【ゼルダの伝説】リンクルが時の勇者になるようです 前編

218: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/13(火) 20:09:20.55 ID:OERFNoK80
――炎の神殿

リンクル「へぇ、なんだか不思議な雰囲気……」

ファイアキース「キィキィキィキィ」バサバサバサ

リンクル「うるさいっ」ザンッ

ファイアキース「キャアアアッ」

リンクル「剣もあっついや」

ファイ「ヒルトだけでも熱を下げた方がよろしいですか?」

リンクル「いや、いい」

ナビィ(ていうかそんなこと出来るんだ……)

219: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/13(火) 20:10:07.22 ID:OERFNoK80
リンクル「うわぁ、ここも溶岩いっぱいだ」
リンクル「……あれっ、向こう岸に居るのは……」

「そこに居るのは……リンクルか?」
「おお、リンクルだゴロ! 久しぶりだなぁ!」

リンクル「ダルニア! 久しぶり!」
リンクル「ちょっとあれどういうことよ、スーパーハイリア人とかドドンゴバスターとか!」

ダルニア「ああ、あれか? すまねぇ、ドドンゴの洞窟の件が嬉しくってよ、つい話が大きくなっちまったゴロ!」

リンクル「お陰であんたの子供に言われてびっくりしたわよ!」

ダルニア「何、俺の息子に会ったのか!? あいつ、ちゃんと隠れてたか!?」

リンクル「転がってた! 爆弾でもぶっつけないと止まらなさそう!」

ダルニア「何!? あいつめ、ちゃんと隠れとけって言ったのに……」
ダルニア「まぁ、いい」

ダルニア「リンクル! 暫く会わねぇ間に大きくなりゃあがって!」
ダルニア「昔話に花でも咲かせてぇとこゴロが、そうも言ってられねぇ!」

ダルニア「ガノンドロフの野郎、太古の邪竜ヴァルバジアを復活させちまいやがった!」
ダルニア「おまけに他の部族への見せしめだと抜かしやがって、俺の仲間達を邪竜の餌に……」

リンクル「あんたのとこのリンクルから聞いた!」
リンクル「ヴァルバジアは本調子が出るまでここで力を溜めてるって!」

ダルニア「ああ! 奴がここから出ちまったら、ハイラル中が焼け野原だ!」
ダルニア「それだけはなんとしても避けなきゃならねぇ!」

リンクル「分かってる! でも邪竜を倒すにはでっかいハンマーが要るんでしょ?」
リンクル「あたしは神殿を回ってゴロン達を助け出すから、ダルニアはハンマーを取ってきて!」

ダルニア「分かった! 恩に着るぜ、兄弟!」
ダルニア「行くぞ! 作戦開始だ!」

220: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/13(火) 20:10:44.02 ID:OERFNoK80
ナビィ「リンクル! あそこに牢屋があるヨ!」

リンクル「ん、分かった」

赤バブル「ヘッヘッヘ、カンタンニトオストオモウカ」

リンクル「邪魔!」バシュッ

赤バブル「グヘェッ」

リンクル「このスイッチね……よっと」ガコン

ガラガラガラガラ

ゴロン「お、こ、これ逃げていいゴロ?」
ゴロン「ありがとうゴロ! 助かったゴロ!」

リンクル「どういたしまして」

221: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/13(火) 20:11:18.33 ID:OERFNoK80
リンクル「うーん、バラバラに閉じ込められてるみたいね。ほんと神殿全体回る必要がありそう」
リンクル「はい、開けたよ」

ガラガラガラガラ

ゴロン「あ、ありがとうゴロ!」
ゴロン「……ん? もしかしてお前あの時のドドンゴバスターのお嬢ちゃんゴロ?」

リンクル「あ、もしかして色々案内してくれたゴロン?」

ゴロン「そうだゴロ。あの時に引き続き、今回も助けてくれて、何とお礼を言ったらいいか分からんゴロ……」

リンクル「いいのよ、お礼なんて」
リンクル「……あ、そうだ! あなたこの神殿の構造分かる?」

ゴロン「大体は分かるゴロ」

リンクル「良かった! 他のゴロン達が閉じ込められてる場所の見当つくかな?」

ゴロン「おう、オラ達を閉じ込められる檻なんてそうそうないからすぐ分かるゴロ!」

リンクル「じゃ、また案内お願いしていい?」

ゴロン「お安い御用だゴロ!」

222: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/13(火) 20:12:13.06 ID:OERFNoK80
リンクル「大分助け出せたね」

ゴロン「本当に良かったゴロ……」
ゴロン「やっぱりお前はスーパーハイリア人だゴロ!」

リンクル「それやめてくんない!?」

「ククク、スーパーハイリア人か、面白い」

リンクル「面白くない!」
リンクル「……って、誰?」

ゴロン「き、気をつけるゴロ!」
ゴロン「これは……オラ達を見張ってたガノンドロフの手下の声だゴロ!」

リンクル「えっ!?」
リンクル「どこに居るの!?」

「ハハハハ、ここだ!」ダンッ

リンクル「おっと!」バッ
リンクル「炎の中から……!」

223: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/13(火) 20:13:56.32 ID:OERFNoK80
フレアダンサー「我が名はフレアダンサー!」
フレアダンサー「時の勇者よ、我が炎の舞いで踊り狂い、焼け死ぬがいいわ!」クルクルクル

リンクル「踊り出し……うわっ!」バッ
リンクル「くっ、リーチが違い過ぎる! 剣が届かない!」

フレアダンサー「ハッハッハ! 踊れ踊れぇ!」シャアアアアッ

リンクル「ひっ! あちっ、滑り出した!?」バッ

ナビィ「動きも速い! 剣じゃ勝負出来ないヨ!」

フレアダンサー「ハーッハッハ! 時の勇者もこれまでだな!」シャアアアアアッ

ゴロン「ふんっ!」ドコォッ

フレアダンサー「ぐほぉっ!?」ボヒュンッ

ゴロン「なんだ、炎はただの見せかけだゴロ!」

ナビィ「あの中心の小さいのが本体だったんだ!」

フレアダンサー「げぇっ! 火が吹っ飛ばされちまった! なんて馬鹿力だ、ゴロン野郎め!」
フレアダンサー「……ハッ!」

リンクル「……」スッ

フレアダンサー「ひいいいっ! お助けぇーっ!!」ダッ

リンクル「逃がすかぁっ!!」ダッ

224: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/13(火) 20:14:35.90 ID:OERFNoK80
フレアダンサー「」

リンクル「ったく」
リンクル「ダルニアはハンマー見つけたかな」

ゴロン「ダルニアのアニキとはもう会ったゴロね?」
ゴロン「お前とアニキが揃えば向かうところ敵なしゴロ!」

リンクル「だといいんだけど」
リンクル「牢屋の心当たりはあといくつ?」

ゴロン「次で最後ゴロ」

リンクル「ん」

ゴゴゴゴゴゴゴ

リンクル「うわっ、な、何!? 地震!?」

ゴロン「こ、この揺れは……まさか……!」

「グオオオオオオオオオッ!!」

ドドオッ

リンクル「溶岩から何か出てきた!」

225: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/13(火) 20:15:30.20 ID:OERFNoK80
灼熱穴居竜 ヴァルバジア

ヴァルバジア「グオオオオオオッ!」

リンクル「なぁっ!? り、竜だぁーっ!?」

ゴロン「ひえーっ! 邪竜ゴロー!」ゴロゴロゴロ

リンクル「予想より早いよ!」
リンクル「飛んでる!? 飛べるのか邪竜!?」

ヴァルバジア「グオオオオオオオオッ!!」ボオオオッ

リンクル「うわああああっ! 火噴いてきたぁーっ!」バッ

ヴァルバジア「グオオオオッ!」ズズズズ

リンクル「よ、溶岩に潜ってった……!」
リンクル「空飛ぶわ火噴くわ、一体どうすりゃいいのよ!」

ナビィ「じ、弱点なんて分かんないヨー!」

ヴァルバジア「グオオアアアアッ!」バアッ

リンクル「ま、また出てきた!」

ゴロン「あ、危ない! 喰われるゴロ!」

リンクル「ええい、喰らえ!」バシュッ バシュッ

ヴァルバジア「グオオオオッ!!」

リンクル「だあああっ危ないっ!」バッ
リンクル「駄目! 城のボルトも通用しない! 鱗に弾かれた!」

ナビィ「やっぱりダルニアがあのハンマー持ってこないと勝てないのかな……」

リンクル「それならそれまでここで時間を稼ぐのみよ!」
リンクル「絶対外には出させない!」バシュッ

ドカーン

226: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/13(火) 20:16:38.57 ID:OERFNoK80
ドカーン ドカーン

リンクル「っ……!」

ゴロン「リ、リンクルー! もう無茶だゴロ!」
ゴロン「いくらお前でも、爆弾も通用しない奴にこれ以上は……!」

リンクル「はぁ……はぁ……そんなの、やんなきゃ分かんないでしょ……!」チャキンッ
リンクル(とは言ったものの……)

リンクル(爆弾ボルトは使い切ったし、城のボルトも残り少ない……)
リンクル(でも、森のボルトが通るとは思えない!)

ヴァルバジア「グオオオオオッ」バクンッ

リンクル「っ!」バッ
リンクル「このっ!」バシュッ

ヴァルバジア「ギャアアッ!」グオンッ

リンクル「……はっ……!?」
リンクル「さ、刺さった……!? ナビィ!」

ナビィ「隙間だヨ! 鱗の隙間!」

リンクル「成程、あそこなら刺さるのね……!」

ナビィ「で、でも、狙って当たるようなものじゃ……!」

「おおおおおおおおおおっ!!」

ヒュルルルル ドゴォ

ヴァルバジア「グギャアアアアッ!?」グラグラ

リンクル「!?」

ドボーン

リンクル「あのヴァルバジアがふらついて溶岩に……!?」
リンクル「一体何が降ってきて……!」

227: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/13(火) 20:17:17.82 ID:OERFNoK80
ダルニア「待たせたな、兄弟!」

ゴロン「ダルニアのアニキ!」

リンクル「ダルニア!」
リンクル「それが伝説のハンマー?」

ダルニア「おう! 神殿のてっぺんにあってよ、ちょいとばかり時間かかっちまったゴロ!」

リンクル「遅いよ、ばかっ! もう少しで消し炭になるとこだった!」

ダルニア「へへっ、悪ィ、悪ィ!!」

ヴァルバジア「グルルルル……!」ズズズズズ

リンクル「っと、上がってきた……」

ダルニア「ヴァルバジア、おめえ……このハンマーを覚えてるようだな?」
ダルニア「太古の昔、おめえを叩き潰したハンマーだゴロ」

ダルニア「もう一度! あの時おめえを叩き潰したこいつの使い手の子孫であるこの俺が!」
ダルニア「おめえを叩き潰すからな!」

リンクル「行くよっ!」

228: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/13(火) 20:18:18.42 ID:OERFNoK80
リンクル「城のボルトはこれで看板よ!」バシュッ バシュッ

ヴァルバジア「グオオオオッ!」ボオオッ

リンクル「やっぱり鱗の隙間なんか狙って当たるところじゃないか!」バッ
リンクル「けど……高度を下げたわね!」シャキンッ

ダルニア「オラァッ、こっち向けっ!」ドゴォ

ヴァルバジア「ギャアアアアッ!」ボオオオッ

ダルニア「ふんっ! 俺達ゴロンにゃ火なんぞ屁でもねぇ! そらもうちょっとこっちだ!」ドゴォ

ヴァルバジア「グアアアアッ!」

ダルニア「怯んだぞ! リンクル!」

リンクル「はああああっ!!」ダンッ

ザンッ

ヴァルバジア「ガッ」

ナビィ「上手い! やっぱり鱗の隙間なら剣だって通るんだ!」

ドンッ

ゴロン「うひゃああ、邪竜の頭が落ちてきたゴロ!」

リンクル「っと……!」タンッ

ヴァルバジア「グ、オ、ア、オオ……」

リンクル「……!」ジリッ

ヴァルバジア「……ォ……」
ヴァルバジア「」

ナビィ「……死んじゃったみたい」

リンクル「……、はぁっ……」ドサッ

ダルニア「おっと、疲れちまったか?」
ダルニア「やったな、兄弟!」スッ

リンクル「……ええ!」ガシッ

229: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/13(火) 20:18:48.46 ID:OERFNoK80
――カカリコ村

屋根の上の男「なんだかデスマウンテンの様子が変だけど、なんだろうなぁ」
屋根の上の男「あの山のお陰で毎日天気悪いから、日向ぼっこも微妙なんだよなぁ」

ゴゴゴゴゴゴ
ドゴォォォン

屋根の上の男「ファッ!?」
屋根の上の男「ななな何事だぁ!? いよいよ噴火するのかあの山!?」

ズオオオオオオ……

屋根の上の男「な、な、な、ど、ど、どうなるってんだよ!?」

ォォォ……

屋根の上の男「……晴れた……」
屋根の上の男「……日向ぼっこ日和だ……」

230: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/13(火) 20:19:26.80 ID:OERFNoK80
――炎の神殿

ダルニア「……おっ?」

リンクル「ダルニア?」

ダルニア「成程な、そういうことか……」
ダルニア「兄弟!」

リンクル「うん」

ダルニア「ありがとうよ! 一族を代表して礼を言うぜ!」
ダルニア「おめえには助けられっぱなしだな」

ダルニア「だけど、今度は俺がおめえを助ける番だ」
ダルニア「まさかこの俺が炎の賢者サマだとはな……」

リンクル「じ、じゃあ、ダルニア……」

ダルニア「笑っちまうぜ、なぁ兄弟!」
ダルニア「まぁ、これも運命ってやつだ……」

ダルニア「ここで俺が封印の手伝いをやることでおめえの助けになるってんならこれほど嬉しいことはねぇよ」
ダルニア「忘れんなよ、おめえと俺は本当の兄弟姉妹だゴロ!」ポゥ……

リンクル「……うんっ」
リンクル「ありがとう、ダルニア」

237: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/15(木) 20:41:09.52 ID:sP8aVzAM0
 ep.13 凍てつく洞窟と水底の神殿


――ハイリア湖畔

リンクル「広き湖、って言うからここだと思って来てみたけど……」
リンクル「なーんだこりゃ」

ナビィ「殆ど干上がっちゃってるネ……」

リンクル「んー……あ、そういえばあそこゾーラの里に通じる水路だったよね」
リンクル「確かこの門のところ……なんだこれ」

ナビィ「氷……みたいね。変だよ、凍るような季節じゃないし、この気温じゃ普通は溶けちゃう」

リンクル「うーん……そうだ」
リンクル「取り敢えず、みずうみ研究所に行って話を聞いてみよっか。博士なら何か知ってるだろうし」

238: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/15(木) 20:41:47.29 ID:sP8aVzAM0
――ハイリア湖畔 みずうみ研究所

リンクル「こんにちはー」

みずうみ博士「おや? その緑装束に妖精とクロスボウ……」
みずうみ博士「もしやいつぞやのお嬢ちゃんか?」

リンクル「はい、お久しぶりです! 覚えててくれたんですね!」

みずうみ博士「覚えておるとも。大きくなったのぅ」

リンクル「えーと、それで……」

みずうみ博士「ああ、言われんでも分かるぞ」
みずうみ博士「このハイリア湖が一体何故こんなことになっとるのか、じゃろう?」

リンクル「はい! なんでこんなに水が減って……?」

みずうみ博士「詳しいことはワシにもよく分からんがな……」
みずうみ博士「このハイリア湖の水源はゾーラの里……もっと言えばその奥の泉じゃ」

みずうみ博士「水路の方はもう見たかの? 凍っておったじゃろう?」
みずうみ博士「ゾーラの里に何かあったのかもしれん」

リンクル「ゾーラの里……」
リンクル「分かりました。行ってきます!」

みずうみ博士「気をつけてな」

239: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/15(木) 20:42:22.33 ID:sP8aVzAM0
――ゾーラ川

リンクル「お疲れ、エポナ」
リンクル「暫くここで待っててね」ナデナデ

エポナ「ヒヒィン」

リンクル「さて、と……」
リンクル「……川の様子はあんまり変わりないけど……」

リンクル「……んん?」
リンクル「ナビィ、なんか肌寒くない?」

ナビィ「言われてみれば……気温が低いみたい?」

リンクル「季節じゃないよね?」
リンクル「やっぱり何かあったのかな……」

240: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/15(木) 20:43:24.67 ID:sP8aVzAM0
――ゾーラの里

リンクル「な、何これ……!?」

ナビィ「ゾーラの里が……氷に覆われてる……!?」

リンクル「どうしてこんなことに……」
リンクル「……! ナビィ! 下!」

ナビィ「氷の中にゾーラ族が……お、大勢居るヨ!?」
ナビィ「で、でも生命力は全然……」

「誰か居るのか!?」

リンクル「!」シャキンッ

ゾーラ「一体何者だ……って、君は」
ゾーラ「ハイリア人かい? よく来てくれた!」

リンクル「良かった……誰も居ないかと思ったよ」

ゾーラ「あー……いや、間違ってはないよ」
ゾーラ「生き残ったのは僕含め陸の上に居た数人だけだ……」

リンクル「……何があったの?」

ゾーラ「分からない……僕は観光客向けの店をやってて、陸の上で仕事をしてるんだ」
ゾーラ「だからあんまり詳しくは知らないんだけど、数日前急に里の水が凍り出したらしくてね」

ゾーラ「兵士達が何やら泉の方へ集められてたらしいけど、その間にもどんどん凍っていって……」
ゾーラ「多くの仲間が陸に避難できないまま、この有様さ」

ゾーラ「少しずつ頑張って融かしてるんだけどね、凍るスピードの方が早くて……」
ゾーラ「ルト姫も行方不明だし、一体どうしたらいいんだ……」

リンクル「そんな、ルトまで……」
リンクル「あっ、キングゾーラは?」

ゾーラ「キングゾーラ様は……」
ゾーラ「……玉座に行ってみるといい。説明が難しい」

リンクル「分かった。ありがとね」

241: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/15(木) 20:44:06.91 ID:sP8aVzAM0
――ゾーラの里 玉座

リンクル「なっ……キングゾーラまで!?」

ナビィ「この氷……変だよ」
ナビィ「すごく、嫌な魔力を感じる……」

リンクル「不思議な……赤い氷……」

ゾーラ「む……ハイリア人か」

リンクル「ゾーラの兵隊さん」

ゾーラ「ご覧の通り、我らがゾーラの里は氷漬けだ」

リンクル「原因は分からないの?」

ゾーラ「分からない……少し前にジャブジャブ様が急に居なくなって……」
ゾーラ「それから猛烈な冷気が里を襲った。恐らく根源は氷の洞窟だろうが……」

リンクル「氷の洞窟?」

ゾーラ「泉の隅にある洞窟だ。ハイリア人が何度か調査に行ったが、変わった魔力が漂う場所らしい」
ゾーラ「私も一度だけ入ったことがあるが、今の里のような、凍てつくような寒さだった」

リンクル「……分かった。ちょっと行ってみるよ」

ゾーラ「ああ……だが、気をつけろ」
ゾーラ「我々もこの異変が起きてから、十数人の兵を送り込んだが、未だ誰一人として帰ってきていない」

リンクル「……」ゴクリ
リンクル「……その前に、何か暖かい服欲しいな。なんかお腹痛いし」

242: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/15(木) 20:44:42.76 ID:sP8aVzAM0
――翌日 氷の洞窟

リンクル「よーし、これなら寒くない!」

ナビィ「お腹は大丈夫?」

リンクル「昨日ほど酷くないよ」
リンクル「ファイ、ありがとね、色々教えてくれて」

ファイ「いいえ、当然のことです」
ファイ「またお困りのことがあればいつでもお呼びください」

リンクル「うん」

ナビィ「どうでもいいけどあの玉座に居たゾーラの兵士さん女の人だったんだネ……」

リンクル「あの人お腹痛いって話したら妙に優しくなったよね……」
リンクル「しかしここは一段と寒いなぁ……」

ナビィ「ほんとにネ……」

243: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/15(木) 20:45:37.96 ID:sP8aVzAM0
リンクル「うわぁ、氷の塊がいっぱい……」
リンクル「色んな形のがあるのね」

ナビィ「……リンクル! 気をつけて! それは魔物だヨ!」

リンクル「えっ!?」

フリザド「コオオオォォォ」

リンクル「うっ!?」パキパキパキ

ナビィ「リンクル!」

ファイ「警告、マスターの体温の急速な低下を確認」

リンクル「く……!」ググッ
リンクル「はあっ!!」バキンッ

ナビィ「すごい! 自力で割っちゃった!」

リンクル「よくもやってくれたわね!」バシュッ

フリザド「ジュッ」

ナビィ「ボルトが燃えてたヨ? どうやったの?」

リンクル「ディンの炎と組み合わせただけ。実際はただの木のボルトよ」

ナビィ「よくそんなの瞬時に思いつくネ……」

リンクル「誰でも思いつくと思うけど……」
リンクル「あー、冷えちゃったからちょっと休憩して行こ……」ボッ

ナビィ「便利ね、ディンの炎……」

244: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/15(木) 20:46:11.43 ID:sP8aVzAM0
リンクル「結構奥まで来たけど……」
リンクル「ゾーラの兵隊さん達は結構な人数送り込まれたらしいのに、影も形も見当たらないね」

ナビィ「途中に魔物がいっぱい居たのに、無視してきたとは考えにくいけど……」

ホワイトウルフォス「アオオーン!」

リンクル「おおっと!」チャキッ
リンクル「ウルフォス……にしちゃちょっと大きいし白いけど、久々ね!」

ホワイトウルフォス「グルルル……」
ホワイトウルフォス「ガウッ!」ダンッ

リンクル「はいっと」ゲシ

ホワイトウルフォス「キャインッ」ドシャッ
ホワイトウルフォス「ガオゥッ!」ザザッ

リンクル「大きくなっても白くなってもウルフォスと大した違いはないのね」バシュッ

ホワイトウルフォス「キャインッ!」

ファイ(剣を抜くまでもないですかそうですか)

245: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/15(木) 20:46:51.11 ID:sP8aVzAM0
リンクル「ここが一番奥かなぁ」

ザッ

リンクル「?」

「また会ったな、リンクル……」

ナビィ「シーク」

シーク「ゾーラ族に会いに来たのなら、無駄足だったな……見ての通りだ」
シーク「彼らの殆どは厚い氷の下……あの中で一体何人が生き残っているやら……」

リンクル「ルトは?」

シーク「ゾーラの姫だけは、僕がなんとか助け出した」
シーク「しかし、その姫も“水の神殿へ行く”と言い残して行ってしまった……」

リンクル「水の神殿……分かった。ありがとう」

シーク「この氷は邪悪な呪いによるもの……根源である水の神殿の魔物を倒さねば、氷は融けぬ……」
シーク「……時は移り、人も移る……それは水の流れにも似て、決して留まることはない……」

シーク「幼き心は、気高き大志に……」
シーク「幼き恋は、深き慈愛へ……」

シーク「澄んだ水面は成長を映す鏡……」
シーク「己の姿を見たいのならば、水の神殿へ行くといいハイリア湖の底だ」

シーク「それと……赤い氷は青い炎で融かせる」
シーク「融かしても融かさなくても君の姿は映らないかもしれないが、探してみるといい」

246: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/15(木) 20:47:27.24 ID:sP8aVzAM0
リンクル「シークが言ってたのって、これかな?」

ナビィ「青い炎……魔力が噴出してるのがそう見えるみたい」

リンクル「へぇ……不思議ね、熱くない」

ナビィ「……あ、そうだ」
ナビィ「そこに赤い氷あるじゃない?」

リンクル「ああ、キングゾーラを凍らせてたのと同じようなのがあるね」

ナビィ「その炎で融かせないか試してみない?」

リンクル「どうやって?」

ナビィ「その空き瓶」

リンクル「炎なんか掬えるのかな……」

247: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/15(木) 20:48:10.83 ID:sP8aVzAM0
――ゾーラの里 玉座

キングゾーラ「あー、余は生き返ったゾラ……」ジュウウゥ……

リンクル「まさかほんとに空き瓶に掬えて、赤い氷融かせるとはねぇ」

キングゾーラ「余を助けてくれたのはその方ゾラ? うむ、苦しゅうない!」

リンクル「いえいえどういたしましてー」
リンクル「さ、水の神殿に行かなきゃ」

キングゾーラ「待たれよ……水の神殿とな?」
キングゾーラ「しかしその方、見たところ水中では苦しそうじゃ」

キングゾーラ「おい、あの服をこの者に与えてやれ」
キングゾーラ「その方には余を助けた褒美としてゾーラの服を授けよう。それがあれば水の中でも苦しゅうない!」

ゾーラ「こちらです」スッ

リンクル「態度変わったね」ボソッ

ゾーラ「うるさい」ボソッ

リンクル「ありがとうございます、キングゾーラ」

キングゾーラ「うむ!」

248: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/15(木) 20:48:47.94 ID:sP8aVzAM0
――水の神殿

リンクル「ふうっ」ザバッ
リンクル「ハイリア湖の底にこんな空間があったなんてねぇ……」

ナビィ「うーん……なんだかややこしそうだネ」
ナビィ「いつもと違って三次元的にかなり動き回ることになりそう」

リンクル「でも早いとこ片付けちゃわないと、氷の下のゾーラ族が凍死しちゃうよ」

ナビィ(もう手遅れだと思うんだけどなぁ)

リンクル「それにしてもこの服すごいや。水中でも普通に息が出来る」

ナビィ「魔法の服ってすごいのネ」

「……リンクル? もしやリンクルではないか?」

リンクル「うん?」クルッ

253: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/16(金) 22:12:22.09 ID:vwlUIgfD0
 ep.14 水の賢者


「おお、やはりリンクルか!」

リンクル「あなたは……」
リンクル「もしかして、ルト!?」

ルト「うむ! ゾーラのプリンセスにしてそなたのフィアンセ、ルト姫じゃ!」

ナビィ「フィアンセ!?」
ファイ「!?」

リンクル「ふぃあんせ?」
リンクル「まぁいいや。久しぶりだね! なんだか印象変わった?」

ルト「ああ、久しぶりじゃな」
ルト「まぁ7年も経てば印象の一つや二つ変わるものじゃ。そなたは相変わらずじゃな?」

リンクル「まぁね」

ルト「それにしても、7年もほったらかしとは酷い子ゾラ……」

リンクル「あー、うん、ごめんね……」

ルト「埋め合わせはきっちりしてもらうぞ!」
ルト「じゃが、今はそんなことをしておる時ではない」

ルト「そなたも見たであろう? 凍てついたゾーラの里を……」
ルト「わらわはシークという若者になんとか助けてもらったが……」

ルト「多くの民が、父上が、まだ凍ったままじゃ」
ルト「わらわはみんなを助けたい! ゾーラの里を救いたいゾラ!」

ルト「そなた、協力してたもれ」
ルト「そなたの妻となり夫となるわらわの頼みじゃ!」

ナビィ(お前は何を言っているんだ)

リンクル「勿論! あたしだって、ゾーラ族のみんなは助けたいんだから!」

ルト「……ありがとう、リンクル」

リンクル「お礼は全部終わってからにしよ?」

ルト「……うむ!」

254: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/16(金) 22:13:05.75 ID:vwlUIgfD0
ナビィ「……あのさ、リンクル?」

リンクル「何?」

ナビィ「あのー……妻とか、夫とか、意味分かってる?」

リンクル「分かんない」

ナビィ「……」ガクッ

ルト「……」ニコニコ

リンクル「でも、すっごく仲良しってことでしょ? 違う?」

ルト「今はそれで良い」

ファイ「よろしくありません」

ナビィ「……あのね、リンクル」
ナビィ「妻とか夫とかっていうのはね、結婚する相手のことなの」

リンクル「うんうん?」

ナビィ「ハイリア人は愛し合ってる二人が結婚して子供を作る、って以前教えたわよね?」

リンクル「うん、教えてもらったよ」
リンクル「じゃあ問題ないんじゃない? あたしはルトのこと大好きだよ?」

ルト「ブフッ」

リンクル「えっ、どうしたのルト!?」

ナビィ「……あのね、よく聞いて?」
ナビィ「結婚っていうのはね、男の人と女の人がするものなの。女の子同士っていうのはいだだだだだだだ」

ルト「余計なことを言うでない、お喋り妖精!」ギリギリギリ
ルト「そなたとわらわは確かに女同士で、しかも種族も違う」

ルト「しかし、愛の前にそんなものは問題ではない!」
ルト「さぁ、ちゃっちゃと魔物をやっつけて里に帰るゾラ!」

リンクル「おーっ!」

ナビィ(いいのかなぁ、これで……)

255: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/16(金) 22:14:06.88 ID:vwlUIgfD0
シェルブレード「ゴパッゴパッ」

リンクル「うわ、でっかい貝」

ルト「気をつけろ、そやつの挟む力は人間やゾーラをあっさり千切って殺す程じゃぞ」

リンクル「でも殻が硬くて普通の攻撃じゃ通らないよ」ガンガン

シェルブレード「イタイイタイ」

ルト「弱点は殻を開いた時の貝柱じゃが……」
ルト「外からあんまり叩くもんだから警戒して開かんな」

リンクル「むぅ」

ナビィ「爆弾ボルトは? ゴロンシティで新しくもらった爆弾あったでしょ?」

リンクル「ん、じゃあやってみよっか」バシュッ

チュドーン

シェルブレード「!?」

ルト「おおっ」

リンクル「なんか前より威力上がったのかな。7年の間に新型に大分置き換えられたって言ってたけど」

シェルブレード「イタカッタヨイタカッタヨ」

ナビィ「……あれ? 吹き飛んだだけでダメージは殆どないみたい」

リンクル「ええー……」
リンクル「一応退いてはもらえたし、無視して行こっか」

ルト「そうじゃな……」

256: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/16(金) 22:14:40.35 ID:vwlUIgfD0
ボトッ

リンクル「?」

ライクライク「ウジュジュジュ……」ウネウネ

ルト「きゃっ!? な、なんじゃこいつは!?」

リンクル「ル、ルト! 早く逃げ……」シャキンッ

ライクライク「グジュルッ」
ルト「ひゃああああっ!?」

リンクル「あー、遅かった!」

ナビィ「ル、ルト姫を飲み込んじゃった!」

ライクライク「ジュルルルルッ」グネグネ

ルト「は、はよ助けてたもれっ!」
ルト「ひゃうっ!? ど、どこ触って……ああっ! そ、そこはぁ……!」ビクンッ

ナビィ「な、何してるのこの魔物!?」

リンクル「助けるったって……剣やクロスボウで下手に攻撃したらルトが……」
リンクル「そ、そうだ! ディンの炎!」ドヒュンッ

ライクライク「ジュアアアッ」ペッ

ルト「あ~れ~っ!?」ドタッ

ライクライク「グジュルルルッ!」
リンクル「うわあっしまった!?」

ナビィ「リンクル!」

257: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/16(金) 22:15:22.50 ID:vwlUIgfD0
ライクライク「ジュルルルッ」グネグネ

リンクル「や、やだっ、服が……っ!」
リンクル「ひやぁっ!? なになになにっ、ちょっと、そんな、吸いつかないでぇーっ!」ビクビクッ

ルト「わ、わらわのリンクルにまで……! 許さぬっ!」つ壺
ルト「リンクルを離せっ!」ガチャーン

ライクライク「ジュルアッ」ペッ

リンクル「あうっ」ドタッ
リンクル「こ、このっ!」ザシュッ

ライクライク「ギャァァッ」シュウゥ……

リンクル「はぁ……はぁ……!」

ナビィ「とんだ女の敵だったネ……」
ナビィ「……って、リンクル! 服と盾!」

リンクル「あ、そういえば脱がされたんだった……」
リンクル「うわぁ……このまま着たくはないなぁ……」ネトォ

ルト「……」
ルト「……あっ、そ、そうじゃ! そこらで洗ってから行こう! 水ならいくらでもあるしな!」


ルト(ぐぬぬ、あんなことされた挙句、リンクルの痴態まで見て、気分が昂ってしまう……)
ルト(手を出した方が良かったかもしれん……勿体ないことした気がするゾラ)ソワソワ

リンクル(ルトのあれってああいうヒレとかじゃなくて、服だったんだ……)
リンクル(それにしてもなんだか変な感じだよぅ……)ソワソワ

ナビィ(お互い色々遠慮してるっぽいけど、大丈夫かなぁ……)

258: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/16(金) 22:16:07.39 ID:vwlUIgfD0
リンクル「この部屋は……何だろ? 妙に広いけど……」キョロキョロ

ガコーン

リンクル「あっ、扉が……あれ?」

ナビィ「あ……ルト姫が通る前に扉が閉まっちゃったんだ」

リンクル「ルトー? ルトー!」ドンドン

「扉が開かんゾラー!」

リンクル「そりゃそうだよね、こっち鉄格子までかかってるもん」
リンクル「ルトー! 少し待っててー! なんとかしてみるからー!」

「ああ、待っておるからなー!」

リンクル「さて……」
リンクル「それにしても変だね、この部屋……部屋?」

ナビィ「霧が深くて、空間がずっと続いてるみたい……」
ナビィ「どこかに壁はあるのかな? なんだかここだけ外みたいネ」

リンクル「湖の底にこんな空間があるとは思えないんだけどねぇ……」チャプチャプ
リンクル「……?」

ナビィ「どうしたの?」

リンクル「いや……この水面に映ったあたし……変だなって」

ナビィ「変?」

リンクル「気のせいかな……」

259: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/16(金) 22:16:39.99 ID:vwlUIgfD0
リンクル「うーん、反対側の扉も駄目かぁ」
リンクル「部屋中にある大きな木箱に何かあるのかな」

ナビィ「変な置き方だったよね。積み重ねもせず、きっちり並べてあるわけでもなく……」

リンクル「なんか隠れてたりしてね」
リンクル「ま、仕方ない。一度引き返してルトに……うん?」

ナビィ「あの木の下……誰か居るネ」

リンクル「あれは……」
リンクル「……真っ黒な、あたし?」

ダークリンクル「フフフ、よく分かったね」
ダークリンクル「あたしはダークリンクル。あんたの影」

リンクル「あたしの……影?」

ナビィ「リ、リンクル! 水面に映ってたリンクルが……!」

リンクル「……成程ね、変な感じだと思った」

ダークリンクル「流石あたしのオリジンね。いや、これからあたしがオリジンになるのかな?」
ダークリンクル「この部屋から出たければ自分自身を倒すことね」チャキッ

リンクル「……!」チャキッ

260: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/16(金) 22:17:31.48 ID:vwlUIgfD0
ダークリンクル「はっ! ふっ! それっ!」バシュッ バシュッ バシュッ

リンクル「っ……!」タタタタッ バッ
リンクル「くっ……木箱はこの為のものか!」ゴロッ

ダークリンクル「ええ、その通りよ! あたしもあんたも、武器はおんなじ二挺クロスボウとマスターソード!」
ダークリンクル「当然よね! あたしはあんたで、あんたはあたしなんだから!」ダッ

リンクル「あたしと殆ど同じ動き……同じ癖っ!」バシュッ

ダークリンクル「おっと!」バッ
ダークリンクル「当然発想も同じよねっ!」バシュッ

リンクル「っく、かからないか……!」バッ

ナビィ「す、すごい……二人とも横に走り回って遮蔽物も上手く利用して、撃ち合ってる……!」

ダークリンクル「フフフ、やっぱりコピーだけあって、互角ねぇ」
ダークリンクル「やっぱりあんた、才能があるよ」

リンクル「……っ!」

ダークリンクル「自分でも気付いてるでしょ?」
ダークリンクル「自分にはどうしようもないくらい戦の術の才能があるって」

リンクル「そんなことっ……!」

ダークリンクル「ああ、否定しても無駄無駄。言ったじゃない」
ダークリンクル「あたしはあんたの影。あんたの心の暗い部分はぜーんぶ知ってるの」

261: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/16(金) 22:18:10.00 ID:vwlUIgfD0
ダークリンクル「勿論記憶もあるのよ?」
ダークリンクル「森でのこと、山でのこと、そして、ここに辿り着くまでのこと」

ダークリンクル「つらかったよねぇ、ほんとにさ」
ダークリンクル「突然森から出ろなんて言われてさ、ずーっと続くと思ってた生活がいきなり終わっちゃって」

ダークリンクル「お城に行ったら今度は国の為に手を汚せだって。兵隊さんみたい」
ダークリンクル「そういえば、デスマウンテンで爆弾を見た時、瞬時に思いついたよね?」

ダークリンクル「これを遠距離攻撃武器として使えれば、効率的に敵を倒せるって」
ダークリンクル「もっといえばいつでも使えるようにした方がいい。爆弾花じゃちょっと不安定だって」

ダークリンクル「なんでもすぐに武器に転用出来ないか考えちゃう。まるで軍人さんみたいにね」
ダークリンクル「今でこそ魔物退治に便利に使ってる爆弾ボルト……戦に使われたらどうなるんだろうね?」

リンクル「……」

ナビィ「リ、リンクル! 惑わされちゃ駄目! そんなことないヨ!」

ダークリンクル「うるさい妖精ねぇ。大体あんただってほんとは分かってるんでしょ?」
ダークリンクル「分かってて言わなかったんだよね? リンクルには戦の術の才能があるって」

ナビィ「そ、そんな……!」

ダークリンクル「話を元に戻そっか」
ダークリンクル「どこまで言ったっけ……ああ、そうそう、お城でのこと!」

ダークリンクル「城下町でゲルド族の人を斬った時! 今でも夢に出そう!」
ダークリンクル「あんな怖い顔出来るんだってくらいの形相で睨みつけられたよね! すぐ死んじゃったけど!」

ダークリンクル「でもその時、どうしたらいいか分からないような気がしたっけ」
ダークリンクル「兵隊さんの治療、その前にゲルドの……敵兵にとどめを刺さなきゃ。迷ったよね」

ダークリンクル「人を斬ったことも、虫の息の敵兵に睨みつけられたことも、大した問題じゃなかったよね!」
ダークリンクル「分かるよ、分かる! 戦場だもん! 戦の最中にそんなこと気にする暇はないもん!」

ダークリンクル「でも人を殺しちゃったら、普通はパニックになるよね。訓練受けた兵隊じゃないんだから」
ダークリンクル「なってないとおかしいよね。子供心にそう思ったよね。パニックにならなきゃ。演じなきゃ」

リンクル「……」

ナビィ「……!」

ダークリンクル「そんなこんなでマスターソード抜いたらさ」
ダークリンクル「今度は実はコキリ族じゃなくてハイリア人でしたー、なんて」

ダークリンクル「しかもハイリア人はハイリア人でも普通のハイリア人ではなかったのでしたー、とか」
ダークリンクル「まったくふざけてるよね」

262: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/16(金) 22:18:37.83 ID:vwlUIgfD0
ダークリンクル「いきなり選ばれし者なんて言われて、お前は時の勇者だと言われて」
ダークリンクル「お前はハイラルを救うんだなんて言われてさ、たった一人?」

ダークリンクル「仲間と言えばその妖精と、あとは馬くらい? どう大きく言ったって一人と一匹と一頭ね?」
ダークリンクル「大魔王を倒して国を救え、ってこんな小娘に託しちゃうわけ? 大切な7年を奪い取っておいて?」

ダークリンクル「危険な仕事はいつだってあんた任せ。見返りもなし、だーれも一緒に旅してはくれない」
ダークリンクル「一緒に戦ってくれたのって、精々ダルニアくらいかな? ヴァルバジアは一緒に倒したよね」

ダークリンクル「まあ、仲間のゴロン達が捕まってたんだもんね。その為だったもんね」
ダークリンクル「……じゃあ、ハイリア人は? あんたと同じハイリア人は?」

ダークリンクル「ガノンドロフとその軍勢はハイリア人を大勢殺してるし、捕まえてる筈よね?」
ダークリンクル「きっと今もガノンドロフの支配によって苦しんでるハイリア人は大勢居る筈よね?」

ダークリンクル「ハイリア人を救いたいから時の勇者と一緒に旅をして国を救おうなんてハイリア人は居ないの?」
ダークリンクル「本当に大魔王をやっつけたいならさ、あんた一人に押し付けるなんて変じゃない?」

ダークリンクル「あんたが命の危険を冒してまで助ける価値……」
ダークリンクル「それだけの価値が、本当にこの国にあるの?」

リンクル「……」

263: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/16(金) 22:19:31.03 ID:vwlUIgfD0
ダークリンクル「さあ……リンクル……いや、あたし」
ダークリンクル「こっちにおいで。全てを投げ出して、心の闇に身を任せれば、楽になれるよ」

リンクル「……」ザッ

ナビィ「リ、リンクル! 行っちゃ駄目! あいつは魔物だヨ!」
ナビィ「あんな言葉に耳を貸しちゃ……」

リンクル「黙ってて」

ナビィ「え、リンクル……」

リンクル「あいつが……あたしの影が言ったのは全部ほんとのことだよ」
リンクル「ずっと思ってた。表に出さないようにしてた。言っちゃいけない気がしてた」

ダークリンクル「フフフ……影は全てを受け入れるわ」
ダークリンクル「これからは時の勇者の重責も、ハイラルを救う為のこっ酷い運命も全部忘れて、楽になれるの」

リンクル「そうね、悪くない」
リンクル「でもね……いや、だからこそかな」グルンッ

ダークリンクル「っ!?」

リンクル「あんたは殺す」ザンッ

ナビィ(居合切り! そっか、あれの為にわざとあんな態度を……)
ナビィ(……あれ?)

264: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/16(金) 22:20:05.11 ID:vwlUIgfD0
ダークリンクル「かっ……あ、くは……」
ダークリンクル「ど、どうして……! どうして、そんな心の闇を抱えたままで……!」

リンクル「あんたは所詮、あたしの影を使って生まれた魔物よ」
リンクル「姿形も、動きの癖も、あたしの記憶も、何もかも持ってても、本質は結局魔物よ」

リンクル「だからね、あんたはあたしじゃないし、あたしはあんたじゃない」
リンクル「それに、仮に本当にあたしだったとしても……」

リンクル「あたしが心に抱えたものは、全部あたしのものよ」
リンクル「あたしだけのものだ。絶対に、誰にも渡さない。持ち出すなんて許さない」

ダークリンクル「ひっ……!」ゾクッ

ナビィ「え……」
ナビィ(魔物の方が……怯えてる? リンクルを恐れてる……?)

リンクル「時の勇者の重責も、ハイラルを救う為のこっ酷い運命も、全部、全部」
リンクル「あたしだけが託された、あたしだけのものなんだ」

ダークリンクル「あ、あんたは……お前は……っ!」
ダークリンクル「来るな! 来るなぁーっ!!」

リンクル「返してね、あたしのもの全部」ザシュッ

ダークリンクル「あ……ぐ……こ、の……」
ダークリンクル「……ば……化物……ぉ……」

リンクル「……」

ダークリンクル「」

シュウウゥゥ……

ナビィ「消えてくヨ……けど」
ナビィ「その、リンクル……さっきの」

リンクル「……」

ナビィ「……ごめん」

265: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/16(金) 22:20:51.53 ID:vwlUIgfD0
ルト「おお、開いたゾラ」

リンクル「ごめんごめん、お待たせ」

ルト「……何かあったか?」

リンクル「まぁ……ちょっとね」
リンクル「それより、見て見てこれ!」

ルト「うむ……? これは何じゃ?」

ファイ「フックショット、またはクローショットと呼ばれる、神が遺した魔法の道具です」
ファイ「鎖の付いた先端のアンカーを魔法によって射出し、鎖を巻き取ることで対象物を手繰り寄せられます」

ファイ「また、当たった対象物によってはマスターの方が引き寄せられ、これによって高所等への移動も可能です」
ファイ「本来は二つセットで使うものですが、もう一つは亡失してしまったようです」

リンクル「……だって」

ルト「さっきの声は誰じゃ?」

リンクル「ファイだよ。マスターソードの精霊だってさ」

ルト「変わった連れが居るな……」

ナビィ「あたしもつくづくそう思う……」

ルト(妖精も十分変わった連れだと思うのは黙っておこう)

リンクル「……あ、そうだ。これがあればあの部屋行けるじゃない」

ルト「あの部屋?」

リンクル「真ん中の塔の場所ね、あの周りに一か所高くて行けないドアがあったの」

ルト「……ああ、あそこか」
ルト「ふむ、行ってみよう」

266: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/16(金) 22:21:21.22 ID:vwlUIgfD0
リンクル「んー、この部屋はなんだろう?」
リンクル「真ん中のプール……これプール? この柱、何の意味があるんだろう」スタッ

ルト「うーむ……」

ガコーン

リンクル「えっ!? と、閉じ込められた!?」

ルト「し、しまった、罠だったのか!?」
ルト「……!?」

ルト「リンクル! 気をつけるゾラ!」
ルト「そこの水はただの水ではない!」

リンクル「ただの水じゃないって……」

ゴポゴポゴポゴポ……

リンクル「ここから見る限り何も……」

ナビィ「リンクル! 後ろだヨ!」

リンクル「へっ!?」

ゴポゴポゴポゴポ

267: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/16(金) 22:21:55.22 ID:vwlUIgfD0
水棲核細胞 モーファ

モーファ「ゴポゴポゴポ……」

リンクル「み、水が、動いてる……!?」
リンクル「水を操る魔物!?」

ルト「水全体が奴の身体じゃ! その柱の上は危険じゃ!」

リンクル「う、うんっ!」ダッ

モーファ「ゴポポポポッ」ババッ

リンクル「ひゃっ!?」
リンクル「は、離してっ!」

モーファ「ゴポゴポゴポ」グルングルン

リンクル「あわわわわわわわっ」

モーファ「ゴボボボボ……」

リンクル「や、やだっ、引きずり込まれる!」

ルト「リンクル!」ガシッ

リンクル「だ、駄目っ、ルトまで引きずり込まれちゃう!」

ルト「ぐぬぬぬぬっ……! い、今引っ張り出して……っ!」ズルズル

リンクル「手を離して! あたしはいいから!」

ルト「嫌じゃ! 離さん! 持ってはいかせんゾラー!」ズルズル

モーファ「ゴボボボボ……!」ズルズル

ナビィ「……?」
ナビィ「あ、そっか! リンクル! クロスボウをルト姫に!」

リンクル「……! ルト! 受け取って!」ブンッ

ルト「ひゃっ!?」キャッチ
ルト「あ、しまっ……!」

リンクル「ひゃあああああっ!!」ズルズルズル

ルト「リンクルー!!」

モーファ「ゴポゴポゴポゴポ……」

268: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/16(金) 22:22:31.60 ID:vwlUIgfD0
リンクル「(うううぐっ! ぜ、全身舐め回されてるみたい……っ!)」
リンクル「(手足が……動かない……!)」

リンクル「(……盾が、クロスボウが、ボルトが……はぎ取られていく……)」
リンクル「(次は……服!? ゾーラの服をはぎ取られたら死んじゃうよ……!)」

ファイ「マイマスターリンクルに報告。魔物はマスターソードに触れることが出来ない模様」

リンクル「(だからどうしたっていうのよ……! 水中で剣振ったって、こいつ相手じゃ……!)」
リンクル「(ひっ……やだっ、服の中手が動き回ってるみたいで気持ち悪いぃ……!)」


ルト「ど、どうすればいい……どうすればいいゾラ! リンクル!」

ナビィ「ルト姫! そのクロスボウで敵の核を狙うの!」

ルト「何……?」

ナビィ「さっき、あいつはリンクルを捕まえて引きずり込もうとしたのに、ルトは捕まえなかった」
ナビィ「水の触手をもう一本出して、さっさとルトを捕まえれば良かったのに、そうしなかった理由は?」

ルト「……一本しか、触手は出せない?」

ナビィ「そう」
ナビィ「あの触手の中では常に核が動き回ってたから、多分あの核の周りでしか触手は出せないのよ」

ルト「じ、じゃああの触手が出るのを誘って、核をこれで撃ち抜けば……!」

ナビィ「そうよ! さぁ、立って!」

ルト「う、うむ! ルト、参るゾラ!」チャキッ

269: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/16(金) 22:23:05.63 ID:vwlUIgfD0
ナビィ「使えるボルトは今装填されてるその3本だけ!」
ナビィ「そんな武器初めて触るだろうけど、頑張って!」

ルト「……!」

ナビィ「もっと水に近寄って、触手を誘って! 出てきそうになったらナビィが合図するネ!」

ルト「あ、ああ!」

モーファ「ゴポゴポゴポゴポ……」ズズズズ……

ナビィ「今よ! 一旦逃げて!」

ルト「っ!」ダッ

モーファ「ゴポポポポポ」ババッ

ナビィ「あれが核よ! よく狙って……!」

ルト「リ、リンクルを帰せゾラ!」バシュッ

ジャプンッ

モーファ「ゴボボボ……」

ナビィ「外れた! 次発を!」
ナビィ「弦を引いて!」

ルト「こ、こうか!?」ガチッ

ナビィ「そう! さぁ、次のボルト! 逃げちゃうヨ!」

ルト「く、喰らえっ!」バシュッ

モーファ「!」バッ

ナビィ「しまった、読まれて……!」

ルト「もう一発ゾラ!」バシュッ

モーファ「ゴプッ」ザスッ

ルト「当たったぞ!」

ナビィ「当たった! けど……効いてない……!?」

ルト「ど、どういうことじゃ!?」

ナビィ「……あっ! しまった……」
ナビィ「あのボルト! 森のボルトと同じような木のボルトだったんだ! 殺傷力が低過ぎて通らないヨ!」

ルト「なっ……そ、そんな……! リンクル……」
ルト「リンクルー!!」

270: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/16(金) 22:23:37.12 ID:vwlUIgfD0
バスッ ギャリギャリギャリ

モーファ「!?」

ナビィ「……!?」
ナビィ「核が……水中に引き込まれた? あの鎖は……?」

ゴボボボッ ザシュッ

ルト「み、水の中で何が起きておるのじゃ……?」

ゴボゴボゴボゴボ

ザッバァー

ナビィ「水が……引いていく……」

ルト「いや……部屋の真ん中から天井に集まって、消えて行っておるようじゃが……」

ピチョン

「あー、死ぬかと思った!」

ナビィ「リンクル!」
ルト「リンクル!」

271: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/16(金) 22:24:23.31 ID:vwlUIgfD0
リンクル「二人ともありがとう、助かったよ」

ナビィ「助かった、って……」

ルト「わらわ達は攻撃に失敗して途方に暮れておっただけじゃ……」

リンクル「いやいや、あいつの気を引いてくれたでしょ?」
リンクル「お陰であたしも反撃出来たってわけ」

ルト「一体どうやったのじゃ?」

リンクル「あんた達に気を取られてるあいつ、こっちからは隙だらけでさ」
リンクル「フックショットで引き寄せて、マスターソード突き刺してやった」


リンクル『(……核がどっか行った?)』
リンクル『(体も動く……けど、服をはぎ取られて、あまり長くは息が続かない……!)』

ファイ『マスターに報告。陸上に残った二人が何らかの手段で気を引いているものと推測』

リンクル『(成程……)』
リンクル『(動きが止まるタイミングで、なんとか攻撃を仕掛けられれば……)』

リンクル『(クロスボウは取られたし、ディンの炎も使えない)』
リンクル『(となると……フックショットか)』

ファイ『マスターに報告。核の動きが止まりました。ボルトを当てられて怯んだ模様』

リンクル『(よしきた!)』バスッ

ギャリギャリギャリ

モーファ『!?』

リンクル『(つ、か、ま、え、たっ!)』ザシュッ

モーファ『ギャアアアアアアアッ!?』


リンクル「と、こんな感じに」

ルト「そ、そうか……」

リンクル「ところでさ、武器とか服とかはぎ取られちゃって、周りに散らばってるから拾うの手伝って?」

ルト「……そういえば、さっきから下着しか身につけておらんだったな、そなた」

272: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/16(金) 22:24:51.95 ID:vwlUIgfD0
リンクル「これで全部だね……ありがと」
リンクル「ちょっと待っててね、すぐ着ちゃうから」

ルト「……着ながらでいいから聞いてくれ」

リンクル「うん」

ルト「リンクル……流石、フィアンセとしてわらわが選んだだけのことはある」
ルト「ゾーラの里も、ゾーラ達も、元通りになるであろう」

リンクル「だといいけど……復興大変そうだよね」

ルト「まぁ、それも一興じゃ」
ルト「それでな、そなたには褒美を与えたいと思う」

リンクル「褒美?」

ルト「そなたへの褒美……それは、わらわの永遠の愛じゃ!」
ルト「……と、言いたいところであったが」

ルト「どうやら、それは叶わぬ願いのようじゃ」
ルト「夫婦の契りだけでも結んでおこうかと思ったがな……」

ルト「わらわは、水の賢者として水の神殿を守り、時の勇者を手助けせねばならぬ……」
ルト「そなたの更なる活躍を信じておるゾラ」

リンクル「……うん」

273: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/16(金) 22:25:24.06 ID:vwlUIgfD0
ルト「……リンクル、近う寄れ」

リンクル「……」スッ

ルト「ん……」チュッ

リンクル「んむ」

ルト「ぁ……ちゅる……じゅるるるっ」ギュッ

リンクル「んんっ!?」

ナビィ「!?」
ファイ「!?」

ルト「ちゅぷ……」
ルト「……ふむ。    きす、というのも心地が良いものじゃな」ペロ

リンクル「そ、そう……」

ルト「最後にそなたとの接吻を味わうことが出来て良かったゾラ、フフフッ」
ルト「そうそう……もしシークという若者に会ったら、わらわが礼を言っていたと伝えてくれ。良いな」ポゥ……

リンクル「うん……伝えるよ」

279: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/19(月) 22:09:57.30 ID:l4B3+uTj0
 ep.15 闇の賢者


――ハイリア湖畔

リンクル「ぷはっ」ザバッ
リンクル「水が元に戻ってる……」ザブザブ

「……」スッ

リンクル「……シーク」ガシッ

シーク「見たまえ、リンクル」グイッ
シーク「君とルト姫が魔物を倒し、この湖は再び清らかな水で満たされた」

リンクル「ありがと」
リンクル「そのルトがシークにお礼言ってたよ」

シーク「ルト姫が、僕に……?」
シーク「……そうか。彼女の為にも、一刻も早く平和なハイラルを取り戻さねばならない」

リンクル「うん」

280: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/19(月) 22:10:28.89 ID:l4B3+uTj0
――カカリコ村

リンクル「ふう……お疲れ、エポナ」ナデナデ

エポナ「ブルルルッ」

リンクル「……あれ?」

ナビィ「変ね……人が居ないヨ?」

リンクル「うん……何かあったのかな」
リンクル「……あ、井戸のとこ、誰か居る!」

ナビィ「あれは……インパじゃない?」

リンクル「インパさーん!」タタタタッ

インパ「……リンクル」
インパ「下がっていろ!」

リンクル「えっ?」

ドコンッ

リンクル「!?」
リンクル「井戸の釣瓶が……!」

インパ「来るぞっ!」

リンクル「!」シャキンッ

ドオッ

281: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/19(月) 22:10:55.72 ID:l4B3+uTj0
インパ「くっ……ぐああっ!」ドサッ

リンクル「な、何!? インパさんが勝手に吹っ飛んだ!?」

ナビィ「見えない敵だヨ! 何か変な力は感じるのに、姿が見えない!」

リンクル「い、一体どうすれば……!」

ザザザザザッ

リンクル「……! 来るっ!」ブンッ

ナビィ「あ、当たった……?」

リンクル「駄目、手応えが……うっ!?」ガシッ
リンクル「きゃああああああああっ!」

282: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/19(月) 22:12:06.31 ID:l4B3+uTj0
リンクル「……う……」
リンクル「い、いたたた……!」

シーク「気がついたようだな」

リンクル「シーク……」

シーク「リンクル……大変なことになった」
シーク「……闇の魔物が復活したんだ」

リンクル「闇の魔物……?」

シーク「君とインパがやられたあれだ。姿の見えない魔物……」
シーク「元々はこの村の長インパの力によって井戸の底に封じ込まれていた」

シーク「だが、魔物の力が強まった為、井戸の封印が破れ、地上へ現れたんだ」
シーク「インパは再び奴を封印する為に闇の神殿へ向かった筈だが……このままでは彼女が危険だ」

シーク「僕は奴の姿を見透かす為の道具を用意してきたんだが間に合わなかった……」
シーク「君にこれを託しておく」

リンクル「これは?」

シーク「まことの眼鏡、というマジックアイテムだ。真実を見透かすことが出来る」

リンクル「ふーん……」
リンクル「これ通して見ればいいの?」

シーク「いいや、懐に入れたままでいい」
シーク「魔力を込めて、念じるんだ」

リンクル「うん……」

シーク「本来何十年も修行して漸く出来ることをすぐに出来るようにする道具だ」
シーク「すぐに、といっても多少コツが要るから少し練習しておくといい」

リンクル「……」ジーッ

シーク「……リンクル?」

リンクル「……あっ、いや、うん。ありがとう」
リンクル「それで、どこに行けばいいの?」

シーク「闇の神殿は墓地の奥の高台から入れる」
シーク「頼んだぞ、彼女を……闇の神殿の賢者インパを助けてくれ」

リンクル「……」
リンクル「……じゃあ、行ってくるね」

283: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/19(月) 22:12:49.82 ID:l4B3+uTj0
――闇の神殿

リンクル「……」

ナビィ「真実は見えるようになった?」

リンクル「え……」
リンクル「あ、うん、見えるようになった、かも」

ナビィ「そこ、壁だヨ?」

リンクル「そう見えるだけ」スッ
リンクル「ほら」

ナビィ「わっ……ほんとは壁なんかないんだ」
ナビィ「……そういうの出来るようになるのも早いんだネ」

リンクル「まぁね」

「闇の神殿……それはハイラルの血塗られた闇の歴史……」
「欲望と怨念の集まりしところ……」

リンクル「……? ナビィ、何か聞こえなかった?」

ナビィ「聞こえたヨ……」
ナビィ「ここ、単なる邪悪な魔力だけじゃなくて、色んな怨念や悪意が渦巻いてるみたい」

284: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/19(月) 22:13:29.98 ID:l4B3+uTj0
リンクル「……ハイラルの血塗られた闇の歴史、ね……」
リンクル「さっきから気になってたんだけどさ、この壁に埋めてあるの何だろうね」

ナビィ「それは……」

ファイ「人の頭蓋骨である確率90%。種族までは分かりませんが、ハイリア人またはシーカー族と思われます」
ファイ「この通路は集団墓所であると推測されます」

リンクル「ふーん……」

ナビィ「……ファイってさ、こういう時に配慮がないよね」

ファイ「必要であると判断されない限り、不必要な配慮は良い結果を齎しません」

ナビィ「……何それ」

リンクル「まぁまぁ」
リンクル「あたしは気になるけどね、ここのこと」

ナビィ「……」

ファイ「マスターに報告。向かって右手三番目の塚は偽物と推測されます」

リンクル「……ほんとだ」
リンクル「扉が見える」

285: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/19(月) 22:14:01.49 ID:l4B3+uTj0
リンクル「何この部屋……」
リンクル「床から何か生えてる……手? 気持ち悪ぅ……」

ナビィ「迂闊に近寄らない方がいいかもネ……」

リンクル「……うん?」

ナビィ「どうしたの?」

リンクル「……この部屋、あの手以外にも何か居るよ」
リンクル「ほら、そこ……結構大きな何かが……見えない?」

ナビィ「見えないけど……言われてみれば何か変な力みたいなものは感じるね」

ファイ「視認出来ない闇の魔物の確率80%。マスターソードによる攻撃を推奨」

リンクル「通るのかなぁ……」シャキンッ
リンクル「ていっ!」ザシュッ

デドハンド「グオオオオッ」ボゥ……

ナビィ「うわっ……」

リンクル「うわぁ……改めて目で見ると気持ち悪……」

デドハンド「ウオオォォォン……」ズーン

ナビィ「あ、凹んだ」

ズズズズッ ガシッ

リンクル「……きゃっ!?」
リンクル「て、手が床から生えて……!」

デドハンド「グゥゥゥ」ノソノソ

ナビィ「あ、あいつの奴の手だったんだ! リンクル、早く抜け出して!」

リンクル「くっ、このっ、離れろっ!」ザンッ
リンクル「あんたもこっち来ないでよ!」ダンッ ザシュッ

デドハンド「グアアアアッ」ドサッ

286: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/19(月) 22:14:51.30 ID:l4B3+uTj0
リンクル「なんだか気味悪い仕掛けの多い神殿だなぁ」
リンクル「あれ何だろう? クロスした木の棒なんて、森の遊具思い出しちゃうけど」

ファイ「上側に枷付きの鎖があることから、人を磔にする器具と思われます」
ファイ「手を上にした場合、周囲の人々から見て位置が高過ぎると思われ、足を上にして磔にしたと推測」

ファイ「また、周囲の道具を見る限り、磔にしたまま何らかの拷問を行っていた確率が70%」
ファイ「場合によっては処刑も行っていたものと推測されます」

ナビィ「……」

リンクル「ふーん……因みにファイは誰が誰をそんなことしてたと思うの?」

ファイ「推測の域を出ませんが、ハイリア人乃至はシーカー族が反抗的な者を拷問、処刑していたと思われます」

リンクル「……そう」

ナビィ「……リンクル」
ナビィ「早く行きましょ、ここの空気嫌いだヨ……」

リンクル「ああ、ごめんね」

287: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/19(月) 22:16:28.74 ID:l4B3+uTj0
リンクル「船?」

ナビィ「船だネ……」

リンクル「これ乗るしかないのかなぁ……」スタッ

リリン リリン

リンクル「鈴の音……?」
リンクル「うわっと、動き出した!」

ナビィ「ど、どこに向かうんだろ?」

リンクル「ついてからとしか……」

「生きてたか小娘! 敬意に値する図太さだ!」シュタッ

リンクル「うわぁ、スタルフォスが降ってきた!」

スタルフォス「我が名はマスター・スタルフォード! 栄えあるガノンドロフ軍東部分遣団行動隊長である!」
スタルフォス「ここで会ったが100年目! 魔王軍の殉死者達に、貴様の血を以て贖ってくれる!」

スタルフォス「ふんっ!」シャキンッ
スタルフォス「見よ! 吾輩が誇るこの剣を!」

リンクル「……」

スタルフォス「名付けてマスタースタル・エッジ!」

ナビィ「……」ドンビキ

288: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/19(月) 22:17:17.61 ID:l4B3+uTj0
リンクル「……」ボルトヌキ

スタルフォス「異国の片刃の剣をベースに、この国で製造可能なものにアレンジ!」

リンクル「……」ボルトソウテン

スタルフォス「グリップの部分には指を守るガードを装備!」
スタルフォス「片刃の刀身は人を斬るにはあまりに絶大な斬れ味!」

リンクル「……」ゲンヲヒイテ

スタルフォス「この全く新しい種類の剣を持てるのは世界広しと言えどもこの吾輩一人だけよ!」
スタルフォス「怖いか? そうだろう! 怖くない筈がないっ!」

スタルフォス「光栄に思え! 貴様がこの剣最初の犠牲者となるのだ!」
スタルフォス「この切れ味をしかと目に焼き付けつつ死ねっ!」

リンクル「うるさい」バシュッ

チュドーン

スタルフォス「ぬおおおっ!!」
スタルフォス「おっ、おわあああぁぁぁぁ……」ズルッ ヒュルルルル……

ナビィ「落ちてった……」

リンクル「聞いてもいないこといつまで喋ってんのよ、まったく」

ナビィ「……あれっ」
ナビィ「リ、リンクル! この船落ちちゃうヨ!」

リンクル「わわっ!」タタッ
リンクル「目的地についた途端に落っこちちゃうなんて……」

ナビィ「死んじゃうとこだったね……冥土の渡し船だけに」

289: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/19(月) 22:17:50.50 ID:l4B3+uTj0
リンクル「この部屋は何だろう?」

ナビィ「両側に棘のついた壁があるけど……」
ナビィ「わっ、迫ってくるヨ! 早く逃げないと……!」

リンクル「……いや、あの壁木で出来てる!」バシュッ

チュドーン

ナビィ「こ、壊れた……!」

リンクル「壁の向こうに何かあるね」

リーデッド「オォォン……」

リンクル「邪魔」バシュッ

リーデッド「ウォォォ……」バタリ

リンクル「これは……鍵?」

ナビィ「大きな鍵ネ……何か重要な部屋の鍵なのかな?」

リンクル「んー……じゃ、あの大きな門かな」

ナビィ「……ああ、チラッとだけ見たあそこ」

290: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/19(月) 22:19:03.42 ID:l4B3+uTj0
ガチャ

リンクル「開いたー!」

ナビィ「空中歩くのはひやひやするヨ……」

リンクル「ごめんごめん、まことの目使ってると床が見えるんだけどね」
リンクル「……で、これは何だろう? 穴?」

ナビィ「穴みたい」

ファイ「……穴の下に、巨大な気配を検知」

リンクル「じゃあ下りてみるしかないね」ピョンッ

ナビィ「ちょ、待っ……! 待ってー!」

291: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/19(月) 22:19:30.69 ID:l4B3+uTj0
リンクル「……っと!」スタッ
リンクル「何ここ……?」

ナビィ「ほんと躊躇なく飛び降りるよネ……」

リンクル「まぁね」

ドン

リンクル「おっ?」

ドン ドン ドン ドン

リンクル「大きな手……?」

ナビィ「なんだかここ自体おっきな太鼓の上みたいネ」

ドンドン ドンドン

ナビィ「……!」
ナビィ「見て! 上!」

292: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/19(月) 22:20:00.19 ID:l4B3+uTj0
「オオォォン……」

暗黒幻影獣 ボンゴボンゴ

リンクル「こいつが……!」

ナビィ「井戸の底から復活した闇の魔物!?」

リンクル「でっかぁーい……」
リンクル(けど……なんだろう? なんだか悲しそう?)

リンクル(なんか逆さ吊りの人間みたいな姿だし……)
リンクル「……頭はどこ行っちゃったんだろ」ボソッ

ナビィ「?」

リンクル「いや、何でもない」
リンクル「始めるよっ」チャキン

ボンゴボンゴ「オォォン……」スウッ

ナビィ「消えた!?」

リンクル「ううん、居るよ。姿を見えなくしただけ」

293: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/19(月) 22:20:28.54 ID:l4B3+uTj0
ドンドン ドンドン

リンクル「っと、っと、っと」

ナビィ「まずはあの手を何とかしましょ!」

リンクル「そうは言っても、こうも揺らされると、クロスボウの照準が……!」バシュッ

ボンゴボンゴ「オオオォ……」

ナビィ「片方怯んだ! もう片方!」

ボンゴボンゴ「オオォォン……」ブオンッ

リンクル「うわっ!」バッ

ドコーン

リンクル「危なく叩き潰されるところね……!」バシュッ

ボンゴボンゴ「オァァ……」ズズ
ボンゴボンゴ「オオォォォォ……!」ドオッ

リンクル「うひゃあっ!」バッ
リンクル「と、突進してきたよ!」

ナビィ「両手が使えなくなったら突進してくるみたい!」

リンクル「成程ね……よーし」

294: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/19(月) 22:21:33.05 ID:l4B3+uTj0
リンクル「まずは右手!」バシュッ

ボンゴボンゴ「オオオオ……」ブオンッ

リンクル「っと!」バッ
リンクル「今度は外まで弾き飛ばされるとこだったわ」バシュッ

ボンゴボンゴ「ウオォ……」
ボンゴボンゴ「オオオオォォォォ……!」ドオッ

リンクル「来たっ!」チャキーン
リンクル「喰らえっ!」バシュッ

チュドーン

ボンゴボンゴ「ウオオオオオッ……!」グラグラ

ナビィ「す、姿を現したヨ!」

リンクル「……!」
リンクル「……そう、だね」シャキンッ

295: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/19(月) 22:22:07.01 ID:l4B3+uTj0
ボンゴボンゴ「オォォン……オォォン……」クラクラ

リンクル「……あんたが――いや、あんた達が以前どこの何者だったのかは知らない」
リンクル「あんた達はきっと何ら間違ったことをしたつもりはなかっただろうし、してなかったとも思う」

ファイ(マスターの魔力が入ってきます……充填率70%……80%……)ヴゥン

リンクル「ただ、あんた達は――あんたはこの時代に復活すべきじゃなかった」ヴゥン
リンクル「この闇の神殿の存在と一緒に、消えてもらうわね」ザシュッ ズオッ

ボンゴボンゴ「グオオオオオッ!」
ボンゴボンゴ「オオオオオオオッ!」ジタバタ

ボンゴボンゴ「オオオオッ……!」ドシーン
ボンゴボンゴ「ォ……ォォ……!」ズズズズズ……

リンクル「……」

ボンゴボンゴ「」シュウゥゥ……

296: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/19(月) 22:22:36.12 ID:l4B3+uTj0
ナビィ「リンクル……その、さっきのは……」

リンクル「……まことの眼鏡ね、色んなものが見えちゃう」
リンクル「さっきの奴、最初は一体の魔物に見えたけど、爆弾ボルト当てた時に本当の姿が見えちゃったんだ」

リンクル「あれは最初から魔物だったわけじゃない」
リンクル「ここで理不尽に殺された人々の、怨念の集合体だった」

ナビィ「……」

リンクル「ハイラルの血塗られた歴史、ね……」
リンクル「あいつが居たところ、橋が見える。上に通じてるみたい」

297: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/19(月) 22:23:17.57 ID:l4B3+uTj0
リンクル「……ああ、この部屋に出るんだ」

ナビィ「結構長い階段だったネ……」

「ゼルダ様のオカリナを持つ少女……やはり、来てくれたか」

リンクル「……インパさん」

インパ「私より先に、奴を見つけ出して倒してしまったようだな。一本取られたよ」
インパ「だが……その様子だと、色々見たんだろう」

リンクル「……」

インパ「咎めはしない……」
インパ「……我々シーカー族は、代々ハイラル王家の下僕として仕えてきた」

インパ「しかし、ハイラル統一戦争の終結後、歴史の様々な闇を知る我々は王家に疎まれた」
インパ「元々この闇の神殿は我々が王家に反抗する者を始末する場所だったのだ」

インパ「統一戦争の前から、統一戦争が終わるまで、様々な者がここで拷問され処刑された」
インパ「有名どころだと先代のゲルド王もだな……王家に反発的であればハイリア人でも、だ」

インパ「そのことを知っているのは王家含む一部のハイリア人と我々シーカー族のみ……」
インパ「明るみに出てはならない歴史として、シーカー族はその殆どがこの闇の神殿の存在と共に葬られた」

インパ「神殿に塚の並んだ通路があっただろう?」
インパ「あれが、私の同胞達の墓だ。私の見知った者も何人か、あの中に居る」

298: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/19(月) 22:23:52.13 ID:l4B3+uTj0
リンクル「……なんだ、あたしの思った通りだったのね」
リンクル「そんなことあたしに教えて良かったの?」

インパ「7年前のあの日、王家はゼルダ様以外の全員が命を落とした」
インパ「最早この歴史の闇を知っている者など私とお前くらいのものだろう」

インパ「それも今更お前が何か言い出したところで、何も問題にはなるまい」
インパ「私も闇の賢者として、現世とは離れるわけだしな……」

リンクル「……ゼルダ姫はまだ生きてるのね」

インパ「私の役目はゼルダ様をガノンドロフの手の届かぬ場所へお連れすることだった」
インパ「近い内に、ゼルダ様はお前の前に現れ、全てを語られるだろう」

インパ「その時はお前が私に代わってゼルダ様を護ってくれ」
インパ「だが……それまでに、お前にはもう一つやってもらうことがある」

リンクル「次の神殿でしょ? “砂の女神”っていうのはちょっと分かんないけど……」

インパ「違う」

リンクル「?」

インパ「お前の眼だ」

299: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/19(月) 22:24:48.06 ID:l4B3+uTj0
インパ「この神殿に来るまでに何があったのか知らないが……」
インパ「今、お前の瞳は淀み切っている」

リンクル「……」

インパ「この神殿の為だけではないように思う」
インパ「ここに来るまでに様々なことが積み重なっているんだろう」

インパ「今のお前は危険だ。何か無茶をして命を落としかねん」
インパ「そうなる前に、次の冒険に出かける前に、だ」

インパ「どこかで羽を伸ばして来い」
インパ「親しい者と過ごすだけでもいいし、どこかで思う存分遊んでもいい」

インパ「お前が今二日や三日遊んで過ごしたところで、明日ガノンドロフが何か出来るわけでもない」
インパ「だから今の内に、気持ちの整理をつけておけ。分かったな」ポゥ……

リンクル「……うん、ありがとう、インパさん」

307: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/27(火) 21:58:12.79 ID:JlbP4/MV0
 ep.16 勇者の休日


――カカリコ村

コッコ姉さん「あ、リンクルちゃん」

リンクル「お姉さん! 無事だったんだね……!」

コッコ姉さん「うん、村のみんなも無事だよ」
コッコ姉さん「急に避難しろって言われた時はびっくりしちゃったけどね」

リンクル「良かったぁ」

手乗りコッコ「コッコッコッコッコ……」

リンクル「わっ、可愛い! ちっちゃなコッコ!」

コッコ姉さん「手乗りコッコっていうの。この子ならあたしも鳥肌立たないのよ」

リンクル「へぇー……あ、こっちの青い子も可愛いー!」

コッコ姉さん「あっ、その子は……」

「コッコッコッコ」

リンクル「こっこっこっこー」

コッコ姉さん「え……あのコジローが……懐いてる!?」

リンクル「えっ、な、何?」

コッコ姉さん「その子、コジローっていってね、うちの兄貴にしか懐かなかったの」
コッコ姉さん「うちの兄貴、根っこは良い人なんだけど、意地っ張りでさ……」

コッコ姉さん「その子置いて、どっかに行っちゃったんだ……」
コッコ姉さん「もし、旅先で会うことがあったら、早く戻ってこいって……」

コッコ姉さん「……お婆ちゃんも、もう気にしてないから……」
コッコ姉さん「薬の材料なんか、もういいから早く戻ってこいって、言ってやってよ」

リンクル「……うん。覚えとくね」

308: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/27(火) 21:59:18.91 ID:JlbP4/MV0
――的あて屋

リンクル「これで最後っと」バシュッ

ナビィ「すごーい! 全部当てちゃったネ!」

的あて屋「おおー、ワンダホー! パーフェクト!」
的あて屋「ほら賞金だ」っ50ルピー

リンクル「ありがと」

的あて屋「もう一回やる?」

リンクル「うんっ、はい20ルピー!」チャリン


リンクル「よーし、全部当たった!」

ナビィ「すごいすごい! もう10回連続だヨ!」

的あて屋「お、おおー! すごいね、お嬢ちゃん」
的あて屋「まだやるかい?」っ50ルピー

リンクル「うん! 20ルピーだよね!」チャリン


的あて屋「……パーフェクトーワンダホー」

リンクル「やったー!」

ナビィ「流石に20回も連続でやってると疲れてこない……?」

リンクル「そう?」

的あて屋「はい、賞金……」っ50ルピー
的あて屋(どういう集中力してんだこの娘……)

ナビィ(うわぁ……おじさんの顔引き攣ってる……)

リンクル「もっかいやらせて!」チャリン

的あて屋「ああ、うん……」


的あて屋「……」

リンクル「パーフェクトっ♪」クルクル

ナビィ「もう30回だヨ……そろそろ別のとこ行こうヨ……」
ナビィ(何度も20ルピーもらって何度も50ルピー払う羽目になってるおじさんもいい加減可哀想だし……)

リンクル「ところでナビィ、“パーフェクト”ってどういう意味なの?」

ナビィ「知らなかったんだ……」ガクッ
ナビィ「“完璧”って意味ヨ……」

リンクル「そうなんだ! 良い言葉だね、パーフェクト!」

ナビィ(少なくともこの店のおじさんにとっては一生聞きたくない言葉になったと思うなぁ)
ナビィ「ねぇ、さっきも言ったけど、ナビィちょっと飽きてきちゃった。他のとこ行かない?」

リンクル「んー……じゃあこれで終わりにしよっか」
リンクル「次で最後にするね」チャリン

的あて屋「ハイヨロコンデー」

309: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/27(火) 21:59:46.10 ID:JlbP4/MV0
――なンでも屋

リンクル「ボルトある?」

なンでも屋「ボルト? って、クロスボウの矢のことですか?」

リンクル「うん」

なンでも屋「こちらでよろしいでしょうか」っ鉄のボルト

リンクル「……他にある?」

なンでも屋「いえ、うちで扱ってるのはこれだけです」

リンクル「じゃあそれでいいや。そのセット頂戴」

なンでも屋「30本の束で60ルピーになります」

リンクル「はい、ありがと」チャリン

ナビィ(見た目すごくゴツイのに接客はすごく丁寧ネ……)

310: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/27(火) 22:00:30.47 ID:JlbP4/MV0
――インゴー牧場改めロンロン牧場

エポナ「ヒヒーン」

リンクル「エポナの気の向くままに走らせてみたけど、まぁ、やっぱりここに辿り着くよね……」
リンクル「フフ、やっぱりお家がいいよね」ナデナデ

エポナ「ブルルルッ」

リンクル「よっ、と……」スタッ

コッコ「コッコッコッコ」

リンクル「こっこっこー」
リンクル「なんだか前と雰囲気変わったね」

ナビィ「あっ、見て見て、リンクル!」
ナビィ「インゴー牧場じゃなくて、ロンロン牧場になってるヨ!」

リンクル「ほんとだ……おじさん戻ってきたのかな」

ナビィ「心入れ替えてちゃんと仕事してたりしてネ!」
ナビィ「あれ? あそこに立ってるのは……」

311: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/27(火) 22:01:01.11 ID:JlbP4/MV0
リンクル「インゴーさん!」

インゴー「おう」
インゴー「……なんだよ」

リンクル「んー……前より楽しそうだなって」

インゴー「俺が?」

リンクル「うん。ね、エポナ」

エポナ「ブルルルッ」

インゴー「……そうかい」
インゴー「お前、本当にどうやってそいつを手懐けたんだ?」

リンクル「なーんにも。いつの間にか仲良くなっちゃったのよ」ナデナデ

エポナ「ブルルッ」

インゴー「……元気そうだな」
インゴー「放牧場にお嬢さんが居る。会ってみな」

リンクル「ん、ありがと」

312: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/27(火) 22:01:30.26 ID:JlbP4/MV0
――ロンロン牧場 放牧場

リンクル「マロンー!」

マロン「ん、妖精ちゃん!」
マロン「エポナ元気にしてる?」

リンクル「ご覧の通り!」

エポナ「ヒヒーン!」

マロン「フフッ、やっぱり妖精ちゃんによく懐いてる」
マロン「ねぇ、エポナと一緒に障害物レースに挑戦してみない?」

リンクル「障害物レース?」

マロン「外周に柵があるでしょ?」
マロン「あれを飛び越えて行くの。二周のタイムを計ってあげる」

リンクル「何それ面白そう! やってみる!」

エポナ「ヒヒィーン!」

313: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/27(火) 22:02:00.63 ID:JlbP4/MV0
パカラッ パカラッ

リンクル「はいやっ!」

エポナ「ヒヒィーン!」ダンッ

パカラッ パカラッ

マロン「あと一周!」
マロン「すごーい、やっぱり息ぴったりね」

ナビィ「ほんとにネ」
ナビィ(あれもリンクルの才能の一つなのかな)

パカラッ パカラッ

リンクル「あっはは、行くよ、エポナ! はいっ!」

エポナ「ヒヒィーン!」ダンッ

ナビィ(でも、久々にあんな楽しそうなリンクル見たかも)

314: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/27(火) 22:02:56.02 ID:JlbP4/MV0
マロン「すごい! あたしより良い記録じゃない!」

リンクル「そう? やったね、エポナ!」ナデナデ

エポナ「ブルルルッ!」

タロン「あの時の妖精のお嬢ちゃんか? 久しぶりだーよ」

リンクル「うん、久しぶり」

ナビィ「実はカカリコ村で一回会ってるんだけどネ……」

タロン「城だけじゃなく、牧場の問題まで解決してもらって、迷惑かけてばっかりで申し訳ないだ」

リンクル「いいのよ、ここの牛乳美味しいし、エポナが居てくれるお陰で旅も大分楽だしね」
リンクル「おじさんは仕事ちゃんとやってる?」

タロン「勿論だーよ」
タロン「今回の件で懲りただーよ……」

リンクル「そう?」チラッ

インゴー「……」
インゴー「んんっ、ごほん」

インゴー「タロンの旦那は戻ってきてから本当によく仕事してくれるようになったぜ」
インゴー「ま、俺は本来馬以外は専門外だからな。牛とコッコに関しちゃ旦那が居なくて困ってた」

リンクル「……」クスッ
リンクル「良かった、元通りになって」

315: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/27(火) 22:03:41.38 ID:JlbP4/MV0
リンクル「痛っ……こんなとこ火傷してたんだ……」ゴシゴシ

マロン「妖精ちゃん、入るよー?」ガチャッ

リンクル「えっ?」

マロン「洗いっこしましょ!」

リンクル「え、えー……も、もうそんな年でもないかなー、って……」

マロン「年なんか関係ないでしょー?」
マロン「もう、また怪我してる! 女の子なんだからお肌気をつけないと!」

リンクル「冒険中にそんなこと気にしてられないよ」

マロン「そんなこと言ってー……」
マロン「むっ、妖精ちゃん、やっぱり    おっきくなったね」ムニュムニュ

リンクル「ひゃああっ!? ち、ちょっと!?」

マロン「やーらかーい」ムニムニ

リンクル「マ、マロンだって……っていうかあたしより大きいでしょ、マロン!」

マロン「フフフッ、まぁねー!」ドタプーン

リンクル「このーっ! こーしてやるこーしてやる!」ムニュムニュ

マロン「ひゃんっ! やったなー!」

316: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/27(火) 22:04:09.25 ID:JlbP4/MV0
マロン「はぁー……はしゃいじゃったね」チャプン

リンクル「ほんと……」チャプン
リンクル(久しぶりに……ちょっと楽しかったかも)

マロン「……ねぇ、リンクル」

リンクル「うん?」

マロン「リンクルがどうして旅をしてるのか、詳しいことは知らないけど……」
マロン「もし、旅が終わったら、次はどこに行くかって決まってるの?」

リンクル「旅が終わったら? うーん……」
リンクル「何も決まってないかなぁ。終わったら終わったときだよ」

マロン「そっか……」
マロン「じゃあ、さ、その……」

マロン「もし旅が終わった時、何も決まってなかったらで、いいからさ……」
マロン「うちにおいでよ」

リンクル「ロンロン牧場に?」

マロン「うん。一緒に暮らそう?」

リンクル「……」
リンクル「……ありがとう。考えとくね」

マロン「約束、だよ……?」

リンクル「……うん」

317: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/27(火) 22:04:43.99 ID:JlbP4/MV0
エポナ「(おひさー)」

馬A「(おっ、エポナ先輩! おひさっす!)」

馬B「(おひさっすー! めっちゃ速かったっすね!)」

エポナ「(リンクルは乗り方が優しくて走りやすいからねー。楽しいよー)」

馬A「(かーっ、やっぱめちゃくそ速ぇエポナ先輩は人間にも恵まれるんすね!)」
馬A「(俺もリンクルさんみたいな人間に乗られてぇっす!)」

エポナ「(あんたはインゴーさんに選ばれて最初ちょこっと乗られてたじゃん)」

馬A「(あ、見てたんすね! いや、あれマジで初めてかよこの人ってくらい上手かったっすよ!)」

馬B「(まーじで? くそー、あん時インゴーさんの近くに寄ってりゃ選ばれてたかもしれねぇのに)」

馬A「(へっへっへ、運が悪かったなぁ)」
馬A「(あ、そうだ! エポナ先輩、旅のお話聞かせてくださいよ! マジ気になるっす!)」

エポナ「(いいよー。っていってもあたしもあんまり詳しくは知らないんだけどねー)」

318: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/27(火) 22:05:09.17 ID:JlbP4/MV0
――翌朝

リンクル「おはよ、ナビィ……」ノソノソ

ナビィ「おはよう、お寝坊さん」
ナビィ「マロンは?」

リンクル「……まだ寝てると思う」

ナビィ「ああ……それでインゴーさんが文句言いながら朝ご飯作ってるんだ」

リンクル「昨夜大分遅くまで起きてたからね……」

ナビィ「それで、今日はどうするの?」
ナビィ「また障害物レース?」

リンクル「あ、そうね……」
リンクル「もう一度、森の方に行こうと思うんだ」

ナビィ「森に? どうして?」

リンクル「ボルトを作ろうと思ってね」

ナビィ「いっつもその辺の木で作ってるけど、森の木と何か違うの?」

リンクル「森の木で作ったボルトの方がよく飛ぶの」

319: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/27(火) 22:05:47.46 ID:JlbP4/MV0
――迷いの森

リンクル「昨夜はこの辺り雨だったみたいね」

ナビィ「靴が泥だらけじゃない。またマロンに怒られちゃうヨ?」

リンクル「あはは……」
リンクル「……?」

ナビィ「どうしたの?」

リンクル「誰か居る……コキリ族じゃないみたい」

ナビィ「ほんとだ……大人だ」
ナビィ「こんなとこで項垂れて……魔物になっちゃうヨ」

リンクル「早く出て行くように言わなきゃ」
リンクル「あのー……」

大工の息子「……」

リンクル「何をしにこの森に来たのか知らないけど、早く出て行った方が身の為だよ?」
リンクル「森の外の人がここに長く居ると魔物になっちゃうから……」

大工の息子「……お前は?」

リンクル「あたしは居てもいいんだってさ。ほら、妖精」

ナビィ「ハロー、ハイリア人のお兄さん」

大工の息子「そうか……この森に居られるってことは、お前、多分良い奴なんだろうな……」
大工の息子「頼みがあるんだ……これを……これをカカリコ村のクスリ屋のババアに届けてくれ」スッ

リンクル「……何これ? キノコ?」

大工の息子「時間が経つと消えちまう……頼む……!」

リンクル「……分かった。やってみるよ」
リンクル「あなたも、早めに森を出てね」

320: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/27(火) 22:06:14.03 ID:JlbP4/MV0
――カカリコ村

リンクル「エポナ、ありがとね」ナデナデ

エポナ「ブルルルッ」

ナビィ「キノコは?」

リンクル「まだ大丈夫」
リンクル「クスリ屋って、登山道の前にあるあのお店だよね?」

ナビィ「うん」

リンクル「でも、あのお店にお婆さんなんて居たかしら……」タタタタッ

321: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/27(火) 22:06:46.62 ID:JlbP4/MV0
――カカリコ村 クスリ屋

リンクル「こんにちはー」

クスリ屋の店主「いらっしゃい。何をお探しかな?」

リンクル「えーと、クスリ屋のお婆さんに、って言われたんですけど……」

クスリ屋の店主「ああ、あの人なら裏手の方のクスリ屋だよ」
クスリ屋の店主「そこの勝手口から繋がってるから、行ってごらん」

リンクル「ありがとうございます」
リンクル「……あ、それとその赤い薬一つください」

クスリ屋の店主「はい、毎度あり!」

322: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/27(火) 22:07:25.78 ID:JlbP4/MV0
――カカリコ村 裏手のクスリ屋

リンクル「こんにちはー」ガチャ

クスリ屋の婆さん「……いらっしゃい」
クスリ屋の婆さん「クン……クン……」

クスリ屋の婆さん「この怪しげなニオイは……」
クスリ屋の婆さん「あんた……何か持ってるね?」

リンクル「え、分かるんですか?」

クスリ屋の婆さん「伊達に何十年もクスリ屋やってないよ」

リンクル「これ、森でもらったんですけど……」
リンクル「カカリコ村のクスリ屋のお婆さんに、って」っあやしいキノコ

クスリ屋の婆さん「……あのバカ、森に入ったのかい……そうかい」
クスリ屋の婆さん「そいつをよこしな」

リンクル「は、はい……」

クスリ屋の婆さん「そこで待ってな」


クスリ屋の婆さん「……ほら、これを持って行きな」
クスリ屋の婆さん「あのバカに会ったら渡しとくれ。約束の万能薬だ」っあやしいクスリ

リンクル「あ、ありがとう……」

クスリ屋の婆さん「尤も……これが効くのは人間だけだがね……」

リンクル「……!」ダッ

バタン

クスリ屋の婆さん「……バカにつけるクスリはない、っていうけどねぇ……」

323: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/27(火) 22:07:52.32 ID:JlbP4/MV0
――ハイラル平原 森の入口

リンクル「……出てきた形跡はないね」

ナビィ「どうして分かるの?」

リンクル「足跡。あたしとエポナの分しかない」

ナビィ「ほんとだ……じゃあ、まだ森の中に居るのかな?」

リンクル「多分ね……」

324: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/27(火) 22:08:26.90 ID:JlbP4/MV0
――迷いの森

リンクル「この辺り……あ、そうだわ。あの切り株の下」

ナビィ「居なくなってる……?」

リンクル「……」

「あの人、もう居ないヨ」

リンクル「!」ゾクッ
リンクル「……ファド」クルッ

ファド「私の名前知ってるの?」

リンクル「……いや、気のせいよ」
リンクル「それで、あの人は? 薬を渡さなきゃいけないの」

ファド「……ふぅーん」
ファド「森に入った人はみぃ~んな居なくなる」

ファド「みぃ~んなスタルフォス。だから居ないの、あの人」
ファド「残ったのはノコギリだけ。フフッ!」

リンクル「……」

ファド「それ……森から作ったでしょ?」
ファド「……返して!」ズイッ

リンクル「っ……!」ジリッ
リンクル「わ、分かったわよ。はい」っあやしいクスリ

ファド「フフ、じゃあこれあげる」っ密猟者のノコギリ

リンクル「……ありがとう」

ファド「お姉さん、不思議な人ネ」スッ
ファド「森の人じゃないのに、森の匂いがするヨ?」ペタペタ

リンクル「……あたしは、違うのよ」

ファド「そう? フフフッ」
ファド「あなたも……なっちゃう?」

リンクル「……」ザッ

325: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/27(火) 22:09:19.95 ID:JlbP4/MV0
――ハイラル平原

リンクル「なんだか釈然としないなぁ」

ナビィ「お兄さんのこと?」

リンクル「うん」
リンクル「なんで、どういう理由があってあたしのお父さんは森に許されてたんだろ?」

ナビィ「さぁ……」
ナビィ「でも、もしかしたら森を大切にする人だったのかもしれないヨ」

リンクル「そんなもんなのかなぁ」
リンクル「ファイはどう思う?」

ファイ「明確に関係があるとは言い切れませんが、マスターの血筋については一つ気になる点があります」

リンクル「血筋?」

ファイ「イエス、マスター。これはハイラル王国の建国に関わることですが」
ファイ「あなたはファイの以前のマスター……“女神の騎士”と呼ばれた剣士の直系と思われます」

326: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/27(火) 22:11:24.01 ID:JlbP4/MV0
リンクル「女神の騎士って?」

ファイ「ご存知ないのも仕方ありません。女神ハイリアに関する神話は王家にのみ伝えられているようです」
ファイ「女神ハイリアの名は知られていますが、その神話の多くは王家以外の者は殆ど知らないものと思われます」

リンクル「んー、確かに、デクの樹様から名前だけは聞いたけど、詳しくは聞いてないかも」
リンクル「どんな神話?」

ファイ「今から数百年前、ハイリア人の始祖となる人々が大地から切り離され空に浮かぶ地に暮らしていた時代」
ファイ「大地に封印されていた邪悪なる者が復活し、女神の転生した少女を襲いました」

ファイ「その少女を救うべく大地に降り立ち、邪悪なる者を再び封印したのが“女神の騎士”です」
ファイ「女神が転生した少女は大地でハイリア人の王国を築きました」

リンクル「それが今のハイラル王国ってわけね」
リンクル「空に浮かぶ土地、っていうのは初めて聞いたなぁ」

ナビィ「あたしも初めて聞いたわ……」
ナビィ「その土地は今も空の上にあるの?」

ファイ「把握しておりません」

リンクル「なーんだ」
リンクル「でも、まぁ、面白い話ありがとね」

ファイ「いいえ、マスター。お礼には及びません」

327: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/27(火) 22:11:52.53 ID:JlbP4/MV0
――翌日 ハイリア湖畔 釣り堀

リンクル「なんとなーくハイリア湖来て釣り始めちゃったけど……」
リンクル「もう三日も遊んでるね。こんなことしてていいのかなぁ」

ナビィ「大丈夫だヨ。勇者も偶にはゆっくり休まなきゃ」
ナビィ「次は“砂の女神”に行くんでしょ?」

リンクル「うん」
リンクル「けど、結局それが何なのか全く分かんないんだよね」

ナビィ「そだネ……」

リンクル「みずうみ博士なら分かるかなー」

ナビィ「……リンクル、その竿動いてない?」

リンクル「えっ?」
リンクル「うわっ、引いてる!」カリカリカリ

ナビィ「頑張って!」

328: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/27(火) 22:12:57.23 ID:JlbP4/MV0
――ハイリア湖畔 みずうみ研究所

みずうみ博士「おや、君は……この前の妖精のお嬢ちゃんか」
みずうみ博士「ハイリア湖はすっかり元通りじゃ」

リンクル「はい、知ってます」
リンクル「今日は別の用事で」

みずうみ博士「ふむ?」

リンクル「“砂の女神”……って言われて、何だか分かりますか?」

みずうみ博士「砂の女神、とな?」
みずうみ博士「うーむ……分かるようで分からんな……」

リンクル「……そう、ですか」

みずうみ博士「いや……もしかしたらアレのことかもしれん」

リンクル「アレ?」

みずうみ博士「ここから西に行くとゲルドの谷がある」
みずうみ博士「谷を抜けた先……道行く人を惑わせるという幻影の砂漠の、その奥にあるのが邪神の巨像じゃ」

リンクル「邪神の巨像……」

みずうみ博士「かなり昔に遠征に参加したという兵士に聞いた話でな、ワシも詳しいことは知らんが……」
みずうみ博士「確か邪なる女神の像だと言っておった。邪神は邪神でも女神じゃからな」

リンクル「うーん……」
リンクル「ありがとうございます、行ってみます」

みずうみ博士「西方はゲルド族の土地じゃ」
みずうみ博士「当然ながらハイリア人に良い印象は持っておらん筈だから、気をつけてな」

329: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/02/27(火) 22:13:26.03 ID:JlbP4/MV0
――ロンロン牧場

マロン「本当に西の方へ行っちゃうの?」

リンクル「うん。危険だとは聞いたけど、行かなきゃならない場所が西にあるからね」
リンクル「また来るよ」

マロン「うん……待ってる」
マロン「食糧はそれで足りる?」

リンクル「三日分もあれば平気だって、おじさんが」
リンクル「西の関所跡までは馬車で二日ってとこらしいから、エポナならもっと早いよ」

マロン「そう……気をつけてね」

リンクル「うんっ!」
リンクル「あ、それと牛乳までつけてくれてありがとね! ここの牛乳元気が出るから大好き!」

マロン「あ、いや、今日のは商品用のロンロン牛乳じゃないんだ……ごめんね」

リンクル「そうなの? まぁいいよ、この牧場のならみんな美味しそうだから」

マロン「あ、ありがとう……///」

ナビィ「?」

336: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/05(月) 22:55:35.03 ID:mlfzM24X0
 ep.17 幻影の砂漠


――ハイラル平原

リンクル「段々空気が乾燥してきたね……」

ナビィ「風の感触も違うヨ……」

リンクル「……喉渇いた」
リンクル「牧場でもらった牛乳、飲んでみよっか」

ナビィ「そうだね。あんまり日持ちするものじゃないし……」

リンクル「んっ」キュポンッ
リンクル「んくんく」ゴクゴク

ナビィ「どう?」

リンクル「……なんだか、不思議な味」

ナビィ「不思議?」

リンクル「なんだろ……こう、いつものロンロン牛乳じゃないっていうか……」
リンクル「そもそもこれ牛乳なのかなって……」

ナビィ「ちょっと舐めてみていい?」

リンクル「うん」

ナビィ「……」ペロッ
ナビィ「……んんー、なんだろうねこれ……?」

リンクル「ファイは何だと思う?」

ファイ「不明。こうした成分の分析は賢者の間で出すことの出来る人の姿でしか出来ません」

リンクル「あ、そう……」
リンクル「ま、優しい美味しさだからこれはこれでいいや」

337: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/05(月) 22:56:12.41 ID:mlfzM24X0
――ゲルドの谷 関所跡

リンクル「結構ハイリア人が居るね」
リンクル「カカリコ村や以前の城下町程じゃないけど、賑やかだ」

ナビィ「元々国境で砦があったから、まだそれなりに活気があるみたい」
ナビィ「ハイリアの兵隊さんも居るよ」

リンクル「あのー」

兵士「うん? 旅人かい?」

リンクル「はい。砂漠に入りたいんですけど……」

兵士「砂漠に? いや、入りたいというなら止めることは出来ないが……」
兵士「谷川の橋がゲルドの連中に落されてね、我々も渡る方法がなくて困ってるんだ」

リンクル「橋を?」

兵士「ああ。向こう側にカカリコ村の大工達が残ってるから心配だ……」

リンクル「親方達が……」
リンクル「分かりました、ありがとうございますっ」

338: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/05(月) 22:56:55.35 ID:mlfzM24X0
――ゲルドの谷

リンクル「ほんとだ……橋が落ちてる」

ナビィ「どうしよっか?」

リンクル「んー……出来るかなぁ」
リンクル「エポナ、行けそう?」ポンポン

エポナ「ヒヒーン」

リンクル「……そっか」
リンクル「よーし、行くよ! はいやっ!」

エポナ「ヒヒィーン!」パカラッ パカラッ

ナビィ「えっ、ちょっ……ま、まさか」

リンクル「はいっ!」

ダンッ

エポナ「フーッ」ザッ

ナビィ「す、すごい……あの距離を飛び越えちゃった……」

リンクル「やったやった、すごいよエポナ!」ナデナデ

エポナ「ブルルッ」

339: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/05(月) 22:57:22.48 ID:mlfzM24X0
リンクル「ん……あっ」

ナビィ「あのテントの前に立ってるのって……」

リンクル「親方だ! 久しぶりー!」

親方「んん……? なんだお前さんは……」
親方「……おっ、まさかあん時の森から来たって嬢ちゃんか?」

リンクル「うんっ! 覚えててくれたんだ!」

親方「まぁな」
親方「そんなことよりお前さんどうしたんだこんなところで」

リンクル「親方こそどうしたの?」

親方「元々は橋のこっち側にもいくつか店作る為に来たんだけどよ」
親方「ゲルドの奴らが橋を落としやがって、そっちも直さなきゃならなくなっちまった」

親方「けど、俺っちの仲間が居ねぇんで人手が足りねぇんだ」
親方「あいつら、“大工はダッセェから盗賊になる!”とか抜かしやがって……」

親方「ゲルドの砦の方へ行っちまいやがったんだよ」
親方「お前さん……ゲルドの砦へ行くなら俺っちの仲間の様子を見てきてくれねぇか」

リンクル「いいけど……親方は?」

親方「ゲルド族ってのは女だけの部族だからよ、迂闊に男が砦に近寄ると牢屋に放り込まれちまう」
親方「お前さんなら普通に近寄れるだろ。ハイリア人なら見境なし、ってわけじゃねぇだろうし」

リンクル「そんなもんかなぁ……」
リンクル「まぁいいや。ありがとう、行ってみるよ」

親方「ああ、それとな、ちょっと待て」

リンクル「?」

340: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/05(月) 22:57:54.02 ID:mlfzM24X0
親方「お前さん、木を切る道具余分に持ってねぇか?」

リンクル「木を切る道具?」

親方「ゴロンの鍛冶屋が作った道具が折れちまってよ」
親方「あれがねぇのも仕事にならねぇから困ってんだ」

リンクル「うーん……いつも使ってる剣鉈は流石にあげられないし……」
リンクル「もう一個あるにはあるけど、これ本来あたしのじゃないからなぁ」

親方「何だそりゃ?」

リンクル「ほら、このノコギリ」っ密猟者のノコギリ

親方「ありゃ、なんでお前さんがそれ持ってんだ?」
親方「バアさんのとこに置いてきた筈なんだが……」

リンクル「どこかのお兄さんが森に持ち込んだんだって」
リンクル「あたしは森の子からこれもらったの」

親方「森……っけ、あのバカ息子め……」
親方「ありがとな、嬢ちゃん。ノコギリは俺っちがもらっとくぜ」

341: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/05(月) 22:58:40.27 ID:mlfzM24X0
――ゲルドの砦前

リンクル「うーん、ここ門みたいだけど」

ナビィ「誰も居ないね……?」
ナビィ「こういうとこって門番とか居るのが普通だと思うけど……」

リンクル「お休みなのかなぁ」
リンクル「ま、いいや。通っちゃお」


ゲルド門番「きゅう……」

「……来たか……」

342: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/05(月) 22:59:09.46 ID:mlfzM24X0
――ゲルドの砦

ゲルドA「おい、そこのお前!」

リンクル「はーい」

ゲルドB「ハイリア人……にしても見かけない顔ねぇ」

リンクル「遠くから来たからね」

ゲルドA「門をすり抜けてどうやってこんなところまで入ったんだ……」

ゲルドB「どうするぅ?」

ゲルドA「どうするもこうするも、牢屋に放り込むしかないだろう」
ゲルドA「動くなよ、少しでも抵抗したら痛い目を見るぞ」

リンクル「ええー」

ゲルドB「ごめんねぇ、規則だからぁ」
ゲルドB「まあ、牢屋で暫く大人しくしててよぉ。処遇はすぐ決まると思うからさぁ」

343: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/05(月) 22:59:41.78 ID:mlfzM24X0
――ゲルドの砦 牢

ゲルドA「そこで大人しくしてろ」

ガコーン

ナビィ「捕まっちゃったネ……」

リンクル「うん」

ナビィ「持ち物も全部取り上げられちゃったけど、どうするの?」

リンクル「んー……暫くは何も出来ないかなぁ」
リンクル「第一にこれじゃロクに動けないし」ギチギチ

ナビィ「そだね……」

344: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/05(月) 23:00:28.23 ID:mlfzM24X0
ガチャ

ナビィ「……」シュ……

リンクル「?」

「……ふーん、あんたが侵入してきたハイリア人?」

リンクル「うん」

ゲルド幹部「あたいはナボール様からここを任されてるもんだ」

リンクル「ああ、うん、よろしく」

ゲルド幹部「どうやって門を通った?」

リンクル「え、普通に……誰も居なかったし」

ゲルド幹部「……誰も居なかった?」
ゲルド幹部「あの門は交代で門番が立ってる」

ゲルド幹部「あんたが捕まった時の門番は、門の脇の岩陰で伸びてた」
ゲルド幹部「あんたがやったんだろ? 門番をぶん殴って、岩陰に隠したんだろ?」

リンクル「え……」
リンクル「そ、そんなの知らないよ」

345: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/05(月) 23:00:59.26 ID:mlfzM24X0
リンクル「あたしはただ大工の親方に頼まれて大工さん達を探しに来たのと砂漠に行きたいだけで」
リンクル「別にゲルド族に何かしようとかは全然……」

ゲルド幹部「……緑のフード」

リンクル「?」

ゲルド幹部「緑の服、ハイリアの盾、やたらと上等な馬……」
ゲルド幹部「そして相当な業物の剣と二挺クロスボウを持った、ハイリア人にしては長身の女」

ゲルド幹部「ハイラル中……いや、世界中探したって二人と居ないね、こんな奴」
ゲルド幹部「そうだろう、時の勇者?」

リンクル「……!」

ゲルド幹部「時の勇者はガノンドロフ様から厳命されてる要注意人物だ」
ゲルド幹部「それがまさかノコノコこの砦に入ってきて、あっさり捕まるとは夢にも思わないよ」

ゲルド幹部「明日、お前は弓の的にしてやる……と言いたいとこだけど」
ゲルド幹部「あたいらも活気のないハイラルには辟易し始めててね、最近はどうも退屈で鬱憤が溜まってる」

ゲルド幹部「そこでね、ちょっとしたゲームを思いついたんだ」
ゲルド幹部「ルールは簡単。明日の朝、幻影の砂漠に送り出してやる。その代わり、持ち物はあの剣一本だけだ」

ゲルド幹部「もし生きて帰ってきたら預かってる持ち物は全部返してやるし、大工達も解放する」
ゲルド幹部「この話を断るんなら明日の朝あんたが居るのは砂漠じゃなくて裏の流鏑馬場の的場だ」

リンクル「……」

ゲルド幹部「まぁ、今夜ゆっくり考えるんだね」
ゲルド幹部「少なくとも明日の朝までは生きてんだから」

346: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/05(月) 23:02:22.85 ID:mlfzM24X0
リンクル「……」

ナビィ「だ、大丈夫……?」

リンクル「……腕が痛い」ギチギチ

ナビィ「椅子に縛り付けられてるんだもんネ……せめて横になれれば楽かな?」

リンクル「どうだろう……」

ナビィ「もう日も暮れてるし、一旦寝ちゃえば? 起こしたげるよ?」

リンクル「そうしようかな……」

ガチャ

リンクル「……誰?」

ゲルド門番「あたしだよ」

リンクル「……?」
リンクル「いや、ほんとに誰?」

ゲルド門番「忘れたってのかい? ええ?」
ゲルド門番「あんただろ、後ろからいきなり殴りやがって!」

リンクル「し、知らないんだって、ほんとに!」

ゲルド門番「とぼけんじゃないよ!」
ゲルド門番「隊長は朝まで殺すなって言ってたけどね、あたしがこの場でぶっ殺してやる」シャキンッ

リンクル「……!」

347: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/05(月) 23:03:10.52 ID:mlfzM24X0
ゲルド門番「楽には死なせないよ。身体中を切り刻んで、腸を引きずり出してやるからな」

リンクル「……やっぱりちょっと思い出せないからもう少し顔をよく見せてよ」

ゲルド門番「ああ?」
ゲルド門番「あたしの面今更思い出すって?」ズイッ

リンクル「ふんっ!」ゴシャッ

ゲルド門番「ぐふくっ!?」ドタッ

ナビィ(頭突きが顔面にモロに……うわー、痛そう……)コッソリ

リンクル「すぅー……」
リンクル「ふっ!!」ダンッ

ナビィ(えっ……椅子ごと宙返りなんて……)
ナビィ(足は椅子に縛られてて使えないから、まさか身体で勢い付けただけで飛んだの……?)

ゲルド門番「……!!」バッ

バキャンッ

ナビィ(椅子は壊れて足は自由になったけど、手が使えない状況でどうするんだろう……?)

ゲルド門番「おっ……お前ぇぇぇ!」

リンクル「はっ!」ドコッ

ゲルド門番「ぐうっ!」

カランカラン

ナビィ(そうだったね、以前は足技で魔物と戦ってたんだもんネ……)
ナビィ(ていうか改めて見ると人間離れしてるなぁ、リンクル……)

348: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/05(月) 23:04:00.83 ID:mlfzM24X0
ゲルドA「何だ、騒がしい」

リンクル「くぅ……ぅぅ……!」ギリギリギリ

ゲルド門番「うぐぐぐ……!」パタパタ

ゲルドA「なっ……おい、お前! 何してるんだ!」
ゲルドA「お前もなんでこんなところに居る!」

ゲルドB「何事ぉー?」ヒョコッ

ゲルドA「こいつらを引き離せ!」

ゲルドB「あらまぁ」

ゲルド門番「ちっ……命拾いしたね」

リンクル「そっちこそ……」

ゲルドA「縛ってたのになんて奴だ……」

リンクル「遅いよ……危なく殺されるとこだった……」ボソボソ

ナビィ(つい見物しちゃってたけど、早めに警備の人誘導してくるべきだったね……ごめんね、リンクル……)

349: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/05(月) 23:04:57.74 ID:mlfzM24X0
――翌朝

ゲルド幹部「昨夜は散々だったね?」

リンクル「ああ、まぁね……」

ゲルド幹部「で、どうする?」
ゲルド幹部「剣一本持って幻影の砂漠に繰り出すか、大人しく流鏑馬の的になるか」

リンクル「……」
リンクル「砂漠に行くよ。マスターソード返して」

ゲルド幹部「ふふん、生きて帰れると思ってんだね」
ゲルド幹部「精々頑張ってよ」

350: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/05(月) 23:05:34.35 ID:mlfzM24X0
――幻影の砂漠

ゲルドA「前方に砂嵐が見えるな?」

リンクル「うん」

ゲルドA「あの向こうには魂の神殿がある」
ゲルドA「もしもあの神殿から何か持ち帰ることが出来たら、お前の勝ちだ」

ゲルドA「尤も……あそこはツインローバのお二人が護る神殿」
ゲルドA「辿り着くことも困難だろうが、辿り着けてもそこで殺されるのがオチだろうな」

リンクル「……そう」

ゲルドA「……まぁ、お前のことは嫌いじゃないからな」
ゲルドA「砂漠を越えるヒントを一つやる」

ゲルドA「“真実を見抜く目を持つ者は幻の案内人がその道を示すだろう”」
ゲルドA「さぁ行け。せめて死なないようにな」

リンクル「……ありがと」

ゲルドB「気をつけてねぇ」

351: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/05(月) 23:06:27.76 ID:mlfzM24X0
ゲルドA「本当によろしかったのですか?」

ゲルド幹部「何が?」

ゲルドA「時の勇者です。あんな小娘ですが、もし魂の神殿に辿り着いたら……」

ゲルド幹部「どうだろうね。実際あの神殿の様子はあたいらも知らないわけだし」
ゲルド幹部「ナボール様含む、あの神殿に駐留してた仲間達のことも心配だよ」

ゲルドB「砂嵐が起きるようになって以来、あそこに居た仲間とは連絡不能ですもんねぇ」

ゲルド幹部「ああ。ツインローバのお二人も全然教えてくれやしないしね」
ゲルド幹部「それなら、いっそあいつに行かせて辿り着かせちまえばいい」

ゲルド幹部「途中でくたばったって、あたいらは大して困んないし」
ゲルド幹部「それより昨晩あいつを勝手に殺そうとした奴だけど」

ゲルドB「あれですねぇ」
ゲルドB「あの子、今朝になって目が覚めたんですけど、どうも数日前からの記憶がないんですよぉ」

ゲルド幹部「……とすると、やはりツインローバのお二人か」

ゲルドB「その可能性が高いですねぇ」

ゲルド幹部「まったく……さっぱり分からない砂漠越えのヒントに今回の気まぐれな洗脳……」
ゲルド幹部「あのお二人の気まぐれには頭痛がするな……」

352: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/05(月) 23:11:38.64 ID:mlfzM24X0
リンクル「ほんとにマスターソード一本なのね……」
リンクル「身が軽いのは良いけど、なんだか盾もクロスボウもないのは不安だなぁ」

ファイ「警告。砂嵐の中では顔を何かで覆わないと危険です」

リンクル「ゾーラの里の時のマフラー顔に巻いとこ……」
リンクル「しっかし、“真実を見抜く目”ってなんだろうね。分かりそうで分からないような……」

ナビィ「リンクルー!」リリリリン

リンクル「あっ、ナビィ!」

ナビィ「やっと見つけた!」

リンクル「どう? 何か持ってこられた?」

ナビィ「ゴメンネ、あたしの体じゃまことの眼鏡しか持ってこられなかった……」

リンクル「いいよ、まことの眼鏡だけでも十分助か……ハッ」
リンクル「……大当たり」

ナビィ「え?」

353: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/05(月) 23:12:27.93 ID:mlfzM24X0
ポウ「行きはヨイヨイ、帰りはイナイ」フヨフヨ
ポウ「砂漠を越えたきゃオイラについてきな」フヨフヨ

リンクル「幻の案内人、ね……」

ナビィ「何が見えてるの?」

リンクル「幽霊。案内してくれるんだってさ」

ナビィ「へぇ……」
ナビィ「……あ、大当たり、ってそういうこと?」

リンクル「そういうこと」
リンクル「ただ見失わないように気をつけないとね」

354: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/05(月) 23:19:26.26 ID:mlfzM24X0
――巨大邪神像

リンクル「はぁ……はぁ……」ザッザッ
リンクル「ふぅ……ん?」ザッ

ナビィ「砂嵐が晴れた……?」
ナビィ「Look! 大きな石像! あれが女神かな?」

リンクル「多分……あれが、邪神?」
リンクル「邪神、っていうからもっと禍々しいものかと思ってた」

ファイ「あれはハイリア人が信仰している女神と同一の女神、女神ハイリアを模したものと推測されます」

リンクル「ゲルド族も同じ女神を信仰してるの? それにしてはなんだか雰囲気が違うような……」

ファイ「像を作った時代の人々は実際に女神ハイリアを見たわけではない為と思われます」

ナビィ「同じ話を聞いても人によって想像する光景は違う、っていうものネ」

リンクル「成程……じゃあ、あのトライフォースが描かれた台座は?」

ファイ「ゲルド族ではなく、統一戦争時にここまで侵攻したハイラル軍が刻んだものと推測」
ファイ「また、像が破壊されているのも、自然による風化等ではなく何者かが破壊行為を行ったものと思われます」

リンクル「ふーん……また統一戦争かぁ」
リンクル「あれさ、顔の辺りを重点的に破壊されてる気がするけど、そんなに気に入らなかったのかな」

ナビィ「さあ……?」

リンクル「同じ神様を信仰してるのに、こんなに違うなんて変なの」

ファイ「人にとって神は実際に見るのではなく口伝を解釈するものである為、このような違いが生まれます」
ファイ「ゲルド族にとっての女神ハイリアの姿はハイリア人にとっては受け入れ難いものであったと思われます」

リンクル「ふーん……」

355: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/05(月) 23:20:13.57 ID:mlfzM24X0
――大妖精の泉

魔法の大妖精「よくここまで来たわね、リンクル」
魔法の大妖精「ここではあなたに魔法のアイテムを授けるわ」

リンクル「ディンの炎、フロルの風に続く魔法のアイテムですね」

魔法の大妖精「さあ、受け取って」

リンクル「ありがとうございます」

魔法の大妖精「それはネールの愛。少しの間、敵の攻撃からあなたの身を護る魔法よ」
魔法の大妖精「どんな攻撃も弾き返せるけど、魔力の消費が激しいから、ここぞという時に使ってね」

リンクル「攻撃、ワープと来て、今度は防御ね」

356: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/05(月) 23:20:46.70 ID:mlfzM24X0
――巨大邪神像

リンクル「さて……取り敢えずここで暫く休憩するとして、次は魂の神殿だよね」
リンクル「もう一度あの砂嵐に入れば別の幽霊が居るのかなぁ」

ファイ「マスターに報告。あの像の内部には巨大な空間があると推測されます」
ファイ「ゲルド族とハイリア人ではこの像に対する認識が違う為、マスターの解釈には食い違いがある確率65%」

ナビィ「……あ、そっか。ゲルド族にとってはこれは“邪神”像じゃないんだ」
ナビィ「ハイリア人は邪神像って呼ぶけど、ゲルド族はもっと別の名前で呼んでる筈だよネ」

リンクル「あー……じゃあ、そうするとこれがゲルド族の言う魂の神殿かもしれない、ってこと?」

ファイ「イエス、マスター」

リンクル「んー、確かに入口っぽいのは見えるね」
リンクル「それじゃ、あの像の中入ってみよっか」

ナビィ「何か持って来いって言われてたんだったネ」
ナビィ「もしかしたらすごいお宝があったりして!」

リンクル「どうかなぁ……何か居るって話だったし」

ナビィ「あー……そうだね。用心はしとかないと」
ナビィ(……あれ? じゃあなんでリンクルにこんなことさせるんだろう、あの人達……?)

ナビィ(あの人達が言ってた“ツインローバ”って、多分ゲルド族の誰かよね?)
ナビィ(リンクルを確実に倒せるっていうよっぽどの自信がある? それともリンクルに倒してほしいとか?)

リンクル「ん、ここだここだ」
リンクル「よーし、行くぞー」

ナビィ(なんだかいつも以上に不安だなぁ……)

360: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/06(火) 21:10:32.78 ID:XhXxrjet0
なんか店長が娘との結婚を強力に勧めてくるけど、30一歩手前の腐女子と結婚とか怖すぎる


実は最初、ゲルドの砦で慰安婦として飼われるか砂漠に行くか選べとでも言わせようかと迷った


今日で完結まで持っていこうかなぁ

361: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/06(火) 21:11:15.32 ID:XhXxrjet0
 ep.18 魂の賢者


――魂の神殿

ファイ「マスターの読み通り、この像の内部が魂の神殿である確率90%」

リンクル「へぇ……これ、石像の中が神殿なんだ……」

「今となってはツインローバの実験場だけどね」

リンクル「……シーク」
リンクル「あんたってどこにでも現れるんだね」

シーク「僕は旅の吟遊詩人。僕の行き先と君の行き先が偶々同じだけさ」

リンクル「ふーん……」
リンクル「ところでさ、あんたは幻影の砂漠をどうやって越えたの?」

リンクル「あたしはまことの眼鏡があったから来られたんだけどさ」
リンクル「あんたもそれと同じようなものがあるわけ?」

シーク「……」

リンクル「……」
リンクル「……まぁ、いいけど」

リンクル「……話変わるんだけど」
リンクル「シークさ、自分の姿を鏡で見たことある?」

シーク「……」

リンクル「……だんまり」
リンクル「答えたくないことだらけなんだね」

シーク「……リンクル、君は」

リンクル「いいよ、今は答えなくて」
リンクル「いつかあんたが教えたくなったら、教えてね」

シーク「……」

リンクル「それより、この神殿のこと教えて」

362: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/06(火) 21:12:00.64 ID:XhXxrjet0
シーク「ツインローバは双子の魔法使いの婆さんだ」
シーク「ガノンドロフの教育係も務めたと聞く」

リンクル「ガノンドロフの……!」

シーク「この神殿は遥かな昔からここにあり、ある時代にゲルド族が今の形に造り替えたといわれている」
シーク「複雑な内部はゲルド族の要塞としても機能し、統一戦争時にはこの地で多くの血が流された」

シーク「ハイラル軍が撤退して久しい今となっても、ゲルド族はここを拠点の一つとしているらしい」
シーク「そしてガノンドロフ軍の大物である、ツインローバがここを護っている筈だ」

リンクル「そう……ありがと」

シーク「気をつけるんだリンクル。奴らの趣味は洗脳……」
シーク「君が捕まらないのは兎も角、ゲルド族には注意するんだ」パァン

リンクル「うっ……!」
リンクル「……消えた」

リンクル「もう、今度こそ一緒に来てくれるのかと思ったのに」
リンクル「……む」シャキンッ

ガチャン……ガチャン……

363: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/06(火) 21:12:27.94 ID:XhXxrjet0
アイアンナック「……」ガチャン ガチャン

リンクル「……大きな斧を持った、鎧の戦士?」

アイアンナック「……オォン!」ブオンッ

リンクル「っ!」バッ

ナビィ「気をつけてリンクル! 今は盾がないから攻撃を防ぐには……」

ファイ「マスターに警告。あの敵の攻撃は斧自体の重量と機械の補助により、非常に威力が高いと思われます」
ファイ「盾があっても攻撃を防げない確率90%。受け止めたりせず、回避することを強く推奨します」

リンクル「確かにあんなのもらったら一撃で真っ二つにされそうだもんね……おっと!」バッ

アイアンナック「フンッ!」ドコッ

リンクル「……あの鎧、重そうだね」

アイアンナック「ハアッ!」ブオンッ

リンクル「よっ」バッ
リンクル「足元ががら空きよ!」ダッ

ガチャーン

364: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/06(火) 21:13:16.90 ID:XhXxrjet0
アイアンナック「ウオォッ!」

ナビィ「鎧が少し剥がれた!」

アイアンナック「……!」ブオンッ ブオンッ

リンクル「うわっ!」バッ

ナビィ「Watch out! 敵の動きが素早くなったヨ!」

リンクル「このっ……!」タンッ

アイアンナック「……!」

リンクル「せいっ!」バキンッ

アイアンナック「グオアアッ!」

リンクル「っと」シュタッ

ナビィ「やった、兜を叩き割っちゃった!」

ガチャン ガチャガチャ……

アイアンナック「……」ドサッ

ナビィ「……?」
ナビィ「!」

ゲルド「」

ナビィ「Look! リンクル!」
ナビィ「あの鎧の中身、ゲルド族だったんだ!」

リンクル「え……」

365: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/06(火) 21:13:49.33 ID:XhXxrjet0
リンクル「生きてるの?」

ナビィ「ううん……兜ごと頭を叩き割られちゃったみたい」

リンクル「……も少し加減して叩けば死ななかったかな」

ナビィ「……」

リンクル「……まぁ、いいや。気にしても仕方ないし」
リンクル「ゲルド族がこんな重苦しい鎧着込んで、重たい斧使ってくるなんて変だね」

ナビィ「そう?」

リンクル「城下町で見たゲルド族は2本の曲剣を使ってた」
リンクル「ゲルドの砦に居た人達もみんな曲剣か槍ばっかり。弓の人も居たけど、斧はなかった」

リンクル「多分、みんな軽い武器が得意なんだと思うけど……」
リンクル「なんでこの人だけこんなことしてるんだろ」

ファイ「マスターに報告。この鎧の内部の機械に使われている技術は古代の文明の技術と一致します」
ファイ「この鎧は古代の機械人形を復元したものと思われます」

リンクル「人形? このゲルドの人は生きた人間だった筈よ?」
リンクル「ほら、体温もまだ残ってる。さっきまで生きてたんだわ」ペタ

ファイ「イエス、マスター。しかし、この機械人形には動力に当たる部品が見受けられません」
ファイ「機械人形をそのまま動かすのではなく、あくまで人間の力を強化する為に使っているものと推測」

ナビィ「この鎧はあくまで兵士を強化する補助の道具ってことね」

ガチャン……ガチャン……

リンクル「げっ」

アイアンナックA「コォォォ……」ガチャン ガチャン

アイアンナックB「ヌゥゥ……」ガチャン ガチャン

リンクル「に、二体……!?」
リンクル「こんなの二体も同時に相手してらんないよ!」タタッ

366: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/06(火) 21:14:16.63 ID:XhXxrjet0
アイアンナックA「……」ガチャン ガチャン

リンクル「……」コソコソ

ナビィ「……行ったみたい」

リンクル「……ふぅ」
リンクル「あれ……?」

ナビィ「わ、中にもあったんだ、この女神像」

リンクル「こっちは壊されなかったんだね」
リンクル「そこの扉、入ってみようか」

367: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/06(火) 21:14:46.85 ID:XhXxrjet0
リンクル「……!」

「ホッホッホ……誰か来たようですよ、コウメさん……」

コウメ「ヒッヒッヒ……そのようですねぇ、コタケさん……」

コタケ「我らの神殿へ侵入するとは、恐れを知らない不届き者よのぉ、ホッホッホ……」フワリ

コウメ「では、その不届き者に罰を与えてやりましょうかねぇ、ヒッヒッヒ……」フワフワ

コタケ「我らの忠実な下僕よ……」

コウメ「我らに代わり、侵入者を殺せ!」

アイアンナック「……」ガチャン

リンクル「またあの鎧……!」

368: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/06(火) 21:15:13.82 ID:XhXxrjet0
アイアンナック「……」スッ
アイアンナック「……?」ケンガナイ?

リンクル「……?」

アイアンナック「……」コノオノツカウンダッタ
アイアンナック「オォッ」ブオンッ

リンクル「っと……!」バッ
リンクル「最初の空振りは斧だとは思わせない為のフェイク? それとも……」

アイアンナック「フンッ!」ドコッ

リンクル「おっと!」バッ
リンクル「その鎧重いでしょ!」ダッ

ガチャーン

アイアンナック「オオオッ!」ブオンッ ブオンッ

リンクル「もう分かってるのよ!」バッ
リンクル「せぇぇいっ!」タンッ

バキンッ

369: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/06(火) 21:16:17.95 ID:XhXxrjet0
リンクル「今度は……」シュタッ

アイアンナック「ウオォォ……」ドタッ
アイアンナック「う……!」

リンクル「……生きてるみたいね」

「あ、あたいは一体……?」
「……何者だ!?」ザッ

リンクル「……ただの旅人」

「何……?」
「そんなのあたいが信じると思って……」

リンクル「じゃあ時の勇者だって言ったら信じる?」チャキッ

「時の勇者……」
「……ガノンドロフを倒そうとしてるハイリア人とは聞くけど」

「あんたみたいな小娘だとは俄かには信じがたいね」
「ただまぁ、その剣見る限り、相当腕は立つってのは分かるよ」

「剣を下ろしてよ。あんたがガノンドロフを倒したいってんなら、あたいは敵じゃない」
「あたいもガノンドロフを何とかしたいんだ。手を組まないかい? 時の勇者」

リンクル「……」シャキン
リンクル「……リンクルって呼んで。あなたの名前は?」

ナボール「ナボールだよ。よろしくね」

リンクル「うん」
リンクル「ここで何があったの?」

370: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/06(火) 21:17:14.66 ID:XhXxrjet0
ナボール「ここで何があったか……ね」
ナボール「色々だよ」

ナボール「10年かそこら前に、砂漠の古い遺跡から変なもんが出てきたんだってさ」
ナボール「ツインローバの婆さん達は古代の遺物、機械人形だって言ってたけど」

リンクル「ファイが言ってた古代文明の技術ね……」

ナボール「その研究の為に、婆さん達はこの神殿にそれを持ち込んで、ずっと研究してた」
ナボール「それで、ちょっと今どのくらい時間が経ったのか分かんないけど」

ナボール「あたいにとってはつい昨日のことだよ」
ナボール「ついに機械人形を復元したって言われて、そのお披露目にあたい達は集められた」

ナボール「変な甲冑だったけど、言われてみれば強そうだったかな。背丈もあたい達より一回りでかかったし」
ナボール「ただ、そこから記憶がちょっと曖昧でね……変な魔法をかけられたのは覚えてんだけど」

ナビィ「……話が見えてきたヨ……」

ナボール「あん?」

ナビィ「ナボール、あなたね、その機械人形の中に居たの」

ナボール「はっ!?」

ナビィ「多分、ファイが言ってた“動力に当たる部品がない”“人間の力を強化するだけ”っていうのは……」

ナボール「……あたい達を洗脳して、その動力代わりにしてたってわけか」
ナボール「クソッ、あの婆さん達絶対に許さねぇ!」

371: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/06(火) 21:17:43.14 ID:XhXxrjet0
リンクル「取り敢えず、ツインローバを何とかしなきゃならないのね?」

ナボール「ああ。そうすりゃ魔力が途切れて仲間達の洗脳も解ける筈さ」
ナボール「ただ、連中は魔法使いだ。一筋縄じゃいかないよ」

ナボール「この神殿にはあの婆さん達の研究してる魔法の道具が沢山ある」
ナボール「その中にはあたいらにも使えるような道具もあってね」

ナボール「あたいの考えが正しければ、確実に奴らの優位に立てるものが一つある。秘策ってやつだね」
ナボール「あたいはそれを取ってくるから、あんたは奴らがどこに隠れてるかを見つけるんだ。いいね?」

リンクル「うん、分かった」
リンクル「じゃあ、また後で」

ナボール「ああ!」
ナボール「くれぐれもあんたが先に見つかんないようにね! 事が済んだらイイコトしてやるよ!」

372: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/06(火) 21:18:30.40 ID:XhXxrjet0
リンクル「“イイコト”ってなんだろね」コソコソ

ナビィ「さ、さあ……?」

リンクル「……っと」ササッ

アイアンナックA「……」ガチャン ガチャン

リンクル「はぁーい、背中ががら空きよ!」ダッ

アイアンナックA「!」ブオンッ

リンクル「ほっ!」タンッ
リンクル「せぇいっ!」バキンッ

アイアンナックA「ウオオッ……」ガクッ

ナビィ「横に振られた斧を足場になんて、よく反応出来たネ……」

リンクル「何度も見てれば、どの辺りで動きが止まるか予測出来たからね」
リンクル「うわ!」バッ

アイアンナックB「フンッ」ドコッ

リンクル「案外近くにもう一体居たのね……」
リンクル「こっちまでおいで!」タタタタッ

アイアンナックB「コォォォ……!」ガチャン ガチャン

アイアンナックA「」ガチャガチャ……

ゲルドC「……う……」
ゲルドC「うぅ……ん?」

373: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/06(火) 21:19:07.26 ID:XhXxrjet0
リンクル「振り切ったかな……?」コソコソ

アイアンナックB「……?」ガチャン ガチャン

リンクル「……よし」

「バカな子だねぇ、自分からガノンドロフ様に捧げる生贄になりにくるなんて……」

リンクル「なっ……!?」

コウメ「あたしの炎で骨まで焼いてやる……」フワフワ

コタケ「あたしの冷気で魂まで凍るがいい……」フワフワ

双生魔道師 ツインローバ

リンクル「し、しまった……まだ盾がないのに!」

コウメ「ヒッヒッヒ……炎を喰らえ!」ボウッ

リンクル「くっ!」バッ

コタケ「ホッホッホ……次は冷気だよ!」コオオッ

リンクル「ネールの愛!」パシュンッ

ナビィ「大妖精様からもらった魔法!」
ナビィ「このまま逃げましょ、リンクル!」

リンクル「うんっ……!」タタタタッ

374: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/06(火) 21:20:01.72 ID:XhXxrjet0
ファイ「警告、間もなくネールの愛の効果が切れます」

コウメ「そろそろかねぇ、コタケさん」

コウメ「そろそろだろうねぇ、コウメさん」

リンクル「ちっ……さっきから分かってて攻撃してこなかったのね!」タタタタッ
リンクル「って、言ってたら効果が切れた!」シュゥン

コタケ「中々しぶとかったねぇ……」コオオッ

リンクル「えぇいっ!」バッ
リンクル「せめてクロスボウがあれば!」タタタタッ

コウメ「ヒッヒッヒ……そこは行き止まりだよ!」ボウッ

リンクル「うっ……!」
リンクル「ぉぉおおおおっ!!」バシュンッ

ファイ「魔法反射」

コウメ「何っ……!?」

リンクル「はぁ……はぁ……!」

ナビィ「す、すごい! 魔法を弾いちゃった!」

リンクル「まぐれだよ……!」
リンクル「次が来たら、確実に殺される……!」

コタケ「ホッホッホ、驚いたねぇ……」
コタケ「だけど、次で終わりだよ小娘」

リンクル「っ……!」

「待ちなっ!」

コウメ「おや……お前は」

375: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/06(火) 21:22:44.42 ID:XhXxrjet0
ゲルドC「ナボール様から話は聞いたよ!」
ゲルドC「リンクル! こいつを使いな!」ビュンッ

リンクル「これは……!」パシッ

ゲルドC「銀のグローブだ! 重いものを易々動かせるようになるお宝さ!」

コタケ「ふん、そんなものが何になる!」コオオッ

リンクル「っ!」バッ
リンクル「こうすんのよ!」ボコッ

コタケ「なっ、タイルを剥がして……!」

リンクル「こ、れ、で、も」グルンッ
リンクル「喰らえっ!!」ブンッ

コウメ「おおっと!」バッ

コタケ「コウメさん!」

タタタタッ……

コウメ「ちぃっ……!」
コウメ「取り逃したか……!」

376: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/06(火) 21:24:40.38 ID:XhXxrjet0
リンクル「ありがとう、助かったわ……」

ゲルドC「いいってことよ」
ゲルドC「あんたもあたしを助け出してくれたんだろ?」

リンクル「それは……」

ガチャン……ガチャン……

リンクル「……!」

ゲルドC「こいつは……!」

アイアンナックB「コオオォォ……」ガチャン
アイアンナックB「フンッ!」ドコッ

リンクル「くっ!」バッ

ゲルドC「このっ!」ドカッ

アイアンナックB「ホアッ!」ブオンッ

ゲルドC「うっ!」バッ

リンクル「肩借りる!」タンッ

ゲルドC「あいよっ!」

リンクル「えぇーいっ!」バキンッ

アイアンナックB「オアアッ……!」ガクッ

ガチャガチャ……

ゲルドD「ぅ……」

リンクル「はぁ……ふぅ……!」

ゲルドC「兜だけ割るなんて器用な真似するね……頭ごとかち割っちまうかと思ったよ」

リンクル「そうしてたらあなた今頃死んでたわよ」

377: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/07(水) 01:23:58.71 ID:E2VnydgG0
ゲルドC「取り敢えずこいつはあたしが面倒見とくよ」
ゲルドC「ナボール様、来ないね……」

リンクル「ほんとにね」
リンクル「このままじゃツインローバに見つかったら殺されちゃうわ」

ゲルドC「困ったね……」
ゲルドC「……後ろ!」

リンクル「!」バッ

コウメ「うるさい小娘だねぇ」ボウッ

ゲルドC「きゃああーっ!?」ボオオッ
ゲルドC「いやああああああっ!! ああああああっ!!」ゴロゴロゴロ

リンクル「そんなっ!」

ゲルドC「ああああ! あああぁぁぁ……!」ジタバタ

リンクル「ど、どうやって消せば……! ナビィ!」
リンクル「ナビィ!? どこに行ったの!?」

ゲルドC「あぁ……あぁぁぁ……」ズルズル
ゲルドC「」ガクッ

リンクル「あ、ああ……!」

コウメ「おやおや……小娘に火が移らないよう自分から反対方向へ行こうとするなんて見上げた根性だ」

コタケ「是非とも生かして手駒にしておきたかった逸材だったのにねぇ……」

コウメ「ヒッヒッヒ……まぁ、残念だけどあたし達の邪魔をするからそうなるんだよ」

コタケ「ホッホッホ……次はお前の番だ、小娘」コオオッ

リンクル「くっ!」バッ

ゲルドD「」パキパキパキ

リンクル「そんな、あなたまで!」
リンクル「うう……早く来てよ、ナボール!」タタタタッ

378: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/07(水) 01:24:30.93 ID:E2VnydgG0
ナビィ「リンクル!」

リンクル「ナビィ! どこ行ってたの!?」

ナビィ「こっちヨ、ナボール!」

ナボール「悪い、あんたを探してた!」

リンクル「遅いよ! あんたの仲間みんな死んじゃったんだよ!?」

ナボール「何っ……! そいつは聞き捨てならないね、婆さん達!」

コウメ「ヒッヒッヒ、獲物が増えたねぇ、コタケさん」

コタケ「ホッホッホ、そのようですねぇ、コウメさん」

コウメ「だけど散々逃げ回ってあたし達を梃子摺らせてくれたお礼に」

コタケ「ちょいとばかしとっておきを見せてあげるよ」

リンクル「とっておき……!?」

コタケ&コウメ「コタケ&コウメの、セクシーダイナマイツアターック!」クルクルクルクル

ボンッ

リンクル「な……!?」

ナボール「え、ええー……」

ツインローバ「ウフフ、さぁとどめよぉ!」

379: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/07(水) 01:25:11.36 ID:E2VnydgG0
ツインローバ「炎がお好みかしら? それとも冷気?」

ナボール「どっちもご遠慮願いたいねっ!」
ナボール「どうすんだい?」ヒソヒソ

リンクル「あたしも追いかけっこには疲れちゃってたとこよ!」
リンクル「どうするもこうするも、あんたの言う秘策しかないでしょ!」ヒソヒソ

ナボール「けどまさか合体するなんて思わなかったからさ……」ヒソヒソ

リンクル「はあ?」ヒソヒソ

ナボール「と、兎に角、やってみるしかないよ!」ヒソヒソ

ツインローバ「フフフ、作戦会議はお終いかしら?」
ツインローバ「それじゃ、死に方は選ばせてあげるわ。どちらがお好み?」

リンクル「……」コクリ
ナボール「……」コクリ

リンクル「炎!」
ナボール「冷気!」

380: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/07(水) 01:25:39.62 ID:E2VnydgG0
ツインローバ「あらあら、分かれちゃったわねぇ……」
ツインローバ「まぁいいわ。同時に撃つことだって不可能じゃないしね」

ツインローバ「それじゃ、さようならよ」ヴゥン
ツインローバ「来世ではこんなことに巻き込まれない人に生まれるといいわねぇ!」ドオッ

ナボール「今だ!」っミラーシールド

リンクル「!」

カッ

ツインローバ「何っ!?」

バシュウゥゥッ

ツインローバ「ああぁぁぁんっ!!」ドオオオオッ

381: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/07(水) 01:26:15.93 ID:E2VnydgG0
ナボール「上手く跳ね返せたね……!」

リンクル「あっ、ツインローバが元に戻った!」

コウメ「えぇい、ちょこざいな……今度こそ本気でいくぞい。のぉ、コタケさん!」フヨフヨ

コタケ「おや……? コウメさんや、その頭の上のわっかは何じゃ……?」フヨフヨ

コウメ「そーいうあんたの上にもあるぞ、コタケさん……?」フヨフヨ

リンクル「……あ、もしかして」

ナボール「お迎えが来てるぜ、婆さん達」

コウメ「あ、あたしゃまだ400年しか生きてないんだよ!?」フヨフヨ

コタケ「あたしなんて380年だよ!」フヨフヨ

コウメ「双子なのに20年もサバ読むんじゃないよ!」フヨフヨ

コタケ「あんたこそボケてんじゃないの!」フヨフヨ

コウメ「誰がボケてるって!? それが姉に対して言う言葉かい!?」フヨフヨ

コタケ「双子に姉も妹もあるかい!」フヨフヨ

コウメ「キィー! この薄情者ぉー!」フヨフヨ

コタケ「何だい、この恩知らず!」フヨフヨ

コウメ「薄情者!」フヨフヨ

コタケ「恩知らず!」フヨフヨ

パアアァー

コタケ&コウメ「化けて出てやるぅー!」

382: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/07(水) 01:26:46.49 ID:E2VnydgG0
リンクル「……」

ナボール「……」
ナボール「なんつーか……」

ナボール「……やったな! うん、やったな、あたい達!」
ナボール「仲間達の敵も討ったし、ガノンドロフの有力な部下もやっつけた! やったよな!」

リンクル「あ、うん、そう! そうだね! やったね!」

ナビィ(なんだかなぁ……)

ナボール「……お」

リンクル「?」

ナボール「リンクル」
ナボール「仲間達のことは残念だったけど……」

ナボール「あんたにはまず礼を言わせてもらうよ」
ナボール「約束だし、イイコトしてやるからね」

ナボール「……と、言いたいとこだけど」
ナボール「あたいが魂の賢者だなんてね、驚いちまうよ」

リンクル「そうなんだ……」

ナボール「そんな顔すんなって。一緒にガノンドロフにひと泡吹かせてやろうじゃないか!」
ナボール「あーあ、こんなことならもっと早くにやっとくんだったね」ポゥ……

リンクル「ナボール……」
リンクル「……ありがとう」

386: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/07(水) 21:40:57.22 ID:YAY4KVJ+0
 ep.19 決戦の地へ


――巨大邪神像

『リンクル……リンクル、聞こえるか』

リンクル「?」

ラウル『ラウルじゃ……久しぶりじゃな』
ラウル『ついに我ら六賢者は復活した。魔王との対決の時がきたのじゃ』

ラウル『その前に、お前に会いたがっている者が居る』
ラウル『その者は時の神殿でお前を待っておる……』

リンクル「……分かった」

ナビィ「見て見て、砂嵐が晴れてる!」

リンクル「ほんとだ……ツインローバの魔法だったのかな」
リンクル「取り敢えず、ゲルドの砦に行って、装備返してもらわなきゃ」ザッザッザッザ

387: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/07(水) 21:41:32.82 ID:YAY4KVJ+0
――ゲルドの砦

ゲルドA「も、戻って来られたのか!?」

リンクル「砂嵐晴れたからね」
リンクル「はい、ミラーシールドと銀のグローブ」

ゲルド幹部「本当に持ってくるとは……」
ゲルド幹部「……そうだ。魂の神殿は? 様子はどうだった?」

リンクル「それ、なんだけど……」
リンクル「まず、あんた達の仲間はみんな殺されちゃったわ」

ゲルドA「何!? 仲間達を殺したのか!?」チャキッ

リンクル「違う。ツインローバの実験よ。砂嵐の向こうで、古代文明の機械人形がどうこうって研究をしてたの」

ゲルド幹部「ああ、あの神殿はツインローバのお二人の研究所でもあったからな」

リンクル「あの神殿に居たゲルド族は機械人形に閉じ込められて、最終的にツインローバに殺された」
リンクル「あたしも殺されかけた。生き残ったのはあたしとナボールだけよ」

リンクル「……そのナボールも、魂の賢者として目覚めて、結局あたし一人で帰ってきたんだけどね」
リンクル「信じてもらえないのは分かってるけど、事実としてこう伝えるしかないわ」

ゲルド幹部「……」
ゲルド幹部「……いや、信じるよ」

ゲルド幹部「まさかとは思っていた……っていうか、思いたかった」
ゲルド幹部「ガノンドロフ様も、ツインローバのお二人も、あたいらを便利な駒くらいに思ってんじゃないか」

ゲルド幹部「神殿の仲間達はツインローバの実験の道具にされたんじゃないかとは、薄々思ってたよ」
ゲルド幹部「的中してほしくはなかったけどね……」

ゲルド幹部「元々あたいらゲルド族もガノンドロフ様に対する不信感が全くなかったわけじゃない」
ゲルド幹部「100年に一度生まれる男は族長になる……と言っても、何でもしていいわけじゃないからね」

ゲルド幹部「ご苦労だったな。持ち物は全部返してやるよ」
ゲルド幹部「ついでに部屋も貸してやるから、今夜はここでゆっくり休んでいきな」

リンクル「……ありがとう」

388: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/07(水) 21:42:13.01 ID:YAY4KVJ+0
――翌朝 ゲルドの谷

イチロー「親方ぁー!」

親方「てやんでぃ、べらぼうめ! おめぇらどこほっつき歩いてやがったんだ!」

ジロー「それが酷いのよ! ゲルドの盗賊達ったら、あたし達が男だからってだけで牢に入れたんだもの!」

サブロー「もう盗賊なんてこりごりよ! やっぱり大工しかないのね、あたし達……」

親方「ったりめーだ、バーロー! さっさと仕事の準備しろぃ!」

シロー「はーい!」

リンクル「はぁー、やれやれね」

親方「ありがとな、嬢ちゃん。お前さんには助けられっぱなしだ」

リンクル「いいのよ、家に泊めてもらったしね」
リンクル「それじゃ、行くよエポナ!」

エポナ「ヒヒィーン!」

親方「気ぃつけてなぁー!」

389: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/07(水) 21:43:02.68 ID:YAY4KVJ+0
――翌日 ロンロン牧場

ナビィ「丸一日走り通すなんて無茶しすぎだヨ……」

リンクル「ごめんね……」ナデナデ

エポナ「ブルルッ……フー」

マロン「あっ、リンクルー!」タタタタッ

リンクル「マロン!」

マロン「大丈夫? 怪我とかしてないよね?」

リンクル「平気」
リンクル「それより、明日城下町の方へ行くから、今夜はここに泊めてくれる?」

マロン「勿論よ! ここに住んでくれたっていいのよ!」

リンクル「考えとくわ」クスッ

390: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/07(水) 21:44:08.86 ID:YAY4KVJ+0
マロン「そういえば砂漠に旅立つ前に渡したミルク、どうだった?///」

リンクル「あ、うん、あれね」
リンクル「すっごく美味しかったよ。いつもと違う感じだったけど、あれはあれで美味しかった」

マロン「そ、そう……///」
マロン「よ、良かったら、今度搾ってるとこ見てみる?///」

リンクル「ほんと!?」
リンクル「是非お願い! どうやって作ってるのか見てみたかったんだ!」

マロン「///」

ナビィ(……あっ、なんとなく何のミルクか分かっちゃった……)
ナビィ(でも子供とか居るようには見えないし、そういう体質なのかな……)

ナビィ(どっちにせよリンクルにそんなもの飲ませるなんて……)
ナビィ(マロンって結構変な子よネ……)

391: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/07(水) 21:44:37.01 ID:YAY4KVJ+0
――翌日 ハイラル城下町

リンクル「相変わらず嫌な空気……」カツカツ

リーデッド「ウォォン……ォォォン……」

リンクル「……」カツカツ

リーデッド「キョォォッ!」ギロッ

リンクル「!」プイッ
リンクル「見ない見ない見ない!」タタタタッ

リーデッド「ォォォン……ウォォォン……」

ナビィ「すっごい雑な回避法ね……」

392: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/07(水) 21:45:03.78 ID:YAY4KVJ+0
――時の神殿

リンクル「……誰か居るのかな」カツカツ

「待っていたよ、リンクル」

リンクル「……シーク」

シーク「時の勇者リンクル……」
シーク「君は数々の苦難を乗り越え、六賢者を目覚めさせてくれた……」

シーク「そして、今また魔王ガノンドロフとの対決の時を迎えようとしている……」
シーク「その前に、君だけに話しておきたいことがある」

リンクル「あたしだけに?」

シーク「闇の民、シーカー族に伝わる、トライフォースの知られざるもう一つの伝説だ……」
シーク「聖なる三角を求めるならば、心して聞け」

リンクル「……」

393: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/07(水) 21:45:31.19 ID:YAY4KVJ+0
 聖なる三角の在るところ……聖地は己の心を映す鏡なり。
 そこに足踏み入れし者の心、邪悪なれば魔界と化し、清らかなれば楽園となる。

 トライフォース……聖なる三角。
 それは力、知恵、そして勇気……三つの心を量る天秤なり。

 聖三角に触れし者、三つの力を併せ持つならば万物を統べる真の力を得ん。
 しかし……その力なき者ならば聖三角は力、知恵、勇気の三つに砕け散るであろう。

 あとに残りしものは三つの内の一つのみ……それが、その者の信ずる心なり。
 もし、真の力を欲するならば失った二つの力を取り戻すべし。


 その二つの力……神により新たに選ばれし者の手に甲に宿るものなり。

394: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/07(水) 21:46:05.68 ID:YAY4KVJ+0
シーク「ガノンドロフは七年前、君が開いた時の神殿の扉をくぐり、聖地へ到達した」
シーク「しかし、奴がトライフォースを手にした時、伝説は現実となった……」

シーク「トライフォースは三つに砕け、ガノンドロフの手に残ったのは力のトライフォースのみだった」
シーク「奴はトライフォースの力によって魔王となったが、その野望は果てることはなかった」

シーク「完全な支配の為、ガノンドロフは残る二つのトライフォースを持つ、神に選ばれし者を探し始めた」
シーク「その一人は、勇気のトライフォース宿りし者……時の勇者リンクル」

リンクル「……え」
リンクル「あ、あたし?」

シーク「そう、君だ」
シーク「そして、もう一人……知恵のトライフォース宿りし者。賢者の長となる、七人目の賢者……」カッ

リンクル「うっ……!?」

ポゥ……

ナビィ「……あっ!?」

ゼルダ「この私……ハイラル王女ゼルダです」

395: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/07(水) 21:46:53.03 ID:YAY4KVJ+0
ゼルダ「魔王の追及を逃れる為とはいえ、シーカー族と偽り接してきたこと、どうか許してください……」

リンクル「……いいよ。実は、ゼルダ姫じゃないかって思ってた」

ゼルダ「え……?」

ナビィ「えっ、リンクル気付いてたの!?」

リンクル「まことの眼鏡。真実を見通す目なんでしょ?」
リンクル「シークを見た時、流石にゼルダ姫の姿が見えたわけじゃないけど、なんだか変な感じだったから」

ゼルダ「……流石リンクルですね」クスッ
ゼルダ「七年前のあの日……ハイラル城は、ガノンドロフの襲撃を受けました」

ゼルダ「覚えていますか……インパに連れられて逃げる私が、あなたに時のオカリナを託した時のこと」
ゼルダ「オカリナがあなたの手にある限り、ガノンドロフは聖地へは入れないと思ったのですが……」

リンクル「……結果として、あたしはマスターソードによって聖地に封印されちゃった」
リンクル「あたしが“時の扉”を開いたりしなければ……とは何度も思ったよ」

ゼルダ「ごめんなさい、私があんなことをあなたに提案したばっかりに……」

リンクル「ううん……まだこれからよ」
リンクル「賢者は揃った。今のあたしならマスターソードだって扱える」

ゼルダ「……ありがとう」

リンクル「そういうことは全部終わってからだよ」

ゼルダ「……そうですね」クスッ
ゼルダ「あなたが帰ってきた今、魔王ガノンドロフの支配する暗黒の時代は終わるのです」

ゼルダ「六賢者が開いた封印にガノンドロフを引き込み、私がこちらの世界から閉じる……」
ゼルダ「それで魔王ガノンドロフはこの世から居なくなるでしょう」

ゼルダ「リンクル……あなたの勇気が、今一度必要です」
ゼルダ「魔王の守りを破るもの……選ばれし者に神が与えたもう力、聖なる光の矢の力をあなたに差し上げます」

リンクル「光の矢……」

396: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/07(水) 21:47:39.64 ID:YAY4KVJ+0
リンクル「ディンの炎で作る炎のボルトと同じ要領で撃てばいい?」

ゼルダ「はい。あなたの魔力を消費し、矢に光の力を纏わせることが出来る筈です」
ゼルダ「それに、それだけ沢山のボルトを用意したのですから、きっと矢が尽きて困ることもないでしょう」クスッ

リンクル「あいや、最後だし、流石に手強いだろうと思ってさ」クスクス

ゼルダ「フフ……久しぶりにあなたの笑顔を見ました。素敵な笑顔……」

リンクル「そ、そう? えーと……ありがとう、ゼルダ姫」
リンクル「一緒にガノンドロフを倒しましょ」スッ

ゼルダ「はいっ」スッ

ゴゴゴゴゴ……!

ゼルダ「……!?」

リンクル「な、何? この地鳴りは一体……!?」

シュウゥゥンッ パシュンッ

ゼルダ「!?」

リンクル「ゼルダ姫!」

ナビィ「ま、魔法の結晶! 術者が居る限りどうしたって割れないヨ!?」

397: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/07(水) 21:48:20.82 ID:YAY4KVJ+0
『愚かなる反逆者……ゼルダ姫よ』
『七年もの長き年月……よくぞ俺から逃げおおせた』

ゼルダ「この声は……!」

リンクル「ガノンドロフ……!」

ガノンドロフ『だが……油断したな』
ガノンドロフ『この小娘を泳がせておけば、必ず現れると思うておったわ!』

ガノンドロフ『俺の唯一の誤算は、その小娘の力を少々甘く見ていたことだ』
ガノンドロフ『……いや、その小娘の力ではない。勇気のトライフォースの力だ』

リンクル「なっ……!」

ゼルダ「リンクル!」

ポウゥ……

ナビィ「つ、連れて行かれちゃう……!」

ガノンドロフ『ゼルダを助けたくば我が城まで来い!』
ガノンドロフ『その時こそ、お前の勇気とゼルダの知恵、二つのトライフォースを俺が手に入れる時だ!』

リンクル「……ガノンドロフ!」
リンクル「絶対に……絶対に、許さない!!」

401: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/08(木) 07:36:45.93 ID:Fx2YJsyH0
 ep.20 ガノン城


――ガノン城

ゴォォォォ……

リンクル「……これが……ハイラル城?」

ナビィ「うぅ……城下町より、更に邪悪な魔力が……」
ナビィ「ハイラル城を取り潰して、新たに城を建てたみたいネ……」

リンクル「綺麗だったお城が、こんなに禍々しく……」
リンクル「……あれ? あの城さ……」

ナビィ「うん?」

リンクル「宙に浮いてない……?」

ナビィ「……そうネ」

リンクル「どうやって入ればいいのよ……」
リンクル「誰も彼もが自由に空飛べるわけじゃないのよ……」

ラウル『勇者リンクルよ……聞こえるか、賢者ラウルじゃ……』
ラウル『我ら、六人の力を結集し、ガノンドロフの城へ橋を架ける』

ラウル『城へ突入した後じゃが……城の中心の塔は邪悪な結界によって守られておる』
ラウル『その結界を解き、ゼルダ姫を救うのじゃ!』

リンクル「……うんっ」

ラウル『うむ……良い返事だ』

パアァッ

リンクル「光の橋が……!」
リンクル「ありがとう、みんな……っ!」タタタタッ

402: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/08(木) 07:37:21.12 ID:Fx2YJsyH0
――ガノン城 内部

リンクル「あれが中心の塔ね」
リンクル「確かに結界が張ってあって近づけないや」

ナビィ「Look! そっちの扉は入れるみたい!」

リンクル「結界を解けってことね」ガチャ

ウルフォス「アオォーン!」

リンクル「邪魔!」バシュッ

ウルフォス「キャインッ!」

リンクル「燭台が四つ……ディンの炎かしら」ドヒュンッ

ガコーン

ナビィ「扉が開いたヨ!」

リンクル「よしっ」タタッ

403: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/08(木) 07:37:57.38 ID:Fx2YJsyH0
リンクル「うわっ、これ氷の洞窟……!?」

ナビィ「これまで冒険してきた場所を再現してきてるのね」
ナビィ「きっとさっきの部屋は森の神殿の再現よ……って危ない、リンクル!」

フリザド「コオオオォォォ」

リンクル「二度目はないわ」バシュッ

フリザド「ジュッ」

ナビィ「ふぅ……」
ナビィ「そこの氷のブロック、足場に出来そうじゃない?」

リンクル「それ名案」
リンクル「よいしょ、っと」ズズ

404: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/08(木) 07:38:28.03 ID:Fx2YJsyH0
リンクル「この部屋は……」

ナビィ「えーと……何をイメージしてるのかしら?」
ナビィ「落ちたら助からないわね、この穴……」

リンクル「でも渡れるような橋も何も……」
リンクル「……あ、そっか」

ナビィ「?」

リンクル「よっ」タンッ

ナビィ「リ、リンクル、落ち……ない?」

リンクル「真実の目、ってこと」

ナビィ「……ああ、ここ闇の神殿の再現なんだ」

405: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/08(木) 07:40:34.54 ID:Fx2YJsyH0
リンクル「ここは……」

ナビィ「溶岩だらけ……炎の神殿ネ……」

リンクル「熱いから長居は避けたいなぁ……」

赤バブル「ダガココニトドマッテモラウゼ」

リンクル「帰れ帰れ」バシュッ

赤バブル「ウボアー」

リンクル「足場が悪いだけで特に仕掛けとかはないのね」カツカツ

ナビィ「でも落ちたら死んじゃうから気をつけてね」

406: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/08(木) 07:41:03.29 ID:Fx2YJsyH0
バシュンッ

ナビィ「魔法弾!」

リンクル「ええいっ!」バシンッ

ナビィ「魔法を跳ね返す、っていうのはきっとツインローバの再現ね」

リンクル「あのスイッチから飛んできたのね……」バシュッ

ナビィ「扉が開いたヨ」

リンクル「それで、これが結界?」

ナビィ「うん、多分ね」

リンクル「これを壊せばいいのね……」
リンクル「光の矢!」バシュッ

ドッ
ドオオオオオ

407: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/08(木) 07:41:56.27 ID:Fx2YJsyH0
リンクル「結界が解けて、入れるようになってる」

ナビィ「いよいよだね、リンクル!」

リンクル「うん」
リンクル「ボルトよし、剣よし、盾よし、魔力よし……」

リンクル「さぁて、塔を登ろう!」
リンクル「待ってなさいよ、ガノンドロフ!」タッ

408: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/08(木) 07:42:37.88 ID:Fx2YJsyH0
ダイナフォスA「グヘヘヘココヲカンタンニトオレルトオモウナヨ」

ダイナフォスB「トッツカマエテブチオカシテヤルゼェェ」

リンクル「邪魔っ!」バシュッ

ダイナフォスA「オオットアタラネェゼ」

ダイナフォスB「バカッ、ハナレロ!」

ダイナフォスA「ナニッ」

チュドーン

リンクル「ただのボルトだと思ったら大間違いよ」

ダイナフォスA「」ドサッ

ダイナフォスB「キサマァー!」ダンッ

リンクル「ほっ」タンッ

ダイナフォスB「バカナ、ケンヲフミダイニ!?」

リンクル「兜割り!」バキンッ

ダイナフォスB「グハアアアッ」ドサッ
ダイナフォスB「」

リンクル「よしっ」タタッ

409: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/08(木) 07:43:51.95 ID:Fx2YJsyH0
スタルフォス「また会ったな小娘! ここで会ったが100年目!」
スタルフォス「今度こそこのマスター・スタルフォードが誇る剣の錆に……」

リンクル「うるさい」バシュッ

チュドーン

スタルフォス「ぬおおおおっ!!」
スタルフォス「ぐっ、ひ、卑怯なぁ……!」

リンクル「いちいち話が長いのよ!」ザンッ

スタルフォス「ぐあぁぁっ……!」バラバラバラ

リンクル「こっちは急いでるっていうのに、まったく!」
リンクル「行こう、ナビィ!」タタッ

ナビィ「あ、うん」
ナビィ「ていうかあのスタルフォス生きてたんだ……」

410: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/08(木) 07:44:42.23 ID:Fx2YJsyH0
リンクル「そろそろ最上階も近いと思うけど……」

アイアンナック「オォォォ……」ガチャン ガチャン

リンクル「……悪いけど、今回は容赦なく殺すよ」

アイアンナック「フンッ!」ドコッ

リンクル「はっ!」バッ
リンクル「ていっ!」タンッ

アイアンナック「!!」

リンクル「はぁっ!」バキンッ

アイアンナック「グオォォ!」ガチャーン

リンクル「……」シュタッ

アイアンナック「ヌゥン!」ブオンッ

リンクル「!?」バッ

ナビィ「か、兜は割れてるのにまだ動くの……!?」
ナビィ「……! Look! この鎧、顔がないヨ!?」

リンクル「頭がないのに動いてる!?」

411: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/08(木) 07:45:19.05 ID:Fx2YJsyH0
アイアンナック「フンッ! フオオッ!」ブオンッ ブオンッ

リンクル「くっ……!」バッ
リンクル「頭が駄目なら……背中よっ!」ダッ バキンッ

アイアンナック「グアアアッ!」ガチャーン

ナビィ「す、すごい動き……一瞬で後ろに回っちゃった」

アイアンナック「ウオォォ……」ガチャガチャ……

ナビィ「……あっ、見てリンクル」

リンクル「?」

アイアンナック「」

ナビィ「この鎧……中身がないヨ」

リンクル「空っぽだった……ってこと?」

ファイ「マスターに報告。この機械人形は動力が存在します」
ファイ「復元に成功したものか、発掘した段階で動力が残っていたものと推測されます」

リンクル「……そう」
リンクル「まぁ、後味悪くないからいいや」

リンクル「行こう、ナビィ!」
リンクル「ガノンドロフは目前よ!」タタッ

ナビィ「うんっ!」

415: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/08(木) 19:29:39.98 ID:qQvHz/ab0
 ep.21 決戦


http://www.youtube.com/watch?v=L4YG06SQpFs


リンクル「はっ……はっ……!」タタタタッ
リンクル「ゼルダ姫!」バンッ

ゼルダ「リンクル!」

ガノンドロフ「……」♪~ ♪♪~

リンクル「……!」
リンクル「ガノンドロフ! ゼルダ姫を帰してもらうわよ!」

ガノンドロフ「……」♪♪♪♪♪~

ゼルダ「……?」
ゼルダ「手が……?」キィィン

416: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/08(木) 19:31:40.50 ID:qQvHz/ab0
リンクル「……!」
リンクル「これは……?」キィィン

ナビィ「左手、何か光ってる……?」

ゼルダ「……!」
ゼルダ「私の右手も……手の甲が……!」キィィン

ガノンドロフ「……」
ガノンドロフ「共鳴している……」

ガノンドロフ「トライフォースが再び一つに戻ろうとしている……」
ガノンドロフ「七年前のあの日……我が手に出来なかった二つのトライフォース……」

リンクル「……成程ね。これが勇気のトライフォース」

ガノンドロフ「そうだ……まさか貴様達二人に宿っていようとはな」
ガノンドロフ「だが……今、ついに全てのトライフォースがここに揃った!」

リンクル「……」ジリッ

ガノンドロフ「貴様らには過ぎた玩具だ……」クルッ
ガノンドロフ「返してもらうぞ!」キィィン

リンクル「そもそも、あんたのものじゃないわ!」

ガノンドロフ「ふん……お前の言葉が正しいか、俺の言葉が正しいか……」
ガノンドロフ「それも今日、この場で決まる!」ドオウッ

ナビィ「ご、ごめん、リンクル……! 闇の波動で、ナビィ近づけないヨ……!」

リンクル「いいよ、あたしが片を付ける!」チャキッ

ゼルダ「……!」ゾクッ
ゼルダ(殺気! リンクルも、ガノンドロフも、常人であれば切り刻まれそうな程の殺気をまとっている!)

417: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/08(木) 19:32:19.31 ID:qQvHz/ab0
大魔王 ガノンドロフ

ガノンドロフ「はぁっ!!」ドゴォン

リンクル「っ、足場が……!」バッ

ガノンドロフ「どうした、小娘!」ドウッ

リンクル「ちっ……!」バシュッ バシュッ

ガノンドロフ「ふんっ! こんな小手先の技が俺に通用すると思うな!」バチバチッ

リンクル(そう、普通のボルト撃っても弾くよね、あんたなら)
リンクル「だけど、このボルトはどうかしら!」バシュッ バシュッ

ガノンドロフ「火矢だと? 小賢しい」
ガノンドロフ「無意味だ!」ドウッ

リンクル「まだまだ!」バシュッ バシュッ

ガノンドロフ「無意味だと言って……ぐっ!?」
ガノンドロフ「これは……光の力か! ちょこざいな真似を……」バリバリバリ

リンクル「弾くも避けるもあんたの自由」バシュッ バシュッ
リンクル「けれど、あたしは確実にあんたを仕留めるまで攻撃をやめない!」バシュッ バシュッ

ガノンドロフ「ちぃっ!」バチバチッ
ガノンドロフ「む!?」

チュドーン

ガノンドロフ「ぬぅ、爆弾を仕込んだ矢もあるな……!」
ガノンドロフ「えぇい、鬱陶しいわ!」バシュンッ

リンクル「しまっ……!」
リンクル「きゃああーっ!!」バリバリバリ

418: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/08(木) 19:34:34.51 ID:qQvHz/ab0
リンクル「うぅ……!」
リンクル(魔法の威力……これまでの敵とは段違いだわ……!)

ガノンドロフ「はっ!」ドコッ

リンクル「ぐっ!」ガキンッ
リンクル(盾で防いだのに、なんて衝撃……なんて力!)ゴロゴロゴロ タンッ

ガノンドロフ「小細工はもう飽いた……」
ガノンドロフ「おおぉぉぉ……!」ゴゴゴゴゴゴ

リンクル(魔力を溜めている……? 一体何を……)

ガノンドロフ「はあぁっ!!」ドオオオオオッ

リンクル「っ!!」

ドオオオオオオオオン

ナビィ「リ、リンクル!」

419: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/08(木) 19:35:42.70 ID:qQvHz/ab0
リンクル「っ……ぅ……」

ナビィ「リンクル! しっかりして!」

ガノンドロフ「ハッハッハ、流石に耐えられなかったようだな」
ガノンドロフ「これでとどめだ!」バシュンッ

リンクル「っ……! ……ぉぉおおおおっ!!」ムクッ

バシンッ

ガノンドロフ「!」
ガノンドロフ「剣で魔法弾を弾き返したか! やりおる!」バシンッ

リンクル「いっつ……もう一度お返しよ!」バシンッ

ガノンドロフ「ふん、他愛ない!」バシンッ

バシュッ

ガノンドロフ「ぐはっ!?」

リンクル「うあああああああっ!!」バリバリバリ
リンクル「くぅぅ……ぅぅ、ぁぁああああああっ!!」ググッ

ナビィ(吠えてる……獣みたいに吠えて、気力だけで立ち上がってる……!)

リンクル(頭がクラクラする……! 視界が、ぼやけてきちゃう……!)

ガノンドロフ(クソッ、体が動かん……光の矢か!)

リンクル「はぁー……はぁー……隙だらけよ、ガノンドロフ!」ダッ
リンクル「これで……とどめだぁぁぁぁ!」ザシュッ

ガノンドロフ「ぐぅっ!?」

420: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/08(木) 19:36:24.83 ID:qQvHz/ab0
ガノンドロフ「コヒュー……この、俺が……魔王ガノンドロフが……コヒュー……」
ガノンドロフ「敗れるの……か? ……コヒュー……こんな、小娘に……!」

リンクル「はぁ……はぁ……!」

ガノンドロフ「ぐぉぅ……!」ビチャビチャビチャ
ガノンドロフ「リンクル……ぐぅぅ……おおおおおあああああああああっ!!」ドオオオオ

リンクル「うぅっ……!」

ドゴゴゴゴ……

ナビィ「へ、部屋が崩れちゃった……!」

ガノンドロフ「」バタリ

リンクル「はぁー……はぁー……」
リンクル「や、やった……!」ドタッ

パアアッ

ナビィ「……あっ! ゼルダが……!」

ゼルダ「あっ……」

リンクル「ゼ……ゼルダ、姫……!」
リンクル「良かった……無事で……」

ゼルダ「リンクル! しっかりしてください、リンクル!」

リンクル「大丈夫……少し……寝かせて……」カクン

ゼルダ「リンクル!」

ゴゴゴゴゴゴ

ゼルダ「っ……!」
ゼルダ「ガノンドロフ……最後の力を使って、私達を道連れにしようと言うのですね!」

ゼルダ「そんなこと……認めません!」
ゼルダ「リンクル、行きましょう、一緒に……っ!」ダキッ

ゴゴゴゴゴゴ……

421: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/08(木) 19:38:23.63 ID:qQvHz/ab0
ゴォォォォ……

リンクル「ぅ……うぅん……!」

ナビィ「……! リンクル!」

ゼルダ「リンクル……! 目が覚めたのですね!」

リンクル「ああ、うん……気分は悪いけどね……」
リンクル「魔法の攻撃受けた後はいっつもこう……ああ、もう……」

ゼルダ「リンクル……」クスッ

リンクル「……この瓦礫の山は?」

ゼルダ「ガノン城……だった場所です」
ゼルダ「ガノンドロフは、最後の力で私達を道連れにしようとしたようです」

リンクル「そっか……」
リンクル「……終わったんだ、何もかも」

ゼルダ「……えぇ」
ゼルダ「ガノンドロフ……哀れな男です。強く正しい心を持たぬが故に、神の力を制御出来ずに……」

リンクル「……」

ナビィ「リンクル、さっきはゴメンネ、一緒に戦えなくて……」

リンクル「いいよ、ナビィ」
リンクル「……?」

ゼルダ「リンクル?」

リンクル「……今、確かに何か聞こえたような……」

ナビィ「え?」

ドコンッ

リンクル「!!」

ゼルダ「なっ……!」

422: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/08(木) 19:39:00.48 ID:qQvHz/ab0
ガノンドロフ「ゼェー……ゼェー……!」
ガノンドロフ「フシュゥゥー……!」キィィン

ファイ「マスターに報告。ガノンドロフの生命活動が再開されています。トライフォースの力と推測」

ゼルダ「まさか……トライフォースが暴走している!?」

リンクル「そんな、まだ諦められないっていうの!?」

ガノンドロフ「うぅぅぅ……!!」
ガノンドロフ「うおおおおおおおおおおおっ!!」ズオオオッ

リンクル「ガノンドロフが……化物に……!?」

ガノン「グオオオオオッ!!」

423: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/08(木) 19:39:55.02 ID:qQvHz/ab0
 ガノン

ナビィ「ガノンドロフはリンクルへの憎しみでいっぱいだヨ……!」

リンクル「憎しみ……」
リンクル「望むところよ! あたしもあんたには少なからず憎しみがあるんだから!」ダンッ

ガノン「グオオオオオッ!」ブオンッ

リンクル「っ!」ガキンッ
リンクル「いっ……! しまった! 剣が!」

ガツッ

ファイ「警告、マスターからファイが15m以上離れています。至急回収することを推奨」

ガノン「グオオッ! ウオオオオオッ!!」ブオンッ ブオンッ

リンクル「くっ……!」バッ
リンクル「駄目! ガノンが間に居て取りに行けない!」

ゼルダ「っ……! ならば私が!」ガシッ

ファイ「警告、契約したマスターと異なる為、マスターソード本来の力が発揮出来ません」

ゼルダ「構いません! 最終的にリンクルに渡りさえすれば……!」タタッ

424: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/08(木) 19:41:03.53 ID:qQvHz/ab0
リンクル「これでも喰らえっ!」バシュッ バシュッ

ガノン「グオオオオッ!」ブオンッ

リンクル「爆発しない!?」
リンクル「くっ……爆弾ボルトが駄目になってる!」

ナビィ「えっ、なんで!?」

リンクル「分かんない……多分ガノンドロフの魔法の攻撃を受けた時にどこか壊れちゃったんだと思うけど……!」
リンクル「!!」

ガノン「オオオオオッ!!」ブオンッ

リンクル「っ!!」ガキンッ
リンクル「うあっ……!」ドサッ ゴロゴロゴロ

ナビィ「リ、リンクル! 盾で防いだのに……!」
ナビィ「リンクル! リンクル! しっかりして!」パタパタ

リンクル「……」

ガノン「グルルルルッ……!」

ナビィ「ガ、ガノン……!」
ナビィ「ナビィもう逃げない! 戦うっ!」シュ

ガノン「グオオッ!」ブオンッ

ナビィ「ぴぃ!」バッ

リンクル「ナビィ……」
リンクル「無茶しないで……あたしが……やっつけるから……!」ググッ

425: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/08(木) 19:41:43.04 ID:qQvHz/ab0
ゼルダ「リンクル! これを!」タタタタッ

リンクル「っ……ゼルダ姫!」

ガノン「!」ギロッ

ゼルダ「……!」ゾクッ

ガノン「グルルルルッ……」ジリッ

ゼルダ「……」ジリッ

リンクル「しまった……! えぇい、この際剣鉈でいいや!」シャキンッ
リンクル「相手を間違えるなよ、ガノン!」ザシュッ

ガノン「グオオオオッ!?」ブオンッ ブオンッ

リンクル「うっ……!」バッ
リンクル「何……? 急に……痛がってる?」

426: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/08(木) 19:44:47.71 ID:qQvHz/ab0
ナビィ「……! 尻尾だ! 尻尾が弱点なんだヨ!」

リンクル「尻尾……そっか、剣鉈刺したのが!」

ゼルダ「リンクル!」ブンッ

ガランガランッ

ファイ(ちょっと痛い)

リンクル「お帰り、ファイ」パシ
リンクル「行くよ!」

ガノン「グゥゥゥ……グオオオオッ!!」ブオンッ

リンクル「はっ!」バッ
リンクル「爆弾ボルトが駄目なら……光のボルトよ!」バシュッ バシュッ

ガノン「グアアアアアッ!?」バリバリバリ

リンクル「よしっ、怯んだ!」
リンクル「でやああああっ!!」ダンッ

ガノン「グオオオオオオオオッ!!」

ザンッ

427: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/08(木) 19:45:19.74 ID:qQvHz/ab0
ガノン「オオオオオッ! グオオオオオオッ!!」ブオンッ ブオンッ
ガノン「グルルルゥゥゥ……!」ズズン……

リンクル「はぁ……はぁ……!」

ガノン「フシュー……フシュー……!」

リンクル「漸く、膝をついたわね……」

ファイ「マスターに報告。空を覆っていた黒雲の一部が晴れ、ここに光が差し込んできています」
ファイ「今こそが宿命の者にとどめを刺す時である確率100%。剣を天に掲げてください」

リンクル「……こう?」スッ
リンクル「……! 光が……!」キュィィ

ナビィ「剣に光が宿った……」
ナビィ「リンクル……とどめを!」

リンクル「うん……今度こそ……」
リンクル「これが、とどめよっ!」ダッ

ザシュッ

ガノン「グッ……グオオオオッ! グオオオオオッ! オオオォォォォッ……!!」

ゼルダ「六賢者達よ……今です!」カッ

428: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/08(木) 19:46:36.64 ID:qQvHz/ab0
ラウル「ハイラルを創りたまいし古代の神々よ!」
ラウル「今こそ封印の扉開きて邪悪なる闇の化身を冥府の彼方へ葬りたまえ!」

ダルニア「いくぜ、キョーダイ!」

ルト「うむっ、参ろうか!」

ナボール「さぁ始めるよォ!」

インパ「いくぞ!」

サリア「リンクル……!」

ポゥ……

ゴオオオッ


おのれ……
おのれ……ゼルダ!
おのれ……賢者共!

おのれ……リンクル!!
いつの日か……この封印が解き放たれし時……
その時こそ貴様達の一族根絶やしにしてくれる!

我が手の内に力のトライフォースある限り……

429: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/08(木) 19:47:08.24 ID:qQvHz/ab0
ちょっと休憩

漸くガノン倒すとこまで来たなって感じ

431: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/08(木) 20:30:44.98 ID:qQvHz/ab0
再開します

432: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/08(木) 20:31:30.90 ID:qQvHz/ab0
 ep.22 伝説の分かれ目


ゼルダ「ありがとう、リンクル……」
ゼルダ「あなたの力でガノンドロフは闇の世界に封印されました」

ゼルダ「これでこの世界も再び平和な時を刻み始めるでしょう」
ゼルダ「これまでの悲劇は全て私の過ちです……」

リンクル「ゼルダ……」

ゼルダ「己の未熟さを顧みず聖地を制御しようとし、あなたまでこの争いに巻き込んでしまった」

リンクル「そ、そんなことないよ」
リンクル「あたしは自分の意思でガノンドロフと戦ったんだ」

ゼルダ「……」

リンクル「だから……」
リンクル「だから……その……」

ゼルダ「……」

リンクル「……ごめん」

433: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/08(木) 20:32:07.61 ID:qQvHz/ab0
ゼルダ「……今こそ、私は私の過ちを正さねばなりません」
ゼルダ「マスターソードを眠りに就かせ、時の扉を閉ざすのです」

ゼルダ「けれど、そうすれば時を旅する道も閉ざされてしまいます」
ゼルダ「今なら、賢者として時のオカリナの力であなたを元の時代へ帰してあげられます」

リンクル「……」スッ

ゼルダ「……ハイラルに平和が戻る時……」
ゼルダ「それが……私達の別れの時なのですね……」スッ

リンクル「……うん」

ゼルダ「……」

リンクル「……」

ゼルダ「……」チュッ

リンクル「っ、ゼルダ!?」

ゼルダ「……さぁ、お帰りなさいリンクル」
ゼルダ「あなたが居るべきところへ、あなたがあるべき姿で……失われた時を取り戻すのです」

♪♪♪ ♪♪♪~ ♪♪♪~♪♪~

434: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/08(木) 20:34:46.49 ID:qQvHz/ab0
――時の神殿

パアアアアアッ

リンクル「……あ」
リンクル「子供に戻ってる」

リンクル「マスターソード……」
リンクル「ファイ?」

ナビィ「……」

リンクル「……そっか、そうだよね」
リンクル「もうあたしはあなたのマスターじゃない」

リンクル「ただの子供だもんね……」クルッ
リンクル「旅も終わりかな……」カツカツ

ファイ「リンクル」

リンクル「え……!?」バッ

ファイ「マスターとの契約はこれを以て終了となります」ヒュリンッ
ファイ「リンクルとの旅は“つらい”こともあり、“苦しい”こともあり、しかし“楽しい”ものでした」

ファイ「かつて、マスターソードを作り上げたマスターとの旅が思い起こされます」
ファイ「あなたと旅した記録は、以前のマスターとの旅の記録と共に、ファイの中の最も重要な情報です」

ファイ「なので、以前のマスターにも贈った言葉ですが……」
ファイ「多くの人があなたに贈り、あなたも多くの人に贈った言葉を、あなたにも贈るべきと思いました」

ファイ「ありがとう、マイマスター、リンクル」
ファイ「もしも、また次にファイが……マスターソードが目覚める時が来たのであれば」

ファイ「その時も、リンクルの魂を受け継ぐ者がマスターとなることを、ファイは強く望みます」
ファイ「いつかまた……あなたの魂と共に」

リンクル「……こっちこそ、ありがとね」

ナビィ「……」

435: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/08(木) 20:35:17.51 ID:qQvHz/ab0
リンクル「ナビィ? さっきからどうしちゃったのさ、黙りこくって」

ナビィ「……あのね、リンクル」

リンクル「うん」

ナビィ「リンクルとの旅、とっても大変だったヨ」
ナビィ「いっぱいつらい思いもして、苦しいことも多かった」

ナビィ「でも……さっきファイが言ったように」
ナビィ「あたしも、結構楽しかったんだ。リンクルと過ごす時間……」

ナビィ「もうすっかり立派な勇者だね、リンクル」
ナビィ「ナビィ、安心して森に帰れるヨ……」

リンクル「ナビィ……」
リンクル「……そっか。うん、ありがとう、ナビィ」

ナビィ「……ありがとう」
ナビィ「リンクル……大好きだヨ」シュ……

リンクル「……あたしも大好きだよ、ナビィ」

436: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/08(木) 20:37:32.86 ID:qQvHz/ab0
――ハイラル城 中庭

ザッ

「ゼルダ姫」

ゼルダ「!」クルッ
ゼルダ「だ、誰っ? どうやってこんなところまで……」

リンクル「ちょっとね」
リンクル「森から……あなたにお話をしに来たの」

ゼルダ「森から……?」
ゼルダ「じゃあ、もしかして、あなたが夢のお告げに現れた、森からの使者?」

リンクル「うん、そういうことになるわね」クスッ

ゼルダ「……!」ドキッ

リンクル「リンクルよ。よろしくね、ゼルダ姫」

ゼルダ「リンクル……不思議……なんだか懐かしい響き……」
ゼルダ「それでは、リンクル。あなたのお話……聞かせていただける?」

リンクル「うん」
リンクル「今から、あたしだけが知ってる、聖地の秘密と聖三角の伝説を教えてあげる」


【ゼルダの伝説】リンクルが時の勇者になるようです
      fin

437: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/08(木) 20:38:21.07 ID:qQvHz/ab0





―――――

リンクル「ガノンドロフ、処刑されるんだってね」

ゼルダ「えぇ……お父様が漸く認めてくださったの」
ゼルダ「あなたは、また旅に?」

リンクル「うん。なんていうか……」
リンクル「……居心地が悪くて。ごめんね」

ゼルダ「いいえ……空気が良くないのは分かります」
ゼルダ「殊に、あなたのような真っ直ぐな人は、城の雰囲気は決して心地良いものではないでしょう」

ゼルダ「それに……共に時を越えて旅をしたあの妖精……」
ゼルダ「ナビィを、探しに行くのでしょう?」

リンクル「……うん」
リンクル「ナビィは“森に帰る”って言ってた」

リンクル「だから、あれから何度か森に行ってみたけど……どこに居るのか分からないんだ……」
リンクル「また……会いたい。どうしても……会って、話がしたい」

ゼルダ「……」
ゼルダ「……リンクル、これを」スッ

リンクル「これは……時のオカリナ?」

ゼルダ「あなたが旅した“七年後”と、これからあなたが旅する“いま”は違う世界です」
ゼルダ「けれど、あなたの手には勇気のトライフォースが宿ったまま……」

リンクル「……うん」

ゼルダ「このままハイラルに留まるのは危険です。この時のオカリナもそうであるように」
ゼルダ「なので、ハイラルを離れるのであれば、このオカリナと共に……」

ゼルダ「身勝手なことは分かっています。ですが……」
ゼルダ「どうか……お願いします」ペコリ

リンクル「……頭を上げて」
リンクル「じゃあ、時のオカリナは、あたしが持ってくよ」

ゼルダ「ありがとう……」

438: ◆R/MMXv4xbuiy 2018/03/08(木) 20:39:57.88 ID:qQvHz/ab0
リンクル「エポナ、平気?」ナデナデ

エポナ「ブルルルッ」

リンクル「そっか」
リンクル「んー……大分森の奥まで入ってきちゃったけど……」

リンクル「ナビィ、ほんとにどこ行っちゃったんだろ……」
リンクル「……オカリナ吹いたら、また来てくれたりしないかな」

♪♪♪~ ♪♪♪~

エポナ「フーッ」

リンクル「ふふっ、エポナはこの音色が大好きだもんね」

♪♪♪~ ♪♪♪~

「ケケケ、馬に乗った子供だ」

「ほんとだ……綺麗な音色」

「よし、お前ら少し驚かせてやれよ」
「なんかいいもん持ってそうだぞ」

「はいはい」
「行くよ、トレイル」

「あ、うん、待ってよ姉ちゃん」

「早くしないと行っちゃうわ」
「いい? せーの、であの馬を驚かすわよ?」

「うんっ」

シュ……

リンクル「……あれ?」
リンクル「今何か……」キョロキョロ


ホッホッホ、どうやらまだ一悶着ありそうですねぇ……
信じなさい……信じなさい……


 ほんとにおわり……?

引用元: 【ゼルダの伝説】リンクルが時の勇者になるようです