崩してるんだよ。今日の千歌ちゃん、いつもよりダンスのキレがなかったから……それでも、マルたちよりずっとうまいんだけどね」アハハ

千歌「心配しないで、座ってれば治ると思う」

花丸「そう?」

千歌「ヴァンパイアの治癒力は、人間よりずっと高いんだよ」

花丸「――っ」

317: 2018/01/16(火) 22:08:38.25 ID:EmvATyjs.net
千歌「花丸ちゃん?」

花丸「いや……その……」

千歌「ごめん、怖がらせちゃったかな」

花丸「怖くはないよ」

千歌「そっか……でも、無理はしないでね」

花丸「え?」

千歌「鼓動の音が聞こえてる。今日ずっとドキドキしてたでしょ」

花丸「それはっ……」

千歌「ありがとね。私が気を遣わないように、頑張ってくれたんだよね」

花丸「……うん。いざ自分の番になったら、やっぱりちょっと緊張するずら」

千歌「楽にしてて。なんなら、そのまま帰っちゃっても……」

花丸「それは駄目だよ。千歌ちゃんに無理させることになっちゃう」

318: 2018/01/16(火) 22:09:07.08 ID:EmvATyjs.net
千歌「……」


花丸「えと、千歌ちゃん?」


千歌「ハァ…ハァ……」

花丸「千歌ちゃん!? 大丈夫?」タタッ

千歌「――っ!」


ギュッ


花丸「きゃっ!」ボスンッ

千歌「ハッ…ハッ……」


千歌(花丸ちゃんの匂いが、この部屋に充満してる)

千歌(鼻腔をくすぐって、体温が上昇していく)

千歌(頭に血が上る。本能が叫んでる)


――そいつの血を飲め

319: 2018/01/16(火) 22:09:37.33 ID:EmvATyjs.net
千歌「ハッ…ハッ…ハッ……!」

花丸「千歌……ちゃん……」ジー


千歌「がああああああああああああっ!!」


ズンッ


花丸「あっ……!」ビクッ

千歌「グチュ……ジュルル……」

花丸「ぁ……あぁ……」

千歌「グジュ…グチャ……ペチャ……」

花丸「やぁっ……あ……んっ………///」ガクガク

千歌「ゴクッ…ゴクッ…ゴクッ…ゴクッ……」

花丸「は……あ……だめぇ……」

千歌「ゴクッ…ゴクッ…ゴクッ…ゴクッ……」

花丸「う……ぅん……」ビクビクッ

千歌「ゴクッ…ゴクッ…ゴクッ…ゴクッ……」

花丸「…………ぁ……」ガクンッ

320: 2018/01/16(火) 22:10:28.54 ID:EmvATyjs.net
ダイヤ「――そこまでですわ」

花丸「だ……ぃ……」


プスッ


千歌「うっ!」バタンッ


ダイヤ「花丸さん、しっかり」

花丸「ダイヤ……さん」

ダイヤ「お水ですわ」クイッ

花丸「ん……コク…コク…」

ダイヤ「間一髪でしたわね」


千歌「あ……ぐ……」

ダイヤ「……驚きましたわ。ライオンも眠らせる薬だというのに」

321: 2018/01/16(火) 22:10:59.11 ID:EmvATyjs.net
千歌「花丸……ちゃん……」

ダイヤ「花丸さんはご無事です。最も、意識を失う二歩手前ですが」

千歌「ハァッ…ハァッ……ダイヤさん、どうしてここに……?」

ダイヤ「私はずっと監視していましたのよ。壁一枚を隔てて」

千歌「どういう……」

ダイヤ「貴方がこのホテルに泊まった際は勿論、梨子さんの時も私は近くにいましたの。万一に備えて」


ダイヤ「――黒澤家は代々、ヴァンパイアハンターを裏稼業としていますのよ」スッ

千歌「ハンター……その拳銃は……」

ダイヤ「私たちの仕事は、血液錠剤による鎮静効果が認められない個体を始末すること」


ダイヤ「さよならですわ、千歌さん」カチャッ


パァンッ…

322: 2018/01/16(火) 22:45:33.19 ID:EmvATyjs.net
千歌「ハァッ…ハァッ……!」ポタポタ

ダイヤ「……冗談ですわ。冷や汗を流さないでください」


千歌(確かに今、殺気を感じた。弾丸は頬を掠めてる)

千歌(殺そうと思えば……殺せたんだ)


ダイヤ「約束ですものね。Aqoursの皆さんで、あなたの手助けをすると」グイッ

ダイヤ「花丸さんは私の部屋に寝かせます。千歌さんはごゆっくりお休みになって」


パタン…

323: 2018/01/16(火) 22:46:46.91 ID:EmvATyjs.net
―――



ドタドタドタッ…


鞠莉「千歌っち!!」

千歌「……鞠莉ちゃん」

鞠莉「大丈夫!? けがはない!?」

千歌「何慌ててるのさ、この通りピンピンしてるよ」

鞠莉「頬に傷が……!」

千歌「ああ、かすり傷だよ。ちょっとつまづいちゃって」

鞠莉「ホッ……よかった、本当によかった。銃声が聞こえたから、もしかしたらって」

千歌「あー……」

千歌(流石に誤魔化しきれないか)

鞠莉「ううん、わかってる。ダイヤが撃ったんでしょう?」

千歌「えと……」

鞠莉「あの硬度10、思いっきり叱りつけてやるから!」プンプン

千歌「はは……別にいいよ」

324: 2018/01/16(火) 22:47:16.15 ID:EmvATyjs.net
鞠莉「それで、血はちゃんと飲めた?」

千歌「――っ」


千歌「飲め……たよ。っていうか、えと……飲み過ぎちゃった」

鞠莉「え?」

千歌「飲み過ぎちゃったんだよ。それで、花丸ちゃんが……」

鞠莉「Oh…」

千歌「あのね、私……私……!」

325: 2018/01/16(火) 22:47:43.95 ID:EmvATyjs.net
ギュッ


千歌「――鞠莉ちゃん?」

鞠莉「いいのよ。貴方は悪くない」

千歌「そんなこと……ないよ。私、すっごく悪い子なんだ」

鞠莉「生きていくためには仕方のない事よ」

千歌「う……うぅ……」

鞠莉「昼の貴方、ゲッソリしてて見てられなかった。あんな風になるくらいなら、私がいくらでもあげるから……ね?」


千歌「あ……あぁ……!」ギュウッ

千歌「鞠莉ちゃんっ……!!」ポロポロ

326: 2018/01/16(火) 22:48:25.47 ID:EmvATyjs.net
―――




鞠莉「……」ナデナデ

千歌「スゥ…スゥ……」


ガチャッ


鞠莉「……花丸は」

ダイヤ「私の部屋で眠っています。ウチの者を立たせているので安心してください」

鞠莉「どういうつもりなのかしら? 床の弾痕の修理費、ちゃんと払ってくれるのよね」

ダイヤ「勿論、慰謝料も含めて」

鞠莉「……それは要らない。代わりに訳を聞かせて」

ダイヤ「貴方ならわかるでしょう。ハンターとしてのけん制です」

鞠莉「違う、ダイヤがそんな理由で千歌を撃つはずない」

ダイヤ「鞠莉さん。私はAqoursのメンバーである前に、黒澤家の長女です。どちらを優先するかなど知れたことでしょう」

鞠莉「それ、本気で言ってるんだったら……軽蔑する」

ダイヤ「……」

327: 2018/01/16(火) 22:50:02.64 ID:EmvATyjs.net
鞠莉「出てって。私は千歌っちの傍にいるわ」

ダイヤ「わかりましたわ」スタスタ


パタン…


ダイヤ「……ふぅ」

ダイヤ「どうして、こうなってしまうのかしら」



~~~


『……次のニュースです。昨夜未明、沼津市の〇△駐車場にて、27歳女性会社員のS倉M子さんが遺体で発見されました。遺体は血液を大量に失った状態で発見され、首筋以外に大きな外傷も見られないことから、警察は愉快犯の犯行と見て捜査を進めています』

332: 2018/01/17(水) 00:12:46.49 ID:s57yWmIZ.net
―――




よしみ「ねえ、昨日のニュースみた?」

いつき「見た見た、怖いよねー」

むつ「知ってる? 隣町でも似たような事件があったんだって」

よしみ「連続殺人ってこと?」

いつき「その犯人が沼津に出たんだよね……もしかしたら、もう内浦にいるかも」

むつ「……ねえ、まさかその犯人って」

333: 2018/01/17(水) 00:13:48.24 ID:s57yWmIZ.net
曜「おっはヨーソロー!」


よしみ「あ、おはよ……」

曜「朝から盛り上がってますなあ。なんの話してたの?」

むつ「ううん、なんでもないんだよ」

曜「何でもない? そんなわけ……」

いつき「ラブライブ決勝の話してたんだ! Aqoursの新曲、どんなのだろうって」

曜「そうなの? ……えへへ、楽しみにして待っててね!」


曜(なんか、はぐらかされたような)トボトボ

334: 2018/01/17(水) 00:14:14.86 ID:s57yWmIZ.net
梨子「おはよう曜ちゃん」

曜「あ、おはよー」

梨子「ねえ……昨日のニュース見た?」

曜「昨日の? ごめん、私ニュースとかあんま見ないから」

梨子「……」スッスッ

曜「梨子ちゃん、スマホでニュース確認してるんだ……」


梨子「これよ」

曜「――え?」

335: 2018/01/17(水) 00:14:51.60 ID:s57yWmIZ.net
―――




千歌(やば……また遅刻しちゃったよ)パタパタ


ガラッ


千歌「すみません、遅れました!」


ザワッ…


千歌「……あの」

担任「座りなさい」

千歌「は、はい」


千歌「おはよ、2人とも。何かあった?」コソコソ

曜「……」

梨子「……」


千歌「どう……したの?」

336: 2018/01/17(水) 00:15:22.31 ID:s57yWmIZ.net
担任「――はい、皆さん落ち着いて」

担任「高海さん……昨日のニュースはみた?」

千歌「ニュース?」

千歌(昨日はあの後すぐ寝ちゃったし、朝は全然時間なかったし)

千歌「見てないです……」

担任「そう。なら、改めて説明します」


担任「――沼津に、ヴァンパイアが現れました」

千歌「……!」ビクッ


担任「テレビでは、愉快犯の犯行と報じられていますが……それは、世間を必要以上に騒がせないためです」

担任「私たち教員や皆さんの親御さんは勿論、沼津警察署の方々もこのことは既に知っているはず。なにせ……」


担任「ヴァンパイアは実在するのですから」

337: 2018/01/17(水) 00:15:52.80 ID:s57yWmIZ.net
―――



ワン…ツー…スリー…フォー…


果南「みんなどうしたの? 集中できてないよー」

ダイヤ「果南さんこそ、いつもより動きが鈍くてよ」

果南「私はほら、病み上がりじゃん」

ダイヤ「……今このタイミングでそれを言うのは、洒落になっていませんわ」ボソボソ

果南「あ、そか」

338: 2018/01/17(水) 00:17:08.40 ID:s57yWmIZ.net
梨子「あの、今日はもう終わりにしませんか?」

果南「梨子ちゃん……」

梨子「こんな状態で練習しても、意味がないっていうか」

曜「私も梨子ちゃんに賛成だよ。ね、千歌ちゃん」

千歌「あ……その」

曜「っていうか、千歌ちゃんが一番動揺してるでしょ」


鞠莉「千歌っちは違うわよ」

花丸「マルもそう思うずら。だって千歌ちゃんは、マルの血をお腹いっぱい飲んだんだもん」

善子「おかげで、今日のアンタは見学だけどね」

花丸「えへへ……」ペロッ

ルビィ「でも、血を飲まれた人が毎回見学になっちゃうと」

善子「練習に支障がでてくるわね」

339: 2018/01/17(水) 00:18:03.79 ID:s57yWmIZ.net
曜「そんなことはこの際問題じゃないんだよ」

千歌「曜ちゃん……」

曜「1年生はまだ知らないかもしれないけどさ。2年生や3年生の間では、もう噂が広まってるんだ」

善子「うわさ?」

梨子「昨夜の事件……千歌ちゃんが犯人なんじゃないかって」


花丸「――違うって言ったずら!!」


ルビィ「花丸ちゃん……落ち着いて」

鞠莉「その話、もうやめにしない? 千歌っちが人を殺すわけないでしょう」

340: 2018/01/17(水) 00:18:34.30 ID:s57yWmIZ.net
―――




千歌(喉が渇く。もう限界だよ)


千歌「……はぁ」

千歌(ダイヤさんち、旅館から近いんだよね)

千歌(ハンターの傍で、ヴァンパイアが人の血を飲むなんて)

千歌(しかも、その妹の……)ブルッ

千歌(今度こそ殺されなきゃいいんだけど)


千歌「おじゃましまーす」

ルビィ「いらっしゃい、千歌ちゃん」

341: 2018/01/17(水) 00:19:14.29 ID:s57yWmIZ.net
千歌「あれ、ダイヤさんは?」キョロキョロ

ルビィ「後ろにいるよ?」

千歌「へ?」クルッ


千歌「……どわあっ!?」

ダイヤ「――ごきげんよう」

千歌「だだだダイヤさん、ご機嫌うるわしゅう……」


ダイヤ「千歌さん」スッ

ダイヤ「ルビィは、裏稼業については何も知りません」ボソボソ

千歌「えっ」

ダイヤ「決して口を割ってはいけませんわ」

千歌「うん……わかった」

342: 2018/01/17(水) 00:19:42.85 ID:s57yWmIZ.net
―――




ルビィ「ここがルビィの部屋です」

千歌「すごい綺麗だね……流石ダイヤさんの妹」

ルビィ「えへへ、それほどでもあります」


千歌「……」クンクン

ルビィ「ほぇ? ルビィの部屋、何か変な匂いしますか……?」モジモジ

千歌「いっ、いや……そんなことないよ」


コンコン…


ダイヤ「失礼いたします」

ルビィ「あ、お姉ちゃん!」

ダイヤ「黒澤家特製のイチゴ牛乳ですわ」

千歌「……ゴクリ」

ダイヤ「毒なんて入っていませんわよ?」

千歌「わ、わかってるよ」

343: 2018/01/17(水) 00:20:13.08 ID:s57yWmIZ.net
―――




グジュッ…ジュルッ……


ルビィ「はわぁぁ……なに……これぇ……」

千歌「んっ……ケホッ……ジュルル……」

ルビィ「は……ぁ……///」

千歌「ペロペロ……終わったよ、ルビィちゃん」

ルビィ「ふぇ、もぅ……?」

千歌「昨日の今日で、あんまり血を貰うわけにはいかないよ」

ルビィ「……うん。千歌ちゃんは優しいね」

千歌「そんなこと……ないよ」


千歌(違う。飲まなかったんじゃない……飲めなかったんだ)

千歌(どういうわけか……今までと違って、ルビィちゃんの血は……正直、マズかった)

千歌(流石に飲まないわけにはいかないから、少しだけもらったけど)



千歌(――じゃあ、なんで私は平気でいられるんだろう)

358: 2018/01/18(木) 00:17:36.85 ID:22Ix2nfY.net
―――




千歌「ルビィちゃん、また明日ね」

ルビィ「泊まっていけばいいのに」

千歌「いや……家近いからさ」

千歌(流石に、ハンターの傍では眠れないよ)


千歌「……ねえ、ルビィちゃん」

ルビィ「なに?」

千歌「大したことじゃないんだけど。ダイヤさん、なんでイチゴ牛乳なんて持ってきたんだろう」

ルビィ「ルビィが好きだからだと思う」

千歌「へー……」

ルビィ「お姉ちゃんも私も甘党だから。もしかして嫌だった?」

千歌「ううん、そんなことないよ」


千歌(あのダイヤさんが、お客さんにイチゴ牛乳を出すなんて……ちょっと意外)

千歌(知り合いだからかな。深く考えるだけ無駄か)


ルビィ「千歌ちゃん、また明日」ニコッ

359: 2018/01/18(木) 00:18:03.39 ID:22Ix2nfY.net
―――


翌朝


千歌「ふわぁ……ってやば、もう行かなきゃじゃん!」

千歌「ヤバいヤバいっ、朝ご飯食べる時間も無いよー!」バタバタ


千歌「――あれ?」


千歌「美渡姉、志満姉」

千歌「お母さん、いないの?」


千歌「おかしいなぁ……朝早く出るとか何も聞いてないんだけど」

360: 2018/01/18(木) 00:18:29.63 ID:22Ix2nfY.net
―――


バス停


千歌「……あれ、梨子ちゃんがいないや」


千歌(いつもなら待っててくれてるのに)

千歌(何か用事でもあるのかな……ちょっと寂しい)

361: 2018/01/18(木) 00:19:33.11 ID:22Ix2nfY.net
―――




千歌(よし、今日は普通に間に合った)


千歌「みんなおはよー!」ガラッ


ザワッ…


千歌「えと……おはよう?」


シーン


千歌「ど、どうしたのさみんな……もしかして私、何かしちゃった?」


むつ「千歌……」

よしみ「あの、千歌ってさ」


よしみ「――ヴァンパイア、なの?」

362: 2018/01/18(木) 00:21:12.67 ID:22Ix2nfY.net
千歌「え……」

むつ「ちょっとよしみ……」

いつき「ねえ、違うって言ってよ千歌……お願いだから」

千歌「どういうこと……?」



むつ「千歌、今朝のニュースみた?」

千歌「……見てない」

むつ「また殺されたんだよ。しかも、今度は内浦で」

よしみ「事件が起きたのは未明。ヴァンパイアは今、内浦にいる可能性が高いんだよ」

363: 2018/01/18(木) 00:21:39.87 ID:22Ix2nfY.net
千歌「ちょ……ちょっと待ってよ。それで、どうして千歌がヴァンパイアってことになるのさ」

むつ「千歌、最近おかしかったじゃん」

いつき「この間の体育で千歌がすごい活躍したでしょ? でもあんなの、今までの千歌じゃありえなかった」

よしみ「それだけじゃない。私、見ちゃったの」


よしみ「昨日、生徒会長の家で……千歌がルビィちゃんの首に噛みついてた」

千歌「なっ……!」


千歌(うそっ……見られてた!?)


よしみ「窓越しだったけど、ちょっとだけ見えた。赤い髪のツインテールの女の子の首筋に、蜜柑色の髪色をした女の子が顔をすり寄せてた」

よしみ「最初はびっくりして、そういう関係なのかなって一瞬思ったんだけど……でも、最近の千歌を見てたらさ」

むつ「千歌がヴァンパイアだとしたら、辻褄が合うんだよ」


千歌「まって……待ってよ、私は……」

364: 2018/01/18(木) 00:22:12.32 ID:22Ix2nfY.net
いつき「それに、大分前から噂が立ってたの。曜ちゃんが倒れて、学校に救急車が来た時から」


いつき「――千歌が、Aqoursメンバーの血を飲んでいるかもしれないって」

むつ「退院してからも日に日にやせ衰えていく曜の姿を見てたら、誰だって違和感感じるよ」


千歌「だからって、私がヴァンパイアってことにはならないよ……?」

千歌「だって、ほら……なんの証拠もないわけで」


よしみ「千歌も知ってる通り、この辺じゃ昔からヴァンパイアに関する噂がいくつも流れてる。それが実話から来ていることも大半が知ってる」

むつ「昔からこの辺には、ヴァンパイアが住み着いてるんだよ」

よしみ「だから、きっと千歌もヴァンパイアに噛まれて、急に変になったんじゃないかって……」

千歌「噛まれて……?」

いつき「ヴァンパイアに噛まれた人は、みんなヴァンパイアになっちゃうってことも」

365: 2018/01/18(木) 00:22:48.72 ID:22Ix2nfY.net
千歌「……待って、それは違うよ!」

千歌「ヴァンパイアに噛まれても、その人はヴァンパイアにはならない。迷信なんだよ!」


ザワッ…


千歌「だから、ね……千歌はヴァンパイアになってなんか……」

むつ「……その話が本当だったとしてさ」


むつ「――どうして、千歌がそれを知ってるの?」


千歌「あ……」

366: 2018/01/18(木) 00:23:21.86 ID:22Ix2nfY.net
ガラッ


梨子「ハァ…ハァ……」

千歌「梨子ちゃん……」

梨子「ごめん、ちょっと職員室にいたの。曜ちゃんはまだそこにいる」

千歌「なん……で?」


梨子「――先生たちを説得するために」


スタスタ…


梨子「ねえみんな、千歌ちゃんに謝って」


ザワッ…


梨子「謝りなさいっ!」

千歌「梨子ちゃん……」


梨子「……あなたたちが不用意に噂を広めたせいで、先生たちの間でも千歌ちゃんがヴァンパイアなんじゃないかって話が出てるのよ」

梨子「もしかしたら、千歌ちゃんはもう……ここにはいられないかもしれない」

367: 2018/01/18(木) 00:24:01.24 ID:22Ix2nfY.net
ウウウ――!


梨子「え……このサイレンって」


ドタドタッ…


曜「――ごめんっ、警察呼ばれたっ!!」

梨子「嘘でしょっ……!」

千歌「けい……さつ……?」


グイッ


千歌「わわっ! よーちゃん!?」トテトテ

曜「逃げるよ千歌ちゃん!」

千歌「逃げるって、どこに……!?」

梨子「わからない! けど、もうここにはいられないわ!!」

368: 2018/01/18(木) 00:24:31.02 ID:22Ix2nfY.net
パタパタ…

ガチャッ


梨子「……なに、これ」


『――そこで止まれ!』


曜「そんな……囲まれてる」

梨子「ヴァンパイアがいるかもしれないってだけで、こんなに出動するなんて……」


千歌「……2人とも、逃げて」

曜「え?」

千歌「私と一緒にいたら、2人まで巻き添えになっちゃうから」


梨子「ダメ……殺されるかもしれない……!」

千歌「2人が傷つくよりはマシだよ。大丈夫、流石に殺されはしないって」

369: 2018/01/18(木) 00:25:00.62 ID:22Ix2nfY.net
パアンッ


千歌「――っ」

千歌「ぐっ……」


曜「千歌ちゃん!!」

梨子「肩がっ……」

千歌「平気……血は出てるけど、大したことないよ」


曜「このっ……!」ガバッ


曜「やめてください! この子はただの高校生なんですよ!」


『離れなさい! そこにいたら危険だ!』


曜「いや! いやだ! 絶対にどかないっ!!」

千歌「よーちゃん、逃げて!」バッ

梨子「危ないっ!!」

370: 2018/01/18(木) 00:25:28.93 ID:22Ix2nfY.net
『……な、何者だ貴様!』

『確保! こいつもヴァンパイアだ!』


「――静まりなさい」



曜「機動隊が……止まった?」


高海母「なんとか間に合ったわね」スタスタ


梨子「シールドの間から堂々と……」

高海母「催眠術よ。あの人数だと、もって数分」

千歌「お母さん、どうしてここに……?」


高海母「千歌……一緒に逃げましょう」

387: 2018/01/18(木) 23:55:31.01 ID:PuaIMi+Z.net
千歌「逃げる……?」

高海母「誰もいない場所へ。分かるでしょ……もう内浦にはいられないの」

千歌「そんな……」

高海母「さあ早く。迷ってる暇はない」


曜「――私も連れて行ってください」

千歌「曜ちゃん?」

高海母「駄目よ、危険だわ」

梨子「私も、お願いします」

千歌「梨子ちゃんまで、何言ってるのさ……」

高海母「無関係の子まで巻き込むわけにはいかないの」

曜「私は千歌ちゃんの親友です!」

梨子「私だって!」

高海母「……」

388: 2018/01/18(木) 23:55:58.52 ID:PuaIMi+Z.net
千歌「二人とも。……お願いだから、ここで待ってて」

曜「千歌ちゃん……」

梨子「絶対邪魔なんてしない、千歌ちゃんの力になるって約束するから……だから……!」

千歌「信じて待っててほしい。必ず戻ってくるから……ね?」


曜「あ……ぁ……行かないでよぉ……」グスッ


千歌「お母さん」

高海母「ええ」


梨子「千歌ちゃん……!」ポロポロ


千歌「曜ちゃん、梨子ちゃん……またね」

389: 2018/01/18(木) 23:56:24.91 ID:PuaIMi+Z.net
―――



ザー…


千歌「ハアッ…ハアッ……」

千歌(雨が降ってきた……体がビショビショだよ)

高海母「ハッ…ハッ……いけないわね、もう3時間は走り続けてる」

千歌「車とかないの?」

高海母「車じゃ逃げきれない。ヴァンパイアだもの、こっちの方が利点が多いのよ」

千歌(曜ちゃんと梨子ちゃん、待たせて正解だった……)


ウウウ―――!


千歌「やばっ、もう追いついてきた!」

高海母「今日で撒くのは難しいか……」スッ

千歌「お母さん……?」


高海母「知り合いに匿ってもらうことにするわ」

390: 2018/01/18(木) 23:57:14.57 ID:PuaIMi+Z.net
―――



ザー…


高海母「通り雨だろうし、じきに止むわ」


ガラッ


千歌「……なに、ここ」

高海母「見た通りお寺よ。今夜だけ貸してもらうことにしたの」


高海母「さてと。私はご飯買ってくるから、千歌はここで待ってなさい」

千歌「だ、ダメだよ……いつ警察に見つかるか……」

高海母「千歌はまだ使えないかもしれないけど、ヴァンパイアは催眠術が得意なのよ。大丈夫、お母さんの心配はいらないわ」


高海母「――いい子にして、待っててね」ニコッ

千歌「……うん、わかった」

391: 2018/01/18(木) 23:57:42.89 ID:PuaIMi+Z.net
―――



ザー…


千歌「……!」ビクッ


ブォォォ…


千歌(……なんだ、普通の車か)

千歌(走行音が聞こえる度、つい反応しちゃう)


ブルルルル……プシュッ


千歌「――え?」


ガチャッ……バン


千歌(うそ……どうしてこんな所で停まるの!?)

千歌「まさか、警察……?」


カツカツカツ…


千歌「いや……いや……来ないで……」

392: 2018/01/18(木) 23:58:13.37 ID:PuaIMi+Z.net
ガララッ


鞠莉「ハウアーユー、千歌っち」

千歌「え……鞠莉ちゃん?」

鞠莉「ええ。マリー本人で間違いないわ」

千歌「どうして……ここが分かったの?」

鞠莉「よくぞ聞いてくれました!」フフン

鞠莉「実は、千歌っちの制服には発信器が取り付けてあるのデース!」

千歌「えぇっ!?」

鞠莉「ノープロブレム! 超小型だから、せいぜい今いる場所くらいしか分からないわ」

千歌「ど、どこにつけてるの!?」

鞠莉「首の襟元よ。大抵の人は気づかないわねー」

千歌「うぅ……人権侵害だよぉ」

鞠莉「ソーリーソーリー。だって……今日の当番は私でしょ?」

千歌「あ……」

393: 2018/01/18(木) 23:58:39.79 ID:PuaIMi+Z.net
千歌(さっきから緊張しっぱなしだったから気付かなかったけど……すごい喉が渇いてる)

千歌「えと……」


鞠莉「いいわよ、好きなだけ飲んで。あ、死なない程度にお願いね」

千歌「……ごめん、鞠莉ちゃん」

鞠莉「ノーノ―。こういう時は……」


鞠莉「――ありがとう、でしょ?」

千歌「あ……うん、そうだよね」


千歌「鞠莉ちゃん、ありがとう」


鞠莉「……」シュルッ

千歌「えっ……ちょ、鞠莉ちゃん!?」

鞠莉「ん? どうかしたの?」

千歌「なんで服脱いでるの!?」

鞠莉「だって、これから私の血を飲むでしょう? 服を着てたら邪魔かと思って」キョトン

千歌「そりゃそーだけど、でもぉ……///」

394: 2018/01/18(木) 23:59:08.16 ID:PuaIMi+Z.net
千歌(確かに、今まで服に血が付かないように結構気をつけてきた……大抵理性は飛んでたけど)

千歌(でも、だからって……)


鞠莉「なあにぃ? やっぱり女同士でも、裸だと気になっちゃう?」

鞠莉「案外千歌っちってウブなのね♪」

千歌「な……」カチーン

鞠莉「下着はつけたままだから、あんまり気にしなくていいわよ」

千歌「……」スタスタ

鞠莉「それとも、キャミはつけたままの方が――」


グイッ


鞠莉「きゃっ!」

鞠莉「……ち、千歌っち?」

千歌「フー…フー……」

鞠莉「あの、後ろから息吹きかけられると、くすぐったいっていうか……」

千歌「――黙って」

鞠莉「え……?」

千歌「鞠莉ちゃんが悪いんだよ」

395: 2018/01/19(金) 00:00:06.36 ID:7xxTxOjP.net
カプッ


鞠莉「やっ……あ……ん……///」

千歌「グチュ……ジュルルル……」

鞠莉「んっ……んんっ……」プルプル

千歌「レロ……クチャ……ゴク…ゴク……」

鞠莉「ああんっ……やめ……て……ぇ……///」ゾクゾク

千歌「ゴク…ゴク……」

鞠莉「はぁっ……ん……あぁ……」


鞠莉「ちか……っち……だめ……ぇ……」ウルウル

千歌「ゴク……プハッ……ペロ…………鞠莉ちゃん?」

鞠莉「ハァ……ハァ……」

千歌「もしかして……」サワサワ


ヌルッ


鞠莉「ひゃっ!」

千歌(濡れてる……床に滴り落ちるくらいに)

鞠莉「だからぁ……やめてって言ったのに……///」カァァァ


千歌「まさか、もらし――」

鞠莉「シット! 言わないでよぉ!!///」

396: 2018/01/19(金) 00:00:39.83 ID:7xxTxOjP.net
―――




鞠莉「グスッ……千歌っちのばか……」

千歌「ごめん……鞠莉ちゃん」

鞠莉「もうお嫁にいけないじゃない」

千歌「そんなことはないと思うなー……なんて」

鞠莉「……」ツーン

千歌「うぅ……許してぇ」


鞠莉「――ここ、前にみんなで泊まったことがあるの」

千歌「え?」

鞠莉「作詞、二手に別れてしたことがあったでしょう? その時雨が降って、このお寺で雨宿りしたのよ」

鞠莉「千歌っちがここにいるって知った時はびっくりした」

千歌「まあ、警察もこんな所に隠れてるとは思わないだろうから」

397: 2018/01/19(金) 00:01:27.41 ID:7xxTxOjP.net
ヒュウウウ…


鞠莉「……」ブルッ

千歌「少し、寒いね」

鞠莉「うん」


ギュッ


鞠莉「千歌っち?」

千歌「こうすれば、寒くないでしょ」

鞠莉「……血、飲まないでよね」

千歌「飲まないよ。さっきもらったばっかじゃん」

398: 2018/01/19(金) 00:01:53.33 ID:7xxTxOjP.net
千歌(……そういえば、鞠莉ちゃんの血は、普通に飲めた)

千歌(ルビィちゃんの時とは違って、ちゃんと美味しかった。いくらでも飲みたいくらい)

千歌(その人の全てを、自分のものにしたいくらい)


鞠莉「――お願いだから、どこにもいかないで」

千歌「……え?」

鞠莉「千歌っちがいなくなったら、ラブライブはどうするの? せっかく決勝まできたのに」

千歌「……もう、それどころじゃないよ」

鞠莉「分かってる……分かってるの、そんなこと」


鞠莉「それでも……みんなとあの舞台で歌うのが、私の夢だったから」

千歌「うん」

鞠莉「私も頑張る。だから、千歌っちも頑張って」

千歌「うん……」ギュウッ

399: 2018/01/19(金) 00:03:01.73 ID:7xxTxOjP.net
―――





高海母「……このくらいの高さでいいかしら」

高海母(内浦全体を見渡せる場所。淡島ホテルの屋上に来てるとは、誰も思わないでしょうね)


高海母(今夜も、きっと犯人は現れる)

高海母(2日連続で人の血を飲み干すくらいだもの。相当血に飢えているに違いない)


高海母「……哀れね」

高海母「それも、今日で最後にしてあげる」


高海母(でも……少しだけ違和感がある)

高海母(どうして犯人は、今までずっと隠れることができたのかしら)

高海母(人間の血液全てを飲み干すまでに吸血欲が育つまでには相当の時間がかかる。人間の血を飲み始めたのは、ここ数日の出来事ではないはずよ)

高海母(しかも、よりによって千歌に症状が表れ始めた時期に……)

高海母(まさか……その事実をもみ消していたとでも?)

高海母(一体誰が……)


高海母(――何か、大きな組織が関わっているというの?)

400: 2018/01/19(金) 00:03:38.83 ID:7xxTxOjP.net
コツコツコツ…


高海母「はっ……女性、か」

高海母(いくら人間より五感が優れているとはいえ、犯人像が絞れないこの状況では骨が折れるわね)


キャッ!


高海母「――!」


「誰か……誰かっ!!」


高海母「来た……!」

高海母(階段から下りている暇はない……飛び降りるっ!)

401: 2018/01/19(金) 00:04:16.06 ID:7xxTxOjP.net
バタバタバタ……シュタッ

ヒュウウウウ――ダンッ!


通行人「だ……れか……」ガクンッ


ジュル……ゴク…ゴク……


高海母「やめなさい」


「……誰ですか?」


高海母「その人を離しなさい。……あなたが吸血事件の犯人ね」


「……」スッ


通行人「あ……ぅ……」バタン

高海母(よし……辛うじて息はあるわね)


高海母「貴方が派手にやってくれたおかげで、私の子供に容疑がかかってるのよ」

高海母「まあ、一概に貴方だけのせいとは言い切れない……けれど……」


高海母「――あなた、は……」

402: 2018/01/19(金) 00:05:05.54 ID:7xxTxOjP.net
―――




千歌(お母さん、帰ってこないなあ)

鞠莉「……ねえ、千歌っち」

千歌「ん?」

鞠莉「このまま、私のホテルに来ない?」

千歌「ホテルって……」

鞠莉「車は帰らせたけど、連絡すればすぐに戻ってくる。ここで一晩過ごすよりずっといいと思うわ」

千歌「そりゃそうかもしれないけど……でも、お母さん待ってるんだ」

鞠莉「千歌っちの?」

千歌「うん、ここで待っててって言われてて」

403: 2018/01/19(金) 00:05:53.49 ID:7xxTxOjP.net
ガチャッ……


千歌「あ、戻ってきたかな」

高海母「……」

千歌「もー、遅いよお母さん」

高海母「ち……か……」


バタッ…


千歌「お母さん……?」

鞠莉「っ……!」


千歌「――お母さんっ!」


グチャッ…ドクドク……


千歌「お母さんっ……血が……!」

高海母「千歌……にげ……て……」

千歌「え……?」

高海母「ここから逃げて……今すぐに」

千歌「どういうこと……待ってて、今すぐ救急車を……」


千歌(――駄目だ。私たちは今、追われてるんだ)

千歌(くっ……そんなこと言ってる場合じゃない!)

404: 2018/01/19(金) 00:06:27.64 ID:7xxTxOjP.net
千歌「お母さん、喋らないで安静にしてて。今すぐ救急車を……」スッ

高海母「……」ギュッ

千歌「お母さん? 離して……そんなとこ掴んでたら、電話かけれないよ!」

高海母「ち……か……」

千歌「え?」

高海母「千歌……ごめんね」


高海母「人間に産んであげられなくて……ごめんね」


千歌「おかあ……さん……?」

千歌「待ってよ……ねえ、返事してよ……なんで目閉じちゃうの?」

千歌「一緒に逃げようって言ったじゃん……置いてかないでよ」


千歌「おか……」


千歌「あ……あぁ……」ポロポロ



千歌「――あああああああああああああああっっっ!!」

425: 2018/01/20(土) 23:26:15.10 ID:QkeCksU/.net
鞠莉「千歌……」

千歌「うっ……うぅ……」グスッ


ガラッ


ルビィ「あのぉ……」

鞠莉「ルビィ……? あなた、こんな所で何してるのよ!?」パタパタ

ルビィ「あ、あの……道路に血の跡が点々と続いてて、ここに…………ハッ」

ルビィ「千歌……さん? その人は……」

鞠莉「ルビィ、今はそっとしてあげて」


ルビィ「酷い出血……きっと、ヴァンパイアにやられたんだ」

鞠莉「え?」

ルビィ「さっき、内浦でまた犠牲者が出たんです。きっとその人も……」

426: 2018/01/20(土) 23:29:10.71 ID:QkeCksU/.net
鞠莉「――ちょっと待って」


鞠莉「ルビィ……あなた、どうしてそれを知ってるの?」

ルビィ「へ?」

鞠莉「犠牲者が出たって話」

ルビィ「いや……ニュースで報道されていたから」

鞠莉「いや、報道なんてされてない」カツカツ

鞠莉「この片耳イヤホン、私のスマートホンと繋がっててね。何かあったら逐一報告が入るようになってるの」

鞠莉「被害者が倒れていた場所は小原ホテルの駐車場。その女性を発見したのはホテルのスタッフで、意識はあったからすぐに救護室へ運んだの」

鞠莉「119番通報をするか聞いたら、必要ないと言ったらしいわ。報道以前に、事件にすらなっていないのよ」

ルビィ「いや……多分その件じゃなくて」

鞠莉「じゃあ何? テレビ、ラジオ、インターネット。何一つそれらしい事件はなかったみたいだけど」

427: 2018/01/20(土) 23:29:39.61 ID:QkeCksU/.net
ルビィ「……えへ」


ルビィ「バレちゃったかぁ」


鞠莉「ルビィ、あなた……」


ガバッ


千歌「――っ」

鞠莉「千歌っ!?」


千歌「あああっ!!」ブン

ルビィ「わわっ」


ルビィ「ふぅ……千歌ちゃん、いきなり何するの?」

鞠莉「千歌、落ち着いて!」

千歌「ハアッ……ハアッ……」


ルビィ「そんな怖い目で睨まないでよ」


ルビィ「――イライラしちゃうから」

428: 2018/01/20(土) 23:31:55.97 ID:QkeCksU/.net
―――




千歌「あ……ぐ……」ドクドク

鞠莉「千歌! しっかりして!! 千歌っ!!」


ルビィ「いっぱい出たね」ニコッ


鞠莉「千歌……死なないで……!」グッ

鞠莉「ダメ、止まらない……!」


ルビィ「お腹に穴が開いたんだよ? そう簡単に止まるわけないじゃん」

ルビィ「さて……まーりちゃん♪」

鞠莉「……!」ゾクッ

ルビィ「ルビィ、喉渇いちゃったなあ」ジュルリ


グイッ


鞠莉「きゃあっ!」

ルビィ「大人しくしてくれたら、すぐに終わるよ」

鞠莉「こんなことして、一体何が望みなの……?」

ルビィ「何もないよ? ルビィはただ、自分のしたいようにするだけだもん」

鞠莉「屑ね……」

ルビィ「あーあ、そういうこと言うんだね。鞠莉ちゃんだから少し加減しようと思ったけど……やーめた♪」

429: 2018/01/20(土) 23:32:31.42 ID:QkeCksU/.net
鞠莉「――っ!」


ビリビリッ


ルビィ「いっつ……」フラッ


鞠莉「ただでやられるわけ無いでしょ? こう見えてもアウトドアなのよ、私」

ルビィ「スタンガン……なんでそんなもの……」

鞠莉「元々今日は千歌に血をあげる予定だったからねー。ホントは鎮静剤があればよかったんだけど、たまたま在庫が無くて。こんなもの千歌に使いたくはなかったけど、不幸中の幸いだったみたい」


ブオオオオオオ……ブウンッ


鞠莉「来たっ!」


ガラッ


黒服A「ご無事ですか、お嬢様!」

黒服B「動くな!」カチャッ

430: 2018/01/20(土) 23:32:59.47 ID:QkeCksU/.net
ルビィ「わー……物騒だなぁ……」

ルビィ「で、ルビィのこと撃てるの?」スタスタ


パンッパンッ


ルビィ「――っ」

ルビィ「うっそ……ホントに撃つんだ」ドクドク


ダッ


黒服B「待てっ!」バタバタ


黒服A「お嬢様、お怪我は!?」

鞠莉「私はいいから、千歌の治療を!」


千歌「ハッ……ハッ……」

千歌「おかあ……さん……」

431: 2018/01/20(土) 23:33:32.51 ID:QkeCksU/.net
―――




千歌「……」パチッ

千歌「……ここは?」


鞠莉「――やっと起きた」

千歌「鞠莉ちゃん……あれ、曜ちゃんもいる」

鞠莉「疲れて眠ってる。千歌、もう3日も眠ってたんだもん」


千歌「ここ、どこ?」

鞠莉「病院よ。あ、警察の人は来てないから大丈夫。小原家直営の場所だから、外部の人間はそう簡単に立ち入れないわ」

千歌「そっか……いてて」

鞠莉「起き上がらないで。傷が開いちゃう」


千歌「……ルビィちゃんは?」

鞠莉「わからない。追跡したけど、撒かれちゃった」

432: 2018/01/20(土) 23:34:11.51 ID:QkeCksU/.net
千歌「――そうだ、お母さん!!」

鞠莉「千歌……」

千歌「お母さんは!? ねえ鞠莉ちゃん、教えて!!」


ガラッ


千歌「志満姉?」

志満「千歌……」


志満「――お母さんは、もうこの世にいない」

千歌「え……どういうこと?」

志満「言葉の通り。千歌と一緒に病院に搬送されて……その時には、もう死んでたって」

433: 2018/01/20(土) 23:34:48.50 ID:QkeCksU/.net
千歌「そん……な……」


千歌「なんで……なんで!」

千歌「志満姉も、美渡姉も、お父さんも!! なんであの時傍にいてくれなかったのさ!!」

志満「千歌……」

千歌「私たちが警察に追われてる間……3人ともどこに行ってたの? ねえ……」


志満「千歌……あのね、よく聞いて」

志満「私たちは、決して貴方を見捨てたわけじゃない」

志満「2度目の事件が報道されたあの朝、私たちは誤解を解くために色々な場所へ行ったの。なぜなら、あの時には既に千歌の噂が地域中に広まっていたから」

志満「でも、すぐに警察が動き出して……私たちは内浦から逃げ出す以外なかった」

志満「お母さんは、危険を承知で貴方を迎えに行ったのよ」


千歌「もう出てって」

志満「千歌……」


志満「ごめんなさい」

434: 2018/01/20(土) 23:36:34.79 ID:QkeCksU/.net
―――




鞠莉「千歌っち」

千歌「……」

鞠莉「ちーか!」

千歌「なに……」

鞠莉「血は飲まなくていいの?」

千歌「そんな気分じゃないよ」

鞠莉「だって貴方、もう3日も飲んでないのよ。輸血は体内の不足分を補っただけで……それとこれとは別でしょ?」

千歌「いいって」

鞠莉「顔色が悪いわ」

435: 2018/01/20(土) 23:37:01.32 ID:QkeCksU/.net
千歌「――だからいいって!」

鞠莉「千歌っち……」

千歌「ハァ…ハァ……」


千歌「ごめん、八つ当たりした」


鞠莉「……ううん、気を遣えなかったのは私の方」

鞠莉「色々混乱してるわよね。私、少し外に行ってくるわ」

千歌「……」

鞠莉「何か欲しいものはある?」

千歌「……みかん」

鞠莉「クスッ……オーライ、任せて」


ガラッ

436: 2018/01/20(土) 23:37:27.12 ID:QkeCksU/.net
曜「う……ん……」モゾモゾ

曜「ふぇ?」キョロキョロ


千歌「よーちゃん……」

曜「……千歌ちゃん?」


曜「――っ」ウルウル


曜「千歌ちゃんっ!!」ガバッ

千歌「よーちゃん!?」

曜「千歌ちゃんっ!! 千歌ちゃんっ!!」ギュー

千歌「く、苦しいよ……」

曜「よかった……無事でよかった……!」


千歌「……うん」


千歌「ただいま、よーちゃん」

437: 2018/01/20(土) 23:37:58.57 ID:QkeCksU/.net
―――




曜「……ねえ、千歌ちゃん」

千歌「ん?」

曜「喉渇いてない?」

千歌「……ちょっとだけ」

曜「嘘だ。3日も寝込んでたんだもん」

千歌「……ごめん。実は、死にそうなくらい」


曜「――千歌ちゃん、おいで」ニコッ

曜「私の血、飲んでいいよ」


千歌「よーちゃん……」

曜「大丈夫、たくさん食べてたくさん寝たから。元気全開DAY!DAY!DAY!だよ!」

千歌「……」ポケー

曜「えと……千歌ちゃん?」

千歌「……クスッ」

千歌「フフッ、よーちゃんったらー」クスクス

曜「笑わないでよー!」

438: 2018/01/20(土) 23:38:26.50 ID:QkeCksU/.net
千歌「……よーちゃん」ギュッ

曜「わわっ」


千歌「……」ギュウッ

曜「……///」カァァァ


千歌「病院なのに、いいのかな」

曜「気にしなくていいと思う。個室だし、誰にもバレないよ」

千歌「なんか、いけないことしてる気分」

曜「その方が興奮するし」

千歌「よーちゃん……いつの間にそんな   になったの?」

曜「千歌ちゃんが構ってくれないから」

千歌「ふーん……」


千歌「なら今日は、たくさん構ってあげる」

曜「うん……///」

439: 2018/01/20(土) 23:39:41.22 ID:QkeCksU/.net
千歌「ペロッ」

曜「ひゃっ!」

千歌「ここ、噛むから」

曜「はい……」ボソッ

千歌「怖くないの?」

曜「怖くないよ……千歌ちゃんだもん」


曜「ねえ、焦らさないでよ」ギュウッ

千歌「私も……もう我慢できないや」

曜「はやく」


千歌「――いただきます」


カプッ


曜「ひゃ……///」

千歌「グチュ…チュルッ……」

曜「あんっ……や……んんっ……///」ビクン

千歌「ジュル……ゴク……」

曜「は……ぁ……きもち……いい……よぉ……」

千歌「ゴク……ゴク……」

曜「ち……か……」ビクビクッ

442: 2018/01/20(土) 23:40:16.57 ID:QkeCksU/.net
千歌「プハッ……ハァ…ハァ……」ジッ

曜「はっ……ん……」

曜「千歌ちゃん……キス……したい」

千歌「チカも……したい」


チュッ


千歌「チュル…ピチャ……レロ……」

曜「んっ……ムグ……ジュルルル……」


曜「チュ……」サワサワ

千歌「あっ……ん……」

千歌「よーちゃん……どこ触ってんのさ……///」

曜「千歌ちゃん、少しおっきくなった?」

千歌「うっさい」

曜「フフッ……」

443: 2018/01/20(土) 23:41:09.53 ID:QkeCksU/.net
曜「だって……好きな人のものは、全部欲しいから」


千歌「――っ」

曜「……」カァァァ///


千歌「……チカも」

曜「え?」

千歌「私も……よーちゃんのこと、好き」

曜「っ……///」


千歌「両想いだね」

曜「うん……」


チュッ

447: 2018/01/21(日) 00:31:04.96 ID:VMObSvXu.net
―――




千歌「ハァ…ハァ……」

曜「千歌ちゃん……もっとほしい……///」

千歌「うん……」スルッ


ガラッ


梨子「千歌ちゃーん、鞠莉ちゃんから起きたって聞いたから、差し入れ……」

千歌「梨子……ちゃん」

梨子「……」ストン

曜「ちょ、袋落としたよ……?」

梨子「な……な……」


梨子「――なにやってるの!?」


パーン

448: 2018/01/21(日) 00:31:30.53 ID:VMObSvXu.net
―――




梨子「もう……2人とも   なんだから……///」プンプン

千歌「ごめーん……」

曜「なんで私だけ……」ヒリヒリ


梨子「で、体の方は……その調子だと大丈夫そうね」

千歌「まあ……ぼちぼち」

梨子「あのね、千歌ちゃん……学校のことなんだけど」

千歌「……うん」

梨子「違うの。悪い知らせじゃなくて……みんな千歌ちゃんに謝りたいって」

梨子「実はあの後、また事件があったの」

千歌「え?」

梨子「一昨日の夜、また一人犠牲者が出た」

千歌(ルビィちゃん……!)

449: 2018/01/21(日) 00:31:56.37 ID:VMObSvXu.net
梨子「それでね……よしみちゃんといつきちゃん、むつちゃんがここにお見舞いにきたんだ」

千歌「あの3人が?」

梨子「もちろん先生や親には内緒にしてもらって、こっそりと」

梨子「千歌ちゃんが入院しているのに同じような事件が起こるってことは、やっぱり千歌ちゃんは犯人じゃなかったんだって」

千歌「……」

梨子「千歌ちゃんが人を殺すはずないってみんな分かってる。ただ怖がってただけなんだよ」

梨子「それでも、千歌ちゃんに迷惑をかけてしまった事は事実だから」

梨子「だから……謝りたいって」

千歌「そっか」


梨子「また一緒に学校に行こう、千歌ちゃん」

千歌「うん」ニコッ

450: 2018/01/21(日) 00:32:44.65 ID:VMObSvXu.net
―――


翌日


千歌「暇だなあ」

千歌(もう怪我は治ってるんだけど……流石に早すぎるっていうか、怪しまれるよね)

千歌(もう18時か。そろそろ誰か来るのかな)


ガラッ


ダイヤ「どうも、千歌さん。元気にしていましたか」ニコッ

千歌「げっ……」

ダイヤ「なんです、その表情は。折角お見舞いに来てあげたというのに」

千歌「だって……ダイヤさん、ハンターだし」

ダイヤ「今日は友人として、ここにきているのです」

千歌「……うん、わかった」


ダイヤ「ところで……千歌さんは、ここ最近の連続殺人犯と対峙したようですわね」

千歌「あ……うん」

ダイヤ「その場に居合わせたという鞠莉さんにもお話を伺ったのですが、話してはくれませんでした」

千歌(当然だよ。だって犯人は、ダイヤさんの妹なんだもん)

千歌(言えるわけがない)

451: 2018/01/21(日) 00:33:26.13 ID:VMObSvXu.net
ダイヤ「黒澤家長女として、引き下がるわけにはいかないのです。……強力してくれませんか」

千歌「警察なら何か知っているんじゃないですか」

ダイヤ「まさか。警察は何も話してはくれませんよ」

千歌「え……?」

ダイヤ「ヴァンパイアに関する情報は、国の最重要機密事項なのです。一切の漏洩も許されないのですわ」

ダイヤ「事実、内浦でも噂として広まるに留まっているでしょう。まあ、ほぼほぼ事実として受け止められてしまっているようですが」

千歌「まさか、今までヴァンパイアの存在が隠されていたのは……」

ダイヤ「国の圧力ですわ。建前は国民を混乱させないように。本音は面倒事を増やさないように。殺人鬼が平然と歩いている国と知られては、国家の信用問題に関わりますから」


ダイヤ「こんなことまで千歌さんに話したのは、千歌さんを信用しているからです」

ダイヤ「千歌さん、私を信用してはもらえませんか?」

452: 2018/01/21(日) 00:33:54.11 ID:VMObSvXu.net
千歌「……わかりました」


千歌「私が出会った犯人は……ルビィちゃんです」

ダイヤ「……ルビィ?」

千歌「はい、間違いありません」

千歌「目が赤く染まり、歯も鋭く尖っていた。ヴァンパイアの特徴と一致しています。加えて、あの時鞠莉ちゃんの血を飲もうとして……」


ダイヤ「――ふぅ」カチャッ

千歌「ダイヤさん……その拳銃は?」


チャキッ


ダイヤ「残念です、こんな形でお別れになってしまうなんて」

千歌「……どうして」

ダイヤ「どうして? 当然でしょう」



ダイヤ「――姉が妹を守るのに、理由が必要ですか?」

478: 2018/01/22(月) 00:40:36.24 ID:g9poFrBX.net
千歌「……ダイヤさん、正気に戻ってください」

ダイヤ「私は正気ですわ。貴方が思うよりずっと落ち着いています……自分でも怖くなるくらいに」

千歌「これ以上犠牲者を増やすつもりですか」

ダイヤ「知った事かと」

千歌「……!」

ダイヤ「あの子のためならば、私はこの身を悪魔にだって捧げて見せる」

千歌「違う……そんなのダイヤさんじゃない。私の知ってるダイヤさんじゃないよ」

ダイヤ「お母様のことは残念ですが。だからこそ、早くあなたも同じ場所へ行かせて差し上げますわ」

千歌「まだ分からないんですか!? 自分がどれだけ狂っているのか!!」


ダイヤ「――分かってる!!」


ダイヤ「これが禁忌であることはとっくにわかってる……でも、仕方ないでしょう?」

ダイヤ「あの子は、たった一人の妹なんですのよ」ポロポロ

479: 2018/01/22(月) 00:41:04.01 ID:g9poFrBX.net
ダイヤ「いいですか、千歌さん」

千歌「え?」

ダイヤ「これは殺し合いです……ハンターがヴァンパイアを銃で殺すか、ヴァンパイアがハンターを吸血で殺すか」

千歌「吸血……?」

ダイヤ「実に簡単な話でしょう。貴方の目的はただ一つ」

ダイヤ「――ただ、私の血を飲むこと」


千歌(まさか)


千歌「……わかりました」


ダイヤ「話は終わりです。あと5秒……3、2、1――」

480: 2018/01/22(月) 00:41:55.26 ID:g9poFrBX.net
千歌「――っ!」ダンッ

ダイヤ「速いっ……!」


ガバッ


ダイヤ「ぐあっ……!」

千歌「すみません、ダイヤさん」


グチャッ…


千歌「ジュルッ……ゴク…ゴク……」

ダイヤ「あ……ぅ……」


千歌「――っ」

481: 2018/01/22(月) 00:42:27.12 ID:g9poFrBX.net
――――――

――――

――


ダイヤ『なにこれ……どういうこと』

ダイヤ『ルビィ……?』


ルビィ『おかえり、お姉ちゃん』


ダイヤ『お母様、お父様……』

ダイヤ『ルビィ……貴方、二人に何を?』

ルビィ『血をもらったんだよ』

ダイヤ『……え?』

ダイヤ『ちょっと待って。そんなの、まるでヴァンパイアみたいな……』

ダイヤ『口元に血をつけて……ああ、もしかして3人で私を驚かせようとしているの?』

ダイヤ『お母様、お父様、早く起きてくださいな』


ルビィ『起きないよ。たくさん血もらったから』

ダイヤ『な……』

ルビィ『ルビィの瞳、赤く染まってるでしょ』

ルビィ『お姉ちゃんならわかるよね……この意味が』

482: 2018/01/22(月) 00:42:52.58 ID:g9poFrBX.net
―――




ダイヤ『あのっ……すみません』

医者『……ああ、娘さんですか』


医者『なんとか、一命は取り留めました』

ダイヤ『ホッ……』

医者『ただ、お二人とも搬送時には体内の血液量が3分の2を下回っていたもので……後遺症が残るリスクがあります』

ダイヤ『そんな……』

483: 2018/01/22(月) 00:43:20.03 ID:g9poFrBX.net
―――



ペラッ…ペラッ…


ダイヤ『ありえない……ありえませんわ』

ダイヤ『ただの人間が、突然ヴァンパイアに変異するなど』

ダイヤ『どの医学書にも載っていない。当然ですわね』


ダイヤ『いや……』


――ダイヤ、よく聞きなさい。

――ヴァンパイアは人間の血を飲むと、その記憶を読み取ることができる。

――更に純血種においては、その人間と瓜二つの姿に変身することもできるのです。


ダイヤ『以前お母様から聞いた知識。当時はまさかそんな非科学的なことが……と疑っていましたが』

ダイヤ『それが事実だとしたら』

484: 2018/01/22(月) 00:43:46.82 ID:g9poFrBX.net
―――




カチャッ


ルビィ『お姉ちゃん……なんのつもり?』

ダイヤ『その姿で私を呼ばないでください』

ルビィ『どうして? 私、ルビィだよ……よく見て?』

ダイヤ『貴方はルビィじゃない』

ルビィ『証拠はあるの』

ダイヤ『あの子は決して家族を傷つけたりなどしない。それこそが何よりの証拠ですわっ!』


パアンッ


ルビィ『ぐっ……』

ダイヤ『次は殺します。吐きなさい、本物のルビィはどこ!』

ルビィ『……私を殺したら、永遠に分からなくなるよ』

ダイヤ『なんですって?』

ルビィ『あの子は今、誰の目にも触れない場所に監禁している。君の妹の命は、私が握っているの』

ルビィ『それでも君は、私を殺せる?』

ダイヤ『卑怯な……!』

ルビィ『クスクス……ざーんねん♪』


ルビィ『じゃあ、私の命令を聞いてもらおうかな』

485: 2018/01/22(月) 00:47:28.14 ID:g9poFrBX.net
―――




ダイヤ『決して立ち入らぬよう両親から言われているのですが』

ルビィ『知らないよ。妹が死んでもいいの?』

ダイヤ『……』


ガチャッ


ルビィ『ワーオ、これはすごいねぇ』

ダイヤ『研究員は避難させました』

ルビィ『余計な事しないでよ』

ダイヤ『何もかも貴方の思い通りにはいきませんわよ』

ルビィ『……まあいいや』

486: 2018/01/22(月) 00:47:54.66 ID:g9poFrBX.net
ダイヤ『わざわざ地下に侵入してまでタブレットが欲しいんですか?』

ルビィ『君って馬鹿なの? あんな毒薬欲しがるわけないでしょ』

ルビィ『私が欲しいのは……ああ、これこれ』

ダイヤ『なるほど……血液錠剤の研究施設には、市民から提供された大量の血液が備蓄されている』

ルビィ『結構長居することになりそうだよ。こんなに大規模な施設初めてだもん』

ダイヤ『黒澤家の裏家業はヴァンパイアハンター。それを知った上で襲ったのでは?』

ルビィ『そこまでは知らなかったけどね。こっちの社会では、内浦を牛耳る黒澤家に施設があるってのは有名な話だよ』

ダイヤ『まさか、そうやって多くの研究所を潰して回っていたんですの?』

ルビィ『うーん……別に潰すのが目的じゃないよ。私はただ、欲しいものを手に入れるだけ』


ルビィ『楽に手に入れる方法があるなら、利用するしかないじゃない』


ルビィ『あ、いーこと思いついた』

ダイヤ『なんですの……?』

ルビィ『これ、毎朝頂戴。飲まないとやってらんないんだよねー』

ダイヤ『ふざけるのも大概にしてください。それは内浦の人々が提供した大切な――』


ルビィ『死にたいの?』


ダイヤ『……わかりましたわ』

487: 2018/01/22(月) 00:48:34.98 ID:g9poFrBX.net
―――




ルビィ『……で、今日は私があの子に血を飲ませるんだっけ?』

ダイヤ『当番はしっかりこなしてもらいますわよ。あまり目立ちたくはないでしょう』

ルビィ『無理無理。だって同種の血は飲めないもん』

ダイヤ『え?』

ルビィ『だーかーらー、ヴァンパイアはヴァンパイアの血を飲めないの。マズすぎて、ゲロ吐くレベル』


ルビィ『あ、そうだ。名案があるよ』

ルビィ『あの子に地下の血を飲ませよう』


ダイヤ『……名案とは言い難いですわね』

ルビィ『冷蔵庫のイチゴ牛乳なら多分バレないでしょ。っていうか、なんでここトマトジュース無いわけ?』

ダイヤ『来客のもてなしにトマトジュースは不審がられると思いますが』

ルビィ『ま、なんでもいいや。誤魔化す方法考えといて』

489: 2018/01/22(月) 00:51:38.78 ID:g9poFrBX.net
―――




ダイヤ『ルビィっ……!』

ルビィ『フフ、わざわざ動画撮ってきたかいがあったかな』

ダイヤ『今度は何が望みですの』


ルビィ『千歌ちゃんだっけ。ちょっと面倒になってきたから、君が潰してきて』

ダイヤ『潰す……?』

ルビィ『この町、ヴァンパイアってだけで過剰反応するでしょ。それ利用すれば簡単だよ』

ダイヤ『馬鹿な事を言わないでください。そんなこと……』

ルビィ『うん、渋ると思った。だからこの動画だよ』

ダイヤ『……用意周到ですわね』


ルビィ『仲間を取るか、妹を取るか。君はどっちを選ぶの?』

490: 2018/01/22(月) 00:52:20.98 ID:g9poFrBX.net
――

――――

――――――


千歌「――っ」チュパッ

ダイヤ「あ……ぐ……」フラッ

千歌「ダイヤさんっ!」グイッ


千歌「ごめん、飲み過ぎた」


看護婦「キャーッ!!」

千歌「え?」

医師「どうした……あっ!」


ブーッブーッ


医師「至急至急! ○○号室のヴァンパイアが暴走した!」

491: 2018/01/22(月) 00:53:03.37 ID:g9poFrBX.net
ザワザワ…


千歌「そんな……」

ダイヤ「行ってください」

千歌「でも」

ダイヤ「――早く!」


ダイヤ「ルビィを……助けて」

千歌「……わかった」


千歌「――っ!」ダッ


パリンッ



「おい、窓から飛び降りた!」

「嘘だろ……5階だぞ?」

492: 名無しで叶える物語 2018/01/22(月) 01:02:37.16 ID:g9poFrBX.net
>>488
何がどうおかしいのか教えて欲しいです

501: 名無しで叶える物語 2018/01/22(月) 20:44:51.89 ID:g9poFrBX.net
保守

502: 名無しで叶える物語 2018/01/22(月) 23:12:38.18 ID:g9poFrBX.net
保守

505: 名無しで叶える物語 2018/01/22(月) 23:30:48.65 ID:g9poFrBX.net
元々庭の半分はセルフです

508: 2018/01/23(火) 01:04:23.98 ID:du/Yol3I.net
―――




千歌(吸血直後だからかな。随分遠くまではっきり見える)

千歌(一時的……いや、血を飲む度に五感が発達してるんだ)


千歌(前までは分からなかったけど……ヴァンパイア独特の匂いが、今ならわかる)

千歌(ルビィちゃんに化けた、あいつの匂いが)

千歌(やっぱりダイヤさんは監視されていたんだ。ダイヤさんが寝返るようなことがあれば、すぐにでもルビィちゃんの下へ行けるように)

千歌(まだこの付近に匂いが残ってる……その方向は)キョロキョロ


千歌「――いた!」

千歌(赤髪を揺らしながら、遠くへと駆けていく小さな背中……間違いない)


千歌「待てっ!!」ダッ

509: 2018/01/23(火) 01:05:04.21 ID:du/Yol3I.net
―――




医師「逃げ出したぞ! あれを外に出すのはマズい!」

医師「ただでさえ警察に目をつけられているというのに……」


鞠莉「――待ちなさい」


医師「君は……小原家の」

鞠莉「あの子を追うのをすぐにやめさせて」

医師「君は自分が何を言っているのか……!」


鞠莉「聞こえなかった? やめろと言ったのよ」

医師「……わかりました」

510: 2018/01/23(火) 01:05:36.57 ID:du/Yol3I.net
ガラッ


鞠莉「ダイヤっ!」

看護師「安静にしていれば問題はないはずです」

鞠莉「ホッ……ありがとう、下がっていいわ」


ダイヤ「くっ……頭がクラクラしますわ」

鞠莉「そりゃそうよ、ぶっ倒れるくらい飲ませたんでしょ」

ダイヤ「多くの記憶を読ませる必要がありましたから」

511: 2018/01/23(火) 01:06:05.95 ID:du/Yol3I.net
鞠莉「っていうか、私に教えてよかったの? いくら画面上のやり取りとはいえ」

ダイヤ「平気です。奴が私の記憶を探るのは夜。今日中に全てを片付ければいいだけのことですから」

鞠莉「随分と簡単に言うわね」

ダイヤ「勿論千歌さんだけの力では、純血種には到底敵わないでしょう。ですが……これだけの情報がある」

鞠莉「残念だけど、千歌の現在位置は分からないわよ。病人に小細工するほど私の肝は据わってないの」

ダイヤ「まさか。そうではなくて」

鞠莉「分かってるわよ。ダイヤのハンターとしての知識と、一週間傍にいて分かったこと……でしょ」

ダイヤ「加えて、鞠莉さんの資金力ですわ」

鞠莉「独自の調査でわかったこともあるしね」


鞠莉「できる限り人材を集めましょう。千歌とルビィを助けるために」

ダイヤ「ことは一刻を争いますわ。今この瞬間にも、千歌さんは奴を追跡しているのですから」

512: 2018/01/23(火) 01:06:32.55 ID:du/Yol3I.net
―――




千歌「ハッ…ハッ……」

千歌(くそっ……差が縮まらない!)

千歌(毎朝飲んでいる上に3人も殺してるんだ。私が勝てる要素なんて無いのかもしれない)


千歌(それでも、諦めるわけにはいかない。ルビィちゃんだけじゃない、内浦のみんなの命がかかってるんだ)


ルビィ「……」タタタッ


ガラッ


千歌(ここは……黒澤家)

千歌(マズいっ、また血を飲まれたら……!)

513: 2018/01/23(火) 01:07:07.32 ID:du/Yol3I.net
―――




タタタッ…ガチャッ


千歌「ハアッ…ハアッ……」

千歌「いない……?」


千歌(いや、奴の匂いはここに続いてる。間違いないはず)


千歌(実際に見ると……すごいな)


ルビィ「ねえ」


千歌(上!?)

514: 2018/01/23(火) 01:08:35.62 ID:du/Yol3I.net
ルビィ「ああ、構えなくていいよ。君とやりたいわけじゃない」シュタッ

千歌「……ルビィちゃんはどこにいるの?」


ルビィ「その前に。君さー、あの子供の姉か何か?」

千歌「私に妹はいない」

ルビィ「えー! あれ、君のお姉さんか! 見た目の割には説教じみた言葉ばっか並べてくるからさー、おかしいと思ったんだよね」

千歌「もしかして……」

ルビィ「あ、でも匂いはヴァンパイアだったし。まさか共存派? うえー、気持ち悪」

千歌「共存派?」

ルビィ「君、ヴァンパイアなのにそんなことも知らないの?  まさか新人?」

ルビィ「仕方ないなー、大先輩の私が教えてあげるよ」

515: 2018/01/23(火) 01:09:15.02 ID:du/Yol3I.net
ルビィ「ヴァンパイア社会には正統派と共存派の二つの派閥がある。簡単に言うと、好きなだけ人間の血を飲みたい奴らの集まりと、平和主義を掲げるいい子ちゃんの集まり」

ルビィ「見た感じ君は正統派か。仲間だね♪」

千歌「私は……人の血を飲みたいとは思わない」

ルビィ「この期に及んで何言ってんの? さっき思いっきり飲んでたじゃん」

千歌「それはっ……!」

ルビィ「私の足についてこられるだけで、君がどれだけ血を飲んできたのかすぐにわかったよ。血を飲まないヴァンパイアの身体能力は人間に毛が生えた程度。やり合っても全然つまんない」

ルビィ「君のお姉ちゃんは平和主義者。弱いくせに説教垂れやがって……あー、思い出しただけで腹立つ」

千歌「……」

516: 2018/01/23(火) 01:09:41.84 ID:du/Yol3I.net
ルビィ「ムカついたから、腹に風穴開けてやったんだよ。そうそう、この体見た途端に固まってさ……なんか知り合いだったらしいね、アハハ!」

千歌「……」

ルビィ「地面に這いつくばって、千歌……千歌……って連呼してさ。腹抱えて笑っちゃった!」

千歌「……」

ルビィ「ねえ、君は血を飲んでるんだよね。いいじゃん、好きなだけ飲もうよ。ほら! 後ろにたっくさん!」


千歌「――黙って」

ルビィ「……は?」


千歌「もうしゃべるな」

517: 2018/01/23(火) 01:10:18.38 ID:du/Yol3I.net
ルビィ「……私に勝てるとでも?」


千歌「勝つよ。そのためにここに来たんだ」

ルビィ「へぇ……でも無理だと思うよ。君より私の方が強いから」

ルビィ「でもまあ、暇潰しにはなりそうかな」



千歌「――お前はっ、私が殺すっ!!」

535: 2018/01/24(水) 18:29:25.76 ID:1sWc3Kja.net
―――




ダイヤ「くそっ!」バンッ

鞠莉「ダイヤ、落ち着いて」


ダイヤ(誰の目にも触れない場所……抽象的すぎて絞り切れない!)

ダイヤ(こうしている間にもあの子は!)

ダイヤ「ルビィ……!」


鞠莉「ルビィの居場所は、奴に吐かせるしかないってことね」

ダイヤ「何を悠長なことを言っているんですの!? ルビィは一週間も監禁されているんですのよ!!」

鞠莉「So bad……思っていた以上に情報が少なすぎる」

536: 2018/01/24(水) 18:29:51.92 ID:1sWc3Kja.net
ガラッ


志満「えっと、ここでいいのかしら」

鞠莉「初めまして。わざわざありがとうございます」

美渡「言っとくけど、私たちに話せることなんて何もないからね」

ダイヤ「早速ですが、力を貸してもらいますわ。この時期内浦で、誰の目にも触れない場所はどこですか」

志満「誰も立ち寄らない場所ってことでいいの?」

ダイヤ「ええ。何でもいい、今は情報が欲しいのです」

志満「うーん」

美渡「誰も寄り付かない……か」


鞠莉(山の中、地下、民家。なんだって可能性はある。しらみ潰しに探してるようじゃいくら時間があっても足りないわ)

鞠莉(警察の手を借りるのが難しいってのも厄介ね)

537: 2018/01/24(水) 18:30:19.30 ID:1sWc3Kja.net
志満「……海の家?」

美渡「あ、確かに」


ダイヤ「何ですって?」

志満「今の時期、海水浴にくるお客さんはほとんどいない。だからあそこは無人なのよ」

美渡「一応鍵はかけてあるけど、その気になれば誰でも中に入れるしね」


鞠莉「オーライ、すぐにSPを向かわせる」

ダイヤ「私も行きますわ」

鞠莉「ダイヤ……」

ダイヤ「千歌さんの方は、小原家で十分対応できるでしょう。普通の拳銃で十分効果はあるのです」

ダイヤ「何より、今の私が戦力になると思いますか?」


鞠莉「……分かった、こっちは私に任せて。ダイヤはルビィをお願い」

538: 2018/01/24(水) 18:30:45.75 ID:1sWc3Kja.net
ブーブー


鞠莉「……!」

ダイヤ「なんですの?」

鞠莉「実は、思いつく場所全部にSPを張り込ませていたのよ」


鞠莉「ビンゴ。千歌たちは今、黒澤家にいる」

539: 2018/01/24(水) 18:31:12.00 ID:1sWc3Kja.net
―――




黒服A「……了解」

黒服A(援護と言われても)


ガッ…ドゴッ…パリン


黒服(目で追うのがやっとだ。どっちも人間の動きじゃない)

黒服A(こんな戦いに割り込むなんて……できるわけがない)

542: 2018/01/24(水) 18:34:58.29 ID:bZd66+mE.net
ルビィ「ほら、君も飲みなよ」

千歌「……いらない」

ルビィ「口ではそんなこと言っても、体は正直だよね。目が真っ赤だよ」

千歌「いらない!」

ルビィ「血の匂いが充満してる。こんな場所で飲まずに動き続けるなんて……もしかしてドM?」

千歌「ハッ…ハッ……」ドクンドクン

543: 2018/01/24(水) 18:35:29.30 ID:bZd66+mE.net
ルビィ「ところでさ。ちょっと聞きたいんだけど」

ルビィ「君さあ、殺る気あんの?」

千歌「え……?」

ルビィ「いや、どうして手加減してるんだろうって思って。単純な疑問」

ルビィ「私が殴ったところ、痛いでしょ? 当然だよね」

ルビィ「なのに君の攻撃は全然痛くない。犬の甘噛みと同レベルだよ」

ルビィ「さっきから全力出してないでしょ。いや、自分でセーブかけてんのか……」

ルビィ「この姿だから? 仲間を殴るのは抵抗があるのかな」


ルビィ「それとも……もしかして、殺したことないの?」

千歌「――っ」


千歌「う、うるさいっ!」

ルビィ「え、図星!? マジかー、ヴァンパイアにそんな奴がいたなんて」

ルビィ「ちょっとビックリ。それで、かなりガッカリ」

ルビィ「どーしよっかな、このまま続けてもつまんないし」

544: 2018/01/24(水) 18:35:58.87 ID:bZd66+mE.net
ガチャッ


千歌「……!」


コツコツ…


梨子「千歌ちゃん……ルビィちゃんもいるの?」


千歌(梨子ちゃん!? どうしてここに……!)


梨子「さっき千歌ちゃんが走っていくのが見えて」


ルビィ「……いーこと思いついた」ニヤッ

千歌「待って! やめてっ!!」

ルビィ「遅いよ」ダッ


黒服A「止まれっ!!」

ルビィ「君いたんだ。存在感うっす」スッ


ドゴッ


黒服A「ぐはっ……!」ガクッ

千歌「逃げて梨子ちゃんっ!!」

545: 2018/01/24(水) 18:36:53.17 ID:bZd66+mE.net
梨子「へ……ルビィちゃ――」


ルビィ「グチャッ……」

梨子「うっ……あ……あぁ……」

ルビィ「ゴクッ…ゴクッ……」


千歌「あ……あぁ……」


千歌「うああああああっ!!」ダッ


ルビィ「おっと」ヒョイッ


千歌「梨子ちゃん! しっかり!!」

梨子「うん……だいじょ……ぶ」

千歌「ホッ」

546: 2018/01/24(水) 18:37:22.69 ID:bZd66+mE.net
ルビィ「何安心してるの」

千歌「は?」

ルビィ「え、まさかそんなことも知らないわけ?」

千歌「何を言って……」


ルビィ「――純血種に噛まれた人間は、ヴァンパイアになる」


千歌「なん……だって?」

梨子「あ……ぅ……」


千歌「それは迷信のはずだよ! お母さんもそう言ってたもん!」

ルビィ「バッカじゃないの、迷信なわけねーだろ」

千歌「私が今まで血を飲んだ人は、ヴァンパイアになってない……」

ルビィ「なり損ないにそんな力はない。当然だよね」


梨子「のど……が……」

千歌「梨子ちゃん?」

梨子「水……お願い、水を……」


千歌「う……そ……」

547: 2018/01/24(水) 18:37:53.12 ID:bZd66+mE.net
ドタドタ…ガチャッ


鞠莉「――そこまでよ!」

ルビィ「うわあ、なになに? 大勢でパーティーでも開くの?」


黒服B「しっかりしろ!」

黒服A「ああ、大丈夫だ……」


黒服C「動くな! 貴様は既に包囲されている!」


カチャカチャカチャッ


ルビィ「1、2、3、4、5……よく集めたもんだね」

ルビィ「でも、私は止めらんないよ?」

548: 2018/01/24(水) 18:38:21.75 ID:bZd66+mE.net
パアンッ


ルビィ「っ……」


パアンパアンパアンッ


ルビィ「ぐ……あ……いったいなあ」


パアンパアンパアンパアンパアンパアンッ


ルビィ「グプッ……」ドクドク


鞠莉「終わりよ」チャキッ


ルビィ「お嬢様が……銃なんて持っちゃダメでしょ」

鞠莉「Don't worry」

鞠莉「免許なら、もう取ってるわ」


パアンッ


ルビィ「――っ」


鞠莉「脳天を撃ち抜けば、どんな生物も即死よ」


バタッ…

549: 2018/01/24(水) 18:39:03.51 ID:bZd66+mE.net
千歌「終わっ……た?」

鞠莉「……ええ」


千歌「あ……ぐ……」ドクンドクン

鞠莉「お疲れ、千歌」スッ

千歌「ゴクッ……ゴクッ……」

鞠莉「無理しちゃダメ。自分の体を大切にして」


梨子「う……ぅ……千歌ちゃん……!」

千歌「梨子ちゃん……」


千歌「そうだ! ここならタブレットが……あった!」

千歌「梨子ちゃん、これを飲んで!」


梨子「コク……ん……」

550: 2018/01/24(水) 18:39:48.07 ID:bZd66+mE.net
千歌「梨子ちゃん……ごめんね」

鞠莉「どういうこと?」

千歌「あいつが言ってたんだ。純血種に噛まれた人間は、ヴァンパイアになるって」

鞠莉「嘘……そんなことが」

千歌「梨子ちゃんの様子を見る限りでは、本当みたい」


鞠莉「――ちょっと待って」


千歌「どうしたの?」



鞠莉「ダイヤが……ダイヤが危ないっ!!」

552: 2018/01/24(水) 19:07:34.58 ID:bZd66+mE.net
―――


海の家


ダイヤ「ハッ…ハッ……ここですわね」

黒服D「鍵は開いています」


ガチャッ


ダイヤ「ルビィ! いるんですの!?」


ルビィ「フー……フー……」


ダイヤ「ルビィっ!!」タタタッ

ダイヤ「椅子に縛り付けられて……こんな状態でよく我慢したわね」

ダイヤ「ルビィ……? ああ、タオルを噛まされて」

ダイヤ「待ってて、今取ってあげるわ」

553: 2018/01/24(水) 19:10:35.72 ID:bZd66+mE.net
ブーブー


黒服D「はい。ええ、発見しました」

黒服D「え……外してはダメ? すみません、言っていることの意味が――」


ダイヤ「ほらルビィ、お姉ちゃんよ。貴方の声を聴かせて……?」


ルビィ「ハッ…ハッ……おねえ……ちゃ……」

ダイヤ「ルビィ? 目が……」


黒服D「ダイヤ様っ! 離れてください!!」

ダイヤ「え?」


ルビィ「がああああああああああああっ!!」

571: 2018/01/25(木) 22:40:21.26 ID:xhoJzIde.net
グチャッ


ルビィ「グチュ…レロ…ゴクッ…ゴクッ……」

ダイヤ「あぐっ……ル……ビィ……」

ルビィ「ゴクッ…ゴクッ……」

ダイヤ「やめ……て?」ナデナデ

ルビィ「ぅ……ゆ……」


ルビィ「――お姉ちゃん?」


ダイヤ「ルビィ……よかっ……た」ガクッ

ルビィ「お姉ちゃん……お姉ちゃんっ!」

573: 2018/01/25(木) 22:40:48.35 ID:xhoJzIde.net
―――




鞠莉「シット!! ギリギリ間に合わなかったみたいね……!」

千歌「間に合わなかったって……?」

鞠莉「今、救急車が向かってる所よ」

千歌「ちょっと待ってよ、それってどういうこと?」

鞠莉「よく考えてみて、あのヴァンパイアはどうしてルビィに化けたのか……いや、化けることができたのか」


鞠莉「ルビィの血を飲んでいた。そうでしょ?」

千歌「あ……」

鞠莉「なりたてとはいえ、一週間も吸血欲に晒されたのよ。加えてダイヤは数時間前、千歌に血をあげたばかり」

鞠莉「情報が不足していたとはいえ、迂闊だった。お願いダイヤ……無事でいて」

574: 2018/01/25(木) 22:41:14.84 ID:xhoJzIde.net
千歌「――あれ?」

鞠莉「どうしたの、千歌」


千歌「いない……」

鞠莉「え?」


千歌「いないんだよ、あいつが!」

鞠莉「嘘……確かに殺したはずなのに!」

千歌「そんな……」

鞠莉「貴方達、ちゃんと見張ってたわよね!?」

黒服A「勿論です。誰一人ここから出していません」

黒服B「血を吸われた者もいないはずです」

鞠莉「ってことは、出入口はひとつじゃないってこと?」

千歌「見て! 血の跡が壁の下に続いてる!」

鞠莉「まさか……」スッ

575: 2018/01/25(木) 22:41:41.80 ID:xhoJzIde.net
ズンッ……ガチャッ


鞠莉「こんな所に隠し扉が……これよりもっと下があるっていうの?」

千歌「追いかけなきゃ!」


鞠莉「待って! ここまで来たんだもの、最後まで着いていくわよ」

千歌「……鞠莉ちゃんは、梨子ちゃんをお願い」

鞠莉「千歌!」

千歌「梨子ちゃん、きっと混乱してるから。鞠莉ちゃんが傍にいてあげて?」

鞠莉「……わかった。ならこれを持ってって」スッ

千歌「拳銃……でも」

鞠莉「ノープロブレム。何かあったら小原家の力で何とかするわ」

千歌「えぇ……」

鞠莉「ついでにこのイヤホンもつけていきなさい。あとスマホも」

鞠莉「暗闇で寂しくなったら、マリーが話し相手になってあげる」

千歌「……」ポカーン


千歌「クスッ……頼りにしてる」


千歌「――行ってきます」

576: 2018/01/25(木) 22:42:08.48 ID:xhoJzIde.net
―――




千歌(すごく暗い。襲撃に備えなきゃ)

千歌(この通路が外に繋がってたとしたら……もう逃げられちゃってるか)


コツン


千歌(なんの音……!?)


コロコロ…


千歌(石……)


ルビィ「ねえ」

千歌「――っ」


千歌「……いつの間に」

ルビィ「手、組まない?」

千歌「え?」

ルビィ「同じヴァンパイアじゃん。仲良くしようよ」


千歌(暗くて、表情がよく見えない)

577: 2018/01/25(木) 22:42:48.95 ID:xhoJzIde.net
千歌「生きてたんだね」

ルビィ「はっ、私がどれだけ血飲んできたと思ってんの。純血種のヴァンパイアは、たとえ脳を破壊されようが死なない」


千歌「不死身ってこと?」

ルビィ「さあね。知りたいなら殺してみれば? ほら」

千歌「……」

ルビィ「クスッ……だよねー、君じゃ私は殺せない。だから交渉しようよ」

千歌「交渉?」

ルビィ「あの子は解放してあげる。その代わり君、私の仲間になって」

千歌「は……」

ルビィ「きっと楽しいよ。好きな時に、好きなだけ血を飲むんだ。私たちヴァンパイアに秩序やルールなんてものは必要ない」

ルビィ「ヴァンパイアは人間より強い。弱肉強食って言葉知ってるよね」

ルビィ「私たちは、地上の支配者なんだよ」


千歌「――残念だけど、ルビィちゃんはもう見つけてる。貴方の話には乗れない」

ルビィ「ふーん……つまんない」

578: 2018/01/25(木) 22:43:15.53 ID:xhoJzIde.net
千歌「それに、もし見つかってなかったとしても……」


千歌「ヴァンパイアが人間を制服するなんてことは、絶対にあり得ない」チャキッ

ルビィ「さっき私に銃が効かなかったこと、忘れたの?」


ダッ

パアンッパアンッ――


ルビィ「適当に撃ってるだけじゃ当たらないよ」

ルビィ(いや……違う。当てるつもりがない?)


千歌「……りちゃん……ねがい……」ボソッ


ルビィ(何かを呟いて……?)

ルビィ「気を取られてる場合かよ!」ダッ

579: 2018/01/25(木) 22:44:18.85 ID:xhoJzIde.net
千歌「くっ」ザッ


ゴスッ!


千歌「かはっ……」


千歌「ケホッ……オェ……」


ルビィ「鳩尾殴ったんだ、暫く立ち上がれないよ」

千歌「あ……ぐ……」


ルビィ「おらっ!」ガンッ

千歌「がっ!」


ゴロッ


ルビィ「おらっ! おらっ!」


ゴスッゴスッゴスッ


ルビィ「なり損ないの癖に粋がってんじゃねーよ!」

千歌「ぐっ……がっ……」


ルビィ「はぁ……はぁ……」

580: 2018/01/25(木) 22:45:22.09 ID:xhoJzIde.net
チカ……シッカリ……


ルビィ「ん……?」スッ

千歌「あっ!」

ルビィ「なに、このイヤホン」


ルビィ「まさか、ずっとこれで話してたの? 一体何が目的で……」


ルビィ(――まさか)


ルビィ「時間稼ぎ?」

千歌「……」


ルビィ「はっ……ハハ! お仲間が来るのをずっと待ってたのかよ! 情けねー!」

ルビィ「それでも誇り高いヴァンパイアなのかよ!? ……ああ、なり損ないだったか」


ルビィ「同種の情けで生かしてやろうかと思ったけど……気が変わった」

ルビィ「面汚しの君は、ここで殺していくよ」

581: 2018/01/25(木) 22:45:53.94 ID:xhoJzIde.net
千歌「……ベラベラ喋りすぎ」


パアンッ


ルビィ「ぐっ……」ドクドク

ルビィ(目が……!)


千歌「よっ……と」パンパン

千歌「あーあ、こんなの病院に返せないや」


ルビィ「お前……!」

千歌「散々時間稼いでくれたおかげで、私の目的は果たしたよ……もう少しで警察の機動隊が到着する」

ルビィ「は!?」

千歌「流石小原家だよね。その辺の手回しは得意分野らしいよ」

千歌「いくら不死身って言っても、牢獄に閉じ込められたら終わりでしょ?」

582: 2018/01/25(木) 22:46:31.22 ID:xhoJzIde.net
千歌「それと……貴方とはここでケリをつけるつもり」

千歌「お母さんの分、まだ返してないでしょ」


ルビィ「こ……の……」

ルビィ「殺す……殺す殺す殺す殺す殺すっ!!」


ルビィ「お前は!! ここで殺してやるっ!!」


ダダダッ


鞠莉「千歌っ!」


『警察だ! 止まれっ!!』

583: 2018/01/25(木) 22:47:18.81 ID:xhoJzIde.net
千歌「――っ!」ダンッ

ルビィ「があああああああああっ!!!」


鞠莉(――それは、一瞬の出来事だった)


千歌「……コプッ」

ルビィ「が……ぁ……」


鞠莉(両者の腕が、互いの胸を貫き)


千歌「あ……ぁ……」ガクッ

ルビィ「ちく……しょう……」


バタンッ



鞠莉(2人のヴァンパイアが、同時に崩れ落ちた)

587: 2018/01/26(金) 00:54:10.43 ID:dQ4oYqyv.net
――――――

――――

――


ワン…ツー…スリー……


果南「みんなお疲れ。今日の練習はここまでだよ」

鞠莉「水分補給しっかりねー」


花丸「ふぃー……疲れたずら」

善子「ズラ丸、みっともないわよ」


ルビィ「……」タタタッ

ルビィ「お姉ちゃん、お水」

ダイヤ「ああ、ルビィ。ありがとう」ナデナデ

ダイヤ「今日の分はちゃんと飲みましたか?」

ルビィ「うん」

ダイヤ「フフ、ならいいのです」

588: 2018/01/26(金) 00:54:37.60 ID:dQ4oYqyv.net
曜「梨子ちゃんは大丈夫? ちゃんと飲んだ?」

梨子「ええ。今のところは副作用も特にないし、安定してる」

曜「そっか……よかった」


果南「今日、ダイヤがようやく練習に復帰したわけだけど……どうだった?」

ダイヤ「すみません、まだ体力が戻っていないのですわ」

鞠莉「本番には間に合いそう?」

ダイヤ「何とか、善処致します」

ルビィ「うゆ……」

ダイヤ「大丈夫よ。無理はしてないから」ナデナデ


曜「私、もう帰るね」

梨子「待って、私も行く」

曜「え?」

梨子「お見舞い、行くんでしょ?」

曜「……うん」


鞠莉「……」

589: 2018/01/26(金) 00:55:11.47 ID:dQ4oYqyv.net
鞠莉(あれから、二週間が経った)

鞠莉(一連の事件の犯人だったヴァンパイアは、千歌っちに胸を貫かれ、即死)

鞠莉(ヴァンパイアの弱点は心臓だったらしい)


鞠莉(同じく胸を貫かれた千歌は、辛うじて急所は外れていた)

鞠莉(奴の左目を撃ちぬいたことが功を為したのか、それとも自ら急所を外したのか)


鞠莉(どちらにせよ重傷は避けられず……今も千歌っちは意識を取り戻していない)

590: 2018/01/26(金) 00:55:38.32 ID:dQ4oYqyv.net
―――




果南「いよいよ明日、決勝だね」

ダイヤ「感覚は取り戻しました。ベストパフォーマンスとは言い難いですが」

鞠莉「となると、問題は」


梨子「センターを誰にするか」


曜「そんなの決まってるよ。今日までずっと……」

梨子「肝心の千歌ちゃんがあのままじゃ、どうしようもないでしょう」

曜「それは……!」

591: 2018/01/26(金) 00:56:05.67 ID:dQ4oYqyv.net
善子「そろそろ決めるべきだわ。現実を見ましょう……リアルこそが正義なんだから」

花丸「千歌ちゃんは、明日の決勝大会に出場できない」

ルビィ「うっ……うぅ……」

花丸「泣かないで、ルビィちゃん」

善子「そうよ。千歌はそんなの望んでない」


果南「千歌が出られないのは残念だけど。だからって、決勝をないがしろにしていいわけじゃない」


果南「――曜、お願いできる?」


曜「え?」

592: 2018/01/26(金) 00:56:32.58 ID:dQ4oYqyv.net
―――


翌日


コンコン…ガラッ


看護師「失礼します。診察のお時間ですよ」

看護師(なんて、寝ている子に言っても仕方ないわね)


看護師「……あら? 窓が開いてる」

看護師「不用心ね。誰よ、開けっ放しにしたの」


看護師「――え?」


ヒュー…バサバサ…


看護師「嘘……でしょ」

593: 2018/01/26(金) 00:57:01.62 ID:dQ4oYqyv.net
―――




曜「スー…ハー……」


梨子「曜ちゃん、大丈夫?」

曜「うん、なんとか」

梨子「きっとできるよ、自信もって!」

曜「そう……かな」


善子「頼りにしてんだから。しっかりしなさいよね」

花丸「マルたちも頑張るずら!」

ルビィ「一緒に頑張ろうね、曜ちゃん!」

曜「うん、ありがと」ニコッ

594: 2018/01/26(金) 00:57:28.43 ID:dQ4oYqyv.net
果南「曜……」

鞠莉「大分緊張してるわね」

ダイヤ「当然ですわ。曜さんにとって、千歌さんの存在はそれほど大きいのです」

果南「やっぱり、無茶だったかな」

鞠莉「ノーノー。ちゃんと曜のこと、信頼してあげて」


鞠莉(とは言っても、全員の表情が硬いのは確か)

鞠莉(こんな状態で本番だなんて……正直、最悪としか言いようがない)


鞠莉(ううん。ウジウジ言ってても何も始まらないわ)

鞠莉(今の私たちにできることを、全力でやるしかない)

595: 2018/01/26(金) 00:57:59.37 ID:dQ4oYqyv.net
『次のグループは――』


梨子「そろそろ私たちの出番ね」

曜「あ……うん」


ゾワッ


曜(あれ……なんだろう。急に緊張してきた)

曜(さっきまでとは違う……怖い)

曜(出場するのが、怖い)


曜(そっか……隣に、千歌ちゃんがいないから)

曜(ダメだ、私。千歌ちゃんがいないと、何もできないよ)


曜「千歌ちゃん……!」

596: 2018/01/26(金) 00:59:48.80 ID:dQ4oYqyv.net
「――遅れてごめんっ!!」


曜「え……」

梨子「嘘……千歌ちゃん?」


千歌「ハァ……ハァ……」

千歌「なんとか……間に合った!」


果南「千歌……!」

鞠莉「千歌っち、どうして!?」


千歌「病院、抜け出してきた……えへへ」

果南「抜け出してって……」


ダイヤ「体は大丈夫ですの!? 先程目を覚ましたということでしょう!?」

善子「あんた、二週間も寝込んでたのよ!?」

花丸「あんな重傷だったのに……」

597: 2018/01/26(金) 01:00:15.66 ID:dQ4oYqyv.net
千歌「えと……多分傷は治ってる、と思う」

梨子「治ってるわけ……治ってる?」

ルビィ「ヴァンパイアの治癒力は高いんです。一昨日指を怪我した時、次の日には跡も残ってなくて」

梨子「それにしたって……」


千歌「私なら大丈夫だよ。ほら、体も動くし!」


曜「千歌……ちゃん」ポロポロ

千歌「曜ちゃん?」


曜「――千歌ちゃんっ!!」ギュッ

千歌「わわっ!」


千歌「ただいま、よーちゃん」

曜「おかえり……千歌ちゃん」

598: 2018/01/26(金) 01:00:41.70 ID:dQ4oYqyv.net
ルビィ「千歌ちゃん、衣装だよ」スッ

千歌「うん……ありがとう」


果南「えと……正直、何が起こってるのか把握しきれてないんだけど」

鞠莉「決勝は、全員で出場できる。そういうことでしょ?」グスッ

ダイヤ「鞠莉さん……」

鞠莉「ソーリー。この会場で、Aqoursのみんなと歌うのが……私の夢だったから」ゴシゴシ


鞠莉「だから、嬉しくて」

果南「……うん。私も」ウルウル

599: 2018/01/26(金) 01:01:09.70 ID:dQ4oYqyv.net
『――Aqoursの皆さん、お願いします』


花丸「マルたちの出番だよ」

ルビィ「うん!」

善子「全く、冷や冷やさせんじゃないわよ……」ゴシゴシ


千歌「さあ! いくよ、みんな!」

千歌「今、全力で輝こうっ!!」


千歌「1!」

曜「2!」

梨子「3!」

花丸「4!」

ルビィ「5!」

善子「6!」

ダイヤ「7!」

果南「8!」

鞠莉「9!」


「「Aqoursー、サンシャインっ!!」」

601: 2018/01/26(金) 01:19:38.29 ID:dQ4oYqyv.net
――――――

――――

――


チーン…


千歌「……」


千歌(あの時……もしお母さんが胸を貫かれてたことを思い出さなかったら)

千歌(もしも命を落とす前にお母さんが私の下に来てくれなかったら)

千歌(きっと、私は勝てなかっただろう)


――人間に生んであげられなくて、ごめんね


千歌(違うよ、お母さん)

千歌(お母さんのおかげで、今私はここにいる)


千歌(私を助けてくれて、ありがとう)

602: 2018/01/26(金) 01:20:06.05 ID:dQ4oYqyv.net
美渡「千歌ー! 梨子ちゃん来てるぞー!」

千歌「はーい!」


千歌「……行ってきます、お母さん」

603: 2018/01/26(金) 01:20:36.44 ID:dQ4oYqyv.net
―――




梨子「結局、血はもう飲んでないんだね」

千歌「うん。なんか、要らないみたい」

梨子「タブレットも飲んでないってこと?」

千歌「たくさん輸血したから、体質が変わったのかな」

千歌「美渡姉と志満姉は、ヴァンパイアの血が薄いから元々要らなかったわけだし」

梨子「ってことは、体内の血を入れ替えればタブレットは必要なくなる……?」

千歌「よくわかんないけどね」


梨子「とにかく、おめでとう」

千歌「――うん!」ニコッ


梨子(この笑顔をもう一度見ることができて、よかった)

604: 2018/01/26(金) 01:21:03.43 ID:dQ4oYqyv.net
プシュー


千歌「あ、バス着いたよ!」パタパタ

梨子「うん」パタパタ


曜「おーい! 千歌ちゃーん、梨子ちゃーん!」

千歌「あ、よーちゃん!」

曜「二人とも遅いぞー!」

梨子「ごめんごめん。でも曜ちゃんズルいな、学校がこんなに近いなんて」

曜「えへへー! 沼津の特権であります!」


キーンコーンカーンコーン


千歌「わわわっ、鐘なってるよ!」

梨子「やば、急がなきゃ!」

曜「始業式から遅刻はマズいよー!」

605: 2018/01/26(金) 01:21:29.70 ID:dQ4oYqyv.net
「――いてっ!」


千歌「……?」


「うぇぇ……」ポロポロ


曜「千歌ちゃん?」

千歌「ごめん、先行ってて!」


千歌「どうしたの? 転んじゃった?」


「うん……」グスッ


千歌「ありゃりゃ、血が出てるねー」

千歌「えーっと」ゴソゴソ

千歌(どうしよう、絆創膏持ってきてないや)

606: 2018/01/26(金) 01:21:57.42 ID:dQ4oYqyv.net
梨子「千歌ちゃん」

千歌「ほえ?」

梨子「絆創膏でしょ。私が張ってあげるね」


「うぅ……ありがとう」


曜「元気だしなって! きっといいことがあるよ!」

千歌「じゃあ私からは……これ!」


「みかん?」


千歌「そう! ビタミンCパワー! ……なんちゃって」


「ありがとう、おねーちゃん」ニコッ

607: 2018/01/26(金) 01:22:27.14 ID:dQ4oYqyv.net
千歌「バイバーイ!」フリフリ

梨子「あーあ、完全に遅刻」

曜「仕方ないよ、言い訳考えよう」


千歌「ハァ……ハァ……」


梨子「千歌ちゃん?」


千歌「ハッ……ハッ……ハッ……」


曜「おーい、千歌ちゃーん」



――ドクン

608: 2018/01/26(金) 01:22:54.76 ID:dQ4oYqyv.net
END

引用元: 千歌「吸血鬼になったのだ!」