1: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/03(土) 14:30:21.14 ID:8UGvUJDm0
 ハイラル王国に広がる深き森……。
 その森を守り続けてきたワシを、人はデクの樹と呼んでいた。
 この森にはコキリ族という者たちが住んでおる。
 彼らはそれぞれ自分だけの妖精を持っておった。
 じゃが……たった一人だけ、妖精を持たぬ少女が居たのじゃ……。
 彼女の名は――




どうしようもないくらい私事で申し訳ないけどクソ会社辞めて気が済むまでゼルダ無双やったので記念に

時のオカリナのネタバレなんか今更誰も気にしないとは思うけど注意してね
ゼルダの設定に関する独自の解釈とか百合要素とか、色々もうR板に立てた時点でお察しください
安価とかコンマとかも使うかもしれない

無双のリンクルとは容姿がほぼ同じなだけで、性格も生い立ちも違う別人だから(震え声)
なんかもう色々許してくれ

2: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/03(土) 14:32:34.40 ID:8UGvUJDm0
 ep.1 リンクル


「リンクル……! リンクル! 起きて!」

リンクル「うんー……」

妖精「リンクル! 起きてってば! デクの樹様がお呼びなの!」
妖精「早く起きて、一緒に来て!」

リンクル「……ふあ……んん……」
リンクル「妖精……?」

ナビィ「私、妖精のナビィ! 今日からあなたの相棒ヨ!」
ナビィ「早く、デクの樹様が呼んでるのよ!」

リンクル「ナビィ……あたしの……妖精……!」
リンクル「ぃやったぁぁぁぁあぁああああ!!」

ナビィ「ぴぃっ!?」キーン

リンクル「やった! やった!! あたしのとこにもついに妖精が!」ピョンピョン
リンクル「苦節10年とちょっと! 長かった! 実に長かった!!」ピョンピョン

リンクル「ついに! ついに!!」プルプル
リンクル「あたしにも、妖精が!」バッ

リンクル「ちっちゃくて、キラキラしてて、声も可愛い妖精が!!」ピョンピョン
リンクル「これからよろしくね、ナビィ!」

ナビィ「え、えぇ、よ、よろしくね……?」ヒキッ
ナビィ(なんだか、急に不安になってきた……)

3: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/03(土) 14:33:10.60 ID:8UGvUJDm0
リンクル「で、何だっけ? デクの樹様が呼んでるって?」

ナビィ「うん。リンクルにしか頼めないって……」

リンクル「んー……でもあたしなんかに何か出来ることなんてあるのかなぁ」
リンクル「っていうか、その前にミドのやつに自慢しに行っていい?」

ナビィ「デクの樹様が先!」

リンクル「ちぇー」

「リンクルー!」

リンクル「あ、サリア来ちゃったんだ」
リンクル「今下りるから待っててー!」

4: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/03(土) 14:34:21.66 ID:8UGvUJDm0
――コキリの森

サリア「おはよ、リンクル」

リンクル「おはよー」
リンクル「今日は何して遊ぼっか?」

ナビィ「ちょっと、リンクル!」

サリア「あれ? リンクル、あなたのところにもついに妖精が来たんだネ! おめでとう!」

リンクル「そうっ、ありがとっ! ナビィっていうの! 長かったよー、ほんと!」

ナビィ「ご、ゴメンネ……って私何も悪くないんだけどね?」

サリア「いっつもミドに意地悪されてたもんね」

リンクル「これでもう“妖精なし”なんて呼ばれずに済むわー」

ナビィ「あの……」

サリア「で、何の話だったっけ?」

リンクル「……何だっけ?」

ナビィ「デクの樹様!」

リンクル「……、……ああー! そう! デクの樹様に呼ばれてたんだった!」

サリア「デクの樹様に? なら早く行かなきゃ!」
サリア「用事が済んだら遊びまショ!」

リンクル「うん!」

ナビィ「はぁー……大丈夫かな、この子……」

5: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/03(土) 14:35:19.27 ID:8UGvUJDm0
リンクル「あれ……デクの樹様のとこへ行く道……」
リンクル「……ミドじゃん」

ミド「なんだよ“妖精なし”!」
ミド「妖精も居ないような半人前は通してやんねーぞ!」

リンクル「ふふーん、そう思うでしょ?」
リンクル「いっつもいっつもそう言ってきたよね!」

リンクル「でも今日のリンクルは一味違うのよ!」
リンクル「ごまだれー!」バッ

ナビィ「きゃんっ」

ミド「あれっ」
ミド「い、居るじゃん、妖精……」

リンクル「そうだよっ! だからもう半人前なんて呼ばせないんだから!」
リンクル「それに、デクの樹様に呼ばれてるの。ここを通してよ」

ミド「な……何ィー!?」
ミド「なんだよ! なんでこのミド様じゃなくてお前なんだよ!」

ミド「おっもしろくねぇー!」
ミド「オイラは認めねぇぞ! お前なんかまともに剣も盾も持ってないじゃんか!」

リンクル「や、だってあたしいっつもクロスボウ使ってるし……」

ミド「と、兎に角だ! 剣と盾くらい持ってないとデクの樹様のお手伝いなんて出来ねぇぞ!」

リンクル「あんたも持ってないけどね」

ミド「うるせいっ! ここを通りたきゃ剣と盾くらい持ってきナ!」

6: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/03(土) 14:36:02.53 ID:8UGvUJDm0
リンクル「ぐぬぬ……」

ナビィ「梃子でも動かなそうね……兎に角、剣と盾探しまショ」

リンクル「探すったって……」
リンクル「うーん……盾はお店で売ってるのよね」

ナビィ「40ルピーだっけ?」

リンクル「確か。盾はそれでいいとして……」
リンクル「剣、剣かぁ……」

サリア「リンクル、どうしたの?」

リンクル「あ、サリア……」
リンクル「実は……」

7: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/03(土) 14:37:08.08 ID:8UGvUJDm0
サリア「もうっ、ミドったら、また……!」
サリア「リンクル、一緒に行きましょ? 私からも言ってあげるから……」

リンクル「ありがと、サリア……」
リンクル「でも、ちょっと気になるんだよね」

サリア「何が?」

リンクル「剣、使ったことないから」

サリア「いっつもクロスボウと足技だけで魔物やっつけてるもんね」

ナビィ「そうなの? っていうか、いっつもって……」

サリア「私のお気に入りの場所ね、迷いの森の奥の方なんだけど」
サリア「時々魔物が出るの。デクナッツとか、ウルフォスとか」

ナビィ「そんなに危ないところ行くんだ……」

サリア「だから、いつもリンクルと一緒に行くんだ」
サリア「リンクル、すっごく強くてかっこいいのヨ?///」

リンクル「そ、そう?」
リンクル「そんなこと言われると照れちゃうなー///」

ナビィ「キマシ……」
ナビィ(……私、今何を言い掛けたんだろう……?)

8: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/03(土) 14:37:40.32 ID:8UGvUJDm0
――森の練習場

サリア「で、武器といえば練習場だけど……」
サリア「ここに一本くらいあったりしないかな?」

リンクル「確かにデクの棒とかデクの種とか置いてあるけど」
リンクル「剣は見たことないなぁ」

サリア「あ、ねぇねぇ、あの穴何かしら?」

リンクル「穴?」
リンクル「……ほんとだ。今まで結構ここ使ってたのに気付かなかった」

サリア「クロスボウや格闘は横か手前でやってるもんね」

リンクル「向こうに何かあるみたい……」ノソノソ

サリア「あ……」ドキッ
サリア「り、リンクル! パンツ見えてる! 見えてるよ!」

リンクル「えっ、嘘っ!?」

サリア(今日は、白っ!)

ナビィ(先が思いやられるなぁ……)

9: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/03(土) 14:38:17.62 ID:8UGvUJDm0
リンクル「ほんとに剣があるとは思わなかったよ……」E:コキリの剣、デクの盾

ナビィ「ミド、悔しがってたわね」

リンクル「良い気味!」
リンクル「大分時間経っちゃったけど、デクの樹様怒ってないかなぁ……」

ナビィ「だ、大丈夫よ、きっと」

10: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/03(土) 14:38:43.36 ID:8UGvUJDm0
デクの樹「おぉ……戻ったか、ナビィ……」
デクの樹「そして、リンクル……よくぞ来てくれた」

リンクル「デクの樹様、ご用事は何ですか?」

デクの樹「うむ……」

リンクル「……なんだか、具合悪そうだけど、大丈夫なの?」

ナビィ「……」

デクの樹「……リンクルよ……」
デクの樹「やはり、お前には、見込みがある」

リンクル「見込みって……あたしに? 何の?」

デクの樹「時にリンクル」
デクの樹「お前は最近、毎日のように恐ろしい夢を見てはいないか?」

リンクル「夢……」

11: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/03(土) 14:39:20.22 ID:8UGvUJDm0
リンクル(そういえば、最近変な夢を見る)
リンクル(迷いの森の奥の神殿より大きくて、尖った屋根がいくつも立った綺麗な建物)

リンクル(その建物の前に立っているあたし)
リンクル(見る見るうちに空が黒い雲で覆われていって……)

リンクル「……確かに、見てます」
リンクル「よく分かんないけど、言われてみれば、怖い夢だったかも……?」

デクの樹「やはりか……その夢は、今この世界に忍び寄る邪悪な気配そのもの……」
デクの樹「お前は、それを感じたのじゃ……」

リンクル「邪悪な気配……」

デクの樹「リンクル……」
デクの樹「お前が、この森で一番の手練れであることはよく知っている」

デクの樹「じゃが、この邪悪な気配は、森で見かける魔物とは比べ物にならん程、強力じゃ……」
デクの樹「だから、今ここでお前の勇気を今一度試させてほしい……」

デクの樹「お前はさっき、ワシの具合が悪そうだと言ったな……」
デクの樹「ワシには今、呪いがかけられておる……」

デクの樹「お前の知恵と、勇気でその呪いを解いてほしいのじゃ……」
デクの樹「呪いが解けたら、またお前にせねばならない話がある……」

12: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/03(土) 14:40:37.53 ID:8UGvUJDm0
 ep.2 冒険の始まり


――デクの樹様の中

リンクル「ほぇー、これがデクの樹様の那珂か……」

ナビィ「こんな感じになってるのね……」
ナビィ「あ、リンクル! 見て!」

リンクル「ん……蜘蛛の巣?」
リンクル「スタルチュラの巣かな? 下に何か見えるけど……」ピョンピョン

ナビィ「あなたの体重じゃ軽過ぎて破れないわネ」
ナビィ「燃やしてみる? もしくは……もっと高いところから飛び込んでみるとか?」

リンクル「それ名案。じゃ、そこから上ってみよっか」

ナビィ「え、マジ……?」
ナビィ(冗談のつもりだったんだけどな……)

13: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/03(土) 14:41:04.63 ID:8UGvUJDm0
ナビィ「Watch out! スタルウォールよ!」

リンクル「ごまだれー」つクロスボウ
リンクル「せいっ」バシュッ

スタルウォール「アベシッ」ボトッ

リンクル「これで上れるね」

14: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/03(土) 14:41:43.38 ID:8UGvUJDm0
ガコーン

リンクル「うわっ、閉じ込められた」

ナビィ「デクナッツが居るヨ!」

リンクル「ふんっ」バシュッ

デクナッツ「ピピィッ!」
デクナッツ「痛いっピ! 許してっピ!」ジタバタ

リンクル「じゃあそこ開けて」

デクナッツ「そ、それは無理だっピ」

リンクル「……」チャキ

デクナッツ「まままま待つっピ! お、奥のスイッチを撃ち抜いたら開くっピ!」
デクナッツ「だだだだからその矢はオイラじゃなくて奥のスイッチに撃ってっピ!」

ナビィ「……ああ、無理って、開く能力がないってことね。リンクル、クロスボウ下ろしたげて」

15: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/03(土) 14:42:11.06 ID:8UGvUJDm0
リンクル「邪魔」バシュッ

スタルチュラ「ウワラバ」ボトッ

リンクル「ここがてっぺんかな?」
リンクル「確かにここから飛んだらあの蜘蛛の巣くらい破れそう」

ナビィ「ね、ねぇ、ほんとにやるの?」

リンクル「なんで? 言い出したのはナビィじゃない?」

ナビィ「で、でも、こんなとこから飛んだら、下手しなくても怪我しちゃうヨ?」

リンクル「へーきへーき」ピョンッ

ナビィ「ちょっ……!」

16: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/03(土) 14:42:48.16 ID:8UGvUJDm0
ドボーン

リンクル「ぶはっ!」
リンクル「ああ、もう! 下は池だったなんて!」ザブザブ

ナビィ「大丈夫? まさか本当に飛んじゃうなんて……」

リンクル「言ったのはナビィでしょ?」

ナビィ「流石に実行するとは思わないヨ……」

リンクル「何よそれー」ザバッ
リンクル「うー、さむ……」フルフル

ナビィ「びしょ濡れね」

リンクル「でも蜘蛛の巣は破れたし、下にも降りられたよ」
リンクル「ちょっとそこで服乾かして行こ」

17: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/03(土) 14:43:39.20 ID:8UGvUJDm0
幼生ゴーマ「ヘイヘイオンナダワルカネェ」ボトッ カサカサカサカサ

リンクル「うわっ気持ち悪っ」バシュッ

幼生ゴーマ「サイキンノネーチャンキツイヤ」バタッ

ナビィ「なんだかこれまでの魔物とは違う……?」
ナビィ「スタルチュラやデクナッツなんかは森でも時々見かけるわよネ?」

リンクル「んー、確かに。デクナッツなんか迷いの森行けばいっぱい居るし」バシュッ
リンクル「こんなおっきい虫……虫? みたいなのは見たことないかも」バシュッ

ナビィ「これがデクの樹様の言ってた呪いかしら……」

リンクル「まぁやることは変わんないよ」バシュッ

ナビィ「……っていうか、何発撃ってるノ!? 矢が勿体ないヨ!」

リンクル「いや、ほんとに死んだのかなって……」

ナビィ「もう生命力は感じられないから! 死んでるから! 死体撃ちはやめたげてよぉ!」

18: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/03(土) 14:44:22.03 ID:8UGvUJDm0
次男デクナッツ「ここは通さねぇっピ!」ベッ

リンクル「おっと」

デクの盾「フンッキカヌワ」バコッ

リンクル「あ、これ盾で跳ね返せるんだ」

次男デクナッツ「ピピィッ!」

三男デクナッツ「ぴっ! よくも兄弟を!」

リンクル「あらもう一匹」バシュッ

三男デクナッツ「ピピィッ!」

長男デクナッツ「ピピッ、兄弟達が!」

リンクル「ほい」バシュッ

長男デクナッツ「ピピィッ!」
長男デクナッツ「な、なんでオイラ達の秘密知ってるっピ!?」

リンクル「え?」

ナビィ「秘密?」

長男デクナッツ「悔しいからゴーマ様の秘密も教えちゃうっピ!」
長男デクナッツ「ゴーマ様は目を攻撃されると怯むから、その間は隙だらけだっピ!」

ナビィ「あ、ありがとう……?」

長男デクナッツ「ゴーマ様……」
長男デクナッツ「ゴーマんなさい……なんちて」ズボッ

リンクル「……行っちゃった」

ナビィ「なんだったのかしら……? 秘密って……」

19: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/03(土) 14:45:49.88 ID:8UGvUJDm0
リンクル「ここが一番奥かな? 広い部屋だけど……」

ガコーン

リンクル「あれっ、入ってきた扉が……」
リンクル「壁になっちゃったみたい」コンコン

ナビィ「Hey……リンクル……リンクル……!」

リンクル「何?」

ナビィ「そ、そこの天井、何か居るヨ……?」

リンクル「天井?」

カサカサカサカサ

リンクル「……ぅゎ……」
リンクル「なんだあれ、気持ち悪……っ」

ゴーマ「気持ち悪いとはなんだ気持ち悪いとは!」ギョロッ

甲殻寄生獣 ゴーマ

リンクル「こっち見ないでよ気持ち悪い!」バシュッ
リンクル「ていうか喋んないでよ気持ち悪い!」バシュッ バシュッ

ゴーマ「あぎゃああああっ!?」ドシーン

ナビィ「こいつよ! デクの樹様にかけられた呪い!」

リンクル「落っこちたよ?」

ナビィ「まだ生きてるワ! 早くとどめを……!」

ゴーマ「よくもやってくれたな!」ムクッ

ナビィ「って言ってる間に起きちゃった!」

リンクル「ほいっ」バシュッ

ゴーマ「ぐおおっ!?」ガクガク

ナビィ「……あ、そっか! 目が弱点なんだ!」

リンクル「まぁ弱点分かっちゃえば簡単だよね」
リンクル「これでとどめよ!」ザシュッ

コキリの剣「ココニキテハジメテノデバンダト」

ゴーマ「グアアアアアアアアァァァァァ……」

ナビィ「やった!」

20: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/03(土) 14:46:26.91 ID:8UGvUJDm0
――デクの樹様の前

デクの樹「よくぞワシの呪いを解き、見事な勇気を示したなリンクル……」
デクの樹「お前はワシの願いを託すに、相応しい子であった……」

リンクル「これでデクの樹様も元気になるよね!」

デクの樹「……リンクル」
デクの樹「ワシにかけられたのは死の呪い……命までは、元には戻らぬようじゃ……」

リンクル「えっ……」

デクの樹「よく聞くのじゃ、リンクル……」
デクの樹「ワシに死の呪いをかけたのは、黒き砂漠の民じゃ……」

リンクル「黒き砂漠の民……?」

デクの樹「あの者は邪悪な魔力を操り、ハイラルのどこかにあるという聖地を探し求めておった……」
デクの樹「何故なら……聖地には神の力を秘めた伝説の聖三角、トライフォースがあるからじゃ……」

21: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/03(土) 14:47:07.03 ID:8UGvUJDm0
 世に理なく、命未だ形成さず。
 混沌の地ハイラルに黄金の三大神、降臨す。

 すなわち、力の女神ディン……
 知恵の神ネール……
 勇気の神フロルなり……

 ディン……
 その逞しき炎の腕を以て、地を耕し赤き大地を創る。

 ネール……
 その叡知を大地に注ぎて、世界に法を与える。

 フロル……
 その豊かなる心により、法を守りし全ての命創造せり。

 三大神、その使命を終え、彼の国へ去り行きたもう。
 神々の去りし地に、黄金の聖三角残し置く。
 この後、その聖三角を世の理の礎とするものなり。
 また、この地を聖地とするものなり。

22: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/03(土) 14:47:41.74 ID:8UGvUJDm0
デクの樹「あの黒き砂漠の民をトライフォースに触れさせてはならぬ!」
デクの樹「悪しき心を持つあの者を聖地へ行かせてはならぬ!」

デクの樹「あの者はワシの力を奪い、死の呪いをかけた……」
デクの樹「ワシは間もなく死を迎えるじゃろう……」

デクの樹「だが……悲しむことはない……」
デクの樹「今こうしてお前にこのことを伝えられたこと……」

デクの樹「それが、ハイラルに残された……」
デクの樹「最後の希望だからじゃ……」

デクの樹「リンクルよ……」
デクの樹「ハイラルの城へ行くがよい……」

デクの樹「その城には、神に選ばれし姫がおいでになる筈じゃ……」
デクの樹「この石を持ってゆけ……あの男が、ワシに呪いをかけてまで欲した、この石を……」

リンクル「これは……?」

デクの樹「森の精霊石……コキリのヒスイじゃ……」
デクの樹「それを姫にお見せし、共にハイラルを救う手立てを探すのじゃ……」

デクの樹「頼むぞ、リンクル……」
デクの樹「お前の勇気を、信じておる……」

リンクル「デクの樹様……」

デクの樹「妖精ナビィよ……」
デクの樹「リンクルを助け、ワシの志を継いでくれ……」ズズ……

デクの樹「良いな……ナビィ……」ズズズズ……
デクの樹「さらば……じゃ……」ゴゴゴゴゴ……

ゴゴゴゴゴゴゴ ゴ  ゴ   ゴ

リンクル「……」

ナビィ「……行きましょ、リンクル!」
ナビィ「ハイラル城へ!」

リンクル「……うん」

ナビィ「さよなら……デクの樹様……」

30: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/04(日) 13:09:46.74 ID:Y8RltpkZ0
 ep.3 外の世界へ


ミド「おい、リンクル!」

リンクル「……ミド」

ミド「お前、何やったんだヨ?」

リンクル「……」

ミド「デクの樹様……死んじゃったんじゃないのか!?」
ミド「どーすんだよ! お前のせいだかんな!」

リンクル「……」
リンクル「……そうね、そうかもしれない」

ナビィ「リンクル……」

リンクル「でも、だからこそ、デクの樹様の意思を継がなきゃ」
リンクル「ミド、よく聞いて」

ミド「……何だよ」

リンクル「あたしね、デクの樹様の言い付けで森の外に出なきゃならないの」
リンクル「森の外に出たら死んじゃう、っていうのは昔から聞いてた話だけど……」

リンクル「でも、これはあたしがやらなきゃいけない」
リンクル「ミドも言ったじゃん、デクの樹様が死んじゃったのはあたしのせいって」

ミド「あ、いや、それは……」

リンクル「だから、あたしはこの言い付けを守らなくちゃいけない」
リンクル「外の世界っていうのがどのくらい広いか分かんないから、どのくらいかかるか分かんないけど……」

リンクル「必ず、帰ってくるよ」
リンクル「使命を果たしたら、必ず」

リンクル「暫く居なくなるから、森のこと……サリアのこと、よろしくね」
リンクル「剣も、返すよ。練習場に隠してたのあんたでしょ?」スッ

ミド「……そんな剣……」
ミド「そんな剣、くれてやらぁ!」ドンッ

ミド「もう帰ってくんな!」グスッ
ミド「帰ってくんなバカー!」グスグス

リンクル「……」ダッ

31: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/04(日) 13:11:02.01 ID:Y8RltpkZ0
――迷いの森 橋の上

「行っちゃうのね……」

リンクル「?」クルッ
リンクル「サリア……」

サリア「サリア、思ってたの……」
サリア「リンクル、いつか森を出て行っちゃうんじゃないかって……」

リンクル「……あたしも、なんだかサリア達とあたしってどこか違うような気はしてたよ」

サリア「!」
サリア「……でも、そんなの、どうでもいい!」

サリア「あたし達、ずーっとトモダチ! そうでしょ?」
サリア「このオカリナあげる! 前にあたしのオカリナの音色が好きだって言ってくれたでしょ?」

リンクル「でも、それじゃサリアは……」

サリア「ううん、オカリナならまた作れるから……」
サリア「オカリナ吹いて、あたしのこと思い出したら、またいつでも戻ってきてね」

リンクル「……うん。大切にするよ」
リンクル「じゃあ……また、ね」

サリア「うん、またね……」

32: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/04(日) 13:11:54.44 ID:Y8RltpkZ0
――ハイラル平原

「ホホーゥ! リンクルよ、こちらをご覧」

リンクル「うん?」
リンクル「うわっ、でかっ! フクロウ!?」

ケポラゲボラ「フクロウではない、ケポラゲボラじゃ」
ケポラゲボラ「やっとお前の旅立ちの時がきたようだの」

リンクル「……あたしのこと知ってるの?」

ケポラゲボラ「よぅーく知っているとも」
ケポラゲボラ「デクの樹とも古い友達だよ」

ケポラゲボラ「お前はこの先多くの苦難に出会う」
ケポラゲボラ「それがお前の運命……それを恨んではならん」

ケポラゲボラ「この道を真っ直ぐ行くと、ハイラルの城が見えてくる」
ケポラゲボラ「だが、お前がその小さな身体で歩いて行くには広大な平原じゃ」

ケポラゲボラ「途中で別の道とぶつかる。それは行商の道だから、馬車と出会うであろう」
ケポラゲボラ「心優しい者に出会うことが出来れば、そのまま城下町まで乗せてもらえるかもしれんな」

リンクル「ここにきて運頼み?」

ケポラゲボラ「ホホ、それも旅の醍醐味であろう」
ケポラゲボラ「それではワシは一足先に行くとしよう。待っておるぞ。ホホーッ!」バサバサ

リンクル「……行っちゃった」

ナビィ「行きましょリンクル、この道を真っ直ぐだって!」
ナビィ「きっと良い人の馬車にも会えるよ!」

33: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/04(日) 13:12:41.67 ID:Y8RltpkZ0
ガラゴロガラゴロ

リンクル「本当に出会えるとは思わなかったね」

ナビィ「ネー」

「妖精ちゃん、何の準備もなしに平原を越えようなんて無茶だよ」

リンクル「こんなに広いとは思わなかったんだもん」
リンクル「それにしても馬の手綱を持ってるあの人、おっきな人だね。これが大人?」

「とーさんのこと? うん、あれが大人。見たことないの?」

ナビィ「コキリ族はずっと子供の種族だから、大人は見たことないよネ」

「お、そろそろ見えてくるだーよ」
「ハイラル城下町だ」

34: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/04(日) 13:15:12.14 ID:TKL21FKP0
――ハイラル城下町

リンクル「わぁー、すっごーい! こんなに人が居るんだ!」
リンクル「この地面も、壁も、石かな? 家も石で出来てる!」

ナビィ「大人も子供もいっぱいね! あれはお爺さん? 初めて見るものばっかり!」

リンクル「ん、この匂いは……?」
リンクル「わっ、何これ? 見たことない食べ物がいっぱい!」

ナビィ「どう加工したらこんな風になるんだろう?」
ナビィ「気になるものいっぱいね!」

リンクル「……あ、でもお金持ってないや」

ナビィ「今いくらぐらい持ってたっけ?」

リンクル「10ルピーとちょっと……」

ナビィ「そこのお店の食べ物を少しくらいは買えるかなぁ……」

リンクル「……あっ!」

ナビィ「どうしたの?」

リンクル「予備ボルト、置いてきちゃった……!」

ナビィ「ボルト?」

リンクル「クロスボウの矢。迷いの森とか行く時は予備も持ち出すんだけど、あの時はまさか使うと思わなくて」
リンクル「何本か回収したとはいえ、デクの樹様の中で大分撃っちゃったからなぁ」

ナビィ「……そういえば、デクの樹様のこと終わってから家にも寄らずに出てきたんだもんネ」
ナビィ「あと何本くらいあるの?」

リンクル「あと10本もない……」

ナビィ「ちょっと心許ないわね……」

リンクル「うーん……まぁ、城下町の中なら安全そうだし」

ナビィ「……ほんとにそう思ってる?」

リンクル「なんで?」

ナビィ「左手。平原は仕方ないにしても、城下町入ってからもずっとクロスボウに触ってる」
ナビィ「フードもずっと被ったまんまで、なんだか顔隠してるみたいだヨ?」

リンクル「……ごめん、つい、大きな人が多いから怖くて」

ナビィ「大人を見るのも殆ど初めてだもんね……」

35: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/04(日) 13:16:09.89 ID:TKL21FKP0
男「そこの可愛いお嬢さん」

リンクル「?」

男「どうだい、少し遊んで行かないかい?」

リンクル「遊んでって言っても……」
リンクル「ごめんなさい、今お金がないの」

男「平気だよ、お金なんて借りればいいし、君は可愛いからきっとすぐに稼いじゃうよ」
男「君みたいな子が好きな人だっていっぱい居るわけだしね……」ボソッ

リンクル「……」

ナビィ「……リンクル、なんだか怪しいヨ」

男「さあ、おいで」

リンクル「いや……」

兵士「おい、そこで何をしてる」

男「げっ!」
男「ななな何もしてやせんよ、ははは……」

兵士「本当だろうな? ここ最近阿漕な商売で女性を騙している輩が居ると聞くぞ」ジロリ

男「そ、そんな人聞きの悪い……」
男「あ、あっしは忙しい身なのでね、もう失礼しますね、へへへ……」スタコラ

36: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/04(日) 13:17:18.19 ID:TKL21FKP0
兵士「……ったく」
兵士「大丈夫かい? 何もされてないね?」

リンクル「大丈夫……ありがとうございます」

兵士「何事もなくて何よりだ」
兵士「街に慣れない様子だが、君はどこから来たんだ?」

リンクル「コキリの森から」

兵士「コキリの森……そんな遠いところから遥々と」
兵士「城下は人が多くてびっくりしただろう?」

リンクル「はい、まあ……」

兵士「私も平原の方の小さな村の出だ。この街に初めて来た時はそれこそ君みたいに驚いた」
兵士「賑やかで、華やかで、楽しいことも沢山ある」

兵士「だが、覚えておくんだ」
兵士「人が多いと、さっきのような不逞の輩も出てくる」

兵士「我々も目を光らせているが、君自身も十分気をつけるんだよ」
兵士「もし困ったことがあったら、治安警備隊の詰所に来るといい」

兵士「城の衛兵隊と違って人々の困りごとの相談を受けるのも我々治安衛兵の仕事だからね」
兵士「……おっと、喋り過ぎてしまったな。それじゃ、私はもう行くからね。気をつけるんだよ」

リンクル「……」

ナビィ「……良い人だったネ」

リンクル「うん……あれって兵隊さんって言うんだよね?」

ナビィ「そうヨ、あれが兵隊さん」

リンクル「ふーん……」

37: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/04(日) 13:18:07.73 ID:TKL21FKP0
――ハイラル城

「ねぇねぇ」

リンクル「うん?」
リンクル「あ、馬車に乗せてくれた……マロンだったっけ?」

マロン「うん、マロンだよ」
マロン「とーさんがお城に牛乳届けに入ったまま出てこないんだ……」

リンクル「おじさんが? お城に?」

マロン「うん。妖精ちゃん、お城へ入れる?」

リンクル「分かんないけど……用事があるのは確かだよ」

マロン「じゃ、とーさん探してくれる?」
マロン「とーさん、きっとお城のどこかで寝てるのよ……困った大人よね、フフフ!」

リンクル「ふふっ、そうね」
リンクル「じゃあ、見つけたらすぐ出てくるように伝えてみるね」

マロン「ありがと、よろしくネ」

38: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/04(日) 13:18:49.04 ID:TKL21FKP0
リンクル「……とは言ったものの」

ナビィ「どうだった?」

リンクル「駄目駄目、門番の兵隊さんは通してくれなさそう」
リンクル「上から見た感じはどう?」

ナビィ「門の向こうも兵隊さんいっぱいよ」
ナビィ「でも見た感じリンクルなら抜けられそうなとこは結構あったかな」

リンクル「じゃ、こっそり入る方向で行こっか」

ナビィ「うん、それがいいかも」

リンクル「うーん、手始めに……そこの蔦上れそうかな」

39: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/04(日) 13:19:23.98 ID:TKL21FKP0
リンクル「よしっ、ここまで来た」

ナビィ「案外見つからないものネ……」

リンクル「これ城下町の外にもあったけど、この川は何?」

ナビィ「お堀、っていうのよ。これで敵の侵入を防ぐの」

リンクル「ふーん……平和な国でも必要なんだね」
リンクル「お堀とか、兵隊さんとか、戦をする為のものなのに」

ナビィ「そういうものがあるから平和なのかもしれないわ?」

リンクル「そうかな。難しいなぁ……」
リンクル「……ん、あれは……」

「ぐぅー……ぐぉー……」

リンクル「あのおじさんだ! マロンの言う通り、こんなところで寝てるなんて……」

40: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/04(日) 13:21:39.96 ID:ruDy2xqk0
リンクル「城壁の内側へ入れたね」

ナビィ「ここにも兵隊さんがいっぱいよ。気をつけてね」

リンクル「うーん……」
リンクル「なんか、おんなじとこグルグル回ってるだけみたい」

ナビィ「抜けられそう?」

リンクル「簡単そう」

41: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/04(日) 13:22:17.30 ID:ruDy2xqk0
――ハイラル城 中庭

リンクル「ここが最後かな?」
リンクル「……誰か居る」

「!」クルッ
「だ、誰っ? どうやってこんなところまで……」

リンクル「ちょっとね」

ナビィ「思い切り不法侵入だったけどね」

「あら……もしかして、妖精!?」
「それじゃ、あなた……森から来た人なの?」

リンクル「え、あ、うん。そうよ」

「それなら……森の精霊石を持っていませんか?」
「翠色のキラキラした石……」

リンクル「これ?」

「やっぱり!」
「私、夢を見たのです……」

「このハイラルが真っ黒な雲に覆われて、どんどん暗くなっていくのです……」
「その時、一筋の光が森から現れて、雲を切り裂き、大地を照らすと……」

「妖精を連れて、翠に光る石を掲げた人の姿に変わったのです」
「それが夢のお告げ」

「そう、あなたがその夢に現れた森からの使者だ、と……」
「……あ、ごめんなさい!」

「私、夢中になってしまって……まだ名前もお教えしていませんでしたね」
「私はゼルダ。このハイラルの王女……あなたのお名前は?」

リンクル「リンクルよ。よろしくね、ゼルダ姫」

ゼルダ「リンクル……不思議……なんだか懐かしい響き……」
ゼルダ「それでは、リンクル」

ゼルダ「今からこのハイラル王家だけに伝わる聖地の秘密をあなたにお話しします」
ゼルダ「絶対に他の人に言ってはいけませんよ?」

リンクル「言わない……けど、あたしなんかに話していいの?」

ゼルダ「いいのです。だって、あなたは夢のお告げに出てきた森の人……」
ゼルダ「このハイラルの、希望の筈なのですから」

リンクル「ハイラルの、希望……」

『それが、ハイラルに残された……』
『最後の希望だからじゃ……』

リンクル「……うん。分かった」
リンクル「誰にも言わないから、教えて」

42: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/04(日) 13:23:30.10 ID:ruDy2xqk0
ゼルダ「力の神ディン、知恵の神ネール、勇気の神フロルの三大神がハイラルを創造したのはご存知ですか?」

リンクル「うん、知ってる」
リンクル「その後三人の女神様はトライフォースだっけ? それを聖地に残して行ったんだっけ」

ゼルダ「ええ……」
ゼルダ「トライフォースには神の力が宿っています」

ゼルダ「その力とは、トライフォースを手にした者の願いを叶えるものでした」
ゼルダ「心正しき者が願えば、ハイラルは善き世界に変わり……」

リンクル「……悪い人が願えば悪い世界になっちゃう」

ゼルダ「その通りです」
ゼルダ「そこで、古の賢者達は心悪しき者からトライフォースを守る為、時の神殿を造られました」

ゼルダ「そう……時の神殿とは、この地上から聖地へ入る為の入口なのです」
ゼルダ「でも、その入り口は“時の扉”によって閉ざされています」

ゼルダ「そして、その“扉”を開く為には……」
ゼルダ「三つの精霊石を集め、神殿に納めよ……と伝えられているのです」

リンクル「今あたしが持ってるのの他に、まだ二つ精霊石があるってこと?」

ゼルダ「そういうことになりますね」
ゼルダ「更にもう一つ必要なもの……言い伝えと共に王家が守っている宝物……」

ゼルダ「時のオカリナです!」
ゼルダ「いずれも、彼に渡すわけにはいきません……!」

リンクル「彼?」

43: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/04(日) 13:24:29.24 ID:ruDy2xqk0
ゼルダ「私は今、この窓から見張っていたのです」
ゼルダ「あなたも、ほら、ご覧になって」

リンクル「?」

ゼルダ「あの男こそが夢のお告げのもう一つの暗示……」

リンクル「……真っ黒な雲?」スッ

ゼルダ「はい。鋭い目付きの男が見えるでしょう?」
ゼルダ「あれが西の果ての砂漠から来たゲルド族の首領、ガノンドロフ……」

リンクル「……砂漠……あっ」

『ワシに死の呪いをかけたのは、黒き砂漠の民じゃ……』

リンクル「あいつが……黒き砂漠の民……!」

ゼルダ「今はお父様に忠誠を誓っているけれど、きっと嘘に決まっています」
ゼルダ「夢に見た、ハイラルを覆う黒い雲……あの男に違いありません!」

ガノンドロフ「……?」チラッ

リンクル「!」

ゼルダ「どうしました?」

リンクル「……目が合った」

ゼルダ「……構うことはありません!」
ゼルダ「今は私達が何を考えているか、分かりはしないのですから!」

44: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/04(日) 13:25:13.63 ID:ruDy2xqk0
リンクル「ゼルダ姫のお父さんって、王様だよね?」
リンクル「王様には話さなかったの?」

ゼルダ「……お父様にもお話はしました」
ゼルダ「けれど、お父様は私の夢のお告げを信じてくださいませんでした……」

ゼルダ「でも、私には分かるのです!」
ゼルダ「あの男には悪しき心が……黒き野望があると!」

ゼルダ「ガノンドロフの狙いは、恐らく聖地に納められたトライフォースです」
ゼルダ「それを手に入れる為に西の砂漠からやってきたのでしょう」

ゼルダ「このハイラルを手中に収めようと……」
ゼルダ「リンクル……今、ハイラルを守れるのは私達だけなのです!」

リンクル「……うん、分かった」
リンクル「あたしも、あいつには返さないといけない仇があるし」

ゼルダ「……リンクル……」
ゼルダ「……兎に角、絶対にあの男をトライフォースに触れさせてはなりません」

ゼルダ「時のオカリナは私があの男の手に渡らぬよう守っています」
ゼルダ「あなたは、どうかあと二つの精霊石を見つけてください!」

リンクル「うん。じゃ、行ってくるね」

ゼルダ「はい、お気をつけて……」
ゼルダ「と、言いたいところですけど、もう日も傾いてきています」

ゼルダ「今日はここで泊まっていくと良いでしょう」
ゼルダ「私の乳母が部屋まで案内しましょう」

リンクル「あの人?」クルッ

「……」

ゼルダ「え、はい……」
ゼルダ(まるで居ることが分かっていたかのように振り向いたけど、気付いていたの……?)

リンクル「……あ、そうだ」

ゼルダ「?」

リンクル「予備のボルトある?」

ゼルダ「ボルト?」

リンクル「クロスボウの矢。予備置いてきちゃって、あと少ししかないんだ」

ゼルダ「……インパ、用意してあげて」

インパ「承りました。ついてこい」

リンクル「はいな」

45: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/04(日) 13:26:15.80 ID:ruDy2xqk0
インパ「そういえば……」

リンクル「?」

インパ「お前は、クロスボウの他に剣と盾も持っているようだが」

リンクル「一応ね」

インパ「……ふむ」
インパ「左利き、クロスボウの方が得意、近接戦の補助は剣ではなく……足、か?」

リンクル「なっ……」

インパ「お前の動きは見る者が見るとすぐに手を見破られる」
インパ「先程から頻りに左手でクロスボウに触れている仕草はそれがメインであると分かる」

インパ「常に半装填状態で、抜いて弦を引けばすぐに撃てる状態にしていることもな」
インパ「……いや、抜く時に一度押し込むと弦が引かれるようになっているのか。見事な細工だ」

インパ「一方で、剣は同じように左手で抜けるよう背負っているにも関わらず、触れる素振りもない」
インパ「盾もそうだ。どうにも盾を素早く手に取れるようにしている様子はない」

リンクル「……」

インパ「大方、森の中では程度の低い魔物しか相手が居なかったのだろう」
インパ「これからはもっと強力であったり、または知力に優れた魔物とも対峙することになる」

インパ「……お前には少し衝撃的かもしれないが」
インパ「恐らく、人間を相手にすることもあるかもしれないな」

リンクル「……!」

インパ「どうだ、少しばかりだがここで稽古していかないか?」

46: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/04(日) 13:27:00.12 ID:ruDy2xqk0
カァンッ キンッ

インパ「どうした、踏み込みが甘いぞ」ガキンッ

リンクル「っ……わっ!」ドタッ

インパ「盾で防ぐ時は、逆に相手の攻撃に向かって踏み込まねばならん」
インパ「殊に、お前は体が軽いからな。姿勢を崩されやすい」

インパ「これまではその身軽さで勝負をしてきたんだろうが、剣と盾を使う場合はそうもいかないだろう」
インパ「だが、筋は良い。剣の才能は十分だ」

リンクル「……」ムクッ

インパ「その立ち上がる意志も見事なものだな」
インパ「それ、もう一本!」ビュッ

リンクル「!」タンッ

47: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/04(日) 13:29:29.33 ID:ruDy2xqk0
――翌朝

ゼルダ「昨夜はインパに随分絞られていたようですね」

リンクル「ああ、うん……」

ナビィ「剣はからっきしだったもんね、リンクル」
ナビィ「でもこれからは剣も使えるネ!」

ゼルダ「強いでしょう、彼女は」
ゼルダ「私の乳母であり、護衛も兼ねているのです。武術の達人なのですよ」

リンクル「……戦の達人でもあるの?」

ゼルダ「えっ……」
ゼルダ「……そうかも、しれません」

ゼルダ「ハイラル王国が今の形に統一されたのも、ほんの20年とちょっと前の話です」
ゼルダ「その後もいくつか動乱がありましたから、彼女も戦に参加したことがあるのかもしれません」

リンクル「……だから、あんなことを」

ゼルダ「……リンクル、あなたは心優しいのですね」
ゼルダ「これを持って行ってください」

リンクル「手紙?」

ゼルダ「私のサインが入っていますから、大抵の門は通れる筈です」

リンクル「そっか、ありがとね」

ゼルダ「それと、もう一つ……」
ゼルダ「昨夜、インパに歌を教えてもらったでしょう?」

リンクル「ゼルダの子守唄ね」

ゼルダ「あれも、王家に伝わる重要な歌です」
ゼルダ「王家の使者であると証明する為に、きっと役に立ちますよ」

48: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/04(日) 13:30:28.94 ID:ruDy2xqk0
――ハイラル平原

インパ「軍資金だ。100ルピーある」
インパ「よく考えて、大切に使うんだぞ」

ナビィ「水と食料も十分だネ」

リンクル「ボルトももらったし、これで安心ね。ありがとう、インパさん」
リンクル「……でも、なんだか変なボルトだね」

インパ「そのボルトはポイントに返しがついている」
インパ「一度刺さればそうそう抜けはしない。戦の知恵だ」

リンクル「……」

インパ「……勇気ある少女よ」
インパ「我々はこの美しいハイラルを守らねばならない」

インパ「その為に、手を汚さねばならないこともあるだけの話だ」
インパ「あの山を見ろ」

インパ「あれは炎の精霊石があるゴロンの山……デスマウンテンだ」
インパ「デスマウンテンの麓には私の生まれ育った村、カカリコ村がある」

インパ「村人達に話を聞いてからデスマウンテンへ向かうがいい」
インパ「姫はお前がこの城へ戻ってくるのを待っておられる。それでは、頼んだぞ」

49: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/04(日) 13:30:59.42 ID:ruDy2xqk0
ナビィ「リンクル、元気ない?」

リンクル「ちょっとね……」テクテク
リンクル「なんか、変な感じ」

ナビィ「変?」

リンクル「新しいボルトもそうだけど、インパさんと話してると、なんだか……」
リンクル「モヤモヤするの」

ナビィ「モヤモヤ?」

リンクル「ざわざわする、とも言えるかな……」
リンクル「なんだか落ち着かないような……」

リンクル「勿論インパさんが悪い人じゃないのは分かるよ」
リンクル「でも、なんか……嫌な感じ」

ナビィ「……もしかして、戦争の話?」

リンクル「……」
リンクル「……そうかも」

ナビィ「……そっか」
ナビィ(どうしよう……どんな言葉をかけたらいいのか、分かんないヨ……)

50: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/04(日) 13:43:21.67 ID:ruDy2xqk0
 ep.4 ゴロンシティへ


――カカリコ村

リンクル「ここがカカリコ村かぁ……」

ナビィ「日が暮れる前に着いて良かったね」

リンクル「うん。取り敢えず日が落ちる前に今夜の宿を探さないと……」

コッコ「コッコッコッコッコッコ……」

リンクル「なんか、そこらじゅうにコッコが居るね」ヒョイッ

コッコ「コッケコーコケッコケッコケッコケッ」バタバタ

コッコ姉さん「あ、丁度良かった……ねぇねぇ!」

ナビィ「呼ばれてるよ、リンクル」

コッコ「コケッコケッコケッコケッ」バタバタ

リンクル「へ? なんだって?」

コッコ「コケッコケッコケッコケッ」バタバタ

ナビィ「Look! あそこのお姉さん! リンクルのこと呼んでる!」

リンクル「はぁい!?」

コッコ「コケッコケッコケッコケッ」バタバタ

コッコ姉さん「そのコッコ、うちのなんだけど、逃げ出しちゃって、困ってたの」
コッコ姉さん「あたしコッコに触ると鳥肌立っちゃうから、あなたが捕まえてきてくれない?」

コッコ「コケッコケッコケッコケッ」バタバタ

リンクル「なんて!?」

コッコ「コケッコケッコケッコケッ」バタバタ

リンクル「うるさいよ!!」ポイッ

コッコ「コケッコケッコケッコケッ」バサバサバサ

リンクル「ふぅ……」
リンクル「で、なんて?」

コッコ姉さん「あ、えっとね……」
コッコ姉さん「村中にうちのコッコが逃げちゃったから、さっきみたいに捕まえてきてほしいの」

リンクル「んー、分かった。じゃあ村の探索がてら探してみるね」

コッコ姉さん「助かるわ」

51: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/04(日) 13:51:59.99 ID:ruDy2xqk0
リンクル「これで最後かなっと」ポイッ

コッコ「コケッコケッコケッコケッ」バサバサバサ

コッコ姉さん「ありがとう! ほんとに助かったわ!」
コッコ姉さん「あ、これはお礼よ。キラキラしてて綺麗でしょ?」

リンクル「空き瓶……何か色々使えるかな」
リンクル「ありがと、お姉さん」

ナビィ「でも、もうすぐ夜になっちゃうヨ?」
ナビィ「今夜の宿どうするの?」

リンクル「……あーっ!? 決めてなかった!」

コッコ姉さん「あらあら、迂闊ね」
コッコ姉さん「じゃあさ、今夜はうちに泊まっていかない?」

リンクル「いいの?」

コッコ姉さん「コッコ捕まえてくれたでしょ? これもお礼の一つだと思って」

52: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/04(日) 13:52:54.50 ID:ruDy2xqk0
――親方の家

コッコ姉さん「フフフ、美味しい?」

リンクル「ええ、とっても!」モグモグ

親方「どんな小娘連れてきたのかと思や、中々いい食いっぷりの良い娘っ子じゃぁねぇか!」
親方「どうでい、うちの母ちゃんの飯は絶品だろう!?」

リンクル「はい!」

コッコ姉さん「ご飯が終わったら、あたしと一緒にお風呂入ろっか?」

リンクル「え、や、流石にお風呂くらい一人で入れるよ」

コッコ姉さん「そーんなこと言って、髪もボサボサでお肌も手入れなってないじゃない」
コッコ姉さん「駄目よ、その年からそんなんじゃ。可愛い顔してるんだから勿体ないわ」

リンクル「可愛い、って……」

53: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/04(日) 13:53:34.86 ID:ruDy2xqk0
コッコ姉さん「ほらほら、ちゃんと洗えてないじゃない」ゴシゴシ

リンクル「ひゃっ、ちょっと、くすぐったぁい」

コッコ姉さん「女の子の肌はデリケートなんだから、きちんと綺麗にしとかないと駄目よ」ゴシゴシ
コッコ姉さん「ほら、ここも」ニュルッ

リンクル「ひぅっ!?」ビクッ

コッコ姉さん「ここもちゃーんと洗わないとね」ニュルニュル
コッコ姉さん「……リンクルちゃん?」

リンクル「はぅ……そ、そこあんまり触らないでっ……!」

コッコ姉さん「あらま……おませさん」ニュルッ

リンクル「ひゃうっ!?」ビクンッ
リンクル「も、もうーっ! お姉さんサリアみたいなことしないでよ!」

コッコ姉さん「サリア?」

リンクル「森に居た頃の話よ、サリアったら洗いっこするといっつも胸とかお股とかばっかり……」
リンクル「さっきのお姉さんの触り方、その時のサリアみたいだったのよ」

コッコ姉さん「あー……」
コッコ姉さん(幼馴染とかお友達とかに“そういう子”が居ちゃった感じかしら……)

コッコ姉さん(……そういえば)
コッコ姉さん「言われてみればリンクルちゃん、年の割に胸おっきいんじゃない?」ムニッ

リンクル「きゃっ!?」

コッコ姉さん「その子に揉まれておっきくなってきちゃったのかなー?」ムニムニ

リンクル「お、お姉さんほどじゃないでしょ……!」ビクビクッ

コッコ姉さん「でも、成長性はすっごくありそうよねー♪」ムニュムニュ

リンクル「あうぅ……!」

54: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/04(日) 13:54:01.78 ID:ruDy2xqk0
――翌朝

リンクル「食糧と水まで、ありがとうございます」

おばさん「いいのよいいのよ、またいつでも泊まりにおいでね」

コッコ姉さん「またお風呂一緒に入ろーネ!」ツヤツヤ

リンクル「やだよ!」

コッコ姉さん「えー」

親方「何があったのかは知らねぇが……」
親方「嬢ちゃん! あそこがデスマウンテン登山道の門だ!」

親方「兵士が立ってんのが見えるな?」
親方「普通は王の許可がないと入れない危険な山だってこった」

リンクル「……」ゴクッ

親方「お前さんがどうやってあの門を通るのか知らねぇが」
親方「それなりの覚悟はしてったがいいだろう」

親方「ただまぁ……これは俺っちの勘だが」
親方「お前さんなら大概どうにでもなる気がするよ」ニカッ

リンクル「……!」
リンクル「うんっ! ありがとうっ!」

55: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/04(日) 13:54:36.49 ID:ruDy2xqk0
――デスマウンテン登山道

ナビィ「兵隊さんにはゼルダの新しい遊びだと思われちゃったね」

リンクル「まぁいいよ、通れたんだし」
リンクル「それにしても見慣れない魔物だね」バシュッ

赤テクタイト「ピギィッ」

ナビィ「さらっと殺したけど矢大丈夫?」

リンクル「大丈夫大丈夫」
リンクル「森から持ってきたボルトはちょっと貴重だから回収しないとだけどね」ズボッ

ナビィ「森から持ってきたのは節約したいんだ」
ナビィ「うわぁ……なんか変な色の体液ついてるヨ……」

リンクル「まだ使えるでしょ」ブンブン
リンクル「ほら落ちた。まだ使えるよ」

56: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/04(日) 13:55:06.12 ID:ruDy2xqk0
ゴロゴロゴロゴロ

リンクル「おっと、岩が……」
リンクル「……あれ? 止まった?」

「こんなとこにお客さんゴロ?」ムクッ

リンクル「きゃっ!? ななな何!?」

「何とは失礼ゴロ」
「オラはゴロン族ゴロ。知らねぇゴロ?」

リンクル「は、初めて見た……」

ゴロン「こっちとしても、ニンゲンの、しかも子供がくるなんて珍しいゴロ」
ゴロン「この先にオラ達ゴロン族の街ゴロンシティがあるけど、子供が来ちゃ危ないゴロよ」

リンクル「そうは言っても、炎の精霊石探さないといけないのよ」
リンクル「ゴロン族が持ってるんでしょ?」

ゴロン「んー……もしかしたら、ダルニアのアニキが持ってるアレのことゴロ?」

リンクル「アレ?」

57: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/04(日) 13:55:36.14 ID:ruDy2xqk0
――ゴロンシティ

ダルニア「何ィ? 炎の精霊石がほしいだァ?」

リンクル「えぇ。ハイラルを救うのに必要なんですって」

ダルニア「誰が言ったんだそんなこと」

リンクル「……ハイラル王家の人よ」

ダルニア「けっ、王家の使者がガキんちょとは舐められたもんだ!」
ダルニア「もう完全にへそ曲げたからな! 話なんぞしねぇぞ、帰れ帰れ!」

リンクル「むぅ」

58: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/04(日) 13:56:11.30 ID:ruDy2xqk0
ナビィ「けんもほろろ、とはまさにこのことね」

リンクル「それにしたって、ダルニアさんに限らず、なんだかみんな気が立ってるように見えるよ」

ゴロン「あ、分かるゴロ?」

リンクル「何か原因が?」

ゴロン「オラ達は岩を喰う種族ゴロ」
ゴロン「でも最近はドドンゴの洞窟に住む古代龍が暴れ出して、良質な岩が食べられなくなったゴロ」

ナビィ「空腹でイラついてる、ってわけネ……」

リンクル「取り敢えず話だけでも出来る状態にならないとなぁ……」

59: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/04(日) 13:56:41.28 ID:ruDy2xqk0
リンクル「どうしたもんかなぁ」スッ

ナビィ「オカリナ?」

リンクル「なんとなく、コキリの森のみんなはどうしてるのかなって思ってさ」

♪♪♪~♪♪♪~……

ナビィ「なんだか、聞き覚えのあるような……」

リンクル「サリアがよく吹いてた曲よ」
リンクル「ちゃんと教えてもらったわけじゃないから、少ししか吹けないけどね」

ゴロン「あ、その曲知ってるゴロ」

リンクル「知ってるの?」

ゴロン「そこの道の先のゲートからよく聞こえる曲で、アニキのお気に入りゴロ」
ゴロン「こっちゴロ」

60: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/04(日) 13:57:13.45 ID:ruDy2xqk0
ゴロン「このゲートは森に繋がってるらしいゴロ」
ゴロン「長いこと岩で塞がってるけどね」

リンクル「なんだか……懐かしい空気」

ナビィ「ちょっと見てくるね」

リンクル「こういう時小さな身体で飛べるって便利だなぁ」

ナビィ「ホントだ、森に繋がってるヨ!」

リンクル「これ退かせる?」

ゴロン「んー、普段なら出来ないことはないけど、お腹が空いててちょっと無理かもゴロ」

リンクル「そっか……」

ゴロン「あ、そうだゴロ」

リンクル「?」

61: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/04(日) 13:57:47.83 ID:ruDy2xqk0
ゴロン「離れてるゴロ」

リンクル「うん」

ドカーン

リンクル「きゃっ!?」
ナビィ「ぴぃっ!?」

ゴロン「これで開いたゴロ」

リンクル「い、今のは……?」

ゴロン「ゴロンシティ名産の爆弾だゴロ」
ゴロン「さ、道も開いたし行ってくるゴロ」

ナビィ「随分協力的なのね」

ゴロン「オラ達としても早いとこダルニアのアニキには機嫌直してほしいからね……」

リンクル「じゃ、サリアに教えてもらえないか聞いてくるね」

62: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/04(日) 13:58:16.49 ID:ruDy2xqk0
――迷いの森

リンクル「へぇ、こんなとこに繋がってたんだ……」

ナビィ「道分かる?」

リンクル「ここから森の聖域へは微妙……だけど、今回はツイてる」

ナビィ「どうして?」

リンクル「耳を澄ましてみて」

……♪♪~……♪♪♪~……

ナビィ「……あっ! この曲!」

リンクル「森の妖精達がサリアの奏でる音を運んできてくれるわ」
リンクル「さ、行きましょ!」

63: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/04(日) 13:58:44.00 ID:ruDy2xqk0
――森の聖域

ウルフォス「アオオーン!」

リンクル「はいはい」バシュッ

ウルフォス「キャイン!」

オコリナッツ「ピッ!」ベッ

リンクル「ほい」

デクの盾「フハハ、ソンナモノカ」ゴンッ

オコリナッツ「ピピィッ!」

リンクル「ったく、ここは相変わらずね」
リンクル「サリア、大丈夫かしら?」

ナビィ「手慣れたものね……」

リンクル「いっつもだからね」

64: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/04(日) 13:59:25.50 ID:ruDy2xqk0
リンクル「サーリアっ?」

サリア「待ってたヨ、リンクル」
サリア「ちょっと久しぶりだけど、迷わずに来れたんだ?」

リンクル「慣れてるし、何よりサリアの歌が聞こえたからね」

サリア「そっか、嬉しい」
サリア「ここでオカリナ吹くと妖精達とお話出来るのよ。一緒に吹いてみる?」

リンクル「うん。いつものあの曲、今教えてほしいな」

サリア「じゃあ、サリアの真似して吹いてみてね」

♪♪♪~ ♪♪♪~

♪♪♪~ ♪♪♪~

♪♪♪~……
♪♪♪~……


サリア「上手い、上手い!」
サリア「この曲、忘れないで」

サリア「あたしの声、聞きたくなったらこの曲吹いてネ……」
サリア「いつでもお話出来るから、ね……」

65: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/04(日) 14:00:00.75 ID:ruDy2xqk0
――ゴロンシティ ダルニアの家

ダルニア「なんだ、またおめえか」
ダルニア「話はしねぇって言ってるだろ」

リンクル「まぁまぁ、これでも聞いてよ」

♪♪♪~♪♪♪~♪♪♪~
♪♪♪~♪♪♪~♪♪♪♪♪♪♪♪ ♪♪♪~

ダルニア「おっ、おっ、おおっ!」
ダルニア「きた、きた、きたーっ!」

ナビィ「えっ、踊り出し……」

ダルニア「アツい!」
ダルニア「このアツいビート!」

ナビィ「……」

ダルニア「ウオォー!」
ダルニア「イエイ!」

ナビィ「えぇ……」

ダルニア「キャッホーッ!」
ダルニア「イエアアアアアアアッ!」

ダルニア「うーん、イイ曲だぁーっ!」
ダルニア「沈んだ気分もすっきり、踊りまくっちまうぜぇー!」

66: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/04(日) 14:00:33.33 ID:ruDy2xqk0
ダルニア「ふぅ……」
ダルニア「それで、結局のところおめえの話はなんなんだ?」

ダルニア「おめえも炎の精霊石がほしいってんだろ?」
ダルニア「いくら何でも炎の精霊石は簡単にはくれてやれねぇぜ?」

リンクル「あたし達“も”?」

ダルニア「おうよ、この前も同じことを言う奴がやってきたんで追い返したんだよ」
ダルニア「そしたらよ、その野郎ドドンゴの洞窟のドドンゴ共を凶暴化させやがった」

ダルニア「どーしても、ってんなら、おめえがそのドドンゴ共を何とかしてきてくれよ」
ダルニア「そうすりゃ俺達もみんな幸せ! 炎の精霊石もくれてやろうってもんだ」

リンクル「……分かった。ドドンゴの洞窟まで案内して」

67: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/04(日) 14:01:00.33 ID:ruDy2xqk0
ゴロン「ここだゴロ」

リンクル「ここって……」
リンクル「来る途中で見かけた岩だけど」

ゴロン「危ないから岩で入口を封鎖してるんだゴロ」
ゴロン「そこの花を摘んでみるゴロ」

リンクル「これ?」ブチ

ゴロン「ほら、早くあの岩に向かって投げるゴロ」

リンクル「こ、こう?」ポイッ

ボテッボテッ

ゴロン「あんまり飛ばないゴロね……伏せといたがいいかもしれないゴロ」

リンクル「?」

ドカーン

リンクル「きゃっ!?」
ナビィ「ぴぃっ!?」

ゴロン「お、開いた開いた」
ゴロン「さっきのはデスマウンテン名物爆弾花ゴロ。きっと役に立つから覚えとくゴロよ」

リンクル「爆発する花かぁ……」

ゴロン「爆弾花以外でも、ゴロンシティで見せた爆弾を持ち歩ける道具もあるゴロ」
ゴロン「ハイリア人も戦争の時にはカタパルトで飛ばしたり矢に仕込んだりして使ってたゴロよ」

リンクル「……そう」

ナビィ「じゃ、行きましょ」

リンクル「……うん」

ゴロン「気をつけるゴロー!」

71: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/05(月) 22:52:11.12 ID:oLRcur970
 ep.5 炎の精霊石


――ドドンゴの洞窟

リンクル「入る時に中からむわっと熱気が来たのが分かったんだけど……」
リンクル「こりゃ暑いわけだわ」

ナビィ「Listen! 気をつけてリンクル、下の方にマグマが溜まってるみたい」
ナビィ「あんなとこに落ちたら死んじゃうヨ」

リンクル「分かってる。にしたってあっついなぁ……」

ボコボコボコ

リンクル「うん?」

ベビードドンゴ「キシャアアアアッ」

リンクル「うわっ!? なんだこれ!?」
リンクル「こっち来ないでよ!」バシュッ

ベビードドンゴ「ギャアアッ」バタッ

リンクル「死んだ……?」

ナビィ「……気をつけてリンクル!」

リンクル「……!」バッ

ドカーン

リンクル「あ、あれ死んでたんだよね……?」

ナビィ「死んでたヨ……」
ナビィ「多分あれがドドンゴ……死ぬと爆発するみたいね」

リンクル「まさか死体が爆発するなんて……心臓に悪い生物……」

72: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/05(月) 22:52:54.50 ID:oLRcur970
リンクル「この部屋は……」

ガコーン

リンクル「!」
リンクル「扉が……何か来る!」

リザルフォス「ヒャッハーオンナノコダー!」

リンクル「何あの魔物……剣持ってる!?」バシュッ

リザルフォス「オオット」バッ

リンクル「ちっ、一筋縄じゃいかないみたいね!」バシュッ バシュッ

リザルフォス「ヘイヘイアタラネエゼ」ヒョイヒョイッ

リンクル「ああ、もう!」
リンクル「これでも喰らえ!」パァン

リザルフォス「ギアアアッメガッメガァーッ!」ジタバタ

ナビィ「デクの実ね!」

リンクル「さぁ、何発欲しい! このボルトは簡単には抜けないよ!」バシュッ バシュッ

リザルフォス「ギャッ! ギャアアッイテェッイテェーッ!」
リザルフォス「ナ、ナンダコノヤハ!?」

リンクル「返しのついたボルトってのも案外悪くないわね」バシュッ バシュッ

リザルフォス「グアッ、ギャッ! ウググ、イテェー!」
リザルフォス「チ、チクショーッ! センシュコウタイダ!」バッ バッ

リザルフォスB「ヨクモナカマヲヤッテクレタナ!」

ナビィ「もう一体居るヨ!」

73: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/05(月) 22:53:30.48 ID:oLRcur970
リンクル「同じことよ!」

リザルフォスB「オナジテヲクラウホドマヌケデハナイワ!」

リンクル「デクの実!」パァン

リザルフォスB「ヨソウシテタゼ!」

リンクル「予想はしててもクロスボウはかわせないと」バシュッ

リザルフォスB「グアッ! イ、イテェ! ナンテエゲツネェヤヲツカイヤガル!」
リザルフォスB「シ、シマッタ! アシガ! ウデモヤラレタカ!」ジタバタ

リンクル「さて」シャキンッ

リザルフォスB「マ、マテ、ハナセバワカル! セメテハナシアイヲ……」
リザルフォスB「ギャアアアアアアアッ!!」

リンクル「流石にボルトが勿体ないからね」ザシュッ ザシュッ

リンクル「ナビィ、首切り離したら魔物でも死んじゃうよね、多分」

ナビィ「え、あ、うん、た、多分……」

リザルフォスB「タ、タスケ……!」

リンクル「やっぱり魔物って大した生命力だよね……」ザシュッ

リザルフォスB「」ボトッ

リンクル「よし、これでいいかな?」

ナビィ「そ、そうね……」
ナビィ「……あっ! ゆ、油断しないでリンクル! もう一体居るよ!」

リンクル「うん、分かってる」

リザルフォス「ヒエッ……」

74: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/05(月) 22:54:11.37 ID:oLRcur970
リザルフォス「」

リンクル「この部屋はなんだろう?」

ナビィ「……」

リンクル「ナビィ?」

ナビィ「……あ、ゴメンネ! ちょっと考え事!」

リンクル「そう? 何かあったら言ってよ?」
リンクル「それで、この部屋はなんだろ?」

ナビィ「うーん……何かしら」
ナビィ「爆弾花がいっぱい生えてるけど……」

リンクル「起爆してみる?」

ナビィ「うん、何か分かるかもね」

リンクル「じゃあ、一個引っこ抜いてっと……」

ドカーン ドカーンドカーン ドカーンドカーンドカーン……


ナビィ「すごーい! 階段が下りてきたよ!」

リンクル「これで上に行けそうね!」

75: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/05(月) 22:54:38.06 ID:oLRcur970
リンクル「何これ?」

ナビィ「ボム袋、ね」
ナビィ「爆弾を入れておけるみたい」

リンクル「へぇ……」
リンクル「……」

ナビィ「何してるの?」

リンクル「いや、爆弾をクロスボウで飛ばせないかなって……」
リンクル「これなら遠くまで飛びそうだし」

ナビィ「あー、洞窟前でのこと気にしてるの?」

リンクル「……ちょっとね」

76: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/05(月) 22:55:16.94 ID:oLRcur970
リンクル「ここが一番奥かな……?」

ズシンッ ズシンッ

リンクル「……」
リンクル「……こいつが」

猛炎古代竜 キングドドンゴ

キングドドンゴ「グオオオオオオッ!」

リンクル「で、でかぁい……!」

ナビィ「クロスボウや剣じゃ歯が立たないヨ!」

リンクル「と、兎に角一旦距離を置こう……!」

キングドドンゴ「グルルゥ……!」グルンッ ゴロゴロゴロ

リンクル「うわぁー!? 転がってくるなんて!?」バッ

ズシーン

リンクル「……あれ?」

ナビィ「壁に激突したみたい……」

リンクル「……そっか、あんまり頭は良くないんだ」
リンクル「よーし……!」

77: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/05(月) 22:55:49.55 ID:oLRcur970
キングドドンゴ「ギシャアアアアッ」ゴオオッ

リンクル「うわぁ! 火まで噴くの!?」

キングドドンゴ「グオオオオッ!」

ナビィ「また転がってくるよ!」

リンクル「おっと!」ポイッ

ゴロゴロゴロ ドカーン

リンクル「効いて……ないね」

ナビィ「駄目! 外皮が硬過ぎて爆弾も通らないみたい!」

リンクル「やっぱり外側は駄目か……」
リンクル「それなら……!」

キングドドンゴ「グゥゥゥ……!」

リンクル「大口開けた!」
リンクル「これでも食べてな! 爆弾ボルト!」バシュッ

キングドドンゴ「!?」バクンッ

ナビィ「上手い!」

ドカーン

キングドドンゴ「グオオオオオオオオオオオ!!」

ズズーン……

ナビィ「やった!」

78: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/05(月) 22:56:34.63 ID:oLRcur970
――ドドンゴの洞窟前

リンクル「残ったドドンゴも粗方掃討したし、これでゴロン達も満足でしょ」

ナビィ「そうだネ……」

リンクル「……どうしたのナビィ? やっぱりなんだか元気ない?」

ナビィ「平気だヨ……大丈夫。暑かったから、ちょっとだるいだけ」
ナビィ(相棒が魔物とはいえ大虐殺してる様子なんか見てて明るい気分にはなれないヨ……)ゲンナリ

リンクル「……?」

ナビィ「ていうか、爆弾ボルト? っていうの? あんなのいつの間に作ったの?」

リンクル「ボム袋手に入れてからすぐ、歩きながら」
リンクル「結構簡単な仕組みだよ?」

ナビィ「そ、そう……」
ナビィ(本人は気分悪くなるくらい嫌ってるみたいだけど、やっぱりこの子、戦の類の才能があるんじゃ……)

79: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/05(月) 22:57:28.43 ID:oLRcur970
ヒュルルルー
ドシーン

リンクル「うわっ!?」

ダルニア「俺だゴロ! ダルニアだゴロ! よくやったゴロ!」ナデナデ

リンクル「痛い痛い!」

ダルニア「これでまた美味い岩が腹いっぱい食えるゴロ!」
ダルニア「おめえのお陰だ!」

リンクル「ど、どういたしまして……」

ダルニア「しかしおめえは良い奴だな」
ダルニア「あのガノンなんとかいうゲルド野郎とは大違いだ!」

リンクル「……ガノンドロフがここにも?」

ダルニア「おうよ。言わなかったっけか?」
ダルニア「おめえの前にも精霊石を寄越せと言ってきて、ドドンゴ共を凶暴化させた野郎だ」

リンクル「あいつ……! こんなところでも……!」

ダルニア「……どうやらあの野郎は他所でも何かしでかしてるようだな」
ダルニア「それに引き換えおめえは危険を顧みず俺達の為にここまで……」

ダルニア「おめえが気に入ったゴロ!」
ダルニア「今日からおめえは俺達のキョーダイだ!」

リンクル「あ、ありがとう……?」

ダルニア「さ、約束は約束だ! これを受け取ってくれ!」
ダルニア「ゴロンのルビーだ!」

リンクル「これが炎の精霊石……!」
リンクル「ありがとう、ダルニアさん!」

ダルニア「おいおい、キョーダイなんだから“さん”だなんて水臭ぇぜ!」
ダルニア「気軽に“アニキ”とでも呼んでくれゴロ!」

リンクル「あ、アニキ……?」

ダルニア「おう!」
ダルニア「おめえはこれからも目的の為に旅を続けるんだろ?」

リンクル「うん」

ダルニア「それじゃ、デスマウンテンの頂上の妖精様に会ってみな!」
ダルニア「きっとおめえの力になってくれるゴロ!」

リンクル「頂上……」
リンクル「うん、分かった! 何から何までありがとね!」

ダルニア「おうよ! よーしおめえら! キョーダイをお見送りしろい!」

ゴロン「よくやったゴロ!」ブンブン

ゴロン「オラ達はキョーダイだゴロ!」ブンブン

リンクル「うん! また来るからねー!」フリフリ

80: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/05(月) 22:58:04.24 ID:oLRcur970
――デスマウンテン 頂上

リンクル「こ、ここが……頂上……!」

ナビィ「す、すごい道のりだったネ……」

リンクル「あー……ちょっと休憩ー!」
リンクル「水が美味しいー!」ゴクゴク

ナビィ「あんまり飲み過ぎないようにね」
ナビィ「で、そこが目的地かしら?」

リンクル「みたいだね」
リンクル「たのもー!」

81: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/05(月) 23:01:17.49 ID:oLRcur970
――大妖精の泉

「オーッホッホッホッホ!」

リンクル(うわぁ……)
リンクル「あなたが妖精様?」

ナビィ「大妖精様だヨ! 失礼のないようにしなくちゃ!」

力の大妖精「ようこそリンクル……私は力の大妖精」
力の大妖精「あなたに一つ、剣の技を授けてあげる」

リンクル「剣の技……ですか?」

力の大妖精「あなたは魔法の才能に優れているわ。引き出し方を知らないだけ」

リンクル「あたしが? 魔法の才能に?」

力の大妖精「ええ。あなたからはとっても高い魔力を感じる」
力の大妖精「技を教える前に、少し魔力の引き出し方を教えてあげるわね」

82: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/05(月) 23:01:57.48 ID:oLRcur970
力の大妖精「ウッフフ、やはりあなたの魔法の才能は素晴らしいものがあるわ」
力の大妖精「さ、それじゃさっき教えた通りに技を見せてご覧なさい」

リンクル「は、はい……!」
リンクル「はぁー……せやぁっ!」ブゥン

力の大妖精「見事な大回転切りね」
力の大妖精「よくぞこの秘技を身につけたわ。魔法だけでなく、剣の才能もある」

リンクル「……剣の、才能」

力の大妖精「勇気と才能ある少女よ」
力の大妖精「各地に居る私の仲間を訪ねなさい。新たな力を授けてくれるわ」

リンクル「……ありがとう、ございました」

力の大妖精「……あ、そうそう。それともう一つ」
力の大妖精「右手でもクロスボウを使えるのなら、クロスボウは今後右手で構えるようにした方がいいわ」

力の大妖精「左手だけじゃ剣とクロスボウの切り替えに時間がかかっちゃうでしょ?」
力の大妖精「じゃ、頑張ってね! オーッホッホッホッホ!」

83: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/05(月) 23:17:55.83 ID:Bzc3eTBr0
――デスマウンテン 頂上

ナビィ「大妖精様にあんなに褒めてもらっちゃうなんて、凄いじゃない!」

リンクル「……うん」

ナビィ「……なんだか、嬉しくなさそうだネ」

リンクル「……」
リンクル「……これまであたしってさ、自分は武器なんてクロスボウくらいしか使えないと思ってたんだ」

リンクル「これ以外にないって思ってた。剣と盾も、持ってるだけで使えやしないって思ってた」
リンクル「でも……森から出てきて、急にお前は剣の才能があるなんて言われて……」

リンクル「ここに来て、今度は魔法の才能があるなんて言われて……」
リンクル「……あたし、こんな才能欲しいわけじゃなかったのに……」

リンクル「ねぇ、ナビィ。才能って何だろう?」
リンクル「森ではみんな剣なんてまともに使えなかったし、ましてや魔法なんて……なんであたしだけ?」

リンクル「あたしは一体何者なの? どこから来たの?」
リンクル「考えたくないのに、考えちゃうよ……」

ナビィ「……ゴメンネ、ナビィも分かんないや……」
ナビィ「でも、リンクルはリンクルだヨ。他の誰でもない、ただ一人のあたしの相棒だヨ」

リンクル「ナビィ……」

「ホホーゥ、悩んでおるようじゃな」

リンクル「……ケポラゲボラ」

ケポラゲボラ「大妖精のところはどうじゃった? 何か発見があったかな?」
ケポラゲボラ「まだまだハイラルの運命を預かる者には見えぬがのぉ……」

ケポラゲボラ「世界は広い。広い空から広い大地を見渡せば、お前は実にちっぽけなもんじゃ」
ケポラゲボラ「だが、その広い世界を変える力は誰にでもある。それが小さいか大きいかの違いはあるがの」

ケポラゲボラ「お前は偶々その力が大きかっただけじゃ」
ケポラゲボラ「いつかそのことが分かる時が来るじゃろうが、それまで大いに悩むのも良かろう」

リンクル「……」

ケポラゲボラ「下界まで行くのなら力を貸そう」
ケポラゲボラ「近くへ来て足に掴まりなさい。そうすればそのまま飛んで行ってあげよう」

84: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/05(月) 23:18:30.66 ID:Bzc3eTBr0
――カカリコ村

ケポラゲボラ「ホホーッ」バサバサバサ……

リンクル「ありがとねー!」
リンクル「……さて、と」

ナビィ「リンクル……頂上の話だけど……」

リンクル「……ああ、うん」
リンクル「もう、いいの。暫く忘れようかなって」

ナビィ「それでいいの?」

リンクル「うん。あたし一人で悩んでたって、ハイラルの危機は勝手にやってきちゃうんでしょ?」
リンクル「それなら、先にそっちを何とかしなきゃ。あたしのことは後でいくらでも悩めるよ」

リンクル「それに、ケポラゲボラも言ってたでしょ?」
リンクル「いつか分かる時が来る、って」

ナビィ「……そっか。そう、ネ……」
ナビィ(でも……それって、いつのことになるのかしら……?)

87: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/06(火) 20:15:33.09 ID:co1YisJx0
思いついた時につらつら書いてるから今後リンクルがどんな風に病んでくのかとか、その心の隙をガノンドロフに付け入られるのかとか、そもそもリンクルが病んでく方向になるのかとかは色々未定
それはそうと、ハイラル史は時のオカリナで三つに分岐するわけだけど、みんなは時の勇者が魔王に勝利してハイラルは平和になるけど数百年後に魔王復活してハイラルは海の底に沈められちゃう幸せか不幸かよく分からないルートと、時の勇者が敗北して賢者達がなんとか魔王を闇の世界へ追放してハイラルは平和になるけど勇者は死んじゃってる文字通り死亡ルートと、魔王に勝利した時の勇者は本来居るべき時代に帰されて一緒に旅した妖精とも別れて勇者なのに勇者として伝説になることすら叶わず余生を過ごす行き地獄ルート、どれが一番好き?


更新します

88: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/06(火) 20:16:20.98 ID:co1YisJx0
 ep.6 精霊石を求めて


――ハイラル平原

ガラガラガラガラ

リンクル「取り敢えず次の目的地を聞きたくて城下町前まで来たはいいけど……」

ナビィ「日没に間に合わなかったネ……」
ナビィ「どうする? 夜の平原で野宿は危険だと思うけど……」

リンクル「近くに泊まれるとことかないか探してみよっか」

ナビィ「一応平原にも人の家はあるんだもんね」

……♪♪~……♪♪……

リンクル「……?」

ナビィ「どうしたの?」

リンクル「何か聞こえない?」

ナビィ「……言われてみれば」

リンクル「こっちかな?」

ナビィ「森の時といい、耳がいいのね、リンクルって……」

90: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/06(火) 20:17:30.68 ID:co1YisJx0
――ロンロン牧場

リンクル「ここかしら……」

ナビィ「誰のお家だろう? 動物がいっぱいみたい」

リンクル「奥の広場で歌ってるみたいだよ」

ナビィ「よく場所まで分かるネ……」

「♪♪♪~……あら?」
「こないだの妖精ちゃんじゃない! 久しぶり!」

リンクル「久しぶりって程かな……まぁいいや、久しぶり、マロン」

マロン「あの時はとーさん見つけてくれてありがとね」
マロン「とーさんったらあの後すぐ大慌てで帰ってきたのよ、フフフ!」

リンクル「そっか、良かった」クスクス

「フーッ……ブルル」

マロン「あ、紹介するね! この子はあたしの友達のエポナよ!」

リンクル「この馬?」

マロン「うん! 可愛いでしょ!」

エポナ「ブルルッ」パカッパカッ

リンクル「あ……」

マロン「あら……エポナ、妖精ちゃんのこと、怖がってるみたい」

リンクル「むぅ」

マロン「……そうだわ! さっき歌ってたんだけど、エポナはマロンのおかーさんが作った歌が大好きなの」
マロン「妖精ちゃん可愛いオカリナ持ってたよね? 折角だから、あたしの後に続いて吹いてみてよ」

リンクル「あ、うん」

♪♪♪~ ♪♪♪~ ♪♪♪ ♪♪~


エポナ「ヒヒィーン!」パカラッパカラッ

リンクル「わわっ」
リンクル「あん、こら、くすぐったいよ」

マロン「フフ、エポナったら、妖精ちゃんのことすっかり気に入ったみたい!」
マロン「あ、そうだ! 妖精ちゃんはご飯もう食べた?」

91: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/06(火) 20:18:17.70 ID:co1YisJx0
マロン「どんどん食べてね!」

リンクル「ありがとうね、泊めてもらうことになっちゃって」

タロン「気にすることないだーよ」
タロン「いつぞやは城で迷惑かけたからな」

リンクル「いやぁ、気にするほどのことでは……」

マロン「フフフ、とーさんの癖にはいっつも困っちゃうのよ!」

タロン「わ、悪いとは思ってるだーよ」
タロン「……こんなにマロンが楽しそうなのは久しぶりだーよ」

ナビィ「そうなの?」

インゴー「この牧場は観光地でもあるとはいえ、お嬢さんと年の近い子供なんて滅多に来ねぇからな」
インゴー「殊に年の近い女の子だ。きっと良い友達になれる」

92: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/06(火) 20:19:19.14 ID:co1YisJx0
リンクル「……あちこち擦り剥いてる」ゴシゴシ

マロン「妖精ちゃん、入るよー?」ガチャッ

リンクル「えっ?」

マロン「洗いっこしよーよ!」

リンクル「え、えー……ちょっと、それは、遠慮したいかなー、って……」

マロン「えー、なんで?」
マロン「あたしとお風呂一緒するの嫌?」ジワッ

リンクル「あ、いや、別に嫌じゃないけど! その……!」

マロン「良かった! じゃあまずマロンが洗ったげるね!」

リンクル「ちょっ……!」

93: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/06(火) 20:19:59.55 ID:co1YisJx0
リンクル「あーうー……」チャプン

マロン「フフフ、妖精ちゃんたら発育イイのね!」ツヤツヤ

リンクル「何の話よ……」
リンクル「カカリコ村のお姉さんといい、サリアといい……もう……」

マロン「えへへ、妖精ちゃんのことは何でも気になっちゃうのヨ」
マロン「それっ」バシャッ

リンクル「きゃっ!」
リンクル「やったなー!」バシャッ

マロン「きゃんっ、お返しよ!」バシャッ

バシャバシャ

ナビィ「こうして見ると仲の良い姉妹みたいねぇ……」

リンクル「あっ……ちょっと、やだ、またそんなとこ触んないでよっ!」

ナビィ(……撤回しようかな)

94: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/06(火) 20:20:37.07 ID:co1YisJx0
――翌朝

マロン「もう行っちゃうの?」

リンクル「うん。一旦お城の方へ行って、次の目的地を決めなきゃね」

マロン「そっか……また来てくれる?」

リンクル「また来るよ」

マロン「絶対だよ?」

リンクル「うん」

タロン「マロン、あんまりこの子を困らせるなーよ」
タロン「お嬢ちゃん、これを持っていくだーよ」

リンクル「何これ? 瓶?」

タロン「ロンロン牛乳だ。栄養満点、滋養強壮、飲んだら元気いっぱいだーよ」

リンクル「ありがとう、おじさん」
リンクル「じゃ、行こ、ナビィ」

ナビィ「うん!」

マロン「絶対また来てねー!」フリフリ

リンクル「はーい!」フリフリ

95: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/06(火) 20:21:15.86 ID:co1YisJx0
――ハイラル城

ゼルダ「炎の精霊石を手に入れたのですね!」

リンクル「うん。これで残るは一つだね」

ゼルダ「はい。残る一つは水の精霊石……ゾーラ族が守っている筈です」
ゼルダ「ゾーラ川沿いを上り、ゾーラの里へ向かってください」

リンクル「分かった、行ってみるよ」
リンクル「ありがとね」

ゼルダ「いいえ……」

リンクル「……そうだ。次来る時は普通に入れるようにしといてほしいな……」
リンクル「流石に毎回こんな風に忍び込むのはちょっと……」

ゼルダ「あ、ご、ごめんなさい!」

96: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/06(火) 20:22:23.22 ID:co1YisJx0
――大妖精の泉

リンクル「こんなところに大妖精様の泉があるなんてねー」
リンクル「ハイラル城の兵隊さん達は気付いてないのかな」

魔法の大妖精「フフフ、どうかしらね」
魔法の大妖精「私はあなたに魔法のアイテムを授けてあげるわ」

魔法の大妖精「これを使えば、簡単に魔法を放つことが出来るの」
魔法の大妖精「さあ、受け取って」

リンクル「ありがとうございます」
リンクル「炎……の結晶?」

魔法の大妖精「それはディンの炎。その結晶を手に持って念じると、魔力を消費して火を放つことが出来るわ」
魔法の大妖精「出したい炎の大きさや方向をイメージして、念じてみて」

リンクル「はい」
リンクル(出来るだけ小さく……指先くらいの大きさでいいや。真上に……)

リンクル「おっ」ヒュボッ
リンクル「成程、こりゃ便利だわ」

魔法の大妖精「フフ、それだけじゃないのよ?」
魔法の大妖精「さっきみたいに念じながら、大きく振ってみて?」

リンクル「こう……?」ブンッ

ドヒュンッ

リンクル「おおっ!?」

魔法の大妖精「そうやって振ることで、周囲に炎を放つ攻撃魔法にもなるわ」
魔法の大妖精「これから先、きっと役に立つから使ってみてね」

97: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/06(火) 20:23:51.67 ID:co1YisJx0
――ゾーラ川

リンクル「夜になっちゃった……」
リンクル「しかしこの川もまた結構長くて険しそうだなぁ。牛乳美味しい」ゴクゴク

ナビィ「道中何が出るかも分かんないしネ。ちょっとだけ頂戴」
ナビィ「……リンクル! そこの水辺、何か居るよ!」

リンクル「早速か!」

オクタロック「ドーモ、タビビト=サン」ベッ

リンクル「うわ! 岩吐いてきた!」

デクの盾「イヤーッ!」バコッ

オクタロック「グワーッ!」ザブンッ

リンクル「……あ、対応はデクナッツと同じでいいのね」

98: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/06(火) 20:24:32.98 ID:co1YisJx0
――ゾーラの里

リンクル「ああー……やっと着いたぁー……」

ナビィ「ほんとに長い川だったネ……」

リンクル「取り敢えず今夜の宿探して、精霊石のことは明日にしよー……」
リンクル「それにしても、ここ変わってるね」

リンクル「陸地より水面の方が大きいなんて、すごくない?」
リンクル「壁とかキラキラしてて綺麗だけど、これほんとに普通の岩なのかな」

ナビィ「どうだろう……水が綺麗だから、それに反射してるようにも見えるけど」

リンクル「森とはまた違う感じで空気が澄んでるから、なんだか過ごしやすそうだなぁ」

ゾーラ「ハイリア人のお客さんとは珍しいね」
ゾーラ「潜水ゲームやってかないかい?」

リンクル「コキリ族だよ」
リンクル「潜水ゲーム?」

99: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/06(火) 20:25:10.65 ID:co1YisJx0
ゾーラ「中々イイ潜りっぷりだ!」
ゾーラ「君にはこれをあげよう」

リンクル「これは……?」

ゾーラ「俺達ゾーラ族の鱗さ。特殊な魔力が宿っていて、これがあればゾーラ以外でも長く水中で活動が出来る」
ゾーラ「君なら……髪飾りかな? ちょっとあっち向いてごらん」

リンクル「うん」

ゾーラ「しかしコキリ族ってのは初めて見たけど、姿形はハイリア人の子供と変わらないんだな」

リンクル「まぁね。でも、ハイリア人と違って大人は居ないの」

ゾーラ「大人が居ない? へぇー……」
ゾーラ「ほら、出来た。試しに潜っておいで」

リンクル「ん、ありがとう」

100: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/06(火) 20:25:44.18 ID:co1YisJx0
――翌朝

ナビィ「おはよう、お寝坊さん」

リンクル「ごめーん……泳ぐのって地上歩くより疲れちゃって……」

ナビィ「ううん、ゆっくり休むことが出来たのなら良かったワ」
ナビィ「で、昨日の夕方何見つけたって?」

リンクル「ああ、あれね」
リンクル「確かこの辺だった筈……」ザブン

リンクル「……」ゴボゴボ
リンクル「(あった!)」ゴボゴボ

ナビィ「(……水路? どこに繋がってるのかしら……?)」

101: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/06(火) 20:27:06.03 ID:co1YisJx0
――ハイリア湖

リンクル「ぶはっ!」ザバッ
リンクル「……ここは……?」

ナビィ「わぁー、おっきい……」
ナビィ「湖、ってやつよ、多分!」

リンクル「へぇ……おっきな池だとは思ったけど」
リンクル「これが湖かぁ……」ザブザブ

リンクル「……ん?」
リンクル「なんだろ、あれ」ザブン

ナビィ「?」

リンクル「ぷあっ」ザバッ
リンクル「ナビィ、こんなの拾ったよ」

ナビィ「空き瓶……?」
ナビィ「いや、何か入ってるわね。何かしら?」

リンクル「手紙……かな? 陸に上がったら見てみよっか」ザブザブ


『たすけてたもれ!
 わらわはジャブジャブさまのお腹の中でまっておる。ルト
 追伸 父上にはないしょゾラ!』

102: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/06(火) 20:28:16.17 ID:co1YisJx0
――ハイリア湖畔 みずうみ研究所

ゾーラ「そうですか、こちらには来ておられないのですか……」

キィ

「おや、お客さんかな?」

リンクル「こんにちはー?」

みずうみ博士「随分と可愛らしいお客さんじゃな」
みずうみ博士「ワシはみずうみ博士。このハイリア湖の水と変なものを混ぜて研究をしておる」

リンクル「コキリの森から来ました、リンクルです」
リンクル「こっちは相棒のナビィ」

ナビィ「ハロー、みずうみ博士にゾーラのお兄さん!」

ゾーラ「あ、ああ、こんにちは」

みずうみ博士「やや、妖精とは珍しい」
みずうみ博士「それで、君のような子が来るのも珍しい。何かご用かな?」

リンクル「えーと、さっきそこの水の中でこんなもの拾ったんですけど……」

みずうみ博士「どれ……? おや」
みずうみ博士「ゾーラの兵士さんや、これを見てご覧」

ゾーラ「……! こ、これは!」
ゾーラ「君、ルト姫のことを何か知っているのかい!?」

リンクル「い、いえ、全然」

ゾーラ「取り敢えず来てくれ! それは実に重要なものだ!」ガシッ

リンクル「ちょ、待っ、待ってぇー!?」

ガチャ バタン

みずうみ博士「……ありゃ、ゾーラの兵士さん、茶に手をつけておらんな。むぅ」

103: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/06(火) 20:28:44.05 ID:co1YisJx0
――ゾーラの里 玉座

キングゾーラ「うう……余の可愛いルト姫よ……どこに行ってしまったゾラ……」

ゾーラ「キングゾーラ様!」

キングゾーラ「む……何事ゾラ……?」

ゾーラ「この者が姫のことで何か知っていると!」

キングゾーラ「何……?」
キングゾーラ「それは本当か!?」

リンクル「し、知ってるっていうか……その」
リンクル「この、手紙を湖で見つけたんですけど……」

キングゾーラ「……おお!? これは!? 確かにあの子の字ゾラ!」
キングゾーラ「しかし、ジャブジャブ様のお腹の中だと!?」

キングゾーラ「我らの守り神、ジャブジャブ様が余の可愛いルト姫を食べたりする筈はないゾラ!」
キングゾーラ「だが……言われてみればここ最近のジャブジャブ様の様子は変だゾラ」

リンクル「……まさか、ガノンドロフが?」

キングゾーラ「よく分かったな……その通り、あのゲルド族の男が来てからのことだゾラ」

リンクル「どこでも耳にするわね、あいつのこと……」

ナビィ「ほっといたら大変なことになっちゃうわけネ……」

キングゾーラ「……何やらややこしそうだの」
キングゾーラ「よし、そちを信じてジャブジャブ様の祭壇へ続く道へ通してやろう」

リンクル「いいの?」

キングゾーラ「うむ……捜索隊も出払っておって、人手がないからの……」
キングゾーラ「早く余の可愛いルト姫を見つけてきてくれぃ……!」

ノソノソ……

リンクル(急いでほしいんならもっと早く動いてくんないかな……)

104: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/06(火) 20:29:29.70 ID:co1YisJx0
――ゾーラの泉

リンクル「うわぁー……大きな魚……」

ナビィ「これがジャブジャブ様ね……」
ナビィ「でも、どうやって中に入ればいいんだろう?」

リンクル「ちょっと口開けてもらえばいいんでしょ?」
リンクル「こう、やって……」グイグイ

リンクル「んぬぬぬぬぬっ……」グイグイ
リンクル「うぬーっ!」グイグイ

ナビィ「……」

リンクル「……駄目でした」

ナビィ「うん……ナビィもそれ以上はやっちゃ駄目だと思う……」
ナビィ「女の子がしちゃいけない顔してたし……」

リンクル「でも、そうするとどうやって中に入ればいいのかな……」

ナビィ「うーん……守り神、っていうくらいだし、お供え物でもしてみたら?」

リンクル「それで口開いてくれるのかなぁ……」
リンクル「それに、お供え物って言っても、何をお供えすればいいの?」

ナビィ「さ、さぁ……? 魚、とか……?」

リンクル「魚が魚食べるのかな……」
リンクル「まぁいっか、ちょっと捕まえてくる」

105: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/06(火) 20:30:00.72 ID:co1YisJx0
リンクル「で、捕まえてきました」

ナビィ「案外あっさり捕まえたネ……」

リンクル「あの鱗すっごいのよ。息が続くだけじゃなくて、スイスイ泳げるもん」
リンクル「さて、じゃあこの魚を瓶から出して、っと……」

魚「ピチピチ」

ジャブジャブ様「!」
ジャブジャブ様「ふご……ずごごごごっ!」

リンクル「おっ、口が開い……」

ずごごごごっ!

魚「ピョーン」

リンクル「ひっ!? ちょっ、待っ……きゃあああああああっ!?」
ナビィ「ひゃあああああああっ!?」

ジャブジャブ様「ばくんっ」

116: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/09(金) 20:50:14.77 ID:KepXK8wj0
 ep.7 水の精霊石


――ジャブジャブ様のお腹

リンクル「うっ……」
リンクル「何ここ……くさーい……」

リンクル「ていうか壁とか床とかの感触も気持ち悪……」
リンクル「……あ、そっか。ここがジャブジャブ様の中なんだ」

ナビィ「リンクルー?」

リンクル「あ、ナビィ! こっちこっち!」

ナビィ「良かった、そんなに離れてなくて」
ナビィ「大丈夫?」

リンクル「臭いのと気持ち悪いのを除けば大丈夫かな」

117: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/09(金) 20:51:34.17 ID:KepXK8wj0
リンクル「うわ、何この泡みたいなの」

ナビィ「剣じゃ弾かれちゃうヨ」

オクタロック「ココノツウコウリョウハタカイゾ」ベッ

リンクル「はいはい」

デクの盾「ドウシタソレデオワリカ」ゴンッ

オクタロック「グワーッ」

リンクル「……ゾーラの守り神なのに、なんで中に魔物が……」

ナビィ「きっとガノンドロフの仕業ね」

リンクル「やっぱりあいつ懲らしめないといけないね」
リンクル「で、この部屋は……」

ナビィ「部屋って言っていいのかなぁ……」

118: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/09(金) 20:52:20.93 ID:KepXK8wj0
リンクル「……あっ、ゾーラ族が居るよ!」

ナビィ「ほんとだ」

「む、その方は何者じゃ?」

リンクル「あたしはリンクル。ルト姫を探しに来たの」

「何……?」

リンクル「もしかして、あなたがルト姫?」

ルト「うむ、わらわがゾーラのプリンセス、ルトじゃ!」

リンクル「ああ、無事で良かった。キングゾーラ……あなたのお父さんが心配してるよ?」

ルト「何?」
ルト「すると、その方は父上に頼まれてわらわを迎えに来た、というのか?」

リンクル「ええ。さ、ゾーラの里に戻りましょ?」

ルト「そんなこと頼んだ覚えはない!」
ルト「父上が心配していようがいまいが関係はない!」

リンクル「でも、瓶に入った手紙が……」

ルト「そ、そんなもの知らん!」
ルト「兎に角、今は帰れぬ。その方こそさっさと帰れ! 良いな!」タッ

リンクル「あっ、そっちは……!」

ルト「あ~れ~っ!」ズルッ

リンクル「……落ちてっちゃった」
リンクル「ど、どうしよう……?」

ナビィ「そりゃ……追うしか、ないと思うけど……」

リンクル「この気持ち悪い穴に飛び込むのかぁ……」

ナビィ「流石に躊躇するよね……」

119: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/09(金) 20:53:13.30 ID:KepXK8wj0
リンクル「っと……!」スタッ

ナビィ「大丈夫?」

リンクル「平気。ちょっと柔らかくてクッションみたいになってるし」

ルト「まぁーだうろうろしとったのか」

リンクル「連れ戻せって言われてるからね」
リンクル「あなたを連れて帰るまではあたしも帰れないよ」

ルト「むぅ」

リンクル「さ、帰ろう? 魔物も居るし、危ないよ」

ルト「……わらわは幼き頃よりジャブジャブ様の中に入っておるから平気じゃ」
ルト「じゃが、今のジャブジャブ様はなーんか変じゃ」

ルト「ビリビリするクラゲや変な穴なんか開いてるし……」
ルト「お陰で大事な石まで……」

リンクル「石?」

ルト「あっ、それはこっちの話じゃ!」
ルト「と、兎に角、用事が済むまではわらわは帰らん!」

リンクル「その“用事”って一体何なのさ?」

ルト「その方には関係ないゾラ!」

リンクル「関係ないってこたないよ!」
リンクル「さっきも言ったでしょ、あなたを連れて帰らないといけないのよ!」

ルト「嫌じゃと言ったら嫌じゃ! さっさと帰れ!」

リンクル「あーもう! こんな我儘お姫様だなんて聞いてないよ!」
リンクル「無理矢理にでも連れて帰るからね!」グイッ

ルト「な、何をする!」ジタバタ

リンクル「暴れない!」

ナビィ「同じくらいの年の子供とはいえ、よく人一人抱えて走れるネ……」

120: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/09(金) 20:54:02.59 ID:KepXK8wj0
ルト「離せブレーモノー!」ジタバタ

リンクル「じっとしてってば!」

バリ「ウィーッス」ドシーン

リンクル「……! 危ないっ!」ドンッ

ルト「きゃっ!?」

バリ「オラオラー」バリバリバリッ

リンクル「きゃあああああああっ!?」

ナビィ「リンクル!」

ルト「なっ……!」

リンクル「あうぅ……」

バリ「マダイクゾオラー」ブオンッ

リンクル「くっ!」バッ

ナビィ「Watch out! 剣で攻撃するのは危ないよ! 痺れちゃう!」

リンクル「じゃあクロスボウなら!」バシュッ

バリ「イッテェケドタイシタコトネェナ」

リンクル「き、効かない!?」
リンクル「ルト、逃げるよ!」ガシッ

ルト「ひゃっ」

121: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/09(金) 20:55:10.39 ID:KepXK8wj0
リンクル「まさかクロスボウが効かないなんて……」
リンクル「あれが“ビリビリするクラゲ”ね」

ルト「……」

ナビィ「大丈夫?」

リンクル「ちょっと感覚がおかしいけど、大丈夫。段々軽くなってきた」
リンクル「ルトは大丈夫?」

ルト「……大丈夫じゃ」

リンクル「そか、良かった」
リンクル「いずれにせよこの魔物達はなんとかしないとね」

ナビィ「ほんとにね」

リンクル「あのクラゲ対策は特に優先事項だよ」
リンクル「さっき撃ったのは森から持ってきたボルトだったけど、そもそも刺さらなかった」

ナビィ「刺さらないとなると、何か刺す以外でダメージを与える必要があるよね」

リンクル「うん」
リンクル「まぁ木で出来てるし、ポイントがそこまで尖ってないから、刺さらないっていうのはある程度考えてたけどね」

ナビィ「多分だけど、あのクラゲは打撃に強いんだと思う。刺さりさえしなければ弾いちゃう」

リンクル「そうすると……やっぱり、あれを使うしかないのかなぁ」

ナビィ「あれ?」

リンクル「インパさんからもらったボルト」
リンクル「返しが目立つけど、ポイント自体も鉄だし、森から持ってきたのより鋭くしてもあるんだよね」

ナビィ「そうなんだ」

リンクル「あとは……爆弾かなぁ」

ナビィ「もっと大きな衝撃を与えるわけね」

リンクル「ま、取り敢えずは色々試してみよう」

ルト「……話は終わったか?」

リンクル「うん、まぁね。取り敢えず、もう無理矢理とかは言わないよ」
リンクル「だから、せめて離れないでね」

ルト「ふん、わらわに命令か、ブレーモノめ」

リンクル「さっきのクラゲめがけて放り投げてもいいんだよ?」

ルト「うっ……」

リンクル「……冗談」
リンクル「兎に角、早く行きましょ。解決は早ければ早いほど良い」

122: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/09(金) 20:55:55.88 ID:KepXK8wj0
リンクル「ここほんと普通のボルトじゃ効かない敵が多いなぁ」バシュッ

シャボム「ボヨーン」

ナビィ「この泡も森から持ってきた矢じゃ通らないんだ」

リンクル「まぁ剣も弾かれちゃって危ないわけだしね」
リンクル「これならどうよ!」パァン

シャボム「ギエエエッ」

ナビィ「あ、デクの実なら簡単に倒せるんだ」

リンクル「怯むだけかと思ったんだけどね」
リンクル「おっと」

バリ「ヤッハロー」ドシーン

ルト「ひっ……」

リンクル「まずはインパさんからもらったボルトで……どうだっ!」バシュッ

バリ「イッテェー」

ナビィ「刺さったよ!」

リンクル「刺さったけど……」

バリ「ナニサラスンジャワレ」ブォンッ

リンクル「うわっと!」バッ

ナビィ「刺さっただけで、あんまり効いてない!」

リンクル「じゃあこいつだ! 爆弾ボルト!」バシュッ

ドカーン

ナビィ「消し飛んじゃった!」

リンクル「よしっ!」

ルト「す、すごい……」

123: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/09(金) 20:56:23.22 ID:KepXK8wj0
リンクル「うわっ……何アレ?」

ルト「し、知らん……」

触手「ウネウネ」

リンクル「あれも魔物なのかなぁ……」

ルト「少なくとも以前はなかったものじゃ」

ナビィ「じゃあ、もしかしたら魔物の仲間なのかも」

リンクル「そうね。撃ってみよっか」バシュッ

触手「ギャアアッ」ボトッ

リンクル「あ、千切れた」

124: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/09(金) 20:57:21.47 ID:KepXK8wj0
ルト「……あっ!」
ルト「あれじゃ! あれがわらわが探しておったものじゃ!」

リンクル「あの蒼い石?」

ルト「早くわらわをそこに持ち上げてたもれ!」

リンクル「はいはい、ちょっと待ってね……よっ」

ルト「良かった良かった、見つかって!」

リンクル「何それ?」

ルト「これはゾーラのサファイア……わらわの母上の形見じゃ!」
ルト「あー、良かった……ジャブジャブ様に飲み込まれた時はどうなることかと……」

リンクル「……もしかして、それって水の精霊石じゃ……」

ルト「精霊石? 確かにそうとも呼ばれておるそうじゃな……」

リンクル「あの、あたしにそれを……!」

ダイオクタ「ザッケンナコラー」ドシーン

ルト「きゃーっ!? なんじゃこのタコー!?」

リンクル「オ、オクタロック!? にしては大き過ぎない!?」

ナビィ「来るよ!」

ダイオクタ「シャーオラーッ」ザザザザッ ドカッ

リンクル「きゃあーっ!」

125: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/09(金) 20:58:03.16 ID:KepXK8wj0
リンクル「いつつ……! こいつ、案外動きが速い!」

ナビィ「でも岩は吐かないみたいだよ!」

ダイオクタ「スッゾオラーッ」

リンクル「ええいっ、これでも喰らえ!」バシュッ

ダイオクタ「イテェーッ」グルグル

ナビィ「……!」
ナビィ「あの背中! きっとあれが弱点だヨ!」

リンクル「よしきた! えーいっ!」ザシュッ

ダイオクタ「アバーッ」ドシャッ

リンクル「よしっ」
リンクル「ルトは大丈夫?」

ルト「だ、大丈夫……」

リンクル「良かった」ニコッ

ルト「……うむ」

リンクル「じゃ、精霊石見つけたし、さっさと出ましょ」

126: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/09(金) 20:58:41.72 ID:KepXK8wj0
リンクル「あれ……? こんなとこ通ったっけ?」

ルト「む……道を間違えたか……?」

リンクル「……ルト、下がってて!」
リンクル「何だあれ!」

ナビィ「電撃クラゲが集まってく……!」

電撃旋回虫 バリネード

リンクル「こいつがジャブジャブ様をおかしくしてた奴!?」

ナビィ「気をつけて! 今までの奴らより手強そうだヨ!」
ナビィ「まずはジャブジャブ様から切り離しちゃわなきゃ!」

リンクル「上のアレだね……よし!」
リンクル「森のボルトで十分!」バシュッ バシュッ

バリネード「ギュルルルッ」

ナビィ「切れた!」

リンクル「よーし……って、うわっ!?」
リンクル「クラゲがぐるぐる回ってて近寄れない!」

ナビィ「クラゲをぶつけてくるヨ! 間を縫って爆弾ボルトで撃っちゃえ!」

リンクル「喰らえっ!」バシュッ

ドカーン

バリネード「ギュルアッ」
バリネード「グルルルルッ」グルグル

リンクル「う、うわぁ、動き出した! 気持ち悪!」

127: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/09(金) 20:59:15.11 ID:KepXK8wj0
リンクル「だ、駄目! クラゲの回転が速過ぎてボルトが……!」

ナビィ「リンクル、避けて! 近付き過ぎ!」

リンクル「ハッ、しまっ……!」
リンクル「きゃあああーっ!!」バリバリバリ

ルト「ああっ!」
ルト「だ、大丈夫か……?」

リンクル「いっつぅ……」
リンクル「だ、大丈夫……ちょっと痺れたけどね……」ググッ

ナビィ「こっち来るヨ!」

リンクル「ううっ……! 当たって……っ!」バシュッ バシュッ

バリネード「グルルルッ!」

ナビィ「あ、間をすり抜けたみたい!」

リンクル「これで……とどめだーっ!」ザシュッ

バリネード「ギャアアアアアアアアッ」ブクブクブク

ドバァーン

リンクル「うわっ!」
ルト「ひぃっ!?」

128: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/09(金) 21:00:13.92 ID:KepXK8wj0
ボタボタボタ

リンクル「……」

ルト「……」

ナビィ「……」

リンクル「……さ、さて」
リンクル「こんなとこ、もう出よっか、ルト」

ルト「そ、そうじゃな……」

ナビィ「死に様まで気持ち悪い奴だったネ……」

129: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/09(金) 21:00:52.55 ID:KepXK8wj0
――ゾーラの泉

リンクル「それで、なんだけど……あたしが本来ゾーラの里に来た目的はね」
リンクル「その精霊石を探しに来たんだ」

ルト「何? これを?」

リンクル「うん」

ルト「そうか……」
ルト「しかし、これはわらわが生涯を共にすると決めた相手に渡す、いわばエンゲージリング……」

リンクル「えんげーじりんぐ?」

ルト「本来は夫となる者に渡すべきものじゃが……」
ルト「……戦っている時のそなたは、ちょっぴりかっこよかったしな」ボソッ

ルト「持って行くが良い」
ルト「父上には内緒……ゾラ!」

リンクル「あ、ありがとう……」
リンクル(えんげーじりんぐ、って何だろう……?)

ナビィ「キマシ……いや、なんでもない」

リンクル「?」

ナビィ(さっきの話を聞く限り、ルトが女の子に渡していいものじゃないと思うんだけど、いいのかなぁ……)

130: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/09(金) 21:05:49.03 ID:KepXK8wj0
――大妖精の泉

魔法の大妖精「よくここを見つけたわね、リンクル」

リンクル「ナビィが気付かなかったら見つけてなかったですよ」

魔法の大妖精「妖精の気配を察知したのね」
魔法の大妖精「さて、ここではあなたに魔法のアイテムを授けるわ」

魔法の大妖精「フロルの風、というワープの魔法よ」
魔法の大妖精「好きな場所でポインタをセットしておいて、その魔法を使うとセットしたポインタに戻れるわ」

リンクル「これは便利そう……!」
リンクル「ありがとうございます!」

131: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/09(金) 21:06:41.90 ID:KepXK8wj0
――ハイラル平原

リンクル「もうすぐ日没だけど、間に合うかな……」
リンクル「雨降ってきたし、平原で野宿は嫌だなぁ」

ナビィ「夜になると橋が下りてきて城下町入れなくなっちゃうもんね」
ナビィ「やっぱり平原をもっと早く移動する手段は欲しいね」

リンクル「馬とか乗れたらなぁ……」
リンクル「……あれ?」

ナビィ「どうしたの?」

リンクル「お城の方……なんだか様子がおかしくない?」

ナビィ「……ほんとね」
ナビィ「あの明るさは……」

リンクル「……橋がもう閉まってる?」

ナビィ「あら、まだそんな時間じゃないと思うけど……」

132: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/09(金) 21:08:06.76 ID:KepXK8wj0
ナビィ「それにしても、嫌な感じだネ……」

リンクル「空?」

ナビィ「うん。すごく嫌な感じ……」

リンクル「……なんだろう、なんか、この景色、見覚えが……」
リンクル「どこで見たんだっけ……」

ガラガラガラ

リンクル「え……」

ナビィ「なんで今更橋が下りて……」

パカラッ パカラッ

リンクル「!」

ナビィ「あの白馬は!?」

リンクル「危なっ!」バッ

ゼルダ「リンクル!」

リンクル「ゼルダ姫!」

ゼルダ「インパ、馬を……!」

インパ「駄目です、止めるわけにはいきません!」

ゼルダ「っ……これを!」ビュンッ

ポチャンッ

リンクル「ゼルダ姫!」
リンクル「一体何が……あっ!?」クルッ

ガノンドロフ「ちっ、逃がしたか!」
ガノンドロフ「そこの小娘! 今しがた白馬がここを通った筈だ。どっちへ行ったか教えてもらおう!」

133: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/09(金) 21:08:40.89 ID:KepXK8wj0
リンクル「っ……!」ジリッ

ガノンドロフ「……庇いだてする気か。良い度胸だ」
ガノンドロフ「再度問おう。白馬の行った方向を言え。今ならまだ許してやる」

リンクル「……いいえ、知らないわ」
リンクル「何より、知ってても教えないけどね!」シャキンッ

ガノンドロフ「ふんっ!」バシュンッ

リンクル「きゅああーっ!?」ドシャッ

ガノンドロフ「俺に刃向うとは面白い……気に入ったぞ」
ガノンドロフ「小娘、俺の名を覚えておくがいい!」

ガノンドロフ「俺の名はガノンドロフ……」
ガノンドロフ「世界の支配者となる者だ!」

リンクル「誰が……あんたを、支配者となんか……ぅ……!」ガク

ガノンドロフ「ふん……」
ガノンドロフ「結局連中の行った方向は聞き出せずじまいか」

パカラッ パカラッ……

137: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/09(金) 23:25:04.78 ID:KepXK8wj0
 ep.8 時の勇者


「リンクル……リンクル! しっかりして!」

リンクル「う……うぅ……!」

ナビィ「目が覚めた?」

リンクル「なんとか……いつつ……!」
リンクル「……! ガノンドロフは!?」

ナビィ「行っちゃったヨ……」

リンクル「っ……!」ザッ

ナビィ「待って! 追うなんて無茶よ!」
ナビィ「それに、追い付けたとしても、今のままじゃ勝てないヨ!」

リンクル「……」ピタ
リンクル「そう、だね……城下町は?」

ナビィ「あれから大勢の人達が平原へと逃げ出したわ……」
ナビィ「もう夜が明けるけど、ずっと橋が下りたままなの……」

リンクル「……そうだ!」
リンクル「ゼルダ姫が何か投げた筈!」

ナビィ「あ、うん、多分そこのお堀にまだ沈んでるんじゃないかな」

リンクル「取ってくる!」バッ

138: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/09(金) 23:25:46.78 ID:KepXK8wj0
リンクル「これは……オカリナ?」
リンクル「……!」

『リンクル……あなたがこのオカリナを手にした時……』
『私は、あなたの前からもう居なくなっているでしょう……』

『あなたを待っていたかったけれど、もう間に合わない……』
『もうすぐ、ここにもあの男とあの男が率いる軍勢がやってきます』

『その前に、せめてこのメロディをオカリナに込めて送りましょう』
『この“時の歌”を、三つの精霊石を納めた“時の扉”の前で奏でてください』

『そうすれば、あなたは聖地に入ることが出来る筈です』
『トライフォースはあなたが守って!』

リンクル「……」
リンクル「……分かった」

ナビィ「だ、大丈夫? リンクル?」

リンクル「え?」

ナビィ「そのオカリナ持って、陸に上がった途端にぼーっとしちゃってたけど……」

リンクル「……あ、そっか。そういう魔法なんだこれ」
リンクル「ゼルダが次にすべきことを教えてくれたよ」

ナビィ「ほんと?」

リンクル「うん。行こう」
リンクル「時の神殿へ!」

139: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/09(金) 23:26:17.27 ID:KepXK8wj0
――ハイラル城下町

ナビィ「閑散としてるネ」

リンクル「まだ朝早いのもあるけど……」
リンクル「見て、お城の方」

ナビィ「煙が上がってる……」

リンクル「多分城下町の人達は殆ど逃げ出しちゃったんだと思うよ」
リンクル「残ってるのは、逃げられない人か、逃げたくない人だけ」

ナビィ「うわ、あそこ城下町の警備隊の詰所じゃない……?」
ナビィ「兵隊さんがいっぱい倒れてる……」

リンクル「生きてる人居る?」

ナビィ「分かんない……生命力は感じないヨ……」

カァーン カキーン

リンクル「……あっちの路地、何か聞こえるよ!」ダッ

140: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/09(金) 23:29:57.95 ID:KepXK8wj0
ゲルド「このっ……!」
ゲルド「いい加減に倒れろ、ハイリア野郎!」ザンッ

兵士「ぐあっ!」ドサッ

リンクル「!!」
リンクル(あ、あの時の兵隊さん……!)

ゲルド「はぁー……はぁー……」チラッ

兵士B「」

兵士C「」

ゲルドB「」

ゲルド「よくもやりやがって……」
ゲルド「……向こうでこの子と、お前が殺したあたしの同胞達に謝れ」

兵士「……じゃあ……お前も、私に……謝りに来るのか……」

ゲルド「っ……お前っ!」

リンクル「てやぁぁぁっ!」

ゲルド「!?」
ゲルド「しまっ……!」

ザシュッ

141: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/09(金) 23:30:49.13 ID:KepXK8wj0
ゲルド「コヒュー……コヒュー……」
ゲルド「……ヒュー……」

リンクル「はぁ……はぁ……」

兵士「はーっ……はーっ……」

ゲルド「」

リンクル「……あ」

ナビィ「リンクル……!」

リンクル「どうしよう……?」
リンクル「どうしよう、どうしよう、どうしよう……!?」ガタガタ

兵士「誰だか、知らないが……ありがとう、な……」
兵士「あんたのしたことは……正しい……何も、悪いことじゃ、ない……!」

リンクル「でも、あた、あたし、ひとを、ひとをころして……!」ガタガタ

ナビィ「リンクル!」

リンクル「っ」ビクッ

ナビィ「早く止血してあげないと、兵隊さん死んじゃうヨ!」

リンクル「……!」

兵士「……君は……まさか……」
兵士「そうか、あの時の……森から来たお嬢ちゃんだな……?」

142: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/09(金) 23:31:43.76 ID:KepXK8wj0
兵士「あ、会えてよかった……君に伝えたい、ことが、ある……ごほっ」

リンクル「喋っちゃ駄目! 血が……!」

兵士「ぐ……ゲルドの、盗賊王ガノンドロフが、我が王を裏切った……」
兵士「王は殺され、ゼルダ姫は、乳母のインパ様がなんとか連れ出した……」

リンクル「知ってる……だから……もう……!」

兵士「我々はなんとかガノンドロフの追手を食い止めようとしたが……」
兵士「ここまでのようだ……無念、だ……がはっ……」

兵士「姫は……森の少女を……待っておられた……!」
兵士「今思えば、なんたる偶然だ……森の少女とは、そう、君のことだったのだな……!」

兵士「時の神殿へ……時の神殿へ急げ……」
兵士「我々の、我々が、命を懸けて……いそ……げ……」ガク

リンクル「……兵隊さん? 兵隊さん!」

兵士「」

リンクル「……もう、動かない……」

ナビィ「リンクル……」

リンクル「……ガノンドロフ……!」

143: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/09(金) 23:32:24.08 ID:KepXK8wj0
――時の神殿

リンクル「この台座の前でこれを吹けば良いんだよね……?」

♪♪♪♪♪♪~

ポゥ……

リンクル「……! 精霊石が!」

ゴゴゴゴゴ……

ナビィ「“時の扉”が開いたヨ!」

リンクル「ここが聖地……?」
リンクル「あれは……」

ナビィ「これは……!」
ナビィ「伝説の剣、マスターソード!」

リンクル「伝説の剣?」

ナビィ「そう……太古の昔、今のハイラルが出来る前のこと」
ナビィ「女神ハイリアが魔物に対抗する為に作り出した、退魔の剣だヨ!」

リンクル「退魔の剣……」

144: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/09(金) 23:32:55.47 ID:KepXK8wj0
http://www.youtube.com/watch?v=GqwwemH9lfc


リンクル「……あの時、ガノンドロフには全然敵わなかった」ガシッ
リンクル「これがあれば、あいつにも勝てるかな……っ?」ググッ

リンクル「っく……えいっ!」ガッ
リンクル「抜けたっ……!」

ゴオッ

リンクル「!?」

ナビィ「な、何!?」

リンクル「こ、この光は……!?」

パアアアアアッ

145: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/09(金) 23:34:05.29 ID:KepXK8wj0
リンクル(あたし、一体どうなって……!?)

『クックック……』
『ご苦労だったな、小娘!』

リンクル(ガノンドロフ! なんで、笑って……!)

ガノンドロフ『俺の思った通り、“時の扉”の鍵はお前が握っていたのだな……』
ガノンドロフ『お前がこの俺を聖地へ導いてくれるとは……』

リンクル(……!!)

ガノンドロフ『感謝するぞ、小娘!』
ガノンドロフ『ハッハッハッハ、ハーッハッハッハッハッハ!』

リンクル(待てっ……! 待て、ガノンドロフ!!)
リンクル(っ……!)

146: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/09(金) 23:34:49.58 ID:KepXK8wj0
『リンクル……』

リンクル(……)

『目覚めよ、選ばれし者リンクルよ……』

リンクル(……?)
リンクル(選ばれし者……?)

「リンクル……」

リンクル「うっ……っ」
リンクル「ここは……?」

「目が覚めたようじゃな……」
「ワシはその昔、時の神殿を作り、聖地との道を繋いだ賢者の一人……」

ラウル「名をラウルという」
ラウル「ここは賢者の間」

ラウル「聖地の要である光の神殿に残された、最後の砦じゃ……」
ラウル「お前が時の台座から抜き取ったマスターソード……あれが聖地への最後の鍵だったのじゃ」

リンクル「じ、じゃあ、あたしは……!」
リンクル「……? 何? 身体の感覚が……」

ラウル「……リンクルよ」
ラウル「落ち着いて、己の姿を見るが良い」

リンクル「……?」
リンクル「足元が、少し遠い……?」

ナビィ「リンクル! 大きくなってる!?」
ナビィ「成長してるヨ!」

リンクル「クロスボウが小さい……コキリの剣もデクの盾も小さくて頼りないや」
リンクル「ていうか、胸大きくなってるし!? 邪魔くさ!?」

ナビィ「た、確かにちょっと邪魔そう……」

147: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/09(金) 23:35:35.92 ID:KepXK8wj0
ナビィ「……思ったんだけどさ、服着替えさせたのってラウルなのかな……」

リンクル「え?」

ラウル「いや、お前の体は……」

「マスターの身体はファイが管理しておりました」ヒュリンッ

リンクル「へっ!?」

ファイ「マイマスター、リンクル。私はマスターソードに宿る剣の精霊、ファイと申します」
ファイ「マスターが台座から私を抜き放った際、ファイは“マスターはまだ幼すぎる”と判断しました」

リンクル「そ、そう……」

ファイ「この為、マスターの魂を一時的に封印し、身体をファイが管理していました」
ファイ「現在のマスターの体は一般的なハイリア人に照らし合わせると、概ね17歳から18歳と見られます」

ファイ「実際の年齢は不明ですが、その年頃の少女らしい振舞いを身につけることを推奨します」
ファイ「また、マスターの体調管理に関してはそちらの妖精よりファイの方が詳細を把握している確率が85%」

ファイ「そうした相談はファイにされることを推奨します」
ファイ「この姿を現出させられるのはこの賢者の間に限られますが、会話だけであればどこでも可能です」

ナビィ「ええー……」

ファイ「それでは、またご用があればお呼び出しください」ヒュリンッ

リンクル「マスターソード……伝説の剣だけあって、精霊なんてのも宿ってたんだ……」

148: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/09(金) 23:37:12.08 ID:KepXK8wj0
ラウル「……こほん」
ラウル「マスターソードは、心悪しき者は決して触れることの出来ぬ聖剣」

ラウル「そして、時の勇者としての資格ある者だけが台座から抜き放つことの出来る剣」
ラウル「しかし……お前は時の勇者として、マスターソードを扱う者として、まだ幼すぎた……」

ラウル「それ故、お前の魂は7年の間眠り続けた……」
ラウル「そして今、時の勇者としての目覚めの時が訪れたのじゃ」

リンクル「7年……」
リンクル「……そうだ! ガノンドロフは!? あいつの声が……!」

ラウル「……奴はお前がハイラルの平和を願って開いた“時の扉”からこの禁断の聖地へ侵入した」
ラウル「そして聖地の中心……この光の神殿でトライフォースを手に入れ、その力で魔王となっておる」

ラウル「奴の魔力が神殿を通してハイラル中へ流れ出し、この7年でハイラルを魔物の国へと変えてしまった……」
ラウル「ワシの力が及ぶのも最早この光の神殿の一部に過ぎぬ」

リンクル「そんな……そんな、ことって……!」

ラウル「じゃが、まだ希望はある!」
ラウル「我らには賢者の力が残っておる!」

リンクル「賢者の力?」

ラウル「七人の賢者の力が目覚めし時、賢者の封印は全ての悪しき力をその彼方へと封じ込める」
ラウル「このワシ、ラウルもその賢者の一人……」

ラウル「そして賢者達と共に戦う力……」
ラウル「それが時の勇者なのじゃ!」

リンクル「……じゃあ、その賢者達を目覚めさせて、時の勇者を見つけてくればいいんだね?」

ラウル「……何を言うておる」
ラウル「時の勇者とは、お前のことだと先程言うたではないか」

リンクル「あたしが!?」
リンクル「あたしが、時の勇者……!?」

ラウル「左様。まぁ、突然言われても困惑するばかりであろうな」
ラウル「まずは、ハイラルの様子を見てくるが良い」

149: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/09(金) 23:37:55.85 ID:KepXK8wj0
――時の神殿

リンクル「……あれっ」

ナビィ「時の神殿に戻ったみたいね」
ナビィ「ほんとに7年も経ったのかな?」

リンクル「ここの様子は全然変わらないけど……」キョロキョロ
リンクル「やっぱりなんだか変な感覚だなぁ、この身体」

リンクル「取り敢えず……城下町に出てみよっか」
リンクル「……!」シャキンッ

「……」

リンクル「……何者?」

「待っていたよ、時の勇者」

リンクル「……あたしを知ってるの?」

「……世界が魔に支配されし時、聖地からの声に目覚めし者達五つの神殿にあり……」
「一つは深き森に、一つは高き山に、一つは広き湖に、一つは屍の館に、一つは砂の女神に……」

「目覚めし者達、時の勇者を得て魔を封じ込め、やがて平和の光を取り戻す」
「我らシーカー族に残る、神殿についての言い伝えだ」

シーク「僕はシーク。シーカー族の生き残り」
シーク「最初の質問に答えるならば、ただの吟遊詩人だよ」

シーク「二つ目の質問に答えるならば、君の持つその剣が何よりの証明だ」
シーク「君が言い伝えを信じるならば、五つの神殿を探し出し、目覚めさせる他ない」

シーク「まずは森に行ってみると良い……」
シーク「賢者が目覚めの時を待っている。君のよく知る少女だ」

リンクル「あたしのよく知っている……?」

シーク「だが、神殿に巣食う魔物の力で、ここから彼女に賢者の声を届かせることは不可能だ」
シーク「魔物を倒し、彼女を賢者として目覚めさせるんだ……」

150: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/09(金) 23:38:50.28 ID:KepXK8wj0
――ハイラル城下町

リンクル「こ、これは……」

ナビィ「う……すごい邪悪な空気……」

リンクル「人っ子一人……いや、誰か居る?」

リーデッド「ウォォン……ォォン……」

ナビィ「違う! 近付いちゃ駄目!」

リンクル「ま、魔物だ!?」

リーデッド「キョォォッ!」ギロッ

リンクル「うっ!?」ビクッ

リーデッド「ォォォ……」ノソノソ

リンクル「っく……っ! ええいっ!」ザシュッ

リーデッド「ウォォォ……」バタリ

リンクル「倒した……?」

リーデッドB「オォン……オォン……」ノソノソ

リーデッドC「ウォォン……オォォン……」ノソノソ

リンクル「ひっ!? いっぱい来た!?」

リーデッド「」

リーデッドB「オォン……」

リーデッドC「オォォン……」

リンクル「……あれ?」

ナビィ「仲間の死体の横にしゃがみ込んで……何してるんだろう……?」

リンクル「さあ……」
リンクル「……なんか、悪いことしちゃったかな」

151: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/09(金) 23:39:29.15 ID:KepXK8wj0
――ハイラル平原

リンクル「平原はそこまで変わってないのかな……?」
リンクル「……でも、なんだか空気が重いや」

ナビィ「城下町程じゃないけど、邪悪な魔力が漂ってるネ……」

リンクル「……あっ!」

ナビィ「どうしたの?」

リンクル「食糧も水も用意してない!」

ナビィ「……あ、そっか! 城下町で買えなかったから、何もないんだ!」

リンクル「どうしよう、近くに村なんて……!」
リンクル「……そうだ、あそこなら……!」

152: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/09(金) 23:39:58.81 ID:KepXK8wj0
――カカリコ村

リンクル「到着は夜中を覚悟してたけど……」

ナビィ「案外早くついちゃったネ」
ナビィ「成長して身体が大きくなったからかな?」

リンクル「うん、多分ね」
リンクル「……あれ? あの人……」

ナビィ「どうしたの?」

リンクル「城下町で見た覚えがある……」
リンクル「あそこの人も城下町に居た気がする」

ナビィ「……そういえばここはあんまり邪悪な魔力を感じないヨ」

リンクル「城下町の人達、ここに逃げてきてたんだ!」

ナビィ「ていうかよく通行人の顔なんか覚えてたね……」

153: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/09(金) 23:40:34.79 ID:KepXK8wj0
リンクル「こっこっこっこー」

コッコ「コッコッココココケー」

リンクル「こけっこー」
リンクル「なんだかコッコも小さく感じるなぁ」

コッコ姉さん「また一羽足りない……どこ行っちゃったのかしら……」ガチャ

リンクル「ん……あれ?」
リンクル「ああー! コッコのお姉さん!」

コッコ姉さん「え……もしかして、リンクルちゃん!?」

リンクル「覚えててくれたんだ! 久しぶり!」

コッコ姉さん「もうっ、七年間もどこ行ってたの!?」ギュッ

リンクル「きゃっ、ご、ごめんなさい?」

コッコ姉さん「でも元気そうで安心したわ」
コッコ姉さん「背も大分伸びたね。スタイル良くて羨ましいなー」ムニムニ

リンクル「んん、ちょっと、また胸ー?」

コッコ姉さん「あたしが見込んだ通り、大きくなったじゃん?」ムニムニ

リンクル「歩いてる時も邪魔で仕方ないんだけどね」

コッコ姉さん「ねぇ、今夜の宿はもう決まってる?」

リンクル「ううん、決まってない」

コッコ姉さん「じゃあ、またうちに泊まって行きなよ!」

リンクル「いいの?」

コッコ姉さん「いいの、いいの!」
コッコ姉さん「だから……」

リンクル「お風呂一緒はしないからね?」

コッコ姉さん「(´・ω・`)」

154: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/09(金) 23:41:11.78 ID:KepXK8wj0
――親方の家

コッコ姉さん「あれ? リンクルちゃん下着とかつけてないの?」

リンクル「パンツは履いてるけど」

コッコ姉さん「胸の話! そんなにおっきいんだから、ブラくらい着けなきゃ駄目よ!」

リンクル「そうかな……」

コッコ姉さん「絶対そう!」
コッコ姉さん「測ってあげるからじっとして」

ファイ(胸に着用する下着……盲点でした)

コッコ姉さん「んー……D……かな……?」
コッコ姉さん「これならすぐ用意出来そうだから待っててね!」

リンクル「あ、ありがとう……?」

155: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/09(金) 23:42:01.44 ID:KepXK8wj0
コッコ姉さん「どっか痛んだりしない?」

リンクル「平気。ちょっと違和感はあるけど」

コッコ姉さん「誰だって最初はそういうもんだよ」

おばさん「そうそう、この子だって最初は大変だったんだから!」

コッコ姉さん「もう! サイズ間違えちゃってたのはお母さんでしょ!」

「ぐぅー……ぐぉー……」

リンクル「……いびき?」

コッコ姉さん「ああ、タロンおじさんね」

リンクル「え、タロンって、あのロンロン牧場のおじさん?」

コッコ姉さん「知ってるの?」
コッコ姉さん「数年前まではロンロン牧場のオーナーだったんだけど、追い出されちゃったんだって」

ナビィ「ええっ!?」

リンクル「じ、じゃあ、ロンロン牧場は!? マロンは!?」

コッコ姉さん「インゴーって使用人が乗っ取って、今じゃガノンドロフの公営牧場よ」
コッコ姉さん「マロンちゃんはまだあの牧場でこき使われてるみたい……可哀想に、動物が大好きなばっかりに」

リンクル「インゴーさんが? そんなことする人には見えなかったけど……」
リンクル「いずれにせよ、何とかしなきゃ……!」

159: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/10(土) 11:07:21.91 ID:YOMQ8KBh0
 ep.9 新たな相棒


――翌日 ロンロン牧場改めインゴー牧場

リンクル「んー、なんだかやっぱり、ちょっと変な空気ね」

ナビィ「でもそこまで邪悪な魔力なんかは感じないヨ」

コッコ「コッコッコッコッコ……」

リンクル「……」
リンクル「取り敢えず、マロンを探そう」キィ

「あら、珍しい。お客様なんて久しぶり……」

リンクル「……マロン」

マロン「あれ……? もしかして、妖精ちゃん!?」

リンクル「うん、森から来た妖精の子、リンクルだよ」
リンクル「元気そうで良かった……!」

マロン「ああ、うん、そこそこね……」

リンクル「……」
リンクル「いきなりなんだけどさ、今この牧場はどうなってるの?」

リンクル「表に居たコッコもなんだか元気なさそうだったし、ここに居る牛達もどこか不機嫌そう」
リンクル「前に来た時と、雰囲気も匂いも全然違うよ」

マロン「……街の人も居なくなっちゃったし、ガノンドロフが現れてからあちこち荒れ果てて怪物だらけ」
マロン「インゴーさんも、あいつに気に入られようと馬達を利用して……」

マロン「根が悪い人じゃないのは分かるのよ? でも、余裕がなくなっちゃってて……」
マロン「お父さんも追い出されちゃって、でもあたしは他に行くとこもないし……」

マロン「あたしがインゴーさんに逆らったら、馬達まで酷い目に遭うから……」
マロン「だからあたし、何もしてあげられないの……」

リンクル「……インゴーさんは?」

マロン「この時間なら……多分放牧場だと思うけど」

リンクル「そっか、ありがと」

マロン「あ……」

バタン

マロン「……グスッ……」
マロン「……リンクルぅ……良かった……無事で良かったよぅ……!」グスグス

160: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/10(土) 11:08:13.90 ID:YOMQ8KBh0
――インゴー牧場 放牧場

ナビィ「あ、居るヨ! あの人じゃない?」

リンクル「ほんとだ」
リンクル「インゴーさん、7年前とあんまり変わってないように見えるけど……」

ナビィ「服装は随分変わってるけどね」

リンクル「んー、ちょっと作戦が要るね」

ナビィ「作戦?」

リンクル「うん。力ずく、ってわけにもいかないでしょ?」
リンクル「そうだなー……」

<ヒヒィーン

<どうどう、大人しくしてくれな、な? 怖がらなくても平気だからよ

リンクル「……ふーん」
リンクル「やっぱり悪い人じゃなさそうね、インゴーさん」

リンクル「あら……あれはもしかして……」
リンクル「……よーし」

161: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/10(土) 11:09:38.04 ID:YOMQ8KBh0
リンクル「インゴーさん!」
リンクル「お久しぶり! 覚えてない? リンクルだよ!」

インゴー「……さ、さぁ、知らねぇな」ギクッ
インゴー「何分色んな奴と会うもんだからな、ちょっと覚えが……」

ナビィ(嘘ばっかり……絶対覚えてるヨ、あの顔……)

リンクル「そっか……残念だなぁ」
リンクル「まぁいいや。牧場見学して行きたいんだけど、いいかな?」

インゴー「ああ、見学くらいなら……」

リンクル「ありがと」
リンクル「あ、そうだ! 馬にも乗ってみたいんだ!」

インゴー「何? 馬に乗りたい?」
インゴー「駄目だ、駄目だ。ここに居る馬はガノンドロフ様に献上する軍馬だぞ!」

リンクル「えー……」
リンクル「乗ってみたかったのに、残念ね、ナビィ?」

ナビィ(えっ、こっちに振ってくる?)
ナビィ「そ、そうネ……」

リンクル「そんなに自信があるなら乗せてくれると思ったのになぁ」

ナビィ(……あっ! もしかして……!)
ナビィ「馬の管理にちょっと自信がないとか?」

リンクル「あー、あり得るー」

インゴー「なっ……!」
インゴー「お前さん、ここはガノンドロフ様がこの俺の腕を見込んで任せてくださってる牧場だぞ!?」

リンクル「じゃあちょっとくらい乗らせてもらっても大丈夫でしょ?」

インゴー「いや、それは……」
インゴー「ぐぬぅ……仕方ねぇな、じゃあ10ルピーでちょっとばかしだぞ」

リンクル「お金取るの?」

インゴー「当然だ! こっちも慈善事業じゃねぇんだからな!」

リンクル「仕方ないなー、はい!」チャリン

ナビィ(上手いこと乗せるなぁ)

162: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/10(土) 11:10:30.04 ID:YOMQ8KBh0
インゴー「よしよし、良い子だ」
インゴー「ほぅ、ねぇちゃん筋が良いじゃねぇか」

リンクル「ふふん、そう?」
リンクル「いい子いい子……」ナデナデ

馬「ブルルッ」

インゴー「おぅ、そうやって撫でてやるといい。よく分かってんな」

リンクル「えへへ、馬に乗るのは初めてだけど、動物の気持ちはよく分かるもん」

インゴー「そ、そうかい……」

リンクル「インゴーさんも動物好きでしょ?」

インゴー「そうだな……」
インゴー「……いや、どうだろうな……」

リンクル「だって、この子もこんなにインゴーさんに懐いてるもん」

インゴー「……」
インゴー「……どうだ、少し走ってもみないか?」

リンクル「いいの?」

インゴー「ああ、この柵の中ならいくらでもな」
インゴー「足で馬の腹を軽く叩いてみろ」

リンクル「はいっ」

馬「ヒヒーン」パカラッ パカラッ

リンクル「おっ、おっ、おおっ! はっやーい!」

インゴー「み、見事に乗りこなしてやがる……本当に初めてか……!?」

163: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/10(土) 11:11:24.95 ID:YOMQ8KBh0
リンクル「あー楽しかった」
リンクル「ありがとね!」ナデナデ

馬「ブルルルッ」

インゴー「それじゃあ、そろそろ……」

リンクル「あ、待って! 別の子にも乗ってみたい!」

インゴー「何?」

リンクル「さっきはインゴーさんが選んだでしょ? 今度は自分で選んでみたいの」
リンクル「はい、ルピー」チャリン

インゴー「おまっ……ええい! 勝手にしろ!」
インゴー「だが馬傷付けんじゃねーぞ! その……大事な商品なんだからな!」

リンクル「分かってるって!」
リンクル「ナビィ、あの子エポナだよね?」

ナビィ「ずっと遠巻きに見てたあの子?」

リンクル「うん」

ナビィ「多分……だけど」
ナビィ「あの歌を聞かせれば確実に分かるんじゃない?」

リンクル「……ああ、あの歌!」

164: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/10(土) 11:12:09.23 ID:YOMQ8KBh0
♪♪♪~ ♪♪♪~ ♪♪♪ ♪♪~

エポナ「ヒヒィーン!」パカラッパカラッ

リンクル「良かった、やっぱりエポナだった!」ナデナデ

エポナ「ブルルルッ」

リンクル「よっ、と……」
リンクル「一緒にマロンを助けましょ?」ナデナデ

エポナ「ヒヒィーン!」

165: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/10(土) 11:12:51.44 ID:YOMQ8KBh0
ナビィ「インゴーさん!」

インゴー「ああ、さっきのねぇちゃんの連れてた妖精か……今度は何だ?」

ナビィ「リンクルがレースで勝負したいって!」

インゴー「何ィ!?」

ナビィ「ほら、見て!」

リンクル「はいっ」ペチペチ

エポナ「ヒヒィーン!」パカラッパカラッ

ナビィ「もしかしたらインゴーさんより上手く乗れてるんじゃない?」

インゴー「おぉん?」カチン
インゴー「バカにしちゃいけねぇよ、確かにあのねぇちゃんは筋が良いがまだまだトーシロだ」

ナビィ「じゃあそんなトーシロと勝負も出来ないのはとんだヘタレさんかしら?」

インゴー「ぐぬっ」

ナビィ「負かされちゃったりしたら大恥だもんねー?」
ナビィ「ほら、リンクルも手振ってる。多分言ってるよ、“来いよインゴーかかってこい”って!」

インゴー「や、野郎、ぶっ潰してやるぁ!」

ナビィ「そうこなくっちゃ!」
ナビィ(上手く釣れたけど、今更不安になってきたわ……)

166: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/10(土) 11:13:44.11 ID:YOMQ8KBh0
インゴー「行くぞォー!」

馬「ヒヒィーン!」

マロン「スタート!」

リンクル「はいっ!」
インゴー「はいよー!」

パカラッパカラッ

ナビィ「わ、速い!」

マロン「エポナは確かにこの牧場で一番の駿馬だけど……」
マロン「妖精ちゃん、それを見越して勝負を挑んだのかしら」

ナビィ「……え?」

マロン「え? 知らなかったの?」

ナビィ「う、うん。ただエポナを見つけて、何か考えてたようだったけど……」

マロン「そうなんだ……」
マロン「あ、帰ってきた」

パカラッ パカラッ

リンクル「ゴール! やったぁ!」

インゴー「な、な、ななな……!」
インゴー「こ、こんなことがガノンドロフ様に知れたら……!」

インゴー「こ、小娘! も一度勝負だ!」
インゴー「お前が勝ったら……その馬くれてやる!」

リンクル「えー、仕方ないなぁ」

167: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/10(土) 11:14:41.98 ID:YOMQ8KBh0
ナビィ「まぁ、あっさり勝っちゃった……」

マロン「妖精ちゃんすごーい……」

リンクル「えへへ、ありがとね、エポナ!」

エポナ「ブルルッ!」

インゴー「ば、バカな……この俺がトーシロ相手に二度も負けただとぉー!?」
インゴー「し、しかもその馬はエポナじゃねぇか……!?」

インゴー「その暴れ馬を一体いつの間に、どうやって手懐けやがった!?」
インゴー「ガノンドロフ様にプレゼントする筈の馬を賭けて負けるなんて……!」

リンクル「じゃ、約束通りこの子はもらうからね!」

インゴー「……そうだ!」

ガコーン

インゴー「はっはっはー! 約束通りそいつはくれてやる!」
インゴー「だがこの牧場からは出られねぇからなー!」

リンクル「うわ、やることちっさ!」

インゴー「そいつは障害物走の経験はねぇからな! 出られるもんなら……」

リンクル「はいやっ!」

エポナ「ヒヒーン!」パカラッパカラッ

ダンッ

インゴー「え……」

マロン「ええーっ!?」

リンクル「ぃやったぁー!」
リンクル「このまま森まで行っちゃおー!」

エポナ「ヒヒィーン!」

パカラッパカラッ……

インゴー「」ポカーン

マロン「す、すごい……もうすっかり相棒みたいに……」

171: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/11(日) 09:23:04.09 ID:YFOXpmXG0
 ep.10 森の賢者


――コキリの森

リンクル「ここで待ってて、エポナ」

エポナ「ブルルルッ」

リンクル「さて……久しぶりに戻ってきたけど、みんな元気かなぁ」

ガサッ

リンクル「?」

デクババ「キシャアーッ」

リンクル「なっ、デクババ!? でっか!?」バシュッ

デクババ「ギャアアアッ」

リンクル「成長したから、クロスボウも片手で撃てちゃうや」

ナビィ「Watch out! オコリナッツが居るヨ!」

オコリナッツ「ピピッ!」ベッ

リンクル「うわっと!」

ハイリアの盾「フンッ」ガンッ

オコリナッツ「ピピィッ!」

リンクル「村の中にこんなに魔物が……!?」
リンクル「一体どうなってるの……!?」

172: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/11(日) 09:23:39.60 ID:YFOXpmXG0
ナビィ「あ、そこの陰に……」

リンクル「!」クルッ

双子妹「ひっ」ビクッ

リンクル「……なーんだ、あんたかぁ」
リンクル「驚かせないでよ」

双子妹「だ、誰……?」

リンクル「え……」

双子姉「早く! こっちこっち!」

双子妹「……!」タッ

リンクル「あ……」
リンクル「……」

ナビィ「コキリ族は……」

リンクル「……ずっと子供の種族」
リンクル「そっか……あたし、やっぱりコキリ族じゃなかったんだ……」

173: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/11(日) 09:24:10.93 ID:YFOXpmXG0
――迷いの森

リンクル「あっ、ミド……!」

ミド「なんだお前!?」
ミド「そんなコキリっぽい服なんか着てたって誤魔化されねぇゾ!」

ミド「オイラ、サリアに約束したんダ」
ミド「ここは誰も通さないからナ!」

リンクル「……分かんないんだ……」
リンクル「そっか……そうだよね……」

リンクル「……」
リンクル「そうだ……」スッ

♪♪♪~♪♪♪~♪♪♪~
♪♪♪~♪♪♪~♪♪♪♪♪♪♪♪ ♪♪♪~

ミド「そ……それ……!」
ミド「サリアがよく吹いてた曲だ……」

ミド「友達にだけ教えてくれる曲なのに……」
ミド「お前、サリアを知ってんのか!?」

リンクル「……ミド、ここを通して」

ミド「……分かったよ。お前を信じて通してやる」

リンクル「ありがとう、ミド」

ミド「お前見てると、なんだかアイツ思い出すヨ……」

リンクル「……」タタッ

ミド「……」
ミド「そういえば、なんでオイラの名前知ってたんだ……?」

174: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/11(日) 09:25:03.62 ID:YFOXpmXG0
――森の聖域

リンクル「やっぱり森のみんなはあたしだって気付いてくれないんだなぁ」
リンクル「外の人達はすぐにあたしだって気付いてくれたのに」

ナビィ「リンクル……」
ナビィ(やっぱり、気にしてるのかな……気にするよね、うん……)

リンクル「……ここも、なんだか雰囲気変わったね」

ナビィ「何か居るみたい……?」

ザシッ ザシッ

リンクル「……ウルフォスとかじゃ……ない……ね……」

モリブリンA「ブフゥ、おい何か居るぞ」

モリブリンB「おっ、ありゃハイリア人じゃねぇか」

モリブリンA「しかも女だぜ、女」
モリブリンA「ブフフ、とっ捕まえりゃ久々に楽しめそうじゃねぇか」

モリブリンB「ハイリア人はあんまり好みじゃねぇんだがなぁ」

モリブリンA「まぁ贅沢は言えねぇよ」

モリブリンB「ああ……ここんとこクソ退屈な森の巡回でご無沙汰だしなぁ……」
モリブリンB「何より、この前のコキリの小娘には逃げられちまって苛々してたところだ」

モリブリンA「おいおい殺すんじゃねぇぞ」

モリブリンB「分かってるよ」

リンクル「言葉を……話してる……?」

175: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/11(日) 09:25:49.65 ID:YFOXpmXG0
モリブリンB「どうやってこんなところまで来たのかは知らねぇが……」ザッザッ
モリブリンB「取り敢えず俺達の鬱憤ぐらいは晴れさせてくれよな!」ブォンッ

リンクル「うわっ!」バッ

モリブリンA「おいおい、殺すなって言ったろ!」
モリブリンA「二人係りで捕まえちまえばロクな抵抗なんぞ出来やしねぇよ」

モリブリンA「それに、よく見りゃ中々上玉じゃねぇか、勿体ねぇ」
モリブリンA「まぁ……身体は小せぇからな、裂けちまうかもしれねぇが」

モリブリンB「うへぇ、お前こんなのがいいのかよ」
モリブリンB「俺はこの連中の白い肌が気持ち悪くて仕方ねぇんだが」

リンクル「さっきから何の話して……」シャキンッ
リンクル「……あー、まずい!」

ナビィ「ど、どうするの、リンクル! 挟み撃ちだヨ!」

モリブリンA「ブフフ、悪いようにはしねぇからよ、大人しくしろよな?」

リンクル「……!」ジリッ

モリブリンB「そら、捕まえ……」
リンクル「せいっ!」タンッ

モリブリンB「なぁっ!?」

モリブリンA「バカ野郎、お前、腕を足場に提供してやる奴があるか!」

モリブリンB「んなにずばしっこいと思わねぇだろ!」

リンクル「くっ!」タタタタッ

モリブリンA「畜生、逃がしてたまるか! 追うぞ!」ダッ

176: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/11(日) 09:26:58.31 ID:YFOXpmXG0
モリブリンA「クッソー、どこへ隠れやがった?」

モリブリンB「なんつー足の速い奴だ……」
モリブリンB「それに、まるであいつここの道分かってるみたいだったぞ」

モリブリンA「こないだの小娘にもそうして出し抜かれたんだったな……」
モリブリンA「あー、クソ! お前がヘマさえしなけりゃ!」

モリブリンB「何だと! お前が生け捕りにしようなんて言うからだろ!」

<あーだこーだ

リンクル「……行った?」ガサッ

ナビィ「みたいネ……」

リンクル「はぁ……何今の連中? 魔物なのは分かるけど……」

ナビィ「人の言葉を話してたし、あろうことかリンクルを犯そうなんて……」

リンクル「犯そう?」

ナビィ「あー……そっか、知らないか……」
ナビィ「また今度教えてあげるから、今はこの先へ進むことに集中しましょ?」

リンクル「うん……?」

177: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/11(日) 09:27:41.71 ID:YFOXpmXG0
リンクル「この通路を抜ければ……うぇっ」

ボスブリン「ブフー……ブフー……ブモッ」
ボスブリン「ハイリア人が見えるんだなぁー」ブォン

リンクル「うわっ!?」バッ
リンクル「こ、棍棒!? あんなのもらったら潰れちゃうよ!」

ボスブリン「中々すばしっこいんだなぁー」ブォン ブォン

リンクル「くっ! 危なっ!」
リンクル「このっ!」バシュッ

ドカーン

ボスブリン「」ズシャッ

ナビィ「あ、頭が半分なくなっちゃったけど……」

リンクル「言わないで……間違えて爆弾ボルト撃っちゃっただけだから……」

<おい何か聞こえなかったか?

<言われてみれば……班長のところか?

<まーたなんかやらかしたのかな、あの気狂い

リンクル「やばっ……」タタッ

178: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/11(日) 09:28:15.28 ID:YFOXpmXG0
リンクル「サリア……やっぱり居ないね」

ナビィ「魔物が居たんだもんネ」
ナビィ「多分、どこかに隠れてるのヨ」

リンクル「だといいけど……」

ザッ

リンクル「?」

シーク「時の流れは残酷なもの……人それぞれ速さは違う」
シーク「そしてそれは変えられない……」

シーク「時は流れても変わらぬもの、それは幼き日の追憶……」
シーク「ここは森の神殿。君のよく知る、追憶の中のあの少女はこの中に居る」

シーク「……急いだ方が良い」
シーク「ガノンドロフの放った魔物達が、いつ彼女を見つけるとも限らない」

リンクル「……!」ダッ

シーク「……」

179: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/11(日) 09:28:54.70 ID:YFOXpmXG0
――森の神殿

リンクル「お城……っていうより」
リンクル「なんだろう、誰かのお家みたい?」

ナビィ「お屋敷、っていうのかな、こういうの」

リンクル「お屋敷……お城とは違うの?」

ナビィ「うーん……大きさとか、住んでる人の立場とか、そういうので違うのかな……」

リンクル「ファイは知ってる?」

ファイ「イエス、マスター」
ファイ「屋敷、もとい館とは、貴族等の邸宅や、役人や外国からの使者等の宿舎、または小規模な城砦を指します」

ファイ「城、もとい城砦とは敵に攻め込まれた際の防衛拠点を指し、また軍の指揮官の住居でもあります」
ファイ「ただし、近年は防衛拠点としての機能性より、権威を示す為の優雅な建築物も増えているようです」

ファイ「よって、館と城に明確な違いはないと言えます」
ファイ「尚、この神殿はどちらかというと館と表現した方が良いでしょう」

リンクル「うん……うん?」
リンクル「ご、ごめんね、ちょっと難しい言葉が多くて分かんないや……」

ナビィ「と、取り敢えずここはお屋敷ってことでいいのネ?」

ファイ「イエス、その認識で間違っていません」

リンクル「あ、うん、ありがとう……」

ファイ「お礼には及びません」
ファイ(マスターにはご理解いただけなかった確立60%……言葉選びを誤ったのでしょうか)

180: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/11(日) 09:29:30.24 ID:YFOXpmXG0
リンクル「この部屋は……」ガチャ
リンクル「なんだろう、あれ」

「ハイリア人の子……!」
「あなたはここに来てはいけない……!」

リンクル「……? 誰?」
リンクル「あっ」

「あなたはここに来るべきではありません……」
「道は閉ざしておきます。どうかお帰りになって……」

リンクル「待って!」
リンクル「……火を持ってっちゃった」

ガコンッ

リンクル「あの床に埋まった箱みたいのが道なのかな」

ナビィ「さっきのはこの神殿を管理してる幽霊四姉妹よ」
ナビィ「どうしたのかしら……」

リンクル「知ってるの?」

ナビィ「まぁね、この神殿も森の一部なわけだし、結構昔から居るらしいよ」
ナビィ「でも、前はこんな嫌な感じの魔力は漂ってなかった筈だよ……」

リンクル「表に居たあの魔物達、多分ガノンドロフの手下だよね」
リンクル「そうすると、やっぱりここにもあいつの手下が居るのかな……」

ナビィ「早くなんとかしなきゃ、四姉妹が可哀想」

リンクル「うん。なんとかしなきゃね」
リンクル「取り敢えず、奥の部屋行ってみよっか」

181: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/11(日) 09:30:11.48 ID:YFOXpmXG0
リンクル「広くて迷いそうだなぁ」ガチャ

スタルフォス「待っていたぞ、時の勇者!」シャキンッ

リンクル「なっ……スタルフォス!?」シャキンッ

ナビィ「ただのスタルフォスじゃないヨ! 森をさまよってるのとは違うみたい!」

スタルフォス「表のモリブリン共をどうしたのかは知らないが、俺はあの連中とは一味違うぞ!」ブンッ

リンクル「くっ!」ガキンッ
リンクル「ていっ!」ブンッ

スタルフォス「成程、立派な剣だ。それがマスターソードか」バッ
スタルフォス「だが、腕が見合っていなくてはな! はっ!」ダンッ

リンクル「うわっ!」バッ

スタルフォス「どうした、その程度か!」ガンッ ガンッ

リンクル「うっ、くっ、やっ、ぁいっ……!」ガキンッ ガキンッ
リンクル(は、反撃に転ずる隙が……!)

スタルフォス「時の勇者と言えども所詮は女! 力も技も大したことはないようだな!」ブンッ

リンクル「っ!」バッ
リンクル「……っ!」

スタルフォス「もう息が上がったか? そろそろ俺の剣の錆となるがいいわ!」ダンッ

リンクル「!」
リンクル「そこっ!」バシュッ

スタルフォス「ぐおっ!?」
スタルフォス「ぐっ……な、何、クロスボウ!?」

182: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/11(日) 09:30:47.01 ID:YFOXpmXG0
リンクル(入った! モロに入った!)
リンクル(けど……!)

スタルフォス「小癪な……!」ジリッ

リンクル(次は通用しない……! ただ撃ったって盾に弾かれてボルトを無駄にするだけ……!)
リンクル(なんとか隙を作れれば……そうだ、目を眩ますだけでもいい!)パァン

スタルフォス「くっ!? 目がっ!?」

リンクル「てやぁぁぁっ!」ダンッ

ザンッ

スタルフォス「ぐはああっ!? く、クソッ……折角、この世に返り咲いたというのに……!」ボロボロ……
スタルフォス「畜生ォォォォ……!」バラバラバラ

リンクル「はぁ……はぁ……」
リンクル「……ふぅ……」

ナビィ「大丈夫?」

リンクル「平気……けど、やっぱり剣術はまだまだね」
リンクル「マスターソードを上手く使いこなせてない気がする」

ナビィ「修行が必要だネ」

リンクル「……うん」

183: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/11(日) 09:31:27.98 ID:YFOXpmXG0
リンクル「あれ……この壁に飾ってあるの、あたしのと同じクロスボウじゃ……」

ナビィ「ほんとだ。それに、この不自然に空いたスペース……」

リンクル「もしかして、あたしのクロスボウってここから持ってきたものなのかな」

ナビィ「かもしれないネ。いつ頃から使ってるの?」

リンクル「分かんない……気付いた時には持たされてて、それを使うのが当たり前だと思ってたから」
リンクル「なんでこんなところから……誰が持ってきたんだろう」スッ

リンクル「……そうだ、折角だし、こっちも持って行っちゃおうかな」
リンクル「右手でも左手でも使えるわけだし、二つあれば飛ばせるボルトも二倍、ってね」

ナビィ(消費量も二倍だけどね)

リンクル「んー、でも、動きはまた練習した方がいいかな」
リンクル「暫くは持っとくだけにしよっと」

184: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/11(日) 09:35:44.67 ID:YFOXpmXG0
リンクル「迷った……」

ナビィ「迷ったネ……」

リンクル「ここは……うん?」ガチャ
リンクル「そこの絵、あれって……」

ナビィ「四姉妹の次女ジョオが絵の中に居るヨ!」

「帰れと言ったわよ、ハイリア人の子……」

リンクル「そうは言われても、あたしはサリアを助けてガノンドロフを倒さなきゃならないのよ!」

「……あなたに何が出来るというの」

リンクル「少なくとも絵に隠れて喋ってるだけの幽霊さんよりは色んなことが出来ると思うけど?」

「……」

ポゥ……

ジョオ「それなら、力ずくで帰ってもらうわよっ」ボウッ

リンクル「っと、やる気ね!」シャキンッ

185: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/11(日) 09:36:16.57 ID:YFOXpmXG0
ポゥ……

ナビィ「リンクル、後ろ!」

リンクル「っ!」バッ

「捕まえた……」ガシッ

ナビィ「三女のベスだわ!」

ジョオ「よくやったわ、ベス」

ベス「……」ムニムニ

リンクル「ひゃっ!? ちょっと、そんなに撫で回さないでよ……!」ビクッ

ジョオ「……」

ベス「……」ペタペタ

リンクル「手ひんやりしてるぅ……」ゾクゾク

ジョオ「……ベス?」

ベス「……むふん、満足」スッ

リンクル「あーうー……」

ジョオ「ベス、あのね、人が人とお話してる時は邪魔しちゃ駄目って言ってるでしょ?」

ベス「……ジョオ姉様もよく邪魔する」

ジョオ「あんたのあれはコミュニケーションにしても度が過ぎてるの!」
ジョオ「あの森の子にも変なこと教えてたでしょ!」

ベス「ちょっとお手伝いしただけ」

ジョオ「何のお手伝いよ!」

ベス「それに……ジョオ姉様のそれはお話じゃない」

ジョオ「ぐぬっ……!」

186: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/11(日) 09:36:54.57 ID:YFOXpmXG0
ナビィ「あのー……」

エイミー「お姉様ぁー、エイミー火落っことしちゃったぁー」ポゥ

ジョオ「ええっ!? あんた何やってんの!?」

エイミー「だってパズルのブロックが上手く動いてくんなかったんだもん」

ジョオ「それが言い訳になるもんですか!」
ジョオ「早く広間に行って火を……」

メグ「エイミー? エイミー、大丈夫ですか? 広間に火が戻ってきちゃってるけど……」ポゥ
メグ「あら……」

リンクル「ええー……」

ジョオ「姉様! エイミーったら火を落っことしちゃったって……!」

メグ「なんとなく察しはつきますわ」
メグ「ところで、ハイリア人の子がいらっしゃるようですけど……」

ジョオ「あ、そうだ忘れてた!」

ベス「ひどい」

ジョオ「誰のせいだと思ってんの!」

ベス「いやん」

187: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/11(日) 09:38:00.31 ID:YFOXpmXG0
メグ「私は幽霊四姉妹の長女、メグと申しますの」
メグ「ごめんなさいね、ほんとはもっと真剣にあなたを困らせて追い返そうと思っていたのですけど」

リンクル「いや、まぁ、それなりに困ってたから、概ね成功だったんじゃないかな……」
リンクル「どうしてあたし達を追い返そうと?」

メグ「ご存知とは思いますが、私達姉妹はこの館を管理しておりますの」
メグ「ですが、七年ほど前のこと……」

メグ「突如として流れ込んだ邪悪な魔力により、私達は大きく力を失いました」
メグ「そこへ森の外からやってきた魔物達が襲いかかってきたのです」

メグ「力を失った私達ではいくつかの部屋を封鎖し彼らを大半の部屋から閉め出すのが精々でした」
メグ「そして数日前、今度はコキリの森の、昔からよくこの館の前へ遊びに来ていた少女が駆け込んできました」

リンクル「サリア……もしかして、村の危機を伝えに?」

ジョオ「そ。でも……」

ベス「私達もここの魔物に困り果ててたところで、あの子の村の危機は手に負えない……」

メグ「しかも、聖域を巡回する魔物をすり抜けてきたと言うのですから帰すのも危険を感じ」
メグ「仕方なく、この館の安全な部屋に匿っているところです」

ジョオ「奴らに見つからないようにね」

メグ「あなたを追い返そうとしたのも、あなたがこの近辺の魔物の首領と出会ってしまうのを避ける為でした」

リンクル「魔物の首領?」

メグ「はい……私達が封鎖した地下」
メグ「あそこに、魔物の首領ガノンが潜んでいますの」

リンクル「ガノン……!? まさかこんなところに!?」

エイミー「ハイリアちゃん、ガノンを知ってるの?」

リンクル「……7年前から、色々因縁があってね」

188: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/11(日) 09:38:39.82 ID:YFOXpmXG0
リンクル「取り敢えず、話は分かったわ」
リンクル「その上でお願い。地下に通してくれない?」

メグ「……」
メグ「スタルフォスを倒したのは、やはりあなたでしたか」

ナビィ「もっちろん! ネ、リンクル!」

リンクル「うんっ」

メグ「……分かりました。その勇気が蛮勇でないことを切に願います」
メグ「……あら……?」

リンクル「?」

メグ「そのクロスボウは……」

リンクル「これ? ああ、ごめん借りてる」
リンクル「片方は大分昔から使ってるけどね。まさかここのだとは思わなくて」

メグ「……そういえば、お名前を伺っておりませんでしたね」

リンクル「あー、そうね、名乗ってなかったっけ」
リンクル「あたしはリンクル、コキリの森のリンクルだよ」

メグ「……良いお名前ですね。それでは、お気をつけて……」

リンクル「うん! ありがとねー!」タッ


メグ「……」

ジョオ「ふーん……あれが旦那様の……」
ジョオ「やっぱり森に許されたハイリアの子って、その子供も特別なんだねぇ」

エイミー「ねぇねぇ、それあのリンクルちゃんに言わなくて良かったの?」

メグ「……いいんですよ、きっとその内ご自分で見つけ出されますわ」

189: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/11(日) 09:39:20.93 ID:YFOXpmXG0
ゴー……ゴゴン

リンクル「ついた……」

ナビィ「うっ……すごい、邪悪な魔力が」

リンクル「きつかったらあたしのフードに入ってなよ」

ナビィ「ありがとう……そうする」シュ……

リンクル「なんだろうこの部屋……」
リンクル「同じ絵がぐるっと……」

「ブルルルッ」

リンクル「馬……?」クルッ
リンクル「!!」シャキンッ

ガノンドロフ?「クックック……」

リンクル「ガノンドロフ! サリアを救って、森を元に戻してもらうわよ!」

ガノンドロフ?「出来るものならやってみろ……」フワッ

リンクル「浮いた……?」

ガノンドロフ?「尤も、万に一つもお前の勝ちはないがな!」バシュンッ

リンクル「うああーっ!?」バリバリバリ
リンクル「くっ……!」バシュッ

ガノンドロフ?「うおっ!?」
ガノンドロフ?「ぬぅ……!」シュウゥ……

リンクル「……!?」
リンクル「顔が……まさか、ガノンドロフに似せた、魔物!?」

ガノンドロフ?「クックック……バレてしまっては仕方がないな」ボゥ……

異次元悪霊 ファントムガノン

ファントムガノン「はいやっ」ズズズズ……

リンクル「絵に……!?」
リンクル「え、絵の中に消えていく……!」

190: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/11(日) 09:40:04.36 ID:YFOXpmXG0
ナビィ「……! Watch out! 反対側の絵!」

リンクル「はっ!?」

ファントムガノン「フハハハハッ!」バシュンッ

リンクル「きゃあああああっ!?」バリバリバリ
リンクル「う、くそーっ!」バシュッ

ファントムガノン「ハハハハハ……」ズズズズ

ナビィ「また絵に消えていった……!」

リンクル「くぅ……! どの絵から出てくる……!?」

ナビィ「見て! 今度はあの絵に写ってる!」

リンクル「よーし……!」

ファントムガノン「ぬぅん……!」ズズズズ

リンクル「やっぱり絵の出入りには少し時間がかかるんだ!」
リンクル「喰らえっ!」バシュッ

ファントムガノン「ぐおっ!?」
ファントムガノン「ぐぬぅ……少しはやるようだな」

リンクル「そんで今度は馬を降りて真っ向勝負ってわけ?」
リンクル「かかってきなさいよ!」バシュッ

ファントムガノン「ふんっ!」バキッ
ファントムガノン「小細工はなしだ! 直接叩き殺してくれる!」

191: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/11(日) 09:40:50.44 ID:YFOXpmXG0
ファントムガノン「はぁっ!」バシュンッ

リンクル「くっ……!」バッ
リンクル(引きずり出したはいいけど、宙に浮いてるんじゃ対抗出来ない!)

リンクル(剣が届かないのは勿論、クロスボウもそのまま撃っても弾かれちゃうし……!)
リンクル(一体どうすれば……!)

ファントムガノン「フハハハッ、どうした、手も足も出ないか!」バシュンッ

リンクル「っ……ええいっ!」バシンッ
リンクル「えっ……」

ファントムガノン「何っ!?」
ファントムガノン「小癪な!」バシンッ

リンクル「きゃあああっ!?」バリバリバリ
リンクル「っつぅ……!」

リンクル「な……何、今の……!?」ユラッ
リンクル(……今、あたし跳ね返したの!? あの魔法を!?)

ファントムガノン「ふん……次でとどめだ!」バシュンッ

リンクル「っ! てやぁっ!」バシンッ

ファントムガノン「効かぬわ!」バシンッ

リンクル「じゃあもう一度!」バシンッ

ファントムガノン「なっ!?」
ファントムガノン「ぐああああっ!?」バリバリバリ

リンクル「ちょっとはあたしの気持ちが分かったかしら!」
リンクル「これでとどめよっ!」ダンッ

ザンッ

ファントムガノン「グオォォォォォッ!?」
ファントムガノン「ば、バカな……この、俺が……ガノンドロフ様の、幻影であるこの俺が……!」

リンクル「はんっ、他愛ない! 所詮は幻影ね!」

ファントムガノン「うおおおおおおっ……!!」ズズズズズズ……

192: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/11(日) 09:41:23.04 ID:YFOXpmXG0
「小娘、中々やるな……」

リンクル「!」
リンクル「ガノンドロフ! どこから声が……!」

「ふむ……少しは腕を上げた、というわけか……」
「だが、貴様が倒したのは所詮俺の幻影に過ぎぬ……」

「俺と戦う時はこうはいかんと思え」
「……それにしても、不甲斐なき奴め」

ファントムガノン「ガ、ガノンドロフ様……申し訳ありません! どうかお情けを!」

「黙れ! 貴様のような役立たずは次元の狭間に消え去れい!」

ファントムガノン「うっ、うおあああああっ!!」

ズオオオッ……

リンクル「……消えちゃった」
リンクル「っ、そうだ! サリア!」

ポゥ……

メグ「よくぞ、やってくださいました」
メグ「森の館の幽霊四姉妹、己の非力をお詫びすると共に、心より感謝を申し上げます」

メグ「あなたが捜し求める少女、サリア様は森の賢者としてお目覚めになりました」
メグ「さぁ、こちらへ……」

リンクル「……うん」カツカツ

193: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/11(日) 09:42:23.78 ID:YFOXpmXG0
リンクル「……ここか」

「リンクル……」

リンクル「!」
リンクル「サリア!」

サリア「ありがとう、リンクル……」
サリア「お陰で、あたしは森の賢者として目覚めることが出来ました」

サリア「きっと、助けに来てくれると信じてたヨ……」
サリア「だって……」

リンクル「……そうよ、あたしは」

サリア「ううん、言わないで……」
サリア「あたしは森の賢者……時の勇者を支える、七人の賢者の一人」

サリア「もう同じ世界には住めないの……」
サリア「でも、またいつでもあの曲吹いて、サリアのこと思い出してネ……」ギュッ

リンクル「うん……」

サリア「リンクル……」チュッ

リンクル「んっ……」

サリア「サリアは、いつまでも……あなたの友達だからネ……」ポゥ……

リンクル「……うんっ」

197: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/12(月) 18:47:58.30 ID:YYGHpiR40
 ep.11 世界を救う旅


――迷いの森

ミド「!」
ミド「サ、サリアは!? お前、サリア見つけたんだろ!?」

リンクル「見つけたよ」
リンクル「でも、もう帰っては来られない」

リンクル「森の賢者としての役目がある……ってさ」
リンクル「これから森は元通りになってくよ、きっと」

ミド「な……! な、なんだよ、それ……」
ミド「森の賢者って、なんだよ……なんでサリアなんだよ……」

リンクル「……ごめんね」

198: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/12(月) 18:48:25.90 ID:YYGHpiR40
――コキリの森

ナビィ「村の中、魔物居なくなってるネ」

リンクル「邪悪な魔力が消えて、逃げ出したみたい」
リンクル「……さて」

ナビィ「……デクの樹様……」

リンクル「ただいま、デクの樹様」
リンクル「やっぱり、死んじゃったものは戻らないか」

ナビィ「……?」
ナビィ「ねぇ、リンクル、あれ何だろ?」

リンクル「?」
リンクル「うーん……芽、かな……?」

ボンッ

リンクル「うひゃああっ!?」

デクの子「僕、デクの樹の子供デス!」

199: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/12(月) 18:48:57.45 ID:YYGHpiR40
リンクル「デ、デクの樹様の子供……?」

デクの子「そうデス。君とサリアが森の神殿の呪いを解いてくれたお陰で生まれることが出来たデス」
デクの子「本当にありがとうデス!」

デクの子「昔の仲間達とはもう会ったデスか?」
デクの子「大きくなった君に、誰も気付かなかったデスね」

デクの子「もう知っていると思いますが、コキリ族はこの森に居る限り大人にならない民族……」
デクの子「7年経っても、外に出た君と違って子供のままデス」

デクの子「そして、これまた君はもう気付いているかもしれませんが、君はコキリ族ではありません」
デクの子「君は、本当は外で生まれた、ハイリア人なのデス!」

リンクル「……あたしが、ハイリア人」
リンクル「なんだ……あたし、結局ハイリア人だったんだ……」

デクの子「……デスが、君はただのハイリア人ではないデス」
デクの子「ある意味で、君はコキリ族とも言えるのデス」

リンクル「……どういうこと?」

デクの子「普通のハイリア人は、この森では暮らせません」

ナビィ「森に長く居過ぎると、正気を失って魔物になっちゃうんですよね」

デクの子「その通りデス」
デクの子「では、何故君は魔物にならなかったのか……そのお話を今聞いてもらうデス」

200: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/12(月) 18:49:43.89 ID:YYGHpiR40
デクの子「まだハイラル王がこの国を統一する以前……」
デクの子「激しい戦争があったデス」

デクの子「その戦乱の最中、ハイラル王に仕える、一人の騎士の妻と赤ん坊がこの森へ逃げ込んできました」
デクの子「本来なら禁断の森とされるこの森へ逃げることはとんでもない愚行デスが……」

デクの子「実は、その騎士は、この森に暮らすことをデクの樹に認められた数少ないハイリア人だったのデス」
デクの子「騎士の妻は、この森の奥にある騎士の別邸を目指していました」

デクの子「しかし、深手を負ったまま迷いの森を抜けることは叶わず、デクの樹に赤ん坊の命を託したのデス」
デクの子「デクの樹はその子を見た時、世界の未来に関わる運命を感じ、受け入れる決意をしたのデス」

デクの子「母親が息を引き取った後、赤ん坊はデクの樹の加護を受けてコキリ族として育てられました」
デクの子「それが君なのデス」

リンクル「……そう。取り敢えず、あたしがハイリア人の中でも大分変わってるのってことは分かったよ」

デクの子「……違和感に気付かないデスか?」

リンクル「何の?」

デクの子「さっき言った激しい戦争……ハイラル統一戦争は、もう30年も前のお話デス」
デクの子「よく考えなくても、君は7年前の段階で既に大人になっていた筈デス」

リンクル「え……?」
ナビィ「い、言われてみれば……」

201: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/12(月) 18:50:32.77 ID:YYGHpiR40
デクの子「……君は、実はこの森で10歳の身体のまま10年以上を過ごしていたのデス」
デクの子「デクの樹の加護を受けた、とはそういうことデス」

デクの子「コキリ族はある程度まで成長すると、そこから成長が止まり、永遠に年を取りません」
デクの子「ハイリア人の君はそれと同じように過ごす為に、デクの樹の加護を受けました」

デクの子「……尤も、コキリ族自体も森から出ればハイリア人と同じように年を取ってしまうのデスが」
デクの子「兎に角、君はいずれこの森を出て行く運命だったのデス」

デクの子「このことを伝えるのが、僕の役目でした」
デクの子「そして、君にはこれからやらねばならない使命があるのデス」

リンクル「ハイラルを救え、って?」

デクの子「そうデス! 君には、その力があるのデス」

リンクル「……そう」
リンクル「ありがとね、色々教えてくれて。じゃあ、あたし達もう行くよ」

デクの子「君の運命は多くの苦難に出会う過酷なものでしょうが、それを恨んではいけないデス」
デクの子「時の勇者として、ハイラルを救うのデス」

リンクル「……」タッ

202: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/12(月) 18:51:26.01 ID:YYGHpiR40
ナビィ「リンクル、待ってヨ!」

リンクル(勝手なことばっかり!)タタタタッ
リンクル(ほんとはハイリア人? ハイリア人の中でも変わり種? 半分コキリ族みたいなもん?)タタタタッ

リンクル(結局あたし自身が何者なのか、さっぱり分からないのに、時の勇者だなんて!)タタタタッ
リンクル(ハイラルを救う力って何!? 過酷な運命を恨むな!? なんであたしなの!?)タタタタッ

リンクル(冗談じゃない! 冗談じゃない!!)タッタッタ
リンクル「冗談じゃないっ!! 時の勇者なんて!!」ザシッ

リンクル「コキリ族だと思って育ったのに、突然ハイリア人の変わり種なんて言われて!」シャキンッ
リンクル「突然7年も眠らせて、体だけ大人にして! こんなものっ!」ブンッ

ガランッ ガランガランッ

ファイ(石に当たりました。ちょっと痛い)

リンクル「誰が! 誰が決めたのよっ! 選ばれたくなんかなかったのにっ!!」
リンクル「なんであたしがっ! こんな……こんなことに……っ!!」

ナビィ「リンクル……」

リンクル「ふーっ……ふーっ……!」

203: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/12(月) 18:52:07.51 ID:YYGHpiR40
リンクル「……」

ナビィ「……リンクル、落ち着いた……?」

リンクル「……ごめん、ナビィ、取り乱した」
リンクル「さっきのは忘れて。大丈夫だから」

ナビィ「ううん……あんな風に言われたら、誰だって混乱するヨ」

リンクル「ファイもごめんね? いきなり投げたりして」スッ

ファイ「いいえ、マスター。心配には及びません」
ファイ「ファイが知り得る中でも、あなたの生い立ちは相当に酷なものであると断言出来ます」

ファイ「あなたが混乱するのも当然のことです。自棄になっていてもおかしくはありません」
ファイ「しかし、あなたは未だそうなっていません」

ファイ「ここで全てを投げ出したりせずに旅を続ければ、何か良いことに巡り合えるかもしれない、と」
ファイ「マスター自身が、心のどこかで思っているものと推測されます」

ナビィ「だから……一緒に乗り越えていこ? ナビィはいつも一緒だヨ」

リンクル「……ありがとう」
リンクル「行きましょ。ハイラルを救わなきゃ」

204: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/12(月) 18:53:01.42 ID:YYGHpiR40
――カカリコ村

リンクル「エポナが居ると平原もあっという間ね」
リンクル「ありがとう、エポナ」ナデナデ

エポナ「ブルルルッ」

コッコ「コッコッコッコッコッコ」

リンクル「こっこっこっこっこっこー」

ナビィ「またコッコのお姉さんとこのコッコかな?」

リンクル「んー、どうだろ? この前来た時に見かけたのとは違うみたいだけど」

「……お前は……もしやリンクルか?」

リンクル「?」
リンクル「あたしのこと知って……あーっ!」

インパ「久しぶりだな」
インパ「いくらか噂を耳にし、もしやとは思っていたが……」

リンクル「噂?」

インパ「ああ、村の者がな……」
インパ「緑の服に緑のフード、剣とクロスボウを持った旅人の少女など、お前以外にそうそう居るまい」

リンクル「あー、やっぱり目立つかなぁ、このカッコ」

インパ「勇者らしくて良いと思うぞ」

ファイ(当然です。今のマスターの服装は前のマスターと殆ど同じですから)

インパ「それにしても……ついにその剣を手に入れたのか」

リンクル「7年も前のことだけどね」
リンクル「……そうだ。インパさん、お願いがあるの。いい?」

インパ「何だ?」

リンクル「また剣術の稽古をつけてほしいの」

205: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/12(月) 18:55:09.98 ID:YYGHpiR40
――それから数日

カァン キキィン ガキンッ

リンクル「ふっ、はっ、たぁっ!」

インパ「……ふむ、良い太刀筋だ……だが」ガンッ キンッ ガキンッ
インパ「脇が甘い」ドンッ

リンクル「ぁいぃっ!?」
リンクル「いったぁ……!」

インパ「以前も言ったが、お前には剣士としての非常に優れた才能がある」
インパ「まだまだ技術は粗削りだが、鍛えれば必ず化けると私は確信している」

リンクル「……その“才能”って、具体的には何なの?」

インパ「む、そう来るか。まぁ良かろう」
インパ「いくつもあるが、一つ挙げるならば、覚えの良さだろう」

インパ「どうもお前は王家の騎士の剣術の呑み込みが異様に早い。更には私のシーカー流剣術も吸収しつつある」
インパ「それどころか、お前自身の先天的な身体能力の高さから、独自の進化を遂げる気配すら感じるよ」

インパ「数時間前の時点で基礎的な剣術は出し切った」
インパ「あとはもう少し高度な剣術とシーカー流だけだが、それも見せる度に覚えていくだろう」

インパ「はっきり言って異常だ。普通はもっと長い時間をかけて身につけるものだからな」
インパ「才能としか言いようがない」

リンクル「ただ真似してただけなんだけどね……」

インパ「普通の者はそれが出来ない。私もこれらの技術を身につけるには相当な時間を要した」
インパ「だがお前はそれらをあっという間に身につけてしまう。羨ましい限りだ」

リンクル「……みんな当たり前に出来るもんだと思ってたわ」

インパ「フフ……この場に王家の騎士達が居なくて良かったな」
インパ「彼らが居たら、お前は次々と決闘を申し込まれていたところだ」

リンクル「あ、あはは……流石にそれは嫌かなぁ」

206: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/12(月) 18:55:55.38 ID:YYGHpiR40
インパ「……それにしても、お前を見ていると奴を思い出すな」

リンクル「奴?」

インパ「統一戦争の時、先程お前が言ったことと同じことを言った男が居たんだ」
インパ「王家に仕えた騎士の一人だったが、お前と同じように、見た技術をいとも簡単に身につけて見せてな」

インパ「何故そんなことが出来るのかと聞くと“みんな当たり前に出来ると思っていた”と」
インパ「懐かしいな」

リンクル「……そう」
リンクル「その騎士さんは?」

インパ「統一戦争で命を落とした。何十年も前の話だ」
インパ「奴には妻と娘が居たが、屋敷が焼かれて使用人とも兵士ともつかない遺体が多くてな……」

リンクル「……」
リンクル「……もう一本、お願いします!」スクッ

インパ「よし、来い」

207: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/12(月) 18:56:39.87 ID:YYGHpiR40
リンクル「はっ! たぁっ! えぇいっ!」バシュッ バシュッ バシュッ

カカシA「グワーッ」

カカシB「オワーッ」

大カカシ「アイエエエエッ」

ナビィ「すごーい! 今の動きなら敵に囲まれても一網打尽だネ!」

インパ「ふむ、二挺クロスボウも随分使いこなすようになったな」

リンクル「やっぱり剣よりこっちのがしっくりくるの」
リンクル「ごまだれー」チャキンッ

ファイ「二挺クロスボウも結構ですが、今後の為に剣術の鍛錬を推奨します」

ナビィ「剣がクロスボウに嫉妬してる」

208: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/12(月) 19:01:33.56 ID:YYGHpiR40
――また数日後

インパ「粗方の技術は見せてみたが……お前には驚かされるばかりだ」
インパ「ハイリアの盾も、随分使いこなせるようになったな」

リンクル「……ありがとう」

インパ「最早教えることはない……とは言い難いが、あまり時間を取っていて良い状況でもない」
インパ「これから強大な敵と出会うだろうが、その都度自分の技術と勇気を思い出せ」

インパ「まぁ、少なくとも、城の衛兵くらいではもう相手にならないだろうな」
インパ「それが魔物どもにどの程度通用するかは兎も角、お前ならば大丈夫のような気がするよ」

インパ「ここ数日は技の多彩さより個々の技の質を高めることに集中した」
インパ「何度も言うが、お前の技の多くはまだ真似っこだ。もう少し技を自分のものとするように」

インパ「そうだな……お前にこの言葉を教えておこう」
インパ「勇なき剣に、力は宿らぬ。勇を成し、力を得んとすることは、即ち力を得、勇を成すことだ」

リンクル「うーんん? えーと?」

インパ「正解はない。何が勇で何が力か、お前なりの答えを見つけ出すがいい」
インパ「今は取り敢えず、その言葉だけ覚えておけ」

リンクル「……勇なき剣に、力は宿らぬ……」
リンクル「うん、分かった。ありがとね」

209: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/12(月) 19:03:15.63 ID:YYGHpiR40
――デスマウンテン登山道

インパ「クロスボウのボルトはいいのか?」

リンクル「うん、水と食糧だけでいい」
リンクル「ボルトはちょくちょく自分で作ってるから」

インパ「そうか」
インパ「次の目的地はデスマウンテンか?」

リンクル「うん」
リンクル「ずーっと気になってたんだよね」

リンクル「明らかに様子がおかしいじゃん」
リンクル「7年後に来てからずっとそう。何か……見るからに嫌な感じ」

インパ「そうだな……ここ最近ゴロン達が村へ下りてこなくなった」
インパ「ゴロンシティにも行って様子を見てみてくれ」

リンクル「最初からそのつもりよ」

210: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/12(月) 19:03:59.20 ID:YYGHpiR40
――ゴロンシティ

リンクル「んー、あんまり様子が変わった感じは……」
リンクル「……んん?」

ナビィ「変だネ……? 誰も居ないヨ?」

リンクル「一体何が……あ、いや、誰も居ないわけじゃないみたい」

ナビィ「?」

リンクル「ほら、聞こえない?」

ナビィ「んーと……」

……ゴロゴロゴロゴロ

ナビィ「……あっ! ほんとだ!」
ナビィ「何か転がってくるよ!」

ゴロゴロゴロ

リンクル「ちっちゃいゴロン……多分ゴロン族の子供ね」
リンクル「おーい! おぉーい!!」

ゴロゴロゴロ

リンクル「っ、危なっ!」バッ

ゴロゴロゴロ……

ナビィ「止まる気配がないネ……」

リンクル「おい止まれそこの小僧!」バシュッ
ナビィ「それお城の兵士の台詞!?」

ドカーン

「コロー!?」

リンクル「まったく……どんな躾受けてんのよ」ツカツカ

211: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/12(月) 19:04:29.13 ID:YYGHpiR40
ナビィ「爆弾ボルトは流石にやり過ぎだったんじゃない……?」

リンクル「平気じゃない? あの7年前に案内してくれたゴロンは爆風に巻き込まれても平然としてたし」

ナビィ「そういうもんかなぁ……」

「よくもやったなコロ! ガノンドロフの手下めー!」

ナビィ「ほら、変な勘違いされた……」

リンクル「違うわよ! 言っても止まらないのが悪い!」

「何だとー!? オラの名前を聞いて驚け!」
「オラはゴロンの勇者、リンクルだコロー!」

リンクル「え……?」
リンクル「……あー、あのさ、あたしリンクルっていうんだ」

リンクル(ゴロン)「へっ!?」
リンクル(ゴロン)「お前もリンクルっていうコロ?」

ナビィ「えぇ。あなたと違って女の子だけどネ」

212: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/12(月) 19:05:24.28 ID:YYGHpiR40
リンクル(ゴロン)「も、もしかして、7年前、ドドンゴの洞窟を制圧したっていうスーパーハイリア人……!?」

リンクル「スーパーハイリア人!?」

リンクル(ゴロン)「あの伝説のドドンゴバスター、リンクル!?」

リンクル「え、何それ初耳なんだけど!? そんな風に呼ばれてんのあたし!?」

リンクル(ゴロン)「オ、オラのとーちゃん、ダルニアだよ! 覚えてる?」

リンクル「お、覚えてるけど……」
リンクル「ちょっと、さっきのスーパーハイリア人とかドドンゴバスターとか何!? そっち教えて!?」

リンクル(ゴロン)「詳しくは知らないコロ。でもオラはずっとそう言われて育ったコロ」
リンクル(ゴロン)「オラ達でもドドンゴやっつけるのは難しいのに、ハイリア人はもっと難しいに決まってるコロ」

リンクル(ゴロン)「でもリンクルはハイリア人の、しかも子供なのにドドンゴいっぱいやっつけたコロ」
リンクル(ゴロン)「だからリンクルはハイリア人はハイリア人でも、スーパーハイリア人だコロ!」

リンクル「ええー……なんかやだなぁ、そんな宇宙の戦士に匹敵する地球人みたいなの……」

リンクル(ゴロン)「オラの名前、とーちゃんがリンクルの勇気にあやかってつけたんだコロ」
リンクル(ゴロン)「オラもこの名前気に入ってるコロ」

リンクル(ゴロン)「リンクルはオラ達ゴロンにとってえーゆーコロ! 会えて嬉しいコロ!」
リンクル(ゴロン)「サインしてほしいコロ! ゴロンのリンクル君へって書いてほしいコロ!」

リンクル「ああ、はいはい……」
リンクル「そんなことより、他のゴロン達はどうしたの?」

リンクル(ゴロン)「あ……そういえば本物のリンクルに会えた喜びで忘れてたコロ……」
リンクル(ゴロン)「みんなを助けてほしいコロ!」

216: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/13(火) 20:08:07.55 ID:OERFNoK80
 ep.12 炎の賢者


――デスマウンテン火口

リンクル「うえぇ、落ちたら怪我じゃ済まないよね、あれ……」

ナビィ「高さもそうだけど、下は溶岩だからね」

リンクル「熱もすごい……ゴロンの服がなかったら熱だけで死んじゃいそうだよ」
リンクル「こんなところゴロン族は平気で入れるんだねぇ……」

ナビィ「多分魔物も結構居る筈だよ、炎の神殿には」

リンクル「やっぱり魔物も燃えてるのかなぁ」
リンクル「それにしても、邪竜ヴァルバジアだっけ?」

ナビィ「うん」

リンクル「ドドンゴといいヴァルバジアといい、よく食べられるねゴロン族って」

ナビィ「食べる以外にゴロン族やっつける方法がないんじゃない?」

リンクル「あー……ありそう」
リンクル「しかし、肝心の炎の神殿が見つからないわけだけど……」

ザッ

リンクル「あら、あれは……」

217: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/13(火) 20:08:47.44 ID:OERFNoK80
リンクル「シーク。そんな格好で熱くないの?」

シーク「……平気だよ」
シーク「時を越えて育まれしもの……真実の友情は時を経て、より強き絆となる……」

シーク「その熱い心はやがて正しき者の力となり、進むべき道を照らすであろう……」
シーク「炎の神殿はこの先だ。門が見えるだろう?」

リンクル「あー……あれかな? あれっぽい?」
リンクル「あの橋渡らないといけないのかぁ……」

リンクル「ま、いいや。ありがとね、シーク」クルッ
リンクル「……あれ? シーク?」

ナビィ「居なくなっちゃったネ……」

リンクル「もう、いっつもいつの間にか居なくなっちゃうんだから」