2: ◆6RLd267PvQ 24/11/12(火) 12:32:57 ID:JxwY
これは、アイドル達の「オフ」の物語。

~とある温泉街~

椿「あ……早速1枚♪」カシャッ

P「花……この時期だと椿じゃなくて山茶花か、アレは」

藍子「そうですね、椿の花はもう少し時期が遅いので」

椿「こっちは後で使えるかも…あ、すみません、お待たせしてしまって」

P「いや、大丈夫だよ。今は誰と待ち合わせるでもないんだ、時間は気にしなくていい」

藍子「旅館の方もお手続きは済んでますしね」

椿「でも、夢中になっちゃうので、ほどほどに…あっ」カシャッ

P「…で、今度は何を撮ったんだ…?」

椿「す、すみません!その、あんまり美味しそうだったから……」

藍子「あっ、お茶屋さん」

P「まぁ温泉街と言えば温泉饅頭だしな、あるか、茶屋くらい」

椿「プロデューサーさん、その…」

P「わかってるわかってる、寄っていこう」

藍子「椿さん、お餅好きですからね♪」

椿「ありがとうございます、気になってしまって…!」

3: ◆6RLd267PvQ 24/11/12(火) 12:33:47 ID:JxwY
~お茶屋さん・テラス席~

藍子「じゃあ、私はきんつばで…プロデューサーさんはどうしますか?」

P「ん~…どれも捨て難いが……よし、最中にしよう」

椿「じゃあ頼んじゃいますね。すみません、最中と金鍔、お餅入りのお汁粉と、お茶を3つ…はい、お願いします」

~~~

藍子「あったかい…」ホッ…

P「…この渋みは良いな、茶菓子の甘さと相性がいい…やっぱりお茶に合わせてお菓子の方を調整してるのかね」

椿「お餅、美味しいです…。ふふ、一足早くお正月気分かも」

藍子「お漬物もついてるんですね」

P「家とか地域によるよな。あってもいいしなくてもいいんだが、あると嬉しい」

椿「でも、何だかわがままを聞いて貰ったみたいで、すみませんプロデューサーさん」

P「いいって、大体は経費で誤魔化せるし」

藍子「もう、ちひろさんに怒られちゃいますよ?」

P「はは、冗談だよ。…まぁ、旅行誌のコラム記事の仕事だが、カメラマンさん達は明日だからな」

椿「1日早く到着したのは…何かご都合でも?」

P「いや、どうせ書くからには一度辺りを見たり実際に過ごしてみたり、そういう時間が取れればと思って、スケジュールを調整して前乗りしたんだよ」

藍子「それで最近忙しそうにしてらしたんですね、プロデューサーさん」



4: ◆6RLd267PvQ 24/11/12(火) 12:34:16 ID:JxwY
P「ま、それにかこつけて旅館でゆっくりできる時間が欲しかった、ってのもあるんだけどさ。だから今日は半分観光みたいなもんだ」

藍子「なるほど。じゃあ、本当に今日は見たいだけいろんなものを見て回れるんですね」

P「まぁな。時間が1日しかないのが恨めしくもあるけどさ」

椿「あ」カシャッ

P「ん?何だ椿、急に撮ったりして」

椿「すみません、条件反射で……プロデューサーさん、口元…」

藍子「あ、小豆の粒」

P「撮るなよそんなの…」フキフキ

椿「手が勝手に…すみません、後で現像してお渡しします」

P「それどうしたらいいんだよ俺は」

~~~

5: ◆6RLd267PvQ 24/11/12(火) 12:34:47 ID:JxwY
~神社・石階段~

P「だいぶ急な階段だな…躓かない様に慎重にな」

藍子「はいっ。椿さん、荷物、重くないですか?」

椿「ふふ、このくらいの登り坂ならへっちゃらです。登山部のカメラマンをやった事もありますから」

P「わりと体力自慢だからな椿は…というか、この中で一番体力がないのは俺だ……ひぃ…」

藍子「も、もう少しで登りきりますよ、ファイトです、プロデューサーさん!」グッ

P「あ~…涼しくなっても汗って出るもんだなあ…」

~~~

6: ◆6RLd267PvQ 24/11/12(火) 12:35:16 ID:JxwY
~境内~

藍子「あ、紅葉」パシャリ

P「風情だなぁ…小さな神社だけど、この木が1人で季節感を演出してる」

椿「わぁ……」カシャッ

藍子「椿さん?……あっ」パシャリ

P「こりゃ、絶景だ…」

椿「登った先から見る景色って、どこに行っても素敵なのは変わらないですね」

P「それにしたっていい時期に来られたよ。霧とか雨とか、天候や時期次第では見られないものもたくさんあるからな」

椿「それも1つの思い出ではありますけどね。…向こうの山の方、紅葉が凄いです」

P「こっちの紅葉の木だって負けてないよな、藍子」

藍子「…ちょっと分が悪い気もします」

P「高森さん」

藍子「…ほ、ほんのちょっとですよ?ちょっぴり。これくらいっ」チマッ

P「いい、わかった。実際雑誌に載せるなら向こうの山の方とか街並みの方だと思うし…カメラは明日だけども」

藍子「うう……ごめんね、紅葉さん…」

7: ◆6RLd267PvQ 24/11/12(火) 12:35:42 ID:JxwY
~参拝を終え、旅館へ~

P「一応二部屋取ってあるけど、とりあえずどちらかの部屋で打ち合わせがしたいな…荷物を置いたら俺の部屋に来てくれないか」

椿「わかりました。撮った写真も持ってきますね」

藍子「椿さん、写真を選んでるとプロデューサーさんをお待たせしてしまうんじゃ…」

P「藍子のはデジタルのトイカメラだからな…今日の椿のカメラはポラロイドだし…」

椿「その場で見られる方が良いかなと思ったので」

P「ならデジタル、とはならないんだよな…」

椿「一応デジタルカメラも鞄に入ってますよ?ほら」ヒョイ

P「使わなきゃ意味ないじゃない」

藍子「まあまあ、椿さんもプロデューサーさんも、とりあえず廊下じゃなくてお部屋に入りましょう、ね?」

~~~

8: ◆6RLd267PvQ 24/11/12(火) 12:36:00 ID:JxwY
~そしてしばらくして~

P「どうしてこうなった」

従業員「こちらがサウナ着です。中で混浴になっていますので」

P(混浴サウナ……いや、最近確かに流行りとは聞くが)

従業員「ウチの女将が流行りに敏感でして、導入したらこれがまた…」

P「は、はぁ……」

P(観光地の老舗旅館にそんな近代的なモノがあると思わないだろ)

9: ◆6RLd267PvQ 24/11/12(火) 12:36:40 ID:JxwY
~サウナ内~

P「あれ、藍子だけか?椿は」

藍子「ああ、椿さんは写真の現像中です。いつの間にかかなりの枚数を撮っていたみたいで、使えそうなものと選り分けるからって」

P(まぁ、サウナと聞いて目の色を変えたのは誰あろうこの高森さんなんだがな)

藍子『入りましょうよ!サウナですよ、サウナ!』

P『えー…』

椿『この写真は…見せられないかなぁ…でも個人用になら……こっちは…』ブツブツ

P「はぁ…」

藍子「?」ニッコニコ

P「…ま、仕方ないから付き合うとするか…一人きりでのぼせられても困るしな」スワリッ

藍子「はいっ、ゆっくり汗を流しましょうね」スワリッ

P(俺は知っている……高森藍子…この女)

藍子「ふんふんふーん♪」ルンルン

P(打たれ強すぎてこの手の設備に対して異常な程相性がいいんだ…)

藍子「プロデューサーさん、我慢くらべしませんか?私、絶対に負けない自信がありますっ」ドヤッ

P「そこでお前に勝てる人材のが稀有なんだよ」

藍子「競争ですよ~、よ~い♪」

※ほどほどで引っ張り出しました。

椿「だ、大丈夫ですか?」ウチワパタパタ

P「ギリギリのぼせるまではいってないぞ」ホッカホカ

藍子「フルーツ牛乳…幸せ…」チューッ

P「藍子め…今に見てろよ…」

椿「ど、どうどう…」

10: ◆6RLd267PvQ 24/11/12(火) 12:37:05 ID:JxwY
~夜・露天風呂、女湯~

藍子「椿さん椿さん、後でサウナに入りませんか?」

椿「えっと……プロデューサーさんと入ったんじゃ…?」

藍子「あと1時間は入れたのに無理やり引っ張り出されちゃったんですよ」

椿「い、1時間……干からびちゃわないかしら…」

藍子「ロウリュもありましたから、お肌が乾燥する事はないと思いますよ?」

椿「サウナの記事じゃないんだし、一通り温泉を満喫する方が先決じゃないかな」ポンッ

藍子「た、確かに……そうですね、今日はもうすっかりオフの気分でした、私…」

椿(説得成功……!)ホッ

藍子「明日の撮影後で……は……そうか、もう帰らないとですもんね…」シュン

椿「………今日、ほんのちょっとだけなら」

藍子「本当ですか!?」

椿「あの、私がのぼせない程度に、ね…お願い…」タジッ

~~~

11: ◆6RLd267PvQ 24/11/12(火) 12:37:45 ID:JxwY
~Pの部屋~

仲居「では、お鍋に火を入れますね」

P「お願いします」

椿「すみません、私達までこっちで食べる事になってしまって」

P「気にしないでいいよ、部屋に料理の匂いが残ると大変だろ?俺も一人で食べるのは寂しかったし」

藍子「ええと、もみじ鍋、でしたっけ。もみじ……もみじ……あ、鹿のお肉なんですね」スマホタプタプ

P「あまり機会ないよな。で、こっちは山菜料理か」

藍子「一人前でも結構ありますね…私、食べられるかな…」

P「自信がないなら先に少し貰おうか?まだ箸綺麗だぞ」

藍子「あ、いえっ、こういうのも貴重な経験ですからっ」

P「そうか。まぁ、無理はしないでいいからな、こういうの、旅館によってはとんでもないくらい出されたりするし」

椿「ああ、ありますね。本当に一人前なのかなってくらい出てくるところ」

P「だろ?鍋物なんかはどうしても残すしかないしな、そうなると」

椿「なるべく残さないように気をつけてはいますけど…無理して食べるのも後が怖いって、前に夏美さんが…」

P「まぁ……夏美は前科がな……女子の体型がどうのとは言えないが…」

藍子「考えてみたら……ここならサウナがあるじゃないですか、きっと燃やしてくれますよ」

P「いや、お前はサウナにどんな期待してるんだ…」

12: ◆6RLd267PvQ 24/11/12(火) 12:38:22 ID:JxwY
椿「いただきます……あ、でもこれ…優しい」モグ

P「お、もう煮えたか、よし、いただきまーす……うん……うん」モグモグ

藍子「私、この味、好きです…甘さが優しくて、具材が程よくて…」

P「何ならご飯のおかわりが欲しくなるな…」

椿「景色も良いですし、お料理も美味しいし、何だか時間がゆっくりで…あら」

シトシト……

P「いつの間にか雨が降ってたのか」

藍子「日中降らなくて良かったですけど…」

P「うーん、明日の撮影に影響は……天気、天気と」スマホタプタプ

P「あ、通り雨みたいだな」

藍子「なら、明日は問題なさそうですね」

椿「雨の日の露天のお風呂も、風情があって私は好きですけど」

P「まぁ、わからんでもない。小雨程度ならな」

藍子「それだと私は雪の中でお猿さんがお風呂に入ってるのを連想しちゃいます」

P「確かに、天然の温泉のイメージってそんな感じだな」

椿「私、寒いのはちょっと…お風呂は温かいですけど」

P「俺も流石にそういうのは…寒暖差で風邪ひきそうだし」

藍子「そう考えるとお猿さんって凄くないです?」

P「…風邪引かないのかね」

椿「毛皮……?」

3人「「「う~ん…」」」

13: ◆6RLd267PvQ 24/11/12(火) 12:38:49 ID:JxwY
P「……今は猿じゃなく、鹿だよ、固くなっちまうぞ」

椿「わ、そうでしたそうでした」

藍子「す、すみません、私がおかしな事言い出したせいで」

椿「楽しかったからそれは言いっこなし」

P「そうそう。ほら、誰が最後に残るか、競争だ競争。よ~い!」

藍子「あっ、仕返しですか、ずるいっ」

P「先に仕掛けてきたのは高森さん、キミだ」モグモグ

椿「そしてもう競争は始まっていたりして」ハフハフ

藍子「むぅ……ま、負けませんよ~っ」

※藍子ちゃん、惨敗しました。

おしまい。

引用元: オフショット~フィルム・メモリーズの場合~