1: 千夜 2018/03/23(金) 01:19:59.026 ID:9sk6NSlT0.net
~ある家庭~

母「貴方が大学を卒業して無職として過ごしながら10年の月日が経ちました」

無職「やでな」

母「何度も働くと言いましたが全部、親を騙す嘘でしたね」

無職「働く気はあったんやで?ただ外に出れないだけなんよ」

母「ええ。なので一切家から出ずに稼げるアルバイトを紹介しようと思って」

無職「内職か?でもワイ、何の技術もないやで」

母「大丈夫。ボタンを押すだけでいいの」

無職「いくら儲かるんや?」

母「1回につき100万円」

無職「wwwwちょっ頭大丈夫か?wwww」

母「毎日ボタンを1回だけ押す。これさえしてくれれば永遠に無職でもいいわ」

無職「言質取ったで。ま、後悔せんことやな」

ポチっ

8: 千夜 2018/03/23(金) 01:23:34.899 ID:9sk6NSlT0.net
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無職「ん?」

無職「どこやここ」

一面がタイルの果てしなく続く世界へ無職は転移した

無職「誰もおらんのか?」

無職「おーーーーい!!ババアァァッッ!!」

無職「ボタン押したし働かんぞぉぉぉっっっ!!!!」

しーーーん

無職「ま、ええわ。とりあえず  るか」

9: 千夜 2018/03/23(金) 01:26:57.428 ID:9sk6NSlT0.net
無職「しかし5億年言うてたな。暇やな」

無職「いやいやwwww待て待てwwww5億年もしたら死んでるやんwwww」

無職「やっぱりあのババア頭逝ってるやで。恐らく催眠かなんかでワイを閉じ込めたんやな」

無職「おぉーーーーいっっ!!!明日からセブンとかで働くから出せやーーっっ!!」

しーーーん

無職「ほぅ…シカトするようなったか。ええで。ええで?ならこっちもほんと働かずに出んでこっから」

無職「…」

無職「そういや腹空かんな」

11: 千夜 2018/03/23(金) 01:30:08.074 ID:9sk6NSlT0.net
無職「なんで腹空かんの?」

無職「おかしいな」

無職「そもそもここどれくらいの広さなんや」

無職は歩き出した

無職「終わりが見えへんやん…」

1時間後

無職「あれ…元いた場所どこや」

一切視界に変化はなくただタイルの敷き詰められた薄暗い空間が続く

無職「…」

無職「どうしよう」

14: 千夜 2018/03/23(金) 01:33:07.867 ID:9sk6NSlT0.net
無職「そうや。ポケットにスマホ入れ取ったわ」

無職は衣類のポケットからスマホを取り出した

無職「ちょっと位置検索しよ」

圏外

無職「は?ちょっとこいつ機能するやで!」ぽちぽち

無職「もしかして…」

無職は嫌な予感がした

無職「俺…殺されるんか…」ガクガク

16: 千夜 2018/03/23(金) 01:37:22.631 ID:9sk6NSlT0.net
無職「なんでや!別に人も殺しとらんし悪いことしとらんやろ!」

無職のやった罪と言えば匿名掲示板での誹謗中傷とネカマくらいである

無職「まさか…国が無職一斉殺害とか始めたんか!?ついにそこまで堕ちたか日本」

もっともそこまで徹底できればこの国もまだ未来は明るい

無職「えぇい!くそッ!なら殺せやさっさと!ここでねっ転がるから!」

無職は大の字でタイルの上で寝転がった

無職「…」

無職「…」

そのまま1日が経過した

19: 千夜 2018/03/23(金) 01:42:53.637 ID:9sk6NSlT0.net
2日目

無職「どれくらい時間が経過したんや」

無職「それよりなんで眠くならんのや」

5億年ボタンで送り込まれる空間では眠くならず腹も空かない
1秒1秒を常に感じながら時間が経過する。5億年の時を意識的に過ごすのだ

無職「ん?そういえば昔、世にも奇妙な物語で懲役30日ってのあったな」

特殊な薬物が投与され30日という体感時間を現実の5分で過ごすというものだ

無職「もしかしてそれと同じ感じちゃうんか?長期間の拷問でニート更正みたいな」

着眼点としては近いがもっともレベルが全く違う。現実での一瞬で「5億年」を過ごすことになる

20: 千夜 2018/03/23(金) 01:48:46.757 ID:9sk6NSlT0.net
3日目

無職「そいやポケットにsurvival knife入ってたな」

誰もいない空間でカッコよく発音を決めるが虚しいだけである
ただ、この無職…携帯品がやけに多かったのは運が良かった

無職「他にもごちうさの千夜ちゃんのフィギュアに手回し式充電器、カントリーマアム1個…」

無職「とりあえずここで過ごすとして千夜ちゃんに見守られながら手回し充電器でスマホ充電しつつオフラインゲームでもやるか」

基本的に移動が嫌いな無職の特性が活かされ持ち物を転移先に持ち込むことに成功した

だが、結局そんなものはすぐに飽きた

無職「カントリーマアム美味かったわ…食事って素晴らしいんやな…」

無職はいつも食事が出来た有り難みを微量に感じ始めていた

23: 千夜 2018/03/23(金) 01:52:21.946 ID:9sk6NSlT0.net
1週間後

無職「床を掘ってみるか」

無職はタイルの溝をサバイバルナイフで削り掘り上げるという発想に至った

無職「あわよくば出られるかもしれんからな」

無職は懸命にタイルの溝を掘る作業を始めた

無職「少しやったら疲れたわ…ダルっ」

体力がほとんどない無職。だが5億年ボタンの特性のおかげで回復も早い

無職「また掘るか…」

ガリガリ…

このような作業を3ヶ月続けた

25: 千夜 2018/03/23(金) 01:57:01.071 ID:9sk6NSlT0.net
無職「…ふぅ、しかしどれくらい経ったんか?1年くらいか?」

タイルを1枚掘り上げることに成功した

無職「…中は、土か?」

冷え固まった土が見えた

無職「おおっようやくタイル以外のものが見えたで!」

無職は少し達成感を覚えた

無職「せや。目的が出来たら案外、時間って過ぎてくもんやな」

無職は現実世界で気づいて入ればよかった目的意識というものを知った

無職「ならここらへん一面のタイルをめくってやろうやないか!!!」

無職「んでこっから抜け出してスレ立てするわ。写真も撮っとこ」

オフラインとはいえスマホを持ってこれた功績は精神の穴埋めという点で大きな働きをした

27: 千夜 2018/03/23(金) 02:02:19.812 ID:9sk6NSlT0.net
無職はタイルを掘り、たまに   な妄想をして千夜ちゃんフィギュアを見ながら  リ
ふと辛くなったら盛大に発狂するという生活を10年余り続けた

無職「…はぁ…はぁ…」

一般的な家庭のリビング分くらいのタイルを掘り上げ土の空間が出来た

無職「どや…これ…」

だが無職はここでは終わらない

無職「この土をさらに掘り進めれば、いずれ戻れる道が探せるんちゃうか!?」

何かを成し遂げたあとはポジティブな思考になる。無職は現在ポジティブである

31: 千夜 2018/03/23(金) 02:06:23.404 ID:9sk6NSlT0.net
土を掘り進める無職

「やること」ができたらそれをやり続ける力はあった

大学卒業後、一度は勤めた仕事先…だがそこでは自分で何をするか考えて行動しなければならなかった

無職にはそれができず落ちこぼれ会社を辞めた

だがそれさえ明確化されていれば無職でも頑張れるのだきっと…

ポジティブ無職「うおおおおおおおっっっ!!!」

無職は掘る

掘り続ける

その間…100年も…!!!

35: 千夜 2018/03/23(金) 02:10:40.117 ID:9sk6NSlT0.net
5億年ボタン…

その正体は地球とほぼ同サイズの異空間

一面タイルで覆われており生物は一切存在しない

その空間では眠くなることも腹が空くこともなく意識が途切れることなく時が過ぎる

無職は100年間という長い間、必死に掘り続けた先に硬いものにあたった

それを壊せばここから出られると信じ必死にそれを叩き続け抜けた先は






全く同じ…見慣れたタイルの敷き詰められた空間であった

41: 千夜 2018/03/23(金) 02:15:05.945 ID:9sk6NSlT0.net
無職「そんな…」

100年

人間で言えば長寿である

無職「…ぁっ…ぁぁっ…」ボロボロ

無職は初めて努力が報われない悔しさを知った

そして果てしなく絶望した。ここから抜ける術はない。自分は5億年生きねばならないと…!

無職「そういや…すげえ時間経ってるはずなのに全然老けてねえや」

漫画のような不老不死。悪の大王が望む象徴のようなものだがそれは残酷なものだ

死ねないとは生き続けねばならない…ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと

無職「ァァッッアアアッッッアーーーーーッッッ!!!!!!!」ダンッダンッ!!!!!!!

無職は発狂し地面を蹴り暴れ回った

43: 千夜 2018/03/23(金) 02:19:27.599 ID:9sk6NSlT0.net
無職は後悔した

なぜボタンを押したのか

なぜあのババアの言うことを簡単に聞いたのか

無職「あんのババア…殺してやる…殺してやる…!!」

自分を生かしたことを後悔しろ

不老不死にしたことを後悔しろ

いずれここを耐え切って

お前の元に現れて惨殺してやる

覚悟しろ

覚悟しろ

無職「…」

親への憎しみに甘え始めた無職。だが対象が現れるのは4億9999万9890年先である

45: 千夜 2018/03/23(金) 02:23:38.090 ID:9sk6NSlT0.net
そこから長い長い時が過ぎた

10000年後である

人類が誕生してから今に至るまでとそう変わらない期間

もはや神の領域である

無職「…」

無職は思考をやめ…ただタイルの上で倒れていた

無職「…」

この状態は相当長く続き無職も自分というものを認識することはなくなった

46: 千夜 2018/03/23(金) 02:26:59.427 ID:9sk6NSlT0.net
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男「今日からこの中学に転校してきた男です…」

担任「男くんです。皆さん仲良くしてあげてくださいね!」

パチパチ

女「男くん…前はどこの中学だったの?」

男「えっと…田舎の方で」

男(ヤバイ…この子めっちゃ可愛い…どうしよう)

女「まだここらへん慣れない?」

男「えっ、あっ、うん」

女「じゃあ今日の帰りさ!一緒に帰らない?近くの商店街とか案内するから」

男「えっ!あ、お願いします」

男(やったああああああ!!!)

48: 千夜 2018/03/23(金) 02:31:25.137 ID:9sk6NSlT0.net
男「えっと…女さんて何部?」

女「吹奏楽だよ?男くんは?」

男「俺は前はあんまり部活やってなくて…」

女「へぇ…じゃあ吹奏楽入る?」

男「でも未経験者でもいいのかな?」

女「全然大丈夫!なんなら私教えるし」

男「じゃあ、やろうかな…あ、いやでも!」

女「ふふっ…ま、私はどっちでもいいよ?」

……

50: 千夜 2018/03/23(金) 02:34:46.006 ID:9sk6NSlT0.net
その後、男は吹奏楽部に入り楽しい時を過ごした

そして女と付き合うことになり高校にも通いながら何度もデートした

そして…

男「いいの?今日…ほんとに」

女「普通のカップルはもっと早くやってるよ?私たちもう3年くらいじゃん」

  の約束をした

 

67: 千夜 2018/03/23(金) 04:03:02.631 ID:9sk6NSlT0.net
女の体に触れる

初体験

いや

未経験

不可能



無職「…はっ!」

無職「はぁ…終わりか」

しかし5年は削れた

まあ1096509回目にしては上出来ではないだろうか

69: 千夜 2018/03/23(金) 04:06:54.915 ID:9sk6NSlT0.net
5024万3872年が経過

妄想による現実逃避のネタも切れた頃

無職は1つの疑問に達した

無職「空は」

地面を掘り進んだり地表には干渉したが空には一切干渉しなかった

もっとも上を見上げても暗くてよく見えない

無職「飛びたい」

無職は飛びたい…上を見たい…それだけを考え、また倒れ込んだ

飛びたい

飛びたい

また10万年ほどの月日が流れた

72: 千夜 2018/03/23(金) 04:09:46.542 ID:9sk6NSlT0.net
無職の体に異変が起こった

背中に強い痒みが走る

無職「うぐっ…!かゆい…!」

無職は項垂れる…だが急に背中の古い皮が捲れるような感覚と共に急に楽になる

無職「ふぅ…ん?」

背中には何やら違和感がある

無職「…!!」

羽が生えたのだ

76: 千夜 2018/03/23(金) 04:13:52.619 ID:9sk6NSlT0.net
無職「飛べるのか…?」

ふわり…

5cmほど浮くことには成功したがすぐに落下した

無職「まだ羽も柔らかいしこれからかな」

無職天使爆誕…!

幸い彼には有り余るほどの時間があるため飛ぶ訓練や羽の更なる進化は十分に待つことができた

そして100年ほどが経ち

無職「すごいな…こんなに自由に宙を舞えるなんて」

無職はほとんど制限なくいくらでも飛べるまでになった

無職「これでここの上の探索ができる…まだ希望は…あるのか…?」

無職は上へ上へ上がれるだけ上がり続けた

77: 千夜 2018/03/23(金) 04:19:22.242 ID:9sk6NSlT0.net
5億年ボタンは押した対象者が宙へ上がることを推定せずに作られている

もっともこれだけ膨大な期間があれば人類からさらなる種への進化の可能性も仮定しても良かっただろう

一気に宙へと舞った無職…そこでは驚きの光景が目に映った

無職「俺か?」

四次元的な時空の歪みである

無職とその母…そしてこうなった要因であるボタンを押す行為

それらの光景が時空の隙間から垣間見える

こちらが5億年という月日を過ごすなか彼らは微動だにせず同じポーズのままである

無職「…どうすればいい」

無職は一瞬、戻れるのではと期待したがこの先の行動の不透明さに困惑した

79: 千夜 2018/03/23(金) 04:23:52.365 ID:9sk6NSlT0.net
無職「…一旦下降するか…」

無職はタイルへと降り立ち今後について考えることにした

現実世界との境界線が見えたような気はした

だがそこへ辿り着く術は全く分からない

そもそも辿り着いたとしてどうなるのか

あそこにいるもう一人の俺は

今の俺はどうなるのか

無職「まだだ…まだ俺は進化が足りないんだ」

無職は知能の高い新たな種への進化を渇望した

80: 千夜 2018/03/23(金) 04:31:53.365 ID:9sk6NSlT0.net
時が過ぎ…

2億年目

折り返し地点に近づいた頃

無職は人間を遥かに超えた生物へと進化していた

1つの思考からいくつもの考えを新たに生み出し樹形図状に様々な発想を展開した

知力の他に筋力も人並みはずれたものになっていた

硬い土の塊も一撃で粉砕する強固な拳

音速で疾走する引き締まった脚

鳳凰のような羽根に溢れんばかりの知力と轟々とした筋力

無職「…」

化け物である

82: 千夜 2018/03/23(金) 04:35:52.984 ID:9sk6NSlT0.net
化け物「…」

かつては嘲笑として言われたことしかなかったが良くも悪くも文字通りとなった

もはや時の過ぎる間の感じ方も人間とは大きく異なり

残りの3億年…

ただ果てしない空を見渡す巨体は「像」としてその空間に居続けた




そして…ついに5億年目を迎える

86: 千夜 2018/03/23(金) 04:40:15.326 ID:9sk6NSlT0.net
無職「うはっw100万じゃんw」

母「ええ」

無職「あの…何でそんな反応薄いの?」

母「いえ…貴方は大丈夫なの?」

無職「何が?」

母「…」

TV『先ほど目撃された人の頭をした巨鳥は現在、東京都へと侵入した模様です…』

無職「しかしこれならいくらでも儲けれるやで」

母「本当に何ともないの!?」ウルウル

無職「ど、どうしたやで…」

87: 千夜 2018/03/23(金) 04:43:54.436 ID:9sk6NSlT0.net
母「ごめんなさい…こんなもの押させて…親失格ね…」

母は無職の前で崩れ落ちた

無職「…どうしたんだよ…母さん」

母「貴方は覚えてないでしょうけど確かに5億年って月日を体感したの…それも何もない寂しいところで」

無職「…」

母「ここに戻ってくるときは記憶をリセットされてるの」

無職「そ、そんなオカルトみたいな…」

無職は真剣におかしな話をする母に戸惑う

母「だからね?これはまた私が預かるわ…お金はあなたが使いなさい」

無職「…」

88: 千夜 2018/03/23(金) 04:47:45.501 ID:9sk6NSlT0.net
無職「なあ、なんかよく分からんけどさ…」

母「…」

無職「俺なんか働こうかな」

母「?」

無職「いや…なぜかそうしたほうがいいって…過去の俺?もう一人の俺?が言ってる気がするんだ」

母「記憶はリセットされても…感覚が残ってるの?」

無職「わかんねぇけど…5億年もいたんなら様々な後悔もしたろうし…」

母「そう…そうなの…ありがとう」ウルウル

無職「…ごめんな…母さ

バリイインンッッ!!!






化け物「死ねババアァァッッ!!!!!!!!!!」

ザシュッ!!

90: 千夜 2018/03/23(金) 04:50:25.226 ID:9sk6NSlT0.net
化け物「…やった…ざまあみろ」

耐えた

俺は耐えた

勝った

勝ったんだ

目的を果たした

復讐、ボタンを押させたババアへの復讐…

無職「…ぁっ…ぁぁっ…」ガタガタ

見慣れた肉の塊が俺を見て狼狽える

無職「…な、な、」

化け物「教えてやるよ…お前は…」



化け物「俺だ」

-END-

 

引用元: 無職「5億年ボタンやで?」母「そうよ」