1：以下、名無しが深夜にお送りします：2021/07/16(金) 21:40:11 ID:nKJvkV8s
某県にある某村にあるとある神社…

青白く血色の悪い顔に痩せこけた頬を携え、枝のように細い身体は見るからに不健康であった。
その首元にはドス黒い手の跡が締め付けるようにあった。

地縛霊に憑かれたか。この神社の巫女はそう思った。

青白い顔をした男は自らの身に起こった事の顛末を語った。

巫女「さいですか…。」

男「ここに来ればどんな霊も祓ってくれるって！！このままでは俺はとり殺される！！どうか助けてください！！」

巫女「元はと言えば近づくべきでない心霊スポットなんかに遊び半分で行くからですよ。自業自得です。」

男「それはよく分かってます！！反省してます！！だからどうか…！！」

巫女「はぁ…。分かりました。では神主をお呼びしますのでお待ちください。」

そういうと巫女は溜息混じりに社の奥へと引っ込んでいった。

魁の花巫女（１） (マガジンポケットコミックス)
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2：以下、名無しが深夜にお送りします：2021/07/16(金) 21:54:13 ID:nKJvkV8s
神主「……。仕事か…。」

白衣に黒袴、白衣の胸元からはち切れんばかりの胸筋を覗かせ、鬼の面を付けて腕組みをしながら仁王立ちで男は現れた。その前腕の太さたるや。その迫力に気圧されながらも青白い不健康そうな男は安堵を覚えた。

神主「…よし。早速取り掛かるか。巫女。準備を。」

巫女「はい。」

ジャラリと白衣の袖から大きい球の数珠を取り出して神主は念仏を唱え始めた。

男「ぐうっ！？……うがぁああっ！！！！」

念仏と共に男は身悶え始めた。首元のドス黒い手の跡がみるみる内に消え始め、男から瘴気湧き始める。
その瘴気はどんどんと人の形を作っていった。

地縛霊「ゔぉおぉおっ！！！！！」

長い髪がおぞましく顔に掛かった薄汚れた女の霊が姿を現した。

神主「……。ざっと10人は殺ったか…。」

3：以下、名無しが深夜にお送りします：2021/07/16(金) 22:01:43 ID:nKJvkV8s
神主「巫女ぉ！！！！」

巫女「準備OK」

神主「おっしゃあ！！！！」

男「えっ。なにこれは。」

男は社の庭を見た。何やら経らしき文字が書かれた杭が四つ。その四つの杭はそれぞれ三本の縄で繋がれていてさながらプロレスのリングのようである。

神主「レフェリー！！！！！」

下男「READY!!!!!」

巫女「今日はどうします？」

神主「スタンハンセンだ！！！！！」

巫女「はい。……ポチっとな。」ｶﾁｯ

巫女がラジカセのスイッチを押した瞬間スタンハンセンのテーマが流れる。

いつのまにか男から叩き出した地縛霊はリングの中に居た。状況が理解できないようで、あたふたと慌てふためいている。

神主は白衣を脱ぎ捨てた。鍛え抜かれ、弾けそうな筋肉が躍動しながらゆっくりとリングへと向かう。

4：以下、名無しが深夜にお送りします：2021/07/16(金) 22:07:29 ID:nKJvkV8s
ﾃﾞｰﾃﾞｰﾃﾞ ﾃﾞｰﾃﾞｰﾃﾞ ♪

神主「うぃいいいい！！！！！！」

男「えっ、えっ」
巫女「さぁ、始まりました除霊プロレス。あの世とこの世が交わる四角いジャングル。生者が勝つか亡者が勝つか。今宵世紀の一戦であります。」
男「除霊？」
巫女「解説の被害者さん。よろしくお願いします。」
男「あ、はい。」

下男「ゴング！！！！！」

ｶｰﾝ！！！！

神主「おおおお！！！！」ﾄﾞｺﾞｵｯ

地縛霊「ﾌﾟｹﾞﾗッ！！」

巫女「おおっといきなり顔面にケンカキック！！これは凄まじい挨拶となりましたぁ、解説の被害者さんどうですか？」
男「アレ霊ですよね？」

5：以下、名無しが深夜にお送りします：2021/07/16(金) 22:12:09 ID:nKJvkV8s
神主「ストンピング！！ストンピング！！」

地縛霊「ぐぇええっ！！」

下男「ロープ！ロープ！」

巫女「地縛霊たまらずロープエスケープであります！しかし散々生者を苦しめた地縛霊であります！これは当然の報いかぁ！？」

神主「立ておらあっ！！！！」ﾍﾞﾁﾝ

巫女「おおっと喝を入れるように立ち上がろうとする地縛霊の頬を叩いたぁ！！」

地縛霊「き、ｷｪｴｴ！！！！」

巫女「おおっとおぞましい亡者の眼光！！神主の燃える眼光とぶつかる！！」

神主「！！！！！」ﾊﾞｷｯ！！！

下男「ノーノー！！！！ナックルノー！！」

巫女「おおっとこれはいけません！！グーパンチです！！反則です！！」

男「ええ…？」

6：以下、名無しが深夜にお送りします：2021/07/16(金) 22:17:04 ID:nKJvkV8s
巫女「神主、ヒートしていますねえ。どうですか？被害者さん？」

男「な、なんか凄いです…。」

神主「！！」ｸﾞｯ

巫女「おおっと高らかに拳を突き上げたぁ！！フィニッシュかぁ！！！？」

神主「これで成仏しとけやあああ！！！！！」

ﾄﾞｺﾞｵｵｵｯ！！！！！

巫女「得意のジャーマンだぁあああ！！！！」

下男「ワーン！！！！ツー！！！！スリー！！！！」

ｶﾝｶﾝｶﾝｶﾝ！！！！！！

神主「うぃいいいいい！！！！！！」


巫女「勝者神主！！！フィニッシュはジャーマンスープレックスでした！！！！」

男「ええ…」

7：以下、名無しが深夜にお送りします：2021/07/16(金) 22:22:27 ID:nKJvkV8s
地縛霊の瘴気が段々と光へと変わっていく。
地縛霊は憎しみを込めた瞳で神主を見る。

神主「いつ見てもおっかねえ瞳だ。」

神主「そんなお前も成仏すれば生まれ変わる。覚えておけ。」

神主「生きている人間の方が強えんだ。次は自殺なんかして生者を巻き込むんじゃねえぞ。」

彼は肉弾最強徒手空拳神主。彼に祓えない霊などない。