1: 名無しさん@おーぷん 2018/03/23(金)21:20:04 ID:nhf

彡(゚)(゚)「まいったなあ、ゲーセンで遊んでたら終電終わってもうたで」

彡(゚)(゚)「どうしよかな、タクシーはもったいないし、ネカフェで朝まで待つか」

男「あの、ちょっとええかな」

彡(゚)(゚)「ん? なんや?」

男「コーラ買いたいんやけど、お金もらえへんか?」

彡(゚)(゚)「へ…? おっさん100円も持ってへんのか?」

男「わい宇宙人やねん、地球のお金ないんや」

彡(゚)(゚)「は……?」

2: 名無しさん@おーぷん 2018/03/23(金)21:22:01 ID:nhf

男「おおきに、わい地球のコーラが好きでなあ」

彡(゚)(゚)「5本も買うとは思わんかったで」

彡(゚)(゚)「でもこんな駅前でコーラだけ買ってどうすんのや、おっさんも帰れへんやろ」

男「いや、これから隣の宇宙まで行くんや、コーラだけ飲みたくなってな」

彡(゚)(゚)「隣の宇宙?」

男「せや、宇宙船でな、そこにあるやつや」

彡(゚)(゚)「あるやろって、ただの吉野家やないか」

彡(゚)(゚)「ん!? いや、あんなとこに吉野家なんか無かったで!? ゲーセンに入る前まで!」

3: 名無しさん@おーぷん 2018/03/23(金)21:24:55 ID:nhf

男「目立たへんように偽装してるんや」

彡(゚)(゚)「いや目立つやろ!!」

彡(゚)(゚)「……ほ、ほんまに宇宙人なんか」

男「そうやで、こう見えても、宇宙で一番科学の進んだ星から来たんや」

彡(゚)(゚)「ほんなら、コーラのお礼に家まで送ってくれや」

男「これから隣の宇宙まで行くんやけど、その後でええなら」

彡(゚)(゚)「ええで、じゃあ自己紹介しとくわ、ワイはやきうや」

男「ワイはルーク=スカイウォーカーや」

彡(゚)(゚)「堂々と偽名使われたけどまあええわ」

5: 名無しさん@おーぷん 2018/03/23(金)21:26:44 ID:nhf

ルーク「まあ適当に座ってくれや」

彡(゚)(゚)「中も完全に吉野家やなあ」

彡(゚)(゚)「厨房にもちゃんと大鍋とか冷蔵庫が」

ルーク「腹減ってるならなんか食べてもええで、地球人には地球の食いもんに見えるはずや」

彡(゚)(゚)「なんか気になる言い方やけど、まあええわ牛丼作ったろ」

6: 名無しさん@おーぷん 2018/03/23(金)21:28:51 ID:nhf
彡(゚)(゚)「隣の宇宙までって遠いんか?」

ルーク「いや、エンジンがあったまったらすぐやで、もう大気圏の外まで来てるし」

彡(゚)(゚)「なんやて?」

彡(゚)(゚)「おお、ほんまや、窓の外が宇宙や」

ルーク「だんだんに加速していくからな、ワイの操縦技術なら揺れもせんで」ガシャガシャチーン

彡(゚)(゚)「操縦って、レジ打ちしてるようにしか見えへんけど」

ルーク「そういう風に偽装してるからや、地球人にワイらの機械を見せたらあかんことになっとってな」シャカシャカチーン

彡(゚)(゚)「ここまで全部おっさんの妄想やったら逆におもろいな……」

7: 名無しさん@おーぷん 2018/03/23(金)21:31:23 ID:nhf
彡(゚)(゚)「せや、せっかく宇宙船に乗ったんやし、誰かに自慢せんと」

彡(゚)(゚)「あいつに電話したろ」



(´・ω・`)「もしもし、急にどうしたの? こんな夜中に」

彡(゚)(゚)「あのな、いま宇宙人に会ってな、これから吉野家で隣の宇宙に向かうんや」

(´・ω・`)「泥酔してるね、救急車呼んだほうが良いよ」

彡(゚)(゚)「こいつはワイの友人や」

彡(゚)(゚)「頭のいいやつで、今は大学で宇宙工学を学んでる」

彡(゚)(゚)「どのぐらい頭がいいのかと言うと、超ひも理論をワイに理解させられるほどで」

(´・ω・`)「なにブツブツ言ってるの?」

8: 名無しさん@おーぷん 2018/03/23(金)21:33:07 ID:nhf
彡(゚)(゚)「いま送った写メで分かったやろ、ほんまの宇宙や」

(´・ω・`)「……い、いや、このぐらいの写真ならCGで作れるし」

彡(゚)(゚)「疑り深いなあ」

彡(゚)(゚)「お、あれは木星やな、ビデオ通話に切り替えたろ」

彡(゚)(゚)「ほれ、窓の外に木星が見えるやろ」

(´・ω・`)「す、すごい……とてもCGには見えない」

彡(゚)(゚)「せやろ、ホンマの宇宙なんや」

9: 名無しさん@おーぷん 2018/03/23(金)21:36:03 ID:nhf

(´・ω・`)「その宇宙船の構造とか、電波がどうなってるのかとか、いろいろ気にはなるけど」

(´・ω・`)「でも隣の宇宙までって、宇宙の果てより遠いってこと? 何億年もかかるんじゃないの?」

彡(゚)(゚)「それはちょっと気になるな、おーい、行って帰るまでどのぐらいかかるんや?」

ルーク「んー? まあ30分ぐらいかな」カシャカシャチーン

(´・ω・`)「そ、そんなバカな……」

彡(゚)(゚)「スマホはずっと外に向けとくわ、ええ眺めやなあ」

10: 名無しさん@おーぷん 2018/03/23(金)21:40:18 ID:nhf
彡(゚)(゚)「おや、なんか渦みたいのが通り過ぎたで」

(´・ω・`)「あの形状は……アンドロメダ銀河? 254万光年先にあるはず……」

彡(゚)(゚)「なんかものすごい速さで銀河が通り過ぎていくな」

(´・ω・`)「おかしいな、銀河が流れてく速さからして、光速をはるかに超えてるはず」

(´・ω・`)「景色が歪んで見えるはずなんだけど」

彡(゚)(゚)「おーい、なんか景色の見え方が普通なんやけど」

ルーク「外の景色は光学的観測と違うで、データを反映させてるだけや」

彡(゚)(゚)「どういうこっちゃ?」

11: 名無しさん@おーぷん 2018/03/23(金)21:42:02 ID:nhf


ルーク「超めっちゃスゴいセンサーで、超わかりやすく表示してるだけや、ワイも理屈はよう知らん」

ルーク「そうやな、ほれ、あれは地球人がz8_GND_5296って呼んでる銀河や」

彡(゚)(゚)「ほーん」

彡(゚)(゚)「でも銀河って渦を巻いてるんちゃうか? 黒いモヤモヤしかないけど」

(´・ω・`)「……z8_GND_5296は観測された中で最も遠い銀河なんだ」

(´・ω・`)「見かけの距離は129億光年…つまり地球に届いた光は129億年前のものになる」

(´・ω・`)「地球で観測された頃には、銀河が死滅する時期だったのかな、中央にブラックホークができて」

(´・ω・`)「銀河全体のガスがブラックホールに吸い込まれ、恒星がほとんどなくなってしまう状態…だと思う」

(´・ω・`)「もっとも条件によって、銀河の終わるまでの時間と、終わり方にはいろいろな可能性が……」

彡(゚)(゚)「ちょっと話についていけへん……」

13: 名無しさん@おーぷん 2018/03/23(金)21:44:33 ID:nhf
ルーク「さて、そろそろエンジンがあったまってきたで」

彡(゚)(゚)「あ、まだあったまってなかったんやな」

(´・ω・`)「そ、そんな……」

彡(゚)(゚)「おお、窓の外にモヤモヤっとしたもんが流れていく」

(´・ω・`)「あれは超銀河団……かな? 何千個もの銀河の集まりだよ」

(´・ω・`)「でも、ここからさらに加速なんて、宇宙の広がる速度を超えて進むことに……」

彡(゚)(゚)「まあ何でもええわ、また牛丼食べよ」

14: 名無しさん@おーぷん 2018/03/23(金)21:46:15 ID:nhf

彡(゚)(゚)「おや、急に暗くなったで」

彡(゚)(゚)「いや違うな、電気はついてるわ、窓の外に星が無くなったんや」

彡(゚)(゚)「でもなんかモワモワとしたもんが見えるな、さざ波のようや」

ルーク「さて自動航行に移ってと」ッターンッ

ルーク「こっから五分ぐらい待つで、いま時速は600兆光年ぐらいや」

(´・ω・`)「頭がどうにかなりそう……」

彡(゚)(゚)「なまじ常識があると大変やな、ワイはそんなもんかな、と思うだけやけど」

15: 名無しさん@おーぷん 2018/03/23(金)21:48:35 ID:nhf

彡(゚)(゚)「ほんで、窓の外の景色は何なんや?」

ルーク「物理ダイナミクスを可視化したもんや」

ルーク「簡単に言うと、ワイらの宇宙の外には何もない、せやけど、大きな概念で満たされた空間があって、宇宙はそこに浮いてるような状態や」

ルーク「風呂で言うと、風呂には熱い部分と冷たい部分があるやろ? それが波のように見えてるんや」

ルーク「ワイらの宇宙は、風呂の屁みたいな泡に過ぎんのや」

ルーク「この宇宙船は、タオルで閉じ込めた屁のように、擬似的な物理法則で船体を包んで進んでるんや」

彡(゚)(゚)「気の利いた例えのつもりやろうけど全然わからんで」

ルーク「まあ何でもええって」

18: 名無しさん@おーぷん 2018/03/23(金)21:51:47 ID:nhf
ルーク「っと、そろそろ見えてきたな、ブレーキかけんと」

彡(゚)(゚)「あれが隣の宇宙か? なんか真っ白やで」

(´・ω・`)「ワタアメみたいだね、あれも何かの可視化なのかな」

彡(゚)(゚)「あの宇宙ってワイらの宇宙と何か違うんか?」

ルーク「簡単に言うと物理法則が違う」

ルーク「ワイらの宇宙やと1+1は2になるやろ? あの宇宙では1+1が7になる」

彡(゚)(゚)「は?」

19: 名無しさん@おーぷん 2018/03/23(金)21:53:08 ID:nhf

ルーク「そういう物理法則のもとに生まれたんや」

(´・ω・`)「そ、それだと、すぐ宇宙が物質で溢れてブラックホール化するんじゃ?」

ルーク「それも法則次第なんや、あの宇宙の場合はインフレーション化しとる」

ルーク「宇宙全体で粒子が光速で飛び交って、密度と熱をどんどん高めてる状態や」

ルーク「光速もワイらの宇宙よりずっと速い、2000億倍ぐらいかな」

彡(゚)(゚)「光速って宇宙によって違うんか」

(´・ω・`)「たしかにそういう理論もあるけど…」

20: 名無しさん@おーぷん 2018/03/23(金)21:54:07 ID:nhf

彡(゚)(゚)「そんな状態じゃ、生命なんかもおれへんな」

ルーク「そうでもないで、エネルギーのカタマリが生命のように振る舞ってるようや」

ルーク「地球人が想定してる生命とはぜんぜん違うけどな」

彡(゚)(゚)「ほーん」

(´・ω・`)「……」

(´・ω・`)「ねえ、何かおかしくない?」

彡(゚)(゚)「何がや?」

(´・ω・`)「僕らの宇宙とまるで条件の違う宇宙、宇宙全体が熱と光で満たされてる宇宙」

(´・ω・`)「そんな場所に、いったい何をしに行くの?」

彡(゚)(゚)「……それもそうやな?」

22: 名無しさん@おーぷん 2018/03/23(金)21:56:49 ID:nhf
(´・ω・`)「……」

(´・ω・`)「宇宙は泡のようなもの……法則の違う宇宙がある……」

(´・ω・`)「そして、行くのがどこか特定の宇宙ではなく、「隣の宇宙」」

彡(゚)(゚)「?」

(´・ω・`)「……まさか、この宇宙船の目的って、その宇宙を」

ルーク「その通りや、電話口の君、頭ええな」

23: 名無しさん@おーぷん 2018/03/23(金)21:58:14 ID:nhf

ルーク「これをあの宇宙に投げ込むんや」

彡(゚)(゚)「なんや? ただの醤油瓶やないか」

ルーク「言うたやろ、君らの目にそう見えてるだけや、実際は爆弾なんや」

彡(゚)(゚)「爆…弾…?」

ルーク「あの宇宙を消し飛ばすんや」

彡(゚)(゚)「何やて!?」

24: 名無しさん@おーぷん 2018/03/23(金)21:59:51 ID:nhf

ルーク「宇宙が風呂に浮かぶ泡のようなものと言ったが、泡は移動もしてる、光速をはるかに超えた速度でや」

ルーク「あのワタアメみたいな宇宙はな、計算上、数年後にワイらの宇宙と衝突するんや」

彡(゚)(゚)「衝突するとどうなるんや?」

ルーク「どちらかの宇宙の法則が矛盾と見なされて消滅する、つまり、どちらかの宇宙の法則に統一されるんや」

彡(゚)(゚)「じゃあ、ワイらの宇宙と合体する可能性もあるんか」

ルーク「そうや、せやけど、それはコインの裏表でな、接触する最初の一瞬、素粒子の最初の一個のもつれで決まるんや」

ルーク「もしあの宇宙の法則に統一されたら、ワイらの宇宙も一瞬でワタアメになる。いくらワイらの科学力でも、宇宙のすべての命は守れへん」

ルーク「だから消し去るんや、仕方のないことなんや」

26: 名無しさん@おーぷん 2018/03/23(金)22:01:06 ID:nhf

彡(゚)(゚)「……お、おっさん、妙に落ち着いてるけど」

彡(゚)(゚)「これが最初の仕事、ってわけでもないんか?」

ルーク「そうや、衝突は地球の時間で数万年に一度やが」

ルーク「ワイだけで、もう何十個も宇宙を消してる」

ルーク「ラッセル車が雪をかきわけながら進むようなもんやな、ワイらの宇宙はそうして永らえてるんや」

彡(゚)(゚)「……」

(´・ω・`)「……」

28: 名無しさん@おーぷん 2018/03/23(金)22:02:07 ID:nhf

ルーク「さあ、分かってくれるな、ほなら醤油瓶を投げ込むで」

彡(゚)(゚)「……せ、せやけど」

パシン パシーン

(´・ω・`)「うわ、窓にヒビが」

ルーク「どうやら向こうの宇宙に気づかれたな、質量弾を飛ばされてるわ」

彡(゚)(゚)「こ、攻撃か? すごい科学力の宇宙船と違うんか?」

ルーク「向こうも必死や、この一発一発が1万太陽質量ぐらいある。まあバリヤーで防げる範囲やけど、何度も食らうとやばいかも知れん」

ルーク「さあ、時間がない、醤油瓶を投げ込むで」

彡(゚)(゚)「ま、待ってくれ」

30: 名無しさん@おーぷん 2018/03/23(金)22:04:24 ID:nhf
彡(゚)(゚)「生きてるもんがおるんやろ? そんな宇宙を消すやなんて」

ルーク「消さんかったらワイらが死ぬんやで」

彡(゚)(゚)「おおい! お前も何か言うてやってくれ! 宇宙殺しなんて嫌やろ!」

(´・ω・`)「き、急に言われても」

ルーク「困ったなあ、ワイらだって何億年もやってることで……」

(´・ω・`)「ええと、よ、呼びかけてどいてもらう、とか」

ルーク「そんなアホなことが」

彡(゚)(゚)「おおーい! 聞こえるかー! ワイらの宇宙とぶつかりそうなんや、聞こえたらどいてくれー!!」

ルーク「いや、だから生命っぽく振る舞ってる言うたかて、言葉が通じるわけ」



ルーク「……何やて?」

32: 名無しさん@おーぷん 2018/03/23(金)22:05:31 ID:nhf
ルーク「ついたで、この町でええか?」

彡(゚)(゚)「ああ、ここまででええわ」

ルーク「今回のことはワイらも勉強になったわ、報告書にまとめんとな」

ルーク「当分、別の宇宙との衝突もなさそうやし、君が生きとる間に地球に来ることもないやろ」

ルーク「ほなな」

彡(゚)(゚)「お、吉野家の電気が消えて……」

彡(゚)(゚)「あ、普通の民家に変わったわ」

彡(゚)(゚)「というより、この場所にもとからあった民家やなコレ」

彡(゚)(゚)「あの吉野家は、とっくにどこかへ行ったってことか」

33: 名無しさん@おーぷん 2018/03/23(金)22:06:39 ID:nhf

(´・ω・`)「すごい経験だったねえ」

(´・ω・`)「カメラ越しにずっと見てたけど、いまだに夢じゃないかと思ってるよ」

彡(゚)(゚)「まあワイらの理解なんか越えた宇宙人やったな」

彡(゚)(゚)「とりあえず眠いし、帰って寝るわ、ほなな」

(´・ω・`)「うん、おやすみ」

34: 名無しさん@おーぷん 2018/03/23(金)22:08:11 ID:nhf

彡(゚)(゚)「……」

彡(゚)(゚)「……隣の宇宙かあ」

彡(゚)(゚)「せやけど、あの宇宙人が生まれる前は、普通に他の宇宙と衝突してたってことかな」

彡(゚)(゚)「ワイらの宇宙も、泡がくっつくみたいに、他の宇宙とくっついて今の形になったんやろか」



彡(゚)(゚)「……まあ、それはともかく」

彡(゚)(゚)「あの吉野家からくすねてきた醤油瓶、コレどうしよかな…」



(おしまい)

引用元: 彡(゚)(゚)「ワタアメの宇宙?」