1: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/01(金) 19:00:00 ID:???00
ドンドンドン‼︎!

「姫芽ちゃんー……!! 助けてー……」グスッ

姫芽「ん~……? この声は、小鈴ちゃん? こんな時間に、どうしたんだろ~……?」

ガチャ

姫芽「は~い、どうしたの、小鈴ちゃ──って、え」

小鈴「姫芽ちゃん……徒町、徒町……!」


小鈴「──恐竜の、ツノと尻尾が生えてきちゃった……!!」

2: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/01(金) 19:00:59 ID:???00
────

「「「「「「「「先祖返りーー!?!?」」」」」」」」


小鈴「はい……徒町もつい昨日、実家に電話して初めて知ったのですが、そうみたいで……」

花帆「先祖返りって……え、小鈴ちゃん、先祖に恐竜がいたの!?」ガタッ

小鈴「詳しくは定かではないのですが……なにぶん福井の漁師として長く続いている血筋、どこかで恐竜が紛れ込んだ、ということらしく……」

吟子「恐竜の血が紛れることなんてあるんだ……」

3: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/01(金) 19:01:59 ID:???00
さやか「……えっと、では、今小鈴さんの頭に生えているツノが恐竜のそれ……だということですか?」

綴理「つの、かわいいね、すず」ニコニコ

姫芽「わかります~! アタシも、昨日見たときからずっと思ってたけど、そのツノ、小鈴ちゃんにすっごく似合ってるよね~」

小鈴「そ、そうかな? 徒町には、よく分からないけど……」

慈「うーん……ぱっと見は本当、ただの可愛いアクセにしか見えないんだよねー」ジー

小鈴「でも、確かに徒町の頭から生えているんです! これはツノです!」グッ

瑠璃乃「でぃすいず、つの……だね」ウンウン

梢「ツノは英語でhornよ、瑠璃乃さん」

4: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/01(金) 19:03:00 ID:???00
小鈴「えっと、それでご相談なのですが……」

小鈴「徒町、こんな状態でラブライブ!に出場していいのでしょうか……みなさんの足を引っ張ってしまうかもしれないのに……」

花帆「? 足を引っ張る、って?」

小鈴「その……せっかくのラブライブ!大会、こんな……ツノや尻尾が生えた不完全な徒町など、いたらかえって迷惑なのではと──」

さやか「! 小鈴さん、それは違います」ガタッ

小鈴「!? さ、さやか先輩……?」

5: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/01(金) 19:04:00 ID:???00
さやか「小鈴さんは、いなくてはならない存在です。恐竜だろうが何だろうが、今の小鈴さんが迷惑だなんて、あり得ません」

さやか「わたしは、他でもないあなたと一緒にスクールアイドルとしてラブライブ!に挑みたいと考えています。……小鈴さんは、どうですか?」

小鈴「さやか先輩…………!」

小鈴「……徒町、少し弱気になっていたみたいです! 恐竜になった徒町でも、先輩方と一緒に、より一層精進したいです!」

さやか「! はい、頑張りましょう、小鈴さん」ニコッ

6: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/01(金) 19:05:00 ID:???00
梢「ふふっ、どうやら丸くおさまったみたいね」クスッ

梢「さて、それならラブライブ!大会に向けた練習に集中よ! 残された時間を大切に、張り切っていきましょう!」


「「「「「「「「「おー!!」」」」」」」」」

7: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/01(金) 19:06:00 ID:???00
────

小鈴「ちぇすとー!!!」タッタッタッ

姫芽「こ、小鈴ちゃん速い~……」

綴理「すず、いつもよりずっと元気だね」チラッ

花帆「はぁ、はぁ、さすが小鈴ちゃん……気合い、入ってる……!」ハァハァ

さやか「花帆さんがバテていてどうするんですか……」

8: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/01(金) 19:07:01 ID:???00
小鈴「──徒町、なんだか力が溢れてきて止まりません! どこまでだって走れてしまいそうです!」メラメラ

姫芽「ふふ、小鈴ちゃんがやる気だ~」ニコッ

綴理「でも、頑張りすぎも大変だから。すず、今度のお休みの日、ボクと一緒にお昼寝しよう」

小鈴「! もちろんです! 徒町、綴理大先輩のいるところなら、どこだって馳せ参じます!」

綴理「おー」

9: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/01(金) 19:08:00 ID:???00
花帆「んー、それにしても……小鈴ちゃんが急に体力ついたのって、恐竜になったから、なのかな?」

さやか「それもあるかもしれませんが……やはり、小鈴さん自身の頑張りの成果だと思いますよ」チラッ


小鈴「ちぇすとーーー!!!」タッタッ

姫芽「あれ、小鈴ちゃんまだ走るの~!?」

小鈴「少しだけ! やっぱり徒町、ラブライブ!に向けて頑張りたいから!」グッ

10: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/01(金) 19:09:00 ID:???00
さやか「小鈴さんは、いつだって全力を尽くして頑張っているんです。そんな頑張りが報われた、と考えたほうが嬉しいじゃないですか」フフッ

花帆「そうだね、確かに! 小鈴ちゃん、すっごい頑張り屋さんだもんね!」ニコッ

さやか「はい、本当に……いいですよね、小鈴さん……」ジー

花帆「…………ふふっ」クスッ

花帆「さやかちゃん! ……いつかちゃんと、小鈴ちゃんに伝えられるといいね! “大好き”って!」

さやか「!?!?」

11: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/01(金) 19:10:00 ID:???00
花帆「あ、もちろん恋愛的な意味でね!」フンフン

さやか「ば……バレてたんですか!?」

花帆「そりゃもう! さやかちゃんってば、いつも小鈴ちゃんから目が離せないって言って、ずっと見つめてたし……わかりやすすぎだよ!」

さやか「そ、そう……でしたか……そんなに一目瞭然だったとは……」

花帆「でもでも! あたしは、さやかちゃんの恋愛応援するから! 何か進展したら、花帆に色々教えてね!」ニコッ

さやか「それはただ、花帆さんが楽しみたいだけでは? ……でも、そうですね」

さやか「……この気持ちを、いつか小鈴さんに……」グッ

12: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/01(金) 19:11:00 ID:???00
────

小鈴「梢先輩! その角材、徒町に運ばせてください!」

梢「あら、いいの小鈴さん? 少し重いと思うのだけれど……」

小鈴「いえ、だってステージ作りに使うんですよね? 徒町、ラブライブ!のために、お手伝いできることは何でもしたいので!」グッ

小鈴「それに……よっ、と」ガシッ

梢「……! そんな量を軽々と……」

小鈴「今の徒町は、恐竜なので! これくらい朝飯前です!」グッ

13: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/01(金) 19:12:00 ID:???00
綴理「最近のすず、すごく頑張ってるね。恐竜になって、もっと強く黄色が見えるんだ」

さやか「ふふっ、そうですね。小鈴さんも、明るく過ごしているようで何よりです」

さやか「恐竜になって足を引っ張ってしまうかも……と部室で深刻そうな顔をしていたときは、本当に心配しましたが……大丈夫そうですね」ニコッ

綴理「……さや、いい先輩、してるね」フフッ

さやか「? そう、でしょうか?」

14: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/01(金) 19:13:00 ID:???00
綴理「うん。さやは、すずが抑えようとしてた気持ちを、外の世界に連れて行ける」

綴理「いつだってさやは、人の気持ちを引っ張ってくるのが上手だよね。ボクにだって、そうだった」

さやか「そう……でしたかね? わたしは寧ろ、綴理先輩に教わってばかりで、引っ張っていったという感じではないと思いますけど……」

綴理「でも、ボクをスクールアイドルにしてくれたのは、さやだ。さやは、ボクを舞台の上に引っ張り上げてくれたんだよ」

さやか「!」

15: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/01(金) 19:14:00 ID:???00
綴理「それに、毎日だって、さやはボクを引っ張ってる」

さやか「……? 毎日、ですか?」

綴理「うん。ボクを朝起こすとき。さやは、ボクを引っ張ってるよ?」

さやか「……いや、確かにそれはそうですけど! そういう意味の引っ張る、じゃありませんよね!?」

綴理「ふふっ、そうかも」クスッ

さやか「か、揶揄ってるんですか、もう……」フフッ

16: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/01(金) 19:15:00 ID:???00
────

姫芽「今日も練習頑張った~……もうあと少しで、ラブライブ!大会かぁ~」

小鈴「うぅーん……徒町、もうちょっと走ってこようかな?」スタッ

吟子「ストップ、小鈴。少しくらい休んだほうがいいと思うよ? 頑張りすぎも良くないし……」

姫芽「うんうん、小鈴ちゃんが恐竜になって、はや二週間……ずっと頑張りっぱなしだもんね」

17: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/01(金) 19:16:00 ID:???00
小鈴「でも徒町、さやか先輩と一緒のステージに立つんだし……もっともっと練習したくて!」グッ

姫芽「小鈴ちゃんは~、さやかせんぱいが“大好き”なんだね~」ニコッ

小鈴「それはもちろん! さやか先輩は、こんな徒町に手を差し伸べてくれた大恩人だもん! 徒町が恐竜になってからも、優しくしてくれて……」

小鈴「だからこそ! 徒町は、さやか先輩にご指導いただいた分、今の全力を見せたいんだ!」

吟子「ふふっ、そういうの、小鈴らしいね」クスッ

18: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/01(金) 19:17:00 ID:???00
吟子「……でも、小鈴が無理に頑張りすぎて、万が一怪我でもしたら……余計、先輩方に心配をかけることになると思うよ?」

小鈴「はっ! それは、確かに……」フム

姫芽「そうそう、小鈴ちゃんが本番で、先輩と一緒に全力を出すためにも、キチンと休んだほうがいいよ~」ニコッ

小鈴「そっかぁ……そうだよね! ありがとう、二人とも! 徒町、ちゃんと休息チャレンジにも挑戦してみる!」グッ

姫芽「おぉ、いいね~。小鈴ちゃん、しっかり休んで、大きくなろうね~」ナデナデ

小鈴「……姫芽ちゃん、徒町のことを小さい子どもだと思ってる?」

19: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/01(金) 19:18:00 ID:???00
吟子「そうだ。大きく、と言えば…………小鈴、最近ちょっとずつ身体が大きくなってきてない?」

小鈴「? え、そう……かなぁ?」

姫芽「あ、それアタシも思ってたかも。こう、なんというか……存在感が増したというか~」

吟子「存在感、どころか物理的になんだけど……綴理先輩と並ぶくらい、身長も伸びてる気がしてて」

小鈴「!? そ、それって、徒町が大きくなったからだったんだ……! 綴理先輩が徒町のために、わざわざ目線を合わせて話してくれているのかと……」

吟子「いや、そんなわけないでしょ…………とも言い難いのかな……?」

姫芽「つづりせんぱい優しいから、小鈴ちゃんのためなら全然、目線を合わせるために屈んでくれそうだもんね~」アハハ

20: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/01(金) 19:19:00 ID:???00
吟子「まぁでも本当、小鈴が日を追うごとに大きくなってくから……衣装の手直しも、後で取り掛からなきゃだね」

小鈴「あ、そっか、衣装にも影響が……! あわわ、徒町、吟子ちゃんに多大なるご迷惑を……!」アワアワ

吟子「大丈夫だよ、小鈴。実際、手直し自体は楽しい作業だから、別にそこまでじゃないし……」

吟子「それに、身体が大きくなってること自体、小鈴にはどうしようもないことだと思うから」

小鈴「? それは、どういう……?」

吟子「だって……多分だけど小鈴が大きくなったのって、恐竜になった影響じゃない?」

21: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/01(金) 19:20:00 ID:???00
小鈴「恐竜になった影響……」

姫芽「うんうん、小鈴ちゃんが最近、一気に体力とか、力がついたのと同じで~……身体の大きさにも恐竜の影響が出てるんだね~」ニッ

吟子「そういうこと。小鈴が止めようとして、止められるものじゃないと思う」

小鈴「な、なるほど、徒町が恐竜になったから……徒町、全然気づかなかったや……」

吟子「……そういうところも、ある意味小鈴らしいのかもね」フフッ

22: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/01(金) 19:21:00 ID:???00
小鈴「……あ! でも、だったら……徒町、もっともっと大きくなれたりするのかな?」

小鈴「それこそ徒町、このままいけば身長二メートルも夢じゃない、かも!」ワクワク

姫芽「あぁそっか、小鈴ちゃん、前からずっと身長伸ばしたがってたもんね~」ニコッ

吟子「ふふっ、嬉しそうだね、小鈴」クスッ

小鈴「うん! なんだか徒町、恐竜に先祖返りを起こしてからというもの、良いことばかりで……」


小鈴「──徒町、恐竜になれてよかったかも!」ニコッ

23: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/01(金) 19:22:00 ID:???00
────

深夜

小鈴「……うう、もう寝なくちゃいけない時間なんだけど……」

小鈴「なんだか、お腹へっちゃったなぁ……」グゥ

小鈴「……仕方ない! 寮の共用キッチンまで行って、何か食べてこよう!」ガバッ

24: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/01(金) 19:23:00 ID:???00
小鈴「こんなところ、さやか先輩に見つかったら、怒られてしまう気がしますが……徒町の胃袋はもう悲鳴をあげていて、耐えられそうにないのです……」

小鈴「もしかして、これも恐竜になった影響なのかなぁ……」トコトコ

小鈴「……着いた! ここが、夜の蓮ノ空キッチン……!」

小鈴「さて、徒町は瑠璃乃先輩から、以前教えていただきました……お夜食のカップラーメンのおいしさ、というものを……!」

小鈴「共用の食品棚に置いてあるから食べていいよ、と瑠璃乃先輩に仰っていただいていたので、僭越ながら……」ゴソゴソ

小鈴「お湯を入れて……あとは待つだけ!」

25: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/01(金) 19:24:00 ID:???00
小鈴「……そろそろ、三分経ったかな? 蓋を開けて、っと」ペリペリ

小鈴「深夜に食べるカップラーメン……! いただきます!」ズズッ

小鈴「……? あれ──」





小鈴「!? けほっ、ごほっ、ごほっ……!?」

26: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/01(金) 19:25:00 ID:???00
小鈴「た、食べ物が……喉を通らない……?」

小鈴「これって……」ハッ



小鈴「…………もしかして徒町、人間じゃなくなってる……?」

27: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/01(金) 19:26:00 ID:???00
小鈴「……そう、だよね。恐竜に近付いたのなら、人間から遠ざかるのは、当たり前……」

小鈴「人間の料理が食べられないくらい……でも、それってもう、徒町は……」

小鈴「……」

小鈴「…………だとしたら徒町、さやか先輩に合わせる顔がないよ……」

28: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/01(金) 19:27:00 ID:???00
────

──数日後

さやか「──はい、そこまでです。そろそろお昼なので、みんなでお昼ご飯にしましょう」

綴理「やったー、さやのお弁当が食べられる」

さやか「ふふっ、はい。腕によりをかけて作りましたよ」ニコッ

さやか「小鈴さんも、息を整えたら、こちらへどうぞ」

小鈴「……」

さやか「? 小鈴さん?」

29: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/01(金) 19:28:00 ID:???00
小鈴「あ……えと、徒町、少し食欲がないみたいで……」

さやか「そう、なんですか? ですが、食べないと栄養になりませんから……せめて、ドリンクだけでも──」

小鈴「ご、ごめんなさい、さやか先輩! 徒町、少し外の空気を吸ってきます!」タッタッ

さやか「……小鈴さん?」

30: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/01(金) 19:29:00 ID:???00
────

小鈴「……はぁ」トボトボ

小鈴「こんなことになっちゃうなんて……恐竜になってよかった、なんて、もう言えるわけないや……」

小鈴「……さやか先輩のお料理だって、今の徒町には食べられないし……代わりの食べ物は持ってきたけど……」サッ

小鈴「でも、こんなの……徒町はもう、人間じゃないよ……」

小鈴「……食べるしかない、のかな、これ」ハァ

小鈴「……いただきます」パンッ

「──ま、待ってください、小鈴さん!」

31: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/01(金) 19:30:00 ID:???00
小鈴「? あ……さ、さやか先輩!?」

さやか「ふぅ……追いつきましたよ、小鈴さん」ハァハァ

小鈴「さ、さやか先輩、なんで……」

さやか「何故って……誰だって、あんなに悲しい顔をして出て行かれたら……何より優先して、会いにいくものですよ」

小鈴「! さやか先輩……」

さやか「小鈴さん。それ……生肉、ですよね」チラッ

小鈴「……」

32: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/01(金) 19:31:00 ID:???00
さやか「……もしかして、ずっとこんな食事を?」

小鈴「い、いえ……ここ数日は、何も食べないで過ごしていました。……でも、もう限界だったんです」

さやか「……」

小鈴「…………ごめんなさい、さやか先輩。徒町、さやか先輩が作ったお料理を断ったりなんかして……」

さやか「……いえ、それに関しては全く怒ってなんかいませんよ。ですが、相談してもらえなかったのは少し、寂しいかもしれません」

小鈴「……さやか先輩」

さやか「わたしは、小鈴さんのことを誰よりもよく見ています。スクールアイドルとしても、小鈴さんには期待していて……」

小鈴「……いえ、さやか先輩」


小鈴「──徒町はもう、スクールアイドルでは……ないんです」

33: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/01(金) 19:32:00 ID:???00
さやか「っ、それは、どういう……」

小鈴「だってもう……徒町は人間じゃありませんから。スクールアイドルは、人が情熱を持って作り上げるもの、ですよね?」

さやか「小鈴さん……」

小鈴「…………それに徒町、最近時間の感じ方も、おかしいんです」

小鈴「この前、綴理先輩と一緒にお昼寝して、起きたらもう、辺りは真っ暗で……」

小鈴「徒町はほんの数十分眠ったつもりだったのに、本当は二時間経ってたんですよ」

34: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/01(金) 19:33:00 ID:???00
小鈴「徒町はもう、人間というより恐竜でしかなくて」

小鈴「こんな、恐竜になった徒町は……もう、スクールアイドルじゃ、ありません。人間以外がスクールアイドルをやった例なんてないですし……」

さやか「……」

小鈴「だから、さやか先輩。徒町は、もう……」

さやか「……小鈴さん。あなたは一つ、重大な見落としをしています」

小鈴「……? 見落とし、ですか?」

さやか「はい。だって……」


さやか「前例がなければ、作っちゃえばいいんですよ」クスッ

小鈴「…………え?」

35: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/01(金) 19:34:00 ID:???00
さやか「スクールアイドルは、人間でなくてはいけない……なんて、誰が決めたんですか?」

さやか「何かを成し遂げるために全力で頑張っている今の小鈴さんが、スクールアイドルじゃないなんて、言える人はいません」

さやか「小鈴さん自身が、誰よりも小鈴さん自身の頑張りを見落としています。……でもわたしは、それを知っている」

さやか「どれだけ力が強くても、カラダが大きくても……わたしにとって、小鈴さんは大切な後輩の一人」

さやか「小鈴さんは、れっきとした“スクールアイドル”です」

小鈴「……!」

36: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/01(金) 19:35:01 ID:???00
小鈴「…………さやか先輩は……今の徒町を、スクールアイドルだって認めてくれるんですか……?」

さやか「もちろんですよ。それに、言ったはずです。恐竜だろうがなんだろうが、小鈴さんが迷惑だなんてあり得ない、と」

小鈴「さやか先輩……」

さやか「食事の方も、わたしに任せてください。流石に肉食の恐竜といえど、生肉しか食べられない、なんてことはないと思うので」

小鈴「え、ま、任せるって、どういう……」

さやか「……その、こういう言い方でいいのか、わかりませんけど」


さやか「小鈴さんのために、わたしがこれからずっと食事を作ります。たとえ、一生かけてでも……側にいますよ」ニコッ

37: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/01(金) 19:36:00 ID:???00
小鈴「! あ、ありがとうございます、さやか先輩! 徒町、さやか先輩が徒町のために作ってくれる料理なら、毎日でも食べたいです!」

さやか「……//」

小鈴「さやか先輩?」

さやか「……わたしの気持ち、完全には伝わっていないみたいですね、難しい……」ボソッ

小鈴「?」

38: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/01(金) 19:37:00 ID:???00
小鈴「……あ、でも徒町、こんな恐竜の姿で、人間じゃない姿で、さやか先輩に並ぶパフォーマンスができるのか……それも不安で……」

さやか「ふふっ、それは寧ろ、長所になるポイントだと思いますよ」

小鈴「? 長所、ですか?」

さやか「ええ。今の小鈴さんの、恐竜の小鈴さんにしかできない、スクールアイドルとしてのきらめき方があるはずです」

小鈴「恐竜の徒町にしかできない……」

39: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/01(金) 19:38:00 ID:???00
さやか「はい。小鈴さんの持っている強み、長所を、さらに活かせるような何かが、必ず」

小鈴「徒町の、長所……ストロングポイント……」ハッ

小鈴「それだったら……あります! 徒町は大きなパフォーマンスが長所だって、吟子ちゃんたちに教わりました!」

さやか「ふふっ、それでしたら今の小鈴さんは、もっとすごいことができそうじゃありませんか?」

小鈴「! そっか、徒町は恐竜だから、前よりもずっと、ずっと大きなパフォーマンスができる……!」

40: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/01(金) 19:39:00 ID:???00
さやか「恐竜であることも、これから積極的にアピールしていきましょう。今の小鈴さんの姿はかわいくて……わ、わたしも“大好き”、ですから」

小鈴「さやか先輩……! 徒町も、さやか先輩のこと大好きですよ!」ニコッ

さやか「……」ドキッ

さやか「…………本当に、小鈴さんには敵いませんね……//」ボソッ

小鈴「?」

41: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/01(金) 19:40:00 ID:???00
──────

────

──数日後

ドサッ

慈「──はい、これが……今回、蓮ノ空に届いたファンレターの全部! いや……重すぎ、めぐちゃん疲れたー!」ヘタリ

梢「お疲れ様、慈。こんなにファンレターが増えるなんて……本当にライブ、上手くいって良かったわね」フフッ

姫芽「今回のライブ、ネットでもすごいスクールアイドルが現れた~、って話題みたいです~!」

綴理「すずが、頑張ってたもんね」ニコッ

小鈴「はい! 徒町、頑張りました!」グッ

慈「恐竜の力で、綴理を持ち上げるパフォーマンスとかすごかったもんね……会場がめちゃくちゃ沸いてたよ」

42: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/01(金) 19:41:00 ID:???00
花帆「恐竜系スクールアイドル、爆誕……本当だ、SNSでもたくさん書かれてますね!」

梢「あら、いいじゃない。恐竜系スクールアイドル」クスッ

小鈴「恐竜……! 本当に、人間じゃなくてもスクールアイドルはできるんだ……!」

さやか「ふふっ、よかったですね、小鈴さん」ニコッ

綴理「あ、そうだ。すずー」

小鈴「? なんでしょうか、綴理先輩!」

43: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/01(金) 19:42:00 ID:???00
綴理「すず、元気になった? 前はさやのお弁当、食べないこともあったから」

梢「あら……それは大変ね。小鈴さん、どこか体調でも悪くしていたのかしら?」

小鈴「あ、いえ、そのことなら、もう大丈夫です! 徒町、恐竜になってからというもの、食べるもので色々悩んでいたんですけど……」


小鈴「──さやか先輩に言っていただきましたから! 徒町のために、これからずっと……一生かけてでもご飯を作ります、って!」


「「「「「「「!?」」」」」」」

44: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/01(金) 19:43:00 ID:???00
姫芽「そ、それって~……」

瑠璃乃「……ほぼほぼ告白の言葉じゃね? あなたのためにお味噌汁を毎日作ります、みたいな?」

慈「ふふっ、さやかちゃんってば、意外と大胆なんだー」ニヤニヤ

さやか「も、もう! 揶揄わないでください……」

小鈴「? さやか先輩、どういう意味でしょうか、徒町にはよくわからないのですが……?」

さやか「え、ええと…………こほん」

さやか「……いつか必ず、ちゃんとした形で伝えるので、待っていてくださいね、小鈴さん」

小鈴「? はい!」ニコッ

花帆「……さやかちゃんも、意外とこういうことで、ヘタれるタイプだったかぁ……。どこかのセンパイみたいに……」チラッ

梢「花帆? どうして私の方を見ているのかしら?」

45: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/01(金) 19:44:00 ID:???00
綴理「みんな楽しそうでいいね。わきあいあいー」

小鈴「はい! 徒町も、このクラブのみんなと一緒にスクールアイドルができて、とっても嬉しいです!」

さやか「小鈴さん。これからも一緒に頑張りましょうね」フフッ

小鈴「! はい、もちろんです、さやか先輩!」

小鈴「これからも恐竜徒町、スクールアイドル活動、頑張ります! ちぇすとーー!!」グッ


おしまい

引用元: 【SS】小鈴「恐竜系スクールアイドル、徒町小鈴です!」